(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163802
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】入れ子、樹脂成形金型、成形装置、樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/00 20060101AFI20241115BHJP
B29C 51/36 20060101ALI20241115BHJP
B29C 51/10 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B29C33/00
B29C51/36
B29C51/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079699
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】外薗 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】北尾 啓祐
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠斗
【テーマコード(参考)】
4F202
4F208
【Fターム(参考)】
4F202CA17
4F202CB01
4F202CD30
4F202CK43
4F202CK81
4F202CP01
4F202CP04
4F202CP10
4F208AC03
4F208MA01
4F208MB01
4F208MC01
4F208MD10
4F208MH06
(57)【要約】
【課題】入れ子を容易に金型本体に取付けられ、真空引きが可能な入れ子、樹脂成形金型、成形装置、樹脂成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】金型本体111に取り付けられる入れ子201は、金型本体111の成形面111aと対向する面に着脱部材を備え、着脱部材により金型本体111に着脱自在に取り付けられる。入れ子201の成形面201aから非成形面に通じる真空孔201bが形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型本体に取り付けられる入れ子であって、
前記金型本体の成形面と対向する面に着脱部材を備え、
前記着脱部材により前記金型本体に着脱自在に取り付けられ、
当該入れ子の成形面から非成形面に通じる真空孔が形成された、
入れ子。
【請求項2】
前記着脱部材は、磁性材料で形成された、
請求項1に記載の入れ子。
【請求項3】
樹脂成形に使用される金型であって、
金型本体と、
前記金型本体に取り付けられる入れ子と、
前記金型本体と前記入れ子との間に、前記入れ子を前記金型本体に着脱自在に取り付ける着脱部材と、を備え、
前記入れ子の成形面から非成形面に通じる真空孔が形成された、
樹脂成形金型。
【請求項4】
前記着脱部材は、
前記入れ子の、前記金型本体の前記入れ子を取り付ける取付面と対向する面に形成された第1の磁性体と、
前記金型本体の前記取付面の、前記第1の磁性体と対向する位置に形成された第2の磁性体と、を備え、
前記入れ子は、前記第1の磁性体と前記第2の磁性体との間の磁力により前記金型本体に取り付けられる、
請求項3に記載の樹脂成形金型。
【請求項5】
前記入れ子は中空であり、
前記金型本体と前記入れ子との間に配置され、前記入れ子を密封する封止部材を備える、
請求項3に記載の樹脂成形金型。
【請求項6】
樹脂シートを加熱するヒータと、
請求項3から5の何れか1項に記載された樹脂成形金型と、
加熱された前記樹脂シートを、前記真空孔から気体を吸引して、前記樹脂成形金型により成形する成形手段と、
を備える成形装置。
【請求項7】
樹脂シートを加熱する加熱工程と、
加熱された前記樹脂シートを、請求項3から5の何れか1項に記載された樹脂成形金型により、前記真空孔から気体を吸引して成形する成形工程と、を備える、
樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、入れ子、樹脂成形金型、成形装置、樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金型を使用して樹脂を成形する際に、金型の部品交換が簡単である又は金型の加工がしやすくなる等の理由により、入れ子を使用することがある。入れ子は、金型本体に対して、別部品として取り付けられる型である。
【0003】
入れ子を金型本体に嵌め込む方法として、特許文献1には、固定型と可動型を備える射出成形金型において、可動型の凹部に入れ子を取り付ける構造が開示されている。特許文献1では、入れ子は、可動型の底面に、ボルトで締結されている。入れ子の取付け又は取外しは、ボルトを締結又は緩めることにより行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された入れ子を使用するためには、樹脂成形をする可動型、即ち、金型本体にボルト締結するための切削加工が必要となり面倒である。また、真空成形金型に、特許文献1に開示された入れ子を使用するときには、入れ子の成形面に孔が形成されていないため、入れ子の部分の真空引きが困難である。
【0006】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、入れ子を容易に金型本体に取付けられ、真空引きが可能な入れ子、樹脂成形金型、成形装置、樹脂成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決し、目的を達成するために、本開示に係る入れ子は、金型本体に取り付けられる入れ子であって、金型本体の成形面と対向する面に着脱部材を備え、着脱部材により金型本体に着脱自在に取り付けられ、当該入れ子の成形面から非成形面に通じる真空孔が形成される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、入れ子を容易に金型本体に取付けられ、真空引きが可能な入れ子、樹脂成形金型、成形装置、樹脂成形品の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)~(d)は、本開示の実施の形態に係る金型の種類を示す図
【
図2】(a)は、真空成形用の金型の概念を示す図、(b)は、(a)の点線で囲われた部分の拡大断面図
【
図3】(a)は、
図2(b)の点線で囲われた部分の拡大断面図、(b)は、
図2(b)の点線で囲われた部分の他の拡大断面図
【
図4】(a)は、
図2(b)の点線で囲われた部分の他の拡大断面図、(b)は、
図2(b)の点線で囲われた部分の他の拡大断面図
【
図5】(a)は、真空成形用の他の金型の概念を示す図、(b)は、(a)の点線で囲われた部分の拡大断面図
【
図6】(a)は、
図5(b)の点線で囲われた部分の拡大断面図、(b)は、
図5(b)の点線で囲われた部分の他の拡大断面図
【
図7】(a)は、
図5(b)の点線で囲われた部分の他の拡大断面図、(b)は、
図5(b)の点線で囲われた部分の他の拡大断面図
【
図8】(a)~(e)は、入れ子の底部に配置された磁石と封止部材の位置を示す図
【
図9】(a)~(d)は、入れ子の底部に配置された磁石と封止部材の位置を示す他の図
【
図11】(a)~(c)は、真空成形装置により樹脂成形品を製造する方法を示す図
【
図12】(a)~(c)は、真空成形装置により樹脂成形品を製造する方法を示す他の図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態に係る入れ子、樹脂成形金型、成形装置、及び樹脂成形の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。なお、成形装置を床面に設置した場合の上下方向を、図の上下方向と規定し、以下、この方向を引用して説明する。この方向は、実施の形態を説明するために使用するものであり、本開示の実施の形態が実際に使用されるときの方向を限定するものではない。
【0011】
樹脂成形金型は、一般的に、凹形状又は凸形状の金型本体の成形面に、小さな凸状又は凹状の入れ子を取り付けて構成される。本実施の形態に係る樹脂成形金型1は、
図1に示すように、金型本体10と入れ子20とを備え、金型本体10の成形面10aに入れ子20が取り付けられる。
【0012】
本開示の実施の形態に係る入れ子20の金型本体10への取付け方法には、
図1(a)に示す凹型の金型本体10と凸型の入れ子20の組合せ(以下、「パターン1」という。)、
図1(b)に示す凹型の金型本体10と金型本体10の凹部を塞ぐ入れ子20の組合せ(以下、「パターン2」という。)、
図1(c)に示す凸型の金型本体10と凸型の入れ子20の組合せ(以下、「パターン3」という。)、及び
図1(d)に示す凸型の金型本体10と金型本体10の凹部を塞ぐ入れ子20の組合せ(以下、「パターン4」という。)の4つのパターンがある。これらの4つのパターンを使用して、以下の実施の形態で樹脂成形金型を説明する。
【0013】
(実施の形態)
本実施の形態では、真空成形金型、真空成形金型に使用される入れ子、真空成形金型を使用した成形装置、及び成形装置を使用した樹脂成形品の製造方法を説明する。
【0014】
〈成形金型〉
真空成形に用いられる金型には、凹状形状の金型と凸状形状の金型があり、上述したパターン1からパターン4が例として挙げられる。真空成形金型の成形面には、真空孔が形成され、金型に取り付けられた真空配管から真空ポンプ等により真空引きすることで真空孔から空気を吸い込み、成形面に樹脂シートを吸着させて成形する。
【0015】
本実施の形態では、パターン1とパターン2の樹脂成形金型を真空成形金型に使用した例を説明する。
図2は、パターン1の真空成形金型100を示す図であり、
図2(a)は、真空成形金型100の全体概略図を示し、
図2(b)は、
図2(a)の点線で囲った部分を拡大した部分断面図である。真空成形金型100は、金型本体111と、入れ子201と、真空配管300を備える。
【0016】
金型本体111は、凹状に形成された金型であり、内部を中空とし、成形面111aには、真空成形時に使用される複数の真空孔111bが形成されている。また、金型本体111には、真空配管300が接続され、真空ポンプ等により真空配管300を介して、金型本体111内部を真空引きする。金型本体111は、プリハードン鋼、アズロールド鋼、ステンレス鋼などの金属材料により成形される。
【0017】
入れ子201は、四角錐台の形状に形成され、内部は中空となっている。四角錐台の上面と側面である成形面201aには、真空成形時に使用される複数の真空孔201bが形成されている。入れ子201は、熱伝導性のよい鉄、アルミ合金等を使用する。金型本体111が金属材料で成形されているため、金型本体111と入れ子201との間に、温度差が生じると成形精度に影響がある。したがって、熱伝導性のよい材料を使用することが推奨される。
【0018】
入れ子201は、着脱部材である磁石により金型本体111の成形面111aに固定され、封止部材により入れ子201内部から空気が漏れない構造となっている。入れ子201の固定方法と封止方法を4つの例を示して説明する。
図3(a)(b)、
図4(a)(b)は、
図2(b)の点線で囲われた部分を拡大した部分断面図である。
図3(a)(b)、
図4(a)(b)に示す例は、入れ子201に第1の磁石303を取付け、金型本体111の第1の磁石303と対向する位置に第2の磁石304を取付け、第1の磁石303と第2の磁石304の外側に封止部材401を配置した例である。
【0019】
第1の磁性体である第1の磁石303は、四角錐台形状の入れ子201の底部に取り付けられる環状の永久磁石である。金型本体111には、第1の磁石303を取り付けるために、成形面111aの一部に取付面111aaが形成されている。第1の磁石303は、金型本体111の取付面111aaに対向する、入れ子201の面に取り付けられる。第2の磁性体である第2の磁石304は、金型本体111の、第1の磁石303と対向する取付面111aaに取り付けられる環状の永久磁石である。永久磁石として、サマリウムコバルト、アルニコ磁石、フェライト磁石などが用いられる。永久磁石は板状の硬い磁石を使用してもよいし、弾性を有する磁気シートを使用してもよい。第1の磁石303を取り付ける入れ子201には、入れ子201と金型本体111との間に隙間が生じさせないために、第1の磁石303と第2の磁石304の厚み分の段差201cが設けられる。
【0020】
入れ子201の第1の磁石303の外周には、入れ子201と金型本体111との間を封止する封止部材401が配置される。
図3は、封止部材401として、シート状のゴム製のシールを使用した例を示す。
図3(a)は、封止部材401を入れ子201に取り付けた例、
図3(b)は、封止部材401を金型本体111に取り付けた例である。シート状のゴム製のシールを使用することにより、簡単に封止部材401に取り付けることができる。封止部材401は、第1の磁石303と第2の磁石304が接着すると、潰れて、入れ子201と金型本体111との間を封止する。
図3(b)に示す封止部材401は、入れ子201側に封止部材401を取り付けるスペースが確保できないときに、金型本体111側に取り付ける封止部材である。この封止部材401は、入れ子201を使用しないときには、封止部材401の形状が成形品に転写されるので、外す必要がある。
【0021】
図4は、他の封止部材の例を示し、封止部材401としてOリングを用いた例である。
図4(a)は、Oリングの抜けを防止するため逆テーパー形状に形成されたアリ溝401aを、入れ子201に形成した例を示し、
図4(b)は、アリ溝401aを金型本体111に形成した例を示す。入れ子201の脱着頻度が高い場合、封止部材401は消耗しやすい。Oリングを使用した封止部材401を使用すれば、消耗したOリングを交換すればよい。入れ子201の脱着頻度が高く、入れ子201側に封止部材401を取り付けるスペースが確保できないときには、
図4(b)に示すように、金型本体111側にアリ溝401aを形成する。入れ子201を使用しないときには、金型本体111に形成されたアリ溝401aの形状が成形品に転写されるので、アリ溝401aを埋める加工が必要である。
【0022】
図5は、パターン2の真空成形金型100を示す図であり、
図5(a)は、真空成形金型100の全体概略図を示し、
図5(b)は、
図5(a)の点線で囲った部分を拡大した部分断面図である。真空成形金型100は、金型本体112と入れ子202とを備える。金型本体112と入れ子202の材質は、パターン1の金型構造と同一である。
【0023】
金型本体112は、凹状に形成された金型であり、成形面112aの一部が凹んだ形状を備える金型である。内部を中空とし、成形面112aには、複数の真空孔112bが形成されている。
【0024】
入れ子202は、金型本体112の凹みを閉鎖する板状の部材である。成形面202aには、複数の真空孔202bが形成されている。
【0025】
入れ子202は、磁石により金型本体112の成形面に固定され、封止部材により入れ子202内部から空気が漏れない構造を採用している。
図6(a)(b)、
図7(a)(b)は、
図5(b)の点線で囲われた部分を拡大した部分断面図である。
図6(a)(b)、
図7(a)(b)に示す例は、入れ子202に第1の磁石305を取付け、金型本体112の第1の磁石305と対向する位置に第2の磁石306を取付け、第1の磁石305と第2の磁石306の外側に封止部材402を配置した例である。
【0026】
第1の磁石305は、板状の入れ子202の厚み部分に取り付けられる環状の永久磁石である。第2の磁石306は、金型本体112の第1の磁石305と対向する位置に取り付けられる環状の永久磁石である。永久磁石は、第1の磁石303、第2の磁石304と同じ磁石を用いる。第1の磁石305を取り付ける入れ子202には、入れ子202と金型本体112との間に隙間を生じさせないために、第1の磁石305と第2の磁石306の厚み分の段差202cが設けられる。
【0027】
入れ子202の第1の磁石305の外側、すなわち成形面202a側には、入れ子202と金型本体112との間を封止する環状の封止部材402が配置される。封止部材402として、シート状のゴム製のシールを使用する。
図6(a)は、封止部材402を入れ子202に取り付けた例、
図6(b)は、封止部材402を金型本体112に取り付けた例である。シート状のシールを使用することにより、簡単に封止部材402に取り付けることができる。
【0028】
図7は、封止部材402としてOリングを用いた例を示す。
図7(a)は、アリ溝402aを入れ子202に形成した例を示し、
図7(b)は、アリ溝402aを金型本体112に形成した例を示す。入れ子202の脱着頻度が高い場合に、Oリングを使用した封止部材402を使用する。入れ子202の脱着頻度が高く、入れ子202側に封止部材402を取り付けるスペースが確保できないときには、
図7(b)に示すように、金型本体112側にアリ溝402aを形成する。
【0029】
封止部材と磁石の配置及び磁石の形状は、入れ子を設置する場所に応じていくつかの方法を採用でき、第1のパターンの入れ子201を用いてその例を説明する。
図8、9は、入れ子201を底部から見た図である。
図8(a)~(e)は、第1の磁石303の外側に封止部材401を配置した例を示し、
図9(a)~(d)は、封止部材401の外側に第1の磁石303を配置した例を示す。
【0030】
図8(a)において、封止部材401は、入れ子201の底部の外縁の内側に環状に取付けられる。封止部材401は、入れ子201をその外縁において密封し、真空引きをしたときにエアが漏れ出るのを防止する。封止部材401の内側には、第1の磁石303が配置される。第1の磁石303は、複数の磁石ユニット303aを含む。複数の磁石ユニット303aは、封止部材401に沿って、断続的に並べられて配置される。磁石ユニット303aの大きさと長さを調整することで、磁石の磁力を調整し、金型本体111と着脱のしやすい磁力を選択することができる。
【0031】
図8(b)において、封止部材401は、
図8(a)と同様に、入れ子201の底部の外縁の内側に環状に取付けられる。封止部材401の内側には、環状の第1の磁石303が、封止部材401に沿って取付けられる。環状の1つの磁石であるので、取付が容易である。磁石の磁力を選択することにより、磁力を調整する。
【0032】
図8(c)において、封止部材401は、
図8(a)と同様に、入れ子201の底部の外縁の内側に環状に取付けられる。封止部材401の内側に、第1の磁石303が配置される。第1の磁石303は、2つの棒状の磁石ユニット303bを含み、入れ子201の幅方向に沿って平行に取付けられる。2つの棒状の磁石ユニット303bを用いるので、磁石の設置スペースを節約でき、入れ子201への取付けも容易である。
【0033】
図8(d)において、封止部材401は、
図8(a)と同様に、入れ子201の底部の外縁の内側に環状に取り付けられる。第1の磁石303は、4つの棒状の磁石ユニット303cを含む。4つの棒状の磁石ユニット303cは、封止部材401の内側に、入れ子201の幅方向と高さ方向に沿って平行に取付けられる。棒状の磁石ユニット303cを用いるので、入れ子201への取付けが容易である。また、4つの磁石ユニット303cを用いることにより、入れ子201と金型本体111との密着度を大きくできる。
【0034】
図8(e)において、封止部材401は、
図8(a)と同様に、入れ子201の底部の外縁の内側に環状に取付けられる。第1の磁石303は、4つの円形の磁石ユニット303dを含む。4つの磁石ユニット30dは、入れ子201の四隅に取付けられる。入れ子201の下面の磁石の設置スペースが限定されているときに、有利である。
【0035】
図9(a)は、入れ子201の底部の外縁の内側に沿って、環状の封止部材401が取付けられ、封止部材401の外側に、複数の磁石ユニット303aを含む第1の磁石303が、取付けられた例を示す。この例は、
図8(a)の第1の磁石303と封止部材401の位置が逆になった例である。
【0036】
図9(b)は、入れ子201の底部の外縁の内側に沿って、環状の封止部材401が取付けられ、封止部材401の外側に、2つの棒状の磁石ユニット303bを含む第1の磁石303が、入れ子201の幅方向に平行に取り付けられた例を示す。この例は、
図8(c)の第1の磁石303と封止部材401の位置が逆になった例である。
【0037】
図9(c)は、入れ子201の底部の外縁の内側に沿って、環状の封止部材401が取り付けられ、封止部材401の外側に、4つの棒状の磁石ユニット303cを含む第1の磁石303が、取付けられた例を示す。4つの棒状の磁石ユニット303cは、入れ子201の幅方向と高さ方向にそれぞれ2つずつ配置される。この例は、
図8(d)の第1の磁石303と封止部材401の位置が逆になった例である。
【0038】
図9(d)は、入れ子201の底部の外縁の内側に沿って、環状の封止部材401が取り付けられ、封止部材401の外側に、4つの円形の磁石ユニット303dを含む第1の磁石303が、入れ子201の四隅に取付けられた例を示す。この例は、
図8(e)の第1の磁石303と封止部材401の位置が逆になった例である。
【0039】
第1の磁石303と封止部材401の取付位置及び第1の磁石303の形状は、入れ子201と金型本体111の形状と入れ子201の取付スペースの大きさに応じて、適宜選択することができる。
【0040】
〈成形装置及び樹脂成形品の製造方法〉
次に、本実施の形態に係る真空成形金型100を使用した成形装置の構造について説明する。真空成形を使用した成形装置2は、
図10に示すように、成形される樹脂シート31を保持するクランプ30と、樹脂シート31を加熱するヒータ40と、真空成形金型100と、真空成形金型100を載置するテーブル50と、を備える。
【0041】
成形される樹脂シート31は、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネイト、ポリエチレン、ナイロンなどの熱可塑性樹脂を材料としたシートを使用する。
【0042】
クランプ30は、樹脂シート31を保持して、駆動源を稼働することにより上下に移動される。クランプ30により樹脂シート31は真空成形金型100の方向(矢印方向)に移動される。真空成形金型100に載置された樹脂シート31は、真空成形金型100への吸着により成形される。上下動されるクランプ30、真空孔201b、202bが形成された真空成形金型100、及び真空ポンプに接続された真空配管300により成形手段を形成する。
【0043】
上下動するのはクランプ30でなくてもよく、テーブル50を上下動させても良い。樹脂シート31を真空成形金型100に近づけられれば、如何なる方法を使用してもよい。
【0044】
次に、成形装置2を使用した樹脂シート31の成形方法について、
図11、12を参照して説明する。金型本体111と入れ子201に形成された真空孔は省略されている。
図11は、パターン1の樹脂成形金型を使用した場合の樹脂成形品の製造方法を示す図である。
図12は、パターン3の樹脂成形金型を使用した場合の樹脂成形品の製造方法を示す図である。
【0045】
パターン1の真空成形金型100を使用して、樹脂シート31を成形する場合、まず、
図11(a)に示すように、ヒータ40により、クランプ30で保持された樹脂シート31が加熱される(加熱工程)。樹脂シート31は、加熱されると軟化して、真空成形金型100のある方向に曲がる(
図11(b))。樹脂シート31を保持するクランプ30が、テーブル50に載置された真空成形金型100に向けて移動され、樹脂シート31は、真空成形金型100の上に載せられる。その後、真空ポンプが稼働して、真空配管300を介して、金型本体111と入れ子201に形成された真空孔111b、201bより空気が吸引され、真空吸引が開始される。樹脂シート31は、真空吸引されることにより真空成形金型100に張り付き成形される(
図11(c))(成形工程)。
【0046】
成形された樹脂シート31は、冷却された後、離型される(離型工程)。
【0047】
パターン3の真空成形金型100を使用して、樹脂シート31を成形する場合、
図12(a)~
図12(c)に示すように、パターン1の真空成形金型100を使用した場合と同様に、樹脂シート31の加熱(
図12(a))、樹脂シート31の軟化(
図12(b))、樹脂シート31の成形(
図12(c))という順序で、樹脂シート31は成形され離型される。
【0048】
本実施の形態によれば、入れ子201、202は、真空孔201b、202bを有するので、入れ子を備える金型を真空成形に使用することができる。
【0049】
本実施の形態によれば、入れ子201、202は、第1の磁石303、305と第2の磁石304、306により、金型本体111、112に取り付けられるので、金型本体111、112にネジ孔を形成する等の切削加工が不要となり、簡単に金型本体111、112に取付けることができる。
【0050】
本実施の形態によれば、入れ子201、202は、第1の磁石303、305と第2の磁石304、306により、金型本体111、112に取付けられるので、金型本体111、112に冷却配管などの温度調整用の配管が配置されていても、配管の配置位置に関係なく、自由に入れ子201、202を金型本体111、112に取り付けることができる。
【0051】
本実施の形態によれば、真空成形金型100は、封止部材401、402を備えるので、真空成形時に、入れ子201、202から空気の漏れることを防止することができる。
【0052】
本実施の形態によれば、封止部材401、402を入れ子201、202と金型本体111、112との間に配置したので、真空成形をするときに、入れ子201、202と金型本体111、112との間から空気が流入することなく、樹脂シート31を真空吸着できる。
【0053】
本実施の形態によれば、入れ子201、202を着脱自在に取り付けられるので、一つの成形装置2で成形できる形状の数を増やすことができる。
【0054】
本実施の形態では、入れ子201、202の形状は四角錐台であると説明したが、入れ子201、202の形状は四角錐台に限定されず、成形する製品に応じて四角柱、円錐台、又は半球等、様々な形状を採用することができる。
【0055】
本実施の形態では、樹脂成形金型のパターンとして、パターン1~パターン4の中から選択して説明したが、説明をしていないパターンの樹脂成形金型も、説明をしたパターンの樹脂成形金型と同様に入れ子に磁石を取り付けることにより、金型本体に入れ子を取付け、成形装置により樹脂成形品を製造することができる。
【0056】
本実施の形態では、第1の磁石303、305は、入れ子201、202に取り付けられ、第2の磁石304、306は、金型本体111、112に取り付けられると説明した。しかしながら、入れ子201、202は、金型本体111、112に磁性体による磁力で取付られればよい。したがって、入れ子201、202に磁石を取付け、金型本体111、112を軟磁性材料で成形することで、金型本体111、112には、磁石を取り付けなくてもよい。また、その逆で、金型本体111、112に磁石を取付け、入れ子201、202を軟磁性材料で成形し、磁石を取り付けなくてもよい。すなわち、金型本体111、112に、入れ子201、202を取り付けるためには、双方の間で磁力を発生する磁性体を備えればよい。
【0057】
本実施の形態では、磁石と封止部材の取付方法について、パターン1の樹脂成形型について説明したが、パターン2~4の樹脂成形型についても、入れ子202と金型本体112の形状に応じて、様々な取付方法により入れ子を金型本体に取り付けることができる。
【0058】
本実施の形態では、真空成形金型100を用いた例を説明したが、入れ子201、202の真空孔201b、202bを塞げば、当該入れ子を射出成形用の金型にも使用することができる。
【0059】
本実施の形態では、着脱部材として第1の磁石303、305、第2の磁石304、306を使用した例を説明したが、着脱部材は、磁性体で形成されたものでなくてもよい。入れ子201、202を金型本体111、112に着脱自在に取り付けられるものであればよい。例えば、金型本体111、112にスリットを形成し、入れ子201、202にスリットに差し込む挿入部材を設けてもよい。
【0060】
本実施の形態では、クランプ30が移動することにより、軟化した樹脂シート31を成形していると説明したが、成形方法は、この方法に限定されない。例えば、加熱して軟化させて樹脂シートを圧縮空気により膨らませて、下から樹脂成形金型を突き上げて真空吸引することにより成形するエアスリップ法を用いてもよい。また、凹形状の樹脂成形金型に真空吸引するとともに、上方からプラグとう補助型で押して成形するプラグアシスト法を用いてもよい。
【0061】
本開示は、本開示の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされる。また、上述した実施形態は、本開示を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。つまり、本開示の範囲は、実施形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、本開示の範囲内とみなされる。
【0062】
(付記)
(付記1)
金型本体に取り付けられる入れ子であって、
前記金型本体の成形面と対向する面に着脱部材を備え、
前記着脱部材により前記金型本体に着脱自在に取り付けられ、
当該入れ子の成形面から非成形面に通じる真空孔が形成された、
入れ子。
【0063】
(付記2)
前記着脱部材は、磁性材料で形成された、
付記1に記載の入れ子。
【0064】
(付記3)
樹脂成形に使用される金型であって、
金型本体と、
前記金型本体に取り付けられる入れ子と、
前記金型本体と前記入れ子との間に、前記入れ子を前記金型本体に着脱自在に取り付ける着脱部材と、を備え、
前記入れ子の成形面から非成形面に通じる真空孔が形成された、
樹脂成形金型。
【0065】
(付記4)
前記着脱部材は、
前記入れ子の、前記金型本体の前記入れ子を取り付ける取付面と対向する面に形成された第1の磁性体と、
前記金型本体の前記取付面の、前記第1の磁性体と対向する位置に形成された第2の磁性体と、を備え、
前記入れ子は、前記第1の磁性体と前記第2の磁性体との間の磁力により前記金型本体に取り付けられる、
付記3に記載の樹脂成形金型。
【0066】
(付記5)
前記入れ子は中空であり、
前記金型本体と前記入れ子との間に配置され、前記入れ子を密封する封止部材を備える、
付記3に記載の樹脂成形金型。
【0067】
(付記6)
樹脂シートを加熱するヒータと、
付記3から5の何れか1つに記載された樹脂成形金型と、
加熱された前記樹脂シートを、前記真空孔から気体を吸引して、前記樹脂成形金型により成形する成形手段と、を備える、
成形装置。
【0068】
(付記7)
樹脂シートを加熱する加熱工程と、
加熱された前記樹脂シートを付記3から5の何れか1つに記載された樹脂成形金型により、前記真空孔から気体を吸引して成形する成形工程と、を備える、
樹脂成形品の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示は、樹脂成形品を製造するための金型に使用される入れ子、金型、成形装置、樹脂成形品の製造方法に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 樹脂成形金型、2 成形装置、10、111、112 金型本体、10a、111a、112a、201a、202a 成形面、111aa 取付面、20、201、202 入れ子、30 クランプ、31 樹脂シート、40 ヒータ、50 テーブル、100 真空成形金型、111b、112b 真空孔、201b、202b 真空孔、201c、202c 段差、300 真空配管、303、305 第1の磁石、303a、303b、303c、303d 磁石ユニット、304、306 第2の磁石、401、402 封止部材、401a、402a アリ溝。