(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135975
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車体下部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B62D25/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046911
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅香 亮輔
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB06
3D203BB08
3D203BB12
3D203BB20
3D203BB22
3D203BB54
3D203BB55
3D203BB56
3D203BB57
3D203BB59
3D203CA25
3D203CA33
3D203CA36
3D203CA53
3D203CA62
3D203CA67
(57)【要約】
【課題】バリア側面衝突、及び、ポール側面衝突の何れに対してもクロスメンバの変形をコントロールして、車体側部の変形から乗員を保護することができる車体下部構造を提供する。
【解決手段】車体下部構造は、車体2のフロアパネル3の上面に設けられ、車幅方向に延在するクロスメンバ本体9と、クロスメンバ本体9に沿ってクロスメンバ本体9の車幅方向の一部の領域に延在するリンフォース10と、を備え、クロスメンバ本体9は、リンフォース10が延在する領域内の車幅方向の中途に、車幅方向と交差する方向に延びるビード8eを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のフロアパネルの上面に設けられ、車幅方向に延在するクロスメンバ本体と、
前記クロスメンバ本体に沿って前記クロスメンバ本体の前記車幅方向の一部の領域に延在するリンフォースと、を備え、
前記クロスメンバ本体は、前記リンフォースが延在する前記領域内の前記車幅方向の中途に、前記車幅方向と交差する方向に延びるビードを有することを特徴とする車体下部構造。
【請求項2】
前記ビードは、前記クロスメンバ本体の前縦壁部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車体下部構造。
【請求項3】
前記リンフォースは、前記ビードと対応する位置に切り欠き部を有することを特徴とする請求項1に記載の車体下部構造。
【請求項4】
前記リンフォースは、前記クロスメンバ本体の前記車幅方向の外側の領域に配設されることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の車体下部構造。
【請求項5】
前記ビードは、前記クロスメンバ本体が側方から衝突を受けた際に前記クロスメンバ本体を前記車幅方向の内側に圧潰させる凹形状をなしていることを特徴とする請求項2に記載の車体下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアパネルの上面に設けられるクロスメンバ、及び、クロスメンバに配設されるリンフォースを備えた車体下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両の車体下部は、車体の床部を形成するフロアパネルと、フロアパネルの車幅方向両側において、車体前後方向に延在するサイドシルと、を備えて構成されている。フロアパネルの車幅方向中央部には、例えば、フロアパネルから車体上方に突出して車体前後方向に延在するフロアトンネルが設けられている。
【0003】
このサイドシルと、フロアトンネルとの間には、例えば、車幅方向に延在する左右一対のクロスメンバが設けられている。このクロスメンバは、一般的に、板金部材を断面略ハット形状にプレス成型することによって成型されている。このように成型されたクロスメンバは、フロアパネルの上面に設けられている。
【0004】
このクロスメンバは、車両の側面衝突(以下、側突と称す)時の衝突荷重を吸収する。これにより、クロスメンバは、車両の側突の際、車体側部の変形によるドア等の車室内への浸入を低減する。したがって、クロスメンバには、衝突荷重を吸収するための耐力が求められる。
【0005】
このような車両の側突時のクロスメンバの耐力を向上するための車体下部構造として、従来様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1(特許第5544654号公報)には、クロスメンバの前壁面又は後壁面において、車幅方向に沿って形成され、且つ、車体上下方向に所定の間隔を隔てて配置された一対の横ビードと、一対の横ビードの車幅方向外端部を接続する接続ビードと、を備えたクロスメンバ構造が開示されている。このようなクロスメンバは、座屈耐力を増大することができる。これにより、特許文献1のクロスメンバは、バリア側面衝突(他車両のバンパ部等との側面衝突)のように広い面積の衝突物がクロスメンバの側方から入力した場合、座屈することなく、クロスメンバの圧潰によって衝突荷重を吸収することが可能な構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された技術では、局所的に大きな衝突荷重に対し、十分な衝突荷重の吸収が困難となる虞がある。例えば、車体へのポール側面衝突(電柱等のポール状の物体との側面衝突)によって、クロスメンバの前方に局所的に大きな衝突荷重が入力された際には、クロスメンバの圧潰による衝突荷重の吸収を十分に発揮することが困難となる虞がある。この場合、クロスメンバは、バリア側面衝突時とは異なり、十分に圧潰する前に座屈する虞がある。これにより、クロスメンバは、車体側部の変形を十分に低減することができない虞がある。
【0008】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたもので、バリア側面衝突、及び、ポール側面衝突の何れに対してもクロスメンバの変形をコントロールして、車体側部の変形から乗員を保護できる車体下部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による車体下部構造は、車体のフロアパネルの上面に設けられ、車幅方向に延在するクロスメンバ本体と、前記クロスメンバ本体に沿って前記クロスメンバ本体の前記車幅方向の一部の領域に延在するリンフォースと、を備え、前記クロスメンバ本体は、前記リンフォースが延在する前記領域内の前記車幅方向の中途に、前記車幅方向と交差する方向に延びるビードを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車体下部構造によれば、バリア側面衝突、及び、ポール側面衝突の何れに対してもクロスメンバの変形をコントロールして、車体側部の変形から乗員を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】車体下部左側のフレーム構造を拡大して示す斜視図
【
図5】車体下部左側の第2のクロスメンバの分解斜視図
【
図8】バリア側面衝突時におけるフレーム構造の変形状態を示す平面図
【
図9】ポール側面衝突時におけるフレーム構造の変形状態を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面を参照して本発明の形態を説明する。
【0013】
なお、以下の説明に用いる図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものである。したがって、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、及び各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるのもではない。
【0014】
本実施形態における車体下部構造を適用した一例として、自動車の車体下部の構成について説明する。なお、以下の説明において、「接合」と記載されている場合、その接合方法は、溶融接合、或いは、機械的接合等を代表とする接合手段を用いて行われるものとする。
【0015】
図1,2に示すように、車両1の車体2の下部は、例えば、フロアパネル3と、一対のサイドシル4と、を有して構成されている。
【0016】
フロアパネル3は、車体2の床部を形成している。フロアパネル3の車幅方向の中央部には、フロアトンネル5が形成されている。
【0017】
一対のサイドシル4は、フロアパネル3の車幅方向両側において、車体前後方向に延在されている。
【0018】
これらフロアパネル3、各サイドシル4は、一般に、高強度鋼板等からなる板金部材をプレス加工することによって形成されている。
【0019】
このように構成される車体下部において、フロアトンネル5の左右両側には、複数のクロスメンバ7,8が設けられている。具体的には、第1のクロスメンバ7と、第2のクロスメンバ8と、がそれぞれ設けられている。なお、フロアトンネル5の車幅方向外側の基本構造は、左右対称となっている。このため、以下においては、一例として車体左側部について説明する。
【0020】
第1のクロスメンバ7は、例えば、フロアパネル3の上面において、サイドシル4とフロアトンネル5との間に設けられている。また、第1のクロスメンバ7は、車体前方側に配置されている。この第1のクロスメンバ7は、例えば、高強度鋼板からなる板金部材をプレス成型することによって形成されている。
【0021】
具体的には、第1のクロスメンバ7は、
図3,4に示すように、天板部7aと、斜壁部7bと、一対の縦壁部7cと、一対のフランジ7dと、を有して構成されている。
【0022】
天板部7aは、フロアパネル3の上方に対向する位置に配置されている。
【0023】
斜壁部7bは、天板部7aの前縁部からフロアパネル3に向けて前方斜め下側に傾斜して延在されている。
【0024】
一対の縦壁部7cは、斜壁部7bの下端部、及び、天板部7aの後縁部から下側に向けて延在されている。
【0025】
一対のフランジ7dは、各縦壁部7cの下端部から車体前後方向に延出されている。
【0026】
これらにより、第1のクロスメンバ7を車体前後方向に沿って切断した断面は、車体前側の一部に傾斜面を有する略ハット形状となっている(
図4参照)。
【0027】
なお、天板部7aと各縦壁部7cとのなす角度θ1は、略90度又はやや鈍角となるように設定されている。
【0028】
さらに、第1のクロスメンバ7の車幅方向両端縁部には、
図3に示すように、一対のフランジ7eが形成されている。
【0029】
このように構成された第1のクロスメンバ7は、各フランジ7d、及び、各フランジ7eによって車体2に接合されている。
【0030】
すなわち、第1のクロスメンバ7は、前後の各フランジ7dによってフロアパネル3の上面に接合されている。これにより、第1のクロスメンバ7とフロアパネル3との断面は、閉断面形状となっている。また、第1のクロスメンバ7は、左右の各フランジ7eによって、サイドシル4の車幅方向の内側面、及び、フロアトンネル5の車幅方向の外側面に接合されている。
【0031】
このような構成により、第1のクロスメンバ7は、車体側部から衝突荷重が入力された際に、フロアパネル3及びサイドシル4の変形を抑制することが可能となっている。
【0032】
第2のクロスメンバ8は、例えば、フロアパネル3の上面において、サイドシル4とフロアトンネル5との間に設けられている。また、第2のクロスメンバ8は、
図2,3に示すように、第1のクロスメンバ7よりも後方に配置されている。さらに、第2のクロスメンバ8は、センタピラー12の車幅方向内側、且つ、車体前後方向においてセンタピラー12の前部と一部重畳する位置に配置されている。この第2のクロスメンバ8は、クロスメンバ本体9と、リンフォース10と、を有して構成されている。
【0033】
クロスメンバ本体9は、例えば、高強度鋼板からなる板金部材をプレス成型することによって形成されている。この成型により、クロスメンバ本体9の基本形状は、断面略ハット形状となっている。
【0034】
具体的に説明すると、クロスメンバ本体9は、
図5,6,7に示すように、天板部8aと、前縦壁部8bと、後縦壁部8cと、一対のフランジ8dと、を有して構成されている。
【0035】
天板部8aは、フロアパネル3の上方に対向する位置に配置されている。天板部8aには、後述するリンフォース10の位置決め用の複数の突起10fを挿入するための複数の孔8kが設けられている(
図5参照)。
【0036】
前縦壁部8bと後縦壁部8cの各々は、天板部8aの前縁部及び後縁部からそれぞれ下側に向けて延在されている。
【0037】
一対のフランジ8dは、前縦壁部8b及び後縦壁部8cの各下端部から車体前後方向に延出されている。
【0038】
なお、天板部8aと、前縦壁部8b及び後縦壁部8cと、のなす角度θ2は、略90度又はやや鈍角となるように設定されている。
【0039】
このような基本形状を有するクロスメンバ本体9には、車体側部から衝突荷重が入力された際、前縦壁部8bを車幅方向内側に圧潰させるためのビード8eが設けられている。
【0040】
ビード8eは、例えば、
図5,7に示すように、前縦壁部8bの車幅方向の中途の位置に設けられている。また、ビード8eは、前縦壁部8bの車幅方向と交差する方向(車体上下方向)に延在されている。そして、このビード8eは、前縦壁部8bから車体後方に向けた凹形状をなしている。
【0041】
具体的に説明すると、ビード8eは、前縦壁部8bの車幅方向の略中央部に設けられている。そして、ビード8eは、例えば、断面略U字形状をなす凹溝によって構成されている。すなわち、ビード8eは、中途に屈曲部を有しない湾曲形状をなしている。
【0042】
また、フランジ8dには、ビード8eに対応する位置に切り欠き部8hが形成されている。
【0043】
切り欠き部8hは、例えば、フランジ8dの前縁部からビード8eの下端部に向けた略U字形状をなしている。すなわち、切り欠き部8hは、中途に屈曲部を有しない湾曲形状をなしている。
【0044】
このような構成によってビード8eは、衝突荷重が入力された際、前縦壁部8bを車幅方向内側に圧潰させるための変形の起点として機能する。
【0045】
なお、所定以上の衝突荷重が入力された際に、前縦壁部8bを所定の位置で的確に圧潰させるため、ビード8eの配置、ビード8eの幅、ビード8eの高さ、及び、ビード8eの深さ等の各種条件は、予め実験やシミュレーション等から求められている。
【0046】
このように構成された、クロスメンバ本体9の車幅方向両端縁部には、
図3,5に示すように、一対のフランジ8iが形成されている。
【0047】
一対のフランジ8iは、車幅方向に延在する各フランジ8dに連続している。
【0048】
これら、各フランジ8d、及び、各フランジ8iによってクロスメンバ本体9は、車体2に接合されている。
【0049】
すなわち、クロスメンバ本体9は、前後の各フランジ8dによってフロアパネル3の上面に接合されている。これにより、クロスメンバ本体9とフロアパネル3との断面は、閉断面形状となっている。また、クロスメンバ本体9は、左右の各フランジ8iによって、サイドシル4の車幅方向の内側面、及び、フロアトンネル5の車幅方向の外側面に接合されている。
【0050】
このようにクロスメンバ本体9とフロアパネル3とによって形成された閉断面内には、側面衝突の際に第2のクロスメンバ8を補剛するためのリンフォース10が配置されている。リンフォース10は、クロスメンバ本体9の車幅方向の一部の領域に延在されている。
【0051】
具体的には、リンフォース10は、
図5に示すように、クロスメンバ本体9に沿って車幅方向に延在されている。また、リンフォース10は、クロスメンバ本体9の車幅方向外側の領域に配設されている。
【0052】
ここで、リンフォース10が配置される領域は、クロスメンバ本体9に形成されたビード8eを含む領域に設定されている。すなわち、リンフォース10が配置される領域の車幅方向の外側の端部は、例えば、クロスメンバ本体9の車幅方向外側の端部と略一致する位置に設定されている。また、リンフォース10が配置される領域の車幅方向内側の端部は、ビード8eよりも車幅方向内側の位置に設定されている。
【0053】
このように配置されるリンフォース10は、例えば、高強度鋼板からなる板金部材をプレス成型することによって形成されている。この成型により、リンフォース10は、
図6に示すように、天板部10aと、前縦壁部10bと、後縦壁部10cと、を有する基本形状をなしている。
【0054】
天板部10aは、クロスメンバ本体9の天板部8aの内面に沿って延在されている。この天板部10aには、クロスメンバ本体9に対し、位置決めするための複数の突起10fが設けられている(
図5参照)。各突起10fは、クロスメンバ本体9の各孔8kに対応する位置に設けられている。
【0055】
前縦壁部10bと後縦壁部10cの各々は、天板部10aの前縁部及び後縁部からそれぞれ下側に向けて延在されている。
【0056】
なお、天板部10aと、前縦壁部10b及び後縦壁部10cと、のなす角度θ3は、例えば、角度θ2と略同等に設定されている。これにより、リンフォース10の外面は、クロスメンバ本体9の内面に面接触可能な形状となっている。すなわち、リンフォース10の天板部10aの外面は、クロスメンバ本体9の天板部8aの内面に面接触可能となっている。また、リンフォース10の前縦壁部10b及び後縦壁部10cの外面は、クロスメンバ本体9の前縦壁部8b及び後縦壁部8cの内面に面接触可能となっている。
【0057】
このような基本形状を有するリンフォース10の前縦壁部10bには、車幅方向の中途に切り欠き部10dが形成されている。この切り欠き部10dは、
図5に示すように、クロスメンバ本体9のビード8eに対応する位置に設けられている。
【0058】
具体的に説明すると、切り欠き部10dは、例えば、
図5,7に示すように、上下方向に延在されている。切り欠き部10dの下端部は、開放されている。また、切り欠き部10dの上端部は、天板部10aの一部に延出されている。このように延出された切り欠き部10dの上端部は、前縦壁部10b側から天板部10aの後方に向けた略U字形状をなしている。すなわち、切り欠き部10d上端部は、中途に屈曲部を有しない湾曲形状をなしている。
【0059】
なお、切り欠き部10dの幅及び後方へ向けた長さ(深さ)の寸法は、ビード8eの寸法よりもやや大きく設定されている。
【0060】
このように構成されたリンフォース10は、クロスメンバ本体9に対して、下側から当接された状態において接合されている。
【0061】
その際、リンフォース10は、各突起10fを用いて、クロスメンバ本体9に対して位置決めされている。すなわち、各突起10fは、クロスメンバ本体9の孔8kに下側から挿入されることにより、リンフォース10をクロスメンバ本体9に対して位置決めする。このように位置決めされたリンフォース10の天板部10a、前縦壁部10b、及び、後縦壁部10cは、クロスメンバ本体9の天板部8a、前縦壁部8b、及び、後縦壁部8cに対してそれぞれ面接触された状態にて接合されている。これにより、リンフォース10は、クロスメンバ本体9に対して、強固に固定される(
図5参照)。
【0062】
このようにクロスメンバ本体9に接合されたリンフォース10の切り欠き部10dは、リンフォース10の車幅方向の中途に脆弱部を形成する。加えて、切り欠き部10dは、第2のクロスメンバ8に所定以上の衝突荷重が入力された場合にも、的確にビード8eに衝突荷重を集中させるように機能する。
【0063】
これにより、切り欠き部10dは、クロスメンバ本体9に延在するリンフォース10の車幅方向両端部のクロスメンバ本体9との境界にのみ荷重が集中することを抑制可能となっている。
【0064】
なお、第2のクロスメンバ8に対して、所定以上の衝突荷重が入力された際、的確にビード8eに衝突荷重を集中させるために、切り欠き部10dの幅、切り欠き部10dの高さ、及び、切り欠き部10dの深さ等の各種条件は、予め実験やシミュレーション等から求められている。
【0065】
このような実施形態によれば、車体下部構造は、車体2のフロアパネル3の上面に設けられ、車幅方向に延在するクロスメンバ本体9と、クロスメンバ本体9に沿ってクロスメンバ本体9の車幅方向の一部の領域に延在するリンフォース10と、を備え、クロスメンバ本体9は、リンフォース10が延在する領域内の車幅方向の中途に、車幅方向と交差する方向に延びるビード8eを有する。これらの構成により、車体下部構造は、バリア側面衝突、及び、ポール側面衝突の何れに対してもクロスメンバ8の変形をコントロールして、車体側部の変形から乗員を保護することができる。
【0066】
すなわち、車体下部構造は、車幅方向に延在するクロスメンバ本体9と、クロスメンバ本体9に沿って車幅方向の一部の領域を補剛するリンフォース10と、を有して構成されるクロスメンバ8(第2のクロスメンバ8)を備えている。さらに、クロスメンバ本体9には、リンフォース10が延在する領域内において、車幅方向と交差する方向に延びるビード8eが設けられている。
【0067】
このような構成により、クロスメンバ8を備えた車体下部構造は、
図8に示すように、他車両のバンパ13等からの衝突荷重が車両1の側面に分散して入力されるバリア側面衝突に対して、十分な抗力を発生させることができる。
【0068】
具体的に説明すると、リンフォース10は、衝突初期に、クロスメンバ本体9において衝突荷重が集中する領域を補剛する。このリンフォース10の作用により、車体下部構造は、衝突初期におけるクロスメンバ8の大幅な圧潰を抑制することができる。
【0069】
これにより、車体下部構造は、バリア側面衝突時において、ドアの浸入速度、及び、ストラクチャ変位量を抑制できる。なお、ストラクチャ変位量とは、例えば、サイドシル4、センタピラー12等を備えて構成されたサイドフレームの変位量である。
【0070】
このようなリンフォース10は、クロスメンバ本体9の車幅方向の一部の領域に設けられている。これにより、リンフォース10をクロスメンバ本体9の車幅方向の全域に設けた構成に比べ、大幅な重量の増加等を招くことなく、クロスメンバ8を補剛することができる。
【0071】
特に、リンフォース10は、クロスメンバ本体9の車幅方向の外側の領域に設けられている。これにより、クロスメンバ8は、バリア側面衝突の衝突初期における衝突荷重に対する抗力を効率よく発生させることができる。
【0072】
また、
図9に示すように、車体下部構造は、電柱14等が車両1の側面に衝突するポール側面衝突時においても、大幅に座屈することなく十分な抗力を発生させることができる。
【0073】
具体的に説明すると、ポール側面衝突時において、クロスメンバ8には、バリア側面衝突よりも局所的に大きな衝突荷重が入力される。このようなポール側面衝突時には、クロスメンバ8は、リンフォース10が設けられた領域内においても、ビード8eを起点として変形を開始する。これにより、クロスメンバ8の変形箇所は、主に、リンフォース10が途切れる境界部分と、ビード8eが設けられた部分と、に分散される。したがって、クロスメンバ8は、ポール側面衝突時においても局所的に大きく座屈することなく、十分な抗力を発生させることができる。これにより、クロスメンバ8の変形に伴うフロアパネル3の変形を抑制することができる。特に、クロスメンバ8よりも後方において、フロアパネル3の撓み或いは捲れ等の変形を抑制することができる。
【0074】
その際、ビード8eは、クロスメンバ8の圧潰による屈曲方向をコントロールする。具体的には、本実施形態のビード8eは、クロスメンバ本体9の前縦壁部8bに設けられている。これにより、ビード8eは、クロスメンバ8の前縦壁部8bに圧潰の起点を発生させる。このビード8eによる起点により、クロスメンバ8は、車体2の後方に向けて屈曲するようにコントロールされる。
【0075】
これにより、ポール側面衝突時の大きな衝突荷重によってクロスメンバ8が座屈する場合にも、フロアパネル3の後方部の撓み或いは捲れ等の変形を抑制することができる。すなわち、クロスメンバ8が車体2の後方に向けて座屈することにより、クロスメンバ8の座屈時に、フロアパネル3の後方部が車体2の前方に引き寄せられることを防止できる。したがって、フロアパネル3の後縁部が車体骨格から剥離することを抑制することができ、フロアパネル3の後方部の撓み或いは捲れ等の変形を抑制することができる。
【0076】
これらにより、本実施形態の車体下部構造は、バリア側面衝突、及び、ポール側面衝突の何れに対してもクロスメンバ8の変形をコントロールして、車体側部の変形から乗員を保護することができる。
【0077】
加えて、リンフォース10には、ビード8eに対応する位置に切り欠き部10dが設けられている。この切り欠き部10dは、リンフォース10の車幅方向の中途に脆弱部を形成する。したがって、切り欠き部10dが形成されたリンフォース10は、所定以上の衝突荷重が入力された場合にも、クロスメンバ本体9とリンフォース10との境界に集中する荷重をより効果的に抑制することができる。
【0078】
なお、本実施形態において、クロスメンバ8は、フロアパネル3の上面において、サイドシル4とフロアトンネル5との間に設けた例を説明したが、フロアトンネル5を跨いで車幅方向に延在する構成としてもよい。また、フロアパネル3にフロアトンネル5が形成されていない車種において、クロスメンバ8は、車幅方向の全域に延在する構成とすることも可能である。
【0079】
以上の実施形態に記載した発明は、それらの形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上述の実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0080】
また、上述の実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0081】
1・・・車両
2・・・車体
3・・・フロアパネル
4・・・サイドシル
5・・・フロアトンネル
7・・・第1のクロスメンバ(クロスメンバ)
7a・・・天板部
7b・・・斜壁部
7c・・・縦壁部
7d・・・フランジ
7e・・・フランジ
8・・・第2のクロスメンバ(クロスメンバ)
8a・・・天板部
8b・・・前縦壁部
8c・・・後縦壁部
8d・・・フランジ
8e・・・ビード
8h・・・切り欠き部
8i・・・フランジ
8k・・・孔
9・・・クロスメンバ本体
10・・・リンフォース
10a・・・天板部
10b・・・前縦壁部
10c・・・後縦壁部
10d・・・切り欠き部
10f ・・・突起
12・・・センタピラー
13・・・バンパ
14・・・電柱
θ1・・・角度
θ2・・・角度
θ3・・・角度