(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013534
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】液冷装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20240125BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115693
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】近成 勇太
(72)【発明者】
【氏名】冨永 勇
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA07
5E322AA10
5E322DA04
5E322FA01
5F136CB06
5F136CB11
5F136DA27
5F136DA41
5F136FA01
(57)【要約】
【課題】より簡単な構成で複数の冷却系統の流量のアンバランスを抑制できる液冷装置を提供する。
【解決手段】圧接型の半導体素子を備えた電力変換装置に用いられる液冷装置であって、供給口と、排出口と、供給口と排出口との間に分岐を設けることにより、複数の冷却系統を有する配管ユニットと、複数の冷却系統のうちの少なくとも1つの冷却系統に設けられ、圧接型の半導体素子の冷却を行う冷却器と、を備え、冷却器は、圧接型の半導体素子と接触する本体部と、冷却系統に接続される一対の継手部と、本体部の内部に設けられ、一対の継手部を接続し、配管ユニットを介して供給された液体を本体部の内部に流すことにより、本体部の冷却を行うための流路と、を有し、複数の冷却系統のそれぞれに流れる液体の流量が所定範囲内となるように、一対の継手部及び流路の圧力損失を調整した液冷装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧接型の半導体素子を備えた電力変換装置に用いられる液冷装置であって、
供給口と、
排出口と、
前記供給口と前記排出口との間に分岐を設けることにより、複数の冷却系統を有する配管ユニットと、
前記複数の冷却系統のうちの少なくとも1つの冷却系統に設けられ、前記圧接型の半導体素子と接触し、前記圧接型の半導体素子と熱的に結合することにより、前記圧接型の半導体素子の冷却を行う液冷式の冷却器と、
を備え、
前記冷却器は、
前記圧接型の半導体素子と接触する本体部と、
前記少なくとも1つの冷却系統に接続される一対の継手部と、
前記本体部の内部に設けられ、前記一対の継手部を接続し、前記配管ユニットを介して供給された液体を前記本体部の内部に流すことにより、前記本体部の冷却を行うための流路と、
を有し、前記複数の冷却系統のそれぞれに流れる液体の流量が所定範囲内となるように、前記一対の継手部及び前記流路の圧力損失を調整した液冷装置。
【請求項2】
前記本体部は、前記圧接型の半導体素子の被接触面と接触する接触面を有し、
前記接触面の外形は、前記圧接型の半導体素子の前記被接触面の外形よりも大きく、
前記接触面は、前記圧接型の半導体素子の前記被接触面と接触する接触領域と、前記接触領域の外側の外側領域と、を有し、
前記流路は、前記接触面に投影した時に、前記接触領域と重なる内側部分と、前記外側領域と重なる外側部分と、を有し、
前記冷却器は、前記流路の前記外側部分の長さを調整することにより、前記複数の冷却系統のそれぞれに流れる液体の流量が前記所定範囲内となるように、前記流路の圧力損失を調整する請求項1記載の液冷装置。
【請求項3】
前記流路は、圧力損失を調整するための圧力損失調整部を有し、
前記冷却器は、前記複数の冷却系統のそれぞれに流れる液体の流量が前記所定範囲内となるように、前記流路の圧力損失を前記圧力損失調整部によって調整する請求項1又は2に記載の液冷装置。
【請求項4】
前記流路は、前記一対の継手部を接続する主流路部を有し、
前記圧力損失調整部は、前記主流路部から分岐した後、再び前記主流路部に合流する分岐流路である請求項3記載の液冷装置。
【請求項5】
前記流路は、前記一対の継手部を接続する主流路部を有し、
前記圧力損失調整部は、前記主流路部の経路上に設けられ、前記主流路部よりも断面積を縮小又は拡大した部分である請求項3記載の液冷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液冷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧接型の半導体素子を備えた電力変換装置に用いられる液冷装置がある。液冷装置は、圧接型の半導体素子と接触し、圧接型の半導体素子と熱的に結合することにより、圧接型の半導体素子の冷却(放熱)を行う液冷式の冷却器を有する。
【0003】
こうした液冷装置において、1つの供給口と1つの排出口との間に分岐を設けることにより、複数の冷却系統を有する配管構成とする場合がある。複数の冷却系統を有する液冷装置では、例えば、1つの供給源から供給された冷却液で複数の部材の冷却を行うことができ、電力変換装置の冷却を効率良く行うことができる。冷却器は、複数の冷却系統のうちの少なくとも1つの冷却系統の経路上に設けられる。
【0004】
一方で、複数の冷却系統を有する液冷装置では、複数の冷却系統のそれぞれに流れる液体の流量にアンバランスが生じ、複数の冷却系統のいずれかに適切な流量の液体を流すことができなくなってしまう可能性がある。換言すれば、複数の冷却系統のいずれかにおいて、部材を適切に冷却することができなくなってしまう可能性がある。
【0005】
このため、複数の冷却系統を有する液冷装置では、配管の長さを調整したり、流量調整弁を設けたりすることなどにより、複数の冷却系統の流量のアンバランスを抑制することが行われている。
【0006】
しかしながら、上記のように、配管の長さや流量調整弁の追加などによる流量アンバランスの調整方法では、部品点数の増加や液冷装置の大型化などの要因となってしまう。例えば、液冷装置のコスト増加の要因となってしまう可能性がある。
【0007】
このため、圧接型の半導体素子を備えた電力変換装置に用いられる複数の冷却系統を有する液冷装置では、より簡単な構成で複数の冷却系統の流量のアンバランスを抑制できるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の実施形態は、より簡単な構成で複数の冷却系統の流量のアンバランスを抑制できる液冷装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態によれば、圧接型の半導体素子を備えた電力変換装置に用いられる液冷装置であって、供給口と、排出口と、前記供給口と前記排出口との間に分岐を設けることにより、複数の冷却系統を有する配管ユニットと、前記複数の冷却系統のうちの少なくとも1つの冷却系統に設けられ、前記圧接型の半導体素子と接触し、前記圧接型の半導体素子と熱的に結合することにより、前記圧接型の半導体素子の冷却を行う液冷式の冷却器と、を備え、前記冷却器は、前記圧接型の半導体素子と接触する本体部と、前記少なくとも1つの冷却系統に接続される一対の継手部と、前記本体部の内部に設けられ、前記一対の継手部を接続し、前記配管ユニットを介して供給された液体を前記本体部の内部に流すことにより、前記本体部の冷却を行うための流路と、を有し、前記複数の冷却系統のそれぞれに流れる液体の流量が所定範囲内となるように、前記一対の継手部及び前記流路の圧力損失を調整した液冷装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
より簡単な構成で複数の冷却系統の流量のアンバランスを抑制できる液冷装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る液冷装置を模式的に表すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る冷却器を模式的に表す断面図である。
【
図3】実施形態に係る冷却器の変形例を模式的に表す断面図である。
【
図4】実施形態に係る冷却器の別の変形例を模式的に表す断面図である。
【
図5】実施形態に係る冷却器の別の変形例を模式的に表す断面図である。
【
図6】実施形態に係る冷却器の別の変形例を模式的に表す断面図である。
【0013】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0014】
図1は、実施形態に係る液冷装置を模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、液冷装置10は、供給口12と、排出口14と、配管ユニット16と、冷却器18と、を備える。液冷装置10は、圧接型の半導体素子2を備えた電力変換装置に用いられる。圧接型の半導体素子2は、例えば、サイリスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチング素子である。電力変換装置は、例えば、スイッチング素子である圧接型の半導体素子2のスイッチングにより、電力の変換を行う。圧接型の半導体素子2は、例えば、ダイオードなどの整流素子などでもよい。圧接型の半導体素子2は、上記に限ることなく、電力の変換に用いられる圧接型の任意の半導体素子でよい。電力変換装置は、圧接型の半導体素子2を用いて電力の変換を行う任意の電力変換装置でよい。
【0015】
配管ユニット16は、供給口12と排出口14とを接続する。換言すれば、配管ユニット16の一端は、供給口12に接続され、配管ユニット16の他端は、排出口14に接続される。供給口12及び排出口14は、例えば、図示を省略した液体(冷却液)の供給源に接続される。供給源は、例えば、ポンプである。供給源から供給された液体は、供給口12を介して液冷装置10に供給され、配管ユニット16を介して排出口14から液冷装置10の外部(供給源)に排出される。供給口12は、換言すれば、供給源から液体の供給を受ける部分である。排出口14は、換言すれば、供給源から供給された液体を外部に排出する部分である。
【0016】
配管ユニット16は、供給口12と排出口14との間に分岐を設けることにより、複数の冷却系統16a~16cを有する。複数の冷却系統16a~16cは、換言すれば、供給口12から供給された液体を排出口14に導く配管経路である。この例において、配管ユニット16は、3つの冷却系統16a~16cを有する。配管ユニット16に設けられる冷却系統の数は、3つに限ることなく、2つでもよいし、4つ以上でもよい。配管ユニット16に設けられる冷却系統の数は、任意の数でよい。
【0017】
冷却器18は、複数の冷却系統16a~16cのうちの少なくとも1つの冷却系統に設けられる。冷却器18は、圧接型の半導体素子2と接触し、圧接型の半導体素子2と熱的に結合することにより、圧接型の半導体素子2の冷却を行う液冷式の冷却器である。冷却器18は、例えば、圧接型の半導体素子2のヒートシンク、あるいは液冷フィンなどと呼ばれる場合もある。
【0018】
この例では、液冷装置10が、1つの冷却器18を備え、1つの冷却器18を1つの冷却系統16aに設けた例を示している。液冷装置10は、例えば、冷却器18と異なる別の通水部材20、22をさらに備える。通水部材20は、別の冷却系統16bに設けられ、通水部材22は、別の冷却系統16cに設けられる。通水部材20、22は、例えば、液冷式の電気用品などである。通水部材20、22は、例えば、電力変換装置の圧接型の半導体素子2以外の部材の冷却を行う。これにより、液冷装置10では、電力変換装置の複数の部材を同時に冷却することができ、電力変換装置の冷却を効率良く行うことができる。
【0019】
また、圧接型の半導体素子2を備えた電力変換装置では、例えば、複数の半導体素子2を備えるとともに、複数の冷却器18を備え、複数の半導体素子2と複数の冷却器18とを交互に積層し、複数の半導体素子2のそれぞれを複数の冷却器18のそれぞれで挟むように配置した積層構造とすることが行われている。このような積層構造とする場合には、液冷装置10は、複数の冷却器18を備え、複数の冷却器18で複数の半導体素子2の冷却を行ってもよい。液冷装置10は、複数の冷却系統のそれぞれに設けられた複数の冷却器18を備えた構成としてもよい。
【0020】
図2は、実施形態に係る冷却器を模式的に表す断面図である。
図2は、
図1のA1-A2線断面の一例を模式的に表す。
図2に表したように、冷却器18は、本体部30と、一対の継手部31、32と、流路34と、を有する。本体部30は、圧接型の半導体素子2と接触する。本体部30は、例えば、半導体素子2と接触することにより、半導体素子2の冷却に用いられるとともに、半導体素子2の電気的な接続にも用いられる。本体部30には、例えば、高い熱伝導率と高い導電性とを有する金属材料などが用いられる。
【0021】
一対の継手部31、32は、少なくとも1つの冷却系統16aに接続される。冷却器18は、例えば、一対の継手部31、32を介して冷却系統16aに接続されることにより、冷却系統16aの一部を構成する。冷却系統16aを構成する配管は、例えば、配管ユニット16の一方の分岐部分と継手部31とをつなぐ配管と、配管ユニット16の他方の分岐部分と継手部32とをつなぐ配管と、の2つの配管によって構成される。なお、冷却器18は、例えば、冷却系統16aに対して並列的に接続してもよい。
【0022】
流路34は、本体部30の内部に設けられ、一対の継手部31、32を接続する。流路34の一端は、継手部31に接続され、流路34の他端は、継手部32に接続される。これにより、流路34は、一対の継手部31、32の一方から供給された液体を、流路34の内部を流し、一対の継手部31、32の他方から排出することができる。流路34は、配管ユニット16を介して供給された液体を本体部30の内部に流すことにより、本体部30の冷却を行うための流路である。
【0023】
冷却器18は、複数の冷却系統16a~16cのそれぞれに流れる液体の流量が所定範囲内となるように、一対の継手部31、32及び流路34の圧力損失を調整する。
【0024】
本体部30は、圧接型の半導体素子2の被接触面2aと接触する接触面30aを有する(
図1参照)。
図2は、換言すれば、接触面30aに対して直交する方向から見た時の冷却器18の断面図である。接触面30aの外形は、圧接型の半導体素子2の被接触面2aの外形よりも大きい。このため、接触面30aは、圧接型の半導体素子2の被接触面2aと接触する接触領域30bと、接触領域30bの外側の外側領域30cと、を有する。
【0025】
図2では、半導体素子2の被接触面2aの外形を破線で表している。本体部30の接触面30aの外形の形状は、例えば、
図2の本体部30の外形の形状と実質的に同じである。例えば、
図2の本体部30の外形の形状を接触面30aの外形の形状とした場合、
図2において、接触領域30bは、破線で表した被接触面2aよりも内側の領域であり、外側領域30cは、破線で表した被接触面2aよりも外側の領域である。
【0026】
圧接型の半導体素子2の被接触面2aの外形の形状は、例えば、円形状である。圧接型の半導体素子2の外形形状は、例えば、円盤状である。本体部30の接触面30aの外形の形状は、例えば、矩形状である。但し、これらの形状は、上記に限ることなく、任意の形状でよい。
【0027】
流路34は、接触面30aに投影した時に、接触領域30bと重なる内側部分34aと、外側領域30cと重なる外側部分34bと、を有する。冷却器18は、例えば、流路34の外側部分34bの長さを調整することにより、複数の冷却系統16a~16cのそれぞれに流れる液体の流量が所定範囲内となるように、流路34の圧力損失を調整する。
【0028】
流路34は、例えば、接触領域30bの全体を冷却できるように設けられる。内側部分34aは、例えば、接触面30aに投影した時に、接触領域30bに対して全体的に重なるように設けられる。これにより、圧接型の半導体素子2の冷却を効率良く行うことができる。
【0029】
外側部分34bは、内側部分34aよりも少なく設けられる。例えば、流路34を接触面30aに投影した時の外側部分34bの面積は、流路34を接触面30aに投影した時の内側部分34aの面積よりも狭い。これにより、例えば、本体部30において圧接型の半導体素子2と接触しない部分を必要以上に冷却してしまうことを抑制することができる。また、例えば、本体部30において圧接型の半導体素子2と接触しない部分が必要以上に大きくなり、冷却器18が大型化してしまうことを抑制することができる。
【0030】
また、外側部分34bの少なくとも一部は、例えば、接触面30aに投影した時に、接触領域30bの外縁に沿うように設けられる。換言すれば、外側部分34bの少なくとも一部は、例えば、接触面30aに投影した時に、接触領域30bに近接して設けられる。これにより、例えば、圧接型の半導体素子2を外側部分34bによって冷却し易くし、圧接型の半導体素子2の冷却効率をより高めることができる。
【0031】
一対の継手部31、32は、例えば、本体部30の側端に設けられる。換言すれば、一対の継手部31、32は、例えば、接触面30aを本体部30の底面とした時に、本体部30の側面に設けられる。
【0032】
流路34は、例えば、本体部30の側端に設けられた一方の継手部31から本体部30の中心部に向かって渦巻き状に延びるとともに、本体部30の中心部から本体部30の側端に設けられた他方の継手部32に向かって渦巻き状に延びる二重の渦巻き状に形成される。
【0033】
これにより、上記のように、接触面30aに投影した時に、接触領域30bに対して全体的に重なるように内側部分34aを設けるとともに、外側部分34bの少なくとも一部を接触領域30bの外縁に沿うように設けることができる。
【0034】
また、例えば、外側部分34bを渦巻き状に延ばす長さ(渦巻きの周数)によって、流路34の外側部分34bの長さを調整することができ、複数の冷却系統16a~16cのそれぞれに流れる液体の流量が所定範囲内となるように、流路34の圧力損失を調整し易くすることができる。
【0035】
但し、流路34の形状は、上記に限ることなく、圧接型の半導体素子2の冷却を適切に行うことができる任意の形状でよい。一対の継手部31、32の配置は、上記に限ることなく、冷却系統16aに適切に接続することが可能な任意の配置でよい。
【0036】
以上、説明したように、本実施形態に係る液冷装置10では、冷却器18が、複数の冷却系統16a~16cのそれぞれに流れる液体の流量が所定範囲内となるように、一対の継手部31、32及び流路34の圧力損失を調整する。
【0037】
これにより、複数の冷却系統16a~16cのそれぞれに流れる液体の流量にアンバランスが生じてしまうことを抑制することができる。例えば、配管ユニット16の配管の長さを調整したり、配管ユニット16に流量調整弁を追加したりすることによって複数の冷却系統16a~16cの流量アンバランスを調整する場合と比べて、部品点数の増加や液冷装置10の大型化などを抑制することができる。複数の冷却系統16a~16cの流量アンバランスを抑制する際にも、液冷装置10のコストの増加を抑制することができる。
【0038】
このように、本実施形態に係る液冷装置10では、圧接型の半導体素子2を備えた電力変換装置に用いられる複数の冷却系統16a~16cを有する液冷装置10においても、より簡単な構成で複数の冷却系統16a~16cの流量のアンバランスを抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る液冷装置10では、冷却器18が、流路34の外側部分34bの長さを調整することにより、複数の冷却系統16a~16cのそれぞれに流れる液体の流量が所定範囲内となるように、流路34の圧力損失を調整する。これにより、例えば、冷却器18に対する液体(冷媒)の充填率を高め、冷却器18の熱容量を増加させることができる。従って、冷却器18の冷却能力をより高めることができる。このように、液冷装置10では、部品点数の増加や装置の大型化などを抑制しつつ複数の冷却系統16a~16cの流量アンバランスを抑制でき、冷却器18の冷却能力もより向上させることができる。
【0040】
図3は、実施形態に係る冷却器の変形例を模式的に表す断面図である。
図3に表したように、冷却器18aでは、流路34が、圧力損失を調整するための圧力損失調整部34cを有する。流路34は、一対の継手部31、32を接続する主流路部34mを有する。圧力損失調整部34cは、例えば、主流路部34mから分岐した後、再び主流路部34mに合流する分岐流路である。
【0041】
圧力損失調整部34cは、例えば、外側部分34bに設けられる。圧力損失調整部34cは、例えば、流路34の最も外側の位置に設けられる。これにより、分岐流路である圧力損失調整部34cを流路34に設け易くすることができる。但し、圧力損失調整部34c(分岐流路)は、外側部分34bに限ることなく、内側部分34aに設けてもよい。
【0042】
冷却器18aは、複数の冷却系統16a~16cのそれぞれに流れる液体の流量が所定範囲内となるように、流路34の圧力損失を圧力損失調整部34cによって調整する。このように、流路34に圧力損失調整部34cを設けることにより、流路34の圧力損失をより調整し易くすることができる。このように、流路34の圧力損失は、流路34の外側部分34bの長さに限ることなく、圧力損失調整部34cによって調整してもよい。この場合、流路34は、必ずしも外側部分34bを有しなくてもよい。
【0043】
また、圧力損失調整部34cを設けた部分の圧力損失は、主流路部34mのみの部分の圧力損失と異なる。圧力損失調整部34cを設けた部分の圧力損失は、例えば、主流路部34mのみの部分の圧力損失よりも高くなる。このため、圧力損失調整部34cを設けた部分では、主流路部34mのみの部分と比べて、レイノルズ数を増加させ、熱抵抗を低下させることができる。従って、圧力損失調整部34cを設けた部分では、主流路部34mのみの部分と比べて、冷却能力をより高めることができる。例えば、圧接型の半導体素子2の被接触面2aにおいて温度の偏りなどがある場合には、圧力損失調整部34cが、圧接型の半導体素子2の被接触面2aの最も温度の高い部分と対向するように、圧力損失調整部34cを配置する。これにより、圧接型の半導体素子2の冷却をより適切に行うことができる。
【0044】
図4は、実施形態に係る冷却器の別の変形例を模式的に表す断面図である。
図4に表したように、冷却器18bでは、圧力損失調整部34cは、主流路部34mの経路上に設けられ、主流路部34mよりも断面積を縮小した部分である。流路34の圧力損失は、流路34の断面積を縮小することによっても調整することができる。また、流路34の圧力損失は、流路34の断面積を拡大することによっても調整することができる。このように、圧力損失調整部34cは、分岐流路に限ることなく、主流路部34mよりも断面積を縮小又は拡大した部分としてもよい。
【0045】
図4では、流路34の幅を調整することによって、流路34の断面積を調整している。流路34の断面積は、上記に限ることなく、流路34の高さを調整することによって調整してもよい。流路34の断面積は、流路34の形状による調整に限ることなく、例えば、流路34の内部に突起などを設けることによって調整してもよい。
【0046】
図5は、実施形態に係る冷却器の別の変形例を模式的に表す断面図である。
図5に表したように、冷却器18cは、一対の継手部31、32の管路の長さを調整することにより、複数の冷却系統16a~16cのそれぞれに流れる液体の流量が所定範囲内となるように、一対の継手部31、32の圧力損失を調整する。
【0047】
このように、流路34に限ることなく、一対の継手部31、32の圧力損失を調整することによって、複数の冷却系統16a~16cの流量アンバランスを抑制してもよい。一対の継手部31、32の圧力損失は、一対の継手部31、32の管路の長さに限ることなく、一対の継手部31、32の管路の断面積(管路の収縮又は拡大)によって調整してもよい。
【0048】
図6は、実施形態に係る冷却器の別の変形例を模式的に表す断面図である。
図6に表したように、冷却器18dは、流路34の圧力損失を任意に変更可能とする圧力損失変更部36をさらに有する。圧力損失変更部36は、例えば、流路34の経路上に設けられ、内部の流路の断面積を変更可能とすることにより、流路34の圧力損失を変更可能とする。圧力損失変更部36は、例えば、バルブである。圧力損失変更部36は、例えば、外部から入力される信号に基づいて、流路34の圧力損失(断面積)を変更する。
【0049】
このように、圧力損失変更部36を設けることにより、複数の冷却系統16a~16cのそれぞれに流れる液体の流量をより調整し易くすることができる。例えば、複数の冷却系統16a~16cのそれぞれの圧力損失が分からない場合などにも、圧力損失変更部36で流路34の圧力損失を変更することにより、複数の冷却系統16a~16cのそれぞれに流れる液体の流量を所定範囲内に収めることが可能となる。これにより、複数の冷却系統16a~16cの流量アンバランスをより適切に抑制することができる。
【0050】
圧力損失変更部36は、例えば、外部から力を加えることによって内部の流路の断面積を変更可能とする構成などでもよい。圧力損失変更部36の構成は、流路34の圧力損失を変更可能な任意の構成でよい。
【0051】
なお、冷却器18、冷却器18a~冷却器18dの構成は、任意に組み合わせ可能である。冷却器の構成は、例えば、複数の圧力損失調整部34cや複数の圧力損失変更部36を有する構成などでもよい。冷却器の構成は、複数の冷却系統16a~16cのそれぞれに流れる液体の流量が所定範囲内となるように、一対の継手部31、32及び流路34の圧力損失を調整した任意の構成でよい。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
2…圧接型の半導体素子、 10…液冷装置、 12…供給口、 14…排出口、 16…配管ユニット、 18、18a~18d…冷却器、 20、22…通水部材、 30…本体部、 31、32…継手部、 34…流路、 36…圧力損失変更部