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特開2024-136290生育状態推定装置、植物管理システム、生育状態推定方法、植物管理方法、及びプログラム
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  • 特開-生育状態推定装置、植物管理システム、生育状態推定方法、植物管理方法、及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136290
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】生育状態推定装置、植物管理システム、生育状態推定方法、植物管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20240927BHJP
   A01G 31/00 20180101ALI20240927BHJP
【FI】
A01G7/00 603
A01G31/00 612
A01G31/00 601A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047369
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】初谷 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】王 俊善
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 平理
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314MA21
2B314MA38
2B314MA39
2B314MA40
2B314MA42
2B314MA45
2B314MA52
2B314NC08
2B314PB22
2B314PB44
2B314PD57
2B314PD58
2B314PD59
2B314PD63
(57)【要約】
【解決手段】生育状態推定装置は、第1時点に撮像された植物を含む第1画像と、前記第1時点より後の第2時点に撮像された前記植物を含む第2画像とを取得する取得部を備えてよい。生育状態推定装置は、前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれから前記植物の同一の特定部位を特定する特定部を備えてよい。生育状態推定装置は、前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれに含まれる前記同一の特定部位の状態を比較することで、前記植物の生育状態を推定する推定部を備えてよい。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1時点に撮像された植物を含む第1画像と、前記第1時点より後の第2時点に撮像された前記植物を含む第2画像とを取得する取得部と、
前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれから前記植物の同一の特定部位を特定する特定部と、
前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれに含まれる前記同一の特定部位の状態を比較することで、前記植物の生育状態を推定する推定部と
を備える生育状態推定装置。
【請求項2】
前記植物の特定部位の時間経過に応じた前記植物の特定部位の生育状態の変化を示す変化情報に基づいて、前記第1時点から前記第2時点までの時間経過で変化する前記同一の特定部位の生育状態の変化を予測する予測部をさらに備え、
前記特定部は、前記予測部の予測結果にさらに基づいて、前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれから前記同一の特定部位を特定する、請求項1に記載の生育状態推定装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記植物の生育状態として、前記植物の生理障害または病害虫に起因する障害の状態を推定する、請求項1に記載の生育状態推定装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれに含まれる前記同一の特定部位の状態を比較することで、前記同一の特定部位の大きさの推移と、前記同一の特定部位の障害部分の大きさの推移とを特定し、前記同一の特定部位の大きさの推移と、前記同一の特定部位の障害部分の大きさの推移との比較に基づいて、前記同一の特定部位の障害の進行度を前記植物の生育状態として推定する、請求項3に記載の生育状態推定装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記第1時点から前記第2時点までの前記同一の特定部位の大きさの増加率と前記同一の特定部位の障害部分の大きさの増加率との比に基づいて、前記同一の特定部位の障害の進行度を前記植物の生育状態として推定する、請求項4に記載の生育状態推定装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1つに記載の生育状態推定装置と、
前記推定部による前記植物の生育状態の推定結果に応じた予め定められた条件に従って、前記植物が栽培されている植物工場内の環境を制御する環境制御設備を制御する環境制御部と
を備える植物管理システム。
【請求項7】
前記予め定められた条件は、特定部位の生育状態と、培地の含水量、電気伝導度、水素イオン指数、特定部位の周囲の温度、湿度、特定部位に照射される光量、及び二酸化炭素濃度の少なくとも1つとの関係を示し、
前記環境制御部は、前記予め定められた条件に従って、前記環境制御設備を制御することで、培地の含水量、電気伝導度、水素イオン指数、特定部位の周囲の温度、湿度、葉に照射される光量、及び二酸化炭素濃度の少なくとも1つを調整する、請求項6に記載の植物管理システム。
【請求項8】
第1時点に撮像された植物を含む第1画像と、前記第1時点より後の第2時点に撮像された前記植物を含む第2画像とを取得する段階と、
前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれから前記植物の同一の特定部位を特定する段階と、
前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれに含まれる前記同一の特定部位の状態を比較することで、前記植物の生育状態を推定する段階と
を備える生育状態推定方法。
【請求項9】
第1時点に撮像された植物を含む第1画像と、前記第1時点より後の第2時点に撮像された前記植物を含む第2画像とを取得する段階と、
前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれから前記植物の同一の特定部位を特定する段階と、
前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれに含まれる前記同一の特定部位の状態を比較することで、前記植物の生育状態を推定する段階と、
前記植物の生育状態の推定結果に応じた予め定められた条件に従って、前記植物が栽培されている植物工場内の環境を制御する環境制御設備を制御する段階と
を備える植物管理方法。
【請求項10】
第1時点に撮像された植物を含む第1画像と、前記第1時点より後の第2時点に撮像された前記植物を含む第2画像とを取得する段階と、
前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれから前記植物の同一の特定部位を特定する段階と、
前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれに含まれる前記同一の特定部位の状態を比較することで、前記植物の生育状態を推定する段階と
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生育状態推定装置、植物管理システム、生育状態推定方法、植物管理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザスキャナ4により窒素の含有量に対して反射率の異なる2波長からなるパルス測距光をスキャンし、2波長を分離して受光し、各パルス測距光毎に及び2波長毎に、測距値、光量を検出し、測距値に基づき作物の丈を検出し、2波長の受光光量比を検出し、検出された丈、受光光量比に基づき作物の生育状態を検出することが記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2022-54395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
植物の生育状態を推定する処理の負担を低減することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様に係る生育状態推定装置は、第1時点に撮像された植物を含む第1画像と、前記第1時点より後の第2時点に撮像された前記植物を含む第2画像とを取得する取得部を備えてよい。前記生育状態推定装置は、前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれから前記植物の同一の特定部位を特定する特定部を備えてよい。前記生育状態推定装置は、前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれに含まれる前記同一の特定部位の状態を比較することで、前記植物の生育状態を推定する推定部を備えてよい。
【0005】
前記生育状態推定装置は、特定部位の時間経過に応じた特定部位の生育状態の変化を示す変化情報に基づいて、前記第1時点から前記第2時点までの時間経過で変化する前記同一の特定部位の生育状態の変化を予測する予測部をさらに備えてよい。前記特定部は、前記予測部の予測結果にさらに基づいて、前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれから前記同一の特定部位を特定してよい。
【0006】
いずれかの前記生育状態推定装置において、前記推定部は、前記植物の生育状態として、前記植物の生理障害または病害虫に起因する障害の状態を推定してよい。
【0007】
いずれかの前記生育状態推定装置において、前記推定部は、前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれに含まれる前記同一の特定部位の状態を比較することで、前記同一の特定部位の大きさの推移と、前記同一の特定部位の障害部分の大きさの推移とを特定し、前記同一の特定部位の大きさの推移と、前記同一の特定部位の障害部分の大きさの推移との比較に基づいて、前記同一の特定部位の障害の進行度を前記植物の生育状態として推定してよい。
【0008】
いずれかの前記生育状態推定装置において、前記推定部は、前記第1時点から前記第2時点までの前記同一の特定部位の大きさの増加率と前記同一の特定部位の障害部分の大きさの増加率との比に基づいて、前記同一の特定部位の障害の進行度を前記植物の生育状態として推定してよい。
【0009】
本発明の一態様に係る植物管理システムは、前記生育状態推定装置と、前記推定部による前記植物の生育状態の推定結果に応じた予め定められた条件に従って、前記植物が栽培されている植物工場内の環境を制御する環境制御設備を制御する環境制御部とを備えてよい。
【0010】
前記植物管理システムにおいて、前記予め定められた条件は、特定部位の生育状態と、培地の含水量、電気伝導度、水素イオン指数、特定部位の周囲の温度、湿度、特定部位に照射される光量、及び二酸化炭素濃度の少なくとも1つとの関係を示してよい。前記環境制御部は、前記予め定められた条件に従って、前記環境制御設備を制御することで、培地の含水量、電気伝導度、水素イオン指数、特定部位の周囲の温度、湿度、特定部位に照射される光量、及び二酸化炭素濃度の少なくとも1つを調整してよい。
【0011】
本発明の一態様に係る生育状態推定方法は、第1時点に撮像された植物を含む第1画像と、前記第1時点より後の第2時点に撮像された前記植物を含む第2画像とを取得する段階を備えてよい。前記生育状態推定方法は、前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれから前記植物の同一の特定部位を特定する段階を備えてよい。前記生育状態推定方法は、前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれに含まれる前記同一の特定部位の状態を比較することで、前記植物の生育状態を推定する段階を備えてよい。
【0012】
本発明の一態様に係る植物管理方法は、第1時点に撮像された植物を含む第1画像と、前記第1時点より後の第2時点に撮像された前記植物を含む第2画像とを取得する段階を備えてよい。前記植物管理方法は、前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれから前記植物の同一の特定部位を特定する段階を備えてよい。前記植物管理方法は、前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれに含まれる前記同一の特定部位の状態を比較することで、前記植物の生育状態を推定する段階を備えてよい。前記植物管理方法は、前記植物の生育状態の推定結果に応じた予め定められた条件に従って、前記植物が栽培されている植物工場内の環境を制御する環境制御設備を制御する段階を備えてよい。
【0013】
本発明の一態様に係るプログラムは、第1時点に撮像された植物を含む第1画像と、前記第1時点より後の第2時点に撮像された前記植物を含む第2画像とを取得する段階をコンピュータに実行させてよい。前記プログラムは、前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれから前記植物の同一の特定部位を特定する段階を前記コンピュータに実行させてよい。前記プログラムは、前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれに含まれる前記同一の特定部位の状態を比較することで、前記植物の生育状態を推定する段階を前記コンピュータに実行させてよい。
【0014】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る植物管理システムの全体構成の機能ブロックの一例を示す図である。
図2】植物管理装置の機能ブロックの一例を示す図である。
図3】葉の時間経過に応じた葉の生育状態の変化を示す変化情報の一例を示す図である。
図4A】時点T1で撮像される障害部分を含む葉の画像の一例である。
図4B】時点T2で撮像される障害部分を含む葉の画像の一例である。
図5】植物の生育状態の推定及び生育状態に応じた環境制御の手順の一例を示すフローチャートである。
図6】ハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は、本実施形態に係る植物管理システムの全体構成の機能ブロックの一例を示す図である。植物管理システムは、植物工場10で栽培される植物30の生育状態を管理する。植物管理システムは、栽培棚20、光源設備40、養液供給設備50、二酸化炭素供給設備60、空調設備70、送風設備80、撮像装置90、及び植物管理装置100を備える。光源設備40、養液供給設備50、二酸化炭素供給設備60、空調設備70、及び送風設備80は、環境制御設備の一例である。
【0018】
栽培棚20は、野菜、青果、または生花などの植物30を栽培する。光源設備40は、LEDまたは白熱灯などの人工光を照射する複数の光源42備え、複数の光源42のそれぞれから植物30に人工光を照射する。複数の光源42は、栽培棚20の栽培面に対向して配置されてよい。本実施形態における植物工場10は、人工光型植物工場である。しかし、植物工場10は、太陽光を光源として利用して植物30を栽培する太陽光型植物工場でもよい。
【0019】
養液供給設備50は、ポンプ52及びパイプ54を有し、ポンプ52及びパイプ54を介して、栽培棚20にカリウムまたはカルシウムなどの各肥料成分を含む養液を供給する。養液供給設備50は、肥料濃度を適宜調整して、肥料濃度が調整された養液を植物30に供給する。養液供給設備50は、肥料濃度が調整された養液を霧状にして、植物30の根部分に噴霧することで植物30に養液を供給してもよい。養液供給設備50は、植物30が栽培されている培地に水分を供給する潅水設備として機能してもよい。栽培棚20に供給される潅水量は、養液供給設備50から栽培棚20に供給される養液の量を調整することで、調整されてよい。
【0020】
二酸化炭素供給設備60は、タンク62及びノズル64を有する。タンク62は、二酸化炭素を貯蔵する。二酸化炭素供給設備60は、タンク62に貯蔵された二酸化炭素をノズル64を介して植物工場10内に供給する。
【0021】
空調設備70は、植物工場10内の空気を調温及び調湿し、調温及び調湿された空気を室内空間内に循環させる。送風設備80は、植物工場10内に風を供給するサーキュレータまたは扇風機を含む。
【0022】
撮像装置90は、植物30の葉32を撮像する。撮像装置90は、予め定められた間隔で、植物30の葉32を定期的に撮像する。撮像装置90は、栽培棚20で栽培されるそれぞれの植物30の近傍に設けられてよい。または、撮像装置90は、植物工場10内を移動する移動式ロボットに設けられてもよい。撮像装置90は、同一の位置から同一方向に同一の画角で、予め定められた間隔で、植物30の葉32を定期的に撮像する。撮像装置90が移動式ロボットに設けられる場合でも、移動式ロボットは、同一の位置から同一方向に同一の画角で、予め定められた間隔で、植物30の葉32を定期的に撮像するように撮像装置90の姿勢を制御する。移動式ロボットは、車両、飛行体、船舶などの移動体でよい。本実施形態では、撮像装置90が植物30の葉32を撮像する例について説明するが、撮像装置90が撮像する部位は、葉32以外の茎、果実、花などの植物30の他の特定部位でもよい。
【0023】
植物管理装置100は、光源設備40、養液供給設備50、二酸化炭素供給設備60、空調設備70、及び送風設備80を制御することで、植物30の生育状態を制御する。植物管理装置100は、光源設備40、養液供給設備50、二酸化炭素供給設備60、空調設備70、送風設備80、及び撮像装置90と無線ネットワークまたは有線ネットワークを介して互いに通信する。植物管理装置100は、生育状態推定装置の一例である。
【0024】
植物管理装置100は、中央処理装置(CPU)及びメモリを有するコンピュータでよい。光源設備40、養液供給設備50、二酸化炭素供給設備60、空調設備70、及び送風設備80は、中央処理装置(CPU)及びメモリを有するコンピュータを備えてよい。
【0025】
コンピュータは、パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、ワークステーション、サーバコンピュータ、または汎用コンピュータ等のコンピュータであってよく、複数のコンピュータが接続されたコンピュータシステムであってもよい。このようなコンピュータシステムもまた広義のコンピュータである。コンピュータは、植物工場の環境制御用に設計された専用コンピュータであってもよく、専用回路によって実現された専用ハードウェアであってもよい。コンピュータは、仮想コンピュータ環境によって実装されてもよい。コンピュータを用いる場合、植物管理装置100、光源設備40、養液供給設備50、二酸化炭素供給設備60、空調設備70、及び送風設備80は、中は、コンピュータによりプログラムを実行することによって実現される。
【0026】
図2は、植物管理装置100の機能ブロックの一例を示す図である。植物管理装置100は、取得部102、特定部104、予測部106、推定部108、環境制御部110、及び記憶部120を備える。
【0027】
取得部102は、撮像装置90により撮像された画像を予め定められた間隔で定期的に取得する。取得部102は、時点T1に撮像装置90で撮像された植物30を含む画像G1と、時点T1より後の時点T2に撮像装置90により撮像された植物30を含む画像G2とを取得する。時点T1から時点T2までの期間は、1時間、1日、1週間、10日などの植物30の成長速度に応じた任意の期間でよい。
【0028】
特定部104は、画像G1及び画像G2のそれぞれから植物30の同一の特定部位を特定する。植物30の特定部位は、葉、茎、果実、または花でよい。本実施形態では、特定部位として、植物30の葉を例に詳細に説明する。すなわち、特定部104は、画像G1及び画像G2のそれぞれから同一の葉32を特定する。予測部106は、葉の時間経過に応じた葉の生育状態の変化を示す変化情報に基づいて、時点T1から時点T2までの時間経過で変化する画像G1及び画像G2に含まれる同一の葉32の生育状態の変化を予測する。変化情報は、例えば、図3に示すように、生育期間に応じた葉の面積を示す情報でよい。変化情報は、予め実験等により生育期間ごとに葉の面積を計測することで導出されて、記憶部120に記憶されてよい。
【0029】
予測部106は、変化情報に基づいて、時点G1での葉32の面積S1から時点G1の植物30の生育期間T1を特定する。さらに、予測部106は、変化情報に基づいて、時点G1から時点G2まで経過した場合の葉32の面積S2を予測する。予測部106は、予測結果を特定部104に提供する。特定部104は、予測結果に基づいて、画像G1及び画像G2のそれぞれから同一の葉32を特定する。特定部104は、例えば、画像G1内の面積S1の葉を拡大させて、面積S2の葉の画像を生成し、その画像と、画像G2の予め定められた領域内の少なくとも1つの葉の画像とをパターンマッチングすることで、画像G2から同一の葉32を特定する。予め定められた領域は、画像G1内の葉32を含む予め定められた大きさの領域に対応する画像G2内の領域である。または、特定部104は、画像G2内で、画像G1の面積S1の葉が存在した位置を含む予め定められた領域内に含まれる少なくとも1つの葉の面積を導出し、少なくとも1つの葉の中から、面積S2の葉を特定することで、同一の葉32を特定する。
【0030】
推定部108は、画像G1及び画像G2のそれぞれに含まれる同一の葉32の状態を比較することで、植物30の生育状態を推定する。推定部108は、植物30の生育状態として、植物30が健康な状態か否かを推定する。推定部108は、植物30の生育状態として、植物30の生理障害または病害虫に起因する障害の状態を推定する。
【0031】
推定部108は、画像G1及び画像G2のそれぞれに含まれる同一の葉32の状態を比較することで、同一の葉32の大きさの推移と、同一の葉32の障害部分の大きさの推移とを特定し、同一の葉32の大きさの推移と、同一の葉の障害部分の大きさの推移との比較に基づいて、同一の葉32の障害の進行度を植物の生育状態として推定してよい。
【0032】
推定部108は、時点G1から時点G2までの同一の葉32の大きさ(面積)の増加率と同一の葉32の障害部分の大きさ(面積)の増加率との比に基づいて、同一の葉32の障害の進行度を植物30の生育状態として推定してよい。
【0033】
推定部108は、例えば、図4Aに示すような時点T1の画像G1内の葉32から障害部分34を特定し、葉32の面積S1及び障害部分34の面積S3を導出する。さらに、推定部108は、図4Bに示すような時点T2の画像G2内の葉32から障害部分34を特定し、葉32の面積S2及び障害部分34の面積S4を導出する。推定部108は、葉32の増加率S2/S1に対する障害部分34の増加率S4/S3の比Rを導出する。推定部108は、葉の増加率に対する障害部分の増加率の比と障害の進行度とを関係を示す関係情報に基づいて比Rに対応する障害の進行度を特定することで、植物30の生育状態を推定する。
【0034】
環境制御部110は、推定部108による植物30の生育状態の推定結果に応じた予め定められた条件に従って、植物30が栽培されている植物工場10内の環境を制御する環境制御設備を制御する。環境制御部110は、推定部108による植物30の生育状態の推定結果に応じた予め定められた条件に従って、光源設備40、養液供給設備50、二酸化炭素供給設備60、空調設備70、及び送風設備80の少なくとも1つを制御してよい。
【0035】
予め定められた条件は、葉の生育状態と、培地の含水量、電気伝導度、水素イオン指数、葉の周囲の温度、湿度、葉に照射される光量、及び二酸化炭素濃度の少なくとも1つとの関係を示してよい。環境制御部110は、予め定められた条件に従って、環境制御装置を制御することで、培地の含水量、電気伝導度、水素イオン指数、葉の周囲の温度、湿度、葉に照射される光量、及び二酸化炭素濃度の少なくとも1つを調整してよい。環境制御部110は、予め定められた条件に従って、光源設備40、養液供給設備50、二酸化炭素供給設備60、空調設備70、及び送風設備80の少なくとも1つを制御することで、培地の含水量、電気伝導度、水素イオン指数、葉の周囲の温度、湿度、葉に照射される光量、及び二酸化炭素濃度の少なくとも1つを調整してよい。
【0036】
葉の生理障害の種類ごとに生理障害を抑制させるための対策は経験的に知られている。また、推定部108は、予め記憶部120に記憶された葉の生理障害の種類ごとの画像と、画像G1及び画像G2に含まれる同一の葉32の画像とをパターンマッチングすることで、植物30に生じている葉の生理障害の種類を推定してよい。記憶部120は、生理障害の種類ごとに、光源設備40、養液供給設備50、二酸化炭素供給設備60、空調設備70、及び送風設備80の少なくとも1つの制御内容を記憶してよい。環境制御部110は、推定された葉32の生理障害の種類に応じた制御内容を記憶部120を参照することで特定し、特定された制御内容に応じて、光源設備40、養液供給設備50、二酸化炭素供給設備60、空調設備70、及び送風設備80の少なくとも1つを制御してよい。
【0037】
環境制御部110は、例えば、葉32の生理障害として、カルシウム欠乏によるチップバーンが進行している場合、養液に含まれるカルシウムの含有量が増加するように、養液供給設備50を制御してよい。あるいは、環境制御部110は、光源42の光量を減少さるべく、光源設備40を制御してよい。環境制御部110は、植物工場10内の温度を下げるべく、空調設備70を制御してよい。環境制御部110は、植物工場10内の温度を効率的に下げるべく、植物工場10内に供給する風の風量が増加するように送風設備80を制御してよい。
【0038】
記憶部120は、植物管理装置100で動作するプログラムを記憶する。プログラムは、植物管理装置100が備えるプロセッサ上で実行されることで取得部102、特定部104、予測部106、推定部108、及び環境制御部110としてプロセッサを機能させる。
【0039】
図5は、植物30の生育状態の推定及び生育状態に応じた環境制御の手順の一例を示すフローチャートである。
【0040】
取得部102は、撮像装置90により撮像された時点T1の画像G1及び時点T2の画像G2を取得する(S100)。予測部106は、葉の時間経過に応じた葉の生育状態の変化を示す変化情報に基づいて、時点T1から時点T2までの時間経過で変化する画像G1及び画像G2に含まれる同一の葉32の生育状態の変化を予測する(S102)。
【0041】
特定部104は、予測結果に基づいて、画像G1及び画像G2のそれぞれから同一の葉32を特定する(S104)。推定部108は、画像G1及び画像G2内の葉32に予め定められた障害に対応する画像部分が含まれるか否かを判定することで、葉32に障害があるか否かを判定する(S106)。推定部108は、葉32に障害がないと判定した場合、植物30が健康状態であると推定する(S108)。
【0042】
推定部108は、葉32に障害があると判定した場合、画像G1及び画像G2のそれぞれに含まれる同一の葉32の状態を比較することで、同一の葉32の大きさの推移と、同一の葉32の障害部分の大きさの推移とを特定し、同一の葉32の大きさの推移と、同一の葉の障害部分の大きさの推移との比較に基づいて、同一の葉32の障害の進行度を植物30の生育状態として推定する(S110)。
【0043】
次いで、環境制御部110は、推定部108による推定結果に基づいて、植物30が予め定められた生育状態となるように、光源設備40、養液供給設備50、二酸化炭素供給設備60、空調設備70、及び送風設備80の少なくとも1つの環境制御設備を制御する(S112)。
【0044】
以上の本実施形態によれば、異なる時点に撮像された画像間で植物30の同一の葉などの特定部位を特定して、同一の葉などの特定部位の変化に基づいて、植物の生育状態を推定できる。よって、植物の生育状態を推定する処理の負担を低減できる。また、撮像装置90を準備すれば、植物の生育状態、例えば、植物の生理障害または病害虫に起因する障害の進行度を推定できるので、低コストで植物の生育状態が良好になるようにより精度よく環境制御できる。
【0045】
図6は、本実施形態の態様を全体的または部分的に具現化し得るコンピュータ1200の一例を示す。コンピュータ1200にインストールされたプログラムは、コンピュータ1200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられるオペレーションまたは当該装置の1または複数の「部」として機能させることができる。または、当該プログラムは、コンピュータ1200に当該オペレーションまたは当該1または複数の「部」を実行させることができる。当該プログラムは、コンピュータ1200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ1200に、本明細書に記載のフローチャート及びブロック図のブロックのうちのいくつかまたは全てに関連付けられた特定のオペレーションを実行させるべく、CPU1212によって実行されてよい。
【0046】
本実施形態によるコンピュータ1200は、CPU1212、及びRAM1214を含み、それらはホストコントローラ1210によって相互に接続されている。コンピュータ1200はまた、通信インタフェース1222、入力/出力ユニットを含み、それらは入力/出力コントローラ1220を介してホストコントローラ1210に接続されている。コンピュータ1200はまた、ROM1230を含む。CPU1212は、ROM1230及びRAM1214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。
【0047】
通信インタフェース1222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブが、コンピュータ1200内のCPU1212によって使用されるプログラム及びデータを格納してよい。ROM1230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ1200によって実行されるブートプログラム等、及び/またはコンピュータ1200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。プログラムが、CR-ROM、USBメモリまたはICカードのようなコンピュータ可読記憶媒体またはネットワークを介して提供される。プログラムは、コンピュータ可読記憶媒体の例でもあるRAM1214、またはROM1230にインストールされ、CPU1212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ1200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ1200の使用に従い情報のオペレーションまたは処理を実現することによって構成されてよい。
【0048】
例えば、通信がコンピュータ1200及び外部デバイス間で実行される場合、CPU1212は、RAM1214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース1222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース1222は、CPU1212の制御の下、RAM1214、またはUSBメモリのような記憶媒体内に提供される送信バッファ領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信した受信データを記憶媒体上に提供される受信バッファ領域等に書き込む。
【0049】
また、CPU1212は、USBメモリ等のような外部記憶媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM1214に読み取られるようにし、RAM1214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU1212は次に、処理されたデータを外部記憶媒体にライトバックしてよい。
【0050】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、及びデータベースのような様々なタイプの情報が記憶媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU1212は、RAM1214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプのオペレーション、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM1214に対しライトバックする。また、CPU1212は、記憶媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記憶媒体内に格納される場合、CPU1212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0051】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ1200上またはコンピュータ1200近傍のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記憶媒体が、コンピュータ可読記憶媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ1200に提供する。
【0052】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよい。その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM(登録商標))、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0053】
コンピュータ可読命令は、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。ソースコードまたはオブジェクトコードは、従来の手続型プログラミング言語を含む。従来の手続型プログラミング言語は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、及び「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語でよい。コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供されてよい。プロセッサまたはプログラマブル回路は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0054】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0055】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0056】
10 植物工場
20 栽培棚
30 植物
32 葉
34 障害部分
40 光源設備
42 光源
50 養液供給設備
52 ポンプ
54 パイプ
60 二酸化炭素供給設備
62 タンク
64 ノズル
70 空調設備
80 送風設備
90 撮像装置
100 植物管理装置
102 取得部
104 特定部
106 予測部
108 推定部
110 環境制御部
120 記憶部
1200 コンピュータ
1210 ホストコントローラ
1212 CPU
1214 RAM
1220 入力/出力コントローラ
1222 通信インタフェース
1230 ROM
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6