(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139225
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】近接センサシステム、ステアリング装置、及び近接センサの故障診断方法
(51)【国際特許分類】
G01B 7/00 20060101AFI20241002BHJP
B62D 1/06 20060101ALI20241002BHJP
H01H 36/00 20060101ALI20241002BHJP
H03K 17/955 20060101ALI20241002BHJP
H03K 17/945 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
G01B7/00 101C
B62D1/06
H01H36/00 V
H01H36/00 J
H03K17/955 U
H03K17/945 B
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050072
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】大舘 正太郎
【テーマコード(参考)】
2F063
3D030
5G046
5J050
【Fターム(参考)】
2F063AA02
2F063AA49
2F063BA08
2F063BB08
2F063BC02
2F063BD11
2F063CA02
2F063DA01
2F063DA05
2F063DC08
2F063DD02
2F063GA01
3D030DB13
5G046AA06
5G046AB03
5G046AC21
5G046AE05
5J050AA35
5J050BB22
5J050CC09
5J050EE34
5J050EE38
5J050FF29
(57)【要約】
【課題】比較的簡易な構成によって近接センサの故障の有無を診断できる近接センサシステムを提供すること。
【解決手段】近接センサシステムは、ステアリングハンドルに対する人体の近接を検出する複数の近接センサ近接センサ4~7と、近接センサ4~7の故障の有無を診断する故障診断装置8と、を備える。近接センサ4~7は、それぞれ、ステアリングハンドルの異なる位置に設けられた電極部40~70と、電極部に発振周波数の電圧を印加する電源回路45と、電極部の電気的特性を測定する測定回路46と、を備え、故障診断装置8は、複数の近接センサ4~7の中の少なくとも2つを発振対象及び診断対象として設定し、発振対象の電源回路によって発振周波数の電磁波を発生させている間における診断対象の測定回路による電気的特性の測定結果を取得し、この測定結果に基づいて診断対象の故障の有無を診断する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象構造物に対する対象物体の近接を検出する複数の近接センサと、
前記近接センサの故障の有無を診断する故障診断装置と、を備える近接センサシステムであって、
複数の前記近接センサは、それぞれ、前記対象構造物の異なる位置に設けられた電極部と、前記電極部に発振周波数の電圧を印加する電源回路と、前記電極部の電気的特性を測定する測定回路と、を備え、
前記故障診断装置は、複数の前記近接センサの中の少なくとも2つを発振対象及び診断対象として設定するとともに、前記発振対象の前記電源回路によって前記発振周波数の電磁波を発生させている間における前記診断対象の前記測定回路による前記電気的特性の測定結果を取得し、当該測定結果に基づいて前記診断対象の故障の有無を診断することを特徴とする近接センサシステム。
【請求項2】
前記故障診断装置は、前記発振対象によって電磁波を発生させている間、前記診断対象の前記電極部と前記電源回路との接続を遮断するとともに前記電極部と前記測定回路とを接続した状態で維持することを特徴とする請求項1に記載の近接センサシステム。
【請求項3】
前記故障診断装置は、複数の前記近接センサのうち、前記対象物体の近接が検出されているものの中から前記発振対象を定め、前記対象物体の近接が検出されていないものの中から前記診断対象を定めることを特徴とする請求項2に記載の近接センサシステム。
【請求項4】
前記故障診断装置は、前記発振対象及び前記診断対象の設定を所定の周期で切り替えることを特徴とする請求項2に記載の近接センサシステム。
【請求項5】
前記測定回路は、前記電極部とスイッチを介して接続されたコンデンサの電圧を測定し、
前記故障診断装置は、前記診断対象の前記測定回路によって測定される電圧の周波数と、前記発振対象の前記電源回路の前記発振周波数との比較に基づいて前記診断対象の故障の有無を診断することを特徴とする請求項3又は4に記載の近接センサシステム。
【請求項6】
前記故障診断装置は、前記診断対象によって測定される電圧のレベルと所定の基準レベルとの比較に基づいて前記診断対象の故障の有無を診断することを特徴とする請求項5に記載の近接センサシステム。
【請求項7】
前記故障診断装置は、前記診断対象によって測定される電圧のパルス状変動の発生回数に基づいて前記診断対象の故障の有無を診断することを特徴とする請求項6に記載の近接センサシステム。
【請求項8】
前記発振周波数は、各近接センサで異なることを特徴とする請求項3又は4に記載の近接センサシステム。
【請求項9】
運転者による操舵操作を受け付けるステアリングハンドルと、
前記対象構造物としての前記ステアリングハンドルに設けられた請求項1から4の何れかに記載の近接センサシステムと、
前記近接センサの検出結果に基づいて前記ステアリングハンドルの把持の有無を判定する把持判定装置と、を備えることを特徴とするステアリング装置。
【請求項10】
対象構造物に対する対象物体の近接を検出する複数の近接センサの故障の有無を診断する故障診断方法であって、
複数の前記近接センサは、それぞれ、前記対象構造物の異なる位置に設けられた電極部と、前記電極部に発振周波数の電圧を印加する電源回路と、前記電極部の電気的特性を測定する測定回路と、を備え、
複数の前記近接センサの中の少なくとも2つを発振対象及び診断対象として設定する第1ステップと、
前記発振対象の前記電源回路によって前記発振周波数の電磁波を発生させながら前記診断対象の前記測定回路によって前記電極部の電気的特性を測定する第2ステップと、
前記第2ステップにおける測定結果に基づいて前記診断対象の故障の有無を診断する第3ステップと、を備えることを特徴とする近接センサの故障診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接センサシステム、ステアリング装置、及び近接センサの故障診断方法に関する。より詳しくは、複数の近接センサの故障の有無を診断する近接センサシステム、ステアリング装置、及び故障診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現へ向けて、運転者による周囲の状態の認知を支援する運転支援技術に関する研究開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。
【0003】
特許文献1に示された接触検知装置では、ステアリングハンドルに設けられた静電容量センサによって、運転者がステアリングハンドルを把持しているか否かを判定している。またこの特許文献1には、静電容量センサを用いた接触検知装置の故障診断方法に関する技術も記載されている。より具体的には、特許文献1に記載の故障診断方法では、推定手段によってステアリングハンドルに人体が接触しているか否かを推定し、推定手段が接触していると推定した場合の静電容量センサの検知結果と、推定手段が接触していないと推定した場合の静電容量センサの検知結果と、に基づいて、静電容量センサに関わる故障診断を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に示された故障診断方法では、ステアリングハンドルに人体が接触しているか否かを、接触検知装置以外の推定手段によって推定する必要があることから、処理負荷やコストが高くなるおそれがある。
【0006】
本発明は、比較的簡易な構成によって近接センサの故障の有無を診断できる近接センサシステム、ステアリング装置、及び故障診断方法を提供することを目的としたものであり、ひいては持続可能な輸送システムの発展に寄与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る近接センサシステム(例えば、後述の近接センサシステムS)は、対象構造物(例えば、後述のステアリングハンドル2)に対する対象物体(例えば、後述の人体H)の近接を検出する複数の近接センサ(例えば、後述の近接センサ4~7)と、前記近接センサの故障の有無を診断する故障診断装置(例えば、後述の故障診断装置8)と、を備え、複数の前記近接センサは、それぞれ、前記対象構造物の異なる位置に設けられた電極部(例えば、後述の右上電極部40)と、前記電極部に発振周波数の電圧を印加する電源回路(例えば、後述の電源回路45)と、前記電極部の電気的特性を測定する測定回路(例えば、後述の測定回路46)と、を備え、前記故障診断装置は、複数の前記近接センサの中の少なくとも2つを発振対象及び診断対象として設定するとともに、前記発振対象の前記電源回路によって前記発振周波数の電磁波を発生させている間における前記診断対象の前記測定回路による前記電気的特性の測定結果を取得し、当該測定結果に基づいて前記診断対象の故障の有無を診断することを特徴とする。
【0008】
(2)この場合、前記故障診断装置は、前記発振対象によって電磁波を発生させている間、前記診断対象の前記電極部と前記電源回路との接続を遮断するとともに前記電極部と前記測定回路とを接続した状態で維持することが好ましい。
【0009】
(3)この場合、前記故障診断装置は、複数の前記近接センサのうち、前記対象物体の近接が検出されているものの中から前記発振対象を定め、前記対象物体の近接が検出されていないものの中から前記診断対象を定めることが好ましい。
【0010】
(4)この場合、前記故障診断装置は、前記発振対象及び前記診断対象の設定を所定の周期で切り替えることが好ましい。
【0011】
(5)この場合、前記測定回路は、前記電極部とスイッチ(例えば、後述の第1スイッチ43)を介して接続されたコンデンサ(例えば、後述のリファレンスコンデンサ461)の電圧を測定し、前記故障診断装置は、前記診断対象の前記測定回路によって測定される電圧の周波数と、前記発振対象の前記電源回路の前記発振周波数との比較に基づいて前記診断対象の故障の有無を診断することが好ましい。
【0012】
(6)この場合、前記故障診断装置は、前記診断対象によって測定される電圧のレベルと所定の基準レベルとの比較に基づいて前記診断対象の故障の有無を診断することが好ましい。
【0013】
(7)この場合、前記故障診断装置は、前記診断対象によって測定される電圧のパルス状変動の発生回数に基づいて前記診断対象の故障の有無を診断することが好ましい。
【0014】
(8)この場合、前記発振周波数は、各近接センサで異なることが好ましい。
【0015】
(9)本発明に係るステアリング装置(例えば、後述のステアリング装置1)は、運転者による操舵操作を受け付けるステアリングハンドル(例えば、後述のステアリングハンドル2)と、前記対象構造物としての前記ステアリングハンドルに設けられた(1)から(4)の何れかに記載の近接センサシステム(例えば、後述の近接センサシステムS)と、前記近接センサの検出結果に基づいて前記ステアリングハンドルの把持の有無を判定する把持判定装置(例えば、後述の把持判定装置9)と、を備えることを特徴とする。
【0016】
(10)本発明に係る故障診断方法は、対象構造物(例えば、後述のステアリングハンドル2)に対する対象物体(例えば、後述の人体H)の近接を検出する複数の近接センサ(例えば、後述の近接センサ4~7)の故障の有無を診断する方法であって、複数の前記近接センサは、それぞれ、前記対象構造物の異なる位置に設けられた電極部(例えば、後述の右上電極部40)と、前記電極部に発振周波数の電圧を印加する電源回路(例えば、後述の電源回路45)と、前記電極部の電気的特性を測定する測定回路(例えば、後述の測定回路46)と、を備え、複数の前記近接センサの中の少なくとも2つを発振対象及び診断対象として設定する第1ステップ(例えば、後述のステップST2、ステップST14、及びステップST15)と、前記発振対象の前記電源回路によって前記発振周波数の電磁波を発生させながら前記診断対象の前記測定回路によって前記電極部の電気的特性を測定する第2ステップ(例えば、後述のステップST3、ステップST4、ステップST16、及びステップST17)と、前記第2ステップにおける測定結果に基づいて前記診断対象の故障の有無を診断する第3ステップ(例えば、後述のステップST6、及びステップST19)と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
(1)本発明に係る近接センサシステムは、対象構造物に対する対象物体の近接を検出する複数の近接センサと、これら近接センサの故障の有無を診断する故障診断装置と、を備える。また各近接センサは、それぞれ、対象構造物の異なる位置に設けられた電極部と、この電極部に発振周波数の電圧を印加する電源回路と、電極部の電気的特性を測定する測定回路と、を備える。故障診断装置は、複数の近接センサの中の少なくとも2つを発振対象及び診断対象として設定する。また故障診断装置は、発振対象の電源回路によって電極部から発振周波数の電磁波を発生させている間における診断対象の測定回路による電気的特性の測定結果を取得し、この測定結果に基づいて診断対象の故障の有無を診断する。ここで、発振対象の電源回路によって電極部に発振周波数の電圧を印加すると、この電極部の周囲には発振周波数の電磁波が発生する。この際、診断対象に故障が無ければ、発振対象と診断対象との間のアンテナ誘導作用によって診断対象の電極部の電気的特性が変化する。従って診断対象の故障の有無は、診断対象の測定回路による測定結果と相関がある。よって本発明によれば、同じ対象構造物に設けられた複数の近接センサの少なくとも2つを利用して故障の有無を診断できるので、比較的簡易な構成によって近接センサの故障の有無を診断でき、ひいては持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
【0018】
(2)本発明において、故障診断装置は、発振対象によって電磁波を発生させている間、診断対象の電極部と電源回路との接続を遮断するとともに診断対象の電極部と測定回路とを接続した状態で維持する。よって本発明によれば、診断対象の電源回路から印加される電圧の影響によって、診断対象の電極部の電気的特性が変動するのを防止することができるので、診断対象の故障の有無を精度良く診断することができる。
【0019】
(3)上述のような近接センサでは、対象構造物に対し対象物体が近接しているかどうかを検出するためには、電源回路によって電極部に電圧を適宜印加する必要がある。これに対し診断対象として定めた近接センサは、上述のように精度良く故障の有無を診断するためには、電極部と電源回路との接続を遮断した状態で維持することが好ましい。換言すれば、近接センサは、診断対象として定められている間、対象物体の近接の有無を検出することができない。そこで本発明に係る故障診断装置は、複数の近接センサのうち、対象物体の近接が検出されているものの中から発振対象を定め、対象物体の近接が検出されていないものの中から診断対象を定める。これにより、発振対象として定めた近接センサによって、対象物体の近接の有無を検出し続けながら、同時に診断対象として定めた近接センサの故障の有無を診断することができる。
【0020】
(4)本発明において、故障診断装置は、発振対象及び診断対象の設定を所定の周期で切り替える。これにより本発明によれば、対象構造物に多くの近接センサが設けられている場合であっても、これら全ての近接センサの故障の有無を定期的に診断することができる。
【0021】
(5)上述のように発振対象の電源回路によって電極部に発振周波数の電圧を印加すると、この電極部の周囲には発振周波数の電磁波が発生する。この際、診断対象に故障が無ければ、発振対象と診断対象との間のアンテナ誘導作用によって診断対象の電極部に接続されたコンデンサの電圧は、発振対象の発振周波数と同じ周波数で変動する。そこで故障診断装置は、診断対象の測定回路によって測定されるコンデンサの電圧の周波数と、発振対象の電源回路の発振周波数との比較に基づいて診断対象の故障の有無を診断する。これにより、診断対象の故障の有無を高い精度で診断することができる。また本発明によれば、周波数を比較することによって、単に故障の有無だけでなく故障の態様(例えば、開故障)を特定できる場合がある。
【0022】
(6)発振対象と診断対象との間のアンテナ誘導作用によって診断対象の電極部に接続されたコンデンサの電圧のレベルは、発振対象の電極部と診断対象の電極部との間の位置関係によって変化する。そこで故障診断装置は、診断対象の測定回路によって測定される電圧のレベルと、所定の基準レベルとの比較に基づいて診断対象の故障の有無を診断することにより、さらに精度良く診断対象の故障の有無を診断することができる。また本発明によれば、レベルを比較することによって、単に故障の有無だけでなく故障の態様(例えば、閉故障)を特定できる場合がある。
【0023】
(7)故障診断装置は、診断対象の測定回路によって測定される電圧のパルス状変動の発生回数に基づいて診断対象の故障の有無を診断する。これにより、診断対象におけるチャタリング故障の発生の有無を診断することができる。
【0024】
(8)本発明では、発振周波数を各近接センサで異なるようにすることにより、発振対象の電極部から発生する電磁波の周波数を近接センサ毎に変えることができる。よって本発明によれば、さらに精度良く診断対象の故障の有無を診断することができる。
【0025】
(9)本発明に係るステアリング装置は、ステアリングハンドルと、このステアリングハンドルに設けられた近接センサシステムと、複数の近接センサの検出結果に基づいてステアリングハンドルの把持の有無を判定する把持判定装置と、を備える。よって本発明によれば、このステアリング装置が搭載された車両を運転者が運転している間、把持判定装置によって運転者がステアリングハンドルを把持しているか否かを判定しながら、故障診断装置によって複数の近接センサの故障の有無を診断することができるので、比較的簡易な構成によってステアリングハンドルに設けられた近接センサの故障の有無を診断でき、ひいては持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
【0026】
(10)本発明に係る故障診断方法は、複数の近接センサの中の少なくとも2つを発振対象及び診断対象として設定し、発振対象の電源回路によって発振周波数の電磁波を発生させながら診断対象の測定回路によって電極部の電気的特性を測定し、さらにこの電気的特性の測定結果に基づいて診断対象の故障の有無を診断する。よって本発明によれば、同じ対象構造物に設けられた複数の近接センサの少なくとも2つを利用して故障の有無を診断できるので、比較的簡易な構成によって近接センサの故障の有無を診断でき、ひいては持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る近接センサシステム及びステアリング装置の構成を示す図である。
【
図3】故障診断処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
【
図5】各近接センサの制御モードの遷移を示すタイムチャートである。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る近接センサシステム及びステアリング装置における故障診断処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る近接センサシステム、ステアリング装置、及び故障診断方法について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1は、本実施形態に係る近接センサシステムS及びこの近接センサシステムSを構成要素として含むステアリング装置1の構成を示す図である。ステアリング装置1は、図示しない車両に搭載される。
【0030】
ステアリング装置1は、運転者による車両の操舵操作や車両補機に対する補機操作等を受け付けるステアリングハンドル2と、このステアリングハンドル2を軸支するステアリングシャフト3と、対象構造物としてのステアリングハンドル2に設けられ、このステアリングハンドル2に対する対象物体(例えば、運転者の手)の近接を検出する近接センサシステムSと、近接センサシステムSによる検出結果に基づいて運転者によるステアリングハンドル2の把持の有無を判定する把持判定装置9と、を備える。
【0031】
ステアリングハンドル2は、円環状であり運転者が把持可能なリム部20と、このリム部20の内側に設けられたハブ部23と、ハブ部23から径方向に沿って延びリム部20のリム内周部21に接続される3つのスポーク部25L,25R,25Dと、を備える。
【0032】
ハブ部23は、円盤状であり、例えば運転者から視たリム部20の中心に設けられ、ステアリングハンドル2の中心を構成する。運転者から視たハブ部23の背面側には、ステアリングハンドル2を軸支するステアリングシャフト3が連結されている。ステアリングシャフト3は、ハブ部23の骨格である心金と、図示しない車体の一部を構成する操舵機構とを連結する軸状の連結部材である。したがって運転者がステアリングハンドル2を回転させることによって生じるステアリングトルクは、このステアリングシャフト3によって図示しない操舵機構に伝達される。
【0033】
リム部20とハブ部23とは、3つのスポーク部25L,25R、25Dによって接続されている。左スポーク部25Lは、水平方向に沿って延び、ハブ部23のうち運転者から視た左側の部分とリム内周部21のうち運転者から視た左側の部分とを接続する。右スポーク部25Rは、左スポーク部25Lと平行かつ水平方向に沿って延び、ハブ部23のうち運転者から視た右側の部分とリム内周部21のうち運転者から視た右側の部分とを接続する。下スポーク部25Dは、スポーク部25L,25Rに対し直交かつ鉛直方向に沿って延び、ハブ部23のうち運転者から視た下側の部分とリム内周部21のうち運転者から視た下側の部分とを接続する。
【0034】
以上のようにリム部20は運転者から視て円環状であり、運転者はその全周にわたり把持可能である。
【0035】
左スポーク部25L及び右スポーク部25Rには、それぞれ、運転者が図示しない車両補機(例えば、オーディオ装置やカーナビゲーション装置等)を操作するための運転者による補機操作を受け付ける左補機操作コンソールユニット27L及び右補機操作コンソールユニット27Rが設けられている。運転者は、これら補機操作コンソールユニット27L,27Rに設けられた複数のスイッチを指で操作することによって、車両補機を操作することが可能となっている。
【0036】
なお以下では、運転者から視て略円形のリム部20、リム内周部21、ハブ部23、及びステアリングシャフト3の位置や各スポーク部25L,25R,25Dの向きを、ステアリングシャフト3を中心としかつリム部20の運転者から視た上端部201を基準とした時計回りの角度[°]で表す場合もある。すなわち、右スポーク部25Rは、90°の向きに沿って延び、ハブ部23及びリム内周部21の90°の部分を接続する。下スポーク部25Dは、180°の向きに沿って延び、ハブ部23及びリム内周部21の180°の部分を接続する。また左スポーク部25Lは、270°の向きに沿って延び、ハブ部23及びリム内周部21の270°の部分を接続する。
【0037】
近接センサユニットSは、ステアリングハンドル2に対する運転者の手の近接を検出する複数(本実施形態では、4つ)の近接センサ4,5,6,7と、これら近接センサ4~7の故障の有無を診断する故障診断装置8と、を備える。以下で説明するように、近接センサ4~7は、それぞれ、ステアリングハンドル2において異なる位置に設けられた電極部40,50,60,70を備える。このためステアリングハンドル2に対する運転者の手の近接の検出対象領域は、近接センサ4~7毎に異なる。
【0038】
右上近接センサ4は、ステアリングハンドル2に設けられた右上電極部40と、この右上電極部40と電気的に接続された右上センサ回路42と、を備える。右上電極部40は、ステアリングハンドル2の右スポーク部23Rのうち、運転者から視て右補機操作コンソールユニット27Rの上方側に設けられている。この右上電極部40は、導電性の板状であり、リム部20のうち0°から90°の領域(以下、「右上グリップ部204」ともいう)と対向するように右スポーク部23Rに設けられている。右上センサ回路42は、配線41を介して右上電極部40と接続されている。右上センサ回路42は、右上電極部40の配置位置と人体との間の距離に応じて増減する値として、右上電極部40と接地との間の静電容量を測定する機能を備える。右上電極部40の配置位置と人体との距離が近くなるほど、右上電極部40と接地との間の静電容量は大きくなる。右上センサ回路42は、静電容量の測定結果を把持判定装置9へ送信する。
【0039】
左上近接センサ5は、ステアリングハンドル2に設けられた左上電極部50と、この左上電極部50と電気的に接続された左上センサ回路52と、を備える。左上電極部50は、ステアリングハンドル2の左スポーク部23Lのうち、運転者から視て左補機操作コンソールユニット27Lの上方側に設けられている。この左上電極部50は、導電性の板状であり、リム部20のうち270°から360°の領域(以下、「左上グリップ部205」ともいう)と対向するように左スポーク部23Lに設けられている。左上センサ回路52は、配線51を介して左上電極部50と接続されている。左上センサ回路52は、左上電極部50の配置位置と人体との間の距離に応じて増減する値として、左上電極部50と接地との間の静電容量を測定する機能を備える。左上電極部50の配置位置と人体との距離が近くなるほど、左上電極部50と接地との間の静電容量は大きくなる。左上センサ回路52は、静電容量の測定結果を把持判定装置9へ送信する。
【0040】
右下近接センサ6は、ステアリングハンドル2に設けられた右下電極部60と、この右下電極部60と電気的に接続された右下センサ回路62と、を備える。右下電極部60は、ステアリングハンドル2の右スポーク部23Rのうち、運転者から視て右補機操作コンソールユニット27Rの下方側に設けられている。この右下電極部60は、導電性の板状であり、リム部20のうち90°から180°の領域(以下、「右下グリップ部206」ともいう)と対向するように右スポーク部23Rに設けられている。右下センサ回路62は、配線61を介して右下電極部60と接続されている。右下センサ回路62は、右下電極部60の配置位置と人体との間の距離に応じて増減する値として、右下電極部60と接地との間の静電容量を測定する機能を備える。右下電極部60の配置位置と人体との距離が近くなるほど、右下電極部60と接地との間の静電容量は大きくなる。右下センサ回路62は、静電容量の測定結果を把持判定装置9へ送信する。
【0041】
左下近接センサ7は、ステアリングハンドル2に設けられた左下電極部70と、この左下電極部70と電気的に接続された左下センサ回路72と、を備える。左下電極部70は、ステアリングハンドル2の左スポーク部23Lのうち、運転者から視て左補機操作コンソールユニット27Lの下方側に設けられている。この左下電極部70は、導電性の板状であり、リム部20のうち180°から270°の領域(以下、「左下グリップ部207」ともいう)と対向するように左スポーク部23Lに設けられている。左下センサ回路72は、配線71を介して左下電極部70と接続されている。左下センサ回路72は、左下電極部70の配置位置と人体との間の距離に応じて増減する値として、左下電極部70と接地との間の静電容量を測定する機能を備える。左下電極部70の配置位置と人体との距離が近くなるほど、左下電極部70と接地との間の静電容量は大きくなる。左下センサ回路72は、静電容量の測定結果を把持判定装置9へ送信する。
【0042】
以上のように近接センサ4,5,6,7の電極部40,50,60,70は、それぞれステアリングハンドル2の異なる位置に設けられている。このためステアリングハンドル2における検出対象領域は、各近接センサ4,5,6,7で異なる。より具体的には、右上近接センサ4は、ステアリングハンドル2のうち特に右上グリップ部204を検出対象領域とし、この検出対象領域に対する運転者の手の近接を検出する。左上近接センサ5は、ステアリングハンドル2のうち特に左上グリップ部205を検出対象領域とし、この検出対象領域に対する運転者の手の近接を検出する。右下近接センサ6は、ステアリングハンドル2のうち特に右下グリップ部206を検出対象領域とし、この検出対象領域に対する運転者の手の近接を検出する。また左下近接センサ7は、ステアリングハンドル2のうち特に左下グリップ部207を検出対象領域とし、この検出対象領域に対する運転者の手の近接を検出する。
【0043】
図2は、右上センサ回路42の回路構成を示す図である。
【0044】
右上センサ回路42は、右上電極部40と配線41を介して接続された第1スイッチ43と、右上電極部40と配線41及び第1スイッチ43を介して接続された電源回路45と、右上電極部40と配線41及び第1スイッチ43を介して接続された測定回路46と、第1スイッチ43、電源回路45、及び測定回路46を制御する制御回路47と、を備える。なお
図2では、右上電極部40と接地(例えば、車体)との間の静電容量を、ステアリングハンドル2を操作する運転者の手を含む人体Hによって形成される静電容量Chと、人体Hを除く配線や部品等の浮遊コンデンサEによって形成される浮遊容量Ceと、に分けて図示する。
【0045】
第1スイッチ43は、制御回路47からの指令に応じてオン/オフされるスイッチング素子である。第1スイッチ43は、オンになると、右上電極部40と電源回路45とを導通し、右上電極部40と測定回路46とを遮断する。また第1スイッチ43は、オフになると、右上電極部40と測定回路46とを導通し、右上電極部40と電源回路45とを遮断する。すなわち第1スイッチ43は、制御回路47からの指令に応じて、右上電極部40の接続先を、電源回路45及び測定回路46の間で選択的に切り替える。
【0046】
電源回路45は、右上電極部40と第1スイッチ43を介して直列に接続されたパルス電源451及び増幅器452を備え、これらを用いることによって所定の発振周波数faの電圧を右上電極部40に印加する。パルス電源451は、制御回路47からの指令に応じて、発振周波数faかつ所定電圧のパルス電圧Vsを増幅器452に供給する。増幅器452は、パルス電源451から供給される発振周波数faのパルス電圧Vsを増幅し、第1スイッチ43を介して右上電極部40に印加する。
【0047】
測定回路46は、右上電極部40と第1スイッチ43を介して接続されたリファレンスコンデンサ461、第2スイッチ462、及び電圧センサ463を備え、これらを用いることによって右上電極部40の電気的特性を測定する。リファレンスコンデンサ461は、右上電極部40と第1スイッチ43を介して接続されている。
【0048】
第2スイッチ462は、リファレンスコンデンサ461に対し並列に接続されている。第2スイッチ462は、制御回路47からの指令に応じてオン/オフされるスイッチング素子である。第2スイッチ462は、オンになると、リファレンスコンデンサ461の高電位側と接地とを導通し、リファレンスコンデンサ461に蓄えられた電荷を放電する。第2スイッチ462は、オフになると、リファレンスコンデンサ461の高電位側と接地とを遮断する。
【0049】
電圧センサ463は、リファレンスコンデンサ461の電圧VCrefを測定し、測定値に応じた信号を制御回路47へ送信する。以下では、右上近接センサ4の電圧センサ463によって得られる電圧VCrefの測定値を“VCref_RU”と表記する。
【0050】
制御回路47は、後述の故障診断装置8からの指令によって定められた制御モードの下で第1スイッチ43、電源回路45、及び測定回路46を制御する。制御回路47には、右上近接センサ4を近接センサとして作動させるセンシングモードや、右上近接センサ4を、電磁波を受信するためのアンテナとして作動させる受信モード等の複数の制御モードが定められている。
【0051】
制御回路47は、センシングモードの下では、以下の手順によって第1スイッチ43、電源回路45、及び測定回路46を制御することによって、右上近接センサ4を近接センサとして作動させる。
【0052】
より具体的には、制御回路47は、センシングモードの下では、リファレンスコンデンサ461の電圧の測定値VCref_RUが予め定められた閾値Vthrに到達するまでの間、第2スイッチ462をオフにする。また制御回路47は、リファレンスコンデンサ461の電圧の測定値VCref_RUが閾値Vthrに到達した後、第2スイッチ462をオンにし、リファレンスコンデンサ461に蓄えられた電荷を放電させる。
【0053】
また制御回路47は、センシングモードの下では、パルス電源451をオンにし、電源回路45によって発振周波数faの電圧を発生させながら、この発振周波数faとほぼ同じ周波数で第1スイッチ43をオン/オフを切り替える。
【0054】
より具体的には、制御回路47は、パルス電源451のパルス電圧Vsの立ち上がりに応じて第1スイッチ43をオンにし、右上電極部40と電源回路45とを導通し、右上電極部40と測定回路46とを遮断する。これにより右上電極部40には、パルス電圧Vsが印加され、
図2において矢印2aで示す経路を経て電荷が移動し、人体H及び浮遊コンデンサEが充電される。
【0055】
また制御回路47は、パルス電源451のパルス電圧Vsの立ち下がりに応じて第1スイッチ43をオフにし、右上電極部40と測定回路46とを導通し、右上電極部40と電源回路45とを遮断する。これにより、人体H及び浮遊コンデンサEとリファレンスコンデンサ461とが接続され、人体H及び浮遊コンデンサEからリファレンスコンデンサ461へ
図2において矢印2bで示す経路を経て電荷が移動し、リファレンスコンデンサ461が充電される。これによりリファレンスコンデンサ461の電圧VCrefは上昇する。
【0056】
このように電源回路45によって発振周波数faのパルス電圧を印加すると、人体H及び浮遊コンデンサEの充電及び放電が交互に繰り返され、リファレンスコンデンサ461の電圧VCrefが徐々に高くなる。この際、リファレンスコンデンサ461の電圧VCrefが閾値Vthrに到達するまでの時間(又は、パルス電源461のパルス数)は、人体Hによって形成される静電容量Ch、すなわち右上電極部40と運転者の身体との間の距離に応じて変化する。すなわち、リム部20のうち右上電極部40の配置位置に対し運転者の身体の一部が近接しており静電容量Chが高い場合、リファレンスコンデンサ461の電圧VCrefが閾値Vthrに到達するまでにかかる時間は短くなり、運転者の身体の一部が右上電極部40の配置位置から離れており静電容量Chが低い場合、リファレンスコンデンサ461の電圧VCrefが閾値Vthrに到達するまでにかかる時間は長くなる。
【0057】
制御回路47は、センシングモードの下では、リファレンスコンデンサ461の電圧の測定値VCref_RUが閾値Vthrに到達するまでの時間やパルス数を測定しており、この測定結果に基づいて間接的に右上電極部40の近傍に存在する人体Hによって形成される静電容量Chを測定し、測定値に応じた信号を把持判定装置9へ送信する。以上のように制御回路47は、このような静電容量Chの測定を介して右近接センサ4の検出対象領域に対する人体Hの近接を検出する。以下では、制御回路47によって得られる静電容量Chの測定値を“Ch_RU”と表記する。
【0058】
以上のように制御回路47は、センシングモードの下では右上電極部40と電源回路45とを接続し、右上電極部40に発振周波数faの電圧を印加する。このため右近接センサ4をセンシングモードの下で作動させている間、右上電極部40から発振周波数faの電磁波が発生する。
【0059】
また制御回路47は、受信モードの下では、第1スイッチ43及び第2スイッチ462をオフにした状態を維持する。すなわち制御回路47は、受信モードの下では、右上電極部40と電源回路45との接続を遮断するとともに、右上電極部40と測定回路46とを接続した状態で維持する。また制御回路47は、受信モードの下では、右上電極部40と測定回路46とを接続した状態で維持しながら、測定回路46による右上電極部40の電気的特性の測定結果、すなわちリファレンスコンデンサ461の電圧の測定値VCref_RUに応じた信号を故障診断装置8へ送信する。
【0060】
以上のように制御回路47は、受信モードの下では右上電極部40と電源回路45との接続を遮断した状態で維持することから、右上電極部40に対する人体Hの近接を検出することはできない。
【0061】
なお左上センサ回路52、右下センサ回路62、及び左下センサ回路72の回路構成は、パルス電源の発振周波数を除き、右上センサ回路42の回路構成とほぼ同じである。従って以下では、左上センサ回路52、右下センサ回路62、及び左下センサ回路72の回路構成の詳細な説明及び図示を省略する。
【0062】
以下では、左上センサ回路52のパルス電源の発振周波数を“fb”と表記し、右下センサ回路62のパルス電源の発振周波数を“fc”と表記し、左下センサ回路72のパルス電源の発振周波数を“fd”と表記する。なお以下では、各近接センサ4,5,6,7の発振周波数fa,fb,fc,fdは異なる場合について説明するが、本発明はこれに限らない。発振周波数fa~fdは、各近接センサ4~7で同じにしてもよい。またこれら発振周波数fa~fdは、例えば数十[kHz]程度に設定される。
【0063】
以下では、左上センサ回路52のリファレンスコンデンサの電圧の測定値を“VCref_LU”と表記し、右下センサ回路62のリファレンスコンデンサの電圧の測定値を“VCref_RL”と表記し、左下センサ回路72のリファレンスコンデンサの電圧の測定値を“VCref_LL”と表記する。
【0064】
また以下では、左上センサ回路52の制御回路によって得られる静電容量の測定値を“Ch_LU”と表記し、右下センサ回路62の制御回路によって得られる静電容量の測定値を“Ch_RL”と表記し、左下センサ回路72の制御回路によって得られる静電容量の測定値を“Ch_LL”と表記する。
【0065】
また左上近接センサ5、右下近接センサ6、及び左下近接センサ7は、何れも上述の右上近接センサ4と同様に、故障診断装置8からの指令に応じて、制御モードをセンシングモード及び受信モードの何れかに切り替えることが可能となっている。
【0066】
把持判定装置9は、各近接センサ4~7の検出結果、すなわち各近接センサ4~7をセンシングモードで作動させることによって得られる静電容量の測定値Ch_RU,Ch_LU,Ch_RL,Ch_LLと所定の把持判定閾値Ch_RU_th,Ch_LU_th,Ch_RL_th,Ch_LL_thとの比較に基づいて運転者によるステアリングハンドル2の把持の有無を判定する。
【0067】
より具体的には、把持判定装置9は、測定値Ch_RUが把持判定閾値Ch_RU_thより大きい場合、ステアリングハンドル2は右上グリップ部204において把持されていると判定し、測定値Ch_RUが把持判定閾値Ch_RU_th以下である場合、ステアリングハンドル2は右上グリップ部204において把持されていないと判定する。
【0068】
また把持判定装置9は、測定値Ch_LUが把持判定閾値Ch_LU_thより大きい場合、ステアリングハンドル2は左上グリップ部205において把持されていると判定し、測定値Ch_LUが把持判定閾値Ch_LU_th以下である場合、ステアリングハンドル2は左上グリップ部205において把持されていないと判定する。
【0069】
また把持判定装置9は、測定値Ch_RLが把持判定閾値Ch_RL_thより大きい場合、ステアリングハンドル2は右下グリップ部206において把持されていると判定し、測定値Ch_RLが把持判定閾値Ch_RL_th以下である場合、ステアリングハンドル2は右下グリップ部206において把持されていないと判定する。
【0070】
また把持判定装置9は、測定値Ch_LLが把持判定閾値Ch_LL_thより大きい場合、ステアリングハンドル2は左下グリップ部207において把持されていると判定し、測定値Ch_LLが把持判定閾値Ch_LL_th以下である場合、ステアリングハンドル2は左下グリップ部207において把持されていないと判定する。
【0071】
なお把持判定装置9は、各近接センサ4~7の何れかが故障診断装置8によって故障していると診断された場合、故障していると診断された近接センサの検出結果に基づく判定結果をキャンセルする。
【0072】
故障診断装置8は、
図3を参照して説明する故障診断処理を実行することにより、近接センサ4~7の故障の有無を診断する。
【0073】
図3は、故障診断処理の具体的な手順を示すフローチャートである。故障診断装置8は、ステアリング装置1が搭載された車両が起動されたことに応じて、
図3に示す故障診断処理を繰り返し実行する。
【0074】
初めにステップST1では、故障診断装置8は、ターン数Nをカウントアップし、ステップST2に移る。ここでターン数Nとは、以下で説明するステップST2~ST6の処理によって構成される故障診断処理の実行回数に相当し、初期値は0に設定される。
【0075】
次にステップST2では、故障診断装置8は、複数の近接センサ4~7の中の少なくとも2つを新たに発振対象及び診断対象として設定し、ステップST3に移る。なお以下では、故障診断装置8は、複数の近接センサ4~7の中から選択した1つを発振対象として設定し、複数の近接センサ4~7から発振対象を除いたものを全て診断対象として設定する場合について説明するが、本発明はこれに限らない。すなわち、複数の近接センサ4~7のうち、発振対象及び診断対象はそれぞれ少なくとも1つずつ設定されていれば良く、設定数は任意である。
【0076】
なお本実施形態では、故障診断装置8は、ターン数Nに基づいて
図4に例示するような対象設定テーブルを検索することによって、発振対象及び診断対象を設定する場合について説明する。
【0077】
図4に示す対象設定テーブルによれば、発振対象は、ターン数Nが増加する度に、右上近接センサ4、左上近接センサ5、右下近接センサ6、及び左下近接センサ7の順で循環的に設定される。また複数の近接センサ4~7から発振対象を除いたものは全て診断対象に設定される。従ってターン数Nが“1”である場合、
図4の対象設定テーブルによれば、右上近接センサ4が発振対象に設定され、左上近接センサ5、右下近接センサ6、及び左下近接センサ7が診断対象に設定される。
【0078】
次にステップST3では、故障診断装置8は、ステップST2において発振対象とした近接センサの制御モードをセンシングモードに設定し、診断対象とした近接センサの制御モードを受信モードに設定し、ステップST4に移る。上述のように発振対象の制御モードをセンシングモードに設定することにより、この発振対象を近接センサとして利用しつつ、この発振対象の電極部から発振周波数の電磁波を発生させることができる。また診断対象の制御モードを受信モードに設定することにより、これら診断対象を、アンテナとして作動させ、発振対象から発生する電磁波を受信させることができる。
【0079】
次にステップST4では、故障診断装置8は、診断対象の測定回路による測定結果、すなわち診断対象のリファレンスコンデンサの電圧の測定値(以下、「電圧測定値」という)を取得し、ステップST5に移る。
【0080】
ステップST5では、故障診断装置8は、ステップST3において初めて発振対象及び診断対象の制御モードをそれぞれセンシングモード及び受信モードに設定してから経過した時間に相当する診断時間は、所定の設定時間を超えたか否かを判定する。ここで設定時間は、発振対象のパルス電源によって生成されるパルス電圧の周期(すなわち、発振周波数の逆数)よりも十分に長い時間に設定される。ただし上述のように受信モードに設定されている診断対象では、電極部に対する物体の近接を検出することができない。このため設定時間は、所定の上限時間以下の範囲内で設定される。より具体的には、この設定時間は、例えば数百[ms]程度に設定される。故障診断装置8は、ステップST5の判定結果がNOである場合、ステップST3に戻り、YESである場合、ステップST6に移る。以上のように故障診断装置8は、新たに発振対象及び診断対象を設定した後、設定時間にわたり発振対象の電源回路によって電極部から発振周波数の電磁波を発生させながら診断対象の測定回路によってリファレンスコンデンサの電圧を測定する。
【0081】
次にステップST6では、故障診断装置8は、ステップST3及びST4の処理を設定時間にわたり繰り返し実行することによって得られた各診断装置の電圧測定値の時系列データに基づいて、各診断対象の故障の有無を診断し、ステップST2の処理に戻る。すなわち故障診断装置8は、各診断対象の故障の有無を診断した後、ステップST1に戻り、次ターンの故障診断処理を開始する。
【0082】
より具体的には、故障診断装置8は、ステップST3及びST4の処理によって得られた電圧測定値の時系列データに基づいて、診断対象毎に電圧の周波数、平均レベル、及びパルス状変動の発生回数を算出する。また故障診断装置8は、電圧測定値に基づいて算出した周波数、平均レベル、及びパルス状変動の発生回数に基づいて、以下で説明する手順に従って各診断対象の故障の有無を診断する。
【0083】
先ず故障診断装置8は、電圧測定値に基づいて算出した周波数と発振対象のパルス電源の発振周波数とを比較することにより、発振対象から発生する発振周波数の電磁波を受信できたか否かを、診断対象毎に判定する。より具体的には、故障診断装置8は、電圧測定値に基づいて算出した周波数と発振対象の発振周波数との差の絶対値が所定値未満である場合、発振対象から発生する電磁波を受信できたと判定し、上記差の絶対値が所定値以上である場合、発振対象から発生する電磁波を受信できなかったと判定する。また故障診断装置8は、発振対象から発生する電磁波を受信できなかったと判定した場合、この診断対象は故障(より具体的には、導通パターンの剥離やスイッチング素子の劣化、破壊等に起因して、診断対象の回路内で断線が生じる所謂開故障)していると判断する。
【0084】
次に故障診断装置8は、以上の手順によって発振対象から発生する発振周波数の電磁波を受信できたと判定した場合、電圧測定値に基づいて算出した電圧の平均レベルと予め定められた基準レベルとを比較することにより、発振対象から発生する発振周波数の電磁波を適切な感度で受信できたか否かを、診断対象毎に判定する。より具体的には、故障診断装置8は、電圧測定値に基づいて算出した電圧の平均レベルと基準レベルとの差が所定レベル未満である場合、発振対象から発生する電磁波を適切な感度で受信できたと判定し、診断対象は正常である(すなわち、故障していない)と判断する。また故障診断装置8は、電圧測定値に基づいて算出した電圧の平均レベルと基準レベルとの差が所定レベル以上である場合、発振対象から発生する電磁波を適切な感度で受信できなかったと判定する。また故障診断装置8は、発振対象から発生する電磁波を適切な感度で受信できなかったと判定した場合、この診断対象は故障(より具体的には、異物の侵入やスイッチング素子の劣化、破壊等に起因して、診断対象の回路内で短絡が生じる所謂閉故障)していると判断する。
【0085】
ここで診断対象によって発振対象から発生する電磁波を受信した場合における電圧の平均レベルは、発振対象と診断対象との間の距離や障害物の有無等によって変化する。このため上述の基準レベルは、発振対象と診断対象の組み合わせ毎に定められる。
【0086】
次に故障診断装置8は、以上の手順によって発振対象から発生する発振周波数の電磁波を適切な感度で受信できたと判定した場合、電圧測定値に基づいて算出したパルス状変動の発生回数と所定の回数閾値とを比較することにより、診断対象に含まれるスイッチング素子(特に、第1スイッチ)におけるチャタリング故障の発生の有無を、診断対象毎に判定する。ここでチャタリング故障とは、スイッチング素子のオン/オフが切り替わる際に、スイッチング素子が所定時間にわたり意図に反して導通状態と遮断状態とを断続的に繰り返す現象をいう。より具体的には、故障診断装置8は、電圧測定値に基づいて算出したパルス状変動の発生回数が回数閾値未満である場合、診断対象にチャタリング故障は生じていないと判断する。また故障診断装置8は、電圧測定値に基づいて算出したパルス状変動の発生回数が回数閾値以上である場合、診断対象にチャタリング故障が発生していると判断する。
【0087】
また故障診断装置8は、以上の手順によって得られた各診断対象に対する診断結果に関する情報を把持判定装置9へ送信する。
【0088】
図5は、
図4に示す対象設定テーブルに基づいて発振対象及び診断対象を設定した場合における各近接センサ4~7の制御モードの遷移を示すタイムチャートである。
【0089】
故障診断装置8は、
図3に示す故障診断処理では、設定時間毎に周期的に発振対象及び診断対象の設定を切り替える。このため
図5に示すように、各近接センサ4~7の制御モードも設定時間毎に周期的にセンシングモードと受信モードとの間で切り替わる。また上述のように近接センサの制御モードを受信モードに設定している間、この近接センサではステアリングハンドル2に対する人体の近接を検出することができない。しかしながら
図4に示すような対象設定テーブルに基づいて発振対象及び診断対象を設定することにより、
図5に示すように各近接センサの制御モードを4ターン毎に定期的にセンシングモードに設定できるので、各近接センサ4~7によってステアリングハンドル2が運転者によって適切に把持されているかどうかを監視しながら、各近接センサの故障を診断することができる。
【0090】
本実施形態に係る近接センサシステムS及びステアリング装置1によれば、以下の効果を奏する。
【0091】
(1)近接センサシステムSは、ステアリングハンドル2に対する人体Hの近接を検出する複数の近接センサ4~7と、これら近接センサ4~7の故障の有無を診断する故障診断装置8と、を備える。また各近接センサ4~7は、それぞれ、ステアリングハンドル2の異なる位置に設けられた電極部と、この電極部に発振周波数の電圧を印加する電源回路45と、電極部の電気的特性を測定する測定回路と、を備える。故障診断装置8は、複数の近接センサ4~7の中の少なくとも2つを発振対象及び診断対象として設定する。また故障診断装置8は、発振対象の電源回路によって電極部から発振周波数の電磁波を発生させている間における診断対象の測定回路による電気的特性の測定結果を取得し、この測定結果に基づいて診断対象の故障の有無を診断する。ここで、発振対象の電源回路によって電極部に発振周波数の電圧を印加すると、この電極部の周囲には発振周波数の電磁波が発生する。この際、診断対象に故障が無ければ、発振対象と診断対象との間のアンテナ誘導作用によって診断対象の電極部の電気的特性が変化する。従って診断対象の故障の有無は、診断対象の測定回路による測定結果と相関がある。よって本実施形態によれば、同じステアリングハンドル2に設けられた複数の近接センサ4~7の少なくとも2つを利用して故障の有無を診断できるので、比較的簡易な構成によって各近接センサ4~7の故障の有無を診断でき、ひいては持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
【0092】
(2)故障診断装置8は、発振対象によって電磁波を発生させている間、診断対象の電極部と電源回路との接続を遮断するとともに診断対象の電極部と測定回路とを接続した状態で維持する。よって本実施形態によれば、診断対象の電源回路から印加される電圧の影響によって、診断対象の電極部の電気的特性が変動するのを防止することができるので、診断対象の故障の有無を精度良く診断することができる。
【0093】
(3)故障診断装置8は、発振対象及び診断対象の設定を所定の設定時間毎に周期的に切り替える。これにより本実施形態によれば、ステアリングハンドル2に多くの近接センサ4~7が設けられている場合であっても、これら全ての近接センサ4~7の故障の有無を定期的に診断することができる。
【0094】
(4)上述のように発振対象の電源回路によって電極部に発振周波数の電圧を印加すると、この電極部の周囲には発振周波数の電磁波が発生する。この際、診断対象に故障が無ければ、発振対象と診断対象との間のアンテナ誘導作用によって診断対象の電極部に接続されたリファレンスコンデンサの電圧は、発振対象の発振周波数と同じ周波数で変動する。そこで故障診断装置8は、診断対象の測定回路によって測定されるリファレンスコンデンサの電圧の周波数と、発振対象の電源回路の発振周波数との比較に基づいて診断対象の故障の有無を診断する。これにより、診断対象の故障の有無を高い精度で診断することができる。
【0095】
(5)発振対象と診断対象との間のアンテナ誘導作用によって診断対象の電極部に接続されたリファレンスコンデンサの電圧のレベルは、発振対象の電極部と診断対象の電極部との間の位置関係によって変化する。そこで故障診断装置8は、診断対象の測定回路によって測定される電圧のレベルと、所定の基準レベルとの比較に基づいて診断対象の故障の有無を診断することにより、さらに精度良く診断対象の故障の有無を診断することができる。また本実施形態によれば、周波数を比較することによって、単に故障の有無だけでなく故障の態様(例えば、開故障)を特定できる場合がある。
【0096】
(6)本実施形態では、発振周波数を各近接センサで異なるようにすることにより、発振対象の電極部から発生する電磁波の周波数を近接センサ毎に変えることができる。よって本実施形態によれば、さらに精度良く診断対象の故障の有無を診断することができる。また本実施形態によれば、レベルを比較することによって、単に故障の有無だけでなく故障の態様(例えば、閉故障)を特定できる場合がある。
【0097】
(7)故障診断装置8は、診断対象の測定回路によって測定される電圧のパルス状変動の発生回数に基づいて診断対象の故障の有無を診断する。これにより、診断対象におけるチャタリング故障の発生の有無を診断することができる。
【0098】
(8)ステアリング装置1は、ステアリングハンドル2と、このステアリングハンドル2に設けられた近接センサシステムSと、複数の近接センサ4~7の検出結果に基づいてステアリングハンドル2の把持の有無を判定する把持判定装置9と、を備える。よって本実施形態によれば、このステアリング装置1が搭載された車両を運転者が運転している間、把持判定装置9によって運転者がステアリングハンドル2を把持しているか否かを判定しながら、故障診断装置8によって複数の近接センサ4~7の故障の有無を診断することができるので、比較的簡易な構成によってステアリングハンドル2に設けられた近接センサ4~7の故障の有無を診断でき、ひいては持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
【0099】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る近接センサシステム、ステアリング装置、及び故障診断方法について、図面を参照しながら説明する。なお本実施形態に係る近接センサシステム及びステアリング装置の機械構成は、第1実施形態に係る近接センサシステムS及びステアリング装置1の機械構成とほぼ同じであるので、同じ符号を付し、図示及び詳細な説明を省略する。
【0100】
図6は、本実施形態に係る故障診断装置による故障診断処理の具体的な手順を示すフローチャートである。なお
図6に示すフローチャートにおいて、ステップST11及びST16~ST19における処理は、それぞれ
図3のフローチャートにおけるステップST1及びST3~ST6における処理と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0101】
ステップST12では、故障診断装置は、把持判定装置による把持判定結果(すなわち、運転者によるステアリングハンドルの把持の有無、及び把持位置等)を取得し、ステップST13に移る。
【0102】
次にステップST13では、故障診断装置は、ステップST12において取得した判定結果を参照し、ステアリングハンドルは運転者によって把持されているか否かを判定する。故障診断装置は、ステップST13の判定結果がYESである場合、ステップST14に移り、NOである場合、ステップST15に移る。
【0103】
ステップST15では、故障診断装置は、ステップST12において取得した把持判定結果に基づいて、複数の近接センサ4~7の中の少なくとも2つを新たに発振対象及び診断対象として設定し、ステップST16に移る。
【0104】
より具体的には、故障診断装置は、把持判定結果を参照することによって、人体の近接が検出されている近接センサ、すなわち把持位置を検出対象領域とする近接センサを特定する。また故障診断装置は、複数の近接センサ4~7のうち、人体の近接が検出されているものの中から発振対象を定め、人体の近接が検出されていないものの中から診断対象を定める。なお本実施形態では、故障診断装置は、複数の近接センサ4~7のうち、人体の近接が検出されているものを全て発振対象とし、人体の近接が検出されていないものを全て診断対象として設定する場合について説明するが、本発明はこれに限らない。例えば、人体の近接が検出されているものの中から選択した1つのみを発振対象としてもよいし、人体の近接が検出されていないものの中から選択した1つのみを診断対象としてもよい。
【0105】
ステップST15では、故障診断装置は、ステップST2(
図3参照)と同じ手順によって複数の近接センサ4~7の中の少なくとも2つを新たに発振対象及び診断対象として設定し、ステップST16に移る。すなわち、故障診断装置は、例えばターン数Nに基づいて
図4に例示するような対象設定テーブルを検索することによって、発振対象及び診断対象を設定する。
【0106】
本実施形態に係る近接センサシステム及びステアリング装置によれば、上記(1)~(8)の効果に加え、以下の効果を奏する。
【0107】
(9)近接センサ4~7では、ステアリングハンドル2に対し人体Hが近接しているかどうかを検出するためには、電源回路によって電極部に電圧を適宜印加する必要がある。これに対し診断対象として定めた近接センサは、上述のように精度良く故障の有無を診断するためには、電極部と電源回路との接続を遮断した状態で維持することが好ましい。換言すれば、近接センサは、診断対象として定められている間、人体Hの近接の有無を検出することができない。そこで本実施形態に係る故障診断装置は、複数の近接センサ4~7のうち、人体Hの近接が検出されているものの中から発振対象を定め、人体Hの近接が検出されていないものの中から診断対象を定める。これにより、発振対象として定めた近接センサによって、人体Hの近接の有無を検出し続けながら、同時に診断対象として定めた近接センサの故障の有無を診断することができる。
【0108】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限らない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。
【0109】
例えば第1実施形態では、ステアリングハンドル4に設けられた4つの近接センサ4~7の中の少なくとも2つを発振対象及び診断対象とした場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば
図1に示す例では、右上電極部40及び右下電極部60は、左上電極部50及び左下電極部70からやや離れた位置に設けられている。このため右上近接センサ4を発振対象とし、左下近接センサ7を診断対象とした場合、右上近接センサ4の右上電極部40で発生する電磁波を、左下近接センサ7の左下電極部70で十分なレベルで受信できず、診断対象の故障の有無を適切に診断できない場合がある。
【0110】
そこで故障診断装置は、4つの近接センサ4~7を、右上近接センサ4及び右下近接センサ6によって構成されるグループと、左上近接センサ5及び左下近接センサ7によって構成されるグループとに分け、各グループ内でそれぞれ1つずつ発振対象及び診断対象を設定し、各グループで独立して故障診断処理を実行してもよい。
【0111】
また例えば上記実施形態では、近接センサ4~7の電極部40~70を、スポーク部25L,25Rに設けた場合について説明したが、本発明はこれに限らない。各電極部の一部又は全ては、リム部20やハブ部23に設けてもよい。また上記実施形態では、ステアリングハンドルに設ける近接センサの数を4とした場合について説明したが、本発明はこれに限らない。ステアリングハンドルに設ける近接センサの数は、2以上であれば幾らでもよい。
【符号の説明】
【0112】
1…ステアリング装置
2…ステアリングハンドル
20…リム部
23…ハブ部
25L,25R,25D…スポーク部
S…近接センサシステム
4…右上近接センサ(近接センサ)
40…右上電極部(電極部)
42…右上センサ回路
43…第1スイッチ(スイッチ)
45…電源回路
46…測定回路
461…リファレンスコンデンサ(コンデンサ)
47…制御回路
5…左上近接センサ(近接センサ)
50…左上電極部(電極部)
52…左上センサ回路
6…右下近接センサ(近接センサ)
60…右下電極部(電極部)
62…右下センサ回路
7…左下近接センサ(近接センサ)
70…左下電極部(電極部)
72…左下センサ回路
8…故障診断装置
9…把持判定装置