(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149579
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】処理装置、処理装置の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G07C 9/25 20200101AFI20241010BHJP
G07B 15/00 20110101ALI20241010BHJP
【FI】
G07C9/25
G07B15/00 L
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024124107
(22)【出願日】2024-07-31
(62)【分割の表示】P 2023104929の分割
【原出願日】2020-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168310
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼橋 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】入江 富美
(72)【発明者】
【氏名】吉村 義崇
(57)【要約】
【課題】審査対象者の国籍によらず出入国審査の自動化を1台の装置で実現するゲート装置を提供する。
【解決手段】ゲート装置は、特定部と、指紋認証部と、ゲート制御部と、を備える。特定部は、審査対象者の国籍を特定する。指紋認証部は、審査対象者の国籍が第1の国である場合、審査対象者の指紋を取得し、取得された指紋を用いた指紋認証を行う。ゲート制御部は、審査対象者の指紋認証に成功した場合に国籍が第1の国の審査対象者が通行可能となるようにゲートを制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
審査対象者の国籍を特定する、特定手段と、
前記審査対象者の国籍が第1の国である場合、前記審査対象者の第1の生体情報を取得し、前記取得された第1の生体情報を用いた認証を行い、前記審査対象者の国籍が第2の国である場合、前記審査対象者の第1の生体情報を用いた認証を行わない、認証手段と、 を備える、処理装置。
【請求項2】
前記特定手段は、前記審査対象者の第2の生体情報をサーバ装置に送信することに応じて前記サーバ装置から受信した情報に基づいて、前記審査対象者の国籍を特定する、請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
入国審査に用いられる、請求項1又は2に記載の処理装置。
【請求項4】
処理装置において、
審査対象者の国籍を特定し、
前記審査対象者の国籍が第1の国である場合、前記審査対象者の第1の生体情報を取得し、前記取得された第1の生体情報を用いた認証を行い、前記審査対象者の国籍が第2の国である場合、前記審査対象者の第1の生体情報を用いた認証を行わない、処理装置の制御方法。
【請求項5】
処理装置に搭載されたコンピュータに、
審査対象者の国籍を特定する処理と、
前記審査対象者の国籍が第1の国である場合、前記審査対象者の第1の生体情報を取得し、前記取得された第1の生体情報を用いた認証を行い、前記審査対象者の国籍が第2の国である場合、前記審査対象者の第1の生体情報を用いた認証を行わない処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート装置、ゲート装置の制御方法及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
空港において入国審査が行われる。当該入国審査の担当官は、パスポートに貼付された顔写真と面前の人物の顔を比較し、パスポートの顔画像と面前の人物の顔が一致しない場合に当該人物の出入国を許可しない。
【0003】
また、近年では、上記入国審査を自動的に行う装置が導入されている。例えば、特許文献1に開示されたゲート装置は、パスポートに貼付された顔画像とゲート装置の面前に立つ人物の顔画像の照合結果により当該人物の出入国を審査する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
日本国における入国審査では、審査対象者の国籍に応じて審査内容が異なる。具体的には、日本国籍を有する人物(日本人)の入国審査では指紋の採取は不要である。対して、外国籍を有する人物(外国人)の入国審査では指紋の採取が必要である。
【0006】
このように、審査対象者の国籍に応じて入国審査の内容が異なる。上記審査内容の相違には、当然に入国審査を自動的に行う装置(以下、自動入国審査装置と表記する)も対応している必要がある。そのため、日本人を対象にした自動入国審査装置と外国人を対象にした自動入国審査装置が入国審査エリアに設置されている必要がある。しかし、このような対応は、スペースの限られた入国審査エリアでは許容されない。
【0007】
本発明は、審査対象者の国籍によらず出入国審査の自動化を1台の装置で実現することに寄与する、ゲート装置、ゲート装置の制御方法及び記憶媒体を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の視点によれば、審査対象者の国籍を特定する、特定部と、前記審査対象者の国籍が第1の国である場合、前記審査対象者の指紋を取得し、前記取得された指紋を用いた指紋認証を行う、指紋認証部と、前記審査対象者の指紋認証に成功した場合に前記国籍が第1の国の審査対象者が通行可能となるようにゲートを制御する、ゲート制御部と、を備える、ゲート装置が提供される。
【0009】
本発明の第2の視点によれば、ゲート装置において、審査対象者の国籍を特定し、前記審査対象者の国籍が第1の国である場合、前記審査対象者の指紋を取得し、前記取得された指紋を用いた指紋認証を行い、前記審査対象者の指紋認証に成功した場合に前記国籍が第1の国の審査対象者が通行可能となるようにゲートを制御する、ゲート装置の制御方法が提供される。
【0010】
本発明の第3の視点によれば、ゲート装置に搭載されたコンピュータに、審査対象者の国籍を特定する処理と、前記審査対象者の国籍が第1の国である場合、前記審査対象者の指紋を取得する処理と、前記取得された指紋を用いた指紋認証を行う処理と、前記審査対象者の指紋認証に成功した場合に前記国籍が第1の国の審査対象者が通行可能となるようにゲートを制御する処理と、を実行させるプログラムを記憶する、コンピュータ読取可能な記憶媒体が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の各視点によれば、審査対象者の国籍によらず出入国審査の自動化を1台の装置で実現することに寄与する、ゲート装置、ゲート装置の制御方法及び記憶媒体が提供される。なお、本発明の効果は上記に限定されない。本発明により、当該効果の代わりに、又は当該効果と共に、他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態の概要を説明するための図である。
【
図2】第1の実施形態に係る入国審査システムの概略構成の一例を示す図である。
【
図3】第1の実施形態に係るサーバ装置の処理構成の一例を示す図である。
【
図4】ゲート利用者データベースの一例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態に係るサーバ装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態に係るゲート装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図7】第1の実施形態に係るゲート装置の処理構成の一例を示す図である。
【
図9】第1の実施形態に係る指紋認証部の動作を説明するための図である。
【
図10】第1の実施形態に係る出入国システムの動作の一例を示すシーケンス図である。
【
図11】第2の実施形態に係るゲート装置の処理構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
はじめに、一実施形態の概要について説明する。なお、この概要に付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、この概要の記載はなんらの限定を意図するものではない。また、特段の釈明がない場合には、各図面に記載されたブロックはハードウェア単位の構成ではなく、機能単位の構成を表す。各図におけるブロック間の接続線は、双方向及び単方向の双方を含む。一方向矢印については、主たる信号(データ)の流れを模式的に示すものであり、双方向性を排除するものではない。なお、本明細書及び図面において、同様に説明されることが可能な要素については、同一の符号を付することにより重複説明が省略され得る。
【0014】
一実施形態に係るゲート装置100は、特定部101と、指紋認証部102と、ゲート制御部103と、を備える(
図1参照)。特定部101は、審査対象者の国籍を特定する。指紋認証部102は、審査対象者の国籍が第1の国(例えば、日本国以外の国)である場合、審査対象者の指紋を取得し、取得された指紋を用いた指紋認証を行う。ゲート制御部103は、審査対象者の指紋認証に成功した場合に国籍が第1の国の審査対象者が通行可能となるようにゲートを制御する。
【0015】
ゲート装置100は、例えば、事前に登録された利用者のMRZ情報に基づき利用者の国籍を特定する。ゲート装置100は、例えば、審査対象者が正しいパスポートを所持した外国人であれば当該利用者の指紋認証に成功した後に、入国審査を終了しゲートを開く。対して、ゲート装置100は、例えば、審査対象者の国籍が第2の国(例えば、日本国)であれば、正しいパスポートを所持していることが確認できたことを条件に入国審査を終了し、ゲートを開く。このように、1台のゲート装置100により、利用者の国籍によらず利用者の入国審査を完了することができる。
【0016】
以下に具体的な実施形態について、図面を参照してさらに詳しく説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
第1の実施形態について、図面を用いてより詳細に説明する。
【0018】
図2は、第1の実施形態に係る入国審査システムの概略構成の一例を示す図である。
図2を参照すると、入国審査システムには、複数のゲート装置10-1~10-3と、サーバ装置20と、が含まれる。なお、以降の説明において、ゲート装置10-1~10-3を区別する特段の理由がない場合には単に「ゲート装置10」と表記する。また、
図2には3台のゲート装置10を図示しているがシステムに含まれるゲート装置10の台数を限定する趣旨ではないことは勿論である。入国審査システムには、少なくとも1台以上のゲート装置10が含まれていればよい。
【0019】
ゲート装置10は、利用者の出入国に関する審査手続きを自動的に行う装置である。ゲート装置10は、開閉可能に構成されたゲートを備えている。ゲート装置10は、自装置の面前に位置する人物が入国審査を通過したと判断した場合に、ゲートを開門して利用者の通過を許可する。このように、ゲート装置10は、利用者の入国審査の結果に応じてゲートを制御する。
【0020】
サーバ装置20は、上記ゲート装置10による出入国の審査を実現するための装置である。例えば、サーバ装置20は、ゲート装置10を利用可能な利用者に関する情報(以下、ゲート利用者情報と表記する)を記憶する。具体的には、サーバ装置20は、利用者の生体情報と当該利用者に対して発行されたパスポートの機械読取領域(Machine Readable Zone;MRZ)に記載された情報(以下、MRZ情報と表記する)を対応付けて記憶する。
【0021】
利用者の生体情報には、例えば、顔、指紋、声紋、静脈、網膜、瞳の虹彩の模様(パターン)といった個人に固有の身体的特徴から計算されるデータ(特徴量)が例示される。あるいは、利用者の生体情報は、顔画像、指紋画像等の画像データであってもよい。利用者の生体情報は、利用者の身体的特徴を情報として含むものであればよい。
【0022】
パスポートのMRZに記載された情報(MRZ情報)には、利用者の姓名、国籍、性別、生年月日、旅券番号、有効期間満了日等が含まれる。
【0023】
ゲート装置10とサーバ装置20は、有線又は無線の通信手段により相互に通信可能に構成されている。サーバ装置20は、ゲート装置10と同じ空港内に設置されていてもよいし、ネットワーク(クラウド)上に設置されていてもよい。
【0024】
[入国審査システムの概略動作]
続いて、
図2を参照しつつ、第1の実施形態に係る入国審査システムの概略動作について説明する。
【0025】
入国審査システムの利用者に関するゲート利用者情報が、例えば、利用者の出国前にサーバ装置20に登録される。つまり、利用者の搭乗日前又は搭乗日当日の出発前にゲート利用者情報がサーバ装置20に登録される。サーバ装置20は、ゲート利用者情報を格納するためのデータベースを備え、利用者登録がなされると、当該データベースに各利用者のエントリが追加される。なお、以降の説明において、ゲート利用者情報を格納するためのデータベースを「ゲート利用者データベース」と表記する。ゲート利用者データベースには、少なくとも1以上の利用者の生体情報と、当該少なくとも1以上の利用者に発行されたパスポートの機械読取領域に記載されたMRZ情報と、が対応付けて記憶される。
【0026】
利用者は、搭乗日に出発空港を訪れる。利用者は、チェックイン、セキュリティチェック等の搭乗のための手続きが終了すると航空機に搭乗する。利用者を乗せた航空機が到着空港(ゲート装置10が設置された空港)に到着すると、利用者は、ゲート装置10が設置されたエリア(入国審査場)に移動する。
【0027】
利用者は、入国審査場に到着すると、ゲート装置10に向かって移動する。
【0028】
ゲート装置10は、利用者が自装置(ゲート装置10)に近づくと(利用者と自装置の間の距離が所定の距離以下となると)、当該利用者から生体情報を取得(生成)する。なお、ゲート装置10が取得する生体情報は、サーバ装置20にゲート利用者情報として登録された生体情報と同種の情報とする。
【0029】
ゲート装置10は、当該取得した生体情報をサーバ装置20に送信する。より具体的には、ゲート装置10は、上記取得した生体情報を含む「照合要求」をサーバ装置20に送信する。
【0030】
サーバ装置20は、受信した生体情報をキーとしてゲート利用者データベースを検索し、当該受信した生体情報に対応するMRZ情報を特定する。サーバ装置20は、当該特定したMRZ情報を含む応答(照合要求に対する応答)をゲート装置10に送信する。
【0031】
ゲート装置10は、取得したMRZ情報に基づき審査対象者の国籍を特定する。上述のように、MRZ情報にはパスポート所持者の国籍が含まれているので、ゲート装置10は、MRZ情報から利用者の国籍を知ることができる。
【0032】
利用者は、ゲート装置10に到着すると、ゲート装置10に設けられた読取機(後述する読取機316)の上に所持するパスポートをかざす(パスポートを読取機にタッチする)。即ち、利用者は、駅の改札にて交通系IC(Integrated Circuit)カードをカードリーダに接触させるように、パスポートをゲート装置10の読取機に接触させる。
【0033】
ゲート装置10は、読取機を介してパスポートのICチップに記載された情報の読み出しを試みる。ゲート装置10は、ICチップの格納された情報の読み出しに成功すると利用者が正しいパスポートを所持していると判断する。
【0034】
ゲート装置10は、利用者が日本人であり(利用者の国籍が日本国であり)、当該利用者が正しいパスポートを所持している場合には、ゲートを開く。
【0035】
利用者が外国人(利用者の国籍が日本国以外)の場合には、ゲート装置10は、利用者に対して指紋スキャナに両手を置くように指示する。例えば、ゲート装置10は、上記指示を液晶モニタ等に表示してもよいし、上記指示を音声で通知してもよい。
【0036】
ゲート装置10は、指紋スキャナを利用して指紋の採取を試みる。ゲート装置10は、採取した指紋を用いた照合処理を行う。ゲート装置10は、指紋を用いた照合に成功し、且つ、当該利用者(外国人の利用者)が正しいパスポートを所持している場合に、ゲートを開く。
【0037】
利用者は、ゲートを通過し、入国審査が終了する。
【0038】
このように、第1の実施形態に係る入国審査システムでは、事前にゲート利用者情報をサーバ装置20に登録し、当該登録されたゲート利用者情報のMRZ情報を用いて利用者の国籍を特定する。ゲート装置10は、利用者の国籍に応じて指紋を採取するか否かを決定する。
【0039】
続いて、第1の実施形態に係る入国審査システムに含まれる各装置の詳細について説明する。なお、以降の説明では、サーバ装置20に登録される生体情報として人の「顔」に関する情報を例に取り説明する。
【0040】
[サーバ装置]
図3は、第1の実施形態に係るサーバ装置20の処理構成(処理モジュール)の一例を示す図である。
図3を参照すると、サーバ装置20は、通信制御部201と、利用者情報登録部202と、第1の照合部203と、記憶部204と、を含む。
【0041】
通信制御部201は、他の装置との間の通信を制御する手段である。具体的には、通信制御部201は、ゲート装置10からデータ(パケット)を受信する。また、通信制御部201は、ゲート装置10に向けてデータを送信する。
【0042】
利用者情報登録部202は、ゲート利用者情報を取得し、記憶部204に構築されたゲート利用者データベースに当該取得したゲート利用者情報を登録する手段である。ゲート利用者情報の取得には任意の方法を用いることができる。
【0043】
例えば、パスポートの発行窓口において担当職員がゲート利用者情報をサーバ装置20に登録してもよい。具体的には、担当職員がスキャナを操作し、パスポートの顔写真とMRZが記載されたページを読み取る。担当職員は、端末(発行窓口に設置されたコンピュータ)を操作し、上記読み取られたデータ(画像データ)をサーバ装置20に送信する。あるいは、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の外部記憶装置を介して上記読み取られたデータがサーバ装置20に入力されてもよい。
【0044】
空港におけるチェックイン手続きの際に上記データ(顔写真、MRZを含む画像データ)がサーバ装置20に入力されてもよい。具体的には、航空会社の職員が、利用者のパスポートを確認する際、上記顔写真とMRZが記載されたページを、スキャナを用いて読み取る。航空会社の職員が、当該読み取られたデータを端末からサーバ装置20に向けて送信してもよい。
【0045】
あるいは、所謂、自動チェックイン機を用いて利用者自身が上記顔写真とMRZが記載されたページを読み取ってもよい。この場合、自動チェックイン機から当該読み取られたデータがサーバ装置20に向けて送信される。
【0046】
利用者が、パスポートの顔写真とMRZが記載されたページを撮影し、顔写真及びMRZを含む画像データを取得してもよい。具体的には、利用者は、スマートフォン等を利用しパスポートの顔写真とMRZが含まれるページを撮影する。その後、スマートフォン等から上記撮影された画像データがサーバ装置20に送信される。
【0047】
あるいは、外国に渡航した利用者の履歴が保存されたデータベースから上記顔写真とMRZを含む画像データが取得されてもよい。具体的には、過去に有人の出入国ブースにて顔写真とMRZが取得され、データベースに登録されている場合には、当該データベースから上記画像データがサーバ装置20に送信されてもよい。
【0048】
利用者情報登録部202は、上記説明したいずれかの方法又は他の方法により、利用者のパスポートに記載された顔写真とMRZを含む画像データを取得する。
【0049】
利用者情報登録部202は、取得した画像データに含まれる顔画像から特徴点を抽出する。なお、特徴点の抽出処理に関しては既存の技術を用いることができるのでその詳細な説明を省略する。例えば、利用者情報登録部202は、顔画像から目、鼻、口等を特徴点として抽出する。その後、利用者情報登録部202は、特徴点それぞれの位置や各特徴点間の距離を特徴量として計算し、複数の特徴量からなる特徴ベクトル(顔画像を特徴づけるベクトル情報)を生成する。
【0050】
利用者情報登録部202は、MRZ情報が含まれる画像データからMRZ情報を抽出する。具体的には、利用者情報登録部202は、光学文字認識(Optical Character Recognition:OCR)技術を用いて画像データからMRZ情報を抽出する。
【0051】
利用者情報登録部202は、上記生成された特徴ベクトルと抽出されたMRZ情報を対応付けてゲート利用者データベースに登録する。
【0052】
図4は、ゲート利用者データベースの一例を示す図である。
図4に示すように、顔画像から生成された特徴ベクトルが生体情報として登録される。また、各生体情報(特徴ベクトル)に対応するMRZ情報がゲート利用者データベースに登録される。
【0053】
第1の照合部203は、ゲート装置10が送信する照合要求を処理する手段である。具体的には、第1の照合部203は、照合要求に含まれる生体情報(特徴ベクトル)を照合対象に設定し、ゲート利用者データベースに登録された生体情報との間で照合処理を行う。
【0054】
より具体的には、第1の照合部203は、照合要求から取り出した特徴ベクトルを照合対象に設定し、ゲート利用者データベースに登録されている複数の特徴ベクトルとの間で1対N(Nは正の整数、以下同じ)照合を実行する。
【0055】
第1の照合部203は、照合対象の特徴ベクトルと登録側の複数の特徴ベクトルそれぞれとの間の類似度を計算する。当該類似度には、カイ二乗距離やユークリッド距離等を用いることができる。なお、距離が離れているほど類似度は低く、距離が近いほど類似度が高い。
【0056】
第1の照合部203は、ゲート利用者データベースに登録された複数の特徴ベクトルのうち、照合対象の特徴ベクトルとの間の類似度が所定の値以上、且つ、最も類似度が高い特徴ベクトルを特定する。
【0057】
第1の照合部203は、1対N照合の結果得られる特徴ベクトル(生体情報)に対応するMRZ情報をゲート利用者データベースから読み出す。第1の照合部203は、当該読み出したMRZ情報を、照合要求の送信元のゲート装置10に送信する(照合要求に応答する)。
【0058】
例えば、
図4の例では、ゲート装置10から取得した特徴ベクトルFVが、ゲート利用者データベースに格納された特徴ベクトルFV1に最も類似していれば、対応するMRZ01がゲート装置10に送信される。
【0059】
第1の照合部203は、上記1対N照合を実行した結果、照合要求に含まれる生体情報に一致する生体情報がゲート利用者データベースに登録されていなければその旨をゲート装置10に通知する。例えば、第1の照合部203は、「None」を設定し、ゲート装置10に応答する。
【0060】
あるいは、第1の照合部203は、ゲート装置10に対して何らの応答をしないことで、照合要求に含まれる生体情報がゲート利用者データベースに不存在であることをゲート装置10に通知してもよい。この場合、照合要求を送信したゲート装置10は、サーバ装置20から所定期間の間にサーバ装置20から応答を受信できないことにより、照合要求に含まれる生体情報がゲート利用者データベースに不存在であることを認識する。
【0061】
記憶部204は、サーバ装置20の動作に必要な各種情報を記憶する。また、上述のように、記憶部204にゲート利用者データベースが構築される。
【0062】
図5は、第1の実施形態に係るサーバ装置20のハードウェア構成の一例を示す図である。サーバ装置20は、情報処理装置(所謂、コンピュータ)により構成可能であり、
図5に例示する構成を備える。例えば、サーバ装置20は、プロセッサ211、メモリ212、入出力インターフェイス213及び通信インターフェイス214等を備える。上記プロセッサ211等の構成要素は内部バス等により接続され、相互に通信可能に構成されている。
【0063】
但し、
図5に示す構成は、サーバ装置20のハードウェア構成を限定する趣旨ではない。サーバ装置20は、図示しないハードウェアを含んでもよいし、必要に応じて入出力インターフェイス213を備えていなくともよい。また、サーバ装置20に含まれるプロセッサ211等の数も
図5の例示に限定する趣旨ではなく、例えば、複数のプロセッサ211がサーバ装置20に含まれていてもよい。
【0064】
プロセッサ211は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等のプログラマブルなデバイスである。あるいは、プロセッサ211は、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のデバイスであってもよい。プロセッサ211は、オペレーティングシステム(OS;Operating System)を含む各種プログラムを実行する。
【0065】
メモリ212は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等である。メモリ212は、OSプログラム、アプリケーションプログラム、各種データを格納する。
【0066】
入出力インターフェイス213は、図示しない表示装置や入力装置のインターフェイスである。表示装置は、例えば、液晶ディスプレイ等である。入力装置は、例えば、キーボードやマウス等のユーザ操作を受け付ける装置である。
【0067】
通信インターフェイス214は、他の装置と通信を行う回路、モジュール等である。例えば、通信インターフェイス214は、NIC(Network Interface Card)等を備える。
【0068】
サーバ装置20の機能は、各種処理モジュールにより実現される。当該処理モジュールは、例えば、メモリ212に格納されたプログラムをプロセッサ211が実行することで実現される。また、当該プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録することができる。記憶媒体は、半導体メモリ、ハードディスク、磁気記録媒体、光記録媒体等の非トランジェント(non-transitory)なものとすることができる。即ち、本発明は、コンピュータプログラム製品として具現することも可能である。また、上記プログラムは、ネットワークを介してダウンロードするか、あるいは、プログラムを記憶した記憶媒体を用いて、更新することができる。さらに、上記処理モジュールは、半導体チップにより実現されてもよい。
【0069】
[ゲート装置]
続いて、第1の実施形態に係るゲート装置10について説明する。
【0070】
図6は、第1の実施形態に係るゲート装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。
図6を参照すると、ゲート装置10は、プロセッサ311と、メモリ312と、入出力装置313と、通信インターフェイス314と、カメラ装置315と、読取機316と、指紋スキャナ317と、ゲート318と、を備える。
【0071】
なお、プロセッサ311、メモリ312及び通信インターフェイス314に関しては、
図5を用いて説明したサーバ装置20の対応する要素と同一とすることができるので詳細な説明を省略する。
【0072】
入出力装置313は、ゲート装置10に情報を入力するための装置(例えば、タッチパネル)や情報を出力するための装置(例えば、液晶モニタ)である。
【0073】
カメラ装置315は、例えば、ゲート装置10の前方を撮影可能に設置されたデジタルカメラである。カメラ装置315は任意の場所に設置することができる。例えば、カメラ装置315はゲート装置10の本体に設置されていてもよいし、ゲート装置10から離れた場所に設置されていてもよい。カメラ装置315は、ゲート装置10に近づいてくる利用者(特に、利用者の顔)を撮影可能であれば、どのような場所に設置されていてもよい。
【0074】
読取機316は、パスポートから情報を読み出す装置である。読取機316は、パスポートに搭載されたICチップにアクセスする機能と、載置されたパスポートのページをスキャンする機能と、を備える。即ち、読取機316は、パスポートのICチップと非接触の状態にて情報(データ)をやり取りするカードリーダとしての機能と、パスポートから画像を取得するパスポートリーダ(スキャナ)としての機能と、を備える。読取機316は任意の場所に設置することができる。ただし、読取機316は、利用者がパスポートを容易に当該装置に触れることができる場所に設置されるのが好ましい。なお、本願開示では、読取機316は、カードリーダとしての機能とパスポートリーダとしての機能を備えるものとして説明するが、これら2つの機能が異なる装置により実現されていても良いことは勿論である。
【0075】
指紋スキャナ317は、人の指紋を取得する装置である。指紋スキャナ317は、最大で10本の指から指紋を採取できる。
【0076】
ゲート318は、利用者が入国審査を通過した場合に、利用者の通行を遮る待機時の閉鎖状態から利用者の通行を許可する開放状態に移行する。ゲート318の方式は、特に限定されるものではなく、例えば、通路の片側又は両側から設けられたフラッパーが開閉するフラッパーゲート、3本バーが回転するターンスタイルゲート等である。
【0077】
図7は、第1の実施形態に係るゲート装置10の処理構成(処理モジュール)の一例を示す図である。
図7を参照すると、ゲート装置10は、通信制御部301と、生体情報取得部302と、照合要求部303と、パスポート所持判定部304と、国籍特定部305と、指紋認証部306と、ゲート制御部307と、記憶部308と、を含む。
【0078】
通信制御部301は、サーバ装置20の通信制御部201と同様に他の装置との間の通信を制御する手段である。
【0079】
生体情報取得部302は、ゲート装置10を通過しようとする利用者の生体情報を取得する手段である。例えば、生体情報取得部302は、カメラ装置315を制御し、自装置(ゲート装置10)に向かって歩いてくる人物の顔画像を取得する。例えば、生体情報取得部302は、常時又は定期的に撮影する画像中に利用者の顔を検出すると、当該利用者の顔を撮影してその顔画像を取得する。
【0080】
生体情報取得部302は、撮影した画像に含まれる顔領域のサイズが所定値以上である場合に、当該顔領域を画像から抽出してもよい。この場合、上記所定値(閾値)を適切に調整することで、ゲート装置10から所定の距離に位置する利用者の顔画像を取得することができる。つまり、ゲート装置10から遠く離れた位置の利用者が撮影され、顔認証(サーバ装置20による1対N照合)に不適な生体情報がサーバ装置20に送信されることを防ぐことができる。
【0081】
あるいは、生体情報取得部302は、距離センサ等を用いてゲート装置10と利用者の間の距離を測定し、所定位置に存在する利用者の顔画像を取得するようにしてもよい。
【0082】
生体情報取得部302は、取得した顔画像を照合要求部303に引き渡す。
【0083】
照合要求部303は、取得した顔画像に対応する人物の生体情報がゲート利用者データベースに登録されているか否かの照合をサーバ装置20に要求する手段である。具体的には、照合要求部303は、取得した顔画像から特徴量を計算し、当該複数の特徴量からなる特徴ベクトルを生成する(サーバ装置20に登録された生体情報に対応する特徴ベクトルを生成する)。
【0084】
照合要求部303は、当該生成された特徴ベクトル(生体情報)を含む照合要求を生成し、通信制御部301を介して当該生成された照合要求をサーバ装置20に送信する。
【0085】
例えば、照合要求部303は、自装置の識別子(以下、ゲート識別子と表記する)、特徴ベクトル等を含む照合要求を生成する(
図8参照)。なお、ゲート識別子には、ゲート装置10のMAC(Media Access Control)アドレスやIP(Internet Protocol)アドレスを用いることができる。
【0086】
照合要求部303は、通信制御部301を介して照合要求に対するサーバ装置20からの応答を受信する。照合要求部303は、サーバ装置20からの応答(1対N照合により特定された特徴ベクトルに対応するMRZ情報)をパスポート所持判定部304、国籍特定部305に引き渡す。
【0087】
パスポート所持判定部304は、ゲート装置10を通過しようとしている利用者が正しいパスポートを所持しているか否かを判定する手段である。具体的には、パスポート所持判定部304は、照合要求部303から取得したMRZ情報を用いて読取機316にかざされているパスポートのICチップから情報を読み取れるか否かを試みる。
【0088】
ここで、下記参考文献1の「IC旅券の安全対策」に記載されたように、パスポートのICチップに格納された情報は、同じパスポートに記載されたMRZ情報をパスワードとして暗号化(変換)されている。
<参考文献1>
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/passport/ic_faq.html#11
【0089】
パスポート所持判定部304は、サーバ装置20から取得したMRZ情報を用いてICチップから情報を読み出せた場合(情報の復号に成功した場合)には、ゲート装置10を通過しようとする利用者は正しいパスポートを所持していると判定する。
【0090】
対して、パスポート所持判定部304は、サーバ装置20から取得したMRZ情報を用いてICチップから情報を読み出せない場合には、ゲート装置10を通過しようとする利用者は正しいパスポートを所持していないと判定する。
【0091】
このように、パスポート所持判定部304は、MRZ情報を用いてICチップから情報を読み出すことに成功すれば(暗号が復号できれば)利用者が正しいパスポートを所持していると判定する。従って、パスポート所持判定部304は、ICチップから読み出した情報の内容を確認してもよいし確認しなくともよい。
【0092】
パスポート所持判定部304は、ゲート装置10を通過しようとする利用者が正しいパスポートを所持していると判定した場合には、その旨をゲート制御部307に通知する。
【0093】
パスポート所持判定部304は、ゲート装置10を通過しようとする利用者が正しいパスポートを所持していないと判定した場合には、特段の動作は行わない。即ち、ゲート装置10を通過しようとする利用者が正しいパスポートを所持していないと判定された場合には、ゲート318が開門することはない。
【0094】
国籍特定部305は、ゲート装置10を通過しようとしている利用者の国籍を特定する手段である。具体的には、国籍特定部305は、照合要求部303から取得したMRZ情報に基づき利用者の国籍が日本国であるのか外国であるのか特定する。国籍特定部305は、特定結果(日本国、外国)を指紋認証部306及びゲート制御部307に通知する。
【0095】
指紋認証部306は、利用者の指紋を用いた認証(指紋認証)を行う手段である。具体的には、指紋認証部306は、指紋スキャナ317を用いて利用者の指紋を取得する。指紋認証部306は、利用者の国籍が「日本国」である場合には特段の動作を行わない。即ち、指紋認証部306は、利用者が日本人であれば、指紋の取得(採取)を行わない。
【0096】
対して、指紋認証部306は、利用者の国籍が「外国」である場合には、利用者の指紋を取得する。例えば、指紋認証部306は、利用者の国籍が日本国以外である場合、当該利用者に対して指紋を採取する動作をすることを指示する。例えば、指紋認証部306は、
図9に示すような内容のメッセージを液晶モニタ等に表示する。指紋認証部306は、指紋スキャナ317を制御して指紋画像を取得する。指紋認証部306は、取得した指紋画像の品質(画質)を確認し、所定の基準を満たしていればステータスを「指紋取得成功」に設定する。対して、指紋認証部306は、取得した指紋画像が所定の基準を満たしていなければステータスを「指紋取得失敗」に設定する。
【0097】
なお、上記所定の基準には、例えば、指紋の稜線が明瞭に写っている面積(有効面積)の大きさとすることができる。あるいは、取得した指紋画像と予め定めたテンプレート画像を比較し、その一致度(類似度)が上記所定の基準に設定されてもよい。あるいは、指紋画質の判定に機械学習により得られた学習モデルが使用されてもよい。例えば、指紋の鑑識官が基準を満たしていると判断した指紋画像を多数収集し、当該指紋画像にラベルを付与して教師データとして学習モデルを生成することができる。学習モデルの生成には、サポートベクタマシン、ブースティングやニューラルネットワーク等の任意のアルゴリズムを用いることができる。なお、上記サポートベクタマシン等のアルゴリズムは公知の技術を使用することができるので、その説明を省略する。指紋認証部306は、取得した指紋画像を学習モデルに入力し、ラベル付きの指紋画像との類似度に応じて指紋画像の品質を判定してもよい。
【0098】
指紋認証部306は、指紋取得失敗の場合には、指紋を再取得する旨を利用者に通知すると共に、指紋の再取得を行う。指紋認証部306は、所定の基準を満たした指紋が取得できた場合(ステータスが指紋取得成功の場合)、当該指紋(指紋画像)を用いた認証処理を実行する。
【0099】
例えば、指紋認証部306は、取得した指紋が犯罪者の指紋に該当しないか否かをチェックし、取得した指紋が犯罪者の指紋に該当しない場合に「認証成功」と判定する。即ち、指紋認証部306は、犯罪者の指紋画像を集めたブラックリストを参照し、当該リストに取得した指紋画像が含まれていない場合に認証成功と判定する。
【0100】
あるいは、指紋認証部306は、取得した指紋画像が予め登録された指紋画像に含まれる場合に、認証成功と判定してもよい。即ち、指紋認証部306は、ホワイトリストを参照し、当該リストに取得した指紋画像が登録されている場合に、認証成功と判定してもよい。
【0101】
あるいは、指紋認証部306は、取得した指紋画像を指紋認証サーバ(
図2等に図示せず)に送信してもよい。指紋認証サーバは、上述のブラックリストやホワイトリストを用いた照合処理(認証処理)を実行し、その結果をゲート装置10に送信してもよい。
【0102】
なお、指紋認証部306による認証処理(照合処理)には既存の技術を用いることができるので詳細な説明は省略する。指紋認証部306は、2つの指紋画像の類似度を示すスコアを算出し、当該スコアに基づき認証処理を行えばよい。なお、上記スコアは、指紋画像の特徴点の位置や特徴点に挟まれた芯線の数等により算出される。
【0103】
指紋認証部306は、指紋認証の結果(指紋認証成功、指紋認証失敗)をゲート制御部307に通知する。
【0104】
ゲート制御部307は、ゲート装置10が備えるゲート318を制御する手段である。
【0105】
ゲート制御部307は、利用者の国籍が「日本国」である場合には、パスポート所持判定部304の判定結果が「正しいパスポート所持」である場合にゲート318を開門する。
【0106】
対して、ゲート制御部307は、利用者の国籍が「外国」である場合には、パスポート所持判定部304の判定結果が「正しいパスポート所持」であり、且つ、指紋認証部306からの通知が「指紋認証成功」である場合に、ゲート318を開門する。
【0107】
ゲート制御部307は、ゲート318の通行が許可された利用者(入国審査を通過した利用者)がゲート318を通過した後に当該ゲート318を閉門する。
【0108】
[入国審査システムの動作]
次に、第1の実施形態に係る入国審査システムの動作について説明する。
【0109】
図10は、第1の実施形態に係る出入国システムの動作の一例を示すシーケンス図である。なお、
図10は、利用者の搭乗日におけるシステム動作の一例を示すシーケンス図である。
図10の動作に先立ち、利用者の「ゲート利用者情報」は予めサーバ装置20に登録されているものとする。
【0110】
利用者が自装置に近づいてくると、ゲート装置10は、当該利用者から生体情報を取得する(ステップS01)。例えば、ゲート装置10は、利用者の顔画像を取得する。
【0111】
顔画像の取得に成功すると、ゲート装置10は、利用者の生体情報を含む照合要求をサーバ装置20に向けて送信する(ステップS02)。具体的には、ゲート装置10は、顔画像から特徴ベクトルを算出し、当該算出した特徴ベクトルを含む照合要求をサーバ装置20に送信する。
【0112】
照合要求を取得したサーバ装置20は、照合要求から生体情報(特徴ベクトル)を抽出し、当該特徴ベクトルを用いてゲート利用者データベースに登録された生体情報との間で1対N照合を実行する(ステップS03)。サーバ装置20は、ゲート利用者データベースに登録された複数の生体情報のうちゲート装置10から取得した生体情報に最も類似する生体情報を検索する。
【0113】
サーバ装置20は、上記1対N照合の結果特定されたMRZ情報を含む応答をゲート装置10(照合要求を送信したゲート装置10)に向けて送信する(ステップS04)。
【0114】
ゲート装置10は、利用者が正しいパスポートを所持しているか否かを判定する(ステップS05)。具体的には、ゲート装置10は、受信したMRZ情報を用いて読取機316にかざされたパスポートのICチップから情報の読み取りを行い、情報が読み取れた場合に利用者は正しいパスポートを所持していると判定する。ゲート装置10は、パスポートのICチップから情報を読み取れない場合には、当該利用者は正しいパスポートを所持していないと判定する。
【0115】
ゲート装置10は、サーバ装置20から取得したMRZ情報に基づき利用者の国籍を特定する(ステップS06)。
【0116】
ゲート装置10は、利用者が外国人であれば(利用者の国籍が日本国以外であれば)、当該利用者の指紋を用いた指紋認証を実行する(ステップS07、Yes分岐;ステップS08)。ゲート装置10は、利用者が日本人であれば指紋認証に係る動作を行わない。
【0117】
その後、ゲート装置10は、ゲート318の開閉制御を行う(ステップS09)。具体的には、ゲート装置10は、利用者が日本人の場合には、当該利用者が正しいパスポートを所持していることが確認できればゲート318を開く。対して、ゲート装置10は、利用者が外国人の場合には、当該利用者が正しいパスポートを所持していることに加え、利用者から取得した指紋を使った指紋認証に成功した場合に、ゲート318を通行可能に制御する。
【0118】
以上のように、第1の実施形態に係る入国審査システムでは、ゲート装置10の利用を希望する利用者の生体情報を事前にサーバ装置20に登録しておく。その上で、搭乗日になってゲート装置10の前に利用者が現れると、ゲート装置10は当該利用者の生体情報を取得し、当該取得した生体情報がサーバ装置20に登録されているか否かを問い合わせる(生体情報を利用した1対N照合をサーバ装置20に依頼する)。当該照合の結果、利用者の生体情報がサーバ装置20に登録されていることが確認されると、ゲート装置10は、利用者が提示するパスポートが真に当該利用者のパスポートであるか否かを確認する。具体的には、ゲート装置10は、サーバ装置20から顔認証の結果により特定されたMRZ情報を用いて、パスポートのICチップから情報を読み出せるか否かを確認する。さらに、ゲート装置10は取得したMRZ情報に基づき利用者の国籍を特定する。ゲート装置10は、利用者が正しいパスポートを所持した外国人であれば当該利用者の指紋認証に成功した後に、入国審査を終了する。一方、ゲート装置10は、利用者が日本人であれば正しいパスポートを所持していることが確認できたことを条件に入国審査を終了する。その結果、利用者の国籍によらず1台のゲート装置10で利用者の入国審査を完了することができる。即ち、第1の実施形態に係る入国審査システムでは、1つの顔認証自動化ゲートにより、指紋取得(指紋認証)が必要な外国人と指紋取得が不要な日本人の入国審査を実現することができる。
【0119】
[第2の実施形態]
続いて、第2の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0120】
第1の実施形態では、サーバ装置20に登録されたゲート利用者情報の生体情報とMRZ情報に矛盾(齟齬)がないことを前提としている。ゲート利用者情報を公的機関の職員が登録する場合には、上記矛盾が生じることは想定し難いが利用者がゲート利用者情報をサーバ装置20に登録する場合には上記矛盾が生じる可能性が僅かに存在する。
【0121】
上記矛盾が存在すると、正しい入国審査が行えず問題が生じる。第2の実施形態では、ゲート装置10においても照合処理を行うことでより確実な入国審査を実現する場合について説明する。
【0122】
なお、第2の実施形態において、入国審査システムの概略構成やサーバ装置20の処理構成は第1の実施形態と同様とすることができるので
図2や
図3等に相当する説明を省略する。以下、第1の及び第2の実施形態の相違点を中心に説明する。
【0123】
図11は、第2の実施形態に係るゲート装置10の処理構成(処理モジュール)の一例を示す図である。
図11を参照すると、
図7に示す構成に対して第2の照合部309が追加されている。
【0124】
第2の照合部309は、利用者の生体情報と当該利用者が読取機316に接触させたパスポートのICチップから読み出した生体情報が一致するか否かの照合(1対1照合)を行う手段である。
【0125】
生体情報取得部302は、取得した生体情報(例えば、カメラ装置315を用いて撮影された利用者の顔画像)を記憶部308に格納する。
【0126】
パスポート所持判定部304は、サーバ装置20から取得したMRZ情報を使ってICチップから情報を読み出すことに成功した場合には、読み出した情報のうち顔画像を第2の照合部309に引き渡す。
【0127】
第2の照合部309は、パスポート所持判定部304から取得した顔画像と記憶部308に格納されている顔画像の照合(1対1照合)を実行する。具体的には、第2の照合部309は、2つの画像それぞれから特徴ベクトルを算出する。その後、第2の照合部309は、当該2つの画像の類似度(例えば、ユークリッド距離)を算出し、当該算出した類似度に対する閾値処理の結果に基づき、2つの画像が同一人物の顔画像か否かを判定する。例えば、類似度が所定の値よりも大きければ(距離が所定の値よりも短ければ)、第2の照合部309は2つの顔画像は同一人物によるものと判定する。
【0128】
第2の照合部309は、1対1照合に成功すると(面前の利用者の顔画像と提示されたパスポートのICチップから読み出した顔画像が一致すると)、利用者は正しいパスポートを所持していると判定する。
【0129】
なお、第2の実施形態において、国籍特定部305は、MRZ情報から利用者の国籍を特定してもよいし、ICチップから読み出した情報から利用者の国籍を特定してもよい。パスポートのICチップにはパスポート所持者の氏名、国籍等の情報が記録されている。
【0130】
このように、ゲート装置10は、利用者から取得した生体情報と、利用者から提示されるICチップから読み出した生体情報との照合が成功した場合に、当該利用者は正しいパスポートを所持していると判定する。即ち、ゲート装置10は、上記2つの生体情報それぞれから得られる特徴ベクトル同士の距離が所定の距離よりも短く、2つの生体情報が実質的に同一と判断できる場合に、利用者が正しいパスポートを所持していると判定する。
【0131】
以上のように、第2の実施形態では、ゲート装置10に取り付けられたカメラ装置315から得られる利用者の顔画像と当該利用者から提示されたパスポートのICチップから読み出した顔画像に関する1対1照合を実行する。ゲート装置10は、当該1対1照合の結果、本人認証に成功した場合に利用者は正しいパスポートを所持していると判定する。即ち、サーバ装置20に登録されたゲート利用者情報に矛盾があり第1の実施形態では問題となるような場合にも、第2の実施形態では最終的な本人認証を行うことで、本来、ゲート装置10を通過してはならない利用者がゲート装置10を通過することを防止できる。第2の実施形態では、サーバ装置20における1対N照合の後にゲート装置10にて1対1照合を行うことで、ゲート装置10を通過しようとする利用者が正しいパスポート(自分のパスポート)を所持していることを担保している。
【0132】
[変形例]
なお、上記実施形態にて説明した入国審査システムの構成、動作等は例示であって、システムの構成等を限定する趣旨ではない。
【0133】
例えば、サーバ装置20の持つ機能の全部又は一部がゲート装置10にて実現されてもよい。あるいは、サーバ装置20が備えるゲート利用者データベースは他のデータベースサーバに構築されていてもよい。
【0134】
上記実施形態では、ゲート装置10が入国審査にて使用される場合について説明したが、ゲート装置10は出国審査にて使用されてもよい。また、上記実施形態では、日本国に設置されたゲート装置10が日本人からの指紋採取を行わない場合について説明した。しかし、本願開示は、日本国以外の入国審査にも適用可能であることは勿論である。例えば、国籍Aの利用者は指紋採取を免除され、国籍Bの利用者は指紋採取が必要であるような場合に本願開示を適用できる。即ち、本願開示は、出入国の審査対象者の国籍に応じて審査内容(指紋採取が不要、指紋採取が必要)が変わるような場合に適用可能である。
【0135】
上記実施形態では、ゲート装置10とサーバ装置20の間で顔画像から算出された特徴ベクトルを送受信する場合について説明したが、ゲート装置10から顔画像がサーバ装置20に送信されてもよい。この場合、ゲート装置10から顔画像を含む照合要求がサーバ装置20に送信され、サーバ装置20が受信した顔画像から特徴ベクトルを算出して1対N照合を実行すればよい。あるいは、サーバ装置20のユーザ情報データベースにも特徴ベクトルではなく顔画像が登録され、照合の都度特徴量が算出されてもよい。
【0136】
上記実施形態では、1枚の画像に1つの顔領域が含まれることを想定しているが、審査場の状況によっては複数の顔領域が1枚の画像に含まれることがある。この場合、ゲート装置10は、自装置に最も近い顔領域を抽出し生体情報をサーバ装置20に送信してもよい。例えば、ゲート装置10は、各顔領域の面積を計算し面積の最も大きい顔領域を抽出してもよい。あるいは、カメラ装置315に奥行方向の距離が測定可能なデプスカメラ等を採用し、カメラ装置315からの距離を測定し、より近いほうの人物の顔画像を抽出してもよい。
【0137】
上記実施形態では、ゲート装置10は、サーバ装置20から取得したMRZ情報から利用者の国籍を特定する場合について説明したが、ゲート装置10がパスポートのMRZから利用者の国籍を直接取得してもよい。
【0138】
上記実施形態では、主に「顔」を生体情報としてゲート装置10やサーバ装置20の動作を説明したが、本願開示で利用可能な生体情報は「顔」に限定されない。虹彩等の他の生体情報を用いることができる。
【0139】
ゲート装置10とサーバ装置20の間のデータ送受信の形態は特に限定されないが、これら装置間で送受信されるデータは暗号化されていてもよい。顔画像や当該顔画像から算出される特徴量は個人情報であり当該個人情報を適切に保護するためには、暗号化されたデータが送受信されることが望ましい。
【0140】
上記実施形態では、パスポートのICチップからMRZ情報を用いて情報を取得する場合について説明したが、当該本願開示の手法は他の方法にも適用可能である。つまり、パスポートに類似するカード等に搭載されたICチップから情報を読み出す際にMRZ情報に相当する情報が用いられてもよい。
【0141】
上記実施形態では、指紋認証部306は外国人の指紋を取得し、当該取得された指紋を用いた認証に成功した場合に、ゲート318を開門する場合について説明した。しかし、ゲート装置10(指紋認証部306)は、外国人から指紋を取得できたことを条件にゲート318を開門してもよい。
【0142】
上記説明で用いた流れ図(フローチャート、シーケンス図)では、複数の工程(処理)が順番に記載されているが、実施形態で実行される工程の実行順序は、その記載の順番に制限されない。実施形態では、例えば各処理を並行して実行する等、図示される工程の順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。
【0143】
上記の実施形態は本願開示の理解を容易にするために詳細に説明したものであり、上記説明したすべての構成が必要であることを意図したものではない。また、複数の実施形態について説明した場合には、各実施形態は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。例えば、実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることや、実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、実施形態の構成の一部について他の構成の追加、削除、置換が可能である。
【0144】
上記の説明により、本発明の産業上の利用可能性は明らかであるが、本発明は、空港の入国審査システムなどに好適に適用可能である。
【0145】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
[付記1]
審査対象者の国籍を特定する、特定部と、
前記審査対象者の国籍が第1の国である場合、前記審査対象者の指紋を取得し、前記取得された指紋を用いた指紋認証を行う、指紋認証部と、
前記審査対象者の指紋認証に成功した場合に前記国籍が第1の国の審査対象者が通行可能となるようにゲートを制御する、ゲート制御部と、
を備える、ゲート装置。
[付記2]
前記指紋認証部は、前記審査対象者の国籍が第2の国である場合に、前記国籍が第2の国である審査対象者の指紋を取得しない、付記1に記載のゲート装置。
[付記3]
前記特定部は、パスポートの機械読取領域に記載されたMRZ(Machine Readable Zone)情報に基づき前記審査対象者の国籍を特定する、付記2に記載のゲート装置。
[付記4]
前記特定部は、パスポートのIC(Integrated Circuit)チップから読み出された情報に基づき前記審査対象者の国籍を特定する、付記2に記載のゲート装置。
[付記5]
前記審査対象者の生体情報を取得する、取得部と、
利用者の生体情報と、前記利用者に発行されたパスポートの機械読取領域に記載されたMRZ(Machine Readable Zone)情報と、を対応付けて記憶する、サーバ装置に前記審査対象者の生体情報の照合を要求する、照合要求部と、
前記照合により特定されたMRZ情報を用いてパスポートのIC(Integrated Circuit)チップから情報を読み出すことに成功した場合に、前記審査対象者が正しいパスポートを所持していると判定する、判定部と、
をさらに備え、
前記ゲート制御部は、前記審査対象者が正しいパスポートを所持している場合に、前記審査対象者が通行可能となるように前記ゲートを制御する、付記2乃至4のいずれか一に記載されたゲート装置。
[付記6]
前記ゲート制御部は、前記審査対象者から取得した生体情報と前記ICチップから読み出した生体情報との照合が成功した場合に、前記審査対象者が通行可能となるように前記ゲートを制御する、付記5に記載のゲート装置。
[付記7]
前記指紋認証部は、前記審査対象者の国籍が前記第1の国である場合、前記審査対象者に対して指紋を採取する動作をすることを指示する、付記6に記載のゲート装置。
[付記8]
前記ゲート制御部は、前記第1の国が日本国以外の国である場合には、前記審査対象者が正しいパスポートを所持し、且つ、前記指紋認証部が前記審査対象者の指紋認証に成功した場合に前記ゲートを開門する、付記7に記載のゲート装置。
[付記9]
前記ゲート制御部は、前記第2の国が日本国である場合には、前記審査対象者が正しいパスポートを所持している場合に前記ゲートを開門する、付記8に記載のゲート装置。
[付記10]
前記生体情報は、人の顔に関する情報である、付記5乃至9のいずれか一に記載のゲート装置。
[付記11]
ゲート装置において、
審査対象者の国籍を特定し、
前記審査対象者の国籍が第1の国である場合、前記審査対象者の指紋を取得し、
前記取得された指紋を用いた指紋認証を行い、
前記審査対象者の指紋認証に成功した場合に前記国籍が第1の国の審査対象者が通行可能となるようにゲートを制御する、ゲート装置の制御方法。
[付記12]
ゲート装置に搭載されたコンピュータに、
審査対象者の国籍を特定する処理と、
前記審査対象者の国籍が第1の国である場合、前記審査対象者の指紋を取得する処理と、
前記取得された指紋を用いた指紋認証を行う処理と、
前記審査対象者の指紋認証に成功した場合に前記国籍が第1の国の審査対象者が通行可能となるようにゲートを制御する処理と、
を実行させるプログラムを記憶する、コンピュータ読取可能な記憶媒体。
なお、付記11及び付記12の形態は、付記1の形態と同様に、付記2~付記10の形態に展開することが可能である。
【0146】
なお、引用した上記の先行技術文献の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。これらの実施形態は例示にすぎないということ、及び、本発明のスコープ及び精神から逸脱することなく様々な変形が可能であるということは、当業者に理解されるであろう。即ち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得る各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0147】
10、10-1~10-3、100 ゲート装置
20 サーバ装置
101 特定部
102、306 指紋認証部
103、307 ゲート制御部
201、301 通信制御部
202 利用者情報登録部
203 第1の照合部
204、308 記憶部
211、311 プロセッサ
212、312 メモリ
213 入出力インターフェイス
214、314 通信インターフェイス
302 生体情報取得部
303 照合要求部
304 パスポート所持判定部
305 国籍特定部
309 第2の照合部
313 入出力装置
315 カメラ装置
316 読取機
317 指紋スキャナ
318 ゲート