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特開2024-167882インクジェット記録方法、インクジェット記録装置、及び水性インク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167882
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】インクジェット記録方法、インクジェット記録装置、及び水性インク
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20241127BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20241127BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241127BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B41M5/00 120
C09D11/322
B41J2/01 125
B41J2/01 501
B41J2/01 123
B41J2/21
B41M5/00 134
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062310
(22)【出願日】2024-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2023084008
(32)【優先日】2023-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(72)【発明者】
【氏名】田谷 彰大
(72)【発明者】
【氏名】丸山 晶夫
(72)【発明者】
【氏名】河村 英孝
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 和香
(72)【発明者】
【氏名】山火 智
(72)【発明者】
【氏名】渡部 大輝
(72)【発明者】
【氏名】勝本 有子
(72)【発明者】
【氏名】須山 可南子
(72)【発明者】
【氏名】柏崎 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 淳二
(72)【発明者】
【氏名】浅川 浩
(72)【発明者】
【氏名】加地 麻美子
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EE17
2C056EE18
2C056FA03
2C056FA10
2C056FC01
2C056HA42
2C056HA46
2C056HA47
2H186AB03
2H186AB05
2H186AB06
2H186AB12
2H186AB27
2H186AB41
2H186AB55
2H186AB56
2H186AB57
2H186BA08
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2H186FA07
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2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB56
4J039AD03
4J039AD05
4J039AD09
4J039AE04
4J039AE06
4J039AE11
4J039BA13
4J039BA14
4J039BA16
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4J039BA21
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4J039BC07
4J039BC10
4J039BE01
4J039BE22
4J039CA06
4J039EA18
4J039EA42
4J039EA44
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】耐沈降性に優れた水性インクを用いながらも、隠蔽性に優れた画像を記録することが可能なインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】粒子及び第1樹脂粒子を含有する水性インクを用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法である。水性インクを記録媒体に付与するインク付与工程と、水性インクが付与された記録媒体を、第1樹脂粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)以上、かつ粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)未満の温度に加熱する加熱工程と、を有し、粒子の平均一次粒子径DP0(nm)が、150nm以下であり、加熱工程において、記録媒体を加熱して第1樹脂粒子を融解させ、空孔を生じさせる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子及び第1樹脂粒子を含有する水性インクを用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記水性インクを前記記録媒体に付与するインク付与工程と、
前記水性インクが付与された前記記録媒体を、前記第1樹脂粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)以上、かつ前記粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)未満の温度に加熱する加熱工程と、を有し、
前記粒子の平均一次粒子径DP0(nm)が、150nm以下であり、
前記加熱工程において、前記記録媒体を加熱して前記第1樹脂粒子を融解させ、空孔を生じさせることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項2】
前記第1樹脂粒子の体積基準の累積50%粒子径D(nm)が、100nm以上400nm以下である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
前記水性インク中、前記第1樹脂粒子の含有量(体積%)が、前記粒子の含有量(体積%)に対する体積比率で、1.3倍以上5.0倍以下である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
前記第1樹脂粒子のガラス転移温度Tg(℃)が、25℃以上である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】
前記第1樹脂粒子の融点T(℃)が、25℃以上であり、
前記第1樹脂粒子を構成する樹脂が、結晶性樹脂である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】
前記第1樹脂粒子の80℃における損失弾性率が、1.2×10Pa以下である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項7】
前記第1樹脂粒子の80℃における損失弾性率が、3.3×10Pa以下である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項8】
前記第1樹脂粒子を構成する樹脂が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びウレタン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項9】
前記第1樹脂粒子の見かけ密度が、0.8g/cm以上である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項10】
前記粒子の体積基準の累積50%粒子径D(nm)が、150nm以下である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項11】
前記粒子が、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、カオリン、クレー、及び第2樹脂粒子からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項12】
前記粒子が、酸化チタンであり、
前記水性インク中、前記第1樹脂粒子の含有量(質量%)が、前記酸化チタンの含有量(質量%)に対する質量比率で、0.30倍以上1.0倍以下である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項13】
前記酸化チタンの体積基準の累積50%粒子径D(nm)が、100nm以下である請求項12に記載のインクジェット記録方法。
【請求項14】
前記水性インク中、前記粒子の含有量(体積%)が、インク全体積を基準として、1.5体積%以上である請求項1乃至13のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項15】
前記加熱工程における加熱温度T(℃)が、80℃以上である請求項1乃至13のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項16】
さらに、前記水性インクと反応する反応剤を含有する水性反応液を前記記録媒体に付与する反応液付与工程、及び、前記記録媒体上の液体成分を乾燥させる乾燥工程からなる群より選択される少なくとも1種の工程を有する請求項1乃至13のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項17】
前記水性インクが、白色インクである請求項1乃至13のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項18】
粒子及び第1樹脂粒子を含有する水性インクを用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置であって、
前記水性インクを前記記録媒体に付与するインク付与手段と、
前記水性インクが付与された前記記録媒体を、前記第1樹脂粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)以上、かつ前記粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)未満の温度に加熱する加熱手段と、を備え、
前記粒子の平均一次粒子径DP0(nm)が、150nm以下であり、
前記加熱手段が、前記記録媒体を加熱して前記第1樹脂粒子を融解させ、空孔を生じさせる手段であることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項19】
粒子及び第1樹脂粒子を含有する水性インクを用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法に用いられる、水性インクであって、
前記インクジェット記録方法が、前記水性インクを前記記録媒体に付与するインク付与工程と、
前記水性インクが付与された前記記録媒体を、前記第1樹脂粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)以上、かつ前記粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)未満の温度に加熱する加熱工程と、を有し、
前記粒子の平均一次粒子径DP0(nm)が、150nm以下であり、
前記加熱工程において、前記記録媒体を加熱して前記第1樹脂粒子を融解させ、空孔を生じさせることを特徴とする水性インク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法、インクジェット記録装置、及び水性インクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商業印刷などの分野において、透明フィルム、半透明フィルム、及び着色された紙などの白色以外の記録媒体に白色の画像を記録することがある。白色の画像を記録するためのインクには、材料の安定性及びコストの観点から、酸化チタンなどの白色顔料が用いられている。
【0003】
但し、酸化チタンの比重は、白色以外の色のインクで用いられる材料に比して大きい。
そのため、溶媒との比重差も大きくなり、インク中で沈降しやすいといった課題がある。
なかでも、記録する画像の隠蔽性及び白色度を高めるべく、より粒子径の大きい酸化チタンを用いたり、酸化チタンの含有量を増加させたりすると、酸化チタンはさらに沈降しやすくなる。なお、白色度に優れた画像を記録しうる、顔料が沈降した場合であっても再分散させやすいインクとして、平均粒子径300nm以上のルチル型の酸化チタン及びウレタン樹脂を含有する白色インクが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-60513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インク中の粒子の沈降速度Vは、下記式(A)(ストークスの式)より算出することができる。
V={g(ρ-ρ)d}/18μ ・・・(A)
d:粒子径
g:重力加速度
ρ:粒子の密度
ρ:分散媒体の密度
μ:分散媒体の粘度
【0006】
ストークスの式によると、沈降速度Vは粒子径の2乗に比例して増大すること、すなわち、粒子径が大きいほど沈降しやすい粒子であることがわかる。ルチル型の酸化チタンの比重は、インクに用いられるその他の一般的な材料に比して大きく、沈降速度が速い。このため、特許文献1で提案された白色インクは、顔料として用いられる酸化チタンが比較的沈降しやすかった。
【0007】
一方、粒子径の小さい酸化チタンを含有するインクで記録した画像では、可視光は散乱せずに透過しやすくなる。このため、散乱強度が急減し、画像の隠蔽率が低下しやすくなる。すなわち、粒子の沈降速度と、記録される画像の隠蔽率は、トレードオフの関係にあるといえる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、耐沈降性に優れた水性インクを用いながらも、隠蔽性に優れた画像を記録することが可能なインクジェット記録方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、このインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置及び水性インクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明によれば、粒子及び第1樹脂粒子を含有する水性インクを用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記水性インクを前記記録媒体に付与するインク付与工程と、前記水性インクが付与された前記記録媒体を、前記第1樹脂粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)以上、かつ前記粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)未満の温度に加熱する加熱工程と、を有し、前記粒子の平均一次粒子径DP0(nm)が、150nm以下であり、前記加熱工程において、前記記録媒体を加熱して前記第1樹脂粒子を融解させ、空孔を生じさせることを特徴とするインクジェット記録方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐沈降性に優れた水性インクを用いながらも、隠蔽性に優れた画像を記録することが可能なインクジェット記録方法を提供することができる。また、本発明によれば、このインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置及び水性インクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】画像の形成過程の一例を説明する模式図である。
図2】画像の形成過程の一例を説明する模式図である。
図3】本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図4】本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性インク、水性反応液のことを、単に「インク」、「反応液」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。
【0013】
本発明者らは、耐沈降性に優れたインクを用いながらも、隠蔽性に優れた画像を記録しうるインクジェット記録方法について検討した。その結果、以下に示す(i)~(iv)の要件を満たすことによって、耐沈降性に優れたインクを用いながらも、隠蔽性に優れた画像を記録可能となることを見出し、本発明に至った。
(i)インクを記録媒体に付与するインク付与工程と、インクが付与された記録媒体を、第1樹脂粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)以上、かつ粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)未満の温度に加熱する加熱工程と、を有する。
(ii)インクが、粒子及び第1樹脂粒子を含有する。
(iii)粒子の平均一次粒子径DP0(nm)が、150nm以下である。
(iv)加熱工程において、記録媒体を加熱して第1樹脂粒子を融解させ、空孔を生じさせる。
【0014】
図1及び2は、画像の形成過程の一例を説明する模式図である。記録媒体にインクが付与されると、図1に示すように、水や水溶性有機溶剤などの揮発成分が蒸発してインクが乾燥し、インク中の粒子1及び第1樹脂粒子2が密に詰まったインク膜が形成される。その後、第1樹脂粒子2が融解する温度(第1樹脂粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)以上の温度)となるまで記録媒体を加熱すると、図2に示すように、第1樹脂粒子2の融解により生成した樹脂が粒子1同士の間の空隙に浸透する。それとともに、第1樹脂粒子2が存在していた箇所に空孔4が形成される。この際の加熱の温度は、粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)未満であるため、粒子1は融解しないと考えられる。粒子1同士の間の空隙に樹脂が浸透したことで、粒子1と樹脂の混合物であるバインダー3が形成される。ここで、粒子1の平均一次粒子径DP0(nm)は150nm以下であるため、可視光は粒子1によってほとんど散乱しない。しかし、第1樹脂粒子が融解して形成された空孔4内には低屈折率の空気が存在している。このため、空孔4の屈折率は、バインダー3の屈折率に比して相対的に低いと考えられる。このような状況の下、入射した光はバインダー3と空孔4の屈折率差に起因して散乱することができる。そのため、粒子径の大きい酸化チタンのような沈降しやすい成分を用いなくても、隠蔽性の高い画像を記録することができる。上述の通り、加熱工程により、第1樹脂粒子を融解させることが必要である。そのため、画像記録後に記録媒体の表面の溶媒(液体成分)を蒸発させる乾燥工程を行うだけの場合や、加熱工程において第1樹脂粒子の融解する温度よりも低い温度で加熱する場合には、第1樹脂粒子が溶融しないと考えられる。その結果、バインダー3と空孔4の屈折率差に起因した散乱が起こらず、隠蔽性の高い画像を記録することができない。また、加熱工程において粒子の融解する温度以上の温度で加熱すると、第1樹脂粒子だけでなく粒子も溶融してしまい、空孔が形成されない。その結果、上記の散乱が起こらず、隠蔽性の高い画像を記録することができない。
【0015】
また、ストークスの式(式(A))で示すように、粒子径が小さい粒子ほど、沈降速度は遅くなる。このため、その平均一次粒子径DP0(nm)が150nm以下である比較的小さい粒子径の粒子を用いることで、沈降速度が遅くなり、耐沈降性に優れたインクとすることができる。平均一次粒子径については、詳細は後述する。DP0(nm)が150nm超であると、可視光の散乱が起こりやすくなるため、隠蔽性が向上する一方で、ストークスの式で示すように、沈降速度が大きくなり、耐沈降性が得られない。また、粒子が大きくなると、画像の形成の際には、図1のように粒子の周囲に第1樹脂粒子が均一に分布した状態となりづらく、隠蔽性の高い画像が記録できない。
【0016】
<インクジェット記録方法、インクジェット記録装置、及び水性インク>
本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット方式の記録ヘッドから水性インクを吐出し、記録媒体に付与して画像を記録する方法である。本発明のインクジェット記録方法は、水性インクを記録媒体に付与するインク付与工程と、水性インクが付与された記録媒体を所定の温度に加熱する加熱工程と、を有する。加熱工程では、第1樹脂粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)以上、かつ粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)未満の温度に記録媒体を加熱する。水性インクは、粒子及び第1樹脂粒子を含有し、粒子の平均一次粒子径DP0(nm)は、150nm以下である。そして、加熱工程において、記録媒体を加熱して第1樹脂粒子を融解させ、空孔を生じさせる。
【0017】
本発明のインクジェット記録装置は、インクジェット方式の記録ヘッドから水性インクを吐出し、記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録方法に用いる装置であり、上記の記録方法に好適に用いられる装置である。本発明では、活性エネルギー線などの照射により画像を硬化する必要はない。
【0018】
また、本発明の水性インクは、インクジェット方式の記録ヘッドから水性インクを吐出し、記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録方法に用いられるインクである。そして、上記の記録方法に好適に用いられるインクである。
【0019】
以下、本発明のインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置(以下、単に「記録方法及び記録装置」とも記す)について詳細に説明する。
【0020】
図3は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を模式的に示す斜視図である。また、図4は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を模式的に示す側面図である。図3及び4に示す実施形態の記録装置は、インクを吐出するインクジェット方式の記録ヘッド22を備える。記録ヘッド22は、熱エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドである。熱エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドは、電気熱変換素子に電気パルスを加えることでインクに熱エネルギーを付与し、吐出口からインクを吐出させるサーマル方式の記録ヘッドである。ここでは熱エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドを例に挙げたが、力学的エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドを採用してもよい。記録ヘッドは、記録ヘッドから吐出する水性インクを加熱する機構(温調機構)を備えていてもよい。温調機構を備える場合、記録ヘッドから吐出するインクの温度は、35℃以上70℃以下とすることが好ましい。
【0021】
記録媒体の単位領域へのインクの付与を、記録ヘッドと記録媒体との複数回の相対走査に分けて行うマルチパス記録が好ましい。特に、単位領域への白インクの付与及びカラーインクの付与を、それぞれ異なる相対走査で行うことが好ましい。これにより、各インクが接触するまでの時間が長くなり、混合が抑制されやすくなる。単位領域は、1画素や1バンドなどの任意の領域として設定することができる。
【0022】
(加熱工程)
本発明の記録方法は、インクが付与された記録媒体を加熱(加熱処理)する加熱工程を有する。加熱工程では、インクが付与された記録媒体を加熱してインク中の第1樹脂粒子を融解させる。これにより、融解によって生じた空孔を含む画像を記録媒体に定着させることができる。インクが付与された記録媒体を加熱すると、水や水溶性有機溶剤などのインク中の揮発成分(溶媒)が蒸発し、インク中に分散していた固形分である粒子及び第1樹脂粒子が密に詰まったインク膜が形成される。その後、加熱された第1樹脂粒子が融解して空孔が形成されるとともに、第1樹脂粒子の融解により生成した樹脂が粒子同士の間の空隙に浸透する。これにより、粒子と樹脂の混合物であるバインダーが形成され、その内部に空孔を含む画像を記録媒体に定着させることができる。
【0023】
加熱工程では、インク中の第1樹脂粒子を融解させるべく、第1樹脂粒子のガラス転移温度又は融点以上、かつ粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)未満の温度に記録媒体を加熱する。すなわち、加熱温度Tは、第1樹脂粒子のガラス転移温度Tg又は融点T、及び、粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)に応じて適宜設定することができる。ここで、第1樹脂粒子が結晶性樹脂で形成されている場合は、Tg及びTを有するが、その場合は、Tの温度以上に加熱する。結晶性樹脂については、詳細は後述する。具体的には、加熱工程における加熱温度T(℃)は、70℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがさらに好ましく、90℃以上であることが特に好ましい。なお、加熱温度の上限は特に限定されないが、記録媒体の耐熱温度の観点から200℃以下であることが好ましい。加熱温度Tは、加熱工程中における記録媒体表面の最大温度を意味する。また、加熱手段の設定温度と読み替えてもよい。加熱温度Tは、例えば、熱電対などを記録媒体表面に接触させる接触式温度計や、非接触赤外温度計などを用いて測定することができる。なお、本発明の実施例においては、記録媒体の表面における温度を非接触赤外温度計デジタル放射温度センサーFT-H20(キーエンス製)を用いて、記録媒体の表面に対して鉛直上向きに10cmの位置から測定した。
【0024】
加熱工程を行うことで、第1樹脂粒子を融解させて、空孔を生じさせ、結果として、空孔を含む画像を記録することができる。加熱工程は、単独であってもよいし、複数であってもよい。記録媒体を加熱する手段としては、例えば、ヒータなどの公知の加温手段、ドライヤなどの送風を利用した送風手段、及びこれらを組み合わせた手段などの加熱手段を挙げることができる。加熱手段としては、上記の加温手段、送風手段、及びこれらを組み合わせた手段などを挙げることができる。加熱処理の方法としては、例えば、記録媒体の記録面(インクの付与面)とは反対側(裏面)からヒータなどで熱を与える方法、記録媒体の記録面に温風又は熱風を当てる方法、記録面又は裏面から赤外線ヒータを用いて加熱する方法などを挙げることができる。また、これらの複数を組み合わせてもよい。さらに、記録媒体の記録面又は裏面に加熱した部材を接触して加熱を行ってもよい。加熱工程の時間は、第1樹脂粒子を融解させることができれば特に限定されない。例えば、加熱工程を送風によって行う場合は、風の温度を80℃以上120℃以下とすることができる。
【0025】
図3及び4に示す記録装置では、記録ヘッド22が主走査方向Bに往復走査する位置よりも、副走査方向Aの下流側の位置に、フレーム(図示せず)に支持されたヒータ25が配置されている。インクが付与された記録媒体10をヒータ25によって加熱することができる。ヒータ25の具体例としては、シーズヒータやハロゲンヒータなどを挙げることができる。ヒータ25はヒータカバー26に覆われている。ヒータカバー26は、ヒータ25から生じた熱を記録媒体10に効率よく照射するための部材である。さらに、ヒータカバー26は、ヒータ25を保護する部材でもある。記録ヘッド22から吐出されたインクが付与された記録媒体10は、巻き取りスプール27により巻き取られ、ロール状の巻き取り媒体24を形成する。
【0026】
加熱工程に先立ち、図1のように、粒子及び第1樹脂粒子が密に詰まったインク膜を形成させる工程をさらに有することが好ましい。このような工程を設けることで、融解した第1樹脂粒子をより確実に粒子同士の間の空隙に浸透させることが可能となり、さらに容易に図2のような空孔を含む画像とすることができる。すなわち、インクジェット記録方法は、さらに、インクと反応する反応剤を含有する水性反応液を記録媒体に付与する反応液付与工程、及び、記録媒体上の液体成分を乾燥させる乾燥工程からなる群より選択される少なくとも1種の工程を有することが好ましい。また、これらの工程(反応液付与工程及び乾燥工程)を併用することがさらに好ましい。これらの工程を併用する場合は、反応液付与工程の後に乾燥工程を行うことが特に好ましい。つまり、反応液付与工程、インク付与工程、乾燥工程、及び加熱工程の順に行うことが好ましい。反応液付与と並行してインク付与を行ってもよい。反応液を記録媒体に付与すると、インク中の粒子及び第1樹脂粒子を凝集させて密に詰めることができる。反応液の詳細については後述する。記録媒体に送風する場合、乾燥効率の観点から、記録媒体の表面(記録面)に送風することが好ましい。
【0027】
乾燥工程は、記録媒体の表面の液体成分(溶媒)を乾燥させるために行うことができる。ここで、乾燥工程では、液体成分を完全に乾燥させなくてもよい。また、記録媒体上の液体成分は、上記の工程を経なくても徐々に乾燥するが、乾燥工程を行うことで、乾燥が促進され、効率よく図1の状態にすることができる。乾燥工程は、単独であってもよいし、複数であってもよい。乾燥工程では、上記の加熱工程と同様の加熱手段を用いることができる。なかでも、液体成分を効率よく乾燥させる観点から、送風することが好ましい。
【0028】
乾燥工程は、記録媒体の表面の溶媒が残っており、十分に増粘していない状態で行われるため、図1の状態になりづらくなることを抑制する観点から、記録媒体にかかる熱エネルギーを大きくしすぎないことが好ましい。具体的には、加熱温度や加熱時間を大きくしすぎないことが好ましい。例えば、送風によって乾燥する場合は、搬送速度や環境温度を踏まえ、記録媒体が所望の温度となるように送風手段(温風など)の温度を設定することができる。具体的には、送風手段(温風など)により送風される風の温度を、60℃以下にすることが好ましく、30℃以下にすることがさらに好ましい。風の温度は常温(25℃)であってもよい。ここで、図1のように、第1樹脂粒子を融解させずに液体成分を減少させて、粒子及び第1樹脂粒子が密となった状態とするためには、第1樹脂粒子のTg又はTよりも低い温度で加熱することが好ましい。また、風速は、1m/s以上100m/s以下とすることが好ましい。温風などの風の温度は、Kタイプの熱電対温度計を使用して測定することができる。具体的な測定機としては、例えば、商品名「AD-5605H」(エイ・アンド・デイ製)などを挙げることができる。必要に応じて、記録媒体の裏面に風を当ててもよいが、記録媒体の表面(インクを付与した面)に風を当てることが好ましい。送風する装置から記録媒体までの距離は、5mm以上50mm以下であることが好ましい。
【0029】
(記録媒体)
画像を記録する記録媒体の種類は特に限定されず、どのような記録媒体を用いてもよい。なかでも、隠蔽性に優れた白色などの画像を記録しうるインクを用いることから、透明フィルム、半透明フィルム、及び着色された紙などの白色以外の記録媒体を用いることが好ましい。つまり、記録媒体としては、非吸収性の記録媒体を用いることが好ましい。ここで、非吸収性の記録媒体(低~非吸収性の記録媒体)は、ブリストー(Bristow)法において、接触開始から30msec1/2までの水吸収量が0mL/m以上10mL/m以下の記録媒体である。なお、ブリストー(Bristow)法は、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.51の「紙及び板紙の液体吸収性試験方法」に記載されている。無機粒子で形成されたコート層(インク受容層)を有するインクジェット記録用の記録媒体(光沢紙、マット紙など)や、コート層を有しない普通紙は、上記水吸収量が10mL/mを超える「吸収性の記録媒体」である。
【0030】
低~非吸収性の記録媒体としては、プラスチックフィルム;基材の記録面にプラスチックフィルムが接着された記録媒体;セルロースパルプを含有する基材の記録面に樹脂コート層が設けられた記録媒体;などを用いることができる。これらのなかでも、プラスチックフィルムが好ましく、また、セルロースパルプを含有する基材の記録面に樹脂コート層が設けられた記録媒体も好ましい。なお、本明細書における記録媒体とは、転写体ではなく、記録物としての画像が記録される対象の記録媒体を意味する。
【0031】
(水性インク)
本発明の記録方法に用いるインクは、粒子及び第1樹脂粒子を含有するインクジェット用の水性インクである。なかでも、白色インクであることが好ましい。白色インクには、インクの状態で白色を呈していなくとも、白色の画像を記録(形成)可能であるものも含まれる。白色とは、明度(L)及び色度(a、b)が、それぞれ、70≦L≦100、-4.5≦a≦2、及び-6≦b≦2.5の範囲内であるものを意味する。以下、インクを構成する成分などについて詳細に説明する。
【0032】
[粒子]
インクは、粒子を含有する。この粒子は、色材であってもよく、樹脂粒子のように色を呈しないものであってもよい。なかでも、白色の画像を記録することから、無色又は白色の粒子を用いることが好ましい。インク中の粒子の含有量(体積%)は、インク全体積を基準として、1.5体積%以上であることが好ましい。粒子の含有量が1.5体積%未満であると、後述する第1樹脂粒子が融解した際に、浸透するために十分な空隙が形成されず、画像の隠蔽性が十分に得られない場合がある。インク中の粒子の含有量は、5.0体積%以下であることが好ましい。
【0033】
粒子は、通常、2以上の一次粒子が凝集した二次凝集体の状態でインク中に分散している。インクに含有させる粒子の平均一次粒子径DP0(nm)は、150nm以下、好ましくは50nm以下である。粒子の平均一次粒子径DP0(nm)の下限については特に限定されないが、5nm以上であることが好ましい。粒子の一次粒子の粒子径は、走査型電子顕微鏡を使用して粒子を観察することによって測定することができる。粒子の平均一次粒子径は、複数の一次粒子(例えば、100個)の粒子径の平均値として算出することができる。
【0034】
粒子の体積基準の累積50%粒子径D(nm)は、150nm以下であることが好ましく、5nm以上100nm以下であることがさらに好ましい。体積基準の累積50%粒子径が上記の範囲内にある粒子を用いることで、光の散乱を抑制してより透過させることができるとともに、沈降速度をさらに低下させることができる。
【0035】
本明細書における「体積基準の累積50%粒子径(D50)」は、粒子径積算曲線において、測定された粒子の総体積を基準とし、小粒子径側から積算して50%となる粒子の直径であり、動的光散乱法による粒度分布測定装置を使用して測定することができる。測定条件としては、例えば、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒、形状:非球形、などを挙げることができる。また、粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計(例えば、商品名「UPA-EX150」、日機装製)などを使用することができる。勿論、使用する粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られない。
【0036】
粒子は、第1樹脂粒子を融解させる加熱工程で融解しないことを要する。具体的には、粒子のガラス転移温度Tg又は融点Tは、加熱工程における記録媒体の温度以上であり、好ましくは200℃以上である。粒子は、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、カオリン、クレー、及び第2樹脂粒子からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。第2樹脂粒子の詳細については後述する。
【0037】
屈折率が高いバインダーを形成する観点から、屈折率が比較的高い酸化チタンを粒子として用いることが好ましい。酸化チタンの屈折率は、2.1以上であることが好ましく、2.5以上2.8以下であることがさらに好ましい。酸化チタンの表面は、アルミナやジルコニアで被覆されていてもよい。また、酸化チタンの表面は、シリカ、酸化亜鉛、及びジルコニアなどの無機酸化物;ポリオールなどの有機物;で被覆されていてもよい。その表面が被覆された酸化チタンを用いることで、光触媒活性能の抑制や分散性の向上が期待される。酸化チタンには、ルチル型、アナターゼ型、及びブルッカイト型の3つの結晶型が存在する。なかでも、光触媒活性能が低いルチル型の酸化チタンを用いることが好ましい。酸化チタンの工業的製造方法としては、硫酸法及び塩素法を挙げることができる。いずれの製造方法によって製造された酸化チタンであっても用いることができる。
【0038】
インク中の酸化チタンの含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、5.0質量%以上45.0質量%以下であることが好ましく、7.0質量%以上38.0質量%以下であることがさらに好ましい。インクに含有させる酸化チタンの平均一次粒子径DP0(nm)は、50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがさらに好ましい。また、酸化チタンの体積基準の累積50%粒子径D(nm)は、100nm以下であることが好ましく、5nm以上50nm以下であることがさらに好ましい。
【0039】
炭酸カルシウムの粒子形状としては、立方状及び紡錘状がある。なかでも、形状が均一な立方状の炭酸カルシウムを用いることが好ましい。リン酸カルシウムとしては、第一リン酸カルシウム(Ca(HPO)、第二リン酸カルシウム(CaHPO)、及び第三リン酸カルシウム(Ca(PO))などを挙げることができる。なかでも、アパタイト型のリン酸カルシウムが好ましく、ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO)(OH))がさらに好ましい。
【0040】
硫酸バリウムは、簸性硫酸バリウム及び沈降性硫酸バリウムに大別される。沈降性硫酸バリウムは、合成条件によって粒子の大きさを制御することができ、適切な粒子径の硫酸バリウムを得ることができる。酸化ジルコニウムは、ジルコニアとも呼ばれ、靭性が高いセラミックスとして知られている。純粋なジルコニアは、温度変化によって結晶性構造が変化し、体積変化も伴うために劣化しやすい。このため、安定化剤を添加して体積変化を抑えた安定化ジルコニアを用いることができる。
【0041】
二酸化ケイ素としては、例えば、Stober法で合成したものを用いることができる。Stober法は、シリカ源であるアルコキシシランの加水分解・重縮合反応を、水・エタノール・アンモニア水溶液中で進行させる方法である。反応物の各濃度を変化させることで、得られる球状の粒子の粒子径を制御することが可能である。
【0042】
カオリンは、複数の無機成分を含有する粘土鉱物である。具体的には、カオリナイト、加水ハロイサイト、及びハロイサイトの結晶構造からなる粘土である。また、クレーは、カオリンの成分に加えて、イルミナイト、モンモリロナイト、及びバーミキュライトなどを含む。上記の粒子を用いる際には、白色インクとする観点から、白色度の高い粒子を用いることが好ましい。
【0043】
[樹脂粒子]
インクは、第1樹脂粒子を含有する。記録媒体に付与されたインク中の溶媒が揮発することで、粒子及び第1樹脂粒子が密着した状態となる。そして、加熱工程によって第1樹脂粒子が融解し、空孔が生じる。インク中の第1樹脂粒子の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、2.5質量%以上17.0質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以上14.0質量%以下であることがさらに好ましい。また、インク中の第1樹脂粒子の含有量(体積%)は、インク全体積を基準として、2.5体積%以上17.0体積%以下であることが好ましく、2.5体積%以上14.0体積%以下であることがさらに好ましい。
【0044】
加熱工程で形成される空孔の大きさは、第1樹脂粒子の大きさ(粒子径)と概ね一致する。そして、形成される空孔の大きさは、光の散乱効率に大きく影響する。このため、光の散乱効率をさらに高める観点から、第1樹脂粒子の体積基準の累積50%粒子径Dは、100nm以上400nm以下であることが好ましく、150nm以上250nm以下であることがさらに好ましい。
【0045】
第1樹脂粒子が加熱工程で融解しているかどうかは、例えば、加熱工程前後の画像が記録された記録媒体を切断し、走査型電子顕微鏡などで観察することで容易に判断することができる。また、加熱工程前の画像中の第1樹脂粒子の粒子径を測定し、加熱工程後の画像の空孔のサイズと第1樹脂粒子の粒子径との差が小さい(例えば、10%以内)場合は、第1樹脂粒子が融解して空孔が生じたと判断することができる。
【0046】
高屈折率のバインダーを形成する観点から、その屈折率がより高い第1樹脂粒子を用いることが好ましい。具体的には、第1樹脂粒子の屈折率は、1.5以上であることが好ましく、1.6以上2.5以下であることがさらに好ましい。
【0047】
インク中、第1樹脂粒子の含有量(体積%)は、粒子の含有量(体積%)に対する体積比率で、1.3倍以上5.0倍以下であることが好ましく、2.0倍以上4.0倍以下であることがさらに好ましい。上記の体積比率が5.0倍超であると、第1樹脂粒子同士で融着する量が増加しやすくなり、所望とする大きさの空孔を形成することが難しくなる。その結果、画像の隠蔽性が十分に得られない場合がある。また、融解した第1樹脂粒子と粒子で構成されるバインダーの屈折率が小さくなり、光の散乱効率及び隠蔽率が低下しやすくなることがある。一方、上記の質量比率が1.3倍未満であると、形成される空孔の量が減少し、画像の隠蔽率が十分に得られない場合がある。
【0048】
粒子が酸化チタンである場合、インク中の第1樹脂粒子の含有量(質量%)は、酸化チタンの含有量(質量%)に対する質量比率で、0.30倍以上1.0倍以下であることが好ましく、0.40倍以上0.60倍以下であることがさらに好ましい。
【0049】
インク中の第1樹脂粒子の含有量(体積%)は、第1樹脂粒子がインク中で占有する体積に相当する。このため、第1樹脂粒子が細孔や内部空隙を有する場合には、第1樹脂粒子がインク中で占有する体積は、細孔や内部空隙を含めた値となる。第1樹脂粒子はそのまま空孔に置き換わるため、第1樹脂粒子の見かけ密度は、0.8g/cm以上であることが好ましい。見かけ密度が0.8g/cm未満であると、粒子間の空隙を埋めるのに十分な樹脂が生成しにくく、バインダーの屈折率が小さくなり、光の散乱効率及び隠蔽率が不十分になる場合がある。また、バインダー中の樹脂の量が減少してしまい、画像の強度が十分に得られない場合がある。
【0050】
第1樹脂粒子の見かけ密度は、例えば、以下の手順にしたがって測定することができる。まず、25℃の条件で、容量100cmのメスフラスコに約30cmの第1樹脂粒子を充填し、充填した第1樹脂粒子の質量を秤量する。次に、第1樹脂粒子が充填されたメスフラスコの標線までイソプロパノールを満たす。メスフラスコに加えたイソプロパノールの質量を精確に秤量し、下記式(X)を用いて、第1樹脂粒子の見かけ密度(g/cm)を算出することができる。後述する実施例においては、上記の方法で第1樹脂粒子の見かけ密度を測定及び算出した。また、JIS Z 8807に準拠したルシャテリエ比重瓶法を用いて測定することもできる。
第1樹脂粒子の見かけ密度(g/cm)=A/(100-B)/C ・・・(X)
A:第1樹脂粒子の質量(g)
B:イソプロパノールの質量(g)
C:25℃におけるイソプロパノールの比重
【0051】
第1樹脂粒子を形成する樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、及びポリエステル系樹脂などを挙げることができる。なかでも、インクジェット特性の観点から、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びウレタン系樹脂が好ましい。上記以外の樹脂で形成された第1樹脂粒子を用いると、吐出が不安定になりやすく、結果として画像の隠蔽性が十分に得られない場合がある。なかでも、アクリル系樹脂が好ましく、スチレンに由来するユニットを有するアクリル系樹脂がさらに好ましい。樹脂粒子を構成する樹脂の詳細については後述する。
【0052】
加熱工程を実施する前に第1樹脂粒子が融解してしまうと、粒子と樹脂の混合が速やかに進行しない、又は第1樹脂粒子同士が融着してしまい、所望とする空孔を形成することがやや困難になることがある。所望とする空孔が形成されない場合には、光の散乱効率が低下し、隠蔽率が低下しやすくなることがある。したがって、常温(25℃)条件下では実質的に融着しない樹脂粒子を用いることが好ましい。具体的には、(i)第1樹脂粒子のガラス転移温度Tg(℃)が25℃以上である;又は(ii)第1樹脂粒子の融点T(℃)が、25℃以上であり、第1樹脂粒子を構成する樹脂が、結晶性樹脂である;ことが好ましい。
【0053】
第1樹脂粒子のTg及びTの上限は特に制限されないが、いずれも100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがさらに好ましい。第1樹脂粒子のTg及びTは、示差走査熱量計(DSC)を使用して測定することができる。
【0054】
本明細書における「樹脂粒子」とは、インク中の水性媒体に溶解しない状態で存在する樹脂を意味し、より具体的には、動的光散乱法により粒子径を測定可能な粒子を形成した状態で水性媒体中に存在しうる樹脂を意味する。これに対して、「水溶性樹脂」とは、インク中の水性媒体に溶解した状態で存在する樹脂を意味する。
【0055】
ある樹脂が「樹脂粒子」に該当するか否かについては、以下に示す方法にしたがって判断することができる。まず、判断対象の樹脂を含む液体を用意し、樹脂の含有量が約1.0%となるように純水で希釈して試料を調製する。そして、試料中の樹脂の粒子径を動的光散乱法により測定した場合に、粒子径を有する粒子が測定されれば、その樹脂は「樹脂粒子」である(すなわち「水分散性樹脂」である)と判断する。一方、粒子径を有する粒子が測定されなければ、その樹脂は「樹脂粒子」ではない(すなわち「水溶性樹脂」である)と判断する。この際の測定条件は、例えば、SetZero:30秒、測定回数:10回、測定時間:120秒、形状:真球形、屈折率:1.5、密度:1.0のようにすることができる。
【0056】
粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計(例えば、商品名「UPA-EX150」、日機装製)などを使用することができる。勿論、使用する粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。
【0057】
また、樹脂粒子を構成する樹脂が、非晶性樹脂か結晶性樹脂であるかは示差走査熱量計で結晶化度を測定する事で判断できる。示差走査熱量計で融解ピークが観察されない場合は非晶性樹脂と判断できる。一方で、融解ピークが観察された場合は、結晶性樹脂であると判断できる。また、結晶性樹脂である場合は、ピーク面積より融解熱を求め、理論計算から求められた結晶化度が100%である完全結晶体の融解熱との比率から結晶化度を求めることもできる。
【0058】
第1樹脂粒子を構成する樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましい。第1樹脂粒子を構成する樹脂の重量平均分子量は、1,000以上3,000,000以下であることが好ましく、100,000以上3,000,000以下であることがさらに好ましい。第1樹脂粒子は色材を内包するものである必要はない。
【0059】
前述の通り、第1樹脂粒子は加熱によって融解し、生成した樹脂は粒子同士の間の空隙に入り込む。その結果、空孔が生じる。このため、第1樹脂粒子の粘弾性体としての性質、特に粘性に関係する損失弾率は、空孔の生じやすさに影響を与える。融解により生成した樹脂が粒子同士の間の空隙に入り込むことにより空孔が生ずる。このため、第1樹脂粒子の粘弾性体としての性質、特に粘性と関係する損失弾率は、空隙への入りこみやすさ、つまり所望の空孔の生じやすさに影響する。そこで、高温における樹脂の損失粘弾率が重要となる。この損失弾性率は、温度によって変化する。例えば、第1樹脂粒子の80℃における損失弾性率は、1.0×10Pa以下であることが好ましく、3.3×10Pa以下であることがさらに好ましい。
【0060】
粒子としては、そのガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)が、第1樹脂粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)よりも高い、前述の第2樹脂粒子を用いることができる。第2樹脂粒子を構成する樹脂としては、上述の第1樹脂粒子を構成する樹脂と同様のものを用いることができる。なかでも、第2樹脂粒子を構成する樹脂は、架橋した樹脂であることが好ましく、架橋したアクリル系樹脂であることがさらに好ましい。
【0061】
[樹脂]
インクには、第1樹脂粒子以外の樹脂(その他の樹脂)をさらに含有させることができる。インク中の樹脂(その他の樹脂)の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0062】
樹脂は、(i)顔料の分散状態を安定化させるため、すなわち、樹脂分散剤やその補助としてインクに添加することができる。また、(ii)記録される画像の各種特性を向上させるためにインクに添加することができる。樹脂の形態としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、及びこれらの組み合わせなどを挙げることができる。また、樹脂は、水性媒体に溶解しうる水溶性樹脂であることが好ましい。
【0063】
〔樹脂の組成〕
樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂などを挙げることができる。なかでも、アクリル系樹脂やウレタン樹脂が好ましく、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリレートに由来するユニットで構成されるアクリル系樹脂がさらに好ましい。
【0064】
アクリル系樹脂としては、親水性ユニット及び疎水性ユニットを構成ユニットとして有するものが好ましい。なかでも、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、芳香環を有するモノマー、及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーからなる群より選択される少なくとも1種に由来する疎水性ユニットと、を有する樹脂が好ましい。特に、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、スチレン、及びα-メチルスチレンからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーに由来する疎水性ユニットとを有する樹脂が好ましい。これらの樹脂は、顔料との相互作用が生じやすいため、顔料を分散させるための樹脂分散剤として好適に利用することができる。
【0065】
親水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有するユニットである。親水性ユニットは、例えば、親水性基を有する親水性モノマーを重合することで形成することができる。親水性基を有する親水性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボン酸基を有する酸性モノマー、これらの酸性モノマーの無水物や塩などのアニオン性モノマーなどを挙げることができる。酸性モノマーの塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。疎水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有しないユニットである。疎水性ユニットは、例えば、アニオン性基などの親水性基を有しない、疎水性モノマーを重合することで形成することができる。疎水性モノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの芳香環を有するモノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーなどを挙げることができる。
【0066】
ウレタン系樹脂は、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得ることができる。また、鎖延長剤をさらに反応させたものであってもよい。オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンなどを挙げることができる。
【0067】
ポリエステル系樹脂は、通常、多価アルコールに由来するユニット、及び多価カルボン酸に由来するユニットで構成される。反応によりポリエステル系樹脂を構成する、多価アルコールに由来するユニットとなる多価アルコールとしては、2乃至4価の多価アルコールを挙げることができる。多価アルコールとしては、脂肪族基を有する多価アルコール類、芳香族基を有する多価アルコール類、及び糖アルコール類などを挙げることができる。
多価アルコールとしては、エチレングリコール(1,2-エタンジオール)、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ベンゼンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)などの2価アルコール類、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール類;ペンタエリスリトールなどの4価アルコール類などを挙げることができる。また、多価アルコールとしては、オリゴマー(分子量1,000以下であるような低分子の重合体)を用いることもできる。ポリエステル樹脂の重量平均分子量の調整が容易であることから、2価又は3価の多価アルコール類を用いることが好ましい。
【0068】
反応によりポリエステル系樹脂を構成する、多価カルボン酸に由来するユニットとなる多価カルボン酸としては、2乃至4価の多価カルボン酸を挙げることができる。多価カルボン酸の構造としては、脂肪族基を有する多価カルボン酸類、芳香族基を有する多価カルボン酸類、含窒素多価カルボン酸類などを挙げることができる。多価カルボン酸としては、グルタル酸、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などの2価カルボン酸類;トリメリット酸などの3価カルボン酸類;エチレンジアミン四酢酸などの4価カルボン酸類などを挙げることができる。また、多価カルボン酸としては、オリゴマー(分子量1,000以下であるような低分子の重合体)を用いることもできる。ポリエステル樹脂の重量平均分子量や酸価の調整が容易であることから、2価又は3価の多価カルボン酸類を用いることが好ましい。
【0069】
〔樹脂の性状〕
水溶性樹脂の酸価は、100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましい。水溶性樹脂の重量平均分子量は、3,000以上15,000以下であることが好ましい。
【0070】
[水性媒体]
本発明の記録方法で用いるインクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性のインクである。インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。
【0071】
[その他の成分]
インクには、さらに、尿素やその誘導体、トリメチロールプロパン、及びトリメチロールエタンなどの25℃で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。インク中の水溶性有機化合物の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。また、インクには、上記成分以外にも必要に応じて、各種その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤などの種々の添加剤を挙げることができる。但し、インクは、反応液に含有させる反応剤を含有しないことが好ましい。
【0072】
[インクの物性]
インクは、インクジェット方式に適用する水性インクである。したがって、信頼性の観点から、その物性値を適切に制御することが好ましい。具体的には、25℃におけるインクの表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。また、25℃におけるインクの粘度は、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましい。25℃におけるインクのpHは、7.0以上9.5以下であることが好ましく、8.0以上9.5以下であることがさらに好ましい。
【0073】
(反応液)
本発明の記録方法は、水性インクと反応する反応剤を含有する水性反応液を記録媒体に付与する反応液付与工程を有することが好ましい。なかでも、インク付与工程の前に、反応液付与工程を有する、又は、インク付与工程と反応液付与工程とを並行して行うことが好ましい。以下、反応液に用いる各成分などについて詳細に説明する。
【0074】
[反応剤]
反応液は、インクと接触することでインクと反応し、インク中の成分(樹脂、及び自己分散顔料などのアニオン性基を有する成分)を凝集させるものであり、反応剤を含有する。反応剤としては、例えば、有機酸、多価金属塩、及びカチオン性樹脂などを挙げることができる。
【0075】
多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+、及びZn2+などの2価の金属イオンや、Fe3+、Cr3+、Y3+、及びAl3+などの3価の金属イオンを挙げることができる。反応液に多価金属イオンを含有させるためには、多価金属イオンとアニオンとが結合して構成される多価金属塩(水和物であってもよい)を用いることができる。アニオンとしては、例えば、Cl、Br、I、ClO、ClO 、ClO 、ClO 、NO 、NO 、SO 2-、CO 2-、HCO 、PO 3-、HPO 2-、及びHPO などの無機アニオン;HCOO、(COO、COOH(COO)、CHCOO、CCOO、CHCH(OH)COO、C(COO、CCOO、C(COO、及びCHSO などの有機アニオンを挙げることができる。反応剤として多価金属イオンを用いる場合、反応液中の多価金属塩換算の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、1.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましい。本明細書における、多価金属塩が水和物である場合の反応液中の「多価金属塩の含有量(質量%)」は、水和物としての水を除外した「多価金属塩の無水物の含有量(質量%)」を意味する。
【0076】
有機酸を含有する反応液は、酸性領域(pH7.0未満、好ましくはpH2.0~5.0)に緩衝能を有することによって、インク中に存在する成分のアニオン性基を効率よく酸型にして凝集させるものである。有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピコリン酸、ニコチン酸、チオフェンカルボン酸、レブリン酸、クマリン酸などのモノカルボン酸及びその塩;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、セバシン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸などのジカルボン酸、及びその塩や水素塩;クエン酸、トリメリット酸などのトリカルボン酸及びその塩や水素塩;ピロメリット酸などのテトラカルボン酸及びその塩や水素塩などを挙げることができる。反応剤として有機酸を用いる場合、反応液中の有機酸の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、1.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
【0077】
カチオン性樹脂としては、例えば、1~3級アミンの構造を有する樹脂、4級アンモニウム塩の構造を有する樹脂などを挙げることができる。具体的には、ビニルアミン、アリルアミン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、エチレンイミン、グアニジン、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルアミン・エピクロロヒドリン縮合体などの構造を有する樹脂を挙げることができる。反応液中での溶解性を高めるために、カチオン性樹脂と酸性化合物とを併用したり、カチオン性樹脂の4級化処理を施したりすることもできる。反応剤としてカチオン性樹脂を用いる場合、反応液中のカチオン性樹脂の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
【0078】
[水性媒体]
反応液は、水性媒体として少なくとも水を含有する水性の反応液である。反応液に用いる水性媒体には、インクに含有させることが可能な前述の水溶性有機溶剤を含有させることができる。
【0079】
[その他の成分]
反応液は、必要に応じて、各種その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、インクに含有させることが可能な前述のその他の成分と同様のものを挙げることができる。
【0080】
[反応液の物性]
本発明の記録方法で好適に用いることができる反応液は、インクジェット方式に適用する水性の反応液である。したがって、信頼性の観点から、その物性値を適切に制御することが好ましい。具体的には、25℃における反応液の表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。また、25℃における反応液の粘度は、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましい。25℃における反応液のpHは、5.0以上9.5以下であることが好ましく、6.0以上9.0以下であることがさらに好ましい。
【実施例0081】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。以下、粒子の分散液を顔料分散液とも記載する。
【0082】
<物性値の測定>
(粒子の平均一次粒子径、体積基準の累積50%粒子径)
走査型電子顕微鏡(商品名「S-4700」、日立ハイテク製)を使用し、倍率10万倍で試料を撮影した。そして、一次粒子に外接する円の直径を100個測定し、その平均値を算出した。算出した平均値を粒子の平均一次粒子径DP0とした。また、動的光散乱法による粒子径測定装置(商品名「UPA-EX150」、日機装製)を使用して、粒子の体積基準の累積50%粒子径Dを測定した。樹脂粒子の体積基準の累積50%粒子径Dについても、上記の粒子径測定装置を使用して測定した。
【0083】
(樹脂粒子のガラス転移温度、融点)
示差走査熱量計(DSC)を使用して樹脂粒子のガラス転移温度Tg及び融点Tを測定した。具体的には、樹脂粒子を含む液体を60℃で乾固させて得た樹脂粒子2mgをアルミ容器に入れて封管し、測定用の試料を用意した。用意した試料につき、示差走査熱量計(商品名「DSC-2500」、TA instruments製)を使用し、以下に示す温度プログラムにしたがって熱分析した。本明細書における樹脂粒子のガラス転移温度は、以下のように定義される。すなわち、以下の温度プログラム(3)の昇温曲線(横軸:温度、縦軸:熱量)における、低温側の曲線中の2点を通って高温側まで延長した直線と、曲線中の階段状の変化部分の勾配が最大になる点で引いた接線との交点における温度を求める。このようにして求めた温度を「樹脂粒子のガラス転移温度Tg」とした。また、結晶性樹脂については、上記の昇温曲線の吸熱ピークのピークトップを「樹脂粒子の融点T」とした。
[温度プログラム]:
(1)20℃から200℃まで10℃/分で昇温
(2)200℃から-50℃まで5℃/分で降温
(3)-50℃から200℃まで10℃/分で昇温
【0084】
(樹脂粒子の損失弾性率)
以下に示す方法にしたがって樹脂粒子の損失弾性率を測定した。フッ素樹脂製の板に樹脂粒子の水分散液を約10g滴下し、真空乾燥器(商品名「ADP300」、ヤマト科学製)内に載置した。80℃で30分間減圧乾燥し、測定用の試料を用意した。粘弾性測定装置(商品名「Rheogel-E4000」、ユービーエム製)を使用して、昇温させながら用意した試料を圧縮し、損失弾性率を測定した。測定条件は、測定治具:圧縮治具φ20、歪み波形:正弦波、加振状態:連続加振、基本周波数:1Hz、歪み制御:3μmで一定、開始温度:-20℃、ステップ温度:2℃、終了温度:80℃、昇温速度:5℃/分、とした。
【0085】
(粒子の密度)
JIS Z 8807に準拠したゲーリュサック型比重瓶(ピクノメータ)法により、粒子の密度を測定した。なお、樹脂粒子についても同様の方法で密度を測定した。
【0086】
<粒子(顔料分散液)の準備>
表1に示す種類の粒子(粒子1~14)を準備するとともに、準備した各粒子を用いて顔料分散液1~14を調製した。
【0087】
粒子1~3、7、及び10については、適量のイオン交換水を添加する又は液体成分を蒸発させることで、粒子の含有量が30.0%となるように調整し、顔料分散液1~3、7、及び10を得た。粒子4~6、8、及び9については、各粒子10.0部、アクリル系分散剤(商品名「DISPERBYK-154」、BYK製)0.8部、及び0.1mmジルコニアビーズ100部を混合し、ビーズミルを用いて6時間分散処理した。ジルコニアビーズをろ別し、必要に応じて適量のイオン交換水を添加して、顔料分散液4~6、8、及び9を得た。
【0088】
エタノール75.0g、メタノール25.0g、及びイオン交換水18.0gの混合溶媒にテトラエチルオルトシリケート6.3gを溶解させて溶液を得た。得られた溶液に28%アンモニア水2.2gを添加した後、25℃で24時間撹拌して、顔料分散液11を得た。また、表1中のD(nm)となるように、分散処理の時間を調整したこと以外は、顔料分散液4の場合と同様にして、顔料分散液12を得た。
【0089】
各酸化チタン(粒子13及び14)30.0部、水酸化カリウム0.45部、イオン交換水69.55部、及び0.1mmジルコニアビーズ100部を混合し、ビーズミルを用いて分散処理した。ジルコニアビーズをろ別して、必要に応じて適量のイオン交換水を添加して、顔料分散液13及び14を得た。なお、表1中のD(nm)となるように、分散処理の時間を適宜調整した。
【0090】
顔料分散液は、いずれも、粒子の含有量が30.0%となるように適宜調整した。表1中、粒子4、及び12は、立方状の炭酸カルシウムである。粒子5は、リン酸カルシウムの一種のハイドロキシアパタイトである。粒子7は、安定化剤が添加された安定化ジルコニアである。表1中、各酸化チタンの屈折率は、2.5以上2.8以下であった。また、酸化チタン以外の粒子の屈折率は、1.5以上2.2以下であった。
【0091】
【0092】
<樹脂粒子の準備>
表2に示す種類の樹脂粒子の水分散液を準備した。なお、表2中、各樹脂粒子の水分散液中の樹脂粒子の含有量を、樹脂粒子の含有量(%)の欄に記載した。また、樹脂粒子2の水分散液及び樹脂粒子3の水分散液は、以下に示す方法にしたがってそれぞれ調製した。
【0093】
(樹脂粒子2の水分散液)
セバシン酸300g、及び1,6-ヘキサンジオール170gを混合し、撹拌しながら1時間かけて190℃まで昇温させた。オルトチタン酸テトラブチル0.01g添加した後、生成する水を留去しながら、6時間かけて内温を240℃まで昇温させて重合し、結晶性のポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の融点Tは75℃であった。窒素導入管、撹拌器、及び熱電対を装備した300mLの四つ口フラスコに得られたポリエステル樹脂50gを入れた。メチルエチルケトン50gを添加した後、窒素気流下で40℃に加温してポリエステル樹脂を溶解させた。トリエチルアミン1.2gをさらに添加して1時間撹拌した後、イオン交換水106gを7.5g/minの速度で滴下し、30分間撹拌した。次いで、メチルエチルケトンを減圧除去して、樹脂粒子の含有量が30.0%である樹脂粒子2の水分散液を得た。上記の装置で測定した樹脂粒子2の体積基準の累積50%粒子径Dは190nmであった。
【0094】
(樹脂粒子3の水分散液)
セバシン酸300g、及び1,6-ヘキサンジオール170gを混合し、撹拌しながら1時間かけて190℃まで昇温させた。オルトチタン酸テトラブチル0.01gを添加した後、生成する水を留去しながら、6時間かけて内温を240℃まで昇温させて重合し、結晶性のポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の融点Tは75℃であった。窒素導入管、撹拌器、及び熱電対を装備した300mLの四つ口フラスコに得られたポリエステル樹脂50gを入れた。メチルエチルケトン50gを添加した後、窒素気流下で40℃に加温してポリエステル樹脂を溶解させた。トリエチルアミン1.0gをさらに添加して1時間撹拌した後、イオン交換水106gを7.5g/minの速度で滴下し、30分間撹拌した。次いで、メチルエチルケトンを減圧除去して、樹脂粒子の含有量が30.0%である樹脂粒子3の水分散液を得た。上記の装置で測定した樹脂粒子3の体積基準の累積50%粒子径Dは230nmであった。
【0095】
【0096】
(樹脂粒子15~17)
以下に示す樹脂粒子15~17を用意した。樹脂粒子15~17の密度及び見かけ密度は、いずれも1.0g/cmであった。
・樹脂粒子15:スチレンアクリル樹脂(商品名「ビニブラン2685」、日信化学工業製、非晶性、平均粒子径210nm、Tg50℃、樹脂粒子の含有量30.0%)
・樹脂粒子16:スチレンアクリル樹脂(商品名「ジョンクリル450」、ジョンソンポリマー製、非晶性、平均粒子径90nm、Tg16℃、樹脂粒子の含有量42.0%)
・樹脂粒子17:スチレンアクリル樹脂(商品名「WEM-3000」、大成ファインケミカル製、非晶性、平均粒子径300nm、Tg98℃、樹脂粒子の含有量33.0%)
【0097】
<エマルションの調製>
(エマルション1)
フッ素系のノニオン性界面活性剤(商品名「Capstone FS-31」、デュポン製)0.3部をイオン交換水10.0部に溶解させた。ペルフルオロヘキサン4.0部を添加した後、デューティサイクル50%の超音波分散機を使用して4分間分散処理して、O/W型のエマルションであるエマルション1を得た。
【0098】
<インクの調製>
表3-1~3-3の上段に示す各成分(単位:%)を混合した。水酸化カリウムを添加してpHを8~9の範囲内に調整した。ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過して、各インクを調製した。表3-1~3-3中、「アセチレノールE100」は、川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤(アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物)の商品名である。調製したインクの特性を表3-1~3-3の下段に示す。なお、表3-3に記載の通り、インク38の調製の際には、樹脂粒子16及び17をそれぞれ、8.3部及び10.7部用いた。
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
<反応液の調製>
(反応液1)
硫酸マグネシウム・7水和物10.0部、グリセリン2.0部、エチレングリコール7.0部、ノニオン性界面活性剤(商品名「アセチレノールE100」、川研ファインケミカル製)0.5部、及びイオン交換水を混合して反応液1を得た。なお、イオン交換水の量は、成分の合計が100.0部となるように適宜調整した。
【0103】
(反応液2)
カチオン性樹脂37.0部、グリセリン2.0部、エチレングリコール7.0部、アセチレノールE100 0.5部、及びイオン交換水53.5部を混合して、反応液2を得た。カチオン性樹脂としては、商品名「ユニセンスFPA100L」(センカ製、カチオン性樹脂の含有量:27.0%)を用いた。
【0104】
(反応液3)
コハク酸10.0部、グリセリン2.0部、エチレングリコール7.0部、アセチレノールE100 0.5部、及びイオン交換水81.5部を混合して、反応液3を得た。
【0105】
<評価>
上記で得られた各インクについて、以下の項目の評価を行った。本発明においては、以下に示す各項目の評価基準で、「AA」、「A」、及び「B」を許容できるレベルとし、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表4の右側に示す。
【0106】
(評価用画像の記録)
熱エネルギーの作用により液体を吐出する記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置(商品名「PIXUS PRO-10S」、キヤノン製)を用意した。表4の左側に示す種類のインクをインクカートリッジに充填し、用意したインクジェット記録装置にセットした。本実施例においては、解像度600dpi×600dpiで、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、1滴当たりの質量が3.5ngであるインク滴を8滴付与する条件で記録したベタ画像の記録デューティを100%と定義する。このインクジェット記録装置を使用し、記録ヘッドの長手方向の下半分の吐出口からインクを吐出して、記録デューティ400%の画像(50mm×50mm)を記録媒体に記録した。記録媒体としては、PETフィルム(商品名「LLRPCF1372」、桜井製、ブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水の吸収量は0mL/m以上10mL/m以下の範囲内である)をA4サイズに切り出したものを用いた。
【0107】
表4中、反応液付与工程「有」の例では、表4に示す種類の反応液をインクカートリッジに充填し、インクの付与と並行して反応液を記録媒体に付与した。反応液の記録デューティは、40%とした。また、反応液付与工程の欄に記載の数字の反応液を用いた。表4中、乾燥工程「有」の例では、記録ヘッドの長手方向の半分の長さ分の記録媒体を搬送した後、25℃の温風を5分間当てて画像を乾燥させた。温風の温度は、モールド型表面センサー(商品名「MF-O-K」、東亜電器製)を使用して測定した温風出口における温度である。
【0108】
その後、表4中、加熱工程「1」の例では、画像を記録した記録媒体を100℃の恒温槽に5分間入れて加熱処理し、記録媒体に画像を定着させた。この際の加熱温度Tは、80℃以上100℃以下であった。加熱工程「2」の例では、恒温槽の温度を80℃としたこと以外は、前述の加熱工程「1」と同様にして、記録媒体に画像を定着させた。この際の加熱温度Tは、70℃以上80℃未満であった。恒温槽による加熱は、赤外線ヒータによる記録面及び裏面の加熱に相当する。また、実施例21、37、及び38では、インクの付与と並行して反応液を付与するとともに、乾燥工程及び加熱工程をこの順で実施した。
【0109】
加熱工程「3」の例では、記録ヘッドの長手方向の半分の長さ分の記録媒体を搬送した後、90℃の温風を風速11m/sで1分間当てて画像を乾燥させた。この際の加熱温度Tは、90℃程度であった。加熱工程「4」の例では、記録ヘッドの長手方向の半分の長さ分の記録媒体を搬送した後、110℃の温風を風速15m/sで10秒間当てて画像を乾燥させた。この際の加熱温度Tは、90℃程度であった。
【0110】
(空孔の形成)
樹脂粒子が融解して、空孔が生じたかどうかは、以下の方法で判断した。加熱工程の前後でインクが付与された記録媒体の一部を切断し、その断面を走査型電子顕微鏡で観察した。加熱工程前の断面に樹脂粒子が観察された場合は、その粒子径を計測した。そして、加熱工程後の断面に空孔が観察された場合はその空孔径を測定した。計測した空孔径と樹脂粒子の粒径の差が10%以下であった場合に、加熱工程において樹脂粒子が融解して、空孔が生じたと判断した。この評価結果を、表4中の「空孔形成」の欄に記載した。
【0111】
(隠蔽性)
ISO2471:2008に準拠した方法にしたがって記録した評価用画像の隠蔽率を測定及び算出するとともに、画像の隠蔽性を評価した。なお、各実施例で調製したインクは、白色インクであった。ISO2471:2008では、試験対象の紙に白色板及び黒色板をそれぞれ裏当てして反射率を測定し、下記式(B)から隠蔽率を算出する。
隠蔽率=(R/R)×100 ・・・(B)
:黒色板を裏当てして測定した反射率
:白色板を裏当てして測定した反射率
【0112】
本実施例では、この方法に準拠し、隠蔽率試験紙(TP技研製、日本塗料検査協会検査証付)を使用して記録した画像の隠蔽率を測定及び算出した。そして、以下に示す評価基準にしたがって画像の隠蔽性を評価した。
AA:隠蔽率が60%以上であった。
A:隠蔽率が55%以上60%未満であった。
B:隠蔽率が45%以上55%未満であった。
C:隠蔽率が45%未満であった。
【0113】
(耐沈降性)
調製したインクを円柱状の試料容器に高さ24mmとなるように入れて25℃の環境で1週間載置した。載置後の上澄みの透明部分の厚さ(mm)を測定し、以下に示す評価基準にしたがってインクの耐沈降性を評価した。
A:上澄みの透明部分の厚さが2mm以下であった。
B:上澄みの透明部分の厚さが2mmを超えて10mm以下であった。
C:上澄みの透明部分の厚さが10mmを超えていた。
【0114】
【0115】
実施例25及び26の画像の隠蔽性の評価結果は、実施例4~6と同じ「A」であったが、実施例4~6の方が優れていた。実施例29の画像の隠蔽性の評価結果は、実施例27及び実施例28と同じ「B」であったが、実施例27及び実施例28の方が優れていた。実施例31の画像の隠蔽性の評価結果は、実施例32の評価結果と同じ「A」であったが、実施例32の方が優れていた。
【0116】
なお、本実施形態の開示は、以下の方法及び構成を含む。
(方法1)粒子及び第1樹脂粒子を含有する水性インクを用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記水性インクを前記記録媒体に付与するインク付与工程と、
前記水性インクが付与された前記記録媒体を、前記第1樹脂粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)以上、かつ前記粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)未満の温度に加熱する加熱工程と、を有し、
前記粒子の平均一次粒子径DP0(nm)が、150nm以下であり、
前記加熱工程において、前記記録媒体を加熱して前記第1樹脂粒子を融解させ、空孔を生じさせることを特徴とするインクジェット記録方法。
(方法2)前記第1樹脂粒子の体積基準の累積50%粒子径D(nm)が、100nm以上400nm以下である方法1に記載のインクジェット記録方法。
(方法3)前記水性インク中、前記第1樹脂粒子の含有量(体積%)が、前記粒子の含有量(体積%)に対する体積比率で、1.3倍以上5.0倍以下である方法1又は2に記載のインクジェット記録方法。
(方法4)前記第1樹脂粒子のガラス転移温度Tg(℃)が、25℃以上である方法1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法5)前記第1樹脂粒子の融点T(℃)が、25℃以上であり、
前記第1樹脂粒子を構成する樹脂が、結晶性樹脂である方法1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法6)前記第1樹脂粒子の80℃における損失弾性率が、1.2×10Pa以下である方法1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法7)前記第1樹脂粒子の80℃における損失弾性率が、3.3×10Pa以下である方法1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法8)前記第1樹脂粒子を構成する樹脂が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びウレタン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である方法1乃至7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法9)前記第1樹脂粒子の見かけ密度が、0.8g/cm以上である方法1乃至8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法10)前記粒子の体積基準の累積50%粒子径D(nm)が、150nm以下である方法1乃至9のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法11)前記粒子が、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、カオリン、クレー、及び第2樹脂粒子からなる群より選択される少なくとも1種である方法1乃至10のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法12)前記粒子が、酸化チタンであり、
前記水性インク中、前記第1樹脂粒子の含有量(質量%)が、前記酸化チタンの含有量(質量%)に対する質量比率で、0.30倍以上1.0倍以下である方法1乃至10のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法13)前記酸化チタンの体積基準の累積50%粒子径D(nm)が、100nm以下である方法12に記載のインクジェット記録方法。
(方法14)前記水性インク中、前記粒子の含有量(体積%)が、インク全体積を基準として、1.5体積%以上である方法1乃至13のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法15)前記加熱工程における加熱温度T(℃)が、80℃以上である方法1乃至14のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法16)さらに、前記水性インクと反応する反応剤を含有する水性反応液を前記記録媒体に付与する反応液付与工程、及び、前記記録媒体上の液体成分を乾燥させる乾燥工程からなる群より選択される少なくとも1種の工程を有する方法1乃至15のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法17)前記水性インクが、白色インクである方法1乃至16のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(構成1)粒子及び第1樹脂粒子を含有する水性インクを用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置であって、
前記水性インクを前記記録媒体に付与するインク付与手段と、
前記水性インクが付与された前記記録媒体を、前記第1樹脂粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)以上、かつ前記粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)未満の温度に加熱する加熱手段と、を備え、
前記粒子の平均一次粒子径DP0(nm)が、150nm以下であり、
前記加熱手段が、前記記録媒体を加熱して前記第1樹脂粒子を融解させ、空孔を生じさせる手段であることを特徴とするインクジェット記録装置。
(構成2)粒子及び第1樹脂粒子を含有する水性インクを用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法に用いられる、水性インクであって、
前記インクジェット記録方法が、前記水性インクを前記記録媒体に付与するインク付与工程と、
前記水性インクが付与された前記記録媒体を、前記第1樹脂粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)以上、かつ前記粒子のガラス転移温度Tg(℃)又は融点T(℃)未満の温度に加熱する加熱工程と、を有し、
前記粒子の平均一次粒子径DP0(nm)が、150nm以下であり、
前記加熱工程において、前記記録媒体を加熱して前記第1樹脂粒子を融解させ、空孔を生じさせることを特徴とする水性インク。
【符号の説明】
【0117】
1:粒子
2:第1樹脂粒子
3:バインダー
4:空孔
図1
図2
図3
図4