(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154699
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】シート積載装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 29/24 20060101AFI20241024BHJP
B65H 29/04 20060101ALI20241024BHJP
B65H 29/28 20060101ALI20241024BHJP
B65H 29/18 20060101ALI20241024BHJP
B65H 29/68 20060101ALI20241024BHJP
B65H 43/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B65H29/24 A
B65H29/04
B65H29/28
B65H29/18 Z
B65H29/68
B65H43/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068671
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】風間 郁海
【テーマコード(参考)】
3F048
3F049
3F053
3F106
【Fターム(参考)】
3F048AA01
3F048BA29
3F048BB02
3F048CA03
3F048DC11
3F048EB40
3F049BB05
3F049DA05
3F049DA12
3F049EA10
3F049EA13
3F049EA24
3F049LA01
3F053GA02
3F053GA03
3F053GA05
3F053LA01
3F106AA17
3F106AB05
3F106AC02
3F106AD07
3F106AE01
3F106AE05
3F106AE06
3F106AE09
3F106AE10
3F106CA24
3F106LB03
(57)【要約】
【課題】シートサイズにかかわらず搬送中でのシート落下を防止可能なシート積載装置を提供する。
【解決手段】シートSが積載される積載部材5と、積載部材5に向かうシート搬送方向AにシートSを搬送する搬送部材6と、待機位置において搬送部材6によって搬送されたシートSの先端部を保持した後、シート搬送方向Aに移動してシートSの搬送をガイドするガイド部材21と、を備え、積載部材6へと搬送されるシートSに対して、シートSが積載部材5の上面に向かう向きの空気流Hを付与する送風手段22をシート搬送方向Aに複数備え、複数の送風手段22のうちの一つ22Aは離脱位置Eに対応して配置され、搬送されるシートSの長さ情報に基づいて複数の送風手段22の作動及び風量を制御する制御手段23を備えるシート積載装置20。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが積載される積載部材と、
前記積載部材に向かうシート搬送方向にシートを搬送する搬送部材と、
待機位置において前記搬送部材によって搬送されたシートの先端部を保持した後、前記シート搬送方向に移動してシートの搬送をガイドするガイド部材と、を備え、
前記搬送部材のシート搬送速度と前記ガイド部材の移動速度との速度差を用いて、前記ガイド部材に保持されたシートの先端部を離脱位置において該ガイド部材から離脱させ、離脱したシートを前記積載部材に落下させて積載させるシート積載装置であって、
前記積載部材へと搬送されるシートに対して、該シートが前記積載部材の上面に向かう向きの空気流を付与する送風手段を前記シート搬送方向に複数備え、前記複数の送風手段のうちの一つは前記離脱位置に対応して配置され、
搬送されるシートの長さ情報に基づいて前記複数の送風手段の作動及び風量を制御する制御手段を備えるシート積載装置。
【請求項2】
請求項1記載のシート積載装置において、
前記制御手段は、遅くともシートの先端部が前記ガイド部材から離脱したときに、前記離脱位置に対応して配置された前記送風手段を作動させることを特徴とするシート積載装置。
【請求項3】
請求項2記載のシート積載装置において、
前記制御手段は、遅くともシートの先端部が前記ガイド部材から離脱したときに、前記離脱位置に対応して配置された前記送風手段よりも前記シート搬送方向の上流側に設けられた前記送風手段を作動させ、前記複数の送風手段のそれぞれの風量は、前記シート搬送方向の下流側から上流側に向かうに従い段階的に小さくなるようにそれぞれ制御されることを特徴とするシート積載装置。
【請求項4】
請求項1記載のシート積載装置において、
前記制御手段は、前記複数の送風手段のうち、前記積載部材にシートが積載される積載範囲の外部に配置された前記送風手段を作動させないことを特徴とするシート積載装置。
【請求項5】
請求項1記載のシート積載装置において、
前記積載部材に積載されるシート間の空気を吸引する吸引部材を備え、前記制御手段は、前記搬送されるシートの長さ情報に基づいて前記吸引部材の作動を制御することを特徴とするシート積載装置。
【請求項6】
請求項1記載のシート積載装置において、
前記ガイド部材は進入するシートの先端部を保持する保持部材を有し、前記制御手段は前記保持部材にシートの先端部が所定量進入した後に前記ガイド部材の搬送移動を開始させ、前記所定量は前記搬送されるシートの長さ情報に基づいて設定されることを特徴とするシート積載装置。
【請求項7】
請求項1記載のシート積載装置において、
前記離脱位置において前記ガイド部材から離脱したシートに続いて搬送される後続シートの先端部を検知する保持タイミング検知手段を備え、前記保持タイミング検知手段からの情報に基づいて、前記ガイド部材が前記待機位置に到着するタイミングを前記後続シートが前記ガイド部材に保持される直前となるように制御することを特徴とするシート積載装置。
【請求項8】
請求項1記載のシート積載装置において、
前記積載部材にシートが積載される積載範囲に落下するシートの高さを検知するシート高さ検知手段を設け、落下中のシートの高さが当該シートの標準値よりも低い場合には、落下中のシートの高さが前記標準値の場合に比して前記離脱位置に対応して配置された前記送風手段よりも前記シート搬送方向の上流側に設けられた前記送風手段の風量を小さくすることを特徴とするシート積載装置。
【請求項9】
請求項6記載のシート積載装置において、
前記積載部材にシートが積載される積載範囲に落下するシートの高さを検知するシート高さ検知手段を設け、落下中のシートの高さが当該シートの標準値よりも低い場合には、落下中のシートの高さが前記標準値の場合に比して前記所定量を大きくすることを特徴とするシート積載装置。
【請求項10】
請求項1記載のシート積載装置において、
前記積載部材にシートが積載される積載範囲に落下するシートの高さを検知するシート高さ検知手段を設け、落下中のシートの高さが当該シートの標準値よりも高い場合には、落下中のシートの高さが前記標準値の場合に比して前記離脱位置に対応して配置された前記送風手段よりも前記シート搬送方向の上流側に設けられた前記送風手段の風量を大きくすることを特徴とするシート積載装置。
【請求項11】
請求項6記載のシート積載装置において、
前記積載部材にシートが積載される積載範囲に落下するシートの高さを検知するシート高さ検知手段を設け、落下中のシートの高さが当該シートの標準値よりも高い場合には、落下中のシートの高さが前記標準値の場合に比して前記所定量を小さくすることを特徴とするシート積載装置。
【請求項12】
請求項8記載のシート積載装置において、
前記シート高さ検知手段の検知情報及びそのときの前記送風手段の風量を搬送されているシートの重さ情報に対して紐付けると共に経時的に風量データとして蓄積し、搬送経験がある重さのシートを再び搬送する場合には、蓄積された前記風量データを適用することを特徴とするシート積載装置。
【請求項13】
請求項9記載のシート積載装置において、
前記シート高さ検知手段の検知情報及びそのときの前記所定量を搬送されているシートの重さ情報に対して紐付けると共に経時的に所定量データとして蓄積し、搬送経験がある重さのシートを再び搬送する場合には、蓄積された前記所定量データを適用することを特徴とするシート積載装置。
【請求項14】
請求項1記載のシート積載装置において、
前記送風手段を前記シート搬送方向に直交するシート幅方向に複数備え、前記制御手段は搬送されるシートの長さ情報及び幅情報に基づいて前記複数の送風手段の作動及び風量を制御することを特徴とするシート積載装置。
【請求項15】
請求項1ないし14の何れか一つに記載のシート積載装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート積載装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用した画像形成装置において、搬送されるシートの先端を保持しながらシートを搬送するシート搬送手段をシート搬送速度と同速度で移動させつつ、シートの後端を搬送部材で送り出してシートを積載位置に搬送及び積載するシート積載装置が知られている。
このようなシート積載装置において、搬送部材からシート搬送手段へと続くシート搬送経路に沿って送風を行う送風機を配置し、搬送されるシートに対して送風を行いシート搬送手段に対するシート先端の保持を補助すると共に、送風でシートを冷却してシートが熱によってカールすることを防止する技術が知られている(例えば「特許文献1」参照)。シート搬送手段によって搬送されたシートは、その先端がシート先端規制手段に接触することによってシート搬送手段から離脱し、トレイ手段上に自由落下して積載される。このとき、落下するシートの後端部をトレイ側に向けて殴打するシート後端押下手段が設けられている。
【0003】
また、搬送部材のシート搬送速度とシート搬送手段のシート搬送速度との速度差を用いて、シート搬送手段に把持されたシートのシート搬送手段からの離脱を行い、離脱したシートをトレイ上に落下させて積載する技術が知られている(例えば「特許文献2」参照)。この技術では、シート積載位置に到達する直前でシート搬送手段を加速させることにより、搬送部材によって搬送されるシートとの間での搬送速度差をさらに大きくさせ、シート搬送手段からのシート先端の離脱が確実に行われるように構成している。先端がシート搬送手段から離脱したシートは、トレイ上に自由落下して積載される。
【0004】
また、シートの先端を保持したシート搬送手段のシート搬送速度を所定の位置で増速させ、「特許文献2」と同様に、搬送部材のシート搬送速度とシート搬送手段のシート搬送速度との速度差を用いてシート搬送手段からのシート先端の離脱を行い、離脱したシートに対して上方に設けられた吹き出し手段から送風を行う技術が知られている(例えば「特許文献3」参照)。この技術によれば、先端がシート搬送手段から離脱したシートは、吹き出し手段からの気流によってトレイ上への落下を促進されて積載される。トレイへの積載時において、吹き出し手段から吹き出された気流が落下するシートの表面に吹き付けられることにより、トレイ上に積載されたシート間に溜まった空気が押し出され、シート間の空気を抜くことができる。
【0005】
また、シートを搬送する搬送機構と、搬送機構から排出されたシートをシート排出経路よりも下方側で積載する処理トレイと、搬送機構から排出されたシートの表面に向けて送風することによりシートを下方側へ誘導する送風部と、処理トレイに積載された複数のシートからなるシート束に処理を行う処理機構と、処理トレイから処理後のシート束を排出する排出機構と、排出機構によって排出されたシート束を積載する積載トレイとを備えたシート積載装置が知られている(例えば「特許文献4」参照)。この技術において、搬送機構からほぼ水平方向に排出されるシートのほぼ中央部に向けて送風部から送風が行われる。この送風により、シートの排出方向が処理トレイの積載面に沿う方向に変更され、シートが処理トレイに受け入れられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した構成のシート積載装置において、各特許文献1,2,3に記載されたシートの先端を保持するシート搬送手段と各特許文献1,3,4に記載された送風部材とを併用する技術が考えられる。この技術によれば、シート搬送手段によってシートを所定の積載位置に落下させることができると共に、送風部材によってシートの落下速度を早めて後続のシートが追突することを防止することができる。
【0007】
しかし上述の構成では、シートの搬送方向長さに応じてシート搬送手段からのシート先端の離脱位置を変化させる必要があるが、送風部材は位置及び風量が固定されているため、シートのサイズによっては送風が強すぎることにより、搬送中にシート搬送手段からシートが落下してしまうという問題点がある。また、離脱位置よりもシート搬送方向下流側で送風が弱くなることによって離脱後のシート落下速度が遅くなり、シート着地前に後続のシートが搬送されて追突が生じてしまうという問題点がある。
本発明は上述した問題点を解決し、シートサイズにかかわらず搬送中でのシート落下を防止可能なシート積載装置、シート搬送速度を早めることが可能なシート積載装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、シートが積載される積載部材と、前記積載部材に向かうシート搬送方向にシートを搬送する搬送部材と、待機位置において前記搬送部材によって搬送されたシートの先端部を保持した後、前記シート搬送方向に移動してシートの搬送をガイドするガイド部材と、を備え、前記搬送部材のシート搬送速度と前記ガイド部材の移動速度との速度差を用いて、前記ガイド部材に保持されたシートの先端部を離脱位置において該ガイド部材から離脱させ、離脱したシートを前記積載部材に落下させて積載させるシート積載装置であって、前記積載部材へと搬送されるシートに対して、該シートが前記積載部材の上面に向かう向きの空気流を付与する送風手段を前記シート搬送方向に複数備え、搬送されるシートの長さ情報に基づいて前記複数の送風手段の作動及び風量を制御する制御手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シートサイズにかかわらず搬送中でのシートの落下を防止可能なシート積載装置、シートの積載位置乱れの発生を抑制できシート搬送速度を早めることが可能なシート積載装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態を適用可能な従来の画像形成装置の概略正面図である。
【
図2】保持部材が待機位置を占めた従来のシート積載装置を示す概略正面図である。
【
図3】保持部材が待機位置を占めた従来のシート積載装置を示す概略図平面である。
【
図4】従来のシート積載装置に用いられる制御手段のブロック図である。
【
図5】保持部材に転写シートの先端部が所定量進入した状態を示す従来のシート積載装置の概略正面図である。
【
図6】保持部材から転写シートが離脱した状態を示す従来のシート積載装置の概略正面図である。
【
図7】保持部材から小サイズ転写シートが離脱した状態を示す従来のシート積載装置の概略正面図である。
【
図8】従来のシート積載装置の問題点を説明する概略図である。
【
図9】従来のシート積載装置の問題点を説明する概略図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態に係るシート積載装置の保持部材から転写シートが離脱した状態を示す概略図である。
【
図11】本発明の第1の実施形態に係るシート積載装置に用いられる制御手段のブロック図である。
【
図12】本発明の第1の実施形態に係るシート積載装置の保持部材から小サイズ転写シートが離脱した状態を示す概略図である。
【
図13】本発明の第2の実施形態に係るシート積載装置の保持部材から転写シートが離脱した状態を示す概略図である。
【
図14】本発明の第2の実施形態に係るシート積載装置の保持部材から離脱して落下する転写シートの挙動を説明する概略図である。
【
図15】本発明の第2の実施形態に係るシート積載装置の保持部材から小サイズ転写シートが離脱した状態を示す概略図である。
【
図16】本発明の第3の実施形態に係るシート積載装置の保持部材から離脱して落下する転写シートの挙動を説明する概略図である。
【
図17】本発明の第4の実施形態に係るシート積載装置の保持部材から離脱して落下する転写シートの挙動を説明する概略図である。
【
図18】本発明の第6の実施形態に係るシート積載装置の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施形態を適用可能な従来の画像形成装置を示している。同図において画像形成装置1は、被記録媒体であるシートとしての転写シートSに画像を形成する画像形成部2と、画像形成部2において画像が形成された転写シートSの搬送及び集積を行うシート積載装置3とを有している。
画像形成部2は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)の4色のインクを吐出して転写シートS上にフルカラー画像を形成するインクジェット記録装置、及びインクジェット記録装置に向けて転写シートSを供給する給紙装置等を備えている。さらに画像形成部2には、給送される転写シートSのサイズを検知するシートサイズ検知センサ4が設けられている。シートサイズ検知センサ4は、転写シートSの長さ及び幅を検知可能となるように複数設けられている。
【0012】
シート積載装置3は、積載部材としてのシートトレイ5、搬送部材6、ガイド部材7、シート先端検知センサ8等を有している。
シート積載装置3の底部に設けられたシートトレイ5は、画像形成後の転写シートSを複数枚積載する。シートトレイ5に積載された転写シートSは、シート積載装置3からシートトレイ5が引き出されることにより装置操作者によって取り出される。
画像形成部2から送られる転写シートSをシートトレイ5に向けて搬送する搬送部材6は、駆動ローラと従動ローラとからなる周知のローラ対によって構成されており、画像形成部2に設けられた排紙ローラ9によって排出された転写シートSを受け取って、矢印Aで示すシート搬送方向の下流側へと搬送する。
シート先端検知センサ8は、シート搬送方向Aにおいて搬送部材6の上流側に配置されており、搬送される転写シートSの先端を検知して検知信号を出力する。
【0013】
シート搬送方向Aにおいて搬送部材6の下流側に配置されたガイド部材7は、搬送部材6によって搬送される転写シートSの先端部を保持して、シート搬送方向Aに向けて転写シートSを搬送部材6のシート搬送速度よりも速い速度で搬送可能であり、搬送した転写シートSをシートトレイ5上に案内する。
ガイド部材7は、駆動ローラ12と従動ローラ13とに掛け渡された走行可能な無端状の搬送ベルト10と、搬送ベルト10上に取り付けられ搬送ベルト10の走行に伴い移動する保持部材11とを有している。搬送ベルト10は、駆動ローラ12を駆動するモータ14の作動を後述する制御手段16によって制御されることにより、走行速度が可変に構成されている。モータ14は速度可変型のステッピングモータであり、そのステップ数より搬送ベルト10上における保持部材11の位置を把握可能に構成されている。
【0014】
シート積載装置3は、搬送部材6のシート搬送速度とガイド部材7のシート搬送速度との速度差を用いて、保持部材11に保持された転写シートSを保持部材11から離脱させ、離脱させた転写シートSをシートトレイ5上に積載させる。
ガイド部材7のシート搬送方向下流側部位には、搬送される転写シートSに対してシートトレイ5の上面に向かう側、すなわち下方側への空気流を付与する送風ファン15が設けられている。送風ファン15は、常時作動されている。
【0015】
図2に示すように保持部材11は、転写シートSの先端部が挿入される開口部11aと、開口部11aから挿入された転写シートSの先端部を挟持する挟持部11bとを有している。挟持部11bが転写シートSの先端部を挟持する力は、搬送部材6と転写シートSとの間の摩擦力よりも小さく設定されている。このため挟持部11bは、
図2に示す待機位置にて停止している保持部材11に対して、搬送部材6により搬送され開口部11aから挿入された転写シートSの剛性によって転写シートSの進入を許容し、進入した転写シートSを弾性で保持する。
保持部材11の転写シートSに対する接触面は、金属や樹脂等の平滑性が高い部材で形成することが好ましい。これにより、保持部材11に対して転写シートSをスムーズに保持させることができる。
【0016】
保持部材11は、転写シートSの受入時において
図2に示す待機位置に停止しており、シート先端検知センサ8によって転写シートSの先端が検知され転写シートSの先端部が挟持部11bに挟持された後に所定のタイミングで転写シートSの搬送を開始する。そして保持部材11は、転写シートSの搬送が完了すると搬送ベルト10の走行により待機位置まで戻り停止する。
画像形成装置1において、
図1及び
図2に示すように、保持部材11は搬送ベルト10の外周面上に2個、互いに位相が180度異なる態様で配置されている。このため、保持部材11が待機位置に戻る時間が短縮され、転写シートSの搬送サイクルを向上することができる。
【0017】
画像形成装置1において、
図3に示すように、搬送ベルト10はシート搬送方向Aに直交する方向であるシート幅方向Bに4本設けられており、保持部材11は各搬送ベルト10にそれぞれ2個ずつ配置されている。これにより、搬送ベルト10を1本または2本の構成として保持部材11をベルト1本当たり2個設ける構成に比して、保持部材11を小型化でき搬送ベルト10の走行時における慣性負荷を低減できると共に、保持部材11の数量が増えることで転写シートSの保持姿勢を安定させることができる。
【0018】
4本の搬送ベルト10は、シート幅方向Bの各端部に位置する端部側ベルト10aと、各端部側ベルト10a間に配置された中央側ベルト10bとに分類される。ここで、各保持部材11は、端部側ベルト10aと中央側ベルト10bとでシート搬送方向Aにおける位置が異なるように配置されている。具体的には、中央側ベルト10bに配置された保持部材11は、端部側ベルト10aに配置された保持部材11に比して、それぞれシート搬送方向Aの上流側に配置されている。
上述の構成とすることにより、保持部材11に転写シートSが保持されるタイミングを端部側ベルト10aと中央側ベルト10bとでずらすことができ、転写シートSが保持部材11に進入する際の負荷を低減できる。また、転写シートSが保持部材11から離脱するタイミングもずれるため、転写シートSを安定した姿勢に保つことができる。
【0019】
図3に示すように、搬送部材6は上述した駆動ローラ6aと従動ローラ6bとからなる2個のローラ対によって構成されており、各ローラ対が各搬送ベルト10間に位置するように細切れ状に配置されている。また、画像形成部2に設けられた排紙ローラ9も搬送部材6と同様の2個のローラ対によって構成されており、シート幅方向Bにおいて搬送部材6と同様の位置にそれぞれ配置されている。
図4は、シート積載装置3の動作を制御する制御手段16の制御ブロック図である。CPU、ROM、RAM等を有する周知のマイクロコンピュータからなる制御手段16は、シートサイズ検知センサ4、シート先端検知センサ8、その他のセンサ類からの入力信号や入力情報を入力され、モータ14、送風ファン15等のシート積載装置3における各種アクチュエータの動作を制御する。
【0020】
次に、上述した従来のシート積載装置3によるシート搬送工程を説明する。
先ず、シート積載装置3は、搬送及び積載する転写シートSの長さ情報を画像形成部2から取得する。具体的には、シートサイズ検知センサ4によって検知された転写シートSの長さ及び幅に基づくサイズ情報、あるいは画像形成部2の図示しない操作パネルから操作者によって入力された転写シートSのサイズ情報を用いる。次に、画像形成部2の駆動に伴い搬送部材6が駆動され、排紙ローラ9によって画像形成部2から送られてきた転写シートSの搬送が開始される。このとき、ガイド部材7は保持部材11を待機位置で停止させた
図2に示す待機状態で停止しており、送風ファン15は常に一定の風量となるように動作を開始する。
【0021】
その後、シート先端検知センサ8が転写シートSの先端を検知したか否かが判断され、検知したと判定されると転写シートSの先端検出時間を基点とした経過時間である第1の所定時間が計時される。この第1の所定時間は、搬送される転写シートSのサイズに対応して予め決定されている。第1の所定時間が経過すると搬送ベルト10が走行を開始し、待機位置で停止していた保持部材11がシート搬送方向Aへと移動を開始する。このとき、保持部材11の移動速度よりも搬送部材6による転写シートSの搬送速度の方が速いため、転写シートSの先端部が開口部11aから保持部材11内に進入し、進入した先端部は挟持部11bに挟持されて保持される。
【0022】
保持部材11の移動速度、すなわち搬送ベルト10を走行駆動するモータ14の駆動速度は、保持部材11への転写シートSの進入完了時に搬送部材6による転写シートSの搬送速度と保持部材11の移動速度とが等速となるように制御手段16によって制御される。このように、保持部材11の移動速度が搬送部材6による転写シートSの搬送速度と等速度になるまでの速度差により、保持部材11の内部へと転写シートSの先端部が進入する。保持部材11が移動を開始してから保持部材11への転写シートSの進入完了までの時間が第2の所定時間となる。このときの第1及び第2の所定時間に対応した保持部材11内への転写シートSの先端部の進入量が、
図5に示す所定量Cとなる。
【0023】
保持部材11が転写シートSを保持したとき、すなわち保持部材11内への転写シートSの先端部の進入量が所定量Cとなると、保持部材11の移動速度における第1の加速が行われ、予め取得した転写シートSのサイズ情報に応じた第3の所定時間が計時される。第1の加速によって生じた搬送部材6による転写シートSの搬送速度と保持部材11の移動速度との速度差を用いて、搬送部材6とガイド部材7とによる転写シートSの搬送移動が開始される。このとき、保持部材11の移動速度が搬送部材6による転写シートSの搬送速度よりも速くなり、転写シートSの先端部を保持部材11が引っ張りつつ搬送するため、等速の場合に比して転写シートSへの撓みの発生を防止できる。この搬送時に、保持部材11が転写シートSを保持する力は搬送部材6と転写シートSとの間の摩擦力よりも小さいため転写シートSは徐々に保持部材11から抜けるが、転写シートSを保持した位置から転写シートSが離脱する位置までは保持部材11に転写シートSを保持した状態が維持される。
【0024】
保持部材11が転写シートSを保持してから第3の所定時間が経過すると、保持部材11の移動速度における第2の加速が行われ、保持部材11の移動速度がさらに加速されて保持部材11から転写シートSが離脱する。なお、保持部材11から転写シートSが離脱する前に搬送部材6から転写シートSが抜けても、転写シートSの慣性力により保持部材11からの転写シートSの離脱が行われる。保持部材11から転写シートSが離脱したときの状態を
図6に示す。
図6において、符号Dは第2の加速が行われる保持部材11の位置である加速位置を、符号Eは転写シートSの離脱が行われる保持部材11の位置である離脱位置をそれぞれ示す。
図7は、転写シートSに代えて、転写シートSよりも小サイズである小サイズ転写シートS1を用いた場合を示している。
このように、第2の加速によって生じた搬送部材6による転写シートSの搬送速度と保持部材11の移動速度との速度差によって、保持部材11からの転写シートSの離脱が行われる。搬送部材6から抜けて保持部材11から離脱した転写シートSは、送風ファン15からの風力を受けてシートトレイ5に向けて落下し、シートトレイ5上に積載される。
【0025】
保持部材11から転写シートSが離脱すると、予め取得した転写シートSのサイズ情報に応じた第4の所定時間が計時され、第4の所定時間が経過すると保持部材11の減速が開始されて保持部材11が待機位置にて停止する。その後、画像形成部2における画像形成動作が完了したか否かが判定され、完了していないと判断されるとシート先端検知センサ8が転写シートSの先端を検知したか否かが判断され、画像形成動作が完了するまで上述した動作が繰り返される。完了したと判断されると、搬送部材6及び送風ファン15の作動が停止される。
【0026】
ここで、上述したシート積載装置3における問題点を説明する。シート積載装置3では、送風ファン15が単一で配置されかつ配置位置が固定であり、さらに風量が常に一定であることから、次のような問題点が生じる虞がある。
保持部材11によって保持された状態の転写シートSは、保持部材11が待機位置から移動して加速位置Dで加速した後に離脱位置Eに到達すると、保持部材11から離脱してシートトレイ5上に自由落下する。自由落下時には、送風ファン15からの風力を受けて落下が促進される。このときに転写シートSのサイズに対して送風ファン15の風量が強い場合には、
図8に示すように、風力を受けて転写シートSの撓み量Fが通常時よりも大きくなり、離脱位置Eよりもシート搬送方向Aにおいて上流側の位置で保持部材11から転写シートSが離脱してしまう。この場合には、シートトレイ5に対する転写シートSの落下位置が通常時からずれてしまい、シートトレイ5上において転写シートSの載置位置乱れが生じてしまう。
【0027】
また、上述したように離脱位置Eにおいて保持部材11から離脱した転写シートSはシートトレイ5上に向けて自由落下し、この際に送風ファン15からの風力を受けて転写シートSの落下が促進される。このときに送風ファン15の位置が固定であることから、転写シートSのサイズに対して送風ファン15の風量が弱い場合には、
図9に示すように、保持部材11から離脱した後の転写シートSの落下速度が遅くなって落下量Gが小さくなる。落下量Gが小さくなると、転写シートSがシートトレイ5上に到達する前に、後続の転写シートすなわち後続シートである後続転写シートS2が搬送される虞がある。この場合には、離脱位置Eから待機位置に向けて移動する保持部材11と落下中の転写シートSとが衝突して、シートトレイ5上における転写シートSの積載位置乱れが生じることとなる。
上述した問題点を解決する本発明の構成を以下に説明する。
【0028】
図10は、本発明の第1の実施形態に係るシート積載装置を示している。同図においてシート積載装置20は、上述したシート積載装置3と比較すると、ガイド部材7に代えてガイド部材21を用いる点において相違しており、画像形成部2と共に画像形成装置1を構成する点を含め、他の構成は同一である。
ガイド部材21は、ガイド部材7と比較すると、単一の送風ファン15に代えてシート搬送方向Aに向けて複数(本実施形態では3個)並設された送風手段としての送風ファン22A,22B,22Cを用いる点、制御手段16に代えて制御手段23を用いる点において相違しており、他の構成は同一である。
【0029】
各送風ファン22A,22B,22Cは、それぞれ出力する風量が可変に構成されており、送風ファン22Aは搬送される転写シートSが保持部材11から離脱する離脱位置Eに対応する位置、本実施形態では離脱位置Eよりもシート搬送方向Aにおいてやや下流側の位置に配置されている。
図11は、シート積載装置20の動作を制御する制御手段23のブロック図である。周知のマイクロコンピュータからなる制御手段23は、シートサイズ検知センサ4、シート先端検知センサ8、その他のセンサ類からの入力信号や入力情報を入力され、モータ14、各送風ファン22A,22B,22C等のシート積載装置20における各種アクチュエータの動作を制御する。
【0030】
次に、本発明の第1の実施形態に係るシート積載装置20によるシート搬送工程を説明する。
シート積載装置20は、搬送及び積載する転写シートSの長さ情報を、シート積載装置3と同様に、シートサイズ検知センサ4によって検知された転写シートSのサイズ情報、あるいは画像形成部2から入力された転写シートSのサイズ情報から取得する。次に、画像形成部2の駆動に伴い搬送部材6が駆動され、転写シートSの搬送が開始される。このとき、ガイド部材21は保持部材11を上述した待機位置で停止させている。
【0031】
転写シートSの搬送が開始されると、制御手段23は各送風ファン22A,22B,22Cのうち送風ファン22Aのみを作動させる。このとき制御手段23は、搬送する転写シートSのサイズ情報から転写シートSの長さ情報を取得し、取得した長さ情報に基づいた風量H1となるように送風ファン22Aの動作を制御する。ここで設定される送風ファン22Aの風量H1は、転写シートSの長さ情報、すなわちサイズ及び坪量等から予め複数種類の風量が設定されており、制御手段23はこれ等複数種類の風量から搬送される転写シートSに応じた最適な風量H1を設定する。
【0032】
その後、シート先端検知センサ8が転写シートSの先端を検知すると、上述と同様に予め設定されている第1の所定時間が計時され、第1の所定時間が経過すると搬送ベルト10が走行を開始して待機位置で停止していた保持部材11がシート搬送方向Aへと移動を開始する。このとき、転写シートSの先端部が開口部11aから保持部材11内に進入して挟持部11bによって保持される。
その後、第2の所定時間が経過するまで上述と同様に保持部材11の内部に転写シートSの先端部が進入し、第2の所定時間が経過すると保持部材11内への転写シートSの先端部の進入量が所定量Cとなる。
【0033】
保持部材11内への転写シートSの先端部の進入量が所定量Cとなると、保持部材11の第1の加速が行われて第3の所定時間が計時される。これにより搬送部材6とガイド部材21とによる転写シートSの搬送が行われ、転写シートSはその先端部を保持部材11によって引っ張りながら搬送されて撓みの発生を抑制される。
保持部材11が転写シートSを保持してから第3の所定時間が経過すると、
図10に示す加速位置Dで保持部材11の第2の加速が行われ、
図10に示す離脱位置Eにおいて保持部材11から転写シートSが離脱する。先端部が保持部材11から離脱すると共に後端部が搬送部材6から抜けた転写シートSは自由落下を開始し、送風ファン22Aからの風力を受けてシートトレイ5に向かう。
【0034】
このときに、送風ファン22Aの風量H1が搬送される転写シートSのサイズ及び坪量等に応じた最適な風量に設定されているため、落下する転写シートSはシートトレイ5上へと正確に落下し、シートトレイ5上における転写シートSの積載位置乱れの発生を防止できる。また、転写シートSの搬送中にも作動している送風ファン22Aの風量H1が適正であるため、送風ファン22Aからの風力によって離脱位置Eに到達する前に保持部材11から転写シートSが落下することを防止できる。
このように本発明の第1の実施形態によれば、シートサイズにかかわらず搬送中での転写シートSの落下を防止可能なシート積載装置20を提供できる。
【0035】
図12は、第1の実施形態において転写シートSに代えて、転写シートSよりも小サイズである小サイズ転写シートS1を用いた場合を示している。
図12に示す構成において、小サイズ転写シートS1を搬送する際には送風ファン22Bのみが使用され、送風ファン22Bは搬送される小サイズ転写シートS1が保持部材11から離脱する離脱位置Eに対応する位置、本実施形態では離脱位置Eよりもシート搬送方向Aにおいてやや上流側の位置に配置されている。送風ファン22Bの風量H2は、搬送される小サイズ転写シートS1に応じた最適な風量となるように制御手段23によって設定されている。
上述と同様に離脱位置Eにて保持部材11から離脱した小サイズ転写シートS1は、送風ファン22Bからの最適な風力を受けてシートトレイ5に向かう。この構成により、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0036】
図13は、本発明の第2の実施形態を示している。第2の実施形態は第1の実施形態と比較すると、送風ファン22Aに加えて各送風ファン22B,22Cを転写シートSの搬送時に駆動する点において相違しており、他の構成は同一である。
制御手段23は、転写シートSの搬送が開始されると各送風ファン22A,22B,22Cの全てを作動させる。このとき制御手段23は、第1の実施形態と同様に搬送する転写シートSの長さ情報に基づいた風量H1となるように送風ファン22Aの動作を制御し、送風ファン22Bは風量H2となるように、送風ファン22Cは風量H3となるように、それぞれ各送風ファン22B,22Cの動作を制御する。
【0037】
保持部材11から離脱してシートトレイ5上に落下する転写シートSは、理想的には
図14に示すように、シートトレイ5上に積載されている転写シートSの最上位のシートである積載最上位シートS0に対して、その中央部を先に接触させてその後に両端部を接触させるように積載されることが望ましい。このように積載されることにより、
図14に白抜き矢印で示すように、積載最上位シートS0と落下する転写シートSとの間から空気を逃がすことができる。これにより、シート間に空気が入り込むことによって下位のシートS0に対して上位のシートSが空気層の影響によって滑ることに起因する積載位置乱れの発生を防止できる。
【0038】
そこで第2の実施形態では、保持部材11から離脱してシートトレイ5上に落下する転写シートSが
図14に示す挙動となる風量H1,H2,H3となるように、制御手段23が各送風ファン22A,22B,22Cの作動を制御する。具体的には、各風量H1,H2,H3はそれぞれ搬送される転写シートSのサイズ及び坪量等に応じた最適な風量に設定されており、風量H1よりも風量H2が、風量H2よりも風量H3がそれぞれ小さくなるように設定されている。
この構成により、積載最上位シートS0と落下する転写シートSとの間から空気を効率よく逃がすことができ、シート間に空気が入り込むことに起因する積載位置乱れの発生を防止できる。
【0039】
図15は、第2の実施形態において、転写シートSに代えて小サイズ転写シートS1を用いた場合を示している。
図15に示す構成において、小サイズ転写シートS1を搬送する際には各送風ファン22B,22Cが使用され、送風ファン22Bは搬送される小サイズ転写シートS1が保持部材11から離脱する離脱位置Eに対応する位置、本実施形態では離脱位置Eよりもシート搬送方向Aにおいてやや上流側の位置に配置されている。送風ファン22Bの風量H2及び送風ファン22Cの風量H3は、搬送される小サイズ転写シートS1に応じた最適な風量となるように制御手段23によって設定されている。
上述と同様に離脱位置Eにて保持部材11から離脱した小サイズ転写シートS1は、各送風ファン22B,22Cからの最適な風力を受けてシートトレイ5に向かう。この構成により、第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0040】
第1及び第2の実施形態において、
図12及び
図15に示すように、シート搬送装置20によって搬送される転写シートとして小サイズ転写シートS1が用いられる場合には、各送風ファン22A,22B,22Cのうち送風ファン22Aは用いられていない。換言すると、複数の送風手段22A,22B,22Cのうち、シートトレイ5に小サイズ転写シートS1が積載される積載範囲の外部に配置された送風ファン22Aは作動させない構成である。
このような構成とすることにより、どのようなサイズの転写シートを積載する場合であっても気流の乱れが発生することを抑制し、落下するシートと積載最上位シートとの間の空気を効率的に逃がすことができ、シート間に空気が入り込むことに起因する積載位置乱れの発生を防止できる。
【0041】
図16は、本発明の第3の実施形態を示している。第3の実施形態は第2の実施形態と比較すると、吸引部材としての吸引ファン24を備え、転写シートSの搬送時に吸引ファン24を駆動する点において相違しており、他の構成は同一である。
制御手段23は、転写シートSの搬送が開始されると各送風ファン22A,22B,22Cの全てを作動させると共に吸引ファン24を作動させる。このとき制御手段23は、搬送する転写シートSの長さ情報に基づいた吸引量となるように吸引ファン24の動作を制御する。
この構成によれば、どのようなサイズの転写シートを積載する場合であっても落下するシートと積載最上位シートとの間の空気を効率的に逃がすことができ、シート間に空気が入り込むことに起因する積載位置乱れの発生を防止できる。なお、吸引ファン24はシート幅方向Bに複数個設けられていてもよい。
【0042】
第1ないし第3の各実施形態では、ガイド部材21が転写シートSの搬送移動を開始する際に保持部材11内に進入する転写シートSの先端部の所定量Cを、第1及び第2の所定時間から決定する構成とした。ここで、所定量Cは大きくなればなるほど保持部材11から転写シートSの先端部が落下しにくくなるが、該先端部を支える位置がシート搬送方向Aの下流側にずれるために、シートサイズが小さい場合にはシートの撓み量が小さくなる等、転写シートSの搬送姿勢に影響を及ぼす。
そのため、所定量Cを搬送される転写シートSの長さ情報、すなわちサイズ及び坪量等の情報に基づいて設定することにより、搬送中における転写シートSの姿勢を良好に保つことができ、転写シートSが落下することによる搬送不良の発生を抑制できる。
【0043】
第1ないし第3の各実施形態では、離脱位置Eにおいて保持部材11から離脱した転写シートSに続いて搬送される後続転写シートS2(
図9参照)は、転写シートSと同様にその先端をシート先端検知センサ8によって検知され、転写シートSと同様に搬送積載される。ここで、保持部材11を待機位置に戻すタイミングが早ければ早いほど後続転写シートS2を受け入れるタイミングを早めることができ、シート搬送速度を早めることが可能なシート積載装置を提供できる。これにより、画像形成部2及び搬送部材6の駆動タイミングを早めるができ、画像形成動作を早めることにより画像形成効率を向上できる。しかし、保持部材11を待機位置に早く戻しすぎると、
図9に示すように転写シートSの落下量Gが小さい場合には落下中の転写シートSに保持部材11が衝突して、転写シートSの積載位置乱れが生じてしまう。
【0044】
そこで制御手段23は、後続転写シートS2の先端部を検知するシート先端検知センサ8からの情報に基づいて、保持部材11が待機位置に到着するタイミングを後続転写シートS2が保持部材11内に進入する直前となるように制御する。具体的には、モータ14のステップ数から保持部材11の位置を認識し、保持部材11が待機位置に到着するタイミングをモータ14の回転を可変することによって制御する。ここで、シート先端検知センサ8が保持タイミング検知手段として機能する。
この構成によれば、離脱位置Eにおいて保持部材11から離脱して落下中である転写シートSの落下時間を確保することができ、落下中の転写シートSと保持部材11とが衝突する不具合の発生を抑制し、シート搬送速度を早めることが可能なシート積載装置を提供できると共に転写シートSの積載位置乱れの発生を抑制できる。
【0045】
上述の構成では、後続転写シートS2の先端位置と保持部材11の位置とに基づいて落下中の転写シートSと保持部材11との衝突を抑制しているが、落下中の転写シートSの落下速度が遅い場合には後続転写シートS2の先端位置にかかわらず落下中の転写シートSと保持部材11とが衝突してしまう。この不具合の発生を防止する構成を、第4の実施形態として以下に説明する。
図17は、本発明の第4の実施形態を示している。第4の実施形態は第2の実施形態と比較すると、シート高さ検知手段としての落下シート検知センサ25を備え、落下中の転写シートSの位置を検知する点において相違しており、他の構成は同一である。鉛直方向に長く形成された落下シート検知センサ25は、離脱位置Eにおいて保持部材11から離脱して落下中である転写シートSの高さ方向の位置である落下位置を逐次検知し、その検知信号を制御手段23に向けて出力する。制御手段23には、予め実験によって求められた、離脱位置Eにおいて保持部材11から落下した転写シートSの落下時間と落下位置との相対関係が、転写シートSの長さ情報すなわちサイズ及び坪量毎にそれぞれ標準値として記憶されている。
【0046】
第4の実施形態では、離脱位置Eにおいて保持部材11から転写シートSが離脱したときから落下シート検知センサ25による落下中の転写シートSの位置検知が行われる。そして、落下シート検知センサ25によって検知された落下中の転写シートSの高さである落下位置が、制御手段23に記憶されている標準値に比して低い場合には、制御手段23は通常時よりも落下中の転写シートSの位置が低いと判断する。この場合に制御手段23は、落下中の転写シートSに与える影響が大きい各送風ファン22B,22Cの風量を現状よりも小さくする。これにより、搬送中における転写シートSの姿勢を良好に保つことができ、転写シートSが落下することによる搬送不良の発生を抑制できる。
【0047】
第4の実施形態において、落下シート検知センサ25によって検知された落下中の転写シートSの落下位置が制御手段23に記憶されている標準値に比して高い場合には、制御手段23は、落下中の転写シートSに与える影響が大きい各送風ファン22B,22Cの風量を現状よりも大きくする。これにより、搬送中における転写シートSの姿勢を良好に保つことができ、転写シートSが落下することによる搬送不良の発生を抑制できる。また、転写シートSの落下が遅いことにより保持部材11と衝突する不具合の発生を抑制でき、転写シートSの積載位置乱れの発生を抑制できる。
【0048】
第4の実施形態において、落下シート検知センサ25によって検知された落下中の転写シートSの落下位置が制御手段23に記憶されている標準値に比して低い場合に、所定量Cが標準値の場合に比して大きくなるように制御手段23が搬送部材6及びモータ14の作動を制御する構成としてもよい。この構成とすることにより、標準値の場合に比して落下中における転写シートSのたわみ量が小さくなり、空気抵抗が増加して搬送中における転写シートSの姿勢を良好に保つことができ、転写シートSが落下することによる搬送不良の発生を抑制できる。
また、落下シート検知センサ25によって検知された落下中の転写シートSの落下位置が制御手段23に記憶されている標準値に比して高い場合には、所定量Cが標準値の場合に比して小さくなるように制御を行うことにより、上述と同様の作用効果を得ることができる。
【0049】
次に、本発明の第5の実施形態を説明する。第5の実施形態では、第4の実施形態と同様の構成において、落下シート検知センサ25による検知情報、すなわち落下中の転写シートSの位置情報とそのときの各送風ファン22A,22B,22Cの風量とを、搬送される転写シートSのサイズ及び坪量等からなる重さ情報に対して紐付けている。紐付けた位置情報及び風量及び重さ情報は風量データとして制御手段23内に記憶しており、記憶した風量データはデータが増える毎に順次蓄積される。そして、搬送経験がある重さの転写シートSを再び搬送する場合には、すなわち搬送する転写シートSの重さ情報が蓄積されている風量データ中の重さ情報と合致する場合には、蓄積されている風量データを適用して転写シートSの搬送積載を行う。
第5の実施形態によれば、記憶されているデータを読み出すことで転写シートSの最適な搬送積載を行うことができ、制御を簡略化できると共に常に最適な積載搬送を行うことができる。
【0050】
第5の実施形態では、落下中の転写シートSの位置情報とそのときの各送風ファン22A,22B,22Cの風量とを搬送される転写シートSの重さ情報に対して紐付けているが、落下中の転写シートSの位置情報とそのときの所定量Cとを搬送される転写シートSの重さ情報に対して紐付ける構成としてもよい。紐付けた位置情報及び所定量C及び重さ情報は所定量データとして制御手段23内に記憶しており、記憶した所定量データはデータが増える毎に順次蓄積される。そして、搬送する転写シートSの重さ情報が蓄積されている風量データ中の重さ情報と合致する場合には、蓄積されている所定量データを適用して転写シートSの搬送積載を行う。
この構成によっても、第5の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0051】
上述した第1ないし第5の実施形態では、送風手段としてシート搬送方向Aに複数個配置された各送風ファン22A,22B,22Cを用いる例を示したが、これに代えて、
図18に示す構成を採用してもよい。
図18は、本発明の第6の実施形態に係るシート積載装置20Aの概略平面図である。シート積載装置20Aは、シート積載装置20と比較すると、各送風ファン22A,22B,22Cに代えて、各送風ファン22A1,22A2,22A3,22B1,22B2,22B3,22C1,22C2,22C3を用いる点において相違しており、他の構成は同一である。各送風ファン22A1,22A2,22A3は送風ファン22Aをシート幅方向Bに3分割したものであり、各送風ファン22B1,22B2,22B3,22C1,22C2,22C3も同様である。
【0052】
第6の実施形態において、各送風ファン22A,22A2,22A3は送風ファン22Aと同様に、各送風ファン22B1,22B2,22B3は送風ファン22Bと同様に、各送風ファン22C1,22C2,22C3は送風ファン22Cと同様にそれぞれ動作制御される。そしてシート積載装置20Aは、搬送及び積載する転写シートSの長さ情報及び幅情報を、シートサイズ検知センサ4によって検知された転写シートSのサイズ情報、あるいは画像形成部2から入力された転写シートSのサイズ情報から取得する。取得した情報は制御手段23に入力され、入力された転写シートSの幅情報に基づいて制御手段23はシート幅方向Bに配置された各送風ファンをそれぞれ別々に動作制御する。
この構成により、第1ないし第5の実施形態に比して各送風ファンによる風量制御をシート幅方向Bにおいても細かく行うことができ、シート幅方向Bに撓みやうねり等が生じている転写シートSを搬送する際にも上記各実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0053】
上述した各実施形態では、搬送部材6の駆動が開始されて転写シートSの搬送が開始されると、制御手段23が各送風ファン22A,22B,22Cを駆動させる構成としたが、各送風ファン22A,22B,22Cを駆動させるタイミングは、転写シートSの先端部が離脱位置Eにおいて保持部材11から離脱したときであってもよい。保持部材11が離脱位置Eに到達したか否かの判定は、モータ14のステップ数に基づいて制御手段23が判断する。この構成によっても上述と同様の作用効果を得ることができると共に、送風手段の作動を抑制できランニングコストの低減や送風ファンの駆動に伴う騒音の低減を達成できる。
【0054】
上記実施形態では、本発明が適用可能な画像形成装置としてフルカラー画像を形成するインクジェット記録装置を用いた例を示したが、本発明が適用可能な画像形成装置としてはこれに限られず、複写装置、ファクシミリ、複合機等にも本発明は適用可能である。
また上記実施形態では、画像が形成される被記録媒体であるシートとして転写シートSを用いる構成を示したが、この転写シートSとは記録紙には限定されず、厚紙、ハガキ、ロール紙、封筒、普通紙、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、OHPフィルム、樹脂フィルム等も含まれ、シート状で画像形成可能であり、吸湿性を有する物質であればどのようなものを用いてもよい。
【0055】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
[1]シートが積載される積載部材と、前記積載部材に向かうシート搬送方向にシートを搬送する搬送部材と、待機位置において前記搬送部材によって搬送されたシートの先端部を保持した後、前記シート搬送方向に移動してシートの搬送をガイドするガイド部材と、を備え、前記搬送部材のシート搬送速度と前記ガイド部材の移動速度との速度差を用いて、前記ガイド部材に保持されたシートの先端部を離脱位置において該ガイド部材から離脱させ、離脱したシートを前記積載部材に落下させて積載し、前記積載部材へと搬送されるシートに対して、該シートが前記積載部材の上面に向かう向きの空気流を付与する送風手段を前記シート搬送方向に複数備え、前記複数の送風手段のうちの一つは前記離脱位置に対応して配置され、搬送されるシートの長さ情報に基づいて前記複数の送風手段の作動及び風量を制御する制御手段を備えるシート積載装置である。
[2]前記制御手段は、遅くともシートの先端部が前記ガイド部材から離脱したときに、前記離脱位置に対応して配置された前記送風手段を作動させることを特徴とする[1]に記載のシート積載装置である。
[3]前記制御手段は、遅くともシートの先端部が前記ガイド部材から離脱したときに、前記離脱位置に対応して配置された前記送風手段よりも前記シート搬送方向の上流側に設けられた前記送風手段を作動させ、前記複数の送風手段のそれぞれの風量は、前記シート搬送方向の下流側から上流側に向かうに従い段階的に小さくなるようにそれぞれ制御されることを特徴とする[2]に記載のシート積載装置である。
[4]前記制御手段は、前記複数の送風手段のうち、前記積載部材にシートが積載される積載範囲の外部に配置された前記送風手段を作動させないことを特徴とする[1]ないし[3]の何れか一つに記載のシート積載装置である。
[5]前記積載部材に積載されるシート間の空気を吸引する吸引部材を備え、前記制御手段は、前記搬送されるシートの長さ情報に基づいて前記吸引部材の作動を制御することを特徴とする[1]ないし[4]の何れか一つに記載のシート積載装置である。
[6]前記ガイド部材は進入するシートの先端部を保持する保持部材を有し、前記制御手段は前記保持部材にシートの先端部が所定量進入した後に前記ガイド部材の搬送移動を開始させ、前記所定量は前記搬送されるシートの長さ情報に基づいて設定されることを特徴とする[1]ないし[5]の何れか一つに記載のシート積載装置である。
[7]前記離脱位置において前記ガイド部材から離脱したシートに続いて搬送される後続シートの先端部を検知する保持タイミング検知手段を備え、前記保持タイミング検知手段からの情報に基づいて、前記ガイド部材が前記待機位置に到着するタイミングを前記後続シートが前記ガイド部材に保持される直前となるように制御することを特徴とする[1]ないし[6]の何れか一つに記載のシート積載装置である。
[8]前記積載部材にシートが積載される積載範囲に落下するシートの高さを検知するシート高さ検知手段を設け、落下中のシートの高さが当該シートの標準値よりも低い場合には、落下中のシートの高さが前記標準値の場合に比して前記離脱位置に対応して配置された前記送風手段よりも前記シート搬送方向の上流側に設けられた前記送風手段の風量を小さくすることを特徴とする[1]ないし[7]の何れか一つに記載のシート積載装置である。
[9]前記積載部材にシートが積載される積載範囲に落下するシートの高さを検知するシート高さ検知手段を設け、落下中のシートの高さが当該シートの標準値よりも低い場合には、落下中のシートの高さが前記標準値の場合に比して前記所定量を大きくすることを特徴とする[6]記載のシート積載装置である。
[10]前記積載部材にシートが積載される積載範囲に落下するシートの高さを検知するシート高さ検知手段を設け、落下中のシートの高さが当該シートの標準値よりも高い場合には、落下中のシートの高さが前記標準値の場合に比して前記離脱位置に対応して配置された前記送風手段よりも前記シート搬送方向の上流側に設けられた前記送風手段の風量を大きくすることを特徴とする[1]ないし[8]の何れか一つに記載のシート積載装置である。
[11]前記積載部材にシートが積載される積載範囲に落下するシートの高さを検知するシート高さ検知手段を設け、落下中のシートの高さが当該シートの標準値よりも高い場合には、落下中のシートの高さが前記標準値の場合に比して前記所定量を小さくすることを特徴とする[6]または[9]記載のシート積載装置である。
[12]前記シート高さ検知手段の検知情報及びそのときの前記送風手段の風量を搬送されているシートの重さ情報に対して紐付けると共に経時的に風量データとして蓄積し、搬送経験がある重さのシートを再び搬送する場合には、蓄積された前記風量データを適用することを特徴とする[8]または[10]記載のシート積載装置である。
[13]前記シート高さ検知手段の検知情報及びそのときの前記所定量を搬送されているシートの重さ情報に対して紐付けると共に経時的に所定量データとして蓄積し、搬送経験がある重さのシートを再び搬送する場合には、蓄積された前記所定量データを適用することを特徴とする[9]または[11]記載のシート積載装置である。
[14]前記送風手段を前記シート搬送方向に直交するシート幅方向に複数備え、前記制御手段は搬送されるシートの長さ情報及び幅情報に基づいて前記複数の送風手段の作動及び風量を制御することを特徴とする[1]ないし[13]の何れか一つに記載のシート積載装置である。
[15][1]1ないし[14]の何れか一つに記載のシート積載装置を備えた画像形成装置である。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0057】
1 画像形成装置
5 積載部材(シートトレイ)
6 搬送部材
8 保持タイミング検知手段(シート先端検知センサ)
11 保持部材
20,20A シート積載装置
21 ガイド部材
20A,20B,20C 送風手段(送風ファン)
23 制御手段
24 吸引部材(吸引ファン)
25 シート高さ検知手段(落下シート検知センサ)
A シート搬送方向
B シート幅方向
C 所定量
E 離脱位置
H1,H2,H3 風量
S シート(転写シート)
S2 後続シート(後続転写シート)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0058】
【特許文献1】特開2008-94582号公報
【特許文献2】特開2019-182655号公報
【特許文献3】特開2020-158305号公報
【特許文献4】特開2022-25900号公報