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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020665
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】超電導コイル
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/06 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
H01F6/06 500
H01F6/06 ZAA
H01F6/06 110
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213075
(22)【出願日】2023-12-18
(62)【分割の表示】P 2019187989の分割
【原出願日】2019-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 真司
(57)【要約】
【課題】複数のコイルが積層されて構成された超電導コイルにおいて、電磁力等の応力の影響を低減できる超電導コイルを提供する。
【解決手段】超電導コイル100は、少なくとも2つのコイル体10A,10Bと、テープ状の接続導体20と、を備える。コイル体10A,10Bは、テープ状の超電導線材30が巻回されることで構成されている。接続導体20は、2つのコイル体10A,10Bを電気的に接続する。2つのコイル体10A,10Bは、コイル体10A,10Bの巻回軸C方向に積層されている。接続導体20は、2つのコイル体10A,10Bに全周にわたって導電性の接合層25を介して巻き付けられている。超電導コイル100は、コイル体10A,10Bの周方向の少なくとも一部分において、接続導体20同士が重なり合っている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ状の超電導線材が巻回されることで構成された少なくとも2つのコイル体と、
2つの前記コイル体を電気的に接続するテープ状の接続導体と、を備え、
2つの前記コイル体は、前記コイル体の巻回軸方向に積層され、
前記接続導体は、2つの前記コイル体の外周面に全周にわたって導電性の接合層を介して巻き付けられ、
前記コイル体の周方向の少なくとも一部分において、前記接続導体同士が重なり合っている、超電導コイル。
【請求項2】
前記接続導体は、前記コイル体の外周面に、2周回以上巻き付けられている、請求項1記載の超電導コイル。
【請求項3】
前記接続導体は、前記コイル体の外周面に巻き付けられて両端同士が向かい合うテープ状の第1部材と、
前記第1部材の外周面に重なるテープ状の第2部材と、を含み、
前記第2部材は、少なくとも前記第1部材の一端を含む領域から他端を含む領域に架け渡されている、請求項1記載の超電導コイル。
【請求項4】
前記第2部材は、前記第1部材の外周面に1周回以上巻き付けられている、請求項3記載の超電導コイル。
【請求項5】
前記第2部材の外周面に重なるテープ状の第3部材をさらに備え、
前記第2部材は、前記第1部材の外周面に巻き付けられて両端同士が向かい合い、
前記第3部材は、前記第2部材の一端を含む領域から他端を含む領域に架け渡されている、請求項3記載の超電導コイル。
【請求項6】
前記コイル体を構成する超電導線材は、テープ状のコイル基材と、前記コイル基材に積層されたコイル超電導層とを有し、前記コイル超電導層を外に向けた姿勢とされ、
前記接続導体は、テープ状の接続導体基材と、前記接続導体基材に積層された接続導体超電導層とを有する超電導線材によって構成され、前記接続導体超電導層を内に向けた姿勢とされている、請求項1~5のうちいずれか1項に記載の超電導コイル。
【請求項7】
前記第1部材は、超電導線材で構成され、
前記第2部材は、金属テープで構成されている、請求項3または4に記載の超電導コイル。
【請求項8】
前記第1部材は、前記コイル体の外周面に、1周回を越えて巻き付けられ、
前記第2部材は、前記第1部材の外周面に、1周回を越えて巻き付けられている、請求項7記載の超電導コイル。
【請求項9】
前記接続導体の幅は、2つの前記コイル体の積層方向の合計幅以下である、請求項1~8のうちいずれか1項に記載の超電導コイル。
【請求項10】
テープ状の超電導線材が巻回されることで構成された少なくとも2つのコイル体と、
2つの前記コイル体を電気的に接続するテープ状の接続導体と、を備え、
2つの前記コイル体は、前記コイル体の巻回軸方向に積層され、
前記接続導体は、2つの前記コイル体の内周面に全周にわたって導電性の接合層を介して巻き付けられ、
前記コイル体の周方向の少なくとも一部分において、前記接続導体同士が重なり合っている、超電導コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テープ状の超電導線材を巻回したパンケーキコイルが複数積層されて構成された超電導コイルが用いられている。積層方向に隣なり合う2つのパンケーキコイルは、例えば、外周面に設けられた接続用の金属板を介して電気的に接続される(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-163026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超電導コイルでは、励磁時などに生じた電磁力等の応力が、例えば拡径方向に作用することがある。前述の超電導コイルでは、金属板が接合されている部分と接合されていない部分との境界の金属板周縁において、超電導線材に加わる電磁力等による拡径方向の応力が不連続となり、金属板が接合されていない金属板周縁の超電導線材に応力が集中して作用する。その結果、超電導線材が劣化し、超電導コイルの特性が低下する可能性があった。
【0005】
本発明の一態様は、複数のコイルが積層されて構成された超電導コイルにおいて、電磁力等の応力の影響を低減できる超電導コイルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、テープ状の超電導線材が巻回されることで構成された少なくとも2つのコイル体と、2つの前記コイル体を電気的に接続する接続導体と、を備え、2つの前記コイル体は、前記コイル体の巻回軸方向に積層され、前記接続導体は、2つの前記コイル体の外周面に全周にわたって導電性の接合層を介して巻き付けられ、前記コイル体の周方向の少なくとも一部分において、前記接続導体同士が重なり合っている超電導コイルを提供する。
【0007】
前記超電導コイルは、コイル体の全周にわたる接続導体を備えているため、拡径方向の電磁力等により生じた応力(引張応力など)が、コイル体の周方向に偏って作用するのを抑えることができる。そのため、前記応力がコイル体の一部に集中して作用するのを回避できる。よって、電磁力等の応力の影響を低減し、超電導コイルの特性低下を抑制することができる。
【0008】
前記接続導体は、前記コイル体の外周面に、2周回以上巻き付けられていてもよい。
【0009】
この構成によれば、接続導体がコイル体に2周回以上巻き付けられているため、前述の応力(引張応力など)が、コイル体の周方向において偏るのを抑えることができる。よって、前記応力を原因とする超電導コイルの特性低下を抑制することができる。
【0010】
前記接続導体は、前記コイル体の外周面に巻き付けられて両端同士が向かい合うテープ状の第1部材と、前記第1部材の外周面に重なるテープ状の第2部材と、を含み、前記第2部材は、少なくとも前記第1部材の一端を含む領域から他端を含む領域に架け渡されていてもよい。
【0011】
この構成によれば、第1部材の重なり合っていない部分に第2部材が設けられているため、電磁力等による応力(引張応力など)が、コイル体の周方向に偏って作用するのを抑えることができる。
【0012】
前記第2部材は、前記第1部材の外周面に1周回以上巻き付けられていてもよい。
【0013】
この構成によれば、接続導体の機械的特性を周方向に均等化しやすい。よって、電磁力等による応力(引張応力など)が、コイル体の周方向に偏って作用するのを抑えることができる。
【0014】
前記第2部材の外周面に重なるテープ状の第3部材をさらに備え、前記第2部材は、前記第1部材の外周面に巻き付けられて両端同士が向かい合い、前記第3部材は、前記第2部材の一端を含む領域から他端を含む領域に架け渡されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、第2部材の重なり合っていない部分に第3部材が設けられているため、電磁力等による応力(引張応力など)が、コイル体の周方向に偏って作用するのを抑えることができる。
【0016】
前記コイル体を構成する超電導線材は、テープ状のコイル基材と、前記コイル基材に積層されたコイル超電導層とを有し、前記コイル超電導層を外に向けた姿勢とされ、前記接続導体は、テープ状の接続導体基材と、前記接続導体基材に積層された接続導体超電導層とを有する超電導線材によって構成され、前記接続導体超電導層を内に向けた姿勢とされていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、接続導体とコイル体とは、超電導層側が向かい合う姿勢をとる。接続導体とコイル体の超電導層同士が近くなるため、接続導体とコイル体との接続特性は良好となる。
【0018】
前記第1部材は、超電導線材で構成され、前記第2部材は、金属テープで構成されていてもよい。
【0019】
この構成によれば、第2部材を構成する金属材料の選択によって、超電導コイルに所望の特性を付与することができる。
【0020】
前記第1部材は、前記コイル体の外周面に、1周回を越えて巻き付けられ、前記第2部材は、前記第1部材の外周面に、1周回を越えて巻き付けられていてもよい。
【0021】
この構成によれば、前記第1部材および前記第2部材の機械的強度を高めることができる。よって、前記応力(引張応力など)がコイル体の一部に集中して作用するのを抑制できる。
【0022】
前記接続導体の幅は、2つの前記コイル体の積層方向の合計幅以下であることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、複数の超電導コイルを積層する場合に、接続導体同士が干渉しにくくなる。
【0024】
本発明の他の態様は、テープ状の超電導線材が巻回されることで構成された少なくとも2つのコイル体と、2つの前記コイル体を電気的に接続する接続導体と、を備え、2つの前記コイル体は、前記コイル体の巻回軸方向に積層され、前記接続導体は、2つの前記コイル体の内周面に全周にわたって導電性の接合層を介して巻き付けられ、前記コイル体の周方向の少なくとも一部分において、前記接続導体同士が重なり合っている、超電導コイルを提供する。
【0025】
この構成によれば、電磁力等により生じた応力(引張応力など)が、コイル体の周方向に偏って作用するのを抑えることができる。そのため、前記応力がコイル体の一部に集中して作用するのを回避できる。よって、電磁力等の応力の影響を低減し、超電導コイルの特性低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様によれば、複数のコイルが積層されて構成された超電導コイルにおいて、電磁力等の応力の影響を低減できる超電導コイルを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態の超電導コイルの正面図である。
図2】第1実施形態の超電導コイルの側面図である。
図3】第1実施形態の超電導コイルを構成するコイル体の概略図である。
図4】第1実施形態の超電導コイルの一部の断面図である。
図5】第1実施形態の超電導コイルを構成する酸化物超電導線材の断面図である。
図6】第2実施形態の超電導コイルの正面図である。
図7】第2実施形態の超電導コイルの側面図である。
図8】第3実施形態の超電導コイルの正面図である。
図9】第3実施形態の超電導コイルの側面図である。
図10】第4実施形態の超電導コイルの正面図である。
図11】第4実施形態の超電導コイルの一部の断面図である。
図12】第5実施形態の超電導コイルの正面図である。
図13】第5実施形態の超電導コイルの側面図である。
図14】第6実施形態の超電導コイルの正面図である。
図15】第6実施形態の超電導コイルの側面図である。
図16】第7実施形態の超電導コイルの正面図である。
図17】第7実施形態の超電導コイルの側面図である。
図18】第8実施形態の超電導コイルの正面図である。
図19】第8実施形態の超電導コイルの側面図である。
図20】第8実施形態の超電導コイルの一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
【0029】
[超電導コイル](第1実施形態)
図1は、第1実施形態の超電導コイル100の正面図である。図2は、超電導コイル100の側面図である。図3は、超電導コイル100を構成するコイル体10の概略図である。図4は、超電導コイル100の一部の断面図である。図4は、図1に示すI-I断面図である。図5は、超電導コイル100を構成する酸化物超電導線材30の断面図である。図5は、酸化物超電導線材30の長さ方向に直交する断面の図である。
【0030】
図1および図2に示すように、超電導コイル100は、複数(本実施形態では2つ)のコイル体10と、接続導体20とを備える。2つのコイル体10を、それぞれ第1コイル体10A、第2コイル体10Bという。
【0031】
図3に示すように、コイル体10は、酸化物超電導線材30(超電導線材)で構成される。コイル体10は、酸化物超電導線材30が、厚さ方向に積層されて複数回、巻回された多層巻きコイルである。図2および図3に示す「C」は、コイル体10の巻回軸である。コイル体10は、例えば、円環状のパンケーキコイルである。以下、図2における上方を上とし、下方を下として、各構成の位置関係を説明することがある。巻回軸C周りの方向は、コイル体10の周方向である。
【0032】
図4に示すように、第1コイル体10Aは、酸化物超電導線材30と、絶縁テープ40とが共巻きされた構成であってもよい。第1コイル体10Aは、エポキシ樹脂などの樹脂が含浸されていてもよい。
【0033】
図5に示すように、酸化物超電導線材30は、超電導積層体5と、安定化層6とを備えている。
超電導積層体5は、基材1と、中間層2と、酸化物超電導層3と、保護層4とを備える。超電導積層体5は、基材1上に中間層2を介して酸化物超電導層3および保護層4が形成された構造を有する。すなわち、超電導積層体5は、テープ状の基材1の一方の面に、中間層2、酸化物超電導層3、および保護層4がこの順に積層された構成を有する。
【0034】
コイル体10(10A,10B)については、基材1は、「コイル基材」の一例である。中間層2は、「コイル中間層」の一例である。酸化物超電導層3は、「コイル酸化物超電導層」の一例である。保護層4は、「コイル保護層」の一例である。
【0035】
酸化物超電導線材30は、テープ状に形成されている。Y方向は、酸化物超電導線材30の厚さ方向であり、基材1、中間層2、酸化物超電導層3、保護層4等の各層が積層される方向である。X方向は、酸化物超電導線材30の幅方向であり、酸化物超電導線材30の長手方向および厚さ方向に直交する方向である。
【0036】
基材1は、例えば金属で形成されている。基材1を構成する金属の具体例として、ハステロイ(登録商標)に代表されるニッケル合金;ステンレス鋼;ニッケル合金に集合組織を導入した配向Ni-W合金などが挙げられる。基材1の厚さは、目的に応じて適宜調整すればよく、例えば10~500μmの範囲である。基材1の一方の面(中間層2が形成された面)を第1主面1aといい、第1主面1aと反対の面を第2主面1bという。
【0037】
中間層2は、基材1と酸化物超電導層3との間に設けられる。中間層2は、基材1の第1主面1aに形成される。中間層2は、多層構成でもよく、例えば基材1側から酸化物超電導層3側に向かう順で、拡散防止層、ベッド層、配向層、キャップ層等を有してもよい。これらの層は必ずしも1層ずつ設けられるとは限らず、一部の層を省略する場合や、同種の層を2以上繰り返し積層する場合もある。尚、中間層2は、酸化物超電導線材30において必須な構成ではなく、基材1自体が配向性を備えている場合は中間層2が形成されていなくてもよい。
【0038】
拡散防止層は、基材1の成分の一部が拡散し、不純物として酸化物超電導層3側に混入することを抑制する機能を有する。拡散防止層は、例えば、Si、Al、GZO(GdZr)等から構成される。拡散防止層の厚さは、例えば10~400nmである。
【0039】
拡散防止層の上には、基材1と酸化物超電導層3との界面における反応を低減し、その上に形成される層の配向性を向上するためにベッド層を形成してもよい。ベッド層の材質としては、例えばY、Er、CeO、Dy、Eu、Ho、La等が挙げられる。ベッド層の厚さは、例えば10~100nmである。
【0040】
配向層は、その上のキャップ層の結晶配向性を制御するために2軸配向する物質から形成される。配向層の材質としては、例えば、GdZr、MgO、ZrO-Y(YSZ)、SrTiO、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等の金属酸化物を例示することができる。配向層はIBAD(Ion-Beam-Assisted Deposition)法で形成することが好ましい。
【0041】
キャップ層は、上述の配向層の表面に成膜されて、結晶粒が面内方向に自己配向し得る材料からなる。キャップ層の材質としては、例えば、CeO、Y、Al、Gd、ZrO、YSZ、Ho、Nd、LaMnO等が挙げられる。キャップ層の厚さは、50~5000nmの範囲が挙げられる。
【0042】
酸化物超電導層3は、酸化物超電導体から構成される。酸化物超電導体としては、特に限定されないが、例えば一般式REBaCu(RE123)で表されるRE-Ba-Cu-O系酸化物超電導体(REBCO系酸化物超電導体)が挙げられる。希土類元素REとしては、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luのうちの1種又は2種以上が挙げられる。中でも、Y、Gd、Eu、Smの1種か、又はこれら元素の2種以上の組み合わせが好ましい。一般に、Xは、7-x(酸素欠損量x:約0~1程度)である。酸化物超電導層3の厚さは、例えば0.5~5μm程度である。この厚さは、長手方向に均一であることが好ましい。酸化物超電導層3は、中間層2の主面2a(基材1側とは反対の面)に形成されている。
【0043】
保護層4は、事故時に発生する過電流をバイパスしたり、酸化物超電導層3と保護層4の上に設けられる層との間で起こる化学反応を抑制する等の機能を有する。保護層4の材質としては、例えば銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、金と銀との合金、その他の銀合金、銅合金、金合金などが挙げられる。保護層4は、少なくとも酸化物超電導層3の主面3a(中間層2側とは反対の面)を覆っている。保護層4の厚さは、特に限定されないが、例えば1~30μm程度が挙げられる。
【0044】
5aは超電導積層体5の第1主面(保護層4の主面4a)である。第1主面5aは超電導積層体5の酸化物超電導層3側の面である。5bは超電導積層体5の側面(基材1の側面、中間層2の側面、酸化物超電導層3の側面、および保護層4の側面)である。5cは、第1主面5aとは反対の面であって、超電導積層体5の第2主面(基材1の第2主面1b)である。
【0045】
安定化層6は、超電導積層体5の第1主面5a、側面5b,5bおよび第2主面5cを覆う。安定化層6の厚さは、例えば10~300μm程度である。
安定化層6は、酸化物超電導層3が常電導状態に転移した時に発生する過電流を転流させるバイパス部としての機能を有する。安定化層6の構成材料としては、銅、銅合金(例えばCu-Zn合金、Cu-Ni合金等)、アルミニウム、アルミニウム合金、銀等の金属が挙げられる。安定化層6は、めっき(例えば電解めっき)によって形成することができる。
【0046】
図4に示すように、酸化物超電導線材30は、基材1を内周側に向け、酸化物超電導層3を外周側に向けた姿勢で巻回されている。
【0047】
第2コイル体10Bは、第1コイル体10Aと同様の構成である。第2コイル体10Bは、例えば、円環状のパンケーキコイルである(図3参照)。第1コイル体10Aの外径と第2コイル体10Bの外径とは同じである。
図2に示すように、第2コイル体10Bは、第1コイル体10Aと共通の巻回軸Cを有する。第1コイル体10Aと第2コイル体10Bとは、巻回軸Cの方向に積層されている。第1コイル体10Aと第2コイル体10Bとは、巻回軸Cの方向に隣り合っている。図4に示すように、第1コイル体10Aと第2コイル体10Bとの間には、絶縁性のスペーサ41(絶縁シート)が設けられている。
【0048】
図2および図4に示すように、接続導体20は、テープ状とされている。図1に示すように、接続導体20は、長さ方向の一端を第1端20aという。接続導体20の長さ方向の他端を第2端20bという。
【0049】
図2および図4に示すように、接続導体20は、例えば、REBCO系酸化物超電導体、BSCCO系酸化物超電導体、金属(銅、銅合金、銀合金等)などで構成される。
超電導コイル100では、接続導体20は、酸化物超電導線材30(図5参照)と同様の酸化物超電導線材50(超電導線材)によって構成されている。
【0050】
図4に示すように、酸化物超電導線材50は、超電導積層体5と、安定化層6とを備えている。超電導積層体5は、基材1と、中間層2と、酸化物超電導層3と、保護層4とを備える。
接続導体20では、基材1は、「接続導体基材」の一例である。中間層2は、「接続導体中間層」の一例である。酸化物超電導層3は、「接続導体酸化物超電導層」の一例である。保護層4は、「接続導体保護層」の一例である。
【0051】
図2および図4に示すように、接続導体20は、第1コイル体10Aおよび第2コイル体10Bの外周面11A,11Bに、コイル体10A,10Bの周方向に沿って巻き付けられている。図4に示すように、接続導体20は、基材1を外周側に向け、酸化物超電導層3を内周側に向けた姿勢でコイル体10A,10Bに巻き付けられている。接続導体20とコイル体10A,10Bとは、酸化物超電導層3側が向かい合う姿勢をとっている。接続導体20とコイル体10A,10Bの酸化物超電導層3同士が近くなるため、接続導体20とコイル体10A,10Bとの接続特性は良好となる。
【0052】
図4に示すように、接続導体20(後述する周回部分22)の内周面21のうち第1側縁21a(幅方向の一端)を含む領域は、第1コイル体10Aの外周面11Aに、接合層25を介して接している。接続導体20の内周面21のうち第2側縁21b(幅方向の他端)を含む領域は、第2コイル体10Bの外周面11Bに、接合層25を介して接している。接続導体20は、第1コイル体10Aの外周面11Aから、第2コイル体10Bの外周面11Bに架け渡されている。接続導体20は、第1コイル体10Aと第2コイル体10Bとを電気的に接続している。
【0053】
接続導体20は、2つのコイル体10の積層方向の幅W3(すなわち、第1コイル体10A、第2コイル体10B、およびスペーサ41の合計幅)の中央に設けられているとよい。これにより、第1コイル体10Aと接続導体20との接合面積と、第2コイル体10Bと接続導体20との接合面積とが同一となるため、第1コイル体10Aと第2コイル体10Bとの間の電気抵抗を小さくすることができる。
【0054】
接続導体20の幅W1は、2つのコイル体10の合計幅W3以下であるとよい。接続導体20の幅W1が、2つのコイル体10の幅W3よりも大きいと、複数の超電導コイル100を積層しようとした際に接続導体20同士が干渉する可能性がある。幅W1が幅W3以下であると、このような干渉は起こりにくくなる。
また、接続導体20の幅W1と、2つのコイル体10の幅W3とは略同一であると良い。これにより、電磁力等の応力がコイル体10A,10Bの拡径方向に作用した場合に、コイル体10A,10Bの酸化物超電導線材30が外方に倒れ込む変形を抑制することができる。
【0055】
「接合層」は、金属などの導電性材料で形成された導電性の層である。接合層は、例えば、半田、ロウ材などで構成される。接合層25は、接続導体20とコイル体10A,10Bとを接合する。接合層26は、第1長さ領域20Aと第2長さ領域20Bとを接合する。
図4では、接合層25は接続導体20と同じ幅とされているが、接合層は、コイル体の外周面に接続導体の幅を越えて幅方向に濡れ広がった形態であってもよい。
【0056】
図1に示すように、接続導体20は、第1コイル体10Aおよび第2コイル体10Bに巻き付けられている。接続導体20は、第1コイル体10Aおよび第2コイル体10Bの外周面11A,11Bの1周回を越える長さを有する。そのため、接続導体20は、コイル体10A,10Bを周方向に沿って1周回し、この1周回分の長さ部分(以下、周回部分22という)に、余長部分(以下、第2長さ領域20Bという)が重ねられている。
【0057】
接続導体20の周回部分22は、外周面11A,11Bの全周にわたって設けられている。周回部分22は、コイル体10A,10Bの外周面11A,11Bに、接合層25を介して接している。接続導体20の第2長さ領域20B(余長部分)は、周回部分22の第1長さ領域20Aの外周面に、接合層26を介して重ねられている。第1長さ領域20Aは、第1端20aを含む長さ領域である。第2長さ領域20Bは、第2端20bを含む長さ領域である。このように、接続導体20は、コイル体10A,10Bの周方向の一部分(第1長さ領域20Aおよび第2長さ領域20B)において重なり合っている。重なり部分の長さは、例えば10mm以上である。
【0058】
超電導コイル100では、励磁時などに生じた電磁力等の応力がコイル体10A,10Bの拡径方向に作用する可能性がある。超電導コイル100は、コイル体10A,10Bの全周にわたる接続導体20を備えているため、電磁力等により生じた応力(引張応力など)が、コイル体10A,10Bの周方向に偏って作用するのを抑えることができる。そのため、前記応力(引張応力など)がコイル体10A,10Bの一部に集中して作用するのを回避できる。よって、電磁力等の応力の影響を低減し、超電導コイル100の特性低下を抑制することができる。
【0059】
接続導体20は、外周面11A,11Bの1周回を越える長さを有し、一部の長さ領域20A,20Bが重なっているため、電磁力等の応力によりコイル体10A,10Bの外径が大きくなった場合でも、接続導体20の全周にわたる巻き付きを確保できる。よって、前記応力(引張応力など)がコイル体10A,10Bの一部に集中して作用するのを回避できる。
【0060】
接続導体20は、1本の酸化物超電導線材50で構成されているため、酸化物超電導線材50をコイル体10A,10Bに巻き付けるだけで容易に設置することができる。
【0061】
[超電導コイル](第2実施形態)
図6は、第2実施形態の超電導コイル200の正面図である。図7は、超電導コイル200の側面図である。なお、他の実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0062】
図6および図7に示すように、超電導コイル200は、複数のコイル体10と、接続導体120とを備える。接続導体120は、酸化物超電導線材50で構成されている。接続導体120は、接続導体20(図1および図2参照)に比べて長く形成されている。超電導コイル200のその他の構成は、図1および図2に示す超電導コイル100と同じである。
【0063】
接続導体120は、コイル体10A,10Bに巻き付けられている。接続導体120は、コイル体10A,10Bの外周面11A,11Bに、接合層125を介して接している。接続導体120は、第1コイル体10Aと第2コイル体10Bとを電気的に接続している。
【0064】
接続導体120は、コイル体10A,10Bの外周面11A,11Bの2周回を越える長さを有する。そのため、接続導体120は、コイル体10A,10Bを周方向に沿って2周回し、この2層構造の周回部分122に余長部分が重ねられている。
接続導体120の周回部分122のうち、第1端120aを含む第1層122Aは、外周面11A,11Bの全周にわたって設けられている。第1層122Aは、コイル体10A,10Bの外周面11A,11Bに、接合層125を介して接している。周回部分122のうち第2層122Bは、第1層122Aの外周面に接合層126を介して重ねられている。第2端120bを含む第2長さ領域120B(余長部分)は、第2層122Bの外周面に接合層127を介して重ねられている。
【0065】
超電導コイル200は、コイル体10A,10Bの全周にわたる接続導体120を備えているため、電磁力等による応力(引張応力など)が、コイル体10A,10Bの周方向に偏って作用するのを抑えることができる。よって、前記応力を原因とする超電導コイル200の特性低下を抑制することができる。
【0066】
接続導体120は、一部の長さ領域、すなわち第2層122Bおよび第2長さ領域120Bが第1層122Aに重なっているため、電磁力等の応力によりコイル体10A,10Bの外径が大きくなった場合でも、接続導体120の全周にわたる巻き付きを確保できる。
【0067】
超電導コイル200では、接続導体120が1本の酸化物超電導線材50で構成されているため、酸化物超電導線材50をコイル体10A,10Bに巻き付けるだけで容易に設置することができる。
【0068】
接続導体120は、コイル体10A,10Bに2周回以上巻き付けられているため、前述の応力(引張応力など)が、コイル体10A,10Bの周方向において偏るのを抑えることができる。よって、前記応力を原因とする超電導コイル200の特性低下を抑制することができる。
【0069】
[超電導コイル](第3実施形態)
図8は、第3実施形態の超電導コイル300の正面図である。図9は、超電導コイル300の側面図である。なお、他の実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0070】
図8および図9に示すように、超電導コイル300は、複数のコイル体10と、接続導体220とを備える。接続導体220は、第1接続導体220A(第1部材)と、第2接続導体220B(第2部材)とを備える。第1接続導体220Aおよび第2接続導体220Bは、酸化物超電導線材50で構成されている。
【0071】
第1接続導体220Aは、コイル体10A,10Bに巻き付けられている。第1接続導体220Aは、コイル体10A,10Bの外周面11A,11Bに、接合層225を介して接している。第1接続導体220Aは、第1コイル体10Aと第2コイル体10Bとを電気的に接続している。
【0072】
第1接続導体220Aは、コイル体10A,10Bの外周面11A,11Bを1周回する長さを有する。そのため、第1接続導体220Aは、コイル体10A,10Bを周方向に沿って1周回する。第1接続導体220Aは、外周面11A,11Bに全周にわたって接合層225を介して接している。第1接続導体220Aの第1端220Aaと第2端220Abとは向かい合っている。すなわち、第1接続導体220Aの両端同士は向かい合っている。第1端220Aaと第2端220Abとは突き合わせられていてもよい。
【0073】
接続導体は、コイル体の外周面の周回長さの95%以上に巻き付けられていれば、コイル体の外周面を周回したと認めることができる。この場合、接続導体は、コイル体の全周にわたって巻き付けられているとみなすことができる。
【0074】
第2接続導体220Bは、第1接続導体220Aの外周面に接合層226を介して重ねられている。第2接続導体220Bは、第1接続導体220Aの第1長さ領域220A1から、第2長さ領域220A2にかけて周方向に架け渡されている。第1長さ領域220A1は、第1接続導体220Aのうち第1端220Aaを含む長さ領域である。第2長さ領域220A2は、第1接続導体220Aのうち第2端220Abを含む長さ領域である。
【0075】
超電導コイル300は、コイル体10A,10Bの全周にわたる接続導体220を備えているため、電磁力等による応力(引張応力など)が、コイル体10A,10Bの周方向に偏って作用するのを抑えることができる。よって、前記応力を原因とする超電導コイル300の特性低下を抑制することができる。
【0076】
接続導体220は、第2接続導体220Bが第1接続導体220Aに重なっているため、電磁力等の応力によりコイル体10A,10Bの外径が大きくなった場合でも、接続導体220の全周にわたる巻き付きを確保できる。
【0077】
接続導体220は、両端同士が向かい合って巻き付けられた第1接続導体220Aを有する。超電導コイル300は、第1接続導体220Aの重なり合っていない部分に第2接続導体220Bが設けられているため、電磁力等による応力(引張応力など)が、コイル体10A,10Bの周方向に偏って作用するのを抑えることができる。
【0078】
[超電導コイル](第4実施形態)
図10は、第4実施形態の超電導コイル400の正面図である。図11は、超電導コイル400の一部の断面図である。図11は、図10に示すII-II断面図である。なお、他の実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0079】
図10および図11に示すように、超電導コイル400は、複数のコイル体10と、接続導体320とを備える。接続導体320は、第1接続導体220A(図8および図9参照)と、第2接続導体320B(第2部材)と、第3接続導体320C(第3部材)とを備える。
【0080】
第1接続導体220Aは、酸化物超電導線材50で構成されている。
第2接続導体320Bおよび第3接続導体320Cは、金属テープで構成されている。金属テープを構成する金属は、ニッケル合金(ハステロイ(登録商標)等)、銅、銅合金、銀合金などを挙げることができる。
【0081】
第2接続導体320Bは、第1接続導体220Aの外周面に接合層326を介して重ねられている。
第2接続導体320Bは、第1接続導体220Aの外周面を1周回する長さを有する。そのため、第2接続導体320Bは、第1接続導体220Aを周方向に沿って1周回する。第2接続導体320Bの第1端320Baと第2端320Bbとは向かい合っている。すなわち、第2接続導体320Bの両端同士は向かい合っている。第1端320Baと第2端320Bbとは突き合わせられていてもよい。
【0082】
第1接続導体220Aの端220Aa,220Abの周方向の位置と、第2接続導体320Bの端320Ba,320Bbの周方向の位置とは異なる。第1接続導体220Aの端220Aa,220Abと、第2接続導体320Bの端320Ba,320Bbとは、例えば、周方向に180°ずれて位置する。
【0083】
第3接続導体320Cは、第2接続導体320Bの外周面に接合層327を介して重ねられている。
第3接続導体320Cは、第2接続導体320Bの第1長さ領域320B1から、第2長さ領域320B2にかけて周方向に架け渡されている。第1長さ領域320B1は、第2接続導体320Bのうち第1端320Baを含む長さ領域である。第2長さ領域320B2は、第2接続導体320Bのうち第2端320Bbを含む長さ領域である。
【0084】
図11に示すように、第2接続導体320Bの幅W2は、第1接続導体220Aの幅W1より大である。第2接続導体320Bの幅W2は、コイル体10A,10Bと絶縁性のスペーサ41との合計幅W3以下(すなわち、幅W3と同じまたは幅W3より小)であることが好ましい。第2接続導体320Bの第1側縁320Bc(幅方向の一端)は、第1コイル体10Aの上面と同じ高さ位置であるか、または当該上面より低く位置する。第2接続導体320Bの第2側縁320Bd(幅方向の他端)は、第2コイル体10Bの下面と同じ高さ位置であるか、または当該下面より高く位置する。
図11では、第2接続導体320Bの幅W2は、コイル体10A,10Bの合計幅W3より小さい。第2接続導体320Bの第1側縁320Bcは、第1コイル体10Aの上面より低く位置する。第2接続導体320Bの第2側縁320Bdは、第2コイル体10Bの下面より高く位置する。
【0085】
第2接続導体320Bの幅W2は、コイル体10A,10B,絶縁性のスペーサ41の合計幅W3と略同一であるとよい。これにより、第1接続導体220Aの幅W1が幅W3よりも小さかったとしても、励磁時などに生じた電磁力等の応力がコイル体10A,10Bの拡径方向に作用した場合に、コイル体10A,10Bの外周面を幅方向の広範囲にわたって支えることができる。よって、酸化物超電導線材30が外方に倒れ込む変形を抑制できる。
【0086】
第2接続導体320Bの幅W2は、コイル体10A,10Bの合計幅W3以下であると、第2接続導体320Bが、巻回軸C方向に隣り合う他の第2接続導体320B(図示略)と接触するのを回避しやすくなる。
第3接続導体320C(図10参照)の幅は、第2接続導体320Bの幅と同じであってよい。
【0087】
超電導コイル400は、コイル体10A,10Bの全周にわたる接続導体320を備えているため、電磁力等による応力(引張応力など)が、コイル体10A,10Bの周方向に偏って作用するのを抑えることができる。よって、前記応力を原因とする超電導コイル400の特性低下を抑制することができる。
【0088】
接続導体320では、第2接続導体320Bは第1接続導体220Aに重なっている。さらに、第3接続導体320Cは第2接続導体320Bに重なっている。そのため、電磁力等の応力によりコイル体10A,10Bの外径が大きくなった場合でも、接続導体320の全周にわたる巻き付きを確保できる。
【0089】
超電導コイル400は、第2接続導体320Bが1周回にわたって第1接続導体220Aに巻き付けられているため、接続導体320の機械的特性を周方向に均等化しやすい。よって、電磁力等による応力(引張応力など)が、コイル体10A,10Bの周方向に偏って作用するのを抑えることができる。
【0090】
超電導コイル400は、第2接続導体320Bの重なり合っていない部分に第3接続導体320Cが設けられているため、電磁力等による応力(引張応力など)が、コイル体10A,10Bの周方向に偏って作用するのを抑えることができる。
【0091】
超電導コイル400は、金属テープで構成される第2接続導体320Bおよび第3接続導体320Cを備えるため、接続導体320B,320Cを構成する金属材料の選択によって、超電導コイル400に所望の特性を付与することができる。
例えば、接続導体320B,320Cを構成する金属がニッケル合金(ハステロイ(登録商標)等)であれば、接続導体320B,320Cの機械的強度が高くなるため、前記応力の影響を低減するうえで有利となる。接続導体320Bを構成する金属が良導性金属(例えば銅、銅合金、銀合金など)であれば、バイパス部としての接続導体320Bの機能を高めることができる。
【0092】
[超電導コイル](第5実施形態)
図12は、第5実施形態の超電導コイル500の正面図である。図13は、超電導コイル500の側面図である。なお、他の実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0093】
図12および図13に示すように、超電導コイル500は、複数のコイル体10と、接続導体420とを備える。接続導体420は、第1接続導体220A(図8および図9参照)と、第2接続導体420B(第2部材)とを備える。第1接続導体220Aおよび第2接続導体420Bは、酸化物超電導線材50で構成されている。
【0094】
第2接続導体420Bは、第1接続導体220Aの外周面に接合層426を介して重ねられている。
第2接続導体420Bは、第1接続導体220Aの外周面を1周回する長さを有する。そのため、第2接続導体420Bは、第1接続導体220Aを周方向に沿って1周回する。第2接続導体420Bの第1端420Baと第2端420Bbとは向かい合っている。すなわち、第2接続導体420Bの両端同士は向かい合っている。第1端420Baと第2端420Bbとは突き合わせられていてもよい。
なお、第2接続導体は、第1接続導体の外周面に、1周回を越えて巻き付けられてもよい。その場合、第2接続導体は、一部の長さ領域が互いに重なり合う。
【0095】
第1接続導体220Aの端220Aa,220Abの周方向の位置と、第2接続導体420Bの端420Ba,420Bbの周方向の位置とは異なる。第1接続導体220Aの端220Aa,220Abと、第2接続導体420Bの端420Ba,420Bbとは、例えば、周方向に180°ずれて位置する。
【0096】
超電導コイル500は、コイル体10A,10Bの全周にわたる接続導体420を備えているため、電磁力等による応力(引張応力など)が、コイル体10A,10Bの周方向に偏って作用するのを抑えることができる。よって、前記応力を原因とする超電導コイル500の特性低下を抑制することができる。
【0097】
接続導体420は、第2接続導体420Bが第1接続導体220Aに重なっているため、電磁力等の応力によりコイル体10A,10Bの外径が大きくなった場合でも、接続導体420の全周にわたる巻き付きを確保できる。
【0098】
接続導体420は、第1接続導体220Aがコイル体10A,10Bを1周回し、第2接続導体420Bが第1接続導体220Aを1周回するように巻き付けられて構成されているため、周方向の機械的特性の偏りを小さくできる。よって、前記応力を原因とする超電導コイル500の特性低下を抑制することができる。
【0099】
[超電導コイル](第6実施形態)
図14は、第6実施形態の超電導コイル600の正面図である。図15は、超電導コイル600の側面図である。なお、他の実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0100】
図14および図15に示すように、超電導コイル600は、複数のコイル体10と、接続導体520とを備える。接続導体520は、第1接続導体220A(図8および図9参照)と、第2接続導体520B(第2部材)とを備える。第2接続導体520Bは、金属テープで構成されている。金属テープを構成する金属は、銅、銅合金、銀合金、ニッケル合金(ハステロイ(登録商標)等)などを挙げることができる。
【0101】
第2接続導体520Bは、第1接続導体220Aの外周面に接合層526を介して重ねられている。
第2接続導体520Bは、第1接続導体220Aの外周面を1周回する長さを有する。そのため、第2接続導体520Bは、第1接続導体220Aを周方向に沿って1周回する。第2接続導体520Bの第1端520Baと第2端520Bbとは向かい合っている。すなわち、第2接続導体520Bの両端同士は向かい合っている。第1端520Baと第2端520Bbとは突き合わせられていてもよい。
【0102】
第1接続導体220Aの端220Aa,220Abの周方向の位置と、第2接続導体520Bの端520Ba,520Bbの周方向の位置とは異なる。第1接続導体220Aの端220Aa,220Abと、第2接続導体520Bの端520Ba,520Bbとは、例えば、周方向に180°ずれて位置する。
【0103】
超電導コイル600は、コイル体10A,10Bの全周にわたる接続導体520を備えているため、電磁力等による応力(引張応力など)が、コイル体10A,10Bの周方向に偏って作用するのを抑えることができる。よって、前記応力を原因とする超電導コイル600の特性低下を抑制することができる。
【0104】
接続導体520は、第2接続導体520Bが第1接続導体220Aに重なっているため、電磁力等の応力によりコイル体10A,10Bの外径が大きくなった場合でも、接続導体520の全周にわたる巻き付きを確保できる。
【0105】
接続導体520は、第1接続導体220Aがコイル体10A,10Bを1周回し、第2接続導体520Bが第1接続導体220Aを1周回するように巻き付けられて構成されているため、周方向の機械的特性の偏りを小さくできる。よって、前記応力を原因とする超電導コイル600の特性低下を抑制することができる。
【0106】
超電導コイル600は、金属テープで構成される第2接続導体520Bを備えるため、第2接続導体520Bを構成する金属材料の選択によって、超電導コイル600に所望の特性を付与することができる。例えば、第2接続導体520Bを構成する金属が良導性金属(例えば銅、銅合金、銀合金など)であれば、バイパス部としての第2接続導体520Bの機能を高めることができる。
【0107】
[超電導コイル](第7実施形態)
図16は、第7実施形態の超電導コイル700の正面図である。図17は、超電導コイル700の側面図である。なお、他の実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0108】
図16および図17に示すように、超電導コイル700は、複数のコイル体10と、接続導体620とを備える。接続導体620は、第1接続導体20(図1および図2参照)と、第2接続導体620B(第2部材)とを備える。第2接続導体620Bは、金属テープで構成されている。金属テープを構成する金属は、銅、銅合金、銀合金、ニッケル合金(ハステロイ(登録商標)等)などを挙げることができる。
【0109】
第2接続導体620Bは、第1接続導体20の外周面に接合層626を介して重ねられている。
第2接続導体620Bは、第1接続導体20の1周回を越える長さを有する。そのため、第2接続導体620Bは、第1接続導体20を周方向に沿って1周回し、この周回部分622に余長部分(第2長さ領域620D)が重ねられている。第2接続導体620Bの第2長さ領域620D(余長部分)は、周回部分622の第1長さ領域620Cの外周面に、接合層627を介して重ねられている。
【0110】
超電導コイル700は、コイル体10A,10Bの全周にわたる接続導体620を備えているため、電磁力等による応力(引張応力など)が、コイル体10A,10Bの周方向に偏って作用するのを抑えることができる。よって、前記応力を原因とする超電導コイル700の特性低下を抑制することができる。
【0111】
接続導体620は、1周回を越える長さを有する第1接続導体20および第2接続導体620Bを備えるため、第1接続導体20および第2接続導体620Bの機械的強度を高めることができる。よって、前記応力(引張応力など)がコイル体10A,10Bの一部に集中して作用するのを抑制できる。
【0112】
超電導コイル700は、金属テープで構成される第2接続導体620Bを備えるため、第2接続導体620Bを構成する金属材料の選択によって、超電導コイル700に所望の特性を付与することができる。例えば、第2接続導体620Bを構成する金属が良導性金属(例えば銅、銅合金、銀合金など)であれば、バイパス部としての第2接続導体620Bの機能を高めることができる。
【0113】
[超電導コイル](第8実施形態)
図18は、第8実施形態の超電導コイル800の正面図である。図19は、超電導コイル800の側面図である。図20は、超電導コイル800の一部の断面図である。図20は、図18に示すIII-III断面図である。なお、他の実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0114】
図18および図19に示すように、超電導コイル800は、複数のコイル体10と、接続導体720とを備える。接続導体720は、テープ状とされている。図18に示すように、接続導体720の長さ方向の一端を第1端720aという。接続導体720の長さ方向の他端を第2端720bという。
【0115】
接続導体720は、例えば、REBCO系酸化物超電導体、BSCCO系酸化物超電導体、金属(銅、銅合金、銀合金等)などで構成される。
超電導コイル800では、接続導体720は、酸化物超電導線材30(図5参照)と同様の酸化物超電導線材50によって構成されている。
【0116】
図20に示すように、接続導体720は、第1コイル体10Aおよび第2コイル体10Bの内周面12A,12Bに、コイル体10A,10Bの周方向に沿って設けられている。接続導体720は、基材1を内周側に向け、酸化物超電導層3を外周側に向けた姿勢とされている。接続導体720とコイル体10A,10Bとは、酸化物超電導層3側が向かい合う姿勢をとっている。
【0117】
接続導体720の内周面721のうち第1側縁721a(幅方向の一端)を含む領域は、第1コイル体10Aの内周面12Aに、接合層725を介して接している。接続導体720の内周面721のうち第2側縁721b(幅方向の他端)を含む領域は、第2コイル体10Bの内周面12Bに、接合層725を介して接している。接続導体720は、第1コイル体10Aの内周面12Aから、第2コイル体10Bの内周面12Bに架け渡されている。接続導体720は、第1コイル体10Aと第2コイル体10Bとを電気的に接続している。
【0118】
図18に示すように、接続導体720は、第1コイル体10Aおよび第2コイル体10Bの内周面12A,12Bの1周回を越える長さを有する。そのため、接続導体720は、コイル体10A,10Bを周方向に沿って1周回し、この周回部分722に余長部分が重ねられている。
【0119】
接続導体720の周回部分722は、内周面12A,12Bの全周にわたって設けられている。周回部分722は、コイル体10A,10Bの内周面12A,12Bに、接合層725を介して接している。接続導体720の第2長さ領域720B(余長部分)は、周回部分722の第1長さ領域720Aの内周面に、接合層726を介して重ねられている。第1長さ領域720Aは、第1端720aを含む長さ領域である。第2長さ領域720Bは、第2端720bを含む長さ領域である。
【0120】
超電導コイル800は、コイル体10A,10Bの全周にわたる接続導体720を備えているため、電磁力等による応力(引張応力など)が、コイル体10A,10Bの周方向に偏って作用するのを抑えることができる。そのため、前記応力(引張応力など)がコイル体10A,10Bの一部に集中して作用するのを回避できる。よって、電磁力等の応力の影響を低減し、超電導コイル800の特性低下を抑制することができる。
【0121】
接続導体720は、内周面12A,12Bの1周回を越える長さを有し、一部の長さ領域720A,720Bが重なっているため、電磁力等の応力によりコイル体10A,10Bの内径が大きくなった場合でも、接続導体720の全周にわたる巻き付きを確保できる。
【0122】
超電導コイル800では、接続導体720が1本の酸化物超電導線材50で構成されているため、容易に設置することができる。
【0123】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
図2および図4に示す超電導コイル100は、2つのコイル体10が積層されて構成されているが、超電導コイルは、3以上の任意の数のコイル体が積層されて構成されていてもよい。例えば、4つのコイル体を積層した構成、6つのコイル体を積層した構成,8つのコイル体を積層した構成などを例示できる。その場合、接続導体は、少なくとも隣り合う2つのコイル体の外周面に全周にわたって接する。接続導体は、コイル体の周方向の少なくとも一部分において互いに重なり合うようにコイル体に巻き付けられる。これにより、接続導体は、隣り合う2つのコイル体を電気的に接続する。
【0124】
実施形態の超電導コイルは、コイル体の外周面に接続導体が設けられ(図1等を参照)、かつ、コイル体の内周面にも接続導体が設けられた(図18等を参照)構成であってもよい。例えば、次の構成を例示できる。ここに例示する超電導コイルは、4つのコイル体(第1~第4コイル体)がこの順に巻回軸方向に積層されて構成される。第1および第2コイル体の外周面に第1接続導体が設けられる。第2および第3コイル体の内周面に第2接続導体が設けられる。第3および第4コイル体の外周面に第3接続導体が設けられる。
【符号の説明】
【0125】
1…基材(コイル基材、接続導体基材)、3…酸化物超電導層(コイル超電導層、接続導体超電導層)、10…コイル体、10A…第1コイル体、10B…第2コイル体、11A,11B…外周面、12A,12B…内周面、20,120、220,320,420,520,620,720…接続導体、20A…第1長さ領域(一端を含む領域)、20B…第2長さ領域(他端を含む領域)、30…酸化物超電導線材(超電導線材)、50…酸化物超電導線材(超電導線材)、100,200,300,400,500,600,700,800…超電導コイル、220A…第1接続導体(第1部材)、220Aa…第1端(一端)、220Ab…第2端(他端)、220B,320B,420B,520B,620B…第2接続導体(第2部材)、320B1…第1長さ領域(一端を含む領域)、320B2…第2長さ領域(他端を含む領域)、320Ba,420Ba,520Ba…第1端(一端)、320Bb,420Bb,520Bb…第2端(他端)、320C…第3接続導体(第3部材)、C…巻回軸。
図1
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