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特開2024-146775ビームステアリングを備える光受信機および送信機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146775
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ビームステアリングを備える光受信機および送信機
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/112 20130101AFI20241004BHJP
   H04J 14/02 20060101ALI20241004BHJP
   H04B 10/70 20130101ALN20241004BHJP
【FI】
H04B10/112
H04J14/02
H04B10/70
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024027624
(22)【出願日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】2304872.1
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィンダー シン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】チスラバヌ ペルマンガット
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィデ マランゴン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ジェームス シールズ
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA22
5K102AB07
5K102AB11
5K102AD01
5K102AL23
5K102AL28
5K102MA01
5K102MA02
5K102MB20
5K102MD01
5K102MD03
5K102PC12
5K102PH38
5K102PH41
5K102PH47
5K102PH48
5K102PH49
5K102PH50
5K102RB02
5K102RB14
(57)【要約】      (修正有)
【解決手段】光システム100は、ビーム分離器102と、入来光信号106を受信し、入来光信号106をビーム分離器102に出力するビームステアリングデバイスと、第1の通信サブシステム108a、第2の通信サブシステム108bおよびトラッキングサブシステム108cを備える複数のサブシステム108とを備え、ビーム分離器102は、入来光信号106を、第1の光帯域内の第1の信号110aと、第2の光帯域内の第2の信号110bと、第3の光帯域内の入力ビーコン信号110cとに分離し、トラッキングサブシステム108cは、入力ビーコン信号110cの第1の部分に基づいて入力ビーコン信号110cの整合を決定することと、決定に基づいてビーコン信号整合を調整するために、ビームステアリングデバイスを制御することとを行うように適合される。
【効果】自由空間光リンクを介した増大された通信容量を可能にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビーム分離器と、
入来光信号を受信し、前記入来光信号を前記光ビーム分離器に出力するように適合されたビームステアリングデバイスと、
第1の通信サブシステム、第2の通信サブシステム、およびトラッキングサブシステムを備える複数のサブシステムと
を備える光システムであって、
前記光ビーム分離器が、前記入来光信号を、第1の光帯域内の第1の信号と、第2の光帯域内の第2の信号と、第3の光帯域内の入力ビーコン信号とに分離するように適合され、前記第1の信号を前記第1の通信サブシステムに出力し、前記第2の信号を前記第2の通信サブシステムに出力し、前記入力ビーコン信号を前記トラッキングサブシステムに出力するように適合され、
前記トラッキングサブシステムが、前記入力ビーコン信号の第1の部分に基づいて前記入力ビーコン信号の整合を決定することと、前記整合の決定に基づいて前記入力ビーコン信号の整合を調整するために、前記ビームステアリングデバイスを制御することとを行うように適合される、
光システム。
【請求項2】
前記光ビーム分離器が、
前記入来光信号から前記第1の信号および第1の中間信号を分離するように配置された第1の波長感応性ビームスプリッタと、
前記第1の中間信号から前記第2の信号を分離するように配置された第2の波長感応性ビームスプリッタと
を備える、請求項1に記載の光システム。
【請求項3】
前記第1の光帯域が、赤外光帯域または近赤外光帯域であり、前記第2の光帯域が、赤外光帯域、近赤外光帯域、または可視光帯域であり、前記第3の光帯域が、可視光帯域である、請求項1に記載の光システム。
【請求項4】
前記トラッキングサブシステムが、
前記入力ビーコン信号の軸位置を決定するように構成された位置センサー、ここにおいて、前記トラッキングサブシステムが、前記入力ビーコン信号の前記軸位置を基準軸位置と整合させるために前記入力ビーコン信号の前記軸位置を調整するために、前記ビームステアリングデバイスを制御するように構成され、
前記入力ビーコン信号の電力値を決定するように構成されたパワーセンサー、ここにおいて、前記トラッキングサブシステムが、前記決定される電力値を最大化するために前記パワーセンサーとの閉ループにおいて前記入力ビーコン信号の前記電力値を調整するために、前記ビームステアリングデバイスを制御するように構成される
を備える、請求項1に記載の光システム。
【請求項5】
前記トラッキングサブシステムが、
前記入力ビーコン信号から第1の入力ビーコン信号部分および第2の入力ビーコン信号部分を分離するように配置されたビームスプリッタと、
前記第2の入力ビーコン信号部分に対してチャネル推定を実行するように配置されたチャネル推定器と
を備える、請求項1に記載の光システム。
【請求項6】
前記第1の通信サブシステムが、前記第1の光帯域内の第3の信号を前記光ビーム分離器に出力するように適合され、
前記第2の通信サブシステムが、前記第2の光帯域内の第4の信号を前記光ビーム分離器に出力するように適合され、
前記光ビーム分離器が、前記第3の信号と前記第4の信号とを出力信号へと合成するようにさらに適合され、前記出力信号を前記ビームステアリングデバイスに出力するように適合される、
請求項1に記載の光システム。
【請求項7】
前記複数のサブシステムが、出力ビーコン信号を前記光ビーム分離器に出力するように適合されたビーコン信号生成器をさらに備え、前記光ビーム分離器が、前記出力ビーコン信号と前記第3の信号および前記第4の信号とを合成し、前記出力信号にするようにさらに適合される、請求項6に記載の光システム。
【請求項8】
前記光ビーム分離器が、前記出力ビーコン信号と前記第3の信号および前記第4の信号とを合成し、前記出力信号にするように配置された、第3の波長感応性ビームスプリッタを備える、請求項7に記載の光システム。
【請求項9】
前記第1の通信サブシステムおよび前記第2の通信サブシステムのうちの1つまたは両方が、自由空間-光ファイバーカプラを備える、請求項1に記載の光システム。
【請求項10】
前記複数のサブシステムのうちの少なくとも1つのうちの各々が、1つまたは複数のスペクトルフィルタを備える、請求項1に記載の光システム。
【請求項11】
前記第1の通信サブシステムが、前記第1の信号を前記第1の光帯域内の複数の第1の光サブ帯域にスプリットするように適合され、前記複数の第1の光サブ帯域内の複数の受信された信号を前記第1の光帯域内の信号へと合成するようにさらに適合された、サブシステムビーム分離器を備える、請求項1に記載の光システム。
【請求項12】
前記第2の通信サブシステムが、前記第2の信号を前記第1の光帯域内の複数の第1の光サブ帯域にスプリットするように適合され、前記複数の第1の光サブ帯域内の複数の受信された信号を前記第1の光帯域内の信号へと合成するようにさらに適合された、サブシステムビーム分離器を備える、請求項1に記載の光システム。
【請求項13】
前記第1の通信サブシステムが、少なくとも1つの補助ビームスプリッタを備え、前記少なくとも1つの補助ビームスプリッタが、前記第1の信号を複数の光信号出力にスプリットするように適合され、第1の各補助ビームスプリッタが、パワービームスプリッタまたは波長感応性ビームスプリッタである、請求項1に記載の光システム。
【請求項14】
前記第2の通信サブシステムが、少なくとも1つの補助ビームスプリッタを備え、前記少なくとも1つの補助ビームスプリッタが、前記第1の信号を複数の光信号出力にスプリットするように適合され、第2の各補助ビームスプリッタが、パワービームスプリッタまたは波長感応性ビームスプリッタである、請求項1に記載の光システム。
【請求項15】
前記ビームステアリングデバイスからの、および前記ビームステアリングデバイスへの複数の光信号を送信および受信するように適合されたテレスコープアセンブリをさらに備える、請求項1に記載の光システム。
【請求項16】
請求項1に記載の光システムを備える量子通信デバイスであって、
前記第1の通信サブシステムまたは前記第2の通信サブシステムが、量子デコーダを備える、量子通信デバイス。
【請求項17】
前記量子通信デバイスが、請求項1に記載の第2の光システムをさらに備え、前記第2の光システムの前記第1の通信サブシステムまたは前記第2の通信サブシステムが、量子エンコーダを備える、請求項16に記載の量子通信デバイス。
【請求項18】
請求項1に記載の光システムを備える、宇宙船。
【請求項19】
ビームステアリングデバイスにおいて入来光信号を受信することと、
前記入来光信号をビーム分離器に出力することと、
前記ビーム分離器によって、前記入来光信号を、第1の光帯域内の第1の信号、第2の光帯域内の第2の信号、および第3の光帯域内の入力ビーコン信号に分離することと、
前記第1の信号を第1の通信サブシステムに提供することと、
前記第2の信号を第2の通信サブシステムに提供することと、
前記入力ビーコン信号をトラッキングサブシステムに出力することと、
前記トラッキングサブシステムによって、前記入力ビーコン信号の第1の部分に基づいて前記入力ビーコン信号の整合を決定することと、
前記整合の決定に基づいて前記入力ビーコン信号の整合を調整するために前記ビームステアリングデバイスを調整するために、前記ビームステアリングデバイスを制御することと
を備える、通信方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で説明される実施形態は、ビームステアリングを備える光受信機/送信機、通信システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
量子通信システムにおいて、情報は、単一の光子など、符号化された単一の量子によって送信機と受信機との間で送られる。各光子は、その偏光など、光子の性質に対して符号化され得る1ビットの情報を搬送する。
【0003】
量子鍵配送(QKD)は、しばしば「アリス(Alice)」と呼ばれる送信機と、しばしば「ボブ(Bob)」と呼ばれる受信機との2つの当事者の間の暗号鍵の共有をもたらす技法である。この技法の魅力は、しばしば「イブ(Eve)」と呼ばれる不正な盗聴者に鍵の何らかの部分が知られる可能性があるかどうかのテストを提供することである。多くの形態の量子鍵配送において、アリスおよびボブは、ビット値を符号化する2つ以上の非直交基底を使用する。量子力学の法則は、各々の符号化基底の事前知識なしのイブによる光子の測定は光子の一部の状態に不可避な変化をもたらすと定める。光子の状態に対するこれらの変化は、アリスとボブとの間で送られるビット値に誤差をもたらすことになる。それらの共通のビット列の一部分を比較することによって、アリスおよびボブは、イブが情報を得たかどうかを決定することができる。
【0004】
次に添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態が例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、実施形態による光システムの概略図である。
図2図2は、図1の光システムのビーム分離器を示す概略図である。
図3図3は、図1の光システムのトラッキングサブシステムを示す概略図である。
図4図4は、実施形態による光システムを示す概略図である。
図5A図5Aは、実施形態によるサブシステム信号処理構成要素の概略図である。
図5B図5Bは、実施形態によるサブシステム信号処理構成要素の概略図である。
図5C図5Cは、実施形態によるサブシステム信号処理構成要素の概略図である。
図6A図6Aは、実施形態によるサブシステムビーム分離構成要素の概略図である。
図6B図6Bは、実施形態によるサブシステムビーム分離構成要素の概略図である。
図7図7は、実施形態による量子通信システムの概略図である。
図8図8は、実施形態による、二端末通信システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
様々な態様および実施形態が添付の請求項に記載される。
【0007】
実施形態では、
光ビーム分離器と、
入来光信号を受信し、入来光信号を光ビーム分離器に出力するように適合されたビームステアリングデバイスと、
第1の通信サブシステム、第2の通信サブシステム、およびトラッキングサブシステムを備える複数のサブシステムと
を備える光システムであって、
光ビーム分離器が、入来光信号を、第1の光帯域内の第1の信号と、第2の光帯域内の第2の信号と、第3の光帯域内の入力ビーコン信号とに分離するように適合され、第1の信号を第1の通信サブシステムに出力し、第2の信号を第2の通信サブシステムに出力し、入力ビーコン信号をトラッキングサブシステムに出力するように適合され、
トラッキングサブシステムが、入力ビーコン信号の第1の部分に基づいて入力ビーコン信号の整合を決定することと、整合の決定に基づいて入力ビーコン信号整合を調整するために、ビームステアリングデバイスを制御することとを行うように適合される
光システムが提供される。
【0008】
開示されるシステムは、低レイテンシリアルタイム動作の、自由空間光リンクを介した増大された通信容量を可能にする。これは、たとえば、量子通信における有限ブロック長効果に対処し、QKDに基づくリアルタイムのセキュアな通信を可能にし得る。
【0009】
実施形態では、QKDプロトコルは、量子通信チャネルと古典的通信チャネルとを使用する。量子通信チャネルは、それを介して2つの当事者(たとえば、送信機「アリス」および受信機「ボブ」)が量子符号化されたビットを送信し得るチャネルである。古典的チャネルは、それを介してアリスおよびボブが量子鍵に対して合意する情報(たとえば、選択された符号化および測定基底、および盗聴者検出のための送信された量子ビット測定のサブセット)を共有し得るチャネルである。量子鍵配送方式は、ファイバー光ケーブルを介して短距離(数メートルまたは数キロ)にわたって達成され得るが、衛星の使用を通してなど、長距離(数百キロまたは数千キロ)にわたっても達成され得る。
【0010】
衛星QKDの一形態は、低軌道(LEO)内の衛星と光地上局(OGS)との間で実行される。しかしながら、LEO衛星はほぼ全地球を一日で走査し得るが、それは地上のいずれの1つの地点からも数分のみ可視である。したがって、送信され得るデータ量は、衛星の軌道パラメータと地上局の位置とに応じて時間制限される。さらに、衛星QKDネットワークにおける秘密鍵の計算のために有限ブロック長効果を考慮に入れる必要がある。無線周波数通信を使用する通信リンクなど、低容量の古典的通信リンクは、量子鍵パケットが決定され得、符号化されたメッセージが送信され得るレート量を制限し得る。本明細書で説明される実施形態は、各衛星通過が2つの当事者(ノード)の間のセキュアな通信を可能にするために十分大きいセキュア鍵に寄与するデータを送信し得る、実用的な鍵配送を提供する。
【0011】
衛星が地上局から可視である短い時間期間を通じた実用的なQKD送信を達成するために、本明細書で説明される実施形態は、2つの多重化された情報のストリーム(たとえば、古典的情報ストリームおよび量子情報ストリーム)を含む単一の入来光信号を受信し処理し得る光システムを提供する。情報は、広い光スペクトル内の光帯域内の周波数で送信され得る。「光帯域」は、1700nm未満のすべての波長の光スペクトル内の任意の波長帯域であってよく、200nmから1700nmの光スペクトル内の任意の波長帯域であってよい。これらの光帯域内の波長は、情報を送信するために使用されるとき、より高い情報容量を提供する。たとえば、これらの光帯域内の波長を有する光は、より長い波長で(たとえば、無線周波数で)送信される光と比較して、より小さいビームダイバージェンスを有する。長距離を通じ、より大きいビームダイバージェンスは受信機において受信される電力の低減をもたらし、より低い信号対雑音比および利用可能な情報容量の損失につながることがある。さらに、これらの光帯域は、(無線周波数など)より長い波長における光帯域と比較して、それぞれの光帯域内のより広い帯域幅(周波数範囲)を用いた通信チャネルを可能にする。利用可能なより高い帯域幅(周波数範囲)により、特定される光帯域は、これにより、情報を送信するために使用されるとき、より高い情報容量を可能にする。本明細書の実施形態によって使用される光帯域は、近赤外(NIR)、赤外(IR)、および可視光(VL)スペクトルを包含する波長範囲内の帯域を含む。
【0012】
光信号の不整合からの情報損失を最小化するために、光デバイスは、調整可能な整合を備えるビームステアリングデバイスをさらに含む。光デバイスはまた、光システムの光軸に対する複合光信号(composite optical signal)の整合を維持するために、光信号内に含まれたビーコン信号を処理するように構成される。光システムは、したがって、高い照準精度と低レイテンシファイントラッキング(fine-tracking)とを提供する。さらに、このシステムは情報の2つ以上のストリームをファイントラッキングのための単一のビーコンと多重化するように構成されるため、本明細書で開示される光デバイスはよりコンパクトである。したがって、情報の各ストリームに対して2つの別個のトラッキングデバイスに依存する代わりに、単一のトラッキングデバイス(たとえば、単一のミラー)が使用され得る。これにより、広い光スペクトルにわたって受信される入来光が、単一の光デバイスによってステアリングされ処理され得る。
【0013】
高精度の低レイテンシリンク整合は、非常に低いダイバージェンスを伴う光ビーム(たとえば、IR、NIR、またはVL波長で送信された光)の正確な空間トラッキングをさらに可能にする。これにより、本明細書で開示されるビームステアリングデバイスは、量子および古典的通信を伝えるために使用される高い情報容量の光チャネルに特に適している。高容量光リンクおよび高精度の低レイテンシリンク整合は、生の鍵パケットのリアルタイム処理を可能にする。したがって、開示される実施形態によって、所与の長さの量子鍵がより迅速に生成され得るか、または開示される実施形態は、より長い量子鍵が地上局からの衛星の時間制限された可視性の中で生成され得ることを可能にする。これは、より高速の量子通信処理を可能にするのみでなく、衛星上のデータ記憶要件を最小化する。
【0014】
さらに、衛星構成要素のサイズ制限は、アンテナ、ミラー、またはビームステアリングデバイスとして動作する他の要素に対して制限が課され得ることを意味する。これにより、衛星内のビームステアリングデバイスは、地上で利用可能なものよりも小さいことがある。より小さいビームダイバージェンスを有する、特定された光帯域の(たとえば、1700nm未満の波長の)使用は、よりコンパクトな衛星ビームステアリングデバイスにおける受信電力が最大化され、それにより、衛星通信システム内の、衛星QKDプロトコルの実施中の情報容量を改善し得ることを意味する。
【0015】
本明細書の実施形態は、地上局とLEO衛星との間の量子通信プロトコルについて説明されるが、これらの利点は(たとえば、単一信号内で古典的情報の2つのセットを送信するための)他の形態のデータ送信に対しても、および/または(2箇所の地球上の遠隔場所間または軌道内の2つの衛星間の)他の形態の長距離リンクを介しても当てはまることを理解されよう。たとえば、光デバイスは、短距離リンクのために空中を通じて2人のユーザの間で直接的に使用されてもよく、数キロから数百キロのリンク範囲に対して様々なサイズの伸縮光学素子(telescopic optic)によってインターフェースされてもよい。これにより、光デバイスは、都市域QKDネットワークならびにグローバルQKDネットワークにおける端末において使用され得る。
【0016】
長距離にわたるファイバー光通信リンクの展開は、大きな送信損失またはモビリティにより、困難であり得るかまたは非実用的であり得る。本明細書で説明される光デバイスは、自由空間光リンクを介した通信を提供する。これらのリンクは、光源からの空中または自由空間への、または空中から光検出器または光ファイバーへの効率的な結合を可能にする光学要素を使用することによって、2つ以上の離れた当事者の間で確立され得る。
【0017】
本明細書の実施形態のファイントラッキングおよびマルチバンドビーム送達端末は、短距離地上リンクのための2つ以上の光トランシーバの間の直接自由空間またはエアインターフェースとして使用され得る。また、長距離リンクのために衛星プラットフォーム上のまたは光地上局上の光トランシーバとテレスコープとの間のインターフェースとして使用されてもよい。
【0018】
本明細書で説明される実施形態は、加えて、不整合損失を最小化するために、自由空間光リンクの動的整合を提供する。位置検知および照準サブシステムを実施する整合プロセスは、広い視野(FoV)と高い測位および照準精度の両方を達成するために単一のステップまたは複数のステップで実行され得る。開示されるシステムはさらに、不整合損失を最小化するために、位置検知およびビームステアリングを極めて低くする。
【0019】
実施形態では、光ビーム分離器は、
入来光信号から第1の信号および第1の中間信号を分離するように配置された第1の波長感応性ビームスプリッタと、
第1の中間信号から第2の信号を分離するように配置された第2の波長感応性ビームスプリッタと
を備える。
【0020】
実施形態では、第1の光帯域は、赤外光帯域または近赤外光帯域であり、第2の光帯域は、赤外光帯域、近赤外光帯域、または可視光帯域であり、第3の光帯域は、可視光帯域である。
【0021】
実施形態では、トラッキングサブシステムは、
入力ビーコン信号の軸位置を決定するように構成された位置センサー、ここにおいて、トラッキングサブシステムが、入力ビーコン信号の軸位置を基準軸位置と整合させるために入力ビーコン信号の軸位置を調整するために、ビームステアリングデバイスを制御するように構成され、および/または、
入力ビーコン信号の電力値を決定するように構成されたパワーセンサー、ここにおいて、トラッキングサブシステムが、決定される電力値を最大化するためにパワーセンサーとの閉ループにおいて入力ビーコン信号の電力値を調整するために、ビームステアリングデバイスを制御するように構成される
を備える。
【0022】
実施形態では、トラッキングサブシステムは、
入力ビーコン信号から第1の入力ビーコン信号部分および第2の入力ビーコン信号部分を分離するように配置されたビームスプリッタと、
第2の入力ビーコン信号部分に対してチャネル推定を実行するように配置されたチャネル推定器と
をさらに備える。
【0023】
実施形態では、
第1の通信サブシステムは、第1の光帯域内の第3の信号を光ビーム分離器に出力するように適合され、
第2の通信サブシステムは、第2の光帯域内の第4の信号を光ビーム分離器に出力するように適合され、
光ビーム分離器は、第3の信号と第4の信号とを出力信号へと合成するようにさらに適合され、出力信号をビームステアリングデバイスに出力するように適合される。
【0024】
実施形態では、複数のサブシステムは、出力ビーコン信号を光ビーム分離器に出力するように適合されたビーコン信号生成器をさらに備え、光ビーム分離器は、出力ビーコン信号と第3の信号および第4の信号とを合成し、出力信号にするようにさらに適合される。
【0025】
実施形態では、光ビーム分離器は、出力ビーコン信号と第3の信号および第4の信号とを合成し、出力信号にするように配置された、第3の波長感応性ビームスプリッタをさらに備える。
【0026】
実施形態では、第1の通信サブシステムおよび第2の通信サブシステムのうちの1つまたは両方は、自由空間-光ファイバーカプラを備える。
【0027】
実施形態では、複数のサブシステムのうちの少なくとも1つのうちの各々は、1つまたは複数のスペクトルフィルタを備える。
【0028】
実施形態では、第1の通信サブシステムは、第1の信号を第1の光帯域内の複数の第1の光サブ帯域にスプリットするように適合され、複数の第1の光サブ帯域内の複数の受信された信号を第1の光帯域内の信号へと合成するようにさらに適合された、サブシステムビーム分離器を備える。
【0029】
実施形態では、第2の通信サブシステムは、第2の信号を第1の光帯域内の複数の第1の光サブ帯域にスプリットするように適合され、複数の第1の光サブ帯域内の複数の受信された信号を第1の光帯域内の信号へと合成するようにさらに適合された、サブシステムビーム分離器を備える。
【0030】
実施形態では、第1の通信サブシステムは、少なくとも1つの補助ビームスプリッタを備え、少なくとも1つの補助ビームスプリッタは、第1の信号を複数の光信号出力にスプリットするように適合され、第1の各補助ビームスプリッタは、パワービームスプリッタまたは波長感応性ビームスプリッタである。
【0031】
実施形態では、第2の通信サブシステムは、少なくとも1つの補助ビームスプリッタを備え、少なくとも1つの補助ビームスプリッタは、第1の信号を複数の光信号出力にスプリットするように適合され、第2の各補助ビームスプリッタは、パワービームスプリッタまたは波長感応性ビームスプリッタである。
【0032】
実施形態では、光システムは、ビームステアリングデバイスからの、およびビームステアリングデバイスへの複数の光信号を送信および受信するように適合されたテレスコープアセンブリをさらに備える。
【0033】
実施形態では、上記で定義されたような任意の光システムを備える量子通信デバイスが提供され、第1の通信サブシステムまたは第2の通信サブシステムは、量子デコーダを備える。
【0034】
実施形態では、上記で定義されたような量子通信デバイスが提供され、量子通信デバイスは、上記で定義されたような任意の光システムによる第2の光システムをさらに備え、第2の光システムの第1の通信サブシステムまたは第2の通信サブシステムは、量子エンコーダを備える。
【0035】
実施形態では、上記で定義されたような任意の光システムを備える宇宙船が提供される。
【0036】
実施形態では、
ビームステアリングデバイスにおいて入来光信号を受信することと、
入来光信号をビーム分離器に出力することと、
ビーム分離器によって、入来光信号を、第1の光帯域内の第1の信号、第2の光帯域内の第2の信号、および第3の光帯域内の入力ビーコン信号に分離することと、
第1の信号を第1の通信サブシステムに提供することと、
第2の信号を第2の通信サブシステムに提供することと、
入力ビーコン信号をトラッキングサブシステムに出力することと、
トラッキングサブシステムによって、入力ビーコン信号の第1の部分に基づいて入力ビーコン信号の整合を決定することと、
整合の決定に基づいて入力ビーコン信号整合を調整するためにビームステアリングデバイスを調整するために、ビームステアリングデバイスを制御することと
を備える、通信の方法が提供される。
【0037】
実施形態が、光システム100を示す図1に示されている。光システム100は、ビーム分離器102と、ステアリングミラー104などのビームステアリングデバイスとを備える。ステアリングミラー104は、入来光信号106を受信するように適合される。入来光信号106は、異なる波長の複数の光信号を備える。複数の光信号は、単一の光軸に沿ってコリメートされ整合される。たとえば、入来光信号106は、合成された光信号λTが以下のように定義され得るような3つの光信号λ1と、λ2と、λBとを含み得る。
λT=λ1+λ2+λB (式1)
【0038】
各光信号は、情報を搬送し得る。たとえば、情報は、振幅、位相、偏光、および/または空間モードにおいて符号化され得る。ステアリングミラー104はまた、入来光信号106をビーム分離器102に出力するように構成される。たとえば、ステアリングミラーは、入来光信号106をビーム分離器102内に反射するように角度付けされる。ステアリングミラーは、可視スペクトル、赤外スペクトル、および近赤外スペクトルの光を含めて、(光帯域の上述の波長範囲、たとえば200nm~1700nm、を含む)広い光スペクトルにわたって光を反射するように構成され得る。
【0039】
光システム100は、第1の通信サブシステム108aと、第2の通信サブシステム108bと、トラッキングサブシステム108cとを備える複数のサブシステム108をさらに含む。第1および第2の通信サブシステムの各々は、いくつかの光学構成要素を含み得る。これらの構成要素は、光ファイバーカプラと、検出器と、光源と、ビームスプリッタと、偏光子と、スペクトルフィルタと、コリメータと、他の要素とを含み得る。これらの例は、図5A図5C図6A、および図6Bに関して以下でより詳細に説明される。
【0040】
ビーム分離器102は、入来光信号106を複数の光帯域/光チャネル/波長帯域に分離するように適合される。実施形態では、ビーム分離器102は、入来光信号106を、第1の光帯域内の第1の信号110aと、第2の光帯域内の第2の信号110bと、第3の光帯域内の入力ビーコン信号110cとに分離するように適合される。ビーム分離器102は、第1の光信号110aを第1の通信サブシステム108aに出力し、第2の信号110bを第2の通信サブシステム108bに出力し、入力ビーコン信号110cをトラッキングサブシステム108cに出力するように適合される。これにより、ビーム分離器は、信号を複数の別個の光帯域に分離するためのデマルチプレクサとして動作するように構成される。各光帯域は、ビーム分離器が異なる光帯域内の信号をその帯域に関連付けられたそれぞれのサブシステムに向けるように、異なるサブシステムに関連付けられ得る。ビーム分離器は、各光帯域が通信チャネルのために使用される光帯域によって定義される波長範囲に及び得る、粗波長分割多重(CWDM:Coarse Wavelength Division Multiplexing)を実行する粗マルチプレクサとして機能し得る。これらは、IR帯域と、NIR帯域と、VL帯域(ならびに、O帯域と、E帯域と、S帯域と、C帯域と、L帯域と、U帯域とを含む、1200nm~1700nmのIRスペクトル内の光帯域)とを含み得る。光帯域はまた、数百ナノメートル、たとえば400nmまたは500nmだけ分離された波長エンドポイントの選定によって一般に選択され得る(したがって、400nm~1700nmの波長範囲の場合、ビーム分離器は、信号を400nm~800nm、800nm~1200nm、および1200nm~1700nmの光帯域に分割し得る)。光システム100のいくつかの実施形態では、第1の光帯域は、赤外波長帯域、および/または近赤外波長帯域であり、第2の光帯域は、赤外波長帯域、近赤外波長帯域、および/または可視光波長帯域であり、第3の光帯域は可視光波長帯域である。
【0041】
(NIR、IR、および可視に及ぶ)広い光範囲は、光システムが、様々なエンドユーザアプリケーションを提供することを可能にし、広い光帯域内のどこかの信号を使用し得る様々な技術に適合することを可能にし得る。
【0042】
各通信チャネルに対して複数の異なる光信号を提供することは、システムが背景光レベルを最小化するための光帯域を選択することを可能にする。たとえば、光通信の日中動作は、NIRよりも低い背景光レベルを知覚するIRチャネルを使用して実施される。たとえば、情報は、ビーム分離器がIR光帯域をIR光帯域内の2つのより小さなサブ帯域にスプリットする粗多重化を実行して、古典的および量子通信チャネルの両方を介して送信され得る。いくつかの実施形態では、NIR信号は、室温で動作するとき、より低い暗計数率とより高い検出効率とを有するNIR検出器を使用して、夜間動作中に処理され得る。これらの実施形態では、信号処理は、背景光レベルを除去し、信号対雑音比を改善するために、通信サブシステムの信号処理構成要素によって実行され得る。さらに、上記で論じたように、IR、NIR、またはVL波長は小さいビームダイバージェンスを有し、これは、データパケットが長距離にわたって送信されるとき、より低い損失を意味する。したがって、より低いレベルの背景光が受信され、要求されるより高い信号対雑音比となる。本明細書で説明される光デバイスを使用する衛星QKDネットワークは、これにより、サービスの最大限の利用のために日中の間および夜間に動作し、潜在的な容量ボトルネックを最小化し得る。
【0043】
2つの通信サブシステムが示されているが、複数のサブシステム108は任意の数の追加の通信サブシステムを備えてよく、ここで、ビーム分離器は、入来光信号106から分離された光信号のうちの1つが各サブシステムに提供されるように、入来光信号を複数の光信号に分離するように構成されることを理解されよう。
【0044】
いくつかの実施形態では、ビーム分離器がビームコンバイナとしても機能するように、ビーム分離器は双方向であってよい。この実施形態では、ビーム分離器は、それぞれの複数の光帯域内で複数の光信号を受信し、複数の光信号を単一の出力信号116へと合成するように構成される。ビーム分離器は、出力信号116の送信のために単一の出力信号をステアリングミラーに出力するように構成される。これらの実施形態では、第1のおよび第2の通信サブシステムは、光信号をビーム分離器102に提供し得る。たとえば、ビーム分離器は、信号114aを第1の通信サブシステム108aから受信し、信号114bを第2の通信サブシステム108bから受信する。これらの実施形態では、通信サブシステムの各々は光源を備え得るか、またはサブシステムを光源に結合するためのカプラを備え得る。
【0045】
トラッキングサブシステム108cは、入力ビーコン信号110cの第1の部分に基づいてビーコン信号110cの整合を決定するように適合される。整合の決定に基づいて、トラッキングサブシステム108cは、決定に基づいてビーコン信号整合を調整するために、ステアリングミラー104を制御する。たとえば、トラッキングサブシステム108cは、制御信号112を生成し、ステアリングミラー104の位置または構成を調整するために、制御信号112をステアリングミラー104に出力し得る。位置または構成の調整に応答して、ビーコン信号110cを含む入来光信号106の整合が調整されることになる。ビーコン信号の整合を継続的に監視し調整するために、ビーコン信号の整合のさらなる決定が、トラッキングサブシステム108cによって実行され得る。これにより、トラッキングサブシステム108cおよびステアリングミラーは、入来光信号106のファイントラッキングを達成するために閉ループ制御信号を形成する。
【0046】
ビーコン信号110cは他のビームと共伝搬する。ビーコン信号は、連続波であってよく、またはパルス状であってもよい。ビーコン信号は、同期および/または古典的通信など、アプリケーション固有の要件に対して変調されてもよい。
【0047】
光システムは、ビームステアリングデバイス104からの、およびビームステアリングデバイス104への光信号を送信および受信するように適合されたテレスコープアセンブリ120をさらに備え得る。テレスコープアセンブリは、光デバイスが光デバイス100から離れた別の端末への信号/それからの信号を送ることおよび/または受信することを可能にするための長距離光リンクを提供する。
【0048】
実施形態によって、図2は、ビーム分離器102を示す。この実施形態では、ビーム分離器102は複数のビームスプリッタを備える。複数のビームスプリッタは、第1の波長感応性ビームスプリッタ202と第2の波長感応性ビームスプリッタ204とを備え得る。入来光信号106は、入来信号106を第1の信号110aと第1の中間信号106-1とに分離する第1の波長感応性ビームスプリッタ202に向けられる。第1の中間信号106-1は、第1の中間信号106-1を第2の信号110bと第3の信号110cとに分離する第2の波長感応性ビームスプリッタ204に向けられる。第1の信号110a、第2の信号110b、および第3の信号110cの各々は、第1の通信サブシステム108a、第2の通信サブシステム108b、およびトラッキングサブシステム108cにそれぞれ向けられる。各ビームスプリッタは、自由空間ビームスプリッタであってよい。
【0049】
各波長感応性ビームスプリッタは、入来光信号を異なる光帯域に分離するように構成される。たとえば、波長感応性ビームスプリッタは各々、入来光を選択的に送信および反射するように適合されたダイクロイックミラーまたはフィルタであってよい。
【0050】
式1によって定義されたような入来信号を受信するビーム分離器102を考慮すると、第1のビームスプリッタ202は、合成された光信号λTを第1の信号λ1と第1の中間信号λIS1=λ2+λBとにスプリットする。第2のビームスプリッタ204は、次いで、第1の中間光信号λIS1を第2の信号λ2と第3の信号λBとにスプリットする。
【0051】
第1の波長感応性ビームスプリッタ202および第2の波長感応性ビームスプリッタ204は、第1のビームスプリッタの出力が第2のビームスプリッタの入力に向けられる状態で、順に配置される。いくつかの実施形態では、ビーム分離器102は、図2の第1および第2のビームスプリッタの後に順に配置された追加の波長感応性ビームスプリッタを含み得る。たとえば、ビーム分離器は、第2のビームスプリッタ204によって第1の中間信号から分離された第2の中間信号から入力ビーコン信号を分離するように配置された第3の波長感応性ビームスプリッタをさらに備える。一般に、一連の波長感応性ビームスプリッタの各々は、先行する波長依存ビームスプリッタの出力から入力を受信し、ビームスプリッタの入力から信号をスプリットするように配置される。2つのビームスプリッタが示されているが、ビーム分離器は、(対応する数の追加のサブシステムによって生成されるかまたは受信される)対応する数の追加の光信号をスプリットするかまたは合成する追加のビームスプリッタを含み得ることを理解されよう。
【0052】
光デバイスの実施形態が図3に示されている。この実施形態では、トラッキングサブシステム108cは、ビーコン信号110cの少なくとも一部分を受信するように構成された1つまたは複数のセンサー302を備える。1つまたは複数のセンサー302は、位置センサー302aを含み得る。位置センサー302aは、入力ビーコン信号110cの軸位置を決定するように構成される。実施形態では、位置センサー302aは、ビーコン信号を含む、受信された光の画像をキャプチャするように構成されたカメラである。位置センサー302aは、ビーコン信号を受信し、受信された画像の平面における、光デバイスの光軸に対する受信されたビーコン信号の位置を決定する。位置検知システムは、光センサー、もしくは無線センサー、または両方のタイプのセンサーを使用し得る。
【0053】
トラッキングサブシステム108cは、次いで、ビーコン信号110cの決定された位置と画像平面内の基準位置との間の位置オフセットを決定するように構成される。次いで、制御信号112が、決定された位置オフセットに基づいて生成され、ステアリングミラーに送られる。たとえば、生成された制御信号は、位置センサーによって決定された位置オフセットに対応する量だけ反射された入来ビーム信号の軸位置を調整するように、ステアリングミラーの構成を調整するための命令をステアリングミラーに提供する制御信号である。位置オフセットの決定および制御信号112の生成は、トラッキングサブシステム108cの一部を形成する別個のビーコンコントローラ304によって実行され得る。
【0054】
トラッキングサブシステム108cは、受信されたビーコン信号110cの位置を継続的に監視し、位置オフセットを決定し、さらなる制御信号をステアリングミラー104に提供するように構成される。トラッキングサブシステムが、入力ビーコン信号の軸位置を基準軸位置と整合させるために位置センサーとの閉ループにおいて入力ビーコン信号の軸位置を調整するために、ステアリングミラーを制御するように構成されるように、ビーコンの軸位置は、そのように継続的に監視され更新される。
【0055】
1つまたは複数のセンサー302はまた、入力ビーコン信号110cの電力を決定するように構成されたパワーセンサー302bを含み得る。実施形態では、パワーセンサー302bは、受信されたビーコン信号部分を含む受信された光の強度を決定するように構成されたセンサーである。パワーセンサー302bは、ビーコン信号の一部分を受信し、受信されたビーコン信号部分の強度を決定する。
【0056】
トラッキングサブシステム108cは、次いで、ステアリングミラーの構成を調整するための命令をステアリングミラーに提供するための制御信号112を生成するように構成される。ステアリングミラー構成の変化は、反射された入来ビーム信号の軸位置を調整し、ビーコン信号110cとパワーセンサー302bとの間の軸整合を変化させ、これにより、パワーセンサー302bによって決定される電力レベルを変化させることになる。
【0057】
トラッキングサブシステム108cは、受信されたビーコン信号110cの電力を継続的に監視し、パワーセンサー302bによって受信されるビーコン信号の電力を最大化するために、更新された制御信号112をステアリングミラーに提供するように構成される。たとえば、トラッキングサブシステム108cは、決定される電力の変化と決定される電力の変化率とを決定するために、受信された電力を分析し、極大を特定するための制御信号を生成するために統計方法を適用し得る。これにより、トラッキングサブシステムは、決定される電力を最大化するためにパワーセンサーとの閉ループにおいて入力ビーコン信号の電力を調整するために、ステアリングミラー104を制御するように構成される。入力ビーコン信号110cの電力の決定および制御信号112の生成は、トラッキングサブシステム108cの一部を形成する別個のビーコンコントローラ304によって実行され得る。
【0058】
トラッキングサブシステム108cが通信チャネルサブシステムと同じコンパクトな光デバイス内に含有され、ビーコン信号が共伝搬され、情報を搬送する光信号と軸方向に整合されるため、光デバイスは、さもなければトラッキングビーコンとアプリケーション関連ビームとの間の空間分離により生じ得る、光デバイスと光信号との間の不整合を最小化することができる。
【0059】
ビームステアリングデバイスは、ステアリングミラー(または、複数のステアリングミラー)を使用し得る。ステアリングミラーは、ジンバルまたは圧電段に基づき得る。ミラーベースのビームステアリングシステムは、高い反射効率を有し、したがって、広い光スペクトルにわたって動作を提供する。追加サブシステムによって提供される制御信号112は、ジンバルステアリングミラーの作動を制御するように、または圧電段の位置を制御するように構成され得る。圧電段は、制御信号の受信時の低レイテンシ応答時間を有利に提供する。実施形態では、ビームステアリングアセンブリにおいて高速ステアリングミラーが使用される。ステアリングミラーは広い視野(FoV)を提供し、したがって、他のビームステアリングデバイス(たとえば、回析格子)よりも広い角度範囲にわたって入来光ビーム入射を受信し得る。ステアリングミラーは、反射された光の方向を制御するための、ならびに反射された光の波面を調整するための制御信号に応答して、変形可能であってもよい。
【0060】
高速ステアリングミラーは、高速ステアリング速度を実現するために非常に高速な作動応答時間(たとえば、ミリ秒応答時間)を提供する。加えて、1つまたは複数のセンサーは、非常に高速な応答時間(たとえば、ミリ秒応答時間)で測定することができ、高いフレームレート(たとえば、ミリ秒フレームレート)で画像をキャプチャするためのカメラで構成されてよく、トラッキングサブシステムによって実行される信号処理は、高速で実行され得る。これにより、受信されたビーコン信号の電力および位置は、繰り返し測定され処理され、非常に低いレイテンシでステアリングミラーが調整され、これにより、非常に低いレイテンシのビームトラッキングを提供し得る。一実施形態では、ビームステアリングデバイスは、トラッキングレイテンシを最小化するために、圧電チップ/チルトアクチュエータベースの双方向ステアリングおよび高フレームレートカメラまたは高帯域幅位置感応性検出器を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、単一のステアリングミラーが使用され、低減されたサイズと重みにつながる。複数の通信チャネルを備えるビームをステアリングするために単一のステアリングミラーが使用されるため、各通信チャネルのためのステアリングミラーを備えるシステムと比較して、サイズと重みとがさらに低減される。衛星システムは積載の(payload)質量および寸法が制限される打ち上げロケットにおいて宇宙へと発射されるため、サイズおよび重みの低減はそのようなシステムの技術的利益を有する。
【0062】
ビームステアリングデバイスは、代替的に空間光変調器(SLM)、フェーズドアレイ、または回析格子を使用し得る。SLMおよび回析格子は、多重化およびポイントツーマルチポイント動作を可能にする。
【0063】
光デバイスのビームステアリングデバイスおよびビームトラッキングサブシステムは、ファイントラッキング能力を提供する。本明細書で説明される光ビーコンは、「ファイントラッキング」ビーコンと理解され得る。光デバイスは、粗いトラッキングシステムも含む端末内に設けられ得る。粗いトラッキングシステムは、粗ビーコン整合を達成するために広い視野にわたって光を受信するように構成された粗ビーコンセンサーを備える。粗いトラッキング誤差は、マイクロラジアン程度の大きさであってよく、ファイントラッキング誤差は、10分の1マイクロラジアン程度の大きさであってよい。粗ビーコンが取得されると、本明細書で説明されるファイントラッキングシステムは、次いで、正確な整合のためにファイントラッキングビーコンを取得し得る。本明細書で開示されるビーコントラッキングシステムは、これにより、広いカバレージと正確な整合とを提供するための現在の商用衛星プラットフォームおよび光地上局の粗トラッキング能力と重複し得る。
【0064】
しかし、粗ビーコンは、端末整合のために要求される要素ではない。動作中、光デバイスがファイントラッキングビーコンを取得し「ロックオン」すると、システムは、トラッキングシステムの非常に低いレイテンシおよびファイントラッキング能力により、信号を継続的に監視しトラッキングすることが可能である。これは、2次の粗いトラッキングシステムの必要を除去する。
【0065】
これにより、本明細書の光デバイスを備える端末には粗ビーコンが設けられなくてもよく、すなわち、トラッキングサブシステムが、端末上に設けられる唯一のトラッキングシステムであってよく、端末は、ビームトラッキングサブシステムによって制御される1つのビームステアリングデバイスのみを含んでもよい。これは、端末のサイズおよび重みをさらに低減し、これは、端末が衛星または宇宙船上で展開されるときに有利である。
【0066】
広い光スペクトルに対する透過性および複数のビームを同時にステアリングするための能力は、a)古典的自由空間通信における容量ボトルネック、b)衛星QKDにおける有限ブロック長効果、c)衛星QKDネットワークまたは地上自由空間QKDネットワークの継続的な昼夜動作、およびd)リアルタイム衛星-地上(QKD)を可能にするための組み合わされた量子および古典的自由空間光通信など、複数の課題を解決する際に有利であり得る。
【0067】
上記で説明された実施形態では、光デバイス100は、入来光信号106を受信し、光信号106を複数のサブシステムのための成分信号に分離するための受信機デバイスとして動作するように構成される。加えて、いくつかの実施形態では、光デバイスは、送信機デバイスとして構成されてもよい。これらの実施形態では、光デバイス100は、光デバイスの一部を形成するソースにおいて光信号を生成し、光デバイスからの送信のために、生成された光信号を単一の光信号116へと合成するように構成される。
【0068】
これらの実施形態では、図4に示されるように、第1の通信サブシステム108aは、第1の光帯域内の第3の信号410aをビーム分離器102に出力するように適合された光源を備える。加えて、第2の通信サブシステム108bは、第2の光帯域内の第4の信号410bをビーム分離器102に出力するように適合された光源を備える。ビーム分離器102は、ビームコンバイナとして機能し、第3の光信号410aと第4の光信号410bとを出力信号406へと合成するようにさらに適合され、出力信号406をステアリングミラー104に出力するように適合される。たとえば、図2に関して上記で説明されたようなビーム分離器102は、ビームコンバイナとして機能し得、ビーム分離器102の各ビームスプリッタは、ビームコンバイナとして機能する。
【0069】
図4に示されるように、複数のサブシステム108は、出力ビーコン信号410dをビーム分離器102に出力するように適合されたビーコン信号生成器108dをさらに備えてよく、ビーム分離器102は、出力ビーコン信号410dと第3の出力信号410aと第4の出力信号410bとを出力信号406へと合成するようにさらに適合される。これらの実施形態では、(ビーム分離器構成要素とサブシステムとを含む)光デバイスの構成要素は、軸方向に整合された出力信号を提供するように光学的に整合されるように構築される。これにより、トラッキングのために使用されるとき、情報チャネルは、トラッキングおよび受信機をビーコン信号と整合させることによって正確に整合され得る。
【0070】
上記で説明されたように、複数のサブシステム108a~108cの各々は、少なくとも1つの構成要素を備える。図5A図5Cならびに図6Aおよび図6Bは、複数のサブシステムの各々に含まれ得る例示的な構成要素を備えるサブシステムを示す。
【0071】
図5Aは、例示的なサブシステム500-Aを示す。サブシステム500-Aは、サブシステム500-Aによって受信される光信号を処理する構成要素504を備える。構成要素504は、入来光を測定し、入来光の性質(たとえば、強度、波長、偏光など)を示すための出力信号を提供するように構成された1つまたは複数の検出器を含み得る。たとえば、構成要素は量子デコーダであってよい。加えてまたは代替的に、構成要素504は、光を生成するように構成された1つまたは複数の生成器を含み得る。たとえば、生成器は、レーザーを備えてよく、量子エンコーダとして機能し得る。サブシステム500-Aは、加えて、サブシステム500Aとビーム分離器102との間の入力/出力において1つまたは複数のスペクトルフィルタ506を備え得る。1つまたは複数のスペクトルフィルタの各々は、不要な波長を吸収または反射し、フィルタ範囲内の波長に透過的であることによって、フィルタを通過する光信号からフィルタ範囲外の波長を除去する。これらの実施形態では、サブシステム500Aは、第1の通信サブシステム108aまたは第2の通信サブシステム108bのうちのいずれかの一例であり得る。
【0072】
図5Bは、例示的なサブシステム500-Bを示す。サブシステム500-Bは、自由空間ビーム分離器102を光ファイバー510に結合するように構成された単方向光ファイバーカプラである。光ファイバーは、光入力または光出力として機能し得る。サブシステム500-Bはコリメータ508を備え得る。コリメータは、自由空間光学系からコリメータに入る光が光ファイバー出力510へとコリメートされるように、自由空間光学系とファイバー光学系との間のカプラとして構成される。反対に、光ファイバー510を通してコリメータに送信される光は、コリメータから自由空間に出力され得る。サブシステム500-Bは、加えて、サブシステム500-Aとビーム分離器との間の入力/出力において1つまたは複数のスペクトルフィルタ506を備え得る。サブシステム500-Bは、光ファイバー510を介して生成器または検出器に結合され得る。
【0073】
図5Cは、サブシステム500-Cの例を示す。サブシステム500-Cは、自由空間ビーム分離器102を入力光ファイバーに、および出力光ファイバーに結合するように構成された双方向光ファイバーカプラである。たとえば、サブシステム500-Cは、コリメータ508と、サーキュレータ512と、光ファイバー510a~510cとを備える。コリメータは、自由空間光学系からコリメータに入る光が光ファイバー出力510aへとコリメートされるように、自由空間光学系とファイバー光学系との間のカプラとして構成される。反対に、光ファイバー510aを通してコリメータ508に送信される光は、コリメータ508から自由空間に出力され得る。サーキュレータ512は、光ファイバー510aを入力光ファイバー510bと出力光ファイバー510cとに結合させ、光の双方向送信を可能にするように機能する。示された実施形態では、光ファイバー510bからサーキュレータに入る光は、サーキュレータから光ファイバー510aへと抜けることになる。光ファイバー510aからサーキュレータに入る光は、ファイバー510cにおいてサーキュレータを抜けることになる。
【0074】
単方向または双方向の光ファイバーカプラは、サブシステムの入力または出力として機能する光ファイバーに結合されたファイバーマルチプレクサをさらに備え得る。出力ファイバー510cに結合されたファイバーマルチプレクサ514を示す図5Cに一例が示されている。代替的に(または追加として)、サブシステム500-Cは、入力ファイバー510bに結合されたファイバーマルチプレクサを備え得る。サブシステム500-Bも、光ファイバー510に結合されたファイバーマルチプレクサを備えてもよい。ファイバーマルチプレクサ514は、単一の信号と複数の信号との間で光を多重化および逆多重化するように構成される。したがって、サブシステム500-Cは、サブシステムのための単一の光帯域が(たとえば、ナノメータ程度の大きさの波長範囲を備える)より小さな高密度波長帯域(dense wavelength bands)に再分割され得る高密度波長多重化を実行するように構成され得る。これにより、より多くの量の情報が光デバイスによって処理される光信号内に符号化され得る。さらに、サブシステム500-Cは、ビーム分離器102によって分離された光帯域のより狭い部分(たとえば、単一の高密度波長帯域)を選択するために使用され得、それにより、このより狭い帯域の外の波長が検出器に達することが妨げられる。したがって、全体的な背景光レベルが低減され得、信号対雑音比を改善し得る。
【0075】
サブシステム500-Cは、加えて、サブシステム500-Cとビーム分離器との間の入力/出力において1つまたは複数のスペクトルフィルタ506を備え得る。サブシステム500-Cは、光ファイバー510bおよび510cを介して生成器および/または検出器に結合され得る。
【0076】
図6Aおよび図6Bは、入来光信号602を複数の光信号出力にスプリットするように適合されたサブシステムビーム分離器を備えるサブシステム600-Aおよび600Bを示す。複数の光信号出力は各々、サブシステムの信号処理構成要素に向けられる。複数の光信号の信号を受信するように配置された各信号処理構成要素は、検出器、ソース、またはファイバーカプラであってよい(たとえば、各構成要素は、サブシステム500-A、500-B、または500-Cのうちのいずれか1つであってよい)。
【0077】
示されるように、サブシステムビーム分離器は、少なくとも1つの補助ビームスプリッタ/コンバイナを備える。少なくとも1つの補助ビームスプリッタは、サブシステム600-Aによって受信された信号602を光信号612-1と光信号612-2とにスプリットするように適合されたビームスプリッタ604を含む。第1の光信号612-1は、構成要素606に向けられ、構成要素606によって受信され、第2の光信号612-2は、構成要素608に向けられ、構成要素608によって受信される。
【0078】
図6Bに示されるように、構成要素608の代わりに、サブシステム600-Aのさらなる補助ビームスプリッタ609が存在し得る。ビームスプリッタ609は、次いで、信号612-1を、信号614-1および614-2にスプリットし得、その各々は次いで、(信号614-2を受信するように配置された)信号処理構成要素612、またはさらなるビームスプリッタなど、システムの他の構成要素に向けられ、それらによって受信される。
【0079】
サブシステムビーム分離器は、双方向であってよく、サブシステムの構成要素からの入力光信号を単一の光出力へと合成し、その出力をビーム分離器102に提供するように適合されてよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、補助ビームスプリッタの各々は、サブシステムによって受信された信号が複数の波長帯域にスプリットされるように、波長感応性ビームスプリッタであってよい。図6Bに示されるように、サブシステムビーム分離器内のすべての補助ビームスプリッタは、異なる光帯域にスプリットするように構成された波長感応性ビームスプリッタであってよい。たとえば、入来信号が波長λAにあるとき、ビームスプリッタ604は、波長λA1において信号612-1を出力し、波長λA2において信号612-2を出力することになる。ビームスプリッタ609は、信号612-1を受信し、それを波長λA11において信号614-1に、波長λA12において信号614-2にスプリットすることになる。
【0081】
概して、ビーム分離器102によって分離された光帯域内の各成分信号は、それ自体が、その各々が光帯域の光サブ帯域内にあるN個の多重化された信号で形成され得る。たとえば、第1の光帯域(たとえば、IR帯域)内の光信号λ1は、λ11、λ12...λ1Nなど、N個の多重化されたサブ信号を備えてよく、ここで、λ1=λ11+λ12+...+λ1Nである。サブシステムビーム分離器は、ビーム分離器102の粗い多重化によって分離された光帯域内の複数の粗光サブ帯域の粗波長分割多重化の第二段を可能にするための自由空間マルチプレクサ/デマルチプレクサとして構成される。たとえば、ビーム分離器102は、入来光信号を400nm程度の光帯域に分離するために粗いWLDMの第一段を実行するように構成され、サブシステムビーム分離器は、光帯域を、各々が10nm~50nm程度の複数の粗いサブ帯域に分割するために粗いWLDMの第二段を実行する。サブシステムがファイバーマルチプレクサをやはり含む実施形態では、この二段の粗い多重化は、波長帯域選択におけるさらなる精度のために高密度多重化ステップと組み合わされてよい。
【0082】
これにより、より多くの量の情報が粗く多重化された各光信号内に符号化され得る。さらに、サブシステムビーム分離器は、ビーム分離器102によって分離された光帯域のより狭い部分を選択するために使用され得、それにより、このより狭い帯域の外の波長が検出器に達することが妨げられる。これにより、全体的な背景光レベルが低減され得、信号対雑音比を改善し得る。
【0083】
光信号をさらに分割するために、追加のビームスプリッタが各サブシステム600-Aおよび600-Bの中に存在してもよい。図6Aおよび図6Bの実施形態では、示された構成要素のうちのいずれかの代わりに、追加のビームスプリッタが提供されてよく、分割された光信号をサブシステム構成要素に出力するように構成されてよい。たとえば、追加のビームスプリッタは、(追加のビームスプリッタが構成要素608の代わりに提供される方法と同様の方法で)構成要素606の代わりに提供されてよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、補助ビームスプリッタのうちのいずれかは、入来信号を同じ波長の異なる強度を有する光信号にスプリットするように適合されたパワービームスプリッタであってよい。パワービームスプリッタは、入来光を所望の強度比(たとえば、50:50または90:10)の2つのビームにスプリットするように構成され得る。図6Aに示されるように、各補助ビームスプリッタは波長感応性ビームスプリッタであってよい。たとえば、入来ビーム602は波長λAであり、出力信号612-1および612-2の各々も波長λAである。これにより、サブシステムビーム分離器は、サブシステムの異なる構成要素によって処理するために、受信された同じ光信号の部分を分離するように構成され得る。これにより、よりコンパクトな光デバイスが提供される。
【0085】
いくつかの実施形態では、光トラッキングシステム108cは、上記で説明されたようなサブシステム600-Aまたはサブシステム600-Bのいずれかによる1つまたは複数のビームスプリッタを備える。これらの実施形態では、サブシステムの構成要素は、1つまたは複数のセンサーと、ビーコン信号部分に対してチャネル推定を実行するように配置されたチャネル推定器とを備える。たとえば、トラッキングサブシステム108cは、入力ビーコン信号110cから第1の入力ビーコン信号部分612-1および第2の入力ビーコン信号部分612-2を分離するように配置されたビームスプリッタ604を備える。この実施形態では、構成要素608は、上記で説明されたような1つまたは複数のセンサー302を備え、構成要素606は、チャネル推定器を備える。ビームスプリッタは、パワービームスプリッタまたは波長感応性ビームスプリッタであってよい。実施形態では、チャネル推定器に向けられたビーコン信号部分612-1は、1つまたは複数のセンサーに向けられたビーコン信号612-2よりも小さな電力のものである。たとえば、612-2:612-1のスプリットの比は、90:10であってよい。
【0086】
チャネル推定器は、ビーコン信号の通信チャネルの性質を推定するように構成される。チャネル推定は、偏光推定と波面誤差推定とを含み得る。たとえば、チャネル推定器は、シャックハルトマン波面センサーなど、位相感応性アレイを備え得る。位相センサーアレイは、大気中の伝搬による波面歪みを検出し、(波面に対する動的ゆらぎによって引き起こされる)照準誤差を検出するように構成される。また例として、複屈折波長板(1/4、1/2、1/4波長)のセットなどの線形偏光子によって、または液晶可変リターダ(retarder)を介して、電力を最大化することによって、偏光推定が実行され得る。チャネル推定は、受信された信号を記憶された基準パラメータと比較することによって実行され得る。チャネル推定器は、ビーコン信号に対して補正を実行するために(たとえば、ビーコン位置またはビーコンの電力の決定を改善するために)チャネル推定の結果を使用し得る。
【0087】
チャネル推定器は、チャネル推定の結果を光デバイス内の任意の他のサブシステムによる使用のためにそのサブシステムに、またはビームステアリングデバイスによる使用のためにそのビームステアリングデバイスに出力し得る。たとえば、チャネル推定器は、第1のまたは第2の通信サブシステムが光信号内の誤差を補正するために、偏光推定と波面誤差推定とをそのサブシステムに出力し得る。また例として、チャネル推定器は、ビームステアリングデバイスを制御するための制御信号を提供するように構成されてもよい。たとえば、ビームステアリングデバイスは、変形可能ミラーであってよく、チャネル推定器は、波面歪みを補正し、照準誤差を補正するためにミラー変形を制御する。チャネル推定器はまた、制御信号を光システムの空間光変調器に出力し得、波面歪みを補正し照準誤差を補正するためにビーム分離器102の入力に提供する。
【0088】
いくつかの実施形態では、光デバイスの任意の他のサブシステム(たとえば、通信サブシステム)は、サブシステムの構成要素としてチャネル推定器を含んでもよい。サブシステムは、次いで、トラッキングサブシステム108cに関して上記で説明したのと同じ方法で、受信された光信号の一部を分離し、その部分をチャネル推定器に提供するように構成される。
【0089】
図7は、量子通信システム700を示す。この実施形態では、第1の端末710と第2の端末750とが存在する。第1の端末710および第2の端末750は、自由空間光リンク740を介して通信する。第1の端末710および第2の端末750の各々は、上記で説明された実施形態のうちの1つによる光デバイスを備える。第1の端末は、ビーム分離器/コンバイナ720と複数のサブシステム730とを備える。第2の端末は、ビーム分離器/コンバイナ760と複数のサブシステム770とを備える。
【0090】
第1の端末710は量子エンコーダを備える。量子エンコーダは、通信サブシステムのうちの1つの中に含まれてよく、または自由空間またはファイバー光リンクを通して通信サブシステムのうちの1つに結合されてもよい。量子エンコーダは、量子ビットストリーム(符号化された光子など)の形態で量子情報を生成するように構成される。たとえば、量子エンコーダは、光パルスを生成するように構成されたレーザーと、生成された光パルスを符号化するための符号化装置(偏光要素など)とを備える。
【0091】
第2の端末750は量子デコーダを備える。量子デコーダは、通信サブシステムのうちの1つの中に含まれてよく、または自由空間またはファイバー光リンクを通して通信サブシステムのうちの1つに結合されてもよい。量子デコーダは、選定された基底において量子情報を復号するように構成される。たとえば、量子デコーダは、選定された基底測定に基づいて、偏光状態の間で切り替えられ得る偏光光学系に結合された光検出器を備え得る。
【0092】
第1のおよび第2の端末は各々、古典的情報を古典的ビットストリームの形態で送信および受信するように構成されたコンピューティングデバイスを含む古典的通信システムを含み得る。古典的通信システムは、各端末のサブシステムのうちの1つの中に含まれてよく、または自由空間またはファイバー光リンクを通して各端末のサブシステムのうちの1つに結合されてもよい。
【0093】
図8は、光通信システム800の例示的な実施形態を示す。光通信システム800は、第1の端末と第2の端末とを含む。第1の端末および第2の端末の各々は、上記の実施形態のうちの1つによる光デバイスを備える。示されるように、第1の端末および第2の端末の各々は、ビーム分離器102と、ステアリングミラー104と、複数のサブシステム108とを備える。光通信システム800は、可視帯域内でトラッキングが実行される間に、IR帯域および/または可視帯域内の古典的通信リンクとともに、NIRおよび/またはIR帯域内のQKDのために使用され得る。各端末におけるビームステアリングミラー104は、次いで波長感応性ビームスプリッタ102を使用して可視チャネルとNIRチャネルとIRチャネルとに分離される広い範囲の光信号を反射しステアリングすることが可能である。スペクトルの可視領域は、2つの異なる波長における送信および受信を可能にするために2つの部分にさらにスプリットされる。図8に示されるように、端末1は、波長λVIS1の可視光を受信し、波長λVIS2の可視光を送信し、端末2は、波長λVIS2の可視光を受信し、波長λVIS1の可視光を送信する。
【0094】
端末1において、送信された可視信号λVIS2は、端末2内のトラッキングセンサーのためのビーコンとして働き、(示されるように、λVIS2を2つの部分にスプリットするためのサブシステムビーム分離器を含む)トラッキングサブシステム108c内で端末2によるチャネル推定のためにも使用され得る。トラッキングサブシステム108cは、偏光推定または波面誤差推定を含んでもよい。同様に、端末2において、送信された可視信号λVIS1は、端末1内のトラッキングセンサーのためのビーコンとして働き、(示されるように、λVIS2を2つの部分にスプリットするためのサブシステムビーム分離器を含む)トラッキングサブシステム108c内で端末1によるチャネル推定のために使用されてもよい。トラッキングサブシステム108cは、偏光推定または波面誤差推定を含んでもよい。
【0095】
NIRチャネルは、QKDのために使用され得る。端末1および端末2は各々、NIRチャネルのための第1の通信サブシステム108aを含む。単方向ファイバーカプラを含んで示されているが、他の構成要素がIR信号処理のために提供されてもよい(たとえば、エンコーダもしくはデコーダまたは双方向ファイバーカプラを含む)。第1の通信サブシステムは、短距離地上リンクのために双方向であってよく、衛星-地上QKDリンクのために単方向であってもよい。(図800の端末1および2の中の第2の通信サブシステム108bを用いて実施される)IRチャネルは、双方向の古典的通信のために主に使用され得る。QKDリンクは、日中動作のためにおよび/または大きなブロックのセキュア鍵を生成するために、IRチャネル内で多重化され得る。各端末は、長距離にわたる通信のためのテレスコープ120など、長距離光学系を含み得る。
【0096】
本明細書で開示される光通信デバイスのうちのいずれも、衛星または他の形態の宇宙船上に含まれてよい。これにより、開示される光デバイスは、長距離衛星通信のために使用され得る。光デバイスは(航空機、ボート、または陸上車両など)任意の他の形態の乗物または地上局に(すなわち、地球上に)含まれてもよい。
【0097】
上記の実施形態は、量子通信プロトコルに対する特定の応用を有するとして説明されてきたが、システムは、他の形態の通信のために展開されてもよいことを理解されよう。たとえば、第1および第2の通信サブシステムは各々、古典的通信のために構成されてもよい。これにより、2つの異なる光帯域内の2つの平行な光信号が、単一のビーム内でビーコン信号と共伝搬し得る。これは、コンパクトな光学アセンブリ内の大容量通信を可能にする。
【0098】
いくつかの実施形態が説明されてきたが、これらの実施形態は、単なる例として提示され、本発明の範囲を制限することは意図されない。実際に、本明細書で説明される新規のデバイス、および方法は、様々な他の形態で実施され得、さらに、本発明の趣旨から逸脱せずに、本明細書で説明されたデバイス、方法、および製品の形態に様々な省略、置換、および変更が行われてよい。添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物は、そのような形態または修正を本発明の範囲および趣旨に入るものとし包含することが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8
【外国語明細書】