(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155290
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】測定装置および方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
G01B11/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069901
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】519250327
【氏名又は名称】株式会社XMAT
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】面 政也
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065BB27
2F065CC14
2F065FF31
2F065HH04
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065MM03
2F065MM04
2F065MM16
2F065MM26
2F065PP04
2F065PP22
(57)【要約】
【課題】構造物の中の目的とする箇所が容易に特定できるようにする。
【解決手段】空間情報取得部103は、自身の周辺にある周辺物体と自身との距離を測定することで、自身が配置される空間における自身の相対的な位置を取得して、この測定実施空間に基本座標系を設定する。標設定部104は、空間情報取得部103が取得した、測定対象に設けられた基準マークと空間情報取得部103との相対的な位置関係から、基本座標系の原点を基準マークの位置とした測定座標系を設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象に接触または近接させて前記測定対象の状態を測定する測定部と、
前記測定部が取り付けられた装置本体と、
前記装置本体に着脱可能に取り付けられて、自身の周辺にある周辺物体と自身との距離を測定することで自身が配置される空間における自身の相対的な位置を取得して前記空間に基本座標系を設定する空間情報取得部と、
前記空間情報取得部が取得した、前記測定対象に設けられた基準マークと前記空間情報取得部との相対的な位置関係から、前記基本座標系の原点を前記基準マークの位置とした測定座標系を設定する座標設定部と、
前記基準マークの位置に前記測定部を配置した状態で前記空間情報取得部が取得した前記基準マークの位置と自身との相対的な位置関係から、前記空間情報取得部と前記測定部との相対的な取付け位置の関係を補正値として求める補正値算出部と、
前記測定部を前記測定対象の測定位置に配置した状態で前記空間情報取得部が取得した前記基準マークの位置と前記空間情報取得部との相対的な位置関係を前記補正値で補正して、前記測定部の前記測定座標系における測定座標を求める測定位置算出部と
を備える測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の測定装置において、
前記空間情報取得部は、前記空間における前記空間情報取得部の相対的な位置関係を取得するための、前記空間情報取得部による前記周辺物体との距離の測定とともに、前記周辺物体を撮像するカメラを備え、
さらに、前記カメラが撮像した画像の中より前記基準マークを検出するマーク検出部を備え、
前記空間情報取得部は、前記マーク検出部が検出した前記基準マークと前記空間情報取得部との相対的な位置関係を取得し、
前記座標設定部は、前記空間情報取得部が取得した前記基準マークと前記空間情報取得部との相対的な位置関係から前記測定座標系を設定する測定装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の測定装置において、
前記測定位置算出部が求めた前記測定座標を表示する表示部をさらに備える測定装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の測定装置において、
前記測定部が測定した測定値に前記測定位置算出部が求めた前記測定座標を関連させて記憶する記憶部をさらに備える測定装置。
【請求項5】
測定対象に接触または近接させて前記測定対象の状態を測定する測定部が取り付けられた装置本体に着脱可能に取り付けられた空間情報取得部により、前記空間情報取得部の周辺にある周辺物体と前記空間情報取得部との距離を測定することで、前記空間情報取得部が配置される空間における前記空間情報取得部の相対的な位置関係を取得して前記空間に基本座標系を設定する空間情報取得ステップと、
前記空間情報取得部が取得した、前記測定対象に設けられた基準マークと前記空間情報取得部との相対的な位置関係から、前記基本座標系の原点を前記基準マークの位置とした測定座標系を設定する座標設定ステップと、
前記基準マークの位置に前記測定部を配置した状態で前記空間情報取得部が取得した前記基準マークの位置と前記空間情報取得部との相対的な位置関係から、前記空間情報取得部と前記測定部との相対的な取付け位置の関係を補正値として求める補正値算出ステップと、
前記測定対象の測定位置に前記測定部を配置して、前記測定位置の状態を測定する測定ステップと、
前記測定ステップで前記空間情報取得部が取得した前記基準マークの位置と前記空間情報取得部との相対的な位置関係を前記補正値で補正して、前記測定部の前記測定座標系における測定座標を求める測定位置算出ステップと
を備える測定方法。
【請求項6】
請求項5記載の測定方法において、
前記空間における前記空間情報取得部の相対的な位置関係を取得するための、前記空間情報取得部による前記周辺物体との距離の測定とともに、前記周辺物体をカメラで撮像する撮像ステップと、
前記カメラが撮像した画像の中より前記基準マークを検出するマーク検出ステップとをさらに備え、
前記座標設定ステップでは、前記空間情報取得部により前記マーク検出ステップで検出した前記基準マークと前記空間情報取得部との相対的な位置関係を取得し、前記空間情報取得部が取得した前記基準マークと前記空間情報取得部との相対的な位置関係から前記測定座標系を設定する測定方法。
【請求項7】
請求項5または6記載の測定方法において、
前記測定位置算出ステップで求めた前記測定座標を表示部に表示する表示ステップをさらに備える測定方法。
【請求項8】
請求項5または6記載の測定方法において、
前記測定ステップで測定した測定値に前記測定位置算出ステップで求めた前記測定座標を関連させて記憶部に記憶する記憶ステップをさらに備える測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばトンネル、橋、堤防、建築物などのコンクリートからなる構造物(構造体)の老朽化に対応するため、種々の検査(測定)を行って劣化した部分を特定し、劣化した部分を補修することによってコンクリート構造体を維持することが行われている。このような検査には、超音波法、レーダー法、赤外線法、X線法、打音法などによって、コンクリート構造物の浮き、剥離、ひび割れなどの物理的な劣化状態の検査がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した検査を、どの箇所に実施するのかを特定することが容易ではないという問題があった。また、検査(測定)した箇所の特定が容易ではないため、検査結果を用いて構造物の劣化した部分を補修するときに、補修箇所を特定することが容易ではないという問題があった。このように、従来は、構造物の中で目的とする箇所の特定が容易ではないという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、構造物の中の目的とする箇所が容易に特定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る測定装置は、測定対象に接触または近接させて測定対象の状態を測定する測定部と、測定部が取り付けられた装置本体と、装置本体に着脱可能に取り付けられて、自身の周辺にある周辺物体と自身との距離を測定することで自身が配置される空間における自身の相対的な位置を取得して空間に基本座標系を設定する空間情報取得部と、空間情報取得部が取得した、測定対象に設けられた基準マークと空間情報取得部との相対的な位置関係から、基本座標系の原点を基準マークの位置とした測定座標系を設定する座標設定部と、基準マークの位置に測定部を配置した状態で空間情報取得部が取得した基準マークの位置と自身との相対的な位置関係から、空間情報取得部と測定部との相対的な取付け位置の関係を補正値として求める補正値算出部と、測定部を測定対象の測定位置に配置した状態で空間情報取得部が取得した基準マークの位置と空間情報取得部との相対的な位置関係を補正値で補正して、測定部の測定座標系における測定座標を求める測定位置算出部とを備える。
【0007】
上記測定装置の一構成例において、空間情報取得部は、空間における空間情報取得部の相対的な位置関係を取得するための、空間情報取得部による周辺物体との距離の測定とともに、周辺物体を撮像するカメラを備え、さらに、カメラが撮像した画像の中より基準マークを検出するマーク検出部を備え、空間情報取得部は、マーク検出部が検出した基準マークと空間情報取得部との相対的な位置関係を取得し、座標設定部は、空間情報取得部が取得した基準マークと空間情報取得部との相対的な位置関係から測定座標系を設定する。
【0008】
上記測定装置の一構成例において、測定位置算出部が求めた測定座標を表示する表示部をさらに備える。
【0009】
上記測定装置の一構成例において、測定部が測定した測定値に測定位置算出部が求めた測定座標を関連させて記憶する記憶部をさらに備える。
【0010】
また、本発明に係る測定方法は、測定対象に接触または近接させて測定対象の状態を測定する測定部が取り付けられた装置本体に着脱可能に取り付けられた空間情報取得部により、空間情報取得部の周辺にある周辺物体と空間情報取得部との距離を測定することで、空間情報取得部が配置される空間における空間情報取得部の相対的な位置関係を取得して空間に基本座標系を設定する空間情報取得ステップと、空間情報取得部が取得した、測定対象に設けられた基準マークと空間情報取得部との相対的な位置関係から、基本座標系の原点を基準マークの位置とした測定座標系を設定する座標設定ステップと、基準マークの位置に測定部を配置した状態で空間情報取得部が取得した基準マークの位置と空間情報取得部との相対的な位置関係から、空間情報取得部と測定部との相対的な取付け位置の関係を補正値として求める補正値算出ステップと、測定対象の測定位置に測定部を配置して、測定位置の状態を測定する測定ステップと、測定ステップで空間情報取得部が取得した基準マークの位置と空間情報取得部との相対的な位置関係を補正値で補正して、測定部の測定座標系における測定座標を求める測定位置算出ステップとを備える。
【0011】
上記測定方法の一構成例において、空間における空間情報取得部の相対的な位置関係を取得するための、空間情報取得部による周辺物体との距離の測定とともに、周辺物体をカメラで撮像する撮像ステップと、カメラが撮像した画像の中より基準マークを検出するマーク検出ステップとをさらに備え、座標設定ステップでは、空間情報取得部によりマーク検出ステップで検出した基準マークと空間情報取得部との相対的な位置関係を取得し、空間情報取得部が取得した基準マークと空間情報取得部との相対的な位置関係から測定座標系を設定する。
上記測定方法の一構成例において、測定位置算出ステップで求めた測定座標を表示部に表示する表示ステップをさらに備える。
【0012】
上記測定方法の一構成例において、測定ステップで測定した測定値に測定位置算出ステップで求めた測定座標を関連させて記憶部に記憶する記憶ステップをさらに備える。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、測定部と着脱可能とされている空間情報取得部との相対的な位置の関係を求めるので、構造物の中の目的とする箇所が容易に特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る測定装置の構成を示す構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係る測定装置の構成を示す構成図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る測定方法を説明するフローチャートである。
【
図4】
図4は、測定が実施される空間の状態の一例を説明する説明図である。
【
図5】
図5は、空間情報取得部103が設定する基本座標系の一例を説明する説明図である。
【
図6】
図6は、基準マーク131による座標系XYZと空間情報取得部103の座標系X’Y’Z’との相対的な関係を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る測定装置について
図1、
図2を参照して説明する。この測定装置は、測定部101、装置本体102、空間情報取得部103、座標設定部104、補正値算出部105、測定位置算出部106、表示部107、記憶部108を備える。
【0016】
測定部101は、測定対象に接触または近接させて測定対象の状態を測定する。測定部101は、装置本体102に取り付けられている。装置本体102は、
図2に示すように、把持部109を備え、携帯可能とされている。測定部101、装置本体102は、例えば、携帯用の蛍光X線分析装置とすることができる。また、測定部101、装置本体102は、例えば打音検査装置とすることができる。測定部101は、例えば、検出器が配置される箇所となる。
【0017】
空間情報取得部103は、自身の周辺にある周辺物体と自身との距離を測定することで、自身が配置される空間における自身の相対的な位置を取得して、この測定実施空間に基本座標系を設定する。ここで、上述した空間とは、この測定装置を用いて測定が実施される、測定対象が配置されている測定実施空間である。なお、設定する基本座標系は、測定実施空間に設けられる仮想のものとなる。空間情報取得部103は、装置本体102に着脱可能に取り付けられる。空間情報取得部103は、例えば、よく知られたLiDAR(Light Detection And Ranging)センサを搭載した携帯計測機器とすることができる。空間情報取得部103は、例えば、LiDARセンサを搭載したスマートフォンとすることができる。また、空間情報取得部103は、TOF(Time Of Flight)カメラを備えた携帯計測機器でとすることができる。
【0018】
座標設定部104は、空間情報取得部103が取得した、測定対象に設けられた基準マークと空間情報取得部103との相対的な位置関係から、基本座標系の原点を基準マークの位置とした測定座標系を設定する。なお、設定する測定座標系は、測定実施空間に設けられる仮想のものとなる。
【0019】
補正値算出部105は、基準マークの位置に測定部101を配置した状態で空間情報取得部103が取得した基準マークの位置と自身との相対的な位置関係から、空間情報取得部103と測定部101との相対的な取付け位置の関係を補正値として求める。
【0020】
測定位置算出部106は、測定部101を測定対象の測定位置に配置した状態で空間情報取得部103が取得した基準マークの位置と、空間情報取得部103との、相対的な位置関係を補正値で補正して、測定部101の測定座標系における測定座標を求める。
【0021】
また、この測定装置は、空間情報取得部103が、空間(測定実施空間)における空間情報取得部103の相対的な位置関係を取得するための、空間情報取得部103による周辺物体との距離の測定とともに、周辺物体を撮像するカメラ103aを備える。さらに、この測定装置は、カメラ103aが撮像した画像の中より基準マークを検出するマーク検出部110を備える。
【0022】
空間情報取得部103は、マーク検出部110が検出した基準マークと空間情報取得部103との相対的な位置関係を取得する。座標設定部104は、空間情報取得部103が取得した基準マークと空間情報取得部103との相対的な位置関係から測定座標系を設定する。
【0023】
表示部107は、測定位置算出部106が求めた測定座標を表示する。表示部107は、例えば、液晶ディスプレイから構成することができる。記憶部108は、測定部101が測定した測定値に測定位置算出部106が求めた測定座標を関連させて記憶する。
【0024】
上述したように、実施の形態に係る測定装置によれば、測定部101と着脱可能とされている空間情報取得部103との相対的な位置の関係を求めるので、基準マーク131を原点とした座標系における測定部101が配置される構造物の中の目的とする測定箇所の座標が、極めて容易に把握できるようになる。
【0025】
予め設定されている位置に設けられる基準マーク131を原点とした座標系は、例えば、測定が実施され前から定義することができ。従って、測定の実施において得られる測定座標が把握されれば、測定前に定義している測定対象箇所であるか否かが容易に判定できる。また、予め設定されている位置に設けられる基準マーク131を原点とした座標系は、例えば、測定を実施した後の時点で容易に再現できる。従って、測定を実施したことにより得られる測定座標が記憶(記録)されていれば、測定された測定値がどの箇所を措定した結果であるかが容易に識別でき、例えば、修復対象箇所が容易に判別できる。
【0026】
なお、座標設定部104、補正値算出部105、測定位置算出部106、表示部107、マーク検出部110、および記憶部108は、例えば、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)と主記憶装置と外部記憶装置となどを備えたコンピュータ機器とし、主記憶装置に展開されたプログラムによりCPUが動作する(プログラムを実行する)ことで、上述した各機能が実現されるようにすることができる。
【0027】
座標設定部104、補正値算出部105、測定位置算出部106、表示部107、マーク検出部110、および記憶部108は、装置本体102に収容されたコンピュータ機器から構成することができる。なお、上記プログラムは、後述する測定方法をコンピュータが実行するためのプログラムである。また、ネットワークに接続するネットワーク接続装置を備えることもできる。また、各機能は、複数のコンピュータ機器に分散させることもできる。
【0028】
次に、実施の形態に係る測定方法について
図3のフローチャートを用いて説明する。まず、第1ステップS101で、空間情報取得部103により、空間情報取得部103が配置される空間(測定実施空間)における空間情報取得部103の相対的な位置関係を取得して、測定実施空間に基本座標系を設定する(空間情報取得ステップ)。空間情報取得部103は、空間情報取得部103の周辺にある周辺物体と空間情報取得部103との距離を測定することで、上述した相対的な位置関係を取得する。
【0029】
例えば、
図4に示すように、測定実施空間150は、鉄筋コンクリート構造の建造物内の、第1壁面151、第2壁面152、床面153などを備えた一室とすることができる。この場合、周辺物体は、第1壁面151、第2壁面152、床面153などとなる。また、測定対象は、第1壁面151とすることができ、この場合、第1壁面151に基準マーク131が設けられている。基準マーク131は、例えば、マトリックス型2次元コードとすることができる。
【0030】
次に、第2ステップS102で、空間情報取得部103が、上述した周辺物体との距離の測定とともに、周辺物体をカメラ103aで撮像する(撮像ステップ)。次に、第3ステップS103で、マーク検出部110が、カメラ103aが撮像した画像の中より基準マーク131を検出する(マーク検出ステップ)。例えば、よく知られた画像処理機能により、設定されている基準マーク131を検出する。
【0031】
次に、第4ステップS104で、空間情報取得部103が取得した、測定対象の第1壁面151に設けられた基準マーク131と空間情報取得部103との相対的な位置関係から、基本座標系の原点を基準マーク131の位置をとした測定座標系を設定する(座標設定ステップ)。第4ステップS104(座標設定ステップ)では、検出された基準マーク131と空間情報取得部103との相対的な位置関係を取得し、取得した基準マーク131と空間情報取得部103との相対的な位置関係から測定座標系を設定する。
【0032】
次に、第5ステップS105で、空間情報取得部103と測定部101との相対的な取付け位置の関係を補正値として求める(補正値算出ステップ)。より詳細に説明すると、まず、基準マーク131の位置に測定部101を配置する。例えば、把持部109を把持して測定装置を操作している測定者の操作により、基準マーク131の位置に測定部101の先端部を接触させる。この状態で空間情報取得部103が取得した基準マーク131の位置と空間情報取得部103との相対的な位置関係から、空間情報取得部103と測定部101との相対的な取付け位置の関係を補正値として求める。
【0033】
ここで、基準マーク131には、床面153に水平で第2壁面152の方向が+方向となるX軸、床面153に垂直な方向にY軸、第1壁面151に垂直が方向にZ軸が設定されている。各軸が交わる点が測定座標系の原点となる。
【0034】
また、空間情報取得部103が設定する基本座標系は、
図5に示すようにX’軸、Y’軸、Z’軸とする。把持部109を大地(床面153)の側とし、測定部101を第1壁面151に向けて測定操作をする測定装置は、Z’軸が、第1壁面151に垂直が方向となり、Y’軸が床面153に垂直な方向となる。また、X’軸は、床面153に水平で第2壁面152の方向となる。
【0035】
基準マーク131の位置への測定部101の配置では、基準マーク131の各軸(X軸、Y軸、Z軸)と、空間情報取得部103が設定している各軸(X’軸、Y’軸、Z’軸)の各々が平行となるように配置する。この状態としたときの空間情報取得部103の座標を(a、b、c)とする。基準マーク131による座標系XYZと空間情報取得部103の座標系X’Y’Z’との相対的な関係を
図6に示す。
図6の(a)は、第1壁面151に垂直な方向から眺めた状態を示し、
図6の(b)は、側面から眺めた状態を示している。得られた(a、b、c)と、X軸,Y軸,Z軸と、X’軸,Y’軸,Z’軸との関係を用いれば、空間情報取得部103の座標から、測定部101の座標を取得することができる。
【0036】
次に、第6ステップS106で、測定対象の測定位置に測定部101を配置して、測定位置の状態を測定する(測定ステップ)。次に、第7ステップS107で、測定ステップで空間情報取得部103が取得した基準マーク131の位置と空間情報取得部103との相対的な位置関係を補正値で補正して、測定部101の測定座標系における測定座標を求める(測定位置算出ステップ)。次に、第7ステップS107で、求めた測定座標を表示部107に表示する(表示ステップ)。このように、測定装置を用いた測定において、基準マーク131を原点とした座標系(測定座標系)における測定箇所の座標(測定座標)が、極めて容易に把握できるようになる。
【0037】
上述した測定操作を、予め決められている全ての測定箇所で実施し、実施した全ての測定箇所において測定座標を求めた後、第8ステップS108で、測定した測定値に求めた測定座標を関連させて記憶部108に記憶する(記憶ステップ)。また、記憶部108に記憶した測定値と測定座標とによる測定結果は、測定情報を集約するサーバなどに送信することもできる。
【0038】
以上に説明したように、本発明によれば、測定部と着脱可能とされている空間情報取得部との相対的な位置の関係を求めるので、構造物の中の目的とする箇所が容易に特定できるようになる。
【0039】
本発明によれば、測定毎に異なる空間情報取得部を用いても、測定部で測定する箇所が特定できるので、測定において測定位置に印をつける必要がなく、さらに測定位置を都度紙などに記載する手間もなく、任意の位置の測定を、測定箇所を把握した状態で実施することができる。また、測定により得られた測定値および測定座標のデータを用いることで、測定値の測定位置を例えば3次元的な表示で再現することが可能となる。また、この3次元的な表示を、拡張現実を用いてゴーグルなどで実施することで、現実の構造物に重なるように測定結果を把握することも可能である。
【0040】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されるが、以下には限られない。
【0041】
[付記1]
測定対象に接触または近接させて前記測定対象の状態を測定する測定部と、前記測定部が取り付けられた装置本体と、前記装置本体に着脱可能に取り付けられて、自身の周辺にある周辺物体と自身との距離を測定することで自身が配置される空間における自身の相対的な位置を取得して前記空間に基本座標系を設定する空間情報取得部と、前記空間情報取得部が取得した、前記測定対象に設けられた基準マークと前記空間情報取得部との相対的な位置関係から、前記基本座標系の原点を前記基準マークの位置とした測定座標系を設定する座標設定部と、前記基準マークの位置に前記測定部を配置した状態で前記空間情報取得部が取得した前記基準マークの位置と自身との相対的な位置関係から、前記空間情報取得部と前記測定部との相対的な取付け位置の関係を補正値として求める補正値算出部と、前記測定部を前記測定対象の測定位置に配置した状態で前記空間情報取得部が取得した前記基準マークの位置と前記空間情報取得部との相対的な位置関係を前記補正値で補正して、前記測定部の前記測定座標系における測定座標を求める測定位置算出部とを備える測定装置。
【0042】
[付記2]
付記1記載の測定装置において、前記空間情報取得部は、前記空間における前記空間情報取得部の相対的な位置関係を取得するための、前記空間情報取得部による前記周辺物体との距離の測定とともに、前記周辺物体を撮像するカメラを備え、さらに、前記カメラが撮像した画像の中より前記基準マークを検出するマーク検出部を備え、前記空間情報取得部は、前記マーク検出部が検出した前記基準マークと前記空間情報取得部との相対的な位置関係を取得し、前記座標設定部は、前記空間情報取得部が取得した前記基準マークと前記空間情報取得部との相対的な位置関係から前記測定座標系を設定する測定装置。
【0043】
[付記3]
付記1または2記載の測定装置において、前記測定位置算出部が求めた前記測定座標を表示する表示部をさらに備える測定装置。
【0044】
[付記4]
付記1~3のいずれか1項に記載の測定装置において、前記測定部が測定した測定値に前記測定位置算出部が求めた前記測定座標を関連させて記憶する記憶部をさらに備える測定装置。
【0045】
[付記5]
測定対象に接触または近接させて前記測定対象の状態を測定する測定部が取り付けられた装置本体に着脱可能に取り付けられた空間情報取得部により、前記空間情報取得部の周辺にある周辺物体と前記空間情報取得部との距離を測定することで、前記空間情報取得部が配置される空間における前記空間情報取得部の相対的な位置関係を取得して前記空間に基本座標系を設定する空間情報取得ステップと、前記空間情報取得部が取得した、前記測定対象に設けられた基準マークと前記空間情報取得部との相対的な位置関係から、前記基本座標系の原点を前記基準マークの位置とした測定座標系を設定する座標設定ステップと、前記基準マークの位置に前記測定部を配置した状態で前記空間情報取得部が取得した前記基準マークの位置と前記空間情報取得部との相対的な位置関係から、前記空間情報取得部と前記測定部との相対的な取付け位置の関係を補正値として求める補正値算出ステップと、前記測定対象の測定位置に前記測定部を配置して、前記測定位置の状態を測定する測定ステップと、前記測定ステップで前記空間情報取得部が取得した前記基準マークの位置と前記空間情報取得部との相対的な位置関係を前記補正値で補正して、前記測定部の前記測定座標系における測定座標を求める測定位置算出ステップとを備える測定方法。
【0046】
[付記6]
付記5記載の測定方法において、前記空間における前記空間情報取得部の相対的な位置関係を取得するための、前記空間情報取得部による前記周辺物体との距離の測定とともに、前記周辺物体をカメラで撮像する撮像ステップと、前記カメラが撮像した画像の中より前記基準マークを検出するマーク検出ステップとをさらに備え、前記座標設定ステップでは、前記空間情報取得部により前記マーク検出ステップで検出した前記基準マークと前記空間情報取得部との相対的な位置関係を取得し、前記空間情報取得部が取得した前記基準マークと前記空間情報取得部との相対的な位置関係から前記測定座標系を設定する測定方法。
【0047】
[付記7]
付記5または6記載の測定方法において、前記測定位置算出ステップで求めた前記測定座標を表示部に表示する表示ステップをさらに備える測定方法。
【0048】
[付記8]
付記5~7のいずれか1項に記載の測定方法において、前記測定ステップで測定した測定値に前記測定位置算出ステップで求めた前記測定座標を関連させて記憶部に記憶する記憶ステップをさらに備える測定方法。
【0049】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0050】
101…測定部、102…装置本体、103…空間情報取得部、103a…カメラ、104…座標設定部、105…補正値算出部、106…測定位置算出部、107…表示部、108…記憶部、109…把持部、110…マーク検出部。