(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133765
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01F 30/10 20060101AFI20240926BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20240926BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20240926BHJP
H01F 27/22 20060101ALI20240926BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01F30/10 C
H01F30/10 F
H01F30/10 S
H01F27/28 K
H01F27/28 152
H01F27/29 V
H01F27/28 176
H01F27/22
H01F30/10 J
H02M3/28 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043728
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 渉
【テーマコード(参考)】
5E043
5E050
5H730
【Fターム(参考)】
5E043BA01
5E043BA03
5E043DA02
5E043EA01
5E043EA05
5E043EA06
5E043EB01
5E050JA01
5H730AA15
5H730BB27
5H730DD04
5H730EE03
5H730EE07
5H730ZZ16
(57)【要約】
【課題】小型化及び低コスト化した電力変換装置を得ること。
【解決手段】中脚部を有した磁性コア、中脚部に巻回された一次巻線と二次巻線、及び一次巻線と二次巻線とを封止した樹脂部材を有したトランスを備え、第一の二次巻線は、第一の巻線部、第二の巻線部、第一の中間タップ端子、第一の巻線端子、及び第二の巻線端子を有し、第二の二次巻線は、第三の巻線部、第四の巻線部、第二の中間タップ端子、第三の巻線端子、及び第四の巻線端子を有し、第一の中間タップ端子と第二の中間タップ端子とは電気的に接続され、第一の巻線部と第三の巻線部、及び第二の巻線部と第四の巻線部のそれぞれは、電気的に並列に接続され、第一の巻線部と第三の巻線部とは、中脚部と第一の外脚部との間を貫通し、第二の巻線部と第四の巻線部とは、中脚部と第二の外脚部との間を貫通し、第一の二次巻線と第二の二次巻線との間に一次巻線の少なくとも一部が配置されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の外周コアと、前記外周コアにおける対向する二つの部分の間を接続した柱状の中脚部とを有した磁性コア、前記中脚部に巻回された一次巻線と二次巻線、及び前記一次巻線と前記二次巻線のそれぞれの外部と接続される端子の部分を露出させた状態で前記一次巻線と前記二次巻線とを封止した樹脂部材を有したトランスを備え、
前記二次巻線は、板状に形成され、前記中脚部にそれぞれが巻回された第一の二次巻線及び第二の二次巻線を有し、
前記第一の二次巻線は、第一の巻線部、第二の巻線部、前記第一の巻線部の一方の端部と前記第二の巻線部の一方の端部とを接続した前記端子である第一の中間タップ端子、前記第一の巻線部の他方の端部で前記端子である第一の巻線端子、及び前記第二の巻線部の他方の端部で前記端子である第二の巻線端子を有し、
前記第二の二次巻線は、第三の巻線部、第四の巻線部、前記第三の巻線部の一方の端部と前記第四の巻線部の一方の端部とを接続した前記端子である第二の中間タップ端子、前記第三の巻線部の他方の端部で前記端子である第三の巻線端子、及び前記第四の巻線部の他方の端部で前記端子である第四の巻線端子を有し、
前記第一の中間タップ端子と前記第二の中間タップ端子とは電気的に接続され、前記第一の巻線部と前記第三の巻線部、及び前記第二の巻線部と前記第四の巻線部のそれぞれは、電気的に並列に接続されており、
前記第一の巻線部と前記第三の巻線部もしくは前記第四の巻線部とは、前記中脚部と前記中脚部に対向した一方側の前記外周コアの部分である第一の外脚部との間を貫通し、前記第二の巻線部と前記第三の巻線部もしくは前記第四の巻線部の内、前記中脚部と前記第一の外脚部の間を貫通しない巻線部とは、前記中脚部と前記中脚部に対向した他方側の前記外周コアの部分である第二の外脚部との間を貫通し、
前記第一の二次巻線と前記第二の二次巻線との間に前記一次巻線の少なくとも一部が配置されている電力変換装置。
【請求項2】
前記トランスを冷却する冷却面を有した冷却器を備え、
前記中脚部は、前記冷却面の法線方向に延出し、
前記第一の二次巻線及び前記第二の二次巻線の一方は、前記一次巻線に対して前記冷却器の側に配置されている請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記中脚部に巻回された前記一次巻線の巻線部分の全てが、前記第一の二次巻線と前記第二の二次巻線との間に配置されている請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記中脚部に巻回された、前記一次巻線の巻線部分及び前記二次巻線の巻線部分は、前記中脚部の延出方向における前記一次巻線の巻線部分及び前記二次巻線の巻線部分の中央に対し、対称に配置されている請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第一の巻線端子と前記第三の巻線端子は電気的かつ熱的に接続され、前記第二の巻線端子と前記第四の巻線端子は電気的かつ熱的に接続されている請求項3又は4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記中脚部に巻回された前記一次巻線の巻線部分は、渦巻状で板状に形成され、前記中脚部にそれぞれが巻回された第一の一次巻線及び第二の一次巻線を有し、
前記第一の一次巻線と前記第二の一次巻線とは、電気的に接続され、
前記冷却面の法線方向に、前記第一の二次巻線、前記第一の一次巻線、前記第二の二次巻線、前記第二の一次巻線の順に配置されている請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記トランスを冷却する冷却面を有した冷却器を備え、
前記第一の中間タップ端子と前記第二の中間タップ端子とが接続された部分、前記第一の巻線端子と前記第三の巻線端子とが接続された部分、及び前記第二の巻線端子と前記第四の巻線端子とが接続された部分の少なくとも一つは、熱伝導性かつ電気絶縁性を有した絶縁部材を介して、前記冷却器に熱的に接続されている請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記一次巻線の巻線部分は、渦巻状で1枚の板状に形成され、
前記一次巻線は、一端が前記巻線部分の前記中脚部の側の端部に接続され、他端が前記樹脂部材から露出した配線部を有し、
前記第一の二次巻線は、前記一次巻線に対して前記冷却器の側に配置され、
前記中脚部の延出方向に見て、前記配線部の部分は、外部に露出した前記第三の巻線端子の部分及び前記第四の巻線端子の部分と前記中脚部との間であって、前記樹脂部材に封止された前記第三の巻線端子の部分と前記第四の巻線端子の部分との間に配置されている請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記第一の二次巻線は、前記一次巻線に対して前記冷却器の側に配置され、
前記冷却器は、前記中脚部の延出方向に見て、外部に露出した前記第一の巻線端子の部分及び前記第二の巻線端子の部分と前記中脚部との間であって、前記樹脂部材に封止された前記第一の巻線端子の部分と前記第二の巻線端子の部分との間に、前記樹脂部材の方向に突出した突出部を有し、
前記突出部は、前記樹脂部材を介して前記一次巻線に熱的に接続されている請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記中脚部の延出方向に見て、前記一次巻線の巻線部分と前記中脚部との間に、前記第一の二次巻線と前記第二の二次巻線とを電気的かつ熱的に接続した接続部が設けられている請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記第一の二次巻線は、前記一次巻線に対して前記冷却器の側に配置され、
前記樹脂部材は、前記第一の二次巻線における前記冷却器の側の面を露出させた露出部を有し、
前記第一の二次巻線は、前記露出部において、熱伝導性かつ電気絶縁性を有した絶縁部材を介して、前記冷却器に熱的に接続されている請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記トランスを冷却する冷却面を有した冷却器を備え、
前記第一の二次巻線は、前記一次巻線に対して前記冷却器の側に配置され、
前記第二の二次巻線における前記第三の巻線部及び前記第四の巻線部の一方又は双方は、端部から延出し、前記樹脂部材から露出した拡張部を有し、
前記拡張部は、熱伝導性かつ電気絶縁性を有した絶縁部材を介して、前記冷却器に熱的に接続されている請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記中脚部に巻回された、前記一次巻線の巻線部分と前記二次巻線の巻線部分、及び樹脂部材の配置は、前記中脚部の延出方向における前記一次巻線の巻線部分の中央を通り前記中脚部の延出方向に垂直な基準面に対して、対称である請求項3又は4に記載の電力変換装置。
【請求項14】
前記第一の二次巻線は、前記第一の巻線部の一方の端部と前記第二の巻線部の一方の端部とを接続した前記端子である第三の中間タップ端子をさらに有し、
前記第二の二次巻線は、前記第三の巻線部の一方の端部と前記第四の巻線部の一方の端部とを接続した前記端子である第四の中間タップ端子をさらに有し、
前記第三の中間タップ端子と前記第四の中間タップ端子とは電気的に接続され、
前記中脚部の延出方向に見て、
前記第一の中間タップ端子及び前記第二の中間タップ端子と、前記第三の中間タップ端子及び前記第四の中間タップ端子とは、互いに反対方向に延出している請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項15】
前記第一の巻線部と前記第三の巻線部とは、前記中脚部と前記第一の外脚部との間を貫通し、前記第二の巻線部と前記第四の巻線部とは、前記中脚部と前記第二の外脚部との間を貫通し、
前記第一の巻線部、前記第二の巻線部、及び前記第一の中間タップ端子の接続部である第一の接続部と、前記第三の巻線部、前記第四の巻線部、及び前記第二の中間タップ端子の接続部である第二の接続部のそれぞれは、前記磁性コアを基準に前記磁性コアに対して同じ側に配置されている請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項16】
前記第一の巻線端子と前記第三の巻線端子とが第一連結部で連結され、前記第二の巻線端子と前記第四の巻線端子とが第二連結部で連結され、
前記第一の二次巻線と前記第二の二次巻線とが対向するように、
前記第一連結部及び前記第二連結部は、断面がU字状に湾曲された板状に形成されている請求項15に記載の電力変換装置。
【請求項17】
前記第一の巻線部と前記第四の巻線部とは、前記中脚部と前記第一の外脚部との間を貫通し、前記第二の巻線部と前記第三の巻線部とは、前記中脚部と前記第二の外脚部との間を貫通し、
前記第一の巻線部、前記第二の巻線部、及び前記第一の中間タップ端子の接続部である第一の接続部と、前記第三の巻線部、前記第四の巻線部、及び前記第二の中間タップ端子の接続部である第二の接続部のそれぞれは、前記磁性コアを基準に前記磁性コアに対して反対側に配置されている請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車を取りまく環境規制及び技術進歩により、さまざまな車格において電気自動車又はハイブリット自動車などの電動化車両が開発され、普及が進んでいる。駆動源にモータが用いられている電動化車両には、複数の電力変換装置が搭載されている。電動化車両に搭載される電力変換装置には、高電圧バッテリの電圧を降圧し、補器バッテリ用の電圧に変換するDC-DCコンバータがある。
【0003】
DC-DCコンバータは、一般的に、高電圧の直流電圧を高電圧の交流電圧に変換するインバータ回路、高電圧の交流を低電圧の交流に変換するトランス、複数の整流素子を用いて低電圧の交流を整流し、直流パルス電圧に変換する整流回路、及び直流パルス電圧を平滑化する平滑リアクトル、平滑コンデンサ等を備える。DC-DCコンバータは、これらの部品を収容し、トランス及び整流素子等の発熱部品を冷却する水路を有した筐体をさらに備える。またDC-DCコンバータ用いられるトランスの二次巻線は、一般的に、センタータップ端子を有し、ER型もしくはEE型の磁性コアの中脚部にそれぞれ逆向きに1ターンずつ巻回されている。
【0004】
近年は運転支援装置の高機能化に伴い、DC-DCコンバータの出力電流が増大する傾向がある。また、高電圧バッテリの高電圧化に伴い、トランスの巻数比が増大する傾向がある一方で、二次巻線のターン数は最小の1ターンに制限されている。そのため、一次巻線の巻数が増加するので、トランスの巻線体積が増大している。巻線体積の増大の対策として、例えば、ER型磁性コアの中脚部に一次巻線を巻回し、それぞれ逆向きに半ターンだけ巻回された平板状の二次巻線を用いた構成が開示されている(例えば特許文献1参照)。このように構成することで、一次巻線の巻数を半分にすることが可能となるため、トランスの巻線体積を削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のトランスの構造では、トランスの巻線体積を削減することができる。しかしながら、二次巻線は1枚の平板であるため、二次巻線の一次巻線と対向した突合せ面は、二次巻線の一方の面のみとなる。その結果、近接効果により二次巻線の一次巻線との突合せ面である一方の面に電流が集中するため、上記特許文献1のトランスの構造では高周波抵抗及び銅損が増加する。高周波抵抗及び銅損が増加により巻線の発熱が増大するため、巻線の許容温度を超過しないように巻線幅を拡大する必要が生じる。巻数を削減したにもかかわらず、巻線幅を拡大することにより、トランスのサイズ及びコストが増加するという課題があった。
【0007】
そこで、本願は、巻数の低減を維持しつつ、高周波抵抗及び銅損の増加を抑制し、小型化及び低コスト化した電力変換装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に開示される電力変換装置は、環状の外周コアと、外周コアにおける対向する二つの部分の間を接続した柱状の中脚部とを有した磁性コア、中脚部に巻回された一次巻線と二次巻線、及び一次巻線と二次巻線のそれぞれの外部と接続される端子の部分を露出させた状態で一次巻線と二次巻線とを封止した樹脂部材を有したトランスを備え、二次巻線は、板状に形成され、中脚部にそれぞれが巻回された第一の二次巻線及び第二の二次巻線を有し、第一の二次巻線は、第一の巻線部、第二の巻線部、第一の巻線部の一方の端部と第二の巻線部の一方の端部とを接続した端子である第一の中間タップ端子、第一の巻線部の他方の端部で端子である第一の巻線端子、及び第二の巻線部の他方の端部で端子である第二の巻線端子を有し、第二の二次巻線は、第三の巻線部、第四の巻線部、第三の巻線部の一方の端部と第四の巻線部の一方の端部とを接続した端子である第二の中間タップ端子、第三の巻線部の他方の端部で端子である第三の巻線端子、及び第四の巻線部の他方の端部で端子である第四の巻線端子を有し、第一の中間タップ端子と第二の中間タップ端子とは電気的に接続され、第一の巻線部と第三の巻線部、及び第二の巻線部と第四の巻線部のそれぞれは、電気的に並列に接続されており、第一の巻線部と第三の巻線部もしくは第四の巻線部とは、中脚部と中脚部に対向した一方側の外周コアの部分である第一の外脚部との間を貫通し、第二の巻線部と第三の巻線部もしくは第四の巻線部の内、中脚部と第一の外脚部の間を貫通しない巻線部とは、中脚部と中脚部に対向した他方側の外周コアの部分である第二の外脚部との間を貫通し、第一の二次巻線と第二の二次巻線との間に一次巻線の少なくとも一部が配置されているものである。
【発明の効果】
【0009】
本願に開示される電力変換装置によれば、第一の中間タップ端子と第二の中間タップ端子とが電気的に接続され、第一の巻線部と第三の巻線部、及び第二の巻線部と第四の巻線部のそれぞれが、電気的に並列に接続され、第一の巻線部と第三の巻線部もしくは第四の巻線部とは、中脚部と中脚部に対向した一方側の外周コアの部分である第一の外脚部との間を貫通し、第二の巻線部と第三の巻線部もしくは第四の巻線部の内、中脚部と第一の外脚部の間を貫通しない巻線部とは、中脚部と中脚部に対向した他方側の外周コアの部分である第二の外脚部との間を貫通し、第一の二次巻線と第二の二次巻線との間に一次巻線の少なくとも一部が配置されているため、並列に接続された巻線部を有した第一の二次巻線と第二の二次巻線との間に一次巻線の少なくとも一部を挟んで配置することで、一次巻線と二次巻線とが向き合う突合せ面は特許文献1に示された構成と比較して二倍になるため、一次巻線と二次巻線との突合せ面での電流密度を半減させることができる。一次巻線と二次巻線との突合せ面での電流密度が半減されるので、巻線の高周波抵抗及び銅損が低減され、巻線温度を許容値内に収めるのに必要な巻線幅の拡大を抑制することができる。巻線幅の拡大が抑制されるので、巻数の低減を維持しつつ、高周波抵抗及び銅損の増加を抑制し、小型化及び低コスト化した電力変換装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る電力変換装置の回路構成の例を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係る電力変換装置のトランスを示す斜視図である。
【
図3】実施の形態1に係る電力変換装置のトランスを示す別の斜視図である。
【
図4】実施の形態1に係る電力変換装置のトランスを示す分解斜視図である。
【
図5】実施の形態1に係る電力変換装置のトランスを示す平面図である。
【
図6】実施の形態1に係る電力変換装置のトランスを示す底面図である。
【
図7】実施の形態1に係る電力変換装置の回路構成の各部の電圧と電流の波形を示す図である。
【
図8】実施の形態1に係る電力変換装置のトランスの等価回路及び
図7の各波形の定義を示す図である。
【
図9】実施の形態1に係る電力変換装置のトランスの等価回路及びトランス入力端子への正電圧印加時の電流経路を示す図である。
【
図10】実施の形態1に係る電力変換装置のトランスの等価回路及びトランス入力端子への負電圧印加時の電流経路を示す図である。
【
図11】実施の形態2に係る電力変換装置のトランスを示す斜視図である。
【
図12】実施の形態2に係る電力変換装置のトランスを示す別の斜視図である。
【
図13】実施の形態2に係る電力変換装置のトランスを示す分解斜視図である。
【
図14】
図11のA-A断面位置で切断した電力変換装置のトランスを示す断面図である。
【
図15】実施の形態3に係る電力変換装置のトランスを示す斜視図である。
【
図16】実施の形態3に係る電力変換装置のトランスを示す別の斜視図である。
【
図17】実施の形態3に係る電力変換装置のトランスを示す分解斜視図である。
【
図18】実施の形態3に係る電力変換装置の回路構成の例を示す図である。
【
図19】実施の形態4に係る電力変換装置のトランスを示す分解斜視図である。
【
図20】実施の形態4に係る電力変換装置のトランスを示す平面図である。
【
図21】実施の形態5に係る電力変換装置のトランスを示す斜視図である。
【
図22】実施の形態5に係る電力変換装置のトランスの二次巻線を示す斜視図である。
【
図23】実施の形態6に係る電力変換装置のトランスを示す斜視図である。
【
図24】
図23のB-B断面位置で切断した電力変換装置のトランスを示す斜視図である。
【
図25】実施の形態6に係る電力変換装置のトランスを示す平面図である。
【
図26】実施の形態7に係る電力変換装置のトランスを示す分解斜視図である。
【
図27】実施の形態7に係る電力変換装置のトランスを示す斜視図である。
【
図28】実施の形態8に係る電力変換装置のトランスを示す斜視図である。
【
図29】実施の形態8に係る電力変換装置のトランスを示す別の斜視図である。
【
図30】実施の形態9に係る電力変換装置のトランスを示す斜視図である。
【
図31】実施の形態9に係る電力変換装置のトランスを示す別の斜視図である。
【
図32】
図30のC-C断面位置で切断した電力変換装置のトランスを示す断面図である。
【
図33】実施の形態9に係る別の電力変換装置のトランスを示す斜視図である。
【
図34】実施の形態9に係る別の電力変換装置のトランスを示す別の斜視図である。
【
図35】実施の形態10に係る電力変換装置のトランスを示す斜視図である。
【
図36】実施の形態10に係る電力変換装置のトランスを示す平面図である。
【
図37】実施の形態11に係る電力変換装置のトランスを示す分解斜視図である。
【
図38】実施の形態11に係る電力変換装置の回路構成の例を示す図である。
【
図39】実施の形態11に係る電力変換装置のトランスの等価回路及びトランス入力端子への正電圧印加時の電流経路を示す図である。
【
図40】実施の形態11に係る電力変換装置のトランスの等価回路及びトランス入力端子への負電圧印加時の電流経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願の実施の形態による電力変換装置を図に基づいて説明する。なお、各図において同一、または相当部材、部位については同一符号を付して説明する。
【0012】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る電力変換装置100の回路構成の例を示す図、
図2は電力変換装置100のトランス3を示す斜視図、
図3は電力変換装置100のトランス3を示す別の斜視図で、
図2を別の角度から示した図、
図4は電力変換装置100のトランス3を示す分解斜視図で、樹脂部材15を取り除いて示した図、
図5は電力変換装置100のトランス3を示す平面図で、樹脂部材15及び上側コア11bを取り除いて示した図、
図6は電力変換装置100のトランス3を示す底面図で、樹脂部材15及び下側コア11aを取り除いて示した図ある。本実施の形態では、電力変換装置100は、直流電源の直流電圧をトランス3で絶縁された二次側直流電圧に変換して、バッテリ等の負荷に直流電圧を出力するDC-DCコンバータである。
【0013】
<電力変換装置100>
電力変換装置100の主回路構成を、
図1により説明する。
図1において、左側が入力側、右側が出力側である。電力変換装置100は、左側で直流電源に接続され、右側で、例えば、低電圧バッテリなどの負荷に接続される。電力変換装置100は、インバータ回路2の入力電圧を平滑化する入力コンデンサ1と、入力された直流電圧を交流電圧に変換して一次巻線3aへ出力するインバータ回路2と、インバータ回路2から出力された交流電力の電圧を変換して出力する、絶縁されたトランス3と、トランス3から出力された交流電圧を整流する整流回路4と、整流された電圧波形を平滑化する平滑コンデンサ6とを備える。
【0014】
インバータ回路2は、フルブリッジ構成された複数の半導体スイッチング素子2a、2b、2c、2dを有する。本実施の形態では、インバータ回路2は、4つの半導体スイッチング素子を有するが、半導体スイッチング素子の個数はこれに限るものではない。半導体スイッチング素子は、例えば、ソース・ドレイン間にダイオードが内蔵されたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。なお、半導体スイッチング素子は、MOSFETに限るものではなく、ダイオードが逆並列接続されたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の自己消弧型半導体スイッチング素子でも構わない。半導体スイッチング素子は、ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)、もしくは窒化ガリウム(GaN)などの半導体材料からなる半導体基板に形成される。
【0015】
トランス3は、一次巻線3a、及び二次巻線3b、3c、3d、3eを有する。二次巻線3b、3c、3d、3eは、センタータップ3fを有する。二次巻線3b、3d、及び二次巻線3c、3eは、それぞれ電気的に並列に接続されている。センタータップ3fは、平滑コンデンサ6に接続される。
【0016】
整流回路4は、半導体素子である、整流素子としてのダイオード4a、4bを有する。センタータップ端子以外のトランス3の二次側の端子は、ダイオード4a、4bにそれぞれ接続される。本実施の形態では、ダイオード4a、4bは、それぞれ一つのダイオードで示しているが、2つ以上を並列に接続したダイオードであっても構わない。また、整流素子として、MOSFET等の自己消弧型半導体スイッチング素子を整流回路4に用いても構わない。
【0017】
<トランス3の構成>
電力変換装置100に搭載されるトランス3の構成について、
図2から
図6により説明する。トランス3は、磁性コア11、一次巻線13、二次巻線14、及び樹脂部材15を有する。樹脂部材15は、一次巻線13と二次巻線14のそれぞれの外部と接続される端子の部分を露出させた状態で、一次巻線13と二次巻線14とを封止する。各巻線の間が樹脂部材15により覆われることで、各巻線の絶縁性能を確保することができる。樹脂部材15は、例えば、インサート成形により形成される。本実施の形態では、電力変換装置100は、
図2に示すように、トランス3を冷却する冷却面16aを有した冷却器16を備える。トランス3は、冷却面16aに熱的に接続されている。冷却器16は、冷媒が流れる冷媒流路(図示せず)を有する。冷媒流路は、冷却面16aを冷却する。冷媒には、例えば、水またはエチレングリコール液が使用される。
【0018】
磁性コア11は、環状の外周コアと、外周コアにおける対向する二つの部分の間を接続した柱状の中脚部24とを有する。本実施の形態では、中脚部24は円柱状である。一次巻線13と二次巻線14は、中脚部24に巻回される。磁性コア11は、フェライトなどの磁性材料により作製される。なお、磁気飽和対策のために、磁性コア11の中脚部24に空気ギャップを設けた構成としても構わない。本実施の形態では、
図4に示すように、磁性コア11は下側コア11aと上側コア11bとを有し、ER形状の下側コア11aと上側コア11bとを重ねることで、閉磁路構造を有した磁性コア11が形成される。磁性コア11の構成は、ER形状に限るものではなく、E型とE型に形成された2つの分割コア、又はE型とI型に形成された2つの分割コアなどであっても構わない。磁性コア11における、中脚部24に対向した一方側の外周コアの部分は、第一の外脚部23aであり、中脚部24に対向した他方側の外周コアの部分は、第二の外脚部23bである。本実施の形態では、
図2に示すように、中脚部24は、冷却面16aの法線方向に延出し、下側コア11aと冷却面16aとが当接している。図において、冷却面16aの法線方向はZ軸方向である。磁性コア11の配置はこれに限るものではないが、このように構成することで、トランス3と冷却面16aの接触面積が増加するので、トランス3を効率よく冷却することができる。
【0019】
二次巻線14は、
図4に示すように、板状に形成され、中脚部24にそれぞれが巻回された第一の二次巻線14a及び第二の二次巻線14bを有する。第一の二次巻線14aは、第一の巻線部25a、第二の巻線部25b、第一の巻線部25aの一方の端部と第二の巻線部25bの一方の端部とを接続部35aにて接続した端子である第一の中間タップ端子22a、第一の巻線部25aの他方の端部で端子である第一の巻線端子21a、及び第二の巻線部25bの他方の端部で端子である第二の巻線端子21bを有する。第二の二次巻線14bは、第三の巻線部25c、第四の巻線部25d、第三の巻線部25cの一方の端部と第四の巻線部25dの一方の端部とを接続部35bにて接続した端子である第二の中間タップ端子22b、第三の巻線部25cの他方の端部で端子である第三の巻線端子21c、及び第四の巻線部25dの他方の端部で端子である第四の巻線端子21dを有する。接続部35a及び接続部35bは、図において破線で囲まれた部分である。接続部35a及び接続部35bのそれぞれは、磁性コア11に対して同じ方向に位置する。本実施の形態では、第一の巻線部25a、第二の巻線部25b、第三の巻線部25c、及び第四の巻線部25dは、円柱状の中脚部24の側面に沿うように湾曲しているが、巻線部の形状はこれに限るものではない。中脚部24が角柱状である場合、第一の巻線部25a、第二の巻線部25b、第三の巻線部25c、及び第四の巻線部25dは、湾曲させずに、直線状に設けても構わない。
【0020】
第一の巻線部25aは、
図1に示した二次巻線3bに相当する。同様に、第二の巻線部25bは二次巻線3c、第三の巻線部25cは二次巻線3d、第四の巻線部25dは二次巻線3eに相当する。第一の中間タップ端子22aと第二の中間タップ端子22bは、
図1に示したセンタータップ3fに相当する。第一の中間タップ端子22aと第二の中間タップ端子22bとは電気的に接続され、第一の巻線部25aと第三の巻線部25c、及び第二の巻線部25bと第四の巻線部25dのそれぞれは、電気的に並列に接続されている。本実施の形態では、第一の巻線部25aと第三の巻線部25cとが、中脚部24と第一の外脚部23aとの間を貫通し、第二の巻線部25bと第四の巻線部25dとが、中脚部24と第二の外脚部23bとの間を貫通する。
【0021】
第一の巻線端子21aと第三の巻線端子21c、及び第二の巻線端子21bと第四の巻線端子21dのそれぞれは、樹脂部材15から露出した端部において、例えば、Tig溶接により電気的に接続される。第一の中間タップ端子22aと第二の中間タップ端子22bとは、樹脂部材15から露出した端部において、例えば、締結部材17aにより締結されて、電気的に接続される。
図4に示した締結部材17aは、ナットであり、ボルトは省略している。本実施の形態では、締結部材17aは外部に露出して設けているが、締結部材17aが樹脂部材15により封止され、締結部材17aが樹脂部材15に保持されていても構わない。
【0022】
中脚部24に巻回された一次巻線13は、本実施の形態では、渦巻状で板状に形成され、中脚部24にそれぞれが巻回された第一の一次巻線13a及び第二の一次巻線13bを有する。一次巻線13は渦巻状に湾曲しているがこれに限るものではなく、直線部分をつなぎ合わせて渦巻状にした構成でも構わない。一次巻線13の構成は板状に限るものではなく、電線を中脚部24に巻回した構成でも構わない。第一の一次巻線13a及び第二の一次巻線13bの1ターンあたりの巻線幅は二次巻線14の巻線幅よりも小さく、第一の一次巻線13a及び第二の一次巻線13bは中脚部24に複数回巻回されている。本実施の形態では、第一の一次巻線13a及び第二の一次巻線13bのそれぞれは、中脚部24に3ターン巻回されている。一次巻線13のターン数は、3ターンに限るものではない。第一の一次巻線13aは、中脚部24の側の端部に、溶接部33aを有し、第二の一次巻線13bは、中脚部24の側の端部に、溶接部33bを有する。溶接部33aと溶接部33bとが溶接により接続されることで、第一の一次巻線13aと第二の一次巻線13bとは、電気的に直列に接続される。
【0023】
一次巻線13、及び二次巻線14は、例えば、銅などの板金から打ち抜き加工により形成される。第一の巻線端子21aと第三の巻線端子21cとが電気的に接続されて、第一の連結端子21fが形成される。第二の巻線端子21bと第四の巻線端子21dとが電気的に接続されて、第二の連結端子21eが形成される。第一の連結端子21fは、
図1に示したダイオード4bに接続され、第二の連結端子21eは、
図1に示したダイオード4aに接続される。一次巻線13の一方の端部に設けられた端子である巻線端子21gと一次巻線13の他方の端部に設けられた端子である巻線端子21hは、
図1に示したインバータ回路2に接続される。第一の中間タップ端子22aと第二の中間タップ端子22bとは、
図1に示した平滑コンデンサ6の正極端子に接続される。
【0024】
<電力変換装置100の動作の説明>
ここで、
図2から
図6に示したトランス3を用いた電力変換装置100の動作について、
図7から
図10を用いて説明する。
図7は実施の形態1に係る電力変換装置100の回路構成の各部の電圧と電流の波形を示す図、
図8はトランス3の等価回路及び
図7の各波形の定義を示す図、
図9はトランス3の等価回路及びトランス入力端子への正電圧印加時の電流経路を示す図、
図10はトランス3の等価回路及びトランス入力端子への負電圧印加時の電流経路を示す図である。
【0025】
図8に示したトランス40aは、
図2から
図6に示すトランス3の第一の巻線部25a、第三の巻線部25c、第一の外脚部23a、及び中脚部24を通る磁束で構成される理想的なトランス成分であり、インダクタンス41aは、トランス40aの励磁インダクタンス成分である。トランス40bは、
図2から
図6に示すトランス3の第二の巻線部25b、第四の巻線部25d、第二の外脚部23b、及び中脚部24を通る磁束で構成される理想的なトランス成分であり、インダクタンス41aは、トランス40aの励磁インダクタンス成分である。
【0026】
次に、
図7を用いて電力変換装置100の各部の電圧と電流の波形について説明する。
図7における半導体スイッチング素子2a~2dの駆動には、一般的にフェーズシフト駆動と呼ばれるゲート駆動方式を用いる。まず、半導体スイッチング素子2a、2dがオン、半導体スイッチング素子2b、2cがオフの期間では、トランス3には
図9に示した矢印の経路で電流が流れる。この時、ダイオード4aに順バイアスがかかり、第二の巻線部25b、第四の巻線部25dに負荷電流が流れるため、トランス40bを介した電力の伝達が二次側で行われる。一方で、トランス40aの二次巻線である第一の巻線部25a、第三の巻線部25cには負荷電流が流れないため、二次側への電力の伝達が行われず、トランス40aの励磁インダクタンス成分であるインダクタンス41aには磁気エネルギーが蓄積される。また、トランス40bの二次巻線電圧は出力電圧Voutと同じ、トランス40aの二次巻線電圧は入力電圧Vin/巻数N-出力電圧Voutで決まる電圧がトランス3から出力される。
【0027】
次に、t2のタイミングで半導体スイッチング素子2cをオン、半導体スイッチング素子2dをオフに変えると、トランス3の一次巻線が短絡される。この時に、インバータ回路2の入力側から二次側に電力の供給が行われなくなるが、インダクタンス41aに蓄えられた磁気エネルギーが
図9の電流経路を維持しようとするため、トランス40bを介した二次側への電力伝達が維持される。
【0028】
次に、t3のタイミングで半導体スイッチング素子2bをオン、半導体スイッチング素子2aをオフに変えると、トランス3の一次巻線には負の方向に入力電圧Vinが印加され、
図10に示した矢印の経路で電流が流れる。この時、トランス40aを伝って電力の伝達が二次側に行われると同時に、電力の伝達が行われないトランス40bには、その励磁インダクタンス成分であるインダクタンス41bに磁気エネルギーが蓄積される。最後にt4のタイミングで半導体スイッチング素子2cをオン、半導体スイッチング素子2dをオフに変えると、トランス3の一次巻線が短絡され、インダクタンス41bに蓄えられた磁気エネルギーが
図10の電流経路を維持しようとするため、トランス40aを介した二次側への電力伝達が維持される。以上の説明の通りに半導体スイッチング素子2a~2dを駆動させることで、
図2から
図6に示すトランス3を用いた電力変換を行うことが可能となる。
【0029】
<トランス3の要部の構成>
トランス3の要部の構成について説明する。第一の二次巻線14aと第二の二次巻線14bとの間に一次巻線13の少なくとも一部が配置されている。本実施の形態では、
図4に示すように、冷却面16aの法線方向に、下側コア11a、第一の二次巻線14a、第一の一次巻線13a、第二の一次巻線13b、第二の二次巻線14b、上側コア11bの順に配置され、中脚部24に巻回された一次巻線13の巻線部分の全てが、第一の二次巻線14aと第二の二次巻線14bとの間に配置されている。本実施の形態では、一次巻線13の巻線部分の全てが、第一の二次巻線14aと第二の二次巻線14bとの間に配置されているがこれに限るものではなく、例えば、第一の一次巻線13aのみが第一の二次巻線14aと第二の二次巻線14bとの間に配置されていても構わない。
【0030】
並列に接続された巻線部を有した第一の二次巻線14aと第二の二次巻線14bとの間に一次巻線13の少なくとも一部を挟んで配置することで、一次巻線13と二次巻線14とが向き合う突合せ面は特許文献1に示された構成と比較して二倍になるため、一次巻線13と二次巻線14との突合せ面での電流密度を半減させることができる。一次巻線13と二次巻線14との突合せ面での電流密度が半減されるので、巻線の高周波抵抗及び銅損が低減され、巻線温度を許容値内に収めるのに必要な巻線幅の拡大を抑制することができる。巻線幅の拡大が抑制されるので、巻数の低減を維持しつつ、高周波抵抗及び銅損の増加を抑制し、小型化及び低コスト化したトランス3及び電力変換装置100を得ることができる。
【0031】
トランス3において、第一の二次巻線14a及び第二の二次巻線14bの一方は、一次巻線13に対して冷却器16の側に配置されている。本実施の形態では、第一の二次巻線14aが、一次巻線13に対して冷却器16の側に配置されている。二次巻線14は一次巻線13よりも巻数が小さいので、二次巻線14に流れる電流は一次巻線13に流れる電流よりも大きい。そのため、一次巻線13よりも二次巻線14の損失は大きい。第一の二次巻線14aを冷却器16の近くに配置することで、第一の二次巻線14aを冷却器16により冷却しやすくなるため、二次巻線14の巻線幅を縮小することができるので、トランス3を小型化することができる。トランス3が小型化されるため、電力変換装置100を小型化することができる。また、二次巻線14は一次巻線13より幅が広いため、一次巻線13から発生する熱が冷却器16に至るまでの間で拡散しやすくなる。よって、一次巻線13を冷却しやすくなるため、一次巻線13の巻線幅を縮小することができるので、トランス3を小型化することができる。
【0032】
本実施の形態では、第一の二次巻線14aは、一次巻線13に対して冷却器16の側に配置され、樹脂部材15は、第一の二次巻線14aにおける冷却器16の側の面を露出させた露出部26を有する。露出部26において露出した第一の二次巻線14aの部分は、
図6において破線で囲まれた部分である。
図4に示すように、第一の二次巻線14aは、露出部26において、熱伝導性かつ電気絶縁性を有した絶縁部材である伝熱シート12aを介して、冷却器16に熱的に接続されている。第一の二次巻線14aは、第一の中間タップ端子22aの側においても、熱伝導性かつ電気絶縁性を有した絶縁部材である伝熱シート12bを介して、冷却器16に熱的に接続されている。また、本実施の形態において、伝熱シート12a、12bが設けられた冷却器16の部分は、第一の二次巻線14aに隣接させた巻線隣接部16bである。
【0033】
第一の二次巻線14aは、露出部26において、冷却器16に熱的に接続された構成に限るものではなく、第一の二次巻線14aは、樹脂部材15及び伝熱シートを介して冷却器16に熱的に接続された構成でも構わない。第一の二次巻線14aが、露出部26において冷却器16に熱的に接続されることで、第一の二次巻線14aと冷却器16との間の熱抵抗を下げることができる。第一の二次巻線14aと冷却器16との間の熱抵抗が下がるため、第一の二次巻線14aの巻線温度をさらに下げることができる。巻線温度がさらに下がるため、第一の二次巻線14aが小型化されるので、トランス3及び電力変換装置100を小型化及び低コスト化することができる。
【0034】
二次巻線14は一次巻線13より巻数が少なく、二次巻線14は絶縁耐量が小さい低圧側巻線となる。本実施の形態では、中脚部24に巻回された一次巻線13の巻線部分の全てが、第一の二次巻線14aと第二の二次巻線14bとの間に配置されているため、冷却器16に隣接した二次巻線14が低圧側巻線になるので、二次巻線14と冷却器16との間に求められる絶縁要求が下がる。二次巻線14と冷却器16との間の絶縁要求が下がるため、二次巻線14を冷却器16に近づけて配置することができるので、二次巻線14の巻線温度を効率よく下げることができる。また、二次巻線14と冷却器16との間の絶縁要求が下がるため、露出部26を設けた場合、伝熱シートを介して二次巻線14と冷却器16とを熱的に接続することが可能となる。伝熱シートを介すことで二次巻線14の巻線温度をさらに効率よく下げることができる。二次巻線14の巻線温度がさらに下がるので、巻線温度の許容値内に巻線温度を収めるのに必要な巻線幅を更に縮めることができるため、トランス3及び電力変換装置100をさらに小型化及び低コスト化することができる。
【0035】
本実施の形態では、
図3に示すように、第一の巻線端子21aと第三の巻線端子21cは電気的かつ熱的に接続され、第二の巻線端子21bと第四の巻線端子21dは電気的かつ熱的に接続されている。このようにトランス3における第一の二次巻線14aと第二の二次巻線14bとの間の接続が、第一の中間タップ端子22aと第二の中間タップ端子22bの接続だけでなく、第一の巻線端子21aと第三の巻線端子21c、及び第二の巻線端子21bと第四の巻線端子21dにおいても行われる。このように構成することで、冷却器16から離れた、上側に配置された二次巻線14の放熱経路を増やすことができる。上側に配置された二次巻線14の放熱経路が増えるので、上側に配置された二次巻線14の巻線温度も効率よく下げることができる。上側に配置された二次巻線14の巻線温度がさらに下がるので、巻線温度の許容値内に巻線温度を収めるのに必要な巻線幅を更に縮めることができるため、トランス3及び電力変換装置100をさらに小型化及び低コスト化することができる。
【0036】
第一の中間タップ端子22aと第二の中間タップ端子22bとが接続された部分、第一の巻線端子21aと第三の巻線端子21cとが接続された部分、及び第二の巻線端子21bと第四の巻線端子21dとが接続された部分の少なくとも一つは、熱伝導性かつ電気絶縁性を有した絶縁部材を介して、冷却器16に熱的に接続されている。本実施の形態では、第一の中間タップ端子22aと第二の中間タップ端子22bとが接続された部分が、
図3に示すように、締結部材17a及び絶縁部材である伝熱シート12bを介して、冷却器16に熱的に接続されている。この構成に限るものではなく、さらに、第一の巻線端子21aと第三の巻線端子21cとが接続された部分、及び第二の巻線端子21bと第四の巻線端子21dとが接続された部分が絶縁部材である伝熱シート12aを介して、冷却器16に熱的に接続されていても構わない。このように構成することで、上側に配置された二次巻線14と下側に配置された二次巻線14の双方に対して冷却経路を設けることができる。双方の二次巻線14に冷却経路が設けられるので、双方の二次巻線14を効率よく冷却することができる。双方の二次巻線14の巻線温度がさらに下がるので、巻線温度の許容値内に巻線温度を収めるのに必要な巻線幅を双方の二次巻線14において縮めることができるため、トランス3及び電力変換装置100をさらに小型化及び低コスト化することができる。
【0037】
以上のように、実施の形態1による電力変換装置100において、第一の中間タップ端子22aと第二の中間タップ端子22bとが電気的に接続され、第一の巻線部25aと第三の巻線部25c、及び第二の巻線部25bと第四の巻線部25dのそれぞれが、電気的に並列に接続され、第一の巻線部25aと第三の巻線部25cとが、中脚部24と第一の外脚部23aとの間を貫通し、第二の巻線部25bと第四の巻線部25dとが、中脚部24と第二の外脚部23bとの間を貫通し、第一の二次巻線14aと第二の二次巻線14bとの間に一次巻線13の少なくとも一部が配置されているため、並列に接続された巻線部を有した第一の二次巻線14aと第二の二次巻線14bとの間に一次巻線13の少なくとも一部を挟んで配置することで、一次巻線13と二次巻線14とが向き合う突合せ面は特許文献1に示された構成と比較して二倍になるため、一次巻線13と二次巻線14との突合せ面での電流密度を半減させることができる。一次巻線13と二次巻線14の突合せ面での電流密度が半減されるので、巻線の高周波抵抗及び銅損が低減され、巻線温度を許容値内に収めるのに必要な巻線幅の拡大を抑制することができる。巻線幅の拡大が抑制されるので、巻数の低減を維持しつつ、高周波抵抗及び銅損の増加を抑制し、小型化及び低コスト化したトランス3及び電力変換装置100を得ることができる。
【0038】
電力変換装置100が、トランス3を冷却する冷却面16aを有した冷却器16を備え、中脚部24が、冷却面16aの法線方向に延出し、第一の二次巻線14a及び第二の二次巻線14bの一方が、一次巻線13に対して冷却器16の側に配置されている場合、冷却器16の側に配置された二次巻線14が冷却器16により冷却しやすくなるため、二次巻線14の巻線幅を縮小することができるので、トランス3を小型化することができる。トランス3が小型化されるため、電力変換装置100を小型化することができる。
【0039】
中脚部24に巻回された一次巻線13の巻線部分の全てが、第一の二次巻線14aと第二の二次巻線14bとの間に配置されている場合、冷却器16に隣接した二次巻線14が低圧側巻線になるので、二次巻線14と冷却器16との間に求められる絶縁要求が下がり、二次巻線14を冷却器16に近づけて配置することができるので、二次巻線14の巻線温度を効率よく下げることができる。
【0040】
第一の巻線端子21aと第三の巻線端子21cが電気的かつ熱的に接続され、第二の巻線端子21bと第四の巻線端子21dが電気的かつ熱的に接続されている場合、冷却器16から離れた、上側に配置された二次巻線14の放熱経路を増やすことができる。上側に配置された二次巻線14の放熱経路が増えるので、上側に配置された二次巻線14の巻線温度も効率よく下げることができる。上側に配置された二次巻線14の巻線温度がさらに下がるので、巻線温度の許容値内に巻線温度を収めるのに必要な巻線幅を更に縮めることができるため、トランス3及び電力変換装置100をさらに小型化及び低コスト化することができる。
【0041】
第一の中間タップ端子22aと第二の中間タップ端子22bとが接続された部分、第一の巻線端子21aと第三の巻線端子21cとが接続された部分、及び第二の巻線端子21bと第四の巻線端子21dとが接続された部分の少なくとも一つが、熱伝導性かつ電気絶縁性を有した絶縁部材を介して、冷却器16に熱的に接続されている場合、上側に配置された二次巻線14と下側に配置された二次巻線14の双方に対して冷却経路を設けることができる。双方の二次巻線14に冷却経路が設けられるので、双方の二次巻線14を効率よく冷却することができる。双方の二次巻線14の巻線温度がさらに下がるので、巻線温度の許容値内に巻線温度を収めるのに必要な巻線幅を双方の二次巻線14において縮めることができるため、トランス3及び電力変換装置100をさらに小型化及び低コスト化することができる。
【0042】
第一の二次巻線14aが、一次巻線13に対して冷却器16の側に配置され、樹脂部材15が、第一の二次巻線14aにおける冷却器16の側の面を露出させた露出部26を有し、第一の二次巻線14aが、露出部26において、熱伝導性かつ電気絶縁性を有した絶縁部材を介して、冷却器16に熱的に接続されている場合、第一の二次巻線14aと冷却器16との間の熱抵抗が下がるため、第一の二次巻線14aの巻線温度をさらに下げることができる。巻線温度がさらに下がるため、第一の二次巻線14aが小型化されるので、トランス3及び電力変換装置100を小型化及び低コスト化することができる。
【0043】
実施の形態2.
実施の形態2に係る電力変換装置100について説明する。
図11は実施の形態2に係る電力変換装置100のトランス3を示す斜視図、
図12は電力変換装置100のトランス3を示す別の斜視図、
図13は電力変換装置100のトランス3を示す分解斜視図で、樹脂部材15を取り除いて示した図、
図14は
図11のA-A断面位置で切断した電力変換装置100のトランス3を示す断面図である。実施の形態2に係る電力変換装置100のトランス3は、実施の形態1で示した構成に加えて、第三の一次巻線13c及び第四の一次巻線13dを追加した構成になっている。
【0044】
本実施の形態では、第一の二次巻線14aの冷却器16の側に第三の一次巻線13cを配置し、第二の二次巻線14bの上側コア11bの側に第四の一次巻線13dを配置している。第三の一次巻線13c及び第四の一次巻線13dのそれぞれは、中脚部24に3ターン巻回されている。第一の一次巻線13aは、中脚部24の側とは反対側の端部に、溶接部33eを有し、第二の一次巻線13bは、中脚部24の側とは反対側の端部に、溶接部33fを有する。第三の一次巻線13cは、中脚部24の側の端部に、溶接部33cを有し、第四の一次巻線13dは、中脚部24の側の端部に、溶接部33dを有する。第三の一次巻線13cは、中脚部24の側とは反対側の端部に、巻線端子21gを有し、第四の一次巻線13dは、中脚部24の側とは反対側の端部に、巻線端子21hを有する。溶接部33aと溶接部33cとが溶接により接続され、溶接部33eと溶接部33fとが溶接により接続され、溶接部33bと溶接部33dとが溶接により接続されることで、第一の一次巻線13a、第二の一次巻線13b、第三の一次巻線13c、及び第四の一次巻線13dは、電気的に直列に接続される。実施の形態1で示した構成よりも電力変換装置100の電圧比をより多く必要とする場合、このように一次巻線13を追加して電力変換装置100は構成される。
【0045】
中脚部24に巻回された、一次巻線13の巻線部分及び二次巻線14の巻線部分は、中脚部24の延出方向における一次巻線13の巻線部分及び二次巻線14の巻線部分の中央に対し、対称に配置されている。本実施の形態では、
図14に示すように、中脚部24の延出方向における一次巻線13の巻線部分及び二次巻線14の巻線部分の中央に対し、上側に第二の一次巻線13b、第二の二次巻線14b、第四の一次巻線13dが順に配置され、下側に第一の一次巻線13a、第一の二次巻線14a、第三の一次巻線13cが順に配置される。上側の一次巻線13及び二次巻線14の巻線部分と、下側の一次巻線13及び二次巻線14の巻線部分は、中脚部24の延出方向における一次巻線13の巻線部分及び二次巻線14の巻線部分の中央に対して対称である。
【0046】
このように二次巻線14が一次巻線13に挟まれるように対称に配置することで、巻数比を稼ぎつつ、一次巻線13と二次巻線14とが向かい合う面を増やし、近接効果による突合せ面での電流集中を分散させることができる。突合せ面での電流集中が分散するので、巻線の高周波抵抗及び銅損を低減させることできる。巻線の高周波抵抗及び銅損が低減するため、巻線温度を許容値内に収めるのに必要な巻線幅の拡大を抑制することができる。巻線幅の拡大が抑制されるので、小型化及び低コスト化したトランス3及び電力変換装置100を得ることができる。
【0047】
実施の形態3.
実施の形態3に係る電力変換装置100について説明する。
図15は実施の形態3に係る電力変換装置100のトランス3を示す斜視図、
図16は電力変換装置100のトランス3を示す別の斜視図、
図17は電力変換装置100のトランス3を示す分解斜視図で、樹脂部材15を取り除いて示した図、
図18は電力変換装置100の回路構成の例を示す図である。実施の形態3に係る電力変換装置100のトランス3は、一次巻線13の配置が実施の形態1とは異なる構成になっている。
【0048】
中脚部24に巻回された一次巻線13の巻線部分は、渦巻状で板状に形成され、中脚部24にそれぞれが巻回された第一の一次巻線13a及び第二の一次巻線13bを有する。第一の一次巻線13aと第二の一次巻線13bとは、電気的に接続される。冷却面16aの法線方向に、第一の二次巻線14a、第一の一次巻線13a、第二の二次巻線14b、第二の一次巻線13bの順に配置されている。実施の形態1と同様に、溶接部33aと溶接部33bとが溶接により接続されることで、第一の一次巻線13aと第二の一次巻線13bとは、電気的に直列に接続される。本実施の形態での構成は、実施の形態1に示した電力変換装置100の構成よりも高周波抵抗を低下させるための構成である。
【0049】
実施の形態1で示した構成では、一次巻線13と二次巻線14とが向かい合う突合せ面は2つであった。本実施の形態では、一次巻線13と二次巻線14とが向かい合う突合せ面は3つである。このように構成することで、一次巻線13と二次巻線14との突合せ面がさらに増えるので、巻線の高周波抵抗及び銅損をさらに低減させることができる。巻線の高周波抵抗及び銅損がさらに低減するため、巻線温度を許容値内に収めるのに必要な巻線幅の拡大をさらに抑制することができる。巻線幅の拡大がさらに抑制されるので、小型化及び低コスト化したトランス3及び電力変換装置100を得ることができる。
【0050】
本実施の形態で示す構成は、実施の形態1で示した構成とは異なり、冷却面16aの法線方向に、一次巻線13の配置が二次巻線14に対して非対称である。このように配置した場合、一次巻線13により発生する磁束が二次巻線14に鎖交することによって流れる渦電流は、第一の二次巻線14aと第二の二次巻線14bとで反対方向になる。この場合、渦電流は、
図1に示した二次巻線3bと二次巻線3d、もしくは二次巻線3cと二次巻線3eだけを流れる循環電流となる。この循環電流により発生する損失が、本実施の形態で示す構成においては損失低減効果を相殺する可能性がある。
【0051】
その対策を講じた電力変換装置100の回路構成の例を
図18に示す。
図18に示した回路では、整流回路4は、整流素子であるダイオード4c、4dをさらに備える。ダイオード4c、4dは、ダイオード4a、4bと並列に配置される。ダイオード4a、4b、4c、4dは、二次巻線3e、3d、3c、3bとそれぞれ直列に接続される。このように構成することで、循環電流が抑制されるので、銅損の増加を防ぐことができる。
【0052】
実施の形態4.
実施の形態4に係る電力変換装置100について説明する。
図19は実施の形態4に係る電力変換装置100のトランス3を示す分解斜視図で、樹脂部材15を取り除いて示した図、
図20は電力変換装置100のトランス3を示す平面図で、樹脂部材15及び上側コア11bを取り除いて示した図である。実施の形態4に係る電力変換装置100のトランス3は、一次巻線13の構成が実施の形態1とは異なる構成になっている。
【0053】
一次巻線13の巻線部分は、渦巻状で1枚の板状に形成される。本実施の形態では、一次巻線13は第一の一次巻線13aのみを有し、第一の一次巻線13aは渦巻状に湾曲している。第一の一次巻線13aは、直線部分をつなぎ合わせて渦巻状にした構成でも構わない。一次巻線13である第一の一次巻線13aは、一端が巻線部分の中脚部24の側の端部に接続され、他端が樹脂部材15から露出した配線部18を有する。第一の二次巻線14aは、第一の一次巻線13aに対して冷却器16の側に配置される。中脚部24の延出方向に見て、配線部18の部分は、外部に露出した第三の巻線端子21cの部分及び第四の巻線端子21dの部分と中脚部24との間であって、樹脂部材15に封止された第三の巻線端子21cの部分と第四の巻線端子21dの部分との間に配置されている。外部に露出した第三の巻線端子21cの部分及び第四の巻線端子21dの部分と中脚部24との間であって、樹脂部材15に封止された第三の巻線端子21cの部分と第四の巻線端子21dの部分との間に相当する箇所は、
図20の破線で囲まれた領域27aである。配線部18は、第一の一次巻線13aの中脚部24側の端部を外側に引き出すために配置された配線である。
【0054】
このように構成することで、第一の一次巻線13aと配線部18との接続部付近のZ軸方向の位置を第二の二次巻線14bのZ軸方向の位置よりも低く抑えることができる。そのため、第一の外脚部23a、第二の外脚部23b、及び中脚部24のZ軸方向の長さを短くすることができる。下側コア11a及び上側コア11bのZ軸方向の寸法が削減されるため、小型化及び低コスト化したトランス3及び電力変換装置100を得ることができる。
【0055】
配線部18を配置することにより、領域27aの部分における第二の二次巻線14bの体積が減少することになるが、当該箇所は第三の巻線端子21c、第四の巻線端子21dから第二の中間タップ端子22bへと流れる負荷電流の最短経路から離れた所に位置しているため、元々損失が発生しない部分なので第二の二次巻線14bの体積が減少しても支障はない。
【0056】
実施の形態5.
実施の形態5に係る電力変換装置100について説明する。
図21は実施の形態5に係る電力変換装置100のトランス3を示す斜視図で、樹脂部材15を取り除いて示した図、
図22は電力変換装置100のトランス3の二次巻線を示す斜視図で、トランス3を作製する前の二次巻線板金14cを示す図である。実施の形態5に係る電力変換装置100のトランス3は、二次巻線14の構成が実施の形態1とは異なる構成になっている。
【0057】
本実施の形態では、二次巻線14は、
図22に示した一枚の平板である二次巻線板金14cから形成される。第一の巻線端子21aと第三の巻線端子21cとが第一連結部34aで連結され、第二の巻線端子21bと第四の巻線端子21dとが第二連結部34bで連結されている。第一の二次巻線14aと第二の二次巻線14bとが対向するように、第一連結部34a及び第二連結部34bは、
図21に示すように、断面がU字状に湾曲された板状に形成されている。
【0058】
このように構成することで、第一の巻線端子21aと第三の巻線端子21cとの接続、及び第二の巻線端子21bと第四の巻線端子21dとの接続の工程が不要になるため、電力変換装置100の生産性を向上させることができる。電力変換装置100の生産性が向上するので、電力変換装置100を低コスト化することができる。
【0059】
実施の形態6.
実施の形態6に係る電力変換装置100について説明する。
図23は実施の形態6に係る電力変換装置100のトランス3を示す斜視図、
図24は
図23のB-B断面位置で切断した電力変換装置100のトランス3を示す斜視図、
図25は電力変換装置100のトランス3を示す平面図で、樹脂部材15、上側コア11b、第二の二次巻線14b、及び第二の一次巻線13bを取り除いて示した図である。実施の形態6に係る電力変換装置100のトランス3は、冷却器16が突出部28を有した構成になっている。
【0060】
第一の二次巻線14aは、一次巻線13に対して冷却器16の側に配置される。冷却器16は、中脚部24の延出方向に見て、外部に露出した第一の巻線端子21aの部分及び第二の巻線端子21bの部分と中脚部24との間であって、樹脂部材15に封止された第一の巻線端子21aの部分と第二の巻線端子21bの部分との間に、樹脂部材15の方向に突出した突出部28を有する。外部に露出した第一の巻線端子21aの部分及び第二の巻線端子21bの部分と中脚部24との間であって、樹脂部材15に封止された第一の巻線端子21aの部分と第二の巻線端子21bの部分との間に相当する箇所は、
図25の
図6で囲まれた領域27bである。突出部28は、樹脂部材15を介して一次巻線13に熱的に接続されている。本実施の形態では、樹脂部材15を介して熱的に接続されている一次巻線13は、第一の一次巻線13aである。本実施の形態での構成は、実施の形態1に示した電力変換装置100の構成よりも一次巻線13の冷却能力を向上させた構成である。
【0061】
本実施の形態では、突出部28を冷却器16の巻線隣接部16bに設けているがこれに限るものではない。突出部28を設ける領域27bに巻線隣接部16bがない場合、下側コア11aを配置した冷却面16aに突出部28を設けても構わない。突出部28と樹脂部材15との間には、グリスなどの伝熱部材を塗布して、伝熱部材を介して突出部28と樹脂部材15とを熱的に接続しても構わない。
【0062】
このように構成することで、第一の一次巻線13a、及び第一の一次巻線13aに接続された第二の一次巻線13bと冷却器16との間の熱抵抗を低減することができるので、一次巻線13を効率よく冷却することができる。一次巻線13の巻線温度がさらに下がるので、巻線温度の許容値内に巻線温度を収めるのに必要な巻線幅を一次巻線13において縮めることができるため、トランス3及び電力変換装置100をさらに小型化及び低コスト化することができる。
【0063】
実施の形態7.
実施の形態7に係る電力変換装置100について説明する。
図26は実施の形態7に係る電力変換装置100のトランス3を示す分解斜視図で、樹脂部材15を取り除いて示した図、
図27は電力変換装置100のトランス3を示す斜視図で、樹脂部材15、及び上側コア11b取り除いて示した図である。実施の形態7に係る電力変換装置100のトランス3は、二次巻線14に接続部29a、29bを設けた構成になっている。
【0064】
中脚部24の延出方向に見て、一次巻線13の巻線部分と中脚部24との間に、第一の二次巻線14aと第二の二次巻線14bとを電気的かつ熱的に接続した接続部29a、29bが設けられている。接続部29aは、第二の巻線端子21bの第二の巻線部25bの側の部分と、第四の巻線端子21dの第四の巻線部25dの側の部分とを接続した部分である。接続部29bは、第一の巻線端子21aの第一の巻線部25aの側の部分と、第三の巻線端子21cの第三の巻線部25cの側の部分とを接続した部分である。本実施の形態での構成は、実施の形態1に示した電力変換装置100の構成よりも第二の二次巻線14bの冷却能力を向上させた構成である。
【0065】
本実施の形態では、
図26に示すように、第二の巻線端子21bと第四の巻線端子21dの双方の該当箇所を互いに近づくように折り曲げて接続部29aが形成され、第一の巻線端子21aと第三の巻線端子21cの双方の該当箇所を互いに近づくように折り曲げて接続部29bが形成されているがこれに限るものではない。一方の該当箇所のみを他方の該当箇所に近づくように折り曲げて、双方の該当箇所を接続しても構わない。双方の該当箇所の接続は、例えば、溶接である。
【0066】
このように構成することで、第二の二次巻線14bと冷却器16との間の熱抵抗を低減することができるので、第二の二次巻線14bを効率よく冷却することができる。第二の二次巻線14bの巻線温度がさらに下がるので、巻線温度の許容値内に巻線温度を収めるのに必要な巻線幅を二次巻線14において縮めることができるため、トランス3及び電力変換装置100をさらに小型化及び低コスト化することができる。
【0067】
実施の形態8.
実施の形態8に係る電力変換装置100について説明する。
図28は実施の形態8に係る電力変換装置100のトランス3を示す斜視図で、樹脂部材15を取り除いて示した図、
図29は電力変換装置100のトランス3を示す別の斜視図で、樹脂部材15を取り除いて示した図である。実施の形態8に係る電力変換装置100のトランス3は、上側に設けた二次巻線14に拡張部30a、30b、30cを設けた構成になっている。
【0068】
第一の二次巻線14aは、一次巻線13に対して冷却器16の側に配置される。第二の二次巻線14bにおける第三の巻線部25c及び第四の巻線部25dの一方又は双方は、端部から延出し、樹脂部材15から露出した拡張部を有し、拡張部は、熱伝導性かつ電気絶縁性を有した絶縁部材を介して、冷却器16に熱的に接続されている。本実施の形態では、第三の巻線部25cは、拡張部30b、30cを有し、第四の巻線部25dは、拡張部30aを有する。本実施の形態での構成は、実施の形態1に示した電力変換装置100の構成よりも上側に設けた第二の二次巻線14bの冷却能力を向上させた構成である。
【0069】
拡張部30a、30bは、
図28に示すように、絶縁部材である伝熱シート12aを介して、冷却器16の巻線隣接部16bに熱的に接続されている。拡張部30cは、
図29に示すように、絶縁部材である伝熱シート12bを介して、冷却器16の巻線隣接部16bに熱的に接続されている。このように構成することで、第二の二次巻線14bと冷却器16との間の熱抵抗を低減することができるので、第二の二次巻線14bを効率よく冷却することができる。第二の二次巻線14bの巻線温度がさらに下がるので、巻線温度の許容値内に巻線温度を収めるのに必要な巻線幅を二次巻線14において縮めることができるため、トランス3及び電力変換装置100をさらに小型化及び低コスト化することができる。
【0070】
実施の形態9.
実施の形態9に係る電力変換装置100について説明する。
図30は実施の形態9に係る電力変換装置100のトランス3を示す斜視図、
図31は電力変換装置100のトランス3を示す別の斜視図、
図32は
図30のC-C断面位置で切断した電力変換装置100のトランス3を示す断面図、
図33は実施の形態9に係る別の電力変換装置100のトランス3を示す斜視図で、
図30に示したトランス3の樹脂部材15で封止された部分が中心線32aを中心に180度回転して配置されている図、
図34は別の電力変換装置のトランスを示す別の斜視図で、
図31に示したトランス3の樹脂部材15で封止された部分が中心線32aを中心に180度回転して配置されている図である。実施の形態9に係る電力変換装置100のトランス3は、平滑リアクトル5をトランス3のどちら側にも配置可能な構成になっている。なお、樹脂部材15からX軸側に露出した各端子を折り曲げる方向は、
図30と
図33、
図31と
図34でいずれもZ軸方向になっている。
【0071】
入出力端子の位置が異なる複数種類のDC-DCコンバータの製造において、同じ形状のトランス3を用いる場合、例えば、実施の形態1に示した電力変換装置100の形状では、平滑リアクトル5を接続する第一の中間タップ端子22aと第二の中間タップ端子22bが片側にしか無いため、入出力端子の位置によっては配線の引き回しが長くなる。配線の引き回しが長くなると、DC-DCコンバータは大型化し、コストの増加につながることになる。この課題を解決する構成について説明する。
【0072】
中脚部24に巻回された、一次巻線13の巻線部分と二次巻線14の巻線部分、及び樹脂部材15の配置は、
図32に示すように、中脚部24の延出方向における一次巻線13の巻線部分の中央を通り、中脚部24の延出方向に垂直な基準面31に対して、対称である。このように構成した場合、一次巻線13及び二次巻線14を樹脂部材15で封止したASSYを、
図30に示すように、基準面31において第一の巻線部25aの側と第二の巻線部25bの側とを分けるX軸方向の中心線32aを中心として180度回転させても、磁性コア11に配置することができる。180度回転させてASSYを配置することで、平滑リアクトル5に接続される第一の中間タップ端子22aと第二の中間タップ端子22bの配置を左右反転させることができる。
【0073】
一次巻線13の巻線部分と二次巻線14の巻線部分、及び樹脂部材15の配置を対称にすることで、例えば、入出力端子の位置が異なる複数種類のDC-DCコンバータの製造において、同じ形状のトランス3を用いても平滑リアクトル5とトランス3とを最短経路で配線することができるので、DC-DCコンバータである電力変換装置100を小型化及び低コスト化することができる。
【0074】
第一の巻線端子21a、第二の巻線端子21b、第三の巻線端子21c、第四の巻線端子21d、及び巻線端子21g、21hは、樹脂部材15から突出した方向に対して、上側、あるいは下側のどちらの方向にも折り曲げ可能に設けられている。そのため、ASSYをどのように配置しても、これらの端子をZ軸方向に折り曲げることができる。また本実施の形態では、第一の二次巻線14a、第二の二次巻線14bのどちらを冷却器16の側に配置してもよいように、一次巻線13とは反対側の第一の二次巻線14a及び第二の二次巻線14bの面は、樹脂部材15から露出している。樹脂部材15から露出した部分において、第一の二次巻線14a又は第二の二次巻線14bは、伝熱シートを介して冷却器16に熱的に接続されている。
【0075】
実施の形態10.
実施の形態10に係る電力変換装置100について説明する。
図35は実施の形態10に係る電力変換装置100のトランス3を示す斜視図、
図36は電力変換装置100のトランス3を示す平面図で、樹脂部材15、及び上側コア11b取り除いて示した図である。実施の形態10に係る電力変換装置100のトランス3は、実施の形態9とは異なる構成で、平滑リアクトル5をトランス3のどちら側にも配置可能な構成になっている。
【0076】
第一の二次巻線14aは、第一の巻線部25aの一方の端部と第二の巻線部25bの一方の端部とを接続部35aにて接続した端子である第三の中間タップ端子22cをさらに有する。第二の二次巻線14bは、第三の巻線部25cの一方の端部と第四の巻線部25dの一方の端部とを接続部35bにて接続した端子である第四の中間タップ端子22dをさらに有する。第三の中間タップ端子22cと第四の中間タップ端子22dとは電気的に接続される。中脚部24の延出方向に見て、第一の中間タップ端子22a及び第二の中間タップ端子22bと、第三の中間タップ端子22c及び第四の中間タップ端子22dとは、互いに反対方向に延出している。
【0077】
本実施の形態では、
図36に示すように、第三の巻線部25cの側と第四の巻線部25dの側とを分けるX軸方向に設けた中心線32bに対して、第一の中間タップ端子22a及び第二の中間タップ端子22bと、第三の中間タップ端子22c及び第四の中間タップ端子22dとは、線対称に配置されている。第一の中間タップ端子22aと第二の中間タップ端子22bとは、例えば、締結部材17aにより締結されて、電気的に接続される。第三の中間タップ端子22cと第四の中間タップ端子22dとは、例えば、締結部材17bにより締結されて、電気的に接続される。
図35に示した締結部材17a、17bは、ナットであり、ボルトは省略している。締結部材17a、17bは、伝熱シート12bを介して冷却器16と熱的に接続されている。
【0078】
このように構成することで、平滑リアクトル5に接続される中間タップ端子が、
図36に示すように、トランス3の両側に配置されるため、平滑リアクトル5をトランス3のどちら側にも配置することができる。平滑リアクトル5をトランス3のどちら側にも配置できるため、入出力端子の位置が異なる複数種類のDC-DCコンバータの製造において、同じ形状のトランス3を用いて平滑リアクトル5とトランス3とを最短経路で配線することができるので、DC-DCコンバータである電力変換装置100を小型化及び低コスト化することができる。
【0079】
実施の形態11.
実施の形態11に係る電力変換装置100について説明する。
図37は実施の形態11に係る電力変換装置100のトランス3を示す分解斜視図で、樹脂部材を取り除いて示した図、
図38は電力変換装置100の回路構成の例を示す図、
図39はトランス3の等価回路及びトランス入力端子への正電圧印加時の電流経路を示す図、
図40はトランス3の等価回路及びトランス入力端子への負電圧印加時の電流経路を示す図である。実施の形態11に係る電力変換装置100のトランス3は、実施の形態1から実施の形態10に示した構成と異なり、フェーズシフト駆動による一般的な駆動方法であるPWM駆動方式にて動作可能な構成である。
【0080】
上述した実施の形態1等では、第一の巻線部25aと第三の巻線部25cとは、中脚部24と第一の外脚部23aとの間を貫通し、第二の巻線部25bと第四の巻線部25dとは、中脚部24と第二の外脚部23bとの間を貫通し、第一の巻線部25a、第二の巻線部25b、及び第一の中間タップ端子22aの接続部である第一の接続部としての接続部35aと、第三の巻線部25c、第四の巻線部25d、及び第二の中間タップ端子22bの接続部である第二の接続部としての接続部35bのそれぞれは、磁性コア11を基準に磁性コア11に対して同じ側に配置されている構成であった。このように構成することで、接続部35aと接続部35bとが磁性コア11に対して同じ側に配置されているため、トランスを小型化することができる。しかしながら、PWM駆動方式にて動作可能な構成になっていなかった。
【0081】
本実施の形態では、第一の巻線部25aと第四の巻線部25dとは、中脚部24と第一の外脚部23aとの間を貫通し、第二の巻線部25bと第三の巻線部25cとは、中脚部24と第二の外脚部23bとの間を貫通する。第一の巻線部25a、第二の巻線部25b、及び第一の中間タップ端子22aの接続部である第一の接続部としての接続部35aと、第三の巻線部25c、第四の巻線部25d、及び第二の中間タップ端子22bの接続部である第二の接続部としての接続部35bのそれぞれは、磁性コア11を基準に磁性コア11に対して反対側に配置されている。このように構成することで、一般的な駆動方法であるPWM駆動方式にて動作可能な構成となる。以下、詳細を説明する。
【0082】
図38に示した回路では、
図18に示した回路に加えて平滑リアクトル5が追加され、平滑リアクトル5は、平滑コンデンサ6の正極側電極とトランス3のセンタータップ3fとの間に接続される。
図37に示すように、第二の中間タップ端子22bを磁性コア11の外側を周回するように延長させ、第一の中間タップ端子22aと第二の中間タップ端子22bとは電気的に接続される。第一の巻線部25aと第三の巻線部25c、及び第二の巻線部25bと第四の巻線部25dのそれぞれは、電気的に並列に接続されている。
【0083】
また、第一の巻線端子21aには第一の連結端子21fが形成され、第二の巻線端子21bには第二の連結端子21eが形成され、第三の巻線端子21cには第三の連結端子21jが形成され、第四の巻線端子21dには第四の連結端子21iが形成される。第一の連結端子21fは、
図38に示したダイオード4dに接続され、第二の連結端子21eは、ダイオード4cに接続され、第三の連結端子21jは、ダイオード4bに接続され、第四の連結端子21iは、ダイオード4aに接続される。第一の中間タップ端子22aと第二の中間タップ端子22bとは、平滑リアクトル5に接続される。
【0084】
このように構成することで、
図39及び
図40に示す通り、理想のトランス40aには第一の巻線部25aに該当する二次巻線3b、及び第四の巻線部25dに該当する二次巻線3eが含まれ、理想のトランス40bには第二の巻線部25bに該当する二次巻線3c、及び第三の巻線部25cに該当する二次巻線3dが含まれる。そのため、電気的に並列関係にある巻線が理想のトランス40a、40bのそれぞれに含まれることとなり、一次巻線端子の端部に正電圧、負電圧のどちらが印加された場合であっても、理想のトランス40a、40bの二次巻線両方に負荷電流が流れ、電力伝達が行われることとなる。
【0085】
その結果、本実施の形態で示したトランス3は、一般的な駆動方法であるPWM駆動方式を用いても動作可能となる。但し、実施の形態1~10と異なり、インダクタンス41a、41bよる電流経路維持は行われなくなるため、センタータップ3fと平滑コンデンサ6の正電極との間に平滑リアクトル5を挿入する必要がある。
【0086】
本願は、実施の形態1から10及び実施の形態11にて説明した通り、中脚部24と第一の外脚部23aもしくは第二の外脚部23bの巻線部の組み合わせは並列同士、異なる並列同士のいずれの場合においても、課題を解決することが可能である。
すなわち、第一の巻線部と第三の巻線部もしくは第四の巻線部とは、中脚部と中脚部に対向した一方側の外周コアの部分である第一の外脚部との間を貫通し、第二の巻線部と第三の巻線部もしくは第四の巻線部の内、中脚部と第一の外脚部の間を貫通しない巻線部とは、中脚部と中脚部に対向した他方側の外周コアの部分である第二の外脚部との間を貫通する。実施の形態1から10では、第一の巻線部25aと第三の巻線部25cとが、中脚部24と第一の外脚部23aとの間を貫通し、第二の巻線部25bと第四の巻線部25dとが、中脚部24と第二の外脚部23bとの間を貫通したが、実施の形態11では、第一の巻線部25aと第四の巻線部25dとが、中脚部24と第一の外脚部23aとの間を貫通し、第二の巻線部25bと第三の巻線部25cとが、中脚部24と第二の外脚部23bとの間を貫通する。
【0087】
また本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、一つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも一つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも一つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0088】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
環状の外周コアと、前記外周コアにおける対向する二つの部分の間を接続した柱状の中脚部とを有した磁性コア、前記中脚部に巻回された一次巻線と二次巻線、及び前記一次巻線と前記二次巻線のそれぞれの外部と接続される端子の部分を露出させた状態で前記一次巻線と前記二次巻線とを封止した樹脂部材を有したトランスを備え、
前記二次巻線は、板状に形成され、前記中脚部にそれぞれが巻回された第一の二次巻線及び第二の二次巻線を有し、
前記第一の二次巻線は、第一の巻線部、第二の巻線部、前記第一の巻線部の一方の端部と前記第二の巻線部の一方の端部とを接続した前記端子である第一の中間タップ端子、前記第一の巻線部の他方の端部で前記端子である第一の巻線端子、及び前記第二の巻線部の他方の端部で前記端子である第二の巻線端子を有し、
前記第二の二次巻線は、第三の巻線部、第四の巻線部、前記第三の巻線部の一方の端部と前記第四の巻線部の一方の端部とを接続した前記端子である第二の中間タップ端子、前記第三の巻線部の他方の端部で前記端子である第三の巻線端子、及び前記第四の巻線部の他方の端部で前記端子である第四の巻線端子を有し、
前記第一の中間タップ端子と前記第二の中間タップ端子とは電気的に接続され、前記第一の巻線部と前記第三の巻線部、及び前記第二の巻線部と前記第四の巻線部のそれぞれは、電気的に並列に接続されており、
前記第一の巻線部と前記第三の巻線部もしくは前記第四の巻線部とは、前記中脚部と前記中脚部に対向した一方側の前記外周コアの部分である第一の外脚部との間を貫通し、前記第二の巻線部と前記第三の巻線部もしくは前記第四の巻線部の内、前記中脚部と前記第一の外脚部の間を貫通しない巻線部とは、前記中脚部と前記中脚部に対向した他方側の前記外周コアの部分である第二の外脚部との間を貫通し、
前記第一の二次巻線と前記第二の二次巻線との間に前記一次巻線の少なくとも一部が配置されている電力変換装置。
(付記2)
前記トランスを冷却する冷却面を有した冷却器を備え、
前記中脚部は、前記冷却面の法線方向に延出し、
前記第一の二次巻線及び前記第二の二次巻線の一方は、前記一次巻線に対して前記冷却器の側に配置されている付記1に記載の電力変換装置。
(付記3)
前記中脚部に巻回された前記一次巻線の巻線部分の全てが、前記第一の二次巻線と前記第二の二次巻線との間に配置されている付記2に記載の電力変換装置。
(付記4)
前記中脚部に巻回された、前記一次巻線の巻線部分及び前記二次巻線の巻線部分は、前記中脚部の延出方向における前記一次巻線の巻線部分及び前記二次巻線の巻線部分の中央に対し、対称に配置されている付記1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記5)
前記第一の巻線端子と前記第三の巻線端子は電気的かつ熱的に接続され、前記第二の巻線端子と前記第四の巻線端子は電気的かつ熱的に接続されている付記3又は4に記載の電力変換装置。
(付記6)
前記中脚部に巻回された前記一次巻線の巻線部分は、渦巻状で板状に形成され、前記中脚部にそれぞれが巻回された第一の一次巻線及び第二の一次巻線を有し、
前記第一の一次巻線と前記第二の一次巻線とは、電気的に接続され、
前記冷却面の法線方向に、前記第一の二次巻線、前記第一の一次巻線、前記第二の二次巻線、前記第二の一次巻線の順に配置されている付記1又は2に記載の電力変換装置。
(付記7)
前記トランスを冷却する冷却面を有した冷却器を備え、
前記第一の中間タップ端子と前記第二の中間タップ端子とが接続された部分、前記第一の巻線端子と前記第三の巻線端子とが接続された部分、及び前記第二の巻線端子と前記第四の巻線端子とが接続された部分の少なくとも一つは、熱伝導性かつ電気絶縁性を有した絶縁部材を介して、前記冷却器に熱的に接続されている付記5に記載の電力変換装置。
(付記8)
前記一次巻線の巻線部分は、渦巻状で1枚の板状に形成され、
前記一次巻線は、一端が前記巻線部分の前記中脚部の側の端部に接続され、他端が前記樹脂部材から露出した配線部を有し、
前記第一の二次巻線は、前記一次巻線に対して前記冷却器の側に配置され、
前記中脚部の延出方向に見て、前記配線部の部分は、外部に露出した前記第三の巻線端子の部分及び前記第四の巻線端子の部分と前記中脚部との間であって、前記樹脂部材に封止された前記第三の巻線端子の部分と前記第四の巻線端子の部分との間に配置されている付記1から7のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記9)
前記第一の二次巻線は、前記一次巻線に対して前記冷却器の側に配置され、
前記冷却器は、前記中脚部の延出方向に見て、外部に露出した前記第一の巻線端子の部分及び前記第二の巻線端子の部分と前記中脚部との間であって、前記樹脂部材に封止された前記第一の巻線端子の部分と前記第二の巻線端子の部分との間に、前記樹脂部材の方向に突出した突出部を有し、
前記突出部は、前記樹脂部材を介して前記一次巻線に熱的に接続されている付記2又は3又は5に記載の電力変換装置。
(付記10)
前記中脚部の延出方向に見て、前記一次巻線の巻線部分と前記中脚部との間に、前記第一の二次巻線と前記第二の二次巻線とを電気的かつ熱的に接続した接続部が設けられている付記1から9のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記11)
前記第一の二次巻線は、前記一次巻線に対して前記冷却器の側に配置され、
前記樹脂部材は、前記第一の二次巻線における前記冷却器の側の面を露出させた露出部を有し、
前記第一の二次巻線は、前記露出部において、熱伝導性かつ電気絶縁性を有した絶縁部材を介して、前記冷却器に熱的に接続されている付記2又は3又は5に記載の電力変換装置。
(付記12)
前記トランスを冷却する冷却面を有した冷却器を備え、
前記第一の二次巻線は、前記一次巻線に対して前記冷却器の側に配置され、
前記第二の二次巻線における前記第三の巻線部及び前記第四の巻線部の一方又は双方は、端部から延出し、前記樹脂部材から露出した拡張部を有し、
前記拡張部は、熱伝導性かつ電気絶縁性を有した絶縁部材を介して、前記冷却器に熱的に接続されている付記1又は3又は5に記載の電力変換装置。
(付記13)
前記中脚部に巻回された、前記一次巻線の巻線部分と前記二次巻線の巻線部分、及び樹脂部材の配置は、前記中脚部の延出方向における前記一次巻線の巻線部分の中央を通り前記中脚部の延出方向に垂直な基準面に対して、対称である付記1から12のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記14)
前記第一の二次巻線は、前記第一の巻線部の一方の端部と前記第二の巻線部の一方の端部とを接続した前記端子である第三の中間タップ端子をさらに有し、
前記第二の二次巻線は、前記第三の巻線部の一方の端部と前記第四の巻線部の一方の端部とを接続した前記端子である第四の中間タップ端子をさらに有し、
前記第三の中間タップ端子と前記第四の中間タップ端子とは電気的に接続され、
前記中脚部の延出方向に見て、
前記第一の中間タップ端子及び前記第二の中間タップ端子と、前記第三の中間タップ端子及び前記第四の中間タップ端子とは、互いに反対方向に延出している付記1から13のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記15)
前記第一の巻線部と前記第三の巻線部とは、前記中脚部と前記第一の外脚部との間を貫通し、前記第二の巻線部と前記第四の巻線部とは、前記中脚部と前記第二の外脚部との間を貫通し、
前記第一の巻線部、前記第二の巻線部、及び前記第一の中間タップ端子の接続部である第一の接続部と、前記第三の巻線部、前記第四の巻線部、及び前記第二の中間タップ端子の接続部である第二の接続部のそれぞれは、前記磁性コアを基準に前記磁性コアに対して同じ側に配置されている付記1から14のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記16)
前記第一の巻線端子と前記第三の巻線端子とが第一連結部で連結され、前記第二の巻線端子と前記第四の巻線端子とが第二連結部で連結され、
前記第一の二次巻線と前記第二の二次巻線とが対向するように、
前記第一連結部及び前記第二連結部は、断面がU字状に湾曲された板状に形成されている付記15に記載の電力変換装置。
(付記17)
前記第一の巻線部と前記第四の巻線部とは、前記中脚部と前記第一の外脚部との間を貫通し、前記第二の巻線部と前記第三の巻線部とは、前記中脚部と前記第二の外脚部との間を貫通し、
前記第一の巻線部、前記第二の巻線部、及び前記第一の中間タップ端子の接続部である第一の接続部と、前記第三の巻線部、前記第四の巻線部、及び前記第二の中間タップ端子の接続部である第二の接続部のそれぞれは、前記磁性コアを基準に前記磁性コアに対して反対側に配置されている付記1から14のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【符号の説明】
【0089】
1 入力コンデンサ、2 インバータ回路、2a、2b、2c、2d 半導体スイッチング素子、3 トランス、3a 一次巻線、3b、3c、3d、3e 二次巻線、3f センタータップ、4 整流回路、4a、4b、4c、4d ダイオード、5 平滑リアクトル、6 平滑コンデンサ、11 磁性コア、11a 下側コア、11b 上側コア、12a、12b 伝熱シート、13 一次巻線、13a 第一の一次巻線、13b 第二の一次巻線、13c 第三の一次巻線、13d 第四の一次巻線、14 二次巻線、14a 第一の二次巻線、14b 第二の二次巻線、14c 二次巻線板金、15 樹脂部材、16 冷却器、16a 冷却面、16b 巻線隣接部、17a、17b 締結部材、18 配線部、21a 第一の巻線端子、21b 第二の巻線端子、21c 第三の巻線端子、21d 第四の巻線端子、21e 第二の連結端子、21f 第一の連結端子、21g、21h 巻線端子、21i 第四の連結端子、21j 第三の連結端子、22a 第一の中間タップ端子、22b 第二の中間タップ端子、22c 第三の中間タップ端子、22d 第四の中間タップ端子、23a 第一の外脚部、23b 第二の外脚部、24 中脚部、25a 第一の巻線部、25b 第二の巻線部、25c 第三の巻線部、25d 第四の巻線部、26 露出部、27a、27b 領域、28 突出部、29a、29b 接続部、30a、30b、30c 拡張部、31 基準面、32a、32b 中心線、33a、33b、33c、33d、33e、33f 溶接部、34a 第一連結部、34b 第二連結部、35a、35b 接続部、40a、40b トランス、41a、41b インダクタンス、100 電力変換装置