(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160734
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
G03G 9/08 20060101AFI20241108BHJP
G03G 9/09 20060101ALI20241108BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20241108BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
G03G9/08
G03G9/09
G03G9/097 374
G03G9/097 365
G03G9/087 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075961
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 祥平
(72)【発明者】
【氏名】上倉 健太
(72)【発明者】
【氏名】石井 亨
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA06
2H500AA09
2H500CA06
2H500CA40
2H500CB14
2H500CB15
2H500EA36B
2H500EA42C
2H500EA42D
2H500EA46D
2H500EA49A
2H500EA52D
2H500EA57A
2H500EA57D
2H500EA61C
(57)【要約】
【課題】高温高湿環境下において長時間使用された場合にも、高画質化と現像スジの抑制とを両立できるトナーを提供する。
【解決手段】結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子と、外添剤とを有するトナーであって、該着色剤が、カーボンブラックを含有し、該外添剤が、窒化ホウ素粒子を含み、該トナーが、フマル酸を含有し、該トナー中の該窒化ホウ素粒子の含有割合をa0(質量%)とし、該トナー中の該フマル酸の含有割合をf0(質量%)としたとき、f0/a0が、0.050~5.000であることを特徴とするトナー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子と、外添剤とを有するトナーであって、
該着色剤が、カーボンブラックを含有し、
該外添剤が、窒化ホウ素粒子を含み、
該トナーが、フマル酸を含有し、
該トナー中の該窒化ホウ素粒子の含有割合をa0(質量%)とし、該トナー中の該フマル酸の含有割合をf0(質量%)としたとき、f0/a0が、0.050~5.000であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記a0が、0.010~1.000質量%である、請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記f0が、0.001~0.120質量%である、請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記f0が、0.010~0.120質量%である、請求項3に記載のトナー。
【請求項5】
前記トナー粒子中の前記カーボンブラックの含有割合をc0(質量%)としたとき、
c0/f0が、15~1200である、請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項6】
前記c0/f0が、50~600である、請求項5に記載のトナー。
【請求項7】
前記トナー粒子中の前記カーボンブラックの含有割合をc0(質量%)としたとき、c0/a0が、2~800である、請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項8】
前記c0/a0が、30~500である、請求項7に記載のトナー。
【請求項9】
前記窒化ホウ素粒子の一次粒子の個数平均粒径が、300~2000nmである、請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項10】
前記窒化ホウ素粒子が、扁平状の粒子であり、
前記窒化ホウ素粒子の長径をD(nm)とし、厚さをT(nm)としたとき、D/Tが、6~20である、請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項11】
前記トナーの平均円形度が、0.940~0.980である、請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項12】
前記結着樹脂が、ポリエステル樹脂を含有する、請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項13】
前記ポリエステル樹脂のピークトップ分子量(Mp)が、5000~10000である、請求項12に記載のトナー。
【請求項14】
前記トナー中の、前記トナーからメタノールによって抽出されるフマル酸の含有割合をf1(質量%)としたとき、該f1が、0.0010~0.0100質量%である、請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項15】
走査透過型電子顕微鏡(STEM)による前記トナーの断面観察において、トナー表面から深さ100nmの領域に、前記カーボンブラックが存在している、請求項1又は2に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真法、静電記録法及びトナージェット方式記録法を利用した記録方法に用いられるトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンタ等の画像形成装置は、使用目的及び使用環境の多様化が進むと共に、更なる小型化、高速化、高画質化、高安定化が求められている。
特許文献1には、優れた耐久性を達成するために、例えば、所定の数平均一次粒径の窒化ホウ素を含有する静電潜像現像用トナーにより、トナーの転写性等を維持向上させる提案がなされている。
また、特許文献2には、窒化ホウ素を含有した現像剤を使用し、像担持体に窒化ホウ素粒子と脂肪酸金属塩を供給する供給手段とを備えることで、フィルミングの抑制、クリーニング性の向上による高画質化を達成できるといった提案がなされている。
また、特許文献3には、トナー母粒子と、窒化ホウ素とを混合し、その後熱風によりトナー母粒子の表面処理を行うことで、保存性と低温定着性を両立しながら、耐久性が向上できる提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-128406号公報
【特許文献2】特開2012-103493号公報
【特許文献3】特開2015-125413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らが検討した所、窒化ホウ素粒子は高い潤滑性を有するため、トナー粒子表面への固着状態を維持することが困難であることに想到した。そのため、トナー粒子表面から窒化ホウ素粒子が脱離してしまうことを見出した。特に、高温高湿環境下においては、窒化ホウ素粒子の脱離に伴って、帯電性が低下して高画質化が不十分になる場合や、現像ブレードの汚染によって現像スジが著しく発生する場合があり、改善が必要であった。
また、特許文献2に記載の構成のように、窒化ホウ素粒子や脂肪酸金属塩を積極的に供給する構成であると、長時間の使用の際に、現像ブレードが著しく汚染され、現像スジが発生する場合があることに想到した。
また、特許文献3に記載のように熱風によりトナー母粒子の表面処理を行うと、トナー粒子表面に離型剤、可塑剤が染み出してしまい、現像ブレードを汚染する場合があった。そしてそれを起点として移行した外添剤などが現像ブレード上で付着成長し、融着物となって現像スジとして現れる場合があった。
【0005】
本開示は、上記課題を解決し、高温高湿環境下において長時間使用された場合にも、高画質化と現像スジの抑制とを両立できるトナーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子と、外添剤とを有するトナーであって、
該着色剤が、カーボンブラックを含有し、
該外添剤が、窒化ホウ素粒子を含み、
該トナーが、フマル酸を含有し、
該トナー中の該窒化ホウ素粒子の含有割合をa0(質量%)とし、該トナー中の該フマル酸の含有割合をf0(質量%)としたとき、f0/a0が、0.050~5.000であることを特徴とするトナーに関する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、高温高湿環境下において長時間使用された場合にも、高画質化と現像スジの抑制とを両立できるトナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示において、数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
「モノマーユニット」とは、ポリマー中のモノマー物質の反応した形態をいう。例えば、ポリマー中の重合性単量体が重合した主鎖中の、炭素-炭素結合1区間を1ユニットとする。重合性単量体とは下記式(C)で表すことができる。
【化1】
【0009】
式(C)中、RAは水素原子、又はアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基)を表し、RBは任意の置換基を表す。
【0010】
本開示は、
結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子と、外添剤とを有するトナーであって、
該着色剤が、カーボンブラックを含有し、
該外添剤が、窒化ホウ素粒子を含み、
該トナーが、フマル酸を含有し、
該トナー中の該窒化ホウ素粒子の含有割合をa0(質量%)とし、該トナー中の該フマル酸の含有割合をf0(質量%)としたとき、f0/a0が、0.050~5.000であることを特徴とするトナーに関する。
【0011】
本開示のトナーにおいて、窒化ホウ素粒子の脱離を抑え、高画質化と現像スジの抑制とを両立させることができた要因について、本発明者らは以下のように推測している。
窒化ホウ素粒子は、ホウ素原子と窒素原子のB-N結合からなる六角網目構造が積層した六方晶構造を有している。このとき、窒化ホウ素粒子の六角網目構造面である(0001)面は化学的に非常に安定であるため、他物質に対し優れた潤滑性を示す。
本発明者らは、この窒化ホウ素粒子の(0001)面は、トナー粒子の表面に対しても潤滑性が高い、すなわち窒化ホウ素粒子の(0001)面は、トナー粒子の表面に対する固着性が低いことに想到した。このため、電子写真印字プロセス中において、窒化ホウ素粒子がトナーの表面から脱離してしまう。特に高温高湿環境下においては、現像ブレードと現像担持体とのニップ部で引っ掛かり、堆積、融着することで、現像スジが発生する課題があることに想到した。
【0012】
一方で、六方晶構造をもつ窒化ホウ素粒子は、トナーの着色剤として使用されるカーボ
ンブラックの構造と酷似している。具体的には、窒化ホウ素粒子の表面にはカーボンブラックと同様に、-OH基(水酸基)、-NH2基(アミノ基)等の官能基が存在している。本発明者らは、この類似構造を活かし、カーボンブラックと窒化ホウ素との相互作用を強めることができれば、窒化ホウ素の特徴である潤滑性を維持しつつ、トナー粒子への固着性を増大させ、上記課題を解決することができると考えた。
本発明者らが鋭意検討した結果、トナー粒子に含有される着色剤がカーボンブラックを含有し、かつトナーがフマル酸を含有し、さらにトナー中のフマル酸と窒化ホウ素粒子の含有比率を制御することによって、窒化ホウ素粒子のトナー粒子に対する固着性を著しく向上することができた。その結果、高温高湿環境下において長時間使用された場合に、高画質化と現像スジの抑制との両立ができることを見出した。
【0013】
これは、フマル酸分子中のカルボキシ基が、カーボンブラック、及び窒化ホウ素粒子それぞれに含まれる末端官能基である水酸基やアミノ基などと水素結合を形成し、カーボンブラック及び窒化ホウ素粒子が互いに強固に結びつく。すなわち、カーボンブラック及び窒化ホウ素粒子が、フマル酸を介して相互作用する。その結果、窒化ホウ素粒子のトナー粒子への固着性が増大するためと推察している。
また、フマル酸は二重結合を有し、トランス型の分子構造を有する。そのため、他のジカルボン酸と比較して、立体障害が起きにくく、かつ無水物化も起きない。その結果、フマル酸によって窒化ホウ素粒子及びカーボンブラックを効率的に強固に結びつけることができると考えている。
【0014】
以下に、本開示を詳細に説明する。
トナーは、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子と、外添剤とを有する。着色剤が、カーボンブラックを含有する。外添剤が、窒化ホウ素粒子を含む。トナーが、フマル酸を含有する。トナー中の窒化ホウ素粒子の含有割合をa0(質量%)とし、トナー中のフマル酸の含有割合をf0(質量%)としたとき、f0/a0が、0.050~5.000である。
【0015】
f0/a0は、トナー中の窒化ホウ素粒子の含有割合に対する、トナー中のフマル酸の含有割合の比を表している。f0/a0が上記範囲を満たすことで、トナー中の、窒化ホウ素粒子に対するフマル酸の存在比率が最適となる。結果、フマル酸分子中のカルボキシ基と、窒化ホウ素粒子及びカーボンブラックに含まれる官能基との相互作用が十分となり、窒化ホウ素粒子のトナー粒子への固着性が向上する。そして、現像ブレードの汚染が抑制され、高画質化と現像スジの抑制とを両立することができる。
f0/a0が0.050未満の場合、窒化ホウ素粒子に対してフマル酸が足りず、窒化ホウ素粒子のトナー粒子への固着性が十分に向上せず、現像スジを十分に抑制できない場合がある。一方で、f0/a0が5.000を超える場合、フマル酸分子中のカルボキシ基と、窒化ホウ素粒子及びカーボンブラックに含まれる官能基との相互作用が大きくなりすぎることで、窒化ホウ素粒子の潤滑性が薄れてしまう。さらに、帯電性が低下し、現像ブレードの汚染によって現像スジを十分に抑制できない場合がある。
f0/a0は、0.100~5.000であることがより好ましく、0.200~5.000であることがさらに好ましく、0.250~5.000であることが特に好ましい。上記範囲であると、現像スジをより効果的に抑制することができる。f0/a0は、後述の方法によってf0及びa0を測定し、得られた値から算出する。
【0016】
トナー中のフマル酸の含有割合f0(質量%)は、0.001~0.120質量%であることが好ましく、0.005~0.120質量%であることがより好ましく、0.010~0.120質量%であることがさらに好ましい。上記条件を満たすことで、トナー中のフマル酸の含有割合がより適切となる。フマル酸は帯電性及び吸湿性を有する。したがって、フマル酸の含有割合をより適切にすることで、高温高湿環境下での帯電量と帯電立
ち上がりを両立可能となり、高温高湿環境下で二日放置した後に一枚目を出力した後の、ドラム上のカブリ(以下、H/H環境の耐久カブリともいう)を抑制することができ、高温高湿環境下におけるドット再現性に優れる。
トナー中のフマル酸の含有割合f0の測定方法は後述する。後述の方法によってf0が測定されることは、トナー中のフマル酸が遊離状態で存在することを示している。また、トナー中のフマル酸の含有割合f0の値は、トナー製造時のフマル酸の添加量を変更することによって、調整することができる。
【0017】
トナー中の、トナーからメタノールによって抽出されるフマル酸の含有割合をf1(質量%)としたとき、該f1が、0.0010~0.0100質量%であることが好ましく、0.0012~0.0090質量%であることがより好ましく、0.0014~0.0084質量%であることがさらに好ましい。メタノールはトナー粒子中の結着樹脂をほとんど溶解しないが、トナーの表面近傍に含まれるフマル酸を溶解することはできる。したがって、f1は、トナーの表面近傍に含まれるフマル酸の含有量の指標である。f1が上記の範囲にあることにより、帯電性と吸湿性の両立が高い次元で効果的に達成でき、H/H環境の耐久カブリを大幅に抑制できる。
トナー中の、トナーからメタノールによって抽出されるフマル酸の含有割合f1の測定方法は後述する。また、f1の値は、トナー製造時のフマル酸の添加量を変更することによって調整することができる。
【0018】
f1/a0が、0.005~0.350であることが好ましく、0.005~0.250であることがより好ましく、0.005~0.200であることがさらに好ましい。上記範囲を満たす場合、トナー中の、窒化ホウ素粒子に対するトナーの表面近傍に含まれるフマル酸の存在比率がより適切となる。その結果、フマル酸分子中のカルボキシ基と、窒化ホウ素粒子及びカーボンブラックに含まれる官能基との相互作用が効率よく行われることになり、窒化ホウ素粒子のトナー粒子への固着性がより向上する。さらに、トナーの電荷移動性能が向上し、均一帯電性がより向上する。f1/a0は、後述の方法によってf1及びa0を測定し、得られた値から算出する。
【0019】
トナーにフマル酸を含有させる手段は特に問わず、公知の手段を用いることができる。例えば、トナーに含まれるトナー粒子に、フマル酸を含有させることが挙げられる。すなわち、トナー粒子は、フマル酸を含有することが好ましい。
具体的には、粉砕法によりトナー粒子を製造する場合には、原料の樹脂に予めフマル酸を含有させておく手段や、原料を溶融混練する際にフマル酸を添加してトナー粒子に含有させる手段を用いることができる。
懸濁重合法や乳化凝集法などの湿式製造法でトナー粒子を製造する場合には、原料にフマル酸を含有させる手段や、製造過程において水系媒体を介してフマル酸を添加する手段などを用いることができる。
また、トナー粒子に対して、公知の外添手段を用いて、フマル酸を外添する手段を用いることもできる。
【0020】
トナー中の窒化ホウ素粒子の含有割合a0(質量%)は、0.009~1.050質量%であることが好ましく、0.010~1.000質量%であることがより好ましい。
上記条件を満たすことで、トナー中の窒化ホウ素粒子の含有割合がより適切となる。窒化ホウ素粒子は、潤滑性に優れる。そのため、トナー中の存在割合をより適切にすることで、ブレードクリーニング方式を採用したシステムにおいて、クリーニングブレードと感光体との滑り性を改善することができる。その結果、トナーから感光体に移行した外添剤のクリーニング性を向上させることができる。
トナー中の窒化ホウ素粒子の含有割合a0の測定方法は後述する。また、トナー中の窒化ホウ素粒子の含有割合a0の値は、トナー製造時の窒化ホウ素粒子の添加量を変更する
ことによって、調整することができる。
【0021】
続いて、以下に本開示のトナーに用いることができる材料について詳細に述べる。
【0022】
<窒化ホウ素>
トナーは、外添剤を有する。また、外添剤は、窒化ホウ素粒子を含む。窒化ホウ素粒子は、六方晶構造を有する。すなわち、窒化ホウ素粒子の結晶系は、六方晶系である。
窒化ホウ素粒子を製造する方法として、例えば、融解無水ホウ酸をアンモニアによって還元窒化させる方法がある。還元窒化は、基本的にはB2O3+NH3→2BN+3H2Oの反応式に従う。具体的には例えば、ホウ酸、ホウ酸塩、融解無水ホウ酸などを原料とし、合成炉でアンモニアと反応させて還元窒化させる。その後、高純度化、結晶化処理を経て窒化ホウ素粒子を得ることができる。
酸化ホウ素は温度450℃前後から軟化してガラス状になり、窒化が進行しなくなる。そのため、ホウ酸、ホウ酸塩、融解無水ホウ酸などを原料とし、尿素、ジシアンジアミド、塩化アンモニウムなどを当該原料に添加し、加熱して還元窒化させる。上記の方法で製造した窒化ホウ素粒子は、微量の不純物として酸素原子を含む場合がある。酸素原子量は、原料、反応を進行させるための触媒種、触媒量、反応条件により調整が可能である。
【0023】
窒化ホウ素粒子の一次粒子の個数平均粒径は、300~2000nmであることが好ましく、450~1200nmであることがより好ましく、450~1000nmであることがさらに好ましく、700~1000nmであることが特に好ましい。300nm以上であれば、窒化ホウ素粒子がスペーサーとして効果的に働き、長期使用を通じて流動性を維持することができる。その結果、帯電維持性能にすぐれ画像濃度均一性が高まる。また、1200nm以下であれば、トナー粒子に対する窒化ホウ素粒子の密着面積が十分存在し、窒化ホウ素粒子及びカーボンブラックのフマル酸を介した相互作用が大きくなる。その結果、窒化ホウ素粒子のトナー粒子への固着性が向上し、窒化ホウ素粒子の脱離が抑制され長期に亘り現像スジが抑制される。
窒化ホウ素粒子の一次粒子の個数平均粒径は、反応を進行させるための触媒種、反応条件により調整することができる。また、製造した窒化ホウ素粒子を公知の湿式粉砕機を用いて粉砕することなどで調整が可能である。窒化ホウ素粒子の一次粒子の個数平均粒径の測定方法は後述する。
【0024】
窒化ホウ素粒子の形状は特に限定されないが、窒化ホウ素粒子は、扁平状の粒子であることが好ましい。窒化ホウ素粒子の長径をD(nm)とし、厚さをT(nm)としたとき、D/Tは、6~20であることが好ましく、13~20であることがより好ましい。
D/Tが上記範囲であることにより、窒化ホウ素粒子がトナー粒子の表面に密着しやすくなるため、窒化ホウ素粒子及びカーボンブラックの、トナー粒子表面近傍のフマル酸を介した相互作用が発現しやすくなる。その結果、窒化ホウ素粒子のトナー粒子への固着性が向上し、窒化ホウ素粒子の脱離が抑制され長期に亘り現像スジが抑制される。
【0025】
窒化ホウ素粒子の長径D(nm)は特に限定されないが、300~2000nmであることが好ましく、450~1200nmであることがより好ましく、700~1000nmであることがより好ましい。
窒化ホウ素粒子の長径は、反応を進行させるための触媒種、反応条件により調整することができる。また、製造した窒化ホウ素粒子を公知の湿式粉砕機を用いて粉砕することなどで調整が可能である。窒化ホウ素粒子の長径の測定方法は後述する。
【0026】
窒化ホウ素粒子の厚さT(nm)は特に限定されないが、25~230nmであることが好ましく、30~205nmであることがより好ましく、35~120nmであることがさらに好ましい。
窒化ホウ素粒子の厚さは、反応を進行させるための触媒種、反応条件により調整することができる。また、製造した窒化ホウ素粒子を公知の湿式粉砕機を用いて粉砕することなどで調整が可能である。窒化ホウ素粒子の厚さの測定方法は後述する。
【0027】
<結着樹脂>
トナーは、トナー粒子を有する。また、トナー粒子は、結着樹脂を含有する。
結着樹脂としては、特段の制限なく公知の結着樹脂を用いることができる。具体的には、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。結着樹脂はポリエステル樹脂を含むことが好ましく、フマル酸をトナー中に保持しやすくなることから、フマル酸に対応するモノマーユニットを有するポリエステル樹脂を含むことがより好ましい。
ポリエステル樹脂としては、非晶性ポリエステル樹脂、及び結晶性ポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも一を用いることが好ましい。
【0028】
上記ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸、ポリオール、ヒドロキシカルボン酸などの中から好適なものを選択して組み合わせ、例えば、エステル交換法又は重縮合法など、公知の方法を用いて合成することで得られる。
多価カルボン酸は、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジカルボン酸は1分子中にカルボキシ基を2個含有する化合物であって、好ましく使用される。
【0029】
ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、アジピン酸、β-メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン-3,5-ジエン-1,2-カルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、スペリン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシフェニル酢酸、p-フェニレン二酢酸、m-フェニレン二酢酸、o-フェニレン二酢酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル-p,p’-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、及びシクロヘキサンジカルボン酸などを挙げることができる。
上述の通り、ジカルボン酸としてフマル酸を含むことが好ましく、フマル酸と芳香族ジカルボン酸を併用することがより好ましい。
【0030】
ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸、イタコン酸、グルタコン酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n-オクチルコハク酸、及びn-オクテニルコハク酸などが挙げられる。
多価カルボン酸は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
ポリオールは、1分子中に水酸基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジオールは1分子中に水酸基を2個含有する化合物であり、好ましく使用される。
具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレ
ングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、ポリテトラメチレングリコール、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、及び上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、炭素数2~12のアルキレングリコール及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物である。
【0032】
三価以上のポリオールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン、ソルビトール、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、及び上記三価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
ポリオールは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
ポリエステル樹脂のピークトップ分子量(Mp)は特に限定されないが、5000~10000であることが好ましく、5000~8000であることがより好ましい。ポリエステル樹脂のピークトップ分子量が上記範囲であると、窒化ホウ素及びトナー粒子の付着性が軽減される。よって、現像スジの発生を抑制することが可能となる。
ポリエステル樹脂のピークトップ分子量は、反応時間を制御する等の公知の手法で制御可能である。
結着樹脂の種類は、NMRなど公知の方法によって測定することができる。
【0034】
トナー粒子100質量部に対する結着樹脂の含有量は特に限定されないが、50.0~98.0質量部であってよく、60.0~95.0質量部であってよい。
【0035】
<離型剤>
トナーは、離型剤を含有することが好ましい。離型剤を含有することで、画像表面に離型剤層が形成されるため、画像表面の強度が向上する。
離型剤としては、特段の制限なく公知のワックスやシリコーンオイル等を用いることができる。中でも、ワックスを用いることが好ましい。
ワックスとしては、具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムのような石油系炭化水素ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、
ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸パルミチルのような1価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、1価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステルに代表される1官能エステルワックス;
エチレングリコールジステアレート、セバシン酸ジベヘニル、ヘキサンジオールジベヘネートのような2価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、2価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステルに代表される2官能エステルワックス;
グリセリントリベヘネートのような3価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、3価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステルに代表される3官能エステルワックス;
ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテートのような4価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、4価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステルに代表される4官能エステルワックス;
ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテートのような6価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、6価のカルボン酸
と脂肪族アルコールのエステルに代表される6官能エステルワックス;
ポリグリセリンベヘネートのような多価アルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、多価カルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;
カルナバワックス、ライスワックスのような天然エステルワックス;
等に代表されるエステルワックス、
ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン系炭化水素ワックス及びその誘導体、並びにカルナバワックス、キャンデリラワックスのような天然ワックス及びそれらの誘導体が挙げられる。
誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物も含まれる。
また、高級脂肪族アルコールなどのアルコール;ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸又はその酸アミド、エステル、ケトン;硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物ワックス、動物ワックスが挙げられる。これらは単独又は2種以上を併用して用いることができる。
【0036】
中でも、炭化水素ワックス及びエステルワックスからなる群から選択される少なくとも一が好ましく、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス、4官能エステルワックス及び6官能エステルワックスからなる群から選択される少なくとも一がさらに好ましい。これらのワックスは、結晶性が高いために画像表面に均一な離型剤層を形成しやすく、画像表面の強度を高める効果に優れる。
【0037】
離型剤の含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して、1.0~30.0質量部であることが好ましく、5.0~20.0質量部であることがより好ましい。
離型剤の融点は、60~120℃であることが好ましく、70~120℃であることがより好ましく、80~120℃であることがさらに好ましい。融点が上記範囲である離型剤を用いることにより、画像の耐熱性がさらに向上する。
【0038】
離型剤の分子量は、特に限定されないが、500~1800であってよく、700~1500であることが好ましい。
【0039】
<可塑剤>
トナーは、可塑剤を含有してもよい。可塑剤としては、特に限定されることなく、離型剤の項に挙げたワックス類などを用いることができる。
【0040】
<着色剤>
トナー粒子は、着色剤を含有する。着色剤は、カーボンブラックを含有する。カーボンブラックとしては特に限定されず、ファーネスブラック、ガスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ランプブラックなどが挙げられる。着色剤がカーボンブラックを含有することで、カーボンブラック及び窒化ホウ素粒子がフマル酸を介して相互作用するため、窒化ホウ素粒子のトナー粒子への固着性が増大する。
カーボンブラックの含有量は特に限定されないが、結着樹脂100.0質量部に対して、2.0~12.0質量部であることが好ましく、3.0~10.0質量部であることがより好ましい。
着色剤がカーボンブラックを含有することは、後述するトナーのSTEM-EDS分析によって確認する。
【0041】
トナー粒子中のカーボンブラックの含有割合をc0(質量%)としたとき、c0/f0が、15~1400であることが好ましく、15~1200であることがより好ましく、25~800であることがさらに好ましく、50~600であることが特に好ましい。c0/f0は、トナー粒子中のカーボンブラックの、トナー中のフマル酸に対する存在比率
を示す。
フマル酸は二重結合を有しているため、共役系のπ電子を介してカーボンブラックとの電子の授受を生じやすい。そのため、この範囲に制御することで、トナー中への電荷の移動性能が著しく向上し、画像のドット再現性が向上する。c0/f0は、後述の方法によってc0及びf0を測定し、得られた値から算出する。
【0042】
また、c0/a0が、2~800であることが好ましく、3~750であることがより好ましく、30~500であることがさらに好ましい。c0/a0は、トナー粒子中のカーボンブラックの、トナー中の窒化ホウ素粒子に対する存在比率を示す。
この範囲に制御することで、窒化ホウ素の潤滑性と、フマル酸を介した相互作用による窒化ホウ素粒子のトナー粒子への強固な固着性とのバランスがとりやすい。そのため、現像スジの抑制と、帯電性維持の両立がしやすい。c0/a0は、後述の方法によってc0及びa0を測定し、得られた値から算出する。
【0043】
トナー粒子中のカーボンブラックの含有割合c0(質量%)は特に限定されないが、1.0~15.0質量%であることが好ましく、2.5~10.5質量%であることが好ましく、3.0~10.0質量%であることがさらに好ましく、4.0~8.0質量%であることが特に好ましい。c0の値が上記範囲であると、c0/a0を上記範囲に調整しやすい。
トナー粒子中のカーボンブラックの含有割合c0の測定方法は後述する。トナー粒子中のカーボンブラックの含有割合c0の値は、トナー粒子製造時のカーボンブラックの添加量を変更することによって、調整することができる。
【0044】
窒化ホウ素粒子及びカーボンブラックのフマル酸を介した相互作用をより強固なものとするためには、トナー粒子の表面近傍にカーボンブラックが存在することが好ましい。トナー粒子の表面近傍にカーボンブラックが存在することは、以下の方法によって確認する。すなわち、走査透過型電子顕微鏡(STEM)によるトナーの断面観察において、トナー表面から深さ100nmの領域に、カーボンブラックが存在していることが好ましい。
トナー粒子の表面近傍にカーボンブラックが存在することは、トナーの断面STEM(走査透過型電子顕微鏡)観察によって確認する。具体的にはオスミウム・プラズマコーター(filgen社、OPC80T)を用いて、保護膜としてトナーにOs膜(5nm)及びナフタレン膜(20nm)を施し、光硬化性樹脂D800(日本電子社)で包埋する。その後、超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により、切削速度1mm/sで膜厚60nm(又は70nm)のトナー断面を作製する。得られた断面をSTEM(JEOL社、JEM2800)を用いてSTEM観察を行う。トナー表面から深さ100nmの領域に、カーボンブラックが存在している場合に、トナー粒子の表面近傍にカーボンブラックが存在すると判断する。詳細な測定条件に関しては後述する。
【0045】
<荷電制御剤>
トナーは、荷電制御剤を含有してもよい。上記荷電制御剤としては、特段の制限なく公知の荷電制御剤を用いることができる。
具体的には、負帯電制御剤として、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸などの芳香族カルボン酸の金属化合物又は該芳香族カルボン酸の金属化合物を有する重合体又は共重合体;スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体;アゾ染料若しくはアゾ顔料の金属塩又は金属錯体;ホウ素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンなどが挙げられる。
一方、正帯電制御剤として、四級アンモニウム塩、四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物;グアニジン化合物;ニグロシン系化合物;イミダゾール化合物などが挙げられる。
スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体としては、スチ
レンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタクリルスルホン酸などのスルホン酸基含有ビニル系モノマーの単重合体又はその他公知のビニル系単量体と上記スルホン酸基含有ビニル系モノマーの共重合体などを用いることができる。
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して、0.01質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
【0046】
<外添剤>
トナーは、外添剤を有する。外添剤は、窒化ホウ素粒子を含む。外添剤は、窒化ホウ素粒子に加えて、窒化ホウ素粒子以外の外添剤を含有してもよい。
上記外添剤としては特段の制限なく公知の外添剤を用いることができる。
具体的には、湿式製法シリカ、乾式製法シリカなどの原体シリカ微粒子又はそれら原体シリカ微粒子にシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイルなどの処理剤により表面処理を施した表面処理シリカ微粒子;フッ化ビニリデン微粒子、ポリテトラフルオロエチレン微粒子などの樹脂微粒子などが挙げられる。
外添剤の含有量は、トナー粒子100.0質量部に対して、0.1~5.0質量部であることが好ましい。
【0047】
続いて、以下に本開示のトナーを得る方法について詳細に述べる。
【0048】
<トナー粒子の製造方法>
トナー粒子の製造方法は、特に限定されることはなく、乳化凝集法、懸濁重合法、溶解懸濁法、粉砕法などを用いることができる。その中でも、乳化凝集法を用いることが好ましい。すなわち、トナー粒子は乳化凝集トナー粒子であることが好ましい。
乳化凝集法は、まず結着樹脂の微粒子の分散液を調製し、着色剤の分散液や、必要に応じて離型剤などの各材料の分散液を調製する。得られた各材料の分散液を、必要に応じて分散安定剤を添加して、分散混合させる。その後、凝集剤を添加することによって所望のトナー粒子の粒径となるまで凝集させ、その後又は凝集と同時に、樹脂微粒子間の融着を行う。さらに必要に応じて、熱による形状制御を行うことにより、トナー粒子を形成する。
【0049】
トナーの製造方法は下記工程を有することが好ましい。
(1)結着樹脂及びフマル酸を含む結着樹脂微粒子分散液(必要に応じて着色剤微粒子分散液など)を調製し、混合して混合分散液を得る分散混合工程、
(2)得られた混合分散液に含まれる結着樹脂微粒子(必要に応じて着色剤微粒子など)を凝集して凝集体を形成する凝集工程、及び
(3)前記凝集体を加熱して融合させ、融合粒子を形成する融合工程
を有することが好ましい。得られた融合粒子を冷却し、トナー粒子を得ることができる。
【0050】
そして、上記(3)の工程中、又は上記(1)~(3)の工程の後に、下記(4)の工程を有することが好ましい。
(4)前記凝集体を、さらに温度を上げて加熱する球形化工程
さらに、上記(4)の工程の後に、下記(5)及び(6)の工程をこの順で有することがより好ましい。
(5)前記凝集体を、0.1℃/min以上の冷却速度で冷却する冷却工程
(6)前記冷却工程後に、前記結着樹脂の結晶化温度以上又はガラス転移温度以上の温度に加熱保持するアニール工程
【0051】
ここで、結着樹脂の微粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成とする複数層で形成された複合粒子とすることもできる。例えば、乳化重合法、ミニエマルション重合
法、転相乳化法からなる群から選択される少なくとも一の製法により製造することができる。
【0052】
トナー粒子中に内添剤を含有させる場合は、樹脂微粒子に内添剤を含有したものとしてもよく、また、別途内添剤を含む内添剤微粒子の分散液を調製し、内添剤微粒子を樹脂微粒子と凝集させる際に共に凝集させてもよい。
また、凝集時に組成の異なる樹脂微粒子を時間差で添加して凝集させることにより組成の異なる層構成のトナー粒子を製造することもできる。すなわち、コアシェル構造を有するトナー粒子を製造することもできる。結着樹脂を含む樹脂微粒子を凝集させコア部を形成したのち、シェル用の樹脂を含む樹脂微粒子を時間差で添加して凝集させることでシェル部を形成することができる。
シェル用の樹脂は、結着樹脂と同じ樹脂であってもよいし、異なる樹脂であってもよい。例えばシェル用の樹脂にフマル酸を含有させることができる。シェル用の樹脂を含む樹脂微粒子がフマル酸を含んでもよい。シェル用の樹脂の添加量(シェルの含有量)は、コア粒子に含まれる結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1.0~10.0質量部であり、より好ましくは2.0~7.0質量部である。
【0053】
コアシェル構造を有するトナー粒子を製造する場合、トナーの製造方法は下記工程を有することが好ましい。また、下記工程を下記の順で有することが好ましい。
(1)結着樹脂及びフマル酸を含む結着樹脂微粒子の分散液(必要に応じて着色剤微粒子分散液など)を調整し、混合して混合分散液を得る分散混合工程、
(2)得られた混合分散液に含まれる結着樹脂微粒子(必要に応じて着色剤微粒子など)を凝集して、凝集体を形成する凝集工程、
(3)凝集体を含む分散液にシェル用の樹脂を含む樹脂微粒子をさらに添加し、樹脂微粒子を凝集させてシェルを有する凝集体を形成するシェル形成工程、及び
(4)前記凝集体を加熱して融合させ、融合粒子を形成する融合工程
【0054】
また、上記(4)の工程中、又は上記(1)~(4)の工程の後に、下記(5)の工程を有することが好ましい。
(5)前記凝集体を、さらに温度を上げて加熱する球形化工程
そして、上記(5)の工程の後に、下記(6)及び(7)の工程を有することがより好ましい。
(6)前記凝集体を、0.1℃/sec以上の冷却速度で冷却する冷却工程
(7)前記冷却工程後に、前記結着樹脂の結晶化温度以上又はガラス転移温度以上の温度に加熱保持するアニール工程
【0055】
フマル酸の添加量は特に限定されないが、結着樹脂100質量部に対して、0.006~0.500質量部であることが好ましく、0.006~0.400質量部であることがより好ましく、0.006~0.200質量部であることがさらに好ましい。上記範囲であることにより、トナー中のフマル酸の含有割合f0を好適に調整しやすくなる。
また、窒化ホウ素粒子の添加量は特に限定されないが、トナー粒子100質量部に対して、0.005~1.200質量部であることが好ましく、0.010~1.000質量部であることがより好ましく、0.100~1.000質量部であることがさらに好ましい。上記範囲であることにより、トナー中の窒化ホウ素粒子の含有割合a0を好適に調整しやすくなる。
【0056】
分散安定剤としては以下のものを使用することができる。
分散安定剤としては、界面活性剤を使用することができる。界面活性剤としては、公知のカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を使用することができる。
無機分散安定剤としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナが挙げられる。
また、有機系分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンが挙げられる。
これらは単独又は2種以上を併用して用いることができる。
【0057】
凝集剤としては、上述した分散安定剤に使用する界面活性剤と逆極性の界面活性剤のほか、無機塩、2価以上の無機金属塩を好適に用いることができる。特に無機金属塩は、多価金属元素を水系媒体中でイオン化することで、凝集性制御及びトナー帯電性制御がしやすいため好ましい。
好ましい無機金属塩を具体的に挙げると、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化鉄、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムの金属塩、及び、ポリ塩化鉄、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウムの無機金属塩重合体である。その中でも特に、アルミニウム塩及びその重合体が好適である。これらは単独又は2種以上を併用して用いることができる。
一般的に、よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価以上であることが好ましく、また、同じ価数であっても無機金属塩重合体の方がより適している。
【0058】
画像の高精細、高解像の観点から、トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、3.0~10.0μmであることが好ましい。
また、現像性とクリーニング性とのバランスの観点から、トナー粒子の平均円形度は、0.935~0.985であることが好ましく、0.940~0.980であることがより好ましい。また、トナーの平均円形度は、0.935~0.985であることが好ましく、0.940~0.980であることがより好ましい。
平均円形度は、トナー粒子の製造条件を調整することによって制御することができる。
【0059】
<トナーの製造方法>
上記で得られたトナー粒子に、窒化ホウ素粒子を含む外添剤を混合しトナー粒子の表面に付着させることで、トナーとすることができる。すなわち、トナーの製造方法は、トナー粒子に窒化ホウ素粒子を含む外添剤を外添する外添工程を有する。このとき、必要に応じて、上述の窒化ホウ素粒子以外の外添剤を添加してもよい。
トナー粒子に外添剤を外添する混合機としては、特に制限されず、乾式湿式問わず公知の混合機を用いることができる。例えば、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)、スーパーミキサー(カワタ社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)、ハイブリダイザー(奈良機械社製)などが挙げられる。外添剤の被覆状態を制御するために、上記の外添装置の回転数、処理時間、ジャケットの水温・水量を調整してトナーを調製することができる。
また、外添後に粗粒子をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製)などが挙げられる。
【0060】
以下、トナー及び各材料の物性の測定方法を説明する。
【0061】
<トナー中のフマル酸の含有割合f0(質量%)の測定方法>
クロロホルム1mlにトナー0.1gを溶解する。得られた試料溶液にメタノール20
mlを滴下し、溶液中の樹脂分を沈殿させたのち、遠心分離(機種HITACHI himac CR22G、条件12000rpm、10分間)によって固体分を除去する。得られた溶液から、溶媒を減圧留去し、さらに60℃雰囲気中、減圧下で4時間乾燥する。得られたサンプルに、BSTFA(N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド) 0.5mL及びアセトニトリル 0.5mLを添加し、80℃ 1時間加熱することでシリル化処理を行う。得られたサンプルをGC-MS(ガスクロマトグラフィ質量分析)により分析する。
【0062】
測定条件は、具体的には下記の通りである。
GCMS装置: Trace1310(Thermo Fisher Scientific製)、ISQ(Thermo Fisher Scientific製)
カラム:HP-5ms 30m
注入口温度:250℃
注入量:1μL
カラムオーブン温度:40℃→300℃ (15℃/min)
MS イオン化モード:EI
イオン源温度:250℃
マスレンジ:35-800 m/z
【0063】
分析によって得られたプロファイルを解析し、測定サンプルの各ピーク位置と、フマル酸標品から得られたプロファイルのピーク位置とを比較し、さらにマススペクトルの確認を行うことで、フマル酸含有の有無を特定する。
一方、フマル酸標品のみを精秤したものを数点(例えば100ng、200ng、300ng)準備し、トナーから得られたサンプルの測定を行う前に、上記分析条件にてそれぞれ測定を行った後、フマル酸の仕込み量とフマル酸ピーク面積値から検量線を作成する。
トナー中のフマル酸の含有割合f0(質量%)は、この検量線をもとにトナーのフマル酸成分の面積値をフマル酸の質量に換算し、更にトナー質量を基準とした量に換算することによって得られる。
【0064】
<トナー中の、トナーからメタノールによって抽出されるフマル酸の含有割合f1(質量%)の測定方法>
メタノール20ml中にトナー0.5gを入れて30分間分散させる。その後、遠心分離(機種HITACHI himac CR22G、条件12000rpm、10分間)によって固体分を除去する。得られた溶液から、溶媒を減圧留去し、さらに60℃雰囲気中、減圧下で4時間乾燥する。得られたサンプルに、BSTFA(N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド) 0.5mL及びアセトニトリル 0.5mLを添加し、80℃、1時間加熱することでシリル化処理を行う。得られたサンプルをGC-MS(ガスクロマトグラフィ質量分析)により分析する。
【0065】
測定条件は、具体的には下記の通りである。
GCMS装置: Trace1310(Thermo Fisher Scientific製)、ISQ(Thermo Fisher Scientific製)
カラム:HP-5ms 30m
注入口温度:250℃
注入量:1μL
カラムオーブン温度:40℃→300℃ (15℃/min)
MS イオン化モード:EI
イオン源温度:250℃
マスレンジ:35-800 m/z
【0066】
分析によって得られたプロファイルを解析し、測定サンプルの各ピーク位置と、フマル酸標品から得られたプロファイルのピーク位置とを比較し、さらにマススペクトルの確認を行うことで、フマル酸含有の有無を特定する。
一方、フマル酸標品のみを精秤したものを数点(例えば100ng、200ng、300ng)準備し、トナーから得られたサンプルの測定を行う前に、上記分析条件にてそれぞれ測定を行った後、フマル酸の仕込み量とフマル酸ピーク面積値から検量線を作成する。
トナー中のトナーからメタノールによって抽出されるフマル酸の含有割合f1(質量%)は、この検量線をもとにトナーのフマル酸成分の面積値をフマル酸の質量に換算し、更にトナー質量を基準とした量に換算することによって得られる。
【0067】
<トナー中の窒化ホウ素粒子の含有割合a0(質量%)の測定方法>
(トナーからのトナー粒子および窒化ホウ素粒子の単離方法)
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブ(容量50ml)に、上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れる。ここにトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。遠心分離用チューブをシェイカー(AS-1N アズワン株式会社より販売)にて300spm(strokes per min)、20分間振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R 株式会社コクサン製)にて3500rpm、30分間の条件で分離する。
この操作により、トナー粒子と外添剤とが分離される。トナー粒子と水溶液とが十分に分離されていることを目視で確認し、分離したトナー粒子及び外添剤をスパチュラなどで採取する。
外添剤として窒化ホウ素粒子と窒化ホウ素粒子以外の外添剤が混在している場合には、粒径及び比重の差を利用して、さらに遠心分離を行うことにより目的物を単離する。単離したトナー粒子や窒化ホウ素粒子を減圧濾過器で濾過した後、真空乾燥機で減圧下、40℃で24時間以上乾燥することでトナー粒子および窒化ホウ素粒子を得る。
トナー粒子および窒化ホウ素粒子の必要量に応じて、上述の操作を複数回実施する。
【0068】
(窒化ホウ素粒子の構成元素の同定方法)
窒化ホウ素粒子の構成元素は、上記方法により単離した窒化ホウ素粒子をSEM-EDS分析することにより同定する。
窒化ホウ素粒子の構成元素の同定は、走査型電子顕微鏡(SEM)による形状観察、及びエネルギー分散型X線分析(EDS)による元素分析を組み合わせることで行うことができる。
走査型電子顕微鏡「Ultra Plus」(商品名;カールツァイス社製)を用いて、単離した窒化ホウ素粒子を観察する。窒化ホウ素粒子のEDS分析を行い、元素ピークの有無から窒化ホウ素粒子の同定を行うことができる。
元素ピークとして、窒化ホウ素粒子を構成するホウ素元素ピーク、および窒素元素ピークが観察された場合に観察される粒子を窒化ホウ素粒子であると判断する。
【0069】
(トナー中の窒化ホウ素粒子の含有割合a0(質量%)の測定方法)
トナー中の窒化ホウ素粒子の含有割合a0は、蛍光X線分析(XRF)によってトナー及び上記方法で外添剤を除去したトナー粒子を測定することで算出できる。
測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「Sup
erQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いる。なお、X線管球のアノードをRh、測定雰囲気を真空、測定径(コリメーターマスク径)を27mm、測定時間を10秒とする。また、軽元素であるホウ素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)で検出する。
測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリングの中にトナー4gを入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE-32」(前川試験機製作所社製)を用いて20MPaで60秒間加圧し、厚さ2mm、直径39mmに成型したペレットを用いる。そして、成形したペレットを用いてホウ素元素の計数率強度(単位:cps)を測定する。この際、X線発生装置の加速電圧、電流値は、それぞれ32kV、125mAとする。
分析対象トナーのホウ素元素強度のうち、窒化ホウ素粒子に含まれるホウ素元素強度の比率を算出するため、前述の方法で単離したトナー粒子と単離した窒化ホウ素以外の外添剤とを混合したサンプルについて、同様の測定を行い、窒化ホウ素粒子分離後のホウ素元素強度を得る。トナーのホウ素元素強度と、窒化ホウ素粒子分離後のホウ素元素強度から、以下の式に基づいてトナー中の窒化ホウ素粒子に含まれるホウ素元素強度を算出する。(トナー中の窒化ホウ素粒子に含まれるホウ素元素強度比率)=(トナーのホウ素元素強度-窒化ホウ素粒子分離後のホウ素元素強度)/(トナーのホウ素元素強度)
【0070】
トナーのホウ素元素強度にトナー中の窒化ホウ素粒子に含まれるホウ素元素強度比率を掛け合わせることで、トナー中の窒化ホウ素に由来するホウ素元素強度を求める。別途作成した窒化ホウ素粒子の検量線と、トナー中の窒化ホウ素に由来するホウ素元素強度を比較することにより、トナーに含有される窒化ホウ素量をトナー重量に対する割合として求め、トナーに含有される窒化ホウ素粒子の含有割合a0(質量%)とする。
【0071】
<窒化ホウ素粒子の一次粒子の個数平均粒径、及びD/Tの測定方法>
窒化ホウ素粒子の一次粒子の個数平均粒径の測定は、走査型電子顕微鏡「Ultra Plus」(商品名;Zeiss社製)を用いて行う。窒化ホウ素粒子の特定は、上記SEM-EDS分析により行う。
トナーを下記条件で観察し、窒化ホウ素粒子の100粒子について一次粒子の長径D(nm)および厚さT(nm)を測定する。得られた長径Dの算術平均値を一次粒子の個数平均粒径とし、各粒子で測定された厚さTに対する長径Dの比の値の算術平均値をD/Tとする。観察倍率は、微粒子の大きさによって適宜調整する。
【0072】
(SEM観察条件)
試料前処理;円錐状試料台の先端にカーボンテープでトナーを固定しPtコート
SEM加速電圧;2.0kV
WD;2.8mm
検出器;SE2
試料傾斜角度;-45度~45度の範囲(窒化ホウ素粒子の最薄部を観察する。)
観察倍率;5,000~50,000倍
【0073】
<窒化ホウ素粒子のX線回折分析>
窒化ホウ素が六方晶であることを判断するためには、後述の方法によりトナーより採取した窒化ホウ素のX線回折分析を用いる。
X線回折測定は、測定装置「RINT-TTRII」(株式会社リガク社製)と、装置付属の制御ソフト及び解析ソフトを用いる。測定条件は以下の通りである。
X線:Cu/50kV/300mA
ゴニオメータ:ロータ水平ゴニオメータ(TTR-2)
アタッチメント:標準試料ホルダー
発散スリット:解放
発散縦制限スリット:10.00mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
カウンタ:シンチレーションカウンタ
走査モード:連続
スキャンスピード:4.0000°/min
サンプリング幅:0.0200°
走査軸:2θ/deg
走査範囲:3.0000°~60.0000°
装置付属のソフトウェアにより、得られたスペクトルを解析し、結晶構造が六方晶系である窒化ホウ素で検出されるピークと一致する場合に結晶構造が六方晶系であると判断する。
【0074】
<トナー粒子中のカーボンブラック有無の確認方法>
トナー粒子中のカーボンブラックの有無は、走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いたトナー粒子のEDSマッピング測定により行う。EDSマッピング測定では、分析エリアの各画素(ピクセル)ごとにスペクトルデータをもつ。大きな検出素子面積をもつシリコンドリフト検出器を使用することで、高感度にEDSマッピングを測定することができる。
EDSマッピング測定により得られた各画素のスペクトルデータについて統計解析を行うことにより、スペクトルの似通った画素を抽出した主成分マッピングを得ることができ、成分を特定したマッピングが可能となる。
【0075】
観察用サンプルの作製は以下の手順で行う。
上述の方法によってトナーから単離したトナー粒子0.5gを秤量し、直径8mmの円柱形の型により、ニュートンプレスを用いて荷重40kNで2分間静置し、直径8mm、厚さ約1mmの円柱形のトナーペレットを作製する。ウルトラミクロトーム(Leica社、FC7)によりトナーペレットから200nm厚の薄片を作製する。
【0076】
STEM-EDS分析は下記装置及び条件で行う。
走査透過型電子顕微鏡;日本電子社製 JEM-2800
EDS検出器;日本電子社 JED-2300T ドライSD100GV検出器(検出素子面積:100mm2)
EDSアナライザー;サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 NORAN
System 7
【0077】
[STEM-EDSの条件]
・STEMの加速電圧:200kV
・倍率:20,000倍
・プローブサイズ 1nm
STEM画像サイズ;1024×1024pixel(同一位置のEDS元素マッピング像を取得する。)
EDSマッピングサイズ;256×256pixel、Dwell Time;30μs、積算回数;100フレーム
【0078】
多変量解析に基づくトナー粒子中のカーボンブラックの同定は、以下のようにして行う。
上記STEM-EDS分析装置によって、EDSマッピングを得る。次いで、収集したスペクトルマッピングデータを、上述したNORAN System 7の測定コマンドにあるCOMPASS(PCA)モードを用いて多変量解析を行い、主成分マップイメージを抽出する。
その際に、設定値は以下のとおりとする。
・カーネルサイズ:3×3
・定量マップ設定:高(遅い)
・フィルターフィットタイプ:高精度(スロー)
【0079】
同時に、この操作により、抽出される各主成分のEDS測定視野に占める面積比率が算出される。得られた各主成分マッピングがもつEDSスペクトルに対し、クリフ・ロリマー法により定量分析を実施する。
トナー粒子の結着樹脂部とカーボンブラック粒子との区別は、得られたSTEM-EDS主成分マッピングの、上記定量分析結果をもとに同定する。
【0080】
<トナー粒子中のカーボンブラックの含有割合c0(質量%)の測定方法>
トナー粒子中のカーボンブラックの定量は、トナー粒子を用いて熱重量分析(TGA)することで行う。具体的には、第一工程として、窒素雰囲気下で、温度550℃まで10℃/minで上昇させ、10分間保持して樹脂成分を分解させる。第二工程として、10℃/minで温度400℃まで冷却した後、空気を導入し、さらに温度800℃にまで10℃/minで上昇させて、カーボンブラックを分解させる。第一工程と第二工程での質量減少分の比率から、トナー粒子中のカーボンブラックの含有割合c0を求める。
【0081】
<結着樹脂の同定と定量>
結着樹脂のモノマーユニットの種類とモノマーユニットの比率の同定には、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析計(以下、「熱分解GC/MS」とも称する)及びNMRを用いる。樹脂の構成化合物の種類の分析には熱分解GC/MSを用いる。樹脂を550℃~700℃で熱分解させた際に生じる、樹脂の分解物の成分のマススペクトルを分析する事で、モノマーユニットの種類を同定する。具体的な測定条件は以下の通りである。
【0082】
(熱分解GC/MSの測定条件)
熱分解装置:JPS-700(日本分析工業)
分解温度:590℃
GC/MS装置:Focus GC/ISQ (Thermo Fisher)
カラム:HP-5MS 長さ60m、内径0.25mm、膜厚0.25μm
注入口温度:200℃
フロー圧:100kPa
スプリット:50mL/min
MSイオン化:EI
イオン源温度:200℃ Mass Range 45-650
続いて、同定した結着樹脂のモノマーユニットの比率を、1H-NMRで測定・算出する。構造決定は、FT-NMR装置 JNM-EX400(日本電子社製)[1H-NMR 400MHz、CDCl3、室温(25℃)]を用いて行う。
【0083】
(1H-NMRの測定条件)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :1024回
測定温度 :25℃
試料 :測定試料50mgを内径5mmのサンプルチューブに入れ、溶媒として重クロロホルム(CDCl3)を添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて調製する。
得られたスペクトルの積分値から各モノマーユニットのmol比を求め、これを基に各モノマーユニットの比率(質量%)を算出する。
【0084】
<ピークトップ分子量(Mp)の測定方法>
ポリエステル樹脂のピークトップ分子量(Mp)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下のようにして測定する。まず、室温で、測定したいサンプルをテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。溶解しにくいようであれば35℃以下の範囲で加熱する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:高速GPC装置「HLC-8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム:LF-604の2連[昭和電工(株)製]
溶離液:THF
流速:0.6mL/min
オーブン温度:40℃
試料注入量:0.020mL
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダード
ポリスチレンF-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40
、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソー社製)を用いて作成された分子量校正曲線を使用する。
【0085】
<平均円形度の測定方法>
トナー及びトナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス社製)によって、以下の条件で測定及び解析を行う。
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め固形物などの不純物を除去したイオン交換水20mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.2mL加える。さらに測定試料を0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10~40℃となるように適宜冷却する。
超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(「VS-150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
測定には、対物レンズとして「UPlanApro」(倍率10倍、開口数0.40)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス社製)を使用する。
【0086】
上記手順に従い調製した分散液を上記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。
【0087】
<重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナー、又はトナー粒子(以下、トナーなど、ともいう)の重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による
精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター(株)製)を用いる。
測定条件の設定及び測定データの解析には、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター(株)製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が1.0%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター(株)製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOMME)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
【0088】
具体的な測定法は以下のとおりである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに電解水溶液200.0mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに電解水溶液30.0mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetra150」(日科機バイオス(株)製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2.0mL添加する。
(4)上記(2)のビーカーを上記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)上記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナーなど10mgを少量ずつ上記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した上記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーなどを分散した上記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【実施例0089】
本開示を以下に示す実施例により具体的に説明する。しかし、これは本開示をなんら限定するものではない。「部」および「%」は特に断りがない場合、全て質量基準である。
【0090】
[ポリエステル樹脂の製造例]
<ポリエステル樹脂1>
・フマル酸: 10.6部(23mol%)・テレフタル酸: 8.5部(13mol%)・トリメリット酸: 3.3部(4mol%)
・ビスフェノールA-エチレンオキサイド2モル付加物: 47.6部(38mol%)・ビスフェノールA-プロピレンオキサイド2モル付加物:30.0部(22mol%)・酸化ジブチル錫: 0.5部
・ハイドロキノン: 0.05部
上記材料を減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、及び撹拌装置を備えたオートクレーブ中に仕込み、230℃で反応率が90%に達するまで反応させた後、さらに60~70mmHgの減圧下で1時間反応させ、非晶性のポリエステル樹脂1を得た。なお、本明細書において、反応率とは、生成反応水量(mol)/理論生成水量(mol)×100の値をいう。
得られたポリエステル樹脂1の酸価は20.3mgKOH/g、ピークトップ分子量(Mp)は6000、ガラス転移温度は54.6℃であった。
【0091】
<ポリエステル樹脂2>
・テレフタル酸: 22.6部(36mol%)・トリメリット酸: 3.2部(4mol%)
・ビスフェノールA-エチレンオキサイド2モル付加物: 45.5部(38mol%)・ビスフェノールA-プロピレンオキサイド2モル付加物:28.7部(22mol%)・酸化ジブチル錫: 0.5部
・ハイドロキノン: 0.05部
上記材料を減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、及び撹拌装置を備えたオートクレーブ中に仕込み、230℃で反応率が90%に達するまで反応させた後、さらに60~70mmHgの減圧下で1時間反応させ、非晶性のポリエステル樹脂2を得た。
得られたポリエステル樹脂1の酸価は20.1mgKOH/g、ピークトップ分子量(Mp)は6000、ガラス転移温度は59.4℃であった。
【0092】
<ポリエステル樹脂3>
ポリエステル樹脂1の製造例において、ピークトップ分子量が12000に達するまで反応させること以外はポリエステル樹脂1の製造例と同様にして、非晶性のポリエステル樹脂3を得た。
得られたポリエステル樹脂3の酸価は12.2mgKOH/g、ピークトップ分子量(Mp)は12000、ガラス転移温度は55.2℃であった。
【0093】
[樹脂粒子分散液の製造例]
<樹脂粒子分散液1>
・ポリエステル樹脂1 200部
・イオン交換水 500部
・フマル酸 0.250部
上記材料をステンレス製の容器に入れ、温浴下95℃まで加熱溶融し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて7800rpmで十分撹拌しながら、0.1mol/L炭酸水素ナトリウムを加えpHを7.0よりも大きくした。その後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部及びイオン交換水297部の混合溶液を徐々に滴下し、7800rpmで撹拌しながら乳化分散することで樹脂粒子分散液1を得た。樹脂粒子分散液1の固形分濃度は20%であった。
樹脂粒子分散液1に含まれるポリエステル樹脂1の粒子の粒度分布を、粒度測定装置(
堀場製作所製、LA-960V2)を用いて測定したところ、ポリエステル樹脂1の粒子の個数平均粒径は、0.25μmであり、1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0094】
<樹脂粒子分散液2~13>
樹脂粒子分散液1の製造例において、使用する樹脂及びフマル酸添加量を表1に記載のものに変更する以外は、樹脂粒子分散液1の製造例と同様にして、樹脂粒子分散液2~13を製造した。但し、樹脂粒子分散液11においては、フマル酸を添加せず、表1に記載の量のマレイン酸を添加した。いずれの場合にも、1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。また、樹脂粒子分散液2~13におけるポリエステル樹脂の粒子の個数平均粒径を表1に示す。
【0095】
<樹脂粒子分散液14>
以下のように、乳化凝集法を用いて、ビニル樹脂1が分散した樹脂粒子分散液14を製造した。
スチレン78.0部、アクリル酸ブチル22.0部をステンレス製の容器に入れ、混合した。この溶液に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4.0部をイオン交換水150部に混合した水溶液を添加して、分散させた。さらに10分間ゆっくりと撹拌しながら、過硫酸カリウム0.3部をイオン交換水10部に混合した水溶液を添加した。ステンレス製の容器を窒素置換した後、70℃で6時間乳化重合を行った。重合終了後、反応液を室温まで冷却し、イオン交換水を添加することで固形分濃度を20.0質量%に調整した。
樹脂粒子分散液14の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-960V2)を用いて測定したところ、ビニル樹脂1の粒子の個数平均粒径は、0.25μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。なお、樹脂粒子分散液14からビニル樹脂1を分離して、ビニル樹脂1の各物性を測定したところ、酸価は0.0(mgKOH/g)、重量平均分子量は35000、ガラス転移温度は54.0℃であった。
【表1】
表中、(マレイン酸)は、フマル酸を添加せず、マレイン酸を表に記載の量添加したことを示す。
【0096】
[ワックス粒子分散液の製造例]
<ワックス粒子分散液1>
・イオン交換水 500部
・ワックス(FNP0090(日本精蝋社製):フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス、融点90℃、分子量771) 200部
上記材料をステンレス製の容器に入れ、温浴下95℃まで加熱溶融し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて7800rpmで十分撹拌しながら、0.1mol/L炭酸水素ナトリウムを加えpHを7.0よりも大きくした。その後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5部とイオン交換水295部の混合溶液を徐々に滴下し、7800rpmで撹拌しながら乳化分散することで、ワックス粒子分散液1を得た。ワックス粒子分散液1の固形分濃度は20%であった。
ワックス粒子分散液1に含まれるワックス粒子の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-960V2)を用いて測定したところ、ワックス粒子の個数平均粒径は、0.35μmであり、1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。融点が90℃、分子量が771であった。
【0097】
<着色剤粒子分散液1の製造例>
・カーボンブラック(Nipex35:Orion Engineered Carbons社製) 100部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 5部
・イオン交換水 400部
上記材料を混合し、サンドグラインダーミルを用いて分散して着色剤粒子分散液を得た。着色剤粒子分散液1の固形分濃度は20%であった。この着色剤粒子分散液1に含まれる着色剤粒子の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-960V2)を用いて測定したところ、含まれる着色剤粒子の個数平均粒径は、0.2μmであり、1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0098】
<着色剤分散液2~4の製造例>
着色剤分散液1の製造例において、使用する顔料を表2のように変更した以外は、着色剤分散液1と同様に製造した。
【表2】
【0099】
[トナー粒子の製造例]
<トナー粒子1>
・樹脂粒子分散液1 500部
・着色剤粒子分散液1 35部
・ワックス粒子分散液1 50部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 5部
反応器(容積1リットルフラスコ、バッフル付きアンカー翼)に樹脂粒子分散液1、ワックス粒子分散液1及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを仕込み、均一に混合し
た。一方、500mLビーカーに着色剤粒子分散液1を均一に混合しておき、これを撹拌しながら反応器に徐々に添加し、混合分散液を得た。得られた混合分散液を撹拌しながら硫酸アルミニウム水溶液を固形分として0.5部滴下し、凝集粒子を形成させた。
滴下終了後、窒素を用いて系内を置換し、50℃にて1時間保持し、さらに55℃にて1時間保持した。その後昇温して、90℃にて30分保持した。その後、63℃まで降温したのち3時間保持し、融合粒子を形成した。
融合粒子を形成した後、毎分0.5℃の降温速度にて室温になるまで冷却を行った。
冷却後、反応生成物を10L容量の加圧濾過器にて、0.4MPaの圧力下で固液分離を行い、トナーケーキを得た。その後、加圧濾過器が満水になるまでイオン交換水を加え、0.4MPaの圧力で洗浄した。さらに同様に2回洗浄して、計3回洗浄した。その後0.4MPaの圧力下で固液分離をしたのち、45℃で流動層乾燥を行い、重量平均粒径(D4)が6.9μm、平均円形度が0.96のトナー粒子1を得た。
【0100】
<トナー粒子2~17、19~21>
トナー粒子1の製造例において、使用する樹脂粒子分散液、着色剤粒子分散液を表3に記載のものに変更し、着色剤の含有割合が表3に記載の値になるように着色剤分散液の量を変更し、融合粒子形成時の昇温温度保持時間を変更する以外はトナー粒子1の製造例と同様にして、トナー粒子2~17、19~21を製造した。
【0101】
<ポリエステル樹脂Aの製造例>
・フマル酸: 10.6部(23mol%)・テレフタル酸: 8.5部(13mol%)・トリメリット酸: 3.3部(4mol%)
・ビスフェノールA-エチレンオキサイド2モル付加物: 47.6部(38mol%)・ビスフェノールA-プロピレンオキサイド2モル付加物:30.0部(22mol%)・酸化ジブチル錫: 0.5部
・ハイドロキノン: 0.05部
上記材料を減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、及び撹拌装置を備えたオートクレーブ中に仕込み、230℃で反応率が90%に達するまで反応させた後、さらに60~70mmHgの減圧下で1時間反応させ、非晶性のポリエステル樹脂Aを得た。なお、本明細書において、反応率とは、生成反応水量(mol)/理論生成水量(mol)×100の値をいう。
【0102】
<トナー粒子18の製造例>
・ポリエステル樹脂A 100部
・フマル酸 0.025部
・カーボンブラック(Nipex35:Orion Engineered Carbons社製) 5部
・ワックス(ベヘン酸ベヘニル、融点73℃) 1部
上記材料をFMミキサー(日本コークス工業(株)製)で前混合した後、二軸混練押し出し機(池貝鉄工(株)製、PCM-30型)によって、溶融混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、機械式粉砕機(ターボ工業(株)製、T-250)で粉砕した。得られた微粉砕粉末を、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径(D4)が6.9μm、平均円形度が0.935のトナー粒子18を得た。
【表3】
表中、着色剤含有量の単位は部であり、昇温温度保持時間は、融合粒子を形成する際の90℃における保持時間を示す。
【0103】
<窒化ホウ素粒子の製造例>
ホウ酸、ホウ酸塩、あるいは融解無水ホウ酸を原料とし、合成炉でアンモニアと反応させて還元窒化させ、その後高純度化、結晶化処理を経て窒化ホウ素粒子を得る。このときホウ酸とアンモニアの混合比、触媒種、反応温度、反応時間を調整して種々の窒化ホウ素粒子を調製した。
各窒化ホウ素粒子の一次粒子の個数平均粒径、各粒子の厚さT(nm)に対する長径D(nm)の比の値D/Tを表4に記載する。
【表4】
【0104】
<トナーの製造例>
<トナー1>
トナー粒子1 100.0部
窒化ホウ素粒子1 0.2部
シリカ粒子 (RX200:一次平均粒子径12nm、HMDS処理、日本アエロジル社製) 1.5部
上記材料を、FM10C(日本コークス工業株式会社製)によって外添混合した。外添条件は、下羽根をA0羽根とし、デフレクターの壁との間隔を20mmにセットし、トナー粒子の仕込み量:2.0kg、回転数:66.6s-1、外添時間:10分、冷却水を温度20℃・流量10L/min、で行った。
その後、目開き37μmのメッシュで篩い、トナー1を得た。得られたトナー1の物性を表6に示す。
【0105】
<トナー2~33>
トナー1の製造例において、トナー粒子、窒化ホウ素粒子を表5に記載のものに変更し、窒化ホウ素粒子の量を表5に記載のように変更する以外はトナー1の製造例と同様にして、トナー2~33を製造した。得られたトナー2~33の物性を表6に示す。
【表5】
【表6】
表中、f0はトナー中のフマル酸の含有割合(質量%)を示し、a0はトナー中の窒化ホウ素粒子の含有割合(質量%)を示し、f1はトナー中の、トナーからメタノールによって抽出されるフマル酸の含有割合(質量%)を示し、c0はトナー粒子中のカーボンブラックの含有割合(質量%)を示し、PES含有はトナー粒子中のポリエステル樹脂の有無を示し、Yはトナー粒子がポリエステル樹脂を含んでいることを示し、Nはトナー粒子がポリエステル樹脂を含んでいないことを示す。
【0106】
[実施例1~29、比較例1~4]
上記トナー1~33を用いて、以下の評価を行った。評価結果を表7に示す。
【0107】
以下に、本開示の評価方法及び評価基準について説明する。
市販のキヤノン製レーザービームプリンタLBP9950Ciの改造機を用いた。改造点は、評価機本体のギア及びソフトウェアを変更することにより、現像ローラーの回転数をドラムに対して2倍の周速で回転するように設定したこと、及びプロセススピードを330mm/secに変更したことである。
LBP9950Ciのトナーカートリッジの中に入っているトナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、評価するトナー210gを装填した。
そして、トナーカートリッジを高温高湿H/H(32.5℃/80%RH)の環境下で5日間放置した。高温高湿H/H環境下5日間放置後のトナーカートリッジをLBP9950Ciのシアンステーションに取り付け、1.0%の印字比率の画像を30000枚までプリントアウトして、初期と30000枚出力時(耐久後)の現像スジ、画像濃度均一
性(H/H)の評価を行った。
【0108】
〈H/H環境の耐久現像スジの評価〉
30000枚印字後において、ハーフトーン画像を1枚プリントアウトした。プリントアウトしたハーフトーン画像について、下記基準に従い評価した。C以上を良好と判断した。
[評価基準]
A:ハーフトーン画像上にスジが0~1本ある。
B:ハーフトーン画像上にスジが2~4本ある。
C:ハーフトーン画像上にスジが5~9本ある。
D:ハーフトーン画像上にスジが10本以上ある。
【0109】
〈H/H環境の耐久後2日放置後の初期カブリ評価(HH耐久初期カブリ)〉
カブリの測定は、東京電色社製のREFLECTMETER MODEL TC-6DSを使用して測定した。フィルターは、グリーンフィルターを用いた。
上記のように30000枚印字した後、プリンタの電源を落とし、二日放置した。その後、ベタ白画像を1枚印刷した。ベタ白画像の転写前ドラム上をマイラーテープでテーピングし、紙上にマイラーテープを貼ったものの反射率から、未使用の紙上に貼ったマイラーテープのマクベス濃度を差し引いて、白後ドラム上カブリとした。C以上を良好と判断した。
カブリ(反射率)(%)=標準紙上の反射率(%)-サンプル非画像部の反射率(%)
[評価基準]
A:5.0%未満
B:5.0%以上10.0%未満
C:10.0%以上20.0%未満
D:20.0%以上
【0110】
〈H/H環境での耐久画像濃度均一性〉
画像濃度均一性の評価には、ラフ紙であるFOX RIVER BOND紙(110g/m2)を用いた。上記のように30000枚印字した後、先端余白5mm、左右余白5mmで、左、右、中央の3箇所、さらにこれを長手方向に30mm間隔で3箇所、合計で9箇所に5mm×5mmのベタ黒パッチ画像を有する画像を1枚出力した。
9箇所のベタ黒パッチ画像の画像濃度を測定し、9箇所のベタ黒パッチ画像のうち、画像濃度の最大値と最小値との差を求めた。画像濃度は、反射濃度計であるマクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して測定した。最大値と最小値の数値差が小さい方が、画像濃度均一性が良いことを示す。B以上を良好と判断した。
[評価基準]
A:画像濃度の最大値と最小値の数値差が0.05以下である。
B:画像濃度の最大値と最小値の数値差が0.06以上0.10以下である。
C:画像濃度の最大値と最小値の数値差が0.11以上である。
【0111】
<ドット再現性の評価>
ドット再現性の評価には、高白色用紙GF-C081(81.4g/m2、キヤノンマーケティングジャパン(株))を使用した。上記のように30000枚印字した後、ハーフトーン(30H)画像を1枚形成し、この画像のドット再現性について以下の基準に基づき評価した。30H画像とは、256階調を16進数で表示した値であり、00Hをベタ白(非画像)とし、FFHをベタ画像(全面画像)とするときのハーフトーン画像である。
得られたハーフトーン画像について、デジタルマイクロスコープVHX-500(レンズワイドレンジズームレンズVH-Z100 キーエンス社製)を用い、ドット1000
個の面積を測定した。
ドット面積の個数平均(S)とドット面積の標準偏差(σ)を算出し、ドット再現性指数(I)を下記式により算出した。そして、ハーフトーン画像のドット再現性をドット再現性指数(I)で評価した。ドット再現性指数(I)の値が小さいほどドット再現性に優れていることを示している。
ドット再現性指数(I)=σ/S×100
A~Cランクを良好なドット再現性と判断した。
[評価基準]
A:Iが3.0未満
B:Iが3.0以上5.0未満
C:Iが5.0以上8.0未満
D:Iが8.0以上
【0112】
〈L/L環境での帯電部材汚染〉
上記の画像形成装置を低温低湿環境(15℃/10%RH、以下L/L環境ともいう)に24時間静置した。その後、L/L環境にて、キヤノンカラーレーザーコピア用紙(A4:81.4g/m
2)に、印字率1%の横線画像を30,000枚連続で出力した。続いて、キヤノンカラーレーザーコピア用紙(A4:81.4g/m
2)に、トナー載り量0.20g/cm
2のハーフトーン画像を1枚出力した。その後、カートリッジを分解し、帯電ローラ(帯電部材)の表面を観察した。
[評価基準]
A:帯電部材上にもスジが見られない
B:帯電部材上にはわずかにスジが見られるが、画像上にはスジが見られない
C:帯電部材上にスジが見られ、画像上にもわずかにスジが見られる
D:画像上のスジが顕著に見られる
【表7】
【0113】
本開示は、以下の構成に関する。
(構成1)
結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子と、外添剤とを有するトナーであって、
該着色剤が、カーボンブラックを含有し、
該外添剤が、窒化ホウ素粒子を含み、
該トナーが、フマル酸を含有し、
該トナー中の該窒化ホウ素粒子の含有割合をa0(質量%)とし、該トナー中の該フマル酸の含有割合をf0(質量%)としたとき、f0/a0が、0.050~5.000であることを特徴とするトナー。
(構成2)
前記a0が、0.010~1.000質量%である、構成1に記載のトナー。
(構成3)
前記f0が、0.001~0.120質量%である、構成1又は2に記載のトナー。
(構成4)
前記f0が、0.010~0.120質量%である、構成3に記載のトナー。
(構成5)
前記トナー粒子中の前記カーボンブラックの含有割合をc0(質量%)としたとき、
c0/f0が、15~1200である、構成1~4のいずれかに記載のトナー。
(構成6)
前記c0/f0が、50~600である、構成5に記載のトナー。
(構成7)
前記トナー粒子中の前記カーボンブラックの含有割合をc0(質量%)としたとき、c0/a0が、2~800である、構成1~6のいずれかに記載のトナー。
(構成8)
前記c0/a0が、30~500である、構成7に記載のトナー。
(構成9)
前記窒化ホウ素粒子の一次粒子の個数平均粒径が、300~2000nmである、構成1~8のいずれかに記載のトナー。
(構成10)
前記窒化ホウ素粒子が、扁平状の粒子であり、
前記窒化ホウ素粒子の長径をD(nm)とし、厚さをT(nm)としたとき、D/Tが、6~20である、構成1~9のいずれかに記載のトナー。
(構成11)
前記トナーの平均円形度が、0.940~0.980である、構成1~10のいずれかに記載のトナー。
(構成12)
前記結着樹脂が、ポリエステル樹脂を含有する、構成1~11のいずれかに記載のトナー。
(構成13)
前記ポリエステル樹脂のピークトップ分子量(Mp)が、5000~10000である、構成12に記載のトナー。
(構成14)
前記トナー中の、前記トナーからメタノールによって抽出されるフマル酸の含有割合をf1(質量%)としたとき、該f1が、0.0010~0.0100質量%である、構成1~13のいずれかに記載のトナー。
(構成15)
走査透過型電子顕微鏡(STEM)による前記トナーの断面観察において、トナー表面から深さ100nmの領域に、前記カーボンブラックが存在している、構成1~14のいずれかに記載のトナー。