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特開2024-149531情報処理装置、印刷システム、印刷方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149531
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】情報処理装置、印刷システム、印刷方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20241010BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20241010BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
G06F3/12 337
G06F3/12 308
G06F3/12 329
G03G21/00 388
B41J29/38 201
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024121891
(22)【出願日】2024-07-29
(62)【分割の表示】P 2022189521の分割
【原出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 幸一
(57)【要約】
【課題】印刷装置の環境情報と印刷媒体の環境条件に応じて印刷装置の動作を制御することによって、より効率的な印刷を実行する。
【解決手段】印刷装置に接続され該印刷装置に印刷ジョブを送信する情報処理装置が、使用する印刷媒体の種類を含む印刷ジョブの実行指示を受け付ける受付部と、印刷装置が設置されている空間の周辺環境を示す環境情報を取得する環境取得部と、環境情報が印刷媒体の種類ごとの印刷に適した環境条件を示す環境条件情報を満たすとき、印刷装置に印刷ジョブを送信する印刷制御部と、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置に接続され該印刷装置に印刷ジョブを送信する情報処理装置であって、
使用する印刷媒体の種類を含む印刷ジョブの実行指示を受け付ける受付部と、
前記印刷装置が設置されている空間の周辺環境を示す環境情報を取得する環境取得部と、
前記環境情報が前記印刷媒体の種類ごとの印刷に適した環境条件を示す環境条件情報を満たすとき、前記印刷装置に前記印刷ジョブを送信する印刷制御部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
複数の前記印刷媒体に関する前記環境条件情報を記憶する記憶部から、前記印刷ジョブに含まれる前記印刷媒体の種類に関する前記環境条件情報を取得する環境条件取得部をさらに備える、
情報処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の情報処理装置であって、
前記環境情報は、温度及び湿度の少なくとも一方に関する情報を含み、
前記環境条件は、前記印刷媒体の使用に適した温度の範囲及び湿度の範囲の少なくとも一方を含む、
情報処理装置。
【請求項4】
印刷装置、情報処理端末及び情報処理装置がネットワークを介して通信可能な印刷システムであって、
前記情報処理端末は、
使用する印刷媒体の種類を含む印刷ジョブの実行指示を前記情報処理装置に送信する印刷指示部を備え、
前記情報処理装置は、
前記実行指示を前記情報処理端末から受信する受付部と、
前記印刷装置が設置されている空間の周辺環境を示す環境情報を取得する環境取得部と、
前記環境情報が前記印刷媒体の種類ごとの印刷に適した環境条件を示す環境条件情報を満たすとき、前記印刷装置に前記印刷ジョブを送信する印刷制御部と、
を備える印刷システム。
【請求項5】
印刷装置に接続され該印刷装置に印刷ジョブを送信するコンピュータが、
使用する印刷媒体の種類を含む印刷ジョブの実行指示を受け付ける手順と、
前記印刷装置が設置されている空間の周辺環境を示す環境情報を取得する手順と、
前記環境情報が前記印刷媒体の種類ごとの印刷に適した環境条件を示す環境条件情報を満たすとき、前記印刷装置に前記印刷ジョブを送信する手順と、
を実行する印刷方法。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷方法であって、
複数の前記印刷媒体に関する前記環境条件情報を記憶する記憶部から、前記印刷ジョブに含まれる前記印刷媒体の種類に関する前記環境条件情報を取得する手順をさらに実行する、
印刷方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の印刷方法であって、
前記環境情報は、温度及び湿度の少なくとも一方に関する情報を含み、
前記環境条件は、前記印刷媒体の使用に適した温度の範囲及び湿度の範囲の少なくとも一方を含む、
印刷方法。
【請求項8】
印刷装置に接続され該印刷装置に印刷ジョブを送信するコンピュータに、
使用する印刷媒体の種類を含む印刷ジョブの実行指示を受け付ける手順と、
前記印刷装置が設置されている空間の周辺環境を示す環境情報を取得する手順と、
前記環境情報が前記印刷媒体の種類ごとの印刷に適した環境条件を示す環境条件情報を満たすとき、前記印刷装置に前記印刷ジョブを送信する手順と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、印刷システム、印刷方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば印刷工場等では、大型かつ高速の印刷装置を使用し、大量の印刷が行われている。印刷用紙は、温度又は湿度等の周辺環境に影響を受けるものがあり、使用する環境が不適であると紙詰まり等の不具合が発生することがある。
【0003】
このような印刷工場等では、定められた納期や印刷工程の次工程等に遅滞等の影響が生じないように印刷処理を完了させる必要がある。
【0004】
そのため、印刷工場等における従業員等のオペレータは、例えば、印刷に相応の時間を要する大量の印刷処理の場合など、空き時間や休憩時間等オペレータの不在時間のほか、夜間や休日等の就業時間外等の時間を利用して実行することがある。この場合、オペレータは不在時間前あるいは就業時間終了前に必要となる印刷用紙及びトナーなどの記録材を印刷装置にセットし、印刷を開始することによって、印刷装置に戻った際あるいは翌営業日には印刷が完了した状態となるように対応する。
【0005】
一方、印刷にはさまざまな媒体(印刷用紙等)が使用されるが、印刷用紙等は、温度又は湿度等の周辺環境に影響を受ける特性があり、使用する環境が不適であると紙詰まり等の不具合が発生することがある。
【0006】
そのため、印刷工場等では、紙詰まり等の不具合を未然に回避するために、経験豊富なオペレータ等が、その経験に基づいて使用する印刷用紙等に適するように温度又は湿度を調整することが行われている。なぜならば、上述のようにさまざまな時間帯での印刷を実行する際に、紙詰まり等の不具合によって予定していた印刷処理が完了せず納期や次工程等に遅滞等の影響が生じるリスクを低減するためである。
【0007】
更に、印刷機が設置されたエリアの温度又は湿度は、そのエリアに設置された空調設備の温度又は湿度の設定を変更しても、すぐに変わるものではない。このため、オペレータは、使用する印刷用紙等に適するような温度又は湿度になるまで、印刷指示をせずに待機をする必要があり、時間を有効活用できなかった。
【0008】
以上のとおり、印刷工場等では、紙詰まり等の不具合を未然に回避しつつ、オペレータ等がさまざまな時間を有効活用した印刷処理等を行う上で、オペレータ等の経験に依存しているという面がある。このような制御を経験の少ないオペレータでも実行できるようにするための自働化を進めることが期待されている。
【0009】
例えば、特許文献1には、印刷装置内部の温度に応じて印刷を制御する印刷装置が開示されている。特許文献1に開示された印刷装置は、装置内温度が特殊用紙の印刷に適した温度かどうかをチェックし、装置内温度が特殊用紙の印刷に適した温度の場合には特殊用紙への印刷を実行する一方、適していない温度の場合には印刷を中止する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来技術では、例えば、印刷に要する時間が長時間に及ぶ場合など、印刷装置の周辺環境が変化し、紙詰まり等の不具合により印刷が途中で停止してしまうと、オペレータが即時に対応することができずに再度印刷をやり直す等の対応が必要となり得ることから、かえって非効率となってしまうことが考えられる。
【0011】
本発明の一実施形態は、上記のような点に鑑みてなされたものであって、印刷装置の環境情報と印刷媒体の環境条件に応じて印刷装置の動作を制御することによって、より効率的な印刷を実行することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態である情報処理装置は、印刷装置に接続され該印刷装置に印刷ジョブを送信する情報処理装置であって、使用する印刷媒体の種類を含む印刷ジョブの実行指示を受け付ける受付部と、印刷装置が設置されている空間の周辺環境を示す環境情報を取得する環境取得部と、環境情報が印刷媒体の種類ごとの印刷に適した環境条件を示す環境条件情報を満たすとき、印刷装置に印刷ジョブを送信する印刷制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、印刷装置の環境情報と印刷媒体の環境条件に応じて印刷装置の動作を制御することによって、より効率的な印刷を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態における印刷工場の一例を示す模式図である。
図2】一実施形態における印刷機の一例を示す外観側面図である。
図3】一実施形態における印刷工場で行われる作業の一例を示す図である。
図4】第1実施形態における印刷システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
図5】一実施形態における印刷装置のハードウェア構成の一例を示す模式図である。
図6】一実施形態における制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図7】一実施形態におけるコンピュータのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図8】第1実施形態における印刷システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
図9】一実施形態における環境条件テーブルの一例を示す概念図である。
図10】一実施形態におけるジョブ管理テーブルの一例を示す概念図である。
図11】第1実施形態における印刷方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図12】一実施形態におけるモード設定画面の一例を示す図である。
図13】一実施形態におけるジョブ選択画面の一例を示す図である。
図14】第1実施形態における通常印刷処理の一例を示すフローチャートである。
図15】一実施形態における通知画面の一例を示す図である。
図16】第1実施形態における夜間印刷処理の一例を示すフローチャートである。
図17】第2実施形態における印刷システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
図18】第2実施形態における夜間印刷処理の一例を示すフローチャートである。
図19】第2実施形態における開始時刻計算処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、図面中において同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【0016】
[第1実施形態]
本発明の一実施形態は、例えば印刷工場やデータセンタ(以下「印刷工場等」という。)のように大量の印刷を行う施設で用いられる印刷システムである。本実施形態における印刷工場は、数千枚から数万枚の大量の印刷用紙に印刷データを印刷する印刷工程と、印刷済みの印刷用紙に対して、裁断、折り及び製本等の加工を行う製本工程とを実行することで、本や冊子等の印刷物を製造する。本実施形態における印刷システムは、印刷工場で行われる印刷工程に用いられる。ただし、本実施形態における印刷システムの用途は上記に限定されるものではなく、大量の印刷用紙に印刷を行う用途であればどのような用途で用いられてもよい(例えば、上述の製本工程等の印刷工程以外の工程は備えておらず、印刷工程のみ行う印刷工場等であってもよい)。
【0017】
<印刷工場の概要>
本実施形態における印刷工場について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態における印刷工場の一例を示す模式図である。
【0018】
図1に示されているように、本実施形態における印刷工場9は、例えば、印刷エリア90、製本エリア91、倉庫エリア92及び事務所エリア93に区画されている。事務所エリア93には、機械室94が含まれる。印刷工場9の各エリア90~93は、通路95を介して往来可能に配置されている。
【0019】
印刷エリア90には、複数台の印刷機901-1~901-2、印刷物保管場所902及び空調設備903が設置されている。製本エリア91には、複数台の裁断機911-1~911-2、複数台の折機912-1~912-2及び製本機913が設置されている。倉庫エリア92には、複数台の用紙棚921-1~921-2、複数台のトナー棚922-1~922-2及び空調設備923が設置されている。
【0020】
以下、複数台の印刷機901-1~901-2、裁断機911-1~911-2、折機912-1~912-2、用紙棚921-1~921-2又はトナー棚922-1~922-2について、個々を区別する必要がない場合、印刷機901、裁断機911、折機912、用紙棚921又はトナー棚922と総称する。
【0021】
なお、印刷機901、裁断機911、折機912、製本機913、用紙棚921及びトナー棚922の各台数は一例であり、印刷工場9の規模や印刷量等に応じて任意に増減すればよい。印刷エリア90及び製本エリア91に設置される機器の種類は一例であり、印刷工程又は製本工程で要する機器を任意に設置すればよい。倉庫エリア92に設置される棚の種類は一例であり、印刷工場9で必要となる備品の種類や数量等に応じて任意に変更すればよい。また、各エリアの仕切り方も任意であり、仕切ることなく一つまたは任意のフロアで実現することも可能である。
【0022】
印刷工場9における作業の流れについて説明する。印刷工場9の従業員等のオペレータは、まず、印刷エリア90において、印刷ジョブで必要となる印刷用紙及びトナーなどの記録材が印刷機901にセットされていることを確認する。印刷用紙又はトナーが不足する場合、オペレータは倉庫エリア92の用紙棚921又はトナー棚922から必要となる数量の印刷用紙又はトナーを取り出し、使用する印刷機901にセットする。
【0023】
オペレータは、印刷用紙及びトナーなどの記録材が十分にセットされていることを確認した後、印刷機901を操作することで、所望の枚数の印刷用紙に所望の印刷データを印刷する。印刷機901から排出された印刷済みの印刷用紙は、印刷物保管場所902に一時的に保管される。ここまでが印刷工程である。
【0024】
印刷工程が完了すると、オペレータは、印刷物保管場所902から印刷済みの印刷用紙を製本エリア91に搬入する。製本エリア91に搬入された印刷用紙は、裁断機911の作業場へ配置される。次に、オペレータは、裁断機911を操作することで、印刷用紙を裁断する。
【0025】
続いて、オペレータは、裁断済みの印刷用紙を折機912の作業場へ配置し、折機912を操作することで、印刷用紙に折り加工を施す。次に、オペレータは、折り加工後の印刷用紙を製本機913の作業場へ配置し、製本機913を操作することで、印刷用紙に製本加工を施す。ここまでが製本工程である。
【0026】
完成した本や冊子等の印刷物には、必要に応じてカバー、帯又は売上カード等の付属品が装着される。その後、印刷物は梱包されて、印刷工場9から出荷される。
【0027】
<印刷機の概要>
本実施形態における印刷機901について、図2を参照しながら説明する。図2は、本実施形態における印刷機の一例を示す外観側面図である。
【0028】
図2に示されているように、本実施形態における印刷機901は、印刷装置10、給紙ユニット11、排紙ユニット12及び操作パネル13を有する。印刷機901は、用途に応じてユニットを追加、変更又は削除することが可能である。例えば、使用する印刷用紙の種類や一度に印刷する枚数等に応じて給紙ユニット11を選択することができる。また、例えば、折り、綴じ、パンチ等の後処理や一度に印刷する枚数等に応じて排紙ユニット12を選択することができる。
【0029】
給紙ユニット11の内部には、未印刷の印刷用紙P1-1~P1-2がそれぞれ数千枚から数万枚程度セットされている。印刷用紙P1-1~P1-2は、それぞれ素材やサイズ等の種類が異なる印刷用紙であってもよいし、同じ種類の印刷用紙であってもよい。印刷装置10は、オペレータの指示に従って、給紙ユニット11にセットされた印刷用紙に印刷データを印刷する。印刷済みの印刷用紙は排紙ユニット12に搬送される。排紙ユニット12から排出された印刷済みの印刷用紙P2は、所定の排紙トレイに蓄積される。
【0030】
オペレータは、操作パネル13を操作することで、印刷用紙の種類、印刷枚数、後処理の要否等を設定することができる。また、オペレータは、操作パネル13を操作することで、印刷の開始又は停止等の制御を行うことができる。さらに、オペレータは、操作パネル13に表示されるメッセージ等を参照することで、印刷機901の状態を把握することができる。
【0031】
印刷用紙の種類は、オペレータが操作パネル13に表示された選択肢から選択することで指定することができる。また、印刷機901が印刷用紙の種類を識別するためのセンサを搭載していれば、オペレータが印刷用紙をセンサで識別することで、その印刷用紙の種類が操作パネル13に表示することができる。さらに、給紙ユニット11が印刷用紙の種類を識別するためのセンサを搭載することで、セットされた印刷用紙P1-1~P1-2の種類を識別して操作パネル13に表示してもよい。
【0032】
図3は、本実施形態における印刷工場で行われる作業の一例を示す図である。図3に示されているように、印刷工場9では、印刷工程又は製本工程で用いる機器82-1~82-2の周辺に大量の印刷用紙83-1~83-3が配置されている。オペレータ81は、例えば、印刷用紙83-1に対して機器82-1を用いて所望の加工を行い、次工程を行う機器82-2の周辺に加工済みの印刷用紙83-2を配置する。
【0033】
印刷機901は、給紙ユニット11及び排紙ユニット12の仕様が許す限り、一度に数千枚から数万枚の印刷を行うことが可能である。一度に数万枚の印刷を行う場合、印刷を開始してから完了するまでに数時間を要することがある。例えば、2万枚の印刷用紙に印刷を行う場合、印刷が完了するまで2~3時間かかる場合がある。通常、オペレータが、印刷に必要な枚数の印刷用紙及びトナーを印刷機901にセットし、印刷開始を指示する操作を行えば、印刷が完了するまで自動的に印刷が行われる。したがって、例えば24時間稼働を行う印刷工場等では、オペレータが不在となる夜間や休日等の就業時間外に長時間に及ぶ大量の印刷を行うことができれば、印刷工場9全体の生産性は大きく向上する。
【0034】
一方、印刷用紙(媒体)は、印刷用紙を直接包囲する空気又はその印刷用紙に対して印刷処理を実行する印刷装置10が設置されている印刷エリア90内などの空間(例えば、印刷用紙又は印刷装置の置かれている部屋、スペースなど)の温度又は湿度を示す雰囲気温度又は雰囲気湿度等(単に、温度又は湿度と称してもよい。)の周辺環境に影響を受け、印刷に不適な状態となってしまったり(例えば、紙などの媒体はその素材や表面形状等の種類に応じて、吸湿により用紙が伸びて波打ち状態になってしまったり、逆に水分の放出により用紙が収縮して反り返ったりカールしてしまう状態になるなど)、重なり合った印刷用紙同士が密着することがある。周辺環境の影響を受けて印刷に不適な状態となったり、印刷用紙同士が密着したりすると、印刷機901の内部で紙詰まり等の不具合が発生する原因となる。なお、印刷用紙の密着性は素材や表面形状等の種類に依存する。
【0035】
印刷工場では、印刷用紙の種類ごとに印刷エリア90内の環境を調整することで、印刷用紙が密着することを要因とする不具合等の発生を回避している。環境調整は、経験豊富なオペレータにより手動で行われることもあれば、印刷用紙の種類ごとの印刷に適した環境をデータベースで管理し、使用する印刷用紙の種類に応じて適正な環境を確認しながら手動で行われることもある。
【0036】
オペレータが不在となる時間帯に印刷を行う場合、オペレータが存在する時間帯に印刷用紙及びトナーをセットしておき、使用する印刷用紙にとって適正な環境に調整した上で印刷を開始する。しかしながら、雰囲気温度又は雰囲気湿度等の周辺環境は、外気等の影響により印刷中に変化する可能性がある。環境の変化に応じて、適正な環境の場合には印刷を行い、適正な環境でない場合には環境の調整を行うように制御することができれば、オペレータが不在となる時間帯であっても不具合等が発生する可能性を低減することができる。
【0037】
<印刷システムの全体構成>
本実施形態における印刷システムの全体構成について、図4を参照しながら説明する。図4は、本実施形態における印刷システムの全体構成の一例を示す概念図である。
【0038】
図4に示されているように、本実施形態における印刷システム1は、印刷装置10、プリントサーバ20、ユーザ端末30、環境測定器40及び設備機器50を含む。印刷装置10、プリントサーバ20、ユーザ端末30、環境測定器40及び設備機器50は、それぞれ通信ネットワークN1に接続している。通信ネットワークN1は、接続されている各装置が相互に通信可能となるように構成されている。
【0039】
通信ネットワークN1は、例えば、インターネット、LAN(Local Area Network)、又はWAN(Wide Area Network)等の有線通信によるネットワークによって構築されている。通信ネットワークN1は、有線通信だけでなく、例えば、無線LAN、又は近距離無線通信等の無線通信、もしくはWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、LTE(Long Term Evolution)、又は5G(5th Generation)等の移動体通信によるネットワークが含まれていてもよい。
【0040】
印刷装置10は、印刷用紙に印刷データを印刷する画像形成装置である。本実施形態における印刷装置は、静電気の作用により印刷用紙にトナーを付着させる静電記録装置である。本実施形態における印刷装置の一例は、レーザープリンタ又は静電式複写機等である。印刷データは、印刷用紙に印刷する文字及び画像等がレイアウトされた電子データである。
【0041】
印刷装置10は、印刷ジョブに従って印刷データを印刷用紙に印刷する。本実施形態における印刷ジョブは、印刷する内容を示す印刷データ、使用する印刷用紙の種類等を示す用紙情報、及び印刷枚数、カラー、印刷面(片面又は両面)、印刷倍率等の印刷設定を含む。印刷ジョブは、オペレータの操作により、操作パネル13又はプリントサーバ20から印刷装置10に入力される。印刷装置10は、印刷中の状態等をオペレータに通知するためのメッセージを操作パネル13又はプリントサーバ20に出力する。
【0042】
プリントサーバ20は、印刷装置10で印刷するための印刷ジョブをスプールし、ジョブスケジューラに従って印刷装置10に送信する情報処理装置の一例である。プリントサーバ20の一例は、コンピュータである。プリントサーバ20は、例えば、図1に示した機械室94等に設置される。
【0043】
プリントサーバ20は、ユーザ端末30から印刷装置10の運転モードを示すモード情報を受信する。プリントサーバ20は、ユーザ端末30から印刷ジョブの実行指示を受信し、指示された印刷ジョブをスプールに蓄積する。プリントサーバ20は、印刷装置10のジョブ実行状態に応じて、スプールから印刷ジョブを読み出し、印刷装置10に送信する。
【0044】
ユーザ端末30は、オペレータが操作する情報処理端末の一例である。ユーザ端末30の一例は、コンピュータである。ユーザ端末30の他の例は、スマートフォン又はタブレット端末等である。ユーザ端末30は、例えば、図1に示した印刷エリア90、事務所エリア93又は機械室94等に設置される。
【0045】
ユーザ端末30は、オペレータの操作に応じて、プリントサーバ20に印刷装置10の運転モードを示すモード情報を送信する。ユーザ端末30は、オペレータの操作に応じて、プリントサーバ20に印刷ジョブの実行指示を送信する。ユーザ端末30は、印刷装置10から受信したメッセージをオペレータに対して出力する。
【0046】
プリントサーバ20及びユーザ端末30は、通信機能を備えた装置であれば、情報処理装置に限られない。プリントサーバ20及びユーザ端末30は、例えば、PJ(Projector:プロジェクタ)、IWB(Interactive White Board:相互通信が可能な電子式の黒板機能を有する白板)、デジタルサイネージ等の出力装置、HUD(Head Up Display)装置、産業機械、撮像装置、集音装置、医療機器、ネットワーク家電、自動車(Connected Car)、ノートPC(Personal Computer)、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、ゲーム機、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルカメラ、ウェアラブルPCまたはデスクトップPC等であってもよい。
【0047】
環境測定器40は、印刷装置10が設置されている空間の環境を測定する測定機器である。環境測定器40は、例えば、印刷エリア90に設置される。環境測定器40は、特に、印刷機901の周辺に設置されることが好ましい。例えば、本実施形態における環境測定器は、空間の温度又は湿度を測定する機能を備える。本実施形態における環境測定器の一例は、温度計又は湿度計等である。
【0048】
設備機器50は、印刷装置10が設置されている空間の環境を調整するための設備機器である。設備機器50は、例えば、図1に示した印刷エリア90に設置される。本実施形態における設備機器は、空間の温度及び湿度を調整する機能を備える。本実施形態における設備機器の一例は、空気調和機、加湿器、加湿機能付き空気清浄機又は加湿機能付き空気調和機等である。
【0049】
なお、図4に示した印刷システム1の全体構成は一例であって、用途や目的に応じて様々なシステム構成例があり得る。例えば、印刷装置10、プリントサーバ20、ユーザ端末30、環境測定器40及び設備機器50の1つ以上が、印刷システム1に複数台含まれていてもよい。例えば、プリントサーバ20は、複数台のコンピュータにより実現してもよいし、クラウドコンピューティングのサービスとして実現してもよい。図4に示す印刷装置10、プリントサーバ20、ユーザ端末30のような装置の区分は一例である。
【0050】
<印刷装置のハードウェア構成>
本実施形態における印刷装置のハードウェア構成について、図5を参照しながら説明する。図5は、本実施形態における印刷装置のハードウェア構成の一例を示す模式図である。
【0051】
図5に示されているように、本実施形態における印刷装置10は、書込みユニット101、作像ユニット102、中間転写ベルト103、二次転写部104、定着部105及び制御装置110を備える。
【0052】
書込みユニット101は、レーザ光によって転写画像(トナー画像)を作像ユニット102に形成する。
【0053】
作像ユニット102は、感光体、現像剤及びトナーを保持し、書込みユニット101からのレーザ光によってトナー画像を形成する。作像ユニット102は、感光体ドラムY(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)、BK(ブラック)を備える。作像ユニット102は、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程)を行い、感光体ドラムY、M、C、BKそれぞれにトナー像を形成する。感光体ドラムY、M、C、BKに形成されたトナー像は転写工程によって中間転写ベルト103に転写される。トナー像の転写後、作像ユニット102は、中間転写ベルト103を清掃して次の作像プロセスに備えるためにクリーニング工程を行う。
【0054】
フルカラーのトナー画像を形成するときは、作像ユニット102は、イエロートナー像を中間転写ベルト103に転写し、続いてマゼンダトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像を順次形成し、それらを重ね合わせ、中間転写ベルト103に転写する。なお、作像ユニット102は、イエロートナー像、マゼンダトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像をそれぞれ、感光体ドラムY、M、C、BK上に形成する。
【0055】
感光体ドラムY、M、C、BKから中間転写ベルト103へのトナー画像の転写は一次転写であり、中間転写ベルト103から印刷用紙への転写は二次転写である。作像ユニット102は、中間転写ベルト103に感光体ドラムY、M、C、BKから重畳して転写されたトナー像(フルカラーのトナー画像)を、二次転写部104の位置(二次転写位置)に搬送する。二次転写位置は、二次転写ローラと搬送路R1又はR2とが接する位置である。なお、R1は片面印刷時の搬送路であり、R2は両面印刷時の搬送路である。
【0056】
二次転写部104は、中間転写ベルト103に転写されたフルカラーのトナー画像を、二次転写位置で印刷用紙に一括転写(二次転写)する。
【0057】
定着部105は、トナー画像転写済みの印刷用紙を、ローラ対により加熱及び加圧することにより、トナー画像を印刷用紙に定着させる。
【0058】
制御装置110は、印刷装置10の全体の動作を制御する。本実施形態では、さらに、制御装置110は、上位装置から送られてきた画像データを、書込みユニット101が画像形成できる形式(転写画像)に変換する。
【0059】
制御装置110は、操作パネル13と信号の送受信を行うことにより、オペレータによる操作内容を把握し、オペレータに対して各種情報を報知する。また、制御装置110は、プリントサーバ20等の外部機器から入力される印刷ジョブ等に基づいて、所定の印刷処理を実行する。
【0060】
本実施形態における制御装置110のハードウェア構成について、図6を参照しながら説明する。図6は、本実施形態における制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0061】
図6に示されているように、本実施形態における制御装置110は、CPU(Central Processing Unit)121、ROM(Read Only Memory)122、RAM(Random Access Memory)123、外部メモリI/F(Interface)124、通信系I/F125、内部バスI/F126、PCIeI/F127、画像出力用DMAC(Direct Memory Access Controller)128、画像処理部129及び圧縮/伸長器130を備える。内部バス120は、これらの各部を接続する。
【0062】
内部バス120は、さらに、内部バスI/F126及びPCIeI/F127を介して、各部を、PCIeバス134に接続する。
【0063】
CPU121は、各種演算処理を実行することによって、システム関係の全ての設定を行い、画像出力用DMAC128、画像処理部129及び圧縮/伸長器130を起動する。
【0064】
ROM122には、主にCPU121のための動作制御プログラムが格納される。RAM123は、CPU121の演算結果や種々のデータの一次的な記憶場所としても使用される他、画像保存用のメモリとして機能する。ROM122、RAM123等は、特に区別する必要がない場合は、内部メモリと総称する。
【0065】
外部メモリI/F124には、画像保存用のメモリとして用いられる画像メモリが接続される。CPU121は、プリントサーバ20から印刷データを受信すると、プリンタ言語に基づいて外部メモリI/F124を介して画像メモリに描画を行う。
【0066】
通信系I/F125は、プリントサーバ20及び操作パネル13と制御装置110との間のインターフェースである。
【0067】
内部バスI/F126は、PCIeI/F127と内部バス120との間のインターフェースである。内部バスI/F126は、PCIeバスマスタが指定するアドレスと画像メモリとの間で、外部メモリI/F124を経由して画像データを入出力する。
【0068】
PCIeI/F127は、PCIeバス134のプロトコルに準じてPCIeバスマスタとデータのやりとりを行う。
【0069】
画像出力用DMAC128及び画像処理部129は、内部バス120を介してCPU121や外部メモリI/F124等に接続される。画像出力用DMAC128は、PCIeI/F127にも接続される。
【0070】
画像出力用DMAC128は、印刷時のDMAコントローラとして機能する。つまり、画像出力用DMAC128は、CPU121により起動されると、予め指定された領域の外部メモリから画像データを読み出して、当該画像データをPCIeI/F127に出力する。この出力は、随時ハンドシェークのやりとりで行われる。
【0071】
画像処理部129は、読み取り画像の歪みを補正する。
【0072】
圧縮/伸長器130は、CPU121によって起動され、様々なデータの圧縮又は伸長を行う。圧縮/伸長器130は、省メモリ化のために使用される。
【0073】
<コンピュータのハードウェア構成>
本実施形態におけるプリントサーバ20及びユーザ端末30は、コンピュータにより実現される。図7は、プリントサーバ20又はユーザ端末30がコンピュータで実現される場合のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0074】
図7に示されているように、本実施形態におけるコンピュータは、CPU501、ROM502、RAM503、HD(Hard Disk)504、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ505、ディスプレイ506、外部機器接続I/F(Interface)508、ネットワークI/F509、バスライン510、キーボード511、ポインティング機器512、DVD-RW(Digital Versatile Disk Rewritable)ドライブ514、メディアI/F516を備えている。
【0075】
これらのうち、CPU501は、コンピュータ全体の動作を制御する。ROM502は、IPL等のCPU501の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM503は、CPU501のワークエリアとして使用される。HD504は、プログラム等の各種データを記憶する。HDDコントローラ505は、CPU501の制御にしたがってHD504に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。
【0076】
ディスプレイ506は、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字、又は画像などの各種情報を表示する。外部機器接続I/F508は、各種の外部機器を接続するためのインターフェースである。この場合の外部機器は、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリやプリンタ等である。ネットワークI/F509は、通信ネットワークN1を利用してデータ通信をするためのインターフェースである。バスライン510は、図7に示されているCPU501等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
【0077】
また、キーボード511は、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備えた入力手段の一種である。ポインティング機器512は、各種指示の選択や実行、処理対象の選択、カーソルの移動などを行う入力手段の一種である。DVD-RWドライブ514は、着脱可能な記録媒体の一例としてのDVD-RW513に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。なお、DVD-RWに限らず、DVD-R等であってもよい。メディアI/F516は、フラッシュメモリ等の記録メディア515に対するデータの読み出し又は書き込み(記憶)を制御する。
【0078】
<印刷システムの機能構成>
本実施形態における印刷システムの機能構成の一例について、図8を参照しながら説明する。図8は、本実施形態における印刷システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
【0079】
≪プリントサーバの機能構成≫
図8に示されているように、本実施形態におけるプリントサーバ20は、環境条件記憶部200、ジョブ記憶部201、モード受付部202、指示受付部203、環境取得部204、環境判定部205、動作制御部206、印刷制御部207、通知出力部208及び調整指示部209を備える。
【0080】
環境条件記憶部200及びジョブ記憶部201は、例えば、図7に示されているHD504を用いて実現される。HD504が記憶するデータの読み込み又は書き込みは、例えば、HDDコントローラ505を介して行われる。
【0081】
モード受付部202、指示受付部203、環境取得部204、環境判定部205、動作制御部206、印刷制御部207、通知出力部208及び調整指示部209は、例えば、図7に示されているROM502からRAM503上に展開されたプログラムがCPU501及びネットワークI/F509に実行させる処理によって実現される。
【0082】
環境条件記憶部200には、印刷用紙の使用に適した環境条件を示す環境条件情報が記憶されている。本実施形態における環境条件情報は、環境条件テーブルに格納されている。環境条件テーブルには、印刷用紙の種類ごとに環境条件情報が格納されている。本実施形態における環境条件情報は、使用に適した温度の範囲及び湿度の範囲、並びに使用可能な温度の範囲及び湿度の範囲を含む。
【0083】
ジョブ記憶部201には、印刷ジョブが記憶されている。本実施形態における印刷ジョブは、ジョブ管理テーブルに格納されている。本実施形態における印刷ジョブは、使用する印刷用紙の種類を示す用紙情報を含む。印刷用紙の種類は、ユーザにより指定されてもよいし、印刷装置10にセットされている印刷用紙から自動的に検知してもよい。印刷ジョブは、当該印刷ジョブを完了しなければならない終了時刻を含んでもよい。
【0084】
モード受付部202は、印刷装置10の運転モードを示すモード情報をユーザ端末30から受信することで、モード情報の入力を受け付ける。モード受付部202は、印刷装置10の運転モードを、受信したモード情報が示す運転モードに設定する。
【0085】
本実施形態における運転モードは、通常印刷モード及び夜間印刷モードを含む。通常印刷モードは、平日日中等の就業時間内等、オペレータが存在する時間帯に用いられる。夜間印刷モードは、夜間休日等の就業時間外等、オペレータが不在となる時間帯に用いられる。
【0086】
指示受付部203は、印刷ジョブの実行指示を示す信号をユーザ端末30から受信することで、印刷ジョブの実行指示を受け付ける。当該実行指示には、実行する印刷ジョブを示す情報が含まれる。
【0087】
環境取得部204は、印刷装置10の周辺環境を示す環境情報を取得する。本実施形態における環境情報には、環境測定器40により検出された雰囲気温度及び雰囲気湿度に関する情報が含まれる。
【0088】
環境判定部205は、実行指示を受け付けた印刷ジョブで指定された印刷用紙に関する環境条件情報を環境条件記憶部200から取得する。環境判定部205は、環境取得部204により取得された環境情報が、取得した環境条件を満たすか否かを判定する。なお、環境判定部205は、環境条件取得部の一例である。
【0089】
環境条件記憶部200は、プリントサーバ20が備えなくともよく、プリントサーバ20とは異なる外部装置が備えてもよい。この場合、環境判定部205は、通信ネットワークN1を介して外部装置が備える環境条件記憶部200から環境条件情報を取得する。また、環境判定部205は、外部装置に記憶されている環境条件情報を、通信ネットワークN1を介して取得し、環境条件記憶部200に一時保存(キャッシュ)してもよい。
【0090】
動作制御部206は、モード受付部202により受け付けられたモード情報及び環境判定部205による判定結果に基づいて、印刷装置10の動作を制御する。動作制御部206は、モード情報が通常印刷モードを示すとき、通常印刷処理を実行する。動作制御部206は、モード情報が夜間印刷モードを示すとき、夜間印刷処理を実行する。
【0091】
印刷制御部207は、指示受付部203により受け付けられた実行指示に従って、印刷装置10に印刷ジョブを送信する。印刷制御部207は、環境判定部205により環境情報が環境条件を満たすと判定されたとき、動作制御部206により実行される。
【0092】
通知出力部208は、環境を調整すべき状態であることを示す警告等の通知メッセージをユーザ端末30に送信する。通知出力部208は、通常印刷モードに設定されているとき、環境判定部205により環境情報が環境条件を満たさないと判定された場合、動作制御部206により実行される。
【0093】
調整指示部209は、設備機器50に環境の調整を指示する信号を送信する。本実施形態における環境の調整とは、印刷装置10が設置された空間の温度及び湿度を、印刷用紙にとって適正な温度の範囲及び湿度の範囲となるように調整することを示す。調整指示部209は、夜間印刷モードに設定されているとき、環境情報が環境条件を満たさないと判断された場合、動作制御部206により実行される。
【0094】
(環境条件テーブル)
本実施形態における環境条件テーブルについて、図9を参照しながら説明する。図9は、本実施形態における環境条件テーブルの一例を示す概念図である。
【0095】
図9に示されているように、本実施形態における環境条件テーブルは、データ項目として、印刷用紙(媒体)を識別する識別情報(用紙コード)、印刷用紙の名称(用紙名)、印刷に適した温度の範囲(適正温度範囲)、印刷に適した湿度の範囲(適正湿度範囲)、印刷可能な温度の範囲(使用可能温度範囲)及び印刷可能な湿度の範囲(使用可能湿度範囲)を有する。
【0096】
印刷用紙(媒体)の種類は、例えば、普通紙、上質紙、コート紙、マット紙、レザック、厚紙又は薄紙(薄さ)、OHP(Overhead projector)シート等が挙げられ、紙に限られるものではなく、さまざまな媒体を含む。印刷用紙(媒体)の種類は、一般に使用される名称に限らず、例えば、原料、材質や表面の滑らかさ等に基づいて定義してもよい。なお、表面の滑らかさは、印刷用紙同士の密着性に大きく影響する。
【0097】
紙詰まり等の不具合は、雰囲気温度又は雰囲気湿度(その環境における空間の温度又は湿度)が低いほど発生確率が上昇しやすい。そのため、使用可能温度範囲及び使用可能湿度範囲は、適正温度範囲及び適正湿度範囲より低く設定される(ただし、印刷装置10の機種等の特性に応じて、雰囲気温度又は雰囲気湿度が高いほど同様の傾向がある場合などには適正温度範囲及び適正湿度範囲より高く設定されてもよく、これに限られるものではない。)。図9に示した例では、使用可能温度範囲の上限値及び下限値は、適正温度範囲の上限値及び下限値の80%に設定されている。同様に、使用可能湿度範囲の上限値及び下限値は、適正湿度範囲の上限値及び下限値の80%に設定されている。
【0098】
(ジョブ管理テーブル)
本実施形態におけるジョブ管理テーブルについて、図10を参照しながら説明する。図10は、本実施形態におけるジョブ管理テーブルの一例を示す概念図である。
【0099】
図10に示されているように、本実施形態におけるジョブ管理テーブルは、データ項目として、印刷ジョブを識別する識別情報(ジョブコード)、印刷ジョブの名称(ジョブ名)、使用する印刷用紙を識別する識別情報(用紙コード)及び印刷ジョブが完了しなければならない時刻(終了時刻)を有する。
【0100】
終了時刻の設定は任意であり、終了時刻を設定しなくともよい。終了時刻は、すべての印刷ジョブに共通の時刻を設定してもよいし、各印刷ジョブに異なる時刻を個別に設定してもよい。
【0101】
ジョブ管理テーブルは、印刷を行う印刷装置10を識別可能な情報(例えば、プリンタ名又はURI(Uniform Resource Identifier)等)を有してもよい。この場合、終了時刻は印刷装置10ごとに異なる終了時刻を設定してもよい。
【0102】
≪ユーザ端末の機能構成≫
図8に示されているように、本実施形態におけるユーザ端末30は、モード入力部301、印刷指示部302及び通知表示部303を備える。
【0103】
モード入力部301、印刷指示部302及び通知表示部303は、例えば、図7に示されているROM502からRAM503上に展開されたプログラムがCPU501及びネットワークI/F509に実行させる処理によって実現される。
【0104】
モード入力部301は、オペレータによる操作に応じて、モード情報を受け付ける。モード入力部301は、受け付けたモード情報をプリントサーバ20に送信する。
【0105】
印刷指示部302は、オペレータによる操作に応じて、印刷ジョブの実行指示を受け付ける。印刷指示部302は、受け付けた印刷ジョブの実行指示をプリントサーバ20に送信する。
【0106】
通知表示部303は、例えばプリントサーバ20から受信した警告などの通知メッセージを表示するための通知画面をディスプレイ506に表示する。
【0107】
<印刷方法の処理手順>
本実施形態における印刷方法の処理手順について、図11乃至図16を参照しながら説明する。図11は、本実施形態における印刷方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0108】
ステップS1において、ユーザ端末30のモード入力部301は、モード設定画面をディスプレイ506に表示する。モード設定画面は、ユーザが印刷装置10の運転モードを設定するための画面である。
【0109】
≪モード設定画面≫
本実施形態におけるモード設定画面について、図12を参照しながら説明する。図12は、本実施形態におけるモード設定画面の一例を示す図である。
【0110】
図12に示されているように、本実施形態におけるモード設定画面400は、モード選択欄401、設定ボタン408及びキャンセルボタン409を有する。
【0111】
モード選択欄401には、設定可能な運転モードが選択可能な態様で一覧表示される。図12に示す例では、通常印刷モード及び夜間印刷モードが、いずれか一方のみを選択可能なラジオボタンと共に表示されている。ただし、モード選択欄401の表示態様はこれに限定されず、いずれか1つの運転モードを排他的に選択可能な態様であれば、どのように表示してもよい。
【0112】
ユーザが設定ボタン408を押下すると、モード入力部301は、モード選択欄401で選択されている運転モードを示すモード情報の入力を受け付ける。モード入力部301は、受け付けたモード情報をプリントサーバ20に送信する。当該モード情報には、モード選択欄401で選択された運転モードを示す情報が含まれる。
【0113】
ユーザがキャンセルボタン409を押下すると、モード情報は受け付けられず、モード設定画面400が閉じる。ここでは、設定ボタン408が押下されたものとして説明を続ける。
【0114】
図11に戻って説明する。ステップS2において、プリントサーバ20のモード受付部202は、ユーザ端末30からモード情報を受信する。次に、モード受付部202は、受信したモード情報を受け付ける。続いて、モード受付部202は、印刷装置10の運転モードを、受け付けたモード情報で示される運転モードに設定する。印刷装置10の運転モードは、HDD504等の記憶部に記憶される。
【0115】
ここでは、ユーザの操作に応じて印刷装置10の運転モードを設定する方法を説明したが、運転モードの設定方法はこれに限定されない。例えば、印刷工場9の就業時間と連動して、始業時刻から終業時刻までの間は通常印刷モードとなり、終業時刻から翌営業日の始業時刻までの間は夜間印刷モードとなるように、自動的に運転モードが設定されるように構成してもよい。
【0116】
ステップS3において、ユーザ端末30の印刷指示部302は、ジョブ選択画面をディスプレイ506に表示する。ジョブ選択画面は、ユーザが実行する印刷ジョブを選択するための画面である。
【0117】
≪ジョブ選択画面≫
本実施形態におけるジョブ選択画面について、図13を参照しながら説明する。図13は、本実施形態におけるジョブ選択画面の一例を示す図である。
【0118】
図13に示されているように、本実施形態におけるジョブ選択画面410は、ジョブ選択欄411、実行ボタン418及びキャンセルボタン419を有する。
【0119】
ジョブ選択欄411には、実行可能な印刷ジョブが選択可能な態様で一覧表示される。図13に示す例では、ジョブ管理テーブルに格納されている印刷ジョブに関する情報が、それぞれを選択可能なチェックボックスと共に表示されている。ただし、ジョブ選択欄411の表示態様はこれに限定されず、各印刷ジョブを個々に選択可能な態様であれば、どのように表示してもよい。また、ジョブ選択欄411は、いずれか1つの印刷ジョブを排他的に選択可能な態様で表示してもよい。
【0120】
ユーザが実行ボタン418を押下すると、印刷指示部302は、ジョブ選択欄411で選択されている印刷ジョブの実行指示を受け付ける。印刷指示部302は、受け付けた実行指示をプリントサーバ20に送信する。当該実行指示には、ジョブ選択欄411で選択された印刷ジョブのジョブコードが含まれる。ジョブ選択欄411で複数の印刷ジョブが選択された場合、実行指示には複数のジョブコードが含まれる。
【0121】
ユーザがキャンセルボタン419を押下すると、印刷ジョブの実行指示は受け付けられず、ジョブ選択画面410が閉じる。ここでは、実行ボタン418が押下されたものとして説明を続ける。
【0122】
図11に戻って説明する。ステップS4において、プリントサーバ20の指示受付部203は、ユーザ端末30から印刷ジョブの実行指示を受信する。次に、指示受付部203は、受信した実行指示を環境判定部205に送る。
【0123】
ステップS5において、プリントサーバ20は、記憶部に記憶されている現在の運転モードを判定する。運転モードが通常印刷モードである場合、プリントサーバ20は、ステップS6に処理を進める。一方、運転モードが夜間印刷モードである場合、プリントサーバ20は、ステップS7に処理を進める。
【0124】
ステップS6において、プリントサーバ20は、通常印刷処理を実行する。通常印刷処理は、通常印刷モードに設定されているときに実行する処理である。
【0125】
≪通常印刷処理≫
本実施形態における通常印刷処理について、図14及び図15を参照しながら詳細に説明する。図14は、本実施形態における通常印刷処理(図11のステップS6)の一例を示すフローチャートである。
【0126】
ステップS11において、プリントサーバ20の環境取得部204は、印刷装置10周辺の雰囲気温度及び雰囲気湿度を環境測定器40から取得する。次に、環境取得部204は、取得した雰囲気温度及び雰囲気湿度を含む環境情報を環境判定部205に送る。
【0127】
ステップS12において、プリントサーバ20の環境判定部205は、指示受付部203から印刷ジョブの実行指示を受け取る。次に、環境判定部205は、受け取った実行指示で指定された印刷ジョブを、ジョブ記憶部201に記憶されているジョブ管理テーブルから読み出す。続いて、環境判定部205は、読み出した印刷ジョブに含まれる用紙情報を取得する。
【0128】
ステップS13において、プリントサーバ20の環境判定部205は、ステップS12で取得した用紙情報に関する環境条件情報を、環境条件記憶部200に記憶されている環境条件テーブルから読み出す。これにより、環境判定部205は、印刷ジョブで指定された印刷用紙の環境条件を取得する。
【0129】
ステップS14において、プリントサーバ20の環境判定部205は、環境情報を環境取得部204から受け取る。次に、環境判定部205は、受け取った環境情報が、ステップS13で取得した環境条件を満たすか否かを判定する。続いて、環境判定部205は、判定結果を動作制御部206に送る。
【0130】
具体的には、環境判定部205は、環境情報に含まれる雰囲気温度が環境条件に含まれる適正温度範囲に含まれ、かつ、環境情報に含まれる雰囲気湿度が環境条件に含まれる適正湿度範囲に含まれる場合、環境情報が環境条件を満たすと判定する。一方、環境判定部205は、環境情報に含まれる雰囲気温度が環境条件に含まれる適正温度範囲に含まれない、又は、環境情報に含まれる雰囲気湿度が環境条件に含まれる適正湿度範囲に含まれない場合、環境情報が環境条件を満たさないと判定する。
【0131】
動作制御部206は、判定結果を環境判定部205から受け取る。次に、動作制御部206は、受け取った判定結果が環境条件を満たすことを示す場合(YES)、ステップS15に処理を進める。一方、動作制御部206は、受け取った判定結果が環境条件を満たさないことを示す場合(NO)、ステップS16に処理を進める。
【0132】
ステップS15において、プリントサーバ20の印刷制御部207は、ステップS4で受け付けた実行指示に従って、印刷装置10に印刷ジョブを送信する。印刷装置10は、プリントサーバ20から印刷ジョブを受信し、当該印刷ジョブに従って印刷を開始する。
【0133】
ステップS16において、プリントサーバ20の通知出力部208は、環境を調整すべき状態であることを示す通知メッセージをユーザ端末30に送信する。ユーザ端末30では、通知表示部303が、通知メッセージをプリントサーバ20から受信する。ユーザ端末30は、受信した通知メッセージを示す通知画面をディスプレイ506に表示する。
【0134】
≪通知画面≫
本実施形態における通知画面について、図15を参照しながら説明する。図15は、本実施形態における通知画面の一例を示す図である。
【0135】
図15に示されているように、本実施形態における通知画面420は、環境を調整すべき状態であることを示す通知メッセージ421及びOKボタン422を有する。通知メッセージ421には、印刷用紙にとって適正な温度及び湿度ではないことを通知する内容、及び適正な温度及び湿度に調整することを提案する内容が含まれている。
【0136】
図11に戻って説明する。ステップS7において、プリントサーバ20は、夜間印刷処理を実行する。夜間印刷処理は、夜間印刷モードに設定されているときに実行する処理である。
【0137】
≪夜間印刷処理≫
本実施形態における夜間印刷処理について、図16を参照しながら詳細に説明する。図16は、本実施形態における夜間印刷処理(図11のステップS7)の一例を示すフローチャートである。なお、図16中の「A」はページ内結合子であり、ステップS17からステップS11に戻ることを表している。
【0138】
ステップS11からS15までの処理は、通常印刷処理と同様である。そのため、これらの処理については説明を省略する。
【0139】
ステップS17において、設備機器50が調整指示部209など外部から指示する信号に応じた制御可能な機器である場合、プリントサーバ20の調整指示部209は、設備機器50に環境の調整を指示する信号を送信する。環境の調整を指示する信号には、設備機器50のON/OFFの指示(例えば、設備機器50のIPアドレスに対して0,1での制御指示を送信するなど)のほか、印刷用紙に応じた適正な温度の範囲及び湿度の範囲を示す情報が含まれてもよい。
【0140】
設備機器50は、プリントサーバ20から環境の調整を指示する信号を受信する。設備機器50が空気調和機である場合、設備機器50は、受信した信号に含まれる適正な温度の範囲を目標温度として、冷房機能又は暖房機能の運転を開始する。設備機器50が加湿機能を有する機器である場合、設備機器50は、受信した信号に含まれる適正な湿度の範囲を目標湿度として、加湿機能の運転を開始する。
【0141】
調整指示部209は、環境の調整を指示する信号を送信した後、ステップS11に処理を戻す。その後、プリントサーバ20は、ステップS11からステップS17までの処理を再度実行する。なお、ステップS14を2回目以降に実行するときには、環境条件に含まれる使用可能温度範囲及び使用可能湿度範囲を満たせば、環境情報が環境条件を満たすと判定してもよい。
【0142】
上記のように構成することで、印刷装置10の周辺環境が印刷媒体の環境条件を満たすまで、印刷ジョブの開始を停止することができる。言い替えると、印刷装置10は、周辺環境が印刷媒体に適した環境となったときに印刷を開始することができる。その結果、印刷装置10の周辺環境が印刷媒体に適した状態で印刷が実行され、又は印刷装置10の周辺環境が変化した場合であっても、紙詰まり等の不具合が発生する確率を低減することができる。
【0143】
<第1実施形態の効果>
本実施形態におけるプリントサーバ20は、印刷装置10の周辺環境が印刷用紙の環境条件を満たすとき、印刷装置10に印刷ジョブを送信する。本実施形態におけるプリントサーバ20は、印刷に適した環境のときに印刷指示を行うため、印刷装置10における紙詰まり等の不具合が発生しにくい。したがって、本実施形態におけるプリントサーバ20によれば、たとえ長時間に及ぶ大量の印刷であってもより確実に完了させたい印刷工場等のオペレータにとって、より効率的に印刷を実行するために、印刷装置10の周辺環境が印刷用紙の環境条件を満たすか否かに応じた印刷装置10の動作を制御することができる。
【0144】
本実施形態におけるプリントサーバ20は、周辺環境として温度又は湿度に関する情報を取得し、環境条件として印刷用紙の使用に適した温度の範囲及び湿度の範囲を含む。印刷装置10の雰囲気温度又は雰囲気湿度が印刷用紙の使用に適した温度又は湿度であれば、紙詰まり等の不具合が発生しにくい。したがって、本実施形態におけるプリントサーバ20によれば、たとえ長時間に及ぶ大量の印刷であってもより確実に完了させたい印刷工場等のオペレータにとって、より効率的に印刷を実行するために、印刷装置10の雰囲気温度又は雰囲気湿度に応じた印刷装置10の動作を制御することができる。
【0145】
本実施形態におけるプリントサーバ20は、印刷装置10の運転モードの入力を受け付け、運転モードに応じて印刷装置10の周辺環境が印刷用紙の環境条件を満たさないときの動作を決定する。周辺環境が環境条件を満たさないときの動作は、環境を調整すべき旨を示す通知を出力すること、及び外部装置に環境の調整を指示する信号を出力することを含む。したがって、本実施形態におけるプリントサーバ20は、印刷装置10の周辺環境が印刷用紙の環境条件を満たさないときに、印刷装置10の運転モードに応じて適切に動作することができ、より効率的な印刷装置10の動作を制御することができる。
【0146】
[第2実施形態]
第1実施形態では、夜間印刷モードに設定されている場合、印刷装置10の周辺環境が印刷用紙の環境条件を満たしたときに印刷を開始するように構成した。第2実施形態では、夜間印刷モードに設定されている場合、印刷装置10の周辺環境が印刷用紙の環境条件を満たさなくとも、所望の終了時刻までに印刷ジョブを完了できるように印刷を開始するように構成する。
【0147】
夜間印刷モードは、オペレータが不在となる時間帯に設定されるが、印刷ジョブの実行指示はオペレータが手動で入力する必要がある。このとき、オペレータは印刷用紙及びトナーなどの記録材の量、並びに印刷装置10の雰囲気温度及び雰囲気湿度を調整することができる。そのため、印刷装置10の周辺環境が印刷用紙にとって不適な状態に変化し、紙詰まり等の不具合が発生する確率は高いものではない。その確率は、印刷エリア90の断熱性や気密性、又は空調設備903等の性能に依存するが、例えば5%未満である。
【0148】
一方、印刷装置10の周辺環境が印刷用紙の環境条件を満たさないまま翌営業日まで印刷が実行されないと、翌営業日の始業時刻以降に手動で印刷を開始することになる。夜間印刷モードで行う印刷ジョブは数時間を要するものが想定されるため、印刷工場9全体の生産性を低下させる要因にもなる。
【0149】
本実施形態では、印刷ジョブに終了時刻が設定されているとき、その終了時刻までに印刷ジョブを完了するために印刷を開始しなければならない開始時刻を計算する。印刷装置10の周辺環境が印刷用紙の環境条件を満たしていなくとも、印刷ジョブの開始時刻を経過したときには、印刷を開始するように印刷装置10を制御する。
【0150】
<印刷システムの機能構成>
本実施形態における印刷システムの機能構成について、図17を参照しながら説明する。図17は、本実施形態における印刷システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
【0151】
図17に示されているように、本実施形態におけるプリントサーバ20は、環境条件記憶部200、ジョブ記憶部201、モード受付部202、指示受付部203、環境取得部204、環境判定部205、動作制御部206、印刷制御部207、通知出力部208、調整指示部209及び印刷計画部210を備える。すなわち、本実施形態におけるプリントサーバ20は、第1実施形態と比較して、印刷計画部210を備える点が異なる。
【0152】
印刷計画部210は、終了時刻が設定されている印刷ジョブについて、当該印刷ジョブの開始時刻を計算する。開始時刻は、終了時刻までに印刷ジョブを完了するために印刷を開始しなければならない時刻である。印刷計画部210は、印刷ジョブにおける印刷容量及び印刷装置10の印刷性能に基づいて、当該印刷ジョブの処理時間を計算し、終了時刻から逆算することで、開始時刻を求める。
【0153】
印刷ジョブの処理時間は、印刷データの容量及び印刷装置10の印刷性能に基づいて、公知の手法で計算することができる。例えば、少なくとも印刷ジョブの印刷装置におけるCPU処理時間及び処理するデータ量等を乗じた計算式などに基づいて、ジョブの処理時間の概算を見積もる方法を用いてもよい。
【0154】
<印刷方法の処理手順>
本実施形態における印刷方法の処理手順について説明する。本実施形態における印刷方法は、第1実施形態と比較して、夜間印刷処理が異なる。
【0155】
≪夜間印刷処理≫
本実施形態における夜間印刷処理について、図18及び図19を参照しながら詳細に説明する。図18は、本実施形態における夜間印刷処理(図11のステップS7)の一例を示すフローチャートである。なお、図18中の「A」はページ内結合子であり、ステップS17からステップS11に戻ることを表している。
【0156】
ステップS11からS17の処理は、ステップS14における分岐先を除いて、第1実施形態と同様である。そのため、これらの処理については説明を省略する。
【0157】
ステップS14において、プリントサーバ20の動作制御部206は、環境判定部205による判定結果が環境条件を満たすことを示す場合(YES)、ステップS15に処理を進める。一方、動作制御部206は、環境判定部205による判定結果が環境条件を満たさないことを示す場合(NO)、ステップS21に処理を進める。
【0158】
ステップS21において、プリントサーバ20の印刷計画部210は、ステップS4で受け付けた印刷ジョブに終了時刻が設定されているか否かを判定する。次に、印刷計画部210は、印刷ジョブに終了時刻が設定されているとき、当該印刷ジョブの開始時刻を計算する。続いて、印刷計画部210は、計算した開始時刻を動作制御部206に送る。
【0159】
(開始時刻計算処理)
本実施形態における開始時刻計算処理について、図19を参照しながら詳細に説明する。図19は、本実施形態における開始時刻計算処理(図18のステップS21)の一例を示すフローチャートである。
【0160】
ステップS31において、印刷計画部210は、環境判定部205に印刷ジョブを要求する。環境判定部205は、印刷計画部210からの要求に応じて、印刷ジョブを印刷計画部210に送る。印刷計画部210は、環境判定部205から受け取った印刷ジョブに含まれる終了時刻を取得する。
【0161】
ステップS32において、印刷計画部210は、印刷ジョブに終了時刻が設定されているか否かを判定する。終了時刻が設定されている場合(YES)、印刷計画部210は、ステップS33に処理を進める。終了時刻が設定されていない場合(NO)、印刷計画部210は、開始時刻計算処理を終了する。
【0162】
ステップS33において、印刷計画部210は、ステップS31で受け取った印刷ジョブに含まれる印刷データを取得する。次に、印刷計画部210は、印刷データに基づいてジョブ容量を計算する。
【0163】
ステップS34において、印刷計画部210は、印刷装置10の処理性能を取得する。印刷装置10の処理性能は、プリントサーバ20の記憶部等に予め記憶しておいてもよいし、所定のプロトコルに基づいて印刷装置10から取得してもよい。
【0164】
ステップS35において、印刷計画部210は、ステップS33で計算した印刷ジョブのジョブ容量及びステップS34で取得した印刷装置10の処理性能に基づいて、印刷ジョブの処理時間を計算する。印刷ジョブの処理時間は、印刷ジョブを開始してから完了するまでに要する時間長である。
【0165】
ステップS36において、印刷計画部210は、ステップS35で計算した処理時間を印刷ジョブの終了時刻から減算する。これにより、印刷計画部210は、印刷ジョブの開始時刻を計算することができる。
【0166】
図18に戻って説明する。ステップS22において、プリントサーバ20の動作制御部206は、現在時刻が開始時刻を経過しているか否かを判定する。現在時刻が開始時刻を経過している場合(YES)、動作制御部206は、ステップS15に処理を進める。一方、現在時刻が開始時刻を経過していない場合(NO)、動作制御部206は、ステップS17に処理を進める。
【0167】
ステップS15において、プリントサーバ20の印刷制御部207は、ステップS4で受け付けた印刷ジョブの実行指示に従って、印刷装置10に印刷ジョブを送信する。印刷装置10は、プリントサーバ20から印刷ジョブを受信し、当該印刷ジョブに従って印刷を開始する。
【0168】
ステップS17において、プリントサーバ20の調整指示部209は、設備機器50に環境の調整を指示する信号を送信する。調整指示部209は、環境の調整を指示する信号を送信した後、ステップS11に処理を戻す。その後、プリントサーバ20は、ステップS11からステップS17までの処理を再度実行する。これにより、印刷装置10の周辺環境が印刷用紙の環境条件を満たさなくとも、印刷ジョブを終了時刻までに完了できるように印刷を開始することができる。
【0169】
<第2実施形態の効果>
本実施形態におけるプリントサーバ20は、指定された終了時刻までに印刷ジョブを完了するための開始時刻を計算し、現在時刻が当該開始時刻を経過したとき、印刷装置10に印刷ジョブを送信する。印刷工場等にとって、オペレータの不在時間等を活用しつつ所望の終了時刻までに印刷が完了していることが望ましく、印刷処理が開始されずに無駄な時間を費やすことも不都合で非効率である。したがって、本実施形態におけるプリントサーバ20によれば、印刷装置10の周辺環境が印刷用紙の環境条件を満たさなくとも、一律的に印刷を開始しない制御だけでなく、指定された終了時刻(例えば、オペレータの休憩時間や空き期間終了後、又は就業時間終了前にセットした翌営業日の就業開始時刻など)があれば、終了時刻を優先して印刷処理を開始し、所望の終了時刻までに印刷ジョブを完了するための、より効率的な印刷処理の実行が実現できる。
【0170】
[補足]
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
【0171】
[1] 印刷媒体が指定又は検知された印刷ジョブの実行指示を受け付ける受付部と、
印刷装置の周辺環境を示す環境情報を取得する環境取得部と、
前記印刷媒体に応じた環境条件を示す環境条件情報を取得する環境条件取得部と、
前記環境情報が前記環境条件を満たすとき、前記印刷装置に前記印刷ジョブを送信する印刷制御部と、
を備える情報処理装置。
【0172】
[2] 上記[1]に記載の情報処理装置であって、
前記環境条件取得部は、複数の前記印刷媒体に関する前記環境条件情報を記憶する記憶部から、指定又は検知された前記印刷媒体に関する前記環境条件情報を取得する、
情報処理装置。
【0173】
[3] 上記[1]又は上記[2]に記載の情報処理装置であって、
前記環境情報は、温度及び湿度の少なくとも一方に関する情報を含み、
前記環境条件は、前記印刷媒体の使用に適した温度の範囲及び湿度の範囲の少なくとも一方を含む、
情報処理装置。
【0174】
[4] 上記[3]に記載の情報処理装置であって、
前記印刷装置の運転モードを示すモード情報の入力を受け付けるモード受付部と、
前記モード情報に基づいて、前記環境情報が前記環境条件を満たさないときの動作を決定する動作制御部と、
をさらに備える情報処理装置。
【0175】
[5] 上記[1]から上記[4]のいずれかに記載の情報処理装置であって、
前記環境情報が前記環境条件を満たさないとき、環境を調整すべき旨を示す通知を出力する通知出力部をさらに備える、
情報処理装置。
【0176】
[6] 上記[1]から上記[4]のいずれかに記載の情報処理装置であって、
前記環境情報が前記環境条件を満たさないとき、外部装置に環境の調整を指示する信号を出力する調整指示部をさらに備える、
情報処理装置。
【0177】
[7] 上記[6]に記載の情報処理装置であって、
前記外部装置は、空気調和機能又は加湿機能を有する設備機器の少なくとも一方を含む、
情報処理装置。
【0178】
[8] 上記[1]から上記[4]のいずれかに記載の情報処理装置であって、
前記印刷ジョブで指定された終了時刻に前記印刷ジョブが完了するための開始時刻を計算する印刷計画部をさらに備え、
前記印刷制御部は、前記環境情報が前記環境条件を満たさず、かつ、現在時刻が前記開始時刻を経過したとき、前記印刷装置に前記印刷ジョブを送信する、
情報処理装置。
【0179】
[9] 印刷装置、情報処理端末及び情報処理装置がネットワークを介して通信可能な印刷システムであって、
前記情報処理端末は、
印刷媒体が指定又は検知された印刷ジョブの実行指示を前記情報処理装置に送信する印刷指示部を備え、
前記情報処理装置は、
前記実行指示を前記情報処理端末から受信する受付部と、
印刷装置の周辺環境を示す環境情報を取得する環境取得部と、
前記印刷媒体に応じた環境条件を示す環境条件情報を取得する環境条件取得部と、
前記環境情報が前記環境条件を満たすとき、前記印刷装置に前記印刷ジョブを送信する印刷制御部と、
を備える印刷システム。
【0180】
[10] コンピュータが、
印刷媒体が指定又は検知された印刷ジョブの実行指示を受け付ける手順と、
印刷装置の周辺環境を示す環境情報を取得する手順と、
前記印刷媒体に応じた環境条件を示す環境条件情報を取得する手順と、
前記環境情報が前記環境条件を満たすとき、前記印刷装置に前記印刷ジョブを送信する手順と、
を実行する印刷方法。
【0181】
[11] 上記[10]に記載の印刷方法であって、
前記環境条件を取得する手順は、複数の前記印刷媒体に関する前記環境条件情報を記憶する記憶部から、指定又は検知された前記印刷媒体に関する前記環境条件情報を取得する、
印刷方法。
【0182】
[12] 上記[10]又は上記[11]に記載の印刷方法であって、
前記環境情報は、温度及び湿度の少なくとも一方に関する情報を含み、
前記環境条件は、前記印刷用紙の使用に適した温度の範囲及び湿度の範囲の少なくとも一方を含む、
印刷方法。
【0183】
[13] 上記[12]に記載の印刷方法であって、
前記印刷装置の運転モードを示すモード情報の入力を受け付ける手順と、
前記モード情報に基づいて、前記環境情報が前記環境条件を満たさないときの動作を決定する手順と、
をさらに実行する印刷方法。
【0184】
[14] 上記[10]から上記[13]のいずれかに記載の印刷方法であって、
前記環境情報が前記環境条件を満たさないとき、環境を調整すべき旨を示す通知を出力する手順をさらに実行する、
印刷方法。
【0185】
[15] 上記[10]から上記[13]のいずれかに記載の印刷方法であって、
前記環境情報が前記環境条件を満たさないとき、外部装置に環境の調整を指示する信号を出力する手順をさらに実行する、
印刷方法。
【0186】
[16] 上記[15]に記載の印刷方法であって、
前記外部装置は、空気調和機能又は加湿機能を有する設備機器の少なくとも一方を含む、
印刷方法。
【0187】
[17] 上記[10]から上記[13]のいずれかに記載の印刷方法であって、
前記印刷ジョブで指定された終了時刻に前記印刷ジョブが完了するための開始時刻を計算する印刷方法をさらに実行し、
前記送信する手順は、前記環境情報が前記環境条件を満たさず、かつ、現在時刻が前記開始時刻を経過したとき、前記印刷装置に前記印刷ジョブを送信する、
印刷方法。
【0188】
[18] コンピュータに、
印刷媒体が指定又は検知された印刷ジョブの実行指示を受け付ける手順と、
印刷装置の周辺環境を示す環境情報を取得する手順と、
前記印刷媒体に応じた環境条件を示す環境条件情報を取得する環境条件取得部と、
前記環境情報が前記環境条件を満たすとき、前記印刷装置に前記印刷ジョブを送信する手順と、
を実行させるためのプログラム。
【0189】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等の機器を含むものとする。
【0190】
実施例に記載された装置群は、本明細書に開示された実施形態を実施するための複数のコンピューティング環境のうちの1つを示すものにすぎない。ある実施形態では、プリントサーバ20は、サーバクラスタといった複数のコンピューティングデバイスを含む。複数のコンピューティングデバイスは、ネットワークや共有メモリなどを含む任意のタイプの通信リンクを介して互いに通信するように構成されており、本明細書に開示された処理を実施することができる。
【0191】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0192】
1 印刷システム
10 印刷装置
11 給紙ユニット
12 排紙ユニット
13 操作パネル
20 プリントサーバ
30 ユーザ端末
40 環境測定器
50 設備機器
101 書込みユニット
102 作像ユニット
103 中間転写ベルト
104 二次転写部
105 定着部
110 制御装置
200 環境条件記憶部
201 ジョブ記憶部
202 モード受付部
203 指示受付部
204 環境取得部
205 環境判定部
206 動作制御部
207 印刷制御部
208 通知出力部
209 調整指示部
210 印刷計画部
301 モード入力部
302 印刷指示部
303 通知表示部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0193】
【特許文献1】特開平11-208076号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19