IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ダイナミックダンパ 図1
  • 特開-ダイナミックダンパ 図2
  • 特開-ダイナミックダンパ 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135333
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ダイナミックダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
F16F15/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045960
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 康二
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AA02
3J048AD07
3J048BF01
3J048CB24
3J048EA32
(57)【要約】
【課題】多様な方向の多様な周波数の振動が入力される場合であっても、簡易なダンパ構造を用いて、3次元方向の全方向に均等に振動を減衰可能にすること。
【解決手段】ダイナミックダンパは、内部に球形状の空洞部が形成された質量部と、空洞部に収容された球形状の弾性部と、振動物に接続された接続部材と、を備え、接続部材は、弾性部内の中心に配置された球体と、弾性部および質量部の一側部分を貫通し、一端が球体に接続され、他端が振動物に接続された軸部と、を有し、球体の外径は、軸部の外径よりも大きい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に球形状の空洞部が形成された質量部と、
前記空洞部に収容された球形状の弾性部と、
振動物に接続された接続部材と、
を備え、
前記接続部材は、
前記弾性部内の中心に配置された球体と、
前記弾性部および前記質量部の一側部分を貫通し、一端が前記球体に接続され、他端が前記振動物に接続された軸部と、
を有し、
前記球体の外径は、前記軸部の外径よりも大きい、
ダイナミックダンパ。
【請求項2】
前記質量部の外形は、球形状を有し、
前記接続部材の前記球体の中心と、前記弾性部の中心と、前記質量部の中心は、同一である、
請求項1に記載のダイナミックダンパ。
【請求項3】
前記接続部材の前記軸部の外径は、前記球体の外径の1/2以下である、
請求項1または2に記載のダイナミックダンパ。
【請求項4】
前記接続部材の前記軸部の外径は、前記球体の外径の1/4以上である、
請求項1または2に記載のダイナミックダンパ。
【請求項5】
前記振動物は、相異なる方向に、相異なる周波数で振動する複数の部品を備えた装置である、
請求項1または2に記載のダイナミックダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイナミックダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に搭載されるトランスミッションには、エンジンまたはモータ等の駆動源から出力された駆動力のトルク、回転数、回転方向を変えて、当該駆動力を伝達するために、さまざまな歯車やシャフトが含まれている。また、上記の駆動源の駆動時には振動が発生し、その振動は、トランスミッションなどの駆動伝達経路に伝達される。かかる駆動伝達経路の振動を抑制するために、ダイナミックダンパを用いた制振技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ドライブシャフトを挿通する筒状の支持部を備え、該支持部外周にダンパーマス支持部を介して環状のダンパーマスを一体に設けた回転軸用ダイナミックダンパが開示されている。この特許文献1の回転軸用ダイナミックダンパでは、ダンパーマス支持部の軸方向の厚さを周方向において厚肉部と薄肉部とが交互に連続するように形成している。
【0004】
特許文献2には、振動部材の振動が入力される剛性のハウジング内に、球状外周面を有する独立マス部材を相対変位可能に配置した車両用制振装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-274285号公報
【特許文献2】特開2001-271874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、車両の駆動時には、駆動伝達経路を構成する歯車やシャフトが多様な方向に多様な周波数で振動し、騒音の原因となり得る。このように、自動車のトランスミッションなどの駆動伝達経路には、多様な方向に多様な周波数で振動する複数の加振源が存在する。したがって、従来では、多様な方向の多様な周波数の振動が発生する場合であっても、3次元の全方向に均等に振動を減衰可能にすることが希求されていた。
【0007】
この点、特許文献1に記載のダイナミックダンパでは、シャフトの周方向の2次元方向には、均等に振動を減衰できるものの、シャフトの軸方向など他の方向には、均等に振動を減衰させることが不可能もしくは困難であった。3次元方向の全方向に均等に振動を減衰させるためには、2つ以上のダイナミックダンパを設けるなど、ダイナミックダンパの構成が複雑になるという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載の車両用制振装置では、特定の周波数の振動に対しては3次元の全方向に均等に振動を減衰できるが、異なる複数の周波数の振動が入力された際に、3次元の全方向に均等に振動を減衰することは困難であった。例えば、特定の周波数以外の複数の周波数の振動が入力された際に、球形状の独立マス部材がハウジングの内壁と衝突することにより、衝突音が発生したり、場合によっては振動が悪化するといった問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、多様な方向の多様な周波数の振動が入力される場合であっても、簡易なダンパ構造を用いて、3次元方向の全方向に均等に振動を減衰可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係るダイナミックダンパは、
内部に球形状の空洞部が形成された質量部と、
前記空洞部に収容された球形状の弾性部と、
振動物に接続された接続部材と、
を備え、
前記接続部材は、
前記弾性部内の中心に配置された球体と、
前記弾性部および前記質量部の一側部分を貫通し、一端が前記球体に接続され、他端が前記振動物に接続された軸部と、
を有し、
前記球体の外径は、前記軸部の外径よりも大きい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、多多様な方向の多様な周波数の振動が入力される場合であっても、簡易なダンパ構造を用いて、3次元方向の全方向に均等に振動を減衰可能にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態に係る車両を示す模式図である。
図2図2は、本実施形態に係るダイナミックダンパを示す断面図である。
図3図3は、本実施形態に係るダイナミックダンパを図2の図視右側から軸部の軸方向にミッションケースを透過して見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る車両100を示す模式図である。図1において、矢印Fは、車両の前進方向を示し、矢印Bは、車両の後進方向を示し、矢印Rは、車両の右方向を示し、矢印Lは、車両の左方向を示している。車両100は、前後輪駆動する4輪駆動走行が可能な4輪駆動車である。ただし、これに限定されず、車両100は、4輪駆動走行と、前輪と後輪のいずれか一方を駆動する2輪駆動走行とを切換可能な4輪駆動車であってもよい。その場合、2輪駆動走行時においては、前輪を駆動するようにしてもよいし、後輪を駆動するようにしてもよい。
【0015】
本実施形態では、車両100は、エンジン110およびモータ120の2つの駆動源を備えたハイブリッド車について説明する。ただし、車両100は、駆動源が、エンジン110のみ、あるいは、モータ120のみであってもよく、エンジン車、電気自動車等、様々な車種を採用することができる。ここでは、本実施形態の特徴に関係する構成について詳細に説明し、本実施形態の特徴と無関係の構成については説明を省略する。
【0016】
図1に示すように、車両100は、エンジン110、モータ120、クラッチ130、トランスミッション140、インバータ150、バッテリ160、プロペラシャフト170、フロントデファレンシャルギヤ180、フロントドライブシャフト190、前輪200、リアデファレンシャルギヤ210、リアドライブシャフト220、後輪230、制御装置300を備える。
【0017】
エンジン110は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンで構成される。エンジン110は、不図示の燃料タンクから供給されるガソリンや軽油等の燃料を燃焼させることで駆動力を得る。
【0018】
具体的に、エンジン110には、不図示のインジェクタと、不図示の点火プラグとが設けられる。インジェクタは、燃料を噴射して不図示の燃焼室内に燃料を供給する。点火プラグは、先端が燃焼室内に配され、燃焼室内に供給された燃料と空気の混合気を点火する。燃料と空気の混合気は、所定のタイミングで点火プラグにより点火され、燃焼される。かかる燃焼により、エンジン110は、駆動力を得ることができる。
【0019】
エンジン110は、得られた駆動力を、クラッチ130を介してトランスミッション140に伝達する。エンジン110は、制御装置300と接続され、制御装置300の制御指令に基づいてインジェクタおよび点火プラグの動作が制御され、駆動力が調整される。
【0020】
モータ120は、エンジン110と同軸に配される。モータ120は、インバータ150を介してバッテリ160から供給される電力により駆動力を得る。モータ120は、得られた駆動力をトランスミッション140に伝達する。また、モータ120は、電力の供給を受けていないタイミングで、発電機としても機能する。モータ120によって発電された電力は、インバータ150を介してバッテリ160に蓄積される。また、インバータ150は、制御装置300と接続され、制御装置300の制御指令に基づいて供給電力、すなわち、モータ120の駆動力が調整される。
【0021】
エンジン110やモータ120といった駆動源から出力された駆動力は、トランスミッション140により、トルク、回転数、回転方向が調整されてプロペラシャフト170に伝達される。プロペラシャフト170に伝達された駆動力は、フロントデファレンシャルギヤ180、フロントドライブシャフト190を介して前輪200に伝達される。また、プロペラシャフト170に伝達された駆動力は、リアデファレンシャルギヤ210、リアドライブシャフト220を介して後輪230にも伝達される。
【0022】
制御装置300は、車両100の全体を制御する。制御装置300は、1つまたは複数のプロセッサ300aと、プロセッサ300aに接続される1つまたは複数のメモリ300bと、を有する。プロセッサ300aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。メモリ300bは、例えば、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含む。ROMは、CPUが使用するプログラムおよび演算パラメータ等を記憶する記憶素子である。RAMは、CPUにより実行される処理に用いられる変数およびパラメータ等のデータを一時記憶する記憶素子である。
【0023】
トランスミッション140のミッションケース140a内には、エンジン110およびモータ120から出力された駆動力のトルク、回転数、回転方向を変えて、当該駆動力を伝達するために、さまざまな歯車やシャフトが含まれている。また、エンジン110およびモータ120が駆動された際に発生する振動は、トランスミッション140を含む駆動伝達経路に伝達される。
【0024】
振動がトランスミッション140に伝達されると、トランスミッション140のミッションケース140a内に配置された動力伝達機構を構成する部品が、相互に異なる多様な方向に多様な周波数で振動し、騒音の原因となり得る。トランスミッション140のミッションケース140a内に配置された動力伝達機構は、例えば、前後進切替機構、ベルト式の無段変速機、ギヤ機構などである。前後進切替機構、ベルト式の無段変速機、ギヤ機構は、シャフト、歯車、プーリー、チェーンまたはベルトなどの部品を含む。
【0025】
換言すれば、ミッションケース140a内に配置されたシャフト、歯車、プーリー、チェーンまたはベルトなどの部品が、相互に異なる多様な方向に多様な周波数で振動し、騒音の原因となり得る。このように、ミッションケース140a内には、相互に異なる多様な方向に多様な周波数で振動する複数の加振源が存在する。本実施形態のトランスミッション140は、相異なる方向に、相異なる周波数で振動する複数の部品142A、142B、142C(図2参照)を備えた装置である。
【0026】
本実施形態では、相異なる方向に、相異なる周波数で振動する複数の部品142A、142B、142Cの振動を減衰させるため、トランスミッション140のミッションケース140aにダイナミックダンパ400を設けている。
【0027】
図2は、本実施形態に係るダイナミックダンパ400を示す断面図である。図2では、ダイナミックダンパ400の内部構造の説明を簡単にするため、ダイナミックダンパ400の断面形状を図示している。
【0028】
図2に示すように、ダイナミックダンパ400は、質量部420と、弾性部440と、接続部材460とを有する。質量部420は、球形状の外形を有する。本実施形態では、質量部420は、2つの半球形状の分割体420a、420bにより構成されている。
【0029】
2つの分割体420a、420bは、締結部材424により締結される。締結部材424は、例えば、ボルトである。ただし、これに限定されず、2つの分割体420a、420bは、溶接等で接合されてもよいし、接着剤等で接着されてもよい。
【0030】
2つの分割体420a、420bの分割面が向かい合うように配置され、締結部材424により締結されることで、球形状の外形を有する質量部420が形成される。質量部420の内部には、球形状の空洞部422が形成される。
【0031】
空洞部422は、質量部420の中心部に形成される。空洞部422の中心は、質量部420の中心と同一である。ここで、同一とは、実質的に同一であることを意味し、完全に同一な位置である場合と、完全に同一である位置から許容誤差の範囲内でずれている場合とを含む。
【0032】
許容誤差の範囲内でずれている場合とは、例えば、ダイナミックダンパ400の各部品の加工精度または組付誤差等により、完全に同一である位置から1mm以内でずれている場合である。以下の説明でも同様に、同一とは、実質的に同一であることを意味し、完全に同一な位置である場合と、完全に同一である位置から許容誤差の範囲内でずれている場合とを含む。
【0033】
弾性部440は、球形状の外形を有する。弾性部440は、質量部420の空洞部422に収容される。本実施形態では、弾性部440は、2つの分割体420a、420bに挟持される。弾性部440は、2つの分割体420a、420bに挟持されることで、質量部420の空洞部422に収容される。
【0034】
弾性部440の外面は、質量部420の内面と接触している。弾性部440の外面は、質量部420の内面と直接接触していてもよいし、他の部材を介して間接的に接触していてもよい。このように、弾性部440は、質量部420の内側に設けられる。換言すれば、質量部420は、弾性部440の外側に設けられる。
【0035】
接続部材460は、トランスミッション140のミッションケース140aの外面に接続される。ただし、接続部材460は、トランスミッション140のミッションケース140aの内面に接続されてもよい。接続部材460は、球体470と、軸部480とを有する。球体470は、弾性部440の内部に埋め込まれる。
【0036】
球体470の外面は、弾性部440の内面と接触している。球体470の外面は、弾性部440の内面と直接接触していてもよいし、他の部材を介して間接的に接触していてもよい。このように、球体470は、弾性部440の内側に設けられる。換言すれば、弾性部440は、球体470の外側に設けられる。
【0037】
軸部480の一端は、球体470に接続され、軸部480の他端は、トランスミッション140のミッションケース140aに接続される。本実施形態では、軸部480は、中空の円筒形状を有する。ただし、これに限定されず、軸部480は、中実の円柱形状であってもよい。
【0038】
軸部480は、弾性部440および質量部420の一側部分を貫通する。弾性部440には、軸部480を貫通するための貫通孔442が形成される。また、質量部420には、軸部480を貫通するための貫通孔426が形成される。貫通孔426の径は、貫通孔442の径より大きい。ただし、貫通孔426の径は、貫通孔442の径と同じであってもよい。
【0039】
図3は、本実施形態に係るダイナミックダンパ400を図2の図視右側から軸部480の軸方向にミッションケース140aを透過して見た側面図である。なお、図3では、弾性部440および球体470の外形を破線で表している。図2および図3に示すように、軸部480の外周面は、弾性部440の貫通孔442と接触し、質量部420の貫通孔426と接触していない。つまり、軸部480は、質量部420と非接触であり、質量部420の貫通孔426から離隔した状態を維持している。
【0040】
図2および図3に示すように、球体470の中心と、弾性部440の中心と、質量部420の中心は、同一である。また、球体470の外径D1は、軸部480の外径D2よりも大きい。本実施形態では、軸部480の外径D2は、球体470の外径D1の1/2以下であることが好ましい。また、軸部480の外径D2は、球体470の外径D1の1/4以上であることが好ましい。
【0041】
複数の部品142A、142B、142Cから生じる振動は、トランスミッション140のミッションケース140aに伝達され、軸部480を介して球体470、弾性部440、質量部420へと伝達される。
【0042】
本実施形態では、振動物としてのミッションケース140aに接続された接続部材460の軸部480の先端に球体470が設けられ、球体470の外周を覆うように球形状の弾性部440および質量部420が設けられる。また、球体470の外径D1は、軸部480の外径D2よりも大きい。これにより、ミッションケース140aから伝達される特定の周波数の振動を3次元方向の全方向において減衰させることができる。また、特定の周波数以外の周波数の振動が入力された場合は、球形状の質量部420と弾性部440を含むダイナミックダンパ400のマス効果により、振動低減効果を得ることができる。その結果、多様な方向の多様な周波数の振動が入力される場合であっても、簡易なダンパ構造を用いて、3次元方向の全方向に均等に振動を減衰可能にすることができる。
【0043】
また、本実施形態では、球体470の中心と、球形状の弾性部440の中心と、球形状の質量部420の中心は、同一である。そのため、球体470からの弾性部440の厚さ、および、弾性部440からの質量部420の厚さを3次元方向の全方向において均一にすることができる。そのため、ダイナミックダンパ400の振動減衰効果を3次元方向の全方向において同じにすることができる。
【0044】
また、本実施形態では、接続部材460の軸部480の外径D2は、球体470の外径D1の1/2以下である。ここで、本実施形態では、軸部480を挿通させるために弾性部440に貫通孔442が形成され、質量部420に貫通孔426が形成されている。つまり、貫通孔442内には、弾性部440が設けられておらず、また、貫通孔426にも、質量部420が設けられていない。そのため、ダイナミックダンパ400のうち貫通孔426、442が設けられる特定方向(すなわち、軸部480の軸方向)の振動減衰効果は、特定方向以外の他方向の振動減衰効果より小さくなる。
【0045】
このように、本実施形態では、特定方向の振動減衰効果が特定方向以外の他方向の振動減衰効果より小さくなることから、接続部材460の軸部480の外径の大きさに制限を設けている。具体的に、特定方向の振動減衰効果が他方向の振動減衰効果の90%以上となるように、軸部480の外径が、実機の試験結果またはシミュレーション結果等に基づき予め設定された上限値以下に制限される。
【0046】
例えば、弾性部440の外径が40mm、内径が30mmであるとする。ここで、弾性部440の内径は、球体470の外径D1と等しく、球体470の外径D1も30mmである。また、接続部材460の軸部480の外径D2が15mmであるとする。この場合、D2とD1の比率は1:2である。
【0047】
このとき、弾性部440に貫通孔442が形成されていない場合の弾性部440の体積は、19373.15mmとなり、弾性部440に貫通孔442が形成されている場合の弾性部440の体積は、17606.01mmとなる。そして、これらの体積の割合は、0.908784(=90.8784%)であることから、軸部480の外径D2が球体470の外径D1の1/2以下である場合、特定方向においても他方向の90%以上の振動減衰効果が得られることがわかる。
【0048】
また、本実施形態では、接続部材460の軸部480の外径D2は、球体470の外径D1の1/4以上である。軸部480の外径D2が球体470の外径D1の1/4未満となると、軸部480自体が弾性体として振舞うようになり、質量部420を質量、弾性部440をバネとするダイナミックダンパ本来の動きを損なうおそれがある。そのため、軸部480の外径D2を球体470の外径D1の1/4以上とすることで、質量部420を質量、弾性部440をバネとするダイナミックダンパ本来の動きを損なうことなく、特定方向における振動減衰効果を確保することができる。
【0049】
以上のように、本実施形態によれば、多様な方向の多様な周波数の振動を、簡素の構造を有する1つのダイナミックダンパ400で好適に減衰することができる。ここで、本実施形態のダイナミックダンパ400では、弾性部440の中心に軸部480の先端の球体470を配置するために、弾性部440の一側を軸部480で分断する必要がある。これにより、軸部480の中心軸方向の振動減衰効果がそれ以外の方向の振動減衰効果に比べ90%程度に減少するものの、ミッションケース140aのような多様な方向の多様な周波数の振動がダイナミックダンパ400に入力された場合であっても、3次元方向の全方向にほぼ均等に当該振動を減衰することができる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0051】
100 車両
140 トランスミッション
140a ミッションケース
400 ダイナミックダンパ
420 質量部
422 空洞部
426 貫通孔
440 弾性部
442 貫通孔
460 接続部材
470 球体
480 軸部
図1
図2
図3