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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136702
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両制御装置及び車両走行システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240927BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240927BHJP
   B60W 30/08 20120101ALI20240927BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/09 F
B60W30/08
B60W40/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047903
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 海越
(72)【発明者】
【氏名】竹原 成晃
(72)【発明者】
【氏名】浦野 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】角田 貴俊
(72)【発明者】
【氏名】守田 圭佑
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA31
3D241BA60
3D241BB31
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA52Z
3D241DB02Z
3D241DB20Z
3D241DC33Z
3D241DC42Z
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】死角領域に対する待機時間の削減が可能な車両制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】自己位置取得部と、車両の少なくとも前方を検知するセンサ部と、車両が走行する走行経路を生成する経路生成部と、車両を駆動制御する制御部と、を備えた車両制御装置であって、経路生成部は、車両が走行する走行経路を算出する経路算出部と、算出された走行経路の走行可否を判定する走行判定部と、を備え、経路算出部は、取得した物体情報に基づいて物体を回避する第1の走行経路を生成し、走行判定部は、第1の走行経路が死角領域を通過するか判定し、通過すると判定された場合、車両が第1の走行経路を走行すると仮定した時に車両のセンサ部が死角領域を検知可能か否か推定し、検知可能と推定された場合、制御部は車両を第1の走行経路に沿って走行させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路側監視機器で検出された物体の物体情報と、前記物体情報に基づいて推定され、前記物体によって前記路側監視機器の死角となる死角領域を含む死角情報と、を取得して車両の走行を制御する車両制御装置であって、
前記車両の位置を取得する自己位置取得部と、
前記車両の少なくとも前方を検知するセンサ部と、
前記車両の位置、前記物体情報及び前記死角情報を用いて前記車両が走行する走行経路を生成する経路生成部と、
前記車両を駆動制御する制御部と、を備え、
前記経路生成部は、前記車両が走行する走行経路を算出する経路算出部と、算出された前記走行経路の走行可否を判定する走行判定部と、を有し、
前記経路算出部は、取得した前記物体情報に基づいて前記物体を回避する第1の走行経路を算出し、
前記走行判定部は、
前記第1の走行経路が前記物体による前記死角領域を通過するか判定し、
前記死角領域を通過すると判定された場合、前記車両が前記第1の走行経路を走行すると仮定した時に前記車両の具備する前記センサ部により前記死角領域を検知可能か否か推定し、
前記死角領域を検知可能と推定された場合、走行可能か否かの判定を行い、走行可能か否かの判定結果に従って前記制御部は前記車両を前記第1の走行経路に沿って走行させるように制御し、
前記死角領域を検知不可と推定された場合、走行不可と判定し、前記経路算出部において死角領域を回避する第2の走行経路を算出する、あるいは前記制御部により前記車両を待機させる、車両制御装置。
【請求項2】
前記経路生成部は、
前記走行判定部により、前記第1の走行経路が前記物体による前記死角領域を通過すると判定された場合、前記車両の現在地から前記死角領域までの到達時間を算出する到達時間算出部をさらに備え、
前記走行判定部は、算出された前記到達時間と予め設定された閾値を比較し、前記到達時間が前記閾値以下の場合、前記経路算出部において死角領域を回避する第2の走行経路を算出する、あるいは前記制御部により前記車両を待機させる、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記経路算出部は、
前記走行判定部により、前記到達時間が前記閾値より大きい場合、前記第1の走行経路中の車線変更が緩やかになるように修正した経路を算出する、請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記走行判定部において、前記第1の走行経路が前記物体による前記死角領域を通過すると判定され、前記車両が前記第1の走行経路を走行すると仮定した時に前記車両の具備する前記センサ部により前記死角領域を検知不可と推定された場合、前記走行判定部は前記センサ部により前記死角領域を検知不可の割合を算出し、検知不可の前記割合が予め設定された割合以下か否か比較し、
前記経路算出部は、
前記センサ部による前記死角領域の検知不可の前記割合が予め設定された割合以下と判定された場合、前記死角領域が前記車両のセンサ部により検知可能となるように前記第1の走行経路の修正経路を算出する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
予め設定された領域内の物体を検出する検出部と、検出された前記物体の物体情報に基づいて前記物体によって前記路側監視機器の死角となる死角領域を算出する死角計算部と、を備えた前記路側監視機器、1つまたは複数の前記路側監視機器から取得した前記物体情報及び前記死角情報とを統合し、前記車両に送信するフュージョンサーバ、及び請求項1から4のいずれか1項に記載の車両制御装置を搭載した車両を備えた車両走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、車両制御装置及び車両走行システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両走行システムは、路側に設置される機器である路側監視機器(RSU:Road Side Unit)で、予め定められた領域内の物体の位置などを物体情報として把握し、領域内の自動運転車両に物体情報を提供している。より具体的には、サーバーが、路側監視機器RSUで取得された物体情報を処理して、領域内の自動運転車両に送る。自動運転車両は、物体情報を考慮して走行経路を決定し、当該走行経路に基づいて走行する。このような構成によれば、周辺環境を検出するためのセンサを備えない自動運転車両であっても、領域内を自動運転で走行することが可能となる。
【0003】
しかしながら、路側監視機器RSUは高所から地面を監視するように設けられることが多いため、当該地面上の物体の遮蔽によって検出できない領域、つまり物体によって路側監視機器RSUの死角となる領域である死角領域が生じる。このように、路側監視機器RSUが状況を把握できない死角領域内に障害物がある場合には、死角領域内を通る自動運転車両が障害物と衝突する可能性がある。このため、死角領域を予測するあるいは死角領域を解消することにより、自動運転などでその領域を使用可能にする技術が必要であった。
【0004】
このような課題に対し、出願人は死角領域を推定可能な装置を備えた車両走行システムを提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-100793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によれば、検出部で検出された予め定められた領域内の物体の情報である物体情報に基づいて、物体の領域である物体領域を取得し、物体領域に基づいて、物体によって検出部の死角となる領域である死角領域を推定する。そして、死角領域が静止物によるものと推定された場合には、自動運転車両は死角領域を避けるための走行パターンを決定し、死角領域が移動物によるものと推定された場合には、自動運転車両は死角領域の手前で停止して待つようにしている。
【0007】
しかし、車両の効率的な通行及び自動運転の高度化の要請により、死角領域に対する待機時間の削減が求められている。
【0008】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、死角領域に対する待機時間の削減が可能な車両制御装置及び車両走行システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願に開示される車両制御装置は、路側監視機器で検出された物体の物体情報と、前記物体情報に基づいて推定され、前記物体によって前記路側監視機器の死角となる死角領域を含む死角情報と、を取得して車両の走行を制御する車両制御装置であって、
前記車両の位置を取得する自己位置取得部と、前記車両の少なくとも前方を検知するセンサ部と、前記車両の位置、前記物体情報及び前記死角情報を用いて前記車両が走行する走行経路を生成する経路生成部と、前記車両を駆動制御する制御部と、を備え、
前記経路生成部は、前記車両が走行する走行経路を算出する経路算出部と、算出された前記走行経路の走行可否を判定する走行判定部と、を有し、
前記経路算出部は、取得した前記物体情報に基づいて前記物体を回避する第1の走行経路を算出し、
前記走行判定部は、
前記第1の走行経路が前記物体による前記死角領域を通過するか判定し、
前記死角領域を通過すると判定された場合、前記車両が前記第1の走行経路を走行すると仮定した時に前記車両の具備する前記センサ部により前記死角領域を検知可能か否か推定し、
前記死角領域を検知可能と推定された場合、走行可能か否かの判定を行い、走行可能か否かの判定結果に従って前記制御部は前記車両を前記第1の走行経路に沿って走行させるように制御し、
前記死角領域を検知不可と推定された場合、走行不可と判定し、前記経路算出部において死角領域を回避する第2の走行経路を算出する、あるいは前記制御部により前記車両を待機させる、ように構成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本願によれば、死角領域に対する待機時間の削減が可能な車両制御装置及び車両走行システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る車両走行システムを示す図である。
図2】実施の形態1に係る路側監視機器の構成を示す機能ブロック図である。
図3】物体による死角発生メカニズムと死角領域の計算方法とを説明するための図で、図3Aは側面図、図3Bは平面図である。
図4】実施の形態1に係るフュージョンサーバの構成を示す機能ブロック図である。
図5】実施の形態1に係る車両に搭載された車両制御装置の構成を示すブロック図である。
図6】死角領域と走行経路との関係を説明するための図である。
図7】実施の形態1に係る車両走行システムにおける死角領域の解消可否を推定する方法を説明するための図である。
図8】実施の形態1に係る車両走行システムにおいて死角領域の解消可否を推定する手順を、図8Aから図8Dの順で説明する図である。
図9】実施の形態1に係る車両走行システムにおける死角領域の解消可否を推定する方法を説明するための別の図である。
図10】車両に搭載されたセンサの検知領域を説明する図である。
図11】死角領域を解消可能と推定できない例を説明する図である。
図12】実施の形態1に係る車両走行システム及び車両制御装置の動作を示すフローチャートである。
図13】実施の形態2に係る車両制御装置の構成を示すブロック図である。
図14】死角領域までの到達時間の算出方法を説明するための図である。
図15】到達時間と走行経路との関係を説明する図で、図15Aは到達時間t1の場合の走行経路の例、図15B及び図15Cは到達時間t2の場合の走行経路の例を示す図である。
図16】実施の形態2に係る車両走行システム及び車両制御装置の動作を示すフローチャートである。
図17】交差点における死角領域を解消可能と推定できる例を説明する図である。
図18】実施の形態1及び2に係る車両走行システムのハードウエア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願で開示される車両走行システムの実施の形態について図を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では車両走行システムが適用される車両は、例えば米国自動車技術会(SAE Interbational)の定義するレベル3または4相当の自動運転走行が可能なものとする。また、各図中、同一符号は、同一または相当する部分を示すものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0013】
実施の形態1.
以下に、実施の形態1に係る車両走行システムについて図を用いて説明する。
<装置構成>
図1は、本実施の形態1に係る車両走行システムを示す図である。図1において、車両走行システム1は、予め定められた領域内の物体の領域である物体領域と、当該物体によって検出部の死角となる領域である死角領域とを生成する路側監視機器RSU、複数の路側監視機器RSUで生成された物体領域及び死角領域に基づいて、統合的な物体領域及び死角領域を生成するフュージョンサーバ2、及び走行経路を生成する機能を有する自動運転車両3(以下、単に車両3と称する)を備える。
【0014】
<路側監視機器RSUの構成>
図2は、路側監視機器RSUの構成の一例を示す機能ブロック図である。図2において、路側監視機器RSUは検出部11、一次フュージョン部12、ロケーション部13、及び通信部14を備える。
【0015】
検出部11は、対象領域内の物体の情報である物体情報を検出できるセンサ及びセンサのサポータ回路によって構成される。本実施の形態1では、そのセンサとして、カメラ111、電波レーダ112、及び、レーザレーダ113を含み、物体情報は、カメラ111、電波レーダ112、及びレーザレーダ113の検出結果に対応する情報である。物体は、移動物であってもよいし、静止物であってもよい。
【0016】
一次フュージョン部12は、検出部11で検出された物体情報を処理する。一次フュージョン部12 は、取得部である物体フュージョン部121と、推定部である死角計算部122とを含む。物体フュージョン部121は、検出部11で検出された物体情報に基づいて、対象領域内の物体の領域である物体領域を計算などによって取得する。また、物体が静止物であるか移動体であるかの判別も行う。死角計算部122は、計算された物体領域に基づいて、当該物体によって検出部11の死角となる領域である死角領域を計算などによって推定する。
【0017】
ロケーション部13は、路側監視機器RSUの位置と、路側監視機器RSUの向き(例えば方位)とを取得する。ロケーション部13は、例えば、GPS、「みちびき」などの準天頂衛星、Beidou、Galileo、GLONASS、NAVICなどのGNSS(全球測位衛星システム)の測位モジュールと、ジャイロなどの慣性原理を用いた方位計測手段とにより構成される。
【0018】
通信部14は、一次フュージョン部12の物体領域及び死角領域の情報と、ロケーション部13で取得した路側監視機器RSUの位置及び向きの情報とを、フュージョンサーバ2送信する。通信部14は、例えば汎用の通信機器または専用通信ネットワークの機器により構成される。
【0019】
図3は、物体による死角発生メカニズムと死角領域の計算方法とを説明するための図で、図3Aは地上の水平方向から見た側面図、図3Bは地上の鉛直方向から見た平面図である。図3A及び図3Bには、路側監視機器RSUの検出範囲11Sが破線内の領域で示され、検出領域内の物体6と、物体6によって生成された、路側監視機器RSUの死角7とが図示されている。つまり、図3A及び図3Bには、路側監視機器RSUにより検出できる物体6の領域である物体領域と、物体6を挟んだ対向する側に路側監視機器RSUにより検出できない死角7の領域である死角領域とが図示されている。死角7の領域である死角領域は、物体領域を基に幾何学的な計算で求めることができる。例えば、特許文献1で示された方法で算出すればよい。
【0020】
<フュージョンサーバ2の構成>
図4は、実施の形態1に係るフュージョンサーバ2の構成を示す機能ブロック図である。図4において、フュージョンサーバ2は路側監視機器RSUとの通信を行うRSU通信部21、地図情報を有する地図情報記憶部22、ダイナミックマップを生成するダイナミックマップ生成部23、路側監視機器RSUで推定された死角領域の情報を統合する死角フュージョン部24及び車両3と通信を行う車両通信部25を備える。地図情報記憶部22、ダイナミックマップ生成部23及び死角フュージョン部24は第2のフュージョン部に相当する。
【0021】
RSU通信部21は、複数の路側監視機器RSUから物体領域及び死角領域等の情報を受信する。なお、RSU通信部21は、公知の技術によって、複数の路側監視機器RSU間の同期をとる。
【0022】
地図情報記憶部22を狭域の地図情報を記憶しており、ダイナミックマップ生成部23に地図情報を提供する。ダイナミックマップ生成部23は、地図情報記憶部22から取得した静的地図情報に、RSU通信部21で取得した物体領域情報を加えて、ダイナミックマップを生成する。
【0023】
死角フュージョン部24は、ダイナミックマップを参照してRSU通信部21で取得した死角情報を統合する。なお、死角情報をダイナミックマップ上に加えてもよい。
【0024】
車両通信部25は、物体情報が搭載されたダイナミックマップ及び統合された死角情報を領域内の各車両3に送信する。
【0025】
<車両制御装置30の構成>
図5は、実施の形態1に係る車両3に搭載された車両制御装置30の構成を示す機能ブロック図である。図5において、車両制御装置30は、フュージョンサーバ2と通信する通信部31、車両3の自身の位置を取得する自己位置取得部32、自車両の周囲の物体を検知し、物体情報として取得するセンサ部33、自動運転する経路を生成する経路生成部34、及び車両3を駆動する制御部35を備える。
【0026】
通信部31は、フュージョンサーバ2と通信し、フュージョンサーバ2で統合された物体情報及び死角情報をダイナミックマップとともに受信する。
【0027】
自己位置取得部32は、路側監視機器RSUのロケーション部13と同様な手法で、自車両の位置及び向き(例えば、方位)を測定し取得する。自己位置取得部32で取得した自車両の位置と向きは、グローバル座標系で表される。
【0028】
センサ部33は、車両3の前方一定範囲内に物体(障害物)を検知できるように、路側監視機器RSUの検出部11と同様に、センサを具備する。サポート回路も具備していてもよい。センサはカメラ、レーダ(電波レーダ、レーザレーダ)のうちの少なくとも1つを備える。また、ソナーセンサが具備されていてもよい。なお、本実施の形態においては少なくとも前方の物体を検知できることが必要であるが、前方だけでなく、側方及び後方も含めた周囲を検知できるようにしてもよい。
【0029】
カメラは、自車両の前方、側方及び後方を撮影できる位置に設置され、撮影した画像から、自車両前方の車線及び障害物の情報といった、車両のおかれた環境を示す情報を取得する。
電波レーダは、自車両の前方へ電波照射を行い、その反射波を検出することで、自車両前方に存在する障害物の相対距離及び相対速度を測定し、その測定結果を出力する。
レーザレーダは、例えばLight Detection And Ranging:ライダー)である。LiDARは、レーザを自車両の周辺に照射し、周辺の物体から反射して戻ってくるまでの時間差を検出することにより、物体の位置を検出する。
ソナーセンサは、超音波を自車両の周辺に照射し、周辺の物体から反射して戻ってくるまでの時間差を検出することにより、物体の存在する位置及び距離を検出する。
【0030】
経路生成部34は、経路算出部341及び走行判定部342を備える。経路算出部341は自己位置取得部32で取得した自車両の位置と、センサ部33で取得した自車両の周囲の物体情報と、目的地と、フュージョンサーバ2から取得した物体領域、死角領域及びダイナミックマップ(グローバル座標系の地図)とに基づいて、自車両が走行すべき走行経路を算出する。走行判定部342は、経路算出部341で算出された走行経路で走行可能か判定する。
【0031】
制御部35は、経路生成部34で生成された走行経路に沿って走行するように自車両を制御する。具体的には、車速、ハンドル角などの制御目標値を生成し、車両を駆動する。なお、経路生成部34の走行判定部342により、走行不可と判定され、新しい走行経路が生成できない場合、車両停止の制御を行う。
【0032】
<死角領域と走行経路について>
図6は、死角領域と走行経路との関係を説明するための図である。
図6において、車両3は走行経路raを走行中である。走行経路raは当初に設定された目的地までの走行経路である。路側監視機器RSUが物体6を検出すると、この物体を回避するように修正された走行経路rbが算出される。この補正された走行経路rbは死角7による死角領域を通過することになるので、特許文献1の例では待機するあるいは死角領域を回避するように変更された走行経路rcを通過することになる。
【0033】
<本実施の形態に係る死角領域を解消可能か推定する方法について>
図7は、実施の形態1に係る車両走行システムにおける死角領域を解消可能か推定する方法を説明するための図、図8は、死角領域を解消可能か推定する手順を、図8Aから図8Dの順で説明する図である。本実施の形態1に係る車両走行システムにおいて、図8Aのように路側監視機器RSUが物体6を検出すると、図8Bに示すように車両制御装置30の経路算出部341はこの物体を回避するように補正された走行経路rbを算出する。車両制御装置30はフュージョンサーバ2から死角領域も取得している。図において、車両3のセンサ部33の検出範囲33Sをドットのハッチングの領域で示している。
【0034】
一方、車両制御装置30は、自車両の周囲の物体を検知し、物体情報として取得するセンサ部33を備えているので、車両制御装置30の走行判定部342において、走行経路rbを車両が走行すると仮定した場合、センサ部33はその死角領域を検知しながら走行可能か判定する。図8C図8Dは、車両3が走行経路rbを走行すると仮定した場合の車両3の位置及びセンサ部33の検出範囲33Sの推移を示している。例えば、図7において、走行経路rbを走行する、点線で示した車両3のセンサ部33の検出範囲33Sが死角領域をカバーできるか演算し、図7のように車両3のセンサ部33がカバーすることで死角領域が解消するか推定する。
【0035】
図9は、実施の形態1に係る車両走行システムにおける死角領域が解消可能かを推定する方法を説明するための別の例を示す図で、交差点における例である。この交差点には、異なる方向から交差点領域内を監視する複数の路側監視機器RSU1,RSU2,RSU3が設置されており、それぞれ検出範囲11S1,11S2,11S3を有する。車両3は交差点を右折予定であるが、走行経路raによる右折後の車線には路側監視機器RSU1が物体6を検知した物体領域及び死角7による死角領域があるとする。この物体領域及び死角領域は他の路側監視機器RSU2,RSU3の検出範囲11S2,11S3ではカバーできない。
【0036】
車両制御装置30はフュージョンサーバ2から死角領域を取得し、経路算出部341は現行の走行経路raが死角領域を通過するか算出する。そして、車両制御装置30の走行判定部342において、走行経路raを車両が通過すると仮定した場合、センサ部33はその死角領域を検知しながら走行可能か判定する。図9において、走行経路raを走行する車両3は、地点Aでのセンサ部33の検出範囲33SAでは死角領域まで届かない。さらに車両3が走行し、点線で示した地点Bでの車両3のセンサ部33の検出範囲33SBが死角領域をカバーできるか演算し、図8のように車両3のセンサ部33の検出範囲33SBがカバーすることで死角領域が解消するか推定する。死角領域が解消可能な場合は走行判定部342において、走行可能と判定する。
【0037】
図7から図9で示したように、死角領域を走行する走行経路であっても、その経路を車両3が走行すると仮定した場合、走行判定部342において、死角領域を解消可能か推定し、死角領域を解消可能と推定された場合、走行判定部342において、走行可能と判定するので、死角領域があるだけで待機という選択にはならない。そのため、待機時間を削減することが可能となる。
【0038】
次に、さらに詳細に車両の走行経路と死角領域の解消可能推定について説明する。図10は死角領域を解消可能と推定し走行可能と判定する例、図11は死角領域を解消できず走行不可と判定する例を説明するための図である。
【0039】
図10は、死角7の領域を通過する走行経路rbを車両3が走行する状態を示している。また、図10には現在地から車両3が走行経路rbに沿って走行した場合、車両が存在する範囲を予測した境界を示す予測走行領域境界線3dと、車両3のセンサ部33による検出範囲33Sの推移を積算した予測センシング領域33PSとを示している。予測センシング領域33PSはドットでハッチングされた領域である。車両3が走行経路rbに沿って走行した場合、死角領域を通過する車両3の存在する予測走行領域境界線3d内は死角領域の一部であり、予測センシング領域33PSは死角領域全体をカバーできないものの、予測走行領域境界線3dを超えた範囲で物体を検知することが可能である。従って、死角領域のうち予測センシング領域33PS内に予測走行領域境界線3dがある場合は、走行判定部342は死角領域が解消すると推定し、走行可能と判定する。
【0040】
図11は、曲線道路を車両3が走行する例であり、図10と同様に車両3が走行経路rbに沿って走行した場合、車両3の存在範囲と予測される境界を示す予測走行領域境界線3dと、車両3のセンサ部33による検出範囲33Sの推移を積算した予測センシング領域33PSとを示している。図11においては、車両3が走行経路rbに沿って走行した場合、死角7の領域を通過時の予測センシング領域33PSは予測走行領域境界線3d内をカバーすることができない。従って、この場合は、走行判定部342は死角領域が解消できないと推定し、走行不可と判定する。
【0041】
すなわち、走行判定部342は、車両3が死角領域を含む走行経路に沿って走行する場合、予測走行領域境界線3dと、予測センシング領域33PSとを算出し、死角領域を通過時の予測センシング領域33PSが予測走行領域境界線3d内をカバーすることができるか否かを推定する。そして、予測センシング領域33PSが予測走行領域境界線3d内をカバーできると推定された場合、死角領域は解消すると推定し、走行可能と判定する。
【0042】
なお、走行判定部342は、死角領域を解消可能と推定した場合、図7のように、車両3が対向車線に入る場合は、死角領域の先の物体情報を路側監視機器RSU及びフュージョンサーバ2から取得し、車両3の後方の物体情報を路側監視機器RSU、フュージョンサーバ2及びセンサ部33の後方を検知するセンサから取得し、死角領域以外での衝突等の可能性がないか判定し、走行可能の可否を判定する。
【0043】
<本実施の形態1に係る車両走行システム1及び車両制御装置30の動作>
次に、実施の形態1に係る車両走行システム1の動作を車両制御装置30の動作を中心に図12のフローチャートを用いて説明する。なお、図12のフローチャートの処理は、車両3が走行中に繰り返し実行される。図12の各ステップを図2、4及び5の機能ブロック図に示される各機能部と対応付けて説明する。
【0044】
まず、路側監視機器RSUは、検出範囲11S内で検出された物体領域の情報及び死角領域の情報を路側監視機器RSUの位置及び向きの情報を含めて、フュージョンサーバ2に送信する。フュージョンサーバ2は各路側監視機器RSUから収集した物体領域の情報及び死角領域の情報を統合しダイナミックマップを生成するとともに、対象領域内の車両3に物体情報が搭載されたダイナミックマップ及び死角領域の情報を送信する。
【0045】
ステップS101において、車両制御装置30の通信部31はフュージョンサーバ2から物体情報が搭載されたダイナミックマップ及び死角領域の情報を取得する。
【0046】
次に、ステップS102において、経路生成部34の経路算出部341は自己位置取得部32で取得した自己位置及びフュージョンサーバ2から取得した物体情報が搭載されたダイナミックマップ及び死角領域の情報に基づいて、車両3の走行経路を算出する。なお、目的地と地図情報に基づいて当初の走行経路raは予め生成されていてもよい。
【0047】
ステップS102において、走行経路を算出すると(ステップS102において、Yes)、ステップS103に進む。ステップS103において、経路算出部341は走行経路上に障害物である物体6がある場合(ステップS103において、Yes)、ステップS102に戻り、物体6を回避する走行経路を生成する。走行経路上に物体がない場合はステップS104に進む(ステップS103において、No)。
【0048】
次に、ステップS104において、経路算出部341は走行経路上に死角領域があると判定した場合(ステップS104において、Yes)、ステップS105に進む。走行経路上に死角領域がない場合(ステップS104において、No)、ステップS107進む。
【0049】
走行経路上に死角領域があると判定された場合、ステップS105において、走行判定部342は、その経路を車両3が走行した時に、車両3に搭載されたセンサ部33により死角領域を検知可能か、すなわち死角領域が解消可能か推定する。死角領域を解消可能と推定された場合(ステップS105において、Yes)、ステップS106に進む。死角領域をセンサ部33で検知することができず、死角領域を解消不可と推定された場合(ステップS105において、No)、ステップS102に戻り、死角領域を回避する走行経路を生成する。
【0050】
死角領域をセンサ部33により解消可能と推定された場合、ステップS106において、走行判定部342は、死角領域以外での衝突等の可能性がないか判定し、走行可能の可否を判定する。具体的には、幅広の道路であって、死角領域が車線内の場合は、死角領域をセンサ部33により解消可能であることの推定のみで走行可能としてもよい。死角領域が対向車線の場合、死角領域の先の物体情報を路側監視機器RSU及びフュージョンサーバ2から取得し、車両3の後方の物体情報を路側監視機器RSU、フュージョンサーバ2及びセンサ部33の後方を検知するセンサから取得し、死角領域以外での他の物体との衝突等の可能性がないか判定し、走行可能の可否を判定する。また、死角領域が追い越し車線の場合は、センサ部33の車両3の後方を検知するセンサから物体情報を取得し、後方車両からの追突の可能性がないか等判定し、走行可能の可否を判定する。
【0051】
ステップS106において、走行経路を走行可能と判定された場合(ステップS106において、Yes)、ステップS107に進み、生成された走行経路に沿って走行するように制御部35は車両3を制御する。ステップS106において、走行不可と判定された場合(ステップS106において、No)、対向車線においては、主に前方からの車両の通過を待てばよく、追い越し車線においては、先に横越車線に入った後方車両の通過を待てばよいため、制御部35はそれらの通過の間車両3を待機させる(ステップS108)。その後、ステップS107に進み、制御部35は走行経路に沿って車両3を走行させる。
【0052】
なお、ステップS103及びステップS105からステップS102に戻り、物体領域あるいは死角領域を回避する走行経路を算出できない場合は(ステップS102において、No)、ステップS109に進み、物体領域あるいは死角領域の手前で車両3を停止させるように制御部35は車両3を制御し、必要に応じて、警告を発する。また、特許文献1のように、物体が静止物か移動物かによって待機あるいは迂回経路の生成等の判断を行ってもよい。
【0053】
以上のように、実施の形態1によれば、路側監視機器で検出された物体の物体情報と、物体によって路側監視機器の死角となる死角領域を含む死角情報と、を取得して車両の走行を制御する車両制御装置であって、車両の自己位置を取得する自己位置取得部と、車両の少なくとも前方を検知するセンサ部と、車両の自己位置、取得した物体情報及び死角情報を用いて車両が走行する走行経路を生成する経路生成部と、車両を駆動制御する制御部と、を備えており、経路生成部は、車両が走行する走行経路を算出する経路算出部と、算出された前記走行経路の走行可否を判定する走行判定部と、を有し、経路算出部は、取得した物体情報に基づいて物体を回避する第1の走行経路を算出し、走行判定部は、第1の走行経路が死角領域を通過するか判定し、通過すると判定された場合、車両が第1の走行経路を走行すると仮定した時にセンサ部が死角領域を検知可能か否か推定し、検知可能と推定された場合、前記制御部は前記車両を前記第1の走行経路に沿って走行させるように制御した。これにより、死角領域であっても自車両のセンサでその領域を検知できると推定されれば待機しなくてもよいので、待機時間の削減が可能となる。
【0054】
また、予め設定された領域内の物体を検出する検出部と、検出された物体の物体情報に基づいて物体によって路側監視機器の死角となる死角領域を算出する死角計算部と、有する路面監視機器、1つまたは複数の路面監視機器から取得した物体情報及び死角情報を統合し、車両に送信するフュージョンサーバ、及び上述の車両制御装置を搭載した車両により、車両走行システムを構成するので、待機時間が削減され、自動運転車両の円滑な走行を実現可能なシステムが可能となる。
【0055】
実施の形態2.
以下に、実施の形態2に係る車両走行システムについて図を用いて説明する。
図13は、実施の形態2に係る車両制御装置30の機能ブロック図である。実施の形態1の図5と異なる点は、経路生成部34がさらに到達時間算出部343を備えることである。それ以外の路側監視機器RSU及びフュージョンサーバ2の構成は実施の形態1と同様であり、説明を省略する。
【0056】
経路生成部34が具備する到達時間算出部343の動作について説明する。到達時間算出部343は、車両3が現在地から死角領域に到達するまでに要する到達時間を算出する。図14は、死角領域までの到達時間の算出方法を説明するための図である。車両3の現在地から死角領域までの到達時間tは車両の走行速度V、車両3と死角領域との距離Lからt=L/Vで求めることができる。
【0057】
走行判定部342は、到達時間算出部343で算出された到達時間tと予め設定された閾値th_tとを比較し、t>th_tの場合、その経路を車両3が走行した時に、死角領域を車両3に搭載されたセンサ部33により検知可能、すなわち死角領域が解消可能か推定する。一方、t≦th_tの場合、走行不可と判定する。
【0058】
図14に示すように、走行経路rbは、物体領域を回避して死角領域に入るように車線を地点Cで変更する。この時、t≦th_tの場合物体領域の直前で急なハンドル操作が必要になる、あるいは地点Cが物体領域に近くに設定せざるを得なくなり、車両3が死角領域を検知するタイミングが遅れる等危惧される。そのため、t≦th_tの場合、走行不可と判定する。
【0059】
図15は、t>th_tの場合の3つの走行経路を示した図である。図15Aは死角領域までの到達時間t1の例、図15B、15Cは死角領域までの到達時間t2の例で、t2>t1>th_tの条件を満たす。三者はいずれもその経路を車両3が走行した時に、死角領域を車両3に搭載されたセンサ部33により検知可能である。図15Bにおいては、図15Aの走行経路rb1のように物体領域直前で死角領域に入る走行経路rb2が生成されるが、死角領域までの到達時間が大きいので、図15Cのように車両3が緩やかな車線変更を行い、死角領域をセンサ部33で検知可能な状況をより早く作ることが可能となる走行経路rb3に修正することが可能となる。
【0060】
<本実施の形態2に係る車両走行システム1及び車両制御装置30の動作>
次に、実施の形態2に係る車両走行システム1の動作を車両制御装置30の動作を中心に図16のフローチャートを用いて説明する。なお、図16のフローチャートの処理は、車両3が走行中に繰り返し実行される。
【0061】
ステップS201からステップS204までは実施の形態1の図12のステップS101からステップS104までと同様であり、説明を省略する。
ステップS204において、走行経路上に死角領域があると判定された場合、ステップS205に進み、到達時間算出部343は、車両3が現在地から死角領域に到達するまでの到達時間tを算出する。走行判定部342は、到達時間算出部343で算出された到達時間tと予め設定された閾値th_tとを比較し、t>th_tの場合(ステップS205において、Yes)、ステップS206に進む。t≦th_tの場合、走行不可と判定し(ステップS205において、No)、ステップS202に戻り、走行経路を再度算出する。
【0062】
ステップS206において、走行判定部342は、その経路を車両3が走行すると仮定した時に、車両3に搭載されたセンサ部33により死角領域を検知可能か、すなわち死角領域が解消可能かを推定する。死角領域を解消可能と推定された場合(ステップS206において、Yes)、ステップS207に進む。死角領域をセンサ部33で検知することができず、死角領域を解消不可と推定された場合(ステップS206において、No)、ステップS202に戻り、死角領域を回避する走行経路を生成する。
【0063】
センサ部33により死角領域を解消可能と推定された場合、ステップS207において、走行判定部342は、死角領域以外での衝突等の可能性がないか判定し、走行可能の可否を判定する。走行可能か否かの判定はステップS106と同様であり、説明を省略する。
【0064】
ステップS207において、走行経路を走行可能と判定された場合(ステップS207において、Yes)、ステップS208に進み、生成された走行経路に沿って走行するように制御部35は車両3を制御する。ステップS207において、走行不可と判定された場合(ステップS207において、No)、対向車線においては、主に前方からの車両の通過を待てばよく、追い越し車線においては、先に横越車線に入った後方車両の通過を待てばよいため、制御部35はそれらの通過の間車両3を待機させる(ステップS209)。その後、ステップS208に進み、制御部35は走行経路に沿って車両3を走行させる。
【0065】
なお、ステップS203、ステップS205及びステップS206からステップS202に戻り、物体領域あるいは死角領域を回避する走行経路を算出できない場合は(ステップS202において、No)、ステップS210に進み、物体領域あるいは死角領域の手前で車両3を停止させるように制御部35は車両3を制御し、必要に応じて、警告を発する。また、特許文献1のように、物体が静止物か移動物かによって待機あるいは迂回経路の生成等の判断を行ってもよい。
【0066】
以上のように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果奏する。また、車両制御装置の経路生成部は、走行判定部により、第1の走行経路が物体による死角領域を通過すると判定された場合、車両の現在地から死角領域までの到達時間を算出する到達時間算出部をさらに備えており、走行判定部は、算出された到達時間tと予め設定された閾値th_tとを比較し、到達時間が閾値以下の場合(t≦th_t)、経路算出部において死角領域を回避する第2の走行経路を算出する、あるいは制御部により車両を待機させるようにしたので、死角領域を解消可能かの推定を無理に行うことなく、走行経路を再構築可能となる。さらに、到達時間が閾値より大きい場合(t>th_t)、経路算出部は、必要に応じて第1の走行経路中の車線変更が緩やかになるように修正することが可能となり、円滑な走行経路を提供することが可能となる。
【0067】
なお、実施の形態1のステップS105及び実施の形態2のステップS206において、死角領域をセンサ部33で検知することができず、死角領域を解消不可と推定された場合であっても、解消できない割合が予め設定された割合以内の場合、走行判定部342において、死角領域を解消できるように走行経路の修正を行うようにしてもよい。この割合は走行経路、死角領域、車両の位置及び車両の向き等の条件によって異なるので、それら条件とともにチューニングパラメータとして設定しておくのがよい。条件にもよるが、解消不可と推定された時の解消できない割合が例えば5%以下であれば、概ね以下の修正で死角領域を解消することが可能となる。
例えば、図15B図15Cとの関係のように、車両3の走行経路の変更位置を物体領域あるいは死角領域から離れた位置に変更するようにすればよく、このように変更することで死角領域を解消することが可能となる。
【0068】
また、図17は交差点内の例であるが、図17Aにおける走行経路rb11に沿って車両3が走行する場合、死角領域における予測走行領域境界線3d11内を予測センシング領域33PS11が完全にカバーできていない。しかし、図17Bでは走行経路rb12のように膨らむように右折経路を生成することで、死角領域における予測走行領域境界線3d12内を予測センシング領域33PS12によりカバーすることが可能となる。このような軽微な修正を行う機能を走行判定部342に持たせれば、走行経路を再度算出するステップに戻らなくてもよくなり、さらに車両3の待機時間の削減にも寄与する。
【0069】
上述の実施の形態1及び2における車両走行システム1、フュージョンサーバ2、車両制御装置30、路側監視機器RSUの各機能部は、図18に例示のハードウエア構成、つまり演算処理回路1001、各機能部の機能を実行するプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)及びプログラムによる演算結果である各機能部の実行結果の各データを保存するRAM(Random Access Memory)を含む記憶装置1002、入出力回路1003、及び通信回路1004から構成された車両走行システム1として実現してもよい。
【0070】
なお、演算処理回路1001には、CPU(Central Processing Unit)、DSP(DigitalSignal Processor)などのプロセッサが適用される。また、演算処理回路1001には、専用のハードウエアが適用されても良い。演算処理回路1001が専用のハードウエアである場合、演算処理回路1001は、たとえば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたもの等が該当する。
【0071】
また、車両走行システム1、フュージョンサーバ2、車両制御装置30、路側監視機器RSUの各機能部が個別の演算処理回路で実現されていても良いし、それらがまとめて1つの演算処理回路で実現されていてもよい。
さらに、車両走行システム1、フュージョンサーバ2、車両制御装置30、路側監視機器RSUの各機能部は、一部の機能については専用のハードウエアとして演算処理回路でその機能を実現し、他の機能についてはソフトウエアで実現する等、ハードウエア、ソフトウエア等、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0072】
通信回路1004は通信モジュールとして、広域通信部と狭域通信部とを備える。広域通信部は、所定の広域無線通信規格、例えばLTE(Long Term Evolution)あるいは4G、5G(5th Generation;第5世代移動通信システム)に準拠したものを用いる。狭域通信部は例えば、DSRC(Dedicated Short Range Communications)などを用い、上述の実施の形態では説明しなかったが、他車両との通信に用いることで、自車両周辺の他車両の情報を入手できある。これら通信は、一定の通信速度が担保されている。
【0073】
車両3内では、例えばCAN(Control Area Network:登録商標)等を用いて接続され、情報通信が行われる。
【0074】
<その他の実施の形態>
なお、上述では、車両である自動車を例に説明したが、適用先は自動車に限るものではなく、他の各種の移動体に適用することが可能である。例えばビル内を点検するようなビル内移動ロボット、ライン点検ロボット、及びパーソナルモビリティなどの移動体の走行経路を生成するシステムとして使用することができる。自動車以外の場合、路側監視機器RSUの取得する情報としては、例えばビル内、ライン内、パーソナルモビリティが行動する範囲内に設けられた障害物情報検出部の情報を用いればよい。
【0075】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0076】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0077】
(付記1)
路側監視機器で検出された物体の物体情報と、前記物体情報に基づいて推定され、前記物体によって前記路側監視機器の死角となる死角領域を含む死角情報と、を取得して車両の走行を制御する車両制御装置であって、
前記車両の位置を取得する自己位置取得部と、
前記車両の少なくとも前方を検知するセンサ部と、
前記車両の位置、前記物体情報及び前記死角情報を用いて前記車両が走行する走行経路を生成する経路生成部と、
前記車両を駆動制御する制御部と、を備え、
前記経路生成部は、前記車両が走行する走行経路を算出する経路算出部と、算出された前記走行経路の走行可否を判定する走行判定部と、を有し、
前記経路算出部は、取得した前記物体情報に基づいて前記物体を回避する第1の走行経路を算出し、
前記走行判定部は、
前記第1の走行経路が前記物体による前記死角領域を通過するか判定し、
前記死角領域を通過すると判定された場合、前記車両が前記第1の走行経路を走行すると仮定した時に前記車両の具備する前記センサ部により前記死角領域を検知可能か否か推定し、
前記死角領域を検知可能と推定された場合、走行可能か否かの判定を行い、走行可能か否かの判定結果に従って前記制御部は前記車両を前記第1の走行経路に沿って走行させるように制御し、
前記死角領域を検知不可と推定された場合、走行不可と判定し、前記経路算出部において死角領域を回避する第2の走行経路を算出する、あるいは前記制御部により前記車両を待機させる、車両制御装置。
(付記2)
前記経路生成部は、
前記走行判定部により、前記第1の走行経路が前記物体による前記死角領域を通過すると判定された場合、前記車両の現在地から前記死角領域までの到達時間を算出する到達時間算出部をさらに備え、
前記走行判定部は、算出された前記到達時間と予め設定された閾値を比較し、前記到達時間が前記閾値以下の場合、前記経路算出部において死角領域を回避する第2の走行経路を算出する、あるいは前記制御部により前記車両を待機させる、付記1に記載の車両制御装置。
(付記3)
前記経路算出部は、
前記走行判定部により、前記到達時間が前記閾値より大きい場合、前記第1の走行経路中の車線変更が緩やかになるように修正した経路を算出する、付記2に記載の車両制御装置。
(付記4)
前記走行判定部において、前記第1の走行経路が前記物体による前記死角領域を通過すると判定され、前記車両が前記第1の走行経路を走行すると仮定した時に前記車両の具備する前記センサ部により前記死角領域を検知不可と推定された場合、前記走行判定部は前記センサ部により前記死角領域を検知不可の割合を算出し、検知不可の前記割合が予め設定された割合以下か否か比較し、
前記経路算出部は、
前記センサ部による前記死角領域の検知不可の前記割合が予め設定された割合以下と判定された場合、前記死角領域が前記車両のセンサ部により検知可能となるように前記第1の走行経路の修正経路を算出する、付記1から3のいずれか1項に記載の車両制御装置。
(付記5)
予め設定された領域内の物体を検出する検出部と、検出された前記物体の物体情報に基づいて前記物体によって前記路側監視機器の死角となる死角領域を算出する死角計算部と、を備えた前記路側監視機器、1つまたは複数の前記路側監視機器から取得した前記物体情報及び前記死角情報とを統合し、前記車両に送信するフュージョンサーバ、及び付記1から4のいずれか1項に記載の車両制御装置を搭載した車両を備えた車両走行システム。
【符号の説明】
【0078】
1:車両走行システム、 2:フュージョンサーバ、 3:車両、 3d,3d1,3d2,3d3,3d11,3d12:予測走行領域境界線、6:物体、 7:死角、 11:検出部、 11S,11S1,11S2,11S3:検出範囲、 111:カメラ、 112:電波レーダ、 113:レーザレーダ、 12:一次フュージョン部、 121:物体フュージョン部、 122:死角計算部、 13:ロケーション部、 14:通信部、 21:RSU通信部、 22:地図情報記憶部、 23:ダイナミックマップ生成部、 24:死角フュージョン部、 25:車両通信部、 30:車両制御装置、 31:通信部、 32:自己位置取得部、 33:センサ部、 33S,33SA,33SB:検出範囲、 33PS,33PS11,33PS12:予測センシング領域、34:経路生成部、 341:経路算出部、 342:走行判定部、 343:到達時間算出部、 35:制御部、 RSU,RSU1,RSU2,RSU3:路側監視機器、 ra,rb,rc,rb1,rb2,rb3,rb11,rb12:走行経路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18