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特開2024-154219キトサン及びポリリジンから選択されるイオン架橋カチオン性ポリマーを含むW/O組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154219
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】キトサン及びポリリジンから選択されるイオン架橋カチオン性ポリマーを含むW/O組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20241023BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20241023BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20241023BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/64
A61K8/55
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023067934
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 麻理子
(72)【発明者】
【氏名】五十島 健史
(72)【発明者】
【氏名】河西 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】大上 和則
(72)【発明者】
【氏名】岡本 まり子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 安里瑳
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB172
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB362
4C083AB441
4C083AC012
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC232
4C083AC251
4C083AC261
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC442
4C083AC901
4C083AC902
4C083AC912
4C083AD021
4C083AD091
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD242
4C083AD261
4C083AD301
4C083AD321
4C083AD322
4C083AD331
4C083AD332
4C083AD341
4C083AD411
4C083AD412
4C083AD662
4C083BB11
4C083BB33
4C083BB34
4C083BB42
4C083CC01
4C083CC02
4C083DD32
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】皮膚等のケラチン物質に、少なくとも、良好な水和をもたらすことができるW/O組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、(b)2つ以上のpKa値を有する少なくとも1種の非ポリマー酸又はその塩、及び(c)水を含む、複数の水性相と、(d)少なくとも1種の油を含む脂肪相とを含む組成物であって、水性相が脂肪相中に分散されており、(a)カチオン性ポリマーが、ポリリジン、キトサン及びこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはキトサンから選択される、組成物に関する。本発明による組成物は、皮膚等のケラチン物質に、少なくとも、良好な水和をもたらすことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物、好ましくは化粧用組成物、より好ましくは皮膚等のケラチン物質のための化粧用組成物であって、
(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(b)2つ以上のpKa値を有する少なくとも1種の非ポリマー酸又はその塩、及び
(c)水
を含む複数の水性相と、
(d)少なくとも1種の油
を含む脂肪相と
を含み、
水性相が、脂肪相中に分散されており、
(a)カチオン性ポリマーが、キトサン、ポリリジン、及びこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはキトサンから選択される、
組成物。
【請求項2】
組成物中の(a)カチオン性ポリマーの量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(b)2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩が、有機酸又はその塩、好ましくは親水性若しくは水溶性の有機酸又はその塩、より好ましくはフィチン酸又はその塩である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物中の(b)2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩の量が、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%、好ましくは0.003質量%~5質量%、より好ましくは0.005質量%~1質量%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物中の(c)水の量が、組成物の総質量に対して、10質量%~50質量%、好ましくは15質量%~45質量%、より好ましくは20質量%~40質量%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物中の(d)油の量が、組成物の総質量に対して、10質量%~50質量%、好ましくは15質量%~45質量%、より好ましくは20質量%~40質量%である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
水性相が、(e)少なくとも1種のアニオン性ポリマーを更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
(e)アニオン性ポリマーが、多糖、例えばアルギン酸、ヒアルロン酸及びセルロースポリマー、アニオン性(コ)ポリアミノ酸、例えば(コ)ポリグルタミン酸、(コ)ポリ(メタ)アクリル酸、(コ)ポリアミド酸、(コ)ポリスチレンスルホネート、(コ)ポリ(ビニルスルフェート)、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、(コ)ポリマレイン酸、ポリフマル酸、マレイン酸(コ)ポリマー、並びにそれらの塩からなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
組成物中の(e)アニオン性ポリマーの量が、組成物の総質量に対して、0.001質量%~15質量%、好ましくは0.005質量%~10質量%、より好ましくは0.01質量%~5質量%である、請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項10】
脂肪相が、好ましくはC4~C26、より好ましくはC6~C24、更により好ましくはC8~C22飽和及び不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸から選択される、(f)少なくとも1種の脂肪酸を更に含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
組成物中の(f)脂肪酸の量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
脂肪相が、(g)少なくとも1種の有機変性クレイ鉱物、好ましくは有機変性ヘクトライト、より好ましくはジステアルジモニウムヘクトライトを更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
組成物中の水性相の量が、組成物の総質量に対して、30質量%~70質量%、好ましくは35質量%~65質量%、より好ましくは40質量%~60質量%である、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
組成物中の脂肪相の量が、組成物の総質量に対して、30質量%~70質量%、好ましくは35質量%~65質量%、より好ましくは40質量%~60質量%である、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、
ケラチン物質に、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物を塗布する工程と、
組成物を乾燥させて、ケラチン物質上に化粧皮膜を形成する工程と
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キトサン、ポリリジン及びこれらの混合物から選択されるイオン架橋カチオン性ポリマーを含むW/O(油中水型)組成物、並びに該組成物を使用する美容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野において公知であるように、特定の化粧用組成物は、アニオン性ポリマー及びカチオン性ポリマーで形成されるポリイオン錯体を使用する。
【0003】
例えば、WO2021/125069は、美容処置に有用であり、少なくとも1種のカチオン性ポリマー、少なくとも1種のアニオン性ポリマー、及び2つ以上のpKa値を有する少なくとも1種の非ポリマー酸を含む少なくとも1種のポリイオン錯体粒子を含む、組成物を開示している。WO2021/125069はまた、明細書中で開示される組成物が、油を含んでもよく、且つエマルションの形態であってもよいことも開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2021/125069
【特許文献2】WO03/068824
【特許文献3】EP-A-0750899
【特許文献4】EP-A-1069172
【特許文献5】EP-A-0173109
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Walter Noll著、Chemistry and Technology of Silicones(1968年)、Academic Press
【非特許文献2】Cosmetics and Toiletries、第91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers、Volatile Silicone Fluids for Cosmetics
【非特許文献3】Micelle formation of random copolymers of sodium 2-(acrylamido)-2-methylpropanesulfonate and nonionic surfactant macromonomer in water as studied by fluorescence and dynamic light scattering - Macromolecules、2000年、第33巻、第10号-3694~3704頁
【非特許文献4】「Hyaluronan fragments:an information-rich system」, R. Sternら、European Journal of Cell Biology 58 (2006) 699~715頁
【非特許文献5】D. Campocciaら、「Semisynthetic resorbable materials from hyaluronan esterification」、Biomaterials 19 (1998) 2101~2127頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、WO2021/125069に開示される組成物は、非常に限られた量の油、例えば組成物の総質量に対して0.5質量%の油しか含まない場合のみ、安定性であることが発見された。開示される組成物が比較的大量の油を含むとき、組成物は不安定になる傾向がある。そのため、WO2021/125069に開示される組成物は、O/W(水中油型)の形態である。
【0007】
皮膚等のケラチン物質に良好な水和をもたらすことができるW/O組成物が必要とされている。
【0008】
したがって、本発明の目的は、皮膚等のケラチン物質に、少なくとも、良好な水和をもたらすことができるW/O組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記の目的は、組成物、好ましくは化粧用組成物、より好ましくは皮膚等のケラチン物質のための化粧用組成物であって、
(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(b)2つ以上のpKa値を有する少なくとも1種の非ポリマー酸又はその塩、及び
(c)水
を含む、複数の水性相と、
(d)少なくとも1種の油
を含む脂肪相と
を含み、
水性相が、脂肪相中に分散されており、
(a)カチオン性ポリマーが、キトサン、ポリリジン、及びこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはキトサンから選択される、
組成物によって達成することができる。
【0010】
本発明による組成物中の(a)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%であってもよい。
【0011】
(b)2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩は、有機酸又はその塩、好ましくは親水性若しくは水溶性の有機酸又はその塩、より好ましくはフィチン酸又はその塩であってもよい。
【0012】
本発明による組成物中の(b)2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%、好ましくは0.003質量%~5質量%、より好ましくは0.005質量%~1質量%であってもよい。
【0013】
本発明による組成物中の(c)水の量は、組成物の総質量に対して、10質量%~50質量%、好ましくは15質量%~45質量%、より好ましくは20質量%~40質量%であってもよい。
【0014】
本発明による組成物中の(d)油の量は、組成物の総質量に対して、10質量%~50質量%、好ましくは15質量%~45質量%、より好ましくは20質量%~40質量%であってもよい。
【0015】
本発明による組成物中の水性相は、(e)少なくとも1種のアニオン性ポリマーを更に含んでもよい。
【0016】
(e)アニオン性ポリマーは、多糖、例えばアルギン酸、ヒアルロン酸及びセルロースポリマー、アニオン性(コ)ポリアミノ酸、例えば(コ)ポリグルタミン酸、(コ)ポリ(メタ)アクリル酸、(コ)ポリアミド酸、(コ)ポリスチレンスルホネート、(コ)ポリ(ビニルスルフェート)、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、(コ)ポリマレイン酸、ポリフマル酸、マレイン酸(コ)ポリマー、並びにこれらの塩からなる群から選択することができる。
【0017】
本発明による組成物中の(e)アニオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~15質量%、好ましくは0.005質量%~10質量%、より好ましくは0.01質量%~5質量%であってもよい。
【0018】
本発明による組成物中の脂肪相は、好ましくはC4~C26、より好ましくはC6~C24、更により好ましくはC8~C22飽和及び不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸から選択される(f)少なくとも1種の脂肪酸を更に含んでもよい。
【0019】
本発明による組成物中の(f)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%であってもよい。
【0020】
本発明による組成物中の脂肪相は、(g)少なくとも1種の有機変性クレイ、好ましくは有機変性ヘクトライト、より好ましくはジステアルジモニウムヘクトライトを更に含んでもよい。
【0021】
本発明による組成物中の水性相の量は、組成物の総質量に対して、30質量%~70質量%、好ましくは35質量%~65質量%、より好ましくは40質量%~60質量%であってもよい。
【0022】
本発明による組成物中の脂肪相の量は、組成物の総質量に対して、30質量%~70質量%、好ましくは35質量%~65質量%、より好ましくは40質量%~60質量%であってもよい。
【0023】
本発明はまた、皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、
ケラチン物質に、本発明による組成物を塗布する工程と、
該組成物を乾燥させて、ケラチン物質上に化粧皮膜を形成する工程と
を含む、方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
鋭意検討の結果、本発明者らは、皮膚等のケラチン物質に、少なくとも、良好な水和をもたらすことができるW/O組成物を提供することが可能であることを発見した。
【0025】
そのため、本発明による組成物は、
(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(b)2つ以上のpKa値を有する少なくとも1種の非ポリマー酸又はその塩、及び
(c)水
を含む複数の水性相と、
(d)少なくとも1種の油
を含む脂肪相と
を含み、
水性相は、脂肪相中に分散されており、
(a)カチオン性ポリマーは、キトサン、ポリリジン、及びこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはキトサンから選択される。
【0026】
(a)カチオン性ポリマーは、(b)2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩によってイオンで架橋されていてもよい。
【0027】
本発明による組成物は、皮膚等のケラチン物質に、良好な水和をもたらすことができる。そのため、本発明による組成物は、皮膚等のケラチン物質に、長時間持続可能な優れた保湿効果をもたらすことができる。
【0028】
本発明による組成物はまた、皮膚等のケラチン物質に、ベタつき防止及び/又は色移り防止及び/又は抗粘着性ももたらすことができる。
【0029】
そのため、本発明による組成物は、長時間持続可能なテカリ防止効果をもたらすことができる。更に、本発明による組成物は、例えば、ファンデーション等のメイクアップをした顔からマスクへの色移り防止効果をもたらすことができ、その効果は長時間持続可能である。更に、本発明による組成物は、長時間持続可能な、非粘着性の触感等の良好なテクスチャをもたらすことができる。
【0030】
組成物が(f)少なくとも1種の脂肪酸を含む場合、本発明による組成物によってもたらされる色移り防止効果が更に強化されうる。
【0031】
キトサン及びポリリジンは天然資源から得ることができるため、(a)カチオン性ポリマーは、環境に適合性の成分である。したがって、本発明による組成物は、環境に適合性の成分を含むことができる。
【0032】
本発明による組成物は、(c)水を含む、分散相又は不連続相である、複数の水性相を含む。
【0033】
本発明による組成物は、(d)油を含む、連続相である脂肪相を含む。本発明による組成物が、(f)少なくとも1種の脂肪酸及び/又は(g)少なくとも1種の有機変性クレイを含む場合、それ又はそれらは、脂肪相中に存在しうる。
【0034】
(a)カチオン性ポリマーは、(f)脂肪酸によって疎水化されてもよい。疎水化された(a)カチオン性ポリマーの一部は、脂肪相と水性相との間に存在し、水性相を安定化することができる。そのため、水性相は、脂肪相中に安定に分散されてもよい。
【0035】
本発明による組成物は、長期間にわたって安定性である。換言すれば、本発明による組成物の相分離は、長期間にわたって防止することができる。
【0036】
したがって、本発明による組成物は、長期間にわたり、保存することができる。
【0037】
本発明による組成物は、特に、大量の脂肪相を含むファンデーション又はプライマーに有用でありうるが、その理由は、これが長時間持続性のメイクアップ及び/又は保湿効果をもたらすことができるからである。
【0038】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0039】
[組成物]
(カチオン性ポリマー)
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマーを含む。
【0040】
(a)カチオン性ポリマーのタイプは限定されない。2種以上の異なるタイプのカチオン性ポリマーを組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプのカチオン性ポリマー、又は異なるタイプのカチオン性ポリマーの組合せを使用することができる。
【0041】
カチオン性ポリマーは、正電荷密度を有する。(a)カチオン性ポリマーの電荷密度は、0.01meq/g~20meq/g、好ましくは0.05~15meq/g、より好ましくは0.1~10meq/gであってもよい。
【0042】
(a)カチオン性ポリマーは、(c)水を含む水性相に含まれうる。
【0043】
本発明によれば、(a)カチオン性ポリマーは、キトサン、ポリリジン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0044】
(a)カチオン性ポリマーは、キトサンから選択されることが好ましい。
【0045】
(a)カチオン性ポリマーの分子量(Da)は、20,000未満、好ましくは15,000未満、より好ましくは10,000未満であってもよい。言い換えれば、(a)カチオン性ポリマーは、低分子量キトサンであってもよい。
【0046】
(a)カチオン性ポリマーの分子量(Da)は、1,000超、好ましくは1,500超、より好ましくは2,000超であってもよい。
【0047】
そのため、(a)カチオン性ポリマーの分子量(Da)は、1,000超且つ20,000未満、好ましくは1,500超且つ15,000未満、より好ましくは2,000超且つ10,000未満であってもよい。
【0048】
説明中に別段の定義がない限り、「分子量」は質量平均分子量を意味する。分子量は、例えば、ASTM D5296-19に従って、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定又は決定することができる。
【0049】
キトサンは、自然界ではあまり見られない。キトサンは、シロアリの女王アリ等の特定の昆虫の外骨格中及び特定の部類の菌類である接合菌綱の細胞壁中のみで報告されている。
【0050】
キトサンは、キチンの脱アセチル化によって得ることができる。キチンは、β型結合(1,4)によって一緒に連結されている幾つかのN-アセチル-D-グルコサミン単位で構成されている多糖である。
【0051】
キトサンの理想的な化学構造は、グリコシド結合(1→4)によって連結されたβ-D-グルコサミンモノマーの配列である。
【0052】
本発明による「キトサン」は、そのアセチル化度が90%未満、好ましくは80%未満、好ましくは70%未満、好ましくは60%未満、好ましくは50%未満の、構成単位N-アセチル-D-グルコサミン及びD-グルコサミンから形成された任意のコポリマーを意味する。キトサンは、β型結合(1,4)によって一緒に連結されたグルコサミン糖単位(脱アセチル化単位)及びN-アセチル-D-グルコサミン単位(アセチル化単位)からなり、ポリ(N-アセチル-D-グルコサミン)-ポリ(D-グルコサミン)タイプのポリマーである。
【0053】
より好ましくは、キトサンのアセチル化度は、40%以下、好ましくは35%以下、好ましくは25%以下、好ましくは15%以下、好ましくは10%以下である。
【0054】
アセチル化度は、合計単位数に対するアセチル化単位の百分率であり、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)によって又は強塩基による滴定法によって決定することができる。
【0055】
本発明のキトサンは、好ましくは、真菌由来のものから調製される多糖である。特に、これは、安全且つ豊富な食物又はバイオテクノロジーによる菌類起源、例えばマッシュルーム(Agaricus bisporus)又はクロコウジカビ(Aspergillus niger)から抽出及び精製される。
【0056】
本発明のキトサンは、好ましくは、子嚢菌綱(Ascomycete)タイプの菌類、特にクロコウジカビ並びに/又は担子菌綱(Basidiomycete)の菌類、特にLentinula edodes(シイタケ)及び/若しくはマッシュルームの菌糸体に由来する。好ましくは、菌類はクロコウジカビである。
【0057】
キトサンは、GMO(遺伝子組み換え生物:Genetically Modified Organisms)起源のものであってもよいが、好ましくは非GMO起源のものである。
【0058】
本発明によるキトサンは、天然であり、すなわち、修飾されていない。特に、化学修飾を全く含まない。
【0059】
キトサンを調製する一方法は、WO03/068824に記載の方法である。
【0060】
好ましくは、本発明において使用されるキトサンは、粉末の形態である。それは、Glentham Life Science社からGU3511の名称で市販されている。
【0061】
ポリリジンもまた周知である。
【0062】
ポリリジンは、細菌発酵によって生成することができるL-リジンの天然ホモポリマーでありうる。例えば、ポリリジンは、食品中の天然保存料として典型的に使用されるε-ポリ-L-リジンでありうる。ポリリジンは、極性溶媒、例えば水、プロピレングリコール及びグリセロールに可溶性の高分子電解質である。ポリリジンは、ポリD-リジン及びポリL-リジン等の様々な形態で市販されている。ポリ-L-リジンが好ましい。ポリリジンは、塩及び/又は溶液の形態にあってもよい。
【0063】
本発明による組成物中の(a)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。
【0064】
本発明による組成物中の(a)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってもよい。
【0065】
本発明による組成物中の(a)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%であってもよい。
【0066】
(2つ以上の酸解離定数を有する非ポリマー酸)
本発明による組成物は、(b)2つ以上のpKa値を有する少なくとも1種の非ポリマー酸又はその塩、すなわち、少なくとも1種の2つ以上の酸解離定数を有する非ポリマー酸又はその塩を含む。pKa値(酸解離定数)は、当業者に周知であり、一定の温度、例えば25℃で決定されるべきである。
【0067】
(b)2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩は、(c)水を含む水性相に含まれうる。2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸は、(a)カチオン性ポリマーのための架橋剤として機能することができる。
【0068】
用語「非ポリマー」は、本明細書では、酸が、2種以上のモノマーを重合することによって得られるものではないことを意味する。したがって、非ポリマー酸は、ポリアクリル酸等の2種以上のモノマーを重合することによって得られる酸には相当しない。
【0069】
(b)2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩の分子量は、1000以下、好ましくは800以下、より好ましくは700以下であることが好ましい。
【0070】
(b)2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩のタイプは限定されない。2種以上の異なるタイプの(b)2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの(b)2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸若しくはその塩、又は異なるタイプの(b)2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸若しくはその塩の組合せを使用してもよい。
【0071】
用語「塩」は、本明細書では、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸に、好適な塩基を添加することによって形成される塩を意味し、これは、当業者に公知の方法に従って、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸と塩基との反応から得ることができる。塩として、金属塩、例えばNa及びK等のアルカリ金属との塩、並びにMg及びCa等のアルカリ土類金属との塩、並びにアンモニウム塩を挙げることができる。
【0072】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩は、有機酸又はその塩、好ましくは親水性若しくは水溶性の有機酸又はその塩であってもよい。
【0073】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸は、カルボン酸基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、フェノール性ヒドロキシル基、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも2つの酸基を有しうる。
【0074】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸は、リン酸等の非ポリマー多価酸であってもよい。
【0075】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸は、ジカルボン酸、ジスルホン酸及び二リン酸、並びにこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0076】
(b)2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸、アコニット酸、オキサロ酢酸、酒石酸、及びそれらの塩;アスパラギン酸、グルタミン酸、及びそれらの塩;テレフタリリデンジカンファースルホン酸又はその塩(Mexoryl SX)、ベンゾフェノン-9;フィチン酸及びその塩;赤色2号(アマランス)、赤色102号(ニューコクシン)、黄色5号(タルトラジン)、黄色6号(サンセットイエローFCF)、緑色3号(ファストグリーンFCF)、青色1号(ブリリアントブルーFCF)、青色2号(インジゴカルミン)、赤色201号(リソールルビンB)、赤色202号(リソールルビンBCA)、赤色204号(レーキレッドCBA)、赤色206号(リソールレッドCA)、赤色207号(リソールレッドBA)、赤色208号(リソールレッドSR)、赤色219号(ブリリアントレーキレッドR)、赤色220号(ディープマルーン)、赤色227号(ファストアシッドマジェンタ)、黄色203号(キノリンイエローWS)、緑色201号(アリザニンシアニングリーンF)、緑色204号(ピラニンコンク)、緑色205号(ライトグリーンSF黄味)、青色203号(パテントブルーCA)、青色205号(アルファズリンFG)、赤色401号(ビオラミンR)、赤色405号(パーマネントレッドF5R)、赤色502号(ポンソー3R)、赤色503号(ポンソーR)、赤色504号(ポンソーSX)、緑色401号(ナフトールグリーンB)、緑色402号(ギネアグリーンB)及び黒色401号(ナフトールブルーブラック);葉酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、及びそれらの塩;シスチン及びその塩;EDTA及びその塩;グリチルリチン及びその塩;並びにこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0077】
(b)2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩が、テレフタリリデンジカンファースルホン酸及びその塩(Mexoryl SX)、黄色6号(サンセットイエローFCF)、アスコルビン酸、フィチン酸及びそれらの塩、並びにこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい場合がある。
【0078】
(b)2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩は、有機酸又はその塩、好ましくは親水性若しくは水溶性の有機酸又はその塩、より好ましくはフィチン酸又はその塩であってもよい。
【0079】
本発明による組成物中の(b)2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.003質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上であってもよい。
【0080】
本発明による組成物中の(b)2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下であってもよい。
【0081】
本発明による組成物中の(b)2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%、好ましくは0.003質量%~5質量%、より好ましくは0.005質量%~1質量%であってもよい。
【0082】
(水)
本発明による組成物は、(c)水を含む。
【0083】
(c)水は、本発明による組成物中の、分散相又は不連続相でありうる水性相を構成することができる。
【0084】
(c)水の量は、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上であってもよい。
【0085】
(c)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以下、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下であってもよい。
【0086】
(c)水の量は、組成物の総質量に対して、10質量%~50質量%、好ましくは15質量%~45質量%、より好ましくは20質量%~40質量%であってもよい。
【0087】
(油)
本発明による組成物は、(d)少なくとも1種の油を含む。2種以上の(d)油が使用される場合、それらは、同一であっても異なっていてもよい。
【0088】
(d)油は、本発明による組成物中の、連続相でありうる脂肪相を構成することができる。
【0089】
本明細書では、「油」は、大気圧(760mmHg)下、室温(25℃)にて、液体又はペースト(非固体)の形態にある脂肪化合物又は脂肪物質を意味する。油として、化粧品に一般に使用されるものを、単独で又はそれらの組合せで使用することができる。これらの油は、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0090】
(d)油は、炭化水素油、シリコーン油等の非極性油;植物油若しくは動物油及びエステル油若しくはエーテル油等の極性油;又はそれらの混合物であってもよい。
【0091】
(d)油は、植物又は動物起源の油、合成油、シリコーン油、炭化水素油及び脂肪族アルコールからなる群から選択されてもよい。
【0092】
植物油の例として、例えば、アプリコット油、亜麻仁油、カメリア油、マカダミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、ベニバナ油、ホホバ油、ヒマワリ油、アーモンド油、ナタネ油、ゴマ油、ダイズ油、ピーナツ油、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0093】
動物油の例として、例えば、スクアレン及びスクアランを挙げることができる。
【0094】
合成油の例として、アルカン油、例えば、イソドデカン及びイソヘキサデカン、エステル油、エーテル油、並びに人工トリグリセリドを挙げることができる。
【0095】
エステル油は、好ましくは、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のC1~C26脂肪族一酸又はポリ酸と、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のC1~C26脂肪族一価アルコール又は多価アルコールとの液状エステルであり、エステルの炭素原子の総数は10以上である。
【0096】
好ましくは、一価アルコールのエステルの場合、本発明のエステルが誘導されるアルコール及び酸のうちの少なくとも1種は、分枝状である。
【0097】
一酸と一価アルコールとのモノエステルの中で、パルミチン酸エチル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ミリスチン酸アルキル、例えばミリスチン酸イソプロピル又はミリスチン酸エチル、ステアリン酸イソセチル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、ネオペンタン酸イソデシル及びネオペンタン酸イソステアリルを挙げることができる。
【0098】
C4~C22ジカルボン酸又はトリカルボン酸とC1~C22アルコールとのエステル、並びにモノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸と、非糖C4~C26ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、テトラヒドロキシ又はペンタヒドロキシアルコールとのエステルもまた、使用することができる。
【0099】
とりわけ挙げることができるのは、セバシン酸ジエチル、ラウロイルサルコシンイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジ-n-プロピル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソステアリル、マレイン酸ビス(2-エチルヘキシル)、クエン酸トリイソプロピル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリイソステアリル、トリ乳酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、クエン酸トリオクチルドデシル、クエン酸トリオレイル、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、ジイソノナン酸ジエチレングリコールである。
【0100】
エステル油として、C6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸の、糖エステル及びジエステルを使用することができる。用語「糖」が、アルデヒド又はケトン官能基ありの又はなしの、少なくとも4個の炭素原子を含む、幾つかのアルコール官能基を含有する、酸素を保持する炭化水素系化合物を意味することが想起される。これらの糖は、単糖類、オリゴ糖類、又は多糖類であってもよい。
【0101】
挙げることができる好適な糖の例には、スクロース(又はショ糖)、グルコース、ガラクトース、リボース、フコース、マルトース、フルクトース、マンノース、アラビノース、キシロース及びラクトース、並びにそれらの誘導体、特に、アルキル誘導体、例えばメチル誘導体、例としてはメチルグルコースがある。
【0102】
脂肪酸の糖エステルは、とりわけ、前述の糖と、直鎖状若しくは分枝状の飽和若しくは不飽和C6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸とのエステル又はエステルの混合物を含む群から選択されうる。これらの化合物が不飽和である場合、1~3つの共役又は非共役の炭素間二重結合を有しうる。
【0103】
この変形形態によるエステルはまた、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル及びポリエステル、並びにこれらの混合物から選択することもできる。
【0104】
これらのエステルは、例えば、オレイン酸エステル、ラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、ミリスチン酸エステル、ベヘン酸エステル、ヤシ油脂肪酸エステル、ステアリン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、カプリン酸エステル及びアラキドン酸エステル、又はこれらの混合物、例えば、特に、オレオパルミチン酸、オレオステアリン酸及びパルミトステアリン酸の混合エステル、並びにテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルでもよい。
【0105】
より詳細には、モノエステル及びジエステル、特に、スクロース、グルコース又はメチルグルコースのモノオレイン酸エステル又はジオレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、ベヘン酸エステル、オレオパルミチン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル及びオレオステアリン酸エステルが使用される。
【0106】
挙げることができる例は、ジオレイン酸メチルグルコースである、Amerchol社により名称Glucate(登録商標)DOで販売されている製品である。
【0107】
好ましいエステル油の例として、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジオクチル、ヘキサン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸エチル、オクタン酸セチル、オクタン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソデシル、プロピオン酸ミリスチル、2-エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル、オクタン酸2-エチルヘキシル、カプリル酸/カプリン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ラウロイルサルコシン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸エチルヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、ラウリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸イソデシル、トリ(2-エチルヘキサン酸)グリセリル、テトラ(2-エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、コハク酸2-エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0108】
人工トリグリセリドの例として、例えば、カプリルカプリリルグリセリド、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリル、及びトリ(カプリン酸/カプリル酸/リノレン酸)グリセリルを挙げることができる。
【0109】
シリコーン油の例として、例えば、直鎖状オルガノポリシロキサン、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等;環状オルガノポリシロキサン、例えばシクロヘキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等;及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0110】
好ましくは、シリコーン油は、液体ポリジアルキルシロキサン、とりわけ液体ポリジメチルシロキサン(PDMS)、及び少なくとも1つのアリール基を含む液体ポリオルガノシロキサンから選択される。
【0111】
これらのシリコーン油はまた、有機変性されていてもよい。本発明に従って使用されうる有機変性シリコーンは、上に定義したシリコーン油であり、構造中に、炭化水素系の基を介して結合されている1つ又は複数の有機官能基を含む。
【0112】
オルガノポリシロキサンは、Walter Noll著、Chemistry and Technology of Silicones(1968年)、Academic Pressにおいて、より詳細に定義されている。これらは、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0113】
揮発性である場合、シリコーンは、より詳細には、60℃から260℃の間の沸点を有するものから選択され、更により詳細には、以下から選択される:
(i)3~7個、好ましくは4~5個のケイ素原子を含む環状ポリジアルキルシロキサン。これらは、例えば、特にUnion Carbide社により名称Volatile Silicone(登録商標)7207で販売されている、又はRhodia社によりSilbione(登録商標)70045 V2で販売されているオクタメチルシクロテトラシロキサン、Union Carbide社により名称Volatile Silicone(登録商標)7158で販売されている、Rhodia社によりSilbione(登録商標)70045 V5で販売されているデカメチルシクロペンタシロキサン、及びMomentive Performance Materials社により名称Silsoft 1217で販売されているドデカメチルシクロペンタシロキサン、並びにこれらの混合物である。次式
【0114】
【化1】
【0115】
のジメチルシロキサン/メチルアルキルシロキサンのようなタイプのシクロコポリマー、例えば、Union Carbide社により販売されているSilicone Volatile(登録商標)FZ 3109を挙げることもできる。
【0116】
環状ポリジアルキルシロキサンと有機ケイ素化合物との混合物、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサンとテトラトリメチルシリルペンタエリスリトールとの混合物(50/50)、及びオクタメチルシクロテトラシロキサンとオキシ-1,1'-ビス(2,2,2',2',3,3'-ヘキサトリメチルシリルオキシ)ネオペンタンとの混合物もまた挙げることができる。
(ii)2~9個のケイ素原子を含有し、25℃にて5×10-6m2/s以下の粘度を有する、直鎖状の揮発性ポリジアルキルシロキサン。一例は、特にToray Silicone社により名称SH 200で販売されているデカメチルテトラシロキサンである。このカテゴリに属するシリコーンは、Cosmetics and Toiletries、第91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers、Volatile Silicone Fluids for Cosmeticsに公表されている論文にも記載されている。シリコーンの粘度は、ASTM規格445附属書Cに従って、25℃にて測定される。
【0117】
不揮発性ポリジアルキルシロキサンも使用されうる。これらの不揮発性シリコーンは、より詳細にはポリジアルキルシロキサンから選択され、その中でも、トリメチルシリル末端基を含有するポリジメチルシロキサンを主に挙げることができる。
【0118】
これらのポリジアルキルシロキサンの中でも、以下の市販製品を非限定的な手法で挙げることができる:
- Rhodia社により販売されている47及び70 047シリーズのSilbione(登録商標)油又はMirasil(登録商標)油、例としては70 047 V 500 000油、
- Rhodia社により販売されているMirasil(登録商標)シリーズの油、
- Dow Corning社製の200シリーズの油、例えば粘度が60,000mm2/sであるDC200、並びに
- General Electric社製のViscasil(登録商標)油、及びGeneral Electric社製のSFシリーズの特定の油(SF 96、SF 18)。
【0119】
ジメチコノール(CTFA)の名称で知られる、ジメチルシラノール末端基を含有するポリジメチルシロキサン、例えばRhodia社製の48シリーズの油も挙げることができる。
【0120】
アリール基を含有するシリコーンの中でも、ポリジアリールシロキサン、とりわけポリジフェニルシロキサン及びポリアルキルアリールシロキサン、例えばフェニルシリコーン油を挙げることができる。
【0121】
フェニルシリコーン油は、次式:
【0122】
【化2】
【0123】
(式中、
R1~R10は、互いに独立して、飽和又は不飽和の、直鎖状、環状又は分枝状のC1~C30炭化水素系基、好ましくはC1~C12炭化水素系基、より好ましくはC1~C6炭化水素系基、具体的にはメチル、エチル、プロピル又はブチルの各基であり、
m、n、p及びqは、互いに独立して、端点を含む0~900、好ましくは端点を含む0~500、より好ましくは端点を含む0~100の整数であり、
但し、和n+m+qは0ではない)
のフェニルシリコーンから選択することができる。
【0124】
挙げることができる例には、以下の名称で販売されている製品が含まれる:
- Rhodia社製の70 641シリーズのSilbione(登録商標)油、
- Rhodia社製のRhodorsil(登録商標)70 633及び763シリーズの油、
- Dow Corning社製の油Dow Corning 556 Cosmetic Grade Fluid、
- Bayer社製のPKシリーズのシリコーン、例えば製品PK20、
- General Electric社製のSFシリーズの特定の油、例えばSF 1023、SF 1154、SF 1250及びSF 1265。
【0125】
フェニルシリコーン油として、フェニルトリメチコン(上式中、R1~R10はメチルであり、p、q及びn=0であり、m=1である)が好ましい。
【0126】
有機変性液状シリコーンは、特にポリエチレンオキシ基及び/又はポリプロピレンオキシ基を含有しうる。したがって、信越化学工業株式会社により提案されているシリコーンKF-6017、並びにUnion Carbide社製の油であるSilwet(登録商標)L722及びL77を挙げることができる。
【0127】
炭化水素油は、以下から選択されうる:
- 直鎖状又は分枝状、任意選択で環状のC6~C16低級アルカン。挙げることができる例には、ヘキサン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、及びイソパラフィン、例としてはイソヘキサデカン、イソドデカン、及びイソデカンが含まれる;
- 16個超の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えば、流動パラフィン、流動石油ゼリー、ポリデセン及び水添ポリイソブテン、例えばParleam(登録商標)、並びにスクアラン。
【0128】
炭化水素油の好ましい例として、例えば、直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えば、イソヘキサデカン、イソドデカン、スクアラン、鉱油(例えば液状パラフィン)、パラフィン、ワセリン又はペトロラタム、ナフタレン等;水添ポリイソブテン、イソエイコサン、及びデセン/ブテンコポリマー;並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0129】
脂肪族アルコールにおける「脂肪族」という用語は、比較的多数の炭素原子を含むことを意味する。そのため、4個以上、好ましくは6個以上、より好ましくは12個以上の炭素原子を有するアルコールが、脂肪族アルコールの範囲内に包含される。脂肪族アルコールは、飽和であっても、不飽和であってもよい。脂肪族アルコールは、直鎖状であっても、分枝状であってもよい。
【0130】
脂肪族アルコールは、構造R-OH(式中、Rは、4~40個の炭素原子、好ましくは6~30個の炭素原子、より好ましくは12~20個の炭素原子を含有する、飽和及び不飽和の、直鎖状及び分枝状基から選択される)を有しうる。少なくとも1つの実施形態では、Rは、C12~C20アルキル基及びC12~C20アルケニル基から選択されうる。Rは、少なくとも1つのヒドロキシル基によって置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
【0131】
脂肪族アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、パルミトレイルアルコール、アラキドニルアルコール、エルシルアルコール及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0132】
脂肪族アルコールは飽和脂肪族アルコールであることが好ましい。
【0133】
したがって、脂肪族アルコールは、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和C6~C30アルコール、好ましくは直鎖状又は分枝状の、飽和C6~C30アルコール、より好ましくは直鎖状又は分枝状の、飽和C12~C20アルコールから選択することができる。
【0134】
用語「飽和脂肪族アルコール」は、本明細書では、長鎖の脂肪族飽和炭素鎖を有するアルコールを意味する。飽和脂肪族アルコールが、任意の直鎖状又は分枝状の飽和C6~C30脂肪族アルコールから選択されることが好ましい。直鎖状又は分枝状の飽和C6~C30脂肪族アルコールの中で、直鎖状又は分枝状の飽和C12~C20脂肪族アルコールが、好ましく使用されうる。任意の直鎖状又は分枝状の飽和C16~C20脂肪族アルコールが、より好ましく使用されうる。分枝状C16~C20脂肪族アルコールが、更により好ましく使用されうる。
【0135】
飽和脂肪族アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール及びこれらの混合物を挙げることができる。一実施形態では、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、又はこれらの混合物(例えばセテアリルアルコール)、及びベヘニルアルコールを、飽和脂肪族アルコールとして使用することができる。
【0136】
少なくとも1つの実施形態によれば、本発明による組成物中で使用される脂肪族アルコールは、好ましくは、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、及びこれらの混合物から選択される。
【0137】
(d)油が、合成エステル油、炭化水素油、シリコーン油、及びこれらの混合物から選択されることが好ましい場合がある。
【0138】
本発明による組成物中の(d)油の量は、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上であってもよい。
【0139】
本発明による組成物中の(d)油の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以下、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下であってもよい。
【0140】
本発明による組成物中の(d)油の量は、組成物の総質量に対して、10質量%~50質量%、好ましくは15質量%~45質量%、より好ましくは20質量%~40質量%であってもよい。
【0141】
(アニオン性ポリマー)
本発明による組成物は、(e)少なくとも1種のアニオン性ポリマーを含んでもよい。単一のタイプのアニオン性ポリマーを使用してもよいが、2種以上の異なるタイプのアニオン性ポリマーを組み合わせて使用することもできる。
【0142】
アニオン性ポリマーは、負電荷密度を有する。(e)アニオン性ポリマーが合成アニオン性ポリマーである場合、(e)アニオン性ポリマーの電荷密度は、0.1meq/g~20meq/g、好ましくは1meq/g~15meq/g、より好ましくは4meq/g~10meq/gであってもよく、(e)アニオン性ポリマーが天然アニオン性ポリマーである場合、(e)アニオン性ポリマーの平均置換度は、0.1~3.0、好ましくは0.2~2.7、より好ましくは0.3~2.5であってもよい。
【0143】
(e)アニオン性ポリマーの分子量は、1,000以上、好ましくは2,000以上、更により好ましくは5,000以上、更により好ましくは10,000以上、更により好ましくは50,000以上、更により好ましくは100,000以上、更により好ましくは1,000,000以上であることが好ましい場合がある。
【0144】
説明中に別段の定義がない限り、「分子量」は質量平均分子量を意味しうる。
【0145】
(e)アニオン性ポリマーは、硫酸基、スルフェート基、スルホン酸基、スルホネート基、リン酸基、ホスフェート基、ホスホン酸基、ホスホネート基、カルボン酸基及びカルボキシレート基からなる群から選択される、少なくとも1つの負に帯電可能な部分及び/又は負に帯電した部分を有してもよい。
【0146】
(e)アニオン性ポリマーは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。「コポリマー」という用語は、2種類のモノマーから得たコポリマー、及び2種類超のモノマーから得たもの、例えば3種類のモノマーから得たターポリマーの両方を意味すると理解される。
【0147】
(e)アニオン性ポリマーは、天然の及び合成のアニオン性ポリマー、好ましくは天然のアニオン性ポリマーから選択することができる。
【0148】
(e)アニオン性ポリマーは、少なくとも1つの疎水性鎖を含んでもよい。
【0149】
少なくとも1つの疎水性鎖を含んでもよい(e)アニオン性ポリマーは、α,β-エチレン性不飽和を含むカルボン酸(モノマーa')及び2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(モノマーa")から選択されるモノマー(a)と、(a)以外のエチレン性不飽和を含む非表面活性モノマー(b)、並びに/或いはα,β-モノエチレン性不飽和を含むアクリルモノマー又はモノエチレン性不飽和を含むイソシアネートモノマーを、一価の非イオン性両親媒性成分又は第一級若しくは第二級脂肪アミンと反応させることにより得られるエチレン性不飽和を含むモノマー(c)との共重合によって得ることができる。
【0150】
そのため、少なくとも1つの疎水性鎖を有する(e)アニオン性ポリマーは、以下の2つの合成経路:
- モノマー(a')と(c)、若しくは(a')と(b)と(c)、若しくは(a'')と(c)、若しくは(a'')と(b)と(c)との共重合、又は
- モノマー(a')、若しくはモノマー(a')と(b)、若しくは(a'')と(b)とから形成されたコポリマーの、一価の非イオン性両親媒性化合物又は第一級若しくは第二級脂肪アミンによる修飾(具体的にはエステル化若しくはアミド化)
によって得ることができる。
【0151】
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸コポリマーとしては、特に、論文「Micelle formation of random copolymers of sodium 2-(acrylamido)-2-methylpropanesulfonate and nonionic surfactant macromonomer in water as studied by fluorescence and dynamic light scattering - Macromolecules、2000年、第33巻、第10号-3694~3704頁」並びに出願EP-A-0750899及びEP-A-1069172に開示されているものを挙げることができる。
【0152】
モノマー(a')を構成する、α,β-モノエチレン性不飽和を含むカルボン酸は、多数の酸から、特に、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸及びマレイン酸から選択することができる。これは、好ましくは、アクリル酸又はメタクリル酸である。
【0153】
コポリマーは、界面活性剤特性を有さないモノエチレン性不飽和を含むモノマー(b)を含んでもよい。好ましいモノマーは、単独重合する場合に水不溶性ポリマーをもたらすものである。これらは、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸アルキル(C1~C4)、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル又は対応するメタクリル酸から選択することができる。より特定して好ましいモノマーは、アクリル酸メチル及びアクリル酸エチルである。使用されうる他のモノマーは、例えば、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル及び塩化ビニリデンである。非反応性モノマーが好ましく、これらのモノマーは、単一のエチレン性基が、重合条件下で反応性である唯一の基であるものである。しかしながら、熱の作用下で反応する基を含むモノマー、例えばアクリル酸ヒドロキシエチルを、任意選択で使用することができる。
【0154】
モノマー(c)は、α,β-モノエチレン性不飽和を含むアクリルモノマー、例えば(a)、又はモノエチレン性不飽和を含むイソシアネートモノマーと、一価の非イオン性両親媒性化合物又は第一級若しくは第二級脂肪アミンとの反応によって得られる。
【0155】
非イオン性モノマー(c)を生成するのに使用される一価の非イオン性両親媒性化合物又は第一級若しくは第二級脂肪アミンは、周知である。一価の非イオン性両親媒性化合物は、一般に、分子の親水性部分を形成するアルキレンオキシドを含むアルコキシル化疎水性化合物である。疎水性化合物は、一般に、脂肪族アルコール又はアルキルフェノールで構成され、その化合物中、少なくとも6個の炭素原子を含む炭素性鎖が、両親媒性化合物の疎水性部分を構成する。
【0156】
好ましい一価の非イオン性両親媒性化合物は、以下の式(V):
R-(OCH2CHR')m-(OCH2CH2)n-OH (V)
(式中、Rは、6~30個の炭素原子を含むアルキル又はアルキレン基、及び8~30個の炭素原子を含むアルキル基を有するアルキルアリール基から選択され、R'は、1~4個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、nは、およそ1~150の範囲の平均数であり、mは、およそ0~50の範囲の平均数であり、但し、nは、少なくともmと同じ大きさである)
を有する化合物である。
【0157】
好ましくは、式(V)の化合物中、R基は、12~26個の炭素原子を含むアルキル基及びアルキル基がC8~C13であるアルキルフェニル基から選択され、R'基は、メチル基であり、m=0及びn=1~25である。
【0158】
好ましい第一級及び第二級脂肪アミンは、6~30個の炭素原子を含む1つ又は2つのアルキル鎖から構成される。
【0159】
非イオン性ウレタンモノマー(c)を形成するのに使用されるモノマーは、きわめて多様な化合物から選択することができる。共重合性不飽和、例えばアクリル性、メタクリル性又はアリル性不飽和を含む、任意の化合物を使用してもよい。モノマー(c)は、特に、モノエチレン性不飽和を含むイソシアネート、例えば特にα,α-ジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアネートから得ることができる。
【0160】
モノマー(c)は、特に、オキシエチレン化(1~50EO)C6~C30脂肪族アルコールのアクリレート、メタクリレート又はイタコネート、例えばメタクリル酸ステアレス-20、オキシエチレン化(25EO)ベヘニルメタクリレート、オキシエチレン化(20EO)モノセチルイタコネート、オキシエチレン化(20EO)モノステアリルイタコネート又はポリオキシエチレン化(25EO)C12~C24アルコールで修飾されたアクリレートから、及びオキシエチレン化(1~50EO)C6~C30脂肪族アルコールのジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアネート、例えば特にオキシエチレン化ベヘニルアルコールのジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアネートから選択することができる。
【0161】
本発明の特定の実施形態によれば、(e)アニオン性ポリマーは、(a)α,β-エチレン性不飽和を含むカルボン酸、(b)(a)以外のエチレン性不飽和を含む非表面活性モノマー、及び(c)一価の非イオン性両親媒性化合物と、モノエチレン性不飽和を含むイソシアネートとの反応生成物である非イオン性ウレタンモノマーから得られるアクリルターポリマーから選択される。
【0162】
少なくとも1つの疎水性鎖を含む(e)アニオン性ポリマーとしては、特に、アクリル酸/アクリル酸エチル/アクリル酸アルキルターポリマー、例えばRohm & Haas社によって名称Acusol 823で販売されている30%水性分散体としての製品;アクリレート/メタクリル酸ステアレス-20コポリマー、例えばRohm & Haas社によって名称Aculyn 22で販売されている製品;(メタ)アクリル酸/アクリル酸エチル/オキシエチレン化(25EO)ベヘニルメタクリレートターポリマー、例えばRohm & Haas社によって名称Aculyn 28で販売されている水性エマルションとしての製品;アクリル酸/オキシエチレン化(20EO)モノセチルイタコネートコポリマー、例えばNational Starch社によって名称Structure 3001で販売されている30%水性分散体としての製品;アクリル酸/オキシエチレン化(20EO)モノステアリルイタコネートコポリマー、例えばNational Starch社によって名称Structure 2001で販売されている30%水性分散体としての製品;アクリレート/ポリオキシエチレン化(25EO)C12~C24アルコールで修飾されたアクリレートのコポリマー、例えば3V SA社によって名称Synthalen W2000で販売されている30~32%コポリマーラテックス;又はメタクリル酸/アクリル酸メチル/エトキシル化ベヘニルアルコールのジメチル-メタ-イソプロペニルベンジルイソシアネートのターポリマー、例えば文献EP-A-0173109に開示された40個のエチレンオキシド基を含む24%水性分散体としての製品を挙げることができる。
【0163】
(e)アニオン性ポリマーはまた、ポリエステル-5、例えば、以下の化学式:
【0164】
【化3】
【0165】
(式中、
A:ジカルボン酸部分
G:グリコール部分
SO3 -Na+:ナトリウムスルホ基
OH:ヒドロキシル基)
を有する、EASTMAN CHEMICAL社により名称Eastman AQ(商標)55S Polymerで販売されている製品であってもよい。
【0166】
(e)アニオン性ポリマーが、多糖、例えばアルギン酸、ヒアルロン酸、キサンタンガム、及びセルロースポリマー(例えばカルボキシメチルセルロース)、アニオン性(コ)ポリアミノ酸、例えば(コ)ポリグルタミン酸、(コ)ポリ(メタ)アクリル酸、(コ)ポリアミド酸、(コ)ポリスチレンスルホネート、(コ)ポリ(ビニルスルフェート)、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、(コ)ポリマレイン酸、(コ)ポリフマル酸、マレイン酸(コ)ポリマー、並びにそれらの塩からなる群から選択されることが好ましい場合がある。
【0167】
マレイン酸コポリマーは、1つ又は複数のマレイン酸コモノマー、並びに酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、2~20個の炭素原子を含むオレフィン、及びスチレンから選択される1つ又は複数のコモノマーを含んでもよい。
【0168】
したがって、「マレイン酸コポリマー」は、1つ又は複数のマレイン酸コモノマーと、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、2~20個の炭素原子を含むオレフィン、例えばオクタデセン、エチレン、イソブチレン、ジイソブチレン又はイソオクチレン、及びスチレンから選択される1つ又は複数のコモノマーとの共重合によって得られる任意のポリマーを意味すると理解され、マレイン酸コモノマーは、任意選択で部分的に又は完全に加水分解されている。好ましくは、親水性ポリマー、すなわち水溶解度が2g/l以上であるポリマーが使用される。
【0169】
本発明の有利な態様では、マレイン酸コポリマーは、マレイン酸単位のモル分率が、0.1から1の間、より好ましくは0.4から0.9の間であってもよい。
【0170】
マレイン酸コポリマーの質量平均モル質量は、1,000から500,000の間、好ましくは1,000から50,000の間であってもよい。
【0171】
マレイン酸コポリマーが、スチレン/マレイン酸コポリマー、より好ましくはスチレン/マレイン酸コポリマーナトリウムであることが好ましい。
【0172】
好ましくは、50/50の比のスチレンとマレイン酸とのコポリマーが使用される。
【0173】
例えば、Cray Valley社により参照名SMA1000H(登録商標)で販売されている、水中30%でアンモニウム塩の形態のスチレン/マレイン酸(50/50)コポリマー、又はCray Valley社により参照名SMA1000HNa(登録商標)で販売されている、水中40%でナトリウム塩の形態のスチレン/マレイン酸(50/50)コポリマーが使用されうる。
【0174】
スチレン/マレイン酸コポリマー、例えばスチレン/マレイン酸コポリマーナトリウムの使用は、本発明による組成物によって調製される皮膜の濡れ性を改善することができる。
【0175】
好ましい実施形態において、(e)アニオン性ポリマーは、ヒアルロン酸、その塩(例えば、ヒアルロン酸ナトリウム)、及びその誘導体から選択することができる。
【0176】
ヒアルロン酸は、以下の化学式:
【0177】
【化4】
【0178】
によって表すことができる。
【0179】
本発明の文脈では、用語「ヒアルロン酸」は、具体的には、次式:
【0180】
【化5】
【0181】
のヒアルロン酸の基本単位を包含する。
【0182】
これは、二糖ダイマー、すなわちD-グルクロン酸及びN-アセチルグルコサミンを含むヒアルロン酸の最小の部分である。
【0183】
用語「ヒアルロン酸及びその誘導体」はまた、本発明の文脈では、380から13,000,000ダルトンの間の範囲でありうる分子量(MW)を有する、交互β(1,4)及びβ(1,3)グルコシド結合を介して鎖内で一緒に結合される上記のポリマー単位を含む直鎖状ポリマーも含む。この分子量は、主に、ヒアルロン酸が得られる供給源に、及び/又は調製方法に依存する。
【0184】
用語「ヒアルロン酸及びその誘導体」はまた、本発明の文脈では、ヒアルロン酸塩も含む。塩として、ナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0185】
自然状態では、ヒアルロン酸は、真皮及び上皮組織等の脊椎動物の臓器の結合組織の基体中の細胞周囲ゲル中に存在し、具体的には、表皮中、関節の滑液中、硝子体液中、ヒト臍帯中、及び鶏冠突起中に存在する。
【0186】
したがって、用語「ヒアルロン酸及びその誘導体」は、特に上で想起される分子量範囲内の分子量を有するヒアルロン酸の全画分又はサブ単位を含む。
【0187】
本発明の文脈では、炎症活性を有していないヒアルロン酸画分が好ましくは使用される。
【0188】
様々なヒアルロン酸画分の例示として、ヒアルロン酸の列挙される生物活性をその分子量に応じて見直している、文献「Hyaluronan fragments:an information-rich system」, R. Sternら、European Journal of Cell Biology 58 (2006) 699~715頁を参照することができる。
【0189】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明に包含される使用に好適なヒアルロン酸画分は、50,000Daから5,000,000Daの間、特に100,000Daから5,000,000Daの間、とりわけ400,000Daから5,000,000Daの間の分子量を有する。この場合、使用される用語は、高分子量のヒアルロン酸である。
【0190】
或いは、本発明に包含される使用に好適でもありうるヒアルロン酸画分は、50,000Daから400,000Daの間の分子量を有する。この場合、使用される用語は、中間分子量のヒアルロン酸である。
【0191】
更に或いは、本発明に包含される使用に好適でありうるヒアルロン酸画分は、50,000Da未満の分子量を有する。この場合、使用される用語は、低分子量のヒアルロン酸である。
【0192】
最後に、用語「ヒアルロン酸及びその誘導体」はまた、ヒアルロン酸エステル、具体的には、1~20個の炭素原子を含有する、特にヒアルロン酸のD-グルクロン酸のレベルにおける置換度が0.5~50%の範囲である、酸官能基のカルボン酸基の全て又は一部がオキシエチレン化アルキル又はアルコールでエステル化されているものを含む。
【0193】
特に、ヒアルロン酸のメチル、エチル、n-プロピル、n-ペンチル、ベンジル及びドデシルエステルを挙げることができる。このようなエステルは、詳細には、D. Campocciaら、「Semisynthetic resorbable materials from hyaluronan esterification」、Biomaterials 19 (1998) 2101~2127頁に記載されている。
【0194】
ヒアルロン酸誘導体は、例えば、アセチル化ヒアルロン酸又はその塩であってもよい。
【0195】
上に示した分子量はまた、ヒアルロン酸エステルにも有効である。
【0196】
ヒアルロン酸は、具体的には、Hyactive社により商品名CPN(MW:10~150kDa)で、Soliance社により商品名Cristalhyal(MW:1.1×106)で、Bioland社により名称Nutra HA(MW:820,000Da)で、Bioland社により名称Nutra AF(MW:69,000Da)で、Bioland社により名称Oligo HA(MW:6100Da)で、或いはVam Farmacos Metica社により名称D Factor(MW:380Da)で供給されているヒアルロン酸でありうる。
【0197】
本発明による組成物中の(e)アニオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であってもよい。
【0198】
本発明による組成物中の(e)アニオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってもよい。
【0199】
本発明による組成物中の(e)アニオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~15質量%、好ましくは0.005質量%~10質量%、より好ましくは0.01質量%~5質量%であってもよい。
【0200】
(脂肪酸)
本発明による組成物は、(f)少なくとも1種の脂肪酸を含んでもよい。2種以上の脂肪酸が使用される場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0201】
用語「脂肪酸」は、本明細書では、脂肪族炭素の長鎖を有するカルボン酸を意味する。
【0202】
(f)脂肪酸は、少なくとも4個の炭素原子、好ましくは少なくとも6個の炭素原子、より好ましくは少なくとも8個の炭素原子を有する。(f)脂肪酸は、最大26個の炭素原子、好ましくは最大24個の炭素原子、より好ましくは最大22個の炭素原子を含んでもよい。(f)脂肪酸は、C4~C26脂肪酸、より好ましくはC6~C24脂肪酸、更により好ましくはC8~C22脂肪酸から選択されることが好ましい。
【0203】
(f)脂肪酸は、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状の脂肪酸から選択されうる。したがって、(f)脂肪酸は、C4~C26、好ましくはC6~C24、より好ましくはC8~C22飽和及び不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸から選択されうる。
【0204】
不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸として、一価不飽和の直鎖状若しくは分枝状脂肪酸又は多価不飽和の直鎖状若しくは分枝状脂肪酸を使用してもよい。不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸の不飽和部分として、炭素間二重結合又は炭素間三重結合を挙げることができる。
【0205】
飽和脂肪酸としては、例えば、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデカン酸(C15)、パルミチン酸(C16)、ヘプタデカン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、イソステアリン酸(C18)、ノナデカン酸(C19)、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、及びリグノセリン酸(C24)を挙げることができる。
【0206】
不飽和脂肪酸としては、例えば、ミリストレイン酸(C14)、パルミトレイン酸(C16)、オレイン酸(C18)、リノール酸(C18)、リノレン酸(C18)、エライジン酸(C18)、アラキドン酸(C20)、エイコセン酸(C20)、エルカ酸(C22)、及びネルボン酸(C24)を挙げることができる。
【0207】
(f)脂肪酸は、C8~C18飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸から、より好ましくは、カプリル酸、カプリン酸、オレイン酸、リノール酸、ステアリン酸、イソステアリン酸及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0208】
(f)脂肪酸は、その遊離酸の形態又はその塩の形態であってもよい。脂肪酸の塩として、無機塩、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)及びアルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、並びに有機塩、例えばアンモニウム塩(第四級アンモニウム塩等)及びアミン塩(トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等)を挙げることができる。単一のタイプの脂肪酸塩又は異なるタイプの脂肪酸塩の組合せを使用してもよい。更に、遊離酸の形態の1種又は複数の脂肪酸と、塩の形態の1種又は複数の脂肪酸との組合せを使用することができ、1種又は複数のタイプの塩を使用することもできる。
【0209】
本発明による組成物中の(f)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。本発明による組成物中の(f)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、1質量%以上であることが、更により好ましい場合がある。
【0210】
一方で、本発明による組成物中の(f)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってもよい。本発明による組成物中の(f)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、4質量%以下であることが、更により好ましい場合がある。
【0211】
これに応じて、本発明による組成物中の(f)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%の範囲であってもよい。本発明による組成物中の(f)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して1質量%~4質量%であることが、更により好ましい場合がある。
【0212】
(有機変性クレイ)
本発明による組成物は、(g)少なくとも1種の有機変性クレイを含んでもよい。2種以上の有機変性クレイを使用する場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。
【0213】
有機変性クレイは、第四級アミン及び第三級アミンから特に選択される有機化合物で処理されたクレイを意味する。元の層間カチオンを有機カチオン(典型的には第四級又は第三級アルキルアンモニウムイオン)に交換することにより、共有結合された有機部分を含む有機親和性表面が生成される。
【0214】
(g)有機変性クレイは、本発明による組成物中の水性相を安定化するために、脂肪相と水性相との間に存在しうる。
【0215】
(g)有機変性クレイは、粒子の形態であることが好ましい場合がある。
【0216】
挙げることができる有機変性クレイには、有機変性ベントナイト及びヘクトライト、例えばRheox社により名称Bentone 34で販売されている製品、並びに有機変性ヘクトライト、例えばRheox社により名称Bentone 27(ステアラルコニウムヘクトライト)及びBentone 38(ジステアルジモニウムヘクトライト)、並びにBYK Additives & Instrumentals社により名称MP250(ステアラルコニウムベントナイト)で販売されている製品が含まれる。
【0217】
特に挙げることができる変性クレイは、例えば変性ケイ酸マグネシウム(Rheox社製のBentone gel VS38)、変性ヘクトライト、例えばC10~C22脂肪酸塩化アンモニウムで変性されたヘクトライト、例えばジステアリルジメチルアンモニウムクロリドで変性されたヘクトライト、例えばElementis社により名称Bentone 38VCGで販売されている製品、又はRheox社により名称Bentone 38 CEで販売されている製品、又はElementis社により名称Bentone Gel V55Vで販売されている製品である。
【0218】
(g)有機変性クレイは、有機変性ベントナイト、有機変性ヘクトライト、及びそれらの混合物から選択されることが好ましい。(g)有機変性クレイとして、ジステアルジモニウムヘクトライトを挙げることができる。
【0219】
(g)有機変性クレイは、第四級アミン及び第三級アミンから特に選択される化合物で処理されていることが好ましい。
【0220】
本発明による組成物中の(g)有機変性クレイの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。
【0221】
本発明による組成物中の(g)有機変性クレイの量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってもよい。
【0222】
本発明による組成物中の(g)有機変性クレイの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%であってもよい。
【0223】
(pH)
本発明による組成物のpHは、3~9、好ましくは3.3~8.5、より好ましくは3.5~8であってもよい。
【0224】
pH3~9で、(a)カチオン性ポリマー又は(a)カチオン性ポリマー及び(b)2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸若しくはその塩の錯体は、非常に安定性でありうる。
【0225】
本発明による組成物のpHは、(b)2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩以外の、少なくとも1種のアルカリ剤及び/又は少なくとも1種の酸を添加することによって調整することができる。本発明による組成物のpHはまた、少なくとも1種の緩衝剤を添加することによって調整することもできる。
【0226】
(アルカリ剤)
本発明による組成物は、少なくとも1種のアルカリ剤を含んでもよい。2種以上のアルカリ剤を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプのアルカリ剤、又は異なるタイプのアルカリ剤の組合せを使用してもよい。
【0227】
アルカリ剤は、無機アルカリ剤であってもよい。無機アルカリ剤は、アンモニア、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属リン酸塩及びリン酸一水素塩、例えばリン酸ナトリウム又はリン酸一水素ナトリウムからなる群から選択されることが好ましい。
【0228】
無機アルカリ金属水酸化物の例としては、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを挙げることができる。アルカリ土類金属水酸化物の例としては、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムを挙げることができる。無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0229】
アルカリ剤は、有機アルカリ剤であってもよい。有機アルカリ剤は、モノアミン及びその誘導体、ジアミン及びその誘導体、ポリアミン及びその誘導体、塩基性アミノ酸及びその誘導体、塩基性アミノ酸のオリゴマー及びその誘導体、塩基性アミノ酸のポリマー及びその誘導体、尿素及びその誘導体、並びにグアニジン及びその誘導体からなる群から選択されることが好ましい。
【0230】
有機アルカリ剤の例として、アルカノールアミン、例えば、モノ-、ジ-及びトリエタノールアミン、並びにイソプロパノールアミン、尿素、グアニジン及びそれらの誘導体、塩基性アミノ酸、例えばオルニチン、並びにジアミン、例えば、以下の構造:
【0231】
【化6】
【0232】
(式中、Rは、ヒドロキシル基又はC1~C4アルキル基で任意選択により置換されているプロピレン等のアルキレンを示し、R1、R2、R3及びR4は、独立に、水素原子、アルキル基又はC1~C4ヒドロキシアルキル基を示す)
で記載され、1,3-プロパンジアミン及びその誘導体によって例示することができるものを挙げることができる。
【0233】
アルカリ剤は、これらの溶解度に応じて、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.02質量%~10質量%、より好ましくは0.03質量%~5質量%の総量で使用することができる。
【0234】
(酸)
本発明による組成物は、少なくとも1種の酸を含んでもよい。2種以上の酸を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの酸、又は異なるタイプの酸の組合せを使用してもよい。
【0235】
酸としては、化粧料中で一般に使用される任意の無機又は有機酸、好ましくは無機酸を挙げることができる。一価の酸及び/又は多価の酸を使用してもよい。クエン酸、乳酸、硫酸、リン酸及び塩酸(HCl)等の一価の酸を使用してもよい。乳酸が好ましい場合がある。
【0236】
酸は、これらの溶解度に応じて、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.02質量%~10質量%、より好ましくは0.03質量%~5質量%の総量で使用することができる。
【0237】
(任意選択の成分)
本発明による組成物は、前述の成分に加えて、化粧品に典型的に用いられる任意選択の成分、具体的には、有機又は無機UV遮蔽剤、界面活性剤/乳化剤、例えば(a)カチオン性ポリマー以外の合成ポリマーに由来する親水性又は親油性増粘剤、エタノール等の揮発性又は不揮発性有機溶媒、両性ポリマー、β-グルカン等の非イオン性ポリマー、(e)油以外のシリコーン及びシリコーン誘導体、(a)カチオン性ポリマー又は(d)油以外の動物又は植物に由来する天然抽出物、ワックス等を、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでもよい。
【0238】
本発明による組成物は、上記の任意選択の添加剤を、組成物の総質量に対して、0.01質量%~30質量%、好ましくは0.05質量%~20質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%の量で含んでもよい。
【0239】
本発明による組成物は、環境適合性を考慮して、非常に限られた量の界面活性剤/乳化剤及び/又は合成増粘剤及び/又は有機溶媒を含んでもよい。
【0240】
本発明による組成物中の界面活性剤/乳化剤及び/又は合成増粘剤及び/又は有機溶媒の量は、組成物の総質量に対して、1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下であってもよい。本発明による組成物が界面活性剤/乳化剤又は合成増粘剤又は有機溶媒を含まないことが特に好ましい。
【0241】
[調製]
本発明による組成物は、上に説明した必須成分と、必要な場合には上に説明した任意選択の成分とを混合することによって、調製することができる。
【0242】
上記の必須成分及び任意選択の成分を混合する方法及び手段は、限定されない。任意の従来の方法及び手段を使用して、上記の必須成分と任意選択の成分とを混合し、本発明による組成物を調製することができる。
【0243】
本発明による組成物は、撹拌機及びホモジナイザー等の従来の混合手段により、単純に又は容易に混合することによって調製することができる。また、加熱は必要ではない場合もある。したがって、本発明による組成物の調製方法は、環境に適合性でありうる。
【0244】
[美容用途]
本発明による組成物は、化粧用組成物として使用されることが意図されてもよい。したがって、本発明による化粧用組成物は、ケラチン物質上への適用が意図されてもよい。ケラチン物質は、本明細書では、ケラチンを主な構成要素として含有する物質を意味し、その例としては、皮膚、頭皮、爪、唇、毛髪等が挙げられる。そのため、本発明による化粧用組成物が、ケラチン物質、特に皮膚のための美容方法のために使用されることが好ましい。
【0245】
そのため、本発明による化粧用組成物は、皮膚化粧用組成物、好ましくはスキンケア組成物又は皮膚メイクアップ組成物、より好ましくはスキンケア組成物であってもよい。
【0246】
[形態]
本発明による組成物は、複数の水性相及び脂肪相を含み、水性相は脂肪相中に分散している。そのため、水性相は分散相又は不連続相として機能することができ、脂肪相は連続相として機能することができる。
【0247】
水性相は、(a)カチオン性ポリマー、(b)2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩、及び(c)水を含む。本発明による組成物が(e)アニオン性ポリマーを含む場合、水性相は(e)アニオン性ポリマーを含むことができる。
【0248】
脂肪相は、(d)油を含む。本発明による組成物が(f)脂肪酸及び/又は(g)有機変性クレイを含む場合、脂肪相は、(f)脂肪相及び/又は(g)有機変性クレイを含むことができる。
【0249】
本発明による組成物中の水性相の量は、組成物の総質量に対して、30質量%~70質量%、好ましくは35質量%~65質量%、より好ましくは40質量%~60質量%であってもよい。
【0250】
本発明による組成物中の脂肪相の量は、組成物の総質量に対して、30質量%~70質量%、好ましくは35質量%~65質量%、より好ましくは40質量%~60質量%であってもよい。
【0251】
[皮膜]
本発明による組成物は、皮膜を容易に調製するのに使用することができる。
【0252】
したがって、本発明はまた、好ましくは0.5μm超、より好ましくは1.0μm以上、更により好ましくは1.5μm以上の厚さを任意選択により有する皮膜、好ましくは化粧皮膜を調製するための方法であって、
基質、好ましくはケラチン物質、より好ましくは皮膚上に、本発明による組成物を塗布する工程と、
該組成物を乾燥させる工程と
を含む、方法にも関しうる。
【0253】
本発明による皮膜の厚さの上限は、限定されない。したがって、例えば、本発明による皮膜の厚さは、1mm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、更により好ましくは100μm以下であってもよい。
【0254】
本発明による皮膜を調製する方法が、本発明による組成物を、基質、好ましくはケラチン物質、より好ましくは皮膚上に塗布する工程と、該組成物を乾燥させる工程とを含むことから、本発明による方法は、スピンコーティングすること又はスプレーすることを一切必要とせず、したがって、比較的厚い皮膜であっても、容易に調製することが可能である。そのため、本発明による皮膜を調製する方法は、スピンコーター及びスプレー機等の特殊な装置を一切用いずに、比較的厚い皮膜を調製することができる。
【0255】
本発明による皮膜が比較的厚い場合であっても、該皮膜は、依然として薄く、透明であることができ、したがって、容易に知覚され得ない。そのため、本発明による皮膜は、好ましくは化粧皮膜として使用することができる。
【0256】
基質が皮膚等のケラチン物質ではない場合、本発明による組成物は、ケラチン以外の任意の材料から作製された基質上に塗布することができる。非ケラチン基質の材料は、限定されない。2種以上の材料を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの材料、又は異なるタイプの材料の組合せを使用することができる。いずれの場合でも、基質が可撓性又は弾性であることが好ましい。
【0257】
基質がケラチン物質ではない場合、該基質が水溶性であることが好ましく、その理由は、基質を水で洗浄することによって本発明による皮膜を離脱させることが可能であるからである。水溶性材料の例として、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール(PVA)、デンプン、酢酸セルロース等を挙げることができる。PVAが好ましい。
【0258】
非ケラチン基質がシートの形態にある場合、該基質は、基質シートに付着した皮膜の取り扱いを容易にするために、本発明による皮膜の厚さを超える厚さを有してもよい。非ケラチン基質シートの厚さは限定されないが、1μm~5mm、好ましくは10μm~1mm、より好ましくは50~500μmでもよい。
【0259】
本発明による皮膜が、非ケラチン基質から取り外し可能であることがより好ましい。取り外しの方式は限定されない。したがって、本発明による皮膜は、非ケラチン基質から剥がしてもよく、又は基質シートを水等の溶媒中に溶解することによって取り外してもよい。
【0260】
本発明はまた、
(1)好ましくは0.5μm超、より好ましくは1.0μm以上、更により好ましくは1.5μm以上の厚さを任意選択により有する皮膜、好ましくは化粧皮膜であって、
基質、好ましくはケラチン物質、より好ましくは皮膚上に、本発明による組成物を塗布する工程、及び
該組成物を乾燥させる工程
を含む方法によって調製される皮膜、並びに
(2)好ましくは0.5μm超、より好ましくは1.0μm以上、更により好ましくは1.5μm以上の厚さを任意選択により有する皮膜、好ましくは化粧皮膜であって、
(a)キトサン、ポリリジン、及びこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはキトサンから選択される少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(b)2つ以上のpKa値を有する少なくとも1種の非ポリマー酸又はその塩、並びに
(d)少なくとも1種の油
を含む皮膜
にも関しうる。
【0261】
皮膜はまた、(e)少なくとも1種のアニオン性ポリマー及び/又は(f)少なくとも1種の脂肪酸及び/又は(g)少なくとも1種の有機変性クレイを含んでもよい。
【0262】
(a)カチオン性ポリマー、(b)2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩、及び(d)油、並びに(e)アニオン性ポリマー、(f)脂肪酸、及び(g)有機変性クレイ等の任意選択の成分に関する上記の説明は、上記の皮膜(1)及び(2)におけるものに適用することができる。
【0263】
このようにして上記で得られた皮膜は、自立性であってもよい。用語「自立性」は、本明細書では、皮膜がシートの形態にあることができ、基質又は支持体の補助なしに独立したシートとして取り扱うことができることを意味する。そのため、用語「自立性」は、「自己支持性」と同じ意味を有することができる。
【0264】
本発明による皮膜は疎水性であることが好ましい。
【0265】
本明細書における用語「疎水性」は、20~40℃、好ましくは25~40℃、より好ましくは30~40℃での皮膜の水(好ましくは1リットルの体積)に対する溶解度が、皮膜の総質量に対して10質量%未満、好ましくは5質量%未満、より好ましくは1質量%未満、更により好ましくは0.1質量%未満であることを意味する。皮膜は、水に可溶性でないことが最も好ましい。
【0266】
本発明による皮膜が疎水性である場合、皮膜は、耐水特性を有することができ、したがって、ケラチン物質の表面が例えば汗及び雨により濡れている場合であっても、皮膚等のケラチン物質上に残存することができる。そのため、本発明による皮膜が任意の美容効果をもたらす場合、美容効果は長時間持続することができる。
【0267】
その一方で、本発明による皮膜は、pH8~12、好ましくは9~11等のアルカリ性条件下で、皮膚等のケラチン物質から容易に除去することができる。したがって、本発明による皮膜は、水で除去することは困難であるが、その一方で、該皮膜は、そのようなアルカリ性条件をもたらすことができる石けんで容易に除去することができる。
【0268】
本発明による皮膜は、少なくとも1種の生体適合性及び/又は生分解性ポリマー層を含んでもよい。2種以上の生体適合性及び/又は生分解性ポリマーを組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの生体適合性及び/若しくは生分解性ポリマー、又は異なるタイプの生体適合性及び/若しくは生分解性ポリマーの組合せを使用することができる。
【0269】
本明細書における用語「生体適合性」ポリマーは、ポリマーが、ポリマーと皮膚を含む生体内の細胞との間で過度な相互作用を有さず、ポリマーが、生体によって異物として認識されないことを意味する。
【0270】
本明細書における用語「生分解性」ポリマーは、例えば生体自体の代謝、又は生体内に存在しうる微生物の代謝により、ポリマーが生体内で分解されうる又は分割されうることを意味する。また、生分解性ポリマーは、加水分解によって分解されうる。
【0271】
本発明による皮膜が生体適合性及び/又は生分解性ポリマーを含む場合、該皮膜は、皮膚への刺激が少なく若しくは全くなく、且つ/又は環境を汚染しない可能性がある。
【0272】
実際、本発明による皮膜は、キトサン及び/又はポリリジン(これらは両方とも生分解性ポリマーである)から選択される(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマーを含むことができる。したがって、本発明による皮膜は、環境に適合性とすることができる。
【0273】
加えて、生体適合性及び/又は生分解性ポリマーの使用により、本発明による美容シートは、皮膚によく接着することができる。
【0274】
本発明による皮膜は、ケラチン物質、好ましくは皮膚、特に顔の美容処置のために使用することができる。本発明による皮膜は、任意の形状又は形態であってもよい。例えば、該皮膜は、フルフェイスマスクシート、又は頬、鼻、及び目の周り等の顔の一部用のパッチとして使用することができる。
【0275】
[美容方法及び使用]
本発明はまた、
皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程と、組成物を乾燥させて、ケラチン物質上に化粧皮膜を形成する工程とを含む方法、又は
皮膚等のケラチン物質上の化粧皮膜を調製するための本発明による組成物の使用
にも関する。
【0276】
美容方法は、本明細書では、皮膚等のケラチン物質の表面をケア及び/又はメイクアップするための非治療的美容方法を意味する。
【0277】
上記の方法と使用との両方において、上記の化粧皮膜は、pH7以下の水に耐性があり、pH7超、好ましくは8以上、より好ましくは9以上の水で除去可能である。
【0278】
言い換えれば、上記の化粧皮膜は、pH7以下、好ましくは6以上且つ7以下の範囲、より好ましくは5以上且つ7以下の範囲等の中性又は酸性条件下で耐水性でありうるが、上記の化粧皮膜は、pH7超、好ましくは8以上、より好ましくは9以上等のアルカリ性条件下で除去することができる。pHの上限は、好ましくは13、より好ましくは12、更により好ましくは11である。
【0279】
これに応じて、上記の化粧皮膜は、耐水性であってよく、したがって、該化粧皮膜は、ケラチン物質の表面が例えば汗及び雨により濡れている場合であっても、皮膚等のケラチン物質上に残存することができる。その一方で、上記の化粧皮膜は、アルカリ性条件下で、皮膚等のケラチン物質から容易に除去することができる。したがって、本発明による皮膜は、水で除去することは困難であるが、その一方で、該皮膜は、アルカリ性条件をもたらすことができる石けんで容易に除去することができる。
【0280】
上記の化粧皮膜が、本発明による組成物中に存在しうるUV遮蔽剤を含む場合、上記の化粧皮膜は、UV線から皮膚等のケラチン物質を保護し、それにより、皮膚の黒ずみを抑え、肌の色及び均一性を改善し、且つ/又は皮膚の老化を処置することができる。
【0281】
更に、上記の化粧皮膜は、該化粧皮膜が美容有効成分を一切含まない場合であっても、皮脂を捕獲する、皮膚等のケラチン基質の外観にマット感を付与する、悪臭を吸収若しくは吸着する、且つ/又は例えば汚れ若しくは汚染物質からケラチン物質を保護する等の美容効果を有しうる。
【0282】
加えて、上記の化粧皮膜は、該化粧皮膜が美容有効成分を一切含まない場合であっても、皮膚上の光反射等を変化させることによって皮膚の外観を即座に変化させる又は修正することができる。したがって、上記の化粧皮膜が毛穴又はしわ等の皮膚の欠陥を隠すことができる可能性がある。更に、上記の化粧皮膜は、皮膚上の表面粗さ等を変化させることによって、皮膚の触感を即座に変化させる又は修正することができる。更に、上記の化粧皮膜は、環境ストレス、例えば汚染物質、夾雑物等から、バリアーとして、皮膚の表面を被覆し、皮膚を遮蔽することによって、皮膚を即座に保護することができる。
【0283】
上記の美容効果は、上記の化粧皮膜の化学組成、厚さ及び/又は表面粗さを変化させることによって調整又は制御することができる。
【0284】
上記の化粧皮膜が、(d)油以外の少なくとも1種の追加の美容有効成分を含む場合、化粧皮膜は、その追加の美容有効成分によってもたらされる美容効果を有することができる。例えば、化粧皮膜が、抗老化剤、皮脂抑制剤、デオドラント剤、発汗抑制剤、白色化剤及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の美容有効成分を含む場合、化粧皮膜は、皮膚の老化を処置し、皮膚上の皮脂を吸収し、皮膚上の匂いを制御し、皮膚上の発汗を制御し、且つ/又は皮膚を白色化することができる。
【0285】
皮膚上に塗布した後に、本発明による化粧皮膜又は美容シート上にメイクアップ化粧用組成物を塗布することもまた可能である。
【0286】
本発明はまた、皮膚等のケラチン物質に良好な水和をもたらすための、
(c)水
を含む複数の水性相、及び
(d)少なくとも1種の油
を含む脂肪相
を含み、水性相が、脂肪相中に分散されている組成物における、
(a)キトサン、ポリリジン、及びこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはキトサンから選択される少なくとも1種のカチオン性ポリマー、及び
(b)2つ以上のpKa値を有する少なくとも1種の非ポリマー酸又はその塩
の使用にも関しうる。
【0287】
本発明による使用はまた、皮膚等のケラチン物質に、ベタつき防止及び/又は色移り防止及び/又は抗粘着性ももたらすことができる。
【0288】
組成物はまた、(e)少なくとも1種のアニオン性ポリマー及び/又は(f)少なくとも1種の脂肪酸及び/又は(g)少なくとも1種の有機変性クレイを含んでもよい。組成物が(f)少なくとも1種の脂肪酸を含む場合、色移り防止が更に強化されうる。
【0289】
(a)カチオン性ポリマー、(b)2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩、(c)水及び(d)油、並びに(e)アニオン性ポリマー、(f)脂肪酸、及び(g)有機変性クレイ等の任意選択の成分に関する上記の説明は、上記の使用におけるものに適用することができる。
【実施例0290】
本発明は、実施例によって、より詳細な方法で記載される。しかしながら、これらは、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでない。
【0291】
(実施例1~6及び比較例1~5)
[調製]
実施例1~6及び比較例1~5による組成物のそれぞれを、表1~4に示す成分を混合して調製した。表1~4における成分の量についての数値は全て、原料の「質量%」に基づく。
【0292】
調製の詳細は、以下の通りである。
【0293】
先ず、油性相の全ての成分をよく混合した。他方で、水性相を以下の方法によって別に調製した:先ずポリアニオン(ヒアルロン酸ナトリウム及び存在する場合にはカルボキシメチルセルロースナトリウム)を水に溶解した。次いで、ポリカチオン(ポリリジン又はキトサン)及び架橋剤(フィチン酸)を添加し、ポリイオン錯体ゲル粒子(PGP)を作製した。水性相の他の全成分を添加した後、水性相を油性相に加え、乳化し、W/O型組成物を形成した。実施例3~5及び比較例2~3の場合、乳化後にエタノールを添加した。
【0294】
【表1】
【0295】
【表2】
【0296】
【表3】
【0297】
【表4】
【0298】
[評価]
(水和)
実施例1~6及び比較例1~4による各組成物の適用前及び適用4時間後の素肌の角質層水和(SCH)値を比較することによって水和を評価した。
【0299】
評価デバイスとしてGP SKINデバイス(GPOWER Inc.社製)を使用してSCHを測定した。
【0300】
先ず、パネリストの前腕の(a)SCH値を測定した。次いで、実施例1~6及び比較例1~4による組成物各50mgを、前腕(5×5cm)に適用した。4時間後、組成物を拭い取り、前腕の(b)SCH値を再度測定した。適用前及び適用4時間後のSCH値の差[(b)-(a)]を計算した。水和を示す差を、以下の基準に従って評価した。
良好:差が対照より大きい
不良:対照と同じ
【0301】
対照に関しては、表1~4を参照されたい。
【0302】
SCH値の測定値及び上記評価の結果を表1~4に示す。
【0303】
(ベタつき防止及びマスクへの移り防止)
実施例1又は2による組成物200mgを、2名のパネリストの顔半分に適用した。比較例1による組成物200mgも対照として、2名のパネリストの顔の残りの半分に適用した。次いで、従来のファンデーションを顔に適用し、不織布マスクを顔に取り付けた。
【0304】
8時間後、専門家により顔の皮膚のテカリ度を確認することによって皮膚のベタつきを目視で評価した。また、マスクへの色移りによって、マスクへの移りも目視で評価した。
非常に良好:ベタつき/マスクへの移りが、対照よりかなり少ない
良好:ベタつき/マスクへの移りが、対照より少ない
不良:対照と同じ
【0305】
結果を、表1の「ベタつき防止」及び「マスクへの移り防止」の欄に示す。
【0306】
(粘着性の評価)
実施例6、比較例4又は比較例5による各組成物を、3名のパネリストの皮膚上に適用した。比較例5による組成物を対照として使用した。適用された皮膚の粘着性を、以下の基準に従って、3名のパネリストによって評価した。
良好:対照より少ない粘着性
不良:対照と同じ
非常に不良:対照より悪化
【0307】
結果を表4に示す。
【0308】
(概略)
表1によれば、実施例1と比較例とを比較することによって、実施例1が、ポリカチオン、ポリアニオン、及び架橋剤を有することにより、比較例1より良好な水和、ベタつき防止、及びマスクへの移り防止を示したことを確認することができる。更に、脂肪酸(オレイン酸)を添加することによって(実施例2を参照)、マスクへの移り防止特性を強化した。
【0309】
表2によれば、実施例3又は4と比較例2とを比較することによって、実施例3又は4が、ポリカチオン、ポリアニオン及び架橋剤を有することにより、比較例2より良好な水和を示したことを確認することができる。ポリカチオンとしてポリリジンの代わりにキトサンを使用した場合(実施例4を参照)、水和は更に強化された。
【0310】
表3によれば、実施例5と比較例3とを比較することによって、実施例5が、ポリアニオン(ヒアルロン酸ナトリウム及びCMCナトリウム)に加えて、ポリカチオン(ポリリジン)及び架橋剤(フィチン酸)を有することにより、ポリアニオンしか含まない比較例3より良好な水和を示したことを確認することができる。
【0311】
表4によれば、実施例6と比較例4とを比較することによって、実施例6が、ポリアニオン(ヒアルロン酸ナトリウム)に加えて、ポリカチオン(ポリリジン)及び架橋剤(フィチン酸)を有することにより、ポリアニオンしか含まない比較例4より良好な水和を示したことを確認することができる。
【0312】
加えて、表4の比較例4と比較例5とを比較することによって、ポリアニオン(ヒアルロン酸ナトリウム)しか有さないことにより粘着性が悪化したことを確認することができる。しかしながら、ポリカチオン及び架橋剤を添加することによって(実施例6を参照)、粘着性は低減された。主にグリセリンに起因する粘着性が、ポリカチオン、架橋剤、ポリアニオン、及びグリセリンからなるグリセリルゲルネットワークを有することによって隠蔽されたと推定することができる。しかしながら、ポリアニオンのみでは、任意のグリセリンゲルネットワークを作成することができず、粘着性を更に強めてしまう。
【外国語明細書】