IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特開2024-167358搬送装置、搬送方法、リソグラフィ装置、リソグラフィシステム、および物品製造方法
<>
  • 特開-搬送装置、搬送方法、リソグラフィ装置、リソグラフィシステム、および物品製造方法 図1
  • 特開-搬送装置、搬送方法、リソグラフィ装置、リソグラフィシステム、および物品製造方法 図2
  • 特開-搬送装置、搬送方法、リソグラフィ装置、リソグラフィシステム、および物品製造方法 図3
  • 特開-搬送装置、搬送方法、リソグラフィ装置、リソグラフィシステム、および物品製造方法 図4
  • 特開-搬送装置、搬送方法、リソグラフィ装置、リソグラフィシステム、および物品製造方法 図5
  • 特開-搬送装置、搬送方法、リソグラフィ装置、リソグラフィシステム、および物品製造方法 図6
  • 特開-搬送装置、搬送方法、リソグラフィ装置、リソグラフィシステム、および物品製造方法 図7
  • 特開-搬送装置、搬送方法、リソグラフィ装置、リソグラフィシステム、および物品製造方法 図8
  • 特開-搬送装置、搬送方法、リソグラフィ装置、リソグラフィシステム、および物品製造方法 図9
  • 特開-搬送装置、搬送方法、リソグラフィ装置、リソグラフィシステム、および物品製造方法 図10
  • 特開-搬送装置、搬送方法、リソグラフィ装置、リソグラフィシステム、および物品製造方法 図11
  • 特開-搬送装置、搬送方法、リソグラフィ装置、リソグラフィシステム、および物品製造方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167358
(43)【公開日】2024-12-03
(54)【発明の名称】搬送装置、搬送方法、リソグラフィ装置、リソグラフィシステム、および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20241126BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20241126BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20241126BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20241126BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20241126BHJP
   B25J 15/06 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H01L21/68 B
H01L21/68 N
H01L21/68 G
G03F7/20 521
H01L21/30 502D
B25J15/06 G
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024150522
(22)【出願日】2024-09-02
(62)【分割の表示】P 2020062406の分割
【原出願日】2020-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】前田 敏宏
(72)【発明者】
【氏名】安延 蔵
(57)【要約】      (修正有)
【課題】保持部周辺のパーティクルを低減させることが可能な搬送装置を提供する。
【解決手段】基板搬送装置10は、対象物と接触する保持部で対象物を保持して搬送する保持部材と、保持部の周辺に配置された少なくとも一つの吸引口と、吸引口を搬送装置の外部に連通する流路と、を備える。保持部材18は、基板搬送領域220において基板1を搬送するために基板1を保持する。基板1は保持部13に対して真空吸着或いは電圧を印加したクーロン力固定等の手段で保持されている。排気流路15は、保持部13周辺の雰囲気を吸引するための流路であり、保持部13に連通する真空流路14とは独立している。排気流路15と真空流路14とを独立させることにより、故障のリスクを低減させることが可能となる。吸引口12は、保持部材18に堆積するパーティクルを吸引し、基板搬送装置10の外部に排出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の対象物を搬送する搬送装置であって、
前記対象物と接触する保持部で前記対象物を保持して搬送する保持部材と、
前記保持部の周辺に配置された少なくとも一つの吸引口と、
前記吸引口を前記搬送装置の外部に連通する流路と、を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記対象物を真空吸着して保持することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記流路は雰囲気を吸引するための流路であって、前記対象物を真空吸着するための流路とは独立していることを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記流路は雰囲気を吸引するための流路であって、前記対象物を真空吸着するための流路と連通した流路を含むことを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記吸引口は、前記保持部の外周に沿う溝形状であること特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記吸引口は、前記保持部材に堆積するパーティクルを吸引することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項7】
少なくとも前記保持部と前記対象物とが接触または離間する際に、前記吸引口により吸引を開始させる制御部を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記対象物と前記保持部とが接触または離間する際に、前記吸引口により断続的に雰囲気を吸引させることを特徴とする請求項7に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記対象物と前記保持部とが接触または離間する際に、連続的に雰囲気を吸引することを特徴とする請求項7に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記保持部材は、複数の装置間において前記対象物を搬送することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項11】
前記対象物は、基板または型を含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項12】
板状の対象物を搬送するための搬送装置を制御する搬送方法であって、前記搬送装置は、前記対象物と接触する保持部で前記対象物を保持して搬送する保持部材と、
前記保持部の周辺に配置された少なくとも一つの吸引口と、
前記吸引口を前記搬送装置の外部に連通する流路と、を備え、
前記搬送方法は、
前記対象物と接触する前記保持部で前記対象物を保持して搬送する搬送工程と、
前記保持部の周辺に配置された少なくとも一つの吸引口を用いて、パーティクルを吸引し、前記搬送装置の外部に排出する排出工程と、を備えることを特徴とする搬送方法。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の搬送装置によって、搬送された板状の対象物に対し、パターンを形成する処理部を有する、ことを特徴とするリソグラフィ装置。
【請求項14】
パターンを板状の対象物に形成するリソグラフィシステムであって、
前記対象物に対して処理を行う第1処理装置および第2処理装置と、
前記対象物を前記第1処理装置から前記第2処理装置へ搬送する請求項1乃至10のいずれか1項に記載の搬送装置と、
を含むことを特徴とするリソグラフィシステム。
【請求項15】
請求項13に記載のリソグラフィ装置を用いてパターンを前記対象物に形成する工程と、
前記工程で前記パターンが形成された前記対象物を処理する工程と、
処理された前記対象物から物品を製造する工程と、を有することを特徴とする物品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置、搬送方法、リソグラフィ装置、リソグラフィシステム、および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶表示デバイス等の製造に用いられる、露光装置等のリソグラフィ装置は、基板を搬送する基板搬送装置を含みうる。基板搬送装置は、基板の受け渡しを行う保持部材を備える。保持部材は一般に、真空吸着によって基板を保持する機能を有する。
【0003】
保持部材上には基板の受け渡しを繰り返すことによって、パーティクルが堆積し、これが舞い上がることにより、基板に付着しうる。特許文献1には、保持部材の余剰部分を減らすことにより堆積する面積を減らすことで、基板へのパーティクル付着を低減する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-194668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の基板搬送装置には、基板と保持部の接触で生じるパーティクルが保持部材の保持部周辺に堆積し、浮遊することで基板に付着するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、保持部周辺のパーティクルを低減させることが可能な搬送装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の1つの側面としての搬送装置は、板状の対象物を搬送する搬送装置であって、前記対象物と接触する保持部で前記対象物を保持して搬送する保持部材と、前記保持部の周辺に配置された少なくとも一つの吸引口と、前記吸引口を前記搬送装置の外部に連通する流路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、保持部周辺のパーティクルを低減させることが可能な搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るクラスタ型処理装置の概略平面図である。
図2】第1実施形態に係る基板搬送装置の模式図である。
図3】第1実施形態に係る保持部およびその周辺の構成を示す模式図である。
図4】保持部の他の構成例の模式図である。
図5】保持部のさらに他の構成例の模式図である。
図6】基板の受け取りまたは受け渡しのシーケンスを説明する図である。
図7】第1実施形態に係る基板の受け取りまたは受け渡し時における吸引のシーケンスを説明する図である。
図8】第2実施形態に係る原版搬送装置の模式図である。
図9】型の受け取りまたは受け渡しのシーケンスを説明する図である。
図10】第2実施形態に係る原版の受け取りまたは受け渡し時における吸引のシーケンスを説明する図である。
図11】第3実施形態に係る基板搬送装置の模式図である。
図12】基板搬送装置を適用したインプリント装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において、同一の部材ないし要素については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係るリソグラフィ装置および基板搬送装置について説明する。本実施形態に係る処理装置は、処理部を複数有する、所謂クラスタ型の処理装置である。図1は、第1実施形態に係るクラスタ型処理装置200と、このクラスタ型処理装置200を含む処理システム100との構成を示す概略平面図である。なお、以下では、基板の表面に沿う平面内で互いに直交する方向をX軸およびY軸とし、X軸およびY軸に垂直な方向をZ軸とする。
【0012】
処理システム100(リソグラフィシステム)は、クラスタ型処理装置200と、前処理装置300と、制御部400と、を含む。クラスタ型処理装置200は、複数(本実施形態では一例として6つ)の処理部210(210A~210F)と、基板搬送装置10とを含む。本実施形態において、複数の処理部210の各々は、例えば、型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント処理を行う。なお、処理部210は、例えば、基板を露光してマスクのパターンを基板に転写する露光処理や、荷電粒子線を基板に照射して当該基板にパターンを形成する描画処理などのリソグラフィ処理を行っても良い。
【0013】
基板搬送装置10は、前処理装置300によって前処理が行われた基板1などの板状の対象物を複数の処理部210の各々に搬送する。即ち、基板搬送装置10は、複数の装置間において対象物を搬送する。基板搬送装置10は、基板1を保持して基板搬送領域220(搬送路)を移動する。基板搬送装置10の詳細な構成については後述する。
【0014】
前処理装置300は、インプリント処理が行われる基板1に対して前処理を行う。前処理装置300で行われる前処理は、例えば、基板1とその上に供給されるインプリント材との密着性を向上させるための密着層を基板上に形成する処理を含みうる。
【0015】
制御部400は、例えばCPUやメモリなどを有するコンピュータによって構成され、処理システム100の各部を制御する。
【0016】
図2は、第1実施形態に係る基板搬送装置10の模式図である。保持部材18は、基板搬送領域220において基板1を搬送するために該基板1を保持する。基板1は図2(A)に示す座標に従い、被処理面をZ軸方向に向けて略水平に保持部材18に載置される。該基板1は保持部材18に構成される保持部13に対して真空吸着或いは電圧を印加したクーロン力固定等の手段で保持されている。ここで、保持部13は、一例として、真空吸着によって基板1を保持する。図2(A)は平面図であり図2(B)は側面図である。
【0017】
図2(B)に示すように保持部13は保持部材18から突出しており、保持部材18が基板1を保持する状態において、基板1に接触するのは保持部13のみとなる。図2(A)において、該保持部13は一例として2箇所あるが、一つであってもよく、また2箇所より多くてもよい。該保持部13に連通する真空流路14は開閉弁21を介して真空源につながる。一方、保持部13の周辺には吸引口12が配置される。吸引口12に連通する排気流路15は開閉弁22を介して排気源に接続される。排気流路15は、保持部13周辺の雰囲気を吸引するための流路である。また、排気流路15は保持部13に連通する真空流路14とは独立している。排気流路15と真空流路14とを独立させることにより、故障のリスクを低減させることが可能となる。吸引口12は、保持部材18に堆積するパーティクルを吸引し、基板搬送装置10の外部に排出する。開閉弁21および開閉弁22は、制御部23によって制御される。なお、制御部23は、基板搬送装置10の各部を制御するが、処理システム100の制御部400を基板搬送装置10の制御部として用いても良い。
【0018】
図3を参照して、本実施形態の保持部13の構成について説明する。図3は、第1実施形態に係る保持部13およびその周辺の構成を示す模式図である。図3において吸引口12は1つの保持部13に対して6箇所あるが、1つであっても良く、また複数あって良い。吸引口12の数が少ないほど保持部13の強度が向上し、吸引口12の数が多いほどパーティクルの吸引効果が高まる。
【0019】
図4を参照して、保持部13の他の例について説明する。図4は、保持部13の他の構成例の模式図である。図4において吸引口12は保持部13周辺を囲むように凹の溝形状である。言い換えると、吸引口12は、保持部13の外周に沿う溝形状である。このような構成とする場合、吸引口12の開口の総面積が大きくなるため、パーティクルの吸引効果がより高まる。
【0020】
図5を参照して、保持部13のさらに好ましい例について説明する。図5は、保持部13のさらに他の構成例の模式図である。基板1と保持部13が接触または離れる(離間する)ときに発生するパーティクルが保持部材18の表面に堆積することを防ぐために、吸引口12は保持部13の最外周から10mm以内であることが望ましい。言い換えると、保持部13の端部から吸引口12の寸法Aは10mm以内であることが望ましい。このような構成とすることで、吸引口12と保持部13との距離が近くなるため、パーティクルの吸引効果がより高まる。
【0021】
図6は、基板の受け取りまたは受け渡しのシーケンスを説明する図である。該シーケンスにおける基板搬送装置10の各部の動作は制御部23によって実行されうる。図6(A)は、保持部材18で基板1を図1で示すクラスタ型処理装置200や前処理装置300から受け取る際の保持部材18の動きを表している。図6(A)に示されるS101では、前記クラスタ型処理装置200や前処理装置300の載置部33で保持された基板1を受け取るために、前記保持部材18が基板1の下位置に移動する。S102では、保持部材18が上昇し、基板1と保持部13とが接触する。この接触により、発生したパーティクルを吸引口12で吸引する。S103では、保持部材18がさらに上昇し、載置部33からの基板1受け取りが完了する。
【0022】
図6(B)は、保持部材18で基板1を図1で示すクラスタ型処理装置200や前処理装置300に受け渡す際の保持部材18の動きを表している。図6(B)に示されるS201では、前記クラスタ型処理装置200や前処理装置300の載置部33に基板1を受け渡すために、前記保持部材18の保持部13で保持した基板1が載置部33への受け渡し上位置に移動する。S202では、保持部材18が下降し、基板1が載置部33と接触し、保持部13と基板1が離れる。この時に、振動や微小な擦れ等により発生したパーティクルを吸引口12で吸引する。S203では、保持部材18がさらに下降し、保持部材18から載置部33への基板1受け渡しが完了する。
【0023】
図7を参照して、本実施形態の吸引口12による吸引動作について説明する。図7は、第1実施形態に係る基板の受け取りまたは受け渡し時における吸引のシーケンスを説明する図である。図7(A)は、保持部材18で基板1を図1で示すクラスタ型処理装置200や前処理装置300から受け取る際の保持部13及び吸引口12の吸引のシーケンスの一例を表した図である。基板1の受け取り時には、保持部材18が上昇し基板1と保持部13が接触するときにパーティクルが発生するため、保持部13が基板1に接触する前から吸引口12の吸引を行う必要がある。このため、S102の保持部材18の上昇と同時または、その前から吸引口12の吸引を開始することが好ましい。言い換えると、少なくとも保持部13と基板1とが接触する前に吸引口12の吸引を開始することが好ましい。そして、上昇完了時に吸引口12の吸引を停止する。図7(A)では、一例として、S102の保持部材18の上昇と同時に吸引口12の吸引を開始する例を示している。
【0024】
図7(B)は、保持部材18で基板1を図1に示すクラスタ型処理装置200や前処理装置300に受け渡す際の保持部13及び吸引口12の吸引のシーケンスを表した図である。基板1の受け渡し時には、保持部材18が下降し基板1が載置部33と接触し、保持部13と基板1が離れるときに振動や微小な擦れ等によりパーティクルが発生するため、保持部13が基板1から離れる前から吸引口12の吸引を行う必要がある。このため、S202の保持部材18の下降と同時または、その前から吸引口12の吸引を開始することが好ましい。言い換えると、少なくとも保持部13と基板1とが離間する前に吸引口12の吸引を開始することが好ましい。そして、下降完了時に吸引口12の吸引を停止する。図7(B)では、一例として、S202の保持部材18の下降と同時に吸引口12の吸引を開始する例を示している。
【0025】
また、吸引口12は該基板1の授受に関係なく連続的に吸引してもよい。即ち、上述のように吸引のON/OFFを切り替えて断続的に吸引するのではなく、吸引のON/OFFを切り替えずに吸引し続けても良い。この場合、開閉弁22を設ける必要がない。
【0026】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態として言及しない事項は、前述の実施形態に従う。図8は、第2実施形態に係る原版搬送装置50の模式図である。図8は、原版搬送装置50が第1実施形態で説明した図1における処理部210(210A~210F)のいずれかで原版を保持している状態を示す図である。本実施形態に係る原版搬送装置50は、例えば、インプリント処理に用いる型などの原版を対象物として搬送する。ここでは、原版としての型2を搬送する例について説明する。原版搬送装置50は前記型2を保持する保持部51と保持部材58とを含む。
【0027】
前記型2は図8(A)に示す座標に従い、パターン面をZ軸に向けて略水平に保持部材58に載置される。該型2は前記保持部材58に構成される保持部51に対して真空吸着或いは電圧を印加したクーロン力固定等、その他手段で固定されている。図8(A)は平面図であり図8(B)は側面図である。
【0028】
図8(B)に示すように前記保持部51は保持部材58から突出しており、保持部材58が型2を保持する状態において、前記型2に接触するのは前記保持部51のみとなる。図8(A)において該保持部51は4箇所あるが、これに限られるものではない。該保持部51に連通する真空流路54は開閉弁61を介して真空源につながる。一方、保持部51の周辺には吸引口52が配置される。吸引口52に連通する排気流路55は開閉弁62を介して排気源に接続される。また、排気流路55は保持部51に連通する真空流路54とは独立している。吸引口52は、保持部材58に堆積するパーティクルを吸引する。開閉弁61および開閉弁62は、制御部63によって制御される。
【0029】
本実施形態において、吸引口52は1つの保持部51に対して6箇所あるものとするが、第1実施形態と同様に1つであっても良く、また複数あって良い。さらに、吸引口52は保持部51周辺を囲むように凹の溝形状であってもよい。さらに、吸引口52は、型2と保持部51とが接触または離れる(離間する)ときに発生するパーティクルが保持部材58の表面に堆積することを防ぐために、保持部51最外周から10mm以内であることが望ましい。
【0030】
図9は、型2の受け取りまたは受け渡しのシーケンスを説明する図である。該シーケンスにおける原版搬送装置50の各部の動作は制御部63によって実行されうる。図9(A)は、原版載置部73で保持された型2を保持部材58により受け取る際の保持部材58の動きを表している。図9(A)に示されるS301では、原版載置部73で保持された型2を受け取るために、保持部材58を型2の下位置に移動する。S302では、保持部材58が上昇し型2と保持部51が接触する。この接触により、発生したパーティクルを吸引口52で吸引する。S303では、保持部材58がさらに上昇し、原版載置部73から型2の受け取りが完了する。
【0031】
図9(B)は、保持部材58で保持された型2を原版載置部73に受け渡す際の保持部材58の動きを表している。図9(B)に示されるS401では、保持部材58で保持された型2を原版載置部73に受け渡すために、保持部材58の保持部51で保持した型2を原版載置部73への受け渡し上位置に移動する。S402では、保持部材58が下降し、型2が原版載置部73と接触し、保持部51と型2が離れる。この時に、振動や微小な擦れ等により発生したパーティクルを吸引口52で吸引する。S403では、保持部材58がさらに下降し、保持部材58から原版載置部73への型2の受け渡しが完了する。
【0032】
図10を参照して、本実施形態の吸引口52による吸引動作について説明する。図10は、第2実施形態に係る原版の受け取りまたは受け渡し時における吸引のシーケンスを説明する図である。型2の受け取りまたは受け渡し時における吸引口52による吸引のシーケンスについては、第1実施形態と同様とすることができる。即ち、少なくとも保持部51と型2とが接触または離間する前に吸引口52の吸引を開始することが好ましい。図10(A)は、保持部材58で保持した型2を原版載置部73から受け取る際の保持部51及び吸引口52の吸引のシーケンスを表した図である。型2の受け取り時には、保持部材58が上昇し型2と保持部51が接触するときにパーティクルが発生するため、保持部51が型2に接触する前から吸引口52の吸引を行う必要がある。このため、S302の保持部材58の上昇と同時または、その前から吸引口52の吸引を開始し、上昇完了時に吸引口52の吸引を停止する。図10(A)では、一例として、S302の保持部材58の上昇よりも前に吸引口12の吸引を開始する例を示している。
【0033】
図10(B)は保持部材58で型2を原版載置部73に受け渡す際の保持部51及び吸引口52の吸引のシーケンスを表した図である。型2の受け渡し時には、S402で保持部材58が下降し型2が原版載置部73と接触し、保持部51と型2が離れるときの振動や微小な擦れ等によりパーティクルが発生するため、保持部51が型2から離れる前から吸引口52の吸引を行う必要がある。このため、S402の保持部材58の下降と同時または、その前から吸引口52の吸引を開始し、下降完了時に吸引口52の吸引を停止する。図10(B)では、一例として、S402の保持部材58の下降よりも前に吸引口12の吸引を開始する例を示している。
【0034】
なお、吸引口52は該型2の授受に関係なく連続的に吸引してもよい。即ち、吸引のON/OFFを切り替えることなく、吸引し続けても良い。この場合、開閉弁62を設ける必要がない。
【0035】
<第3実施形態>
上述の実施形態では、排気流路は保持部に連通する真空流路とは独立している構成としたが、排気流路を真空流路と連通させる構成とすることも可能である。
【0036】
図11は、第3実施形態に係る基板搬送装置80の模式図である。図11(A)は平面図であり図11(B)は側面図である。該保持部13に連通する真空流路84は開閉弁21を介して真空/排気源に接続される。そして、保持部13の周辺に配置される吸引口12に連通する排気流路85も開閉弁22を介して真空/排気源に接続される。排気流路85は保持部13に連通する真空流路84と連通しており、開閉弁21および開閉弁22の開閉により、真空吸着および吸引口12による吸引が制御される。開閉弁21および開閉弁22の開閉は、制御部23によって制御される。排気流路15と真空流路14とを連通させることにより、装置の構成を簡易化することが可能となる。
【0037】
<第4実施形態>
上述の実施形態は、1つの処理部のみを有するインプリント装置、露光装置、描画装置などのリソグラフィ装置においても適用することができる。図12は、基板搬送装置10を適用したインプリント装置500の構成を示す概略図である。
【0038】
インプリント装置500は、例えば、硬化部501、型2を保持するインプリントヘッド502、基板を保持する基板ステージ503、供給部504、アライメント計測部505、を含む。インプリント装置500は、型2を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント処理を行う。
【0039】
硬化部501は、例えば、光源506と、光源506から照射された紫外線507をインプリントに適切な光に調整するための複数の光学系508と、を含む。
【0040】
型2は、例えば、外周部が矩形で、基板1に対する対向面に、基板1上に供給されたインプリント材に形成する凹凸のパターンが3次元形状に形成されたパターン領域を備える型である。なお、型2の材質には石英などの紫外線を透過させる素材が用いられる。
【0041】
インプリントヘッド502は、例えば、型チャック509、型ステージ510、型形状補正機構511を含む。型チャック509は、真空吸着力や静電吸着力などの機械的保持手段(不図示)によって型2を保持する。また、型チャック509は、機械的保持手段(不図示)によって、型ステージ510に保持される。型ステージ510は、型2と基板1とを接触させる際に型2と基板1との間隔を位置決めするための駆動系を備え、型2をZ軸方向に移動させる。なお、型ステージ510の駆動系は、Z軸方向だけではなく、例えばX軸方向、Y軸方向およびθ方向(X軸周り、Y軸周り、Z軸周りの回転方向)に型2を移動させる機能を備えていてもよい。型形状補正機構511は、型2の形状を補正するための機構であり、型の外周部を取り囲むように複数箇所に設置されている。
【0042】
基板ステージ503は、基板1を保持し、型2と基板1とを接触させる際に、型2と基板1との並進シフトの補正(位置合せ)をする。基板ステージ503は、基板チャック512を備える。基板チャック512は、基板1を基板吸着パッド(基板吸着部)によって保持する。なお、吸着方式は、真空吸着、静電吸着、その他の吸着方式を利用しても良い。基板ステージ503は、型2と基板1との並進シフトの補正(位置合せ)をするためのX軸方向およびY軸方向に駆動する駆動系を備える。また、X軸方向とY軸方向の駆動系は、粗動駆動系と微動駆動系など複数の駆動系から構成されていてもよい。さらに、Z軸方向の位置調整のための駆動系や、基板1のθ(Z軸周りの回転)方向位置調整機能、基板1の傾きを補正するためのチルト機能を有していても良い。基板ステージ503は、複数の保持部の一つである。
【0043】
基板1は、ガラス、セラミックス、金属、半導体または樹脂等で構成される部材でありうる。必要に応じて、該部材の表面に該部材とは別の材料からなる層が形成されていてもよい。基板1は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、または、石英ガラスプレートなどである。基板1には複数のショット領域が形成されており、インプリント処理をショット領域毎に繰り返すことで、基板1のショット領域上にパターンを形成することができる。
【0044】
供給部504(ディスペンサ)は、基板1上にインプリント材を供給する。供給部504は、例えば、吐出ノズル(不図示)を有しており、吐出ノズルから基板1上にインプリント材を供給する。なお、本実施形態において、インプリント材は紫外線によって硬化する性質を持つ樹脂を一例として用いる。また、供給されるインプリント材の量は、必要となるインプリント材の厚さや形成するパターン密度などによって決められても良い。
【0045】
アライメント計測部505は、型2および基板1に形成されたアライメントマークを検出して、基板上に形成されたパターンと型のパターン領域とのX軸方向およびY軸方向への位置ずれや、形状差を計測するための計測部である。
【0046】
インプリント装置500は、基板搬送装置10によって搬送された基板1に対し、インプリント処理を行う。基板搬送装置10は、基板1を搬送し、インプリント装置500内部と外部との基板1の受け渡しを行う。基板搬送装置10は、基板1を保持した保持部材18をインプリント装置500の内部に挿入し、基板ステージ503上に基板1を受け渡す。
【0047】
(物品製造方法に係る実施形態)
本実施形態にかかる物品の製造方法は、例えば、半導体デバイス、表示デバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。例えば、物品として、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。本実施形態の物品の製造方法は、基板に塗布された感光剤に上記のリソグラフィ装置(露光装置やインプリント装置、描画装置など)を用いて基板に原版のパターンを転写する工程と、かかる工程でパターンが転写された基板を加工する工程とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。基板は、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられ、必要に応じて、その表面に基板とは別の材料からなる部材が形成されていてもよい。基板としては、具体的に、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスなどである。
【0048】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明してきたが、本発明はこれらの実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内において様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
10,80 基板搬送装置
12,52 吸引口
13,51 保持部
14,54,84 真空流路
15,55,85 排気流路
18,58 保持部材
23,63 制御部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-10-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理部に板状の対象物を搬送する搬送装置であって、
前記対象物と接触する保持部で前記対象物を保持して搬送する保持部材を有し、
前記保持部材は、前記保持部の周辺に配置された少なくとも一つの吸引口と、
前記吸引口を前記搬送装置の外部かつ前記処理部の外部にある排気源に連通する流路と、を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記対象物を真空吸着して保持することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記流路は雰囲気を吸引するための流路であって、前記対象物を真空吸着するための流路とは独立していることを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記流路は雰囲気を吸引するための流路であって、前記対象物を真空吸着するための流路と連通した流路を含むことを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記吸引口は、前記保持部の外周に沿う溝形状であること特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記吸引口は、前記保持部材に堆積するパーティクルを吸引することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項7】
少なくとも前記保持部と前記対象物とが接触または離間する際に、前記吸引口により吸引を開始させる制御部を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記対象物と前記保持部とが接触または離間する際に、前記吸引口により断続的に雰囲気を吸引させることを特徴とする請求項7に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記対象物と前記保持部とが接触または離間する際に、連続的に雰囲気を吸引することを特徴とする請求項7に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記保持部材は、複数の装置間において前記対象物を搬送することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項11】
前記対象物は、基板または型を含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項12】
板状の対象物を搬送するための搬送装置を制御する搬送方法であって、前記搬送装置は、前記対象物と接触する保持部で前記対象物を保持して搬送する保持部材を有し、
前記保持部材は、前記保持部の周辺に配置された少なくとも一つの吸引口と、
前記吸引口を前記搬送装置の外部かつ前記処理部の外部にある排気源に連通する流路と、を備え、
前記搬送方法は、
前記対象物と接触する前記保持部で前記対象物を保持して搬送する搬送工程と、
前記保持部の周辺に配置された少なくとも一つの吸引口を用いて、パーティクルを吸引し、前記搬送装置の外部に排出する排出工程と、を備えることを特徴とする搬送方法。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の搬送装置によって、搬送された板状の対象物に対し、パターンを形成する処理部を有する、ことを特徴とするリソグラフィ装置。
【請求項14】
パターンを板状の対象物に形成するリソグラフィシステムであって、
前記対象物に対して処理を行う第1処理装置および第2処理装置と、
前記対象物を前記第1処理装置から前記第2処理装置へ搬送する請求項1乃至10のいずれか1項に記載の搬送装置と、
を含むことを特徴とするリソグラフィシステム。
【請求項15】
請求項13に記載のリソグラフィ装置を用いてパターンを前記対象物に形成する工程と、
前記工程で前記パターンが形成された前記対象物を処理する工程と、
処理された前記対象物から物品を製造する工程と、を有することを特徴とする物品の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の1つの側面としての搬送装置は、
処理部に板状の対象物を搬送する搬送装置であって、
前記対象物と接触する保持部で前記対象物を保持して搬送する保持部材を有し、
前記保持部材は、前記保持部の周辺に配置された少なくとも一つの吸引口と、
前記吸引口を前記搬送装置の外部かつ前記処理部の外部にある排気源に連通する流路と、を備えることを特徴とする。