(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159312
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】接触判定システム、接触判定用モジュール及び電子機器
(51)【国際特許分類】
G01V 1/00 20240101AFI20241031BHJP
【FI】
G01V1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075217
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 雅明
(72)【発明者】
【氏名】川上 靖洋
(72)【発明者】
【氏名】橘田 康平
(72)【発明者】
【氏名】亀山 泰明
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 清仁
(72)【発明者】
【氏名】星野 翼
(72)【発明者】
【氏名】長田 悠佑
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB01
2G105DD02
2G105EE01
2G105HH02
(57)【要約】
【課題】対象部位への物の接触の有無を精度良く判定でき、かつ物の接触があると判定された場合に対象部位を振動させうる接触判定システムを提供する。
【解決手段】接触判定システム1は、接触判定用モジュール2と、検知用振動制御部3と、判定部4と、ハプティクス用振動制御部5とを備える。接触判定用モジュール2は、検知用振動子5と、振動検知子6と、ハプティクス用振動子25と、検知用振動子5と対象部位9との間で振動の伝播を媒介する第1媒体7と、検知用振動子5と振動検知子6との間で振動の伝播を媒介する第2媒体8と、ハプティクス用振動子25と対象部位9との間で振動の伝播を媒介する第3媒体27と、を備える。ハプティクス用振動制御部26は、判定部4が対象部位9への物の接触が有ると判定した場合に、ハプティクス用振動子25に、振動検知子6が発生させる振動の振動数よりも小さい振動数の振動を発生させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象部位への物の接触の有無を判定する接触判定システムであり、
接触判定用モジュールと、検知用振動制御部と、判定部と、ハプティクス用振動制御部とを備え、
前記接触判定用モジュールは、
検知用振動子と、
振動検知子と、
ハプティクス用振動子と、
前記検知用振動子と前記対象部位との間で振動の伝播を媒介する第1媒体と、
前記検知用振動子と前記振動検知子との間で振動の伝播を媒介する第2媒体と、
前記ハプティクス用振動子と前記対象部位との間で振動の伝播を媒介する第3媒体と、を備え、
前記検知用振動制御部は、前記検知用振動子の動作を制御し、
前記判定部は、前記振動検知子が出力する信号に基づいて、前記対象部位への物の接触の有無を判定し、
前記ハプティクス用振動制御部は、前記判定部が前記対象部位への物の接触が有ると判定した場合に、前記ハプティクス用振動子に、前記振動検知子が発生させる振動の振動数よりも小さい振動数の振動を発生させる、
接触判定システム。
【請求項2】
前記第2媒体は、前記検知用振動子と前記振動検知子との間で前記対象部位を経由することなく振動の伝播を媒介する、
請求項1に記載の接触判定システム。
【請求項3】
前記検知用振動子は、圧電トランスデューサを備える、
請求項1に記載の接触判定システム。
【請求項4】
前記振動検知子は、圧電トランスデューサを備える、
請求項1に記載の接触判定システム。
【請求項5】
前記ハプティクス用振動子は、圧電トランスデューサを備える、
請求項1に記載の接触判定システム。
【請求項6】
前記検知用振動子が発生させる振動の振動数は、20kHz以上である、
請求項1に記載の接触判定システム。
【請求項7】
前記ハプティクス用振動子が発生させる振動の振動数は、50Hz以上500Hz以下である、
請求項1に記載の接触判定システム。
【請求項8】
前記検知用振動子が振動を発生させことで前記振動検知子が出力する信号の振幅が、前記検知用振動子が固有振動数の振動を発生させている場合に前記振動検知子が出力する信号の振幅の50%以上となるように、前記検知用振動子が発生させる振動の振動数が規定されている、
請求項1に記載の接触判定システム。
【請求項9】
前記ハプティクス用振動子が振動を発生させることで前記振動検知子が出力する信号の振幅が、前記ハプティクス用振動子が固有振動数の振動を発生させている場合に前記振動検知子が出力する信号の振幅の50%以上となるように、前記ハプティクス用振動子が発生させる振動の振動数が規定されている、
請求項1に記載の接触判定システム。
【請求項10】
前記接触判定用モジュールが、基板を備え、
前記基板に、前記検知用振動子と前記ハプティクス用振動子とが搭載されている、
請求項1に記載の接触判定システム。
【請求項11】
前記接触判定用モジュールが、前記前記検知用振動子と前記ハプティクス用振動子とのいずれにも電気的に接続する共用電極を備え、
前記共用電極が、前記検知用振動子に駆動用の電力を供給するための電極と、前記ハプティクス用振動子に駆動用の電力を供給するための電極とを兼ねる、
請求項1に記載の接触判定システム。
【請求項12】
前記接触判定用モジュールが、前記検知用振動子と前記ハプティクス用振動子とを兼ねる共用振動子を備える、
請求項1に記載の接触判定システム。
【請求項13】
対象部位への物の接触の有無を判定する接触判定システムに適用される接触判定用モジュールであり、
検知用振動子と、
振動検知子と、
ハプティクス用振動子と、
前記検知用振動子と前記対象部位との間で振動の伝播を媒介する第1媒体と、
前記検知用振動子と前記振動検知子との間で振動の伝播を媒介する第2媒体と、
前記ハプティクス用振動子と前記対象部位との間で振動の伝播を媒介する第3媒体と、を備える、
接触判定用モジュール。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載の接触判定システムと、
前記対象部位を有する部材と、を備える、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に接触判定システム、接触判定用モジュール及び電子機器に関し、詳細には、対象部位への物の接触の有無を判定する接触判定システム、前記の接触判定システムに適用される接触判定用モジュール、及び前記の接触判定システムを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、振動デバイスと、制御部とを有する振動ユニットが開示されている。振動デバイスは、シート状の第1の圧電素子と、第1の圧電素子に対して平行に延在するシート状の第2の圧電素子と、一方の主面に前記第1の圧電素子が配置されるとともに他方の主面に前記第2の圧電素子が配置される振動板とを有する。制御部は、第1の圧電素子に生じた起電力を検出するセンサ回路と、センサ回路において起電力を検出したときに第2の圧電素子に対して駆動電圧を印加する駆動回路とを有する。振動ユニットが指で押下される等して第1の圧電素子が撓むと、第1の圧電素子に起電力が生じていることセンサ回路が検知したら、駆動回路が第2の圧電素子に駆動電圧を印加することで、振動ユニットに指等で触知され得る程度の振動が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の振動デバイスにおいては、指等で第1の圧電素子を撓ませるほど変形させなければ指等で押下されたことが検知されず、かつ第1の圧電素子が生じさせる起電力も僅かである。
【0005】
本開示の課題は、対象部位への物の接触の有無を精度良く判定でき、かつ物の接触があると判定された場合に対象部位を振動させうる接触判定システム、前記の接触判定システムに適用される接触判定用モジュール、及び前記の接触判定システムを備える電子機器を、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の接触判定システムは、対象部位への物の接触の有無を判定する接触判定システムである。前記接触判定システムは、接触判定用モジュールと、検知用振動制御部と、判定部と、ハプティクス用振動制御部とを備える。前記接触判定用モジュールは、検知用振動子と、振動検知子と、ハプティクス用振動子と、前記検知用振動子と前記対象部位との間で振動の伝播を媒介する第1媒体と、前記検知用振動子と前記振動検知子との間で振動の伝播を媒介する第2媒体と、前記ハプティクス用振動子と前記対象部位との間で振動の伝播を媒介する第3媒体と、を備える。前記検知用振動制御部は、前記検知用振動子の動作を制御する。前記判定部は、前記振動検知子が出力する信号に基づいて、前記対象部位への物の接触の有無を判定する。前記ハプティクス用振動制御部は、前記判定部が前記対象部位への物の接触が有ると判定した場合に、前記ハプティクス用振動子に、前記振動検知子が発生させる振動の振動数よりも小さい振動数の振動を発生させる。
【0007】
本開示の一態様の接触判定用モジュールは、対象部位への物の接触の有無を判定する接触判定システムに適用される接触判定用モジュールである。前記接触判定用モジュールは、検知用振動子と、振動検知子と、ハプティクス用振動子と、前記検知用振動子と前記対象部位との間で振動の伝播を媒介する第1媒体と、前記検知用振動子と前記振動検知子との間で振動の伝播を媒介する第2媒体と、前記ハプティクス用振動子と前記対象部位との間で振動の伝播を媒介する第3媒体と、を備える。
【0008】
本開示の一態様の電子機器は、前記接触判定システムと、前記対象部位を有する前記部材と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の課題の一態様によれば、対象部位への物の接触の有無を精度良く判定でき、かつ物の接触があると判定された場合に対象部位を振動させうる接触判定システム、前記の接触判定システムに適用される接触判定用モジュール、及び前記の接触判定システムを備える電子機器を、提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態の接触判定システムを示す構成図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の電子機器の斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態における、検知用振動子に印加される交流電圧の波形と、振動検知子が出力する信号の波形とを示す波形図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態の接触判定システムを示す構成図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態の接触判定システムにおける要部の平面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態における、共用振動子に印加される交流電圧の波形を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態及び変形例について、
図1から
図6を参照して説明する。なお、下記の実施形態及び変形例は、本開示の様々な実施形態の一部に過ぎない。また、下記の実施形態及び変形例は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。実施形態及び変形例の構成を適宜組み合わせることも可能である。
【0012】
以下において参照する図は、いずれも模式的な図であり、図中の構成要素の寸法比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0013】
1.実施形態
(1)概要
実施形態の接触判定システム1は、対象部位9への物の接触の有無を判定する。接触判定システム1は、接触判定用モジュール2と、検知用振動制御部3と、判定部4と、ハプティクス用振動制御部26とを備える。接触判定用モジュール2は、検知用振動子5と、振動検知子6と、ハプティクス用振動子25と、検知用振動子5と対象部位9との間で振動の伝播を媒介する第1媒体7と、検知用振動子5と振動検知子6との間で振動の伝播を媒介する第2媒体8と、ハプティクス用振動子25と対象部位9との間で振動の伝播を媒介する第3媒体27と、を備える。検知用振動制御部3は、検知用振動子5の動作を制御する。判定部4は、振動検知子6が出力する信号に基づいて、対象部位9への物の接触の有無を判定する。ハプティクス用振動制御部26は、判定部4が対象部位9への物の接触が有ると判定した場合に、ハプティクス用振動子25に、検知用振動子5が発生させる振動の振動数よりも小さい振動数の振動を発生させる。
【0014】
検知用振動子5とは、振動を発生させる素子であり、詳しくは電力を振動に変換する素子である。検知用振動子5は、例えば圧電トランスデューサ(圧電素子)を備える。この場合、検知用振動子5は、交流電力を、この交流電力の振幅及び周波数に応じた振幅及び振動数を有する振動に変換しうる。
【0015】
振動検知子6とは、振動に応じた信号を出力する素子である。振動検知子6は、例えば圧電トランスデューサ(圧電素子)を備える。この場合、検知用振動子5は、振動を、この振動の振幅及び振動数に応じた振幅及び周波数を有する交流信号に変換して出力できる。
【0016】
ハプティクス用振動子25とは、振動を発生させる素子であり、詳しくは電力を振動に変換する素子である。ただし、上述のとおり、ハプティクス用振動子25が発生させる振動の振動数は、検知用振動子が発生させる振動の振動数よりも小さい。ハプティクス用振動子25は、例えば圧電トランスデューサ(圧電素子)を備える。この場合、ハプティクス用振動子25は、交流電力を、この交流電力の振幅及び周波数に応じた振幅及び振動数を有する振動に変換しうる。
【0017】
第1媒体7は、振動を伝播しうる物質で構成されていればよい。第1媒体7は、固体であることが好ましい。第1媒体7は、例えば金属又はプラスチックなどで構成される。
【0018】
第2媒体8も、振動を伝播しうる物質で構成されていればよい。第2媒体8は、固体であることが好ましい。第2媒体8は、例えば金属又はプラスチックなどで構成される。
【0019】
第3媒体も、振動を伝播しうる物質で構成されていればよい。第3媒体は、固体であることが好ましい。第3媒体は、例えば金属又はプラスチックなどで構成される。
【0020】
接触判定システム1では、検知用振動制御部3が検知用振動子5を動作させることで検知用振動子5が振動を発生させると、振動が検知用振動子5から第1媒体7を通じて対象部位9へ伝播する。また、振動は、検知用振動子5から第2媒体8を通じて振動検知子6にも伝播する。すなわち、検知用振動子5、第1媒体7、対象部位9、第2媒体8及び振動検知子6を含む振動系が形成され、検知用振動子5が前記の振動系を振動させる。振動検知子6は、検知用振動子5から第2媒体8を通じて振動検知子6に伝播する振動の波形に応じた信号を出力する。
【0021】
対象部位9に物が接触すると、対象部位9の粘性抵抗が高くなり、振動エネルギーが減衰する。このため、対象部位9に物が接触している場合は、物が接触していない場合と比べて、振動系内における振動の波形が、接触する物が与える荷重に応じて変化し、このため振動系内の検知用振動子5の振動の波形も変化する。このため、対象部位9に物が接触している場合は、物が接触していない場合と比べて、振動検知子6が出力する信号が、接触する物が与える荷重に応じて変化する。判定部4は、振動検知子6が出力する信号の、接触する物が与える変化に基づいて、対象部位9への物の接触の有無を判定することができる。
【0022】
判定部4が、対象部位9への物の接触が有り、それにより対象部位9にある程度の荷重が与えられていると判定した場合、ハプティクス用振動制御部26が、ハプティクス用振動子25を動作させることでハプティクス用振動子25が振動を発生させる。この振動が、第3媒体27を通じて対象部位9へ伝播し、更に対象部位9に接触している物に伝播する。これにより、対象部位9に接触している物がフィードバックを得ることができる。
【0023】
実施形態の電子機器24は、接触判定システム1と、対象部位9を有する部材16と、を備える。接触判定システム1は、例えばスマートフォン又はヘッドマウントディスプレイなどの電子機器24における、タッチスイッチへのタッチ操作を検出するためのシステムとして、適用されうる(
図2参照)。すなわち、接触判定システム1による判定の結果が、電子機器24への動作指令として利用されうる。
【0024】
(2)第1実施形態
接触判定システム1の第1実施形態について説明する。
【0025】
接触判定システム1は、接触判定用モジュール2と、ケース体10と、処理部21と、記憶部13と、検知用駆動回路22と、コンバータ23と、ハプティクス用駆動回路28とを、備える(
図1参照)。
【0026】
対象部位9を有する部材16に、接触判定用モジュール2が、固定されている。対象部位9を有する部材16は、例えば電子機器24の筐体であるが、これに限られない(
図2参照)。部材16は、例えば金属又はプラスチックから形成されるが、部材16の材質はこれらに限られない。
【0027】
対象部位9は、部材16の一部分である。
図1及び
図2では、部材16における、対象部位9と対象部位9以外の部分との境界を一点鎖線で示しているが、これは便宜的な境界であり、対象部位9と対象部位9以外の部分の間に、必ずしも明確な境界が無くてもよい。対象部位9とは、部材16における、接触判定システム1による物の接触の有無の判定が行われうる部位といえる。
【0028】
接触判定用モジュール2は、検知用振動子5と、振動検知子6と、ハプティクス用振動子25と、基板(振動板)14と、固定部15と、錘31とを備える。
【0029】
基板14は、例えば金属又はプラスチック等から形成される薄板である。基板14は、対象部位9と間隔をあけて対向している。
【0030】
固定部15は、部材16に対して基板14を固定し、かつ部材16と基板14の間に介在している。固定部15の構成に制限はない。例えば固定部15がスペーサであり、このスペーサが基板14と部材16との間に介在し基板14と部材16とに接着されていてもよい。固定部15がビスなどの固定具を含み、固定具により部材16に対して基板14を固定してもよい。第1実施形態では、基板14の一つの端部(第1端部)と第1端部とは反対側の端部(第2端部)との間の位置で、基板14が固定部15で固定されている。基板14における、固定部15で固定されている箇所から第1端部側の部分が検知用振動部32であり、固定部15で固定されている箇所から第2端部側の部分がハプティクス用振動部33である。
【0031】
検知用振動子5と、振動検知子6と、ハプティクス用振動子25とが、基板14に搭載されている。検知用振動子5は、基板14の検知用振動部32における対象部位9と対向する面の上に配置されている。振動検知子6は、基板14の検知用振動部32における対象部位9と対向する面とは反対側の面の上に配置されている。すなわち、検知用振動子5と振動検知子6との間に基板14の検知用振動部32が介在している。ハプティクス用振動子25は、基板14のハプティクス用振動部33における対象部位9と対向する面の上に配置されている。
【0032】
基板14の検知用振動部32と固定部15とが、検知用振動子5と対象部位9との間で振動の伝播を媒介する第1媒体7を、構成している。また、基板14の検知用振動部32における検知用振動子5と振動検知子6との間に介在する部分が、検知用振動子5と振動検知子6との間で対象部位9を経由することなく振動の伝播を媒介する第2媒体8を、構成している。また、基板14のハプティクス用振動部33と固定部15とが、ハプティクス用振動子25と対象部位9との間で振動の伝播を媒介する第3媒体27を、構成している。
【0033】
検知用振動子5には、検知用振動子5を駆動させるための電力を供給する二つの電極((第1駆動電極17及び第2駆動電極18)が電気的に接続されている。第1駆動電極17は検知用振動子5と基板14との間に介在し、第2駆動電極18は検知用振動子5の基板14とは反対側の面に重なっている。
【0034】
振動検知子6には、出力用の二つの電極(第1出力電極19及び第2出力電極20)が電気的に接続されている。第1出力電極19は振動検知子6と基板14との間に介在し、第2出力電極20は振動検知子6の基板14とは反対側の面に重なっている。
【0035】
ハプティクス用振動子25には、ハプティクス用振動子25を駆動させるための電力を供給する二つの電極(第1駆動電極29及び第2駆動電極30)が電気的に接続されている。第1駆動電極29はハプティクス用振動子25と基板14との間に介在し、第2駆動電極30はハプティクス用振動子25の基板14とは反対側の面に重なっている。
【0036】
錘31は、基板14のハプティクス用振動部33における、ハプティクス用振動子25に対して固定部15で固定されている箇所とは反対側の箇所に固定されている。錘31は、ハプティクス用振動子25の固有振動数を調整するために設けられている。具体的には、ハプティクス用振動子25の固有振動数が、検知用振動子5の固有振動数よりも小さく、好ましくは50Hz以上500Hz以下となるように、錘31の質量及び位置が設定される。
【0037】
ケース体10は、開口を有する箱状の部材である。ケース体10は、例えば金属又はプラスチック等から形成される。ケース体10は、対象部位9を有する部材16に、対象部位9を取り巻くように接触する。具体的には、ケース体10は部材16に固定され、ケース体10の開口の縁が、部材16に、対象部位9を取り巻くように接触している。なお、部材16における、ケース体10で取り巻かれている部分が、対象部位9である、ともいえる。ケース体10の内部に、接触判定用モジュール2が配置されている。ケース体10が部材16に固定されている状態で、ケース体10は、ケース体10の内部をケース体10の外部から完全に遮蔽していてもよく、通気及び配線の配置などのためにケース体10の内部をケース体10の外部に部分的に開放していてもよい。ケース体10の天面(対象部位9に接触している側とは反対側の面)を、枠だけ残して全て開放していてもよい。また、対象部位9を取り巻くケース体10の開口の縁のうち、対象部位9に対して、振動が外部に伝わっても問題ない方向にある部分については、部材16に接触せずにこの部分が開放していてもよい。
【0038】
検知用駆動回路22は、検知用振動子5に、検知用振動子5が振動を発生させるための電力を供給する。具体的には、検知用駆動回路22は、第1駆動電極17と第2駆動電極18との間に、交流電圧を印加する。検知用駆動回路22は、後述する検知用振動制御部3による制御を受けて、検知用振動子5に供給する交流電圧の振幅及び周波数を変更可能である。
【0039】
コンバータ23は、振動検知子6が出力する信号を、デジタル信号に変換して、処理部21へ送る。コンバータ23は、更に必要により、信号を増幅してもよい。
【0040】
ハプティクス用駆動回路28は、ハプティクス用振動子25に、ハプティクス用振動子25が振動を発生させるための電力を供給する。具体的には、ハプティクス用駆動回路28は、第1駆動電極29と第2駆動電極30との間に、交流電圧を印加する。ハプティクス用駆動回路28は、後述するハプティクス用振動制御部26による制御を受けて、ハプティクス用振動子25に供給する交流電圧の振幅及び周波数を変更可能である。
【0041】
なお、
図1には、駆動用及び信号出力用などの配線が示されているが、配線の配置位置は、
図1によって限定されない。実際に駆動用の電力を供給するための配線を検知用振動子5に接続する場合は、第1駆動電極17と第2駆動電極18の各々における、固定部15に近い部分に、配線が接続されることが好ましい。また、実際に駆動用の配線をハプティクス用振動子25に接続する場合は、第1駆動電極29と第2駆動電極29の各々における、固定部15に近い部分に、配線が接続されることが好ましい。また、実際に出力用の配線を振動検知子6に接続する場合は、第1出力電極19と第2出力電極20の各々における、固定部15に近い部分に、配線が接続されることが好ましい。これらの場合、振動時の振幅が比較的小さい部分に配線が接続されるため、振動による配線の断線などの不具合が生じにくい。
【0042】
処理部21は、判定部4と、検知用振動制御部3と、ハプティクス用振動制御部26と、補正部11と、設定部12と、を備える。なお、判定部4、検知用振動制御部3、ハプティクス用振動制御部26、補正部11及び設定部12は、必ずしも実体のある構成を示しているわけではなく、処理部21によって実現される機能を示している。
【0043】
処理部21は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。つまり、1以上のプロセッサが1以上のメモリに記憶された1以上のプログラム(アプリケーション)を実行することで、処理部21として機能する。プログラムは、ここでは処理部21の各々のメモリ又は記憶部13に予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。詳しくは、処理部21は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、第1実施形態における接触判定システム1としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリ(記憶部13など)に予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0044】
記憶部13は、1以上の記憶装置を含む。記憶装置は、例えば、RAM、ROM、又はEEPROM等である。記憶部13は、検知用振動子5の振動の振幅の設定値及び振動数の設定値、並びに判定のために使用される閾値などを、記憶している。
【0045】
検知用振動制御部3は、検知用振動子5の動作を制御する。具体的には、例えば検知用振動制御部3は、検知用駆動回路22を制御して、検知用駆動回路22に検知用振動子5へ交流電圧を印加させ、かつ交流電圧の振幅及び周波数を、記憶部13に記憶されている振動の振幅の設定値及び振動数の設定値に応じて変更させる。
【0046】
第1実施形態では、検知用振動制御部3は、検知用振動子5を、検知用振動子5が振動を発生させている振動期間T1と、検知用振動子5が振動を発生させていない振動停止期間T2とが、交互に繰り返すように、制御する。具体的には、検知用駆動回路22が検知用振動子5に交流電圧を印加している期間と、検知用駆動回路22が検知用振動子5へ交流電圧を印加していない期間とが、交互に繰り返すように、検知用振動制御部3は、検知用駆動回路22を制御する(
図3における交流電圧の波形を参照)。すなわち、検知用振動制御部3は、検知用駆動回路22が、振動期間T1に検知用振動子5に交流電圧を印加し、振動停止期間T2には検知用振動子5に交流電圧を印加しないように、検知用駆動回路22を制御する。このため、検知用振動子5を振動させるための消費電力を削減できる。また、後述するように、判定部4が、振動期間T1における振動検知子6が出力する信号の振幅と、振動停止期間T2における残留振動によって振動検知子6が出力する信号の継続時間とのうち、少なくとも一方に基づいて、判定することができる。例えば記憶部13が振動期間T1の設定値と振動停止期間T2の設定値とを記憶しており、振動制御部3は振動期間T1と振動停止期間T2とが前記の設定値と合致するように制御を行う。
【0047】
ハプティクス用振動制御部26は、上述のとおり、判定部4が対象部位9への物の接触が有るとの判定をした場合に、ハプティクス用振動子25に、検知用振動子5が発生させる振動よりも小さい振動数の振動を発生させる。具体的には、ハプティクス用駆動回路28がハプティクス用振動子25に、検知用駆動回路22が検知用振動子5に印加する交流電圧よりも低い周波数の交流電圧を印加するように、ハプティクス用振動制御部26がハプティクス用駆動回路28を制御する。
【0048】
設定部12は、記憶部13に記憶されている振動の振幅の設定値と振動数の設定値とを変更する。また、記憶部13が、振動期間T1の設定値と振動停止期間T2の設定値とを記憶し、かつ設定部12が前記の振動期間T1と振動停止期間T2との各々の設定値を変更してもよい。設定部12は、例えば外部からの指令に応じて、前記の設定値を変更する。このため、設定部12は、設定値の微調整などを行い、判定の精度を高めうる。設定部12の動作の詳細は後に改めて説明する。
【0049】
補正部11は、対象部位9に物が接触している状態で振動検知子6が出力する信号と、対象部位9に物が接触していない状態で振動検知子6が出力する信号とに基づいて、閾値を変更する。閾値とは、判定部4が判定を行うために使用する基準値であり、例えば判定部4は、振動検知子6が出力する信号から求められる検出値と閾値とを比較した結果に基づいて、対象部位9への物の接触の有無を判定する。検出値とは、例えば信号の振幅及び信号の継続時間等である。この補正部11の動作により閾値を変更すると、判定の精度が高まりうる。検出値、及び補正部11による閾値の変更に関して、後に改めて説明する。
【0050】
判定部4は、コンバータ23から送られてきた信号に基づき、対象部位9への物の接触の有無を判定する。
【0051】
接触判定システム1による、対象部位9への物の接触の有無の判定の動作について、説明する。
【0052】
接触判定システム1が動作を開始すると、検知用振動制御部3が検知用駆動回路22を制御し、検知用駆動回路22が、記憶部13に記憶されている振幅の設定値及び振動数の設定値に応じた振幅及び周波数を有する交流電圧を、検知用振動子5に印加する。上述のとおり、検知用振動制御部3は、検知用振動子5を、検知用振動子5が振動を発生させている振動期間T1と、検知用振動子5が振動を発生させていない振動停止期間T2とが、交互に繰り返すように、制御する。
【0053】
振動期間T1には、検知用振動子5が振動を発生し、そのため検知用振動子5、第1媒体7及び対象部位9を含む振動系が振動する。そうすると、検知用振動子5と振動検知子6との間で第2媒体8が振動の伝播を媒介するため、検知用振動子5の振動に応じて振動検知子6が振動し、振動検知子6が、自身の振動の振幅及び振動数に応じた振幅及び周波数を有する交流信号を出力する。振動期間T1では、検知用振動子5が振動し始めると、振動系の振動が安定するまでは検知用振動子5の振動の振幅が徐々に増大する。振動停止期間T2では、残留振動が生じ、残留振動が消失するまでの間、検知用振動子5が、振幅を徐々に小さくさせながら振動する。検知用振動子5が出力する交流信号は、前記の検知用振動子5の振動の変化に応じた変化を有する(
図3参照)。
【0054】
ケース体10は、検知用振動子5が発生させた振動が、対象部位9及び接触判定用モジュール2の外部へ伝播することを、抑制しうる。このため、対象部位9及び接触判定用モジュール2における振動の減衰が抑制され、これにより判定の精度が更に高まりうる。
【0055】
コンバータ23は、振動検知子6が出力する信号を変換してから、処理部21へ送る。判定部4は、この信号に基づいて、対象部位9への物の接触の有無を判定する。
【0056】
判定部4は、振動期間T1における振動検知子6が出力する信号の振幅、振動停止期間T2における残留振動によって振動検知子6が出力する信号の継続時間TS、又はこれらの振幅と継続時間TSとの組み合わせに基づいて、対象部位9への物の接触の有無を判定する。すなわち、判定部4は、信号に基づいて、検出値として、振動期間T1における振動検知子6が出力する信号の振幅と、振動停止期間T2における残留振動によって振動検知子6が出力する信号の継続時間TSとのうち、少なくとも一方を求め、この検出値に基づいて、対象部位9への物の接触の有無を判定する。
【0057】
より詳しく説明すると、対象部位9に物が接触すると、対象部位9において振動エネルギーが減衰し、そのため振動系全体において振動エネルギーが減衰する。このため、対象部位9に物が接触すると、検知用振動子5の振動の振幅が小さくなり、かつ継続時間TSが短くなる傾向が生じる。これに応じて、振動検知子6が出力する信号の振幅が小さくなり、かつ継続時間TSが短くなる。そのため、判定部4は、前記の振幅と継続時間TSとのうち、少なくとも一方に基づいて、対象部位9への物の接触の有無を判定できる。例えば、記憶部13が、物の接触の有無を判定するための閾値として、振動期間T1における信号の最大振幅ASの閾値と、残留振動に対応する信号の継続時間TSの閾値とを記憶する。判定部4は、振動期間T1における信号の最大振幅ASと閾値とを比較した結果と、継続時間TSと閾値とを比較した結果とのうち、少なくとも一方に基づいて、対象部位9への物の接触の有無を判定できる。
【0058】
判定部4が対象部位9への物の接触が有ると判定したら、ハプティクス用振動制御部26は、ハプティクス用駆動回路28がハプティクス用振動子25に交流電圧を印加するように、ハプティクス用駆動回路28を制御する。この場合の、交流電圧は、検知用駆動回路22が検知用振動子5に印加する交流電圧よりも低い周波数を有する。これにより、ハプティクス用振動子25が、検知用振動子5が発生させる振動の振動数よりも小さい振動数の振動を発生する。そのためハプティクス用振動子25、第3媒体27及び対象部位9を含む振動系が振動する。対象部位9が振動することで、対象部位9に接触している物がフィードバックを得ることができる。すなわち、例えば対象部位9に自身の指を接触させた使用者が、指を伝って対象部位9の振動を知覚することで、対象部位9への物の接触がある、との判定がなされたことを知ることができる。
【0059】
また、第1実施形態では、第2媒体8は、検知用振動子5と振動検知子6との間で対象部位9を経由することなく振動の伝播を媒介する。そのため、振動検知子6は、対象部位9から伝播した振動ではなく、検知用振動子5から対象部位9を経由せずに伝播した振動に基づいて、信号を出力しうる。このため、振動検知子6が出力する信号にはノイズが含まれにくく、そのため判定部4による判定の精度がより高まりうる。また、対象部位9から振動検知子6へ振動を伝播させるための媒体が不要である。さらに、検知用振動子5と振動検知子6との間に対象部位9を介在させる必要がないため検知用振動子5と振動検知子6とが近接して配置されうる。このため、接触判定用モジュール2がコンパクトに構成されうる。そのため、例えば電子機器24内における利用可能な空間が限られている場合でも、接触判定用モジュール2が電子機器24に内装されうる。
【0060】
第1実施形態において、判定部4が対象部位9への物の接触の有無を判定することには、物の種類を判定することが含まれてもよい。例えば、判定部4は対象部位9への物の接触の有無を判定するにあたり、対象部位9に接触している物が、人の指であるか、それともスタイラスペンなどの硬質の物品であるかを、併せて判定してもよい。
【0061】
より詳しく説明すると、対象部位9に物が接触すると、上述のとおり、振動エネルギーの減衰により、検知用振動子5の振動の振幅が小さくなり、かつ継続時間TSが短くなる傾向が生じる。このとき、物の種類によって振動エネルギーの減衰の程度が異なるため、物の種類に応じて、検知用振動子5の振動の振幅が小さくなる程度、及び継続時間TSが短くなる程度が、変化する。そのため、判定部4は、信号から求められる検知用振動子5の振動の振幅と、継続時間TSとのうち、少なくとも一方に基づいて、対象部位9に接触している物の種類を判定できる。例えば、記憶部13が、物の種類を判定するための閾値として、振動期間T1における信号の最大振幅の閾値と、残留振動に対応する信号の継続時間TSの閾値とを記憶し、判定部4は、対象部位9への物の接触が有ると判定した場合に、振動期間T1に振動検知子6が出力する信号の振幅と閾値とを比較した結果と、残留振動に対応する信号の継続時間TSと閾値とを比較した結果との、少なくとも一方に基づいて、対象部位9に接触している物の種類を判定できる。
【0062】
検知用振動制御部3は、検知用振動子5の振動停止期間T2の長さを、第1長さと、第1長さよりも長い第2長さとに、選択的に設定可能であってもよい。この場合、検知用振動制御部3は、振動停止期間T2の長さが第1長さに設定されている状態で、判定部4が物の接触が有るとの判定をしない状態が一定期間継続したら、振動停止期間T2の長さを第2長さに設定してもよい。また、検知用振動制御部3は、振動停止期間T2の長さが第2長さに設定されている状態で、判定部4が物の接触が有るとの判定をしたら、振動停止期間T2の長さを第1長さに設定してもよい。この場合、対象部位9に物が接触しない期間が一定以上続いたら振動停止期間T2の長さを第2長さに設定することで消費電力を削減できる。
【0063】
判定部4が対象部位9への物の接触の有無を判定することには、物の接触の仕方を判定することが含まれてもよい。例えば、判定部4は対象部位9への物の接触の有無を判定するにあたり、物が対象部位9に軽く接触しているのか、それとも物が対象部位9を強く押しているのかを、併せて判定してもよい。
【0064】
より詳しく説明すると、対象部位9に物が接触すると、上述のとおり、振動エネルギーの減衰により、検知用振動子5の振動の振幅が小さくなり、かつ継続時間TSが短くなる傾向が生じる。このとき、物が対象部位9に軽く接触している場合と、物が対象部位9を強く押している場合とでは、振動エネルギーの減衰の程度が異なるため、物の接触の仕方に応じて、検知用振動子5の振動の振幅が小さくなる程度、及び継続時間TSが短くなる程度が、変化する。そのため、判定部4は、信号から求められる検知用振動子5の振動の振幅と、継続時間TSとのうち、少なくとも一方に基づいて、対象部位9への物の接触の仕方の判定できる。例えば、記憶部13が、物の種類を判定するための閾値として、振動期間T1に振動検知子6が出力する信号の最大振幅ASの閾値と、残留振動に対応する信号の継続時間の閾値とを記憶する。判定部4は、対象部位9への物の接触が有ると判定した場合に、振動期間T1に振動検知子6が出力する信号の最大振幅ASと閾値とを比較した結果と、残留振動に対応する信号の継続時間と閾値とを比較した結果とのうち、少なくとも一方に基づいて、対象部位9への物の接触の仕方を判定できる。
【0065】
判定部4は、上記の組み合わせにより、対象部位9への物の接触の有無、物の種類、及び物の接触の仕方を、併せて判定してもよい。
【0066】
上述の各閾値は、例えば予め対象部位9への物の接触の有無と振動検知子6が出力する信号との関係を調査した結果に基づいて、判定の精度が高められるように決定されて、記憶部13に記憶される。
【0067】
閾値が決定されて記憶部13に記憶された後、補正部11が、閾値を変更してもよい。すなわち、補正部11が、新たな閾値を決定して、記憶部13に記憶させてもよい。補正部11が閾値を変更する場合、補正部11は、例えば対象部位9に物が接触している状態で振動検知子6が出力する信号と、対象部位9に物が接触していない状態で振動検知子6が出力する信号とに基づいて、新たな閾値を決定し、記憶部13に記憶させる。すなわち、例えば対象部位9に物が接触している状態における信号の振幅と、対象部位9に物が接触していない状態における信号の振幅とから、二つの振幅の間の値を、新たな閾値として決定する。判定することに対象部位9への物の接触の有無を判定することが含まれる場合には、補正部11は、例えば対象部位9に指が接触している状態で振動検知子6が出力する信号と、対象部位9にスタイラスペンが接触している状態で振動検知子6が出力する信号と、対象部位9に物が接触していない状態で振動検知子6が出力する信号とに基づいて、閾値を決定する。判定することに対象部位9への物の接触の仕方を判定することが含まれる場合には、補正部11は、例えば対象部位9に物が軽く接触している状態で振動検知子6が出力する信号と、対象部位9に物が強く押しつけられている状態で振動検知子6が出力する信号と、対象部位9に物が接触していない状態で振動検知子6が出力する信号とに基づいて、閾値を決定する。前記以外にも、補正部11は、判定に用いられる閾値を、その閾値に応じた方法で変更しうる。
【0068】
補正部11が、閾値を変更すると、例えば使用者が対象部位9に指又はスタイラスペン等を接触させる場合の接触のさせ方に個人差があっても、それに応じて閾値が変更されることで、判定の精度が高まりうる。また、部材16にカバーが被せられるなどして対象部位9における振動の伝わり方が変わった場合などにも、それに応じて補正部11が閾値を変更することで、判定の精度が高まりうる。
【0069】
第1実施形態において、検知用振動子5が発生させる振動の振動数、すなわち記憶部13に記憶されている振動数の設定値は、20kHz以上であることが好ましい。この場合、物質内での振動の伝播性が高まることで、判定の精度が向上しうる。振動の振動数は、例えば1MHz以下である。
【0070】
第1実施形態において、検知用振動子5が発生させる振動の振動数、すなわち記憶部13に記憶されている振動数の設定値は、20kHz以上であることが好ましい。この場合、物質内での振動の伝播性が高まることで、判定の精度が向上しうる。振動の振動数は、例えば1MHz以下である。
【0071】
第1実施形態において、ハプティクス用振動子25が発生させる振動の振動数は、50Hz以上500Hz以下であることが好ましい。この場合、ハプティクス用振動子25が発生させた振動が対象部位9に伝達されると、使用者が指等を伝って対象部位9の振動を容易に知覚しうる。
【0072】
検知用振動子5が振動を発生させることで振動検知子6が出力する信号の振幅が、検知用振動子5が固有振動数の振動を発生させている場合に振動検知子6が出力する信号の振幅の50%以上となるように、検知用振動子5が発生させる振動の振動数が規定されていることが好ましい。すなわち、検知用振動子5は、固有振動数又はそれに近い振動数の振動を発生させることが好ましい。この場合、検知用振動子5と対象部位9との間の振動の伝播性が特に高く、そのため判定の精度が向上しうる。
【0073】
検知用振動子5の固有振動数及び固有振動数での振幅は、例えば次の方法で確認される。部材16と接触判定システム1とを組み合わせ、かつ対象部位9に物が接触していない状態で、検知用振動子5に交流電圧を印加して検知用振動子5に振動を発生させる。交流電圧の周波数を、20kHzから1MHzまで掃引する。周波数を掃引している間に振動検知子6が出力する信号に基づいて、振幅のピーク値が現れる振動の振動数を確認し、この振動数を固有振動数と特定するとともに、振幅のピーク値を固有振動数の場合の振幅と特定する。
【0074】
検知用振動子5の固有振動数が、20kHz以上1MHz以下であるように、基板14の検知用振動部32の形状及び寸法、並びに基板14の検知用振動部32における検知用振動子5の位置等が、適宜設定されることが好ましい。
【0075】
ハプティクス用振動子25が振動を発生させることで振動検知子6が出力する信号の振幅が、ハプティクス用振動子25が固有振動数の振動を発生させている場合に振動検知子6が出力する信号の振幅の50%以上となるように、ハプティクス用振動子25が発生させる振動の振動数が規定されていることが好ましい。すなわち、ハプティクス用振動子25は、固有振動数又はそれに近い振動数の振動を発生させることが好ましい。この場合、ハプティクス用振動子25と対象部位9との間の振動の伝播性が特に高く、そのため使用者が指等を伝って対象部位9の振動を容易に知覚しうる。
【0076】
ハプティクス用振動子25の固有振動数及び固有振動数での振幅は、例えば次の方法で確認される。部材16と接触判定システム1とを組み合わせ、かつ対象部位9に物が接触していない状態で、ハプティクス用振動子25に交流電圧を印加してハプティクス用振動子25に振動を発生させる。交流電圧の周波数を、50Hzから500Hz以下まで掃引する。周波数を掃引している間に振動検知子6が出力する信号に基づいて、振幅のピーク値が現れる振動の振動数を確認し、この振動数を固有振動数と特定するとともに、振幅のピーク値を固有振動数の場合の振幅と特定する。
【0077】
ハプティクス用振動子25の固有振動数が、50Hz以上500Hz以下であるように、基板14のハプティクス用振動部33の形状及び寸法、錘31の位置及び質量、並びにハプティクス用振動部33におけるハプティクス用振動子25の位置等が、適宜設定されることが好ましい。
【0078】
また、設定部12は、記憶部13に振動の振幅の設定値と振動数の設定値とが記憶された後、記憶部13に記憶されている振動の振幅の設定値と振動数の設定値とを変更する。設定部12は、記憶部13に振動期間T1の設定値と振動停止期間T2の設定値とが記憶された後、記憶部13に記憶されている振動期間T1の設定値と振動停止期間T2の設定値とを変更してもよい。設定部12は、例えば外部からの指令に応じて、前記の設定値を変更する。このため、設定部12は、設定値の微調整などを行い、判定の精度を高めうる。例えば接触判定システム1を製造した後、設定部12が設定値を微調整することで、接触判定システム1の出荷前などの調整を行うことができる。また、接触判定システム1を電子機器24に組み込んだ後、設定部12が設定値を微調整することで、電子機器24の出荷前などの調整を行うことができる。
【0079】
(3)電子機器
電子機器24は、接触判定システム1と、対象部位9を有する部材16と、を備える。電子機器24は、例えば上述のとおりスマートフォン又はヘッドマウントディスプレイなどである。対象部位9を有する部材16は、例えば電子機器24の筐体である。例えばスマートフォンなどの電子機器24の筐体の側面に対象部位9があり、この対象部位9が電子機器24を操作するためのタッチスイッチとして利用されうる。すなわち、判定部4が判定した結果が、例えば接触判定システム1を備える電子機器24の制御に用いられる。例えば処理部21が、判定部4による判定の結果に基づいて電子機器24の動作を制御してもよく、判定結果を処理部21が電子機器24の制御装置に送り、この制御装置が、判定の結果に基づいて電子機器24の動作を制御してもよい。
【0080】
なお、電子機器24の種類に制限はなく、電子機器24における対象部位9の用途についても制限はない。
【0081】
(4)第2実施形態
接触判定システム1の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同じ構成については、第1実施形態と同じ符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0082】
接触判定システム1は、接触判定用モジュール2と、ケース体10と、処理部21と、記憶部13と、検知用駆動回路22と、コンバータ23と、駆動回路37とを、備える(
図4参照)。対象部位9を有する部材16に、接触判定用モジュール2及びケース体10が、固定されている。
【0083】
接触判定用モジュール2は、共用振動子34と、振動検知子6と、基板(振動板)14と、固定部15と、錘31とを備える。なお、
図4に示される共用振動子34、振動検知子6、基板(振動板)14、及び錘31の断面は、
図5のX-X断面に相当する。
【0084】
共用振動子34とは、検知用振動子5とハプティクス用振動子25とを兼ねる振動子である。すなわち、検知用振動子5の機能と、ハプティクス用振動子25の機能とが、共用振動子34によって実現される。共用振動子34は、例えば圧電トランスデューサ(圧電素子)を備える。この場合、共用振動子34は、交流電力を、この交流電力の振幅及び周波数に応じた振幅及び振動数を有する振動に変換しうる。
【0085】
共用振動子34と、振動検知子6とが、基板14に搭載されている。共用振動子34は、基板14における対象部位9と対向する面の上に配置されている。振動検知子6は、基板14における対象部位9と対向する面とは反対側の面の上に配置されている。
【0086】
基板14は、検知用振動部32と、ハプティクス用振動部33と、接続部38とを有する。基板14を、
図5に示すように共用振動子34が搭載されている面側から見ると、検知用振動部32とハプティクス用振動部33とは同じ方向に長さを有し、かつ間隔をあけて並列に配置されている。検知用振動部32の一つの端部と、ハプティクス用振動部33の一つの端部とが、接続部38の両端にそれぞれつながっている。検知用振動部32とハプティクス用振動部33とが、接続部38から同じ向きに延びている、ともいえる。検知用振動部32の長さ寸法よりも、ハプティクス用振動部33の長さ寸法の方が長い。ハプティクス用振動部33は、接続部38と反対側の端部に、錘支持部39を有する。ハプティクス用振動部33における錘支持部39の幅は、錘支持部39以外の部分よりも長い。
【0087】
共用振動子34は、検知用振動部32の上、接続部38の上、及びハプティクス用振動部33の錘支持部39を除く部分の上に渡る領域の上に配置されている。
【0088】
共用振動子34には、共用振動子34を駆動させるための電力を供給する二つの共用電極35、36(第1共用電極35及び第2共用電極36)が電気的に接続されている。第1共用電極35は共用振動子34と基板14との間に介在し、第2共用電極36は共用振動子34の基板14とは反対側の面に重なっている。
【0089】
上述のとおり共用振動子34は検知用振動子5とハプティクス用振動子25とを兼ねるため、共用電極35、36は、検知用振動子5に駆動用の電力を供給するための電極と、ハプティクス用振動子25に駆動用の電力を供給するための電極とを、兼ねている。すなわち、第1共用電極35は第1実施形態における第1駆動電極17と第1駆動電極29とを兼ね、第2共用電極36は第1実施形態における第2駆動電極18と第2駆動電極30とを兼ねている。
【0090】
錘31は、錘支持部39における、共用振動子34が配置されている側の面に、固定されている。
【0091】
図6に示すように、振動検知子6は、基板14の検知用振動部32における、共用振動子34が配置されている側とは反対側の面の上に、配置されている。振動検知子6には、出力用の二つの電極(第1出力電極19及び第2出力電極20)が電気的に接続されている。第1出力電極19は振動検知子6と基板14との間に介在し、第2出力電極20は振動検知子6の基板14とは反対側の面に重なっている。
【0092】
固定部15は、部材16に対して基板14を固定している。具体的には、固定部15は、保持部15Aと、支持部15Bとを備える。保持部15Aは、基板14における検知用振動部32の接続部38側の端部、ハプティクス用振動部33の接続部38側の端部及び接続部38を、共用振動子34、振動検知子6及びこれらに接続している電極ごと挟んで保持している。保持部15Aは、第2共用電極36及び第2出力電極20に接している。支持部15Bは保持部15Aに繋がっており、保持部15Aと部材16との間に介在し、保持部を部材16に対して固定している。
【0093】
固定部15が、検知用振動子5として機能する共用振動子34と対象部位9との間で振動の伝播を媒介する第1媒体7を、構成している。また、基板14の検知用振動部32における共用振動子34と振動検知子6との間に介在する部分が、検知用振動子5と振動検知子6との間で対象部位9を経由することなく振動の伝播を媒介する第2媒体8を、構成している。また、固定部15が、ハプティクス用振動子25と対象部位9との間で振動の伝播を媒介する第3媒体27を、構成している。
【0094】
駆動回路37は、検知用駆動回路22とハプティクス用駆動回路28とを兼ねる。すなわち、駆動回路37は、共用振動子34に、共用振動子34を検知用振動子5として機能させるための電力と、共用振動子34をハプティクス用振動子25として機能させるための電力とを、選択的に供給する。具体的には、駆動回路37は、第1共用電極35と第2共用電極36との間に、共用振動子34を検知用振動子5として機能させるための交流電圧(検知用交流電圧)を印加する。また、駆動回路37は、第1共用電極35と第2共用電極36との間に、共用振動子34をハプティクス用振動子25として機能させるための交流電圧(ハプティクス用交流電圧)を印加する。駆動回路37は、後述する検知用振動制御部3による制御を受けて、検知用交流電圧の振幅及び周波数を変更可能である。また、駆動回路37は、後述するハプティクス用振動制御部26による制御を受けて、ハプティクス用交流電圧の振幅及び周波数を変更可能である。
【0095】
コンバータ23は、振動検知子6が出力する信号を、デジタル信号に変換して、処理部21へ送る。コンバータ23は、更に必要により、信号を増幅してもよい。
【0096】
処理部21は、第1実施形態と同様、判定部4と、検知用振動制御部3と、ハプティクス用振動制御部26と、補正部11と、設定部12と、を備える。
【0097】
検知用振動制御部3は、共用振動子34を検知用振動子5として機能させる場合の共用振動子34の動作を制御する。具体的には、例えば検知用振動制御部3は、駆動回路37を制御して、駆動回路37に共用振動子34へ上述の検知用交流電圧を印加させ、かつ検知用交流電圧の振幅及び周波数を、記憶部13に記憶されている振動の振幅の設定値及び振動数の設定値に応じて変更させる。例えば検知用振動制御部3は、共用振動子34を、第1実施形態の場合と同様に、共用振動子34が振動を発生させている振動期間T1と、共用振動子34が振動を発生させていない振動停止期間T2とが、交互に繰り返すように、制御する。
【0098】
判定部4は、振動期間T1における振動検知子6が出力する信号の振幅と、振動停止期間T2における残留振動によって振動検知子6が出力する信号の継続時間とのうち、少なくとも一方に基づいて、判定することができる。
【0099】
ハプティクス用振動制御部26は、共用振動子34をハプティクス用振動子25として機能させる場合の共用振動子34の動作を制御する。具体的には、例えばハプティクス用振動制御部26は、駆動回路37を制御して、駆動回路37に共用振動子34へ上述のハプティクス用交流電圧を印加させる。たとえばハプティクス用振動制御部26は、判定部4が対象部位9への物の接触が有るとの判定をした場合に、共用振動子34にハプティクス用交流電圧を印加する。
【0100】
接触判定システム1による、対象部位9への物の接触の有無の判定の動作について、説明する。
【0101】
接触判定システム1が動作を開始すると、検知用振動制御部3が駆動回路37を検知用駆動回路22として機能するように制御し、駆動回路37が、記憶部13に記憶されている振幅の設定値及び振動数の設定値に応じた振幅及び周波数を有する検知用交流電圧を、共用振動子34に印加する。上述のとおり、検知用振動制御部3は、共用振動子34を、共用振動子34が振動を発生させている振動期間T1と、共用振動子34が振動を発生させていない振動停止期間T2とが、交互に繰り返すように、制御する。
【0102】
検知用交流電圧が印加されている間、共用振動子34は検知用振動子5として機能する。このとき、基板14における検知用振動部32の振動特性が調整されていることで、共用振動子34における特に検知用振動部32に配置されている部分が、主として振動する。
【0103】
共用振動子34と振動検知子6との間で検知用振動部32が第2媒体8として振動の伝播を媒介するため、共用振動子34の振動に応じて振動検知子6が振動し、振動検知子6が、自身の振動の振幅及び振動数に応じた振幅及び周波数を有する交流信号を出力する。
【0104】
コンバータ23は、振動検知子6が出力する信号を変換してから、処理部21へ送る。判定部4は、この信号に基づいて、対象部位9への物の接触の有無を判定する。
【0105】
判定部4が対象部位9への物の接触が有ると判定したら、ハプティクス用振動制御部26は、駆動回路37をハプティクス用駆動回路28として機能させ、共用振動子34に、ハプティクス用交流電圧を一定時間印加するように、駆動回路37を制御する。続いて、検知用振動制御部3は、駆動回路37を検知用駆動回路22として機能するように制御する。
【0106】
図7に、駆動回路37が印加する交流電圧(駆動電圧)の波形の例を示す。
図7には、まず検知用交流電圧が印加され、続いて検知用電圧よりも低い周波数を有するハプティクス用交流電圧が印加され、続いて検知用交流電圧が印加されることが、示されている。
【0107】
ハプティクス用交流電圧が印加されている間、共用振動子34はハプティクス用振動子25として機能する。このとき、基板14におけるハプティクス用振動部33の振動特性が調整されていることで、共用振動子34における特にハプティクス用振動部33に配置されている部分が、主として振動する。これにより、ハプティクス用振動部33、第3媒体27及び対象部位9を含む振動系が振動する。対象部位9が振動することで、対象部位9に接触している物がフィードバックを得ることができる。
【0108】
第2実施形態において、共用振動子34が検知用振動子5として機能する場合に共用振動子34が発生させる振動の振動数、すなわち記憶部13に記憶されている振動数の設定値は、20kHz以上であることが好ましい。振動の振動数は、例えば1MHz以下である。共用振動子34がハプティクス用振動子25として機能する場合に共用振動子34が発生させる振動の振動数は、50Hz以上500Hz以下であることが好ましい。
【0109】
共用振動子34が検知用振動子5として機能する場合に振動検知子6が出力する信号の振幅が、共用振動子34が固有振動数の振動を発生させている場合に振動検知子6が出力する信号の振幅の50%以上となるように、共用振動子34が発生させる振動の振動数が規定されていることが好ましい。すなわち、共用振動子34は、固有振動数又はそれに近い振動数の振動を発生させることが好ましい。この場合、共用振動子34と対象部位9との間の振動の伝播性が特に高く、そのため判定の精度が向上しうる。
【0110】
共用振動子34の、検知用振動子5としての固有振動数及び固有振動数での振幅は、例えば次の方法で確認される。部材16と接触判定システム1とを組み合わせ、かつ対象部位9に物が接触していない状態で、検知用振動子5に交流電圧を印加して検知用振動子5に振動を発生させる。交流電圧の周波数を、20kHzから1MHzまで掃引する。周波数を掃引している間に振動検知子6が出力する信号に基づいて、振幅のピーク値が現れる振動の振動数を確認し、この振動数を固有振動数と特定するとともに、振幅のピーク値を固有振動数の場合の振幅と特定する。
【0111】
なお、この場合の共用振動子34の検知用振動子5としての固有振動数での振動は、主として共用振動子34における検知用振動部32に配置されている部分の振動である。共用振動子34の、検知用振動子5としての固有振動数が、20kHz以上1MHz以下であるように、基板14の検知用振動部32の形状及び寸法、並びに基板14の検知用振動部32における共用振動子34の位置等が、適宜設定されることが好ましい。
【0112】
共用振動子34がハプティクス用振動子25として機能する場合に振動検知子6が出力する信号の振幅が、共用振動子34が固有振動数の振動を発生させている場合に振動検知子6が出力する信号の振幅の50%以上となるように、共用振動子34が発生させる振動の振動数が規定されていることが好ましい。すなわち、共用振動子34は、固有振動数又はそれに近い振動数の振動を発生させることが好ましい。この場合、共用振動子34と対象部位9との間の振動の伝播性が特に高く、そのため使用者が指等を伝って対象部位9の振動を容易に知覚しうる。
【0113】
共用振動子34の、ハプティクス用振動子25としての固有振動数及び固有振動数での振幅は、例えば次の方法で確認される。部材16と接触判定システム1とを組み合わせ、かつ対象部位9に物が接触していない状態で、共用振動子34に交流電圧を印加して共用振動子34に振動を発生させる。交流電圧の周波数を、50Hzから500Hz以下まで掃引する。周波数を掃引している間に振動検知子6が出力する信号に基づいて、振幅のピーク値が現れる振動の振動数を確認し、この振動数を固有振動数と特定するとともに、振幅のピーク値を固有振動数の場合の振幅と特定する。
【0114】
なお、この場合の共用振動子34のハプティクス用振動子25としての固有振動数での振動は、主として共用振動子34におけるハプティクス用振動部33に配置されている部分の振動である。共用振動子34の、ハプティクス用振動子25としての固有振動数が、50Hz以上500Hz以下であるように、基板14のハプティクス用振動部33の形状及び寸法、錘31の位置及び質量、並びにハプティクス用振動部33における共用振動子34の位置等が、適宜設定されることが好ましい。
【0115】
第2実施形態では、上述のように、接触判定用モジュール2が、検知用振動子5とハプティクス用振動子25とを兼ねる共用振動子34を備える。このため、検知用振動子5とハプティクス用振動子25とを別個に設ける必要がなく、接触判定用モジュール2の構造の簡素化及びコンパクト化が可能である。
【0116】
共用振動子34に電気的に接続する電極である第1共用電極35及び第2共用電極36は、検知用振動子5とハプティクス用振動子25とのいずれにも電気的に接続する共用電極35、36であるともいえる。すなわち、共用電極35、36が、検知用振動子5に駆動用の電力を供給するための電極と、ハプティクス用振動子25に駆動用の電力を供給するための電極とを兼ねる。そのため、検知用振動子5に駆動用の電力を供給するための電極と、ハプティクス用振動子25に駆動用の電力を供給するための電極とを別個に設ける必要が無い。更に、検知用振動子5に駆動用の電力を供給するための電極に接続する配線と、ハプティクス用振動子25に駆動用の電力を供給するための電極に接続するための配線とを、別個に設ける必要も無い。そのため、接触判定用モジュール2の構造の簡素化が可能である。
【0117】
また、上述のとおり、基板14において、検知用振動部32の長さ寸法よりも、ハプティクス用振動部33の長さ寸法の方が長く、かつハプティクス用振動部33には錘31が固定されているため、検知用振動部32よりもハプティクス用振動部33の方が、低い振動数で振動しやすい。すなわち、基板14は、検知用振動部32とハプティクス用振動部33という振動特性の異なる2つの部分を有する。このため、共用振動子34における検知用振動部32に配置されている部分とハプティクス用振動部33に配置されている部分とは、異なる振動特性を有しうる。これにより、1つの共用振動子34が、検知用振動子5として機能し、かつハプティクス用振動子25としても機能しうる。
【0118】
2.変形例
上記の実施形態において、ケース体10、設定部12及び補正部11は、接触判定システム1に必須の構成ではない。ケース体10、設定部12及び補正部11のうち少なくとも一つが無くても、接触判定システム1による判定が行われうる。
【0119】
接触判定システム1における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは接触判定システム1に必須の構成ではない。接触判定システム1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、接触判定システム1における処理部21の少なくとも一部の機能は、例えば、サーバ装置及びクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0120】
実施形態における検知用振動子5による振動の発生の仕方は、一例に過ぎない、例えば検知用振動子5は、実施形態のように断続的に振動を発生させるのではなく、連続的に振動を発生させてもよい。
【0121】
第1媒体7、第2媒体8及び第3媒体27の構成は、上記の実施形態には限られない。ただし、第1媒体7、第2媒体8及び第3媒体27は、いずれも固体の物質から構成されていることが好ましい。また、例えば検知用振動子5と対象部位9とが直接接触することで、検知用振動子5と対象部位9との界面が第1媒体7を構成してもよく、検知用振動子5と振動検知子6とが直接接触することで検知用振動子5と振動検知子6との界面が第2媒体8を構成してもよい。
【0122】
第2実施形態において、共用振動子34が、検知用振動部32に配置されている検知用振動子5と、ハプティクス用振動部33に配置されているハプティクス用振動子25とに分離していてもよい。この場合でも、接触判定用モジュール2は、共用電極35、36を備え、共用電極35、36が検知用振動子5とハプティクス用振動子25とのいずれにも電気的に接続してもよい。
【0123】
判定部4は、振動検知子6が出力する信号に基づく判定を行うにあたり、振動検知子6が出力する信号の振幅と残留振動に基づく信号の継続時間との少なくとも一方だけでなく、信号に基づく種々の情報に基づいて判定を行ってもよい。例えば、判定部4は、振動検知子6が出力する信号の振幅の時間変化パターン及び振幅の時間変化を周波数領域に変換して得られる周波数スペクトラム等のうち少なくとも一つのパターンと、記憶部12に記憶されている基準となるパターンとを比較して、パターン判定を行い、その結果に基づいて、対象部位9への物の接触の有無、対象部位9に接触している物の種類などを、判定することもできる。この場合、補正部11は、対象部位9に物が接触している状態で振動検知子6が出力する信号と、対象部位9に物が接触していない状態で振動検知子6が出力する信号とに基づいて、基準となるパターンを変更してもよい。
【0124】
3.態様
第1の態様に係る接触判定システム(1)は、対象部位(9)への物の接触の有無を判定する接触判定システム(1)である。接触判定システム(1)は、接触判定用モジュール(2)と、検知用振動制御部(3)と、判定部(4)と、ハプティクス用振動制御部(26)とを備える。接触判定用モジュール(2)は、検知用振動子(5)と、振動検知子(6)と、ハプティクス用振動子(25)と、検知用振動子(5)と対象部位(9)との間で振動の伝播を媒介する第1媒体(7)と、検知用振動子(5)と振動検知子(6)との間で振動の伝播を媒介する第2媒体(8)と、ハプティクス用振動子(25)と対象部位(9)との間で振動の伝播を媒介する第3媒体(27)と、を備える。検知用振動制御部(3)は、検知用振動子(5)の動作を制御する。判定部(4)は、振動検知子(6)が出力する信号に基づいて、対象部位(9)への物の接触の有無を判定する。ハプティクス用振動制御部(25)は、判定部(4)が対象部位(9)への物の接触が有ると判定した場合に、ハプティクス用振動子(25)に、振動検知子(6)が発生させる振動の振動数よりも小さい振動数の振動を発生させる。
【0125】
この態様によると、対象部位(9)への物の接触の有無を精度良く判定でき、かつ物の接触があると判定された場合に対象部位(9)を振動させうる接触判定システム(1)が得られる。
【0126】
第2の態様では、第1の態様において、第2媒体(8)は、検知用振動子(5)と振動検知子(6)との間で対象部位を経由することなく振動の伝播を媒介する。
【0127】
この態様によると、判定部(4)が対象部位(9)への物の接触の有無をより精度良く判定でき、かつ接触判定システム(1)がコンパクトに構成されうる。
【0128】
第3の態様では、第1又は第2の態様において、検知用振動子(5)は、圧電トランスデューサを備える。
【0129】
この態様によると、検知用振動子(5)に交流電圧を印加することで、検知用振動子(5)が振動を発生させうる。
【0130】
第4の態様では、第1から第3のいずれか一の態様において、振動検知子(6)は、圧電トランスデューサを備える。
【0131】
この態様によると、振動検知子(6)に振動が伝播することで、振動検知子(6)が振動に応じた交流信号を出力しうる。
【0132】
第5の態様では、第1から第4のいずれか一の態様において、ハプティクス用振動子(25)は、圧電トランスデューサを備える。
【0133】
この態様によると、ハプティクス用振動子(25)に交流電圧を印加することで、ハプティクス用振動子(25)が振動を発生させうる。
【0134】
第6の態様では、第1から第5のいずれか一の態様において、検知用振動子(5)が発生させる振動の振動数は、20kHz以上である。
【0135】
この態様によると、判定部(4)が対象部位(9)への物の接触の有無を、より精度良く判定しうる。
【0136】
第7の態様では、第1から第6のいずれか一の態様において、ハプティクス用振動子(25)が発生させる振動の振動数は、50Hz以上500Hz以下である。
【0137】
この態様によると、判定部(4)が対象部位(9)への物の接触の有無を、より精度良く判定しうる。
【0138】
第8の態様では、第1から第7のいずれか一の態様において、検知用振動子(5)が振動を発生させることで振動検知子(6)が出力する信号の振幅が、検知用振動子(5)が固有振動数の振動を発生させている場合に振動検知子(6)が出力する信号の振幅の50%以上となるように、検知用振動子(5)が発生させる振動の振動数が規定されている。
【0139】
この態様によると、判定部(4)が対象部位(9)への物の接触の有無を、より精度良く判定しうる。
【0140】
第9の態様では、第1から第8のいずれか一の態様において、ハプティクス用振動子(25)が振動を発生させることで振動検知子(6)が出力する信号の振幅が、ハプティクス用振動子(25)が固有振動数の振動を発生させている場合に振動検知子(6)が出力する信号の振幅の50%以上となるように、ハプティクス用振動子(25)が発生させる振動の振動数が規定されている。
【0141】
この態様によると、物の接触があると判定された場合に対象部位(9)を、より明確に振動させうる。
【0142】
第10の態様では、第1から第9のいずれか一の態様において、接触判定用モジュール(2)が、基板(14)を備える。基板(14)に、検知用振動子(5)とハプティクス用振動子(25)とが搭載されている。
【0143】
この態様によると、判定部(4)が対象部位(9)への物の接触の有無を、より精度良く判定しうる。
【0144】
第11の態様では、第1から第9のいずれか一の態様において、接触判定用モジュール(2)が、検知用振動子(5)とハプティクス用振動子(25)とのいずれにも電気的に接続する共用電極(35、36)を備える。共用電極(35、36)が、検知用振動子(5)に駆動用の電力を供給するための電極と、ハプティクス用振動子(25)に駆動用の電力を供給するための電極とを兼ねる。
【0145】
この態様によれば、接触判定用モジュール(2)の構造の簡素化が可能である。
【0146】
第12の態様では、第1から第11のいずれか一の態様において、接触判定用モジュール(2)が、検知用振動子(5)とハプティクス用振動子(25)とを兼ねる共用振動子(34)を備える。
【0147】
この態様によれば、接触判定用モジュール(2)の構造の簡素化及びコンパクト化が可能である。
【0148】
第13の態様に係る接触判定用モジュール(2)は、対象部位(9)への物の接触の有無を判定する接触判定システム(1)に適用される接触判定用モジュール(2)である。接触判定用モジュール(2)は、検知用振動子(5)と、振動検知子(6)と、ハプティクス用振動子(25)と、検知用振動子(5)と対象部位(9)との間で振動の伝播を媒介する第1媒体(7)と、検知用振動子(5)と振動検知子(6)との間で振動の伝播を媒介する第2媒体(8)と、ハプティクス用振動子(25)と対象部位(9)との間で振動の伝播を媒介する第3媒体(27)と、を備える。
【0149】
この態様によると、振動検知子(6)が出力する信号に基づいて対象部位(9)への物の接触の有無を精度良く判定でき、かつ物の接触があると判定された場合に対象部位(9)を振動させうる接触判定用モジュール(2)が得られる。
【0150】
第14の態様に係る電子機器(24)は、第1から第12のいずれか一の態様に係る接触判定システム(1)と、対象部位(9)を有する部材(16)と、を備える。
【符号の説明】
【0151】
1 接触判定システム
2 接触判定用モジュール
3 検知用振動制御部
4 判定部
5 検知用振動子
6 振動検知子
7 第1媒体
8 第2媒体
9 対象部位
10 ケース体
11 補正部
12 設定部
13 記憶部
14 基板
16 部材
24 電子機器
25 ハプティクス用振動子
26 ハプティクス用振動制御部
27 第3媒体
34 共用振動子
35 共用電極(第1共用電極)
36 共用電極(第2共用電極)