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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017807
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】匂い検出システム及び匂い検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 5/02 20060101AFI20240201BHJP
   A61G 12/00 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
G01N5/02 A
A61G12/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120704
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】519277520
【氏名又は名称】株式会社リビングロボット
(71)【出願人】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】I-PEX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186510
【弁理士】
【氏名又は名称】豊村 祐士
(72)【発明者】
【氏名】川内 康裕
(72)【発明者】
【氏名】中村 珠幾
(72)【発明者】
【氏名】遠山 理
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】内山 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】丸本 智彦
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健治
(72)【発明者】
【氏名】山岡 憲二
(72)【発明者】
【氏名】和田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】潮 昇平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健志
【テーマコード(参考)】
4C341
【Fターム(参考)】
4C341LL30
(57)【要約】
【課題】空気中に存在する特定の匂い物質を高精度に検出することが可能な匂い検出システム及び匂い検出装置を提供する。
【解決手段】空気中に含まれる匂い物質を検出する匂いセンサ1aと、前記匂いセンサ1aの周囲の環境を調整する少なくとも1つの環境調整機器2と、前記環境調整機器2を制御する機器制御部3と、を備え、前記匂いセンサ1aによって匂いを検出するタイミングに先立ち、前記機器制御部3は、前記匂いセンサ1aの周囲が所定の環境となるように、前記環境調整機器2を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中に含まれる匂い物質を検出する匂いセンサと、
前記匂いセンサの周囲の環境を調整する少なくとも1つの環境調整機器と、
前記環境調整機器を制御する機器制御部と、
を備え、
前記匂いセンサによって匂いを検出するタイミングに先立ち、前記機器制御部は、前記匂いセンサの周囲が所定の環境となるように、前記環境調整機器を制御することを特徴とする匂い検出システム。
【請求項2】
前記環境調整機器は、冷房機器、暖房機器、加湿器、除湿器、サーキュレータ、扇風機、換気扇の少なくとも一つで構成され、
前記機器制御部は、前記匂いセンサの周囲の空気の容積絶対湿度が所定の範囲となるように、前記環境調整機器を制御することを特徴とする請求項1に記載の匂い検出システム。
【請求項3】
前記機器制御部は、前記匂いセンサの周囲の気温が20℃~25℃の範囲で、かつ相対湿度が40%~60%の範囲となるように、前記環境調整機器を制御することを特徴とする請求項2に記載の匂い検出システム。
【請求項4】
前記環境調整機器は、冷房機器、暖房機器、サーキュレータ、扇風機、換気扇の少なくとも一つで構成され、
前記機器制御部は、前記環境調整機器が発生させた空気流が前記匂いセンサに当たらないように、前記環境調整機器を制御することを特徴とする請求項1に記載の匂い検出システム。
【請求項5】
前記環境調整機器には制振部が含まれ、
前記機器制御部は、前記匂いセンサの振動を抑制するように、前記制振部を制御することを特徴とする請求項1に記載の匂い検出システム。
【請求項6】
前記匂いセンサは介護を要する要介護者の近辺に配置されており、
前記匂いセンサによって、前記要介護者の排便に伴う匂いを検出することを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の匂い検出システム。
【請求項7】
空気中に含まれる匂い物質を検出する匂いセンサと、
前記匂いセンサを駆動するセンサ駆動部と、
前記匂いセンサの周囲の環境を計測する環境計測部と、
を備え、
前記環境計測部は前記匂いセンサの周囲の気流を計測し、
前記センサ駆動部は、前記環境計測部によって前記気流が検出されなくなるのを待って、前記匂いセンサを駆動することを特徴とする匂い検出システム。
【請求項8】
空気中に含まれる匂い物質を検出する匂いセンサと、
前記匂いセンサを駆動するセンサ駆動部と、
前記匂いセンサの周囲の環境を計測する環境計測部と、
を備え、
前記環境計測部は前記匂いセンサに加わる振動を計測し、
前記センサ駆動部は、前記環境計測部によって前記振動が検出されなくなるのを待って、前記匂いセンサを駆動することを特徴とする匂い検出システム。
【請求項9】
空気中に含まれる匂い物質を検出する匂いセンサと、
前記匂いセンサが配置された筐体に空気を導入する空気導入部と、
前記空気導入部と前記匂いセンサとの間に、空気の状態を調整する環境調整部を設けたことを特徴とする匂い検出装置。
【請求項10】
更に、ガス採取部と、
前記ガス採取部で採取された空気を前記空気導入部まで導く筒状の空気搬送部と、を備え、
前記空気搬送部に、前記空気搬送部の内外の熱交換を促進する熱交換領域を設けたことを特徴とする請求項9に記載の匂い検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、匂い検出システム及び匂い検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平成25年9月12に内閣府が公表した「介護ロボットに関する特別世論調査の概要」によると、要介護者を介護する者が苦労したことの上位3項目は、「排泄(排泄時の付き添いやおむつの交換)」(62.5%)、「入浴(入浴時の付き添いや身体の洗浄)」(58.3%)、「食事(食事の準備,食事の介助)」(49.1%)となっており、「排泄」の問題は最上位に位置している。
【0003】
トイレに行けない、トイレが使えない、トイレで排泄できない、という排泄障害の状態となるのは、要介護度の5段階のうち要介護「3」以上の重度者とされている。重度者は自立して上衣やズボンの着脱ができず、第三者からの介護を必要とする。平成24年末において要介護「3」以上の重度者は、要介護「3」:72万人、要介護「4」:66万人、要介護「5」:61万人(合計199万人)とされており、自立して排泄できないという点はおむつを着用する乳児等と同じであるが、この人数は当時の0歳児の数(約100万人)よりも遥かに多い。
【0004】
特に介護施設や病院では夜間のおむつ交換における排泄の有無は、介護をする者(家族や親族を含め、家庭、病院、介護施設等で要介護者を介護する者を指す。以下「介護者等」と称することがある。)が一度おむつを開いて確認することになるため、要介護者が覚醒して徘徊の原因となり、更におむつの定期的な点検(定時点検)が必要となる。この定時点検は介護者等に対して排泄処置の過大な負担を与え、介護施設等における雇用逼迫の一因ともなっている。
【0005】
排尿については、複数回の排尿にわたって小便を吸収する吸収体を備え、かつ漏出を阻止する高機能・高性能のおむつが提供されており、おむつの定期的な交換で対応することがある程度可能になってきている。このため、排尿を検出する技術は実質的にその実用性が低下してきていると考えられる。
【0006】
他方、排便については、放置すると要介護者がおむつかぶれや褥瘡等の皮膚疾患を引き起こし、更におむつ交換を長時間待つ間の要介護者の不快感の軽減を図るためにも、早期の交換が必要である。しかしながら要介護者の羞恥心や告知能力の低下等もあり、排便していることが介護者等に速やかに伝達されないことも多い。このような状況を改善すべく、要介護者が排便した場合に、その旨を介護者等に早期に通知するシステムの実現が望まれているが、誤検出等があった場合は逆に介護者等の負担が増加することから、高い検出精度が必要となる。
【0007】
匂いを検出する技術として、振動子を有し、該振動子に物質が吸着または脱離したときに生じる前記振動子の共振周波数の変化量に基づいて前記物質を識別するために用いられる化学センサデバイスであって、複数の振動子を含む振動子基板と、交流電圧を印加すると変形する圧電基板と、を備え、前記複数の振動子のそれぞれは異なる物質の脱吸着特性を有し、前記振動子基板は、前記圧電基板上に積層されており、前記圧電基板に前記交流電圧が印加されると、前記圧電基板が変形するとともに、前記振動子基板における前記複数の振動子がそれぞれ加振される化学センサデバイスが知られている。(特許文献1)
【0008】
特許文献1によれば、化学センサデバイスの振動子に物質が吸着または脱離した際の振動子の共振周波数の変化に基づいて物質を識別することが可能だとされている。
【0009】
また、ガスセンサを用いて排便を検出する技術に関して、布製のT字帯にガスセンサが装着され、T字帯の下垂部位を腰の背中側に当て、下垂部位の上方に設けられた二つのひも状部位を腹側で結び、結ばれたひも状部位と腹との結び目に下垂部位を通すことによって、ガスセンサが肛門付近に配置され、肛門から放出された放屁を、ガスセンサで検出する構成が知られている。(特許文献2)
【0010】
特許文献2によれば、糞便のにおいや腸内ガスの発生する場所の付近にガスセンサを配置することにより、手間をかけずに分析ができるため、個人が容易に健康状態のモニタを行なうことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009-204584号公報
【特許文献2】特開平9-43182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
さて、特許文献1に記載された技術では、振動子に物質が吸着または脱離した際の振動子の共振周波数の変化に基づいて物質を識別する。より具体的には、それぞれ異なる物質の脱吸着特性を有する感応膜を設けた複数の振動子を備え、感応膜に所定の匂い物質が吸着又は脱離した際の、複数の振動子における共振周波数をマップ化しておき、これと計測した共振周波数をマップ化した結果を比較することにより匂い物質を特定する。
【0013】
特許文献1に開示された化学センサデバイスは、空気中に配置された振動子を物理的に振動(共振)させるという測定原理に起因して、温度や湿度の影響を受けやすいとされている。特に、水分子が振動子に脱吸着することから、空気中の水蒸気量の影響を受けやすいとされる。即ち、特許文献1に開示された化学センサデバイスは、当該デバイスが配置された環境によっては、匂い物質の検出精度が低下することがある。しかしながら、特許文献1においては、このような検出精度の低下を抑制する構成等については示唆されていない。
【0014】
また、特許文献2に記載された技術によれば、ガスセンサを肛門の近辺に配置することが可能となる。しかしながら排便とともに排出されるガスには、通常は多量の水蒸気が含まれると考えられるため、当該ガスをそのまま匂い物質の検出対象とした場合、水蒸気の影響を受けて、検出精度が低下することが懸念される。
【0015】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するべく案出されたものであり、空気中に存在する特定の匂い物質を高精度に検出することが可能な匂い検出システム及び匂い検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するためになされた本発明は、空気中に含まれる匂い物質を検出する匂いセンサと、前記匂いセンサの周囲の環境を調整する少なくとも1つの環境調整機器と、前記環境調整機器を制御する機器制御部と、を備え、前記匂いセンサによって匂いを検出するタイミングに先立ち、前記機器制御部は、前記匂いセンサの周囲が所定の環境となるように、前記環境調整機器を制御する匂い検出システムである。
【0017】
これによって、匂いセンサの周囲の環境を調整して、空気中に存在する特定の匂い物質を高精度に検出することが可能となる。
【0018】
また、前記環境調整機器は、冷房機器、暖房機器、加湿器、除湿器、サーキュレータ、扇風機、換気扇の少なくとも一つで構成され、前記機器制御部は、前記匂いセンサの周囲の空気の容積絶対湿度が所定の範囲となるように、前記環境調整機器を制御するようにしたものでもよい。
【0019】
これによって、居住空間等に予め設置された(既設の)空調機器等を活用して匂いセンサの周囲の環境を調整し、匂いセンサの振動子を構成する感応膜への水分子の離脱/吸着を安定な状態に遷移させ、振動子の共振周波数を安定させることが可能となる。
【0020】
また、前記機器制御部は、前記匂いセンサの周囲の気温が20℃~25℃の範囲で、かつ相対湿度が40%~60%の範囲となるように、前記環境調整機器を制御するようにしたものでもよい。
【0021】
これによって、匂いセンサの振動子を構成する感応膜への水分子の離脱/吸着が安定な状態となり、結果として振動子の共振周波数のばらつきが抑制される。
【0022】
また、前記環境調整機器は、冷房機器、暖房機器、サーキュレータ、扇風機、換気扇の少なくとも一つで構成され、前記機器制御部は、前記環境調整機器が発生させた空気流が前記匂いセンサに当たらないように、前記環境調整機器を制御するようにしたものでもよい。
【0023】
これによって、振動子の振動状態が外乱によって変化することを防止して、共振周波数を正確に計測することが可能となる。
【0024】
また、前記環境調整機器には制振部が含まれ、前記機器制御部は、前記匂いセンサの振動を抑制するように、前記制振部を制御するようにしたものでもよい。
【0025】
これによって、振動子の振動状態が外乱によって変化することを防止して、共振周波数を正確に計測することが可能となる。
【0026】
また、前記匂いセンサは介護を要する要介護者の近辺に配置されており、前記匂いセンサによって、前記要介護者の排便に伴う匂いを検出するようにしたものでもよい。
【0027】
これによって、要介護者が排便した際の排便臭を検出して、要介護者の生活支援を図ることが可能となる。
【0028】
また、空気中に含まれる匂い物質を検出する匂いセンサと、前記匂いセンサを駆動するセンサ駆動部と、前記匂いセンサの周囲の環境を計測する環境計測部と、を備え、前記環境計測部は前記匂いセンサの周囲の気流を計測し、前記センサ駆動部は、前記環境計測部によって前記気流が検出されなくなるのを待って、前記匂いセンサを駆動するようにしたものでもよい。
【0029】
これによって、振動子の周囲に気流が発生していない状態で振動子を駆動し、共振周波数を正確に計測することが可能となる。
【0030】
また、空気中に含まれる匂い物質を検出する匂いセンサと、前記匂いセンサを駆動するセンサ駆動部と、前記匂いセンサの周囲の環境を計測する環境計測部と、を備え、前記環境計測部は前記匂いセンサに加わる振動を計測し、前記センサ駆動部は、前記環境計測部によって前記振動が検出されなくなるのを待って、前記匂いセンサを駆動するようにしたものでもよい。
【0031】
これによって、振動子に振動が加わっていない状態で振動子を駆動し、共振周波数を正確に計測することが可能となる。
【0032】
また、空気中に含まれる匂い物質を検出する匂いセンサと、前記匂いセンサが配置された筐体に空気を導入する空気導入部と、前記空気導入部と前記匂いセンサとの間に、空気の状態を調整する環境調整部を設けた匂い検出装置でもよい。
【0033】
これによって、取り込まれた空気の状態を環境調整部で調整して、匂いセンサによる匂い検出精度を向上することが可能となる。
【0034】
また、更に、ガス採取部と、前記ガス採取部で採取された空気を前記空気導入部まで導く筒状の空気搬送部と、を備え、前記空気搬送部に、前記空気搬送部の内外の熱交換を促進する熱交換領域を設けたものでもよい。
【0035】
これによって、排便臭を検出する対象である空気の温度を、匂い検出装置に取り込まれる前に、匂い検出装置が設置された空間の気温と実質的に同一にすることができる。
【発明の効果】
【0036】
このように本発明によれば、空気中に存在する特定の匂い物質を高精度に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の第1実施形態に係る匂い検出システムS1の全体構成を示すブロック構成図
図2】環境計測部1cの詳細を示すブロック構成図
図3】気温T/相対湿度RHと容積絶対湿度VH(水蒸気量)との関係を示す図
図4】匂い検出システムS1の処理の流れを示すフローチャート
図5】匂い検出システムS1で実行される制御の場合分けの条件を示す説明図
図6】(a),(b)は、本発明の第2実施形態における匂い検出装置10の使用態様を示す説明図
図7】匂い検出装置10の全体構成を示すブロック構成図
【発明を実施するための形態】
【0038】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態の匂い検出システムS1について説明する。具体例として、要介護者100が生活する居室等の空間SPにおいて、要介護者100の排便に伴う匂い(排便臭)を検出することで、介護、即ち生活支援に応用する例について説明するが、匂い検出システムS1は、特定の匂いを検出する他の用途にも応用することができる。
【0039】
図1は、本発明の第1実施形態に係る匂い検出システムS1の全体構成を示すブロック構成図である。匂い検出システムS1は、空気中に含まれる匂い物質の検出及び空間SPの環境を計測する機能を備える計測ユニット1と、温湿度を含む空間SPの環境を調整する少なくとも一つの環境調整機器2と、環境調整機器2を制御する機器制御部3とで構成される。なお、図示するように、計測ユニット1の一部の構成要素(ここでは制御部1f、制御コマンド送信部1h)は、機器制御部3の構成要素でもある。
【0040】
計測ユニット1は匂いセンサ1a、センサ駆動部1b、環境計測部1c、通信部1d、ユーザインタフェース1e、制御部1f、制振部1g、制御コマンド送信部1hで構成される。ここで計測ユニット1は、空間SPにおいて介護を要する要介護者100の近辺(要介護者100が使用するベッドの下等、通常、排便臭が漂う範囲)に配置されており、計測ユニット1に含まれる匂いセンサ1aによって、要介護者100の排便に伴う匂いを検出する。
【0041】
制御部1fはCPU(Central Processing Unit)等の演算装置を備え、記憶部(図示せず)を構成するROM(Read Only Memory)、RAM(Random access memory)等に記憶された制御プログラムに従って他の構成要素を制御する。なお制御部1fと他の構成要素とは図示しないバスで結合されており、当該バスを介してデータ等が授受される。なお、制御部1fは、匂いセンサ1aや環境計測部1cから出力されるアナログ信号(図示しない増幅器によって増幅されてもよい)をディジタル信号に変換するA/D変換器を含んでいてもよい。
【0042】
以降、計測ユニット1を構成する各構成要素について説明する。匂いセンサ1aは、化学センサデバイスの一種であって、従来技術として説明したデバイスと同様に、それぞれ異なる匂い物質の脱吸着特性を有する感応膜を設けた複数の振動子を備え、感応膜に所定の匂い物質(分子)が吸着または脱離した際の、複数の振動子における共振周波数に基づいて特定の匂い物質を検出する。なお、匂い物質が吸着したのち一定時間が経過すると、吸着した匂い物質は感応膜から分離し、振動子は再利用が可能となっている。
【0043】
センサ駆動部1bは、制御部1fの指示に基づいて匂いセンサ1aの振動子を振動させる圧電素子に対して、駆動信号を出力する。ここで駆動信号としては、例えば所定の周波数の範囲で掃引(スイープ)する正弦波(交流電圧)が用いられる。なお、駆動信号をスイープする際、その周波数(駆動周波数)は順次制御部1fで決定され、駆動周波数に対応した所定のコマンドがセンサ駆動部1bに出力される。そしてセンサ駆動部1bは当該コマンドに対応した周波数の駆動信号を匂いセンサ1aの圧電素子に供給する。
【0044】
ここで匂いセンサ1aの各振動子には、振動子が振動する際の振幅を計測する圧電素子(ピエゾ素子)が設けられている。圧電素子の出力(通常は正弦波)は、図示しないハードウェア等によって全波(あるいは半波)整流ののち平滑化される。そして上述のA/D変換器によってディジタルデータに変換され、制御部1fの演算装置に入力される。
【0045】
このように制御部1fは振動子の駆動周波数を設定し、当該駆動周波数の正弦波で駆動される振動子の振幅を計測する。更に制御部1fは駆動周波数を順次更新(即ち、スイープ)して振動子の振幅計測を繰り返し、各振動子の振幅が最大となる周波数(共振周波数)を計測する。計測された複数の振動子の共振周波数(以降、「計測データ」と称することがある。)は、制御部1fに取り込まれ、制御部1fは計測データが示すパターンに基づいて匂い物質を特定する。ここで制御部1fは、図示しないタイマ等で構成された時計機能を有しており、計測データを取得した際に、併せて時刻に関するデータ(以降、「時刻データ」と称することがある。)を取得している。
【0046】
ここで要介護者100の排便の有無を検出する場合においては、検出対象となる匂い物質(以降、「排便臭関連物質」と称することがある。)として、例えば以下が知られている。
(1)硫黄系臭気
硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化メチル
(2)窒素系臭気
トリメチルアミン、アンモニア
(3)アルデヒド系
アセドアルデヒド、プロピアルデヒド、ホルムアルデヒド
(4)脂肪酸系
酢酸、吉草酸、イソ吉草酸、プロピオン酸、酪酸
(5)その他
ピリジン
【0047】
そして、匂いセンサ1aを構成する複数の振動子に、例えば硫化水素(HS)に応答する感応膜、メチルメルカプタン(CHSH)に応答する感応膜、トリメチルアミン(CN)に応答する感応膜をそれぞれ設けることで、制御部1fは、計測データのパターンに基づいて、空間SPに排便に伴う匂い物質が存在することを特定し、要介護者100について排便があったか否かを判定する。なお、匂いセンサ1aの振動子の個数を多くして、検出対象である匂い物質の数を増やしてもよく、同一の匂い物質を検出する振動子の数を複数としてもよい。これによって、排便有無の判定の精度を高めることができる。
【0048】
図2は、環境計測部1cの詳細を示すブロック構成図である。以下、図1図2を併用して環境計測部1cの構成を説明する。環境計測部1cは、温度センサ1iと湿度センサ1jとを含んでいる。温度センサ1iとしては、例えば熱電対、サーミスタ(Thermistor)、測温抵抗体を用いることができる。また湿度センサ1jとしては、感湿材料の吸湿/脱湿によって変化する抵抗値を計測する抵抗式センサ、あるいは静電容量を計測する容量式センサを用いることができる。
【0049】
なお、一般に「湿度」と称する場合、「相対湿度RH」(計測された水蒸気量と計測された温度における飽和水蒸気量との比率)を意味することが多い。このような背景から、昨今では湿度センサ1jには温度センサ1iが内蔵され、双方の機能を用いて相対湿度RHの値を出力するICタイプのものが知られている。第1実施形態においても湿度センサ1jは相対湿度RHを計測している。
【0050】
更に、環境計測部1cには、匂いセンサ1a(計測ユニット1)に加わる振動を計測する加速度センサ1kが含まれていてもよい。ここで加速度センサ1kは、例えば周波数変化式、圧電式、ピエゾ抵抗式、静電容量式等の公知技術を用いたものから適宜選択することができる。
【0051】
更に、環境計測部1cには、計測ユニット1あるいは匂いセンサ1aを通過する気流を計測するフローセンサ1mが含まれていてもよい。ここでフローセンサ1mは例えばMEMS技術を応用した熱型フローセンサを用いることができる。
【0052】
以下、図1に戻って説明を続ける。ユーザインタフェース1eは、例えば表示装置、音声出力装置、入力装置(いずれも図示せず)で構成されている。匂い検出システムS1を利用する介護者等は、表示装置を介して要介護者100の排便が検出された時刻等を含む履歴情報を確認することができ、また音声出力装置を介して、要介護者100に排便があった旨の通知を受けることが可能である。
【0053】
匂い検出システムS1において、介護者等による環境調整機器2に対する指示は、ユーザインタフェース1eを介して行われる。即ち介護者等は、ユーザインタフェース1e(ここでは入力装置)を操作して、後に説明するスマートリモコン3b、スマートプラグ3cを介して環境調整機器2の設定を行う。もちろん入力装置は音声入力装置としてもよく、これによって介護者等あるいは要介護者100は複雑な操作を行うことなく、環境調整機器2のON/OFFや運転モード等の各種設定を音声によって簡易に行うことができる。
【0054】
匂い検出システムS1を利用するに際して、介護者等はユーザインタフェース1eを操作して、環境調整機器2の状態を、停止状態を含む所定の状態(ステート)に指定・設定しておく。この環境調整機器2の状態に関する情報(以降、「機器ステート情報」と称することがある。)は制御部1fの記憶部(図示せず)に記憶される。更に匂い検出システムS1の運用が開始された後においても、介護者等や要介護者100はユーザインタフェース1eを介して環境調整機器2を操作することが可能とされている。即ち、ユーザインタフェース1eは介護者等が環境調整機器2を集中管理する手段として用いられる。
【0055】
そして当該操作によって環境調整機器2のステートが変更・修正された場合、「機器ステート情報」が更新され、記憶部に記憶される。後述するように匂いの検出に先立って空間SPの環境(温湿度等)が変えられた場合、制御部1fは、「機器ステート情報」に基づいて、匂いの検出が完了した後に、空間SPの環境を匂いの検出が実行される前の状態に復帰させる。
【0056】
通信部1dは、例えばLTE(Long Term Evolution)、4Gあるいは5Gといった通信規格に準拠した通信モジュールを含む。通信部1dは当該通信モジュールを介してネットワーク5に接続しており、同様にネットワーク5に接続されているスマートフォン等の情報端末6との間で種々の情報を送受信する。
【0057】
また通信部1dは、ネットワーク5に接続されたサーバ7との間で様々な情報を送受信する。ここでサーバ7は、RAID(Redundant Arrays of Independent Disks)等で構成された記憶部(図示せず)を備え、当該記憶部にはデータベース8が構築されている。このデータベース8には、要介護者100の識別情報(ID番号)を主キーとし、当該主キーに関連付けて個人情報(氏名、性別、年齢、居室(病室)番号、要介護者100を担当する介護者等の識別用ID(以降、「担当者ID」と称することがある。)等)が記録されている。
【0058】
制御部1fは、要介護者100に排便があったと判定したとき、通信部1dを介して要介護者100の識別情報及び「要介護者100に排便があった旨の通知」(以下、これらを合わせて「排便通知」と称することがある。)を情報端末6に送信する。ここで匂い検出システムS1を利用する介護者等が複数であって、当該複数の介護者等が情報端末6を所持しているとき、通信部1dは全ての情報端末6に対して、上述の排便通知を行ってもよい。
【0059】
排便通知は、介護者等に対して送信され、固有の識別情報で特定される要介護者100のおむつ交換を促すために使用される。即ち、排便通知を受信した情報端末6は、ネットワーク5を介してサーバ7のデータベース8にアクセスし、おむつ交換が必要な要介護者100の居室(病室)番号を取得する。これによって、手隙の介護者等は要介護者100のサポートを行うことが可能となる。
【0060】
更に、上述したようにデータベース8に担当者IDが記憶され、また介護者等がそれぞれ情報端末6を所有し、当該情報端末6に担当者IDが記憶されている場合、排便通知を受信した情報端末6は、データベース8にアクセスして要介護者100に紐づいた担当者IDを取得し、これと情報端末6に記憶されている担当者IDとが一致することを条件として、「あなたが担当している要介護者100がおむつ交換を待っている」旨の通知を行うことも可能となる。
【0061】
また通信部1dは、排便有無の検出を実行する毎に、要介護者100の識別情報に、排便有無の判定結果、時刻データ、計測データ等を付加してサーバ7に送信してもよい。これによってデータベース8には、予め蓄積されている要介護者100の識別情報、個人情報に加え、排便有無の判断結果、時刻データ、計測データ等が蓄積されうる。これらの蓄積されたデータに対して統計的な処理を行なうことで、識別情報によって特定される各要介護者100の健康管理に有用な情報を生成することが可能となる。
【0062】
制御コマンド送信部1hは、制御部1fが生成した環境調整機器2(後述する)を制御する制御データを、制御コマンド送信部1hを介して機器制御部3の制御データ中継部3aに送信する。制御コマンド送信部1hは、例えば近距離無線規格である「Bluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)」規格に準拠した通信モジュールを含んでいる。当該通信モジュールが提供するデータチャネルを用いて、制御データは制御コマンド送信部1hから制御データ中継部3aに送信される。
【0063】
以降、機器制御部3について説明する。機器制御部3は、制御データ中継部3aと制御部1fと制御コマンド送信部1hとで構成される。なお、制御コマンド送信部1h及び制御部1fは、既に説明した計測ユニット1の構成要素でもあることから、再度の説明は省略する。
【0064】
制御データ中継部3aは、スマートリモコン3bとスマートプラグ3cとで構成される。スマートリモコン3bは、本来的にはスマートフォン等を用いて種々の家庭電化製品を操作する学習リモートコントローラを指す。通常のリモートコントローラ(以降、「リモコン」と称することがある。)では、リモコンから射出される赤外線(あるいはBLE規格に基づく信号。以降、「赤外線等」と称することがある。)で家庭電化製品を制御するが、第1実施形態では制御コマンド送信部1hは、無線LAN等で構成されるネットワーク5a(上述したネットワーク5と区別しているが、もちろん同一であってもよい)に接続されたスマートリモコン3bに所定のコマンドを送信する。そして当該所定のコマンドに基づきスマートリモコン3bが出射した赤外線等によって家庭電化製品を制御する。
【0065】
スマートプラグ3cは、Wi-Fi規格等に準拠した通信モジュール(図示せず)を備え、無線LAN(ここではネットワーク5a)に接続可能に構成された電源プラグである。物理スイッチ(メカニカルスイッチ)がON状態とされた特定の環境調整機器2(後述する)の電源プラグを、電灯線に接続されたスマートプラグ3cに挿入しておけば、計測ユニット1は、ネットワーク5aを介して特定の環境調整機器2の電源をON/OFF制御することが可能となる。なお、将来的にスマートリモコン3bによって制御可能な家庭電化製品の種類・機種が増えた場合、スマートプラグ3cは必須の構成要素ではなくなる。
【0066】
以降、環境調整機器2について説明する。ここで環境調整機器2とは、匂いセンサ1aの周囲の空間SPの気温T・湿度(相対湿度RH、容積絶対湿度VH)・気流といった環境を調整する機能を備える機器を指す。第1実施形態において環境調整機器2としては、少なくともエアコンディショナ(ここでは少なくとも冷房機能を有する機器を想定しているが、暖房機能や除湿機能を有する機器であってもよい。以下、「エアコン2a」と称することがある。)、サーキュレータ2b(扇風機を含む)、ヒータ2c、加湿器2d、除湿器2e、換気扇2fの少なくとも一つが含まれる。
【0067】
第1実施形態の匂い検出システムS1は、要介護者100が生活する空間SPに配置されたエアコン2a等の既設の機器を活用することで、匂い検出の精度向上を図る。
【0068】
制御コマンド送信部1hからネットワーク5aを経由して送られた制御コマンドに基づき、スマートリモコン3bは変調された赤外線等を出射する。エアコン2aは受信した赤外線等のパターンを復号してコマンドを得て、冷房、暖房、除湿といった運転モード、気温、風量、風向等の設定が変更・制御されうる。
【0069】
また、制御コマンド送信部1hからネットワーク5aを経由して送られた制御コマンドに基づき、スマートプラグ3cは当該スマートプラグ3cに接続されたサーキュレータ2b、ヒータ2c、加湿器2d、除湿器2e、換気扇2fの電源をON/OFF制御する。
【0070】
なお、図1では、スマートリモコン3bはエアコン2aのみを制御するように記載しているが、サーキュレータ2b~換気扇2fの各機器がリモコンによって制御される機種である場合、スマートプラグ3cによる電源ON/OFFに替えてスマートリモコン3bを用い、電源ON/OFFのみならずより細かな制御を行ってもよい。より細かな制御として、サーキュレータ2bでは風量や風向等、ヒータ2cでは発熱量(即ち、消費電力量)等、加湿器2dでは時間あたりの加湿量等、除湿器2eでは時間あたりの除湿量等、換気扇2fでは風量等が挙げられる。
【0071】
さて出願人らは、匂いセンサ1aを用いて、室内等の環境における匂いを検出するにあたって、匂いセンサ1aが配置された環境によっては検出精度のばらつきが大きくなることを見出した。匂いセンサ1aとして化学センサデバイスを採用した場合、環境によって振動子の振動状態が変化することが精度劣化の要因であると考えられた。
【0072】
そしてその要因を精査した結果、
(i)匂いセンサ1aが配置された空間における水蒸気量(容積絶対湿度VH)を所定の範囲にすること
(ii)より好ましくは匂いセンサ1aが配置された空間の気温T、相対湿度RHを所定の範囲にすること
(iii)匂いセンサ1aを通過する気流(即ち、匂いセンサ1aの周辺の気流)を抑制すること
(iv)匂いセンサ1aに加わる振動を抑制すること
の要件を満たす場合に、匂いセンサ1aの出力が安定する(共振周波数の再現性が高い)ことを見出した。もちろんこれら(i)~(iv)の要件を完全に満たさなくとも、例えば(i)の要件を満たすことのみによっても、検出精度の劣化が抑制されうる。
【0073】
ここで(i)については、匂いセンサ1aの周囲の空気の水蒸気量を6.9~13.8[g/m]の範囲とすることが好ましい。以降、この範囲を「適切水蒸気量範囲A2」と称することがある。容積絶対湿度VHを適切水蒸気量範囲A2とすることで、匂いセンサ1aの振動子を構成する感応膜への水分子の離脱/吸着が安定な状態となり、結果として共振周波数が安定する。
【0074】
(ii)については、更に匂いセンサ1aの周囲の気温Tを20℃~25℃の範囲とし、かつ相対湿度RHを40%~60%の範囲とすることが更に好ましい。以降、この範囲を「適切温湿度範囲A1」と称することがある。即ち、匂い検出の精度を向上させるためには、(i)匂いセンサ1aの周囲の空気の容積絶対湿度VHを適切水蒸気量範囲A2とすることが好ましく、更に(ii)匂いセンサ1aの周囲の空気の温度及び相対湿度RHを適切温湿度範囲A1とすることが好ましい。
【0075】
図3は、気温T/相対湿度RHと容積絶対湿度VH(水蒸気量)との関係を示す図である。図3においては適切水蒸気量範囲A2を黒背景の白抜き文字とし、更に適切温湿度範囲A1に網点を付している。なお、図3に示す容積絶対湿度VHの各数値は、以下の[数1]を用いて計算した。[数1]において、Tは気温[℃]、RHは相対湿度[%]を示す。
【数1】
【0076】
図3に示すように、適切水蒸気量範囲A2は適切温湿度範囲A1よりも広く分布しており、例えば気温Tが30℃の条件においても、相対湿度RHが25~45%であれば、空気中の水蒸気量は6.9~13.8[g/m]であって、適切水蒸気量範囲A2の条件を満たす。しかしながら出願人らの知見によれば、空気中の水蒸気量が適切水蒸気量範囲A2の範囲を満たしていても、振動子の共振周波数がばらつくことがあった。これに対して、匂いセンサ1aを適切温湿度範囲A1の条件を満たす環境下(このときの環境は、適切水蒸気量範囲A2の条件も満たす)に配置した場合、共振周波数のばらつきが抑制されることがわかった。このことは匂いセンサ1aを構成する振動子には温度特性が存在していることを示唆している。
【0077】
制御部1fは、匂いセンサ1aによって匂いを検出するタイミングに先立ち、環境計測部1cの温度センサ1iの出力に基づいて、計測ユニット1が配置された空間SPの気温(即ち匂いセンサ1aの周囲の気温)を計測し、計測された気温に基づき、環境調整機器2のうちエアコン2a、ヒータ2c、換気扇2fといった気温を変化させ得る機器を駆動する。そしてこれらの環境調整機器2は、計測ユニット1が配置された空間SPの気温が所定の範囲になるように制御される。
【0078】
なお、計測ユニット1に備えられた制振部1gも環境調整機器2に含まれると考えてよい。ここで制振部1gは、例えば電磁石や圧電素子といったアクチュエータ(図示せず)を複数配置した小型のアクティブ除振台で構成することができる。
【0079】
匂いセンサ1aの振動子は機械的に振動していることから、振動子に外乱(ここでは外部から伝達された振動)が加わると、その振動状態が変化してしまい、共振周波数が正確に計測できないことがある。環境計測部1cに加速度センサ1k(図2参照)が含まれる場合、加速度センサ1kは計測ユニット1(匂いセンサ1a)の振動を計測することが可能である。計測された振動パターンは制御部1fに入力され、制御部1fは振動パターンを打ち消す(相殺する)制振パターンを生成し、当該制振パターンに基づいて上述したアクチュエータを駆動する。
【0080】
即ち、第1実施形態では、環境調整機器2には制振部1gが含まれ、機器制御部3(ここでは制御部1f)は、匂いセンサ1aの振動を抑制するように、環境調整機器2(制振部1g)を制御する。
【0081】
また、積極的に制振を行う構成のみならず、制御部1fは加速度センサ1kで計測した計測ユニット1(匂いセンサ1a)の加速度(振動)が所定の値より小さい場合に(振動が小さくなるのを待って)、匂いセンサ1aを駆動して匂いを検出してもよい。これによって実質的に外乱の影響を抑制することができる。
【0082】
即ち、第1実施形態に係る匂い検出システムS1は、空気中に含まれる匂い物質を検出する匂いセンサ1aと、匂いセンサ1aを駆動するセンサ駆動部1bと、匂いセンサ1aの周囲の環境を計測する環境計測部1c(ここでは、加速度センサ1k)と、を備え、環境計測部1cは匂いセンサ1aに加わる振動を計測し、センサ駆動部1bは、環境計測部1cによって振動が検出されなくなるのを待って、匂いセンサ1aを駆動する。
【0083】
環境計測部1cにフローセンサ1m(図2参照)が含まれる場合、フローセンサ1mは計測ユニット1(匂いセンサ1a)の近辺を通過する空気の流れを計測することが可能である。匂いセンサ1aの振動子は空気中で振動することから、振動子に気流が当たると(振動子の周囲に気流が生じていると)振動状態が変化してしまい、共振周波数が正確に計測できないことがある。制御部1fは、フローセンサ1mによって計測された気流が予め定められた値より小さい場合に、匂いセンサ1aに駆動信号を供給することで、外乱の影響を排除する。
【0084】
即ち、第1実施形態の匂い検出システムS1は、空気中に含まれる匂い物質を検出する匂いセンサ1aと、匂いセンサ1aを駆動するセンサ駆動部1bと、匂いセンサ1aの周囲の環境を計測する少なくとも1つの環境計測部1c(ここではフローセンサ1m)と、を備え、環境計測部1cは匂いセンサ1aの周囲の気流を計測し、センサ駆動部1bは、環境計測部1cによって気流が検出されなくなるのを待って、匂いセンサ1aを駆動する。
【0085】
以上述べてきたように、第1実施形態の匂い検出システムS1は、空気中に含まれる匂い物質を検出する匂いセンサ1aと、匂いセンサ1aの周囲の環境を調整する少なくとも1つの環境調整機器2と、この環境調整機器2を制御する機器制御部3と、を備え、匂いセンサ1aによって匂いを検出するタイミングに先立ち、機器制御部3は、匂いセンサ1aの周囲(空間SP)が所定の環境となるように、環境調整機器2を制御する。
【0086】
そして、環境調整機器2には、冷房機器(エアコン2a)、暖房機器(エアコン2a,ヒータ2c)、加湿器2d、除湿器2e(エアコン2aを含む)、サーキュレータ2b(扇風機を含む)、換気扇2fの少なくとも一つで構成され、機器制御部3は、匂いセンサ1aの周囲の空気の容積絶対湿度VH(水蒸気量)が所定の範囲(6.9~13.8[g/m])となるように、環境調整機器2を制御する。
【0087】
図4は、匂い検出システムS1の処理の流れを示すフローチャートである。以降、図4図1図2を併用して第1実施形態に係る匂い検出システムS1で実行される処理の内容ついて詳細に説明する。
【0088】
まず、計測ユニット1の制御部1fは、空間SPの匂いを検出するに先立ち、匂い検出システムS1で時間計測に使用されるタイムカウンタを0にリセットする(ST01)。そして上述した「機器ステート情報」を記憶部から取り出す(ST02)。制御部1fは、環境計測部1cの温度センサ1i及び湿度センサ1jの出力に基づき、空間SPの気温Tと相対湿度RHとを計測し、気温T及び相対湿度RHが上述した適切温湿度範囲A1に含まれているか否かを判定する(ST03)。
【0089】
気温T及び相対湿度RHが上述した適切温湿度範囲A1に含まれている場合(ST03でYes.)、制御部1fは、環境計測部1cの加速度センサ1kの出力に基づき、計測ユニット1(実質的に匂いセンサ1a)の振動(加速度[m/s])を計測し、当該振動が所定の値より小さいか判定する(ST04)。
【0090】
計測ユニット1の振動が所定の値よりも小さい場合(ST04でYes.)、制御部1fは、環境計測部1cのフローセンサ1mの出力に基づき、計測ユニット1の周囲の空気流量[m/s]を計測し、当該空気流量が所定の値より小さいか判定する(ST05)。計測ユニット1の周囲の空気流量が所定の値より小さい場合(ST05でYes.)、制御部1fはセンサ駆動部1bにコマンドを出力して、匂いセンサ1aを駆動して空間SPにおける匂いを検出する(ST06)。
【0091】
気温T及び相対湿度RHが上述した適切温湿度範囲A1に含まれていない場合(ST03でNo.)、制御部1fは環境調整機器2を制御する(ST07)。以降、ST07における環境調整機器2に対する処理内容を詳細に説明する。ここで図5は、匂い検出システムS1で実行される制御の場合分けの条件を示す説明図であり、以下の[Case1]~[Case8]の各場合に対応する気温T及び相対湿度RHの範囲が記載されている。
【0092】
[Case1](気温T<20℃、かつ相対湿度RH<40%である場合)
匂いセンサ1aの周囲の環境が、適切温湿度範囲A1に対して低温・低湿となっている場合である。制御部1fは、匂いセンサ1aの周囲の気温Tを上昇させ、かつ相対湿度RHを上昇させるよう環境調整機器2を制御する。具体的にはエアコン2aの運転モードを暖房とし、設定温度を少なくとも20℃以上に制御する。また併せて加湿器2dをONに制御する。更に、制御部1fはヒータ2cをONに制御してもよい。
【0093】
なお、このとき加湿器2dとしては、スチーム式(加熱式)、加熱気化式のものを用いるとよい。これらのタイプでは気化に際して熱源からの熱を利用するため、気化に際して空間SPの気温が低下しにくい。また、加湿器2dが熱源を使用する温風気化式と室温の風を利用する自然気化式を選択できる機種であり、かつスマートリモコン3bを介して制御されている場合は、温風気化式を選択する。
【0094】
[Case2](20℃≦気温T≦25℃、かつ相対湿度RH<40%である場合)
匂いセンサ1aの周囲の環境が、気温Tは適切温湿度範囲A1に含まれるが、相対湿度RHが低くなっている場合である。制御部1fは、匂いセンサ1aの周囲の気温Tを維持したまま、かつ相対湿度RHを上昇させるよう環境調整機器2を制御する。具体的には加湿器2dをONに制御する。
【0095】
このとき加湿器2dとしては、スチーム式(加熱式)、加熱気化式のものを用いるとよい。これらのタイプでは気化に際して熱源からの熱を利用するため、気化に際して空間SPの気温が低下しにくい。また、加湿器2dが熱源を使用する温風気化式と室温の風を利用する自然気化式を選択できる機種であり、かつスマートリモコン3bを介して制御されている場合は、温風気化式を選択する。
【0096】
[Case3](気温T>25℃、かつ相対湿度RH<40%である場合)
匂いセンサ1aの周囲の環境が、適切温湿度範囲A1に対して高温・低湿となっている場合である。制御部1fは、匂いセンサ1aの周囲の気温Tを低下させ、かつ相対湿度RHを上昇させるよう環境調整機器2を制御する。具体的には加湿器2dをONに制御する。
【0097】
なお、このとき加湿器2dとしては、超音波式あるいは気化式のものを用いるとよい。これらのタイプでは水が気化する際に気化熱が奪われることから、相対湿度RHを上昇させるのと同時に気温Tを低下させることが可能である。また、加湿器2dが熱源を使用する温風気化式と室温の風を利用する自然気化式を選択できる機種であり、かつスマートリモコン3bを介して制御されている場合は、自然気化式を選択する。
【0098】
[Case4](気温T<20℃、かつ40%≦相対湿度RH≦60%である場合)
匂いセンサ1aの周囲の環境が、相対湿度RHは適切温湿度範囲A1に含まれるが、気温Tが低いため適切温湿度範囲A1に含まれない場合である。制御部1fは、匂いセンサ1aの周囲の相対湿度RHを維持したまま、かつ気温Tを上昇させるよう環境調整機器2を制御する。具体的にはエアコン2aの運転モードを暖房とし、設定温度を少なくとも20℃以上に制御する。また併せて加湿器2dをONに制御する。
【0099】
なお、このとき加湿器2dとしては、スチーム式(加熱式)、加熱気化式のものを用いるとよい。これらのタイプでは気化に際して熱源からの熱を利用するため、気化に際して空間SPの気温が低下しにくい。また、加湿器2dが熱源を使用する温風気化式と室温の風を利用する自然気化式を選択できる機種であり、かつスマートリモコン3bを介して制御されている場合は、温風気化式を選択する。
【0100】
[Case5](気温T>25℃、かつ40%≦相対湿度RH≦60%である場合)
匂いセンサ1aの周囲の環境が、相対湿度RHは適切温湿度範囲A1に含まれるが、気温Tが高いため適切温湿度範囲A1に含まれない場合である。制御部1fは、匂いセンサ1aの周囲の相対湿度RHを維持したまま、かつ気温を低下させるよう環境調整機器2を制御する。具体的にはエアコン2aの運転モードを冷房とし、設定温度を少なくとも25℃以下に制御する。
【0101】
エアコン2aの運転モードを冷房とすることで、匂いセンサ1aの周囲の気温は低下する。このとき冷房と同時に除湿が行われるが、気温が低下することで飽和水蒸気量も小さくなるため、相対湿度RHは大きく変化しない。
【0102】
[Case6](気温T<20℃、かつ相対湿度RH>60%である場合)
匂いセンサ1aの周囲の環境が、適切温湿度範囲A1に対して低温・高湿となっている場合である。制御部1fは、匂いセンサ1aの周囲の気温Tを上昇させ、かつ相対湿度RHを低下させるよう環境調整機器2を制御する。具体的にはエアコン2aの運転モードを暖房とし、設定温度を少なくとも20℃以上に制御するとよい。
【0103】
エアコン2aの運転モードを暖房とすることで、匂いセンサ1aの周囲の気温は上昇する。これによって匂いセンサ1aの周囲の空気の飽和水蒸気量が大きくなるため、相対湿度RHは低下する。
【0104】
[Case7](20℃≦気温T≦25℃、かつ相対湿度RH>60%である場合)
匂いセンサ1aの周囲の環境が、気温Tは適切温湿度範囲A1に含まれるが、相対湿度RHが高くなっている場合である。制御部1fは、匂いセンサ1aの周囲の気温Tを維持したまま、かつ相対湿度RHを低下させるよう環境調整機器2を制御する。具体的にはエアコン2aの運転モードを除湿とする。
【0105】
[Case8](気温T>25℃、かつ相対湿度RH>60%である場合)
匂いセンサ1aの周囲の環境が、適切温湿度範囲A1に対して高温・高湿となっている場合である。制御部1fは、匂いセンサ1aの周囲の気温Tを低下させ、かつ相対湿度RHを低下させるよう環境調整機器2を制御する。具体的にはエアコン2aの運転モードを冷房とし、設定温度を少なくとも25℃以下に制御する。また併せて除湿器2eをONに制御してもよい。
【0106】
このように、第1実施形態の匂い検出システムS1では、機器制御部3に含まれる制御部1fは、匂いセンサ1aの周囲の気温Tが、適切温湿度範囲A1(20℃≦T≦25℃)の範囲となるように環境調整機器2を制御するとともに、匂いセンサ1aの周囲の相対湿度RHが、適切温湿度範囲A1(40%≦相対湿度RH≦60%)の範囲となるように環境調整機器2を制御する。
【0107】
さて、第1実施形態における[Case1]~[Case8]のいずれの場合においても、後述するタイムカウンタの値に基づき、例えば運転モードを暖房(冷房)として所定期間運転を継続しても気温Tが上昇(低下)しないような場合はエアコン2aの風量を増大させ、また加湿器2d(除湿器2e)を所定期間稼働しても相対湿度RHが上昇(低下)しないような場合は、加湿器2d(除湿器2e)がスマートリモコン3bを介して制御されていれば、加湿量(除湿量)を増大させるよう制御してもよい。
【0108】
また、匂い検出システムS1に屋外の温湿度を計測する温湿度計(図示せず)が含まれる場合、居室の空間SPの温湿度が適切温湿度範囲A1を満たしていないが、屋外の温湿度が適切温湿度範囲A1を満たしているとの条件の下で、制御部1fは換気扇2fをONに制御して外気を空間SPに取り込んでもよく、更に、当該換気と上述の[Case1]~[Case8]の処理とを並列に実行してもよい。
【0109】
[Case1]~[Case8]のいずれかの処理が終了すると、処理はST09に移る。また、上述したST04の処理において、計測ユニット1の振動が所定の値以上である場合(ST04でNo.)、処理はST09に移る。
【0110】
さて、上述したST05の処理において、計測ユニット1の周囲の空気流量が所定の値以上である場合(ST05でNo.)、制御部1fは環境調整機器2を制御する(ST08)。ST08では、計測ユニット1の周囲において気流を発生させうるサーキュレータ2b(扇風機を含む)や換気扇2fがOFFに制御される。更に、ST03の判定結果を参照して、気温T及び相対湿度RHが上述した適切温湿度範囲A1に含まれている場合は、エアコン2aの送風を伴う運転が停止される。
【0111】
即ち、環境調整機器2は、冷房機器(エアコン2a)、暖房機器(エアコン2a)、サーキュレータ2b(扇風機を含む)、換気扇2fの少なくとも一つで構成され、機器制御部3は、環境調整機器2が発生させた空気流が匂いセンサ1a(計測ユニット1)に当たらないように、あるいは空気流が匂いセンサ1a(計測ユニット1)を通過しないように、環境調整機器2を制御する。
【0112】
なお、上述したST03における判定がYes.の場合(即ち、気温T及び相対湿度RHが上述した適切温湿度範囲A1に含まれている場合)、環境調整機器2の運転状況や設定内容は変更されない。従って、上述したST08でエアコン2aの運転が停止された場合においては、再度ST03を実行した際にNo.と判定される場合を除き、エアコン2aの運転が再開されることはない。これによって起動と停止を繰り返すトグル動作が防止される。
【0113】
ST04で計測ユニット1に加わる振動が所定の値以上であると判定された場合(ST04でNo)、またはST07の処理が終了したのち、またはST08の処理が終了したのち、制御部1fはタイムカウンタをインクリメントする(ST09)。そして、所定のインターバル(例えば1秒)だけ待って、タイムカウンタの値が所定の値(例えば600)より大きいか否かを判定する(ST10)。
【0114】
タイムカウンタの値が所定の値より大きい場合(ST10でYes.)、制御部1fはユーザインタフェース1eや情報端末6を介して介護者等にタイムアウト(エラー)が発生した旨を通知し(ST11)、処理をST16に移す。他方、タイムカウンタの値が所定の値以下の場合(ST10でNo.)、処理をST03に戻す。
【0115】
さて、ST11でエラーを通知するのに先立ち、制御部1fは、温度センサ1i及び湿度センサ1jの出力に基づき気温T、相対湿度RHを取得し、上述の[数1]に基づいて容積絶対湿度VHを計算してもよい。そして求めた容積絶対湿度VHが適切水蒸気量範囲A2に含まれるか否かをチェックし、容積絶対湿度VHが適切水蒸気量範囲A2に含まれる場合は、匂いセンサ1aを駆動して空間SPの匂いを検出しても構わない。ただし、この場合、匂いセンサ1aの信頼性は若干低下するため、「信頼性が不足した条件における検出結果である」旨を報知するとよい。即ち、この状況はエラーではないと取り扱い、ST11は実行せずに処理をST12に移すのが好ましい。もちろん、容積絶対湿度VHが適切水蒸気量範囲A2に含まれない場合は、エラーを通知する(ST11)。
【0116】
ここで、ST11で実行されるエラー通知は、環境調整機器2を制御しても、所定期間内に、匂いセンサ1aの周囲の環境が適切温湿度範囲A1(あるいは適切水蒸気量範囲A2)にならなかった、または計測ユニット1(匂いセンサ1a)に加わる振動が所定の値より小さくならなかった、または計測ユニット1(匂いセンサ1a)の周囲の気流が所定の値より小さくならなかった、のいずれかの理由で、匂いの検出ができなかった(匂いの検出を行わなかった)ことを意味している。
【0117】
ST06で匂いを検出した結果に基づき、制御部1fは空間SPに排便臭関連物質が含まれるか否か、即ち排便有無を判定する(ST12)。空間SPに排便臭関連物質が含まれる場合(ST12でYes.)、制御部1fは、介護者等にユーザインタフェース1eや情報端末6を介して上述の「排便通知」を発行する(ST13)。他方、空間SPに排便臭関連物質が含まれない場合(ST12でNo.)、制御部1fは同様に、「排便は検出されなかった旨の通知」を発行する(ST14)。
【0118】
そして、ST13またはST14の処理が終了すると、制御部1fは、通信部1dを介してサーバ7に要介護者100の識別情報に排便有無の判定結果、時刻データ、計測データ等を付加して送信する(ST15)。そして、ST02で取得した「機器ステート情報」に基づき、環境調整機器2を匂いの検出を行う前の状態に制御し、空間SPの環境を、匂いの検出が実行される前の状態に復帰させる(ST16)。そして処理を終了する。
【0119】
ここで第1実施形態においては、ST04で説明したように、制御部1fは加速度センサ1kの出力に基づき計測ユニット1(実質的に匂いセンサ1a)の振動を計測し、当該振動が所定の値以上である場合(ST04でNo.)は、特段の処理を実行せず、匂いセンサ1aに振動が加わっていない状態を待って匂いを検出するようにしている。他方、上述した制振部1gを用いて除震を行う構成を採用した場合は、匂いセンサ1aには振動が加わらないため、上述したST04のステップは削除されうる。
【0120】
さて、排便臭が匂いセンサ1aの周辺に滞留することで、匂いセンサ1aの初期の環境状態が異なり匂い検出に影響を与えると考えられる。そのため匂い検出システムS1は、匂いセンサ1aに向かう方向に調整した空気を流すリフレッシュ(洗浄)モードを有しており、匂いの検出前に匂いリフレッシュを行うようにしてもよい。これにより次の匂いの検出精度を向上させることができる。具体的には、制御部1fは、匂い検出に先立って、計測ユニット1の周囲に気流を生じさせるよう(計測ユニット1に空気流が当たるよう)環境調整機器2を制御する。即ち、制御部1fは、エアコン2aの風量を増加させる、換気扇2fを駆動する、サーキュレータ2b(扇風機)を駆動する等の制御を行う。これによって、匂いセンサ1aの周囲に滞留している排便臭が排除されうる。
【0121】
なお、図4を用いて説明した匂い検出システムS1の処理の流れにおいて、例えば計測ユニット1に加わる振動を評価するST04の処理、計測ユニット1の周囲の気流を評価するST05の処理は省略しても構わない。これによってシステムコストは低減することとなる。即ち、コストパフォーマンスの観点においても、匂い検出システムS1の構成は決定されうる。
【0122】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態において匂い検出システムS1は、エアコン2a等、居室等に設けられた既設の機器を用いて匂いセンサ1aの周囲の空間SPが所定の環境となるよう制御を行っているが、第2実施形態においては、匂い検出装置10は、当該装置の内部に空気の状態を調整する環境調整部16を設けている点が大きく異なっている。なお、以降の説明において、第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0123】
図6(a),(b)は、本発明の第2実施形態における匂い検出装置10の使用態様を示す説明図である。図示するように、匂い検出装置10は例えばベッド等に臥床する要介護者100の近辺に配置される。そして図6(a)に示すように、匂い検出装置10と、要介護者100の臀部の下方(あるいは要介護者100が装着するおむつ(図示せず)の内部等)に配置されたガス採取部21とが筒状部材(チューブ20)で接続されている。この場合、ガス採取部21で吸引・採取された空気がチューブ20を経由して匂い検出装置10に送られ、匂い検出装置10で排便臭が検出される。
【0124】
ここでチューブ20は主に柔軟性の高いポリプロピレン等の樹脂で構成されているが、チューブ20の一部を熱伝導性に優れる金属材料で構成して、熱交換領域22としてもよい。熱交換領域22を用いることでチューブ内外の熱交換が促進され、チューブ20の内部を移動する気体の温度を外部環境(ここでは室内(空間SP)の気温)と略同一にすることができる。またチューブ20内外の熱交換を促進する観点では、熱交換領域22は、チューブ20の中間に設けられた断面積が増大した金属製の領域として構成されうる。
【0125】
即ち、第2実施形態の匂い検出装置10は、ガス採取部21と、ガス採取部21で採取された空気を空気導入部12まで導く筒状の空気搬送部(チューブ20)と、を備え、空気搬送部に、空気搬送部の内外の熱交換を促進する熱交換領域22を設けてもよい。
【0126】
もちろん、匂い検出装置10の使用態様については、図6(b)に示すように、要介護者100が生活する空間SPに配置され、空気導入部12から空気を取り込むように構成されてもよい。
【0127】
図7は、匂い検出装置10の全体構成を示すブロック構成図である。匂い検出装置10は、空気導入部12と空気排出部13とが設けられた筐体11の内部に流路14が形成されている。匂い検出装置10は、例えば図6(a),(b)に示す態様に基づき空気導入部12から空気(ガス)を吸引し、流路14を経て、空気排出部13から排出する。
【0128】
流路14には空気流AFの上流から下流にかけて、フィルタ15、環境調整部16、環境計測部1c、匂いセンサ1a、送風機17が設けられている。このように、第2実施形態の匂い検出装置10は、空気中に含まれる匂い物質を検出する匂いセンサ1aと、匂いセンサ1aに空気を導入する空気導入部12と、空気導入部12と匂いセンサ1aとの間に、空気の状態を調整する環境調整部16を設けたものである。
【0129】
フィルタ15は例えばプレフィルタ及び集塵フィルタ(いずれも図示せず)の2層構造とされている。フィルタ15によって、下流に配置された環境調整部16、環境計測部1c、匂いセンサ1aに粉塵等が侵入することが防止される。
【0130】
プレフィルタは、空気流AFに含まれる比較的大きな埃を捕集する。集塵フィルタは、プレフィルタを通過した空気が次に通過するフィルタであり、例えばHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタが好適に用いられる。HEPAフィルタは、空気に含まれる粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の捕集率を有し、細菌やPM2.5などの微小粒子物質を捕集する。
【0131】
環境調整部16は、第1実施形態の環境調整機器2に相当する構成要素であって、空気導入部12から取り込まれた空気の温度・湿度(相対湿度RH、容積絶対湿度VH)を調整する。即ち、環境調整部16は匂い検出装置10に取り込まれた空気の状態を調整する機能を備えている。具体的には環境調整部16には、加熱素子16a、冷却素子16b、加湿モジュール16cが含まれる。なお、第1実施形態と同様に、除湿器を備えても良い。
【0132】
ここで加熱素子16aとしては例えば面ヒータやペルチェ素子を利用でき、また冷却素子16bとしてはペルチェ素子を利用できる。ペルチェ素子は表面と裏面とを備え、素子に通電(駆動)すると一方の面が加熱面となり他方の面が冷却面となる。また駆動電流の方向を制御することで、加熱面と冷却面とを切り替えることが可能である。即ちペルチェ素子は加熱素子16aと冷却素子16bとを兼用することが可能である。また空気を冷却素子16bに触れさせて露点以下にすると、空気中の水分が除去されることから冷却素子16bを用いて除湿を行うことができる。なお、取り込んだ空気の温度を維持し、かつ相対湿度RHを低下させる必要がある場合には、加熱面と冷却面との両方を備えるペルチェ素子は有用である。
【0133】
加湿モジュール16cとしては、例えば給水タンク、霧化室、圧電振動子(超音波振動子)、送風ファン(いずれも図示せず)で第1加湿モジュール(図示せず)を構成することができる。霧化室の底部に円盤状の圧電振動子を配置し、給水タンクから水を霧化室に供給して圧電振動子を駆動すると、その振動エネルギーは水面に集中して水柱が形成される。このとき振動によって水の表面張力は大幅に低下し、水柱の先端から水の微粒子が飛散する。この微粒子を送風ファンの気流とともに霧(水滴)として噴出させる。この水滴の粒径は数μmと極めて微小であり直ちに気化する。このように第1加湿モジュールは、空気から気化熱を奪って気温Tを低下させ、更に容積絶対湿度VHを上昇させることが可能である。
【0134】
更に、加湿モジュール16cとして、給水タンク、霧化室、加熱部、送風ファン(いずれも図示せず)で構成される第2加湿モジュール(図示せず)を備えていてもよい。第2加湿モジュールは加熱部を有することで、気温Tの低下を抑制しつつ、容積絶対湿度VH、相対湿度RHを上昇させる。
【0135】
環境計測部1cは、第1実施形態で説明したものと同等の構成を有する(図2参照)。環境計測部1cの温度センサ1i、湿度センサ1jで計測された気温T及び相対湿度RHは制御部1fに入力され、制御部1fはこれに基づき環境調整部16の構成要素を制御(フィードバック制御)する。環境計測部1cで計測された気温T・相対湿度RHに基づく制御の態様については後述する。
【0136】
匂いセンサ1aは、第1実施形態と同様に化学センサデバイスで構成され、センサ駆動部1bによって感応膜を備える振動子をスイープさせ、匂い物質の検出を行う。なお、第2実施形態においても、匂いセンサ1aを制振部1gで支持し、環境計測部1c(加速度センサ1k(図2参照))で検出された振動に基づいて振動を相殺する制振パターンを発生させ、匂いセンサ1aの除震を図ってもよい。
【0137】
また第2実施形態においても、匂いセンサ1aによる匂いの検出結果(要介護者100の識別情報、排便有無の判定結果、時刻データ、計測データ)は、通信部1d、ネットワーク5を介して、情報端末6、サーバ7に送信される。
【0138】
送風機17は例えばファンで構成され、送風機17を駆動することで、匂い検出装置10の内部に外部の空気(図6(a)の場合は、例えば要介護者100のおむつ内の空気)を取り込む。なお、送風機17の駆動源は例えばDCモータが用いられ、制御部1fによって送風量が制御可能となっている。
【0139】
以下、環境計測部1cで計測された気温T・相対湿度RHに基づく制御の具体例を説明する。第2実施形態においても、第1実施形態で用いた図5に示す[Case1]~[Case8]を援用する。
【0140】
[Case1](気温T<20℃、かつ相対湿度RH<40%である場合)
匂い検出装置10に取り込まれた空気の温度・相対湿度RHが、適切温湿度範囲A1に対して低温・低湿となっている場合である。制御部1fは、加熱素子16aと加湿モジュール16cをONに制御する。ここで加湿モジュール16cとしては、加熱部を備える第2加湿モジュールを用いることが望ましい。
【0141】
[Case2](20℃≦気温T≦25℃、かつ相対湿度RH<40%である場合)
匂い検出装置10に取り込まれた空気の気温Tは適切温湿度範囲A1に含まれるが、相対湿度RHが低くなっている場合である。制御部1fは加湿モジュール16cをONに制御する。ここで加湿モジュール16cとしては、加熱部を備える第2加湿モジュールを用いることが望ましい。
【0142】
[Case3](気温T>25℃、かつ相対湿度RH<40%である場合)
匂い検出装置10に取り込まれた空気の温度・相対湿度RHが、適切温湿度範囲A1に対して高温・低湿となっている場合である。制御部1fは加湿モジュール16cをONに制御する。ここで加湿モジュール16cとしては、超音波振動子を備える第1加湿モジュールを用いることが望ましい。
【0143】
[Case4](気温T<20℃、かつ40%≦相対湿度RH≦60%である場合)
匂い検出装置10に取り込まれた空気の相対湿度RHは適切温湿度範囲A1に含まれるが、気温Tが低くなっている場合である。具体的には加熱素子16a及び加湿モジュール16cをONに制御する。ここで加湿モジュール16cとしては、加熱部を備える第2加湿モジュールを用いることが望ましい。
【0144】
[Case5](気温T>25℃、かつ40%≦相対湿度RH≦60%である場合)
匂い検出装置10に取り込まれた空気の相対湿度RHは適切温湿度範囲A1に含まれるが、気温Tが高くなっている場合である。制御部1fは冷却素子16bをONに制御する。
【0145】
[Case6](気温T<20℃、かつ相対湿度RH>60%である場合)
匂い検出装置10に取り込まれた空気の温度・相対湿度RHが、適切温湿度範囲A1に対して低温・高湿となっている場合である。制御部1fは加熱素子16aをONに制御する。
【0146】
[Case7](20℃≦気温T≦25℃、かつ相対湿度RH>60%である場合)
匂い検出装置10に取り込まれた空気の気温Tは適切温湿度範囲A1に含まれるが、相対湿度RHが高くなっている場合である。制御部1fは、冷却素子16b及び加熱素子16aをともにONに制御する。これによって、気温Tの変化を抑制しつつ相対湿度RHのみを低下させる(即ち、エアコンディショナの除湿と同等の機能を発揮させる。)。
【0147】
さて、上述したようにペルチェ素子は加熱面と冷却面とを有することから、例えば匂い検出装置10の筐体11に対して加熱面(冷却面)を垂直方向に延在させて配置し、冷却面に結露した水を外部に排出するドレン排出部を設けることで、単一のペルチェ素子で除湿(ここでは、気温Tの変化を抑制しつつ、相対湿度RHを低下させる処理)を実現することも可能である。
【0148】
[Case8](気温T>25℃、かつ相対湿度RH>60%である場合)
匂い検出装置10に取り込まれた空気の温度・相対湿度RHが、適切温湿度範囲A1に対して高温・高湿となっている場合である。制御部1fは冷却素子16bを駆動する。
【0149】
第2実施形態における[Case1]~[Case8]のいずれのケースにおいても、例えば加熱素子16a(冷却素子16b)をONとして所定期間駆動を継続しても気温Tが上昇(低下)しないような場合、制御部1fは加熱素子16a(冷却素子16b)を駆動する電流を増加させる処理、または送風機17の風量を低下させる処理を行ってもよい。
【0150】
また、いずれのケースにおいても、制御部1fは送風機17を間欠的に駆動して匂いの検出を行うことが好ましい。具体的には、制御部1fは送風機17を駆動して空気導入部12から空気を吸引し、この吸引した空気に対して環境計測部1cで温湿度等を計測し、その結果に基づき取り込んだ空気が適切温湿度範囲A1の範囲になるまで環境調整部16の加熱素子16a、冷却素子16b等を制御する。そして、取り込んだ空気の温湿度が適切温湿度範囲A1の範囲になると、制御部1fは送風機17の駆動を停止し、その後にセンサ駆動部1bを介して匂いセンサ1aを駆動し、匂いの検出を行う。即ち、制御部1fは送風機17のON/OFFを間欠的に制御して、匂いセンサ1aの周囲に気流が生じていない状態(気流を停止した状態)を作り出し、匂いの検出を行う。
【0151】
さて、排便臭が匂いセンサ1aの周辺に滞留することで、匂いセンサ1aの初期の環境状態が異なり匂い検出に影響を与えると考えられる。そのため匂い検出装置10は、匂いセンサ1aに向かう方向に調整した空気を流すリフレッシュ(洗浄)モードを有しており、匂いの検出前に匂いリフレッシュを行うようにしてもよい。これにより次の匂いの検出精度を向上させることができる。具体的には、制御部1fは、匂い検出に先立って、空気流AFが図7に示す向きと逆になるように送風機17を制御する。これによって、流路14には空気排出部13から外気が取り込まれ、匂いセンサ1aの周囲に滞留している排便臭が排除されうる。第2実施形態においては、リフレッシュモードは、図6(a)に示す態様において特に有効に機能する。
【0152】
なお、この場合、送風機17の近傍(流路14において送風機17の上流あるいは下流)に第2のフィルタ(図示せず)を追加してもよい。第2のフィルタについては上述したフィルタ15と同様にプレフィルタと集塵フィルタとで構成してもよい。これによって、リフレッシュモードにおいて流路14に粉塵等が侵入することが防止される。
【0153】
更に、筐体11にリフレッシュ用空気導入部としての逆止弁30を設けてもよい。逆止弁30は空気の流れを一定方向に保ち、逆流を防止する機能を備える。第2実施形態においては、逆止弁30として流路14が正圧のときは開弁し負圧のときは閉弁するタイプのものを採用するとよい。即ち、リフレッシュモードにおいて送風機17を逆方向に駆動すると、逆止弁30が開いて流路14内の空気が外部に排出される。他方、匂い検出の際は逆止弁30が閉じて、流路14と空間SP(外部空間)とが遮断される。これによって、図6(a)に示す態様において、仮にチューブ20の配管抵抗が大きいような場合であっても、匂い検出に先立って匂いセンサ1aの周囲に滞留している排便臭が速やかに排除される。
【0154】
また、いずれのケースにおいても、制御部1fは、匂いを検出するタイミングに先立って、取り込まれた空気の温度・相対湿度RHが適切温湿度範囲A1に含まれるよう制御するが、取り込まれた空気の温度・相対湿度RHが適切温湿度範囲A1から大きく外れているような場合には、所望のタイミングで匂いの検出ができない事態も想定される。また、第2実施形態では、匂い検出装置10は要介護者100が生活している空間SPの温湿度といった環境を変化させないため、匂い検出装置10は常時空気を取り込み、空気の温度・相対湿度RHが常時適切温湿度範囲A1に含まれるよう制御(空調)を継続してもよい。これによって匂い検出装置10は常に匂いを検出可能な状態に維持されるため、匂いの検出に要する時間が実質的に短縮されうる。
【0155】
更に、第2実施形態においても、所定期間制御を行っても取り込まれた空気の温度・相対湿度RHが適切温湿度範囲A1に含まれないような場合において、制御部1fは、温度センサ1i及び湿度センサ1jで取得した気温T、相対湿度RHに基づき容積絶対湿度VHを計算し、この容積絶対湿度VHが適切水蒸気量範囲A2に含まれる場合は、匂いを検出する動作を実行しても構わない。
【0156】
さて、図6(a)を用いて説明した構成においては、ガス採取部21で採取された空気がチューブ20を移動する間に、当該空気の温度を、要介護者100が居住する空間SPの気温Tと略同一に調整することが可能である。特に、上述したようにチューブ20の一部を熱伝導率が高い金属材料で構成した場合や、チューブ20の中間部位にチューブ20の断面積を増大させた熱交換領域22を設けた場合は、空気の温度は、匂い検出装置10に取り込まれる際に空間SPの気温Tと実質的に同一にすることができる。
【0157】
ここで、要介護者100が居住する空間SPでは、通常はエアコン2aやヒータ2c(図1参照)が動作しており、これによって空間SPの気温Tは25℃程度に保たれていると考えられる。この前提において、上述した匂い検出装置10の機能の一部は、既設の機器(ここではエアコン2a等)に代替させることが可能である。
【0158】
他方、要介護者100のおむつ内で採取された空気は、通常の空気と比較して水蒸気が多量に含まれていると想定される。これらのことから、図6(a)に示す態様において、匂い検出装置10に取り込まれる空気は、上述した[Case7](20℃≦気温T≦25℃、かつ相対湿度RH>60%である場合)に相当すると考えられる。
【0159】
この場合、上述したように除湿機能は単一のペルチェ素子で実現することが可能であり、更に匂い検出装置10に加湿モジュール16cを設ける必要がなくなることから、装置コストを更に低減することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明に係る匂い検出システム及び匂い検出装置は、要介護者に排便があったことを迅速に検出し、かつ介護者等の作業負担を軽減することが可能であることから、介護施設等における要介護者の生活支援、乳幼児の排便に伴う匂いを検出することによる育児支援、LPG等のガス漏れ検出、タバコの匂いや特定のガス等に対する環境モニタリング等についても好適に応用することができる。
【符号の説明】
【0161】
1 計測ユニット
1a 匂いセンサ
1b センサ駆動部
1c 環境計測部
1f 制御部
1h 制御コマンド送信部
1i 温度センサ
1j 湿度センサ
2 環境調整機器
3 機器制御部
3a 制御データ中継部
3b スマートリモコン
3c スマートプラグ
5,5a ネットワーク
6 情報端末
7 サーバ
8 データベース
10 匂い検出装置
12 空気導入部
14 流路
16 環境調整部
16a 加熱素子
16b 冷却素子
16c 加湿モジュール
20 チューブ
21 ガス採取部
22 熱交換部
100 要介護者
S1 匂い検出システム
SP 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7