(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160782
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】通信装置、通信システム、設定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 41/0823 20220101AFI20241108BHJP
【FI】
H04L41/0823
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076134
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】古野 外裕
(57)【要約】
【課題】フェイルセーフな設定が可能な、通信装置、通信システム、設定方法、及びプログラムの提供。
【解決手段】通信のための設定を取得する通信設定取得部と、設定を仮に設定する仮設定部と、設定の設定内容が正常か否かを判断する判断部と、判断部の判断結果に応じて設定を適用する本設定部と、を有する通信装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信のための設定を取得する通信設定取得部と、
前記設定を仮に設定する仮設定部と、
前記設定の設定内容が正常か否かを判断する判断部と、
前記判断部の判断結果に応じて前記設定を適用する本設定部と、
を有する通信装置。
【請求項2】
前記本設定部は、前記判断部の判断結果が正常である場合には前記仮設定部の前記設定を本設定として適用し、
前記判断結果が正常でない場合には前記設定を破棄する、
請求項1の通信装置。
【請求項3】
前記判断部は、前記設定により通信先との接続を確認するための確認パケットを送信し、前記確認パケットに対する応答パケットの受信を検出することにより設定内容が正常であるか否かを判断する、
請求項2の通信装置。
【請求項4】
前記判断部は、前記応答パケットを、前記確認パケットを送信した時刻より所定時間内に受信したか否かにより設定内容が正常であるか否かを判断する、
請求項3の通信装置。
【請求項5】
通信のための設定を取得する通信設定取得部と、
前記設定を仮に設定する仮設定部と、
前記設定の設定内容が正常か否かを判断する判断部と、
前記判断部の判断結果に応じて前記設定を適用する本設定部と、
を有する通信装置と、
前記設定を受付ける通信設定受付部と、
前記設定を送信する送信部と、
を有する端末と、
を含む通信システム。
【請求項6】
前記本設定部は、前記判断部の判断結果が正常である場合には前記仮設定部の前記設定を本設定として適用し、
前記判断結果が正常でない場合には前記設定を破棄する、
通信装置を含む、請求項5の通信システム。
【請求項7】
前記判断部は、前記設定により通信先である前記端末との接続を確認するための確認パケットを送信し、前記確認パケットに対する応答パケットの受信を検出することにより設定内容が正常であるか否かを判断する、
通信装置と、
前記送信部は、前記確認パケットに応じて前記応答パケットを前記通信装置へ送信する、端末と、
を含む請求項6の通信システム。
【請求項8】
前記判断部は、前記応答パケットを、前記確認パケットを送信した時刻より所定時間内に受信したか否かにより設定内容が正常であるか否かを判断する、
通信装置、を含む請求項7の通信システム。
【請求項9】
以下のステップをコンピュータに実行させるための設定方法であって、
通信のための設定を取得するステップと、
前記設定を仮に設定するステップと、
前記設定の設定内容が正常か否かを判断するステップと、
前記判断の結果に応じて前記設定を適用するステップと、
を含む設定方法。
【請求項10】
通信のための設定を取得する処理と、
前記設定を仮に設定する処理と、
前記設定の設定内容が正常か否かを判断する処理と、
前記判断の結果に応じて前記設定を適用する処理と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェイルセーフな設定が可能な、通信装置、通信システム、設定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信機器を、通信経路を経由して設定する際に、通信設定を誤ると設定対象である通信機器との通信が途絶し、設定が不可能になる場合がある。しかも、設定のための通信が不可能であるため旧設定を復旧することさえ不可能となる場合がある。この場合、通信機器の設定記憶領域をハードリセットにより一旦クリアして、工場出荷時の状態に戻す等の対処が必要となる。
【0003】
特許文献1には、次のようなモバイルルータ管理システムが開示されている。該技術は、モバイルルータの設定情報に障害が生じた際に設定情報を復旧する手段に関している。具体的には、設定情報をインターネット上のバックアップサーバにアップロードしておき、障害発生時においてはバックアップサーバ上の設定情報を保守端末にダウンロードする。保守端末はモバイルルータと直接接続して、ダウンロードした設定情報を設定するといった処理を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
なお、上記先行技術文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。以下の分析は、本発明者らによってなされたものである。
【0006】
上記の通り、特許文献1では、例えばモバイルルータの設定に失敗してモバイルルータがインターネットに接続できなくなった場合において、保守端末を経て設定情報を復旧するといった処理が可能な通信システムが開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている発明は、保守端末が接続可能であるバックアップサーバを設けるといった構成が必須であり、サーバ装置を準備することが必要である。また、保守端末がバックアップサーバに直接接続する事により設定を復旧するため、復旧用の接続手段を別途確保する必要がある。
【0008】
また、例えばモバイルルータの設定に障害があった場合には、何らかの手段で障害が検出され、保守端末よりバックアップサーバへ要求をする必要があり、モバイルルータ自身が即時に設定の障害を検知して復旧するといった処理は困難である。
【0009】
そこで、本発明の一視点において、自律的に障害を検出し、即時に障害の復旧を行うことが可能である、フェイルセーフな設定の実現に寄与する通信装置、通信システム、設定方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の視点によれば、通信のための設定を取得する通信設定取得部と、前記設定を仮に設定する仮設定部と、前記設定の設定内容が正常か否かを判断する判断部と、前記判断部の判断結果に応じて前記設定を適用する本設定部と、を有する通信装置が提供される。
【0011】
本発明の第二の視点によれば、通信のための設定を取得する通信設定取得部と、前記設定を仮に設定する仮設定部と、前記設定の設定内容が正常か否かを判断する判断部と、前記判断部の判断結果に応じて前記設定を適用する本設定部と、を有する通信装置と、前記設定を受付ける通信設定受付部と、前記設定を送信する送信部と、を有する端末と、を含む通信システムが提供される。
【0012】
本発明の第三の視点によれば、以下のステップをコンピュータに実行させるための設定方法であって、通信のための設定を取得するステップと、前記設定を仮に設定するステップと、前記設定の設定内容が正常か否かを判断するステップと、前記判断の結果に応じて前記設定を適用するステップと、を含む設定方法が提供される。
【0013】
本発明の第四の視点によれば、通信のための設定を取得する処理と、前記設定を仮に設定する処理と、前記設定の設定内容が正常か否かを判断する処理と、前記判断の結果に応じて前記設定を適用する処理と、をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。
【0014】
なお、このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録することができる。記憶媒体は、半導体メモリ、ハードディスク、磁気記録媒体、光記録媒体等の非トランジェント(non-transient)なものとすることができる。本発明は、コンピュータプログラム製品として具現することも可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の各視点によれば、自律的に障害を検出し、即時に障害の復旧を行うことが可能である、フェイルセーフな設定の実現に寄与する通信装置、通信システム、設定方法、及びプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態の通信装置における構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態の通信装置における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図3】第1の実施形態の通信装置におけるハードウエア構成の一例を示す概略図である。
【
図4】(a)~(d)は第1の実施形態の通信装置の処理における記憶域使用の態様例を説明するための図である。
【
図5】第2の実施形態の通信システムにおける構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】第2の実施形態の通信システムにおける処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】実施例の通信システムにおける構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】実施例の通信システムにおける構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】実施例の通信システムにおける動作の一例を示す図である。
【
図10】実施例の通信システムにおける動作の一例を示す図である。
【
図11】実施例の通信システムにおける動作の一例を示す図である。
【
図12】実施例の通信システムにおける動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
初めに、一実施形態の概要について説明する。なお、この概要に付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、この概要の記載はなんらの限定を意図するものではない。
【0018】
図1に一実施形態の通信装置の構成の一例を示したブロック図を示す。一実施形態の通信装置10は、通信設定取得部11と、仮設定部12と、判断部13と、本設定部14と、を有する。
【0019】
通信設定取得部11は、通信のための設定を取得する。仮設定部12は、取得した設定を仮に設定する。判断部13は、取得した設定の設定内容が正常か否かを判断する。本設定部14は判断部13の判断結果に応じて前記設定を適用する。
【0020】
このように一実施形態の通信装置10は、通信に関する設定を実行するにあたって、取得した新規設定を仮設定部12により仮設定を行い、判断部13により新規設定の内容が正常か否かを判断する。本設定部は、判断部13の判断結果に応じて、仮設定を本設定として本装置に適用する。
【0021】
[第1の実施形態]
[装置の構成]
第1の実施形態の通信装置10は、一実施形態と同様に、通信設定取得部11と、仮設定部12と、判断部13と、本設定部14と、を有する。
【0022】
本実施形態の特徴点は、本設定部が、判断部13の判断結果が正常である場合には仮設定部12の設定を本設定として適用し、判断結果が正常でない場合には設定を破棄する点と、判断部13が、仮設定により通信先との接続を確認するための確認パケットを送信し、確認パケットに対する応答パケットの受信を検出することにより設定内容が正常であるか否かを判断する点である。
【0023】
通信設定取得部11は、通信のための設定を取得する。「通信のための」とは、通信装置の種々の設定のうち、主に(無線又は有線)通信に関わる設定を取得することを示している。「取得」とは、端末等より通信回線のインタフェース、あるいはUSB(Universal Serial Bus)ポート、シリアルポート等のハードウエア接続のためのインタフェースを介して情報を受信し、記憶域に格納することを示している。
【0024】
仮設定部12は、通信設定取得部11にて取得した設定を仮に設定する。「仮に設定」とは、即時復旧可能な態様で設定を行うといった趣旨である。すなわち、通信装置10内の記憶域内で仮設定用領域を設け、その設定を、通信を司るモジュール等に反映させるか、あるいは仮設定時に同モジュール等が設定を記憶している記憶領域を新設定へ書換をして、復旧用に仮設定前の旧設定を一時保存しておく記憶領域を別途設けるか、のいずれをも含む。
【0025】
また、仮設定は容易に復旧可能であるとするために、RAM(Random Access Memory)等に使用されている揮発性のDRAM(Dynamic Random Access Memory)等に格納するにとどめ、本設定とする際にフラッシュメモリやEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等に格納するといった区別を行っても良い。
【0026】
判断部13は、仮設定の設定内容が正常か否かを判断する。「設定内容が正常」とは、通信設定にあっては、意図しない通信の途絶が発生しない状態を指す。「正常か否かを判断」するには、仮設定の設定内容にて通信を試行することにより可能である。また本実施形態においては、このほか、設定内容をチェックするツールや、シミュレータによる設定のシミュレーションを行うことで、設定内容が正常であるか否かを判断する態様も含む。判断部13による判断結果は後述する本設定部14に送られる。
【0027】
また更に、本実施形態の通信装置10は、上記判断のために、仮設定により通信先との接続を確認するための確認パケットを送信し、確認パケットに対する応答パケットの受信を検出することにより通信の試行を行い、設定内容が正常であるか否かを判断するといった態様でも良い。
【0028】
また判断部13は、応答パケットを、確認パケットを送信した時刻より所定時間内に受信したか否かにより設定内容が正常であるか否かを判断してもよい。すなわち即時に設定を適用するために、タイムアウトの時間を設定しても良い。
【0029】
本設定部14は、判断部13の判断結果に応じて仮の設定を本設定として適用する。具体的には、本設定部14は、判断部13より判断結果を取得して、例えば、判断部13の判断結果が正常である場合には仮設定部12の設定を本設定として適用し、判断部13の判断結果が正常でない場合には仮の設定を破棄する、といった処理を実行する。
【0030】
このように、本設定部14は、判断部13の判断結果が正常でない場合には、仮設定部12により設定された、仮の設定を破棄することにより、旧設定を復旧するための処理を実行することが可能である。
【0031】
[処理の流れ]
図2は第1の実施形態の通信装置10の処理の流れを示すフローチャートである。通信装置10は、まず、通信のための設定を取得する(ステップS21)。次に、取得した設定を仮に設定する(ステップS22)。次に、通信先との接続を確認するための確認パケットを送信する(ステップS23)。次に応答パケットを受信したか否かを判断する(ステップS24)。応答パケットを受信していないとの判断結果の場合(ステップS24、N)、確認パケットを送信してから所定時間が経過しているか否かを判断する(ステップS25)。所定時間が経過したとの判断結果の場合(ステップS25、Y)には仮設定部の設定を破棄して(ステップS26)処理は終了する。所定時間が経過していないとの判断結果の場合(ステップS25、N)には再び応答パケットを受信したか否かの判断処理(ステップS24)に戻る。応答パケットを受信しているとの判断結果の場合(ステップS24、Y)、仮設定部の設定を本設定として適用し(ステップS27)、処理は終了する。
【0032】
[ハードウエア構成]
次に、第1の実施形態に係る通信装置10を構成する各種装置のハードウエア構成を説明する。
図3は、第1の実施形態に係る通信装置10のハードウエア構成の一例を示すブロック図である。
【0033】
通信装置10は、情報処理装置(コンピュータ)により構成可能であり、
図3に例示する構成を備える。例えば、通信装置10は、内部バス35により相互に接続される、CPU(Central Processing Unit)31、メモリ32、入出力インタフェース33及び通信手段であるNIC(Network Interface Card)34等を備える。
【0034】
但し、
図3に示す構成は、通信装置10のハードウエア構成を限定する趣旨ではない。通信装置10は、図示しないハードウエアを含んでもよいし、必要に応じて入出力インタフェース33を備えていなくともよい。また、通信装置10に含まれるCPU等の数も
図3の例示に限定する趣旨ではなく、例えば、複数のCPUが通信装置10に含まれていてもよい。
【0035】
メモリ32は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置(ハードディスク等)である。
【0036】
入出力インタフェース33は、図示しない表示装置や入力装置のインタフェースとなる手段である。表示装置は、例えば、液晶ディスプレイ等である。入力装置は、例えば、キーボードやマウス等のユーザー操作を受付ける装置である。
【0037】
通信装置10の機能は、通信を司る通信モジュールの他、処理モジュールである通信設定取得プログラムと、仮設定プログラムと、判断プログラムと、本設定プログラムと、メモリ32に保持されている各ニューロンに相当する活性値により実現される。当該処理モジュールは、例えば、メモリ32に格納されたプログラムをCPU31が実行することで実現される。また、そのプログラムは、ネットワークを介してダウンロードするか、あるいは、プログラムを記憶した記憶媒体を用いて、更新することができる。更に、上記処理モジュールは、半導体チップにより実現されてもよい。即ち、上記処理モジュールが行う機能を何らかのハードウエア、及び/又は、ソフトウエアで実行する手段があればよい。
【0038】
[ハードウエアの動作]
通信装置10は動作を開始すると、通信設定取得プログラムがメモリ32から呼び出されCPU31にて実行状態となる。同プログラムはNIC34や入出力インタフェース33等を介して通信設定を受付けると、メモリ32に一時的に格納する。次に仮設定プログラムがメモリ32から呼び出されCPU31にて実行状態となる。同プログラムは、メモリ32に一時的に格納されている通信設定を、メモリ32上の仮設定領域に書き込み、通信装置の通信モジュールはこれを読み込む。あるいは、同プログラムは、通信モジュールが設定領域として使用しているメモリ上の領域を取得した通信設定で書き換える。書き換え前の旧設定は復旧用としてメモリ32上の領域に保持されている。
【0039】
次に、判断プログラムがメモリ32から呼び出されCPU31にて実行状態となる。同プログラムは、通信設定を取得した通信先にNIC34を介して確認パケットを送信する。その後確認パケットに対する、応答パケットを所定時間の間待機する状態となる。待機時間の間、応答パケットをNIC34により受信している場合には、設定は正常であると判断する。一方所定時間の間に応答パケットを受信しない場合には、設定は正常ではないと判断する。
【0040】
次に、本設定プログラムがメモリ32から呼び出されCPU31にて実行状態となる。同プログラムは、設定が正常である場合には、メモリ32に格納されている仮設定を本設定に適用する。すなわち、メモリ32上の仮設定領域に設定データが格納されている場合には、通信モジュールが使用する設定領域に設定データを複製して書き換える。すでに本設定領域の設定データが仮設定で書き換えられている場合には、そのままの状態で動作を続行する。
【0041】
設定が正常でない場合には、本設定プログラムは旧設定に復旧するための動作を実行する。具体的には、メモリ32に格納されている仮設定データを破棄する。仮設定領域に設定データが格納されている場合には、通信モジュールを再起動するなどの処理により、設定領域の(旧)設定データを再度読み込む。仮設定領域の設定データに関しては削除しても良い。すでに本設定領域の設定データが仮設定で書き換えられている場合には、メモリ32上に格納されている復旧用の旧設定データを呼び出して、設定領域を書き換え、必要であれば通信モジュールを再起動させ設定を再度読み込む動作を実行する。
【0042】
[記憶域使用の態様例]
図4(a)~(d)は本実施形態の通信装置10の処理における記憶域使用の態様の例を説明するための図である。例として旧設定から新設定への変更処理における記憶域使用の態様について述べる。
図4(a)、(b)は、通信装置10が応答パケットを受信し設定が成功した場合の記憶域使用の方式である。
図4(c)、(d)は、それぞれ
図4(a)、(b)に対応し、応答パケットが到来せず、設定が失敗し復旧が必要な場合の記憶域使用の態様を示す図である。いずれも黒く塗られている部分が通信モジュール等に使用されている記憶域である。
図4(a)では、当初設定領域1に格納されている旧設定にて通信装置10は動作し、設定変更のための設定データを取得する。取得した設定データ別に確保された設定領域2に仮設定として格納される。それとともに通信モジュール等が使用する設定領域を設定領域1から設定領域2へ切換える。その後確認パケットに対する応答パケットが到来すると、設定領域2から設定領域1へと仮設定を複製し、それとともに通信モジュール等が使用する設定領域を設定領域2から1へ切換える。
【0043】
一方
図4(b)では通信モジュール等が使用する設定領域は設定領域3で固定である。取得した設定は仮設定として直接設定領域3に書き込まれる。応答パケットが到来すると、そのまま仮設定を新設定として使用する。この際において、仮設定を新設定として設定領域4に複製を行っておく。設定領域4はバックアップのための領域であり、後述する
図4(d)復旧時に使用する。
【0044】
図4(c)は
図4(a)において、所定時間内に応答パケットが到来しなかった場合の処理態様を示している。確認パケットの送信から所定時間を経過すると設定領域2の仮設定は破棄され通信モジュール等は設定領域1の旧設定を再度読み込んで復旧動作を行う。
【0045】
図4(d)は
図4(b)において、所定時間内に応答パケットが到来しなかった場合の処理態様を示している。確認パケットの送信から所定時間を経過すると、設定領域3の仮設定は破棄され、設定領域4に保持されている旧設定を設定領域3に複製し、通信モジュール等は再度設定領域3の設定内容を読み込むことで復旧動作を行う。
【0046】
図4(a)及び(c)にかかる態様は、設定領域2は仮設定時のみ記憶域を確保する必要があり、その他の時には記憶領域を解放することが可能である。これに対して、
図4(b)及び(d)にかかる態様は、設定領域4は常に記憶域を確保して旧設定を保持している必要がある。
【0047】
[効果の説明]
上記の通り、本実施形態の通信装置10は、通信設定を変更するための設定を取得し、取得した設定を仮設定して設定内容が正常であるか判断することにより、本設定を行うかを決定する。従って、設定内容が正常で無かった場合には、即時に設定を復旧することにより、例えば通信装置10に接続する端末が誤設定により通信が不能のままとなる事態を未然に回避することが可能となり、フェイルセーフな設定を実現することができる。
【0048】
[第2の実施形態]
[構成]
第2の実施形態では、通信装置10と、通信装置10に接続している端末20とを含む通信システムについて述べる。
図5は、第2の実施形態における通信システムの構成を示す図である。第2の実施形態の通信システムは、通信装置10と端末20とからなる。通信装置10は上記と同様に、通信設定取得部11と、仮設定部12と、判断部13と、本設定部14と、を有する。端末20は、通信設定受付部21と、送信部22と、を有する。
【0049】
通信装置10の各構成要件については、上記と同様であり、説明済みであるので記載は省略する。
【0050】
通信設定受付部21は、通信装置10の設定を受付ける。設定は液晶ディスプレイ等の表示装置や、キーボード、マウス等の入出力インタフェースにより受付けられる。また、設定を変更するために表示装置に表示されるGUI(Graphical User Interface)を提供するプログラムモジュール等が当部を構成する。
【0051】
送信部22は、通信設定受付部21で受付けられた通信設定を送信する。また、送信部22は通信装置10から送信された確認パケットに応じて応答パケットを通信装置10へ送信する。
【0052】
[動作の説明]
図6は第2の実施形態の通信システムの処理の流れを示すフローチャートである。この図にあるように、まず端末において通信のための設定を受付ける(ステップS61)。次に受付けた設定を送信する(ステップS62)。通信装置側では送信された通信のための設定を取得する(ステップS63)。次に取得した設定を仮に設定する(ステップS64)。設定が完了したら端末に向け確認パケットの送信を行う(ステップS65)。ここで設定内容が正常であれば、端末は確認パケットを受けてこれに対する応答パケットの送信を実行する(ステップS66)。通信装置側では確認パケットの送信(ステップS65)後、応答パケットの受信(ステップS67)を所定時間経過するまで待つ。所定時間内に応答パケットを受信したら(ステップS67、Y)、仮設定部の設定を本設定として適用する(ステップS70)。応答パケットの受信無きまま所定時間を経過すると(ステップS68、Y)仮設定部の設定を破棄する(ステップS69)。
【0053】
[実施例]
[実施例の構成]
実施例では、上記通信装置及び通信システムを無線ルータに適用した態様について述べる。まず、
図7、
図8を用いて、本発明の実施例の構成について説明する。
図7は本実施例のブロック図を示す。無線子機200とWi-Fi通信により接続し、無線子機200と広域通信網とを中継する機能を実装する無線ルータ100は、管理端末300との間で無線ルータ100の設定や装置情報の入出力を管理するユーザーインタフェース(UI)制御部101、LAN側及びWAN側の通信を制御する通信制御部102、LAN側の端末とのWi-Fi通信を司るLAN側インタフェース103、広域通信網との通信を司るWAN側インタフェース104から構成される。管理端末300から無線ルータ100へは、Wi-Fi、Ethernet、USB、を介して通信を行うことが可能であり、ユーザーは無線ルータ100で実装するGUI機能を使って無線ルータ100に対するコンフィグレーション(設定)の設定、及び、コンフィグレーション内容、現在の状態、ポップアップメッセージ等の表示を行うことを可能とする。
【0054】
図7の管理端末300から、GUIを介して無線ルータ100のコンフィグレーションの変更が行われると、UI制御部101では、それまで設定されていた変更前のコンフィグレーションを一時保存エリア201に格納し、新しく設定されたコンフィグレーションを装置内のコンフィグレーションデータベース202に保存したあとに、変更したコンフィグレーションの情報を通信制御部102に通知する。通知を受けた通信制御部102では、LAN側インタフェース103、WAN側インタフェース104にコンフィグレーション変更に応じた必要な処理を行う。
【0055】
UI制御部101では、コンフィグレーションの変更により管理端末300との通信が切断していないかを確認するため、コンフィグレーション変更に伴う処理が完了したあとに、管理端末300に対して通信確認用のパケットを送信する。この通信確認用のパケットに対する応答を受信しなかった場合には、コンフィグレーションの変更により無線ルータ100と管理端末300との間の通信が切断されたと判断し、変更前のコンフィグレーションに戻す処理を実施する。その際に、コンフィグレーションが元に戻ったことをユーザーに知らせるため管理端末300のGUIの画面上にコンフィグレーションを元に戻したことをポップアップメッセージで表示する。
【0056】
[動作の説明]
本発明の実施例の動作について、
図9~
図12を用いて説明する。本発明の通信復旧機能が有効の時にコンフィグレーションの変更が行われたときの無線ルータ100におけるコンフィグレーションの状態、コンフィグレーション変更に伴う処理、及び管理端末300との通知の処理について
図9~
図11を用いて説明する。
図11は通信復旧機能が有効のときの処理フローである。
【0057】
管理端末300からコンフィグレーションの変更をする以前の無線ルータ100の状態S1では、管理端末300と無線ルータ100間は通信可能な状態である。管理端末300からのコンフィグレーションの変更を受けとると、無線ルータ100のUI制御部101では、変更前のコンフィグレーションを一時保存エリア201に保存する(P11)。
【0058】
続いてUI制御部101では装置内のコンフィグレーションデータベース202に格納しているコンフィグレーション情報を更新し、通信制御部102にコンフィグレーションの更新を通知する。通信制御部102ではUI制御部101からのコンフィグレーション更新の通知を受けると新しいコンフィグレーションをLAN側インタフェース103、WAN側インタフェース104に反映する処理を行う(P12)。
【0059】
UI制御部101では新しいコンフィグレーションが反映された後に通信確認のパケットを管理端末300に対して送信し、管理端末300から返信があるかを確認する(P13)。送信した通信確認パケットに対する管理端末300からの返信をUI制御部101で受信した場合には新しいコンフィグレーションに問題がないと判断し、一時保存エリアに格納した情報を開放して、処理を終了する(P14、P15)。
【0060】
送信した通信確認パケットに対する管理端末300からの返信がない場合には、UI制御部101では新しいコンフィグレーションによる影響で通信が切断されたと判断し、一時保存エリア201に格納していた変更前のコンフィグレーションでデータベースを更新するとともに、通信制御部102にコンフィグレーションの更新を通知する。通信制御部102では通知を受けると変更前のコンフィグレーションをLAN側インタフェース103、WAN側インタフェース104に反映する処理を行う(P14、P16)。
【0061】
変更前のコンフィグレーションに復旧する処理の完了後、管理端末300と無線ルータ100との間は通信可能な状態に戻っているので、UI制御部101は管理端末300に対して、コンフィグレーションが変更前の状態であることを通知し、GUI上で表示する。(P17)
【0062】
ユーザーは管理端末300のGUI上に表示されたメッセージを確認することで、行ったコンフィグレーションの変更によって通信の切断が発生したこと、及びコンフィグレーションが変更前に戻されたことを認識できる。
【0063】
図12では通信復旧機能無効時のときの処理を説明する。通信復旧機能無効時には通信復旧機能の処理は行われず、UI制御部101、通信制御部102では従来どおりのコンフィグレーション変更に伴う処理を実施する(P19)。
【0064】
[効果の説明]
本実施例における通信システムの第1の効果は、ユーザーが無線ルータ100のコンフィグレーションを変更した時に、誤った設定などにより意図していなかった通信切断が発生した場合に、無線ルータ100と管理端末300間の通信確認を実施して通信切断を検出することを可能とし、無線ルータ100側でコンフィグレーションを戻すことにより、元の通信可能な状態に復旧することである。
【0065】
第2の効果は、通信の切断を検出して、元のコンフィグレーションに戻したときに管理端末のGUI上にメッセージを表示することにより、ユーザーに元のコンフィグレーションに戻したこと、及び、ユーザーが行った変更が通信の切断を引き起こすことをユーザーに知らせることができることである。
【0066】
第3の効果は、ユーザーが通信切断回避機能の有効・無効を選択でき、本機能を必要としない場合にも対応ができることである。
【0067】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載され得るが、以下には限られない。
[形態1]
上述の第一の視点に係る通信装置のとおりである。
[形態2]
本設定部は、判断部の判断結果が正常である場合には仮設定部の設定を本設定として適用し、判断結果が正常でない場合には前記設定を破棄する、好ましくは形態1の通信装置。
[形態3]
判断部は、前記設定により通信先との接続を確認するための確認パケットを送信し、確認パケットに対する応答パケットの受信を検出することにより設定内容が正常であるか否かを判断する、好ましくは形態2の通信装置。
[形態4]
判断部は、応答パケットを、確認パケットを送信した時刻より所定時間内に受信したか否かにより設定内容が正常であるか否かを判断する、好ましくは形態3の通信装置。
[形態5]
上述の第二の視点に係る通信システムのとおりである。
[形態6]
本設定部は、判断部の判断結果が正常である場合には仮設定部の設定を本設定として適用し、判断結果が正常でない場合には設定を破棄する、通信装置を含む、好ましくは形態5の通信システム。
[形態7]
判断部は、設定により通信先である端末との接続を確認するための確認パケットを送信し、確認パケットに対する応答パケットの受信を検出することにより設定内容が正常であるか否かを判断する、通信装置と、送信部は、確認パケットに応じて応答パケットを通信装置へ送信する、端末と、を含む、好ましくは形態6の通信システム。
[形態8]
判断部は、応答パケットを、確認パケットを送信した時刻より所定時間内に受信したか否かにより設定内容が正常であるか否かを判断する、通信装置、を含む、好ましくは形態7の通信システム。
[形態9]
上記第三の視点に係る設定方法のとおりである。
[形態10]
上記第四の視点に係るプログラムのとおりである。
[形態11]
通信装置は、無線ルータである、好ましくは形態1から形態4の通信装置。
[形態12]
通信装置は、無線ルータであって、端末は無線で通信装置に接続する無線子機である、好ましくは形態5から形態8の通信システム。
[形態12]
判断部の判断結果を端末に通知する通知部を更に有する、好ましくは形態1から形態4の通信装置。
なお、形態9及び10は、形態1と同様に、形態2~形態4に展開することが可能である。
【0068】
引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、更にその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0069】
10 :通信装置
11 :通信設定取得部
12 :仮設定部
13 :判断部
14 :本設定部
20 :端末
21 :通信設定受付部
22 :送信部
31 :CPU
32 :メモリ
33 :入出力インタフェース
34 :NIC
35 :内部バス
100 :無線ルータ、通信装置
101 :UI制御部
102 :通信制御部
103 :LAN側インタフェース
104 :WAN側インタフェース
200 :無線子機
201 :一時保存エリア
202 :コンフィグレーションデータベース
300 :管理端末