(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142257
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E02F9/00 Z
E02F9/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054376
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】福士 幸治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 肇
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015CA02
(57)【要約】
【課題】燃料電池や水素燃料エンジンの動力源によって生成された水を排出するタイミング及び方向を作業現場の環境や作業状況に応じて変更可能な建設機械を提供する。
【解決手段】建設機械1は、水素を燃料とする動力源としての燃料電池42により生成された水を貯留する貯水槽45と、一方側が貯水槽45に接続され他方側端部に排水口52aを有し、貯水槽45に貯留されている水を機体4の外へ導く排水ライン48と、排水ライン48を遮断して貯水槽45に水を貯留する貯水状態と排水ライン48を連通させて貯水槽45に貯留されている水を機体4の外へ排出させる排水状態とに切換可能な排水制御弁49とを備える。排水ライン48は、排水口52aの向きを変更する方向可変機構53を有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を燃料とする動力源と、
前記動力源により生成された水を貯留する貯水槽と、
前記貯水槽に接続され、前記貯水槽に貯留されている水を機体の外へ導く排水ラインと、
前記排水ラインの端部に設けられた排水口と、
前記排水ラインに設けられ、前記排水ラインを遮断して前記貯水槽に水を貯留する貯水状態と前記排水ラインを連通させて前記貯水槽に貯留されている水を前記機体の外へ排出させる排水状態とに切換可能な排水制御弁とを備えた建設機械において、
前記排水ラインは、前記排水口の向きを変更する方向可変機構を有している
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記排水制御弁は、前記排水ラインを流れる水量を調整可能な流量制御弁により構成されている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械において、
前記貯水槽に貯留されている水の排水を操作するための排水操作装置を備え、
前記排水ラインは、互いに並列に接続された第1管部及び第2管部を含み、
前記排水制御弁は、
前記第1管部に設けられ、前記第1管部の遮断と前記第1管部の連通とに切換可能な第1制御弁と、
前記第2管部に設けられ、前記第2管部の遮断と前記第2管部の連通とを切換可能な第2制御弁とによって構成され、
前記第1制御弁及び前記第2制御弁のうちの一方は、作業員の手動操作により駆動される弁によって構成され、
前記第1制御弁及び前記第2制御弁のうちの他方は、制御装置の制御指令に応じて駆動する弁によって構成され、
前記制御装置は、前記排水操作装置からの操作信号に応じて前記制御指令を出力する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械において、
前記排水制御弁を制御する制御装置と、
前記貯水槽の水温と相関関係がある温度を検出する温度センサとを備え、
前記制御装置は、前記温度センサの検出値が予め設定された第1温度閾値以下である場合、前記貯水槽が排水状態になるように前記排水制御弁を制御する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項4に記載の建設機械において、
前記制御装置は、前記機体を停止させるときに、外部から提供される前記機体の停止後の予想外気温が予め設定された第2温度閾値以下である場合、前記貯水槽が排水状態になるように前記排水制御弁を制御する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項1に記載の建設機械において、
前記排水制御弁を制御する制御装置と、
前記機体の周囲に存在する人体を検知する人体検知装置と、を備え、
前記制御装置は、前記人体検知装置による人体の検知の有無に基づき、前記排水制御弁を制御するように構成されている
ことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に係り、更に詳しくは、水素を燃料とする燃料電池や内燃機関などの動力源を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
環境への配慮を目的として、近年、水素を燃料として発電する燃料電池や水素を燃料として動力を発生させる内燃機関(以下、水素燃料エンジンと称することがある)を搭載した自動車や建設機械が開発されている。水素を燃料とする燃料電池や水素燃料エンジンを搭載した自動車や建設機械は、燃料電池や内燃機関によって生成された水を外部へ排出する必要がある(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載の燃料電池車両は、燃料電池と、燃料電池の発電に伴って生成される生成水を貯留する貯留部と、貯留部に生成水を貯留させる貯留状態と貯留部から生成水を外部へと排出させる排水状態とを切り替える排水弁とを備えている。この燃料電池車両は、排水状態を許容する道路領域を走行していることを含む予め定められた排水実行条件が成立した場合に、排水弁の切替により排水を実行する。特許文献1に記載の技術は、道路の走行を前提とする一般車両を対象としたものであり、排水可能な道路領域や乗員の操作などの排水実行条件によって、燃料電池によって生成された水の排出する場所やタイミングを定めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水素を燃料とする動力源を備えた建設機械においては、1日作業を行うと、数十から数百リットルの水や水蒸気が生成される。このため、建設機械でも、特許文献1に記載の技術のように、排水の場所やタイミングを選択可能であることが望ましい。しかし、建設機械は、道路を走行する一般車両とは異なり、所定の作業現場に留まって掘削等の作業を行うことがある。この場合、建設機械の機体中心部の足元への排水は機体が接地する地面の軟弱化に繋がるので、機体の外周側へ向けて排水することが好ましい。しかし、作業現場の環境(障害物の有無など)や作業状況(旋回体の旋回動作中など)によっては、所定の領域や方向への排水を回避したい場合がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解消するためになされたものであり、その目的は、燃料電池や水素燃料エンジンなど水素を燃料とする動力源によって生成された水を排出するタイミング及び方向を作業現場の環境や作業状況に応じて変更することが可能な建設機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいる。その一例を挙げるならば、水素を燃料とする動力源と、前記動力源により生成された水を貯留する貯水槽と、前記貯水槽に接続され、前記貯水槽に貯留されている水を機体の外へ導く排水ラインと、前記排水ラインの端部に設けられた排水口と、前記排水ラインに設けられ、前記排水ラインを遮断して前記貯水槽に水を貯留する貯水状態と前記排水ラインを連通させて前記貯水槽に貯留されている水を前記機体の外へ排出させる排水状態とに切換可能な排水制御弁とを備えた建設機械において、前記排水ラインは、前記排水口の向きを変更する方向可変機構を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一例によれば、動力源により生成された水の排水タイミングを排水ラインに設けた排水制御弁の切換により変更可能であると共に、排水ラインの排水口の向きを方向可変機構により変更することで動力源により生成された水の排出方向を変更可能である。すなわち、動力源により生成された水を排出するタイミング及び方向を作業現場の環境や作業状況に応じて変更することが可能である。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る建設機械としての油圧ショベルを示す外観図である。
【
図2】
図1に示す第1の実施形態に係る建設機械の上部旋回体をカバー及びキャブを取り外した状態で示す概略上面図である。
【
図3】
図2に示す第1の実施形態に係る建設機械の上部旋回体を示す概略側面図である。
【
図4】
図3に示す第1の実施形態に係る建設機械における燃料電池システムの構成を示す模式図である。
【
図5】
図4に示す第1の実施形態に係る建設機械の燃料電池システムにおける排水ラインの方向可変機構の構成及び動作を示す概略図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る建設機械における燃料電池システムを示す模式図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態に係る建設機械における燃料電池システムを示す模式図である。
【
図8】
図7に示す第3の実施形態に係る建設機械における制御装置による燃料電池システムの排水制御の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の建設機械の実施形態について図面を用いて説明する。本実施の形態においては、建設機械の一例として油圧ショベルを例に挙げて説明する。
【0011】
[第1の実施形態]
まず、第1の実施形態に係る建設機械としての油圧ショベルの構成について
図1~
図3を用いて説明する。
図1は第1の実施形態に係る建設機械としての油圧ショベルを示す外観図である。
図2は
図1に示す第1の実施形態に係る建設機械の上部旋回体をカバー及びキャブを取り外した状態で示す概略上面図である。
図3は
図2に示す第1の実施形態に係る建設機械の上部旋回体を示す概略側面図である。ここでは、運転席に着座したオペレータから見た方向を用いて説明する。
【0012】
図1において、建設機械としての油圧ショベル1は、油圧ショベル1の本体である機体と、機体の前部に俯仰動可能に設けられたフロント作業装置2とを備えている。機体は、自走可能な下部走行体3と、下部走行体3上に旋回可能に搭載された上部旋回体4とで構成されている。上部旋回体4は、油圧アクチュエータである旋回油圧モータ5によって下部走行体3に対して旋回するように構成されている。
【0013】
フロント作業装置2は、掘削作業等を行うための多関節型の作業装置であり、例えば、ブーム11、アーム12、作業具としてのバケット13を備えている。ブーム11の基端側は、上部旋回体4の前部に上下方向に回動可能に連結されている。ブーム11の先端部には、アーム12の基端部が上下方向又は前後方向に回動可能に連結されている。アーム12の先端部には、バケット13の基端部が上下方向又は前後方向に回動可能に連結されている。ブーム11、アーム12、バケット13はそれぞれ、油圧アクチュエータであるブームシリンダ14、アームシリンダ15、バケットシリンダ16によって駆動される。
【0014】
下部走行体3は、左右にクローラ式の走行装置18(一方のみを図示)を備えている。左右の走行装置18は油圧アクチュエータである走行油圧モータ19により駆動するように構成されている。
【0015】
上部旋回体4は、下部走行体3上に旋回可能に搭載された支持構造体としての旋回フレーム21と、旋回フレーム21上の左前側に設置されたキャブ22と、旋回フレーム21の後端部に設けられたカウンタウェイト23と、キャブ22とカウンタウェイト23の間に設けられた機械室24とを含んで構成されている。キャブ22には、オペレータが着座する運転席(図示せず)や油圧ショベル1を操作するための各種の操作装置(図示せず)が配置されている。カウンタウェイト23は、フロント作業装置2と重量バランスをとるためのものである。
【0016】
機械室24には、油圧ショベル1を動作させるための各種機器が収容されている。具体的には、例えば
図2及び
図3に示すように、油圧アクチュエータ(ブームシリンダ14、アームシリンダ15、バケットシリンダ16、旋回油圧モータ5、走行油圧モータ19など)を駆動させる圧油を吐出する油圧ポンプ31、及び、油圧ポンプ31から油圧アクチュエータ14、15、16、5、19へ圧油を供給する油圧システムを循環する作動油を冷却するオイルクーラなどの熱交換器32が配置されている。また、機械室24には、油圧ポンプ31を駆動する原動機としての電動モータ34、電動モータ34に電力を供給する電源としての燃料電池42を含む燃料電池システム40及びバッテリ36が収容されている。燃料電池システム40の構成の詳細は後述する。バッテリ36は、図示しない双方向DC/DCコンバータを介して電動モータ34及び燃料電池42に電気的に接続されており、燃料電池42から出力された電力の蓄電が可能に構成されている。
【0017】
次に、第1の実施形態に係る建設機械が備える燃料電池システムの構成について
図2~
図5を用いて説明する。
図4は
図3に示す第1の実施形態に係る建設機械における燃料電池システムの構成を示す模式図である。
図5は
図4に示す第1の実施形態に係る建設機械の燃料電池システムにおける排水ラインの方向可変機構の構成及び動作を示す概略図である。
【0018】
図3及び
図4において、油圧ショベル1は、水素を燃料として発電する燃料電池システム40を備えている。燃料電池システム40は、燃料である水素を貯蔵する水素タンク41と、水素タンク41から供給される水素を燃料として発電する燃料電池42と、燃料電池42の発電によって生成された水蒸気などの気体を上部旋回体4(機体)の外部へ導く排気ライン43と、燃料電池42の発電によって生成された水(液体)を上部旋回体4(機体)の外部へ排出する排水システム44とを備えている。
【0019】
水素タンク41は、例えば
図2に示すように、上部旋回体4の幅方向(
図2中、上下方向)に延在する耐圧容器である。また、水素タンク41は、例えば
図2及び
図3に示すように、上部旋回体4の機械室24内において、カウンタウェイト23に隣接した位置で上下方向に2段に配置されている。
【0020】
燃料電池42は、水素を燃料とする動力源であり、燃料である水素と酸化剤である空気中の酸素とを化学反応させて発電するものである。燃料電池42は、図示しないFCコンバータを介して電動モータ34及びバッテリ36に電気的に接続されている。燃料電池42は、発電(化学反応)の際に水蒸気及び水を生成する。燃料電池42は、
図4に示すように、発電の際に生成された水蒸気(気体)及び水(液体)並びに未反応の気体を燃料電池42の外部へ排出するための電池排出口42aを有している。
【0021】
排気ライン43は、
図4に示すように、燃料電池42の電池排出口42aに接続されており、電池排出口42aから上部旋回体4(機体)の外表面まで延在している。排気ライン43は、排水システム44の後述の接続ライン46が分岐するように構成されている。排気ライン43は、燃料電池42で生成された水蒸気及び燃料電池42で未反応のまま残存した気体を上部旋回体4(機体)の外部へ導くために、後述の接続ライン46の分岐部分から上部旋回体4(機体)の外表面に向かって正勾配の流路となるように構成されている。
【0022】
本実施の形態の排水システム44は、燃料電池42の発電によって生成された水(液体)を一時的に貯留し、貯留した水の上部旋回体4(機体)の外部への排出するタイミング及び方向を変更可能とするものである。具体的には、排水システム44は、
図4に示すように、燃料電池42で生成された水を貯留する貯水槽45と、燃料電池42で生成された水を貯水槽45に導く接続ライン46と、貯水槽45の最高水位を規定するオーバフロー管47と、貯水槽45に貯留されている水を上部旋回体4(機体)の外部へ導く排水ライン48と、排水ライン48上に設けられた排水制御弁49とを有している。
【0023】
貯水槽45は、最高水位が燃料電池42の電池排出口42aよりも低い位置となるように配置されている。貯水槽45は、例えば、
図3及び
図4に示すように、旋回フレーム21上に載置され、水素タンク41の下側に配置されている。貯水槽45は、燃料電池42の電池排出口42aよりも低い位置で接続ライン46と接続されている。貯水槽45の上面近傍の位置にオーバフロー管47が接続されており、貯水槽45の底面に排水ライン48が接続されている。貯水槽45は、貯留した水の水位がオーバフロー管47の接続位置に達すると、オーバフロー管47を介して貯水槽45の外部へ排水する。
【0024】
接続ライン46は、
図4に示すように、燃料電池42と貯水槽45とを接続するものであり、例えば、排気ライン43から分岐するように構成されている。接続ライン46と排気ライン43の分岐部分は、燃料電池42から排出された水蒸気などの気体成分と水などの液体成分とを分離する分離部として機能する。接続ライン46は、燃料電池42で生成された水などの液体をその自重により貯水槽45へ流下させるために、排気ライン43の分岐部分から貯水槽45に向かって負勾配の流路となるように構成されている。
【0025】
オーバフロー管47は、例えば、一方が貯水槽45における上面近傍の位置に接続され、他方が開口するように構成されている。オーバフロー管47は、貯水槽45の満水状態により圧力が上昇して貯水槽45が損傷することを防止するものである。オーバフロー管47は、他方が排水ライン48に接続されて排水ライン48を介して排水するように構成することも可能である。
【0026】
本実施の形態の排水ライン48は、貯水槽45に貯留した水を上部旋回体4(機体)の外部へ排出するタイミング及び方向を変更可能とするものである。排水ライン48は、例えば
図3及び
図4に示すように、貯水槽45に接続される接続側排水管51と、貯水槽45に貯留された水を上部旋回体4(機体)の外部へ排出させるための排水口52aを有する出口側排水管52と、出口側排水管52の排水口52aの向きを変更する方向可変機構53とを備えている。
【0027】
接続側排水管51は、例えば、一方が貯水槽45の底部に接続され、他方が方向可変機構53に接続されている。接続側排水管51は、例えば、上部旋回体4の側面近傍で貯水槽45に接続されている。接続側排水管51には排水制御弁49が設けられている。
【0028】
出口側排水管52は、一方が方向可変機構53を介して接続側排水管51に接続され、他方端に排水口52aを有している。出口側排水管52は、貯水槽45に貯留されている水を上部旋回体4(機体)の外部へ排水口52aを介して排出させるものである。出口側排水管52は、排水口52aにガイドやホースを接続して延長するように構成することで、上部旋回体4の外周縁の位置に排水口を配置するように構成することも可能である。
【0029】
方向可変機構53は、出口側排水管52の排水口52aの向きを水平面内で変更する機能を有するものである。方向可変機構53は、例えば
図4及び
図5に示すように、エルボ55を含む回転継手54である。回転継手54は、例えば、エルボ55が360°回転可能であるように構成されている。すなわち、方向可変機構53は、
図5に示すように、出口側排水管52の排水口52aが機体(下部走行体3及び上部旋回体4)の外側(外周側)に向く外向き(実線を参照)と、排水口52aが機体3、4の中心部(内周側)に向く内向き(二点鎖線を参照)とに変更可能に構成されている。
【0030】
排水制御弁49は、排水ライン48を遮断して貯水槽45に水を貯留する貯水状態と排水ライン48を連通させて貯水槽45に貯留されている水を機体3、4の外部へ排出させる排水状態とに切換可能なものである。すなわち、排水制御弁49は、貯水槽45に貯留されている水の排水タイミングを変更可能とするものである。排水制御弁49は、例えば、作業員の手動操作により切換が可能に構成されている。排水制御弁49は、また、貯水槽45から機体3、4の外部へ排出する水勢を調整可能な流量制御弁によって構成されている。排水制御弁49は、作業員の手動操作が可能であるように、上部旋回体4の側面近傍又は後端近傍に配置されている。
【0031】
次に、第1の実施形態に係る建設機械の作用効果を
図1~
図5を用いて説明する。
【0032】
図1に示す油圧ショベル1においては、
図2及び
図3に示す燃料電池42の発電によって電力が供給されることでバッテリ36が充電される。また、バッテリ36又は燃料電池42から供給された電力によって電動モータ34が駆動することで、油圧ポンプ31が圧油を
図1に示す油圧アクチュエータ5、14、15、16、19に供給する。これにより、油圧ショベル1は、旋回動作、掘削作業、走行動作などを行う。
【0033】
図4に示す燃料電池42は発電の際に水蒸気及び水を生成する。燃料電池42によって生成された水蒸気を含む気体は、燃料電池42の電池排出口42aから正勾配の排気ライン43を介して機体3、4の外部(上方)へ排出される。燃料電池42によって生成された水及び排気ライン43内の水蒸気が凝縮して生じた水は、その自重によって負勾配の接続ライン46を介して貯水槽45に流下する。このとき、排水制御弁49を排水ライン48の遮断位置とすることで、燃料電池42によって生成された水が貯水槽45に貯留される。これにより、燃料電池42が生成した水の機体3、4の外部への垂れ流しを防止する。
【0034】
貯水槽45に貯留された水は、作業員が必要に応じて排水制御弁49を排水ライン48の連通位置に切り換えることで、機体3、4の外部へ排出される。このとき、作業員は、排水制御弁49の開度を調整することで、貯水槽45から機体3、4の外部へ排出される水勢を制御することが可能である。
【0035】
このように、本実施の形態に係る燃料電池システム40においては、燃料電池42で生成された水を貯水槽45で貯留し、貯水槽45に貯留されている水を排水制御弁49が設けられた排水ライン48を介して上部旋回体4(機体)の外部へ排出する。貯水槽45の貯水又は排水は、排水制御弁49の切換により行うことが可能である。したがって、燃料電池42により生成された水の上部旋回体4(機体)の外部への排出タイミングを選択変更することが可能である。
【0036】
また、本実施の形態においては、排気ライン43が燃料電池42側から上部旋回体4(機体)の外部に向かって正勾配の流路となるように構成されていると共に、接続ライン46が燃料電池42側から貯水槽45側に向かって負勾配の流路となるように構成されている。このため、正勾配の排気ライン43を上昇する水蒸気が結露して生じた水は、その自重によって排気ライン43を逆流して負勾配の接続ライン46を介して貯水槽45へ導かれる。これにより、排気ライン43及び接続ライン46内の水の凍結による管閉塞を防止することができる。
【0037】
ところで、油圧ショベル1は、所定の作業現場に留まって掘削等の作業を行うことがある。このような場合に、貯水槽45の水を
図1に示す下部走行体3(機体)の中心部の足元へ排出すると、下部走行体3(機体)が接地している地面Gの軟弱化に繋がる。そのため、基本的には、
図3に示す貯水槽45の水を上部旋回体4(機体)の外方側(外周側)へ向けて排出することが好ましい。すなわち、排水ライン48の排水口52aを外向きに向ける方が好ましい。しかし、作業現場の環境(障害物の有無など)や作業状況によっては、所定の領域や方向へ向かう排水を回避したい場合がある。すなわち、排水ライン48の排水口52aを内向きに向ける方が好ましい場合がある。
【0038】
そこで、本実施の形態においては、排水口52aの向きを水平面内で変更する方向可変機構53を排水ライン48が備えている。このため、作業員は、
図5に示すように、方向可変機構53により排水口52aの向きを外向きから内向きへ又は内向きから外向きへ変更することが可能である。すなわち、貯水槽45の排水方向を作業現場の環境や作業状況に応じて変更することが可能である。
【0039】
なお、本実施の形態においては、貯水槽45が満水状態になった場合には、オーバフロー管47を介して貯水槽45の外部へ排水される。これにより、燃料電池42から貯水槽45への水の流下不能による燃料電池42の電池排出口42aの閉塞を回避することができる。
【0040】
上述したように、第1の実施形態に係る油圧ショベル1(建設機械)は、水素を燃料とする動力源としての燃料電池42と、燃料電池42により生成された水を貯留する貯水槽45と、貯水槽45に接続され、貯水槽45に貯留されている水を上部旋回体4(機体)外へ導く排水ライン48と、排水ライン48の端部に設けられた排水口52aと、排水ライン48に設けられ、排水ライン48を遮断して貯水槽45に水を貯留する貯水状態と排水ライン48を連通させて貯水槽45に貯留されている水を上部旋回体4(機体)外へ排出させる排水状態とに切換可能な排水制御弁49とを備えている。排水ライン48は、排水口52aの向きを変更する方向可変機構53を有している。
【0041】
この構成によれば、燃料電池42(動力源)により生成された水の排水タイミングを排水ライン48に設けた排水制御弁49の切換により変更可能であると共に、排水ライン48の排水口52aの向きを方向可変機構53により変更することで燃料電池42(動力源)により生成された水の排出方向を変更可能である。すなわち、水素を燃料とする動力源としての燃料電池42によって生成された水を排出するタイミング及び方向を作業現場の環境や作業状況に応じて変更することが可能である。
【0042】
また、本実施の形態においては、排水制御弁49が排水ライン48を流れる水量を調整可能な流量制御弁により構成されている。この構成によれば、排水ライン48の排水口52aから排出される水勢を作業現場の環境や作業状況に応じて排水制御弁49により調整することが可能である。
【0043】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る建設機械について
図6を用いて説明する。
図6は第2の実施形態に係る建設機械における燃料電池システムを示す模式図である。なお、
図6において、
図1~
図5に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0044】
図6に示す第2の実施形態に係る建設機械が第1の実施形態(
図4参照)と異なる点は、燃料電池システム40Aの排水システム44Aの構成が異なること、燃料電池システム40Aの排水システム44Aを操作するための排水操作装置26が追加されたこと、及び、燃料電池システム40Aの排水システム44Aを制御する制御装置70が追加されたことである。第2の実施形態に係る建設機械のそれ以外の構成は、第1の実施形態の構成と同様であるので、その説明を省略する。
【0045】
具体的には、燃料電池システム40Aの排水システム44Aは、第1の実施形態と同様な構成の接続ライン46及びオーバフロー管47と、第1の実施形態とは異なる構成の貯水槽45Aと排水ライン48Aと排水制御弁49Aとを備えている。
【0046】
貯水槽45Aは、例えば、断熱性の高い材料により形成されるように構成されているか、または、外表面が断熱材によって覆われるように構成されている。断熱性の貯水槽45Aは、貯留された水を長時間に亘って温水状態で保持することが可能である。
【0047】
排水ライン48Aは、互いに並列に接続された第1管部511と第2管部512とを有する接続側排水管51Aと、第1の実施形態と同様な構成の出口側排水管52及び方向可変機構53とで構成されている。接続側排水管51Aの第1管部511及び第2管部512は、例えば、一方側が貯水槽45Aの底部の異なる位置に接続されていると共に、他方側が方向可変機構53の回転継手54に接続されている。貯水槽45Aに貯留されている水は、接続側排水管51Aの第1管部511又は第2管部512を介して排出することが可能である。
【0048】
排水制御弁49Aは、接続側排水管51Aの第1管部511に設けた第1制御弁491と、接続側排水管51Aの第2管部512に設けた第2制御弁492とで構成されている。第1制御弁491及び第2制御弁492はともに、貯水槽45Aに貯留されている水の排水タイミングを変更可能とするものである。
【0049】
第1制御弁491は、接続側排水管51Aの第1管部511を遮断して貯水槽45Aに水を貯留する貯水状態と、第1管部511を連通させて貯水槽45Aに貯留されている水を機体3、4の外部へ排出させる排水状態とに切換可能なものである。第1制御弁491は、貯水槽45Aから機体3、4の外部へ排出する水勢を調整可能な流量制御弁によって構成されている。また、第1制御弁491は、例えば、上部旋回体4の外表面の近傍に配置されており、作業員の手動操作により切換可能に構成されている。
【0050】
第2制御弁492は、接続側排水管51Aの第2管部512を遮断して貯水槽45Aに水を貯留する貯水状態と、第2管部512を連通させて貯水槽45に貯留されている水を機体3、4の外部へ排出させる排水状態とに切換可能なものである。第2制御弁492は、貯水槽45Aから機体3、4の外部へ排出する水勢を調整可能な流量制御弁によって構成されている。また、第2制御弁492は、例えば、制御装置70からの制御指令により切換可能に構成されている。
【0051】
油圧ショベル1(
図1参照)は、燃料電池システム40Aの貯水槽45Aに貯留されている水の排出を操作する排水操作装置26を備えている。排水操作装置26は、例えば、入力装置としてのタッチパネルを有するモニタ装置であり、キャブ22(
図1参照)内に配置されている。排水操作装置26は、例えば、燃料電池システム40Aの排水停止、燃料電池システム40Aの水勢の強い排水、燃料電池システム40Aの水勢の弱い排水の3つの操作位置を有しており、作業員のタッチ操作に応じて3つの操作位置のいずれかに対応する操作信号を制御装置70へ出力する。なお、排水操作装置26は、スイッチボタンを有する操作装置によって構成することも可能である。
【0052】
制御装置70は、例えば、排水操作装置26に電気的に接続されており、排水操作装置26からの操作信号に応じて排水制御弁49Aの第2制御弁492を制御するように構成されている。制御装置70のハード構成は、例えば、RAMやROM等からなる記憶装置71と、CPUやMPU等からなる処理装置72とを備えたコンピュータで構成されている。記憶装置71には、第2制御弁492を制御するために必要なプログラムや各種情報が予め記憶されている。処理装置72は、記憶装置71からプログラムや各種情報を適宜読み込み、当該プログラムに従って処理を実行することで第2制御弁492を制御するための各種機能を実現する。なお、制御装置70は、1つのコンピュータで構成してもよいし、複数のコンピュータで構成してもよい。
【0053】
制御装置70は、排水操作装置26からの操作信号が燃料電池システム40Aの排水停止である場合、排水制御弁49Aの第2制御弁492を全閉に制御する。一方、排水操作装置26からの操作信号が燃料電池システム40Aの水勢の強い排水である場合には、排水制御弁49Aの第2制御弁492を全開に制御する。また、排水操作装置26からの操作信号が燃料電池システム40Aの水勢の弱い排水である場合には、排水制御弁49Aの第2制御弁492を全閉と全開の間の中間開度に制御する。
【0054】
本実施の形態においては、接続側排水管51Aが互いに並列に接続された第1管部511と第2管部512とを有しており、接続側排水管51Aの第1管部511及び第2管部512にそれぞれ第1制御弁491及び第2制御弁492が設けられている。第1制御弁491及び第2制御弁492の両方を全閉状態にすることで、燃料電池システム40Aの排水停止が可能である。全閉状態の第1制御弁491及び第2制御弁492のいずれか一方を開放することで、燃料電池システム40Aの排水が可能である。したがって、燃料電池42により生成された水の上部旋回体4(機体)の外部への排出タイミングを選択変更することが可能である。
【0055】
また、本実施の形態においては、第1制御弁491が上部旋回体4の外部側から作業員の手動操作により切換可能な構成である。このため、上部旋回体4の外部に位置する作業員が第1制御弁491を手動操作することで、貯水槽45Aに貯留されている水を排出させて洗浄水として2次利用することが可能となる。特に、本実施の形態の貯水槽45Aが断熱性を有しているので、貯水槽45Aに貯留されている水を温水として長時間保持することができる。したがって、貯水槽45Aに貯留されている水を温水の洗浄水として利用可能である。
【0056】
また、本実施の形態においては、第2制御弁492が排水操作装置26の操作信号に応じた制御装置70からの制御指令により切換可能な構成である。このため、キャブ22内のオペレータは、排水操作装置26を操作することで、燃料電池42により生成されて貯水槽45Aに貯留されている水の排水タイミングを決定することが可能である。
【0057】
上述した第2の実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様に、燃料電池42(動力源)により生成された水の排水タイミングを排水ライン48Aに設けた排水制御弁49Aの第1制御弁491又は第2制御弁492の切換により変更可能であると共に、排水ライン48Aの排水口52aの向きを方向可変機構53により変更することで燃料電池42(動力源)により生成された水の排出方向を変更可能である。すなわち、水素を燃料とする動力源としての燃料電池42によって生成された水を排出するタイミング及び方向を作業現場の環境や作業状況に応じて変更することが可能である。
【0058】
また、本実施の形態に係る油圧ショベル1(建設機械)は、貯水槽45Aに貯留されている水の排水を操作するための排水操作装置26を備えている。また、排水ライン48Aは、互いに並列に接続された第1管部511及び第2管部512を含むように構成されている。さらに、排水制御弁49Aは、第1管部511に設けられ第1管部511の遮断と第1管部511の連通とに切換可能な第1制御弁491と、第2管部512に設けられ第2管部512の遮断と第2管部512の連通とを切換可能な第2制御弁492とによって構成されている。第1制御弁491及び第2制御弁492のうちの一方491は、作業員の手動操作により駆動される弁によって構成され、第1制御弁491及び第2制御弁492のうちの他方492は、制御装置70の制御指令に応じて駆動する弁によって構成されている。また、制御装置70は、排水操作装置26からの操作信号に応じて前記制御指令を出力するように構成されている。
【0059】
この構成によれば、作業員が第1制御弁491を手動操作することで貯水槽45Aに貯留されている水の排水タイミングを決定することが可能である。また、オペレータが排水操作装置26を操作することで、貯水槽45Aに貯留されている水の排水タイミングを決定することが可能である。
【0060】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る建設機械について
図7及び
図8を用いて説明する。なお、
図7及び
図8において、
図1~
図6に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図7は第3の実施形態に係る建設機械における燃料電池システムを示す模式図である。
【0061】
第3の実施形態に係る建設機械が第2の実施形態と異なる点は、燃料電池システム40Bの貯水槽45Aの水温と相関関係がある温度を検出する温度センサ61が追加されていること、油圧ショベル1の周囲に存在する人体を検知する人体検知装置62が追加されていること、及び、制御装置70Bによる燃料電池システム40Bの排水の制御方法が異なることである。燃料電池システム40Bのそれ以外の構成は第2の実施形態の燃料電池システム40A(
図6参照)と同様な構成であるので、その説明は省略する。
【0062】
温度センサ61は、例えば、油圧ショベル1の外気温を検出するように配置され、検出した外気温に応じた検出信号を制御装置70Bへ出力する。温度センサ61は、貯水槽45Aに貯留されている水の凍結を回避するために貯水槽45Aの水温を推定可能な温度を検出するものである。温度センサ61は、貯水槽45Aの壁面の温度を検出する構成や燃料電池42の吸入温度を検出する構成も可能である。
【0063】
人体検知装置62は、例えば、油圧ショベル1の周囲を撮影するカメラ63と、カメラ63によって撮影された画像を解析して油圧ショベル1の周囲の人体の有無を検知する画像解析装置64とで構成されている。カメラ63は、燃料電池システム40Bの排水ライン48Aが配置される領域の周囲が撮影範囲となるように配置されている。カメラ63は、撮影した画像データを画像解析装置64へ出力する。画像解析装置64は、カメラ63から入力された画像データを解析して人体の有無を判別し、判別結果の人体の検知又は無検知のいずれかを制御装置70Bへ出力する。なお、画像解析装置64の機能を制御装置70Bが有するように構成することも可能である。すなわち、制御装置70Bは、カメラ63から取得した画像データを解析して人体の有無を判別するように構成されることも可能である。
【0064】
制御装置70Bは、温度センサ61からの検出信号に基づき第2制御弁492を制御するように構成されている。具体的には、制御装置70Bは、温度センサ61の検出値が予め設定された温度閾値以下の場合、貯水槽45Aが排水状態になるように第2制御弁492を全開に制御する。一方、温度センサ61の検出値が予め設定された温度閾値を超えている場合、排水操作装置26の操作に応じて第2制御弁492を制御する。温度閾値は、記憶装置71に予め記憶されている。
【0065】
制御装置70Bは、また、油圧ショベル1の外部に位置する外部サーバ101と相互に通信可能に構成されている。外部サーバ101は、油圧ショベル1の作業現場における各日の夜間予想外気温を取得し、取得した夜間予想外気温を油圧ショベル1の制御装置70Bへ提供するように構成されている。すなわち、制御装置70Bは、外部サーバ101から提供された各日の夜間予想外気温を記憶装置71に記憶しておき、第2制御弁492の制御に利用する。
【0066】
また、制御装置70Bは、人体検知装置62による人体の検知の有無に基づき第2制御弁492を制御するように構成されている。具体的には、制御装置70Bは、排水操作装置26からの操作信号が燃料電池システム40Bの水勢の強い排水に相当する場合、人体検知装置62による人体の検知の有無に応じて第2制御弁492を制御する。人体検知装置62により人体が検知されている場合には、貯水槽45Aが貯水状態になるように第2制御弁492を全閉に制御する一方、人体検知装置62による人体の検知が無い場合には、貯水槽45Aが排水状態になるように第2制御弁492を全開に制御する。
【0067】
次に、第3の実施形態に係る建設機械の制御装置による燃料電池システムの排水制御の手順について
図8を用いて説明する。
図8は
図7に示す第3の実施形態に係る建設機械における制御装置による燃料電池システムの排水制御の手順の一例を示すフローチャートである。
【0068】
図8において、
図7に示す制御装置70Bは、例えば、油圧ショベル1が起動すると、燃料電池システム40Bの排水制御を開始する(スタート)。先ず、制御装置70Bは、外気温が温度閾値よりも高温か否かを判定する(ステップS10)。具体的には、温度センサ61の検出値が記憶装置71に記憶されている温度閾値よりも高いか否かを判定する。温度閾値は、例えば0℃である。温度センサ61の検出値が温度閾値以下の場合(NOの場合)には、ステップS60に進み、第2制御弁492を全開に制御する。これにより、貯水槽45Aの貯水状態への移行が回避され、貯水槽45に水が貯留されて凍結することを防止することができる。一方、温度センサ61の検出値が温度閾値よりも高い場合(YESの場合)には、ステップS20に進み、第2制御弁492を全閉に制御する。
【0069】
制御装置70Bは、ステップS20にて第2制御弁492を全閉に制御した後、排水操作装置26の排水操作を判別する(ステップS30)。
【0070】
ステップS30において、排水操作装置26からの操作信号が燃料電池システム40Bの排水停止に相当する場合(NOの場合)には、制御装置70Bは、第2制御弁492を全閉に制御する(ステップS50)。これにより、排水操作装置26の操作に応じて燃料電池システム40Bの排水停止が行われる。
【0071】
また、ステップS30において、排水操作装置26からの操作信号が燃料電池システム40Bの水勢の強い排水に相当する場合には、制御装置70Bは、人体検知装置62による人体の検知が有るか否かを判別する(ステップS40)。人体検知装置62による人体の検知が有る場合(YESの場合)には、第2制御弁492を全閉に制御する(ステップS50)。これにより、燃料電池システム40Bからの排水によって人が被水することを回避することができる。一方、人体検知装置62による人体の検知が無い場合(NOの場合)には、貯水槽45Aが排水状態になるように第2制御弁492を全開に制御する(ステップS60)。これにより、排水操作装置26の操作に応じて燃料電池システム40Bからの排水が行われる。
【0072】
また、ステップS30において、排水操作装置26からの操作信号が燃料電池システム40Bの水勢の弱い排水に相当する場合には、制御装置70Bは、貯水槽45Aが排水状態になるように第2制御弁492を中間開度に制御する(ステップS70)。これにより、排水操作装置26の操作に応じて燃料電池システム40Bからの排水が行われる。
【0073】
制御装置70Bは、ステップS50にて第2制御弁492を全閉に制御した後、すなわち、貯水槽45Aを貯水状態に制御した後、油圧ショベル1の停止要求の入力の有無を判別する(ステップS80)。ステップS80にて停止要求の入力が無い(NO)と判別された場合には、ステップS30に戻って再び排水操作装置26の排水操作を判別する。
【0074】
一方、ステップS80にて停止要求の入力有り(YES)と判別された場合には、制御装置70Bは、ステップS100に進み、外気温が温度閾値よりも高温か否かを判定する。具体的には、ステップS10と同様に、温度センサ61の検出値が温度閾値(例えば、0℃)よりも高いか否かを判定する。ステップS100にてYES(外気温が温度閾値よりも高温)の場合には、ステップS110に進む一方、NO(外気温が温度閾値以下)の場合には、ステップS120に進む。
【0075】
ステップS100にてYES(外気温が温度閾値よりも高温)の場合には、油圧ショベル1の停止後の当日夜間の予想外気温が温度閾値よりも高温か否かを判定する(ステップS110)。具体的には、制御装置70Bは、外部サーバ101から取得した夜間の予想外気温が温度閾値よりも高温かを判定する。ステップS110にて夜間の予想外気温が温度閾値以下(NO)と判別された場合にはステップS120に進む一方、夜間の予想外気温が温度閾値よりも高温(YES)であると判別された場合には、燃料電池システム40Bの排水制御を終了する(エンド)。
【0076】
ステップS100にてNO(外気温が温度閾値以下)と判別された場合、又は、ステップS110にてNO(夜間の予想外気温が温度閾値以下)と判別された場合には、制御装置70Bは、貯水槽45Aが排水状態になるように第2制御弁492を全開に制御する(ステップS120)。これにより、貯水槽45Aに貯留されていた水が全て機体3、4の外部へ排出される。このため、貯水槽45A内に水が貯留されて凍結することを回避することができる。制御装置70Bは、ステップS120にて第2制御弁492を全開に制御した後に、燃料電池システム40Bの排水制御を終了する(エンド)。
【0077】
また、制御装置70Bは、ステップS70にて第2制御弁492を中間開度に制御した後、又は、ステップS80にて第2制御弁492を全開に制御した後、すなわち、貯水槽45Aを排水状態に制御した後、油圧ショベル1の停止要求の入力の有無を判別する(ステップS90)。ステップS90にて停止要求の入力が無い(NO)と判別された場合には、ステップS30に戻って再び排水操作装置26の排水操作を判別する。
【0078】
一方、ステップS90にて停止要求の入力有り(YES)と判別された場合には、制御装置70Bは、ステップS120に進んで第2制御弁492を全開に制御し、燃料電池システム40Bの排水制御を終了する(エンド)。
【0079】
このように、本実施の形態においては、制御装置70Bが温度センサ61の検出温度を温度閾値と比較した結果に基づき第2制御弁492を制御するように構成されている。加えて、制御装置70Bは、外部サーバ101から取得した夜間の予想外気温を温度閾値と比較した結果に基づき第2制御弁492を制御するように構成されている。これにより、排水操作装置26の操作によらずに、燃料電池システム40Bの貯水槽45Aに貯留されている水が凍結することを防止することができる。
【0080】
また、本実施の形態においては、制御装置70Bが人体検知装置62による人体の検知の有無に基づき第2制御弁492を制御するように構成されている。これにより、油圧ショベル1の周囲に人が存在している場合に、燃料電池システム40Bの排水により人体が被水することを回避することができる。
【0081】
上述した第3の実施形態によれば、前述した第2の実施形態と同様に、燃料電池42(動力源)により生成された水の排水タイミングを排水ライン48Aに設けた排水制御弁49Aの第1制御弁491又は第2制御弁492の切換により変更可能であると共に、排水ライン48Aの排水口52aの向きを方向可変機構53により変更することで燃料電池42(動力源)により生成された水の排出方向を変更可能である。すなわち、水素を燃料とする動力源としての燃料電池42によって生成された水を排出するタイミング及び方向を作業現場の環境や作業状況に応じて変更することが可能である。
【0082】
また、本実施の形態に係る油圧ショベル1(建設機械)は、排水制御弁49Aの第2制御弁492を制御する制御装置70Bと、貯水槽45Aの水温と相関関係がある温度を検出する温度センサ61とを備えている。制御装置70Bは、温度センサ61の検出値が予め設定された第1温度閾値以下である場合、貯水槽45Aが排水状態になるように排水制御弁49Aの第2制御弁492を制御するように構成されている。
【0083】
この構成によれば、貯水槽45Aに貯留される水が凍結する懸念があるときに、オペレータの操作によらずに事前に貯水槽45Aを排水状態にすることで、貯水槽45Aの水の凍結を防止することができる。
【0084】
加えて、本実施の形態の制御装置70Bは、機体3、4を停止させるときに、外部から提供される機体3、4の停止後の予想外気温が予め設定された第2温度閾値以下である場合、貯水槽45Aが排水状態になるように排水制御弁49Aの第2制御弁492を制御するように構成されている。
【0085】
この構成によれば、貯水槽45Aに貯留されている水が機体3、4の停止後に凍結する懸念がある場合には、オペレータの操作によらずに事前に貯水槽45Aを排水状態にすることで、機体3、4の停止後の貯水槽45Aの水の凍結を防止することができる。
【0086】
また、本実施の形態に係る油圧ショベル1(建設機械)は、排水制御弁49Aの第2制御弁492を制御する制御装置70Bと、機体3、4の周囲に存在する人体を検知する人体検知装置62とを備えている。また、制御装置70Bは、人体検知装置62による人体の検知の有無に基づき、排水制御弁49Aの第2制御弁492を制御するように構成されている。
【0087】
この構成によれば、機体3、4の周囲に存在している人が貯水槽45Aの水の排出による被水を回避することが可能である。
【0088】
[その他の実施の形態]
なお、上述した第1~第3の実施形態においては、本発明を油圧ショベル1に適用した例を示した。しかし、本発明は燃料電池42を備える各種の建設機械に広く適用することができる。
【0089】
また、本発明は上述した第1~第3の実施形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0090】
例えば、上述した第1~第3の実施形態においては、水素を燃料として発電する燃料電池42を備えた油圧ショベル1の例を挙げた説明した。しかし、油圧ショベルは、燃料電池42に代えて、水素を燃料として動力を発生させる内燃機関(水素燃料エンジン)を備える構成も可能である。この場合、内燃機関は、燃料としての水素を燃焼させて動力を発生させた結果、水を生成する。内燃機関で生成された水は、燃料電池システム40、40Aの排水システム44、44Aと同様の排水システムを介して機体3、4の外部へ排出される。すなわち、内燃機関で生成された水を貯水槽45、45Aに貯留し、排水制御弁49、49Aが設けられた排水ライン48、48Aを介して機体3、4の外部へ排出する。これにより、内燃機関で生成された水の排出タイミングを作業現場の環境や作業状況に応じて変更することが可能となる。また、排水ライン48、48Aが排水口52aの向きを変更する方向可変機構53を備えることで、内燃機関で生成された水の排出方向を作業現場の環境や作業状況に応じて変更することが可能となる。このように、本発明は、燃料電池や水素燃料エンジンのような水素を燃料とする動力源を備える建設機械に広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0091】
1…油圧ショベル(建設機械)、 3…下部走行体(機体)、 4…上部旋回体(機体)、 26…排水操作装置、 42…燃料電池(動力源)、 45、45A…貯水槽、 48、48A…排水ライン、 49、49A…排水制御弁、 491…第1制御弁、 492…第2制御弁、 511…第1管部、 512…第2管部、 52a…排水口、 53…方向可変機構、 61…温度センサ、 62…人体検知装置、 70、70B…制御装置、 101…外部サーバ(外部)