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特開2024-22507尿素の合成方法、水素の貯蔵方法、シリカ粒子の製造方法、及び、蓄熱方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022507
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】尿素の合成方法、水素の貯蔵方法、シリカ粒子の製造方法、及び、蓄熱方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 273/04 20060101AFI20240208BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20240208BHJP
   C07C 275/00 20060101ALI20240208BHJP
   C09K 5/18 20060101ALI20240208BHJP
   C09K 5/06 20060101ALI20240208BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20240208BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20240208BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20240208BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240208BHJP
【FI】
C07C273/04
C01B33/18 E
C07C275/00
C09K5/18 J
C09K5/06 J
B01J20/10 B
B01J20/28 Z
B01J20/30
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119398
(22)【出願日】2023-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2022124903
(32)【優先日】2022-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】梅垣 哲士
(72)【発明者】
【氏名】金子 剛大
【テーマコード(参考)】
4G066
4G072
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G066AA22B
4G066AA43D
4G066AA52D
4G066AB07D
4G066AB13D
4G066AB18D
4G066AB21D
4G066AB23D
4G066BA23
4G066BA24
4G066BA36
4G066BA38
4G066CA38
4G066DA01
4G066FA11
4G066FA21
4G066GA14
4G072AA25
4G072AA28
4G072BB05
4G072BB07
4G072BB15
4G072BB16
4G072CC13
4G072DD06
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH30
4G072JJ22
4G072JJ42
4G072KK03
4G072LL11
4G072MM01
4G072MM03
4G072MM23
4G072MM31
4G072MM36
4G072RR05
4G072RR12
4G072TT08
4G072TT09
4G072UU11
4G072UU15
4H006AA02
4H006AC57
4H006BA05
4H006BA30
4H006BA32
4H006BA33
4H006BA85
4H006BE14
4H006BE41
4H039CA99
4H039CL25
(57)【要約】
【課題】より低温・低圧の条件で合成が可能な尿素の合成方法、該尿素の合成方法に好適に使用が可能な、シリカ粒子の製造方法、並びに、該シリカ粒子を用いる、水素の貯蔵方法、及び、蓄熱方法を提供する。
【解決手段】二酸化炭素及びアンモニアを、多孔質シリカ粒子の細孔内に導入する導入工程と、前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素及びアンモニアが導入されたシリカ粒子を加圧する加圧工程と、を備え、前記多孔質シリカ粒子のピーク細孔径が、2.4~4.0nmであり、前記多孔質シリカ粒子の、全細孔容積に対する1.8~4.3nmの細孔容積の割合が、50~90%である、尿素の合成方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素及びアンモニアを、多孔質シリカ粒子の細孔内に導入する導入工程と、
前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素及びアンモニアが導入されたシリカ粒子を加圧する加圧工程と、を備え、
前記多孔質シリカ粒子のピーク細孔径が、2.4~4.0nmであり、
前記多孔質シリカ粒子の、全細孔容積に対する1.8~4.3nmの細孔容積の割合が、50~90%である、尿素の合成方法。
【請求項2】
前記導入工程が、二酸化炭素及びアンモニアを、炭酸イオン及びアンモニウムイオンとして多孔質シリカ粒子の細孔内に導入する、請求項1に記載の尿素の合成方法。
【請求項3】
前記導入工程が、さらに、触媒金属を多孔質シリカ粒子の細孔内に導入する、請求項1又は2に記載の尿素の合成方法。
【請求項4】
前記触媒金属が酢酸銅であり、
二酸化炭素、アンモニア及び酢酸銅を、多孔質シリカ粒子の細孔内に導入する導入工程と、
前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素、アンモニア及び酢酸銅が導入されたシリカ粒子を加圧する加圧工程と、を備える、請求項3に記載の尿素の合成方法。
【請求項5】
前記導入工程が、アンモニア水溶液中に、酢酸銅及び多孔質シリカ粒子を分散させ、二酸化炭素をバブリングさせる、請求項4に記載の尿素の合成方法。
【請求項6】
前記導入工程の後、前記加圧工程の前に、前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素、アンモニア及び酢酸銅が導入されたシリカ粒子を乾燥する乾燥工程と、を備える、請求項5に記載の尿素の合成方法。
【請求項7】
前記加圧工程が、前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素及びアンモニアが導入されたシリカ粒子を、0.2~1.0MPaの条件で加圧する、請求項1又は2に記載の尿素の合成方法。
【請求項8】
二酸化炭素及びアンモニアを、炭酸イオン及びアンモニウムイオンとして多孔質シリカ粒子の細孔内に導入し、さらに、酢酸銅を多孔質シリカ粒子の細孔内に導入する、導入工程と、
前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素、アンモニア及び酢酸銅が導入されたシリカ粒子に、水素を加圧する、加圧工程と、を備え、
前記多孔質シリカ粒子のピーク細孔径が、2.4~4.0nmであり、
前記多孔質シリカ粒子の、全細孔容積に対する1.8~4.3nmの細孔容積の割合が、50~90%である水素の貯蔵方法。
【請求項9】
前記導入工程が、アンモニア水溶液中に、酢酸銅及び多孔質シリカ粒子を分散させ、二酸化炭素をバブリングさせる、請求項8に記載の水素の貯蔵方法。
【請求項10】
前記導入工程の後、前記加圧工程の前に、前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素、アンモニア及び酢酸銅が導入されたシリカ粒子を乾燥する乾燥工程と、を備える、請求項9に記載の水素の貯蔵方法。
【請求項11】
前記加圧工程が、前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素、アンモニア及び酢酸銅が導入されたシリカ粒子に、0.2~1.0MPaの条件で水素を加圧する、請求項9又は10に記載の水素の貯蔵方法。
【請求項12】
二酸化炭素及びアンモニアを、炭酸イオン及びアンモニウムイオンとして多孔質シリカ粒子の細孔内に導入し、さらに、酢酸銅を多孔質シリカ粒子の細孔内に導入する、導入工程と、
前記多孔質シリカ粒子のピーク細孔径が、2.4~4.0nmであり、
前記多孔質シリカ粒子の、全細孔容積に対する1.8~4.3nmの細孔容積の割合が、50~90%である、シリカ粒子の製造方法。
【請求項13】
前記導入工程が、アンモニア水溶液中に、酢酸銅及び多孔質シリカ粒子を分散させ、二酸化炭素をバブリングさせる、請求項12に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項14】
前記多孔質シリカ粒子が、
1-ドデシルアミンと、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムと、シラン化合物と、を、アルカリ性水溶液中で撹拌し、
生成物を回収し、乾燥して得られたものである、請求項12又は13に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項15】
前記導入工程の後、前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素、アンモニア及び酢酸銅が導入されたシリカ粒子を乾燥する乾燥工程と、を備える、請求項12又は13に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項16】
請求項12又は13に記載のシリカ粒子の製造方法で得られたシリカ粒子を、尿素の融点以上の温度で加熱する工程を備える、蓄熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素の合成方法、水素の貯蔵方法、シリカ粒子の製造方法、及び、蓄熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来工業的に実施されている尿素合成反応の条件は、高温・高圧の条件が採用されており、低温・低圧の条件の合成方法が、種々検討されている。例えば、特許文献1の実施例1には、シリカゲルを充填した連続式合成管に液体アンモニアを通して、シリカゲルにアンモニアを吸着させた後、さらに、液体アンモニア、二酸化炭素ガス、水等を、圧力140kg/cm(13.7MPa、ゲージ)の条件で圧入して、200℃で、尿素を66%の合成率で合成したことが開示されている。
【0003】
また、非特許文献1には、デュアルソフトテンプレートとしてセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)とn-ドデカノール(DDN)を採用することにより、多様な形態を有する多孔質シリカナノ粒子を合成できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭54-128522号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】L. Han, Y. Zhou, T. He, G. Song, F. Wu, F. Jiang, J. Hu, One-pot morphology-controlled synthesis of various shaped mesoporous silica nanoparticles, J. Mater. Sci., 48 (2013) 5718-5726.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、より低温・低圧の条件で合成が可能な尿素の合成方法、該尿素の合成方法に好適に使用が可能な、シリカ粒子の製造方法、並びに、該シリカ粒子を用いる、水素の貯蔵方法、及び、蓄熱方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。
シリカゲルの細孔径分布に関して、A型のシリカゲルでは、ピーク細孔径が、約1.2nmであり、全細孔容積に対する1.8~4.3nmの細孔容積の割合が、50%未満である。B型のシリカゲルでは、ピーク細孔径が、約7nmであり、全細孔容積に対する1.8~4.3nmの細孔容積の割合が、50%未満である。
【0008】
一方、本発明者らは、微細なピーク細孔径を有し、かつ、前記ピーク細孔径の周辺の細孔容積の割合が高く、シャープな細孔径分布を有する多孔質シリカ粒子を用いることにより、顕著に低温・低圧の条件で尿素の合成が可能なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下の態様を有する。
[1] 二酸化炭素及びアンモニアを、多孔質シリカ粒子の細孔内に導入する導入工程と、
前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素及びアンモニアが導入されたシリカ粒子を加圧する加圧工程と、を備え、
前記多孔質シリカ粒子のピーク細孔径が、2.4~4.0nmであり、
前記多孔質シリカ粒子の、全細孔容積に対する1.8~4.3nmの細孔容積の割合が、50~90%である、尿素の合成方法。
[2] 前記導入工程が、二酸化炭素及びアンモニアを、炭酸イオン及びアンモニウムイオンとして多孔質シリカ粒子の細孔内に導入する、[1]に記載の尿素の合成方法。
[3] 前記導入工程が、さらに、触媒金属を多孔質シリカ粒子の細孔内に導入する、[1]又は[2]に記載の尿素の合成方法。
[4] 前記触媒金属が酢酸銅であり、
二酸化炭素、アンモニア及び酢酸銅を、多孔質シリカ粒子の細孔内に導入する導入工程と、
前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素、アンモニア及び酢酸銅が導入されたシリカ粒子を加圧する加圧工程と、を備える、[3]に記載の尿素の合成方法。
[5] 前記導入工程が、アンモニア水溶液中に、酢酸銅及び多孔質シリカ粒子を分散させ、二酸化炭素をバブリングさせる、[4]に記載の尿素の合成方法。
[6] 前記導入工程の後、前記加圧工程の前に、前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素、アンモニア及び酢酸銅が導入されたシリカ粒子を乾燥する乾燥工程と、を備える、[5]に記載の尿素の合成方法。
[7] 前記加圧工程が、前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素及びアンモニアが導入されたシリカ粒子を、0.2~1.0MPaの条件で加圧する、[1]~[6]のいずれか一項に記載の尿素の合成方法。
【0010】
[8] 二酸化炭素及びアンモニアを、炭酸イオン及びアンモニウムイオンとして多孔質シリカ粒子の細孔内に導入し、さらに、酢酸銅を多孔質シリカ粒子の細孔内に導入する、導入工程と、
前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素、アンモニア及び酢酸銅が導入されたシリカ粒子に、水素を加圧する、加圧工程と、を備え、
前記多孔質シリカ粒子のピーク細孔径が、2.4~4.0nmであり、
前記多孔質シリカ粒子の、全細孔容積に対する1.8~4.3nmの細孔容積の割合が、50~90%である水素の貯蔵方法。
[9] 前記導入工程が、アンモニア水溶液中に、酢酸銅及び多孔質シリカ粒子を分散させ、二酸化炭素をバブリングさせる、[8]に記載の水素の貯蔵方法。
[10] 前記導入工程の後、前記加圧工程の前に、前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素、アンモニア及び酢酸銅が導入されたシリカ粒子を乾燥する乾燥工程と、を備える、[9]に記載の水素の貯蔵方法。
[11] 前記加圧工程が、前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素、アンモニア及び酢酸銅が導入されたシリカ粒子に、0.2~1.0MPaの条件で水素を加圧する、[9]又は[10]に記載の水素の貯蔵方法。
【0011】
[12] 二酸化炭素及びアンモニアを、炭酸イオン及びアンモニウムイオンとして多孔質シリカ粒子の細孔内に導入し、さらに、酢酸銅を多孔質シリカ粒子の細孔内に導入する、導入工程と、
前記多孔質シリカ粒子のピーク細孔径が、2.4~4.0nmであり、
前記多孔質シリカ粒子の、全細孔容積に対する1.8~4.3nmの細孔容積の割合が、50~90%である、シリカ粒子の製造方法。
[13] 前記導入工程が、アンモニア水溶液中に、酢酸銅及び多孔質シリカ粒子を分散させ、二酸化炭素をバブリングさせる、[12]に記載のシリカ粒子の製造方法。
[14] 前記多孔質シリカ粒子が、
1-ドデシルアミンと、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムと、シラン化合物と、を、アルカリ性水溶液中で撹拌し、
生成物を回収し、乾燥して得られたものである、[12]又は[13]に記載のシリカ粒子の製造方法。
[15] 前記導入工程の後、前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素、アンモニア及び酢酸銅が導入されたシリカ粒子を乾燥する乾燥工程と、を備える、[12]~[14]のいずれか一項に記載のシリカ粒子の製造方法。
[16] [12]~[15]のいずれか一項に記載のシリカ粒子の製造方法で得られたシリカ粒子を、尿素の融点以上の温度で加熱する工程を備える、蓄熱方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、より低温・低圧の条件で合成が可能な尿素の合成方法、該尿素の合成方法に好適に使用が可能な、シリカ粒子の製造方法、並びに、該シリカ粒子を用いる、水素の貯蔵方法、及び、蓄熱方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(1)多孔質シリカ粒子、(2)多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素及びアンモニアが導入されたシリカ粒子、及び、(3)尿素合成反応後のシリカ粒子の、拡散反射赤外分光スペクトル(DRIFTスペクトル)である。
図2】多孔質シリカ粒子、及び、各種イオンを導入したシリカ粒子の拡散反射紫外可視近赤外スペクトルである。
図3】多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素及びアンモニアが導入されたシリカ粒子、及び、尿素合成反応後のシリカ粒子の、拡散反射赤外分光スペクトル(DRIFTスペクトル)である。
図4】アルゴン圧力0.5MPaにおいて、各反応温度に対して尿素生成量をプロットしたグラフである。
図5】50℃の反応温度において、各反応圧力に対して尿素生成量をプロットしたグラフである。
図6】アンモニア導入時のアンモニア量に対して尿素生成量をプロットしたグラフである。
図7A】(a)n-ドデカノール(DDN)を使用して調製した、比較例1の多孔質シリカ粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
図7B】(b)n-ドデカン(DD)を使用して調製した、比較例2の多孔質シリカ粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
図7C】(c)n-ドデシルアミン(DDA)を使用して調製した、実施例1の多孔質シリカ粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
図8】多孔質シリカ粒子の窒素吸脱着等温線の測定結果を表すグラフである。
図9】多孔質シリカ粒子の細孔径分布の測定結果を表すグラフである。
図10】多孔質シリカ粒子の累積細孔容積の測定結果を表すグラフである。
図11】尿素生成量を表すグラフである。
図12】尿素生成後のシリカ粒子について、熱重量分析の結果を表すグラフである。
図13】アルゴン圧力0.5MPa、50℃の反応温度において、各反応時間に対して尿素の生成量を表すグラフである。
図14】尿素生成反応前後の、シリカ粒子のXPSスペクトルである。
図15】銅、アンモニア、及び、二酸化炭素を同時に導入して得られたシリカ粒子の、水素の吸脱蔵特性を表す、圧力-組成-等温線(PCT)特性のグラフである。
図16】多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素及びアンモニアが導入されたシリカ粒子を水素加圧した後のシリカ粒子の、拡散反射赤外分光スペクトル(DRIFTスペクトル)である。
図17】尿素生成後のシリカ粒子について、示差熱分析の結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<尿素の合成方法>
本発明の一実施形態に係る尿素の合成方法は、二酸化炭素及びアンモニアを、多孔質シリカ粒子の細孔内に導入する導入工程と、
前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素及びアンモニアが導入されたシリカ粒子を加圧する加圧工程と、を備え、
前記多孔質シリカ粒子のピーク細孔径が、2.4~4.0nmであり、
前記多孔質シリカ粒子の、全細孔容積に対する1.8~4.3nmの細孔容積の割合が、50~90%である。
【0015】
本実施形態に係る尿素の合成方法は、2.4~4.0nmの微細なピーク細孔径を有し、かつ、前記ピーク細孔径の周辺の1.8~4.3nmの細孔容積の割合が、全細孔容積に対して50~90%と高く、シャープな細孔径分布を有する多孔質シリカ粒子を用いて、二酸化炭素及びアンモニアを、前記多孔質シリカ粒子の細孔内に導入することにより、顕著に低温・低圧の条件で尿素の合成が可能である。かかる効果が得られる理由は定かでないが、微細なピーク細孔径が形成する微空間に二酸化炭素及びアンモニアが閉じ込められた結果、特異な触媒機能が発現したと考えられる。
【0016】
多孔質シリカ粒子のピーク細孔径は、窒素吸脱着により測定できる。
多孔質シリカ粒子の、全細孔容積に対する細孔径1.8~4.3nmの細孔容積の割合は、窒素吸脱着により、ピーク細孔径を測定した際に、細孔径1.8~300nmの全細孔容積に対する細孔径1.8~4.3nmの細孔容積の割合として求めることができる。
【0017】
前記多孔質シリカ粒子のピーク細孔径は、2.4~4.0nmであり、2.6~3.6nmであることが好ましく、2.8~3.4nmであることがより好ましい。前記下限値以上であることにより、二酸化炭素及びアンモニアを導入する細孔容積を大きくすることができる。前記上限値以下であることにより、触媒機能の発現が顕著になる。
【0018】
前記多孔質シリカ粒子の、全細孔容積に対する細孔径1.8~4.3nmの細孔容積の割合は、50~90%であり、60~87%であることが好ましく、70~85%であることがより好ましい。前記下限値以上であることにより、触媒機能の発現が顕著になる。前記上限値以下であることにより、細孔容積の調整が容易になる。
【0019】
前記導入工程として、二酸化炭素及びアンモニアを、炭酸イオン及びアンモニウムイオンとして多孔質シリカ粒子の細孔内に導入することが好ましい。例えば、アンモニア水溶液中に、多孔質シリカ粒子を分散させ、二酸化炭素をバブリングさせることで、二酸化炭素及びアンモニアを、炭酸イオン及びアンモニウムイオンとして多孔質シリカ粒子の細孔内に導入することができる。多孔質シリカ粒子の細孔内に、二酸化炭素及びアンモニアを、炭酸イオン及びアンモニウムイオンとして導入できたことは、乾燥後のシリカ粒子の拡散反射赤外分光スペクトル(DRIFTスペクトル)から、1420cm-1付近のアンモニウムイオン(NH )由来の吸収、1560cm-1および4500cm-1付近の炭酸イオン由来の吸収により確認することができる。
【0020】
前記導入工程として、液相中で、二酸化炭素及びアンモニアを多孔質シリカ粒子の細孔内に導入する場合には、本実施形態の尿素の合成方法は、前記導入工程の後、前記加圧工程の前に、前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素、アンモニア及び酢酸銅が導入されたシリカ粒子を乾燥する乾燥工程を備えることが好ましい。前記乾燥工程を備えることにより、前記加圧工程において、溶媒分子によって、尿素の合成が阻害されるおそれを避けることができる。
【0021】
例えば、前記導入工程として、アンモニア水溶液中で、二酸化炭素及びアンモニアを多孔質シリカ粒子の細孔内に導入する場合には、本実施形態の尿素の合成方法は、前記導入工程の後、前記加圧工程の前に、前記乾燥工程を備えることが好ましい。アンモニア水溶液中で、二酸化炭素及びアンモニアを多孔質シリカ粒子の細孔内に導入した後、乾燥工程を経ずに前記加圧工程が行われると、前記加圧工程において、水分子によって、尿素の合成が阻害されるおそれがある。
【0022】
本実施形態の尿素の合成方法においては、適度な乾燥条件によって、乾燥工程を経ても、二酸化炭素及びアンモニアを多孔質シリカ粒子の細孔内に留まらせることができ、加圧工程により好適に尿素の合成反応を進行させることができる。
【0023】
乾燥工程は、溶媒分子が多孔質シリカ粒子の細孔内から除かれる条件であれば限定されない。減圧下であることが好ましく、エバポレーターによる減圧下であることがより好ましい。温度条件は、60~180℃が好ましく、70~160℃が好ましく、80~140℃が好ましい。
【0024】
前記導入工程が、二酸化炭素、アンモニア、及び触媒金属を、多孔質シリカ粒子の細孔内に導入する導入工程であることが好ましい。触媒金属としては、尿素合成の既知の触媒金属を用いることができ、容易に入手できることから、酢酸銅が好ましい。
【0025】
例えば、本実施形態の尿素の合成方法は、二酸化炭素、アンモニア及び酢酸銅を、多孔質シリカ粒子の細孔内に導入する導入工程と、前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素、アンモニア及び酢酸銅が導入されたシリカ粒子を加圧する加圧工程と、を備えることが好ましい。
【0026】
前記導入工程が、アンモニア水溶液中に、酢酸銅及び多孔質シリカ粒子を分散させ、二酸化炭素をバブリングさせることが好ましい。
【0027】
本実施形態の尿素の合成方法は、前記導入工程の後、前記加圧工程の前に、前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素、アンモニア及び酢酸銅が導入されたシリカ粒子を乾燥する乾燥工程と、を備えることが好ましい。
【0028】
本実施形態の尿素の合成方法は、前記加圧工程が、前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素及びアンモニアが導入されたシリカ粒子を、0.2~1.0MPaの条件で加圧することとすることができる。加圧圧力条件は、0.3~0.8MPaであってよく、0.4~0.6MPaであってよい。加圧温度条件は、20~100℃であってよく、30~80℃であってよく、40~60℃であってよい。加圧時間は、2~50hであってよく、4~40hであってよく、6~30hであってよい。加圧方法は、密閉容器内への窒素による加圧であってよく、水素による加圧であってよい。
【0029】
<水素の貯蔵方法>
本発明の一実施形態に係る水素の貯蔵方法は、二酸化炭素及びアンモニアを、炭酸イオン及びアンモニウムイオンとして多孔質シリカ粒子の細孔内に導入し、さらに、酢酸銅を多孔質シリカ粒子の細孔内に導入する、導入工程と、
前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素、アンモニア及び酢酸銅が導入されたシリカ粒子に、水素を加圧する、加圧工程と、を備え、
前記多孔質シリカ粒子のピーク細孔径が、2.4~4.0nmであり、
前記多孔質シリカ粒子の、全細孔容積に対する1.8~4.3nmの細孔容積の割合が、50~90%である。
【0030】
本実施形態に係る水素の貯蔵方法は、前記導入工程が、アンモニア水溶液中に、酢酸銅及び多孔質シリカ粒子を分散させ、二酸化炭素をバブリングさせることであってよい。
【0031】
本実施形態に係る水素の貯蔵方法は、前記導入工程の後、前記加圧工程の前に、前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素、アンモニア及び酢酸銅が導入されたシリカ粒子を乾燥する乾燥工程と、を備えることであってよい。<水素の貯蔵方法>における乾燥工程の条件等は、<尿素の合成方法>における乾燥工程と同様である。
【0032】
本実施形態に係る水素の貯蔵方法は、前記加圧工程が、前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素、アンモニア及び酢酸銅が導入されたシリカ粒子に、0.2~1.0MPaの条件で水素を加圧することであってよい。
【0033】
<シリカ粒子の製造方法>
本発明の一実施形態に係るシリカ粒子の製造方法は、二酸化炭素及びアンモニアを、炭酸イオン及びアンモニウムイオンとして多孔質シリカ粒子の細孔内に導入し、さらに、酢酸銅を多孔質シリカ粒子の細孔内に導入する、導入工程と、
前記多孔質シリカ粒子のピーク細孔径が、2.4~4.0nmであり、
前記多孔質シリカ粒子の、全細孔容積に対する1.8~4.3nmの細孔容積の割合が、50~90%である。
【0034】
本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法は、前記導入工程が、アンモニア水溶液中に、酢酸銅及び多孔質シリカ粒子を分散させ、二酸化炭素をバブリングさせることであってよい。
【0035】
本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法は、前記多孔質シリカ粒子が、1-ドデシルアミンと、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムと、シラン化合物と、を、アルカリ性水溶液中で撹拌し、生成物を回収し、乾燥して得られたものであることであってよい。
【0036】
本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法は、前記導入工程の後、前記多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素、アンモニア及び酢酸銅が導入されたシリカ粒子を乾燥する乾燥工程と、を備えることであってよい。<シリカ粒子の製造方法>における乾燥工程の条件等は、<尿素の合成方法>における乾燥工程と同様である。
【0037】
<蓄熱方法>
本発明の一実施形態に係る蓄熱方法は、上述の実施形態に係るシリカ粒子の製造方法で得られたシリカ粒子を、尿素の融点以上の温度で加熱する工程を備える。
上述の実施形態に係るシリカ粒子の製造方法で得られたシリカ粒子を尿素の融点以上の温度で加熱すると、尿素の相転移と吸熱反応である尿素の分解が起こる。尿素の融解の逆過程である凝固と、尿素の分解の逆反応である尿素合成反応では発熱が予想されるため、本材料が相転移型蓄熱材料若しくは化学蓄熱材料として活用できる可能性があると考えられる。
【実施例0038】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0039】
[実施例1]
<多孔質シリカ粒子の作製>
150mLのイオン交換水に、デュアルソフトテンプレートとして、陽イオン性の界面活性剤であるセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB、0.15g)、及び、有機分子(n-ドデシルアミン(DDA、0.1492g))を添加し、溶液のpHを調整し、ゾルゲル反応を促進するため、さらに、水酸化ナトリウム(0.09g)を添加し、60℃、30min撹拌した。
さらに、テトラエトキシシラン(TEOS、2.25mL)を添加し、60℃、2h撹拌した後、遠心分離(6000rpm、5min)およびエタノール洗浄を2回繰り返した。
得られた粉体を100℃、約1h、乾燥した後、400℃、3h、空気中で焼成し、多孔質球状中空シリカ(多孔質シリカ粒子)を得た。
【0040】
<シリカ粒子の作製>
ここで得られた多孔質球状中空シリカ(0.5g)を、酢酸銅(0.25408g)、約28%のアンモニア水(12.5mL)およびイオン交換水(12.5mL)を含む水溶液に懸濁させ、さらに、二酸化炭素を300mL/minの流量で40minバブリングした後、100℃で、30min、エバポレーターを使用して真空乾燥して、多孔質シリカ粒子の細孔内に、二酸化炭素及びアンモニアを、炭酸イオン及びアンモニウムイオンとして導入されている、シリカ粒子を得た。
【0041】
<尿素の合成>
得られたシリカ粒子のうち、0.05gのシリカ粒子を密閉容器内に導入し、0.5MPaのアルゴン雰囲気下で50℃、5h反応させた。
【0042】
図1は、(1)多孔質シリカ粒子、(2)多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素及びアンモニアが導入されたシリカ粒子、及び、(3)尿素合成反応後のシリカ粒子の、拡散反射赤外分光スペクトル(DRIFTスペクトル、IRSpirit(登録商標)、株式会社島津製作所)であって、5000~400nm-1の全スペクトルを示したグラフ、同じスペクトルの4800~4200nm-1を拡大したグラフ、及び、同じスペクトルの1750~1350nm-1を拡大したグラフである。
【0043】
図1の(2)多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素及びアンモニアが導入されたシリカ粒子のスペクトル、及び、(3)尿素合成反応後のシリカ粒子のスペクトルから、1420cm-1付近にアンモニウムイオン(NH )、1560cm-1および4500cm-1付近に炭酸イオン由来の吸収が確認された。
【0044】
図1の(3)尿素合成反応後のシリカ粒子のスペクトルのみから、1472cm-1付近と、近赤外領域の4370cm-1付近及び4435cm-1付近に吸収ピークが新たに確認された。これらのピークは尿素に由来する吸収であり、多孔質球状中空シリカ内に導入したアンモニアと二酸化炭素から尿素が生成していることが確認できた。また、拡散反射赤外分光スペクトル(DRIFTスペクトル)から、1472cm-1付近の吸収ピークから、尿素の生成量を定量したところ、シリカ粒子1g当たり、149mgの尿素が合成されたことがわかった。
【0045】
また、銅種の状態を解析するため、内包した銅又は窒素の状態を拡散反射紫外可視近赤外分光分析装置(DR UV-Vis-NIR、UV-3600、株式会社島津製作所)により分析を行った。
図2は、実施例1の<多孔質シリカ粒子の作製>で得られた多孔質球状中空シリカのスペクトル(non)、多孔質球状中空シリカをアンモニア水に懸濁させた後、乾燥させた粒子のスペクトル(NH )、多孔質球状中空シリカを硫酸銅の存在下アンモニア水に懸濁させた後、乾燥させた粒子のスペクトル(Cu,NH )、及び、実施例1の、多孔質球状中空シリカを硫酸銅の存在下アンモニア水に二酸化炭素をバブリングさせた後、乾燥させた粒子のスペクトル(Cu,NH ,CO,Parallel)である。図2のスペクトルより、銅種を導入したいずれのシリカ粒子においても、200nm及び700nm付近に孤立した銅種及びバルク状の銅種が存在することが確認できる。さらに、銅種を含むシリカ粒子にのみ近赤外領域の2000nm付近にピークが存在することが確認できる。一方で、アンモニウムイオンを含むシリカ粒子においては、2200nm付近のピークが大きく、この領域では吸着水及びアンモニウムイオンに由来するピークが存在するため、アンモニウムイオンがシリカ粒子に導入されていることが示唆される。
【0046】
[実施例2]
<多孔質シリカ粒子の作製、及び、尿素の合成>
実施例1の<多孔質シリカ粒子の作製>及び<シリカ粒子の作製>において、テトラエトキシシラン(TEOS)に加えてカルシア(CaO)をSi/Ca=25/1(モル比)で添加したこと以外は、実施例1と同様にして、シリカ粒子を作製した。
【0047】
さらに、得られたシリカ粒子のうち、0.05gのシリカ粒子を密閉容器内に導入し、0.5MPaアルゴン雰囲気下で50℃、5h反応させた(実施例2)。
【0048】
図3は、(2)多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素及びアンモニアが導入されたシリカ粒子、及び、(3)尿素合成反応後のシリカ粒子の、DRIFTスペクトルであって、同じスペクトルの4800~4200nm-1を拡大したグラフ、及び、同じスペクトルの1750~1350nm-1を拡大したグラフである。
【0049】
図3の(2)多孔質シリカ粒子の細孔内に二酸化炭素及びアンモニアが導入されたシリカ粒子のスペクトル、及び、(3)尿素合成反応後のシリカ粒子のスペクトルから、1420cm-1付近にアンモニウムイオン(NH )、1560cm-1および4500cm-1付近に炭酸イオン由来の吸収が確認された。
また、図3の尿素合成反応後のシリカ粒子のスペクトルのみから、1472cm-1付近と、近赤外領域の4370cm-1付近及び4435cm-1付近に尿素に由来する吸収ピークが新たに確認された。多孔質球状中空シリカの細孔内に導入されたアンモニア及び二酸化炭素から尿素が生成していることが確認できた。また、拡散反射赤外分光スペクトル(DRIFTスペクトル)から、同じ条件で尿素の生成量を定量したところ、シリカ粒子1g当たり、97mgの尿素が合成されたことがわかった。
【0050】
[実施例3~6]
<尿素の合成>
実施例1で得られたシリカ粒子のうち、0.05gのシリカ粒子を密閉容器内に導入し、0.5MPaアルゴン雰囲気下で25℃、5h反応させた(実施例3)。
実施例1で得られたシリカ粒子のうち、0.05gのシリカ粒子を密閉容器内に導入し、0.5MPaアルゴン雰囲気下で100℃、5h反応させた(実施例4)。
実施例1で得られたシリカ粒子のうち、0.05gのシリカ粒子を密閉容器内に導入し、0.1MPaアルゴン雰囲気下で50℃、5h反応させた(実施例5)。
実施例1で得られたシリカ粒子のうち、0.05gのシリカ粒子を密閉容器内に導入し、0.3MPaアルゴン雰囲気下で50℃、5h反応させた(実施例6)。
【0051】
DRIFTスペクトルから尿素の生成量を定量した。結果を、実施例1の結果と併せて、図4及び図5に示す。図4は、アルゴン圧力0.5MPaにおいて、各反応温度に対して尿素生成量をプロットしたグラフである。図5は、50℃の反応温度において、各反応圧力に対して尿素生成量をプロットしたグラフである。
【0052】
図4の結果から、反応温度については温度上昇に伴って尿素の生成量が増大し、100℃においては50℃と比較して生成量が減少していることが確認できる。この結果は100℃では一部生成した尿素が分解していることを示唆している。
また、図5の結果から、圧力に関しては0.5MPaで特に高い尿素生成量を示すことが確認できる。尿素合成の研究における最低圧の条件と同じ圧力、温度は従来と比較して低温で尿素生成しており、ナノサイズの空間において効率的に尿素が合成されたことが示された。
【0053】
[実施例7~9]
<尿素の合成>
実施例1の<シリカ粒子の作製>において、多孔質球状中空シリカ(0.5g)を、酢酸銅(0.25408g)、約28%のアンモニア水(2.5mL)およびイオン交換水(22.5mL)を含む水溶液に懸濁させたこと以外は、実施例1と同様にして、シリカ粒子を作製し、100℃で、30min、エバポレーターを使用して真空乾燥して、得られたシリカ粒子のうち、0.05gのシリカ粒子を密閉容器内に導入し、0.5MPa窒素雰囲気下で50℃、5h反応させた(実施例7)。
【0054】
実施例1の<シリカ粒子の作製>において、多孔質球状中空シリカ(0.5g)を、酢酸銅(0.25408g)、約28%のアンモニア水(25.0mL)およびイオン交換水(0mL)を含む水溶液に懸濁させたこと以外は、実施例1と同様にして、シリカ粒子を作製し、100℃で、30min、エバポレーターを使用して真空乾燥して、得られたシリカ粒子のうち、0.05gのシリカ粒子を密閉容器内に導入し、0.5MPa窒素雰囲気下で50℃、5h反応させた(実施例8)。
【0055】
実施例1の<シリカ粒子の作製>と同様にして、シリカ粒子を作製し、200℃で、30min、エバポレーターを使用して真空乾燥して、得られたシリカ粒子のうち、0.05gのシリカ粒子を密閉容器内に導入し、0.5MPaアルゴン雰囲気下で50℃、5h反応させた(実施例9)。
【0056】
実施例7~9の結果を、実施例1の結果と併せて、図6に示す。図6は、アンモニア導入時のアンモニア量に対して尿素生成量をプロットしたグラフである。アンモニア量12.5mLで最も尿素生成量が多かった。また、200℃で真空乾燥したシリカ粒子の場合は、100℃で真空乾燥したシリカ粒子の場合と比較して大幅に尿素の生成量が低下した。
【0057】
また、実施例1、実施例7~9の真空乾燥後、反応前のシリカ粒子を、X線光電子分光分析(XPS、ESCA-3400、Kratos Analytical Limited)により、下記の条件で、解析した。
【0058】
(測定条件)
・X線源:単色化Mg Kα(1253.6eV)、
・加速電圧、電流:20kV,10mA
・帯電補正:C1s=285.0eV
・Arエッチング:0min、5min、10min
【0059】
表1は、XPSスペクトルの結果から算出した銅、ケイ素、及び窒素のモル比を示す。この表より、アンモニア量12.5 mLで調製したシリカ粒子で窒素含有量が多くなっていることが確認できる。この結果から、アンモニウムイオンの導入量が多いシリカ粒子で尿素生成量が多くなることが確認できた。
【0060】
【表1】
【0061】
[比較例1~2]
<多孔質シリカ粒子の作製、シリカ粒子の作製、及び尿素の合成>
実施例1の<多孔質シリカ粒子の作製>において、有機分子(n-ドデシルアミン(DDA、0.1492g))を有機分子(n-ドデカノール(DDN、0.1760g))に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質シリカ粒子を作製した。
得られた多孔質球状中空シリカ(多孔質シリカ粒子)(0.5g)を、酢酸銅(0.25408g)、約28%のアンモニア水(12.5mL)およびイオン交換水(12.5mL)を含む水溶液に懸濁させ、さらに、二酸化炭素を300mL/minの流量で40minバブリングした後、100℃で、30min、エバポレーターを使用して真空乾燥して、多孔質シリカ粒子の細孔内に、二酸化炭素及びアンモニアを、炭酸イオン及びアンモニウムイオンとして導入されている、シリカ粒子を得た(比較例1)。
得られたシリカ粒子のうち、0.05gのシリカ粒子を密閉容器内に導入し、0.5MPaの窒素雰囲気下で50℃、5h反応させた(比較例1)。
【0062】
実施例1の<多孔質シリカ粒子の作製>において、有機分子(n-ドデシルアミン(DDA、0.1492g))を有機分子(n-ドデカン(DD、0.1371g))に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質シリカ粒子を作製した。
得られた多孔質球状中空シリカ(多孔質シリカ粒子)(0.5g)を、酢酸銅(0.25408g)、約28%のアンモニア水(12.5mL)およびイオン交換水(12.5mL)を含む水溶液に懸濁させ、さらに、二酸化炭素を300mL/minの流量で40minバブリングした後、100℃で、30min、エバポレーターを使用して真空乾燥して、多孔質シリカ粒子の細孔内に、二酸化炭素及びアンモニアを、炭酸イオン及びアンモニウムイオンとして導入されている、シリカ粒子を得た(比較例2)。
得られたシリカ粒子のうち、0.05gのシリカ粒子を密閉容器内に導入し、0.5MPaの窒素雰囲気下で50℃、5h反応させた(比較例2)。
【0063】
実施例1、比較例1~2の多孔質シリカ粒子を、透過型電子顕微鏡(FE2000、株式会社日立製作所)で観察した。
図7Aは、(a)n-ドデカノール(DDN)を使用して調製した、比較例1の多孔質シリカ粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
図7Bは、(b)n-ドデカン(DD)を使用して調製した、比較例2の多孔質シリカ粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
図7Cは、(c)n-ドデシルアミン(DDA)を使用して調製した、実施例1の多孔質シリカ粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
【0064】
図7A及び図7Cより、n-ドデカノール及びn-ドデシルアミンを使用して調製した多孔質シリカ粒子については多くの粒子が粒径50~150nm程度、膜厚6nm程度の球状中空粒子であることが確認できる。一方で、図7Bより、n-ドデカンを使用して調製した多孔質シリカ粒子については、他の2つの多孔質シリカ粒子と同等の粒径及び膜厚を有する球状中空粒子が存在するが、一部中空が存在しない中実粒子も含まれることが確認できる。
【0065】
実施例1、比較例1~2のシリカ粒子について、吸脱着測定装置(ASAP2000、Micromeritics Instrument Co.)を用いて、窒素吸脱着を測定した。
図8の(a)は、(a)n-ドデカノール(DDN)を使用して調製した、比較例1の多孔質シリカ粒子の窒素吸脱着等温線の測定結果を表すグラフである。
図8の(b)は、(b)n-ドデカン(DD)を使用して調製した、比較例2の多孔質シリカ粒子の窒素吸脱着等温線の測定結果を表すグラフである。
図8の(c)は、(c)n-ドデシルアミン(DDA)を使用して調製した、実施例1の多孔質シリカ粒子の窒素吸脱着等温線の測定結果を表すグラフである。
図9の(a)は、(a)n-ドデカノール(DDN)を使用して調製した、比較例1の多孔質シリカ粒子の細孔径分布の測定結果を表すグラフである。
図9の(b)は、(b)n-ドデカン(DD)を使用して調製した、比較例2の多孔質シリカ粒子の細孔径分布の測定結果を表すグラフである。
図9の(c)は、(c)n-ドデシルアミン(DDA)を使用して調製した、実施例1の多孔質シリカ粒子の細孔径分布の測定結果を表すグラフである。
図10は、多孔質シリカ粒子の累積細孔容積の測定結果を表すグラフである。
【0066】
いずれの多孔質シリカ粒子においても窒素吸脱着等温線にヒステリシスループがあり、P/P=0.4付近で急激な吸脱着量の変化が確認できる。この傾向は、図9の細孔径分布の結果に反映されており、DDN、DD、及びDDAを使用して調製した多孔質シリカ粒子の結果で3.7nm、3.1nm、及び2.9nm付近にピークが存在することが確認できる。
DDN及びDDを使用して調製した、比較例1、2の多孔質シリカ粒子で10~100nm程度の細孔が一部存在する一方、DDAを使用して調製した、実施例1の多孔質シリカ粒子では、この領域の細孔がほとんど存在しないことが確認できる。
また、図9に、脱離側のデータについて1.7~300nmの細孔径について積算して求めた、比表面積及び細孔容積の計算結果を示した。
さらに、図10の結果から、細孔径1.8~300nmの全細孔容積に対する細孔径1.8~4.3nmの細孔容積の割合を求めたところ、DDNを使用して調製した、比較例1の多孔質シリカ粒子が47.0%、DDを使用して調製した、比較例2の多孔質シリカ粒子が44.7%であったのに対して、DDAを使用して調製した、実施例1の多孔質シリカ粒子が80.7%と、極めて大きかった。
以上の結果より、DDN及びDDを使用して調製した、比較例1、2の多孔質シリカ粒子と比較して、DDAを使用して調製した、実施例1の多孔質シリカ粒子では小さな細孔が多く存在し、より均一な細孔径分布である。
【0067】
図11は、実施例1、比較例1~2の尿素生成量を表すグラフである。(c)DDAを使用して調製した多孔質シリカ粒子、(b)DDを使用して調製した多孔質シリカ粒子、(a)DDNを使用して調製した多孔質シリカ粒子の順で尿素生成量が多くなっていた。
細孔径1.8~300nmの全細孔容積に対する細孔径1.8~4.3nmの細孔容積の割合が大きいことが、尿素が多く生成できていることに起因している。すなわち、極めて小さな細孔空間に二酸化炭素及びアンモニアが閉じ込められたことで、従来の反応に比べて極めて低温・低圧の条件で尿素が合成できることが示された。
【0068】
実施例1、比較例1~2の真空乾燥後、反応前のシリカ粒子を、X線光電子分光分析(XPS)により、前述と同じ条件で解析した。
【0069】
表2は、XPSスペクトルの結果から算出した銅、ケイ素、及び窒素のモル比を示す。この表より、窒素含有量が多いシリカ粒子ほど尿素生成量が多くなっていることが確認できる。
【0070】
【表2】
【0071】
実施例1、比較例1~2の尿素生成後の各シリカ粒子について、熱重量・示差熱分析(株式会社島津製作所、TG/DTA同時測定装置、DTG-60)を行った。
図12は、熱重量分析の結果を表すグラフである。これらのグラフの中で、220℃付近までの挙動を見ると、DDNを使用して調製したシリカ粒子、DDを使用して調製したシリカ粒子、DDAを使用して調製したシリカ粒子の順で重量減少の傾きが大きくなっている。これは先の順番でシリカ粒子の細孔内に保持された吸着種(水、アンモニウムイオン、炭酸イオン)や尿素の保持力が弱くなっていることを示唆している。これらの結果と図8図11の結果より、細孔径が小さく、細孔径分布がより均一で、かつ中空粒子の割合が大きい多孔質シリカ粒子ほど尿素生成量が多くなることが示唆される。
【0072】
[実施例10~11]
<尿素の合成>
実施例1の<尿素の合成>において、0.5MPaのアルゴン雰囲気下で50℃、5h反応を、0.5MPaのアルゴン雰囲気下で50℃、16h反応に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、尿素の合成を行った(実施例10)。
実施例1の<尿素の合成>において、0.5MPaのアルゴン雰囲気下で50℃、5h反応を、0.5MPaのアルゴン雰囲気下で50℃、42h反応に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、尿素の合成を行った(実施例11)。
図13は、実施例1、10~11の、DDAを使用して調製したシリカ粒子について、反応時間に対して尿素の生成量を表すグラフである。反応時間を長くすると16hまでは尿素生成量が増大し、その後、生成量が減少した。この結果は、長時間処理をすることで生成した尿素が一部分解することを示唆している。
【0073】
実施例10の<尿素の合成>において、反応処理前のシリカ粒子中の銅種の状態を、Arエッチングなし、Arエッチング時間5min及び10min後に、X線光電子分光分析(XPS)により、前述と同じ条件で測定した結果を図14(before reaction)に示す。
また、実施例10の<尿素の合成>において、反応時間16h後のシリカ粒子中の銅種の状態を、Arエッチングなし、Arエッチング時間5min及び10min後に、X線光電子分光分析(XPS)により、前述と同じ条件で測定した結果を図14(after 16h reaction)に示す。
これらの結果より、いずれのシリカ粒子及びエッチング時間においても、933.5eV及び953.0eV付近にCu2+に由来するピークが確認できる。これらの結果より、窒素雰囲気下の反応処理によって銅種の状態に変化はなく、いずれのシリカ粒子の表面及びシリカ粒子の内部において均一に銅種が存在することが示唆される。
【0074】
[実施例12]
<水素の貯蔵及び脱蔵>
実施例1の<シリカ粒子の作製>で、銅、アンモニア、及び、二酸化炭素を同時に導入して得られたシリカ粒子のうち、0.1gのシリカ粒子を、PCT(圧力-水素吸蔵量-温度)特性測定装置(株式会社鈴木商館製、PCT-2SDWIN)を用いて、配管も併せた容量が13.6cmの密閉容器内に導入し、1.0MPaの水素雰囲気下、100℃の条件で、0.5h前処理(銅を還元)した。その後、100℃の条件のままで、0.5h、排気処理したものを、図15の黒丸で示される1.0MPa水素雰囲気下までの各圧力で、20s水素導入し、圧力安定まで3min待機する操作を繰り返し、それぞれの圧力で、再加圧した際の水素吸蔵量を測定した。さらに、100℃の条件のままで、徐々に20s排気処理し、図15の白丸で示される各圧力で、圧力安定まで3min待機する操作を繰り返し、それぞれの圧力で、減圧した際の水素吸蔵量を測定した。
この様にして、圧力-組成-等温線(PCT)特性の測定結果を図15の黒丸及び白丸で示す。横軸は、0.1gのシリカ粒子を100wt%としたときの、水素吸蔵量の割合(wt%)であり、縦軸は、水素の圧力(MPa)である。
図15の黒丸は、密閉容器内を再加圧したときの水素の貯蔵時の様子を表し、図15の白丸はその後減圧したときの水素の脱蔵時の様子を表す。水素の圧力の上昇に伴い水素吸蔵量が増大し、かつ50%程度の水素が脱蔵した。
【0075】
[実施例13]
<水素の貯蔵及び脱蔵>
実施例12と同様にして、0.1gのシリカ粒子を、圧力-水素吸蔵量-温度(PCT)特性測定装置の密閉容器内に導入し、1.0MPaの水素雰囲気下、100℃の条件で、0.5h前処理(銅を還元)した後に、50℃まで降温させ、50℃の条件で、0.5h、排気処理したものを、図15の黒四角で示される1.0MPa水素雰囲気下までの各圧力で、20s水素導入し、圧力安定まで3min待機する操作を繰り返し、それぞれの圧力で、再加圧した際の水素吸蔵量を測定した。さらに、50℃の条件のままで、徐々に20s排気処理し、図15の白四角で示される各圧力で、圧力安定まで3min待機する操作を繰り返し、それぞれの圧力で、減圧した際の水素吸蔵量を測定した。
圧力-組成-等温線(PCT)特性の測定結果を図15の黒四角及び白四角に示す。
図15の黒四角は、密閉容器内を再加圧したときの水素の貯蔵時の様子を表し、図15の白四角はその後減圧したときの水素の脱蔵時の様子を表す。50℃においては1MPa付近で急激に水素を吸蔵し、水素の脱蔵はほとんど起こらなかった。
【0076】
[実施例14]
<尿素の合成>
実施例1の<シリカ粒子の作製>で、銅、アンモニア、及び、二酸化炭素を同時に導入して得られたシリカ粒子のうち、0.1gのシリカ粒子を密閉容器内に導入し、1.0MPaの水素雰囲気下で50℃の条件で、3h、水素加圧した。
図16は、水素加圧した後のシリカ粒子の、4800~4200cm-1、及び、1750~1350cm-1の部分の拡散反射赤外分光スペクトル(DRIFTスペクトル)である。1472cm-1付近と、近赤外領域の4370cm-1付近及び4435cm-1付近に吸収ピークがあることから、窒素雰囲気下で処理したシリカ粒子と同様、尿素が生成していることが確認できた。このことは、シリカ粒子の水素貯蔵が物理的に起こっていることを示唆する。
【0077】
以上の結果から、多孔質シリカ粒子の細孔内に導入された二酸化炭素及びアンモニアから加圧下で尿素が生成し、かつ、水素雰囲気下では水素貯蔵能を有することが確認できた。
【0078】
[実施例15]
<尿素の合成>
実施例1の<尿素の合成>において、0.5MPaのアルゴン雰囲気下で50℃、5h反応を、0.5MPaのアルゴン雰囲気下で50℃、17h反応に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、尿素の合成を行った(実施例15)。
【0079】
また、各種有機分子(DDA,DDN,DD)を使用して調製した実施例15、比較例1~2の尿素生成後の各シリカ粒子について2K/minの昇温速度で573Kまで昇温し、示差熱分析(株式会社島津製作所、TG/DTA同時測定装置、DTG-60)を行った。図17は、その結果を表すグラフである。DDN及びDDを使用して調製した多孔質球状中空シリカを使用した尿素生成後の各シリカ粒子の場合は、顕著なピークは検出されなかった。
一方、DDAを使用して調製した多孔質球状中空シリカを使用し、17h、0.5MPaのアルゴン雰囲気下で処理した実施例15の尿素生成後の各シリカ粒子については、429.37K及び496.04K付近に吸熱ピークが存在することが確認された。これらのピークについて、ピーク面積から吸熱量を算出したところ、それぞれ-34.2J/g及び-145.32J/gであることが確認された。これらのピークはそれぞれ尿素の融解と分解に由来するピークであることが示唆された。この熱分析においては尿素の相転移と吸熱反応である尿素の分解が起こっているが、融解の逆過程である凝固と、尿素の分解の逆反応である尿素合成反応では発熱が予想されるため、本材料が相転移型蓄熱材料若しくは化学蓄熱材料として活用できる可能性があると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の尿素の合成方法、シリカ粒子の製造方法、及び、水素の貯蔵方法は、排気ガスなどから地球温暖化の原因とされる二酸化炭素を回収する方法、尿素の新規合成方法、アンモニア、二酸化炭素、及び/又は、水素の貯蔵・運搬方法、並びに、相転移型蓄熱材料若しくは化学蓄熱材料として、実用化の可能性がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17