IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本磁力選鉱株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151392
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】稲種子被覆剤
(51)【国際特許分類】
   A01C 1/06 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
A01C1/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064596
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000231327
【氏名又は名称】日本磁力選鉱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100189865
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 正寛
(74)【代理人】
【識別番号】100094215
【弁理士】
【氏名又は名称】安倍 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】堤 啓
(72)【発明者】
【氏名】今井 貴之
【テーマコード(参考)】
2B051
【Fターム(参考)】
2B051AA01
2B051AB01
2B051BA16
2B051BB14
(57)【要約】
【課題】従来の鉄粉系被覆剤を用いても発熱反応による発熱が抑制されることで多層養生が可能で、かつ安価で製造可能な稲種子被覆剤を提供する。
【解決手段】従来使用されている被覆剤のうち、鉄粉の酸化を促進する焼石膏の一部又は全部を竹粉に置換する。竹粉は、鉄粉100重量部に対し2~6重量部添加する。竹粉を介在させることにより、酸化反応の反応速度が緩やかであるため、発熱も緩やかである。このため、稲種子の死滅が抑制され、稲種子被覆剤として優れる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄粉と添加剤を含む稲種子被覆剤であって、
上記鉄粉の酸化を促進する焼石膏の一部又は全部を竹粉に置換した稲種子被覆剤。
【請求項2】
上記竹粉は、上記鉄粉100重量部に対し2~6重量部添加された請求項1に記載の稲種子被覆剤。
【請求項3】
上記焼石膏は、上記鉄粉100重量部に対し10重量部以下である請求項1または請求項2に記載された稲種子被覆剤。
【請求項4】
上記竹粉は、微粉末粉に粉砕され、標準篩目開355μmのふるいを通過したもののみからなる請求項1又は請求項2に記載の稲種子被覆剤。
【請求項5】
上記竹粉は、微粉末粉に粉砕され、標準篩目開355μmのふるいを通過したもののみからなる請求項3に記載の稲種子被覆剤。
【請求項6】
上記竹粉は、過熱水蒸気により熱処理が施されたものである請求項1又は請求項2に記載の稲種子被覆剤。
【請求項7】
上記竹粉は、過熱水蒸気により熱処理が施されたものである請求項3に記載の稲種子被覆剤。
【請求項8】
上記竹粉は、過熱水蒸気により熱処理が施されたものである請求項4に記載の稲種子被覆剤。
【請求項9】
上記竹粉は、過熱水蒸気により熱処理が施されたものである請求項5に記載の稲種子被覆剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稲種子被覆に好適な稲種子被覆剤、具体的には、従来の鉄粉系被覆剤を用いても酸化反応による発熱が抑制されることで多層養生が可能で、かつ安価で製造可能で、伐採竹の環境問題も解決できる稲種子被覆剤に関する。
【背景技術】
【0002】
農業従事者の高齢化、農産物流通のグローバル化に伴い、農作業の省力化や農産物生産コストの低減が解決すべき課題となっている。これらの課題を解決するために、例えば、水稲栽培においては、育苗と移植の手間を省くことを目的として、稲種子を圃場に直接播く直播法が普及しつつある。その中でも、稲種子の比重を高めるために、鉄粉を被覆した稲種子を用いる手法は、水田における稲種子の浮遊や流出を防止し、かつ鳥害を防止するというメリットがあることで注目されている。
稲種子を鉄粉で被覆するには、稲種子表面に鉄粉を付着、固定化させる必要がある。そこで、稲種子表面に鉄粉を付着、固化させる技術としては、特許文献1に記載の技術が提案されている。
特許文献1には、鉄粉と結合材と添加剤を含む稲種子被覆剤を用いる技術が開示されている。
また、還元鉄粉を用いずに、白銑金属(炭素がセメンタイトの板状結晶となっていて、破面が白色をしている銑鉄)組織が一部又は全部に形成されている鉄粉を用いることで、酸化発熱反応の反応速度を抑制する技術が特許文献2,特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-23082号公報
【特許文献2】特許第6588059号
【特許文献3】特許第6734976号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の稲種子被覆剤は、主原料として還元鉄粉を微粉砕したものが使用されていた。特許文献1に記載の稲種子被覆剤も同様である。しかしながら、還元鉄粉では、被覆後、酸化発熱反応により急激に高温となり、被覆稲種子が死滅する危険性があった。そのため、稲種子は熱がこもらないように、1、2層に薄く拡げて養生する必要がある。つまり、従来の稲種子被覆剤を用いる場合、広大な養生面積を必要としていた。
また、特許文献2,3に記載の技術では、確かに酸化反応による発熱が抑制されることで多層養生が可能で、かつ安価で製造可能な稲種子被覆剤を提供することは可能であるものの、一般的に使用されている稲種子被覆剤とは異なるものであることから、一般的に使用されている稲種子被覆剤であっても、発熱を抑制するための技術の確立が急がれる。
【0005】
ところで、稲種子被覆剤の発熱は、焼石膏と水とが接触することによる酸化発熱反応によるところが大きい。しかし、焼石膏は、稲種子被覆剤による稲種子への被膜に必須のものであるとされていた。このため、稲種子被覆剤による稲種子の被覆の際に発生する発熱による稲種子が死滅するリスクを小さくすることができなかった。
【0006】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、一般に使用される稲種子被覆剤の原材料のうち、焼石膏の代替材料の検討を行い、竹粉の繊維が複雑に絡み合うことによって、竹粉の繊維の間に鉄粉が入り込むとともに、稲種子を被覆することが可能となり、焼石膏の代替材料として使用することが可能となることを知見し、本発明を完成させた。
本発明は、従来の鉄粉系被覆剤を用いたとしても酸化反応による発熱が抑制されることで多層養生が可能で、かつ安価で製造可能な稲種子被覆剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、鉄粉と添加剤を含む稲種子被覆剤であって、上記鉄粉の酸化を促進する焼石膏の一部又は全部を竹粉に置換した稲種子被覆剤である。
請求項2に記載の発明は、上記竹粉は、上記鉄粉100重量部に対し2~6重量部添加された請求項1に記載の稲種子被覆剤である。
請求項3に記載の発明は、上記焼石膏は、上記鉄粉100重量部に対し10重量部以下である請求項1または請求項2に記載された稲種子被覆剤である。
【0008】
鉄粉とは、従来技術にある白銑金属組織が一部又は全部に形成されている鉄粉であってもよく、従来の鉄粉系被覆剤に使用される鉄粉であってもよい。
稲種子と稲種子被覆剤との結合(付着、固定化)は、稲種子被覆剤に含まれている鉄成分の酸化反応の進行により発現するが、鉄の酸化反応により発熱する。白銑金属組織を持つ粉末は、酸化反応の反応速度が緩やかであるため、発熱も緩やかである。このため、多層養生であっても、稲種子の死滅が抑制され、稲種子被覆剤として優れている。
稲種子被覆剤の粒径は細かい鉄粉であれば稲種子と稲種子被覆剤との結合強度は高まる。このため、稲種子被覆剤の粒径は、106μm以下が好ましく、63μm以下であればなおよい。
【0009】
従来の稲種子被覆剤では、焼石膏が含まれていたが、本発明においては、焼石膏の一部又は全部を竹粉に置換する。
焼石膏は、水と接触することにより、鉄粉の酸化を促進し、稲種子をコーティングするが、本発明によれば、竹粉の繊維が複雑に絡み合い、竹粉の繊維の間に鉄粉が入り込むとともに、稲種子を被覆することが可能となる。これにより、焼石膏の代替材料として使用することが可能となる。
稲種子被覆剤の原料として市販の稲種子被覆剤を用いた場合であっても、竹粉により酸化反応による発熱が抑制される。稲種子は40℃を超えると死滅する危険性が増大するため、養生時は40℃を越えないように注意しなければならないが、竹粉が含まれることにより、室温(34.0℃)下における30mmの積層(約15層)での養生であっても、最高発熱温度が40℃に達しない。このため、多層養生であっても稲種子の死滅が著しく抑制される。
【0010】
竹粉は、竹を粉状に粉砕(破砕)したものであるが、完全に粉状にする必要はなく、繊維状のものが含まれてもよい。
上記竹粉は、鉄粉100重量部に対し2~6重量部添加されていることが好ましい。2重量部未満の場合、竹粉繊維の絡み合いが不十分であり、稲種子への被覆が不十分となる。その一方、竹粉繊維が十分に絡み合うことが可能な量があれば、本発明の上限はないものの、経済的理由により、6重量部以下であれば、本発明の効果を最大限発揮することができる。
【0011】
稲種子被覆剤に含まれる焼石膏の一部が竹粉に置換されるとき、稲種子被覆剤に含まれる焼石膏は、鉄粉100重量部に対し、10重量部以下であれば好ましい。10重量部以上の場合、竹粉による発熱抑制の効果が低く、稲種子が死滅するリスクが増大する。
【0012】
請求項4~請求項5に記載の発明は、上記竹粉は、微粉末粉に粉砕され、標準篩目開355μmのふるいを通過したもののみからなる請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の稲種子被覆剤である。
【0013】
竹粉は、微粉末粉に粉砕され、標準篩目開355μmのふるいを通過したもののみで構成することにより、被膜を均質化することが可能となり、外観上有利である。
【0014】
請求項6~9に記載の発明は、上記竹粉は、過熱水蒸気により熱処理が施されたものである請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の稲種子被覆剤である。
【0015】
竹粉は、請求項6~9に記載の発明のように、使用前に過熱水蒸気にて熱処理(乾燥処理)してもよい。この場合、竹粉に含まれるセルロースやリグニンとの結合を分断し、細かな繊維質となり、稲種子被覆剤の被膜の品質においてに優位に働くため好適である。
また、竹粉に含まれている水分を除去することができ、腐敗しにくく、稲種子被覆剤の保存性が高まる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、竹粉の繊維が複雑に絡み合い、竹粉の繊維の間に鉄粉が入り込むとともに、稲種子を被覆することが可能となる。これにより、焼石膏の代替材料として使用することが可能となる。よって、焼石膏による発熱がなく又は、一部を置換した場合には、発熱量が小さいため、稲種子が死滅するリスクが低下する。
【0017】
特に、請求項6~9に記載の発明によれば、竹粉を、使用前に過熱水蒸気にて熱処理(乾燥処理)することにより、竹粉に含まれるセルロースやリグニンとの結合を分断し、細かな繊維質となり、稲種子被覆剤の被膜の品質においてに優位に働くため好適である。
また、竹粉に含まれている水分を除去することができ、腐敗しにくく、稲種子被覆剤の保存性が高まる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る稲種子被覆剤は、稲種子表面を被覆するのに用いるものであり、鉄粉を含む稲種子被覆剤である。
【0019】
(鉄粉A:従来の鉄粉系被覆剤に使用される鉄粉)
JFEスチール株式会社製の鉄コーティング用鉄粉(S91)を用いた。
【0020】
(鉄粉B:別系統の鉄粉系被覆剤に使用される鉄粉)
高炉から生成する溶融スラグを多量の水により急冷した、砂状の高炉水砕スラグを磁力選別し、磁力選別によって得られる磁着物を高炉水砕メタルとして、稲種子被覆剤の原料とした。また、この磁力選別によって得られる非磁着物はセメント会社等において、セメント原料として用いられる。高炉セメント製造工程においてセメント原料は粉砕され、その後磁力選別されるが、その際に得られた磁着物成分も高炉水砕メタル(原料)として用いることも可能である。
このようにして得られた高炉水砕メタルを磁力選別し、その磁着物をさらに粉砕し篩分を行い、粒度調整を行うことによって、稲種子被覆剤を得た。
粉砕機は、株式会社香春製鋼所製のボールミル(寸法φ1500×3000mm)を用いた。篩分機は、晃栄産業株式会社製の佐藤式振動ふるい機500D-2Sを用いた。篩分けは、目開104μmの篩を用いた。
【0021】
鉄粉A及び鉄粉Bの水分量、平均粒度(メジアン径)、嵩比重、真比重を表1に示す。なお、平均粒度は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-350(株式会社堀場製作所製)を用いた。また、真比重はゲーリュサック型比重瓶100mlを用いた。
【0022】
【表1】
【0023】
また、鉄粉A及び鉄粉Bの成分を測定した。その測定結果を表2に示す。なお、T.Fe,Si,Mn,P,Sの各成分はICP発光分析装置SPS3500DD(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を用いて測定した。
金属鉄量はJIS M 8213(酸可溶性第一鉄定量方法)に規定の金属鉄定量方法に基づき測定を行った。炭素量は、JIS G 1211(全炭素定量方法)に規定の燃焼-ガス定量方法に基づき測定を行った。
【0024】
【表2】
【0025】
(稲種子被覆剤の調製)
稲種子被覆剤は、鉄粉A又は鉄粉Bを用い、副資材として焼石膏、シリカゲル、ベントナイト、高炉スラグ微粉末、リグニンスルホン酸塩、デンプン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)を添加して、混合することで調製を行った。添加割合については各種試験に合わせて記載する。副資材はいずれも一般に市販されているものを使用した。また、副資材として3種類の竹粉(竹粉A~竹粉C)を使用した。竹粉Aは、竹を粉砕したもの、竹粉Bは、竹を微粉末状まで粉砕したもの、竹粉Cは、竹を200℃の過熱水蒸気にて30分熱処理し、さらに、微粉末状まで粉砕したものである。
【0026】
(少量の稲種子の被覆)
乾燥した稲種子を恒温恒湿器内(20℃、60%)において、3日間、水に浸漬し、その後、水中から取り出し、風乾した。その後、乾燥種子をコーティングマシン(パンペレタイザ、日本磁力選鉱株式会社製、直径500mm)に投入し、回転数25rpmにて運転した。その後、稲種子被覆剤を少量ずつ投入し、必要に応じてスプレーで水を噴霧しながら稲種子の被覆を行った。
稲種子の被覆のための資材をすべて投入し、稲種子の被覆が終えたことを目視で確認し、被覆後の稲種子をコーティングマシンから取り出した。
稲種子の被覆後の稲種子は、水分の乾燥と稲種子被覆剤に含まれる鉄成分を酸化させて表面に強固な錆びの層を形成するために、養生した。養生は被覆後の稲種子を恒温恒湿器内(20℃、60%)で6日間養生した。なお、養生は1日1回、被覆後の稲種子にスプレーで水を噴霧した。
【0027】
(稲種子の被覆のスケールアップ)
催芽機に水を入れ、水温35℃にセッティングし、乾燥した稲種子を催芽機に投入し、1日間、水に浸漬し、その後、水中から取り出し、風乾した。その後、乾燥種子をコンクリートミキサーに投入し、角度調整を行い、回転数43rpmにて運転した。その後、稲種子被覆剤を3回に分けて投入し、必要に応じてスプレーで水を噴霧しながら稲種子の被覆を行った。
稲種子の被覆のための資材をすべて投入し、稲種子の被覆が終えたことを目視で確認し、その後、被覆後の稲種子をコーティングマシンから取り出した。
被覆後の稲種子を長さ265mm、幅183mm、厚さ30mmに積層し、空調のない屋内実験棟内で6日間養生した。なお、養生中は1日1回、被覆後の稲種子にスプレーで水を噴霧した。
【0028】
(剥離試験)
被覆後の稲種子50gを、高さ1mから5回、鉄板上に落下させた後、目開き2mmの篩いを用いて篩分し、篩上の残存率(wt.%)を被覆強度(剥離強度)として評価した。なお、測定が不能の場合(-)と表記する。
【0029】
(外観試験)
被覆後の稲種子の外観を目視確認し、資材の付着ムラが少なく被膜の形成ができたものを良好(○)とした。なお、被覆中に複数の稲種子によって団子状の塊が形成されるものや、設備への付着が多いもの、被覆できない資材が多いものは、不良(×)と評価した。
【0030】
剥離試験と外観試験の結果を表3~表4に示す。配合割合の単位は重量部、被覆強度の単位はwt.%である。
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
表3、表4から、副資材の種類によっては、副資材を添加しない場合よりも被覆強度が高まることが判明した。このとき、有機系の副資材として、竹粉を添加することにより、被覆強度が無機系の副資材を添加したときと同等性能を有することが明らかとなった。
なお、竹粉Aと竹粉Bとを比較した場合、竹粉Aの外観が不良であった。これは、竹粉Aは、竹を粉砕したもの、竹粉Bは、竹を微粉末状まで粉砕したものであり、竹粉Aには、長い竹繊維が竹粉Bより多く混在していることが原因であると考えられる。
【0034】
次に、竹粉A、竹粉B、竹粉Cの添加量を振り分けて、被覆強度試験、外観試験を行った。その結果を表5に示す。配合割合の単位は重量部、被覆強度の単位はwt.%である。
【0035】
【表5】
【0036】
表5から、竹粉の添加量が増加すれば被覆強度が高まるが、ある添加量を超えると、被覆強度が低下することが判明した。
【0037】
(発熱試験)
発熱試験は、稲種子の被覆のスケールアップにおける養生時における温度(最高発熱温度)を直径0.65mmのT熱電対を用いて測定した。
【0038】
(発芽率)
発芽率は、稲種子の被覆のスケールアップにおける7日養生後の被覆後の稲種子100粒をシャーレに入れ、水40mlを添加し、恒温恒湿器内(30℃、60%)において7日間養生し、養生直後の発芽した種子の数を計測した。発芽率は2サンプル分作成し、発芽した種子の数の平均とした。
なお、被覆前の稲種子も同条件で発芽率を測定した。
【0039】
発熱試験と発芽率の結果を表6に示す。配合割合の単位は重量部、最高発熱温度の単位は℃、発芽率の単位は%である。なお、養生時における積層は30mmとし、室温の最高温度は33.8℃であった。
【0040】
【表6】
【0041】
また、稲種子の被覆のスケールアップにおける養生条件(長さ、幅、高さ)を変化させたときの最高発熱温度と発芽率の変化について表7~表8に示す。発芽率の単位は%である。
【0042】
【表7】
【0043】
【表8】
【0044】
一般的に、被覆直後の養生における養生条件において、養生高さが高くなれば蓄熱性が高まるため、最高発熱温度が高くなる。稲種子は40℃を超えると死滅する危険性が増大するため、養生時は40℃を越えないように注意する必要がある。無機系の副資材を添加した場合、養生高さが高くなるにつれ、最高発熱温度が高くなり、それに伴い、発芽率も低下する。
それに対して、竹粉Cを用いた場合には、養生高さが高くなっても、最高発熱温度が40℃を超えるときはあるものの、発芽率の大幅な低下は見られなかった。このため、稲種子の死滅が抑制され、稲種子被覆剤として優れているといえる。
【0045】
次に、竹粉Cの添加量を4重量部に固定し、焼石膏の量を振り分けて、被覆強度試験、外観試験を行った。その結果を表9に示す。配合割合の単位は重量部、被覆強度の単位はwt.%である。
【0046】
【表9】
【0047】
発熱試験の結果を表10に示す。配合割合の単位は重量部、最高発熱温度の単位は℃である。
【0048】
【表10】
【0049】
表9、表10によれば、従来の稲種子被覆剤のうち、焼石膏のすべてを竹粉に置換する必要はなく、焼石膏の一部を竹粉に置換しても、発熱抑制に寄与することができ、稲種子の死滅のリスクを低下することができる。