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特開2024-162351推定装置、推定システム、学習装置、学習済みモデルの生成方法、推定方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162351
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】推定装置、推定システム、学習装置、学習済みモデルの生成方法、推定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20241114BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20241114BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20241114BHJP
   F24F 11/70 20180101ALI20241114BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20241114BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20241114BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20241114BHJP
   F24F 110/12 20180101ALN20241114BHJP
【FI】
G06Q50/06
F24F11/46
F24F11/64
F24F11/70
H04M11/00 301
H04Q9/00 331Z
F24F110:10
F24F110:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077755
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】宇於崎 哲史
(72)【発明者】
【氏名】小宮 紀之
(72)【発明者】
【氏名】中野 聡
【テーマコード(参考)】
3L260
5K048
5K201
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3L260BA42
3L260CA12
3L260CA32
3L260EA22
3L260GA17
5K048BA08
5K048EB06
5K048EB10
5K048EB11
5K048EB13
5K048GC06
5K201BA02
5K201CC01
5K201CC08
5K201DC04
5K201EC06
5K201ED08
5K201FA03
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】需要家の節電受容度を高い確度で推定する。
【解決手段】推定装置は、電力の供給を受けるユーザに相当する需要家の節電受容度を推定する。推定用取得部151は、推定対象の需要家により使用される家電機器の運転情報を取得する。推定部153は、学習済みモデル125に基づいて、推定用取得部151により取得された運転情報から、推定対象の需要家の前記節電受容度を推定する。学習済みモデル125は、学習対象の複数の需要家により使用される複数の家電機器の運転情報と、学習対象の複数の需要家の節電受容度と、が対応付けられた学習用データ123を用いた機械学習により生成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要家の節電受容度を推定する推定装置であって、
推定対象の前記需要家により使用される家電機器の運転情報を取得する取得手段と、
学習対象の複数の需要家により使用される複数の家電機器の運転情報と、前記学習対象の複数の需要家の節電受容度と、が対応付けられた学習用データを用いた機械学習により生成された学習済みモデルに基づいて、前記取得手段により取得された前記運転情報から、前記推定対象の需要家の前記節電受容度を推定する推定手段と、を備える、
推定装置。
【請求項2】
前記推定手段により推定された前記節電受容度に基づいて、前記推定対象の需要家により使用される少なくとも1つの機器の操作に関する提案情報を報知する報知手段、を更に備える、
請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記報知手段により報知された前記提案情報に対する承諾に応じて、前記推定対象の需要家により使用される少なくとも1つの機器の消費電力を抑制させる制御を実行する機器制御手段、を更に備える、
請求項2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記推定手段により推定された前記節電受容度に基づいて、前記推定対象の需要家により使用される少なくとも1つの機器の消費電力を抑制させる制御を実行する機器制御手段、を更に備える、
請求項1に記載の推定装置。
【請求項5】
前記学習対象の複数の需要家のそれぞれの前記節電受容度は、節電が要請された期間と節電が要請されていない期間とにおける家電機器の運転情報の差異に応じて導出される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項6】
前記推定対象の需要家の前記節電受容度、及び、前記学習対象の複数の需要家の前記節電受容度は、節電が要請された期間における消費電力を抑制する需要家の行動の程度を3つ以上の値で段階的に表す、
請求項1から4のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項7】
前記推定対象の需要家により使用される前記家電機器、及び、前記学習対象の複数の需要家により使用される前記複数の家電機器のそれぞれは、空調機であり、
前記運転情報は、前記空調機の運転時間と、前記空調機の設定温度と、前記空調機の操作時における室温と、のうちの少なくとも1つを示す、
請求項1から4のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項8】
前記学習用データを生成する学習用データ生成手段と、
前記学習用データ生成手段により生成された前記学習用データを用いた前記機械学習により前記学習済みモデルを生成する学習処理手段と、を更に備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項9】
前記学習用データ生成手段は、
節電が要請された期間における前記複数の家電機器の運転情報と、節電が要請されていない期間における前記複数の家電機器の運転情報と、に基づいて、前記学習対象の複数の需要家の前記節電受容度を導出し、
前記節電が要請されていない期間における前記複数の家電機器の運転情報と、導出した前記節電受容度と、が対応付けられた前記学習用データを生成する、
請求項8に記載の推定装置。
【請求項10】
前記学習用データ生成手段は、前記推定手段により推定された前記節電受容度を、前記推定対象の需要家の行動に応じて修正し、修正後の前記節電受容度に基づいて前記学習用データを更新し、
前記学習処理手段は、前記学習用データ生成手段により更新された前記学習用データを用いて前記学習済みモデルを更新する、
請求項8に記載の推定装置。
【請求項11】
請求項1から4のいずれか1項に記載の推定装置と、前記推定対象の需要家により使用される前記家電機器と、を備える、
推定システム。
【請求項12】
学習対象の複数の需要家により使用される複数の家電機器の運転情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記運転情報と、前記学習対象の複数の需要家の節電受容度と、が対応付けられた学習用データを生成する学習用データ生成手段と、
前記学習用データ生成手段により生成された前記学習用データを用いて機械学習を行うことにより、推定対象の需要家により使用される家電機器の運転情報の入力に対して、前記推定対象の需要家の節電受容度を出力する学習済みモデルを生成する学習処理手段と、を備える、
学習装置。
【請求項13】
学習対象の複数の需要家により使用される複数の家電機器の運転情報を取得し、
取得された前記運転情報と、前記学習対象の複数の需要家の節電受容度と、が対応付けられた学習用データを生成し、
生成された前記学習用データを用いた機械学習を行うことにより、推定対象の需要家により使用される家電機器の運転情報の入力に対して、前記推定対象の需要家の節電受容度を出力する学習済みモデルを生成する、
学習済みモデルの生成方法。
【請求項14】
需要家の節電受容度を推定する推定方法であって、
推定対象の前記需要家により使用される家電機器の運転情報を取得し、
学習対象の複数の需要家により使用される複数の家電機器の運転情報と、前記学習対象の複数の需要家の節電受容度と、が対応付けられた学習用データを用いた機械学習により生成された学習済みモデルに基づいて、取得された前記運転情報から、前記推定対象の需要家の前記節電受容度を推定する、
推定方法。
【請求項15】
コンピュータを、
推定対象の需要家により使用される家電機器の運転情報を取得する取得手段、
学習対象の複数の需要家により使用される複数の家電機器の運転情報と、前記学習対象の複数の需要家の節電受容度と、が対応付けられた学習用データを用いた機械学習により生成された学習済みモデルに基づいて、前記取得手段により取得された前記運転情報から、前記推定対象の需要家の節電受容度を推定する推定手段、として機能させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、推定装置、推定システム、学習装置、学習済みモデルの生成方法、推定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力自由化、原発再稼働の難航、カーボンニュートラルに向けた再生エネルギーの活用等といった諸事情を受けて、電力の供給量に応じて電力需要を制御することに対する要求が高まっている。これに関して、例えば電力需給バランスを監視しているシステムからの節電が要請された場合に、空調機の設定温度の変更、運転OFF等といった電力需要の抑制が非ユーザにより自動的に実施されるケースが想定される。
【0003】
例えば、特許文献1は、省エネルギー化のために機器の自動制御を行う情報処理装置を開示している。特許文献1に開示された情報処理装置は、ユーザの制御拒否の操作に応じて、機器を制御する順番を示す優先度を下げる方向に変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-215728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力需要を抑制する場合、節電要請に対する需要家の受容度が低いと、計画よりも少ない量しか電力需要を抑制できなくなり、電力需要の抑制が実現できなくなる可能性がある。そのため、電力需要の抑制をより確実にするためには、電力需要の抑制に協力する可能性が高い需要家を把握することが重要である。このような事情のもと、需要家の節電受容度を高い確度で推定する技術が求められている。
【0006】
本開示は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、需要家の節電受容度を高い確度で推定することが可能な推定装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示に係る推定装置は、
需要家の節電受容度を推定する推定装置であって、
推定対象の前記需要家により使用される家電機器の運転情報を取得する取得手段と、
学習対象の複数の需要家により使用される複数の家電機器の運転情報と、前記学習対象の複数の需要家の節電受容度と、が対応付けられた学習用データを用いた機械学習により生成された学習済みモデルに基づいて、前記取得手段により取得された前記運転情報から、前記推定対象の需要家の前記節電受容度を推定する推定手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示では、学習対象の複数の需要家により使用される複数の家電機器の運転情報と、学習対象の複数の需要家の節電受容度と、が対応付けられた学習用データを用いた機械学習により生成された学習済みモデルに基づいて、推定対象の需要家により使用される家電機器の運転情報から推定対象の需要家の節電受容度を推定する。従って、本開示によれば、需要家の節電受容度を高い確度で推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る推定システムの全体構成を示す図
図2】実施の形態1に係る推定装置のハードウェア構成を示すブロック図
図3】実施の形態1に係る推定装置の機能的な構成を示すブロック図
図4】実施の形態1に係る運転履歴の例を示す図
図5】実施の形態1において、通常日と警報発令日とのそれぞれにおける運転情報の推移を示す図
図6】実施の形態1において、節電受容度が高い需要家と節電受容度が低い需要家の特徴を説明する図
図7】実施の形態1において、複数の需要家の節電受容度を導出した例を示す図
図8】実施の形態1において、通常日と警報発令日とにおける運転情報の比較例を示す図
図9】実施の形態1に係る学習用データの例を示す図
図10】実施の形態1に係る学習済みモデルにおける入出力データの例を示す図
図11】実施の形態1に係る操作端末に表示される報知画面の第1の例を示す図
図12】実施の形態1に係る操作端末に表示される報知画面の第2の例を示す図
図13】実施の形態1に係る学習フェーズ処理の流れを示すフローチャート
図14】実施の形態1に係る活用フェーズ処理の流れを示すフローチャート
図15】実施の形態2に係る操作端末に表示される報知画面の例を示す図
図16】実施の形態3に係る操作端末に表示されるアンケート画面の例を示す図
図17】実施の形態3に係る操作端末に表示される電力供給に関する契約プランの選択画面の例を示す図
図18】実施の形態4に係る推定装置の機能的な構成を示すブロック図
図19】実施の形態5に係る推定システムの構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付す。
【0011】
(実施の形態1)
図1に、実施の形態1に係る推定システム1の全体構成を示す。推定システム1は、複数の空調機3と、複数の操作端末5と、推定装置10と、を備える。
【0012】
推定システム1は、機械学習による学習結果を用いて需要家の節電受容度を推定するシステムである。ここで、節電受容度は、需要家の節電に対する意識の程度を示す値である。具体的には、節電受容度は、節電が要請された場合に、需要家により使用される家電機器の消費電力を抑制することをどの程度受け入れるかを示す値である。節電要請は、電力需給がひっ迫した場合、又は、電力需給がひっ迫することが予想される場合に政府、地方自治体等により発せられる。節電要請は、例えば、日単位又は時間帯の単位で、対象となる日の前日までに発せられる。
【0013】
複数の空調機3のそれぞれは、空調対象である室内空間を空調する設備である。各空調機3は、例えば、ルームエアコン、パッケージエアコン等である。室内空間は、例えば、住宅、オフィス、店舗、工場等の部屋である。各空調機3は、推定システム1において制御の対象となる家電機器の一例である。
【0014】
図1の例では、複数の空調機3は、それぞれ、需要家A、需要家B、…、の住宅に設置されている。なお、図1では1つの需要家の住宅に1つの空調機3が設置されている例を示しているが、1つの需要家の住宅に複数の空調機3が設置されていても良い。ここで、各需要家は、商用電源から供給される電力を需要する者であって、電力の供給を受けるユーザに相当する。各需要家は、商用電源から供給される電力により家電機器を使用する。
【0015】
各空調機3は、例えば、二酸化炭素、HFC(ハイドロフルオロカーボン)等を冷媒として用いたヒートポンプ式の空調設備である。各空調機3は、図示を省略するが、室外に設置される室外機と、室内に設置される室内機と、を備える。
【0016】
室外機と室内機とは、冷媒が流れる冷媒配管により接続されている。室外機は、冷媒を圧縮して冷媒配管を循環させる圧縮機と、冷媒の循環方向を切り替える四方弁と、室外空気と冷媒との間で熱交換する室外熱交換器と、冷媒を減圧して膨張させる膨張弁と、室外空気を室外熱交換器に送る室外ファンと、を備える。室内機は、室内空間の空気と冷媒との間で熱交換する室内熱交換器と、熱交換された空気を室内空間に送る室内ファンと、を備える。圧縮機と四方弁と室外熱交換器と膨張弁と室内熱交換器とは、冷媒配管により環状に接続されている。これにより、冷凍サイクルが形成されている。
【0017】
各空調機3は、室温と設定温度との温度差が許容範囲内に収まるように、圧縮機の運転と停止とを繰り返す。例えば、冷房時では、空調機3は、室温が設定温度よりも上昇すると圧縮機を運転させ、室温が設定温度よりも低下すると圧縮機の運転を停止させる。逆に、暖房時では、空調機3は、室温が設定温度よりも低下すると圧縮機を運転させ、室温が設定温度よりも上昇すると圧縮機の運転を停止させる。
【0018】
複数の操作端末5のそれぞれは、スマートフォン、タブレット端末等の通信端末であって、空調機3のユーザインタフェースとして機能する。需要家は、操作端末5を操作して、空調機3に対する操作指示を入力する。操作指示は、具体的には、運転と停止の切り替える指示、運転モードの切り替える指示、設定温度、設定湿度、風量又は風向を変更する指示等である。各操作端末5は、無線通信又は有線通信により操作対象の空調機3と通信し、入力された操作指示を空調機3に送信する。空調機3は、操作端末5に入力された操作指示に従って動作する。
【0019】
各空調機3及び各操作端末5は、いずれも図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、通信インタフェース、及び、読み書き可能な不揮発性の半導体メモリを備える。各装置において、CPUがRAMをワークメモリとして用いながらROMに格納された制御プログラムを実行することにより、各装置の動作を制御する。
【0020】
また、各空調機3は、いずれも図示しないが、室内空間の室温を計測する室温センサ、外気温を計測する外気温センサ等のような各種センサを備える。例えば、室温センサは、室内機に設置されており、外気温センサは、室外機に設置されている。
【0021】
推定装置10は、複数の空調機3を制御及び管理する装置である。推定装置10は、一例として、クラウドコンピューティングのリソースを提供するサーバである。推定装置10は、広域通信網であるネットワークを介して複数の空調機3及び複数の操作端末5のそれぞれと通信し、各空調機3を遠隔的に管理する。
【0022】
図2に示すように、推定装置10は、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、を備える。
【0023】
制御部11は、CPU、ROM及びRAMを備える。CPUは、中央処理装置、中央演算装置、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ等とも呼び、推定装置10の制御に係る処理及び演算を実行する中央演算処理部として機能する。制御部11において、CPUは、ROMに格納されているプログラム及びデータを読み出し、RAMをワークエリアとして用いて、推定装置10を統括制御する。
【0024】
記憶部12は、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等の不揮発性の半導体メモリを備えており、いわゆる二次記憶装置又は補助記憶装置としての役割を担う。記憶部12は、制御部11が各種処理を行うために使用するプログラム及びデータを記憶する。また、制御部11が各種処理を行うことにより生成又は取得するデータを記憶する。
【0025】
例えば、記憶部12は、運転履歴データ121と、学習用データ123と、学習済みモデル125と、を記憶する。これら各データの詳細は後述する。
【0026】
通信部13は、推定装置10が外部の装置と通信するための通信インタフェースを備える。通信部13は、広域通信網である通信ネットワークを介して、複数の空調機3及び複数の操作端末5のそれぞれと通信する。通信に用いるプロトコルは、特に限定されるものではないが、例えばECHONET Lite(登録商標)規格のような一定の汎用性のあるものを採用することができる。
【0027】
なお、図示を省略するが、推定装置10は、ユーザの操作を受け付ける操作部、各種の画像を表示する表示部等のユーザインタフェースを備えていても良い。
【0028】
制御部11は、機能的に、学習フェーズ処理部110と活用フェーズ処理部150とを備える。図3に、学習フェーズ処理部110及び活用フェーズ処理部150に含まれる機能の詳細を示す。学習フェーズ処理部110は、学習用取得手段の一例である学習用取得部111と、学習用データ生成手段の一例である学習用データ生成部113と、学習処理手段の一例である学習処理部115と、を含む。活用フェーズ処理部150は、推定用取得手段の一例である推定用取得部151と、推定手段の一例である推定部153と、報知手段の一例である報知部155と、機器制御手段の一例である機器制御部157と、を含む。
【0029】
なお、学習用取得部111と推定用取得部151とを区別せずに称する場合には、「取得部」と総称する。取得部は、取得手段の一例である。
【0030】
これらの各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、ROM又は記憶部12に格納される。そして、CPUが、ROM又は記憶部12に記憶されたプログラムを実行することによって、これらの各機能を実現する。
【0031】
<<学習フェーズ>>
まず、学習フェーズについて説明する。学習フェーズは、学習用データ123を用いて機械学習を行って、学習済みモデル125を生成するフェーズである。学習フェーズの処理は、学習フェーズ処理部110により実行される。
【0032】
学習フェーズ処理部110において、学習用取得部111は、学習対象の複数の需要家により使用される複数の空調機3の運転情報を取得する。空調機3の運転情報は、空調機3の空調運転に関する情報である。一例として、空調機3の運転情報は、空調機3の運転時間と、空調機3の設定温度と、空調機3の操作時における室温と、を示す情報である。
【0033】
ここで、空調機3の運転時間は、空調機3が空調運転している時間長を意味する。設定温度は、空調において目標となる温度である。設定温度は、需要家が操作端末5、又は、図示しないリモコンを操作することで設定することができる。室温は、空調機3が空調する対象となる室内空間の空気温度である。室温は、例えば室内機に設置された温度センサにより計測される。
【0034】
空調機3の操作時における室温は、例えば運転停止、運転開始、設定温度の変更等のように、需要家が空調機3を操作した際における室温である。以下では、空調機3の操作時における室温を「操作時室温」と称し、需要家が空調機3の運転を停止した際の室温を例にとって説明する。
【0035】
空調機3の運転情報を取得するために、学習用取得部111は、複数の空調機3のそれぞれから運転状態を繰り返し取得し、運転履歴データ121を生成する。運転履歴データ121は、複数の空調機3のそれぞれの運転状態を時系列的に示すデータである。
【0036】
具体的に説明すると、学習用取得部111は、通信部13を介して複数の空調機3のそれぞれと通信し、各空調機3に対して運転状態の取得要求を送信する。各空調機3は、推定装置10から取得要求を受信すると、受信した取得要求に対する応答として、その時点における運転状態の情報を推定装置10に送信する。
【0037】
より詳細には、各空調機3は、運転状態の情報として、取得要求を受信した時点における運転ON/OFFと、運転モードと、設定温度と、室温と、の各情報を推定装置10に送信する。運転のON/OFFは、空調機3が空調運転を実行しているか、それとも停止しているかを示す。運転モードは、冷房、暖房、除湿、加湿等のような、空調機3において実行可能な空調のモードである。
【0038】
学習用取得部111は、各空調機3に対して予め定められた時間間隔で取得要求を送信して、各空調機3の運転状態を繰り返し取得する。これにより、学習用取得部111は、各空調機3の運転状態の時系列データを取得する。
【0039】
学習用取得部111は、各空調機3から運転状態を取得すると、取得した運転状態のデータを、その取得日時と対応付けて記憶部12に保存する。具体的には、学習用取得部111は、取得した運転状態のデータを、記憶部12に記憶されている運転履歴データ121に保存する。
【0040】
図4に、一例として、需要家Aにより使用される空調機3の運転履歴データ121を示す。運転履歴データ121は、時刻と、運転のON/OFFと、運転モードと、設定温度と、室温と、を互いに対応付けて格納している。運転履歴データ121において、時刻は、学習用取得部111が空調機3から運転状態を取得した時刻である。図4の例では、予め定められた時間間隔として5分毎に学習用取得部111が空調機3から運転状態を取得した場合を示している。
【0041】
より詳細には、運転履歴データ121は、「通常日」と「警報発令日」とのそれぞれについて、時刻と、運転のON/OFFと、運転モードと、設定温度と、室温と、を互いに対応付けて格納している。ここで、「警報発令日」は、電力需給ひっ迫の警報が発令された日であって、節電が要請された期間に相当する。これに対して、「通常日」は、警報が発令されていない日であって、節電が要請されていない期間に相当する。
【0042】
記憶部12は、通信部13により通信可能な複数の空調機3のそれぞれについて、空調機3単位で、又は、需要家単位で、このような運転履歴データ121を記憶している。学習用取得部111は、空調機3から運転状態を取得すると、取得した運転状態のデータをその空調機3の運転履歴データ121に追加することで、運転履歴データ121を更新する。運転履歴データ121は、必要に応じて読み出されて推定装置10内での演算処理に掛けられる。
【0043】
学習用取得部111は、このような運転履歴データ121に基づいて、学習対象の複数の需要家により使用される各空調機3の運転情報を取得する。ここで、学習対象の複数の需要家は、図1に示した需要家A、需要家B、…、のうちの、学習用データ123を生成するための対象となる複数の需要家である。より具体的には、学習対象の複数の需要家は、過去に節電が要請された期間である「警報発令日」と節電が要請されていない期間である「通常日」とをどちらも経験している複数の需要家である。
【0044】
学習用取得部111は、運転履歴データ121を参照して、各空調機3の運転情報として、運転時間と、設定温度と、操作時における室温と、の各情報を、予め定められた時間長単位で取得する。予め定められた時間長は、どのような時間長であっても良いが、以下では1日である場合を例にとって説明する。
【0045】
具体的に説明すると、学習用取得部111は、運転時間として、運転履歴データ121における運転ON/OFFがONになっている時間長を1日単位で導出する。更に、学習用取得部111は、設定温度として、運転履歴データ121に格納された設定温度の1日単位の平均値を導出する。なお、平均値の代わりに代表値を用いても良い。また、学習用取得部111は、操作時における室温として、運転履歴データ121における運転ON/OFFがONからOFFに変化した時刻における室温を1日単位で導出する。
【0046】
図3に戻って、学習用データ生成部113は、学習用取得部111により取得された運転情報に基づいて、学習用データ123を生成する。ここで、学習用データ123は、教師データ、教師有りデータ、訓練データ等とも呼ばれ、学習済みモデル125を生成するためのデータである。学習用データ123は、空調機3の運転情報と、その空調機3の需要家の節電受容度と、の間の関係を学習する目的で使用される。具体的には、学習用データ123は、学習対象の複数の需要家により使用される複数の空調機3の運転情報と、複数の需要家の節電受容度と、が互いに対応付けられたデータである。
【0047】
学習用データ123を生成するためには、教師有り学習の目的変数として、学習対象となる複数の需要家の節電受容度の情報が必要となる。そのために、学習用データ生成部113は、記憶部12に記憶されている運転履歴データ121に基づいて、学習対象の複数の需要家のそれぞれの節電受容度を導出する。
【0048】
具体的に説明すると、学習用データ生成部113は、運転履歴データ121のうちの、節電が要請された期間における複数の空調機3の運転情報と、節電が要請されていない期間における複数の空調機3の運転情報と、に基づいて、学習対象の複数の需要家の節電受容度を導出する。ここで、節電が要請された期間は、節電を実施することを求められた対象となる日又は時間帯であって、例えば「警報発令日」に相当する。これに対して、節電が要請されていない期間は、節電を実施することを求められていない日又は時間帯であって、例えば「通常日」に相当する。
【0049】
学習用データ生成部113は、1つの空調機3について、節電が要請された期間と節電が要請されていない期間とにおける運転情報を比較し、比較した運転情報の差異に応じて、その空調機3の需要家の節電受容度を導出する。学習用データ生成部113は、このような導出処理を学習対象の複数の需要家のそれぞれに対して実行することで、学習対象の複数の需要家のそれぞれの節電受容度を導出する。
【0050】
図5に、冬季における「通常日」と「警報発令日」とのそれぞれに対して、同一の時間帯における同一の空調機3の運転履歴データ121をグラフに表した例を示す。図5は、「通常日」と「警報発令日」とのそれぞれにおいて、運転履歴データ121に含まれる運転ON/OFF、設定温度及び室温の0~24時における推移を示している。冬季であるため、運転モードは暖房である。
【0051】
図5において、運転ON/OFFがONからOFFになったタイミングに着目すると、通常日では、この空調機3の需要家が暖房運転をOFFした際における室温は26.0℃である。一方で、警報発令日では、需要家が暖房運転をOFFした際における室温は23.0℃である。すなわち、この空調機3の需要家は、警報発令日の方が通常日よりも低い室温で暖房運転をOFFしたことが分かる。
【0052】
冬季における警報発令日は、冷え込みが厳しいために暖房で消費する電力量が大幅に増加して電力需給ひっ迫が見込まれる日である。それにも関わらず、警報発令日の方が通常日よりも低い室温で暖房運転をOFFするという需要家は、警報発令を受けて節電しようという意識が強いと推定できる。そのため、図5の例における需要家は、節電が要請された場合にそれに対する受容度が高い、すなわち節電受容度が高いと推定できる。
【0053】
このような暖房運転のOFF時の室温に加えて、通常日では、暖房運転がON中における設定温度は24.0℃である。その一方で、図5の需要家は、警報発令日では、設定温度を22.5℃に変更している。そのため、図5の需要家は、節電受容度が高い可能性が更に高いと考えられる。
【0054】
このように、学習用データ生成部113は、運転履歴データ121から需要家の節電受容度を導出して目的変数とする。その際、複数の説明変数から導き出した結果を重ねることで、より高い確度で節電受容度を導出することができる。例えば、運転OFF時の室温、及び、運転ON中の設定温度に加えて、説明変数として、設定温度を変更した際の室温、設定温度を上げたか下げたか、空調機3の運転ONの時間長等を用いても良い。
【0055】
なお、図5の例では、暖房の使用が想定される冬季を対象に説明した。しかしながら、冷房の使用が想定される夏季では、冬季とは温度の高低を逆転させることで、同様に説明することができる。
【0056】
図6に、夏季と冬季とのそれぞれにおける節電受容度が高い需要家と低い需要家の特徴の例をまとめる。警報発令日における需要家は、運転時間と運転OFF時の室温と設定温度とのそれぞれに関して、節電受容度に応じて図6に示すような特徴を示す。まとめると、需要家が警報発令日に我慢して不快になるような空調機3の利用方法を採っている場合、その需要家は節電意識が高く、節電受容度が高い可能性が高いと言える。
【0057】
学習用データ生成部113は、このような需要家の節電受容度を導出する処理を、学習対象の複数の需要家のそれぞれに対して実行する。図7に、学習対象の複数の需要家のそれぞれの節電受容度を導出した場合の例を示す。図7において、「ID」は、空調機3及びその需要家の識別情報である。IDは、学習対象の各需要家を一意に識別するため、他の需要家との間で重複しない情報が用いられる。
【0058】
なお、図7は、暖房の使用が想定される冬季の例を示す。しかしながら、季節によって空調機3の使い方は大きく変化するため、例えば夏季における節電受容度を導出する際は、冬季とは別に夏季のデータを用いた学習用データ123を生成する必要が有る。
【0059】
図7では、節電受容度をより高い確度で導出するため、学習用データ生成部113は、「運転時間/日」と「設定温度」と「操作時室温」という3つの変数を用いる。ここで、「運転時間/日」は、1日の運転ON時間を意味する。「操作時室温」は、需要家が運転OFFの操作を実施した際の室温を意味する。
【0060】
図7におけるこれら3つの変数の値は、通常日と警報発令日とのそれぞれにおける平均値を示す。なお、特定の空調機3の変数が極端な値を示している場合には、平均値の代わりに中央値を用いても良い。また、曜日による影響を考慮して、通常日と警報発令日とで同一の曜日における値を集計しても良い。
【0061】
警報発令日において通常日よりも、これら3つの変数がいずれも消費電力を抑制する方向の動きを示しているならば、その需要家の節電受容度は高いと判定できる。より理解を容易にするため、図7におけるIDが「ABCD1234」と「CDEF7654」の需要家について、通常日と警報発令日の各変数をプロットした結果を図8に示す。
【0062】
図8に示すように、IDが「CDEF7654」では、警報発令日の方が通常日よりも運転時間が短く、設定温度が低く、操作時室温が低い。そのため、この需要家は、警報発令日において電力消費を抑える行動をしており、節電受容度が高いと推定できる。この結果を反映して、図7におけるIDが「CDEF7654」の需要家の節電受容度には「○」が付けられている。
【0063】
一方で、IDが「ABCD1234」では、警報発令日の方が通常日よりも運転時間が長く、設定温度が高く、操作時室温が高い。そのため、この需要家は、警報発令日において電力消費を抑える行動をしておらず、節電受容度が高くないと推定できる。この結果を反映して、図7におけるIDが「ABCD1234」の需要家の節電受容度には「×」が付けられている。
【0064】
このようにして学習対象の各需要家の節電受容度を導出すると、学習用データ生成部113は、節電が要請された期間である「通常日」における、学習対象の需要家により使用される複数の空調機3の運転情報と、導出した節電受容度と、が対応付けられた学習用データ123を生成する。例えば、学習用データ生成部113は、図9に示す学習用データ123を生成する。
【0065】
図9に示すように、学習用データ123は、1つのデータセットが学習対象の需要家毎に1日単位の「運転時間/日」と「設定温度」と「操作時室温」と「節電受容度」との組み合わせである複数のデータセットを有する。このように、学習用データ生成部113は、学習用取得部111により取得された運転情報である「運転時間/日」と「設定温度」と「操作時室温」を説明変数とし、導出した「節電受容度」を目的変数とする学習用データ123を生成する。
【0066】
図3に戻って、学習処理部115は、学習用データ生成部113により生成された学習用データ123に基づいて、学習済みモデル125を生成する。学習済みモデル125は、空調機3の運転情報からその空調機3の需要家の節電受容度を推定するためのモデルである。
【0067】
より詳細には、学習済みモデル125は、推定対象の需要家により使用される空調機3の運転情報の入力を受けて、その需要家の節電受容度の推定値を出力する。学習済みモデル125の入力は、空調機3の運転情報である「運転時間」と「設定温度」と「運転OFF時室温」の3つの変数であり、学習済みモデル125の出力は、節電受容度が高い/低いという2値である。なお、「運転OFF時室温」は、「操作時室温」の一例である。
【0068】
学習処理部115は、学習用データ生成部113により生成された学習用データ123を用いて機械学習を行うことにより、学習済みモデル125を生成する。学習処理部115は、適宜の教師有り学習の手法を用いて機械学習を行う。教師有り学習の手法として、例えば、サポートベクタマシン(SVM)、ニューラルネットワーク等が挙げられる。しかしながら、これに限らず、2値判別が可能な教師有り学習の手法であれば、他の学習アルゴリズムを用いることもできる。
【0069】
学習処理部115は、このような教師有り学習の手法を用いて、学習用データ生成部113により生成された学習用データ123において互いに対応付けられた運転情報と節電受容度との間の関係を学習する。具体的に説明すると、学習処理部115は、運転情報である「運転時間」と「設定温度」と「運転OFF時室温」という3つの変数の入力に対して、これらの3つの変数に対応する節電受容度が「高い」又は「低い」のどちらであるのかという関係を学習する。
【0070】
より詳細には、学習処理部115は、冷房時と暖房時とのそれぞれに対して別々に、運転情報と節電受容度との間の関係を学習する。具体的には図10に示すように、学習済みモデル125は、冷房時と暖房時とのそれぞれにおける空調機3の運転時間と設定温度と運転OFF時の室温の入力を受けて、冷房時と暖房時とのそれぞれにおける節電受容度を出力する。
【0071】
以上のように、学習フェーズ処理部110は、学習対象の複数の需要家により使用される空調機3の運転情報と、その複数の需要家の節電受容度と、の間の関係を学習することで、空調機3の運転情報から需要家の節電受容度を推定するための学習済みモデル125を生成する。
【0072】
<<活用フェーズ>>
次に、図3に戻って、活用フェーズについて説明する。活用フェーズは、学習フェーズにおいて生成された学習済みモデル125を活用するフェーズである。活用フェーズの処理は、活用フェーズ処理部150により実行される。活用フェーズの処理は、例えば新規に節電が要請された場合において、その節電要請の対象日の前日に実行される。
【0073】
活用フェーズ処理部150において、推定用取得部151は、推定対象の需要家により使用される空調機3の運転情報を取得する。ここで、推定対象の需要家は、図1に示した需要家A、需要家B、…、のうちの、新規の節電要請に対する節電受容度を推定する対象となる需要家である。
【0074】
推定対象の需要家は、一例として、未だ節電が要請された期間を経験していない新規の需要家である。しかしながら、推定対象の需要家は、過去に節電が要請された期間を経験している需要家、言い換えると、学習対象の複数の需要家のうちのいずれかであっても良い。学習用データ生成部113により過去に節電受容度が決定された需要家であっても、時間の経過と共に節電受容度が変化している可能性があるため、節電受容度を推定する対象とすることができる。
【0075】
推定用取得部151は、記憶部12に記憶されている運転履歴データ121を参照して、推定対象の需要家により使用される空調機3の運転情報を取得する。運転履歴データ121は、学習用取得部111により取得された複数の空調機3の運転状態の時系列データを格納している。推定用取得部151は、運転履歴データ121のうちから、推定対象の需要家により使用される空調機3の運転状態の時系列データを取得する。
【0076】
より詳細には、推定用取得部151は、冷房時と暖房時とのそれぞれについて、節電が要請されていない期間における推定対象の需要家により使用される家電機器の運転情報を取得する。具体的に説明すると、推定用取得部151は、運転履歴データ121のうちの、推定対象の需要家の「通常日」におけるデータを参照して、運転時間と、設定温度と、運転停止時における室温と、の各情報を、予め定められた時間長単位で取得する。これらの各情報の取得の方法は、上述した学習用取得部111による運転情報の取得の方法と同様である。
【0077】
なお、推定用取得部151は、運転履歴データ121を参照せずに、通信部13を介して推定対象の需要家により使用される空調機3と直接通信することで、運転情報を取得しても良い。
【0078】
推定部153は、学習処理部115により生成された学習済みモデル125に基づいて、推定用取得部151により取得された運転情報から、推定対象の需要家の節電受容度を推定する。具体的に説明すると、推定部153は、推定用取得部151により取得された運転情報を、学習済みモデル125に入力する。
【0079】
学習済みモデル125は、上述のように、運転情報の入力に対して節電受容度の推定値を高い/低いという2値で出力する。推定部153は、運転情報の入力に対して学習済みモデル125から出力される推定値を、推定対象の需要家の節電受容度として推定する。
【0080】
より詳細には、図10に示したように、学習済みモデル125は、6つの説明変数の入力に対して、冷房節電受容度と暖房節電受容度とをそれぞれ2値で出力する。推定部153は、学習済みモデル125から出力される冷房節電受容度と暖房節電受容度とを、それぞれ冷房時と暖房時とにおける需要家の節電受容度として推定する。
【0081】
以上により、需要家の節電受容度が高いか低いかを推定することが可能となる。推定部153による推定結果は、節電要請を受け入れる可能性が高い需要家の抽出、引いては節電が要請された期間における節電量の実態を見積もる際における確度上昇に寄与する。それ以外にも、推定部153による推定結果は、小売り電気事業者、アグリゲータ等が推奨する動作を需要家に伝える際にも活用できる。
【0082】
図3に戻って、報知部155は、推定部153により推定された節電受容度に基づいて、推定対象の需要家より使用される少なくとも1つの機器の操作に関する提案情報を報知する。ここで、需要家より使用される少なくとも1つの機器は、例えば空調機3であるが、空調機3に限らず、その需要家により使用される他の家電機器であっても良い。他の家電機器の例として、照明装置、給湯機等が挙げられる。
【0083】
報知部155は、通信部13を介して需要家の操作端末5と通信し、操作端末5に提案情報を送信する。そして、報知部155は、操作端末5の表示部に、送信した提案情報を示す画像を表示させる。これにより、報知部155は、需要家に対して、節電につながる機器の操作を促す提案情報を報知する。
【0084】
一例として、報知部155は、節電が要請されていない期間である通常日において、節電受容度が低いと推定された需要家の操作端末5に、図11に示す提案情報を報知する。図11に示す提案情報は、節電受容度が低い需要家に対して、節電のために推奨される空調の設定を提案する。
【0085】
報知部155は、このような提案情報を、節電受容度が低い需要家に対して啓蒙の意味も含めて報知するため、電力需給がひっ迫している状況か否かに関わらず報知する。このような提案情報を報知することで、設定温度が過度に高温、過度に低温等のように、通常日における不適切な機器の運転状態を無くしていくことができる。これにより、電力需給がひっ迫する状況を極力発生させないことにつながる。
【0086】
図3に戻って、機器制御部157は、推定部153により推定された節電受容度に基づいて、推定対象の需要家により使用される少なくとも1つの機器の消費電力を抑制させる制御を実行する。需要家により使用される少なくとも1つの機器は、上述のように、空調機3、照明装置、給湯機等である。
【0087】
機器制御部157は、通信部13を介して、推定部153により推定された節電受容度が高い需要家により使用される少なくとも1つの機器に対して制御指示を送信する。そして、機器制御部157は、消費電力が減る方向に少なくとも1つの機器を制御する。ここで、消費電力が減る方向の制御は、例えば、機器が空調機3である場合には暖房時の設定温度を低下させる又は冷房時の設定温度を上昇させることが挙げられ、機器が照明装置である場合には室内照度を暗くすることが挙げられる。また、機器の運転を停止させることで、消費電力を抑制させても良い。
【0088】
機器制御部157は、このような消費電力を抑制させる制御を、節電が要請された期間に実施する。その際、例えばその制御を実施しなければ停電が発生する恐れがある場合のように緊急性の高い場合、又は、事前に需要家から制御することに対する了承を得ている場合であれば、機器制御部157は、需要家の意思を確認することなく自動的に制御を行う。この場合、報知部155は、例えば図12に示す報知情報を、制御を実施した機器の需要家の操作端末5に表示させる。これにより、報知部155は、自動制御を実施したことを需要家に報知する。
【0089】
このような場合、無作為に自動制御を行うと、その後に元の設定に戻す需要家も存在する。元の設定に戻されると、消費需要を抑制できなくなる。しかしながら、節電受容度が高い需要家に対して優先的に自動制御を実施することで、又は、自動制御に対してインセンティブ付与を行うことで、消費電力を抑制する実現確度を高めることができる。
【0090】
次に、図13及び図14に示すフローチャートを参照して、推定装置10により実行される処理の流れについて説明する。
【0091】
第1に、図13に、学習フェーズ処理部110により実行される学習フェーズ処理の流れを示す。学習フェーズ処理部110は、学習フェーズ処理を、例えば1日毎、1週間毎、1ヶ月毎、1年毎等のような予め定められた時間間隔で繰り返し実行する。或いは、節電要請が実施された際における需要家の対応を加味して学習用データ123が更新されるため学習フェーズ処理部110は、学習フェーズ処理を、節電が要請された期間の後に実行しても良い。図13に示す学習フェーズ処理は、学習済みモデル125の生成方法の一例である。
【0092】
学習フェーズ処理を開始すると、学習フェーズ処理部110は、学習用取得部111として機能し、学習対象の複数の需要家により使用される複数の空調機3の運転情報を取得する(ステップS11)。具体的に説明すると、学習フェーズ処理部110は、学習対象の複数の需要家により使用される複数の空調機3から定期的に運転状態を取得して運転履歴データ121に保存する。そして、学習フェーズ処理部110は、運転履歴データ121から、通常日と警報発令日とのそれぞれにおける各空調機3の運転情報として、運転時間と設定温度と操作時室温とを取得する。
【0093】
運転情報を取得すると、学習フェーズ処理部110は、学習用データ生成部113として機能し、学習用データ123を生成する(ステップS12)。具体的に説明すると、学習フェーズ処理部110は、学習対象の複数の需要家のそれぞれについて、ステップS11で取得された通常日と警報発令日との運転情報の差異に基づいて節電受容度を導出する。そして、学習フェーズ処理部110は、導出した節電受容度と通常日の運転情報とを互いに対応付けて、学習用データ123を生成する。
【0094】
学習用データ123を生成すると、学習フェーズ処理部110は、学習処理部115として機能し、学習処理を実行する(ステップS13)。具体的に説明すると、学習フェーズ処理部110は、機械学習を実行することにより、空調機3の運転情報とその空調機3の需要家の節電受容度との間の関係を学習する。これにより、学習フェーズ処理部110は、運転情報の入力に対して節電受容度を出力する学習済みモデル125を生成する。以上により、図13に示した学習フェーズ処理は終了する。
【0095】
第2に、図14に、活用フェーズ処理部150により実行される活用フェーズ処理の流れを示す。活用フェーズ処理部150は、活用フェーズ処理を、節電要請の対象日よりも前のタイミング、例えば前日の昼、夕方等に実行する。図14に示す活用フェーズ処理は、推定方法の一例である。
【0096】
活用フェーズ処理を開始すると、活用フェーズ処理部150は、推定用取得部151として機能し、推定対象の需要家により使用される空調機3の運転情報を取得する(ステップS21)。具体的に説明すると、活用フェーズ処理部150は、運転履歴データ121から、通常日における推定対象の空調機3の運転情報として、運転時間と設定温度と操作時室温とを取得する。
【0097】
運転情報を取得すると、活用フェーズ処理部150は、推定部153として機能し、推定対象の需要家の節電受容度を推定する(ステップS22)。具体的に説明すると、活用フェーズ処理部150は、ステップS21で取得された運転情報を、ステップS13で生成された学習済みモデル125に入力する。そして、活用フェーズ処理部150は、学習済みモデル125から出力される節電受容度を、推定対象の需要家の節電受容度として推定する。
【0098】
節電受容度を推定すると、活用フェーズ処理部150は、推定した節電受容度に基づいて、報知又は機器制御の処理を実行する(ステップS23)。具体的に説明すると、活用フェーズ処理部150は、報知部155として機能し、推定した節電受容度が低い需要家により使用される少なくとも1つの機器の操作に関する提案情報を報知する。また、活用フェーズ処理部150は、機器制御部157として機能し、推定した節電受容度が高い需要家により使用される少なくとも1つの機器の消費電力を抑制させる。以上により、図14に示した活用フェーズ処理は終了する。
【0099】
以上説明したように、実施の形態1に係る推定装置10は、学習対象の複数の需要家により使用される複数の空調機3の運転情報と、学習対象の複数の需要家の節電受容度と、が対応付けられた学習用データ123を用いた機械学習により学習済みモデル125を生成する。そして、推定装置10は、生成された学習済みモデル125に基づいて、推定対象の需要家により使用される空調機3の運転情報から推定対象の需要家の節電受容度を推定する。
【0100】
このように、実施の形態1に係る推定装置10は、機械学習を用いて需要家の節電受容度を推定するため、運転情報の履歴が蓄積されるまで待つ必要がなく、より短い期間で節電受容度を推定することができる。そのため、新規に利用開始した需要家、リアクションをしない需要家等のように、運転情報の履歴が十分に蓄積されていない需要家に対しても、高い確度で節電受容度を推定することが可能になる。
【0101】
特に、需要家の節電受容度を高い確度で推定することにより、節電要請による電力の需要抑制をより確実に実施することができるようになる。具体的に説明すると、節電要請に応じる対価として、需要家には何らかのインセンティブがもたらされると想定されるものの、節電に対する意識の高さは十人十色である。そのため、需要家によっては大きな不満を感じて、節電要請が成された後に需要家自身で元の動作状態に戻してしまい、電力需要の抑制が実現できなくなることも予想される。一方で、電力需要の抑制において、計画より少ない量しか抑制できなかった場合、不足分の電力は供給量を増して賄う必要が出てくる。その場合、電力の調達価格という形で小売事業者、アグリゲータ等に経済的損失が生じうる。また、そもそも調達できる電力が無いケースも想定される。その場合は、停電発生にも繋がりかねず、より広範囲に渡って損害を被る可能性が出てくる。
【0102】
実施の形態1に係る推定装置10によれば、需要家の節電受容度を高い確度で推定することができるので、需要抑制に協力する可能性が高い需要家を把握することができる。そのため、上記のような状況を避けることができ、節電要請による電力の需要抑制をより確実に実施することができるようになる。
【0103】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態1と同様の構成及び機能については適宜説明を省略する。
【0104】
上記実施の形態1では、報知部155は、推定部153により推定された節電受容度が低い需要家に対して、図11に示した提案情報を報知した。これに対して、実施の形態2では、報知部155は、節電が要請された期間である警報発令日において、推定部153により推定された節電受容度が低い需要家に対して、図15に示す提案情報を報知する。
【0105】
図15に示す提案情報は、図11に示した提案情報に加えて、「OK(設定する)」というボタンを含んでいる。需要家は、推奨される設定の提案に対して承諾する場合、このボタンを押下することで、承諾の意思を入力する。
【0106】
機器制御部157は、報知部155により報知された提案情報に対する承諾に応じて、推定対象の需要家により使用される少なくとも1つの機器の消費電力を抑制させる。具体的に説明すると、機器制御部157は、報知部155により提案情報が報知された複数の需要家のうちのいずれかの需要家から提案情報に対する承諾が得られた場合、その需要家により使用される少なくとも1つの機器に対して、制御指示を送信する。これにより、機器制御部157は、消費電力が減る方向に少なくとも1つの機器を制御する。機器の制御の詳細は、実施の形態1と同様である。
【0107】
以上のように、実施の形態2では、提案情報の報知から機器の制御までの一連の処理を1つの画面で実行できるようにするため、需要家が自身で機器を制御する手間を削減することができる。
【0108】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。実施の形態1,2と同様の構成及び機能については適宜説明を省略する。
【0109】
実施の形態3において、学習用データ生成部113は、推定部153により推定された節電受容度を、推定対象の需要家の行動に応じて修正し、修正後の節電受容度に基づいて学習用データ123を更新する。言い換えると、学習用データ生成部113は、推定部153が推定対象の需要家の節電受容度を推定した後、その需要家が節電に関する行動を行った場合、その行動に基づいてその需要家の節電受容度を修正する。
【0110】
ここで、需要家の行動は、需要家の節電に対する意識が現れる行動である。以下では、需要家の行動として、(1)図15に示した提案情報に対する承諾、(2)アンケートに対する回答、及び、(3)電力供給に関する契約プランの選択という3つの例を説明する。
【0111】
(1)提案情報に対する承諾に関して、図15に示した提案情報に対して需要家が「OK(設定する)」というボタンを押下して承諾した場合、需要家が少なからず節電に関心が有ることを意味する。言い換えると、提案情報に承諾するという行動をとった需要家は、節電受容度が高い可能性が高い。
【0112】
(2)アンケートに対する回答に関して、報知部155は、一例として、図16に示すアンケート画面を需要家の操作端末5に表示させる。このようなアンケート画面において、需要家が節電要請に対して寛容な回答を入力した場合、この需要家の節電受容度は高い可能性が高い。
【0113】
(3)電力供給の契約プランの選択に関して、報知部155は、一例として、図17に示す電力供給の契約プランの選択画面を需要家の操作端末5に表示させる。このような契約プランの選択画面において、需要家が緊急時だけでなく常時外部から制御されることを容認するプランを選択した場合、この需要家の節電受容度は高い可能性が高い。
【0114】
学習用データ生成部113は、推定部153により節電受容度が低いと推定された需要家であっても、需要家がこのような行動をとった場合、その行動を重要視して、その需要家の節電受容度を高いに修正する。そして、学習用データ生成部113は、修正後の節電受容度に基づいて学習用データ123を更新する。
【0115】
具体的に説明すると、学習用データ生成部113は、その需要家の通常日における空調機3の運転情報に、「節電受容度が高い」という正解を組み合わせた新たなデータセットを生成し、既存の学習用データ123に追加する。或いは、学習用データ生成部113は、既存の学習用データ123にその需要家の節電受容度と運転情報とを組み合わせたデータセットが含まれる場合、そのデータセットにおける節電受容度の高低を修正しても良い。
【0116】
学習用データ生成部113が学習用データ123を更新すると、学習処理部115は、更新された学習用データ123を用いて学習済みモデル125を更新する。言い換えると、学習処理部115は、新たな学習用データ123を用いて学習済みモデル125を再生成する。その際の学習処理部115の処理は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0117】
このように、実施の形態3では、需要家に報知した内容に対する需要家の行動から推定される節電受容度を正解とした新たな学習用データ123を用いて学習済みモデル125を更新する。これにより、節電受容度の推定精度が向上する。また、需要家の節電意識は時間の経過と共に変化する場合がある。このような方法を導入して適宜、再学習と学習済みモデル125の再生成とを行うことで、需要家の節電意識の変化に追従した推定がしやすくなる。
【0118】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4について説明する。実施の形態1~3と同様の構成及び機能については適宜説明を省略する。
【0119】
図18に、実施の形態4に係る推定装置10の機能的な構成を示す。実施の形態4において、学習用取得部111及び推定用取得部151は、実施の形態1と同様に運転情報を取得することに加えて、影響因子127を更に取得する。
【0120】
ここで、影響因子127は、空調機3の運転情報以外に需要家の節電受容度に影響を及ぼし得る因子である。影響因子127は、例えば、外気温、需要家の住所、天気予報、需要家の家族構成、需要家が契約している電力料金プラン、需要家の住宅における太陽光発電設備の有無等の情報である。学習用取得部111及び推定用取得部151は、これらの情報のうちの少なくとも1つを、影響因子127として取得する。
【0121】
より詳細に説明すると、日本の冬の天候では、「日本海側は大雪、太平洋側は快晴」といった状況がしばしば起きる。外気温においても、「北日本は氷点下になる一方で、四国及び九州では10℃前後」といった状況も珍しくない。外気温が高ければそれだけ暖房の需要が下がり、暖房を抑制するような節電要請に対して受容度が高くなるのは明らかである。従って、例えば外気温、需要家の住所、天気予報等は影響因子127となり得る。
【0122】
同様に、需要家の家族構成、需要家が契約している電力料金プラン、需要家の住宅における太陽光発電設備の有無等も、影響因子127となり得る。例えば、常に家に誰かが居る家庭では、電力消費を下げにくいため、需要家の節電受容度は低くなりやすい。これに対して、一人暮らしであれば、節電要請に応じて外出して電力消費を下げることも容易に対応できるため、需要家の節電受容度は高くなりやすい。また、需要家が契約している電力料金プランが図17に示したように外部から制御されることを容認するプランであれば、その需要家の節電受容度は高い可能性が高い。需要家の住宅に太陽光発電設備が設置されていれば、その需要家の節電受容度は高い可能性が高い。
【0123】
学習用取得部111及び推定用取得部151は、対象となる空調機3が存在する場所における外気温の情報を、例えば空調機3の室外機に設置された温度センサ、又は、広域通信網を介して気象サーバから取得する。また、学習用取得部111及び推定用取得部151は、対象となる空調機3が存在する場所における天気予報の情報を、例えば広域通信網を介して気象サーバから取得する。更には、学習用取得部111及び推定用取得部151は、対象となる各需要家の住所、家族構成、電力料金プラン、太陽光発電設備の有無等の情報を、例えば操作端末5において需要家により入力された情報から取得する。このようにして、学習用取得部111及び推定用取得部151は、学習対象及び推定対象の各需要家について、影響因子127を取得する。
【0124】
学習用データ生成部113は、学習用データ123を生成する際に、学習用取得部111により取得された影響因子127を加味する。具体的に説明すると、学習用データ生成部113は、通常日における学習対象の複数の需要家により使用される空調機3の運転情報と、学習用取得部111により取得された影響因子127と、各需要家の節電受容度と、が対応付けられた学習用データ123を生成する。学習処理部115は、学習用データ生成部113により生成された学習用データ123を用いた機械学習を行う。これにより、学習処理部115は、運転情報と影響因子127の入力を受けて、節電受容度を出力する学習済みモデル125を生成する。
【0125】
推定部153は、学習処理部115により生成された学習済みモデル125に基づいて、推定用取得部151により取得された、通常日における推定対象の需要家により使用される空調機3の運転情報と、影響因子127とから、推定対象の需要家の節電受容度を推定する。具体的に説明すると、推定部153は、推定対象の需要家により使用される空調機3の運転情報と影響因子127とを学習済みモデル125に入力する。そして、推定部153は、学習済みモデル125から出力される出力値を、推定対象の需要家の節電受容度として推定する。
【0126】
このように、実施の形態5に係る推定装置10は、空調機3の運転情報に加えて、影響因子127を加味して学習済みモデル125を生成し、生成した学習済みモデル125を用いて節電受容度を推定する。影響因子127を加味することで、より高い確度で需要家の節電受容度を推定することができる。
【0127】
(実施の形態5)
次に、実施の形態5について説明する。実施の形態1~4と同様の構成及び機能については適宜説明を省略する。
【0128】
実施の形態1では、推定装置10は、学習フェーズ処理部110と活用フェーズ処理部150とをどちらも備えていた。これに対して、実施の形態5では、学習フェーズ処理部110と活用フェーズ処理部150とは、別個の装置に備えられる。
【0129】
図19に、実施の形態5に係る推定システム1の構成を示す。実施の形態5に係る推定システム1は、学習装置20と推定装置10とを備える。図19に示すように、学習装置20は、学習フェーズ処理部110の各機能を備えており、推定装置10は、活用フェーズ処理部150の各機能を備える。
【0130】
学習装置20は、推定装置10とは独立した装置であって、適宜のコンピュータ、サーバ等の情報処理装置により実現される。学習装置20は、学習フェーズ処理部110の各機能を実現するための、推定装置10における制御部11、記憶部12及び通信部13と同様のハードウェア構成を備える。
【0131】
学習装置20は、学習フェーズ処理部110の処理を実行することで、学習済みモデル125を生成する。推定装置10は、通信部13により学習装置20と通信し、学習装置20により生成された学習済みモデル125を取得する。そして、推定装置10は、取得した学習済みモデル125を用いて活用フェーズ処理部150の処理を実行する。学習フェーズ処理部110及び活用フェーズ処理部150の各機能の処理の詳細は、実施の形態1と同様である。
【0132】
なお、推定装置10において、推定用取得部151は、通信部13により学習装置20と通信し、推定対象の需要家により使用される空調機3の運転情報を、学習装置20に記憶されている運転履歴データ121から取得しても良い。或いは、推定用取得部151は、運転履歴データ121を参照せずに、通信部13を介して推定対象の需要家により使用される空調機3と直接通信することで、運転情報を取得しても良い。
【0133】
実施の形態5の変形例として、学習用データ生成部113と学習処理部115とが別個の装置に備えられていても良い。言い換えると、学習用データ123を生成する装置と、学習処理を実行して学習済みモデル125を生成する装置とが、同じ学習装置20であることに限らず、別個の装置であっても良い。また、推定部153と、推定部153により推定された節電受容度を活用する報知部155及び機器制御部157とが、同じ推定装置10に備えられることに限らず、それぞれ別個の装置に備えられていても良い。
【0134】
(変形例)
以上、実施の形態を説明したが、各実施の形態を組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0135】
例えば、上記実施の形態では、節電受容度は、節電が要請された期間における消費電力を抑制する需要家の行動の程度を、高い/低いという2つの値により表した。しかしながら、節電受容度は、節電が要請された期間における消費電力を抑制する需要家の行動の程度を、3つ以上の値で段階的に表すものであっても良い。例えば、節電受容度は、節電が要請された期間における消費電力を抑制する需要家の行動の程度を、高い/中程度/低いという3つの値で表しても良い。このように多くの段階で節電受容度を表すことで、より高精度で節電受容度を推定することが可能になる。
【0136】
上記実施の形態では、学習済みモデル125は、図10に示したように、運転情報である6つの説明変数の入力に対して冷房節電受容度と暖房節電受容度という2つの目的変数を出力した。しかしながら、学習済みモデル125は、これに限らない。
【0137】
例えば、学習済みモデル125は、冷房時の運転情報の入力を受けて冷房時の節電受容度を出力する冷房用モデルと、暖房時の運転情報の入力を受けて暖房時の節電受容度を出力する暖房用モデルと、の2つのモデルを含んでいても良い。この場合、学習処理部115は、冷房時と暖房時とでそれぞれ別々に機械学習を実行して、冷房用モデルと暖房用モデルとを生成する。或いは、学習済みモデル125は、冷房時と暖房時とを区別せずに、冷房時又は暖房時の運転情報の入力に対して、1つの節電受容度を目的変数として出力するものであっても良い。
【0138】
上記実施の形態では、推定装置10により運転情報が取得される対象となる家電機器が空調機3である場合について説明した。しかしながら、家電機器は空調機3に限らず、照明装置、給湯機等のような他の機器であっても良い。
【0139】
例えば、家電機器が照明装置である場合、警報発令日の方が通常日よりも照明をON又はOFFする際の室内照度が暗い場合、需要家の節電受容度が高いと推定される。また、警報発令日の方が通常日よりも設定照度が暗い場合、需要家の節電受容度が高いと推定される。或いは、家電機器が給湯機である場合、警報発令日の方が通常日よりも冬季において外気温が同程度の日における湯はり量が少ない場合、需要家の節電受容度が高いと推定される。また、警報発令日の方が通常日よりも冬季において外気温が同程度の日における湯はり温度及び給湯温度が低い場合、需要家の節電受容度が高いと推定される。このように、家電機器が空調機3以外である場合であっても、運転情報のパラメータを適宜置き換えることで上記実施の形態と同様に説明することができる。
【0140】
上記実施の形態では、推定装置10の制御部11において、CPUがROM又は記憶部12に記憶されたプログラムを実行することによって、学習フェーズ処理部110及び活用フェーズ処理部150における各部として機能した。しかしながら、制御部11は、専用のハードウェアであってもよい。専用のハードウェアとは、例えば単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらの組み合わせ等である。制御部11が専用のハードウェアである場合、各部の機能それぞれを個別のハードウェアで実現してもよいし、各部の機能をまとめて単一のハードウェアで実現してもよい。
【0141】
また、各部の機能のうち、一部を専用のハードウェアによって実現し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実現してもよい。このように、制御部11は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又は、これらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0142】
推定装置10の動作を規定するプログラムを、パーソナルコンピュータ、情報端末装置等の既存のコンピュータに適用することで、当該コンピュータを、推定装置10として機能させることも可能である。
【0143】
また、このようなプログラムの配布方法は任意であり、例えば、CD-ROM(Compact Disk ROM)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto Optical Disk)、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布してもよいし、インターネット等の通信ネットワークを介して配布してもよい。
【0144】
本開示は、本開示の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この開示を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。すなわち、本開示の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして特許請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、この開示の範囲内とみなされる。
【0145】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0146】
(付記1)
需要家の節電受容度を推定する推定装置であって、
推定対象の前記需要家により使用される家電機器の運転情報を取得する取得手段と、
学習対象の複数の需要家により使用される複数の家電機器の運転情報と、前記学習対象の複数の需要家の節電受容度と、が対応付けられた学習用データを用いた機械学習により生成された学習済みモデルに基づいて、前記取得手段により取得された前記運転情報から、前記推定対象の需要家の前記節電受容度を推定する推定手段と、を備える、
推定装置。
(付記2)
前記推定手段により推定された前記節電受容度に基づいて、前記推定対象の需要家により使用される少なくとも1つの機器の操作に関する提案情報を報知する報知手段、を更に備える、
付記1に記載の推定装置。
(付記3)
前記報知手段により報知された前記提案情報に対する承諾に応じて、前記推定対象の需要家により使用される少なくとも1つの機器の消費電力を抑制させる制御を実行する機器制御手段、を更に備える、
付記2に記載の推定装置。
(付記4)
前記推定手段により推定された前記節電受容度に基づいて、前記推定対象の需要家により使用される少なくとも1つの機器の消費電力を抑制させる制御を実行する機器制御手段、を更に備える、
付記1に記載の推定装置。
(付記5)
前記学習対象の複数の需要家のそれぞれの前記節電受容度は、節電が要請された期間と節電が要請されていない期間とにおける家電機器の運転情報の差異に応じて導出される、
付記1から4のいずれか1つに記載の推定装置。
(付記6)
前記推定対象の需要家の前記節電受容度、及び、前記学習対象の複数の需要家の前記節電受容度は、節電が要請された期間における消費電力を抑制する需要家の行動の程度を3つ以上の値で段階的に表す、
付記1から5のいずれか1つに記載の推定装置。
(付記7)
前記推定対象の需要家により使用される前記家電機器、及び、前記学習対象の複数の需要家により使用される前記複数の家電機器のそれぞれは、空調機であり、
前記運転情報は、前記空調機の運転時間と、前記空調機の設定温度と、前記空調機の操作時における室温と、のうちの少なくとも1つを示す、
付記1から6のいずれか1つに記載の推定装置。
(付記8)
前記学習用データを生成する学習用データ生成手段と、
前記学習用データ生成手段により生成された前記学習用データを用いた前記機械学習により前記学習済みモデルを生成する学習処理手段と、を更に備える、
付記1から7のいずれか1つに記載の推定装置。
(付記9)
前記学習用データ生成手段は、
節電が要請された期間における前記複数の家電機器の運転情報と、節電が要請されていない期間における前記複数の家電機器の運転情報と、に基づいて、前記学習対象の複数の需要家の前記節電受容度を導出し、
前記節電が要請されていない期間における前記複数の家電機器の運転情報と、導出した前記節電受容度と、が対応付けられた前記学習用データを生成する、
付記8に記載の推定装置。
(付記10)
前記学習用データ生成手段は、前記推定手段により推定された前記節電受容度を、前記推定対象の需要家の行動に応じて修正し、修正後の前記節電受容度に基づいて前記学習用データを更新し、
前記学習処理手段は、前記学習用データ生成手段により更新された前記学習用データを用いて前記学習済みモデルを更新する、
付記8又は9に記載の推定装置。
(付記11)
付記1から10のいずれか1つに記載の推定装置と、前記推定対象の需要家により使用される前記家電機器と、を備える、
推定システム。
(付記12)
学習対象の複数の需要家により使用される複数の家電機器の運転情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記運転情報と、前記学習対象の複数の需要家の節電受容度と、が対応付けられた学習用データを生成する学習用データ生成手段と、
前記学習用データ生成手段により生成された前記学習用データを用いて機械学習を行うことにより、推定対象の需要家により使用される家電機器の運転情報の入力に対して、前記推定対象の需要家の節電受容度を出力する学習済みモデルを生成する学習処理手段と、を備える、
学習装置。
(付記13)
学習対象の複数の需要家により使用される複数の家電機器の運転情報を取得し、
取得された前記運転情報と、前記学習対象の複数の需要家の節電受容度と、が対応付けられた学習用データを生成し、
生成された前記学習用データを用いた機械学習を行うことにより、推定対象の需要家により使用される家電機器の運転情報の入力に対して、前記推定対象の需要家の節電受容度を出力する学習済みモデルを生成する、
学習済みモデルの生成方法。
(付記14)
需要家の節電受容度を推定する推定方法であって、
推定対象の前記需要家により使用される家電機器の運転情報を取得し、
学習対象の複数の需要家により使用される複数の家電機器の運転情報と、前記学習対象の複数の需要家の節電受容度と、が対応付けられた学習用データを用いた機械学習により生成された学習済みモデルに基づいて、取得された前記運転情報から、前記推定対象の需要家の前記節電受容度を推定する、
推定方法。
(付記15)
コンピュータを、
推定対象の需要家により使用される家電機器の運転情報を取得する取得手段、
学習対象の複数の需要家により使用される複数の家電機器の運転情報と、前記学習対象の複数の需要家の節電受容度と、が対応付けられた学習用データを用いた機械学習により生成された学習済みモデルに基づいて、前記取得手段により取得された前記運転情報から、前記推定対象の需要家の節電受容度を推定する推定手段、として機能させる、
プログラム。
【符号の説明】
【0147】
1 推定システム、3 空調機、5 操作端末、10 推定装置、11 制御部、12 記憶部、13 通信部、20 学習装置、110 学習フェーズ処理部、111 学習用取得部、113 学習用データ生成部、115 学習処理部、121 運転履歴データ、123 学習用データ、125 学習済みモデル、127 影響因子、150 活用フェーズ処理部、151 推定用取得部、153 推定部、155 報知部、157 機器制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19