(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177824
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】包装体、包装体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
B65D65/40 BRH
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096171
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】522387113
【氏名又は名称】DCT Pack株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】大山 彰
(72)【発明者】
【氏名】安田 重民
(72)【発明者】
【氏名】茂呂居 直
【テーマコード(参考)】
3E086
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086AB01
3E086BA15
3E086BB21
3E086BB51
3E086BB62
3E086BB90
3E086CA01
3E086CA28
(57)【要約】
【課題】容器本体と蓋材の主材料を共通とし、視認性の高い印刷が可能である、安価な包装体を得る。
【解決手段】PTP包装体1においては、蓋材本体が容器本体10と同じ樹脂材料(主樹脂材料:PP又はPET)で構成される。ここで用いられた蓋材20においては、容器本体10と共通の主樹脂材料(PP又はPET)で構成された、厚さが20μm程度の蓋材本体21が用いられる。また、この蓋材20においては多数の微細孔20Aが形成された上で、この微細孔20Aがコート層24によって閉塞される。蓋材20と容器本体10との間の接合においては、シール層23が接合層として用いられる。印刷層22は、特に上記の蓋材本体21上に好適に形成できる多層構造を具備し、この中のいずれの層も、塗布(印刷)されたインキで構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物をそれぞれにおいて表側から収容する凹部である複数の収容部を有する容器本体と、前記内容物を前記収容部に収容した状態で各前記収容部を封止するように表側から前記容器本体に接合される平板上の蓋材と、を具備する包装体であって、
前記容器本体は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、PVC(ポリ塩化ビニル)のいずれかである主樹脂材料で構成され、
前記蓋材は、
前記容器本体と共通の前記主樹脂材料で構成された蓋材本体と、
前記蓋材本体における一方の面から他方の面に向けて掘り下げられた複数の微細孔と、
前記主樹脂材料とは異なる樹脂材料で構成され、前記微細孔を閉塞させるように前記蓋材に形成されたコート層と、
を具備し、
前記蓋材本体の表面には、
外部から視認する事が可能とされた表示層と、
前記表示層を積層方向における一方向からみて光学的に隠蔽する隠蔽層と、
が積層された印刷層が形成され、
前記表示層及び前記隠蔽層は、インキで構成されたことを特徴とする包装体。
【請求項2】
前記印刷層において、
平面視において第1のパターンにパターニングされた前記表示層である第1の表示層と、平面視において第2のパターンにパターニングされた前記表示層である第2の表示層とが、
平面視において前記第1のパターン及び前記第2のパターンを含む領域に形成された前記隠蔽層を挟んで積層されたことを特徴とする請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
前記印刷層において、
前記第1の表示層と異なる着色とされ平面視において前記第1のパターンを含む領域に形成された第1の背景層を前記第1の表示層と前記隠蔽層の間に、
前記第2の表示層と異なる着色とされ平面視において前記第2のパターンを含む領域に形成された第2の背景層を前記第2の表示層と前記隠蔽層の間に、それぞれ具備し、
前記第1の背景層及び前記第2の背景層は、インキで構成されたことを特徴とする請求項2に記載の包装体。
【請求項4】
前記コート層は、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)で構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の包装体。
【請求項5】
前記主樹脂材料はPET、PPのいずれかであり、
前記蓋材における裏側には、前記主樹脂材料よりも低融点の樹脂材料で構成されたシール層が形成され、
前記容器本体と前記蓋材とが前記収容部以外の箇所において前記シール層を介して接合されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の包装体。
【請求項6】
前記シール層は変性ポリオレフィンで構成されたことを特徴とする請求項5に記載の包装体。
【請求項7】
前記主樹脂材料はPVCであり、
前記蓋材における裏側は前記主樹脂材料で構成され、前記容器本体と前記蓋材の裏面とが前記収容部以外の箇所において直接接合されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の包装体。
【請求項8】
請求項5に記載の包装体の製造方法であって、
前記容器本体と前記蓋材との間の接合を熱シールによって行うことを特徴とする、包装体の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の包装体の製造方法であって、
前記容器本体と前記蓋材との間の接合を高周波シールによって行うことを特徴とする、包装体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体に設けられた収容部に内容物を収容した状態で蓋材によって封止される形態を具備する包装体の構造、製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、錠剤、食品等を収容するために、PTP包装体が広く用いられている。PTP包装体は、例えば特許文献1に記載されるように、透明なPP(ポリプロピレン)等の樹脂材料で形成された容器本体に対して、アルミニウム(Al)箔で構成された蓋材が組み合わせて用いられる。容器本体には錠剤等を表側から収容できるような凹部(収容部)が複数形成され、この凹部の各々に錠剤等が収容された状態で、表面側から蓋材が接合される。この凹部は、裏側からみて凸部となっており、使用者は、この凸部(収容部)の中の内容物(錠剤等)を、透明な容器本体を介して目視することができる。
【0003】
また、使用者は、裏側から凸部(及びその中の内容物)を押すことによって、その表面側の蓋材を破断させ、内容物を取り出すことができる。一つの容器本体に上記の凹部(収容部)を多数配列させて設けることができ、この作業は、凹部(各凹部に収容された内容物)毎に行うことができる。この際、蓋材の表面側に印刷を施し、内容物についての説明、注意書き等を表記することも容易である。この場合、特に、蓋材をAl箔のような光学的に不透明な材料で構成すれば、蓋材の両面に異なる印刷を施すことができるため、特に好ましい。
【0004】
ここで、容器本体には、透明であること、押すことによって変形はするが容易に破壊されないこと、等が要求されるため、PPの他に、PET(ポリエチレンテレフタレート)等で構成された厚いシート状の材料が、前記のように収容部が形成された形状に成形されて用いられる。蓋材には、収容部に対する密封性を保つことができる一方で、前記のように内容物が押されることによって破断しやすいことが要求されるため、容器本体よりも薄いAl箔が特に好ましく用いられる。容器本体と蓋材の間は、これらを強固に接合すると共に収容部を密封する接合層が設けられる。これによって、一つの収容部において内容物を取り出すために蓋材を破断させた際に、その周囲の収容部(蓋材)はその影響を受けず、内容物を取り出す作業を収容部毎に行うことができる。
【0005】
また、同様に容器本体と蓋材が組み合わせて内容物を収容するが、内容物の取り出し方が異なるブリスターパックも広く知られている。PTP包装体では前記のように裏側から容器本体の凸部を介して内容物を押すことにより蓋材を破断させてこの内容物を取り出すのに対して、ブリスターパックにおいては、表面側の蓋材を端部より容器本体から剥離することによってこの内容物を取り出す。このため、PTP包装体は錠剤のような小さな内容物を同時に複数収容するために好ましく、ブリスターパックは、大きな単体の内容物(例えば歯ブラシ等)を収容するために好ましい。ブリスターパックにおける蓋材に要求される特性は、前記のPTP包装体の場合とは異なり、蓋材の材料としては、破断はしにくく剥離がしやすい材料として、紙等が用いられる。
【0006】
また、このような包装体は消耗品であるため、使用済のものを回収してリサイクルすることが好ましい。この点において、例えば上記の容器本体のPP、PET等をリサイクルする際には、使用後に残存した蓋材(Al)を除去することが要求される。この観点からは、容器本体と蓋材とで共通の材料(PP、PET)を用いることが好ましい。あるいは、両者の主材料を同一とすることによって、包装体をより安価とすることも期待される。しかしながら、前記の通り、容器本体と蓋材には全く異なる特性が要求されるため、一般的にはこのような材料の設定は容易ではない。これに対して、特許文献2には、蓋材を、Alではなく、PPを主成分とした、破断が容易な材料で構成することが記載されている。容器本体もこの材料を用いて形成することができるため、この包装体の使用後のリサイクルは容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-141258号公報
【特許文献2】特開平9-58744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載された蓋材の材料は、一般的なPPではなく、専用に製造された材料であるため、必ずしも安価ではなく、これを用いて包装体を安価とすることは実際には困難であった。また、このように破断しやすい材料を容器本体に用いることは好ましくないことも明らかである。
【0009】
また、一般的には、前記のように、蓋材には印刷が施される。これに対して、蓋材を容器本体と同じ透明な材料で構成した場合には、両面印刷をした場合には印刷内容(文字等)の識別(視認)が困難となる、あるいは片面印刷のみを行った場合でも印刷内容の識別性が良好ではない、という問題があった。このため、容器本体と蓋材の主材料を共通とし、視認性の高い印刷が可能である、安価な包装体が求められた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明は、内容物をそれぞれにおいて表側から収容する凹部である複数の収容部を有する容器本体と、前記内容物を前記収容部に収容した状態で各前記収容部を封止するように表側から前記容器本体に接合される平板上の蓋材と、を具備する包装体であって、前記容器本体は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、PVC(ポリ塩化ビニル)のいずれかである主樹脂材料で構成され、前記蓋材は、前記容器本体と共通の前記主樹脂材料で構成された蓋材本体と、前記蓋材本体における一方の面から他方の面に向けて掘り下げられた複数の微細孔と、前記主樹脂材料とは異なる樹脂材料で構成され、前記微細孔を閉塞させるように前記蓋材に形成されたコート層と、を具備し、前記蓋材本体の表面には、外部から視認する事が可能とされた表示層と、前記表示層を積層方向における一方向からみて光学的に隠蔽する隠蔽層と、が積層された印刷層が形成され、前記表示層及び前記隠蔽層は、インキで構成されたことを特徴とする。
本発明は、前記印刷層において、平面視において第1のパターンにパターニングされた前記表示層である第1の表示層と、平面視において第2のパターンにパターニングされた前記表示層である第2の表示層とが、平面視において前記第1のパターン及び前記第2のパターンを含む領域に形成された前記隠蔽層を挟んで積層されたことを特徴とする。
本発明は、前記印刷層において、前記第1の表示層と異なる着色とされ平面視において前記第1のパターンを含む領域に形成された第1の背景層を前記第1の表示層と前記隠蔽層の間に、前記第2の表示層と異なる着色とされ平面視において前記第2のパターンを含む領域に形成された第2の背景層を前記第2の表示層と前記隠蔽層の間に、それぞれ具備し、前記第1の背景層及び前記第2の背景層は、インキで構成されたことを特徴とする。
本発明において、前記コート層は、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)で構成されたことを特徴とする。
本発明において、前記主樹脂材料はPET、PPのいずれかであり、前記蓋材における裏側には、前記主樹脂材料よりも低融点の樹脂材料で構成されたシール層が形成され、前記容器本体と前記蓋材とが前記収容部以外の箇所において前記シール層を介して接合されたことを特徴とする。
本発明において、前記シール層は変性ポリオレフィンで構成されたことを特徴とする。
本発明において、前記主樹脂材料はPVCであり、前記蓋材における裏側は前記主樹脂材料で構成され、前記容器本体と前記蓋材の裏面とが前記収容部以外の箇所において直接接合されたことを特徴とする。
本発明は、前記包装体の製造方法であって、前記容器本体と前記蓋材との間の接合を熱シールによって行うことを特徴とする。
本発明は、前記包装体の製造方法であって、前記容器本体と前記蓋材との間の接合を高周波シールによって行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以上のように構成されているので、容器本体と蓋材の主材料を共通とし、視認性の高い印刷が可能である、安価な包装体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】従来のPTP包装体の全体的な構造を示す断面図である。
【
図2】従来のPTP包装体における、特に蓋材の詳細な構造を示す断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る包装体の構造を示す断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係る包装体において用いられる蓋材の製造工程を示す工程断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係る包装体において用いられる蓋材の変形例を示す断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施の形態に係る包装体の構造を示す断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る包装体における印刷層の第1の例の構造を示す断面図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る包装体における印刷層の第2の例の構造を示す断面図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る包装体における印刷層の第3~6の例の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係る包装体はPTP包装体であり、容器本体と蓋材で共通の材料が用いられるため、そのリサイクルが容易である。一方で、容器本体は破断しにくく蓋材は破断しやすくされ、かつ、これを低コストで製造することができる。
【0014】
ここでは、まず、従来のPTP包装体について説明する。
図1は、従来のPTP包装体9の部分的な断面図であり、ここでは収容部付近の構成が示されている。ここで、容器本体10は、透明なPP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)のいずれかで構成され、図示されるように、表側(図中下側)から内容物100を収容することができる収容部10Aが形成されるような形状(表側からみて凹形状、裏側(図中上側)からみて凸形状)に成形される。この際、実際には収容部10Aは平面視で複数配列して形成され、容器本体10における収容部10A以外の箇所は平面を構成するように形成される。
図1においては、隣接する2つの収容部10Aにかけての領域が記載されている。
【0015】
平板状の薄い蓋材80は、収容部10Aに内容物100が収容された状態で、収容部10Aを封止するように、容器本体10に対して接合される。この接合は、
図1における矢印で示されるように、収容部10A以外の領域を熱シールすることによって行われる。接合後の状態においては、収容部10Aの内部は密封され、特に水蒸気や酸素等が収容部10Aの内部に入り込まないことが要求される。また、この接合強度は、蓋材80を破断させて内容物100を取り出す際に、接合された部分が剥離せず、内容物100が取り出された収容部10A以外には影響が全く及ばないように設定される。
【0016】
図1では単純化されて示されているが、実際には蓋材80は各種の層が積層されて形成されている。
図2は、蓋部80のより詳細な構造を示す断面図であり、ここでは収容部10Aがある部分とない部分の境界付近が示されている。蓋材80の主体は、厚さ20μm程度のAl箔である蓋材本体81となる。蓋材本体81の表面(図中下面)側には、顔料が添加されたインキで印刷技術によってパターニングされて形成された印刷層82、これを保護する透明な保護膜83が形成されている。図では簡略化されて一様に示されているが、印刷層82は実際には表側の表示内容(内容物の説明や注意書き等の文字情報等)を構成するためにパターニングされている。印刷層82、保護膜83は実際には蓋材本体81よりも大幅に薄く、例えば数μm以下の厚さとされる。
【0017】
蓋材本体81の裏面(図中上面)側には、VCコート層84が形成されている。
図2においてVCコート層84と容器本体10とが接する箇所(
図1において収容部10Aが形成されない箇所)を、
図1中の矢印で示されたように熱シールすることによって、前記のように容器本体10と蓋材80を強固に接合することができる。容器本体10を構成するPET、PPの耐熱温度は150℃以上であり、蓋材本体81を構成するAlの耐熱温度はこれよりも充分に高いため、この熱シールの温度は、容器本体10の耐熱温度以下で行うことができる。なお、蓋材本体81は不透明であり、VCコート層84、容器本体10は透明であるために、VCコート層84と蓋材本体81の間に、印刷層82と同様の印刷層を設けてもよい。この場合、この印刷層と、表側の印刷層82とを異なるパターン(異なる表示)とすることもできる。
【0018】
これによって、
図1において、使用者が一つの収容部10Aの上側を押すことによって、薄く形成された蓋材80がこの収容部10Aの下側においてのみ破断し、内容物100を下側に取り出すことができる。この際、収容部10Aが形成されない箇所では容器本体10と蓋材80は強固に接合されているため、内容物100が取り出された収容部10A以外の収容部10Aは、この取り出しの影響を全く受けない。このため、このPTP包装体9を錠剤等の収容のために好ましく用いることができる。
【0019】
ここで、蓋材本体を単純に容器本体10と同じ材料(PP、PET)で構成すれば、PTP包装体を安価とすることができ、かつ、全体がほぼPP、PETで構成されるために、そのリサイクルが容易となる。しかしながら、この場合には、蓋材を容易に破断する、あるいは内容物を取り出すべき収容部以外の箇所の蓋材に影響を及ぼさずに蓋材を破断することは困難である。
【0020】
このため、本発明の第1の実施の形態に係るPTP包装体においては、蓋材本体が容器本体10と同じ樹脂材料(主樹脂材料:PP又はPET)で構成されると共に、その構造が前記の蓋材80とは異なる。
図3は、このPTP包装体1における
図2に対応した断面図である。容器本体10を構成する材料は前記のPTP包装体9と同様であり、その形状も同様である。また、
図4は、この蓋材20を製造する際の工程断面図である。ここで用いられた蓋材20においては、容器本体10と共通の主樹脂材料(PP又はPET)で構成された、厚さが20μm程度の蓋材本体21が用いられる。また、この蓋材20においては多数の微細孔20Aが形成された上で、この微細孔20Aがコート層24によって閉塞される。蓋材20と容器本体10との間の接合においては、シール層23が接合層として用いられる。
【0021】
この蓋材20を製造するために、まず、
図4(a)に示されるように、蓋材本体21の表側の面(図中下面)に、印刷層22が形成される。ここで、印刷層22は、両面印刷にも対応した多層構造であり、ここでは文字や図形等に対応したパターンが形成されるが、その詳細については後述する。印刷層22上に保護層を形成してもよい。次に、
図4(b)に示されるように、蓋材本体21の裏面(図中上面)側に、シール層23を形成する。シール層23を構成する材料としては、PP系材料よりも低融点でありPP系材料等への接着性が良好である変性ポリオレフィン等が特に好ましく用いられ、前記のVCコート層84に対応し、シール層23は、蓋材20と容器本体10とを熱シールする際の接合層として用いられ、厚さについても同様である。
【0022】
ここで、
図4(c)に示されるように、蓋材本体21、印刷層22、シール層23の積層構造において、多数の微細孔20Aが形成される。ここで、微細孔20Aは、例えば針状の部材が多数配列された剣山状の治具を用いてこの積層構造に対して表面側から窄孔をすることによって形成される。微細孔20Aの表面側における開口径は蓋材20の厚さと比べて小さく設定される。微細孔20Aは、蓋材20を前記の蓋材80と同様に破断しやすくするために形成され、各微細孔20Aの大きさ、深さや径が均一である必要はない。また、微細孔20Aがこの積層構造を貫通する必要はないが、
図4(c)においては、一部の微細孔20Aのみが積層構造を貫通するように記載されている。このように微細孔20Aの開口径や深さに要求される精度は低いため、その形成は容易である。微細孔20Aが形成される面密度が大きいほど蓋材20は破断しやすくなるため、この面密度は、付与される破断しやすさに応じて適宜決定される。この設定は、これは前記の治具によって容易に行うことができる。
【0023】
なお、印刷層22で構成される文字や図形等は肉眼で認識できることが要求されるため、この文字等を形成する線幅は例えば数100μm以上である。これに対して、前記のとおり、微細孔20Aの開口径は積層構造の厚さよりも小さいため、微細孔20Aによってこの文字が識別できなくなることはない。
【0024】
一方で、前記のAl箔が用いられた蓋材80と同様に、収容部10Aに対する密封性が要求されるため、
図4(d)に示されるように、
図4(c)の状態に対して、表面側からコート層24を形成する。コート層24は、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)で構成され、塗布等によって、微細孔20Aがこの積層構造を貫通した部分が埋め込まれる程度の厚さ、例えば2~5μm程度に薄く形成される。PVDCコート剤は、酸素や水蒸気に対するバリア性の高い材料として知られており、かつPPやPETと比べて脆い材料であるため、コート層24の存在によって、微細孔20Aによって付与された破断しやすさが損なわれることはない。図では単純化されて全ての微細孔20Aがコート層24で埋め込まれているように記載されているが、少なくとも積層構造を微細孔20Aが貫通した部分が埋め込まれていればよい。コート層24を構成する材料として、同様に微細孔20Aを閉塞させることができ、同様のバリア性を有し、蓋材本体21よりも脆い材料であれば、PVDC以外の材料を用いることもできる。
【0025】
図3の場合においても、蓋材80を用いた場合と同様に、熱シールを用い、シール層23(変性ポリオレフィン)を接合層として、容器本体10と蓋材20を強固に接合することができる。
【0026】
この場合において形成されるPTP包装体1の全体的な形状は、
図1におけるPTP包装体9と同様で、蓋材80を蓋材20に置換したものとなり、内容物100の取り出し手法も同様となる。この際、容器本体10と蓋材本体21が同一の材料(PET、PP)を主材料として構成されているため、リサイクルの際に、蓋材20を除去することは不要である。このため、使用後のPTP包装体1のリサイクルは容易である。
【0027】
この際、特許文献2に記載のPTP包装体では専用に製造されたPPが用いられたのに対し、この場合には、容器本体10、蓋材本体21として共に一般的かつ安価なPET、PPを用いることができる。また、微細孔20Aによって蓋材20の破断のしやすさが付与されるため、Al箔が用いられた従来の蓋材20を用いた場合と同様に、容易に内容物100を取り出すことができる。一方、蓋材20における酸素や水蒸気に対するバリア性はPVDCで構成されたコート層24によって得られる。また、前記のように、蓋材20の容器本体10に対する接合は、従来のPTP包装体9と同様に熱シールを用いて行うことができる。このため、このPTP包装体1は、微細孔20Aを形成すること以外については、従来のPTP包装体9と同様の製造工程、製造設備を用いて安価に製造することができる。
【0028】
なお、
図4においては、
図4(a)で印刷層22が形成された後に、
図4(b)においてシール層23が形成された。ここで、シール層23は、前記のように、容器本体10との間の接合のために用いられる。一般的に、薄膜状の樹脂材料で構成された蓋材本体21を形成する際に、このように接合のために用いられるシール層を蓋材本体21(PP、PET)との積層構造として製造することもできる。この場合には、この積層構造に対して印刷層22を形成し、
図4(c)(d)の工程を行うことができる。この場合には、製造工程がより単純となり、このPTP包装体1をより安価とすることができる。この場合、シール層23としては、蓋材本体21となる材料に応じて、変性ポリオレフィン以外の材料を適宜用いることができる。
【0029】
また、
図3、4においては、蓋材本体21の表側(図中下側)に印刷層22が形成され、微細孔20Aは、表面側(図中下側)から印刷層22及び蓋材本体21にかけて、一部ではこれらを貫通するように形成された。しかしながら、蓋材20の主体となる蓋材本体21に微細孔20Aが形成され、コート層24が微細孔20A内を埋めるように形成され、裏側(図中上側)にシール層23が形成される限りにおいて、他の構造の蓋材を用いることもできる。この際、どちらの側から窄孔を行い微細孔20Aを形成してもよい。
【0030】
図5(a)(b)は、このような構造の2つの例を示す。
図5(a)に示された蓋材30においては、印刷層22が蓋材本体21の表面(図中下側)に形成された
図4(a)の状態において、裏面側(図中上側)から微細孔20Aが形成される。その後、裏面側(図中上側)にコート層24を形成した後にシール層23が更に裏面側(図中上側)に形成されることによって、この蓋材30が得られる。この場合においては、微細孔20Aは蓋材本体21、印刷層22にかけて形成され、表面側には印刷層22のみが、裏面側にはコート層24、シール層23が積層して形成される。
【0031】
図5(b)に示された蓋材40においては、蓋材本体21の裏面側(図中上側)から微細孔20Aが形成される。その後、裏面側(図中上側)にコート層24を形成した後に、表面側(図中下側)に印刷層22が、裏面側(図中上側)にシール層23が形成されることによって、この蓋材40が得られる。この場合においては、微細孔20Aは蓋材本体21のみに形成され、表面側には印刷層22のみが、裏面側にはコート層24、シール層23が積層して形成される。
【0032】
前記の例では、微細孔20Aは針状の部材を用いた窄孔によって微細孔20Aを形成するために、微細孔20Aの断面が、治具が設けられた側(
図4においては表面側(図中下側)、
図5においては裏面側(図中上側)で開口が広いテーパー形状とされた。微細孔20Aを埋め込むためには、コート層24は、このように治具が設けられた側に形成することが好ましい。ただし、貫通した微細孔20Aを閉塞できることができる限りにおいて、窄孔を行った側と反対側(例えば
図5(a)における表面側(図中下側))にコート層24を形成してもよい。いずれの場合でも、微細孔20Aがコート層24で閉塞され、最も裏面側(図中上側)にシール層23が形成される。いずれの構造を用いるかは、各層間の密着性や微細孔の形成しやすさ等を考慮して適宜選択することができる。
【0033】
次に、第2の実施の形態として、容器本体10及び蓋材の主材料(主樹脂材料)をPVC(ポリ塩化ビニール)とした場合について説明する。この場合のPTP包装体2の
図3に対応した断面図を
図6に示す。この場合における蓋材50の蓋材本体51はPVCで構成される。PVCの耐熱温度は100℃以下であるため、これを用いた蓋材50と容器本体10の間を熱シールを用いて接合することは困難である。このため、この蓋材50においては、シール層23は設けられず、最も裏面側(図中上側)にはPVCで構成された蓋材本体51が露出する。
【0034】
この場合には、
図6において、容器本体10を構成するPVCと蓋材本体51を構成するPVCが直接接し、これらが接する箇所(収容部10Aが存在しない箇所)において、前記の熱シールの代わりに、高周波シールを適用して、これらを接合することができる。高周波シールにおいては、局所的に印加された高周波によって耐熱温度の低い樹脂材料同士が分子レベルで接合される。これによって、前記のシール層23を用いた場合と同様に、容器本体10と蓋材50を強固に接合することができる。微細孔20Aによってこの蓋材50が破断しやすいこと、コート層24によって収容部10Aに対するバリア性が得られる点についても、前記のPTP包装体1と同様である。この場合においては、裏面側(図中上側)で蓋材本体51が露出することが必要であるため、コート層24は表面側(図中下側)に形成される。
【0035】
この場合においては、従来のPTP包装体9を製造する工程と比べると、熱シールの代わりに高周波シールを用いた点が異なる。一方、容器本体と蓋材を接合するための層(VCコート層84、シール層23)が不要となるため、製造工程を単純化し、PTP包装体2を安価とすることができる。
【0036】
次に、印刷層22について詳細に説明する。この印刷層22は、特に上記の蓋材本体21、51上に好適に形成できる多層構造を具備し、この中のいずれの層も、塗布(印刷)されたインキで構成される。このため、この印刷層が形成された場合でも、蓋材20等の主体となるのは蓋材本体21等であることに変わりがなく、印刷層22の有無による前記のようなリサイクルに際しての影響はない。
【0037】
図7は、この印刷層22の第1の例の詳細な構造を
図4(a)の状態において示す。すなわち、このような印刷層22を蓋材本体21に予め形成し、その後に
図4(b)以降の工程を行い包装体1を得ることができる。ここでは、裏側(図中上側)から視認されるような平面視におけるパターン(第1のパターン)とされた第1の表示層221と、表側(図中下側)から視認されるような平面視におけるパターン(第2のパターン)とされた第2の表示層222が設けられる。第1の表示層221と第2の表示層222は共に識別しやすい色に着色されるが、これらが同一の色である必要はない。第1のパターン、第2のパターンは、例えば文字や図形等の形状とされる。ただし、第1のパターンと第2のパターンは互いに独立して設定されるため、第1の表示層221、第2の表示層222でそれぞれ異なる情報を表示することができる。
【0038】
図7においては、まず、第1の表示層221が第1のパターンを構成するように蓋材本体221の上(図中下側の面)に形成され、この第1の表示層221を含む蓋材本体21の表面全体が隠蔽層223で覆われる。更に、第2の表示層222が第2のパターンを構成するように隠蔽層223の上に形成される。なお、第1のパターン、第2のパターンは目視で識別できるようなサイズで形成されるため、微細孔20Aの開口径よりも大きく、微細孔20Aはこれらのパターンの識別性に対して大きな影響を与えない。
【0039】
ここで、第1の表示層221は裏側(
図3等における上側)からみた第1のパターンを表示するために用いられ、第2の表示層222は表側(
図3等における下側)からみた第2のパターンを表示するために用いられる。隠蔽層223は、裏側からみた場合に第2表示層222(第2のパターンを)認識できなくし、かつ表側からみた場合に第1表示層221(第1のパターン)を認識できなくするために用いられる。このため、
図7においては、隠蔽層223は全面にわたり形成されているが、平面視において第1のパターン及び第2のパターンを含む領域に形成されていればよい。
【0040】
ここで、第1の表示層221、第2の表示層222、隠蔽層223は、前記のようにインキで構成される。このインキとしては、上記の構造が実現できるものを適宜用いることができるが、例えば、グラビア印刷等の凹版印刷やフレキソ印刷等の凸版印刷に使用されるリキッド印刷インキを用いることができる。すなわち、これらは、いずれも、着色剤、バインダー、溶媒が混合された液体を塗布した後に、溶媒成分を蒸発させることによって形成される。第1の表示層221、第2の表示層222は、この際に周知の印刷技術によって第1のパターン、第2のパターンにパターニングされる。溶媒としては、有機溶剤を主成分とした有機溶媒、水を主成分とした溶媒のいずれを用いることもできるが、以下では、有機溶媒を用いた場合について説明する。
【0041】
第1の表示層221、第2の表示層222を構成するインキとしては、同一種類のものを用いることができる。このインキにおける着色剤としては、一般のインキ、塗料、及び記録剤等に使用されている無機顔料、有機顔料及び染料を用いることができる。
【0042】
有機顔料としては、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系等の顔料が挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。また未酸性処理顔料、酸性処理顔料のいずれも使用することができる。
【0043】
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、ジルコンを用いることができる。
【0044】
上記の顔料の種類は、表示されるパターンを構成する色等に応じて、適宜設定される。この際、顔料のみを変えることにより第1の表示層221、第2の表示層222の色を変える、あるいは第1の表示層221、第2の表示層222のそれぞれを場所ごとに異なる色で構成する(カラー印刷とする)こともできる。
【0045】
バインダー(バインダー樹脂)としては、硝化綿、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)やセルロースアセテートブチロネート(CAB)等セルロース系樹脂等の繊維素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂等を用いることができる。
【0046】
溶媒(有機溶媒)としては、特に制限はないが、例えば、トルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系有機溶剤、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤等を用いることができる。これらを、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、有機溶媒ではなく水を用いてもよい。
【0047】
インキの組成は、表示されるパターンの識別性あるいはコントラスト等に応じて適宜設定される。例えば、顔料は、溶媒を含むインキ総重量に対して1質量%~60質量%、固形分重量比では10質量%~90質量%とされる。この際、顔料は、1種のみ、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。なお、インキには、上記に加え、ワックス、キレート系架橋剤、体質顔料、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤等を適宜混合してもよい。
【0048】
隠蔽層223もインキで構成され、このインキにおいても、同様のバインダー、溶媒を用いることができる。ただし、前記のような隠蔽層223の目的より、例えばその色はグレー系であることが好ましく、このための顔料として、金属(例えばアルミニウム)微粒子を主成分とするものを用いることもできる。この場合、前記のような隠蔽層223の目的からは顔料の含有量が大きいことが好ましい一方で、顔料の含有量が大きいと、形成の際の下地(
図7においては第1表示層221、蓋材本体21)に対しての密着性が低くなる。このため、この場合の顔料の顔料の固形分重量比は、5~95重量%が好ましく、特に10~85重量%が好ましい。隠蔽層223の形成方法は、パターニングが不要であるということ以外については第1の表示層221、第2の表示層222を形成する場合と同様である。
【0049】
上記の第1の表示層221、隠蔽層223、第2の表示層222は、いずれも液体インキの塗布あるいは印刷によって同様に形成することができる。このため、共通の設備を用いてこれらの各層を安価に形成することができる。その後、第1の表示層221、隠蔽層223、第2の表示層223が形成された蓋材本体21を用いて
図4(b)以降の製造工程を行うことにより、包装体1を得ることができる。すなわち、上記の第1の表示層221、第2の表示層222、隠蔽層223を用いることによって、容器本体と蓋材の主材料を透明な共通の材料とした上で、蓋材における識別性の高い印刷が可能である。
【0050】
図8は、印刷層22の変形例(第2の例)となる印刷層122の詳細な構造を
図7と同様に示す。ここでは、
図7の構造とは異なり、第1の表示層221と隠蔽層223の間に第1の背景層224が、隠蔽層223と第2の表示層222の間に第2の背景層225が、それぞれ形成されている。第1の背景層224、第2の背景層225は、隠蔽層223と同様に、パターニングされていない。
【0051】
第1の背景層224は、第1の表示層221の第1のパターンを視認する際の背景となるように、平面視において第1のパターンを含む領域に形成されればよい。また、第2の背景層225は、第2の表示層222の第2のパターンを視認する際の背景となるように、平面視において第2のパターンを含む領域に形成されればよい。第1の背景層224、第2の背景層225も、他の層と同様にインキで構成することができる。すなわち、
図8における印刷層122全体も、インキで形成することができる。
【0052】
この場合における第1の背景層224の色は、第1の表示層221の背景となりうるような、第1の表示層221とは異なる色とされ、第2の背景層225の色は第2の表示層222の背景となりうるような、第2の表示層222とは異なる色とされる。具体的には、第1の表示層221、第2の表示層222の色を黒、濃紺等の濃い色とした場合には、第1の背景層224、第2の背景層225を白色とすることができる。この場合には、前記のような顔料の中から、白色となるものを適宜用いることができる。
【0053】
あるいは、特にこのような白色の顔料としては、例えば、酸化チタン、硫化亜鉛、鉛白、亜鉛華、リトボン、アンチモンホワイト、塩基性硫酸鉛、塩基性ケイ酸鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、シリカ、等の微粒子を用いることができる。この中でも、酸化チタンは、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から好ましく、印刷のしやすさという観点からは、酸化チタンの微粒子がシリカおよび/またはアルミナ処理を施されていることが好ましい。バインダー、溶媒については前記と同様である。
【0054】
このような白色の顔料の組成比は、上記のような、各パターンの背景となるという目的の観点からは、高いことが好ましい。一方、白色の場合には、特に高い版かぶり性(特にグラビア印刷等において、本来白色とすべき領域でない領域にまで白色インキが残存することを抑制する特性)が要求され、このためにはこの組成比が低いことが好ましい。このため、高い版かぶり性を必要とする場合には白色顔料の組成比は20~40重量%程度とし、上記のような背景としての機能が重視される場合には、40~60重量%程度とすることが好ましい。
【0055】
前記の印刷層22、122においては、両面印刷が施され、第1のパターンが裏側(
図3中上側)から視認され、第2のパターンが表側(
図3中下側)から視認された。しかしながら、片面印刷においても、上記のような表示層、隠蔽層等を用いることにより、その視認性が高まる。
図9においては、このような場合の印刷層の構造の例(第3の例~第6の例)を
図7と同様に示す。
【0056】
図9(a)に示された印刷層123(第3の例)、
図9(b)に示された印刷層124(第4の例)は、図中の点線矢印で示されるように、共に裏側(
図3中上側)から片面印刷された第1のパターン(第1の表示層121)のみを視認させるために用いられる。
図9(c)に示された印刷層125(第5の例)、
図9(d)に示された印刷層126(第6の例)は、図中の点線矢印で示されるように、共に表側(
図3中下側)から片面印刷された第2のパターン(第2の表示層)のみを視認させるために用いられる。いずれの場合でも、パターンが視認される側と反対側には隠蔽層223が形成されている。背景層が用いられた印刷層124(
図9(b))、印刷層126(
図9(d))においては、前記と同様に、パターンの視認性を特に高くすることができる。
【0057】
また、
図9(a)(b)の構成においては、ユーザが、露出した隠蔽層223の表面にペンで文字等を記載することもできる。あるいは、このために、前記の背景層と同様の層をこの場合の隠蔽層223の表面に更に形成してもよい。
【0058】
なお、
図7~
図9の例では、印刷層が蓋材20の表側(容器本体10がある側と反対側)に形成された。しかしながら、シール層23をその上に形成して容器本体10を接合することができる限りにおいて、印刷層を蓋材20の裏側(容器本体10がある側)に形成してもよい。
【0059】
また、前記の例では、第1の表示層、第2の表示層は、平面視において所定の文字や図形の形状にパターニングされているものとした。しかしながら、例えば、これらの表示層がこのように平面的にパターニングされていなくとも、例えば、その色彩等によって各種の情報を表示させることは可能であり、この場合においても前記のような隠蔽層を用いることは同様に有効である。すなわち、前記のような表示層は、平面視においてパターニングされている必要はなく、このような場合でも、積層方向における一方向からみてこの表示層を光学的に隠蔽する隠蔽層を用いることは有効である。
【0060】
以上のように、PTP包装体1、2は、容器本体と蓋材を構成する主材料として共通の樹脂材料(PET、PP、PVC)を用いることによって、そのリサイクル性を高めることができ、この際に蓋材に識別性の高い印刷を施すことができる。更に、蓋材にAl箔を用いた従来のPTP包装体と比べてその製造工程を大きく変えず、あるいは製造工程を簡略化することによって、このPTP包装体を安価とすることができる。
【0061】
また、容器本体と蓋材を構成する主材料として、前記のPET、PP、PVCの他に、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のPET以外のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系樹脂などの生分解性樹脂、ポリエチレン(LLDPE:低密度ポリエチレンフィルム、HDPE:高密度ポリエチレンフィルム)等のPP以外のポリオレフィン、ポリイミド、ポリアリレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体等又はこれらの混合物等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムやこれらの積層体を用いることができる。
【0062】
なお、上記の例はPTP包装体とされたが、微細孔20Aの面密度の設定によって、蓋材を、破断はしないが曲げやすいように調整することもでき、この場合には、同様の構造でブリスターパックを構成することができる。この場合においても、このブリスターパックのリサイクル性を高め、かつこれを安価とすることができる。すなわち、上記の構成の包装体は、PTP包装体に限らず、ブリスターパックとしても有効である。
【0063】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0064】
1、2、9 PTP包装体(包装体)
10 容器本体
10A 収容部
20、30、40、50、80 蓋材
20A 微細孔
21、51、81 蓋材本体
22、82、122、123、124、125、126 印刷層
23 シール層
24 コート層
83 保護膜
84 VCコート層
221 第1の表示層
222 第2の表示層
223 隠蔽層
224 第1の背景層
225 第2の背景層