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特開2024-153848野生型抗原及び強力なペプチドミモトープを認識する、患者腫瘍から単離されたT細胞受容体に対する抗原の発見
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153848
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】野生型抗原及び強力なペプチドミモトープを認識する、患者腫瘍から単離されたT細胞受容体に対する抗原の発見
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
C07K7/06
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024124990
(22)【出願日】2024-07-31
(62)【分割の表示】P 2022191665の分割
【原出願日】2018-03-21
(31)【優先権主張番号】62/476,575
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515158308
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ジー,マーヴィン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス,マーク エム.
(72)【発明者】
【氏名】ハン,アーノルド
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア,ケナン クリストファー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】がん免疫療法、自己免疫、及び感染症に対する潜在的標的を明らかにすることを助け及び疾患病因についてのメカニズム的洞察を提供し得る、未知の抗原特異性のTCRの特異性を判定するためのハイスループットでかつ高感度の手法を提供する。
【解決手段】所定のMHC背景における関心対象のT細胞受容体(TCR)に対するリガンドであるペプチド配列に対して、組成物及び方法が提供される。組成物は、規定のペプチドを含み得るもしくはそれからなり得る、またはそのようなペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み得るもしくはそれからなり得る。そのようなペプチドは、天然に存在する抗原タンパク質のフラグメントであり得るか、腫瘍発生中の体細胞変異の対象である新抗原タンパク質のフラグメントであり得るか、または抗原タンパク質の合成的に生成された模倣体であり得る。
【選択図】図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドであって、
図面に実質的に示されており、明細書に実質的に記載されている、
ペプチド。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
T細胞は適応免疫系に不可欠であり、病原体及びがんからの保護を提供する。それらは、細胞上のヒト白血球抗原(HLA)上に提示される短いペプチドに特異的であるTCRによる細胞外認識を通じて機能する(Birnbaum et al.,(2014)Cell 157,1073-1087)。TCR、ペプチド、及びHLA分子に特有の多様性により、いずれか1つのTCRの特異性を同定することは極めて複雑な問題となる。
【0002】
T細胞を特徴付けし及びそれらのTCRをシーケンスし得る本発明者らの能力は近年かなり改善しているものの(Han et al.,(2014)Nat Biotechnol 32,684-692、Stubbington et al.,(2016)Nat Methods 13,329-332)、T細胞の抗原特異性を判定し及び調査し得る能力は同様には進歩していない。
【0003】
各ヒト個体は、107 ~108 種の固有のT細胞受容体とともに、彼らの身体内に1012個のT細胞を有する。各T細胞は、ペプチドを提示する主要組織適合性複合体(MHC)分子に結合し得る能力に対して選択される固有のT細胞受容体(TCR)を発現する。ペプチド-MHC(pMHC)のTCR認識は、T細胞の発達、生存、及びエフェクター機能を推進する。たとえTCRリガンドは比較的低いアフィニティー(1~100μM)であるとしても、TCRは非常に高感度であり、T細胞を充分に活性化するためにわずか10個のアゴニストペプチドを要する。認識後、シグナル伝達カスケードにより、T細胞はそれらの免疫機能を果たすことが可能となる。
【0004】
pMHCのTCR認識についての広範な構造調査は、調査されたTCR-pMHC複合体の圧倒的多数が、MHCヘリックスの上部と生殖系列によってコードされるTCR CDR1及びCDR2ループとの間の保存された接触によって推進される、一貫した結合配向を共有することを示している(Garcia and Adams(2005)Cell 122,333-336、Garcia et al.(2009)Nat Immunol 10,143-147、及びRudolph et al.(2006)Annual Review of Immunology 24,419-466を参照されたい)。これらの保存された接触は、適応免疫系の発達を通して共進化している可能性が高く、αβTCRレパートリーのMHC制限の基礎として働く(Scott-Browne et al.,2011)。典型的なTCR-pMHC相互作用の変更は、シグナル伝達の無効、及び発達中に存在する場合にはTCRレパートリーの歪みと相関することが示されている(Adams et al.(2011)Immunity 35(5):681-93、Birnbaum et al.(2012)Immunol.Rev.250(1):82-101)。
【0005】
TCRの付加的な重要な特徴は、交差反応と特異性との平衡を保ち得る能力である。あらゆる考え得るpMHC組み合わせを一意的に認識するために必要であるT細胞の数は極めて高いため、及びTCRレパートリーにおいて特徴付けされる「穴」はたとえあったとしてもごくわずかであるため、かなりの程度のTCR交差反応が機能的抗原認識の要件であると断定されている。どのようにしてT細胞レパートリーが同時にMHC制限的であり得、すべての潜在的抗原チャレンジが満たされ得ることを確実にするために十分なほど交差反応性であり得、しかし異常な自己免疫を回避するために十分なほどさらに特異的であり得るかは、免疫学における未解決でかつ差し迫った問いのままである。
【0006】
オーファンTCRの特異性を判定するために用いられるいくつかのストラテジーが存在している(Birnbaum et al.,(2012)Immunol Rev 250,82-101)。質量分析は、抗原単離の不偏的な方法を提供し得るが、典型的に107 ~109 個という大量の細胞数を要する実験に制限され、かつ標的は、正しいHLAによってさらに提示されなければならない。伝統的に、T細胞抗原特異性についてのほとんどの調査は、経験的に候補抗原を試験することを伴っている。例えば、抗腫瘍T細胞特異性についての調査は、新抗原に対する生産的T細胞応答が存在すると正しく仮定している。そのような調査は、変異を同定するための腫瘍のシーケンシング、免疫原性変異体ペプチドを予測するためにエピトープ予測アルゴリズムを用いること、及びこれらの変異体ペプチドに向けられたT細胞応答について試験することを伴う(Kreiter et
al.,(2015)Nature 520,692-696、Rajasagi et al.,(2014)Blood 124,453-462、Tran et al.,(2014)Science 344,641-645)。他のストラテジーは、pHLA多量体を用いることによって、患者における確立されたT細胞特異性の問い合わせを行う(Bentzen et al.,(2016)Nat Biotechnol 34,1037-1045、Newell et al.,(2013)Nat Biotechnol 31,623-629)。
【0007】
がん免疫療法、自己免疫、及び感染症に対する潜在的標的を明らかにすることを助け及び疾患病因についてのメカニズム的洞察を提供し得る、「オーファン」TCR(すなわち、未知の抗原特異性のTCR)の特異性を判定するためのハイスループットでかつ高感度の手法は大きな関心である。
【発明の概要】
【0008】
規定のMHC背景における関心対象のT細胞受容体(TCR)に対するリガンドに対して組成物が提供される。組成物は、規定のペプチドを含み得るもしくはそれからなり得る、またはそのようなペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み得るもしくはそれからなり得る。そのようなペプチドは、天然に存在する抗原タンパク質のフラグメントであり得るか、腫瘍発生中の体細胞変異の対象である新抗原タンパク質のフラグメントであり得るか、または抗原タンパク質の合成的に生成された模倣体であり得る。合成ペプチドは、T細胞受容体の非常に強力なアゴニストとして作用し得る。一部の実施形態において、ペプチドまたはコード配列は、限定されることなく配列番号:1~257に明示されるペプチド配列のいずれか1つまたは組み合わせを含む、本明細書において提供される配列から選択される。ペプチドは、T細胞を刺激することにおいて活性がある短い抗原配列として提供され得るか、またはより大きなタンパク質、例えば無傷ドメイン、可溶性タンパク質部分、完全タンパク質等の形態で提供され得る。一部の実施形態において、患者間で共有されかつ幅広く適用可能な療法のための手段を提供するペプチド抗原が同定される。他の実施形態において、抗原の同定は個別化医療手法を提供する。
【0009】
T細胞受容体及び同族抗原の同定は、応答性についての患者T細胞のスクリーニング、ペプチドまたはそのようなペプチドをコードする核酸の接種、細胞に基づく療法、タンパク質に基づく療法等を含めた、免疫療法に対する標的を提供する。本明細書において開示されるペプチド及び方法は、ペプチド抗原特異性に基づいてTCRを分類することにおいて有用であり、それは、患者にわたって共有される抗原を認識する臨床候補TCRの同定を可能にする。
【0010】
一部の実施形態において、がん、例えば結腸直腸癌に対するワクチン接種のための方法が提供され、当該方法は、有効用量のワクチン組成物を投与することを含み、当該組成物は、本明細書において同定されるペプチド、ペプチドの組み合わせ、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10種またはそれを上回る種類の個別のペプチド、ペプチドとMH
Cタンパク質の少なくとも一部との複合体、本明細書において同定される抗原ペプチドに応答するように刺激されている自家または同種異系T細胞、本明細書において同定される抗原ペプチドをコードする核酸、及び任意で、ワクチンアジュバントを含み得る薬学的に許容される賦形剤、を含み得る。ペプチドワクチン接種ストラテジーを用いて、例えば本明細書において提供される合成ペプチドで、免疫応答を初めにプライムし得、その後に、対応する公知の野生型抗原または野生型総タンパク質でのブーストが続き得る。
【0011】
規定のペプチドは、個々のT細胞受容体の認識形状を同定するために用いられる酵母ディスプレイによりペプチド-MHCライブラリーをスクリーニングすることによって同定される。スクリーニング法は、複数のペプチドライブラリーを同時にスクリーニングする、例えば2、3、4つ、またはそれを上回る数のライブラリーを同時にスクリーニングする多重方法において利用され得る。多重化により、抗原発見の効率の改善が可能となる。各ライブラリーは、同定を可能にする固有のエピトープタグ、例えば抗体によって標的化可能なエピトープを含み得、DNAバーコード、タンパク質バーコード等を含み得る。エピトープタグを利用する各ライブラリーは別個に作り出され、多様性は、例えば成長プレート上での初回ライブラリーの限界希釈からのコロニーカウントに基づいて算出された。ライブラリー選択のためにT細胞受容体をプールすることにより、選択、例えばペプチド配列、ペプチド長、種々のMHCまたはHLAアレルのコレクション等をさらに多重化し得る。選択に関して、各バーコード、エピトープタグ等は、ペプチド特異的富化のレベルを検出する抗エピトープタグ染色を介してモニターされ得る。統計アルゴリズム及び機械学習アルゴリズムが同定に用いられ得る。
【0012】
一部の実施形態において、がん抗原に応答性があるT細胞受容体の配列が提供される。T細胞受容体配列には、限定されることなく、任意で配列番号:259または配列番号:260のベータ鎖配列と組み合わせた、配列番号:258に明示される配列を有するアルファ鎖を有するタンパク質が含まれ得る。これらT細胞受容体の結合領域(CDR)配列を抗体フレームワークにグラフトして、TCR様抗体を提供し得る。T細胞受容体は、適応性がありかつ患者ごとにしばしば固有であるため、個々のT細胞受容体配列は患者間で異なり得る。これらの差異にもかかわらず、異なるTCRは、同じ標的をなおも認識し得る。ゆえに、異なるT細胞受容体は、同じ標的に結合し得るこれらT細胞受容体からのわずかな配列変動を有し得る。加えて、T細胞受容体を、同じ抗原への結合を可能にするアミノ酸置換を導入するように改変し得る。そのような事例には、特異的標的に対するT細胞受容体の親和性成熟、またはT細胞受容体のその標的に対する特異性を改善する受容体改変が含まれる。T細胞受容体の認識部分は、治療用試薬として用いられる対象となる他のタンパク質足場にグラフトされ得る。T細胞受容体はやや交差反応性であるため、合成ペプチドのリストは網羅的ではない。ペプチド配列のわずかな改変は、T細胞刺激をなおももたらし得る。
【0013】
一部の実施形態において、スクリーニングのためのTCR配列が獲得されるT細胞は、腫瘍部位から単離され、限定されることなく腫瘍浸潤T細胞(TIL)を含み得る。他の実施形態において、T細胞は、感染症、例えば細菌、ウイルス、原生動物等の感染症に応答性がある個体から獲得される。他の実施形態において、T細胞はグラフトレシピエントから獲得され、グラフトの部位から単離され得る。
【0014】
本発明は、添付の図面と合わせて読んだ場合、以下の詳細な説明から最もよく理解される。特許または出願ファイルは、カラーで示される少なくとも1つの図面を含有する。一般的な慣行に従い、図面の様々な特徴は、一定の比率に縮小しているわけではない。それどころか、様々な特徴の寸法は、明確性のために任意で拡大されているまたは縮小されている。以下の図が図面に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1-1】ペプチド-HLA-A* 02:01酵母ディスプレイライブラリーの設計を示す。Aにて、pHLAの酵母ディスプレイライブラリーを選択するための方法論を示す。各酵母は、遺伝子コードされる固有のペプチドを呈示する。典型的なライブラリーは、関心対象のTCRによって選択される約108 種の固有のペプチドを含有する。酵母を、ビーズ多量体化TCRを用いたアフィニティーに基づく選択において富化し、反復ラウンドの選択のために成長させる。ペプチドを連続的に富化し、全酵母DNAをディープシーケンスする。これらの合成ペプチド配列を用いて、ヒトプロテオーム及び/または患者特異的エクソームに由来するTCRリガンドについて予測するモデルを作り出す。Bにて、調査の目標は、酵母ディスプレイ選択を用いて、未知の抗原特異性のTCRを脱オーファン化することである。酵母ディスプレイ選択からTCRによって選択されたペプチドは、特定のTCRに対する認識形状を作り出し、次いでそれを用いて、オーファンTCRに対する抗原特異性を予測する。予測された標的は、T細胞刺激アッセイにおいて検証され得る。Cにて、構築物は一本鎖設計を利用して、エピトープタグと酵母上の天然Aga1タンパク質に結合するAga2pとにつながれたpHLA-A* 02:01複合体を呈示する。各構成要素は、Gly-Serリンカーによって共有結合で接続されている。エピトープタグを導入して、ライブラリーの発現をモニターする。Dにて、オレンジの矢印で2つのペプチドアンカーを強調したMART-1/HLA-A* 02複合体構造(PDB 4L3E)を示す。ペプチドのP2及びPΩにおけるこれらのペプチド箇所は、HLA-A* 02へのペプチド結合を可能にする。
図1-2】ペプチド-HLA-A* 02:01酵母ディスプレイライブラリーの設計を示す。Eにて、例としての8merペプチドライブラリーは、HLA-A* 02:01ライブラリー、及び20種のアミノ酸のいずれかにランダム化される残りの箇所に対するアンカー選好性を示している(X=20種のアミノ酸及び終止コドン)。コドン使用法のためのヌクレオチド略語は、IUPACヌクレオチドコードに従って記入されている。Fにて、HLA-A* 02:01によって提示される最もよく見られる長さのペプチドを捉えるように設計された複数の長さのライブラリーを示す。各ペプチド長を、選択モニタリングのために固有のエピトープタグを用いた構築物内に置く。ライブラリーは、ペプチド長及びライブラリー組成によって決定付けられる理論的ヌクレオチド多様性を有する。機能的多様性は、ライブラリーの限界希釈後の酵母コロニーカウントに基づく物理的ライブラリーの真の能力を表す。
図2】DMF5 TCRを用いたHLA-A* 02:01ライブラリーの検証を示す。Aにて、酵母の表面上のHLA-A* 02:01と複合して、MART-1ペプチド(ELAGIGILTV)(配列番号:264)を呈示するDMF5 TCR系統酵母を示す。ストレプトアビジン-647(SA-647)を用いて、DMF5 TCRを四量体化し及び蛍光標識した。Bにて、フローサイトメトリーによる抗HAエピトープタグ染色によって測定されるDMF5 TCRによる、10mer長のHLA-A* 02:01酵母ディスプレイライブラリーの富化を示す。選択の4つのラウンドのうちの3つが示されている。Cにて、DMF5 TCRによる10mer選択からシーケンスされた高度に富化されたペプチドが、DMF5 TCR四量体によって染色され、フローサイトメトリーによって測定されている。(Cにおける左から右への配列:配列番号:264、324、286、323、283、285)。Dにて、DMF5 TCRによる10merのHLA-A* 02:01ライブラリー選択のラウンド3のディープシーケンシングに従った、上位10種のペプチドの総シーケンシングリードカウントについての割合を示す。(Dにおける上から下への配列:配列番号:287、326、325、324、286、323、285、322、284、283)。Eにて、選択のラウンド3からの固有のペプチドは、野生型MART-1ペプチド配列(配列番号:267)と類似しているように見える2つの主要なクラスターに入る。選択のラウンド3に存在するすべてのペプチド間の逆ハミング距離をまず算出し、次いでスコアによってクラスター化することによって、クラスターを決定する。MART-1十量体構造(PDB:4L3E)が、選択されたペプチドにアラインされている。Fにて、クラスター1ペプチドを用いた置換行列(2014PWM)は、他の8種の予測ペプチドの中で、MART-1ペプチドをDMF5 TCRに結合する最も可能性が高いペプチドとして予測する。(Fにおける上から下への配列:配列番号:321、320、319、318、317、316、315、314、267)。
図3-1】新抗原特異的TCRによるHLA-A* 02:01ライブラリーのブラインド検証を示す。Aにて、ブラインド特異性の3種のTCRは、選択のラウンドにわたるエピトープタグ染色に従い、特異的ペプチド長に対するHLA-A* 02:01ライブラリーを別個に富化する。左のパネルは、選択の全4ラウンドが完了した後の四量体及びエピトープ染色を示し、右のパネルは、選択の過程を通じたエピトープ染色を示す。
図3-2】新抗原特異的TCRによるHLA-A* 02:01ライブラリーのブラインド検証を示す。Bにて、選択のラウンド3においてNKI2によって選択された固有のペプチドを、ペプチド長によって解析し、逆ハミング距離によってクラスター化する。クラスターにおいて同定されたペプチドの数が、それぞれのペプチド長とともに右側に示されている。
図3-3】新抗原特異的TCRによるHLA-A* 02:01ライブラリーのブラインド検証を示す。Cにて、ラウンド3におけるNKI2による選択されたペプチドのあらゆる10merと、127種の全新抗原のリストからの各10mer新抗原ペプチドとの間で計算された最大逆ハミング距離を示す。(Cにおける上から下への配列:配列番号:501、502、620、503~519)。Dにて、選択されたライブラリーからの2種のペプチドLib-1(配列番号:434)及びLib-2(配列番号:269)は、CDK4に由来する10merの新抗原ペプチドALDPHSGHFV(配列番号:265)に酷似している。新抗原との同一アミノ酸が赤で色付けされている。Eにて、NKI2 TCRによって選択された長さ10の上位5種のペプチドを用いて、両方ともCDK4新抗原ALDPHSGHFV(配列番号:265)に特異的であるTCR NKI1またはNKI2を発現するように形質導入された末梢血リンパ球を刺激した。形質導入されたリンパ球を、ペプチド、対照ペプチド、またはペプチドなしでパルスされたJY細胞と1:1で混合し、細胞内抗体染色によって測定されるIFNγ産生をフローサイトメトリーを用いて査定した。(Eにおける上から下への配列:1)配列番号:269、2)配列番号:427、3)配列番号:423、4)配列番号:420、5)配列番号:417)。
図4-1】結腸直腸腺癌を有する2人のHLA-A* 02患者において同定されたTCRのプロファイリングを示す。Aにて、要約された結果と合わせた、HLA-A* 02:01ライブラリーで患者由来TCRを脱オーファン化する調査設計を示す。Bにて、TIL由来の固有の対合したαβTCR配列の存在量についての棒グラフを示す。*=ライブラリーからペプチドを富化したTCRである。
図4-2】結腸直腸腺癌を有する2人のHLA-A* 02患者において同定されたTCRのプロファイリングを示す。Cにて、各患者に対する、腫瘍及び健常組織間の個々の固有のCDR3αまたはCDR3β鎖配列の重複を表したベン図を示す。数字は、ベン図の最も近い区域におけるCDR3配列の量を示す。Dにて、増幅されかつバーコード化された転写産物のシーケンシングを用いて、転写因子のバイナリ測定を同定したヒートマップを示す。交互の黒及び白のパネルは、単一T細胞クローンと同じ受容体配列との境界を示し、最も豊富なクローンが最も左側から始まる。左のパネルは、スクリーニングされる対象となる患者Aから選定されたTCRを有するそうしたT細胞を同定し、緑は転写産物の存在を意味する。右のパネルは、スクリーニングされる対象となる患者Bから選定されたTCRを有するそうしたT細胞を同定し、青は転写産物の存在を意味する。白は、検出された転写産物がないことを示す。TCR 1A、2A、3B、及び4Bがラベルされている。
図5-1】4種のTIL由来TCRは、ペプチドに対するHLA-A* 02:01ライブラリーを富化することを示す。Aにて、HLA-A* 02:01ライブラリーからペプチドを選択した4種のオーファンTCRのTCR配列を示す。TCR遺伝子セグメント可変及び接合が、対応するCDR3配列とともに示されている。存在量は、単一細胞が腫瘍/健常組織において精確なTCR配列を有することが見い出された回数の量を表す。(Aにおける配列:1A CDR3α:(配列番号:472)、2A CDR3α:(配列番号:261)、3B CDR3α:(配列番号:261)、4B CDR3α:(配列番号:495)、1A CDR3β:(配列番号:463)、2A CDR3β:(配列番号:262)、3B CDR3β:(配列番号:263)、4B CDR3β:(配列番号:484))。Bにて、患者A及びBから単離された2種の配列類似TCRのヌクレオチド配列を示す。非コードヌクレオチドは赤で強調されている。(Bにおけるアミノ酸配列:CDR3α 2A:(配列番号:261)、CDR3α 3B:(配列番号:261)、CDR3β 2A:(配列番号:262)、CDR3β 3B:(配列番号:263))、ヌクレオチド配列:CDR3α 2Aヌクレオチド配列:(配列番号:536)、CDR3α 3Bヌクレオチド配列:(配列番号:537)、CDR3β 2Aヌクレオチド配列:(配列番号:538)、CDR3β 3Bヌクレオチド配列:(配列番号:539)。
図5-2】4種のTIL由来TCRは、ペプチドに対するHLA-A* 02:01ライブラリーを富化することを示す。Cにて、フローサイトメトリーによって測定される、4種のオーファンTCRによる選択のラウンドごとのHLA富化及び四量体染色を示す。左のパネルは、選択の全4ラウンドが完了した後の四量体及びエピトープ染色を示し、右のパネルは、選択の過程を通じたエピトープ染色を示す。
図5-3】4種のTIL由来TCRは、ペプチドに対するHLA-A* 02:01ライブラリーを富化することを示す。C(続)にて、フローサイトメトリーによって測定される、4種のオーファンTCRによる選択のラウンドごとのHLA富化及び四量体染色を示す。左のパネルは、選択の全4ラウンドが完了した後の四量体及びエピトープ染色を示し、右のパネルは、選択の過程を通じたエピトープ染色を示す。
図6】4種のTIL TCRによる酵母選択のディープシーケンシング結果を示す。Aにて、単語ロゴは、各TCRに対するラウンド3で選択された固有のペプチドを呈示しており、ディープシーケンシングリードカウント存在量を説明するわけではない。アミノ酸文字のサイズは、固有のペプチドの中での所定の箇所におけるその比例する存在量を表す。Bにて、選択のラウンド3におけるペプチド富化を説明する、ペプチドの箇所あたりのアミノ酸組成を示したヒートマッププロットを示す。より暗い色は、所定の箇所における所定のアミノ酸のより大きな存在量を示す。アンカー残基は黒で輪郭が描かれている。Cにて、TCR 2A及び3Bは、ラウンド3における総リードについての割合として示される、選択のラウンド3における11種のペプチドの重複するセットを選択する。(Cにおける上から下への配列:配列番号:95、249、54、195、42、191、196、198、200、201、4)。
図7-1】予測されたヒト標的及びペプチドミモトープを用いたTIL TCRの活性化を示す。。TCRを、CD8+ SKW-3細胞にレトロウイルスにより感染させ、安定したTCR(IP26)及びCD3(UCHT1)共発現について選別する。T2抗原提示細胞を100μMペプチドで3時間パルスし、T細胞株とともに18時間共インキュベートし、フローサイトメトリーによってCD69発現について分析する。TCR1A(A)及びTCR2A(C)を、ペプチド刺激によるCD69活性化について技術的三つ組で試験し、標準偏差が示されている。生物学的三つ組から代表的実験が示されている。(Aにおける左から右への配列:配列番号:540~555、Cにおける配列番号:556~574)。B、Dにて、平均の標準誤差とともに生物学的三つ組の平均をプロットされた、各刺激性ペプチドに関する用量応答曲線が右側に示されている。両実験に関して、p値は、普通の一元配置ANOVAを用いて算出されている。TCR2A及び3Bに関して、簡潔性のために、17種の非刺激性ペプチドは除去されている。(Bにおける上から下への配列:配列番号:540~543、Dにおける上から下への配列:556~558、560、562~567)。
図7-2】予測されたヒト標的及びペプチドミモトープを用いたTIL TCRの活性化を示す。。TCRを、CD8+ SKW-3細胞にレトロウイルスにより感染させ、安定したTCR(IP26)及びCD3(UCHT1)共発現について選別する。T2抗原提示細胞を100μMペプチドで3時間パルスし、T細胞株とともに18時間共インキュベートし、フローサイトメトリーによってCD69発現について分析する。TCR3B(E)及びTCR4B(G)を、ペプチド刺激によるCD69活性化について技術的三つ組で試験し、標準偏差が示されている。生物学的三つ組から代表的実験が示されている。(Eにおける左から右への配列:配列番号:556~574、Gにおける配列番号:596~619)。F、Hにて、平均の標準誤差とともに生物学的三つ組の平均をプロットされた、各刺激性ペプチドに関する用量応答曲線が右側に示されている。両実験に関して、p値は、普通の一元配置ANOVAを用いて算出されている。TCR2A及び3Bに関して、簡潔性のために、17種の非刺激性ペプチドは除去されている。(Fにおける上から下への配列:配列番号:41、42、193、194、195、257、Hにおける上から下への配列:596~602、604、608、610、613、615)。
図8】DMF5 TCRを用いたHLA-A2* 01ライブラリーの検証を示す。Aにて、DMF5 TCR野生型ペプチドまたはペプチドミモトープとの正しくフォールディングされたHLA-A* 02:01複合体に対するMA2.1抗体染色を示す。ヒストグラムは、MA2.1抗体、それに続く二次抗体による染色を示している。(Aにおける左から右への配列:配列番号:264、324、286、323、283、285)。Bにて、DMF5 TCR 10mer選択に対するラウンド3配列のクラスター2に対して2014PWMアルゴリズムを用いた、予測されたヒトペプチドのスコアを示す。Cにて、8Bにおいて同定された上位10種のペプチドのスコアを示す。(Cにおける上から下への配列:配列番号:364、363、362、361、360、359、358、357、356、355)。
図9-1】患者組織免疫組織化学、ならびにTCRレパートリーのシーケンシング及び表現型判定を示す。Aにて、H&E染色、抗CD4/ヘマトキシリン、または抗CD8/ヘマトキシリンを用いた患者免疫組織化学を示す。すべての代表的画像は、300×倍率を用いて撮影されている。Bにて、CysからPheまで測定される患者CDR3の長さを示す。
図9-2】患者組織免疫組織化学、ならびにTCRレパートリーのシーケンシング及び表現型判定を示す。Cにて、健常及び腫瘍組織におけるTCR可変α遺伝子の患者分布を示す。
図9-3】患者組織免疫組織化学、ならびにTCRレパートリーのシーケンシング及び表現型判定を示す。Dにて、健常及び腫瘍組織におけるTCR可変β遺伝子の患者分布を示す。
図9-4】患者組織免疫組織化学、ならびにTCRレパートリーのシーケンシング及び表現型判定を示す。Eにて、転写産物シーケンシングによる転写プロファイリングを示す(患者B T細胞のt-SNEプロット(左)、及びフローサイトメトリーによる細胞表面マーカーのt-SNEプロット(右))。転写産物の存在は、ディープシーケンシングリードに基づくバイナリ(1=はい、0=いいえ)であり、強度は細胞表面マーカーのMFIに関連している。
図10】ヒトペプチド特異性を予測する、機械学習アルゴリズム2017DLの設計を示す。Aは、酵母ディスプレイライブラリー選択からのデータを取り出して、機械学習モデルを訓練し、それがUniprotデータベースまたは患者特異的エクソームからのタンパク質に由来するペプチドを採点する工程を示した略図である。モデルは、ペプチドあたりのディープシーケンシングラウンドカウント及びペプチドの組成を利用した酵母ディスプレイ選択データから作り出されている。指数曲線を各ペプチドにフィットさせて、適合度関数を用いて選択のラウンドにわたる富化を捉える。Bにて、TCRによって選択されたペプチドに対するディープシーケンシングラウンドカウントに指数曲線をフィットさせるための適合度関数を示す。Cにて、各アミノ酸がone-hotベクトルとして表される、例としてのペプチドの行列表現を示す。Dにて、二層畳み込みニューラルネットワークを利用した機械学習アルゴリズムのアーキテクチャーを示す。入力は、one-hotベクトルのベクトルとして表されるペプチド配列、及び適合度関数から決定されるペプチドの適合度スコアからなる。出力は適合度スコアである。
図11-1】CD69 MFI中央値、及び予測されたペプチド標的を発現する酵母のTCR四量体染色に従った、SKW-3細胞の活性化を示す。図7からのデータが分析されているが、A及びBに関しては、CD69発現が陽性の細胞パーセントの代わりに、CD69発現の平均蛍光強度を用いている。TCR(A)1Aまたは(B)2Aを有するSKW-3 T細胞を、図7におけるように、ペプチドパルスされたT2抗原提示細胞とともに共培養した。平均蛍光強度を、CD3でゲートをかけたSKW-3細胞の抗CD69染色から技術的三つ組で測定し、平均値及び標準偏差が示されている。生物学的三つ組からの代表的実験が示されている。p値を、普通の一元配置ANOVAを用いて測定した。(Aにおける上から下への配列:配列番号:540~542)
図11-2】CD69 MFI中央値、及び予測されたペプチド標的を発現する酵母のTCR四量体染色に従った、SKW-3細胞の活性化を示す。図7からのデータが分析されているが、C及びDに関しては、CD69発現が陽性の細胞パーセントの代わりに、CD69発現の平均蛍光強度を用いている。TCR(C)3Bまたは(D)4Bを有するSKW-3 T細胞を、図7におけるように、ペプチドパルスされたT2抗原提示細胞とともに共培養した。平均蛍光強度を、CD3でゲートをかけたSKW-3細胞の抗CD69染色から技術的三つ組で測定し、平均値及び標準偏差が示されている。生物学的三つ組からの代表的実験が示されている。p値を、普通の一元配置ANOVAを用いて測定した。
図11-3】CD69 MFI中央値、及び予測されたペプチド標的を発現する酵母のTCR四量体染色に従った、SKW-3細胞の活性化を示す。TCR(E)1A及び(F)2Aに対するライブラリーペプチド及び予測された標的ペプチドの一本鎖三量体を発現する酵母を、400nM TCR四量体で染色した。四量体陰性集団は、ストレプトアビジン-647のみで染色される。すべての酵母は、エピトープタグ陽性酵母に対してゲートをかけられている。
図11-4】CD69 MFI中央値、及び予測されたペプチド標的を発現する酵母のTCR四量体染色に従った、SKW-3細胞の活性化を示す。TCR(G)3B及び(H)4Bに対するライブラリーペプチド及び予測された標的ペプチドの一本鎖三量体を発現する酵母を、400nM TCR四量体で染色した。四量体陰性集団は、ストレプトアビジン-647のみで染色される。すべての酵母は、エピトープタグ陽性酵母に対してゲートをかけられている。
図12-1】U2AF2定量RNA発現、及びU2AF2ペプチドに対するアフィニティー測定を示す。Aにて、18Sをハウスキーピング遺伝子として用いた、患者A及びBにおける健常組織と比べた腫瘍のU2AF2転写産物発現についての定量PCR発現を示す。サンプルは技術的四つ組でなされ、標準偏差が示されている。Bにて、18Sをハウスキーピング遺伝子として用いた、患者A健常組織におけるU2AF2 RNA発現と比較した、様々なヒト由来腫瘍におけるU2AF2 RNAについての2を底とする対数の定量PCR発現を示す。サンプルは技術的四つ組でなされ、標準偏差が示されている。示される細胞株は、適当な順序で方法の節において挙げられている。
図12-2】U2AF2定量RNA発現、及びU2AF2ペプチドに対するアフィニティー測定を示す。Cにて、18Sをハウスキーピング遺伝子として用いた、患者B健常組織におけるU2AF2 RNA発現と比較した、様々なヒト由来腫瘍におけるU2AF2 RNAについての2を底とする対数の定量PCR発現を示す。サンプルは技術的四つ組でなされ、標準偏差が示されている。示される細胞株は、適当な順序で方法の節において挙げられている。Dにて、2倍希釈を用いた93.6μM~0.365μMの範囲で、MMDFFNAQM-HLA-A* 02:01(配列番号:266)をコーティングされたチップの上を流れる増加する濃度のTCR2Aについての表面プラズモン共鳴トレースを示す。フローセル差し引きにより生じたペプチド-HLA-A* 02へのTCRの会合の前及び後のピークは、簡潔性のために除去されている。濃度をラベルされた色付きの曲線のみを用いて、Kd を算出している。Eにて、図4DにおいてラベルされたTCRの様々な濃度で生み出されたデータ点への曲線適合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明をさらに記載する前に、本発明は、特定の実施形態の変形が行われ得、かつ添付の特許請求の範囲の内になおも入り得ることから、以下で記載される本発明の特定の実施形態に限定されるわけではないことが理解されるべきである。採用される技術用語は、特定の実施形態を記載する目的のためのものであり、限定することを意図されるわけではないことも理解されるべきである。本明細書及び添付の特許請求の範囲において、「a」、「an」、及び「the」という単数形態は、文脈上はっきりと別様に述べられていない限り、複数の指示対象を含む。
【0017】
値の値域が提供される場合、その値域の上限と下限との間にある、文脈上はっきりと別様に述べられていない限りは下限の単位の10分の1までの各介在値、及びその記述される値域における他の任意の記述される値または介在値は、本発明の内に包含されると理解される。これらのより小さな値域の上限及び下限は、当該より小さな値域内に独立して含まれ得、記述される値域において具体的に除外される任意の限度次第で、本発明の内にも包含される。記述される値域が限度の一方または両方を含む場合、そうした含まれる限度のいずれかまたは両方を除外する値域も本発明に含まれる。
【0018】
別様に定義されていない限り、本明細書において用いられるすべての技術的及び科学的な用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において記載されるものと類似のまたは同等の任意の方法、機器、及び材料が、本発明の実践または試験において用いられ得るものの、例示的な方法、機器、及び材料がここで記載される。
【0019】
本明細書において言及されるすべての刊行物は、当該刊行物に記載されている本発明の主題構成要素を記載する及び開示する目的のために参照により本明細書に組み入れられ、その構成要素は、以下に記載される発明と関連して用いられ得る。
【0020】
本発明は、本発明の実践のための好ましい様態を含むように、本発明者によって見い出されたまたは提案された特定の実施形態の観点から記載されている。本開示に照らして、本発明の意図される範囲から逸脱することなく、例示される特定の実施形態において数々の改変及び変化が加えられ得ることは、当業者によって解される。例えば、コドン冗長性により、タンパク質配列に影響を及ぼすことなく、根本的なDNA配列において変化が加えられ得る。さらに、生物学的な機能等価性の考察により、種類または量における生物学的作用に影響を及ぼすことなく、タンパク質構造において変化が加えられ得る。すべてのそのような改変は、添付の特許請求の範囲の内に含まれることが意図される。
【0021】
スクリーニング法。主要組織適合性複合体タンパク質の結合ドメイン、及び多様なペプチドリガンドを含む一本鎖ポリペプチドのライブラリーを作り出すことによって、抗原配列を発見した。ライブラリーを、コードされたポリペプチドを発現する適切な宿主細胞内に導入し、その宿主細胞には、限定されることなく酵母細胞が含まれる。関心対象のTCRを多量体化して結合を増強し、それを用いて、T細胞受容体に結合するそうした一本鎖ポリペプチドを発現する宿主細胞を選択する。選択集団がバックグラウンドを上回るシグナルを有するまで、反復ラウンドの選択が実施され、すなわち第一のラウンドにおいて選択される細胞は、第二のラウンドのための開始集団を提供する等、通常では少なくとも3ラウンド及びより通常では少なくとも4ラウンドの選択が実施される。一本鎖ポリペプチ
ドのライブラリーからの最終選択集団をコードするポリヌクレオチドは、ハイスループットシーケンシングに供される。ペプチドリガンドの選択されたセットは、残基、例えばTCRに接触する残基においてアミノ酸の制限された選定を呈し、その情報はアルゴリズムに入力され得、それを用いて、結合の基準を満たすすべてのペプチドについて公共データベースを分析し得、それは、これらの基準を満たす一連のペプチドを提供する。
【0022】
ペプチドリガンドは、長さが約8~約20アミノ酸、通常では約8~約18アミノ酸、約8~約16アミノ酸、約8~約14アミノ酸、約8~約12アミノ酸、約10~約14アミノ酸、約10~約12アミノ酸である。完全にランダムなライブラリーは、膨大な数の考え得る組み合わせとなることが解される。好ましい方法において、多様性は、ペプチドをMHC結合ドメインにアンカーする残基においては限定され、それは本明細書においてMHCアンカー残基と呼ばれる。ペプチドにおけるアンカー残基の箇所は、特異的MHC結合ドメインによって決定される。クラスI結合ドメインは、P2箇所において及び最後の接触残基においてアンカー残基を有し得る。クラスII結合ドメインは、P1において、及びアレルに応じてP4、P6、またはP9のうちの1箇所においてアンカー残基を有する。例えば、IEk に対するアンカー残基は、P1{I、L、V}及びP9{K}であり、HLA-DR15に対するアンカー残基は、P1{I、L、V}及びP4{F、Y}である。DRアレルに対するアンカー残基はP1において共有され、P4、P6、P7、及び/またはP9においてアレル特異的アンカー残基を有する。
【0023】
一部の実施形態において、主要組織適合性複合体タンパク質の結合ドメインは、クラスIIアルファ及びベータ鎖の可溶性ドメインである。一部のそのような実施形態において、結合ドメインを突然変異誘発に供し、ペプチド結合接触を変更することなく一本鎖ポリペプチドの可溶性を増強するアミノ酸変化について選択する。ある特定の具体的な実施形態において、結合ドメインは、アミノ酸変化{M36L、V132M}のセットを含むHLA-DR4α、及びアミノ酸変化{H62N、D72E}のセットを含むHLA-DR4βである。ある特定の具体的な実施形態において、結合ドメインは、アミノ酸変化{F12S、M23K}のセットを含むHLA-DR15α、及びアミノ酸変化{P11S}を含むHLA-DR15βである。ある特定の具体的な実施形態において、結合ドメインは、アミノ酸変化{I8T、F12S、L14T、A56V}のセットを含むH2 IEk α、及びアミノ酸変化{W6S、L8T、L34S}のセットを含むH2 IEk βである。
【0024】
一部の実施形態において、主要組織適合性複合体タンパク質の結合ドメインは、クラスI MHCタンパク質のアルファ1及びアルファ2ドメインを含み、それはβ2ミクログロブリンとともに一本鎖で提供される。一部のそのような実施形態において、クラスIタンパク質を突然変異誘発に供し、ペプチド結合接触を変更することなく一本鎖ポリペプチドの可溶性を増強するアミノ酸変化について選択する。ある特定の具体的な実施形態において、結合ドメインは、アミノ酸変化{Y84A}を含むHLA-A2アルファ1及びアルファ2ドメインである。ある特定の具体的な実施形態において、結合ドメインは、アミノ酸変化{M31R}を含むH2-Ld アルファ1及びアルファ2ドメインである。ある特定の具体的な実施形態において、結合ドメインは、アミノ酸変化{Y84A}を含むHLA-B57アルファ1、アルファ2、及びアルファ3ドメインである。
【0025】
ペプチドの配列は、ハイスループットシーケンシングの任意の好都合な方法によって決定される。配列は、クラスタリングアルゴリズムを用いて、例えば実施例において開示される方法によって分析され得る。ペプチドを分析して、ヒトタンパク質(Uniprot)または患者特異的エクソームを検索して、スライディングウィンドウを用いて固定長のペプチドを採点し得る。置換行列は、ペプチドの箇所あたりの全アミノ酸の頻度を決定することによって作成される。所定の箇所におけるアミノ酸に対する0.1%頻度のカット
オフを設けて、ノイズを除去し得る。
【0026】
ペプチドの統計的有意性を判定するために、ヒトプロテオーム及びエクソームペプチドセットを採点する。エクソームペプチドセットに対するp値を算出するために、ヒトプロテオームスコアの背景においてパーセンタイルスコアを算出する。非補正p値は1パーセンタイルである。ボンフェローニ補正されたp値は、変異体セットにおけるペプチドの数を掛けた非補正p値である。
【0027】
MHCタンパク質。主要組織適合性複合体タンパク質(ヒト白血球抗原、HLA、またはマウスにおけるH2遺伝子座とも称される)は、細胞の表面に発現した、これらの細胞に固有の抗原同一性を付与するタンパク質分子である。MHC/HLA抗原は、免疫エフェクター細胞のように造血再構成幹細胞の同じ供給源に由来するものとして(「自己」)、または造血再構成細胞の別の供給源に由来するものとして(「非自己」)、T細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞によって認識される標的分子である。HLA抗原の2つの主要なクラスであるHLAクラスI及びHLAクラスIIが認識される。
【0028】
本発明のライブラリー及び方法において用いられるMHCタンパク質は、任意の哺乳類または鳥類種、例えば霊長類種、特にヒト、マウス、ラット、及びハムスターを含めた齧歯類、ウサギ、ウマ、ウシ、イヌ、ネコ等由来のものであり得る。特に関心対象は、ヒトHLAタンパク質及びマウスH-2タンパク質である。HLAタンパク質には、クラスIIサブユニットのHLA-DPα、HLA-DPβ、HLA-DQα、HLA-DQβ、HLA-DRα、及びHLA-DRβ、ならびにクラスIタンパク質のHLA-A、HLA-B、HLA-C、及びβ2 -ミクログロブリンが含まれる。マウスH-2サブユニットには、クラスIのH-2K、H-2D、H-2L、ならびにクラスIIのI-Aα、I-Aβ、I-Eα、及びI-Eβ、ならびにβ2 -ミクログロブリンが含まれる。
【0029】
MHC結合ドメインは、典型的に、通常では膜結合型タンパク質の可溶型である。可溶型は、膜貫通ドメインの欠失によって天然型に由来する。好都合なことに、タンパク質は切り取られ、細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインの両方が除去される。一部の実施形態において、主要組織適合性複合体タンパク質の結合ドメインは、クラスIIアルファ及びベータ鎖の可溶性ドメインである。一部のそのような実施形態において、結合ドメインを突然変異誘発に供し、ペプチド結合接触を変更することなく一本鎖ポリペプチドの可溶性を増強するアミノ酸変化について選択する。
【0030】
「アレル」とは、染色体上の特定の遺伝子座における遺伝子の異なる核酸配列のうちの一方である。1つまたは複数の遺伝的差異がアレルを構成し得る。HLA遺伝子システムの重要な態様は、その多型である。各遺伝子、MHCクラスI(A、B、及びC)及びMHCクラスII(DP、DQ、及びDR)は、異なるアレルに存在する。HLAアレルに対する現在の命名法は、参照により本明細書に具体的に組み入れられるMarsh et
al.:Nomenclature for factors of the HLA
system,2010.Tissue Antigens 75:291-455によって記載されるように、番号によって指定される。HLAタンパク質及び核酸配列に関しては、参照により本明細書に具体的に組み入れられるRobinson et al.(2011),The IMGT/HLA database.Nucleic Acids Research 39 Suppl 1:D1171-6を参照されたい。
【0031】
本明細書において開示される様々なMHCタンパク質及びバリアント上のアミノ酸残基の番号付けは、全長ポリペプチドと一致するようになされている。境界は、例えばI-Ek、H2-Ld、及びHLA-DR15を用いて本明細書において例示されるように、「ミニ」MHCに対するMHCペプチド結合ドメイン(結晶構造を調べることによって判断
される)の末端、ならびにHLA-A2、-B57、及び-DR4を用いて本明細書において例示されるように、「全長」MHCに対する、構造及び/または配列によって判断されるベータ2/アルファ2/アルファ3ドメインの末端のいずれかであるように設定された。
【0032】
一部の実施形態において、構築物のMHC部分は、配列番号:1~6のいずれかに描かれるMHC部分である。ペプチド及びリンカー部分は、提供される配列から変動し得ることが当業者によって理解される。
【0033】
MHC背景。MHC分子の機能は、病原体に由来するペプチドフラグメントに結合し、かつ適当なT細胞による認識のためにそれらを細胞表面に呈示することである。ゆえに、T細胞受容体認識は、抗原を提示しているMHCタンパク質によって影響され得る。MHC背景という用語は、所定のペプチドが特異的MHCタンパク質によって提示される場合の、TCRによる認識を指す。
【0034】
クラスII HLA/MHC。クラスII結合ドメインは、一般的に、α鎖に対するα1及びα2ドメイン、ならびにβ鎖に対するβ1及びβ2ドメインを含む。膜貫通ドメインのアミノ酸の多くて約10個、通常では多くて約5個が含まれ、好ましくはいずれも含まれない。欠失は、それが、α2またはβ2ドメインがペプチドリガンドに結合し得る能力を妨げないようなものである。
【0035】
一部の実施形態において、主要組織適合性複合体タンパク質の結合ドメインは、クラスIIアルファ及びベータ鎖の可溶性ドメインである。一部のそのような実施形態において、結合ドメインを突然変異誘発に供し、ペプチド結合接触を変更することなく一本鎖ポリペプチドの可溶性を増強するアミノ酸変化について選択する。
【0036】
ある特定の具体的な実施形態において、結合ドメインはHLA-DRアレルである。HLA-DRAタンパク質は、限定されることなく、DRA* 01:01:01:01、DRA* 01:01:01:02、DRA* 01:01:01:03、DRA* 01:01:02、DRA* 01:02:01、DRA* 01:02:02、及びDRA* 01:02:03の結合ドメインから選択され得、それは、全長またはミニアレルの背景で提供されるかどうかに応じて、アミノ酸変化{M36L、V132M}または{F12S、M23K}を含むように改変され得る。HLA-DRA結合ドメインは、HLA-DRB結合ドメインのいずれか1つと結び付けられ得る。
【0037】
ある特定のそのような実施形態において、HLA-DRAアレルは、HLA-DRB4アレルの結合ドメインと対合する。HLA-DRB4アレルは、公的に入手可能なDRB4アレルから選択され得る。
【0038】
他のそのような実施形態において、HLA-DRAアレルは、HLA-DRB15アレルの結合ドメインと対合する。HLA-DRB15アレルは、公的に入手可能なDRB15アレルから選択され得る。
【0039】
他の実施形態において、クラスII結合ドメインは、H2タンパク質、例えばI-Aα、I-Aβ、I-Eα、及びI-Eβである。一部のそのような実施形態において、結合ドメインは、アミノ酸変化{I8T、F12S、L14T、A56V}のセットを含み得るH2 IEk α、及びアミノ酸変化{W6S、L8T、L34S}のセットを含み得るH2 IEk βである。
【0040】
クラスI HLA/MHC。クラスIタンパク質に関して、結合ドメインは、限定され
ることなくHLA-A、HLA-B、HLA-C、H-2K、H-2D、H-2Lを含めた、クラスIアレルのα1、α2、及びα3ドメインを含み得、それはβ2 -ミクログロブリンと結び付けられる。膜貫通ドメインのアミノ酸の多くて約10個、通常では多くて約5個が含まれ、好ましくはいずれも含まれない。欠失は、それが、当該ドメインがペプチドリガンドに結合し得る能力を妨げないようなものである。
【0041】
ある特定の具体的な実施形態において、結合ドメインは、例えばA2タンパク質の少なくともアルファ1及びアルファ2ドメインを含む、HLA-A2結合ドメインである。限定されることなくHLA-A* 02:01:01:01~HLA-A* 02:478を含めた、多数のアレルがHLA-A2において同定されており、その配列は、例えばRobinson et al.(2011),The IMGT/HLA database.Nucleic Acids Research 39 Suppl 1:D1171-6において入手可能である。HLA-A2アレルバリアントの中で、HLA-A* 02:01が最も多く見られる。結合ドメインは、アミノ酸変化{Y84A}を含み得る。
【0042】
ある特定の具体的な実施形態において、結合ドメインは、例えばB57タンパク質の少なくともアルファ1及びアルファ2ドメインを含む、HLA-B57結合ドメインである。HLA-B57アレルは、公的に入手可能なB57アレルから選択され得る。
【0043】
T細胞受容体とは、ヒトTCRα、β、γ、及びδ鎖を含む、脊椎動物、例えば哺乳類のTCR遺伝子複合体の抗原/MHC結合ヘテロ二量体タンパク質産物を指す。例えば、ヒトβTCR遺伝子座の完全配列は、Rowen et al.(1996)Science 272(5269):1755-1762によって公開されているようにシーケンスされており、ヒトαTCR遺伝子座はシーケンスされ及びリシーケンスされており、例えばMackelprang et al.(2006)Hum Genet.119(3):255-66を参照されたい。Arden,Immunogenetics.1995;42(6):455-500におけるT細胞受容体可変遺伝子セグメントファミリーの一般的分析を参照されたい。これらのそれぞれは、当該刊行物において提供され及び参照される配列情報に関して、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
【0044】
本発明の方法における選択のための多量体化されたT細胞受容体は、関心対象のTCR、例えばTCRα/β、TCRγ/δの結合ドメインを含む可溶性タンパク質である。可溶性タンパク質は、一本鎖、またはより通常ではヘテロ二量体であり得る。一部の実施形態において、可溶性TCRは、一方のポリペプチドのC末におけるビオチンアクセプターペプチド配列の付加によって修飾される。アクセプターペプチドにおけるビオチン化後、TCRは、ビオチン結合パートナー、例えばアビジン、ストレプトアビジン、トラプトアビジン(traptavidin)、ニュートラアビジン等に結合させることによって多量体化され得る。ビオチン結合パートナーは、検出可能な標識、例えばフルオロフォア、質量標識(mass label)等を含み得る、または粒子、例えば常磁性粒子に結合され得る。TCRに結合したリガンドの選択は、当技術分野において公知のフローサイトメトリー、磁気選択等によって実施され得る。
【0045】
TCRのペプチドリガンドは、それに対してTリンパ球抗原特異的応答を伴う免疫応答が生じ得るペプチド抗原である。そのような抗原には、自己免疫疾患、感染症、グルテンなどの食品、アレルギー、または組織移植拒絶反応と関連した抗原が含まれる。抗原には、ウイルス、細菌、真菌、原生動物、寄生生物、及び腫瘍細胞を含むがそれらに限定されない、例えば感染症、ワクチン接種等において見い出される、様々な微生物抗原も含まれる。腫瘍抗原には、腫瘍特異的抗原、例えば免疫グロブリンイディオタイプ及びT細胞抗原受容体、p21/ras、p53、p210/bcr-abl融合産物などのがん遺伝子、発達抗原(developmental antigen)、例えばMART-1/
メランA、MAGE-1、MAGE-3、GAGEファミリー、テロメラーゼ等、ウイルス抗原、例えばヒトパピローマウイルス、エプスタイン・バールウイルス等、組織特異的自己抗原、例えばチロシナーゼ、gp100、前立腺酸性ホスファターゼ、前立腺特異的抗原、前立腺特異的膜抗原、サイログロブリン、α-フェトプロテイン等、及び自己抗原、例えばher-2/neu、癌胎児性抗原、muc-1等が含まれる。
【0046】
本発明の方法において、多様なペプチド抗原のライブラリーが作り出される。ペプチドリガンドは、長さが約8~約20アミノ酸、通常では約8~約18アミノ酸、約8~約16アミノ酸、約8~約14アミノ酸、約8~約12アミノ酸、約10~約14アミノ酸、約10~約12アミノ酸である。完全にランダムなライブラリーは、膨大な数の考え得る組み合わせとなることが解される。好ましい方法において、多様性は、ペプチドをMHC結合ドメインにアンカーする残基においては限定され、それは本明細書においてMHCアンカー残基と呼ばれる。ペプチドにおけるアンカー残基の箇所は、特異的MHC結合ドメインによって決定される。多様性は、結合調査によって情報を与えられる他の箇所において、例えばTCRアンカーにおいても限定され得る。
【0047】
ライブラリー。本発明の一部の実施形態において、ポリペプチドの、またはそのようなポリペプチドをコードする核酸のライブラリーが提供され、当該ポリペプチド構造は、式:P-L1 -β-L2 -α-L3 -Tポリペプチドをコードするポリヌクレオチド組成を有し、式中、L1 、L2 、及びL3 のそれぞれは、長さが約4~約12アミノ酸の柔軟性があるリンカーであり、例えばグリシン、セリン、アラニン等を含み、αは、クラスI MHCタンパク質のαドメインまたはクラスIIαMHCタンパク質の可溶型であり、βは、(i)クラスII MHCタンパク質のβ鎖または(ii)クラスI MHCタンパク質に対するβ2 ミクログロブリンの可溶型であり、Tは、限定されることなく酵母Aga2を含めた、ポリペプチドが細胞表面につながれることを可能にするドメインであり、かつ、Pはペプチドリガンド、通常ではこれまでに記載された種々のペプチドリガンドのライブラリーであって、少なくとも106 種、少なくとも107 種、より通常では少なくとも108 種の異なるペプチドリガンドがライブラリーに存在する。
【0048】
コード配列を組み立てる従来の方法が用いられ得る。ペプチドリガンドの多様性を生み出すために、当技術分野において公知のランダム化、エラープローンPCR、突然変異誘発プライマー等を用いて、一連のポリヌクレオチドを創出する。ポリヌクレオチドのライブラリーは、典型的に、関心対象の宿主細胞に適切なベクターにライゲーションされる。様々な実施形態において、ライブラリーは、P-L1 -β-L2 -α-L3 -Tポリペプチドをコードする精製されたポリヌクレオチド組成物として、発現ベクターに作動的に連結された、P-L1 -β-L2 -α-L3 -Tポリペプチドをコードする精製されたポリヌクレオチド組成物であって、当該ベクターは、限定されることなく酵母細胞における発現に適切であり得るポリヌクレオチド組成物として、P-L1 -β-L2 -α-L3 -Tポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのライブラリーを含む細胞の集団であって、当該細胞の集団は、限定されることなく酵母細胞であり得、かつ当該酵母細胞は、ポリペプチドライブラリーを発現するように誘導され得る細胞の集団として、提供される。
【0049】
「適切な条件」とは、この用語が用いられる背景に依存した意味を有するものとする。つまり、P-L1 -β-L2 -α-L3 -Tポリペプチドをコードするポリヌクレオチド組成という式のポリペプチドへのT細胞受容体の結合と関連して用いられる場合、当該用語は、TCRが同族ペプチドリガンドに結合することを可能にする条件を意味するものとする。この用語が、核酸ハイブリダイゼーションと関連して用いられる場合、当該用語は、長さが少なくとも15ヌクレオチドの核酸が、それと相補的な配列を有する核酸にハイブリダイズすることを可能にする条件を意味するものとする。作用物質を細胞に接触させることに関連して用いられる場合、この用語は、そうすることが可能な作用物質が細胞に
入りかつその意図される機能を果たすことを可能にする条件を意味するものとする。1つの実施形態において、本明細書において用いられる「適切な条件」という用語は、生理学的条件を意味する。
【0050】
「特異性」という用語は、真陰性の試験結果である陰性の試験結果の割合を指す。陰性の試験結果には、偽陽性及び真陰性の試験結果が含まれる。
【0051】
「感度」という用語は、少量の分析物を検出し得る分析法の能力を指すことが企図される。ゆえに、本明細書で使用するとき、増幅されたDNAの検出のためのより高感度な方法は、例えば、少量のそのようなDNAを、より低感度な方法がするよりも良好に検出し得る。「感度」とは、陽性の試験結果を有する予想結果の割合を指す。
【0052】
本明細書において用いられる「再現性」という用語は、同じサンプルのアリコートに対して繰り返し行われた場合、同じ結果を与え得る分析手順の全般的能力を指す。
【0053】
本開示において用いられ得るシーケンシングプラットフォームには、パイロシーケンシング、合成時解読(sequencing-by-synthesis)、一分子シーケンシング、第二世代シーケンシング、ナノポアシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、またはハイブリダイゼーションによるシーケンシングが含まれるが、それらに限定されるわけではない。好ましいシーケンシングプラットフォームは、Illumina(RNA-Seq)及びHelicos(Digital Gene Expression、すなわち「DGE」)から市販されているものである。「次世代」シーケンシング法には、1)Margulies et al.,Nature(2005)437:376-380(2005)、及び米国特許第7,244,559号;第7,335,762号;第7,211,390号;第7,244,567号;第7,264,929号;第7,323,305号に記載される方法及び装置を含むがそれらに限定されない454/Roche Lifesciencesによって商品化されているもの、2)米国特許出願第11/167046号及び米国特許第7501245号;第7491498号;第7,276,720号に、及び米国特許出願公報第US20090061439号;第US20080087826号;第US20060286566号;第US20060024711号;第US20060024678号;第US20080213770号;及び第US20080103058号に記載されるHelicos BioSciences Corporation(Cambridge,MA)によって商品化されているもの、3)Applied Biosystemsによって商品化されているもの(例えば、SOLiDシーケンシング)、4)Dover Systemsによって商品化されているもの(例えば、Polonator G.007シーケンシング)、5)米国特許第5,750,341号;第6,306,597号;及び第5,969,119号に記載されるIlluminaによって商品化されているもの、ならびに6)米国特許第7,462,452号;第7,476,504号;第7,405,281号;第7,170,050号;第7,462,468号;第7,476,503号;第7,315,019号;第7,302,146号;第7,313,308号、及び米国特許出願公報第US20090029385号;第US20090068655号;第US20090024331号;及び第US20080206764号に記載されるPacific Biosciencesによって商品化されているものが含まれるが、それらに限定されるわけではない。すべての参考文献は、参照により本明細書に組み入れられる。そのような方法及び装置は、例として本明細書で提供されるものであり、限定することを意図されるわけではない。
【0054】
発現構築物。本明細書において開示されるペプチドまたは本明細書において開示されるTCRをコードする配列は、ワクチン等として発現ベクターに、例えば操作される対象と
なる細胞内に導入され得る。TCR配列は、例えばCRISPR技術(例えば、Eyquem et al.(2017)Nature 543:113-117、Ren et
al.(2017)Protein&Cell 1-10、Ren et al.(2017)Oncotarget 8(10):17002-17011を参照されたい)を用いて、内因性遺伝子の部位に導入され得る。
【0055】
アミノ酸配列バリアントは、本明細書において記載されるように、コード配列内に適当なヌクレオチド変化を導入することによって調製される。そのようなバリアントは、記される残基の挿入、置換、及び/または指定の欠失を表す。挿入、置換、及び/または指定の欠失の任意の組み合わせは、最終構築物が、本明細書において規定される所望の生物学的活性を有するという条件で、最終構築物に達するように行われる。
【0056】
当該配列をコードする核酸は、発現及び/または組み込みのためのベクター内に挿入される。多くのそのようなベクターが使用可能である。例えば、CRISPR/Cas9システムは、Cas9及びsgRNAをコードするプラスミドを用いたトランスフェクションによってヒト細胞に直接適用され得る。CRISPR構成要素のウイルス送達は、レンチウイルス及びレトロウイルスベクターを用いて広範に実証されている。アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス(AAV)など、非組み込み型ウイルスによってコードされるCRISPRによる遺伝子編集も報告されている。より小さなCasタンパク質の最近の発見は、この技術と、AAVベクターなど、それらの安全性プロファイル及び効率に関してますます成功を収めているベクターとの組み合わせを可能にしかつ増強している。
【0057】
ベクター構成要素には、一般的に、複製の起点、1種もしくは複数種のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列のうちの1つまたは複数が含まれるが、それらに限定されるわけではない。ベクターには、ウイルスベクター、プラスミドベクター、組み込み型ベクター等が含まれる。
【0058】
配列は、異種ポリペプチドとの、例えば成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有するシグナル配列または他のポリペプチドとの融合ポリペプチドとして、組み換えにより産生され得る。一般的に、シグナル配列はベクターの構成要素であり得る、またはそれは、ベクター内に挿入されるコード配列の一部であり得る。好ましく選択される異種シグナル配列は、宿主細胞によって認識されかつ処理される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。哺乳類細胞発現では、天然シグナル配列が用いられ得る、または同じ種もしくは近縁種の分泌ポリペプチド由来のシグナル配列、ならびにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルなど、他の哺乳類シグナル配列が適切であり得る。
【0059】
発現ベクターは、選択可能マーカーとも称される選択遺伝子を含有し得る。この遺伝子は、選択培養培地中で成長した形質転換宿主細胞の生存または成長に必要なタンパク質をコードする。選択遺伝子を含有するベクターで形質転換されていない宿主細胞は、培養培地中で生存しない。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質もしくは他の毒素、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、もしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与する、(b)栄養要求欠損を補う、または(c)複合培地からは入手できない重大な栄養素を供給する、タンパク質をコードする。
【0060】
発現ベクターは、宿主生物によって認識されかつコード配列に作動的に連結されるプロモーターを含有する。プロモーターは、それらが作動的に連結される特定の核酸配列の転写及び翻訳を制御する構造遺伝子(一般的に、約100~1000bp以内)の開始コドンに対して上流(5’)に位置する非翻訳配列である。そのようなプロモーターは、典型的に、誘導性及び構成的という2つのクラスに分けられる。誘導性プロモーターは、培養
条件のいくらかの変化、例えば栄養素の有無または温度の変化に応答して、それらの制御下でDNAからの転写のレベルの増加を始動するプロモーターである。多様な潜在的宿主細胞によって認識される多数のプロモーターが周知である。
【0061】
哺乳類宿主細胞におけるベクターからの転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2など)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス(マウス幹細胞ウイルスなど)、B型肝炎ウイルス、及び最も好ましくはシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから、異種哺乳類プロモーター、例えばアクチンプロモーター、PGK(ホスホグリセリン酸キナーゼ)、もしくは免疫グロブリンプロモーターから、または熱ショックプロモーターから獲得されたプロモーターによって、そのようなプロモーターは宿主細胞システムと適合性であるという条件で、制御され得る。SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製の起点も含有するSV40制限フラグメントとして好都合に獲得される。
【0062】
より高等な真核生物による転写は、ベクター内にエンハンサー配列を挿入することによってしばしば増加する。エンハンサーは、プロモーターに作用してその転写を増加させる、通常では長さが約10~300bpの、DNAのシス作用性エレメントである。エンハンサーは、配向及び箇所に比較的無関係であり、イントロン内ならびにコード配列自体の内に、転写単位に対して5’及び3’に見い出されている。哺乳類遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、及びインスリン)から、多くのエンハンサー配列が現在公知である。しかしながら、典型的に、真核生物ウイルス由来のエンハンサーが用いられる。例には、複製起点の後期側にあるSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側にあるポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが含まれる。エンハンサーは、コード配列に対して5’または3’の箇所で発現ベクター内にスプライスされ得るが、好ましくはプロモーターから5’の部位に位置する。
【0063】
真核生物宿主細胞における使用のための発現ベクターは、転写の終結に及びmRNAを安定させるために必要な配列も含有する。そのような配列は、真核生物またはウイルスのDNAまたはcDNAの5’及び時には3’非翻訳領域から一般に入手可能である。これまでに挙げられた構成要素のうちの1つまたは複数を含有する適切なベクターの構築は、標準的な技法を採用する。
【0064】
本明細書における、ベクター内のDNAをクローニングするまたは発現するための適切な宿主細胞は、原核生物、酵母、またはこれまでに記載された他の真核細胞である。有用な哺乳類宿主細胞株の例は、マウスL細胞(L-M[TK-]、ATCC#CRL-2648)、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL1651)、ヒト胎児腎臓株(293または浮遊培養での成長のためにサブクローニングされた293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10)、チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO)、マウスセルトリ細胞(TM4)、マウス腎臓細胞(CV1 ATCC CCL70)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1 587)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL2)、イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL34)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75)、ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB8065)、マウス乳腺腫瘍(MMT060562、ATCC CCL51)、TRI細胞、MRC5細胞、FS4細胞、及びヒトヘパトーマ株(Hep G2)である。
【0065】
操作されたT細胞等を含めた宿主細胞に、上記の発現ベクターをトランスフェクトし得
る。細胞は、プロモーターを誘導するために、形質転換体を選択するために、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適当であるように改変された従来の栄養培地中で培養され得る。哺乳類宿主細胞は、多様な培地中で培養され得る。Ham’s F10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMI1640(Sigma)、及びダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)などの市販の培地は、宿主細胞を培養するために適切である。これらの培地のいずれかに、必要に応じて、ホルモン及び/または他の成長因子(インスリン、トランスフェリン、または上皮成長因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩など)、バッファー(HEPESなど)、ヌクレオシド(アデノシン及びチミジンなど)、抗生物質、微量元素、ならびにグルコースまたは同等のエネルギー源を補給し得る。他の任意の必要な補給剤も、当業者に公知である適当な濃度で含まれ得る。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞とともに以前に用いられたものであり、当業者には明白である。
【0066】
核酸は、別の核酸配列との機能的関係性に置かれた場合、「作動的に連結され」ている。例えば、シグナル配列に対するDNAは、それが、ポリペプチドの分泌の前兆となるプレタンパク質として発現される場合、当該ポリペプチドに対するDNAに作動的に連結されており、プロモーターまたはエンハンサーは、それがコード配列の転写に影響を及ぼす場合、当該配列に作動的に連結されており、及びリボソーム結合部位は、それが、翻訳を促すように位置付けされている場合、コード配列に作動的に連結されている。一般的に、「作動的に連結された」とは、連結されているDNA配列が近接していること、及び分泌リーダーの場合には近接しておりかつリーディング相にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは近接している必要はない。
【0067】
本開示のポリペプチドまたは核酸が「実質的に純粋」である事象において、それらは、少なくとも約60重量%(乾燥重量)の関心対象の生体分子であり得る。例えば、組成物は、少なくとも約75重量%、約80重量%、約85重量%、約90重量%、約95重量%、または約99重量%の関心対象の生体分子であり得る。純度は、任意の適当な標準的方法、例えばカラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析によって測定され得る。
【0068】
本発明の別の実施形態において、これまでに記載された病状の治療に有用な材料を含有する製造品が提供される。製造品は、容器及びラベルを含む。適切な容器には、例えばボトル、バイアル、シリンジ、及び試験管が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの多様な材料から形成され得る。容器は、病状を治療するために有効である組成物を入れ、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は静脈注射用溶液バッグ、または皮下注射針によって貫通可能な栓を有するバイアルであり得る)。組成物中の活性剤は、発現のための標的細胞内に配列を導入する際に適切なベクターであり得る。容器上にあるまたはそれに伴うラベルは、組成物が、選定される病状を治療するために用いられることを示す。例えば、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、またはデキストロース溶液などの薬学的に許容されるバッファーを入れ得るさらなる容器(複数可)が、製造品とともに提供され得る。製造品は、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用のための指示を有する添付文書を含めた、商業的な及びユーザーの視点から望ましい他の材料をさらに含み得る。
【0069】
ポリペプチドまたはDNA配列に関連して本明細書において用いられる「配列同一性」という用語は、2つの分子間のサブユニット配列同一性を指す。分子の両方におけるサブユニット箇所が、同じ単量体サブユニット(例えば、同じアミノ酸残基またはヌクレオチド)によって占有される場合には、当該分子はその箇所において同一である。2つのアミノ酸配列または2つのヌクレオチド配列間の類似性は、同一箇所の数の一次関数である。
一般的に、配列は、最も高位の合致が得られるようにアラインされる。必要であれば、同一性は、公開された技法、及びGCSプログラムパッケージ(Devereux et al.,Nucleic Acids Res.12:387,1984)、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul et al.,J.Molecular Biol.215:403,1990)など、広く使用可能なコンピュータプログラムを用いて算出され得る。
【0070】
「ポリペプチド」、「タンパク質」、または「ペプチド」という用語は、その長さまたは翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)にかかわらず、アミノ酸残基の任意の鎖を指す。
【0071】
本明細書における「タンパク質バリアント」または「バリアントタンパク質」または「バリアントポリペプチド」は、少なくとも1個のアミノ酸改変によって野生型タンパク質とは異なるタンパク質を意味する。親ポリペプチドは、天然に存在するもしくは野生型(WT)のポリペプチドであり得る、またはWTポリペプチドの改変型であり得る。バリアントポリペプチドとは、当該ポリペプチド自体、当該ポリペプチドを含む組成物、またはそれをコードするアミノ酸配列を指し得る。好ましくは、バリアントポリペプチドは、親ポリペプチドと比較して少なくとも1個のアミノ酸改変、例えば親と比較して約1~約10個のアミノ酸改変、及び好ましくは約1~約5個のアミノ酸改変を有する。
【0072】
本明細書において開示されるペプチドは、当該ペプチドがそのTCR誘導性を保持する限りにおいて付加的なアミノ酸残基と隣接し得る。そのようなペプチドは、約40アミノ酸未満、例えば約20アミノ酸未満、例えば約15アミノ酸未満であり得る。配列番号:3~5、7~9、12、15~19、22、24、27~30、37、67、及び74の群から選択されるアミノ酸配列からなるペプチドに隣接するアミノ酸配列は限定されるわけではなく、それがTCR認識を阻害しない限りにおいて任意の種類のアミノ酸から構成され得る。アミノ酸配列は、その中の1個または複数個のアミノ酸を置換することによって改変され得る。当業者であれば、単一アミノ酸またはわずかなパーセンテージのアミノ酸を変更する、アミノ酸配列への個々の付加または置換は、元のアミノ酸側鎖の特性の保存をもたらし、ゆえに、それは「保存的置換」または「保存的改変」と呼ばれ、タンパク質の変更は、類似の機能を有するタンパク質をもたらすことを認識する。
【0073】
ペプチドの上記の配列改変に加えて、ペプチドは、それらがTCR結合活性を保持する限りにおいて、他の物質にさらに連結され得る。使用可能な物質には、ペプチド、脂質、糖類及び糖鎖、アセチル基、天然及び合成ポリマー等が含まれる。ペプチドは、修飾が、本明細書において記載されるペプチドの生物学的活性を破壊しない限りにおいて、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などの修飾を含有し得る。これらの種類の修飾を実施して、付加的な機能(例えば、標的化機能及び送達機能)を付与し得るまたはポリペプチドを安定させ得る。
【0074】
例えば、ポリペプチドのインビボ安定性を増加させるために、特に有用な様々なD-アミノ酸、アミノ酸模倣体、または非天然アミノ酸を導入することが当技術分野において公知であり、この概念は、本ポリペプチドにも取り入れられ得る。ポリペプチドの安定性は、いくつかのやり方でアッセイされ得る。例えば、安定性を試験するために、ペプチダーゼ、ならびにヒト血漿及び血清などの様々な生物学的媒体が用いられている(例えば、Verhoef et al.,Eur J Drug Metab Pharmacokin 11:291-302,1986、[0053]III.ペプチドの調製を参照されたい)。
【0075】
本明細書において開示されるペプチドは、周知の技法を用いて調製され得る。例えば、
ペプチドは、合成的に、組み換えDNA技術によって、または化学合成によって調製され得る。本明細書において開示されるペプチドは、個々に、または2個もしくはそれを上回る数のペプチド(例えば、2個もしくはそれを上回る数のペプチド、またはペプチド及び非ペプチド)を含むより長いポリペプチドとして合成され得る。ペプチドは単離され得る、すなわち、他の天然に存在する宿主細胞タンパク質及びそのフラグメントを実質的に含まないように精製され得る、例えば少なくとも約70%、80%、または90%精製され得る。
【0076】
本明細書において用いられる「親ポリペプチド」、「親タンパク質」、「前駆体ポリペプチド」、または「前駆体タンパク質」は、その後に改変されてバリアントを生成する、改変されていないポリペプチドを意味する。親ポリペプチドは、野生型(または天然)ポリペプチド、または野生型ポリペプチドのバリアントもしくは操作された型であり得る。親ポリペプチドとは、当該ポリペプチド自体、当該親ポリペプチドを含む組成物、またはそれをコードするアミノ酸配列を指し得る。
【0077】
「レシピエント」、「個体」、「対象」、「宿主」、及び「患者」という用語は、本明細書において互換可能に用いられ、それに対して診断、治療、または療法が望まれる任意の哺乳類対象、特にヒトを指す。治療の目的のための「哺乳類」とは、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタなど、ヒト、飼育動物、及び家畜、ならびに動物園用、運動用、またはペット用動物を含めた、哺乳類として分類される任意の動物を指す。好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0078】
本明細書において使用するとき、「治療上有効な量」とは、疾患または障害を治療するまたは管理するために十分な、治療剤、例えばプライムされたT細胞、ペプチド、またはポリヌクレオチドワクチン等の注入の量を指す。治療上有効な量とは、疾患の発症を遅延させるもしくは最小限に抑える、例えばがんの広がりを遅延させるもしくは最小限に抑えるために十分な治療剤の量、または関心対象の受容体からのシグナル伝達を減少させるもしくは増加させるために有効な量を指し得る。治療上有効な量とは、疾患の治療または管理において治療的有益性を提供する治療剤の量も指し得る。さらに、本発明の治療剤に関する治療上有効な量とは、疾患の治療または管理において治療的有益性を提供する、単独でのまたは他の療法との組み合わせでの治療剤の量を意味する。
【0079】
本明細書において使用するとき、「投薬レジメン」という用語は、典型的には期間によって分離された、対象に個々に施される単位投薬のセット(典型的に1回を上回る回数)を指す。一部の実施形態において、所定の治療剤は、1回または複数回の投薬を伴い得る推奨される投薬レジメンを有する。一部の実施形態において、投薬レジメンは、それぞれが、同じ長さの期間によって互いから分離されている複数回の投薬を含み、一部の実施形態において、投薬レジメンは、複数回の投薬、及び個々の投薬を分離する少なくとも2つの異なる期間を含む。一部の実施形態において、投薬レジメン内のすべての投薬は、同じ単位投薬量のものである。一部の実施形態において、投薬レジメン内の異なる投薬は、異なる量のものである。一部の実施形態において、投薬レジメンは、第一の投薬量での第一の投薬、それに続く、当該第一の投薬量とは異なる第二の投薬量での1回または複数回の付加的な投薬を含む。一部の実施形態において、投薬レジメンは、第一の投薬量での第一の投薬、それに続く、当該第一の投薬量と同じ第二の投薬量での1回または複数回の付加的な投薬を含む。一部の実施形態において、投薬レジメンは、関連性がある集団にわたって施される場合、所望のまたは有益な成果と相関する(すなわち、治療的投薬レジメンである)。
【0080】
本明細書において使用するとき、「がん」(または「がん性」)、または「腫瘍」という用語は、自律的成長能(例えば、細胞成長を急速に増殖させることによって特徴付けさ
れる異常な状態または病状)を有する細胞を指すために用いられる。過剰増殖性疾患状態及び新生物疾患状態は、病的(例えば、疾患状態を特徴付けするまたは構成する)として類別され得る、またはそれらは非病理的として(例えば、正常からの逸脱であるが、疾患状態とは関連しないものとして)類別され得る。当該用語は、組織病理学的タイプまたは侵襲のステージに関係なく、すべてのタイプのがん性成長もしくは発がん過程、転移性組織、または悪性形質転換した細胞、組織、もしくは器官を含むことを企図される。病的過剰増殖性細胞は、悪性腫瘍成長によって特徴付けされる疾患状態において生じる。非病理的過剰増殖性細胞の例には、創傷修復に伴う細胞の増殖が含まれる。「がん」または「腫瘍」という用語は、肺、乳房、甲状腺、リンパ腺及びリンパ系組織、消化器器官、ならびに尿生殖器管に影響を及ぼすものを含めた、様々な器官系の悪性腫瘍、ならびにほとんどの結腸癌、腎細胞癌、前立腺癌及び/または精巣腫瘍、肺の非小細胞癌、小腸の癌、ならびに食道の癌などの悪性腫瘍を含むと一般的に考えられる腺癌を指すためにも用いられる。
【0081】
「癌腫」という用語は、当技術分野において認められており、呼吸器系癌、消化器系癌、尿生殖器系癌、精巣癌、乳癌、前立腺癌、内分泌系癌、及び黒色腫を含めた、上皮組織または内分泌組織の悪性腫瘍を指す。「腺癌」とは、腺組織に由来する、または腫瘍細胞が認識可能な腺構造を形成する癌腫を指す。
【0082】
例示的ながんタイプには、AML、ALL、CML、副腎皮質癌、肛門癌、再生不良性貧血、胆管癌、膀胱癌、骨癌、骨転移、脳腫瘍、中枢神経系(CNS)癌、末梢神経系(PNS)癌、乳癌、子宮頸癌、小児期非ホジキンリンパ腫、結腸及び直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイングファミリー腫瘍(例えば、ユーイング肉腫)、眼癌、胆嚢癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭及び下咽頭癌、肝臓癌、肺癌、肺カルチノイド腫瘍、非ホジキンリンパ腫、男性乳癌、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性障害、鼻腔及び副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔及び口腔咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、下垂体腫瘍、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、黒色腫皮膚癌、非黒色腫皮膚癌、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮癌(例えば、子宮肉腫)、移行上皮癌、膣癌、外陰癌、中皮腫、扁平上皮細胞または類表皮癌、気管支腺腫、絨毛癌、頭頸部癌、奇形癌、またはワルデンシュトレームマクログロブリン血症が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0083】
方法及び組成物
組成物及び方法が、所定のMHC背景におけるT細胞受容体によって認識されるペプチドのセットを正確に同定するために提供され、2、3、4、5個、またはそれを上回る数のライブラリーを同時にスクリーニングする多重方法を用いたそのようなスクリーニングから獲得された抗原を提供する。ゆえに同定されたペプチドリガンド(抗原)は、長さが約8~約20アミノ酸、通常では約8~約18アミノ酸、約8~約16アミノ酸、約8~約14アミノ酸、約8~約12アミノ酸、約10~約14アミノ酸、約10~約12アミノ酸であり、配列番号:1~257として本明細書において提供されるペプチドのいずれかを含み得る。
【0084】
関心対象のTCRに結合するペプチドの選択は、多量体化されたTCRとライブラリーを発現する宿主細胞の集団とを結び付けることによって実施される。選択のための多量体化されたT細胞受容体は、関心対象のTCR、例えばα/β、TCRγ/δの結合ドメインを含む可溶性タンパク質であり、任意の好都合な方法によって合成され得る。TCRは一本鎖またはヘテロ二量体であり得る。一部の実施形態において、可溶性TCRは、一方のポリペプチドのC末端におけるビオチンアクセプターペプチド配列の付加によって修飾される。アクセプターペプチドにおけるビオチン化後、TCRは、ビオチン結合パートナ
ー、例えばアビジン、ストレプトアビジン、トラプトアビジン、ニュートラアビジン等に結合させることによって多量体化され得る。ビオチン結合パートナーは、検出可能な標識、例えばフルオロフォア、質量標識等を含み得る、または粒子、例えば常磁性粒子に結合され得る。TCRに結合したリガンドの選択は、当技術分野において公知のフローサイトメトリー、磁気選択等によって実施され得る。
【0085】
選択集団がバックグラウンドを上回るシグナルを有するまで、選択のラウンドが実施され、通常では少なくとも3ラウンド及びより通常では少なくとも4ラウンドの選択が実施される。一部の実施形態において、初回ラウンドの選択は、例えばバックグラウンドを上回るシグナルがあるまで、超常磁性微粒子などの磁性試薬に共役したTCRを用いて実施され、それは「磁化された」と呼ばれ得る。参照により本明細書に組み入れられる、Molday(米国特許第4,452,773号)は、磁性鉄-デキストラン微粒子の調製を記載しており、生物学的材料への付着に適切な粒子を調製する様々な手段を記載した概要を提供している。高勾配磁気分離(HGMS)法において用いられる磁性粒子に対するポリマーコーティングについての記載は、米国特許第5,385,707号に見い出される。超常磁性粒子を調製する方法は、米国特許第4,770,183号に記載されている。微粒子は、通常直径が約100nm未満であり、通常直径が約10nmよりも大きい。共役のための精確な方法は本発明の実践に重大ではなく、いくつかの代替策が当技術分野において公知である。直接共役は、TCRを粒子に付着させる。間接共役は、いくつかの方法によって達成され得る。TCRは、高アフィニティー結合システムの一方のメンバー、例えばビオチンに、及び他方のメンバー、例えばアビジンに付着した粒子に共役され得る。あるいは、TCRの種特異的エピトープを認識する二次抗体、例えば抗マウスIg、抗ラットIg等も用いられ得る。間接共役法は、多様な分離抗体とともに、単一の磁気的に共役した実体、例えば抗体、アビジン等の使用を可能にする。
【0086】
もしくは、最終ラウンドの選択のための好ましい実施形態において、TCRは、例えばフローサイトメトリー、マスサイトメトリー等のために、検出可能な標識を有する試薬に多量体化される。例えば、FACS選別を用いて、TCRに結合するペプチドリガンドを有する細胞の濃度を増加させ得る。技法には、多色チャネル、低角度でかつ鈍い光散乱検出チャネル、インピーダンスチャネルなど、様々な洗練度を有し得る蛍光活性化細胞選別機が含まれる。
【0087】
最終ラウンドの選択の後、ポリヌクレオチドが選択宿主細胞から単離され、選択されたペプチドリガンドの配列は、通常ではハイスループットシーケンシングによって決定される。選択工程は、特異的HLA背景におけるTCRによって結合されるペプチドのセットの決定をもたらすことが本明細書において示されている。T細胞の活性化におけるこれらのリガンドの生物学的活性が検証されている。選択されたリガンドのセットは、T細胞受容体への結合に要されるアミノ酸箇所の制限についての情報を提供する。通常では複数種のペプチドリガンド、例えば最高で10種、最高で100種、最高で500種、最高で1000種、またはそれを上回る種類の異なるペプチド配列が選択される。
【0088】
ペプチドリガンドのこの選択されたセットからの配列データは、ペプチドリガンドの各箇所におけるアミノ酸の制限についての情報を提供する。これはグラフで示され得る。制限は、TCRに接触する残基において特に関連性があり得る。ペプチドの箇所におけるアミノ酸の制限に関するデータを入力して、公共データベースの分析のための検索アルゴリズムを設計する。検索の結果は、MHC背景におけるTCRへの結合の基準を満たすペプチドのセットを提供する。検索アルゴリズムは、通常、コンピュータによって実行可能な指示のプログラムとして具体化され、コンピュータに搭載されるソフトウェア構成要素によって実施される。
【0089】
これらの方法によって同定されるペプチド及びT細胞受容体は、ワクチン法において、患者T細胞集団を分類するスクリーニング法において、インビトロでT細胞をプライムするため等に用いられ得る。
【0090】
一部の実施形態において、組成物は、HLA-A2である少なくとも1つのHLAアレルを有する対象において、がん細胞、例えば結腸直腸癌細胞に対する免疫応答を引き出す1種または複数種のペプチドを含む。別の態様において、本発明は、本明細書において開示される1種のペプチドをコードする1種のポリヌクレオチドを含む組成物を提供する。一部の実施形態において、組成物は、本明細書において開示される複数種のペプチドをコードする複数種(すなわち、2種またはそれを上回る種類)のポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、組成物は、本明細書において開示される複数種のペプチドをコードする1種のポリヌクレオチドを含む。
【0091】
関連する態様において、本明細書において開示されるペプチドまたはペプチドをコードするポリヌクレオチドを個体に投与することによって、がんを治療する(例えば、腫瘍細胞成長を低下させる、腫瘍細胞死を促進する)ための方法が提供される。関連する態様において、本明細書において開示されるペプチドでプライムされている、単離されたプライムされたT細胞が提供される。別の態様において、HLA抗原と本明細書において開示されるペプチドとの間で形成される複合体を含む抗原提示細胞が提供される。一部の実施形態において、抗原提示細胞は単離される。
【0092】
「ワクチン」(免疫原性組成物とも呼ばれる)という用語は、動物への接種があると抗腫瘍(または抗病原体)免疫を誘導する機能を有する物質を指す。
【0093】
薬学的作用物質によって治療される対象となるがんは限定されるわけではなく、本明細書において同定されるペプチドへの対応するタンパク質が対象において発現するすべての種類のがんを含む。例示されるがんは、癌腫、例えば結腸直腸癌である。
【0094】
必要であれば、ペプチドまたはペプチドをコードするポリヌクレオチドのいずれかから構成される薬学的作用物質は、他の治療用物質を、当該物質が関心対象のペプチドのTCR刺激効果を阻害しない限りにおいて、活性成分として任意で含み得る。例えば、製剤は、抗炎症剤、鎮痛剤、化学療法剤等を含み得る。医薬品それ自体に他の治療用物質を含めることに加えて、医薬品は、1種または複数種の他の薬理学的作用物質と逐次的にまたは並行しても投与され得る。医薬品及び薬理学的作用物質の量は、例えば、どのようなタイプの薬理学的作用物質(複数可)が用いられるか、治療されている疾患、ならびに投与のスケジュール及び経路に依存する。
【0095】
ペプチドは、必要であれば、従来の製剤化法によって製剤化されている薬学的作用物質として直接投与され得る。そのような場合、ペプチドに加えて、キャリア、賦形剤、及び薬物に普通用いられるようなものが、特に限定されることなく必要に応じて含まれ得る。そのようなキャリアの例は、滅菌水、生理的食塩水、リン酸塩バッファー、培養液などである。さらに、薬学的作用物質は、必要に応じて、安定剤、懸濁液、防腐剤、界面活性剤などを含有し得る。薬学的作用物質は、がんを治療する及び/または予防するために用いられ得る。
【0096】
ペプチドを、本明細書において開示されるペプチドの2種またはそれを上回る種類を含む組み合わせで調製して、T細胞をインビボで刺激し得る。ペプチドはカクテルの状態であり得る、または標準的技法を用いて互いに抱合され得る。例えば、ペプチドは、単一のポリペプチド配列として発現され得る。組み合わせにおけるペプチドは、同じであり得るまたは異なり得る。ペプチドを投与することによって、ペプチドは、抗原提示細胞のHL
A抗原上に高密度で提示され、次いで、呈示されたペプチドとHLA抗原との間で形成される複合体に対して特異的に反応するT細胞が刺激される。あるいは、それらの細胞表面にペプチドを固定している抗原提示細胞を、対象由来の樹状細胞を取り出すことによって獲得し、それをペプチドによって刺激し、次いで、ペプチド搭載樹状細胞を対象に再投与することによって内因性T細胞を対象において刺激し、結果として、標的細胞に対する攻撃性が増加し得る。
【0097】
本明細書において記載されるペプチドを活性成分として含む薬学的作用物質は、細胞性免疫が有効に確立されるようにアジュバントを任意で含み得る、またはそれらは他の活性成分とともに投与され得る、及びそれらは顆粒への製剤化によって投与され得る。アジュバントとは、免疫学的活性を有するタンパク質と一緒に(または連続的に)投与された場合、当該タンパク質に対する免疫応答を増強する化合物を指す。適用され得るアジュバントには、文献に記載されているものが含まれる。例示的なアジュバントには、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ミョウバン、コレラ毒素、サルモネラ毒素などが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0098】
さらに、リポソーム製剤、ペプチドが数mcm径のビーズに結合している顆粒製剤、及び脂質がペプチドに結合している製剤が好都合に用いられ得る。あるいは、エクソソームと称される細胞内小胞が提供され、それは、ペプチドとそれらの表面上のHLA抗原との間で形成される複合体を提示する。エクソソームは、ペプチドと同様に、ワクチンとして接種され得る。
【0099】
一部の実施形態において、本明細書において開示される薬学的作用物質は、Tリンパ球をプライムする構成要素を含む。脂質は、ウイルス抗原に対してCTLをインビボでプライムし得る作用物質として同定されている。例えば、パルミチン酸残基は、リジン残基のエプシロン-及びアルファ-アミノ基に付着し得、次いで本明細書において開示されるペプチドに連結され得る。脂質化されたペプチドは、次いで、ミセルもしくは粒子のいずれかの状態で直接投与され得る、リポソーム内に組み入れられ得る、またはアジュバント中に乳化され得る。CTL応答の脂質プライミングの別の例として、適当なペプチドに共有結合で付着した場合、トリパルミトイル-S-グリセリルシステインリセリル-セリン(P3CSS)などのE.coliリポタンパク質を用いて、CTLをプライムし得る(例えば、Deres et al.,Nature 342:561,1989を参照されたい)。
【0100】
投与の方法は、経口、皮内、皮下、静脈内注射などであり得、全身投与または標的部位の付近への局所投与が用途を見い出す。投与は、単回投与によって実施され得る、または複数回投与によってブーストされ得る。ペプチドの用量は、治療される対象となる疾患、患者の年齢、体重、投与の方法などに従って適当に調整され得、普通、0.001mg~1000mg、例えば0.001mg~1000mg、例えば0.1mg~10mgであり、数日ごとに1回~数ヶ月ごとに1回投与され得る。当業者であれば、適切な用量を適当に選択し得る。
【0101】
本明細書において開示される薬学的作用物質は、発現可能な形態で、本明細書において開示されるペプチドをコードする核酸も含み得る。本明細書において、「発現可能な形態で」という語句は、ポリヌクレオチドが、細胞内に導入された場合に、抗腫瘍免疫を刺激するポリペプチドとしてインビボで発現されることを意味する。1つの実施形態において、関心対象のポリヌクレオチドの核酸配列は、標的細胞における当該ポリヌクレオチドの発現に必要な調節エレメントを含む。ポリヌクレオチド(複数可)は、標的細胞のゲノム内に安定して挿入するように配備され得る(例えば、相同組み換えカセットベクターの説明に関しては、Thomas KR&Capecchi MR,Cell 51:503
-12,1987を参照されたい)。例えば、Wolff et al.,Science 247:1465-8,1990、米国特許第5,580,859号;第5,589,466号;第5,804,566号;第5,739,118号;第5,736,524号;第5,679,647号、及びWO98/04720を参照されたい。DNAに基づく送達技術の例には、「ネイキッドDNA」、促進(ブピバカイン、ポリマー、ペプチド媒介性)送達、カチオン性脂質複合体、及び粒子媒介性(「遺伝子銃」)または圧力媒介性送達(例えば、米国特許第5,922,687号を参照されたい)が含まれる。
【0102】
本明細書において開示されるペプチドは、ウイルスまたは細菌ベクターによっても発現され得る。発現ベクターの例には、ワクシニアまたは鶏痘など、弱毒化ウイルス宿主が含まれる。この手法は、例えばペプチドをコードするヌクレオチド配列を発現するベクターとして、ワクシニアウイルスの使用を伴う。宿主内への導入があると、組み換えワクシニアウイルスは免疫原性ペプチドを発現し、それによって免疫応答を引き出す。免疫付与プロトコールにおいて有用なワクシニアベクター及び方法は、例えば米国特許第4,722,848号に記載されている。別のベクターはBCG(カルメット・ゲラン桿菌)である。BCGベクターは、Stover et al.,Nature 351:456-60,1991に記載されている。治療的投与または免疫付与に有用な多種多様の他のベクター、例えばアデノ及びアデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、チフス菌(Salmonella typhi)ベクター、無毒化炭疽毒素ベクター等が明白である。例えば、Shata et al.,Mol Med Today 6:66-71,2000、Shedlock et al.J Leukoc Biol 68:793-806,2000、Hipp et al.,In Vivo 14:571-85,2000を参照されたい。
【0103】
投与の方法は、経口、皮内、皮下、静脈内注射などであり得、全身投与または標的部位の付近への局所投与が用途を見い出す。投与は、単回投与によって実施され得る、または複数回投与によってブーストされ得る。適切なキャリア中のポリヌクレオチドの用量、またはペプチドをコードするポリヌクレオチドで形質転換された細胞の用量は、治療される対象となる疾患、患者の年齢、体重、投与の方法などに従って適当に調整され得、普通、0.001mg~1000mg、例えば0.001mg~100mg、例えば0.1mg~10mgであり、数日ごとに1回~数ヶ月ごとに1回投与され得る。当業者であれば、適切な用量を適当に選択し得る。
【0104】
抗原提示細胞(APC)も提供され、それは、HLA抗原とその表面上のペプチドとの間で形成される複合体を提示する。APCは、ペプチド、またはペプチドをコードするヌクレオチドを接触させることによって獲得され、治療及び/または予防の標的である対象から調製され得、それだけで、またはペプチド、エクソソーム、もしくは細胞傷害性T細胞を含めた他の薬物と組み合わせてワクチンとして投与され得る。APCは、任意の種類の細胞に限定されるわけではなく、樹状細胞(DC)、ランゲルハンス細胞、マクロファージ、B細胞、及び活性化T細胞を含み、そのすべては、リンパ球によって認識されるようにそれらの細胞表面にタンパク質性抗原を提示することが知られている。DCは、APCの中で最も強いCTL誘導作用を有する代表的なAPCであるため、DCはAPCとしての特定の用途を見い出す。
【0105】
例えば、APCは、末梢血単球から樹状細胞を誘導し、次いでそれらをインビトロ、エクスビボ、またはインビボでペプチドと接触させる(で刺激する)ことによって獲得され得る。ペプチドを対象に投与する場合、それらに固定されたペプチドを有するAPCは、対象の身体内で刺激される。「APCを誘導すること」には、細胞をペプチドまたはペプチドをコードするヌクレオチドと接触させて(で刺激して)、HLA抗原と細胞の表面上のペプチドとの間で形成される複合体を提示することが含まれる。あるいは、ペプチドを
APCに固定した後、APCは対象にワクチンとして投与され得る。例えば、エクスビボ投与は、a:対象からAPCを回収するステップ、及びb:ステップaのAPCとペプチドとを接触させるステップを含み得る。ステップbによって獲得されたAPCは、対象にワクチンとして投与され得る。
【0106】
そのようなAPCは、ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子をインビトロでAPCに移動させるステップを含む方法によって調製され得る。導入された遺伝子は、DNAまたはRNAの形態であり得る。導入の方法に関しては、特に限定されることなく、リポフェクション、エレクトロポレーション、及びリン酸カルシウム法など、本分野において好都合に実施される様々な方法が用いられ得る。
【0107】
細胞は、本明細書で提供されるTCRを発現するように、または本明細書において提供されるペプチド抗原に応答するように操作され得る。いくつかの異なる細胞タイプ、特にT細胞またはNK細胞が操作に適切である。一部の実施形態において、操作のための細胞は自家である。一部の実施形態において、細胞は同種異系である。
【0108】
本明細書において開示されるペプチドのいずれかに対して刺激されたT細胞は、ペプチドと同様のワクチンとして用いられ得る。ゆえに、本発明は、本ペプチドのいずれかによって刺激される単離されたT細胞を提供する。そのようなT細胞は、(1)対象に投与する、または(2)対象由来のAPC、及びCD8陽性細胞、もしくは末梢血単核白血球をインビトロでペプチドと接触させる(で刺激する)、ことによって獲得され得る。ペプチドを提示するAPCからの刺激によって刺激されているT細胞は、治療及び/または予防の標的である対象に由来し得、それだけで、または効果を調節する目的のためにペプチドもしくはエクソソームを含めた他の薬物と組み合わせて投与され得る。獲得されたT細胞は、ペプチド、例えばプライミングに用いられた同じペプチドを提示する標的細胞に対して特異的に作用する。標的細胞は、内因的に発現する細胞または遺伝子をトランスフェクトされる細胞であり得、これらのペプチドによる刺激に起因して細胞表面にペプチドを提示する細胞も攻撃の標的になり得る。
【0109】
一部の実施形態において、操作される細胞はT細胞である。「T細胞」という用語は、CD3及び/またはT細胞抗原受容体の発現によって特徴付けされ得る哺乳類免疫エフェクター細胞を指し、その細胞は、本明細書において提供されるTCRを発現するように操作され得るまたは本明細書において提供されるペプチドに応答するように刺激され得る。一部の実施形態において、T細胞は、ナイーブCD8+ T細胞、細胞傷害性CD8+ T細胞、ナイーブCD4+ T細胞、ヘルパーT細胞、例えばTH 1、TH 2、TH 9、TH 11、TH 22、TFH、調節性T細胞、例えばTR 1、ナチュラルTReg 、誘導性TReg 、メモリT細胞、例えばセントラルメモリT細胞、T幹細胞メモリ細胞(TSCM )、エフェクターメモリT細胞、NKT細胞、γδT細胞から選択される。一部の実施形態において、操作された細胞は、免疫細胞の複合混合物、例えば治療を必要としている個体から単離された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を含む。例えば、Yang and Rosenberg(2016)Adv Immunol.130:279-94,「Adoptive
T Cell Therapy for Cancer」、Feldman et al(2015)Semin Oncol.42(4):626-39「Adoptive
Cell Therapy-Tumor-Infiltrating Lymphocytes,T-Cell Receptors,and Chimeric Antigen Receptors」、Clinical Trial NCT01174121,「Immunotherapy Using Tumor Infiltrating
Lymphocytes for Patients With Metastatic Cancer」、Tran et al.(2014)Science 344(6184)641-645,「Cancer immunotherapy based
on mutation-specific CD4+ T cells in a patient with epithelial cancer」を参照されたい。一部の実施形態において、T細胞とペプチドとをインビトロで接触させ、すなわち、そこで当該T細胞を、次いでレシピエントに移動させる。
【0110】
本発明の目的のためのエフェクター細胞には、限定されることなく腫瘍細胞を含めた、標的細胞に対する細胞溶解活性を有する自家または同種異系の免疫細胞が含まれ得る。エフェクター細胞は、末梢血リンパ球(PBL)をインビトロで操作し、次いで、活性化を増加させるサイトカイン及び/または抗原の組み合わせとともに培養することによって獲得され得る。細胞は、培養前、投与前、またはその両方に、非所望の細胞から任意で分離される。免疫学的エフェクター細胞による標的細胞の細胞媒介性細胞溶解は、結合している標的細胞の細胞膜に浸透する細胞質顆粒の局所指向性エキソサイトーシスによって媒介されると思われる。
【0111】
腫瘍細胞に反応性がある細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、養子免疫療法のための特異的エフェクター細胞であり、本明細書において開示されるペプチドでプライムすることによって操作するための、または本明細書において開示されるTCRを発現するように操作するための関心対象である。CTLの誘導及び拡張は、抗原特異的でありかつMHC制限的である。
【0112】
対象から回収されたT細胞は、所望の細胞を富化する技法によって細胞の混合物から分離され得る、または分離することなく操作され得及び培養され得る。適当な溶液が、分散または懸濁に用いられ得る。そのような溶液は、一般的に、低濃度の、一般的に5~25mMの許容されるバッファーと合わせて、ウシ胎仔血清または他の天然に存在する因子を好都合に補給された、平衡塩類溶液、例えば正常生理食塩水、PBS、ハンクス平衡塩類溶液等である。好都合なバッファーには、HEPES、リン酸塩バッファー、乳酸塩バッファー等が含まれる。
【0113】
アフィニティー分離のための技法には、抗体をコーティングされた磁気ビーズを用いた磁気分離、アフィニティークロマトグラフィー、モノクローナル抗体に接合したもしくはモノクローナル抗体と合わせて用いられる細胞毒性剤、例えば補体もしくは細胞毒素、及び固体マトリックス、例えばプレートに付着した抗体を用いた「パニング」、または他の好都合な技法が含まれ得る。正確な分離を提供する技法には、多色チャネル、低角度でかつ鈍い光散乱検出チャネル、インピーダンスチャネルなど、様々な洗練度を有し得る蛍光活性化細胞選別機が含まれる。細胞は、死細胞と関連した色素(例えば、ヨウ化プロピジウム)を採用することによって、死細胞に反して選択され得る。選択された細胞の生存率に過度に有害でない任意の技法が採用され得る。アフィニティー試薬は、上記の細胞表面分子に対する特異的受容体またはリガンドであり得る。抗体試薬に加えて、ペプチドリガンドと受容体、エフェクターと受容体分子等、ペプチド-MHC抗原とT細胞受容体とのペアが用いられ得る。
【0114】
分離された細胞は、通常では回収チューブの底に血清のクッションを有する、細胞の生存率を維持する任意の適当な培地中に回収され得る。ウシ胎仔血清(FCS)をしばしば補給された、dMEM、HBSS、dPBS、RPMI、イスコフ培地等を含めた、様々な培地が市販されており、細胞の性質に従って用いられ得る。
【0115】
回収された及び任意で富化された細胞集団は、遺伝子改変に直ちに用いられ得る、または液体窒素温度で凍結され得及び保管され得、融解され及び再利用され得る。細胞は、通常、10%DMSO、50%FCS、40%RPMI1640培地中で保管される。
【0116】
操作された細胞は、投与の任意の好都合な経路によって、通常では血管内に、任意の生理学的に許容される手段にて対象に注入され得る、とはいえそれらは他の経路によっても導入され得、そこで細胞は成長にとって適当な部位を見い出し得る。通常、少なくとも1×106 個細胞/kg、少なくとも1×107 個細胞/kg、少なくとも1×108 個細胞/kg、少なくとも1×109 個細胞/kg、少なくとも1×1010個細胞/kg、またはそれを上回る量が投与され、通常では回収の間に獲得されるT細胞の数によって限定される。
【0117】
ペプチド及びT細胞受容体配列も、患者サンプルに対するスクリーニングアッセイにおいて有用であり、個体由来のT細胞含有サンプル、例えば血液サンプル、腫瘍生検サンプル、リンパ節サンプル、骨髄サンプル等が、(i)本明細書において同定されるTCRを含むT細胞の存在について、及び/または(ii)本明細書において記載されるペプチドに応答性があるT細胞の存在について分析される。T細胞の存在についての判定は、任意の好都合な方法、例えばHLA複合体におけるまたはAPCによって提示されるペプチドの存在に応答した増殖等を測定することにより刺激を判定することに従ってなされ得る。特異的TCRの存在は、mRNAのシーケンシング、ゲノムDNAのシーケンシング等によって判定され得る。ペプチドに応答性があるまたは関心対象であるTCRを有するT細胞の存在により、患者を、ワクチン接種、APC移動等によって治療され得る群に、その群とともに、割り当てることが可能となる。
【0118】
機械可読媒体において有形的に具体化されたソフトウェア商品も本明細書において提供され、当該ソフトウェア商品は、1つまたは複数のデータ処理装置に、本発明のスクリーニング法によって獲得される選択されたペプチドリガンドの箇所頻度からn×20行列を作り出すことを含む操作を実施させるよう操作可能な指示を含み、nはペプチドリガンドライブラリーにおけるアミノ酸箇所の番号である。アミノ酸頻度のカットオフは、例えば0.1未満、0.05未満、0.01未満に設定され、カットオフを下回る頻度はゼロに設定される。配列のデータベース、例えばヒトポリペプチド配列のセット、病原体ポリペプチド配列のセット、微生物ポリペプチド配列のセット、アレルゲンポリペプチド配列のセット等は、置換行列から箇所的アミノ酸頻度の積を採点するとともに、n箇所スライディングウィンドウアライメントを用いたアルゴリズムを用いて検索される。頻度がカットオフを下回る少なくとも1個のアミノ酸を含有するアラインされたセグメントは、合致から除外される。検索の結果は、コンピュータ可読媒体においてデータファイルとして出力され得る。
【0119】
ペプチド配列結果及びデータベース検索結果は、それらの使用を容易にする多様な媒体で提供され得る。「媒体」とは、本発明の発現レパートリー情報を含有する製品を指す。本発明のデータベースは、コンピュータ可読媒体、例えばコンピュータによって読み取られ得及び直接アクセスされ得る任意の媒体に記録され得る。そのような媒体には、フロッピーディスク、ハードディスク記憶媒体、及び磁気テープなどの磁気記憶媒体、CD-ROMなどの光学記憶媒体、RAM及びROMなどの電子記憶媒体、ならびに磁気/光学記憶媒体などのこれらのカテゴリーのハイブリッドが含まれるが、それらに限定されるわけではない。当業者であれば、現在公知のコンピュータ可読媒体のいずれかをどのように用いて、本データベース情報の記録を含む製品を創出し得るかを容易に解し得る。「記録された」とは、当技術分野において公知の任意のそのような方法を用いて、コンピュータ可読媒体に情報を記憶させる工程を指す。任意の好都合なデータ記憶構造は、記憶される情報にアクセスするために用いられる手段に基づいて選定され得る。多様なデータプロセッサプログラム及び形式、例えばワードプロセッシングテキストファイル、データベース形式等が、記憶に用いられ得る。
【0120】
本明細書において使用するとき、「コンピュータに基づくシステム」とは、本発明の情
報を分析するために用いられるハードウェア手段、ソフトウェア手段、及びデータ記憶手段を指す。本発明のコンピュータに基づくシステムの最小限のハードウェアは、中央処理装置(CPU)、入力手段、出力手段、及びデータ記憶手段を含む。当業者であれば、現在使用可能なコンピュータに基づくシステムのいずれか1つは、本発明における使用に適切であることを容易に解し得る。データ記憶手段は、上記の本情報の記録を含む任意の製品、またはそのような製品にアクセスし得るメモリアクセス手段を含み得る。
【0121】
入力及び出力手段のための多様な構造形式を用いて、本発明のコンピュータに基づくシステムにおいて情報を入力し得及び出力し得る。そのような提示は、当業者に類似性のランキングを提供し、試験発現レパートリーに含有される類似性の程度を同定する。
【0122】
検索アルゴリズム及び配列分析は、ハードウェアもしくはソフトウェア、またはその両方の組み合わせで遂行され得る。本発明の1つの実施形態において、機械可読記憶媒体が提供され、当該媒体は、データを用いるための指示とともにプログラム化された機械を用いた場合に本発明のデータセット及びデータ比較のいずれかを呈示し得る、機械可読データでコード化されたデータ記憶材料を含む。一部の実施形態において、本発明は、プロセッサ、データ記憶システム(揮発性及び非揮発性のメモリ及び/または記憶素子を含む)、少なくとも1つの入力機器、及び少なくとも1つの出力機器を含む、プログラム可能なコンピュータで実行するコンピュータプログラムにおいて遂行される。プログラムコードを適用してデータを入力して、上記のような機能を果たし及び出力情報を生み出す。出力情報は、公知の仕方で1つまたは複数の出力機器に適用される。コンピュータは、例えばパーソナルコンピュータ、マイクロコンピュータ、または従来設計のワークステーションであり得る。
【0123】
各プログラムを、高レベルの手続きプログラミング言語またはオブジェクト指向プログラミング言語で遂行して、コンピュータシステムと通信し得る。しかしながら、プログラムは、所望の場合、アセンブリ言語または機械語で遂行され得る。いずれの場合でも、言語は、コンパイラ型言語またはインタープリタ型言語であり得る。そのような各コンピュータプログラムは、記憶媒体または機器がコンピュータによって読み取られた場合に、本明細書において記載される手順を実施するようにコンピュータを構成し及び操作するために、汎用性のまたは特殊目的のプログラム可能なコンピュータによって可読な記憶媒体または機器(例えば、ROMまたは磁気ディスケット)に記憶され得る。システムも、コンピュータプログラムで構成されたコンピュータ可読記憶媒体として遂行されると考えられ得、そのように構成された記憶媒体は、コンピュータを特異的でかつあらかじめ規定された様式で作動させて、本明細書において記載される機能を果たす。
【0124】
本明細書において開示される方法によって収集された配列及び他のデータを、コンピュータを介して記憶する及び/または送信する方法が、本明細書においてさらに提供される。ソフトウェア及び記憶機器を含むがそれらに限定されない任意のコンピュータまたはコンピュータ付属品を利用して、本発明を実践し得る。配列または他のデータは、ユーザーによって直接的または間接的にコンピュータに入力され得る。加えて、DNAをシーケンスするまたはDNAを分析するまたはペプチド結合データを分析するために用いられ得る機器のいずれかは、データがコンピュータ及び/またはコンピュータに適合した記憶機器に転送されるように、コンピュータに連結され得る。データは、コンピュータまたは適切な記憶機器(例えば、CD)に記憶され得る。データは、当技術分野において周知の方法により、コンピュータから別のコンピュータまたはデータ収集場所にも送られ得る(例えば、インターネット、地上便、航空便)。ゆえに、本明細書において記載される方法によって収集されたデータは、任意の場所または地理的位置で収集され得、他の任意の地理的位置に送られ得る。
【実施例0125】
実験
実施例1
腫瘍浸潤リンパ球上に発現したオーファンT細胞受容体に対する抗原同定
免疫系は、腫瘍に対するT細胞応答を開始させ得るが、しかしながら、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の抗原特異性はよく理解されていない。TCRがそれらの内因性リガンドに対して強い選好性をしばしば呈するという最近の知見を考慮して、本発明者らは、ペプチドヒト白血球抗原(pHLA)の酵母ディスプレイライブラリーを用いて、ヒト結腸直腸腺癌由来のTIL上に発現した「オーファン」T細胞受容体(TCR)の抗原をスクリーニングした。4種のTIL由来TCRは、非常に多様なpHLA-A* 02:01ライブラリーにおいて提示されるペプチドに対して強い選択を呈した。TIL TCRのうちの3種は、非変異型自己抗原に特異的であり、そのうちの2種は別個の患者腫瘍に存在し、U2AF2に由来する非変異型自己抗原に対する特異性を共有した。これらの結果は、TCRに接近可能なMHC結合ペプチドの限定された認識表面が、未知の特異性の病原性TCRに対するペプチド標的の配列の再構築を可能にするために十分な構造情報を含有することを示している。この知見は、腫瘍抗原の簡易同定を可能にしている。
【0126】
現在までのところ、オーファンTCRの抗原特異性を判定するために、直接相互作用スクリーニングまたは組み合わせディスプレイシステムは用いられていない。本明細書で、本発明者らは、TILに由来するTCRによって認識される抗原を同定することを目標として、本発明者らの方法論を試験した(図1B)。本発明者らは、結腸直腸腺癌を有する2人のHLA-A2ホモ接合型患者におけるCD8+ TILについての単一細胞T細胞表現型判定及びTCRシーケンシングを適用して、酵母ディスプレイライブラリー選択から候補抗原標的を予測した(図1B)。スクリーニングされたTCRのうち、4種のTCRは、HLA-A* 02:01ライブラリーにおけるペプチド標的を単離した。これらのTCRのうちの2種は配列が非常に類似しており、ペプチドの重複群に対する特異性を有し、共有された抗原特異性が暗示された。Uniprotヒト参照ゲノムからの予測ペプチドに加えて、ライブラリーから単離された合成ペプチドは、関心対象のそれぞれのT細胞受容体を刺激した。驚くべきことに、4種の受容体のうちの3種は、非変異型自己抗原を認識した。これは、T細胞免疫応答及びそれらのクローンTCRを、酵母ディスプレイライブラリーを用いた直接抗原同定法と関連付けるための原理の証明として働く。この方法論は、免疫応答によって認識される新規のがん抗原を同定する強力なツールとして働き得る。
【0127】
HLA-A* 02:01酵母ディスプレイライブラリーの設計。HLA-A* 02:01アレルは非常によく見られ、いくつかの集団の最高で50%に存在する。HLA-A* 02によって提示されるペプチドに対する結合モチーフは十分に特徴付けされており、いくつかの限られた臨床的に関連するTCRが同定されている。これらの理由で、本発明者らは、潜在的HLA-A* 02:01制限T細胞受容体をスクリーニングするための酵母ディスプレイライブラリーを作り出した(図1A)。個々の酵母は、HLA分子に共有結合で連結したランダムなペプチドを発現し、それにより、DNAシーケンシングによるペプチド同定が可能となる(図1C)。このpHLAライブラリーは、野生型β-2-ミクログロブリン(B2M)、及び単一点変異Y84Aを有するHLA-A* 02:01重鎖に連結されたN末端ペプチドライブラリーを特徴とする(STAR法を参照されたい)。結合溝におけるペプチドの適正な呈示を確実にするために、ペプチドライブラリーは、P2及びPΩにおけるアミノ酸使用法を、HLA-A* 02:01によって好まれる脂肪族疎水性残基に制限する(図1D~F)。他の箇所では、NNKコドンが20種すべてのアミノ酸をランダムにコードして、不偏的ライブラリーを提供する。HLA-A* 02:01は、典型的に長さが8~11アミノ酸のペプチドを提示するため、本発明者らは、多重化選択のためのエピトープタグを用いて複数のペプチド長のライブラリーを作り出した(
図1F)。各ライブラリーは、ライブラリーの組成及び長さによって決定付けられる理論的ヌクレオチド多様性を有するが、ライブラリーの機能的多様性は限定される(図1F)。合計で、本発明者らは、8~11アミノ酸に及ぶおよそ4億種の固有のペプチドが、組み合わせたライブラリーにおいて表されると推定する。
【0128】
MART-1特異的DMF5 TCRを用いたライブラリーの検証。HLA-A* 02:01複合体が適正にフォールディングされてペプチドを提示するか否かを判定するために、本発明者らは、既知の特異性を有する「代理」TCRを用いた。本発明者らは、HLA-A* 02:01に結合したMART-1黒色腫抗原に由来する10アミノ酸配列(EAAGIGILTV)(配列番号:267)を認識する天然に存在するTCRであるDMF5 TCRを用いた。HLA-A* 02:01ライブラリーを検証するために、改善したHLA安定性を有する10merのヘテロクリットなペプチドELAGIGILTV(配列番号:264)を酵母上にHLA-A* 02:01とともに呈示し、抗ヘマグルチニン(HA)抗体及び400nM四量体化DMF5 TCRの両方によって染色し、タンパク質複合体の表面発現及びpHLAの適正なフォールディングが示された(図2A)。ライブラリーを用いてDMF5 TCRの抗原を同定し得ることを確認するために、HLA-A* 02:01 10merライブラリー(図1F)をMACSビーズ多量体化DMF5 TCRによって選択した(STAR法、図2Bを参照されたい)。選択の第四のラウンドのサンプルをサンガーシーケンシングによってシーケンスして、富化されたペプチドを同定し、そのほとんどは、MART-1 10merペプチドと高度に関連することが見い出された(図2C)。5つの配列をHLA-A* 02:01とともに酵母上に個々に発現させ、400nM DMF5 TCR四量体で染色してTCR特異的結合を示し(図2C)、及び抗HLA-A* 02で染色して複合体の立体構造的発現を示した(図8A)。
【0129】
DMF5 TCRによる酵母ディスプレイ選択の全ラウンドをディープシーケンスした。ライブラリーは、選択のラウンド3によって68種の固有のペプチドに有意に収束し、そのうちの上位10種のペプチドは、ライブラリーの91.7%を支配した(図2D)。最も顕著な観察結果は、選択されたほとんどすべてのペプチドがP6においてGly(P6G)を有し(表1)、P6G水素が結合するCDR3β 100Fのための裂け目を可能にする柔軟性をP6Gが提供することを示したDMF5-MART-1/HLA-A* 02:01結晶構造と一致することであった。ディープシーケンシングにより、ペプチド配列の2つの主要なクラスターが明らかになった(図2E)。これらのクラスターを明確にするために、2種のペプチド間の精確なアミノ酸合致の数を同定する計量法である逆ハミング距離(reverse hamming distance)をすべてのペプチド間で算出し、次いでスコアによってクラスター化した(図2E、表1)。2つの主要なクラスターはP4~P6において分岐し、29種のペプチドにおいて中心的「GIG」モチーフを有し(クラスター1)、32種のペプチドにおいて中心的「DRG」モチーフを有した(クラスター2)。酵母ディスプレイ選択データからヒト抗原を予測するために以前用いられた方法である、潜在的ヒトペプチド標的を採点する検索行列において、クラスター1ペプチドを用いた(2014PWM)。しかしながら、10merライブラリーは、ライブラリーのP2におけるAlaを認めないため、P2Aは検索行列に手作業によって含められ、16.67%でのLeuという最も低い頻度を有するアンカーと合致した。この分析から、ヒトプロテオームからの9種のペプチドは、様々な確率的スコアでDMF5
TCRに結合すると予測された(図2F、表1)。顕著には、ヒトMART-1ペプチドは、予測された9種のペプチドのうち、DMF5 TCRに結合する可能性が最も高かった(図2F)。クラスター2を用いると、桁違いに多くのペプチドが、TCRに結合すると予測された(図8B、8C、表1)。しかしながら、DMF5 TCRは、いかなるオフターゲット毒性も示しておらず、この他の「DRG」ペプチドモチーフが、その調査におけるがん患者の免疫応答において生理学的に関連していない可能性があることを示し
ている。
【0130】
新抗原特異的TCRを用いたHLA-A* 02:01ライブラリーのブラインド検証。未知の抗原特異性を有するTCRの抗原を同定し得るHLA-A* 02:01ライブラリーの能力を試験するために、本発明者らは、黒色腫患者に由来する3種のTCRをスクリーニングし、すべてのTCRは、新抗原に対するブラインド特異性を有した。これらの抗原は、腫瘍材料のエクソームシーケンシング、HLA-A* 02:01による新抗原提示の予測、及びペプチド搭載HLA-A* 02:01多量体による患者由来腫瘍浸潤T細胞の染色によって、独立して同定された。NKI1、NKI2、及びNKI3とラベルされた3種のTCRを組み換えにより発現させ、それらを用いて、4つすべてのペプチド長を含有するHLA-A* 02:01ライブラリーを選択した。
【0131】
NKI2に対する選択のみが、選択のラウンド2から始まる400nM四量体陽性の酵母を生み出し、ペプチド-HLA-A* 02:01ライブラリーの強い結合が示された(図3A)。選択の全ラウンドをディープシーケンスし、次いでデータを、選択ラウンドごとにペプチド長に基づいて解析した(表2)。ペプチドは選択のラウンド3によって収束し、ペプチドを逆ハミング距離によってクラスター化した(図3B)。NKI2に関する選択結果は、9mer、10mer、及び11mer配列における劇的な類似性を示した。これらのペプチド配列は、9mer、10mer、及び11mer配列においてそれぞれP6、P7、及びP8で保存されたGluを共有し、当該ペプチドは、9mer、10mer、及び11merのP5でプラスに帯電した残基を共有する。NKI1及びNKI3は、四量体陽性の選択酵母を生み出さず(図3A)、ディープシーケンシングも強いペプチド選択を示さなかった。
【0132】
ブラインド検証の一部として、HLA-A* 02:01によって提示されると予測される127種の新抗原のリストは、NKI2 TCRに対する候補リガンドとして働いた。NKI2によって選択される10mer合成ペプチドのリストと比較して、これら127種の潜在的新抗原ペプチドのそれぞれに対して、逆ハミング距離を算出した(図3C)。サイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)に由来するペプチド新抗原であるALDPHSGHFV(配列番号:265)は、ライブラリーペプチドLib-1及びLib-2と同一である10箇所のうち、それぞれ5箇所及び6箇所を有した(図3D)。CDK4を正しく同定し、NKI2の新抗原標的として確認した。NKI1及びNKI3の標的は、このブラインド検証を通して明確に同定され得なかった。NKI1は、同じCDK4新抗原に特異的であり、NKI3は、GCN1L1新抗原ALLETPSLLL(配列番号:268)に特異的である。標的同定の欠如の理由は、後に考察されている。
【0133】
本発明者らは、pHLAライブラリーから単離されたこれらの合成ペプチドがNKI2によって特異的に認識されることを確証した。本発明者らは、次に、それらがNKI1またはNKI2発現T細胞のいずれかを刺激し得るかどうかを問うた。ヒト末梢血リンパ球にNKI1またはNKI2のいずれかを形質導入し、NKI2によって選択された上位5種のペプチドのそれぞれを搭載したHLA-A* 02:01+ JY細胞とともに共培養した。興味深いことに、5種すべてのペプチドが、NKI2を形質導入されたT細胞によるIFNγ産生を用量依存的様式で引き出した(図3F)。さらに、最上位の選択されたペプチドミモトープALDSRSEHFM(配列番号:269)は、CDK4新抗原ALDPHSGHFVそれ自体と同じくらい強力にこれらの細胞を刺激した。NKI2による5番目に最も選択されたペプチドは、NKI1受容体を用量依存的様式で刺激し、重複する特異性が示された。
【0134】
結腸直腸癌患者における腫瘍浸潤リンパ球の単一細胞特徴付け。本発明者らの究極の目標は、酵母ディスプレイプラットフォームを用いて、患者腫瘍に浸潤する拡張されかつ細
胞傷害性のT細胞集団に由来するTCRに対するペプチドリガンドを同定することである(図1B)。T細胞を分析するための単一細胞技術は、単一T細胞を個々に表現型判定する、及びそれらの対合したαβTCRをハイスループット様式でシーケンスする手段を提供する。
【0135】
本発明者らは、HLA-A* 02アレルに関してホモ接合型の患者を選択した(図4A)。これは、患者から単離されたT細胞が、HLA-A* 02アレルに制限された受容体を有する確率を向上させるが、それは、このTCRが、他の古典的または非古典的に制限された抗原に対する特異性を有し得る可能性を除外しない。全HLA遺伝子座を、HLA-Cなしの両患者に対してタイプ分けした(表3)。HLA-A* 02:01及びHLA-A* 02:06は、βシートフロアにおけるF9Y置換だけ異なり、それはTCR認識に影響を及ぼす可能性は低い。これらの部分アレルは、提示され得るペプチド抗原の部分集合を共有することが記載されているが、とはいえ差異はpHLAのTCR多量体染色の個別のパターンになり得る。
【0136】
両患者は、結腸直腸腺癌を有する60代半ばの男性であった(図4A)。腫瘍の組織サンプルを、CD8+ 及びCD4+ T細胞の浸潤について分析し、全体構造をH&E染色によって観察した(図9A)。患者Aに関して、CD4+ 及びCD8+ T細胞は、結腸の固有層に見い出されたが、腫瘍においてはそれほどではなかった。患者Bに関して、CD4+ T細胞は、結腸組織内で豊富ではなかったが、しかしながら、腫瘍内への有意なCD8+ T細胞浸潤があった。
【0137】
これら2人の患者から、数百個のCD8+ T細胞を表現型判定し、健常組織由来の53対の配列及び腫瘍組織由来の709対の配列とともに、腫瘍の部位からシーケンスした(図4B)。腫瘍の部位において1回を上回って見られる任意のクローンは、拡張されたクローンと見なされる。両症例において、拡張されたTCRクローンが腫瘍に存在し、抗原特異的な拡張が示唆された。最も拡張されたTCRクローンは、それぞれ、患者Aにおいてシーケンスされた集団の12.9%(23/178)及び患者Bにおいて6.67%(35/526)を構成した。腫瘍における拡張のこのレベルは、原発性肝臓癌及びCD4+ T細胞浸潤結腸直腸癌におけるT細胞レパートリー集団についての他の報告と一致している。多くのT細胞が健常組織から同定されたわけではないため、クローンは腫瘍に限られると考えられ、αまたはβ鎖のいずれかが共有されない場合、健常組織と共有されなかった。両患者に関して、α及びβ鎖配列の両方は、腫瘍及び健常組織の間で配列のほんのわずかな重複を示した(図4C)。このことは、腫瘍により推進される応答の結果として、ほとんどのTIL T細胞クローンが腫瘍において富化され及び存在することを示唆するが、しかしながら、健常組織の限定されたサンプリングに起因して、本発明者らは、任意のTIL TCRが腫瘍内にだけ存在すると結論付けることはできない。
【0138】
患者からシークエンスされたT細胞受容体は、典型的なCDR3α及びCDR3β長を呈した(図9B)。両患者は、TRAV8-3、TRAV19(図9C)、及びTRBV7-2(図9D)発現の優位性を有した。患者A由来のT細胞とは異なり、患者B由来のT細胞を、細胞表面マーカー発現と転写産物発現とのペアリングを可能にするインデックスソーティングによって分析した。t-分布型確率的近傍埋め込み法(t-SNE)を用いて、細胞表面マーカー及び転写プロファイルに基づいてT細胞集団を分離する場合、CD8+ 及びCD4+ T細胞集団は主要クラスターに分かれた(図9E)。患者Bに関して、腫瘍内への有意なCD8+ T細胞浸潤があり、サンプリングされた細胞の大多数は、グランザイムB、パーフォリン、及びTNF-αという他の細胞毒性マーカーの異種発現とともにPD-1及びIFNγを共発現した。PD-1+ CD8+ T細胞集団は腫瘍反応性集団であることが示唆されている。
【0139】
HLA-A* 02:01ライブラリーでのオーファンTCRのスクリーニング。腫瘍における局所的拡張、細胞毒性プロファイル(IFNγ、TNFα、パーフォリン、グランザイムB)に基づいて、及びある場合には共通のTCR鎖使用法に基づいて、20種の候補受容体を選定した(図4B、4D)。HLA-A* 02:01ライブラリーでスクリーニングされた20種の候補TCR(表4)のうち、患者Aに由来するTCR1A及び2Aならびに患者Bに由来するTCR3B及び4Bという4種のTCRは、ライブラリーからペプチドを富化した(図5A)。興味深いことに、別個の患者から単離された2種の受容体2A及び3Bは、同じTCRα鎖及び類似のTCRβ鎖を発現し、それは、5個の保存的アミノ酸の差異及びNP付加によって完全に生成される中心Val残基を有する、同じ長さのCDR3β配列を含有する(図5B)。
【0140】
各TCRをHLA-A* 02:01ライブラリーでスクリーニングした。4種のTCRのそれぞれは、酵母によって発現されたHLA連結エピトープタグを富化し、一方で残り16種のTCRはそうでなかった(図5C)。TCR1A、2A、及び3Bに関して、四量体染色された酵母は、選択のラウンドにわたって次第に増加した。しかしながら、TCR4Bは、9merエピトープタグの連続的富化にもかかわらず、酵母を染色しなかった(図5C)。残り16種のTCRの富化の欠如の理由は、考察において探られる他の可能性とともに、代替的HLAアレルへのHLA制限である可能性が最も高い。
【0141】
TCR1A、2A、3B、及び4Bによって選択された酵母をディープシーケンスした(表4)。4種すべてのTCRに関して、選択のラウンド3によって収束した配列及び固有のペプチド配列を用いて、ペプチドモチーフを作り出して、箇所的ホットスポットを同定した(図6A)。高度に類似したTCR2A及び3Bを、関連するペプチド配列に対して選択し、そのうちの11種は両方に共通していた(図6C)。ペプチドの共通プールの選択は、これらのTCRが同じ抗原を認識することを示唆する。しかしながら、TCR2Aに関して不変のAsnならびにTCR3Bに関して優位なAsn、Glu、及びSerを有して、P6においてこれら2つのモチーフの間には有意な差異が見られる。一般的に、TCR2Aは、TCR3Bによって選択される66種の固有のペプチドにおいてよりも、より多くのアミノ酸置換を認める箇所P1、P4、及びP5を有する190種の固有のペプチドを選択するより広い程度の交差反応を呈示する。TCR1A及び4Bは、選択の第三のラウンドでそれぞれ選択された15種及び61種の固有のペプチドを有して、全く異なるモチーフを有する。
【0142】
T細胞受容体の交差反応を測定する1つの方法は、ペプチドの特定の箇所における許容されるアミノ酸の選択幅を観察することである。これを行うために、本発明者らは、あらゆる箇所におけるすべてのアミノ酸の割合を決定し、ラウンド3におけるペプチド富化を説明した(図6B)。TCR1A及び3Bは、箇所あたりのアミノ酸選好性においてより硬直性を有して、それらのペプチドモチーフに比較的特異的である。対照的に、TCR2A及び4Bは、それらの特異性においてより交差反応性であり、限定されたアンカー残基を除いて、ペプチドに沿った箇所において縮重を認める。2Aと3Bとの間のアミノ酸配列の密接な類似性にもかかわらず、TCRは、それらのペプチド形状に対する交差反応において高い対比を呈示する。この点において、pHLAライブラリースクリーニングは、TCRの相対的交差反応を「測定する」ことにおいて有効であり、それは、自己反応性を限定するために限定された交差反応が望ましくあり得る養子細胞療法のためのTCRの選択にとって重要であり得る。
【0143】
ヒトプロテオーム及び患者エクソームからのTCR標的予測。酵母ディスプレイ選択において同定されたペプチドは、各TCRに対して配列の認識形状を作り出す。2014PWMを用いてDMF5 TCRに対してなされたように、この情報をアルゴリズムにおいて用いて、刺激性ヒト抗原を予測し得る。アルゴリズムを結腸直腸癌データに適用する際
に、本発明者らは、TCR2Aに対してヒト予測を生み出したが、TCR1A及びTCR3Bに対しては予測を出さず、TCR4Bに対しては限られた予測を出した。このことは、以前の統計的方法の改変されたバリアント(2017PWM)、及び二層畳み込みニューラルネットワークを利用した方法(2017DL)という、選択データからヒトペプチドを予測する2つの付加的な方法の開発の動機になった(STAR法を参照されたい)。DR15ライブラリーを用いた以前の選択からのデータを用いて、ペプチド抗原を予測することにおける2017PWM及び2017DLアルゴリズムの正確性を試験した。MBPは、TCR OB1.A12に対する2017DLを用いた最善の予測、2017PWMを用いた次善の予測であり、TCR OB1.2F3に対する両アルゴリズムにおける次善の予測であった。
【0144】
2つの付加的なアルゴリズムを用いて、UniProtデータベースを用いたヒトプロテオームからの予測ペプチドを採点した。TCR2A及び3Bに関して、両TCRに対する複数のアルゴリズムによって予測された多くのペプチドが存在し、共有される標的特異性が示された。全体として、3つのアルゴリズムは、4種すべてのTCRに対して、ヒトプロテオームから集合的に予測することができた。
【0145】
患者変異は、T細胞によって認識される新抗原を生み出し得るため、本発明者らは、エクソームシーケンシング及びバリアントコールを実施して、潜在的候補を同定した。健常及び腫瘍組織の両方に対して少なくとも30×シーケンシング被覆率を用いて、合計で、762種のPASSバリアントが患者Aにおいて同定され、4,763種のPASSバリアントが患者Bにおいて同定された。エクソームペプチドを2017PWM及び2017DLアルゴリズムによって採点したが、TCRにわたって有意なものはほとんどなかった。1つの例外は、同じWDR66遺伝子のイントロンからエクソン7への21ヌクレオチド転座であり、それは、たとえあったとしてもそれがほとんど提示されないという結果をもたらす準最適なHLAアンカーを有するにもかかわらず、患者Aにおいて新抗原ペプチドを生み出した。これは、患者A由来TCR1Aに対するペプチドモチーフと密接に合致する、新規のペプチド配列EYGVSYEW(配列番号:270)をもたらした。全体として、4種のTCRに対する予測は、当該4種のうちの3種が、非変異型自己抗原に結合する可能性が高いことを示唆する。
【0146】
合成の及び予測されたヒトペプチドのインビトロ標的検証。ライブラリーから選択された合成ペプチド、ならびにヒト及び/またはエクソームからの予測されたヒトペプチドの両方を、患者から同定された4種のTCRを発現するように改変されたSKW-3 CD8+ T細胞株を刺激するために用いられるT2細胞によって提示した。興味深いことに、TCR1Aによって選択された合成ライブラリーペプチドはすべて、CD69活性化を介して(図7A図10A)及び用量依存的様式で(図7B)、T細胞を強力に刺激した。TCR1Aに関して、エクソームペプチド(EYGVSYEW)(配列番号:270)も、アンカー改変されたエクソームペプチド(EMGVSYEM)(配列番号:271)も、またはヒトペプチド予測も、細胞株を刺激しなかった(図7A)。本発明者らは、TCR1Aに対する強い抗原認識モチーフを同定したものの、本発明者らは、刺激性内因性抗原であるミモトープのみを復元することができていない。
【0147】
3種のTCR2A、3B、及び4Bに対して(図7C~H)、本発明者らは刺激性内因性抗原を同定することができた。TCR4Bは、その選択された合成ペプチドライブラリーによって刺激され、予測されたヒトペプチドの6/19によっても刺激され、それは、酵母選択ディープシーケンシング分析において見られるより高い程度の交差反応と一致している(図7G、7H、図10D)。興味深いことには、本発明者らは、TCR4Bが、結腸直腸癌において再発的に変異することが見い出された精巣発現抗原であるWDR871310-1318 (ペプチドLLEDLDWDV)(配列番号:272)、及び公知の機能を有
しない、多くのがんにおいて発現されるタンパク質であるCRISPLD182-90 (ペプチドNMEYMTWDV)(配列番号:273)という2種の異なる推定ドライバー遺伝子由来の抗原によって刺激されることを知る。システインリッチな分泌タンパク質、抗原4、及び病原性関連1タンパク質(CAP)スーパーファミリーはCRISPLD1を含み、これらのタンパク質は、イオンチャネル調節、生殖、がん、細胞-細胞接着等を含めた広範な機能に関与している。エクソーム分析から、患者Bは、CRISPLD1においてD143Yで変異を有する。TCR4Bは、CD74181- 189 ペプチドTMETID
WKV(配列番号:274)、FANCI1104-1112 ペプチドVLEEVDWLI(配列番号:275)、GEMIN4771-779 ペプチドKLEQLDWTV(配列番号:276)、PDE4a243- 251 ペプチドTLEELDWCL(配列番号:277)またはPD
E4b231- 239 ペプチドTLEELDWCL(配列番号:277)、及びKLHL7506-514 ペプチドNVEYYDIKL(配列番号:278)を含めた、他の5種のヒト抗原
によっても刺激される。真のインビボ特異性は、付加的な腫瘍情報なしでは明確に同定され得ない。
【0148】
高度に類似したTCR2A及び3Bは、選択された合成ペプチドに対して異なる刺激プロファイルを有する(図7C~F、図10B~C)。TCR2A細胞を、TCR2Aによって選択された上位5種のペプチドのうちの4種、及びTCR3Bによって選択された上位5種のペプチドのうちの4種によって刺激した。しかしながら、TCR3B細胞は、それ自身のTCRによって選択された上位5種のペプチドのうちの4種によってのみ刺激され、TCR2Aによって選択されたもののどれによっても刺激されなかった。これらの結果は、TCR3Bが、TCR2Aと比較して相対的に選択的であるという知見を支持する(図6B)。顕著には、予測から試験された26種のヒトペプチドのうち(表6)、たった1種のヒトペプチドが、いずれかの受容体を持つT細胞を刺激することが見い出された(図6C、6E)。このペプチドはMMDFFNAQM(配列番号:279)であり、それは、RNAスプライシング複合体に関与するタンパク質であるU2AF2174-182 に由来する。U2AF2は、通常多くのヒト組織において発現し、Protein Atlasに寄託された抗体染色によって判定されるように、結腸直腸癌を含めた多くのがんにおいて過剰発現する。実際、U2AF2 RNAは、患者A及び患者Bにおいて、健常組織よりも腫瘍組織においてそれぞれ2.11倍及び2.65倍過剰発現した(図11A)。ヒトリンパ腫、乳房、結腸、及び肺腫瘍細胞株を調べた場合、U2AF2 RNAは、患者サンプルと比べて有意に過剰発現している(図11B~C)。U2AF2は、黒色腫における腫瘍転移の促進に関与しており、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、及び肺腺癌のような固形腫瘍において滅多に変異しない。U2AF2の結合パートナーであるU2AF1は、がんにおいて変異することが多く、変異はRNAスプライシング及びエクソンスキッピングを増強し、インビトロで遺伝子調節異常につながることが示されている。両患者において、U2AF2またはU2AF1において変異は見い出されなかった。TCR3Bと比較してより交差反応性のTCR2Aに関して、タンパク質TXNDC11107-115 に由来する付加的なヒトペプチド(配列番号:280)VLDFQGQLは、がんに関与することは以前に記載されていないが結腸及び他の多くの組織タイプにおいて発現される受容体を刺激し得た。
【0149】
本発明者らは、HLA-A* 02:01によって呈示されるペプチドMMDFFNAQM(配列番号:279)に対するTCR2Aのアフィニティーが110μMであることを表面プラズモン共鳴によって決定し、真正の相互作用が同定された(図11D~E)。アフィニティーは、TCR3Bに対して決定され得なかった。これらの低いアフィニティーは、一本鎖MMDFFNAQM-HLA-A* 02:01(配列番号:281)を発現する酵母のTCR四量体染色の欠如を部分的に説明し得る(図10F~G)。刺激対四量体結合のこれら不一致の結果は、調査されたすべてのTCRにわたって見られる(図10E~H)。逆に、MMDFFNAQM-HLA-A* 02:01(配列番号:281)四量
体は、TCR2AまたはTCR3Bのいずれかを発現するSKW-3細胞を染色し得なかった。残念ながら、質量分析によってHLA-A* 02によるペプチド提示を確認するための組織サンプルは入手不能であった。本発明者らは、U2AF2に由来するペプチドを標的にする免疫応答を断定的に決定し得ないものの、酵母ディスプレイスクリーニング、予測アルゴリズム、及びインビトロ刺激からの証拠は、このペプチドを有力な標的として同定する。これらの結果は、pHLAライブラリーがTCRの抗原特異性を同定し得、2人の患者にわたって共有される特異性が同定されたという原理の証明として働く。pHLAライブラリーは、ペプチド抗原に対する相対的交差反応も正しく区別し得る。
【0150】
本発明者らの調査からの根本的に驚くべき洞察は、TCRにとって可視のMHC結合ペプチドの小さな認識カーネルにおいてコードされる特異性が、未知の特異性のTCRに対する内因性ペプチドの配列全体の再構築を可能にするために十分であるということである。この知見は、T細胞媒介性疾患における抗原の同定にとって重要な意味合いを有する。T細胞は、感染性疾患、自己免疫、アレルギー、及びがんにおける治療的処置の道を提供する。これらのほとんどにおいて、本発明者らは、限定された方法が理由で、とりわけヒトにおけるT細胞特異性についての情報をほとんど有していない。この状況は、単一T細胞からTCR配列をエクスビボで直接獲得するハイスループット法を使用できることによって進歩しているが、ペプチドリガンド(複数可)を決定するという困難な仕事に依然として直面する。本明細書で、本発明者らは、単一細胞TCR分析法と酵母ディスプレイライブラリースクリーニング手法の洗練型とを組み合わせて、ヒト結腸直腸腺癌における新規のpHLA特異性を発見する。これは、がんにおけるT細胞特異性についての本発明者らの理解にとって大きな意味合いを有し、他の疾患に適用され得る。
【0151】
本発明者らの知る限りでは、これは、コンビナトリアル生物学スクリーニング技術を用いたTCRリガンド同定の最初の例であり、3種のTCRが、がんにおいて役割を担う野生型抗原に特異的であることが見い出された。U2AF2に由来する単一の野生型抗原は、調査された2/2の患者において共有される免疫応答標的である可能性が高い。HLA-A* 02ライブラリーでスクリーニングに成功したすべてのTCRに関して、本発明者らは、しばしば天然ペプチドよりも強力にこれらのTCRを刺激する複数のミモトープペプチドを同定することができた。新抗原と同様に、合成ペプチド抗原またはミモトープは、特定の抗原特異的T細胞を刺激するDNA、RNA、またはペプチドワクチンとしての実用性を有し、それに対して免疫応答が寛容である可能性が高い自己抗原よりも多くの免疫原性応答を生み出す。
【0152】
ディープシーケンシング選択データから同族腫瘍抗原を予測することの成功は、改善されかつ洗練された検索アルゴリズム及び患者組織検証に依存する。加えて、所定の腫瘍から多数のTCRをスクリーニングすることは、とりわけRNA発現及び/または溶出されたペプチドの質量分析を含めた関連する患者データにつなげた場合、選択データを同族抗原に関連付けする確率を増加させ得る。
【0153】
1)オーファンTCRに対する内因性及びミモトープリガンドを同定するために、及び/または、2)ペプチド抗原特異性に基づいてTCRを分類する手段として、2つの主たる適用が免疫療法における本方法に使用可能であり、それは、患者にわたって共有される抗原を認識する臨床的候補TCRの同定を可能にする。共有されるTCRは、共有される抗原特異性に潜在的につながり得る類似のTCR配列を共有する受容体、またはいかなる共有配列も有しないが同じ抗原を認識するTCRのいずれかであり得る。共有される抗原を認識するそのようなTCRは、操作されたT細胞またはワクチン療法においてとりわけ有用である。TCRシーケンシングは進歩し続け、より多くのTCRシーケンシングデータが使用可能になるにつれて、本発明者らは、患者HLAに対するTCR制限を推測し得、収束性TCR配列クラスターに対する共通のTCR特異性を推測し得る。これにより、
TCRリガンド同定を、公知のHLA制限を有する影響力のあるTCRにより有効に向けることが可能となる。
【0154】
エクソームデータを利用して、T細胞免疫応答の潜在的標的として働き得る患者特異的新抗原を同定する他の方法とは異なり、本方法は、TCRとpHLAとの間の物理的相互作用に依存する目下の免疫応答のTCR特異性についての不偏的取り調べである。このリガンド同定法は、低い変異量を有し、新抗原標的が野生型抗原と比較して普及していない可能性があるがんにおいてとりわけ重要であり得る。本発明者らは、臨床的に重要なTCR及び新規の抗原を同定するための手段を提供し得る、TCRを脱オーファン化する酵母ディスプレイライブラリーの使用を改善する方法論を開発した。本発明者らは、結腸直腸腺癌を有する2人の患者におけるTILの脱オーファン化のためのツールとしてHLA-A* 02:01ライブラリーを検証した。本発明者らは、潜在的治療価値がある野生型抗原に対する共有される応答とともに、これらの患者免疫応答の標的として野生型抗原を主に同定した。
【0155】
STAR法
実験モデル及び対象詳細
ヒト対象。両者ともに結腸直腸腺癌を有する、64歳及び66歳の2人の男性対象。スタンフォード大学施設内倫理委員会は、ヒト組織及び血液の回収のためのすべてのプロトコールを承認した。患者サンプルを、スタンフォード病院における病理学部門から患者同意と合わせて獲得した。両患者は、HLA-CなしのHLA型であり、彼らのHLA-A* 02アレル発現に対して特異的に選定された。
【0156】
初代及び細胞株。別様に記述されていない限り、すべての細胞を5%CO2 を有する37℃で成長させる。
【0157】
ヒトPBMCを、10%ウシ胎仔血清(FBS)、2mM L-グルタミン(ThermoFisher)、ならびに50U/mLペニシリン及びストレプトマイシン(ThermoFisher)を含有するRPMI complete(ThermoFisher)中で培養した。SKW-3細胞はヒトT細胞白血病に由来し、10%FBS、2mM
L-グルタミン、ならびに50U/mLペニシリン及びストレプトマイシンを含有するRPMI complete中で培養される。形質導入された細胞を、付加的な1ug/mLピューロマイシン(ThermoFisher)及び20ug/mLゼオシン(ThermoFisher)とともに培養する。T2細胞は、SKW-3細胞に対する抗原提示細胞として用いられるHLA-A* 02陽性細胞である。それらを、10%FBS、2mM L-グルタミン、ならびに50U/mLペニシリン及びストレプトマイシンを有するIMDM(ThermoFisher)中で培養した。JY細胞は、10%FBS、2mMグルタミン、ならびに50U/mLペニシリン及びストレプトマイシンを含有するRPMI complete中で培養されるEBV不死化B細胞株である。HEK293T細胞を、10%FBS、2mM L-グルタミン、ならびに50U/mLペニシリン及びストレプトマイシンを含有するDMEM complete(ThermoFisher)中で成長させる。FLYRD18を、50U/mLペニシリン及びストレプトマイシンとともに2mMグルタミンとともに10%FBSを有するDMEM complete中で成長させる。
【0158】
EBY100酵母細胞を、pH4.5で1リットルのH2 Oあたり20gデキストロース、6.7g Difco酵母窒素原(BD Biosciences)、5g Bactoカザミノ酸(BD Biosciences)、14.7gクエン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich)、4.29gクエン酸一水和物(Sigma-Aldrich)を含有するSDCAA、またはデキストロースをガラクトースで置き換えるSGCA
Aのいずれかの中で成長させる。酵母を、大気CO2 で、SDCAA中30℃にてまたはタンパク質誘導のためのSGCAA中20℃にて成長させる。
【0159】
High Five細胞を、大気CO2 で27℃にて、最終濃度10mg/Lの硫酸ゲンタマイシン(ThermoFisher)を有するInsect X-press培地(Lonza)中で成長させる。SF9細胞を、大気CO2 で27℃にて、10%FBS及び最終濃度10mg/Lの硫酸ゲンタマイシンを有するSF900-III血清不含培地(ThermoFisher)中で成長させる。
【0160】
酵母ディスプレイライブラリーの調製及び選択。ケミカルコンピテントEBY100酵母(ATCC)を用いて、以前に報告されるように(Birnbaum et al.,2014)酵母ディスプレイライブラリーを作り出した。簡潔には、選定されたコドンセットをコードするプライマーを用いて、DNAによりコードされるペプチドライブラリーを作り出した。ペプチドのP2及びPΩにおけるアンカー箇所は、それぞれLeu-Met及びLeu-Met-Valへの限定されたコドン使用法を有し、一方で他のすべての箇所ではNNKコドン多様性が認められた(図1E、表8)。別個の長さのライブラリーは、異なる長さのコドンセット、及び多重化選択のための固有のエピトープタグ(8mer-V5タグ、9mer-mycタグ、10mer-HAタグ、11mer-VSVタグ)を用いたベクターをコードする。酵母上にペプチド/HLA-A* 02:01複合体を呈示するために、HLA-A* 02:01の重鎖をY84A変異で改変し、重鎖をS302で切り取った。この変異は、リンカーのための開口部が、B2Mまで、ペプチド結合溝の末端を通ってペプチドのC末端の間を通り抜けることを可能にして、一本鎖三量体を生成する。膜貫通的に切り取られた重鎖を、酵母ディスプレイのために、Aga2pタンパク質に連結されたエピトープタグに連結させる。酵母ライブラリーの多様性を、限界希釈後のコロニーカウントによってエレクトロポレーション後に判定した。
【0161】
酵母を10×多様性の個々の長さのライブラリーで混合し、2%グリセロール及び0.67%酵母窒素原中で-80℃にて凍結した。ライブラリーを、必要に応じてSDCAA
pH4.5中で融解し、継代し、SGCAA中で誘導し、その後、ストレプトアビジンをコーティングされた磁気MACSビーズ(SAb)(Miltenyi)に共役したビオチン化可溶性TCRを用いて、以前に記載されるように(Birnbaum et al.,2014)選択した。簡潔には、4つすべての長さのライブラリーを含有する酵母の10×多様性(4×109 個細胞)を、10mLのPBS+0.5%ウシ血清アルブミン及び1mM EDTA(PBE)中で、4℃で1時間、250μL SAbを用いて陰性選択した。酵母を、磁気スタンド(Miltenyi)に取り付けられたLSカラム(Miltenyi)に通し、3回洗浄した。次いで、素通りを、400nMビオチン化TCRとともに4℃で15分間プレインキュベートされた250μL SAbとともに4℃で3時間インキュベートした。再度、酵母をLSカラムに通し、溶出物を、SDCAA洗浄後に、SDCAA pH4.5中で一晩成長させた。酵母がOD>2に達したら、付加的選択の前に、それらを、10%SDCAAを有するSGCAA中で2~3日間誘導した。その後のすべての選択を、500μLのPBE中50μL SAbまたはTCRをコーティングされたSAbを用いて行った。500uL PBE中400nM SA-647との酵母の1時間のインキュベーション、それに続くPBE洗浄、及び50μLの抗Alexa647マイクロビーズ(Miltenyi)との20分間のインキュベーションの後、第四のラウンドを、陰性選択を用いて行った。400nM SA-647 TCR四量体との3時間のインキュベーション、それに続く抗Alexa647マイクロビーズとの20分間のインキュベーションの後、陽性選択を行った。ナイーブライブラリー及び選択の全ラウンドを、下で記載されるディープシーケンシングのために処理した。誘導後に各ラウンドを抗エピトープ染色でモニターし、400nM TCR四量体染色を3時間4℃で完了した。
【0162】
選択から単離された個々の酵母クローン、またはディープシーケンシングから同定されて再構築されたペプチド-HLA構築物をエレクトロポレーションされたコンピテント酵母を、抗エピトープタグと組み合わせて、SA-647で標識された400nM TCR四量体またはSA-647単独で染色した。
【0163】
pHLAライブラリーのディープシーケンシング。選択のラウンドあたり5×107 個酵母からDNAをミニプレップによって単離した(Zymoprep IIキット、Zymo Research)。個々のバーコード及びランダムな8mer配列を、シーケンシング産物の隣接領域にPCRによって付加し、25サイクルで増幅した(表8)。これらのプライマーは、構築物のシグナルペプチドからB2Mの配列半ばまで増幅した。この後に、Illumina chipプライマー配列を付加する付加的PCR増幅が続いて、Illumina P5-Truseqリード1-(N8 )-バーコード-pHLA-(N8 )-Truseqリード2-lllumina P7を生成した。ライブラリーをアガロースゲル精製によって精製し、nanodrop及び/またはBioAnalyzer(Agilent Genomics)によって定量し、低多様性ライブラリーのための2×150 V2キットを用いたIllumina Miseqシーケンサーによってディープシーケンスした。
【0164】
可溶性TCRの発現。F5 TCRの各鎖をE.coli BL21(DE3)において別個に発現させ、精製し、リフォールディングさせ、機能的検証した。他のすべてのTCRに関しては、TCRの各鎖をSF9細胞を用いて別個に発現させて、pAcGP67aベクター(BD Biosciences)においてバキュロウイルスを産生した。α及びβ鎖の両方は、TCR VαまたはTCR Vβに対応するgp67シグナルペプチドを含有した。両構築物は、可溶性発現のために接続ペプチドで切り取られたヒト定常領域とともに、及び操作されたジスルフィドとともに、TCR V領域を発現するポリヘドリンプロモーターを利用した(Boulter et al.,2003)。両鎖は、C末端酸性GCN4ジッパー-6×HisタグまたはC末端塩基性GCN4ジッパー-6×Hisタグのいずれかを発現した。酸性ジッパーを含有するすべての鎖は、ビオチン化アクセプターペプチドを含有した。両鎖は、TCR外部ドメインのC末端とGCN4ジッパーとの間に3Cプロテアーゼ部位を含有した。DNAを、Cellfectin II(Life Technologies)を用いて、BD baculogold linearized baculovirus DNA(BD Biosciences)とともにSF9細胞に共トランスフェクトした。ウイルスを2mL培養物中に生成した。ウイルスを、1×106 個細胞/mLの25mL培養物中に1:1000の希釈で継代してより強力なウイルスを生成し、それを次いで、2×106 個細胞/mLの2mLのHigh Five(Hi5)(ThermoFisher Scientific)細胞に共タイトレート(co-titrate)して、SDS-PAGEゲル及びクマシー染色によってTCRα及びβ鎖の1:1発現の希釈物を生成した。共タイトレーションは、各鎖に対して1:1000~1:250に及んだ。
【0165】
ウイルスを用いて、1~4L容量でのタンパク質発現のために2×106 個Hi5細胞/mLのHi5細胞に感染させた。感染の2~3日後に細胞を除去し、上清を100mM
Tris-HCl pH8.0、1mM NiCl2 、及び5mM CaCl2 に処理して、混入物質を沈殿させた。沈殿物を遠心分離によって除去し、上清を、Ni-NTA樹脂(Qiagen)とともに室温で3時間インキュベートした。タンパク質を、1×HBS pH7.2中20mMイミダゾールで洗浄し、次いで1×HBS pH7.2中200mMイミダゾール中で溶出した。30kDaフィルター(Millipore)における1×HBS pH7.2へのバッファー交換の後、タンパク質を、birAリガーゼ、100uMビオチン、40mMビシンpH8.3、10mM ATP、及び10mM酢
酸マグネシウムを用いて4℃で一晩ビオチン化した。表面プラズモン共鳴に用いられるタンパク質を、3Cプロテアーゼ(10ug/mgのTCR)で一晩処理した。AKTAPurifier(GE Healthcare)Superdex 200カラム(GE
Healthcare)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって、タンパク質を精製した。画分を単離し、SDS-PAGEゲルでランして、1:1化学量論及びストレプトアビジンシフトによるビオチン化を確認した。画分をプールし、TCRをnanodropによって定量し、保管のために1×HBSバッファーpH7.2中に-80℃で凍結した。
【0166】
スタンフォード大学施設内倫理委員会は、ヒト組織及び血液の回収のためのすべてのプロトコールを承認した。64歳及び66歳の2人の男性からの患者サンプルを、スタンフォード病院における病理学部門から患者の同意に合わせて獲得した。腫瘍組織サンプルの一部を、免疫組織化学染色のために、ホルマリン固定パラフィン包埋によって処理した。抗CD4(クローン1F6、Leica biosystems)、抗CD8(クローンC8/144b、Dako)、またはヘマトキシリン/エオシンを用いて、組織を染色した。新鮮な腫瘍及び健常サンプルを、以前に行われたように(Han et al.,2014)処理した。簡潔には、腫瘍組織を分割し、PBS中10MM EDTAとともに30分間インキュベートした。細胞懸濁液を作り、10-μMナイロンセルストレーナー(Becton Dickinson)に通し、5%FBSを有するRPMI中0.5mg/mLタイプ4コラゲナーゼ(Worthington Biochemical)で30分間処理した。組織を、平滑末端16ゲージ針及びシリンジで分断した。一部のサンプルを抗体染色のために残して、EpCam(クローン9C4、Biolegend)に対する染色及びLIVE/DEAD Fixable Dead Cell Stainキット(Invitrogen)によって腫瘍組織を単離し、ARIA II(Becton Dickinson)を用いたFACSによって選別して、DNA/RNA抽出のためのAllPrep DNA/RNA Miniキット(Qiagen)によって処理した。その他の点では、リンパ球をPercoll(GE Healthcare)勾配遠心分離によって富化し、細胞を、10%ジメチルスルホキシド及び40%FBSを含有するRPMI中で凍結した、または抗体染色のために直ちに用いた。FACSのための染色の前に、150ng/mL PMA+1μMイオノマイシンを用いて、リンパ球を3時間非特異的に予備刺激した。細胞を、PBS+0.05%アジ化ナトリウム+2mM EDTA+2%FCSで洗浄した。
【0167】
リンパ球を、抗CD4(RPA-T4、BioLegend)、抗CD8(OKT8、eBiosciences)、抗αβTCR(IP26、BioLegend)、抗TIM3(F38-2E2、BioLegend)、抗CD28(CD28.2、Biolegend)、抗CD103(Ber-ACT8、BioLegend)、抗CCR7(G043H7、BioLegend)、抗LAG3(3DS223H、Invitrogen)、抗CD38(HIT2、BioLegend)、抗CD45RO(UCHL1、BioLegend)、及び抗PD1(EH12.2H7、BioLegend)の抗体で染色した。LIVE/DEAD Fixable Dead Cell Stainキット(Invitrogen)を用いて、死細胞を除外した。ARIA II(Becton Dickinson)を用いた蛍光活性化細胞選別(FACS)によって、細胞をOne-Step RT-PCRバッファー(Qiagen)中に直接的に選別した。患者Bサンプルをインデックスソーティングによって分析した。反応物を、以前に生成された(Han et al.,2014)プールされたプライマーセットを用いて増幅し、バーコード化し、アガロースゲル精製による精製のためにプールし、2×250 V2キットを用いたIllumina Miseqによってディープシーケンスした。データを特注ソフトウェアパイプラインを用いて処理し、個々のウェルを、VDJFastaを用いてCDR3、TCRα及びTCRβ可変、接合、ならびに多様性領域に対してコールした
。データを、T細胞転写マーカー及び表現型マーカーに基づいてt-SNEを用いて分析して、細胞集団を分離した。
【0168】
患者エクソームのシーケンシング及びバリアントコール。腫瘍及び健常組織から抽出されたDNAを用いて、エクソームシーケンシングのためのライブラリーを作り出した。腫瘍及び正常組織からの50ngのDNAを、Nextera(Illumina)を用いてIlluminaシーケンシングライブラリーに仕立てた。ライブラリーをプールし、Roche Nimblegen SeqCap EZ 3.0(Roche)を用いてエクソン領域について富化した。Nextseq500を用いて、ペアエンド75bpリードを生成した。GATK Best Practicesの後に、腫瘍特異的バリアントを判定した。簡潔には、cutadapt v1.9を用いて、アダプター及び低品質塩基をトリミングした。BWA MEM 0.7.12を用いて、リードをhg19にアラインした。Picard tools v1.119を用いて重複するものを除去し、その後に、indelリアライメント、ならびにGATK v3.5及びGATK Resource Bundle 2.8からダウンロードされた参照ファイルを用いたベースリキャリブレーションが続いた。bedtools v2.25.0を用いて、被覆率中央値を決定した。最後に、mutect2を用いて、正常と腫瘍との間のバリアントを判定した。すべてのキットにおいてメーカーの指示に従い、すべてのパイプラインにおいて初期設定ソフトウェアパラメーターを用いた。
【0169】
EnsemblからのGrch37アセンブリを用いて、すべてのエクソームバリアントを用いて代替コード配列を作り出した。各代替コード配列を処理し、ライブラリーペプチドの長さに基づいて採点した。ペプチドを2017PWM及び2017DLアルゴリズムを用いて採点した。
【0170】
アルゴリズムの開発及びヒトペプチドついての予測。種々のペプチド長に対するライブラリーのデコンボリューションを取り入れる改変を有して、以前に行われたように(Birnbaum et al.,2014)ディープシーケンシング結果を分析した。シグナルペプチド及びGSリンカーに隣接するアミノ酸の数に基づいて、種々のペプチド長を同定した。簡潔には、PandaSeqを用いて、ディープシーケンシング結果からペアエンドリードを判定した。ペアエンドリードを、Geneiousバージョン6を用いてバーコードによって解析して、選択のラウンドを同定する。選択のラウンド3及び4において10カウント未満を有する、ならびにラウンドにおいて別の配列と1ヌクレオチド配列のみ異なる全ヌクレオチド配列を、ドミナント配列に合体させた。フレームシフトまたは終止コドンを有するいかなるデータも、さらなる分析から除去された。カスタムパールスクリプト及びシェルコマンドを用いて、配列を処理した。
【0171】
逆ハミング距離は、ペプチドの全長から差し引かれたハミング距離であり、2つのペプチド間の共有されるアミノ酸の数を表す。選択されたラウンド3ライブラリー配列からの他のすべてのペプチドに対して各ペプチドを反復することによって、Matlab(Mathworks Inc.)を用いてそれらを算出した。生み出された出力スコアは、ペプチド間の合致するアミノ酸箇所の数である。逆ハミング距離に基づいて、Cytoscapeを用いてペプチドをクラスター化し、ペプチド類似性に基づいてカットオフを手作業で決定した。DMF5 TCRに関しては、クラスター化を行い、クラスターを用いて、アミノ酸頻度に対するカットオフを用いずに、予測のための置換行列を作り出した。NKI TCRに関しては、NKI2 TCRに対する新抗原特異性を判定するために、逆ハミング距離は十分であった。2014PWMモデルは、127種の新抗原のリストからいかなる予測結果も出さなかった。アルゴリズム予測の前に、4種の結腸直腸癌由来TCRに対してクラスター化は行われなかった。
【0172】
2014PWM及び2017PWMに関して、置換行列を全選択のラウンド3から作り出し、それを用いてヒトタンパク質(Uniprot)または患者特異的エクソームを検索して、スライディングウィンドウを用いて固定長のペプチドを採点した。置換行列は、ペプチドの箇所あたりの全アミノ酸の頻度を決定することによって作成される。DMF5
TCRに対して行われたものを除いて、2014PWMを用いてなされたすべての予測に関して、所定の箇所におけるアミノ酸に対する0.1%頻度のカットオフを設けて、ノイズを除去した。ペプチドのスコアは、各箇所におけるアミノ酸頻度の積として算出される。2017PWMは、予測ペプチドがライブラリーの選択されたペプチドにおいて見い出されない箇所にアミノ酸を組み入れることを認めるという点において、2014PWMよりもストリンジェンシーが低い。これは、選択されていない可能性があるが潜在的に実行可能なペプチド解決策であり得るペプチド配列を破棄することを防ぐ。
【0173】
以前のアルゴリズムが行うように、ペプチドのそれぞれ個々の箇所を他のあらゆるものとは無関係なものとして見なすのではなく、ペプチドをひとまとまりの実体として考えるように、ディープラーニング法2017DLを作り出した(図12A)。ペプチド配列及びラウンドカウントを含むシーケンシングデータをRで前処理して、全ラウンドにわたって3カウントよりも少ない数を有するいかなるペプチド配列も除去した。次いで、各ラウンドカウントとラウンドにわたるカウントの平均数とを掛け、次いで所定のラウンドにおけるカウントの数で割ることによってデータを正規化した。適応させた適合度スコアを用いて、正規化されたラウンドカウントを通して各ペプチドにフィットさせた指数曲線によって表される適合度関数から導き出されるライブラリーにおける各ペプチドを採点した(図12B)。
【0174】
次に、各ペプチドに対する適合度スコアを用いてモデルを作り出し、ペプチドは20×L行列として表され、式中、Lはペプチド配列の長さである(図12C)。行列の20行は、20種の考え得るアミノ酸に関係する。アミノ酸はone-hotベクトルとして表され、ベクトルは単一の1を含有し、残りは0である。ペプチドを表す行列を、ニューラルネットワークを訓練することにおける使用のために、20×Lの長さの特徴ベクトルに平坦化した。one-hot行列を入力として用い、適合度スコアを出力として用いた。それぞれ10ノード及び5ノードを用いた2つの隠れ層ネットワークを利用した以前に記載されたネットワークアーキテクチャーを、ライブラリーペプチドからのデータを用いて遂行した(図12D)。Torchパッケージを用いて、訓練をLuaで行った。このモデルを用いて、ニューラルネットワーク入力のためにone-hot行列に変換されたL長のスライディングウィンドウから単離されたペプチドを用いて、Uniprotデータベース(2015年12月18日にダウンロードした)及び患者特異的エクソームからの所定のペプチドを採点した。プロテオーム全体からの各ペプチドに対して、ランダム選択の確率を表すp値及びボンフェローニ補正されたp値を算出し、ペプチドは、採点されたペプチドと同じくらい高いまたはそれよりも高い適合度スコアを有した。
【0175】
共培養アッセイにおけるT細胞活性化の測定。ライブラリーからペプチドを選択した、結腸直腸癌患者から単離された4種のTCRを、TCR可変遺伝子及び全長の非改変定常領域の野生型シグナルペプチドを用いて、α-P2A-βの立体配置で、MSCVに基づくベクターpMIG II内にクローニングした。P2Aスキップ配列は、TCRの1:1の化学量論的発現を可能にする。MSCVに基づくベクターpMIG IIを用いて、δ-F2A-γ-T2A-ε-P2A-ζの形式のヒトCD3も作り出した。パッケージングベクターpCL10Aを用いて、env、gag、及びpolを組み入れて、ヒト哺乳類指向性及びウイルス作出を可能にした。ベクターによって、感染細胞にピューロマイシン及びゼオシン選択性が導入された。5μg TCRまたはヒトCD3 DNA及び3.3μg pCL10A DNAを用いて、ヒト胎児腎臓293T細胞において、各TCR及びヒトCD3に対してレトロウイルスを作り出した。血清不含DMEM中X-tre
meGENE 9 DNAトランスフェクション試薬(Sigma-Aldrich)を用いて、ウイルスを作り出した。細胞培養において、2%FBS DMEMを用いて細胞を回収し、培地を12時間の時点で変えた。ウイルスを、プールされるべきそれぞれ2.5mL量で36、40、44、及び48時間の時点で収穫し、0.45μMシリンジフィルター(Fischer Scientific)で濾過し、-80℃で凍結するか、または直ちに用いてTCR- CD8+ SKW-3細胞に感染させた。TCRの2mLウイルス及びヒトCD3の2mLウイルスを用いて、32℃で2500rpmにて2時間スピンすることによって、5ug/mLポリブレン(Millipore)を用いて2×106 個のSKW-3細胞に共感染させた。ウイルスを除去し、培地で置き換え、細胞を培養した。形質導入されたSKW-3細胞を、2~3日後に無期限に20ugゼオシン及び1ugピューロマイシン中で培養して、TCR及びヒトCD3共発現に対して選択した。次いで、細胞をTCR(IP26、BioLegend)及びヒトCD3(UCHT1、BioLegend)に対して共染色し、SH800細胞選別機(Sony Biotechnology Inc.)で選別した。
【0176】
形質導入されたSKW-3細胞を、様々なペプチド希釈物とともに、2:1比でTAP欠損T2細胞と共培養した。酵母ディスプレイ選択から単離された上位5種の合成ペプチドを、3つの予測アルゴリズムから決定された予測に沿って試験した。ペプチドを>70%純度に合成し(Genscript)(Elim Biopharm)、ジメチルスルホキシド中20mMに再懸濁し、-20℃で保管した。CD69(FN50、BioLegend)を18時間の時点で測定して、Accuri C6(BD Biosciences)を用いたフローサイトメトリーによって初期T細胞活性化を検出した。SKW-3 T細胞をUCHT1染色によって検出し、TCR及びCD3発現についてチェックした。T2細胞を抗体(BB7.2、BioLegend)によってHLA-A* 02発現についてチェックした。FlowJoバージョン10(FlowJo、LLC)を用いてデータを分析し、サンプルを、前方及び側方散乱光によってSKW-3細胞に対して、ならびにUCHT1+細胞に対してゲートをかけ、その後にCD69発現についての分析が続いた。実験を生物学的三つ組及び技術的三つ組で行った。Prismにおいて普通の一元配置ANOVAによってp値を算出し、表示される標準偏差または平均の標準誤差のいずれかとともに実験をプロットした。
【0177】
CDK4特異的TCRクローン10(NKI1)及び17(NKI2)は黒色腫患者のTILに由来し、それを、本質的には記載されるように、予測された新抗原を搭載したHLA多量体を用いてスクリーニングした。両TCRの可変部分を、マウスTCRα及びβ定常ドメインをコードするレトロウイルスベクター内にクローニングした。FLYRD18パッケージング細胞を、1.2×106 個細胞/ウェルで10cmディッシュに播種した。1日後、細胞に、25μl X-tremeGENE HP DNA(Sigma-Aldrich)を用いて、CDK4 TCRをコードする10μgレトロウイルスベクターDNAをトランスフェクトした。48時間後、レトロウイルス上清を単離し、レトロネクチンをコーティングされた24ウェルプレートに移し、430gで90分間遠心分離した。PBMCを活性化し、3:1のビーズ対細胞比で抗CD3/CD28ビーズ(ThermoFisher)を用いて選択した。刺激の48時間後、ウイルスをコーティングされたプレート上にT細胞を0.5×106 個細胞/mLで播種した。形質導入されたT細胞上での導入されたCDK4 TCRの表面発現を、抗マウスVβ TCR-PE標識抗体(BD Biosciences)と組み合わせてAPC標識CDK4 R>L HLA-A* 02:01四量体を用いて測定した。FACSCalibur(Becton
Dickinson)を用いて細胞を分析した。JY細胞を、表示される濃度のCDK4ペプチドまたは予測ペプチドで37℃で1時間パルスし、次いで2回洗浄した。次に、0.2×106 個のTCR形質導入されたT細胞を、1μL/mL Golgiplug(BD Biosciences)の存在下で、0.2×106 個のペプチドパルスされ
たJY細胞とともにインキュベートした。JY細胞に曝露されていないT細胞、非搭載JY細胞に曝露されたT細胞、及び非関連ペプチド(MART-1)を搭載されたJY細胞に曝露されたT細胞を、対照として用いた。37℃、5%CO2 での5時間のインキュベーションの後、細胞を洗浄し、PerCP-cy5.5抗CD8、FITC抗CD3、PE抗マウスVβ TCR、及びAPC抗IFNγ標識抗体で染色した。
【0178】
外因性ペプチドとのリフォールディングされたHLA-A* 02:01の発現。pet26bベクターを用いて、Rosetta BL21 DE3 E.coli細胞においてHLA-A* 02:01(1~275)及びβ2M(1~100)を別個に発現させた。別個のタンパク質を含有する封入体を、8M尿素、40mM Tris-HCl pH8.0、10mM EDTA、及び10mM DTT中に溶解した。インビトロでのリフォールディングに関しては、HLA-A* 02重鎖、β2M、及びMMDFFNAQM(配列番号:279)ペプチドを1:2:10のモル比で混合し、0.4M L-アルギニン-HCl、100mM Tris-HCl pH8.0、4mM EDTA、0.5mM酸化型グルタチオン、及び4mM還元型グルタチオンを含有するリフォールディングバッファー中に希釈した。4℃で72時間後、タンパク質を10Lの10mM Tris-HCl中で透析し、DEAEセルロースカラムを用いた弱いイオン交換により精製した。タンパク質溶出物を、Superdex 200カラムでのサイズ排除クロマトグラフィー及び5/50 Mono Qカラム(GE Healthcare)でのイオン交換クロマトグラフィーを用いて精製した。サイズ排除Superdex 200カラムでランさせる前に、30kDaフィルター(Millipore)における1×HBS pH7.2へのバッファー交換の後、タンパク質を、birAリガーゼ、100uMビオチン、40mMビシンpH8.3、10mM ATP、及び10mM酢酸マグネシウムを用いて4℃で一晩ビオチン化した。
【0179】
MMDFFNAQM-HLA-A* 02:01へのTCR2A及び3B結合アフィニティーを測定するための表面プラズモン共鳴。TCR2A及び3BとMMDFFNAQM-HLA-A* 02(配列番号:281)との相互作用を、BIAcore T100(GE Healthcare)バイオセンサーを用いた表面プラズモン共鳴によって25℃で測定した。ビオチン化MMDFFNAQM-HLA-A2(配列番号:282)を、ストレプトアビジンをコーティングされたBIAcore SAチップにおよそ1000共鳴単位(RU)で固定した。異なるフローセルに、ブランク対照として働く非関連ペプチド-HLA-A2を固定した。種々の濃度の2Aまたは3B TCRのいずれかを、ブランク及びMMDFFNAQM-HLA-A2(配列番号:282)の上に逐次的に流した。SPRシグナルがプラトーに達するために十分な時間を与える60秒後に、TCRのインジェクションを停止した。BIAcore evaluationソフトウェアを用いて、平衡データと1:1結合モデルとをフィットさせることによって、解離定数(KD )を獲得した。
【0180】
U2AF2の相対的RNA発現を判定するための定量PCR。腫瘍及び健常患者組織から以前にこれまで述べられたように抽出されたRNAを用いて、U2AF2 RNA発現の相対的分量を判定した。加えて、RNAを、リンパ腫:K562、Daudi、乳房:MDA MB 231、肺:A549、EKVX、HCC78、H358、H441、H1373、H1437の細胞株から抽出した、H1650、H1792、H2009、H2126、H3122、LC-2/ad。High-Capacity RNA-to-cDNAキット(Thermofisher)を用いて、cDNAを三つ組で生成した。cDNAサンプルを分量のためにプールし、TaqManプローブ(ThermoFisher)、TaqMan Universal Master Mix II,no UNG(ThermoFisher)、及びQuantStudio 3 Real-Time PCR System(ThermoFisher)を用いて、定量リアルタイム
PCRを技術的四つ組で行った。U2AF2プローブ(ThermoFisher、Hs00200737_m1)は、U2AF2のエクソンに及ぶ75bp領域を増幅した。18S RNAプローブ(ThermoFisher、Hs99999901_s1)をハウスキーピング遺伝子として用い、187bp領域が増幅された。18S RNAに対するU2AF2のサイクル閾値を各サンプルに対して算出し、患者A健常組織または患者B健常組織サイクル閾値のいずれかと比較して、相対的発現レベルを判定した。標準偏差がプロットされている。
【0181】
定量及び統計分析。SKW-3細胞を用いたT細胞刺激アッセイ。データをFlowjoを用いて分析して、SKW-3細胞及びCD3+ 群をゲートにかけて、T細胞を同定する。次いで、陰性対照(ペプチドなし)を用いて、T細胞をCD69発現に対してゲートをかける。CD3+ 群におけるCD69の発現のMFI中央値及びCD69を発現する細胞のパーセンテージが分析されている。陰性対照(ペプチドなし)と比較した、普通の一元配置ANOVAを、Prismを用いて両分析に対して判定した。100μMペプチド刺激を生物学的及び技術的三つ組で完了させる。生物学的三つ組のうちの1つのみが示されている。ペプチドタイトレーション実験を生物学的三つ組で行った。すべての生物学的三つ組を集合的に分析した。p値指定に関する凡例が、各図に対して挙げられている。SEM(n=3、技術的三つ組)またはSD(n=3、生物学的三つ組)のいずれかが用いられ、対応する図の凡例において挙げられている。
【0182】
2014PWM採点。(Birnbaum et al.,2014)に提示されるように採点を行う。シーケンシングリードカウントをペプチド配列に対する乗数として用いて、ラウンド3選択データから頻度行列を作り出す。ペプチドの各箇所にリードカウントを掛けて、所定のアミノ酸が存在する回数のカウントを得る。これを、ラウンド3における各固有のペプチドに対して行い、箇所あたりのアミノ酸カウントを総リードの数で割る。次いで、頻度行列を用いて、ヒトプロテオームのあらゆるNmerペプチドを採点し、Nはライブラリーからの選択されたペプチドの長さである。ペプチドにわたる所定のアミノ酸の頻度を掛けることによって採点を行う。
【0183】
2017PWM及び2017DLペプチド採点。この論文においてアルゴリズムを作り出した。両2017PWMに関して、ラウンド3だけでなく選択の全ラウンドにわたるデータに対して付加的な頻度行列を作り出すことを除いて、2014PWMにおけるように頻度行列を作り出す。アミノ酸あたりの箇所あたりの比率は、全ラウンド頻度行列に対するラウンド3頻度行列と見なされる。ゼロ値に対して0.05の疑似カウント頻度を遂行し、比率のlog10を取る。このスコアは、箇所における特定のアミノ酸の富化比率として解釈される。このスコアを用いて、各箇所に対してスコアを掛けることによって、エクソームまたはヒトプロテオームからの所定のペプチドの全体的富化を判定する。2017DLアルゴリズムは、方法において記載されるように遂行される。
【0184】
ペプチドの統計的有意性を判定するために、ヒトプロテオーム及びエクソームペプチドセットを採点する。エクソームペプチドセットに対するp値を算出するために、ヒトプロテオームスコアの背景においてパーセンタイルスコアを算出する。非補正p値は1パーセンタイルである。ボンフェローニ補正されたp値は、変異体セットにおけるペプチドの数を掛けた非補正p値である。
【0185】
定量PCR分析。技術的四つ組サンプルにおいて定量PCRを行った。18S RNAに対するU2AF2RNAの相対的発現レベル(デルタサイクル閾値)を、サイクル閾値を差し引くことによって算出した。健常と比べた倍変化を(デルタデルタサイクル閾値)を、サンプルに対する参照の相対的サイクル閾値(デルタサイクル閾値)を差し引くことによって決定した。デルタサイクル閾値の標準偏差を、下記の式を用いて算出する。式中
、s=標準偏差、s1 =標的サンプルの標準偏差、及びs2 =参照サンプルの標準偏差である。デルタデルタサイクル閾値標準偏差は、デルタサイクル閾値試験サンプルの標準偏差を利用する。
【0186】
【数1】
【0187】
データ及びソフトウェア入手可能性。エクソームシーケンシング。データは、BioSampleアクセッションSAMN07350021、SAMN07350022、SAMN07350023、SAMN07350024、SAMN07350025、SAMN07350026、SAMN07350027、SAMN07350028、SAMN07350029、SAMN07350030、SAMN07350031、及びSAMN07350032の下で、ショートリードアーカイブにおいて入手可能である。
【0188】
ディープシーケンシング。データは、BioSampleアクセッションSAMN07977164、SAMN07977165、SAMN07977166、SAMN07977167、SAMN07977168、及びSAMN07977169の下で、ショートリードアーカイブにおいて入手可能である。
【0189】
【表1-1】
【0190】
【表1-2】
【0191】
【表1-3】
【0192】
逆ハミング距離によるクラスター化後の、DMF5 10merライブラリー選択のラウンド3ディープシーケンシングから同定された配列。これらのクラスターを用い、2014PPMを用いてUniprotデータベースに対して予測を行った。「GIG」クラスターに対する9種の予測、及び「DRG」クラスターに対する上位10種の予測が挙げられている。
【0193】
【表2-1】
【0194】
【表2-2】
【0195】
【表2-3】
【0196】
ペプチド長によって挙げられたNKI2ライブラリー選択のラウンド3ディープシーケンシングから同定された配列。図3と関連している。
【0197】
【表3】
【0198】
【表4-1】
【0199】
【表4-2】
【0200】
HLA-A* 02:01ライブラリーに対してスクリーニングされたTCR。腫瘍におけるクローン性、表現型プロファイル、腫瘍への排他性に基づいて、及び付加的に、関連するTCR配列によって、TCR配列を選定した。腫瘍及び健常のラベルの下にある数は、対合したTCR配列がこの組織から見られた回数を示す。図5及び6と関連している。
【0201】
【表5-1】

【0202】
【表5-2】
【0203】
【表5-3】
【0204】
TCR2A:
TRAV19、TRAJ32、CDR3:(配列番号:261)CALSEARGGATNKLIF、及びTRBV10-1、TRBJ1-1、CDR3:(配列番号:262)CASSRDTVNTEAFFから構成されるTCR
【0205】
【化1】
【0206】
【化2】
【0207】
TCR3B:
TRAV19、TRAJ32、CDR3:(配列番号:261)CALSEARGGATNKLIF、及びTRBV10-1、TRBJ2-7、CDR3:(配列番号:263)CASSRDFVSNEQYFから構成されるTCR
TCR2Aと同じアルファ
【0208】
【化3】
【0209】
相互参照
本出願は、2017年3月24日に出願された米国仮特許出願第62/476,575号の利益を主張するものであり、その出願は参照によりその全体として本明細書に組み入れられる。
図1-1】
図1-2】
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
図10
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図11-4】
図12-1】
図12-2】
【配列表】
2024153848000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-08-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:1~配列番号:257または配列番号:262のいずれかのアミノ酸配列を含む、ペプチド。
【請求項2】
配列番号:1~配列番号:257または配列番号:262のいずれかのアミノ酸配列からなる、ペプチド。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、ペプチド、またはペプチドの組み合わせ、及び、薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項5】
ワクチンアジュバントを含む、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記ペプチドまたはペプチドの組み合わせはMHC抗原と複合している、請求項4または請求項5に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載のペプチドまたはペプチドの組み合わせを含む、抗原提示細胞。
【請求項8】
がん細胞抗原に対する免疫応答を誘導する方法であって、
有効用量の、請求項4~6のいずれか一項に記載の薬学的組成物または請求項7に記載の抗原提示細胞を個体に投与することを含む、方法。
【請求項9】
配列番号:258、259、または260のいずれかのCDR配列を含む、T細胞受容体または抗体。
【請求項10】
配列番号:259または配列番号:260の配列と対合した、配列番号:258のアミノ酸配列を含む、請求項9に記載のT細胞受容体。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載のT細胞受容体または抗体を含むように操作された、免疫細胞。
【請求項12】
抗原に対する個体の応答性を判定する方法であって、
配列番号:1~257または262のいずれかに従ったペプチドに応答したT細胞刺激について、前記個体由来のT細胞を含むサンプルを分析することを含み、
前記ペプチドに応答したT細胞刺激は、前記個体が請求項8に記載の方法に従って処理され得ることを示す、方法。
【請求項13】
関心対象のT細胞受容体(TCR)と、MHCタンパク質の結合ドメイン及びペプチドリガンドを含む一本鎖ポリペプチドをコードする少なくとも10 8 種の異なるポリヌクレオチドの多重化ライブラリーを細胞表面に発現する宿主細胞の集団とを接触させること、
関心対象の前記TCRに結合する一本鎖ポリペプチドを発現する宿主細胞を選択すること、
少なくとも3つのラウンドに対して前記選択することを反復すること、
最終選択集団に存在する前記ポリヌクレオチドのDNAシーケンシングを実施して、前記ペプチドリガンドの各箇所に対する考え得るアミノ酸のデータセットを決定すること、
前記データセットをコンピュータ可読媒体に入力して、検索アルゴリズムを作り出すこと、ならびに、
前記検索アルゴリズムを用いて配列データベースを検索して、前記TCRに結合するペプチドのセットを同定すること
を含む方法によって同定された、TCRに対するペプチド抗原。
【請求項14】
前記ペプチドリガンドは長さが8~20アミノ酸である、請求項13に記載のペプチド抗原。
【請求項15】
前記多重化ライブラリーは、複数の箇所にランダム化されたペプチドリガンドを含有する、請求項14に記載のペプチド抗原。
【請求項16】
ペプチドリガンドの前記多重化ライブラリーは、MHCアンカー箇所において限定された多様性を有する、請求項15に記載のペプチド抗原。
【請求項17】
前記MHCタンパク質の結合ドメインは、クラスI MHCタンパク質のアルファ1及びアルファ2ドメイン、ならびにβ2ミクログロブリンを含む、請求項13~16のいずれか一項に記載のペプチド抗原。
【請求項18】
前記クラスI MHCタンパク質はHLA-A2のアレルである、請求項17に記載のペプチド抗原。
【請求項19】
前記HLA-A2のアレルはアミノ酸変化{Y84A}を含む、請求項18に記載のペプチド抗原。
【請求項20】
T細胞受容体(TCR)のペプチド抗原をスクリーニングする方法であって、
関心対象のTCRと、MHCタンパク質の結合ドメイン及びペプチドリガンドを含む一本鎖ポリペプチドをコードする少なくとも10 8 種の異なるポリヌクレオチドの多重化ライブラリーを細胞表面に発現する宿主細胞の集団とを接触させること、
関心対象の前記TCRに結合する一本鎖ポリペプチドを発現する宿主細胞を選択すること、
少なくとも3つのラウンドに対して前記選択することを反復すること、
最終選択集団に存在する前記ポリヌクレオチドのDNAシーケンシングを実施して、前記ペプチドリガンドの各箇所に対する考え得るアミノ酸のデータセットを決定すること、
前記データセットをコンピュータ可読媒体に入力して、検索アルゴリズムを作り出すこと、ならびに、
前記検索アルゴリズムを用いて配列データベースを検索して、前記TCRに結合するペプチドのセットを同定すること
を含む、方法。