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特開2024-143164縫製システム、縫製データ送信プログラム、及びミシン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143164
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】縫製システム、縫製データ送信プログラム、及びミシン
(51)【国際特許分類】
   D05B 19/02 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
D05B19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055694
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100143960
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 早百合
(72)【発明者】
【氏名】柴田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】今泉 一崇
(72)【発明者】
【氏名】峰松 容浩
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA15
3B150CB04
3B150CE23
3B150LA67
3B150NA62
3B150QA06
3B150QA07
(57)【要約】
【課題】縫製システムにおいて、縫製データの送受信に起因する待機時間を従来よりも減少させた縫製システム、縫製データ送信プログラム、及びミシンを提供すること。
【解決手段】縫製システムは、ミシン、及び端末装置を備える。端末装置の装置制御部は、針落ち位置データを含む縫製データを取得し(S3)、入力部への、刺繍模様を編集する編集操作を受け付ける(S8)。装置制御部は、S8の前に、S3で取得された縫製データの少なくとも一部をミシンに送信し(S7)、縫製データの少なくとも一部の送信を開始後、S8で受け付けた編集操作に応じた編集データをミシンに送信する(S13)。ミシンのミシン制御部は、S7で送信された縫製データを受信し(S34)、S13で送信された編集データを受信し(S38)、縫製データと編集データとに基づき、編集操作に応じて編集された刺繍模様を縫製する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺繍模様を縫製可能な縫製部と、ミシン制御部とを有するミシンと、
入力部と、装置制御部とを有し、前記ミシンと通信可能な端末装置と
を備えた縫製システムであって、
前記端末装置の前記装置制御部は、
前記ミシンで前記刺繍模様を縫製する場合の針落ち位置を表す針落ち位置データを含む縫製データを取得する取得処理と、
前記入力部への、前記刺繍模様を編集する編集操作を受け付ける編集受付処理と、
前記編集受付処理終了前に、前記縫製データの少なくとも一部を前記ミシンに送信する第一送信処理と、
前記第一送信処理開始後に、前記編集操作に応じた編集データを前記ミシンに送信する第二送信処理と
を実行し、
前記ミシンの前記ミシン制御部は、
前記第一送信処理で送信された前記縫製データを受信する第一受信処理と、
前記第二送信処理で送信された前記編集データを受信する第二受信処理と、
前記縫製データと、前記編集データとに基づき、前記編集操作に応じて編集された前記刺繍模様を縫製する縫製制御処理と
を実行することを特徴とする縫製システム。
【請求項2】
前記第一送信処理は、前記取得処理の後に実行開始され、
前記編集受付処理は、前記第一送信処理の実行開始後に開始されることを特徴とする請求項1に記載の縫製システム。
【請求項3】
前記ミシンは、
前記第一受信処理で前記縫製データの受信が完了し、前記第二受信処理で前記編集データの受信が未完了の場合に、前記編集データの受信完了まで前記縫製制御処理を実行せず、前記縫製データと前記編集データとの各々を受信完了後に前記縫製制御処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の縫製システム。
【請求項4】
前記ミシンは、前記針落ち位置データを、前記編集データに基づいて補正した補正データを生成する補正処理を更に実行し、
前記縫製制御処理は、前記補正データに基づき、前記刺繍模様を縫製することを特徴とする請求項1に記載の縫製システム。
【請求項5】
前記編集データは、前記刺繍模様の大きさを示すサイズデータを含み、
前記補正処理は、前記針落ち位置データと、前記サイズデータとに基づいて、前記サイズデータで示される大きさの前記刺繍模様を縫製する前記補正データを生成することを特徴とする請求項4に記載の縫製システム。
【請求項6】
前記編集データは、基準角度に対する前記刺繍模様の角度を示す角度データを含み、
前記補正処理は、前記針落ち位置データと、前記角度データとに基づいて、前記角度データで示される角度の前記刺繍模様を縫製する前記補正データを生成することを特徴とする請求項4に記載の縫製システム。
【請求項7】
前記編集データは、基準位置に対する前記刺繍模様の位置を示す位置データを含み、
前記補正処理は、前記針落ち位置データと、前記位置データとに基づいて、前記位置データで示される位置に前記刺繍模様を縫製する前記補正データを生成することを特徴とする請求項4に記載の縫製システム。
【請求項8】
前記装置制御部は、
前記編集受付処理を開始後、前記刺繍模様の縫製を中止する中止指示を取得した場合に、前記ミシンに前記中止指示を送信する第三送信処理を実行し、
前記ミシン制御部は、
前記中止指示を受信した場合、前記端末装置から受信済みのデータを無効化し、前記受信済みのデータに基づく前記縫製制御処理を実行しないことを特徴とする請求項1に記載の縫製システム。
【請求項9】
前記取得処理で取得される前記縫製データは糸の色を示す糸色データを含み、
前記第一送信処理は、前記取得処理後、前記編集受付処理終了前に、前記縫製データのうちの前記針落ち位置データの少なくとも一部を前記ミシンに送信し、前記糸色データは前記ミシンに送信せず、
前記端末装置の前記装置制御部は、前記糸色データに基づき、縫製に使用される糸の色を報知する報知処理、を実行することを特徴とする請求項1に記載の縫製システム。
【請求項10】
入力部と、装置制御部とを有する端末装置で実行される縫製データ送信プログラムであって、
前記装置制御部に、
ミシンで刺繍模様を縫製するための針落ち位置を表す針落ち位置データを含む縫製データを取得する取得処理と、
前記入力部への、前記刺繍模様を編集する編集操作を受け付ける編集受付処理と、
前記編集受付処理終了前に、前記縫製データの少なくとも一部を前記ミシンに送信する第一送信処理と、
前記第一送信処理開始後に、前記編集操作に応じた編集データを前記ミシンに送信する第二送信処理と
を実行させる指示を含むことを特徴とする縫製データ送信プログラム。
【請求項11】
刺繍模様を縫製可能な縫製部と、
ミシン制御部とを有し、
前記ミシン制御部は、
端末装置から送信された、前記刺繍模様を縫製するための針落ち位置を表す針落ち位置データを含む縫製データを受信する第一受信処理と、
前記端末装置から送信された、前記刺繍模様を編集する編集操作に応じた編集データを受信する第二受信処理と、
前記縫製データと前記編集データとの各々を受信完了後に、前記針落ち位置データを、前記編集データに基づいて補正した補正データを生成する補正処理と、
前記縫製部を制御し、前記補正データに基づき、前記刺繍模様を縫製する縫製制御処理と
を実行することを特徴とするミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫製システム、縫製データ送信プログラム、及びミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のミシンは、縫製に必要な各種設定を行う操作パネルと、操作パネルからの操作指令に基づいてミシンを制御するミシン制御装置とを備える。操作パネルは、端末装置から縫製データを受信する通信装置と、受信した縫製データを記憶する記憶装置と、受信した縫製データを編集する縫製データ編集画面を表示する表示装置とを備える。操作パネルは、端末装置から縫製データを受信したことを判別して、その旨を表示装置に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-326010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の縫製システムでは、ミシンと端末装置との間の通信環境及び縫製データの容量によっては、端末装置からミシンへ縫製データの送信を開始してから完了するまでに、比較的長い待機時間が発生する可能性がある。待機時間が長いと、ユーザはスムーズに縫製を開始できない。
【0005】
本発明の目的は、端末装置からミシンへ縫製データを送信し、送信された縫製データに基づきミシンが刺繍模様を縫製する縫製システムにおいて、縫製データの送受信に起因する待機時間を従来よりも減少させた縫製システム、縫製データ送信プログラム、及びミシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る縫製システムは、刺繍模様を縫製可能な縫製部と、ミシン制御部とを有するミシンと、入力部と、装置制御部とを有し、前記ミシンと通信可能な端末装置とを備えた縫製システムであって、前記端末装置の前記装置制御部は、前記ミシンで前記刺繍模様を縫製する場合の針落ち位置を表す針落ち位置データを含む縫製データを取得する取得処理と、前記入力部への、前記刺繍模様を編集する編集操作を受け付ける編集受付処理と、前記編集受付処理終了前に、前記縫製データの少なくとも一部を前記ミシンに送信する第一送信処理と、前記第一送信処理開始後に、前記編集操作に応じた編集データを前記ミシンに送信する第二送信処理とを実行し、前記ミシンの前記ミシン制御部は、前記第一送信処理で送信された前記縫製データを受信する第一受信処理と、前記第二送信処理で送信された前記編集データを受信する第二受信処理と、前記縫製データと、前記編集データとに基づき、前記編集操作に応じて編集された前記刺繍模様を縫製する縫製制御処理とを実行する。縫製システムの端末装置は、刺繍模様を編集中に、予め縫製データをミシンに送信しておき、編集完了後に別途編集データをミシンに送信する。端末装置は、縫製データの送信を、刺繍模様の編集完了前に開始している。したがって、端末装置は、従来よりも早く縫製データの送信を開始しているため、縫製データの容量が比較的大きい場合でも、編集完了後から縫製開始までのユーザの待機時間を削減できる。
【0007】
本発明の第二態様に係る縫製データ送信プログラムは、入力部と、装置制御部とを有する端末装置で実行される縫製データ送信プログラムであって、前記装置制御部に、ミシンで刺繍模様を縫製するための針落ち位置を表す針落ち位置データを含む縫製データを取得する取得処理と、前記入力部への、前記刺繍模様を編集する編集操作を受け付ける編集受付処理と、前記編集受付処理終了前に、前記縫製データの少なくとも一部を前記ミシンに送信する第一送信処理と、前記第一送信処理開始後に、前記編集操作に応じた編集データを前記ミシンに送信する第二送信処理とを実行させる指示を含む。縫製データ送信プログラムを実行することで、端末装置は、刺繍模様を編集中に、予め縫製データをミシンに送信しておき、編集完了後に別途編集データをミシンに送信する。端末装置は、縫製データの送信を、刺繍模様の編集完了前に開始している。したがって、端末装置は、従来よりも早く縫製データの送信を開始しているため、縫製データの容量が比較的大きい場合でも、編集完了後から縫製開始までのユーザの待機時間を削減できる。
【0008】
本発明の第三態様に係るミシンは、刺繍模様を縫製可能な縫製部と、ミシン制御部とを有し、前記ミシン制御部は、端末装置から送信された、前記刺繍模様を縫製するための針落ち位置を表す針落ち位置データを含む縫製データを受信する第一受信処理と、前記端末装置から送信された、前記刺繍模様を編集する編集操作に応じた編集データを受信する第二受信処理と、前記縫製データと前記編集データとの各々を受信完了後に、前記針落ち位置データを、前記編集データに基づいて補正した補正データを生成する補正処理と、前記縫製部を制御し、前記補正データに基づき、前記刺繍模様を縫製する縫製制御処理とを実行する。ミシンは、端末装置で刺繍模様を編集中に、端末装置から送信された縫製データの受信を開始しておき、端末装置で編集完了後に別途編集データを端末装置から受信する。ミシンは、縫製データの受信を、刺繍模様の編集完了前に開始している。したがって、ミシンは、従来よりも早く縫製データの受信を開始しているため、縫製データの容量が比較的大きい場合でも、編集完了後から縫製開始までのユーザの待機時間を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ミシン1の斜視図である。
図2】ミシン1、及び端末装置2を備える縫製システム4と、サーバ3との電気的構成を示すブロック図である。
図3】縫製システム4で実行される端末処理と、ミシン処理とのフローチャートである。
図4】端末装置2の表示部28に表示される画面G1からG4の遷移の説明図である。
図5】縫製システム4で実行される端末処理と、ミシン処理とのフローチャートである。
図6】縫製データB1、B2、補正データB3、及び編集データB4の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照し、本発明の一実施形態を説明する。図1を参照し、本実施形態の縫製システム4(以下、「システム4」という。)のミシン1の構成を説明する。図1の上方、下方、右下方、左上方、左下方、及び右上方が各々、ミシン1の上方、下方、前方、後方、左方、及び右方である。ベッド部11及びアーム部13の長手方向がミシン1の左右方向である。脚柱部12が配置されている側が右側である。脚柱部12の伸長方向がミシン1の上下方向である。
【0011】
図1に示すように、ミシン1は、ベッド部11、脚柱部12、アーム部13、頭部14、及びキャリッジ50を備える。ベッド部11は、左右方向に延びるミシン1の土台部である。ベッド部11は、基部15、足部16、及びフリーアーム部17を有する。基部15は、ベッド部11の左右方向の略中央よりも右方の部分である。基部15は、内部にミシンモータ76を備える。足部16は、平面視右方が開口するU字形状の丸棒状の部分であり、足部16の右端部は、基部15の左端部下部に連結する。フリーアーム部17は、基部15の左端部上部から左方へ向けて延びる略四角柱形状の部分である。ミシン1は、フリーアーム部17の上面に針板10を備え、フリーアーム部17の内部に、図示しない釜機構等を備える。釜機構は、針板10の下方において、上糸(図示略)を下糸(図示略)に絡ませる。
【0012】
脚柱部12は、ベッド部11の右端部から上方に延びる。脚柱部12の上部には、糸立て19が設けられる。糸立て19は、上糸が巻回された糸駒(図示略)を保持できる。アーム部13は、脚柱部12の上端部から左方へ向けてベッド部11と平行に延びる。アーム部13内部には、左右方向に延びる主軸(図示略)が設けられる。主軸は、ミシンモータ76(図2参照)により回転駆動される。頭部14は、アーム部13の左先端部に連結する。頭部14には、刺繍模様を縫製可能な縫製部68が設けられる。縫製部68は、針棒6、針棒機構18(図2参照)、及び押え棒8を備える。針棒6の下端には、縫針7が着脱可能に装着される。押え棒8の下端部には、押え足9が着脱可能に装着される。針棒6は、主軸の回転により上下方向に駆動される。
【0013】
移動機構45は、ホルダ46、及びキャリッジ50を備え、ホルダ46を固有のXY座標系(刺繍座標系)で示される位置に移動可能である。刺繍座標系のX方向及びY方向は各々、ミシン1の左右方向及び前後方向に対応する。キャリッジ50は、刺繍枠40に保持された被縫製物を、針棒6に対して相対的に、前後方向及び左右方向へ移動可能に構成される。キャリッジ50は、アーム部13の内部に設けられた支持部に支持されて、アーム部13から左右方向に移動可能に吊り下げられる。キャリッジ50は、ホルダ46を前後方向に移動可能である。
【0014】
刺繍枠40は被縫製物を保持する枠体である。被縫製物は、例えば加工布である。本実施形態の刺繍枠40は平面視で略正方形状であるが、刺繍内容に応じて、矩形状、円形状、及び長円形状の刺繍枠が適宜選択されてもよい。刺繍枠40は、右側に、キャリッジ50のホルダ46に連結するための連結部41を有する。
【0015】
図2を参照して、サーバ3と、システム4が備える端末装置2、及びミシン1との電気的構成を説明する。システム4は、サーバ3が提供するウェブアプリを利用して端末装置2で選択された縫製データに基づき、ミシン1で刺繍模様を縫製可能に構成されている。
【0016】
サーバ3は、CPU31、ROM32、RAM33、記憶部34、及び通信部35を備える。CPU31は、サーバ3の制御を司る。CPU31は、バス36を介して、ROM32、RAM33、記憶部34、及び通信部35と電気的に接続する。ROM32には、ブートプログラム及びBIOS等が記憶される。RAM33には、一時的なデータが記憶される。記憶部34は、HDD及びSSD等の不揮発性の記憶装置である。通信部35は、サーバ3をネットワーク5に接続するためのインターフェイスである。CPU31は、通信部35を介して、ネットワーク5に接続する他の機器(例えば、端末装置2)とデータの送受信を実行できる。
【0017】
端末装置2は、CPU21、ROM22、RAM23、記憶部24、第一通信部25、第二通信部30、及び入出力インターフェイス27を備える。CPU21は、端末装置2の制御を司る。CPU21は、バス26を介して、ROM22、RAM23、記憶部24、第一通信部25、第二通信部30、及び入出力インターフェイス27と電気的に接続する。ROM22には、ブートプログラム及びBIOS等が記憶される。RAM23には、一時的なデータが記憶される。記憶部24は、不揮発性の記憶装置である。記憶部24には、後述の端末処理の実行に必要な各種設定値が記憶される。第一通信部25は、端末装置2をネットワーク5に接続するためのインターフェイスである。CPU21は、第一通信部25を介して、ネットワーク5に接続する他の機器(例えば、サーバ3)とデータの送受信を実行できる。第二通信部30は、端末装置2をミシン1に接続するためのインターフェイスである。第二通信部30は、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信規格のインターフェイスである。入出力インターフェイス27は、表示部28及び入力部29と接続されている。表示部28は、例えば、液晶ディスプレイである。入力部29は、例えば、タッチスクリーンであり、各種指示を入力する場合に用いられる。
【0018】
ミシン1の制御部60は、CPU61、ROM62、RAM63、記憶部64、入出力インターフェイス66、及び通信部67を備えている。CPU61は、バス65を介して、ROM62、RAM63、記憶部64、入出力インターフェイス66、及び通信部67と接続されている。入出力インターフェイス66には、駆動回路71、73、74、スイッチ47、LED48、及びスピーカ49が接続されている。記憶部64は、不揮発性の記憶装置である。記憶部64は、後述のミシン処理の実行に必要な各種設定値を記憶する。
【0019】
駆動回路71には、ミシンモータ76が接続される。駆動回路71は、CPU61からの制御信号に従って、ミシンモータ76を駆動する。ミシンモータ76の駆動に伴い、ミシン1の主軸(図示略)を介して針棒機構18が駆動され、針棒6が上下動する。駆動回路73には、Xモータ43が接続される。駆動回路74には、Yモータ42が接続される。駆動回路73及び74は各々、CPU61からの制御信号に従って、Xモータ43及びYモータ42を駆動する。Xモータ43及びYモータ42の駆動に伴い、制御信号に応じた移動量だけ、移動機構45に装着された刺繍枠40が左右方向(X方向)及び前後方向(Y方向)に移動する。通信部67は、ミシン1を端末装置2に接続するためのインターフェイスである。通信部67は、端末装置2の第二通信部30に対応する、近距離無線通信規格のインターフェイスである。CPU61は、通信部67を介して、端末装置2とデータの送受信を実行できる。スイッチ47は、縫製の開始又は停止を指示するのに用いられる。LED48は、スイッチ47の内側に配置され、点滅、点灯、及び消灯のパターンにより、ミシン1の動作状況を報知する。本例のLED48は、赤色と緑色との二種類のLEDを含む。ミシン1の動作状況は、停止中、縫製中、及び縫製完了を含む。スピーカ49は、音声を出力する。
【0020】
ミシン1の動作を簡単に説明する。ミシン1は、刺繍枠40が移動機構45によってX方向及びY方向に移動されるのと併せて、針棒機構18及び釜機構が駆動される。これにより、針棒6に装着された縫針7によって、刺繍枠40に保持された被縫製物に対して刺繍模様が縫製される。
【0021】
図3から図6を参照して、システム4の端末装置2のCPU21、及びミシン1のCPU61が協働して、縫製データ及び編集データに基づき刺繍模様を縫製するための端末処理、及びミシン処理を並列に説明する。端末処理は、端末装置2のCPU21によって実行される処理である。ミシン処理は、ミシン1のCPU61によって実行される処理である。以下、ステップをSと略記する。一例として、図4の画面G1に表示された刺繍模様E1からE6の中から選択された刺繍模様E5の縫製を行う場合を説明する。刺繍模様E1は、二色の糸で縫製されるグランドピアノの模様である。刺繍模様E2は、二色の糸で縫製されるトランペットの模様である。刺繍模様E3は、一色の糸で縫製される八分音符の模様である。刺繍模様E4は、三色の糸で縫製される花束の模様である。刺繍模様E5は、四色の糸で縫製される花束の模様である。刺繍模様E6は、三色の糸で縫製されるバラの模様である。本例の刺繍模様E1からE6は各々、糸色毎に区分される、一以上の部分模様を含む。端末処理、及びミシン処理が開始される段階では、端末装置2とミシン1との間の通信が既に確立されている。
【0022】
端末装置2のCPU21は、刺繍模様の候補として画面G1を表示部28に表示し、入力部29の入力結果に基づき刺繍模様が取得されたかを判断する(S1)。画面G1は、欄81、及びキー82、83を備える。欄81は、刺繍模様の候補を表示する欄であり、刺繍模様E1からE6のサムネイル画像を含む。キー82は、端末処理を終了する指示を入力する場合に選択される。キー83は、選択中のサムネイル画像の刺繍模様を、編集対象の刺繍模様として取得する指示を出す場合に選択される。キー83の選択が検出されず、刺繍模様が取得されない場合(S1:NO)、CPU21は、刺繍模様を取得するまでS1で待機する。ユーザは、画面G1に表示された刺繍模様E1からE6のサムネイル画像の中から、所望の刺繍模様E5のサムネイル画像を選択する。ユーザの操作F1に応じて、刺繍模様E5が選択された状態で、キー83の選択が検出され、刺繍模様が取得された場合(S1:YES)、CPU21は、ミシン1に確認要求を送信する(S2)。確認要求は、ミシン1が縫製可能な状態かどうかをミシン1に確認するために、端末装置2からミシン1に送信される要求である。
【0023】
ミシン1のCPU61は、端末装置2から確認要求を受信する迄待機する(S31:NO)。確認要求が受信された場合(S31:YES)、CPU61は、ミシン1の状態を表す情報を、確認要求を送信した端末装置2に送信する(S32)。ミシン1の状態を表す情報は、例えば、ミシン1が縫製可能な状態かを示す情報である。
【0024】
端末装置2のCPU21は、S1で取得された刺繍模様をミシン1を用いて縫製する場合の針落ち位置を表す針落ち位置データを含む縫製データを取得する(S3)。図6に示すように、縫製データB1は、糸色毎に区分された部分模様を縫製するための部分縫製データを複数含む。複数の部分縫製データは、縫製順に記憶される。部分縫製データC1、C2を含む複数の部分縫製データは各々、糸色データ、フィードデータ、及び針落ち位置データを含む。糸色データは、刺繍模様を縫製するための糸の色を示す。フィードデータは、部分模様の縫製開始位置を刺繍座標系の座標で示すデータである。針落ち位置データは、針落ち点の位置を刺繍座標系の座標で示すデータであり、針落ち点毎の複数の座標を表すデータ群を含む。縫製データは、端末装置2の記憶部24に記憶されたデータでもよいし、S1で刺繍模様が取得されたことに応じて、サーバ3から取得されたデータでもよい。
【0025】
CPU21は、ミシン1から送信されたミシン1の状態を表す情報を受信する迄待機し(S4:NO)、状態を表す情報を受信した場合(S4:YES)、プレビュー表示として画面G2を表示部28に表示する(S5)。画面G2は、欄84、及びキー85、86を含む。欄84は、S1で取得された刺繍模様E5がミシン1で縫製される場合の縫製イメージを表示する。欄84の大きさ及び形状は、ミシン1で使用される予定の刺繍枠40の内側に設定される縫製領域の大きさ及び形状に対応する。縫製領域の大きさ及び形状は、ユーザによって入力されてもよいし、ミシン1から取得されてもよい。画面G2の左右方向及び上下方向は各々、刺繍座標系のX方向及びY方向に対応する。欄84に対する刺繍模様E5の配置は、刺繍模様E5がミシン1で縫製される場合の、縫製領域に対する刺繍模様E5の配置を表す。キー85は、刺繍模様E5の選択をキャンセルする場合に選択される。キー86は、欄84に表示された、選択中の刺繍模様E5の大きさ、角度、及び位置といった配置を編集する場合に選択される。
【0026】
CPU21は、キー86の選択が検出される迄待機する(S6:NO)。ユーザの操作F2に応じて、キー86の選択が検出された場合(S6:YES)、CPU21は、選択中の縫製データをミシン1に転送する処理を開始する(S7)。CPU21は、S3の処理の後に、S7の処理を実行することで、S8での編集操作を受付ける処理終了前に、縫製データの少なくとも一部がミシン1に送信される。本例のCPU21は、S3で取得された縫製データB1のうちの針落ち位置データを含む縫製データB2をミシン1に送信し、糸色データはミシン1に送信しない。縫製データB2は、部分縫製データD1、D2を含む複数の部分縫製データを有する。縫製データB2には、糸色データは含まれず、フィードデータ及び針位置データが含まれる。
【0027】
ミシン1のCPU61は、端末装置2のCPU21から送信された縫製データの受信を検出する迄待機する(S33:NO)、縫製データの受信が検出された場合(S33:YES)、CPU61は、縫製データの受信を開始し随時記憶部64に記憶する(S34)。
【0028】
CPU21は、S7の処理の実行開始後に、画面G3を表示部28に表示し、入力部29への、刺繍模様を編集する編集操作の受け付けを開始する(S8)。画面G3は、欄84、及びキー85、87を含む。キー87は、刺繍模様E5の配置を表す編集データをミシン1に転送する指示を入力する場合に選択される。ユーザは、欄84内で刺繍模様E5の配置を編集する指示を入力できる。画面G3では、編集操作後の刺繍模様E5を示す。本例のCPU21は、刺繍模様の大きさ、角度、及び位置といった配置の編集操作を受け付ける。刺繍模様の大きさの編集操作は、例えば、ユーザの指二本で入力部29をピンチするピンチ操作により実現される。刺繍模様の角度、及び位置の編集操作は、例えば、ユーザの指で入力部29をスワイプする操作により実現される。具体例において、刺繍模様E5の大きさを1.7倍し、角度を20度時計回りに回転し、及び左方に移動するユーザの操作F3に応じて、刺繍模様E5の大きさ、角度、及び位置の編集操作が検出された場合(S8:YES)、CPU21は、編集操作に応じた編集データを取得し、編集データに基づき刺繍模様E5を編集して、画面G3に示すように、表示部28の欄84に表示された刺繍模様E5を更新する(S9)。
【0029】
図6に示すように、具体例の編集データB4は、刺繍模様の大きさを示すサイズデータ、基準角度に対する刺繍模様の角度を示す角度データ、及び基準位置に対する刺繍模様の位置を示す位置データを含む。基準角度及び基準位置は、相対的な基準であってもよいし、絶対的な基準であってもよい。例えば、基準角度は、S3で取得された縫製データによって示される初期の刺繍模様の角度であってもよい。基準位置は、S3で取得された縫製データによって示される初期の刺繍模様の位置であってもよい。
【0030】
編集操作が検出されない場合(S8:NO)、又はS9で編集処理が実行された場合、CPU21は、キー87の選択を検出したかを判断する(S10)。キー87の選択が検出されない場合(S10:NO)、CPU21は、キー85の選択を検出したかを判断する(S11)。キー85の選択が検出されない場合(S11:NO)、CPU21は、処理をS8に戻す。キー85の選択を検出した場合(S11:YES)、CPU21は、S7の処理で転送を開始した縫製データに基づく縫製を中止することを通知する中止指示を、ミシン1に送信する(S12)。S12の処理により、S8の処理を開始後に、キー85が選択されることに応じて、CPU21が刺繍模様の縫製を中止する中止指示を取得した場合に、ミシン1に中止指示が送信される。ユーザの操作F4に応じて、キー87の選択が検出された場合(S10:YES)、CPU21は、ミシン1にS9で取得された編集データをミシン1に送信する(S13)。
【0031】
ミシン1のCPU61は、端末装置2から送信された中止指示が受信されたかを判断する(S35)。中止指示が受信された場合(S35:YES)、CPU61は、端末装置2から受信済みのデータを無効化し、受信済みのデータに基づく縫製を実行しない(S36)。具体的には、CPU61は、S34で受信が開始された縫製データを記憶部64から削除し(S36)、S34で受信が開始された縫製データに基づく縫製を行わずに、処理をS31に戻す。
【0032】
中止指示が受信されない場合(S35:NO)、CPU61は、端末装置2からの編集データの受信が検出されたかを判断する(S37)。編集データの受信が検出されない場合(S37:NO)、CPU61は、処理をS35に戻す。編集データB4の受信が検出された場合(S37:YES)、CPU61は、編集データB4を受信し、記憶部64に記憶する(S38)。CPU61は、縫製データB2、及び編集データB4を受信完了後、端末装置2に応答し、縫製データB2、及び編集データB4の受信完了通知を端末装置2に送信する(S39)。CPU61は、S34の処理で開始された縫製データの受信が完了しているが、S38の処理で編集データの受信が未完了の場合に、編集データの受信完了まで後述するS47の縫製処理を実行せず、縫製データと編集データとの各々を受信完了後にS47の縫製処理を実行する。CPU61は、緑色のLED48を点滅させる(S40)。緑色のLED48の点滅は、ミシン1が停止中であることを示す。
【0033】
CPU61は、受信完了された縫製データB2の針落ち位置データを、S38で受信された編集データB4に基づいて補正した補正データB3を生成する(S41)。CPU61は、編集データが角度データを含む場合、針落ち位置データと、角度データとに基づいて、角度データで示される角度の刺繍模様を縫製するための補正データを生成する。CPU61は、編集データが位置データを含む場合、針落ち位置データと、位置データとに基づいて、位置データで示される位置に刺繍模様を縫製するための補正データを生成する。CPU61は、編集データがサイズデータを含む場合、針落ち位置データと、サイズデータとに基づいて、サイズデータで示される大きさの刺繍模様を縫製するための補正データを生成する。CPU61は、編集データがサイズデータを含む場合、補正後の刺繍模様の糸密度が所定範囲に収まるように、針落ち位置データの追加又は削除を行ってもよい。補正データB3は、S34で受信開始される縫製データB2とは別に生成されてもよいし、縫製データB2を編集データB4に従って変更することで補正データB3が生成されてもよい。
【0034】
端末装置2のCPU21は、ミシン1からの受信完了通知を受信する迄待機する(S14:NO)。ミシン1からの受信完了通知が受信された場合(S14:YES)、CPU21は、ミシン1のモニタリング状況88を表示部28に表示する処理を開始し(S15)、S3で取得された縫製データに基づき、刺繍模様E5のうち、縫製順序が一番目の部分模様の糸色の糸をミシン1に装着することを促すメッセージ89を表示部28に表示する(S16)。図4に示すように、画面G4は、モニタリング状況88、メッセージ89、欄84、及びキー85を含む。モニタリング状況88は、ミシン1からの通知に基づき表示される。メッセージ89は、ミシン1からの通知に基づき表示される糸替えを促すメッセージである。
【0035】
CPU61は、縫製開始の指示が検出される迄待機する(S45:NO)。ユーザは、端末装置2の表示部28に表示された糸色の糸をミシン1に装着後、スイッチ47を押下して縫製開始の指示を入力する。ユーザの操作F6に応じて、縫製開始の指示が検出された場合(S45:YES)、CPU61は、縫製開始通知を端末装置2に送信する(S46)。
【0036】
端末装置2のCPU21は、ミシン1から縫製開始通知を受信する迄待機する(S20:NO)、縫製開始通知が受信された場合(S20:YES)、CPU21は、表示部28に表示されるモニタリング状況を「縫製中」に変更する(S21)。
【0037】
ミシン1のCPU61は、S34で受信開始された縫製データB2と、S38で受信された編集データB4とに基づき、編集操作に応じて編集された刺繍模様を縫製する処理を開始する(S47)。本例のCPU61は、S41で生成した補正データB3に基づき、刺繍模様を縫製する。CPU61は、針落ち位置データに従って、移動機構45、針棒機構18及び釜機構を駆動し、針棒6に装着された縫針7によって、刺繍枠40に保持された被縫製物に対して刺繍模様を縫製する。CPU61は、刺繍模様の針落ち位置データの内、縫製順序が最後の針落ち位置データに基づく縫目が形成されたかに基づき、縫製終了かを判断する(S48)。縫製終了ではない場合(S48:NO)、CPU61は、部分模様の針落ち位置データの内、縫製順序が最後の針落ち位置データに基づく縫目が形成されたかに基づき、糸替え時期かを判断する(S56)。
【0038】
糸替え時期ではない場合(S56:NO)、CPU61は、処理をS48に戻す。糸替え時期である場合(S56:YES)、CPU61は、移動機構45、針棒機構18及び釜機構の駆動を停止し(S57)、ミシン1に装着される糸を、縫製順序が次の部分模様を縫製するための糸に交換する時期であることを通知する糸替通知を端末装置2に送信し、赤色のLED48を点灯させる(S58)。赤色のLED48の点灯は、糸替え等により、縫製途中でミシン1が停止中であることを示す。CPU61は、処理をS45に戻す。縫製終了の場合(S48:YES)、CPU61は、移動機構45、針棒機構18及び釜機構の駆動を停止する(S49)。CPU61は、S34で受信開始された縫製データに基づく刺繍模様の縫製が完了したことを通知する完了通知を端末装置2に送信し、スピーカ49を制御して完了ブザーを出力する(S50)。CPU61は、緑色のLED48を点滅する(S51)。
【0039】
端末装置2のCPU21は、ミシン1から糸替通知を受信したかを判断する(S22)。糸替通知が受信された場合(S22:YES)、CPU21は、表示部28に表示されたモニタリング状況を、「停止中」に変更し、S3で取得された縫製データに基づき、縫製順序が次の部分模様の糸色を表示部28に表示する(S23)。CPU21は、処理をS20に戻す。ユーザは、端末装置2の表示部28に表示された糸色の糸をミシン1に装着後、スイッチ47を押下して縫製指示を入力し、縫製を再開させる。糸替通知が受信されない場合(S22:NO)、CPU21は、ミシン1から完了通知を受信したかを判断する(S24)。完了通知が受信されない場合(S24:NO)、CPU21は、処理をS22に戻す。完了通知が受信された場合(S24:YES)、CPU21は、表示部28に表示されたモニタリング状況を「縫製完了」に変更する(S25)。CPU21は、続けて縫製するかを判断する(S26)。ユーザの操作F7に応じて、続けて刺繍模様を縫製する指示が検出された場合(S26:YES)、CPU21は、端末処理及びミシン処理を継続することを通知する継続通知をミシン1に送信して(S30)、処理をS1に戻す。続けて縫製する指示が検出されない場合(S26:NO)、CPU21は、端末処理及びミシン処理を終了することを通知する終了通知をミシン1に送信する(S27)。
【0040】
ミシン1のCPU61は、端末装置2から終了通知を受信したかを判断する(S52)。終了通知ではなく継続通知が受信された場合(S52:NO)、CPU61は処理をS31に戻す。終了通知が受信された場合(S52:YES)、CPU61は、S34で受信開始された縫製データ、S38で受信された編集データ、及びS41で生成された補正データの各々を削除する(S53)。CPU61は、LED48を消灯し(S54)、S53の処理によりデータが削除されたことを通知する削除通知を端末装置2に送信する(S55)。CPU61は、以上でミシン処理を終了する。
【0041】
端末装置2のCPU21は、ミシン1から削除通知を受信する迄待機する(S28:NO)。ミシン1から削除通知を受信した場合(S28:YES)、CPU21は、ミシン1のモニタリングを終了し(S29)、以上で端末処理を終了する。
【0042】
上記実施形態において、システム4、ミシン1、端末装置2、CPU21、入力部29、CPU61、及び縫製部68は、本発明の縫製システム、ミシン、端末装置、装置制御部、入力部、ミシン制御部、及び縫製部の一例である。S3の処理は、本発明の取得処理の一例である。S8の処理は、本発明の編集受付処理の一例である。S7の処理は、本発明の第一送信処理の一例である。S13の処理は、本発明の第二送信処理の一例である。S34の処理は、本発明の第一受信処理の一例である。S38の処理は、本発明の第二受信処理の一例である。S47の処理は、本発明の縫製制御処理の一例である。S41の処理は、本発明の補正処理の一例である。S121の処理は、本発明の第三送信処理の一例である。S16及びS23の処理は、本発明の報知処理の一例である。
【0043】
上記実施形態のシステム4は、ミシン1、及び端末装置2を備える。ミシン1は、刺繍模様を縫製可能な縫製部68と、CPU61とを有する。端末装置2は、入力部29と、CPU21とを有する。端末装置2のCPU21は、ミシン1で刺繍模様を縫製する場合の針落ち位置を表す針落ち位置データを含む縫製データを取得する(S3)。CPU21は、入力部29への、刺繍模様を編集する編集操作を受け付ける(S8)。CPU21は、S8の処理終了前に、S3で取得された縫製データの少なくとも一部をミシン1に送信する(S7)。S7で縫製データの少なくとも一部の送信を開始後に、S8で受け付けた編集操作に応じた編集データをミシン1に送信する(S13)。ミシン1のCPU61は、S7の処理で送信された縫製データを受信開始する(S34)。CPU61は、S13の処理で送信された編集データを受信する(S38)。CPU61は、縫製データと、編集データとに基づき、編集された刺繍模様を縫製する(S47)。システム4の端末装置2は、刺繍模様を編集中に、予め縫製データをミシン1に送信しておき、編集完了後に別途編集データをミシン1に送信する。端末装置2は、縫製データの送信を、刺繍模様の編集完了前に開始している。したがって、端末装置2は、従来よりも早く縫製データの送信を開始し、ミシン1は、従来よりも早く縫製データの受信を開始しているため、縫製データの容量が比較的大きい場合でも、編集完了後から縫製開始までのユーザの待機時間を削減できる。
【0044】
S7の処理は、S3の処理で、縫製データの取得が完了した後に実行開始される。S8の処理はS7で縫製データの少なくとも一部をミシン1に転送する処理を実行開始後に開始される。システム4の端末装置2は、縫製データの送信を、S8で編集受付処理の開始前に開始することで、編集受付処理の開始後に縫製データの送信が開始される場合に比べ、縫製データ送信開始を早くすることができる。
【0045】
ミシン1は、S34の処理で縫製データの受信が完了し、S38の処理で編集データの受信が未完了の場合に、編集データの受信完了まで縫製を開始する処理を実行せず、縫製データと編集データとの各々を受信完了後に縫製を開始する処理を実行する(S47)。システム4の端末装置2は、編集データが表す編集内容が反映されずに、刺繍模様が縫製されることを回避できる。
【0046】
ミシン1のCPU61は、針落ち位置データを、編集データに基づいて補正した補正データを生成する(S41)。CPU61は、S47の処理で、S41で生成された補正データに基づき、刺繍模様を縫製する。システム4のミシン1は、補正データに基づき刺繍模様を縫製するので、編集データが比較的複雑な編集を指示する場合であっても、補正データを生成しない場合に比べ、簡単な処理で、編集データに基づき編集した刺繍模様を縫製できる。
【0047】
編集データは、刺繍模様の大きさを示すサイズデータを含む。ミシン1のCPU61は、S41の処理で、針落ち位置データと、サイズデータとに基づいて、サイズデータで示される大きさの刺繍模様を縫製する補正データを生成する。システム4のミシン1は、針落ち位置データと、サイズデータとに基づいて補正データが生成されない場合に比べ、サイズデータで示される大きさの刺繍模様を縫製する処理を簡単にできる。ミシン1は、刺繍模様の大きさを指定不能な場合に比べ、刺繍模様の編集の自由度を向上できる。
【0048】
編集データは、基準角度に対する刺繍模様の角度を示す角度データを含む。ミシン1のCPU61は、S41の処理で、針落ち位置データと、角度データとに基づいて、角度データで示される角度の刺繍模様を縫製する補正データを生成する。システム4のミシン1は、針落ち位置データと、角度データとに基づいて補正データが生成されない場合に比べ、角度データで示される角度の刺繍模様を縫製する処理を簡単にできる。ミシン1は、基準角度に対する刺繍模様の角度を指定不能な場合に比べ、刺繍模様の編集の自由度を向上できる。
【0049】
編集データは、基準位置に対する刺繍模様の位置を示す位置データを含む。ミシン1のCPU61は、S41の処理で、針落ち位置データと、位置データとに基づいて、位置データで示される位置に刺繍模様を縫製する補正データを生成する。システム4のミシン1は、針落ち位置データと、位置データとに基づいて補正データが生成されない場合に比べ、位置データで示される位置に刺繍模様を縫製する処理を簡単にできる。ミシン1は、基準位置に対する刺繍模様の位置を指定不能な場合に比べ、刺繍模様の編集の自由度を向上できる。
【0050】
CPU21は、S8の処理を開始後、刺繍模様の縫製を中止する中止指示を取得した場合に、(S11:YES)、ミシン1に中止指示を送信する(S12)。CPU61は、中止指示を受信した場合(S35:YES)、端末装置2から受信済みのデータを無効化し(S36)、受信済みのデータに基づくS47の処理を実行しない。システム4のミシン1は、中止指示が取得された場合に、既にミシン1に送信された縫製データに基づき刺繍模様が縫製されることを回避できる。
【0051】
S3の処理で取得される縫製データは糸の色を示す糸色データを含む。CPU61は、S7の処理は、S3の処理が終了後、S8の処理を終了する前に、縫製データの内の針落ち位置データの少なくとも一部をミシン1に送信し(S7)、糸色データはミシン1に送信しない。端末装置2のCPU21は、糸色データに基づき、縫製に使用される糸の色を報知する処理を実行する(S16、S23)。システム4の端末装置2は、糸色データを送信しない分、ミシン1に送信する縫製データの容量を小さくできる。ユーザは、ミシン1に装着するべき糸色を、表示部28に表示されたメッセージ89により確認できる。
【0052】
本発明の縫製システム、縫製データ送信プログラム、及びミシンは、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。例えば、以下の変形が適宜加えられてもよい。
【0053】
本発明は種々の態様で実行可能であり、例えば、縫製データ送信プログラムを記憶した非一時的コンピュータ可読媒体、縫製システムで実行される縫製方法、及び端末装置の装置制御部により実行される縫製データ送信方法、及びミシン1で実行される縫製制御方法等の形態で実現されてもよい。システム4は、サーバ3を備えていてもよい。ミシン1と端末装置2との通信方式は、無線通信でもよいし、有線通信でもよい。
【0054】
(A)ミシン1の構成は適宜変更してよい。ミシン1は、刺繍縫製可能であればよく工業用ミシン、多針ミシン、職業用の刺繍ミシンであってもよい。端末装置2の構成は、適宜変更されてよく、例えば、PC、スマートフォン等でもよい。ミシン1は、表示部及び入力部の少なくとも何れかを備えてもよい。端末装置2の表示部28は、画像を表示可能であればよく、例えば、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、プラズマチューブアレイディスプレイ、電気泳動等を利用した電子ペーパーディスプレイ等でもよい。端末装置2の入力部29は、タッチスクリーンの他、キーボード、マウス、及びジョイスティック等でもよい。
【0055】
(B)図3及び図5の処理を実行させるための指令を含むプログラムは、システム4が有する端末装置2のCPU21、及びミシン1のCPU61の各々が、対応するプログラムを実行するまでに、各装置の記憶機器に記憶されればよい。従って、プログラムの取得方法、取得経路及びプログラムを記憶する機器の各々は、適宜変更してもよい。各装置が実行するプログラムは、ケーブル又は無線通信を介して、他の装置から受信し、記憶部等の記憶装置に記憶されてもよい。他の装置は、例えば、PC、及びネットワーク網を介して接続されるサーバを含む。
【0056】
(C)端末処理の各ステップは、CPU21によって実行される例に限定されず、一部又は全部が他の電子機器(例えば、ASIC)によって実行されてもよい。同様に、ミシン処理の各ステップは、CPU61によって実行される例に限定されず、一部又は全部が他の電子機器によって実行されてもよい。端末処理、及びミシン処理の各ステップは、複数の電子機器(例えば、複数のCPU)によって分散処理されてもよい。端末処理、及びミシン処理の各ステップは、必要に応じて順序の変更、ステップの省略、及び追加が可能である。端末処理、及びミシン処理に、以下の変更が適宜加えられてもよい。
【0057】
端末装置2のCPU21は、S3で縫製データを取得する処理を開始後、縫製データの取得が終わっていない段階で、S7の処理を開始してもよい。ミシン1のCPU61は、S13の処理を開始後、S13の処理が終わっていない段階で、S47の処理を開始してもよい。例えば、部分模様毎に編集データが設定される場合、縫製順序が一番目の部分縫製データの編集データがあれば、縫製順序が二番目の部分縫製データの編集データの受信が完了していなくても、編集データに基づき補正した補正データで縫製が可能である。このため、CPU61は、縫製順序が一番目の部分縫製データの編集データの受信が完了した時点で、一番目の部分縫製データと編集データとに基づき、編集操作に応じて編集された縫製順序が一番目の部分模様を縫製してもよい。
【0058】
CPU61は、補正データを生成せずに、S47で縫製データと、編集データとに基づき、編集された刺繍模様を縫製してもよい。例えば、編集操作に応じて、刺繍模様の位置だけを編集する場合、且つ、針落ち位置データが絶対座標ではなく、縫製順序が一つ前の針落ち点に対する相対的な座標(移動量)を示す場合には、CPU61は、S38で受信された編集データに基づき、縫製開始位置に移動後、S34で受信開始された縫製データに従って縫製すれば、補正データを生成せずとも、編集された位置に刺繍模様を縫製できる。
【0059】
CPU21は、S10、S11の処理を省略し、中止指示の入力を受け付けなくてもよい。その場合、CPU61は、S35、S36の処理を省略してもよい。S36で、データを無効化する処理は適宜変更されてよく、CPU61は、次回のS34、S38で受信される縫製データ及び編集データにより、受信済みの縫製データ及び編集データを上書きして無効化してもよいし、削除候補のフォルダに移動することで無効化してもよい。
【0060】
編集操作は、適宜変更されてよい。例えば、CPU21は、角度変更、位置の変更、又は大きさの変更を指示するキーの選択を検出することで、編集操作を受け付けてもよい。編集操作に応じた編集の種類は適宜変更されてよく、例えば、編集データは、角度データ、位置データ、及びサイズデータの中から選択された一以上のデータを含むデータであってもよい。CPU61は、糸色の変更を受け付けてもよく、その場合、編集データは、糸色データを含む必要はない。端末装置2のCPU21は、糸色データを含む縫製データをミシン1に送信してもよい。ミシン1が表示部を有する場合には、縫製順序が次の糸の糸色を表示する処理は、端末装置2ではなく、ミシン1において実行されてよい。CPU21は、一の刺繍模様の縫製データ及び編集データをミシン1に送信し、ミシン1で縫製データ及び編集データに基づき、編集された刺繍模様を縫製する処理が実行されている間に、次の刺繍模様についての端末処理を実行してもよい。端末装置2が、スピーカを備える場合、CPU21は、S16、S23の処理で、糸色を音声で報知してもよい。
【0061】
上記変形例は矛盾のない範囲で適宜組み合わされてもよい。本願出願人は、特許請求の範囲において例示された組み合わせに加え、本発明の要旨を逸脱しない範囲、且つ、矛盾が生じない範囲で互いに組み合わされた態様についても特許権を取得する意思を有する。
【符号の説明】
【0062】
1:ミシン、2:端末装置、3:サーバ、4:システム、5:ネットワーク、21、31、61:CPU、24、64:記憶部、25、30、35、67:通信部、28:表示部、29:入力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6