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特開2024-143192射出成形システムの制御方法および射出成形システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143192
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】射出成形システムの制御方法および射出成形システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20241003BHJP
   B29C 45/42 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055731
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】新原 裕司
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AM05
4F202AM07
4F202AM08
4F202AM19
4F202CA11
4F202CB01
4F202CM11
4F202CM90
4F206AM05
4F206AM07
4F206AM08
4F206AM19
4F206JA07
4F206JL02
4F206JP01
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP15
4F206JP30
4F206JQ81
4F206JQ88
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】安全性と品質維持とを両立することのできる射出成形システムの制御方法および射出成形システムを提供すること。
【解決手段】射出成形システムの制御方法は、第1収容空間および第1収容空間に繋がる第1窓を備える第1筐体と、第1収容空間に配置されている射出成形機と、第1筐体と連結され、第1収容空間に繋がる第2収容空間および第2収容空間に繋がる第2窓を備える第2筐体と、第2収容空間に配置され、射出成形機が成形した成形品に対して作業するロボットと、射出成形機およびロボットの駆動を制御する制御装置と、を備える射出成形システムの制御方法であって、第1窓および第2窓が閉じられた第1状態では射出成形機を第1駆動モードで駆動し、第1窓が開いた第2状態では射出成形機を停止し、第2窓が開いた第3状態では射出成形機を第1駆動モードと異なる第2駆動モードで駆動する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1収容空間および前記第1収容空間に繋がる第1窓を備える第1筐体と、
前記第1収容空間に配置されている射出成形機と、
前記第1筐体と連結され、前記第1収容空間に繋がる第2収容空間および前記第2収容空間に繋がる第2窓を備える第2筐体と、
前記第2収容空間に配置され、前記射出成形機が成形した成形品に対して作業するロボットと、
前記射出成形機および前記ロボットの駆動を制御する制御装置と、を備える射出成形システムの制御方法であって、
前記第1窓および前記第2窓が閉じられた第1状態では前記射出成形機を第1駆動モードで駆動し、
前記第1窓が開いた第2状態では前記射出成形機を停止し、
前記第2窓が開いた第3状態では前記射出成形機を前記第1駆動モードと異なる第2駆動モードで駆動することを特徴とする射出成形システムの制御方法。
【請求項2】
前記第1状態では、前記ロボットを駆動し、
前記第2状態および前記第3状態では、それぞれ、前記ロボットを停止する請求項1に記載の射出成形システムの制御方法。
【請求項3】
前記第2駆動モードは、前記第1駆動モードに対して単位時間当たりの成形品の成形数が少ない請求項1または2に記載の射出成形システムの制御方法。
【請求項4】
前記射出成形機は、固定型と、前記固定型に対して移動し前記固定型との間に溶融樹脂を流し込む空間を形成する可動型と、を備える成形型を有し、
前記第2駆動モードは、前記第1駆動モードに対して可動型の移動速度が遅い請求項3に記載の射出成形システムの制御方法。
【請求項5】
前記射出成形機は、溶融樹脂を流し込む空間を有する成形型を有し、
前記第2駆動モードは、前記第1駆動モードに対して前記成形型の温度が高い請求項3に記載の射出成形システムの制御方法。
【請求項6】
前記射出成形機は、溶融樹脂を流し込む空間を有する成形型を有し、
前記第2駆動モードは、前記第1駆動モードに対して前記成形型に流し込む前記溶融樹脂の温度が異なる請求項3に記載の射出成形システムの制御方法。
【請求項7】
前記射出成形機は、溶融樹脂を流し込む空間を有する成形型を有し、
前記第1駆動モードでは、前記成形品を前記成形型から離型し、
前記第2駆動モードでは、前記成形品を前記成形型から落下させる請求項1または2に記載の射出成形システムの制御方法。
【請求項8】
前記第3状態が所定時間継続された場合、前記射出成形機を停止する請求項1または2に記載の射出成形システムの制御方法。
【請求項9】
前記射出成形システムは、前記第2収容空間側から前記射出成形機側に侵入する侵入物を検知する検知部を有し、
前記第3状態において前記検知部が前記侵入物を検知した場合、前記射出成形機を停止する請求項1に記載の射出成形システムの制御方法。
【請求項10】
第1収容空間および前記第1収容空間に繋がる第1窓を備える第1筐体と、
前記第1収容空間に配置されている射出成形機と、
前記第1筐体と連結され、前記第1収容空間に繋がる第2収容空間および前記第2収容空間に繋がる第2窓を備える第2筐体と、
前記第2収容空間に配置され、前記射出成形機が成形した成形品に対して作業するロボットと、
前記射出成形機および前記ロボットの駆動を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1窓および前記第2窓が閉じられた第1状態では前記射出成形機を第1駆動モードで駆動し、
前記第1窓が開いた第2状態では前記射出成形機を停止し、
前記第2窓が開いた第3状態では前記射出成形機を前記第1駆動モードと異なる第2駆動モードで駆動することを特徴とする射出成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形システムの制御方法および射出成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、射出成形機とロボットとを備えた射出成形システムが開示されている。このような射出成形システムでは、ロボットの動作範囲を囲う射出成形機カバーが設けられており、射出成形機カバーが開かれると、ロボットおよび射出成形機の動作を停止させる。これにより、射出成形システムの安全性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-083823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、射出成形機カバーが開かれたときにロボットだけでなく射出成形機の動作が停止してしまうと、射出成形機内に材料である樹脂が留まってしまい、樹脂の温度が適正温度範囲を外れてしまったり、樹脂が変質したりし、射出成形機の動作を再開した後の成形品の品質が低下するおそれがある。したがって、特許文献1の射出成形システムでは、射出成形システムの安全性と品質維持との両立が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の射出成形システムの制御方法は、第1収容空間および前記第1収容空間に繋がる第1窓を備える第1筐体と、
前記第1収容空間に配置されている射出成形機と、
前記第1筐体と連結され、前記第1収容空間に繋がる第2収容空間および前記第2収容空間に繋がる第2窓を備える第2筐体と、
前記第2収容空間に配置され、前記射出成形機が成形した成形品に対して作業するロボットと、
前記射出成形機および前記ロボットの駆動を制御する制御装置と、を備える射出成形システムの制御方法であって、
前記第1窓および前記第2窓が閉じられた第1状態では前記射出成形機を第1駆動モードで駆動し、
前記第1窓が開いた第2状態では前記射出成形機を停止し、
前記第2窓が開いた第3状態では前記射出成形機を前記第1駆動モードと異なる第2駆動モードで駆動する。
【0006】
本発明の射出成形システムは、第1収容空間および前記第1収容空間に繋がる第1窓を備える第1筐体と、
前記第1収容空間に配置されている射出成形機と、
前記第1筐体と連結され、前記第1収容空間に繋がる第2収容空間および前記第2収容空間に繋がる第2窓を備える第2筐体と、
前記第2収容空間に配置され、前記射出成形機が成形した成形品に対して作業するロボットと、
前記射出成形機および前記ロボットの駆動を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1窓および前記第2窓が閉じられた第1状態では前記射出成形機を第1駆動モードで駆動し、
前記第1窓が開いた第2状態では前記射出成形機を停止し、
前記第2窓が開いた第3状態では前記射出成形機を前記第1駆動モードと異なる第2駆動モードで駆動する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る射出成形システムを示す正面図である。
図2】射出成形システムの内部を示す上面図である。
図3】射出成形機の断面図である。
図4】成形型から成形品を離型する動作を説明するための断面図である。
図5】成形型から成形品を離型する動作を説明するための断面図である。
図6】成形型から成形品を離型する動作を説明するための断面図である。
図7】射出成形システムの制御方法を説明するためのフローチャートである。
図8】第2実施形態に係る射出成形システムの制御方法を説明するための断面図である。
図9】第2実施形態に係る射出成形システムの制御方法を説明するための断面図である。
図10】第3実施形態に係る射出成形システムが備える射出成型機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の射出成形システムの制御方法および射出成形システムを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0009】
なお、図7を除く各図に、互いに直交する3軸であるX軸、Y軸およびZ軸を示す。以下では、X軸に沿う方向をX軸方向、Y軸に沿う方向をY軸方向、Z軸に沿う方向をZ軸方向とも言う。また、各軸の矢印側を「プラス側」とも言い、矢印と反対側を「マイナス側」とも言う。また、Z軸方向プラス側を「上」、マイナス側を「下」とも言う。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る射出成形システムを示す正面図である。図2は、射出成形システムの内部を示す上面図である。図3は、射出成形機の断面図である。図4ないし図6は、それぞれ、成形型から成形品を離型する動作を説明するための断面図である。図7は、射出成形システムの制御方法を説明するためのフローチャートである。
【0011】
図1に示すように、射出成形システム1は、筐体2を有する。筐体2は、第1筐体21と、第1筐体21のX軸方向プラス側に連結する第2筐体22と、第1筐体21のX軸方向マイナス側に連結する第3筐体23と、を有する。つまり、第1筐体21の両側に第2筐体22および第3筐体23が配置されている。
【0012】
また、第1筐体21は、第1収容空間S1と、Y軸方向マイナス側の側面である前面に配置され第1収容空間S1に繋がる第1窓211と、を有する。また、第1窓211は、2枚の扉を有する観音開き型(両開き型)の扉である。また、第1窓211の少なくとも一部が透明ガラス、透明プラスチック等の光透過性部材で構成されており、第1窓211から第1収容空間S1内を目視可能になっている。また、第1筐体21には第1窓211の開閉を検知する図示しないセンサーが設けられている。
【0013】
また、第1筐体21は、第1収容空間S1の下に基台部212を有する。基台部212は、立方体状の基台枠、基台枠の上に固定される板状の上板部213および基台枠の下側に固定される底板部から構成される。基台枠および底板部は、図示しない。また、第1筐体21は、基台部212の上板部213に設けられ、Y軸方向プラス側の側面とZ軸方向プラス側の面である上面とを覆うカバー214を有する。第1収容空間S1は、第1窓211、上板部213およびカバー214により仕切られる。また、カバー214も、第1窓211と同様に少なくとも一部が光透過性部材で構成されている。
【0014】
また、第2筐体22は、第1筐体21に対して着脱可能であり、ボルト等の各種金具を用いて第1筐体21に連結されている。第2筐体22は、第2収容空間S2と、前面に配置され第2収容空間S2に繋がる第2窓221と、を有する。また、第2窓221は、1枚の扉を有する片開き型の扉である。また、第2窓221の少なくとも一部が透明ガラス、透明プラスチック等の光透過性部材で構成されており、第2窓221から第2収容空間S2内を目視可能になっている。また、第2筐体22には第2窓221の開閉を検知する図示しないセンサーが設けられている。
【0015】
また、第2筐体22は、第2収容空間S2の下に基台部222を有する。基台部222は、立方体状の基台枠、基台枠の上に固定される板状の上板部223および基台枠の下側に固定される底板部から構成される。基台枠および底板部は、図示しない。また、第2筐体22は、基台部222の上板部223に設けられ、Y軸方向プラス側およびX軸方向プラス側の側面とZ軸方向プラス側の面である上面とを覆うカバー224を有する。第2収容空間S2は、第2窓221、上板部223およびカバー224により仕切られる。また、カバー224も、第2窓221と同様に少なくとも一部が光透過性部材で構成されている。
【0016】
また、第3筐体23は、第1筐体21に対して着脱可能であり、ボルト等の各種金具を用いて第1筐体21に連結されている。第3筐体23は、第3収容空間S3と、前面に配置され第3収容空間S3に繋がる第3窓231と、を有する。また、第3窓231は、1枚の扉を有する片開き型の扉である。また、第3窓231は、第1窓211および第2窓221とは異なり、実質的に光を透過せず、第3窓231を介して第3収容空間S3内を目視することができない。つまり、第3収容空間S3は、第3窓231によって目隠しされている。また、第3筐体23には第3窓231の開閉を検知する図示しないセンサーが設けられている。
【0017】
また、第3筐体23は、第3収容空間S3の下に基台部232を有する。基台部232は、立方体状の基台枠、基台枠の上に固定される板状の上板部233および基台枠の下側に固定される底板部から構成される。基台枠および底板部は、図示しない。また、第3筐体23は、基台部232の上板部233に設けられ、Y軸方向プラス側およびX軸方向マイナス側の側面とZ軸方向プラス側の面である上面とを覆うカバー234を有する。第3収容空間S3は、第3窓231、上板部233およびカバー234により仕切られる。また、カバー234も、第3窓231と同様に実質的に光を透過せず、第3収容空間S3の目隠しとなっている。
【0018】
また、第1筐体21および第2筐体22には第1収容空間S1と第2収容空間S2とを仕切る壁がなく、第1筐体21および第3筐体23には第1収容空間S1と第3収容空間S3とを仕切る壁がない。そのため、筐体内において第1収容空間S1、第2収容空間S2および第3収容空間S3が互いに繋がって1つの大きな収容空間S0が形成されている。つまり、射出成形システム1では1つの収容空間S0が第1、第2、第3筐体21、22、23によって囲まれている。そのため、収容空間S0への塵、埃等の異物の侵入、作業者の誤侵入等を抑制することができる。したがって、高品質な成形品MDを製造することができ、かつ、高い安全性を有する射出成形システム1となる。また、第1、第2、第3窓211、221、231を開くことにより収容空間S0内に容易にアクセスできるため、収容空間S0内に配置された各種機器のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0019】
以上、筐体2について説明した。なお、図示しないが筐体2には車輪およびストッパーが備えられており、車輪を用いて射出成形システム1を任意の設置場所に移動させ、ストッパーを用いて当該場所に固定することができる。
【0020】
次に、収容空間S0に配置された各種機器について説明する。図2に示すように、収容空間S0には、成形品MDを成形する射出成形機3と、射出成形機3への給材を行う材料供給装置4と、射出成形機3で成形された成形品MDを射出成形機3から取り出す取出装置5と、取出装置5により取り出された成形品MDを搬送する搬送装置6と、成形品MDの外観検査を行う検査装置7と、検査装置7で検査された検査済の成形品MDを回収するスタッキング装置8と、搬送装置6から検査装置7への成形品MDの搬送および検査装置7からスタッキング装置8への成形品MDの搬送を行うロボット9と、侵入物を検知する検知部としてのセンサー10と、を有する。また、第1筐体21の基台部212には、これら各部の駆動を制御する制御装置11を有する。以下、これら各機器について順に説明する。
【0021】
≪材料供給装置4≫
材料供給装置4は、射出成形機3に樹脂材料を供給する装置である。図2に示すように、材料供給装置4は、第3収容空間S3に配置され、第3筐体23の上板部233に固定されている。このような材料供給装置4は、材料乾燥機41と、材料供給部42と、を有する。材料乾燥機41には射出成形機3で用いられるペレット状の樹脂材料が蓄えられる。材料乾燥機41に貯留された材料は、材料乾燥機41内で除湿および乾燥され、材料供給部42によって射出成形機3が有する後述するホッパー30に圧送される。
【0022】
≪射出成形機3≫
射出成形機3は、材料供給装置4から供給された樹脂材料から成形品MDを成形する装置である。図2に示すように、射出成形機3は、第1収容空間S1に配置され、第1筐体21の上板部213に固定されている。また、射出成形機3は、材料供給装置4のX軸方向プラス側に位置している。このような射出成形機3は、横型の射出成形機であり、ホッパー30と、可塑化装置31と、射出制御機構32と、成形型33と、型締装置34と、押出機構35と、回収ボックス36と、を有する。
【0023】
図3に示すように、可塑化装置31は、フラットスクリュー311と、バレル312と、ヒーター313と、ノズル314と、スクリュー駆動部315と、を有する。フラットスクリュー311は、スクリュー駆動部315により回転軸RXまわりに回転する。バレル312の中心には連通孔316が形成されている。また、ヒーター313は、バレル312に埋設されている。また、連通孔316にはノズル314が繋がっており、ノズル314の周囲には図示しないヒーターが配置されている。ヒーターの駆動を制御することにより、ノズル314の温度が調整される。
【0024】
ホッパー30は、材料供給装置4から圧送された樹脂材料をフラットスクリュー311に供給する。フラットスクリュー311に供給された樹脂材料は、フラットスクリュー311の回転とヒーター313の加熱とによってフラットスクリュー311とバレル312との間で溶融されながら連通孔316から射出制御機構32へと導かれる。
【0025】
射出制御機構32は、射出シリンダー321と、プランジャー322と、プランジャー駆動部323と、を有する。射出シリンダー321は、連通孔316に接続された円筒状の部材であり、その内部にプランジャー322が配置されている。プランジャー322は、プランジャー駆動部323により射出シリンダー321の内部を摺動し、連通孔316から射出シリンダー321内に導かれた溶融樹脂をノズル314から成形型33に圧送する。
【0026】
成形型33は、「金型」とも呼ばれ、ノズル314に接続された固定型332と、固定型332に対してX軸方向に移動する可動型331と、を有する。固定型332と可動型331は、X軸方向に正対して設けられ、その間に成形品MDの形状に応じた空間であるキャビティーCが形成される。また、図示しないが、成形型33には、成形型33の温度を一定に保ち、キャビティーC内の成形品MDを冷却する成形型温調装置が接続されている。射出制御機構32によって圧送された溶融樹脂がノズル314からキャビティーCに射出され、キャビティーC内で溶融樹脂が冷却されて硬化することにより、成形品MDが形成される。
【0027】
このような成形型33は、型締装置34によって開閉される。型締装置34は、可動型331に結合されたボールネジ342と、ボールネジ342を回転させる成形型駆動部341と、を有する。そして、成形型駆動部341によりボールネジ342を回転させると、ボールネジ342に結合された可動型331が固定型332に対して移動し、成形型33が開閉する。
【0028】
また、成形型33内の成形品MDは、押出機構35によって成形型33から離型される。押出機構35は、エジェクターピン351と、支持板352と、支持棒353と、バネ354と、押出板355と、スラストベアリング356と、を有する。エジェクターピン351は、可動型331を貫通して設けられており、支持板352に固定されている。支持棒353は、支持板352に固定されており、可動型331に形成された貫通孔に挿通されている。バネ354は、可動型331と支持板352との間に配置され、支持棒353に挿入されている。バネ354は、成形時においてエジェクターピン351の頭部がキャビティーCの壁面の一部をなすように支持板352を付勢する。押出板355は、支持板352に固定されている。スラストベアリング356は、押出板355に取り付けられている。
【0029】
図4ないし図6に示すように、ボールネジ342を駆動して可動型331を固定型332に対してX軸方向プラス側に移動させると、ボールネジ342がスラストベアリング356に接触し、エジェクターピン351は、それ以上X軸方向プラス側に移動しなくなる。その状態で、さらに、可動型331をX軸方向プラス側に移動させると、エジェクターピン351が成形品MDに接触した状態で、可動型331のみがX軸方向プラス側に移動するため、エジェクターピン351がキャビティーC内に突出して成形品MDを押し出し、成形品MDが可動型331から離型される。
【0030】
図2に示すように、回収ボックス36は、成形型33の直下に配置されており、可動型331から意図せずに落下した、または、意図的に落下させた成形品MDを回収する。
【0031】
≪取出装置5≫
取出装置5は、可動型331から離型した成形品MDを成形型33から取り出すための装置である。図2に示すように、取出装置5は、第1収容空間S1に配置され、第1筐体21の上板部213に固定されている。また、取出装置5は、射出成形機3の手前側つまりY軸方向マイナス側に位置している。
【0032】
このような取出装置5は、成形品MDを吸着把持するハンド51と、ハンド51を動かすステージ52と、を有する。また、ステージ52は、第1筐体21に対してX軸方向にスライドするX軸ステージ52xと、X軸ステージ52xに対してY軸方向にスライドするY軸ステージ52yと、Y軸ステージ52yに対してY軸まわりに回転する回転ステージ52θと、を有し、回転ステージ52θにハンド51が固定されている。
【0033】
成形が終了して成形型33が開くと、ステージ52の駆動によりハンド51が可動型331と固定型332との間に侵入し、さらに、可動型331から離型した成形品MDを吸着保持する。次に、ステージ52の駆動によりハンド51が可動型331と固定型332との間から退避し、さらに、成形品MDを搬送装置6に受け渡すための位置姿勢となる。
【0034】
≪搬送装置6≫
搬送装置6は、取出装置5が取り出した成形品MDを搬送する。図2に示すように、搬送装置6は、第1収容空間S1に配置され、第1筐体21の上板部213に固定されている。また、搬送装置6は、取出装置5のX軸方向プラス側に位置している。
【0035】
このような搬送装置6は、成形品MDを載置する載置台61と、載置台61をX軸方向にスライドさせるステージ62と、を有する。ステージ62は、載置台61を取出装置5から成形品MDを受け取る第1ポジションと、載置台61上の成形品MDをロボット9に渡すための第2ポジションとの間で往復移動させる。つまり、第1ポジションで取出装置5から成形品MDを受け取る工程と、第2ポジションで成形品MDをロボット9に受け渡す工程と、を繰り返す。これにより、成形品MDの受け取りと受け渡しとが繰り返し行われる。
【0036】
≪検査装置7≫
検査装置7は、成形品MDの外観検査を行う装置である。図2に示すように、検査装置7は、第2収容空間S2に配置され、第2筐体22の上板部223に固定されている。このような検査装置7は、成形品MDを載置する検査台71と、検査台71をY軸方向にスライドさせるステージ72と、検査台71上の成形品MDを撮像するカメラ73と、カメラ73をX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動させるステージ75と、カメラ73が取得した画像データに基づいて成形品MDの外観を検査する検査部74と、を有する。
【0037】
カメラ73は、支柱に取り付けられており、検査台71よりも上に位置している。支柱は、上板部223に固定されるとともに少なくともX軸方向に移動する移動機構を備えている。
【0038】
ステージ72は、検査台71をカメラ73の下方に位置する第1ポジションとカメラ73からY軸方向マイナス側にずれてスタッキング装置8に近い第2ポジションとの間で往復移動させる。このように、検査台71が第1ポジションおよび第2ポジションを移動することで、ロボット9の搬送時間を短くするとともに、ロボット9とカメラ73とが接近しなくなり、ロボット9とカメラ73の干渉を防止できる。
【0039】
このような検査装置7では、まず、第2ポジションの検査台71にロボット9によって成形品MDが載置される。次に、検査台71が第1ポジションに移動すると共に、カメラ73が撮像に適した位置に移動する。次に、カメラ73が検査台71上の成形品MDを上から撮像し、カメラ73の撮像が終了すると、検査台71が再び第2ポジションに移動する。次に、カメラ73が取得した画像データに基づいて検査部74が成形品MDの外観を検査し、良品/不良品を判定する。検査部74によって良品と判定された成形品MDは、ロボット9によってスタッキング装置8に搬送され、不良品と判定された成形品MDは、ロボット9によって第2筐体22に設けられた図示しない不良品排出領域に排出される。
【0040】
≪スタッキング装置8≫
スタッキング装置8は、検査装置7で良品と判定された成形品MDを収容するトレイTを積み重ねる装置である。図2に示すように、スタッキング装置8は、第2収容空間S2に配置され、第2筐体22の基台部222に固定されている。また、スタッキング装置8は、検査装置7の手前側つまりY軸方向マイナス側に位置している。
【0041】
このようなスタッキング装置8は、第1昇降装置81と、第2昇降装置82と、を有する。第2昇降装置82には、空のトレイTが積み重ねられており、第2昇降装置82の最上段にある空のトレイTが図示しないスライド機構によって第1昇降装置81の最上段に移動する。そして、第1昇降装置81の最上段に位置するトレイTに良品の成形品MDが所定数配置されると、第1昇降装置81によってそのトレイTが一段下降すると共に、再び第2昇降装置82の最上段にある空のトレイTが第1昇降装置81の最上段に移動する。これを繰り返すことで、良品の成形品MDを回収する。
【0042】
≪ロボット9≫
ロボット9は、搬送装置6で搬送された成形品MDを検査装置7に搬送し、検査装置7で検査された成形品MDをスタッキング装置8に搬送する。ロボット9は、第2収容空間S2に配置され、第2筐体22の上板部223に固定されている。また、ロボット9は、射出成形機3と検査装置7との間に位置している。
【0043】
このようなロボット9は、スカラロボット(水平多関節ロボット)であり、第2筐体22に固定されたベース90と、ベース90に対して回動する第1アーム91と、第1アーム91に対して回動する第2アーム92と、第2アーム92の先端部に配置されたスプラインシャフト93と、を有する。スプラインシャフト93は、第2アーム92に対し、その中心軸まわりに回転可能で、かつ、中心軸に沿って昇降可能である。また、スプラインシャフト93の下端部には、成形品MDを吸着保持するハンド94が装着されている。
【0044】
ロボット9は、第2ポジションの載置台61上の成形品MDを吸着保持し、第2ポジションの検査台71に載置する。そして、検査装置7によって検査され、再び第2ポジションに戻ってきた検査台71にある良品と判定された成形品MDを吸着保持して第1昇降装置81上のトレイに載置する。また、検査台71に不良品と判定された成形品MDがある場合は、不良品と判定された成形品MDを吸着保持して不良品排出領域に排出する。このようにして第2ポジションの検査台71が空になったら、再び第2ポジションにある載置台61上の成形品MDを吸着保持し、第2ポジションの検査台71に載置する。このような動作を繰り返すことにより、検査装置7での外観検査が繰り返し行われる。
【0045】
以上、ロボット9について説明したが、ロボット9は、上述の動きをすることができれば特に限定されず、例えば、6軸ロボット(垂直多関節ロボット)であってもよい。
【0046】
≪センサー10≫
センサー10は、図2に示すように、第1収容空間S1と第2収容空間S2との境界付近に配置されており、第2収容空間S2側から射出成形機3側に侵入する侵入物、具体的には作業者の腕や手を検知する。このようなセンサー10としては、例えば、レーザーセンサー、カメラセンサー等を用いることができる。センサー10は、例えば、上板部213または上板部223に固定される。他にも、センサー10は、カバー214またはカバー224に固定されていてもよい。
【0047】
≪制御装置11≫
制御装置11は、第1筐体21の基台部212内に収納され、射出成形機3、材料供給装置4、取出装置5、搬送装置6、検査装置7、スタッキング装置8、ロボット9およびセンサー10の駆動をそれぞれ連動させて制御する。このような制御装置11は、例えば、コンピューターから構成され、情報を処理するプロセッサー(CPU)と、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部装置との接続を行う外部インターフェースと、を有する。メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶された各種プログラム等を読み込んで実行することができる。
【0048】
なお、制御装置11は、射出成形機3、材料供給装置4、取出装置5、搬送装置6、検査装置7、スタッキング装置8、ロボット9およびセンサー10毎に分かれて構成されていてもよい。つまり、制御装置11は、射出成形機3の駆動を制御する制御部、材料供給装置4の駆動を制御する制御部、取出装置5の駆動を制御する制御部、搬送装置6の駆動を制御する制御部、検査装置7の駆動を制御する制御部、スタッキング装置8の駆動を制御する制御部、ロボット9の駆動を制御する制御部およびセンサー10の駆動を制御する制御部と、これら各制御部を統合する統合制御部と、を有し、統合制御部からの指令に基づいて各制御部が互いに同期して制御対象を制御する構成であってもよい。
【0049】
以上、射出成形システム1の全体構成について説明した。次に、射出成形システム1の制御方法について、図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0050】
制御装置11は、第1窓211、第2窓221および第3窓231が全て閉じられ、安全が確保された第1状態では、射出成形システム1を通常通りに駆動する。つまり、射出成形機3、材料供給装置4、取出装置5、搬送装置6、検査装置7、スタッキング装置8、ロボット9およびセンサー10の各部を通常通りに駆動する。具体的には、材料供給装置4は、射出成形機3に樹脂材料を供給し、射出成形機3は、成形品MDを成形し、取出装置5は、射出成形機3から成形品MDを取り出し、搬送装置6は、取出装置5が取り出した成形品MDを搬送し、ロボット9は、搬送装置6が搬送した成形品MDを検査装置7に移し、検査装置7は、成形品MDを検査し、ロボット9は、良品と判定された成形品MDをスタッキング装置8に運び、不良品と判定された成形品MDを不良品排出領域に運ぶ。なお、以下では、通常状態における射出成形機3の駆動モードを第1駆動モードとも言う。
【0051】
このように第1窓211、第2窓221および第3窓231の全てが閉じられた第1状態で射出成形システム1が駆動している最中に、第1窓211が開いた第2状態となった場合、制御装置11は、「危険度高」と判定し、射出成形システム1を緊急停止する。つまり、射出成形機3、材料供給装置4、取出装置5、搬送装置6、検査装置7、スタッキング装置8およびロボット9の駆動を緊急停止する。なお、第1窓211は、例えば、メンテナンスのために作業者が意図して開ける場合や、振動、衝撃等によって意図せずに開く場合が挙げられる。その後、第1窓211が閉じられた場合、制御装置11は、射出成形機3、材料供給装置4、取出装置5、搬送装置6、検査装置7、スタッキング装置8およびロボット9の駆動を速やかに再開する。これにより、通常状態での駆動が再開される。なお、第1窓211の他に、第2窓221および第3窓231の少なくとも一方が開いている場合も同様の制御を行う。
【0052】
このような制御を行う理由は、次の通りである。第1窓211は、筐体2の中央部に位置し、第1窓211の近くでは、特に射出成形機3およびロボット9が駆動している。そのため、作業者が第1窓211を開け、そこから収容空間S0内に腕や手を伸ばした場合、その腕や手が射出成形機3やロボット9に接触する可能性が高い。射出成形機3には成形型33に手が挟まれたり、成形型33に触れることで火傷したりする危険性があり、ロボット9には高速で動くアームにぶつかって怪我をする危険性がある。そのため、射出成形機3およびロボット9は、他の装置(材料供給装置4、取出装置5、搬送装置6、検査装置7およびスタッキング装置8)と比較して危険性が高い。したがって、この場合、接触の可能性のある射出成形機3およびロボット9の駆動をはじめ、全ての装置の駆動を停止する。これにより、射出成形システム1の安全性を高めることができる。
【0053】
なお、第2状態においても、例えば、検査部74による成形品MDの外観検査等、危険性の少ない作業については、継続して行ってもよい。
【0054】
また、第1窓211、第2窓221および第3窓231の全てが閉じられた第1状態で射出成形システム1が駆動している最中に、第2窓221が開いた第3状態となった場合、制御装置11は、「危険度中」と判定し、射出成形機3および材料供給装置4の駆動を継続する一方で、それ以外の装置つまり取出装置5、搬送装置6、検査装置7、スタッキング装置8およびロボット9の駆動を緊急停止する。なお、第2窓221は、例えば、メンテナンスのために作業者が意図して開ける場合や、振動、衝撃等によって意図せずに開く場合が挙げられる。その後、第2窓221が閉じられた場合、制御装置11は、取出装置5、搬送装置6、検査装置7、スタッキング装置8およびロボット9の駆動を速やかに再開する。これにより、通常状態での駆動が再開される。なお、第2窓221の他に、第3窓231が開いている場合も同様の制御を行う。
【0055】
このような制御を行う理由は、次の通りである。第2窓221は、筐体2のX軸方向プラス側に位置し、第2窓221の近くではロボット9が駆動している。そのため、作業者が第2窓221を開け、そこから収容空間S0に腕や手を伸ばした場合、その腕や手がロボット9に接触する可能性が高い。一方、射出成形機3は、第2窓221から離れているため、作業者の腕や手が射出成形機3に接触する可能性は低い。そのため、接触の可能性の低い射出成形機3の駆動を継続する一方で、接触の可能性の高いロボット9の駆動をはじめ、取出装置5、搬送装置6、検査装置7およびスタッキング装置8についても駆動を停止する。これにより、射出成形システム1の安全性を高めることができる。
【0056】
なお、ハンド51が可動型331と固定型332との間に位置した状態で取出装置5の駆動が停止すると、その後の射出成形機3の駆動が阻害される。そのため、取出装置5については、ハンド51を可動型331と固定型332との間から退避した状態にしてから、その駆動を停止させる。同様に、ロボット9が射出成形機3に干渉する位置で停止すると、その後の射出成形機3の駆動が阻害される。そのため、ロボット9についても、射出成形機3と干渉しない位置に移動させてから、その駆動を停止させる。
【0057】
なお、第3状態において、センサー10が侵入物を検知した場合、制御装置11は、射出成形機3および材料供給装置4の駆動を停止する。これにより、駆動中の射出成形機3に作業者の腕や手が接触するのを効果的に抑制することができ、射出成形システム1の安全性が高まる。
【0058】
また、第1窓211、第2窓221および第3窓231の全てが閉じられた第1状態で射出成形システム1が駆動している最中に、第3窓231が開いた第4状態となった場合、制御装置11は、「危険度低」と判定し、射出成形機3、材料供給装置4、取出装置5、搬送装置6、検査装置7、スタッキング装置8およびロボット9の駆動をそのまま継続する。つまり、通常状態での駆動が継続される。このように、第4状態になっても通常状態での駆動が継続されるため、第4状態になったかの判定ステップは、省略してもよい。
【0059】
このような制御を行う理由は、次の通りである。第3窓231は、筐体2のX軸方向マイナス側に位置し、第3窓231の近くには材料供給装置4が配置されている。材料供給装置4は、作業者が樹脂材料を投入する装置であるため、もともと安全に設計されており、駆動中に触れても怪我等をする可能性は極めて少ない。一方、材料供給装置4以外の装置は、第3窓231から離れているため、作業者の腕や手が材料供給装置4以外の装置に接触する可能性は低い。そのため、射出成形機3、材料供給装置4、取出装置5、搬送装置6、検査装置7、スタッキング装置8およびロボット9の駆動をそのまま継続する。これにより、樹脂材料を材料供給装置4に補充するために第3窓231を開けた状態でも成形品MDの製造が継続され、成形品MDの製造効率が高まる。
【0060】
このように、制御装置11は、第1窓211が開けられた場合、第2窓221が開けられた場合および第3窓231が開けられた場合のうち、第1窓211が開けられた場合のみ射出成形機3の駆動を停止する。そのため、例えば、第1窓211、第2窓221および第3窓231の少なくとも1つが開けられた場合に射出成形機3の駆動を停止する、と言った単純な制御を行う場合と比べて射出成形機3が停止する回数が減る。これにより、成形品MDの生産効率が高まる。また、射出成形機3が停止すると射出成形機3内に溶融樹脂が留まり、それにより溶融樹脂の変質や温度変化が生じ、その後に成形される成形品MDの品質が低下するおそれがある。そのため、射出成形機3が停止する回数を減らすことにより、成形品MDの品質維持を図ることができる。
【0061】
ここで、前述したように、第2窓221が開いている第3状態では制御装置11は、射出成形機3および材料供給装置4の駆動を継続するが、第1駆動モードと異なる第2駆動モードで射出成形機3を駆動する。以下、第2駆動モードについて説明する。
【0062】
第2駆動モードは、例えば、第1駆動モードに対して単位時間当たりの成形品MDの成形数が少ない。つまり、第2駆動モードは、1つの成形品MDを成形するのにかかる時間が第1駆動モードよりも長い。前述したように、本状態では、取出装置5の駆動が停止しているため、射出成形機3から成形品MDを取り出すことができない。取り出されなかった成形品MDは可動型331に支持されたまま残るため、この状態では成形品MDを新たに成形できず、射出成形機3は停止せざるをえない。そのため、取出装置5による取り出しが最後になされた時点から一度しか射出成形機3で成形品MDを成形することができない。そこで、1つの成形品MDを成形するのにかかる時間が第1駆動モードよりも長い第2駆動モードで駆動することにより、開いた第2窓221が閉められるまでの時間を稼ぎ易くなり、1つの成形品MDを新たに成形するまでに第2窓221が閉められる可能性が高まる。そのため、射出成形機3の駆動が停止せずに第2駆動モードから第1駆動モードに復帰する可能性が高まる。その結果、射出成形機3の停止による成形品MDの品質低下を効果的に抑制することができる。
【0063】
第2駆動モードでの単位時間当たりの成形品MDの成形数を、第1駆動モードでの単位時間当たりの成形品MDの成形数よりも少なくする方法としては、特に限定されない。例えば、1つの方法として、第2駆動モードでの成形型33の開閉時における可動型331の移動速度を、第1駆動モードでの成形型33の開閉時における可動型331の移動速度よりも遅くする。これにより、成形型33の開閉に要する時間が長くなり、その分、サイクルタイムが長くなる。このような方法によれば、簡単な制御で、第2駆動モードでの単位時間当たりの成形品MDの成形数を、第1駆動モードでの単位時間当たりの成形品MDの成形数よりも少なくすることができる。
【0064】
また、別の方法として、第2駆動モードでの成形型33の温度を、第1駆動モードでの成形型33の温度よりも高くする。なお、成形型33の温度は、前述した成形型温調装置により調整することができる。これにより、成形型33内で溶融樹脂が硬化するまでの時間が長くなり、その分、サイクルタイムが長くなる。このような方法によれば、簡単な制御で、第2駆動モードでの単位時間当たりの成形品MDの成形数を、第1駆動モードでの単位時間当たりの成形品MDの成形数よりも少なくすることができる。
【0065】
以上の2つの方法は、いずれか1つを選択して用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0066】
また、第2駆動モードでの単位時間当たりの成形品MDの成形数を第1駆動モードでの単位時間当たりの成形品MDの成形数よりも少なくするのと併せて、第2駆動モードにおいて成形型33に流し込む溶融樹脂の温度を第1駆動モードにおいて成形型33に流し込む溶融樹脂の温度と異ならせる。具体的には、第1駆動モードでは溶融樹脂を成形作業に適した温度とし、第2駆動モードでは溶融樹脂の劣化を抑制するのに適した温度とする。これにより、射出成形機3の内部に留まることによる樹脂材料の劣化を抑制することができ、成形品MDの品質維持を図ることができる。なお、第1駆動モードに対して溶融樹脂の温度を上げた方が劣化し難いのか、反対に下げた方が劣化し難いのかは、用いる樹脂材料によって異なるため、用いる樹脂材料によって適宜設定することができる。
【0067】
また、制御装置11は、第3状態が所定時間継続された場合、射出成形機3の駆動を停止する。これにより、射出成形システム1の安全性が増す。また、上述のような制御により溶融樹脂の劣化を抑制しているものの、溶融樹脂が射出成形機3内に長時間留まってしまうと溶融樹脂の劣化を防ぎきれない場合もある。そこで、第3状態が所定時間継続された場合、射出成形機3の駆動を停止することにより、成形品MDの品質の劣化を効果的に抑制することができる。
【0068】
以上、射出成形システム1について説明した。このような射出成形システム1の制御方法は、前述したように、第1収容空間S1および第1収容空間S1に繋がる第1窓211を備える第1筐体21と、第1収容空間S1に配置されている射出成形機3と、第1筐体21と連結され、第1収容空間S1に繋がる第2収容空間S2および第2収容空間S2に繋がる第2窓221を備える第2筐体22と、第2収容空間S2に配置され、射出成形機3が成形した成形品MDに対して作業するロボット9と、射出成形機3およびロボット9の駆動を制御する制御装置11と、を備える射出成形システム1の制御方法であって、第1窓211および第2窓221が閉じられた第1状態では射出成形機3を第1駆動モードで駆動し、第1窓211が開いた第2状態では射出成形機3を停止し、第2窓221が開いた第3状態では射出成形機3を第1駆動モードと異なる第2駆動モードで駆動する。このような制御方法によれば、安全性を確保しつつ、射出成形機3が停止する回数を減らすことができる。そのため、射出成形システム1の安全性と成形品MDの品質維持とを両立することができる。
【0069】
また、前述したように、第1状態ではロボット9を駆動し、第2状態および第3状態ではそれぞれロボット9を停止する。これにより、高い安全性を有する射出成形システム1となる。
【0070】
また、前述したように、第2駆動モードは、第1駆動モードに対して単位時間当たりの成形品MDの成形数が少ない。つまり、第2駆動モードは、1つの成形品MDを成形するのにかかる時間が第1駆動モードよりも長い。これにより、第2窓221が閉められるまでの時間を稼ぎ易くなり、1つの成形品MDを成形するまでに第2窓221が閉められる可能性が高まる。そのため、射出成形機3の駆動が停止せずに第2駆動モードから第1駆動モードに復帰する可能性が高まる。その結果、成形品MDの品質低下を効果的に抑制することができる。
【0071】
また、前述したように、射出成形機3は、固定型332と、固定型332に対して移動し固定型332との間に溶融樹脂を流し込む空間であるキャビティーCを形成する可動型331と、を備える成形型33を有し、第2駆動モードは、第1駆動モードに対して可動型331の移動速度が遅い。これにより、成形型33の開閉に要する時間が長くなり、その分、サイクルタイムが長くなる。このような方法によれば、簡単な制御で、第2駆動モードでの単位時間当たりの成形品MDの成形数を、第1駆動モードでの単位時間当たりの成形品MDの成形数よりも少なくすることができる。
【0072】
また、前述したように、射出成形機3は、溶融樹脂を流し込むキャビティーCを有する成形型33を有し、第2駆動モードは、第1駆動モードに対して成形型33の温度が高い。これにより、成形型33内で溶融樹脂が硬化するまでの時間が長くなり、その分、サイクルタイムが長くなる。このような方法によれば、簡単な制御で、第2駆動モードでの単位時間当たりの成形品MDの成形数を、第1駆動モードでの単位時間当たりの成形品MDの成形数よりも少なくすることができる。
【0073】
また、前述したように、射出成形機3は、溶融樹脂を流し込むキャビティーCを有する成形型33を有し、第2駆動モードは、第1駆動モードに対して成形型33に流し込む溶融樹脂の温度が異なる。具体的には、第1駆動モードでは溶融樹脂を成形作業に適した温度とし、第2駆動モードでは溶融樹脂の劣化を抑制するのに適した温度とする。これにより、射出成形機3の内部に留まる時間が長くなることによる樹脂材料の劣化を抑制することができ、成形品MDの品質維持を図ることができる。
【0074】
また、前述したように、第3状態が所定時間継続された場合、射出成形機3を停止する。これにより、射出成形システム1の安全性が高まると共に、成形品MDの品質の劣化を効果的に抑制することができる。
【0075】
また、前述したように、射出成形システム1は、第2収容空間S2側から射出成形機3側に侵入する侵入物を検知する検知部であるセンサー10を有し、第3状態においてセンサー10が侵入物を検知した場合、射出成形機3を停止する。これにより、射出成形システム1の安全性が高まる。
【0076】
また、前述したように、射出成形システム1は、第1収容空間S1および第1収容空間S1に繋がる第1窓211を備える第1筐体21と、第1収容空間S1に配置されている射出成形機3と、第1筐体21と連結され、第1収容空間S1に繋がる第2収容空間S2および第2収容空間S2に繋がる第2窓221を備える第2筐体22と、第2収容空間S2に配置され、射出成形機3が成形した成形品MDに対して作業するロボット9と、射出成形機3およびロボット9の駆動を制御する制御装置11と、を備えている。そして、制御装置11は、第1窓211および第2窓221が閉じられた第1状態では射出成形機3を第1駆動モードで駆動し、第1窓211が開いた第2状態では射出成形機3を停止し、第2窓221が開いた第3状態では射出成形機3を第1駆動モードと異なる第2駆動モードで駆動する。このような構成によれば、安全性を確保しつつ、射出成形機3が停止する回数を減らすことができる。そのため、射出成形システム1の安全性と成形品MDの品質維持とを両立することができる。
【0077】
<第2実施形態>
図8および図9は、それぞれ、第2実施形態に係る射出成形システムの制御方法を説明するための断面図である。
【0078】
本実施形態に係る射出成形システム1は、第3状態での第2駆動モードが異なること以外は、前述した第1実施形態の射出成形システム1と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態の射出成形システム1に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の各図では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0079】
本実施形態の第2駆動モードは、成形品MDを成形型33から落下させる。具体的には、成形品MDを成形型33から取り出す際、第1駆動モードでは、図8に示すように、エジェクターピン351をキャビティーC内に突出して成形品MDを押し出し、成形品MDが可動型331から離型される。この状態では、成形品MDは、可動型331に支持されている。一方、第2駆動モードでは、図9に示すように、エジェクターピン351のキャビティーC内への突出量を第1駆動モードよりも大きくし、成形品MDを押し出して可動型331から離脱、落下させる。落下した成形品MDは、成形型33の直下に配置された回収ボックス36に回収される。
【0080】
このように、成形品MDを可動型331から離脱、落下させることにより、射出成形機3で成形品MDを繰り返し成形することができる。そのため、取出装置5の駆動が停止した状態でも、第3状態の間ずっと射出成形機3を駆動し続けることができ、射出成形機3内に溶融樹脂が留まらず、成形品MDの品質維持を図ることができる。なお、回収ボックス36で回収された成形品MDについては、落下の衝撃などによる損傷がないかのチェックを受けた後、損傷がなければ検査装置7で外観検査する。
【0081】
なお、第3状態が長時間続き、回収ボックス36に多量の成形品MDが溜まってしまうと、その分、前述した損傷のチェックにかかる時間や労力が増加する。そのため、射出成形機3内での溶融樹脂が変質を回避するための本行為により生じる不利益が、射出成形機3を停止させて内部で溶融樹脂が変質することにより生じる不利益(例えば、変質した溶融樹脂の排出作業にかかる時間や労力)を上回るおそれもある。そこで、制御装置11は、第3状態が所定時間継続された場合、射出成形機3の駆動を停止する。これにより、第3状態になることにより生じる不利益をなるべく小さく抑えることができる。
【0082】
この点において、第2駆動モードでは、さらに、前述した第1実施形態のように、第1駆動モードに対して単位時間当たりの成形品MDの成形数を少なくするのが好ましい。これにより、回収ボックス36に回収される成形品MDの数を減らすことができるため、損傷のチェックにかかる時間や労力の増加を小さく抑えることができる。
【0083】
以上のように、本実施形態の射出成形システム1の制御方法では、射出成形機3は、溶融樹脂を流し込むキャビティーCを有する成形型33を有し、第1駆動モードでは、成形品MDを成形型33から離型し、第2駆動モードでは、成形品MDを成形型33から落下させる。これにより、射出成形機3で成形品MDを繰り返し成形することができる。そのため、他の装置が停止した状態でも、第3状態の間ずっと射出成形機3を駆動し続けることができ、射出成形機3内に溶融樹脂が留まらず、成形品MDの品質維持を図ることができる。
【0084】
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。ただし、これに限定されず、例えば、回収ボックス36に溜まった成形品MDは、廃棄してもよい。この場合、損傷のチェックにかかる時間や労力がかからない代わりに、樹脂材料を無駄に消費してしまう。そのため、樹脂材料の無駄な消費により生じる不利益が、射出成形機3を停止させて内部で溶融樹脂が変質することにより生じる不利益を上回るおそれがある。
【0085】
<第3実施形態>
図10は、第3実施形態に係る射出成形システムが備える射出成型機の断面図である。
【0086】
本実施形態に係る射出成形システム1は、射出成形機3の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の射出成形システム1と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態の射出成形システム1に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の図では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0087】
図10に示すように、本実施形態の射出成形機3は、竪型の射出成形機であり、可動型331と固定型332とがZ軸方向に正対し、可動型331が固定型332に対してZ軸方向に移動する。
【0088】
このような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0089】
以上、射出成形システムの制御方法および射出成形システムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成または任意の工程に置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成または任意の工程が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1…射出成形システム、10…センサー、11…制御装置、2…筐体、21…第1筐体、211…第1窓、212…基台部、213…上板部、214…カバー、22…第2筐体、221…第2窓、222…基台部、223…上板部、224…カバー、23…第3筐体、231…第3窓、232…基台部、233…上板部、234…カバー、3…射出成形機、30…ホッパー、31…可塑化装置、311…フラットスクリュー、312…バレル、313…ヒーター、314…ノズル、315…スクリュー駆動部、316…連通孔、32…射出制御機構、321…射出シリンダー、322…プランジャー、323…プランジャー駆動部、33…成形型、331…可動型、332…固定型、34…型締装置、341…成形型駆動部、342…ボールネジ、35…押出機構、351…エジェクターピン、352…支持板、353…支持棒、354…バネ、355…押出板、356…スラストベアリング、36…回収ボックス、4…材料供給装置、41…材料乾燥機、42…材料供給部、5…取出装置、51…ハンド、52…ステージ、52x…X軸ステージ、52y…Y軸ステージ、52θ…回転ステージ、6…搬送装置、61…載置台、62…ステージ、7…検査装置、71…検査台、72…ステージ、73…カメラ、74…検査部、75…ステージ、8…スタッキング装置、81…第1昇降装置、82…第2昇降装置、9…ロボット、90…ベース、91…第1アーム、92…第2アーム、93…スプラインシャフト、94…ハンド、C…キャビティー、MD…成形品、RX…回転軸、S0…収容空間、S1…第1収容空間、S2…第2収容空間、S3…第3収容空間、T…トレイ
図1
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図10