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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134966
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】制御方法、制御装置、及び車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/26 20190101AFI20240927BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240927BHJP
   B60L 58/27 20190101ALI20240927BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20240927BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240927BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240927BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20240927BHJP
   H01M 10/637 20140101ALI20240927BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240927BHJP
   H01M 10/6571 20140101ALI20240927BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240927BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20240927BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240927BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B60L58/26
B60L50/60
B60L58/27
B60L58/12
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/633
H01M10/637
H01M10/615
H01M10/6571
H01M10/6556
H01M10/6568
H02J7/00 B
H02J7/04 L
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045438
(22)【出願日】2023-03-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】大垣 徹
【テーマコード(参考)】
5G503
5H031
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA08
5G503CB11
5H031AA09
5H031HH01
5H031HH06
5H031KK03
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC12
5H125BC05
5H125BC19
5H125EE25
5H125EE27
5H125FF24
5H125FF27
(57)【要約】
【課題】バッテリを適切に温調しつつ、バッテリから所望の電力を消費することを可能とする。
【解決手段】制御装置17は、バッテリ11の温度に基づく温調制御と、バッテリ11の残容量に応じた廃電制御と、を実行可能に構成され、温調制御及び廃電制御の実行条件が成立した場合に、温調制御の目標値である目標温調量Qと、廃電制御の目標値である目標電力消費量Eと、冷却装置15aの単位電力あたりの冷却量である第1効率ηChillerと、加温装置15bの単位電力あたりの加温量である第2効率ηECHとに基づいて、冷却装置15aによる冷却量QChiller及び加温装置15bによる加温量QECHを導出し、導出した冷却量QChiller及び加温量QECHに基づいて、冷却装置15aによる冷却及び加温装置15bによる加温を行わせることにより温調制御及び廃電制御を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを冷却可能な冷却装置と、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを加温可能な加温装置と、を備える車両を制御するコンピュータが行う制御方法であって、
前記コンピュータは、
前記バッテリの温度に基づいて、前記バッテリを所定の温度域に維持するように前記冷却装置による冷却及び/又は前記加温装置による加温を行う温調制御と、
前記バッテリの残容量に応じて、所定量の電力が消費されるように前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行う廃電制御と、を実行可能に構成され、
前記コンピュータが、
前記温調制御及び前記廃電制御の実行条件が成立した場合に、前記温調制御の目標値である目標温調量と、前記廃電制御の目標値である目標電力消費量と、前記冷却装置の単位電力あたりの冷却量である第1効率と、前記加温装置の単位電力あたりの加温量である第2効率とに基づいて、前記冷却装置による冷却量及び前記加温装置による加温量を導出し、
導出した前記冷却量及び前記加温量に基づいて、前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行わせることにより前記温調制御及び前記廃電制御を実行する、
処理を行う、制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
前記冷却量及び前記加温量を導出する処理では、
前記冷却量と前記加温量との和が前記目標温調量となり、且つ、前記冷却装置による電力消費量と前記加温装置による電力消費量と和が前記目標電力消費量となるような前記冷却量及び前記加温量を導出する、
制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
導出した前記冷却量及び前記加温量のうちの少なくとも一方が成立困難な値である場合に、前記温調制御及び前記廃電制御のうちのいずれか一方を実行する、
処理をさらに行う、制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
前記温調制御及び前記廃電制御のうちのいずれか一方を実行する処理では、
前記バッテリの温度が第1閾値未満又は前記バッテリの温度が第2閾値以上である場合に、前記温調制御及び前記廃電制御のうちの前記温調制御のみを実行し、
前記第1閾値は、前記温度域の下限値よりも小さく、
前記第2閾値は、前記温度域の上限値よりも大きい、
制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
前記温調制御及び前記廃電制御のうちのいずれか一方を実行する処理では、
前記バッテリの温度が前記第1閾値以上且つ前記第2閾値未満の場合に、前記温調制御及び前記廃電制御のうちの前記廃電制御のみを実行する、
制御方法。
【請求項6】
バッテリと、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを冷却可能な冷却装置と、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを加温可能な加温装置と、を備える車両を制御する制御装置であって、
前記制御装置は、
前記バッテリの温度に基づいて、前記バッテリを所定の温度域に維持するように前記冷却装置による冷却及び/又は前記加温装置による加温を行う温調制御と、
前記バッテリの残容量に応じて、所定量の電力が消費されるように前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行う廃電制御と、を実行可能に構成され、
前記温調制御及び前記廃電制御の実行条件が成立した場合に、前記温調制御の目標値である目標温調量と、前記廃電制御の目標値である目標電力消費量と、前記冷却装置の単位電力あたりの冷却量である第1効率と、前記加温装置の単位電力あたりの加温量である第2効率とに基づいて、前記冷却装置による冷却量及び前記加温装置による加温量を導出し、
導出した前記冷却量及び前記加温量に基づいて、前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行わせることにより前記温調制御及び前記廃電制御を実行する、
処理を行う、制御装置。
【請求項7】
バッテリと、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを冷却可能な冷却装置と、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを加温可能な加温装置と、制御装置と、を備える車両であって、
前記制御装置は、
前記バッテリの温度に基づいて、前記バッテリを所定の温度域に維持するように前記冷却装置による冷却及び/又は前記加温装置による加温を行う温調制御と、
前記バッテリの残容量に応じて、所定量の電力が消費されるように前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行う廃電制御と、を実行可能に構成され、
前記温調制御及び前記廃電制御の実行条件が成立した場合に、前記温調制御の目標値である目標温調量と、前記廃電制御の目標値である目標電力消費量と、前記冷却装置の単位電力あたりの冷却量である第1効率と、前記加温装置の単位電力あたりの加温量である第2効率とに基づいて、前記冷却装置による冷却量及び前記加温装置による加温量を導出し、
導出した前記冷却量及び前記加温量に基づいて、前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行わせることにより前記温調制御及び前記廃電制御を実行する、
処理を行う、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御方法、制御装置、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の気候変動に対する具体的な対策として、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化している。自動車等の車両においても、CO2排出量の削減やエネルギー効率の向上が要求され、駆動源の電動化が進んでいる。例えば、駆動輪を駆動する駆動源としてのモータ(「トラクションモータ」とも称される)と、このモータに電力を供給する電源としてのバッテリとを備える車両(例えば電気自動車又はハイブリッド電気自動車)が開発されている。
【0003】
このような車両には、制動時にトラクションモータを発電機として機能させ、発電された電力によってバッテリを充電するようにしたものがある。また、このような車両には、バッテリの残容量が所定値を超えたとき、トラクションモータによる回生量を制限することで、バッテリを過充電から保護するようにしたものもある。
【0004】
トラクションモータによる回生量が制限されると、回生制動力が通常よりも弱まり、ブレーキフィーリングの変化による違和感を運転者に与え得る。一方、ブレーキフィーリングの変化を抑えることを優先して回生量の制限をなくすと、過充電によるバッテリの劣化を招く。そこで、下記特許文献1には、蓄電装置の残容量が所定値以上の状態で電動機による回生制動(回生発電)が行われているものと判断した場合に、蓄電装置の電力を積極的に消費するための空調装置の運転(廃電運転)を実行するようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-119291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バッテリは、出力性能の確保や劣化抑制の観点から、適切な温度域に温調することが望まれる。従来技術にあっては、バッテリの温調と、バッテリの電力を積極的に消費させる廃電とを両立させる観点から、改善の余地があった。
【0007】
本発明は、バッテリを適切に温調しつつ、バッテリから所望の電力を消費することを可能とする制御方法、制御装置、及び車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
バッテリと、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを冷却可能な冷却装置と、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを加温可能な加温装置と、を備える車両を制御するコンピュータが行う制御方法であって、
前記コンピュータは、
前記バッテリの温度に基づいて、前記バッテリを所定の温度域に維持するように前記冷却装置による冷却及び/又は前記加温装置による加温を行う温調制御と、
前記バッテリの残容量に応じて、所定量の電力が消費されるように前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行う廃電制御と、を実行可能に構成され、
前記コンピュータが、
前記温調制御及び前記廃電制御の実行条件が成立した場合に、前記温調制御の目標値である目標温調量と、前記廃電制御の目標値である目標電力消費量と、前記冷却装置の単位電力あたりの冷却量である第1効率と、前記加温装置の単位電力あたりの加温量である第2効率とに基づいて、前記冷却装置による冷却量及び前記加温装置による加温量を導出し、
導出した前記冷却量及び前記加温量に基づいて、前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行わせることにより前記温調制御及び前記廃電制御を実行する、
処理を行う、制御方法である。
【0009】
また、本発明の他の一態様は、
バッテリと、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを冷却可能な冷却装置と、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを加温可能な加温装置と、を備える車両を制御する制御装置であって、
前記制御装置は、
前記バッテリの温度に基づいて、前記バッテリを所定の温度域に維持するように前記冷却装置による冷却及び/又は前記加温装置による加温を行う温調制御と、
前記バッテリの残容量に応じて、所定量の電力が消費されるように前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行う廃電制御と、を実行可能に構成され、
前記温調制御及び前記廃電制御の実行条件が成立した場合に、前記温調制御の目標値である目標温調量と、前記廃電制御の目標値である目標電力消費量と、前記冷却装置の単位電力あたりの冷却量である第1効率と、前記加温装置の単位電力あたりの加温量である第2効率とに基づいて、前記冷却装置による冷却量及び前記加温装置による加温量を導出し、
導出した前記冷却量及び前記加温量に基づいて、前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行わせることにより前記温調制御及び前記廃電制御を実行する、
処理を行う、制御装置である。
【0010】
また、本発明の他の一態様は、
バッテリと、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを冷却可能な冷却装置と、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを加温可能な加温装置と、制御装置と、を備える車両であって、
前記制御装置は、
前記バッテリの温度に基づいて、前記バッテリを所定の温度域に維持するように前記冷却装置による冷却及び/又は前記加温装置による加温を行う温調制御と、
前記バッテリの残容量に応じて、所定量の電力が消費されるように前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行う廃電制御と、を実行可能に構成され、
前記温調制御及び前記廃電制御の実行条件が成立した場合に、前記温調制御の目標値である目標温調量と、前記廃電制御の目標値である目標電力消費量と、前記冷却装置の単位電力あたりの冷却量である第1効率と、前記加温装置の単位電力あたりの加温量である第2効率とに基づいて、前記冷却装置による冷却量及び前記加温装置による加温量を導出し、
導出した前記冷却量及び前記加温量に基づいて、前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行わせることにより前記温調制御及び前記廃電制御を実行する、
処理を行う、車両である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バッテリを適切に温調しつつ、バッテリから所望の電力を消費することが可能な制御方法、制御装置、及び車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】温調対象となるバッテリ11を搭載する車両10を示す図である。
図2】バッテリ11を温調する温調装置15の一例を示す図である。
図3】車両10の制御装置17が実行する処理の一例を示すフローチャート(その1)である。
図4】車両10の制御装置17が実行する処理の一例を示すフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の制御方法、制御装置、及び車両の一実施形態について詳細に説明する。図面は、符号の向きに見るものとする。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではなく、また、実施形態で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち2つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、以下では、同一又は類似の要素には同一又は類似の符号を付して、その説明を適宜省略又は簡略化することがある。
【0014】
[車両]
まず、本発明の制御方法による温調(温度調節)対象となるバッテリを搭載する車両の一例について説明する。図1に示すように、本実施形態の車両10は、充放電可能な二次電池であるバッテリ11と、バッテリ11の電力が供給されることによって駆動輪DWを駆動可能なモータ13と、バッテリ11とモータ13との間で授受される電力を変換する電力変換装置12と、を備える電気自動車である。
【0015】
バッテリ11は、例えば、外部電源PSから受け付けた電力Pによって充電可能に構成される。外部電源PSは、例えば、所定の電圧(例えば100~200[V])且つ所定の周波数(例えば50~60[Hz])を有する交流を供給する商用電源である。
【0016】
具体的に説明すると、車両10は、外部電源PSと電気的に接続可能に構成される。車両10と外部電源PSとの電気的な接続は、物理的なコネクタやケーブルなどによって実現されてもよいし、非接触の電力伝送(Wireless Power Transfer)によって実現されてもよい。非接触の電力伝送を採用した場合、その電力伝送の方式としては、電磁誘導型、磁気共鳴型、電磁誘導型及び磁気共鳴型の組み合わせなどを用いることができる。
【0017】
外部電源PSから受け付けた電力Pは、例えば、車両10が備える充電器(図示省略)によって交流から直流へ変換されるとともにバッテリ11の充電に適した電圧へ変換された後に、バッテリ11へ供給される。これにより、車両10は、外部電源PSから受け付けた電力Pによってバッテリ11を充電することができる。
【0018】
バッテリ11は、複数の蓄電セルを直列接続することで高電圧(例えば100~400[V])を出力可能に構成され、電力変換装置12を介してモータ13と接続される。バッテリ11の蓄電セルとしては、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などを用いることができる。また、バッテリ11には、例えば、現在のバッテリ11の温度(以下、「バッテリ温度」とも称する)を検出する温度センサ11aが設けられており、温度センサ11aによって検出されたバッテリ温度を示す検出信号が後述の制御装置17へ送られるようになっている。これにより、制御装置17は、温度センサ11aによって検出されたバッテリ温度を取得可能である。
【0019】
電力変換装置12は、インバータを含んで構成され、バッテリ11から出力される直流を交流へ変換し、変換した交流を、交流モータ(例えば三相交流モータ)によって実現されるモータ13へ供給する。また、電力変換装置12は、例えばDC/DCコンバータをさらに含んで構成され、バッテリ11とモータ13との間で授受される電力の電圧を変換してもよい。
【0020】
モータ13は、車両10が備える動力伝達装置(図示省略)を介して駆動輪DWと連結され、電力が供給されることによって車両10を走行させる駆動力(走行用の駆動力)Dを駆動輪DWへ出力する。したがって、車両10は、バッテリ11の電力をモータ13へ供給することによってモータ13が出力する駆動力によって走行することができる。すなわち、モータ13は、いわゆる「トラクションモータ」である。
【0021】
また、モータ13は、車両10の制動に伴って回生発電を行い、発電した電力(交流)を電力変換装置12へ出力することもできる。この場合、電力変換装置12は、モータ13から出力される交流を直流に変換し、変換した直流をバッテリ11へ供給する。これにより、車両10は、車両10の制動に伴ってモータ13が発電した電力によってバッテリ11を充電することもできる。
【0022】
さらに、車両10は、バッテリ11を温調可能な温調装置15と、車両10の走行をナビゲートするナビゲーション装置16と、車両10全体を統括制御する制御装置17と、を備える。
【0023】
温調装置15は、制御装置17の制御に従ってバッテリ11の温調を行う。本実施形態では、温調装置15は、バッテリ11を冷却可能なチラーとしての冷却装置15aと、バッテリ11を加温可能なヒータとしての加温装置15bとを備え、バッテリ11の温調として、バッテリ11の冷却と加温とを実行可能に構成される。
【0024】
ナビゲーション装置16は、例えば、車両10の現在位置を特定可能なGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を含んで構成され、GNSS受信機により特定された現在位置から、車両10のユーザ(例えば運転者)によって設定された目的地までの経路(以下、「誘導経路」とも称する)を、あらかじめ記憶された地図データなどを参照して決定する。このとき、ナビゲーション装置16は、例えば、目的地までの途中でバッテリ11の残容量(以下、「SOC」とも称する。SOC:State Of Charge)が所定値以下となることが予測されると、バッテリ11を充電可能な充電設備(例えば、いわゆる充電ステーション)を経由地として含む誘導経路に決定する。
【0025】
そして、ナビゲーション装置16は、誘導経路を決定すると、決定した誘導経路を車両10のディスプレイ(不図示)などに表示させることによってユーザに案内する。これにより、車両10は、誘導経路に沿って走行し得る。すなわち、誘導経路は、車両10が走行する予定の経路(以下、「走行予定経路」とも称する)となる。また、ナビゲーション装置16は、決定した誘導経路、すなわち走行予定経路を示す情報を、後述の制御装置17へ出力してもよい。
【0026】
制御装置17は、電力変換装置12、モータ13、及び温調装置15を含む車両10全体を統括制御するコンピュータであり、本発明の制御装置の一例である。制御装置17は、例えば、ECU(Electric Control Unit)によって実現される。なお、制御装置17は、1つのECUによって実現されてもよいし、複数のECUが協調動作することによって実現されてもよい。
【0027】
制御装置17は、処理部17a、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの記憶部17b、及び制御装置17の内部と外部とのデータの入出力を制御するI/F部17c(インタフェース部)を備える。
【0028】
処理部17aは、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサであり、記憶部17bに記憶されたプログラムを実行する。記憶部17bには、処理部17aが実行するプログラムのほか、処理部17aが処理に使用するデータも格納される。例えば、制御装置17は、記憶部17bに記憶されたプログラムを処理部17aが実行することにより、各種制御を実行する。制御装置17による制御の詳細については後述するため、ここでの説明を省略する。
【0029】
[温調装置の一例]
図2に示すように、温調装置15は、例えばLLC(Long Life Coolant)などの冷却水によって実現される温調媒体Wを循環させることにより、バッテリ11を温調する。図2に示す例では、温調媒体Wの循環経路(図2中、太実線で示す矢印)における、バッテリ11の上流側に冷却装置15a及び加温装置15bが設けられ、バッテリ11の下流側にポンプ15pが設けられている。ポンプ15pは、温調媒体Wを圧送する電動ポンプであり、制御装置17によって制御される。
【0030】
冷却装置15aは、例えば、不図示のラジエータを備え、当該ラジエータを介した外気との熱交換により温調媒体Wを冷却可能である。一方、加温装置15bは、例えば、不図示の電気ヒータを備え、当該電気ヒータへの電力供給を制御することにより、温調媒体Wの加温を制御可能である。
【0031】
一例として、本実施形態では、冷却装置15aと加温装置15bとの間に、三方弁などによって実現される流路切替弁15vが設けられている。流路切替弁15vは、加温装置15bからの温調媒体Wの流路を、実線矢印で示すように冷却装置15aに導く第1流路1fと、破線矢印で示すように冷却装置15aを迂回させる第2流路2fとに切り替え可能に構成される。
【0032】
加温装置15bからの温調媒体Wの流路が第1流路1fの場合、温調媒体Wは、冷却装置15aで冷却されてバッテリ11に供給される。一方、第2流路2fの場合、加温装置15bからの温調媒体Wは、冷却装置15aを迂回するため、冷却されずにバッテリ11に供給される。流路切替弁15vは、例えば電気的に制御可能な電磁弁として構成され、制御装置17によって制御される。
【0033】
制御装置17は、温調装置15によるバッテリ11の温調としてバッテリ11の冷却を行う場合には、加温装置15bの電気ヒータに電力を供給しないようにする一方で冷却装置15aを作動させ、さらに、加温装置15bからの温調媒体Wの流路が第1流路1fとなるように流路切替弁15vを制御すればよい。また、制御装置17は、温調装置15によるバッテリ11の温調としてバッテリ11の加温を行う場合には、加温装置15bの電気ヒータに電力を供給するようにしたうえで、加温装置15bからの温調媒体Wの流路が第2流路2fとなるように流路切替弁15vを制御すればよい。なお、ここで説明した温調装置15の構成はあくまで一例であって、これに限られない。温調装置15は、制御装置17による制御に従ってバッテリ11を冷却及び加温できるものであればよく、その具体的な構成は特に限定されない。
【0034】
[制御装置]
制御装置17は、バッテリ温度に基づいて、バッテリ11を所定の温度域(以下、「目標温度域」とも称する)に維持するように冷却装置15aによる冷却及び/又は加温装置15bによる加温を行う温調制御を実行する。より具体的には、制御装置17は、例えば、バッテリ温度が目標温度域外の温度(すなわち目標温度域の上限温度よりも高い温度、又は目標温度域の下限温度よりも低い温度)となったことに基づいて、温調制御を実行する。すなわち、温調制御の実行条件は、例えば、バッテリ温度が目標温度域外の温度となることである。このように、制御装置17が、バッテリ温度に基づいて温調制御を適宜実行することで、バッテリ11が目標温度域に対して極端に高温又は低温になるのを抑制し、バッテリ11の出力性能を確保したり劣化を抑制したりすることが可能となる。
【0035】
また、制御装置17は、バッテリ11の残容量(すなわちSOC)に応じて、所定量の電力が消費されるように冷却装置15aによる冷却及び加温装置15bによる加温を行う廃電制御を実行する。より具体的には、制御装置17は、例えば、バッテリ11のSOCが所定の閾値(例えば90[%])を超えたことに基づいて、廃電制御を実行する。すなわち、廃電制御の実行条件は、例えば、バッテリ11のSOCが所定の閾値を超えることである。このように、制御装置17が、バッテリ11のSOCに基づいて廃電制御を適宜実行することで、車両10の制動時にモータ13によって発電される電力をバッテリ11が適宜受け入れ可能な状態としておくことができる。これにより、車両10の制動時にモータ13に回生発電させ、当該回生発電によって発生した電力でバッテリ11を充電することを可能にし、また、当該回生発電によって発生する制動力によって車両10を制動させることを可能にする。
【0036】
ところで、温調制御及び廃電制御の実行条件が同時期にそれぞれ成立することも考えられる。このように温調制御及び廃電制御の実行条件が成立した場合、仮に、温調制御を優先し、温調制御を実行して廃電制御を実行しないようにすると、バッテリ11のSOCが高くなり過ぎるおそれがある。一方、温調制御及び廃電制御の実行条件が成立した場合、廃電制御を優先し、廃電制御を実行して温調制御を実行しないようにすると、バッテリ温度を適切な温度域に維持できなくなるおそれがある。したがって、温調制御及び廃電制御の実行条件が成立した場合には、温調制御及び廃電制御を両立することが望まれる。
【0037】
そこで、制御装置17は、温調制御及び廃電制御の実行条件が成立した場合に、温調制御の目標値である目標温調量Qと、廃電制御の目標値である目標電力消費量Eと、冷却装置15aの単位電力あたりの冷却量である第1効率ηChillerと、加温装置15bの単位電力あたりの加温量である第2効率ηECHとに基づいて、冷却装置15aによる冷却量QChiller及び加温装置15bによる加温量QECHを導出する。そして、制御装置17は、導出された冷却量QChiller及び加温量QECHに基づいて、冷却装置15aによる冷却及び加温装置15bによる加温を行わせることにより温調制御及び廃電制御を実行する。これにより、冷却装置15aによる冷却及び加温装置15bによる加温によって目標温調量Qの温調を行うことを可能にしつつ、当該温調によって目標電力消費量Eに相当する電力を消費することを可能にする。したがって、温調制御及び廃電制御を両立でき、バッテリ11を適切に温調しつつ、バッテリ11から所望の電力を消費することが可能となる。
【0038】
より具体的には、温調制御の目標値である目標温調量Qは、当該温調制御における冷却量QChiller及び加温量QECHを用いて、例えば、下記(1)式のようにあらわすことができる。
【0039】
【数1】
【0040】
また、廃電制御の目標値である目標電力消費量Eは、冷却装置15aの第1効率ηChiller、加温装置15bの第2効率ηECH、冷却量QChiller、及び加温量QECHを用いて、例えば、下記(2)式のようにあらわすことができる。
【0041】
【数2】
【0042】
上記(1)式及び(2)式から、冷却量QChillerは、例えば、下記(3)式のようにあらわすことができる。また、加温量QECHは、例えば、下記(4)式のようにあらわすことができる。
【0043】
【数3】
【0044】
【数4】
【0045】
温調制御及び廃電制御の実行条件が成立した場合、制御装置17は、例えば、上記(3)式を用いて冷却量QChillerを、上記(4)式を用いて加温量QECHをそれぞれ導出する。これにより、制御装置17は、温調制御によってバッテリ11を温調することによる電力消費が廃電制御の目標電力消費量Eとなるような冷却量QChiller及び加温量QECHを求めることができる。したがって、温調制御及び廃電制御を両立することが可能となる。
【0046】
なお、冷却量QChiller及び加温量QECHの導出に際し、目標温調量Qとしては、例えば、あらかじめ用意されたマップ(情報)や計算式などから、現在のバッテリ温度やバッテリ11の入出力電力などに基づき導出された値が用いられる。また、目標電力消費量Eとしては、例えば、あらかじめ用意されたマップや計算式などから、現在のバッテリのSOCやバッテリ11の入出力電力などに基づき導出された値が用いられる。そして、冷却装置15aの第1効率ηChiller、及び加温装置15bの第2効率ηECHとしては、例えば、車両10の製造者によりあらかじめ設定された値が用いられる。
【0047】
[制御装置が実行する処理の一例]
次に、図3及び図4を参照しながら、制御装置17が実行する処理の一例について説明する。制御装置17は、例えば、車両10のイグニッション電源がオンであるときに、図3及び図4に示す一連の処理を所定の周期で繰り返し実行する。
【0048】
まず、制御装置17は、温調制御の実行条件が成立したか否かを判定する(ステップS1)。温調制御の実行条件が成立していないと判定した場合(ステップS1:NO)、制御装置17は、廃電制御の実行条件が成立したか否かを判定する(ステップS2)。廃電制御の実行条件が成立していないと判定した場合(ステップS2:NO)、制御装置17は、図3及び図4に示す一連の処理を終了する。
【0049】
一方、廃電制御の実行条件が成立したと判定した場合(ステップS2:YES)、制御装置17は、廃電制御を実行して(ステップS3)、図3及び図4に示す一連の処理を終了する。ステップS3の処理において、制御装置17は、例えば、目標温調量Qを0とし、且つ、冷却装置15aによる冷却量QChillerと、加温装置15bによる加温量QECHとが等しくなるように(すなわちQChiller=QECH)、冷却装置15aによる冷却及び加温装置15bによる加温を行う廃電制御を実行する。これにより、現在のバッテリ温度を維持しながら、目標電力消費量Eの電力を消費する廃電制御を実行することが可能となる。
【0050】
また、ステップS1の処理において、温調制御の実行条件が成立したと判定した場合(ステップS1:YES)、制御装置17は、廃電制御の実行条件が成立したか否かを判定する(ステップS4)。廃電制御の実行条件が成立していないと判定した場合(ステップS4:NO)、制御装置17は、温調制御を実行して(ステップS5)、図3及び図4に示す一連の処理を終了する。ステップS5の処理において、制御装置17は、例えば、バッテリ温度が目標温度域の下限温度よりも低い温度となったことに基づいて目標温調量Qが正の値となった場合(すなわち加温する場合)には加温装置15bのみを作動させ、逆に、バッテリ温度が目標温度域の上限温度よりも高い温度となったことに基づいて目標温調量Qが負の値となった場合(すなわち冷却する場合)には冷却装置15aのみを作動させるという、通常の温調制御を実行する。
【0051】
一方、ステップS4の処理において、廃電制御の実行条件が成立したと判定した場合(ステップS4:YES)、制御装置17は、目標温調量Qを取得し(ステップS6)、さらに目標電力消費量Eを取得する(ステップS7)。
【0052】
そして、制御装置17は、目標温調量Qと、目標電力消費量Eと、冷却装置15aの第1効率ηChillerと、加温装置15bの第2効率ηECHとに基づいて、冷却量QChiller及び加温量QECHを導出する(ステップS8)。ステップS8の処理において、制御装置17は、前述したように、例えば、上記(3)式を用いて冷却量QChillerを、上記(4)式を用いて加温量QECHをそれぞれ導出する。
【0053】
次に、制御装置17は、導出された冷却量QChiller又は加温量QECHが成立困難な値であるか否かを判定する(ステップS9)。ステップS9の処理において、制御装置17は、例えば、負の値でなければならない冷却量QChillerが正の値となった場合、又は、正の値でなければならない加温量QECHが負の値となった場合に、成立困難な値であると判定する。一方、制御装置17は、冷却量QChillerが負の値、且つ、加温量QECHが正の値となった場合には、成立困難な値ではない(換言すると成立可能な値である)と判定する。なお、冷却量QChiller又は加温量QECHが成立困難な値と判定する条件は、ここで説明した例に限られず、冷却装置15aや加温装置15bのハードウェア的な仕様などを勘案して、車両10の製造者が適宜定めてもよい。
【0054】
冷却量QChiller及び加温量QECHが成立困難な値ではないと判定した場合(ステップS9:NO)、制御装置17は、導出された冷却量QChiller及び加温量QECHに基づいて、温調制御及び廃電制御を実行して(ステップS10)、図3及び図4に示す一連の処理を終了する。ステップS10の処理において、制御装置17は、冷却装置15aによる冷却が冷却量QChiller相当のものとなり、且つ、加温装置15bによる加温が加温量QECH相当のものとなるように、冷却装置15aによる冷却及び加温装置15bによる加温を行わせることにより温調制御及び廃電制御を実行する。
【0055】
一方、導出された冷却量QChiller及び加温量QECHが成立困難な値であると判定した場合(ステップS9:YES)、制御装置17は、図4に示すステップS11の処理に進み、バッテリ温度が第1閾値未満であるか否かを判定する(ステップS11)。ここで、第1閾値は、例えば、前述した目標温度域の下限値よりも小さい値であり、車両10の製造者によりあらかじめ設定された閾値である。
【0056】
バッテリ温度が第1閾値未満ではないと判定した場合(ステップS11:NO)、制御装置17は、バッテリ温度が第2閾値以上であるか否かを判定する(ステップS12)。ここで、第2閾値は、例えば、前述した目標温度域の上限値よりも大きい値であり、車両10の製造者によりあらかじめ設定された閾値である。
【0057】
バッテリ温度が第1閾値未満であると判定した場合(ステップS11:YES)、又は、バッテリ温度が第2閾値以上であると判定した場合(ステップS12:YES)、制御装置17は、温調制御を実行して(ステップS13)、図3及び図4に示す一連の処理を終了する。ステップS13の処理において、制御装置17は、例えば、ステップS5の処理と同様に、目標温調量Qが正の値である場合には加温装置15bのみを作動させ、目標温調量Qが負の値である場合には冷却装置15aのみを作動させるという、通常の温調制御を実行する。
【0058】
一方、バッテリ温度が第2閾値以上ではないと判定した場合(ステップS12:NO)、制御装置17は、廃電制御を実行して(ステップS14)、図3及び図4に示す一連の処理を終了する。ステップS14の処理において、制御装置17は、例えば、ステップS3の処理と同様に、目標温調量Qを0とし、且つ、冷却装置15aによる冷却量QChillerと、加温装置15bによる加温量QECHとが等しくなるように、冷却装置15aによる冷却及び加温装置15bによる加温を行う廃電制御を実行する。
【0059】
以上に説明したように、制御装置17は、温調制御及び廃電制御の実行条件が成立した場合に、温調制御の目標値である目標温調量Qと、廃電制御の目標値である目標電力消費量Eと、冷却装置15aの単位電力あたりの冷却量である第1効率ηChillerと、加温装置15bの単位電力あたりの加温量である第2効率ηECHとに基づいて、冷却装置15aによる冷却量QChiller及び加温装置15bによる加温量QECHを導出し、導出された冷却量QChiller及び加温量QECHに基づいて、冷却装置15aによる冷却及び加温装置15bによる加温を行わせることにより温調制御及び廃電制御を実行する、処理を行う。これにより、冷却装置15aによる冷却及び加温装置15bによる加温によって目標温調量Qの温調を行うことを可能にしつつ、当該温調によって目標電力消費量Eに相当する電力を消費することを可能にする。したがって、バッテリ11を適切に温調しつつ、バッテリ11から所望の電力を消費することが可能となる。
【0060】
また、制御装置17は、温調制御及び廃電制御の実行条件が成立した場合の冷却量QChiller及び加温量QECHを導出する処理では、冷却量QChillerと加温量QECHとの和が目標温調量Qとなり、且つ、冷却装置15aによる電力消費量(すなわちQChiller/ηChiller)と加温装置15bによる電力消費量(すなわちQECH/ηChiller)との和が目標電力消費量Eとなるような冷却量QChiller及び加温量QECHを導出する。これにより、冷却装置15aによる冷却及び加温装置15bによる加温によって目標温調量Qの温調を行うことを可能にしつつ、当該温調によって目標電力消費量Eに相当する電力を消費することを可能にする。
【0061】
また、制御装置17は、温調制御及び廃電制御の実行条件が成立した場合の冷却量QChiller及び加温量QECHを導出する処理によって導出された冷却量QChiller及び加温量QECHのうちの少なくとも一方が成立困難な値である場合には、温調制御及び廃電制御のうちのいずれか一方を実行する、処理をさらに行う。これにより、温調制御及び廃電制御の両立が困難である場合には、温調制御及び廃電制御のうちのいずれか一方を実行するので、バッテリ11の適切な温調、又はバッテリ11から所望の電力を消費することを可能にする。
【0062】
また、制御装置17は、温調制御及び廃電制御のうちのいずれか一方を実行する処理では、バッテリ温度が目標温度域の下限値よりも小さい第1閾値未満、又はバッテリ温度が目標温度域の上限値よりも大きい第2閾値以上である場合に、温調制御及び廃電制御のうちの温調制御のみを実行する。これにより、バッテリ11が目標温度域に対して極端に高温又は低温になっている場合には温調制御を実行することが可能となる。これにより、バッテリ11を適切に温調して、バッテリ11の出力性能の確保や劣化を抑制することが可能となる。
【0063】
また、制御装置17は、温調制御及び廃電制御のうちのいずれか一方を実行する処理では、バッテリ温度が第1閾値以上且つ第2閾値未満の場合に、温調制御及び廃電制御のうちの廃電制御のみを実行する。これにより、バッテリ11が目標温度域に対して極端に高温又は低温になっていない場合には廃電制御を実行することが可能となる。これにより、バッテリ11から所望の電力を消費して、バッテリ11の残容量を減らすことを可能にする。
【0064】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明が前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前述した実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0065】
なお、前述した実施形態では、本発明の制御装置を、車両10に搭載された制御装置17によって実現した例を説明したが、これに限られない。例えば、本発明の制御装置を、制御装置17と通信可能なサーバによって実現してもよい。この場合、例えば、前述した制御装置17の各処理を、サーバのCPUなどによって実現される処理部が行えばよい。また、本発明の制御装置は、制御装置17とサーバとが協働することによって実現されてもよく、例えば、前述した制御装置17の処理のうちの一部がサーバによって実行されてもよい。
【0066】
また、前述した実施形態で説明した制御方法は、あらかじめ用意されたプログラムをコンピュータで実行することによって実現できる。本プログラム(制御プログラム)は、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶され、記憶媒体から読み出されることによって実行される。また、本プログラムは、フラッシュメモリなどの不揮発性(非一過性)の記憶媒体に記憶された形で提供されてもよいし、インターネットなどのネットワークを介して提供されてもよい。本プログラムを実行するコンピュータは、車両10に含まれるものであってもよいし、車両10と通信可能な外部装置(例えばサーバ)に含まれるものでもあってもよい。
【0067】
本明細書などには少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、前述した実施形態において対応する構成要素を示しているが、これに限定されるものではない。
【0068】
(1) バッテリ(バッテリ11)と、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを冷却可能な冷却装置(冷却装置15a)と、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを加温可能な加温装置(加温装置15b)と、を備える車両(車両10)を制御するコンピュータ(制御装置17)が行う制御方法であって、
前記コンピュータは、
前記バッテリの温度に基づいて、前記バッテリを所定の温度域に維持するように前記冷却装置による冷却及び/又は前記加温装置による加温を行う温調制御と、
前記バッテリの残容量に応じて、所定量の電力が消費されるように前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行う廃電制御と、を実行可能に構成され、
前記コンピュータが、
前記温調制御及び前記廃電制御の実行条件が成立した場合に、前記温調制御の目標値である目標温調量と、前記廃電制御の目標値である目標電力消費量と、前記冷却装置の単位電力あたりの冷却量である第1効率と、前記加温装置の単位電力あたりの加温量である第2効率とに基づいて、前記冷却装置による冷却量及び前記加温装置による加温量を導出し(ステップS8)、
導出した前記冷却量及び前記加温量に基づいて、前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行わせることにより前記温調制御及び前記廃電制御を実行する(ステップS10)、
処理を行う、制御方法。
【0069】
(1)によれば、冷却装置による冷却及び加温装置による加温によって目標温調量の温調を行うことを可能にしつつ、当該温調によって目標電力消費量に相当する電力を消費することを可能にする。したがって、バッテリを適切に温調しつつ、バッテリから所望の電力を消費することが可能となる。
【0070】
(2) (1)に記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
前記冷却量及び前記加温量を導出する処理(ステップS8)では、
前記冷却量と前記加温量との和が前記目標温調量となり、且つ、前記冷却装置による電力消費量と前記加温装置による電力消費量と和が前記目標電力消費量となるような前記冷却量及び前記加温量を導出する、
制御方法。
【0071】
(2)によれば、冷却装置による冷却及び加温装置による加温によって目標温調量の温調を行うことを可能にしつつ、当該温調によって目標電力消費量に相当する電力を消費することを可能にする。
【0072】
(3) (2)に記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
導出した前記冷却量及び前記加温量のうちの少なくとも一方が成立困難な値である場合に、前記温調制御及び前記廃電制御のうちのいずれか一方を実行する(ステップS13、ステップS14)、
処理をさらに行う、制御方法。
【0073】
(3)によれば、温調制御及び廃電制御の両立が困難である場合には、温調制御及び廃電制御のうちのいずれか一方を実行するので、バッテリの適切な温調、又はバッテリから所望の電力を消費することを可能にする。
【0074】
(4) (3)に記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
前記温調制御及び前記廃電制御のうちのいずれか一方を実行する処理では、
前記バッテリの温度が第1閾値未満又は前記バッテリの温度が第2閾値以上である場合に、前記温調制御及び前記廃電制御のうちの前記温調制御のみを実行し(ステップS13)、
前記第1閾値は、前記温度域の下限値よりも小さく、
前記第2閾値は、前記温度域の上限値よりも大きい、
制御方法。
【0075】
(4)によれば、バッテリが極端に高温又は低温になっている場合には温調制御を実行することが可能となる。これにより、バッテリを適切に温調して、バッテリの出力性能の確保や劣化を抑制することが可能となる。
【0076】
(5) (4)に記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
前記温調制御及び前記廃電制御のうちのいずれか一方を実行する処理では、
前記バッテリの温度が前記第1閾値以上且つ前記第2閾値未満の場合に、前記温調制御及び前記廃電制御のうちの前記廃電制御のみを実行する(ステップS14)、
制御方法。
【0077】
(5)によれば、バッテリが極端に高温又は低温になっていない場合には廃電制御を実行することが可能となる。これにより、バッテリから所望の電力を消費して、バッテリの残容量を減らすことを可能にする。
【0078】
(6) バッテリ(バッテリ11)と、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを冷却可能な冷却装置(冷却装置15a)と、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを加温可能な加温装置(加温装置15b)と、を備える車両(車両10)を制御する制御装置(制御装置17)であって、
前記制御装置は、
前記バッテリの温度に基づいて、前記バッテリを所定の温度域に維持するように前記冷却装置による冷却及び/又は前記加温装置による加温を行う温調制御と、
前記バッテリの残容量に応じて、所定量の電力が消費されるように前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行う廃電制御と、を実行可能に構成され、
前記温調制御及び前記廃電制御の実行条件が成立した場合に、前記温調制御の目標値である目標温調量と、前記廃電制御の目標値である目標電力消費量と、前記冷却装置の単位電力あたりの冷却量である第1効率と、前記加温装置の単位電力あたりの加温量である第2効率とに基づいて、前記冷却装置による冷却量及び前記加温装置による加温量を導出し、
導出した前記冷却量及び前記加温量に基づいて、前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行わせることにより前記温調制御及び前記廃電制御を実行する、
処理を行う、制御装置。
【0079】
(6)によれば、冷却装置による冷却及び加温装置による加温によって目標温調量の温調を行うことを可能にしつつ、当該温調によって目標電力消費量に相当する電力を消費することを可能にする。したがって、バッテリを適切に温調しつつ、バッテリから所望の電力を消費することが可能となる。
【0080】
(7) バッテリ(バッテリ11)と、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを冷却可能な冷却装置(冷却装置15a)と、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを加温可能な加温装置(加温装置15b)と、制御装置(制御装置17)と、を備える車両(車両10)であって、
前記制御装置は、
前記バッテリの温度に基づいて、前記バッテリを所定の温度域に維持するように前記冷却装置による冷却及び/又は前記加温装置による加温を行う温調制御と、
前記バッテリの残容量に応じて、所定量の電力が消費されるように前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行う廃電制御と、を実行可能に構成され、
前記温調制御及び前記廃電制御の実行条件が成立した場合に、前記温調制御の目標値である目標温調量と、前記廃電制御の目標値である目標電力消費量と、前記冷却装置の単位電力あたりの冷却量である第1効率と、前記加温装置の単位電力あたりの加温量である第2効率とに基づいて、前記冷却装置による冷却量及び前記加温装置による加温量を導出し、
導出した前記冷却量及び前記加温量に基づいて、前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行わせることにより前記温調制御及び前記廃電制御を実行する、
処理を行う、車両。
【0081】
(7)によれば、冷却装置による冷却及び加温装置による加温によって目標温調量の温調を行うことを可能にしつつ、当該温調によって目標電力消費量に相当する電力を消費することを可能にする。したがって、バッテリを適切に温調しつつ、バッテリから所望の電力を消費することが可能となる。
【符号の説明】
【0082】
10 車両
11 バッテリ
15a 冷却装置
15b 加温装置
17 制御装置(コンピュータ)
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを冷却可能な冷却装置と、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを加温可能な加温装置と、を備える車両を制御するコンピュータが行う制御方法であって、
前記コンピュータは、
前記バッテリの温度に基づいて、前記バッテリを所定の温度域に維持するように前記冷却装置による冷却及び/又は前記加温装置による加温を行う温調制御と、
前記バッテリの残容量に応じて、所定量の電力が消費されるように前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行う廃電制御と、を実行可能に構成され、
前記コンピュータが、
前記温調制御及び前記廃電制御の実行条件が成立した場合に、前記温調制御の目標値である目標温調量と、前記廃電制御の目標値である目標電力消費量と、前記冷却装置の単位電力あたりの冷却量である第1効率と、前記加温装置の単位電力あたりの加温量である第2効率とに基づいて、前記冷却装置による冷却量及び前記加温装置による加温量を導出し、
導出した前記冷却量及び前記加温量に基づいて、前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行わせることにより前記温調制御及び前記廃電制御を実行する、
処理を行う、制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
前記冷却量及び前記加温量を導出する処理では、
前記冷却量と前記加温量との和が前記目標温調量となり、且つ、前記冷却装置による電力消費量と前記加温装置による電力消費量と和が前記目標電力消費量となるような前記冷却量及び前記加温量を導出する、
制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
導出した前記冷却量及び前記加温量のうちの少なくとも一方が成立困難な値である場合に、前記温調制御及び前記廃電制御のうちのいずれか一方を実行する、
処理をさらに行う、制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
前記温調制御及び前記廃電制御のうちのいずれか一方を実行する処理では、
前記バッテリの温度が第1閾値未満又は前記バッテリの温度が前記第1閾値よりも大きい第2閾値以上である場合に、前記温調制御及び前記廃電制御のうちの前記温調制御のみを実行し、
前記第1閾値は、前記温度域の下限値よりも小さく、
前記第2閾値は、前記温度域の上限値よりも大きい、
制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
前記温調制御及び前記廃電制御のうちのいずれか一方を実行する処理では、
前記バッテリの温度が前記第1閾値以上且つ前記第2閾値未満の場合に、前記温調制御及び前記廃電制御のうちの前記廃電制御のみを実行する、
制御方法。
【請求項6】
バッテリと、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを冷却可能な冷却装置と、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを加温可能な加温装置と、を備える車両を制御する制御装置であって、
前記制御装置は、
前記バッテリの温度に基づいて、前記バッテリを所定の温度域に維持するように前記冷却装置による冷却及び/又は前記加温装置による加温を行う温調制御と、
前記バッテリの残容量に応じて、所定量の電力が消費されるように前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行う廃電制御と、を実行可能に構成され、
前記温調制御及び前記廃電制御の実行条件が成立した場合に、前記温調制御の目標値である目標温調量と、前記廃電制御の目標値である目標電力消費量と、前記冷却装置の単位電力あたりの冷却量である第1効率と、前記加温装置の単位電力あたりの加温量である第2効率とに基づいて、前記冷却装置による冷却量及び前記加温装置による加温量を導出し、
導出した前記冷却量及び前記加温量に基づいて、前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行わせることにより前記温調制御及び前記廃電制御を実行する、
処理を行う、制御装置。
【請求項7】
バッテリと、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを冷却可能な冷却装置と、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリを加温可能な加温装置と、制御装置と、を備える車両であって、
前記制御装置は、
前記バッテリの温度に基づいて、前記バッテリを所定の温度域に維持するように前記冷却装置による冷却及び/又は前記加温装置による加温を行う温調制御と、
前記バッテリの残容量に応じて、所定量の電力が消費されるように前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行う廃電制御と、を実行可能に構成され、
前記温調制御及び前記廃電制御の実行条件が成立した場合に、前記温調制御の目標値である目標温調量と、前記廃電制御の目標値である目標電力消費量と、前記冷却装置の単位電力あたりの冷却量である第1効率と、前記加温装置の単位電力あたりの加温量である第2効率とに基づいて、前記冷却装置による冷却量及び前記加温装置による加温量を導出し、
導出した前記冷却量及び前記加温量に基づいて、前記冷却装置による冷却及び前記加温装置による加温を行わせることにより前記温調制御及び前記廃電制御を実行する、
処理を行う、車両。