(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136475
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】植物管理装置、植物管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20240927BHJP
A01G 31/00 20180101ALI20240927BHJP
【FI】
G06Q50/02
A01G31/00 612
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047602
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】初谷 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】王 俊善
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 平理
【テーマコード(参考)】
2B314
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2B314MA38
2B314MA39
2B314MA40
2B314MA42
2B314NA33
2B314PB44
2B314PD52
2B314PD57
2B314PD58
2B314PD63
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】植物を栽培する植物工場において、適切なタイミングで植物が収穫されることのできる植物管理装置、植物管理方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】植物管理装置は、植物の予測市場価格及び前記植物の予測需要量の少なくとも一方を示す予測情報に基づいて、前記植物の収穫時期を決定する決定部を備えてよい。前記植物管理装置は、前記収穫時期に前記植物を収穫できるように、前記植物を栽培する植物工場内の環境を制御する環境制御設備を制御する環境制御部を備えてよい。前記決定部は、対象期間内で予測市場価格が最も高くなる時点を前記植物の収穫時期として決定してよい。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の予測市場価格及び前記植物の予測需要量の少なくとも一方を示す予測情報に基づいて、前記植物の収穫時期を決定する決定部と、
前記収穫時期に前記植物を収穫できるように、前記植物を栽培する植物工場内の環境を制御する環境制御設備を制御する環境制御部と
を備える植物管理装置。
【請求項2】
前記予測情報は、前記植物の予測市場価格を少なくとも示し、
前記決定部は、対象期間内で予測市場価格が最も高くなる時点を前記植物の収穫時期として決定する、請求項1に記載の植物管理装置。
【請求項3】
前記予測情報は、前記予測市場価格と前記予測需要量との関係を示し、
前記決定部は、前記予測情報に基づいて、前記収穫時期における前記植物の収量をさらに決定し、
前記環境制御部は、前記収穫時期に、前記収量の前記植物を収穫できるように、前記環境制御設備を制御する、請求項1に記載の植物管理装置。
【請求項4】
前記決定部は、前記収穫時期における前記予測情報に示される予測需要量に予め定められた割合を乗じることで前記収量を決定する、請求項3に記載の植物管理装置。
【請求項5】
前記植物工場は、前記植物を栽培する複数の栽培棚を含み、
前記決定部は、前記収量に基づいて前記収穫時期に前記植物を収穫する対象の栽培棚のセットの数をさらに決定する、請求項3に記載の植物管理装置。
【請求項6】
前記環境制御設備は、前記植物工場内の温度及び湿度の少なくとも一方を調整する空調設備を含み、
前記環境制御部は、育成期間と温湿度条件との関係を示す温湿度情報に基づいて、前記植物工場内の温度及び湿度の少なくとも一方が前記植物の収穫時期が前記収穫時期に合う温湿度条件を満たすように前記空調設備を制御する、請求項1に記載の植物管理装置。
【請求項7】
前記温湿度条件は、前記植物の予め定められた品質を維持可能な範囲で予め定められる、請求項6に記載の植物管理装置。
【請求項8】
前記環境制御設備は、前記植物工場内に供給する風の風量及び風向きの少なくとも一方を制御する送風設備をさらに含み、
前記環境制御部は、前記植物工場内の温度及び湿度の少なくとも一方が前記植物の収穫時期が前記収穫時期に合う温湿度条件を満たすように、前記送風設備を制御する、請求項6に記載の植物管理装置。
【請求項9】
前記環境制御設備は、前記植物に人工光を照射する光源を有する光源設備を含み、
前記環境制御部は、育成期間と光量条件との関係を示す光量情報に基づいて、前記光源の光量が前記植物の収穫時期が前記収穫時期に合う光量条件を満たすように前記光源設備を制御する、請求項1に記載の植物管理装置。
【請求項10】
前記光量条件は、前記植物の予め定められた品質を維持可能な範囲で予め定められる、請求項9に記載の植物管理装置。
【請求項11】
前記決定部は、前記予測情報が更新された場合、更新後の前記予測情報に基づいて前記植物の更新後の収穫時期を決定し、
前記環境制御部は、前記植物の収穫時期が、前記更新後の収穫時期に合うように、前記環境制御設備をさらに制御する、請求項1から9のいずれか1つに記載の植物管理装置。
【請求項12】
前記決定部は、前記予測情報が更新された場合、更新後の前記予測情報に基づいて前記植物の更新後の収量をさらに決定し、
前記環境制御部は、更新後の収量が更新前の収量より多い場合、増加分の栽培棚の育成期間が既存の制御対象の栽培棚の育成期間より短くなるように、前記環境制御設備を制御して、前記既存の制御対象の栽培棚及び前記増加分の栽培棚のそれぞれで同じ時期に前記植物が収穫できるように調整し、
前記環境制御部は、更新後の収量が更新前の収量より少ない場合、減少分の栽培棚の育成期間がより長くなるように、前記環境制御設備を制御して、前記減少分の栽培棚の前記植物が次回の収穫時期に合うように調整する、請求項11に記載の植物管理装置。
【請求項13】
決定部が、植物の予測市場価格及び前記植物の予測需要量の少なくとも一方を示す予測情報に基づいて、前記植物の収穫時期を決定する段階と、
環境制御部が、前記収穫時期に前記植物を収穫できるように、前記植物を栽培する植物工場内の環境を制御する環境制御設備を制御する段階と
を備える植物管理方法。
【請求項14】
植物工場で栽培される植物の予測市場価格及び前記植物の予測需要量の少なくとも一方を示す予測情報に基づいて、前記植物の収穫時期を決定する段階と、
前記収穫時期に前記植物を収穫できるように、前記植物を栽培する植物工場内の環境を制御する環境制御設備を制御する段階と
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物管理装置、植物管理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、植物の生産量を向上させることが可能な、植物育成施設、植物の栽培方法、植物育成用のLED照明装置、植物の育成棚用の棚板及び植物の育成棚を提供することが記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2022-122672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
植物を栽培する植物工場において、適切なタイミングで植物が収穫されることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様に係る植物管理装置は、植物の予測市場価格及び前記植物の予測需要量の少なくとも一方を示す予測情報に基づいて、前記植物の収穫時期を決定する決定部を備えてよい。前記植物管理装置は、前記収穫時期に前記植物を収穫できるように、前記植物を栽培する植物工場内の環境を制御する環境制御設備を制御する環境制御部を備えてよい。前記決定部は、対象期間内で予測市場価格が最も高くなる時点を前記植物の収穫時期として決定してよい。
【0005】
前記植物管理装置において、前記予測情報は、前記植物の予測市場価格を少なくとも示してよい。前記決定部は、前記予測情報に基づいて、前記収穫時期における前記植物の収量をさらに決定してよい。前記環境制御部は、前記収穫時期に、前記収量の前記植物を収穫できるように、前記環境制御設備を制御してよい。
【0006】
いずれかの前記植物管理装置において、前記予測情報は、前記予測市場価格と前記予測需要量との関係を示してよい。前記決定部は、前記予測情報に示される前記収穫時期における予測需要量に予め定められた割合を乗じることで前記収量を決定してよい。
【0007】
いずれかの前記植物管理装置において、前記植物工場は、前記植物を栽培する複数の栽培棚を含んでよい。前記決定部は、前記収量に基づいて前記収穫時期に前記植物を収穫する対象の栽培棚のセットの数をさらに決定してよい。
【0008】
いずれかの前記植物管理装置において、前記環境制御設備は、前記植物工場内の温度及び湿度の少なくとも一方を調整する空調設備を含んでよい。前記環境制御部は、育成期間と温湿度条件との関係を示す温湿度情報に基づいて、前記植物工場内の温度及び湿度の少なくとも一方が前記植物の収穫時期が前記収穫時期に合う温湿度条件を満たすように前記空調設備を制御してよい。
【0009】
いずれかの前記植物管理装置において、前記温湿度条件は、前記植物の予め定められた品質を維持可能な範囲で予め定められてよい。
【0010】
いずれかの前記植物管理装置において、前記環境制御設備は、前記植物工場内に供給する風の風量及び風向きの少なくとも一方を制御する送風設備をさらに含んでよい。前記環境制御部は、前記植物工場内の温度及び湿度の少なくとも一方が前記植物の収穫時期が前記収穫時期に合う温湿度条件を満たすように、前記送風設備を制御してよい。
【0011】
いずれかの前記植物管理装置において、前記環境制御設備は、前記植物に人工光を照射する光源を有する光源設備を含んでよい。前記環境制御部は、育成期間と光量条件との関係を示す光量情報に基づいて、前記光源の光量が前記植物の収穫時期が前記収穫時期に合う光量条件を満たすように前記光源設備を制御してよい。
【0012】
いずれかの前記植物管理装置において、前記光量条件は、前記植物の予め定められた品質を維持可能な範囲で予め定められてよい。
【0013】
いずれかの前記植物管理装置において、前記決定部は、前記予測情報が更新された場合、更新後の前記予測情報に基づいて前記植物の更新後の収穫時期を決定してよい。前記環境制御部は、前記植物の収穫時期が、前記更新後の収穫時期に合うように、前記環境制御設備をさらに制御してよい。
【0014】
いずれかの前記植物管理装置において、前記決定部は、前記予測情報が更新された場合、更新後の前記予測情報に基づいて前記植物の更新後の収量をさらに決定してよい。前記環境制御部は、更新後の収量が更新前の収量より多い場合、増加分の栽培棚の育成期間が既存の制御対象の栽培棚の育成期間より短くなるように、前記環境制御設備を制御して、前記既存の制御対象の栽培棚及び前記増加分の栽培棚のそれぞれで同じ時期に前記植物が収穫できるように調整してよい。前記環境制御部は、更新後の収量が更新前の収量より少ない場合、減少分の栽培棚の育成期間がより長くなるように、前記環境制御設備を制御して、前記減少分の栽培棚の前記植物が次回の収穫時期に合うように調整してよい。
【0015】
本発明の一態様に係る植物管理方法は、決定部が、植物の予測市場価格及び前記植物の予測需要量の少なくとも一方を示す予測情報に基づいて、前記植物の収穫時期を決定する段階を備えてよい。前記植物管理方法は、環境制御部が、前記収穫時期に前記植物を収穫できるように、前記植物を栽培する植物工場内の環境を制御する環境制御設備を制御する段階を備えてよい。
【0016】
本発明の一態様に係るプログラムは、植物の予測市場価格及び前記植物の予測需要量の少なくとも一方を示す予測情報に基づいて、前記植物の収穫時期を決定する段階をコンピュータに実行させてよい。前記プログラムは、前記収穫時期に前記植物を収穫できるように、前記植物を栽培する植物工場内の環境を制御する環境制御設備を制御する段階をコンピュータに実行させてよい。
【0017】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る植物管理システムの全体構成の機能ブロックの一例を示す図である。
【
図2】植物管理装置の機能ブロックの一例を示す図である。
【
図3】予測市場価格と予測需要量との関係を示す予測情報の一例を示す図である。
【
図4】湿度に応じた温度と育成期間との関係を示す温湿度情報の一例を示す図である。
【
図5】光量と育成期間との関係を示す光量情報の一例を示す図である。
【
図6】予測情報に基づく植物の環境制御の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
図1は、本実施形態に係る植物管理システムの全体構成の機能ブロックの一例を示す図である。植物管理システムは、植物工場10で栽培される植物30の生育状態を管理する。植物管理システムは、複数の栽培棚20、光源設備40、養液供給設備50、二酸化炭素供給設備60、空調設備70、送風設備80、センサ90、及び植物管理装置100を備える。光源設備40、養液供給設備50、二酸化炭素供給設備60、空調設備70、及び送風設備80は、環境制御設備の一例である。
【0021】
栽培棚20は、野菜、青果、または生花などの植物30を栽培する。1または複数の栽培棚20のセットごとに播種日をずらすことで、異なる収穫時期に植物30が収穫できるように調整されている。また、複数の栽培棚20は、1または複数の栽培棚20ごとに、別々の空間12に設置され、環境制御設備により空間12内の環境が個別に制御されることで、空間12ごとに異なる環境状態で植物30が栽培されてよい。空間は、断熱性及び気密性の高い空間でよい。本実施形態では、植物管理装置100は、栽培棚20のセットごとに環境状態を個別に制御する。しかし、植物管理装置100は、1つの栽培棚20が備える複数の段のそれぞれの環境状態を個別に制御してもよい。
【0022】
光源設備40は、LEDまたは白熱灯などの人工光を照射する複数の光源42備え、複数の光源42のそれぞれから植物30に人工光を照射する。複数の光源42は、栽培棚20の栽培面に対向して配置されてよい。
【0023】
養液供給設備50は、ポンプ52及びパイプ54を有し、ポンプ52及びパイプ54を介して、栽培棚20にカリウムまたはカルシウムなどの各肥料成分を含む養液を供給する。養液供給設備50は、肥料濃度を適宜調整して、肥料濃度が調整された養液を植物30に供給する。養液供給設備50は、肥料濃度が調整された養液を霧状にして、植物30の根部分に噴霧することで植物30に養液を供給してもよい。養液供給設備50は、植物30が栽培されている培地に水分を供給する潅水設備として機能してもよい。栽培棚20に供給される潅水量は、養液供給設備50から栽培棚20に供給される養液の量を調整することで、調整されてよい。
【0024】
二酸化炭素供給設備60は、タンク62及びノズル64を有する。タンク62は、二酸化炭素を貯蔵する。二酸化炭素供給設備60は、タンク62に貯蔵された二酸化炭素をノズル64を介して植物工場10内のそれぞれの空間12に供給する。
【0025】
空調設備70は、植物工場10内の空気を調温及び調湿し、調温及び調湿された空気をそれぞれの空間内に循環させる。送風設備80は、植物工場10内に風を供給するサーキュレータまたは扇風機を含む。センサ90は、植物30の周囲の環境状態、及び植物30の生育状態を計測する各種センサを含む。センサ90は、植物30の茎・葉・実部分の温度、湿度、光量、及び二酸化炭素濃度をそれぞれ測定する各種センサを含む。
【0026】
植物管理装置100は、光源設備40、養液供給設備50、二酸化炭素供給設備60、空調設備70、及び送風設備80を制御することで、植物30の生育状態を制御する。植物管理装置100は、光源設備40、養液供給設備50、二酸化炭素供給設備60、空調設備70、及び送風設備80と無線ネットワークまたは有線ネットワークを介して互いに通信する。植物管理装置100は、生育状態推定装置の一例である。
【0027】
植物管理装置100は、中央処理装置(CPU)及びメモリを有するコンピュータでよい。光源設備40、養液供給設備50、二酸化炭素供給設備60、空調設備70、及び送風設備80は、中央処理装置(CPU)及びメモリを有するコンピュータを備えてよい。
【0028】
コンピュータは、パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、ワークステーション、サーバコンピュータ、または汎用コンピュータ等のコンピュータであってよく、複数のコンピュータが接続されたコンピュータシステムであってもよい。このようなコンピュータシステムもまた広義のコンピュータである。コンピュータは、植物工場の環境制御用に設計された専用コンピュータであってもよく、専用回路によって実現された専用ハードウェアであってもよい。コンピュータは、仮想コンピュータ環境によって実装されてもよい。コンピュータを用いる場合、植物管理装置100、光源設備40、養液供給設備50、二酸化炭素供給設備60、空調設備70、及び送風設備80は、中は、コンピュータによりプログラムを実行することによって実現される。
【0029】
このように構成された植物管理システムにおいて、市場価格及び需要を考慮して、適切なタイミングで適切な収量の植物30を収穫できることが望まれている。
【0030】
図2は、植物管理装置100の機能ブロックの一例を示す図である。植物管理装置100は、取得部102、決定部104、環境制御部110、及び記憶部120を備える。記憶部120は、植物管理装置100で動作するプログラムを記憶する。プログラムは、植物管理装置100が備えるプロセッサ上で実行されることで取得部102、決定部104、及び環境制御部110としてプロセッサを機能させる。
【0031】
取得部102は、植物工場10で栽培される植物30の予測市場価格と植物30の予測需要量との関係を示す予測情報を取得する。取得部102は、植物30の過去の市場価格及び需要量から今後の市場価格及び需要量を予測する学習モデルを利用した予測情報を生成する予測サーバから予測情報を取得してよい。予測サーバは、植物30の種類ごとの学習モデルを利用して、植物30の種類ごとに予測市場価格及び予測需要量を予測してよい。予測サーバは、例えば、日毎の天気情報、行事などのイベント情報などを説明変数として、市場価格及び需要量を目的変数として、教師あり学習のアルゴリズムに従って機械学習を行うことにより学習済み予測モデルを生成してよい。アルゴリズムは、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、重回帰分析、決定木などの任意の方式のアルゴリズムでよい。取得部102は、市場価格及び需要量の予測情報を提供する組織が提供するサーバから予測情報を取得してよい。
【0032】
決定部104は、予測情報に基づいて、植物30の収穫時期を決定する。予測情報は、例えば、
図3に示すように、日毎の予測市場価格(円)と予測需要量(t)との関係を示す情報でよい。予測情報は、週毎の予測市場価格(円)と予測需要量(t)との関係を示す情報でよい。予測情報は、日、または週以外の予め定められた期間毎の予測市場価格(円)と予測需要量(t)との関係を示す情報でよい。
【0033】
決定部104は、対象期間内で予測市場価格が最も高くなる時点を植物30の収穫時期Tとして決定してよい。対象期間には、同じ播種日の少なくとも1つの栽培棚20のセットが割り当てられている。栽培棚20のセットは、同じ播種日の複数の栽培棚20を含んでよい。栽培棚20のセットは、環境状態を個別に制御可能な空間12に存在する同じ播種日の複数の栽培棚20を含んでよい。例えば、決定部104は、対象期間A~対象期間Hについて、予測市場価格が最も高くなる「9月10日」を植物30の収穫時期Tとして決定してよい。決定部104は、対象期間I~対象期間Gについて、「9月12日」を植物30の収穫時期Tとして決定してよい。
【0034】
決定部104は、予測情報に基づいて、植物30の収穫時期Tにおける植物の収量Sをさらに決定してよい。決定部104は、予測情報に示される植物30の収穫時期Tにおける予測需要量に予め定められた割合を乗じることで植物30の収量Sを決定してよい。予め定められた割合は、植物30の市場規模及び植物工場10で栽培可能な植物30の最大収量に応じて予め定められてよい。決定部104は、収量Sを満たすように、収穫時期Tに植物30を栽培する対象となる栽培棚20のセットの数をさらに決定してよい。栽培棚20の1つのセットあたりの植物30の収量は実測値から予め定められて、記憶部120に記憶されていてよい。
【0035】
環境制御部110は、収穫時期Tに植物30が収穫できるように、植物工場10内の環境を制御する光源設備40、養液供給設備50、二酸化炭素供給設備60、空調設備70、及び送風設備80の少なくとも1つを制御する。環境制御部110は、収穫時期Tに、収量Sの植物30を収穫できるように、光源設備40、養液供給設備50、二酸化炭素供給設備60、空調設備70、及び送風設備80の少なくとも1つを制御する。
【0036】
環境制御部110は、育成期間と温湿度条件との関係を示す温湿度情報に基づいて、植物工場10内の温度及び湿度の少なくとも一方が収穫時期Tに植物30を収穫できる温湿度条件を満たすように空調設備70を制御してよい。
【0037】
温度が高いほど育成期間を短くできるリーフレタスなどの品種の植物30であれば、環境制御部110は、現在の育成期間で予定されている収穫可能な収穫時期より、収穫時期Tが早ければ、空間の温度を高くすべく空調設備70を制御して、植物30の収穫時期を早めてよい。または、環境制御部110は、現在の育成期間で予定されている収穫可能な収穫時期より、収穫時期Tが遅ければ、空間の温度を低くすべく空調設備70を制御して、植物30の収穫時期を遅めてよい。
【0038】
しかし、空間の温度を高くし過ぎると、植物30にチップバーンなどの生理障害が発生する可能性がある。そこで、温湿度条件は、植物30の予め定められた品質を維持可能な範囲で予め定められてよい。植物管理装置100は、例えば、記憶部120に記憶された
図4に示すような湿度に応じた温度と育成期間との関係を示す温湿度情報に基づいて、収穫時期Tに植物30を収穫できるようにするための育成期間に対応する湿度及び温度を決定してよい。
【0039】
環境制御部110は、植物工場10内の温度及び湿度の少なくとも一方が収穫時期Tに植物30を収穫できる温湿度条件を満たすように、送風設備80を制御して植物工場10内に供給する風の風量(風速)及び風向きの少なくとも一方を調節してよい。
【0040】
環境制御部110は、育成期間と光量条件との関係を示す光量情報に基づいて、光源42の光量が収穫時期Tに植物30を収穫できる光量条件を満たすように光源設備40を制御してよい。
【0041】
光量が大きいほど育成期間を短くできるリーフレタスなどの品種の植物30であれば、環境制御部110は、現在の育成期間で予定されている収穫可能な収穫時期より、収穫時期Tが早ければ、空間の光量を大きくすべく光源設備40を制御して、植物30の収穫時期を早めてよい。または、環境制御部110は、現在の育成期間で予定されている収穫可能な収穫時期より、収穫時期Tが遅ければ、空間の光量を小さくすべく光源設備40を制御して、植物30の収穫時期を遅めてよい。
【0042】
しかし、空間の光量を大きくし過ぎると、植物30にチップバーンなどの生理障害が発生する可能性がある。そこで、光量条件は、植物30の予め定められた品質を維持可能な範囲で予め定められてよい。
【0043】
植物管理装置100は、例えば、記憶部120に記憶された
図5に示すような光量と育成期間との関係を示す光量情報に基づいて、収穫時期Tに植物30を収穫できるようにするための育成期間に対応する光量を決定してよい。
【0044】
温湿度情報及び光量情報は、植物30の品種ごとに実際に温度及び湿度の条件または光量の条件を変えながら実測することで得られる統計データに基づいて予め生成され、記憶部120に記憶されてよい。
【0045】
チップバーンの抑制には、微風が有効である。そこで、環境制御部110は、温湿度条件及び光量条件の少なくとも一方に応じて、チップバーンの発生を抑制すべく予め定められた送風条件を満たすように、送風設備80を制御することで、植物30に供給される風の風量及び風速の少なくとも一方を調整してよい。
【0046】
ここで、予測情報は、予測時点までの時間が短くなるにつれて、精度が高くなる場合がある。そこで、取得部102は、予測サーバから定期的に更新後の予測情報を取得してよい。決定部104は、予測情報が更新された場合、更新後の予測情報に基づいて植物30の更新後の収穫時期を決定してよい。環境制御部110は、更新後の収穫時期に植物30を収穫できるように、光源設備40、養液供給設備50、二酸化炭素供給設備60、空調設備70、及び送風設備80の少なくとも1つをさらに制御する。
【0047】
決定部104は、予測情報が更新された場合、更新後の予測情報に基づいて植物30の更新後の収穫時期及び収量を決定してよい。環境制御部110は、植物30の収穫時期が、更新後の収穫時期に合い、かつ更新後の収量分だけ植物30が収穫できるように制御対象の栽培棚20のセットのそれぞれについて、光源設備40、養液供給設備50、二酸化炭素供給設備60、空調設備70、及び送風設備80の少なくとも1つをさらに制御してよい。
【0048】
図6は、予測情報に基づく植物30の環境制御の手順の一例を示すフローチャートである。
【0049】
取得部102は、予測サーバから対象の植物30の種別に対応する予測情報を取得する(S100)。決定部104は、予測情報に基づいて、対象期間内で予測市場価格が最も高くなる時点を対象期間における植物30の収穫時期Tと決定し、さらに収穫時期Tの予測需要量に基づいて収量Sを決定する(S102)。決定部104は、収量Sを満たす栽培棚20のセットの数を決定する(S104)。決定部104は、収穫期間Tで収穫できる現時点からの植物30の育成期間を決定する(S106)。
【0050】
環境制御部110は、育成期間を満たす環境条件を決定する(S108)環境制御部110は、決定された環境条件に基づいて、環境制御設備を制御する(S110)。
【0051】
次いで、取得部102が、予測サーバから更新後の予測情報を取得していなければ(S112で「N」)、環境制御部110は、現在の環境条件を維持して、環境制御設備を制御する。
【0052】
一方、取得部102が、予測サーバから更新後の予測情報を取得した場合(S112で「Y」)、決定部104は、更新後の予測情報に基づいて、改めて収穫時期T'及び収量S'を決定する(S114)。環境制御部110は、収穫時期T'が収穫時期Tより早ければ、空間の温度を高くすべく空調設備70を制御して、植物30の収穫時期を早めてよい。または、環境制御部110は、収穫時期T'が収穫時期Tより遅ければ、空間の温度を低くすべく空調設備70を制御して、植物30の収穫時期を早めてよい。環境制御部110は、収穫時期T'が収穫時期Tより早ければ、空間の光量を大きくすべく光源設備40を制御して、植物30の収穫時期を早めてよい。または、環境制御部110は、収穫時期T'が収穫時期Tより遅ければ、空間の光量を小さくすべく光源設備40を制御して、植物30の収穫時期を早めてよい。
【0053】
収量S'が収量Sより多くなった場合、環境制御部110は、増加分の栽培棚20の育成期間を、既存の制御対象の栽培棚20の育成期間より短くなるように、環境制御設備を制御して、既存の制御対象の栽培棚20及び増加分の栽培棚20のそれぞれで同時期に植物30が収穫できるように調整してよい。
【0054】
収量S'が収量Sより少なくなった場合、環境制御部110は、減少分の栽培棚20の育成期間がより長く、好ましくは減少分の栽培棚20の育成期間が最長になるように、環境制御設備を制御して、減少分の栽培棚20の植物30が次回の収穫時期に合うように調整してよい。
【0055】
図7は、本実施形態の態様を全体的または部分的に具現化し得るコンピュータ1200の一例を示す。コンピュータ1200にインストールされたプログラムは、コンピュータ1200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられるオペレーションまたは当該装置の1または複数の「部」として機能させることができる。または、当該プログラムは、コンピュータ1200に当該オペレーションまたは当該1または複数の「部」を実行させることができる。当該プログラムは、コンピュータ1200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ1200に、本明細書に記載のフローチャート及びブロック図のブロックのうちのいくつかまたは全てに関連付けられた特定のオペレーションを実行させるべく、CPU1212によって実行されてよい。
【0056】
本実施形態によるコンピュータ1200は、CPU1212、及びRAM1214を含み、それらはホストコントローラ1210によって相互に接続されている。コンピュータ1200はまた、通信インタフェース1222、入力/出力ユニットを含み、それらは入力/出力コントローラ1220を介してホストコントローラ1210に接続されている。コンピュータ1200はまた、ROM1230を含む。CPU1212は、ROM1230及びRAM1214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。
【0057】
通信インタフェース1222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブが、コンピュータ1200内のCPU1212によって使用されるプログラム及びデータを格納してよい。ROM1230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ1200によって実行されるブートプログラム等、及び/またはコンピュータ1200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。プログラムが、CR-ROM、USBメモリまたはICカードのようなコンピュータ可読記憶媒体またはネットワークを介して提供される。プログラムは、コンピュータ可読記憶媒体の例でもあるRAM1214、またはROM1230にインストールされ、CPU1212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ1200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ1200の使用に従い情報のオペレーションまたは処理を実現することによって構成されてよい。
【0058】
例えば、通信がコンピュータ1200及び外部デバイス間で実行される場合、CPU1212は、RAM1214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース1222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース1222は、CPU1212の制御の下、RAM1214、またはUSBメモリのような記憶媒体内に提供される送信バッファ領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信した受信データを記憶媒体上に提供される受信バッファ領域等に書き込む。
【0059】
また、CPU1212は、USBメモリ等のような外部記憶媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM1214に読み取られるようにし、RAM1214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU1212は次に、処理されたデータを外部記憶媒体にライトバックしてよい。
【0060】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、及びデータベースのような様々なタイプの情報が記憶媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU1212は、RAM1214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプのオペレーション、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM1214に対しライトバックする。また、CPU1212は、記憶媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記憶媒体内に格納される場合、CPU1212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0061】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ1200上またはコンピュータ1200近傍のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記憶媒体が、コンピュータ可読記憶媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ1200に提供する。
【0062】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよい。その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM(登録商標))、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0063】
コンピュータ可読命令は、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。ソースコードまたはオブジェクトコードは、従来の手続型プログラミング言語を含む。従来の手続型プログラミング言語は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、及び「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語でよい。コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供されてよい。プロセッサまたはプログラマブル回路は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0064】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0065】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0066】
10 植物工場
20 栽培棚
30 植物
40 光源設備
42 光源
50 養液供給設備
52 ポンプ
54 パイプ
60 二酸化炭素供給設備
62 タンク
64 ノズル
70 空調設備
80 送風設備
90 センサ
100 植物管理装置
102 取得部
104 決定部
110 環境制御部
120 記憶部
1200 コンピュータ
1210 ホストコントローラ
1212 CPU
1214 RAM
1220 入力/出力コントローラ
1222 通信インタフェース
1230 ROM