(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025605
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】通信システム、制御装置、および通信方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/026 20170101AFI20240216BHJP
H04W 28/02 20090101ALI20240216BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20240216BHJP
【FI】
H04B7/026
H04W28/02
H04W16/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155493
(22)【出願日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2022128257
(32)【優先日】2022-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 賢一
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA12
5K067DD42
5K067EE02
5K067EE06
5K067EE10
5K067EE16
(57)【要約】
【課題】非再生中継が実施される無線通信において、通信路容量が最大となるように中継局を選択し、無線通信を制御する。
【解決手段】通信システムは、第1の通信局と、第1の通信局と通信可能な1以上の中継局と、1以上の中継局のいずれかを介してまたは1以上の中継局のいずれをも介さずに第1の通信局と通信可能な第2の通信局と、制御装置とを有する。制御装置は、第1の通信局と1以上の中継局のそれぞれとの間の電波伝搬特性、1以上の中継局のそれぞれと第2の通信局との間の電波伝搬特性、および第1の通信局と第2の通信局との間の電波伝搬特性を基に計算される第1の通信局と第2の通信局との間の通信路容量が所定の拘束条件において最大となるように局と第2の通信局との通信に介在する中継局を決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信局と、
前記第1の通信局と通信可能な1以上の中継局と、
前記1以上の中継局のいずれかを介してまたは前記1以上の中継局のいずれをも介さずに前記第1の通信局と通信可能な第2の通信局と、
前記第1の通信局と前記1以上の中継局のそれぞれとの間の電波伝搬特性、前記1以上の中継局のそれぞれと前記第2の通信局との間の電波伝搬特性、および前記第1の通信局と前記第2の通信局との間の電波伝搬特性を基に計算される前記第1の通信局と前記第2の通信局との間の通信路容量が所定の拘束条件において最大となるように前記第1の通信局と前記第2の通信局との通信に介在する中継局を決定することを実行する制御装置と、を備える通信システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記中継局を決定することにおいては、前記1以上の中継局のうちの前記第1の通信局と前記第2の通信局との間の通信に介在する中継局の組み合わせを変更して前記通信路容量を計算する請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記第1の通信局と前記第2の通信局との間の通信における変調信号は、同一のビット情報の区間に対応するシンボル間にガードインターバルを含み、
前記制御装置は、前記1以上の中継局のいずれをも介さずに前記第1の通信局から前記第2の通信局に到達する第1の信号の伝搬遅延時間と、前記1以上の中継局のいずれかを介して前記第1の通信局から前記第2の通信局に到達する第2の信号の伝搬遅延時間とが異なる値となるとともに、前記第2の信号が前記ガードインターバルの時間以上に遅延しない範囲で前記第2の信号の伝搬遅延時間を設定し、
前記第2の通信局との通信に介在する前記中継局は、設定された前記第2の信号の伝搬遅延時間にしたがって前記第2の信号に非再生中継を実行する請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記1以上の中継局と前記第2の通信局との間の前記第2の信号の伝搬遅延量に対する前記1以上の中継局のそれぞれが介在する前記第1の通信局と前記第2の通信局との間の前記通信路容量の比率を計算し、前記1以上の中継局のうち前記比率が大きい中継局を優先して前記第2の通信局との通信に介在する前記中継局を選択する請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記決定された前記介在する中継局の順に前記1以上の中継局と前記第2の通信局との間の前記第2の信号の伝搬遅延量を積算し、前記介在する中継局のそれぞれにおける前記第2の信号の伝搬遅延時間を前記介在する中継局のそれぞれの直前に決定された中継局までに積算した値を基に設定し、設定された前記伝搬遅延時間により前記第2の信号が前記ガードインターバルの時間以上に遅延しない範囲の中継局数で、前記1以上の中継局から前記第2の通信局との通信に介在する前記中継局を決定する請求項3に記載の通信システム。
【請求項6】
下り回線においては、前記第1の通信局は基地局であり、前記第2の通信局は端末局であり、
上り回線においては、前記第1の通信局は端末局であり、前記第2の通信局は基地局であり、
前記制御装置は、無線フレーム毎に、
前記基地局から送信され、前記1以上の中継局のいずれをも介さずに前記端末局において受信されるレファレンス信号を基に測定される電波伝搬特性を、前記基地局を介して取得し、
前記基地局から送信され、前記1以上の中継局において受信されるレファレンス信号を基に測定される電波伝搬特性を、前記基地局を介して取得し、
前記端末局から送信され、前記1以上の中継局において受信されるレファレンス信号を基に測定される電波伝搬特性を、前記基地局を介して取得し、
前記端末局との通信に介在する前記中継局を決定する、請求項1に記載の通信システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記基地局に含まれる請求項6に記載の通信システム。
【請求項8】
第1の通信局と、
前記第1の通信局と通信可能な1以上の中継局と、
前記1以上の中継局のいずれかを介してまたは前記1以上の中継局のいずれをも介さずに前記第1の通信局と通信可能な第2の通信局と前記第1の通信局との通信を制御する制御装置であって、
前記第1の通信局と前記1以上の中継局のそれぞれとの間の電波伝搬特性、前記1以上の中継局のそれぞれと前記第2の通信局との間の電波伝搬特性、および前記第1の通信局と前記第2の通信局との間の電波伝搬特性を基に計算される前記第1の通信局と前記第2の通信局との間の通信路容量が所定の拘束条件において最大となるように前記第1の通信局と前記第2の通信局との通信に介在する中継局を決定することを実行する制御装置。
【請求項9】
前記中継局を決定することにおいては、前記1以上の中継局のうちの前記第1の通信局と前記第2の通信局との間の通信に介在する中継局の組み合わせを変更して前記通信路容量を計算する請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記第1の通信局と前記第2の通信局との間の通信における変調信号は、同一のビット情報の区間に対応するシンボル間にガードインターバルを含み、
前記制御装置は、前記1以上の中継局のいずれをも介さずに前記第1の通信局から前記第2の通信局に到達する第1の信号の伝搬遅延時間と、前記1以上の中継局のいずれかを介して前記第1の通信局から前記第2の通信局に到達する第2の信号の伝搬遅延時間とが異なる値となるとともに、前記第2の信号が前記ガードインターバルの時間以上に遅延しない範囲で前記第2の信号の伝搬遅延時間を設定し、
前記第2の通信局との通信に介在する前記中継局は、設定された前記第2の信号の伝搬遅延時間にしたがって前記第2の信号に非再生中継を実行する請求項8に記載の制御装置。
【請求項11】
前記1以上の中継局と前記第2の通信局との間の前記第2の信号の伝搬遅延量に対する前記1以上の中継局のそれぞれが介在する前記第1の通信局と前記第2の通信局との間の前記通信路容量の比率を計算し、前記1以上の中継局のうち前記比率が大きい中継局を優先して前記第2の通信局との通信に介在する前記中継局を選択する請求項10に記載の制御装置。
【請求項12】
前記決定された前記介在する中継局の順に前記1以上の中継局と前記第2の通信局との間の前記第2の信号の伝搬遅延量を積算し、前記介在する中継局のそれぞれにおける前記第2の信号の伝搬遅延時間を前記介在する中継局のそれぞれの直前に決定された中継局までに積算した値を基に設定し、設定された前記伝搬遅延時間により前記第2の信号が前記ガードインターバルの時間以上に遅延しない範囲の中継局数で、前記1以上の中継局から前記第2の通信局との通信に介在する前記中継局を決定する請求項10に記載の制御装置。
【請求項13】
下り回線においては、前記第1の通信局は基地局であり、前記第2の通信局は端末局で
あり、
上り回線においては、前記第1の通信局は端末局であり、前記第2の通信局は基地局であり、
無線フレーム毎に、
前記基地局から送信され、前記1以上の中継局のいずれをも介さずに前記端末局において受信されるレファレンス信号を基に測定される電波伝搬特性を、前記基地局を介して取得し、
前記基地局から送信され、前記1以上の中継局において受信されるレファレンス信号を基に測定される電波伝搬特性を、前記基地局を介して取得し、
前記端末局から送信され、前記1以上の中継局において受信されるレファレンス信号を基に測定される電波伝搬特性を、前記基地局を介して取得し、
前記端末局との通信に介在する前記中継局を決定する、請求項8に記載の制御装置。
【請求項14】
前記基地局に含まれる請求項13に記載の制御装置。
【請求項15】
第1の通信局と、
前記第1の通信局と通信可能な1以上の中継局と、
前記1以上の中継局のいずれかを介してまたは前記1以上の中継局のいずれをも介さずに前記第1の通信局と通信可能な第2の通信局と前記第1の通信局との通信を制御する制御方法であって、
前記第1の通信局と前記1以上の中継局のそれぞれとの間の電波伝搬特性、前記1以上の中継局のそれぞれと前記第2の通信局との間の電波伝搬特性、および前記第1の通信局と前記第2の通信局との間の電波伝搬特性を基に計算される前記第1の通信局と前記第2の通信局との間の通信路容量が所定の拘束条件において最大となるように前記第1の通信局と前記第2の通信局との通信に介在する中継局を決定することを含む通信方法。
【請求項16】
前記中継局を決定することにおいては、前記1以上の中継局のうちの前記第1の通信局と前記第2の通信局との間の通信に介在する中継局の組み合わせを変更して前記通信路容量を計算する請求項15に記載の通信方法。
【請求項17】
前記第1の通信局と前記第2の通信局との間の通信における変調信号は、同一のビット情報の区間に対応するシンボル間にガードインターバルを含み、
前記1以上の中継局のいずれをも介さずに前記第1の通信局から前記第2の通信局に到達する第1の信号の伝搬遅延時間と、前記1以上の中継局のいずれかを介して前記第1の通信局から前記第2の通信局に到達する第2の信号の伝搬遅延時間とが異なる値となるとともに、前記第2の信号が前記ガードインターバルの時間以上に遅延しない範囲で前記第2の信号の伝搬遅延時間を設定し、
前記第2の通信局との通信に介在する前記中継局は、設定された前記第2の信号の伝搬遅延時間にしたがって前記第2の信号に非再生中継を実行する請求項15に記載の通信方法。
【請求項18】
前記1以上の中継局と前記第2の通信局との間の前記第2の信号の伝搬遅延量に対する前記1以上の中継局のそれぞれが介在する前記第1の通信局と前記第2の通信局との間の前記通信路容量の比率を計算し、前記1以上の中継局のうち前記比率が大きい中継局を優先して前記第2の通信局との通信に介在する前記中継局を選択する請求項17に記載の通信方法。
【請求項19】
前記決定された前記介在する中継局の順に前記1以上の中継局と前記第2の通信局との間の前記第2の信号の伝搬遅延量を積算し、前記介在する中継局のそれぞれにおける前記第2の信号の伝搬遅延時間を前記介在する中継局のそれぞれの直前に決定された中継局ま
でに積算した値を基に設定し、設定された前記伝搬遅延時間により前記第2の信号が前記ガードインターバルの時間以上に遅延しない範囲の中継局数で、前記1以上の中継局から前記第2の通信局との通信に介在する前記中継局を決定する請求項17に記載の通信方法。
【請求項20】
下り回線においては、前記第1の通信局は基地局であり、前記第2の通信局は端末局であり、
上り回線においては、前記第1の通信局は端末局であり、前記第2の通信局は基地局であり、
無線フレーム毎に、
前記基地局から送信され、前記1以上の中継局のいずれをも介さずに前記端末局において受信されるレファレンス信号を基に測定される電波伝搬特性を、前記基地局を介して取得し、
前記基地局から送信され、前記1以上の中継局において受信されるレファレンス信号を基に測定される電波伝搬特性を、前記基地局を介して取得し、
前記端末局から送信され、前記1以上の中継局において受信されるレファレンス信号を基に測定される電波伝搬特性を、前記基地局を介して取得し、
前記端末局との通信に介在する前記中継局を決定する、請求項15に記載の通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信システム、制御装置、および通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
5th Generation Mobile Communication System(5G)等の無線通信においては、サブミリ秒以下の超低遅延通信が期待されている。一方で、通信サービス向上の観点では、セルのカバレッジエリアの拡大が望まれ、そのためには、中継局を介する中継通信が有効である。そこで、無線通信を行う端末局を中継局とする無線通信方法が提案されている。さらに、遅延の少ない中継技術として、中継局では復調・復号は行わない非再生中継が望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】H. Chen. A. B. Gershman, and S. Shahbazpanahi, “Filter-and-Forward Distributed Beamforming in Relay Networks with Frequency Selective Fading,” IEEE Trans. On Signal Processing, (米国),vol. 58, no. 3, March 2010.
【非特許文献2】能口、林、金子、酒井、“周波数領域等化システムのための単一周波数全二重無線中継,” 電子情報通信学会技術報告, 2012年1月, vol. SIP2011-109.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、中継局となり得る中継局の候補が複数存在する場合がある。本開示の実施形態の1つの側面は、非再生中継が実施される無線通信において、適切に中継局を選択し、無線通信を制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示の実施形態1つの側面は、通信システムによって例示される。本通信システムは、第1の通信局と、第1の通信局と通信可能な1以上の中継局と、1以上の中継局のいずれかを介してまたは1以上の中継局のいずれをも介さずに第1の通信局と通信可能な第2の通信局と、制御装置とを有する。本制御装置は、第1の通信局と1以上の中継局のそれぞれとの間の電波伝搬特性、1以上の中継局のそれぞれと第2の通信局との間の電波伝搬特性、および第1の通信局と第2の通信局との間の電波伝搬特性を基に第1の通信局と第2の通信局との間の通信路容量を計算する。そして、本制御装置は、計算した通信路容量が所定の拘束条件において最大となるように第1の通信局と第2の通信局との通信に介在する前記中継局を決定する。
【発明の効果】
【0006】
本通信システムは、非再生中継が実施される無線通信において、適切に中継局を選択し、無線通信を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は第1実施形態の通信システムを例示する図である。
【
図2】
図2は第1実施形態に含まれる他の例である通信システムを例示する図である。
【
図4】
図4はFIRフィルタの構成を例示する図である。
【
図5】
図5は制御装置のハードウェア構成を例示する図である。
【
図6】
図6は制御装置が5つの中継局に対して設定する遅延量の構成とサイクリックプレフィックス長との関係を例示する図である。
【
図7】
図7は通信システムの処理手順を例示するシーケンス図である。
【
図8】
図8は通信システムの処理手順を例示するシーケンス図である。
【
図9】
図9は通信システムの処理手順を例示するシーケンス図である。
【
図10】
図10は通信システムの処理手順を例示するシーケンス図である。
【
図11】
図11は第2実施形態において、制御装置が中継局を選択する処理を例示する図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態における通信システムを例示する図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態において制御装置が5つの中継局に対して設定する遅延量の構成とサイクリックプレフィックス長との関係を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、一実施形態の通信システム、制御装置、および通信方法が説明される。本通信システムは、第1の通信局と、第1の通信局と通信可能な1以上の中継局と、1以上の中継局のいずれかを介してまたは1以上の中継局のいずれをも介さずに第1の通信局と通信可能な第2の通信局と、制御装置とを有する。本制御装置は、第1の通信局と1以上の中継局のそれぞれとの間の電波伝搬特性、1以上の中継局のそれぞれと第2の通信局との間の電波伝搬特性、および第1の通信局と第2の通信局との間の電波伝搬特性を基に第1の通信局と第2の通信局との間の通信路容量を計算する。そして、本制御装置は、この通信路容量が所定の拘束条件において最大となるように第1の通信局と第2の通信局との通信に介在する中継局を決定する。
【0009】
ここで、通信における変調信号は、同一のビット情報の区間に対応するシンボル間にガードインターバルを含む。制御装置は、この1以上の中継局のいずれをも介さずに第1の通信局から第2の通信局に到達する伝搬時間である第1の信号の伝搬遅延時間と、1以上の中継局のいずれかを介して第1の通信局から第2の通信局に到達する伝搬時間である第2の信号の伝搬遅延時間とを異なる値に設定する。かつ、制御装置は、第2の信号がガードインターバルの時間以上に遅延しない範囲で、第2の信号の伝搬遅延時間を設定する。
【0010】
さらに、制御装置は、1以上の中継局と第2の通信局との間の第2の信号の伝搬時間である伝搬遅延量を上記決定された介在する中継局の順に積算する。そして、制御装置は、介在する中継局のそれぞれにおける伝搬遅延時間を介在する中継局のそれぞれの直前に決定された中継局までに積算した値を基に設定する。そして、制御装置は、設定された伝搬遅延時間により第2の信号がガードインターバルの時間以上に遅延しない範囲の中継局数で、1以上の中継局から前記第2の通信局との通信に介在する中継局を決定する。所定の拘束条件は、この第2の信号がガードインターバルの時間以上に遅延しない範囲の中継局数である。そのため、制御装置は、変調信号のシンボルがガードインターバル以内の遅延で第2の通信局において受信される限度で、中継に介在する中継局数と、各中継局における遅延を設定し、かつ、通信路容量を最大にすることができる。ここで、第1の通信局は、下り回線(ダウンリンクチャネルともいう)においては、基地局であり、上り回線(アップリンクチャネルともいう)においては、端末局である。第1の通信局は、送信局ということもできる。また、第2の通信局は、下り回線においては、端末局であり、上り回線においては、基地局である。第2の通信局は、受信局ということもできる。以下の第1実施形態および第2実施形態では、下り回線の通信を中継局3で中継する場合に、高速通信が可能な中継局3-iの組み合わせを決定する処理が例示される。また、第3実施形態および第4実施形態では、上り回線の通信を中継局3で中継する場合に、高速通信が可能な中継局3-iの組み合わせを決定する処理が例示される。
【0011】
<第1実施形態>(システム構成)
図1は第1実施形態の通信システム100Aを例示する図である。通信システム100Aは、制御装置1と、基地局2と、中継局3(3-1、3-N)と、端末局4とを有する。制御装置1は、基地局2が接続されるコアネットワーク上の装置である。ただし、制御装置1がコアネットワーク自体であるか、またはコアネットワークに含まれるシステムであると考えることもできる。コアネットワークは、例えば、光ファイバ網を含む。制御装置1は、基地局2、中継局3、端末局4を制御し、端末局4に通信サービスを提供する。
【0012】
基地局2は、端末局4に無線アクセスネットワークを提供する。無線アクセスネットワークでの無線通信が可能なエリアは、セルとも呼ばれる。基地局2は、1以上のアンテナ(例えば、#0乃至#7)と、これら1以上のアンテナに接続される無線機21と、制御回路22を有する。制御回路22は、例えば、プロセッサとメモリを有する。プロセッサは、メモリ上のコンピュータプログラムにより、制御装置1との通信、および中継局3、端末局4との無線通信を制御する。
【0013】
端末局4は、移動局とも呼ばれる。移動局は、基地局2が提供するセルの範囲で無線アクセスネットワークに接続する。一方、中継局3は、基地局2と端末局4との無線通信を中継する。中継局3は、設置位置が固定された固定局と呼ばれるものと、移動局とを含み得る。本実施形態では、中継局3が固定局および移動局のいずれの場合であっても、中継における遅延時間を制御可能な構成、具体的には、
図4に例示されるFinite Impulse Response(FIR)フィルタを備える。そのため、例えば、制御装置1は、中継局3の候補
となる固定局および移動局について、中継局3となることが可能か否か、例えば、FIRフィルタを備えているか否かの情報を有するものとする。
【0014】
制御装置1は、端末局4との通信時に、基地局2が提供するセルの範囲に位置する1以上の中継局3を選定し、無線通信の中継を指示する。このため、基地局2が提供するセルの範囲に位置する移動局は、中継局3の候補ということができる。なお、固定局である中継局3は、基地局2のセル外にあって有線で基地局2と接続されるものでもよい。また、本実施形態において、複数の中継局3が個々に区別される場合に、中継局3-1、・・・、3-Nのように枝番が付される。ここで、枝番Nは中継局3の候補の数を示す整数である。
図1においては、中継局3-1と3-Nが例示されている。ただし、中継局3-1、・・・、3-Nが総称される場合には、単に、中継局3と記述される。
【0015】
中継局3は、基地局2と同様、1以上のアンテナ(例えば、#0)と、これら1以上のアンテナのそれぞれに接続される無線機31と、制御回路32を有する。
【0016】
端末局4は、1以上のアンテナ(例えば、#0乃至#7)と、これら1以上のアンテナのそれぞれに接続される無線機41と、制御回路42を有する。ただし、1つの無線機4
1に複数アンテナが搭載されてもよい。例えば、無線機41は受信信号レベルが最も高いアンテナを選択して、受信信号を受信すればよい。同様に、中継局3の1つの無線機31に複数アンテナが搭載されてもよい。セル内の移動局が基地局2に無線アクセスネットワークへの接続を要求し、接続されることで、移動局が端末局4として動作する。セル内の移動局は、基地局2に直接無線アクセスネットワークへの接続を要求してもよい。また、移動局は、セル内で中継局3として動作する移動局またはセル内外の固定局を介して基地局2に無線アクセスネットワークへの接続を要求してもよい。端末局4は、1以上の中継局3のいずれかを介してまたは1以上の中継局3のいずれをも介さずに基地局2と通信可能な局ということができる。
【0017】
図2は、第1実施形態に含まれる他の例である通信システム100Bを例示する図であ
る。通信システム100Bは、
図1の通信システム100Aと比較して、基地局2の代わりに、中央基地局2Aと、1以上の分散基地局2Bと有する。1以上の分散基地局2Bが個々に区別される場合に、分散基地局2B-1、・・・、2B-Kのように枝番が付される。ここで、枝番Kは分散基地局数を示す整数である。
図2においては、分散基地局2B-1と2B-Kが例示されている。ただし、分散基地局2B-1、・・・、2B-Kが総称される場合には、単に、分散基地局2Bと記述される。
【0018】
中央基地局2Aは、制御回路22Aを有する。また、分散基地局2Bは、無線機21Bを有する。中央基地局2Aの制御回路22Aと分散基地局2Bの無線機21Bとは、例えば、光ファイバC1または無線ネットワークで接続される。中央基地局2Aと複数の分散基地局2Bとを接続する光ファイバC1のトポロジに限定はない。例えば、光ファイバC1のトポロジは、ノード間の一対一の接続、中央基地局2Aから離れるにしたがって分岐するネットワーク、スター型のネットワーク、または、リングネットワーク等であってもよい。また、中央基地局2Aの制御回路22Aと分散基地局2Bの無線機21Bとの間を無線ネットワークで接続する場合に、無線ネットワークの規格、プロトコルに限定はない。
【0019】
制御回路22Aは、
図1の制御回路22と同様、プロセッサとメモリを有する。プロセッサは、メモリ上のコンピュータプログラムにより、制御装置1との通信、および中継局3、端末局4との無線通信を制御する。すなわち、制御回路22Aは、1以上の分散基地局2Bの無線機21Bを介して、中継局3、端末局4との無線通信を制御する。
【0020】
以上のとおり、
図1、
図2においては、基地局2、分散基地局2Bおよび端末局4は、複数のアンテナを有し、Multiple-Input and Multiple-Output(MIMO)により通信する。ただし、本実施形態において、基地局2および端末局4の通信がMIMOによる通信に限定される訳ではない。
【0021】
図3は、中継局3の構成を例示する図である。中継局3の無線機31は、送信機311と受信機312とベースバンド回路313を有する。送信機311と受信機312とはサーキュレータ314を介してアンテナ(#0)に接続される。すなわち、サーキュレータ314の3つのポートに送信機311と受信機312とアンテナ(#0)とが接続される。そして、送信機311からの送信信号は、サーキュレータ314の例えば1つ目のポートに入力され、2つ目のポートからアンテナ(#0)に伝達される。また、アンテナ(#0)で受信された受信信号は、サーキュレータ314の2つ目のポートに入力され、3つ目のポートから受信機312に伝達される。
【0022】
ここで、送信信号と受信信号の電力差は例えば約100dBほどである。一方、サーキュレータ314のアイソレーションは30dB程度であり、送信信号の一部は受信信号と自己干渉を生じる。この自己干渉は受信機312内のRadio Frequency(RF)アナログ
フィルタとベースバンド回路313内のFIRフィルタを併用することで抑圧される。
【0023】
受信機312は、サーキュレータ314を介してアンテナ(#0)から受信信号を受ける。受信機312は、直交検波回路とアナログデジタル(AD)コンバータを有する。受信機312は、直交検波により受信信号をダウンコンバートし、さらにADコンバータによりデジタルデータに変換してベースバンド信号を得る。受信機312は、得られたベースバンド信号をベースバンド回路313に出力する。
【0024】
ベースバンド回路313は、FIRフィルタを有する。ベースバンド回路313は、FIRフィルタにより、受信信号に混入し、自己干渉している送信信号を抑圧するとともに、受信信号を所定の遅延時間だけ遅延させる。ベースバンド回路313は、FIRフィル
タによりフィルタリングした受信信号を送信機311に出力する。
【0025】
送信機311は、デジタルアナログ(DA)コンバータと、変調回路とを有する。送信機311は、ベースバンド回路313からの受信信号をアナログ信号に変換し、変調回路によりRF信号を生成する。そして、送信機311は、サーキュレータ314を介してアンテナ(#0)からRF信号を中継信号として送信する。
【0026】
図4は、FIRフィルタの構成を例示する図である。FIRフィルタは、複数段のタップ(T1、T2、・・・、T
ND,i)を有する。タップT1は、遅延器Dを介さないで入力信号を乗算器MLにより重みwi,1で重み付けする。タップT2は、タップT1からの入力信号を遅延器D(遅延時間τ
D)により遅延させ、乗算器MLにより重みwi,2で重み付けする。タップT3以降も同様である。したがって、最終段のタップT
ND,iでは、タップT1への入力信号(FIRフィルタへの入力信号)は、遅延時間τ
D×(N
D,i-1)の遅延と、重みwi,N
D,iの重み付けがされる。各タップ(T1、T2、・・・、T
ND,i)で処理された信号は、加算器ADにより加算される。以上の構成により、FIRフィルタへの入力信号は、重み付け平均され、受信信号以外の干渉信号および雑音が除去されるとともに、遅延時間τ
D×(N
D,i-1)だけ遅延される。
【0027】
図5は、制御装置1のハードウェア構成を例示する図である。制御装置1はCPU11と、主記憶装置12と、外部機器を有し、コンピュータプログラムにより通信処理および情報処理を実行する。CPU11は、プロセッサとも呼ばれる。CPU11は、単一のプロセッサに限定されず、マルチプロセッサ構成であってもよい。また、CPU11は、Graphics Processing Unit(GPU)、Digital Signal Processor(DSP)等を含むものであってもよい。また、CPU11は、Field Programmable Gate Array(FPGA)等
のハードウェア回路と連携するものでもよい。外部機器としては、外部記憶装置13、出力装置14、操作装置15、および通信装置16が例示される。
【0028】
CPU11は、主記憶装置12に実行可能に展開されたコンピュータプログラムを実行し、制御装置1の処理を提供する。主記憶装置12は、CPU11が実行するコンピュータプログラム、CPU11が処理するデータ等を記憶する。主記憶装置12は、Dynamic Random Access Memory(DRAM)、Static Random Access Memory(SRAM)、Read Only Memory(ROM)等である。さらに、外部記憶装置13は、例えば、主記憶装置1
2を補助する記憶領域として使用され、CPU11が実行するコンピュータプログラム、CPU11が処理するデータ等を記憶する。外部記憶装置13は、ハードディスクドライブ、Solid State Drive(SSD)等である。さらに、制御装置1には、着脱可能記憶媒
体の駆動装置が接続されてもよい。着脱可能記憶媒体は、例えば、ブルーレイディスク、Digital Versatile Disc(DVD)、Compact Disc(CD)、フラッシュメモリカード等である。
【0029】
出力装置14は、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスパネル等の表示装置である。ただし、出力装置14がスピーカその他の音を出力する装置を含んでもよい。操作装置15は、例えば、ディスプレイ上にタッチセンサを重ねたタッチパネル等である。通信装置16は、例えば、光ファイバを介して基地局2およびインターネット等の外部ネットワークと通信する。通信装置16は、例えば、基地局2に接続されるゲートウェイおよびインターネット等の外部ネットワークと通信するゲートウェイである。通信装置16は、1台の装置であってもよいし、複数台の装置の組み合わせであってもよい。
【0030】
(制御方法)
本実施形態では、制御装置1は、中継局3-iの候補(i=1~N、Nは中継局3の候補数)の中から、基地局2と端末局4との通信を中継する1以上の中継局3-iを選択す
る。制御装置1が中継局3-iを選択し、中継を実施させる制御手順は以下の通りである。
【0031】
(1)各局での電波伝搬特性の測定および中継局での処理遅延等の計算
各中継局3-iの候補および端末局4は、基地局2との間の電波伝搬特性を測定し、制御装置1に送付する。また、各中継局3-iの候補は、端末局4との間の電波伝搬特性を測定し、制御装置1に送付する。さらに、各中継局3-iの候補は、自己干渉を抑圧するためのFIRフィルタの各タップTjの重みwjを決定する。さらにまた、各中継局3-iの候補は、FIRフィルタのタップ数ND,iと遅延時間τDから、処理遅延τR,i=(ND, i-1)×τDを算出する。各中継局3-iの候補は、処理遅延τR,iを制御装置
1に送付する。
【0032】
(2)中継に関与する中継局3-iの選択
制御装置1は、中継局3-i(i=1~N)の中から、基地局2から端末局4へ通信路の
容量が最大となるように1以上の中継局3-i(i=1~NR、NRは選択される中継局数
)を選択する。通信路容量は、以下の式(1A)で与えられる。
【0033】
【数1】
aiは、当該中継局3-iの候補が、中継局3として選択される場合にはai=1、選択されない場合には、ai=0に設定される係数である。以下、この係数は、可否aiと呼ばれる。本実施形態では、制御装置1は、可否aiに1または0を設定した可否ai(i=1~N、Nは中継局3の候補数)の組み合わせのうち、(式1A)の通信路容量が最大となる可否aiの組み合わせを選択する。そして、制御装置1は、可否ai=1となった中継局3-iの候補を中継局3-i(i=1~NR)として選択する。
【0034】
また、HBS->UEは、基地局2の各アンテナ(例えば#0乃至#7)と、端末局4の各アンテナ(例えば#0乃至#7)との間の電波伝搬特性を示す伝送行列である。伝送行列のそれぞれの要素はアンテナ間の電波伝搬特性であり、伝送行列は、電波伝搬特性または通信路行列とも呼ばれる。また、HBS->R,iは、基地局2の各アンテナ(例えば#0乃至#7)と、中継局3-iの候補の各アンテナ(例えば#0)との間の電波伝搬特性を示す伝送行列である。さらに、HUE->R,iは、端末局4の各アンテナ(例えば#0乃至#7)と、中継局3-iの候補の各アンテナ(例えば#0)との間の電波伝搬特性を示す伝送行列である。また、CapはMIMOの伝送行列を基にした通信路容量の計算式である。(式1A)(式1B)において、*は行列の乗算である。(式1B)において、Mは、アンテナ本数、IMは、M×Mの単位行列、HHは、Hのエルミート行列、αはスケーリング係数、det(X)は行列Xの行列式である。上記通信路容量は、基地局2と前記1以上の中継局3-iのそれぞれとの間の電波伝搬特性HBS->R,i、1以上の中継局3-iのそれぞれと端末局4との間の電波伝搬特性HUE->R,i、および基地局2と端末局4との間の電波伝搬特性HBS->UEを基に計算されるといえる。
【0035】
ただし、制御装置1は、端末局4における受信においてダイバーシティ利得が得られるよう、各中継局3-iにおいて、当該中継局3-iで中継される中継波の遅延量Δiを設定する。遅延量Δiは、各中継局3-iにおいて中継される中継波のスロット先頭からの遅延時間である。すなわち、遅延量Δiは、変調信号の各シンボルが基地局2から中継局3-iで中継されて端末局4に到達するまでの伝搬遅延時間ということができる。制御装置1は、基地局2から送信され、異なる中継局3-i、3-jで中継され、端末局4で受信される2つの経路の受信信号が異なる伝搬遅延時間で端末局4に到達するように遅延量Δiを制御する。そのため、中継局3-iが選択される場合には、i番目に選択される中継局3-iにおいては、それまでに選択済みの1番目からi-1番目までの伝搬遅延量τj(j=1~i-1)を積算した積算値(τ1+σ1+τ2+σ2・・・+τi-1+σi-1)が計算される。ここで、伝搬遅延量τjは、各中継局3-jから端末局4までの伝搬に要する時間である。また、σjは、その遅延広がりである。すなわち、制御装置1は、1以上の中継局3-jと端末局4との間の第2の信号の伝搬遅延量を選択された中継局3-jの順に積算する。なお、最初に選択される中継局3-1の場合には、この伝搬遅延量τj(j=0)の積算値は0とすればよい。そして、制御装置1は、選択された中継局3-iの直前に選択された中継局3-(i-1)までに伝搬遅延量τjと遅延広がりσj(j=1~i-1)を積算した値を基に、選択された中継局3-iにおける伝搬遅延時間である遅延量Δiを設定する。すなわち、それぞれの中継局3-iから端末局4への伝搬遅延量の積算値に、直接波の伝搬遅延時間τBS->UE、基地局2から中継局3-iへの伝搬遅延時間τBS->R,i、および中継局3-i内の処理遅延τR,iを反映した遅延量Δiが設定される。すなわち、中継局3-iにおける遅延量Δiは、以下の式(2)で設定される。
【0036】
【数2】
そして、制御装置1は、最も遅いタイミングで端末局4において受信される受信信号の伝搬遅延時間が、受信信号のシンボルとシンボルとの間に設定されるサイクリックプレフィックス長Tcp未満となるように、中継局数NRを決定する。すなわち、制御装置1は、以下の(式3)の拘束条件が充足されるように、中継局数NRを決定する。
【0037】
【数3】
図6は、制御装置1が5つの中継局3-i(i=1~5)に対して設定する遅延量Δiの構成とサイクリックプレフィックス長Tcpとの関係を例示する図である。(式2)の遅延量Δiの第1項は、関数max()を含む。関数max()は、基地局2から端末局4に到達する直接波の伝搬に要する時間(伝搬遅延時間)であるτ
BS->UE+σ
BS->UEと、中継波が基地局2から中継局3-iに到達し、FIRフィルタで処理されるまでの遅延時間τ
BS->R,i+σ
BS->R,i+τ
R,iを比較して大きい値を選択する。ここで、τ
BS->UEは、直接波の伝搬に要する時間(伝搬遅延時間)であり、σ
BS->UEはその遅延広がりである。なお、遅延広がりは、直接波に対する反射波(エコーとも呼ぶことができるもの)が到来する時間の長さであり、本実施形態では、例え
ば、レファレンス信号で計測される。また、τ
BS->R,iは、基地局2から中継局3-iまでの伝搬に要する時間であり、σ
BS->R,iはその遅延広がりである。また、τ
R,iは、中継波が中継局3-iにおいてFIRフィルタで自己干渉を抑圧するために処理されるときの処理遅延である。
【0038】
第2項のδは計測偏差である。δは各局が持つクロックの偏差である。本実施形態は、例えば、全局間でのスロットタイミングが同期されることを前提とする。しかしながら、実際にはある程度のタイミングのずれが局ごとに生じる。この局ごとの偏差を考慮した計測偏差をδとして、遅延時間の計算に含むことによって、許容遅延時間であるサイクリックプレフィックス長Tcpを超えない制御が実現される。なお、δの値としては、単一局を考えたときのクロック偏差の最悪値ではない。すなわち、中継によって偏差が蓄積されることが考慮され、その中継段数を踏まえてδの値が設定される。また、第3項は、選択済みの0番目からi-1番目までの伝搬遅延量τj-1(j=1~i)を積算した値である。
【0039】
そして、
図6は、(式2)で計算される各中継局3-iに設定される遅延量Δiがサイクリックプレフィックス長Tcp未満となることを規定している。つまり、(式3)のように、中継局3-iとなる最大の数NRに対応する中継局3-iにおいても、拘束条件が充足されることになる。ここで、サイクリックプレフィックスは、変調信号において、同一のビット情報の区間に対応するシンボルとシンボルとの間に設定されるガードインターバルの一例である。また、直接波は、第1の信号の一例であり、中継波は第2の信号の一例である。制御装置1は、(式2)にしたがって第1の信号の伝搬遅延時間と、第2の信号の伝搬遅延時間とが異なる値となるように遅延量Δiを設定する。また、制御装置1は、
図6および(式3)のように、第2の信号がガードインターバルの時間以上に遅延しない範囲で、端末局4との通信に介在する中継局3-iにおける伝搬遅延時間を設定するといえる。また、制御装置1は、伝搬遅延時間により第2の信号がガードインターバルの時間以上に遅延しない範囲の中継局数で、1以上の中継局3から選択された順に端末局4との通信に介在する中継局3-iを選択するといえる。
【0040】
図7から
図10は、通信システム100Aの処理手順を例示するシーケンス図である。
図7から
図10は、制御装置1、基地局2、中継局3-iの候補および端末局4の処理シーケンスを含む。なお、通信システム100Bにおいては、基地局2が中央基地局2Aと1以上の分散基地局2Bに分離する。しかしながら、中央基地局2Aの制御回路22Aの処理は、
図7から
図10と同様である。なお、中継局3-iの候補は、制御装置1によって選択されたときに実際に中継局3-iとして動作する。
【0041】
この処理では、まず、
図7において、例えば、MIMO等による無線アクセスネットワークへの接続を希望する端末局4は、制御装置1へ要求を送付する(S71)。要求は、基地局2を介して制御装置1に送付される(S72)。制御装置1は、電波伝搬特性を評価するため、基地局2、および基地局2を介して端末局4および中継局3-iの候補へ電波伝搬特性の測定を指示する(S73、S74)。基地局2および端末局4は、所定の周期で、例えば、無線フレーム毎にレファレンス信号を送信する(S75、S76)。
【0042】
端末局4は、基地局2から送信されたレファレンス信号を受信し、電波伝搬特性HBS->UEを計測し(S77)、基地局2を介して制御装置1へ送付する(S78、S79)。
【0043】
中継局3-iの候補は、同じレファレンス信号から電波伝搬特性HBS->R,iを計測する(S7A)。中継局3-iの候補は、さらに端末局4から基地局2へ送信される制御チャネル等のレファレンス信号から電波伝搬特性HUE->R,iを計測する(S7B
)。
【0044】
次に
図8により説明が継続される。
図7と
図8は、記号A1乃至C1で接続される。中継局3-iの候補は、自身が基地局2に対して送信する制御チャネル等のレファレンス信号を受信して送信・受信間の自己干渉における結合H
SI,iを計測する(S81)。中継局3-iの候補の制御回路32は、結合H
SI,iを基に自己干渉を抑圧するためのFIRフィルタ重みwiを決定する(S82)。さらに、中継局3-iの候補は、タップ数N
D,iとタップあたりの遅延時間τ
Dから、自己干渉を抑圧するための処理遅延τ
R,i=(N
D,i-1)*τ
Dを算出する(S83)。ここで、*は乗算を示す記号である。中継局3-iの候補は、基地局2を介して、電波伝搬特性H
BS->R,i、H
UE->R,i、処理遅延τ
R,iを制御装置1へ送付する(S84、S85)。タップ数N
D,iは、自己干渉の除去に必要なタップ数(=自己干渉の遅延広がり[秒]/ベースバンド波形のサンプリング周期[秒])程度を超える値を目安として決定される。ただし、受信タップ数が多くなるほど処理遅延が長くなるので、許容可能な最大遅延時間によってタップ数が制限されることになる。
【0045】
制御装置1は、電波伝搬特性HBS->UE、HBS->R,i、HUE->R,iから、通信路容量((式1A)参照)が最大となる伝搬経路HBS->R->UEを求める。ただし、制御装置1は、処理遅延τR,iおよび中継局3-iから端末局4までの伝搬遅延量τiを用いて、異なる中継局3-iの候補から端末局4に到達するそれぞれの非再生中継波が重複しないようにする。すなわち、制御装置1は、(式1A)および(式2)にしたがって中継局3-iの候補ごとに可否aiと遅延量Δiを選定する(S86)。
【0046】
本実施形態では、制御装置1は、(式1A)にしたがって、中継局3-iの選択の可否aiの値を決定するときに、すべての中継局3-i(i=1~N)に対応するaiに対して、0または1のいずれかを設定し、通信路容量を計算する。ここで、Nは中継局3の候補の数である。すなわち、制御装置1は、中継局3-iの候補のすべての組み合わせに対して、(式3)を充足する中継局3-iの候補の組み合わせを列挙し、列挙された組み合わせから(式1A)による通信路容量が最大となる中継局3-iの候補の組み合わせを決定する。(式3)は、所定の拘束条件の一例である。すなわち、S86の処理において、制御装置1は、基地局2と端末局4との間の通信路容量が所定の拘束条件において最大となるように基地局2と端末局4との通信に介在する中継局3-iを決定するといえる。また、この処理では、制御装置1は、1以上の中継局3-iのうちの基地局2と端末局4との間の通信に介在する中継局3-iの組み合わせを変更して通信路容量を計算するといえる。また、制御装置1は、(式3)の拘束条件により、中継波がガードインターバルの時間以上に遅延しない範囲で、端末局4との通信に介在する中継局3-iにおける伝搬遅延時間である遅延量Δiを設定するといえる。さらにまた、制御装置1は、(式3)の拘束条件により、第2の信号としての中継波がガードインターバルの時間以上に遅延しない範囲の中継局数で、1以上の中継局から端末局との通信に介在する中継局を決定するといえる。
【0047】
次に
図9により説明が継続される。
図8と
図9は、記号A2乃至C2で接続され、
図7と
図9は、記号D1で接続される。制御装置1は、得られた伝搬経路H
BS->R->UEに対して、変調方式・符号化率の組み合わせであるModulation and channel Coding Scheme(MCS)を決定し(S91)、制御チャネルで端末局4に通知する(S92、S93)。端末局4は、MCSを受けて、制御パラメータに設定する(S98)。その結果、端末局4は、受信したMCSに基づいて、例えば、ダウンリンクチャネルのデータ信号の復調と復号、アップリンクチャネルのデータ信号の符号化と変調によるアップリンクチャネルのデータ信号の生成を行う。また、制御装置1は、中継局3-iの候補に対して、中継パラメータとして、中継の可否ai、可の場合は送信時の遅延量Δiを通知する(S9
4、S95)。
【0048】
中継局3-iの制御回路32は、可否ai=1か否かを判定する(S96)。可否ai=1である場合(S96でYES)、制御回路32は、中継局3-iで中継される信号の基地局2から端末局4までの伝搬遅延時間が(式2)にしたがって遅延量ΔiとなるようにFIRフィルタの遅延器Dを対応する数だけ増加させて設定する(S97)。
【0049】
次に
図10により説明が継続される。
図9と
図10は、記号A3乃至C4およびD2で接続される。
図9のS97の処理に続いて、中継局3-iは、端末局4に対する非再生中継を実施する(S102)。すなわち、中継局3-iは、基地局2が処理S101において端末局4に送信した送信信号を受け、同一無線フレーム内で送信信号を非再生中継する。また、可否ai=0の場合(S96でNO)、中継局3-iは、非再生中継を行わない。そして、中継局3-iは、非再生中継を継続するか否かを判定する(S103)。中継局3-iは、非再生中継を継続する場合には、処理を
図7のC5に戻す。中継局3-iは、非再生中継を継続しない場合には、処理を終了する。
図7のC5から、次のC5までの処理は、例えば、無線フレームごとに繰り返し実施される。
【0050】
端末局4は、基地局2から送信された直接波および中継局3-iで中継された中継波を受信する(S104)。このとき、受信信号のシンボルはサイクリックプレフィックス以上に遅延しないので、端末局4は、直接波および中継局3-iで中継された中継波からダイバーシティ利得を得て、高品質での受信が可能となる。
【0051】
以上述べたように、本実施形態では、制御装置1は基地局2と1以上の中継局3-iのそれぞれとの間、1以上の中継局3-iのそれぞれと端末局4との間および基地局2と端末局4との間で電波伝搬特性Hを取得する。そして、制御装置1はこれらの電波伝搬特性Hを基に基地局2と端末局4との間の通信路容量を計算する。そして、制御装置1は通信路容量が最大となるように端末局4との通信に介在する中継局3-iを1以上の中継局3-i(i=1~N)から決定する。このため、制御装置1は、基地局2と端末局4との間での高速通信が可能な中継局3-iの組み合わせを決定できる。
【0052】
ここで、例えば、制御装置1は基地局2と端末局4との通信に介在する中継局3-iを決定するときに、介在する中継局3-iを変更して、中継局3-iの組み合わせごとに通信路容量を計算する。このため、制御装置1は、基地局2と端末局4との間での高速通信が可能な中継局3-iの組み合わせを適正に決定できる。
【0053】
また、通信システム100A、100Bでの通信における変調信号は、同一のビット情報の区間に対応するシンボルとシンボルとの間にガードインターバルとして例示されるサイクリックプレフィックスを含む。基地局2から1以上の中継局3-iのいずれをも介さずに端末局4に到達する信号は直接波であり、第1の信号ということができる。また、端末局4との通信に介在する中継局3-iを介して端末局4に到達する信号は中継波であり、第2の信号ということができる。制御装置1は、第1の信号(直接波)の伝搬遅延時間τ
BS->UE+σ
BS->UEと、第2の信号(中継波)の基地局2から端末局4までの伝搬遅延時間であるスロット先頭からの遅延量Δiが異なる値となるように制御する。そして、制御装置1は、第2の信号がガードインターバルの時間以上に遅延しない範囲で、基地局2と端末局4との通信に介在する中継局3-iにおけるスロット先頭からの遅延量Δiを設定する。そして、端末局4との通信に介在する中継局3-iのそれぞれは、設定されたスロット先頭からの遅延量Δiにしたがって第2の信号が基地局2から端末局4に到達するように非再生中継を実行する。このため、制御装置1は、非再生中継を行う中継局3-iの組み合わせによって、送信信号中のシンボル間での干渉が生じないという拘束条件の下で、通信路容量を最大にすることができる。また、
図1、2のように、基地局
2または端末局4が複数アンテナによりMIMOで通信する場合には、端末局4はダイバーシティ利得を確保できる。
【0054】
制御装置1は、上記処理で決定された中継局3-iの順にそれぞれの中継局3-iから端末局4までの伝搬遅延量τiを積算する。そして、制御装置1は、中継局3-iのそれぞれにおける中継波の伝搬遅延時間である遅延量Δiをそれぞれの中継局3-iの直前に決定された中継局までに積算した値を基に設定する。そして、制御装置1は、設定された遅延量Δiにより中継波がガードインターバルの時間以上に遅延しない範囲の中継局数で、1以上の中継局3から端末局4との通信に介在する中継局3-iを決定する。このため、基地局2と端末局4は、非再生中継を行う中継局3-iの組み合わせによって、送信信号中のシンボル間での干渉が生じないという拘束条件の下で、端末局4との間の通信路容量を最大にして通信を実施できる。
【0055】
制御装置1は、無線フレーム毎に、基地局2から送信され1以上の中継局3-iのいずれをも介さずに端末局4において受信されるレファレンス信号を基に測定される電波伝搬特性を、基地局2を介して取得する。また、制御装置1は、基地局2から送信され1以上の中継局3-iにおいて受信されるレファレンス信号を基に測定される電波伝搬特性を、基地局2を介して取得する。また、制御装置1は、端末局4から送信され、1以上の中継局3-iにおいて受信されるレファレンス信号を基に測定される電波伝搬特性を、基地局2を介して取得する。そして、制御装置1は、端末局4との通信に介在する中継局3-iを決定する。したがって、制御装置1は、無線フレーム毎に、適切に通信路の状態を取得し、端末局4との通信に介在する中継局3-iを決定できる。
【0056】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、制御装置1は、(式1A)にしたがって、中継局3-iの選択の可否aiの値を決定するときに、すべての中継局3-i(i=1~N)に対応するaiに対して、0または1のいずれかを設定し、通信路容量を計算した。すなわち、制御装置1は、基地局2と端末局4との間の通信に介在する中継局3-iを順次変更して、中継局3-iのすべての組み合わせに対する容量を計算した。
【0057】
第2実施形態では、制御装置1は、中継局3-iを選択するときに、優先度を計算し、計算された優先度にしたがって、中継局3-iを選択する。第2実施形態において、制御装置1が優先度にしたがって中継局3-iを選択すること以外の第2実施形態の通信システム100A、100Bの処理および構成は第1実施形態と同様である。そこで、第1実施形態と共通する処理および構成の説明は省略される。すなわち、第1実施形態における中継局3-iを選択すること以外の処理および構成は、そのまま第2実施形態に適用される。
【0058】
図11は、第2実施形態において、制御装置1が中継局3-iを選択する処理を例示する図である。この処理では、まず、制御装置1は、中継局3-iの候補を経由する電波伝搬特性H
BS->R,i*H
UE->R,iに対する通信路容量Ciを求める(S111)。*は行列の乗算である。次に、制御装置1は、中継局3-iの候補を経由する中継に要する時間τi+σiあたりの通信路容量の比率zi=Ci/(τi+σi)を求める(S112)。中継に要する時間τi+σiは、中継局3-iから端末局4までの信号の伝搬時間である伝搬遅延量τiと遅延広がりσiの和である。
そして、制御装置1は、比率ziが大きい局から順に中継局3-i(i=1,2,・・・)として選択していく。そして、制御装置1は、中継局3-i(i=1,2,・・・)について、(式3)の拘束条件を満たす範囲で中継局3-iを追加する。
【0059】
より具体的には、制御装置1は、比率ziが大きい中継局3-iの候補から順に中継局
3-iを追加し、当該局で中継される中継波のスロット先頭からの遅延量Δi((式2)参照)を計算する(S113)。第1実施形態で述べたように、スロット先頭からの遅延量Δiは、信号が基地局2と端末局4との間を伝搬するときの伝搬遅延時間のである。次に、制御装置1は、スロット先頭からの遅延量Δiが(式3)の拘束条件を充足するか否かを判定する(S114)。そして、スロット先頭からの遅延量Δiが(式3)の拘束条件を充足する場合、当該中継局3-iの可否ai=1を設定し、中継局3-iを選択する(S115)。このようにして、制御装置1は、比率ziが大きい中継局3-iの候補から順に選択してゆき、スロット先頭からの遅延量Δiが(式3)の拘束条件を充足しなくなった時点で処理を終了する。このようにして、制御装置1は、選択した中継局3-iの候補に対してai=1を設定し、他の候補に対してai=0を設定する。
【0060】
したがって、制御装置1はスロット先頭からの遅延量Δiにより第2の信号である中継波のシンボルがガードインターバルの時間以上に遅延しない範囲の数で、中継局3を選択するといえる。また、制御装置1は、1以上の中継局3-i(i=1~N)から選択された順に端末局4との通信に介在する中継局3-i(i=1~NR)を選択するといえる。ここで、Nは、中継局3の候補の数であり、NRは中継に関与する中継局3の数である。
【0061】
以上述べたように、制御装置1は、1以上の中継局3-iのそれぞれを経由する中継に要する時間τi+σiに対するそれぞれの中継局3-iが介在する基地局2と端末局4との間の通信路容量Ciの比率ziを計算する。
【0062】
そして、制御装置1は前記1以上の中継局3-i(i=1~N)のうち比率ziが大きい中継局3-iを優先して端末局4との通信に介在する中継局3を選択する。比率ziは、中継局3-iから端末局4までの伝搬遅延量あたりの通信路容量ということができる。すなわち、本実施形態では、制御装置1は、中継局3-iから端末局4までの伝搬遅延量を考慮して通信路容量を大きくできる中継局3-iを選択することができる。また、制御装置1は、通信路容量が同等であれば中継局3-iから端末局4までの伝搬遅延量が短い経路を優先する結果、(式3)にしたがって、より多くの中継局3-iを選択することができる。また、制御装置1は、比率ziを基準に、第1実施形態よりも少ない計算量で、適切に、かつ、拘束条件を充足する範囲で、基地局2と端末局4との間の通信路容量を最大にする中継局3-iの組み合わせを選択できる。
【0063】
<第3実施形態>
以下、
図12から
図15を参照して第3実施形態の通信システム100A、100Bが説明される。上記第1実施形態および第2実施形態では、下り回線の通信を中継局3で中継する場合に、高速通信が可能な中継局3-iの組み合わせを決定する処理が例示された。しかし、通信システム100A,100Bの処理が上記に限定される訳ではない。
【0064】
すなわち、通信システム100A,100Bでは、各局が使用するアンテナに変更がなければ、時分割による上り回線(アップリンクチャネルともいう)と下り回線(ダウンリンクチャネルともいう)の多重化(TDD)が前提とされる。伝搬路特性(通信路特性ともいう)は上り回線と下り回線とでは同一みなすことができる。厳密には、伝搬路特性は、端末局4(または中継局3)の移動等による周辺環境の変化によって異なる。しかし、同一の無線フレームの範囲では周辺環境の変化は無視できると仮定できる。よって、中継局3および端末局4から基地局2(もしくは制御装置1)に通知された伝搬路特性を用いて、上り回線における遅延量ΔiULおよび伝搬遅延時間の計算も、下り回線と同様に実行できる。
【0065】
図12は、第3実施形態における通信システム100Aを例示する図である。通信システム100Aの構成は、第1実施形態の
図1において述べた通りである。本実施形態では
、上り回線において、制御装置1は、中継局3-iの候補(i=1~N、Nは中継局3の候補数)の中から、端末局4と基地局2との通信を中継する1以上の中継局3-iを選択する。その手順は、第1実施形態および第2実施形態において下り回線について述べたものと同様である。なお、制御装置1が下り回線において中継局3-iの候補(i=1~N、Nは中継局3の候補数)の中から、基地局2と端末局4との通信を中継する1以上の中継局3-iを選択する処理は、すでに第1実施形態および第2実施形態で述べた通りである。また、通信システム100A、100Bの構成は、すでに第1実施形態および第2実施形態において述べた構成と同様である。したがって、
図1から
図11の構成及び処理は、そのまま第3実施形態にも適用される。
【0066】
(1)各局での電波伝搬特性の測定および中継局での処理遅延等の計算
各中継局3-iの候補および端末局4は、基地局2との間の電波伝搬特性を測定し、制御装置1に送付する。また、各中継局3-iの候補は、端末局4との間の電波伝搬特性を測定し、制御装置1に送付する。さらに、各中継局3-iの候補は、自己干渉を抑圧するためのFIRフィルタの各タップTjの重みwjを決定する。さらにまた、各中継局3-iの候補は、FIRフィルタのタップ数ND,iと遅延時間τDから、処理遅延τR,i=(ND, i-1)×τDを算出する。各中継局3-iの候補は、処理遅延τR,iを制御装置
1に送付する。以上の計算は、第1実施形態における各局での電波伝搬特性の測定および中継局での処理遅延等の計算と同一である。
【0067】
(2)中継に関与する中継局3-iの選択
制御装置1は、中継局3-i(i=1~N)の中から、端末局4から基地局2へ通信路の容量が最大となるように1以上の中継局3-i(i=1~NR、NRは選択される中継局数)を選択する。通信路容量は、第1実施形態の式(1A)で与えられる。
【0068】
下り回線についての第1実施形態と同様、上り回線においても、制御装置1は、基地局2における受信においてダイバーシティ利得が得られるよう、各中継局3-iにおいて、当該中継局3-iで中継される中継波の遅延量Δiを設定する。制御装置1は、端末局4から送信され、異なる中継局3-i、3-jで中継され、基地局2で受信される2つの経路の受信信号が異なる伝搬遅延時間で基地局2に到達するように制御する。そのため、中継局3-iが選択される場合には、i番目に選択される中継局3-iにおいては、それまでに選択済みの1番目からi-1番目までの伝搬遅延量τBS->R,j(j=1~i-1)を積算した積算値(τBS->R,1+σBS->R,1+τBS->R,2+σBS->R,2・・・+τBS->R,i-1+σBS->R,i-1)が計算される。ここで、伝搬遅延量τBS->R,jは、各中継局3-jから基地局2までの伝搬に要する時間である。また、σBS->R,jは、その遅延広がりである。すなわち、制御装置1は、1以上の中継局3-jと基地局2との間の第2の信号の伝搬遅延量を選択済みの中継局3-jの順に積算する。なお、最初に選択される中継局3-1の場合には、この伝搬遅延量τBS->R,j(j=0)の積算値は0とすればよい。そして、制御装置1は、選択された中継局3-iの直前に選択された中継局3-(i-1)までに伝搬遅延量τBS->R,jと遅延広がりσBS->R,j(j=1~i-1)を積算した値を基に遅延量Δiを設定する。すなわち、それぞれの中継局3-iから基地局2への伝搬遅延量の積算値に、直接波の伝搬遅延時間τBS->UE、端末局4から中継局3への伝搬遅延時間τUE->R,i、および中継局3-i内の処理遅延τR,iを反映した遅延量ΔiULが設定される。なお、直接波の伝搬遅延時間τUE->BSはτBS->UEと同一である。また、第3実施形態では、アップリンクチャネルの遅延量ΔiをΔiUL記載し、アップリンクチャネルのものであることを明示する。一方、第1実施形態の遅延量Δiがダウンリンクのものであることを明示される場合には、ΔiDLと記載される。すなわち、中継局3-iにおける遅延量ΔiULは、以下の式(4)で設定される。
【0069】
【数4】
そして、制御装置1は、最も遅いタイミングで基地局2において受信される受信信号の伝搬遅延時間が、受信信号のシンボルとシンボルとの間に設定されるサイクリックプレフィックス長Tcp未満となるように、中継局数NRを決定する。すなわち、制御装置1は、以下の(式5)の拘束条件が充足されるように、中継局数NRを決定する。
【0070】
【数5】
図13は、第3実施形態において制御装置1が5つの中継局3-i(i=1~5)に対して設定する遅延量Δi
ULの構成とサイクリックプレフィックス長Tcpとの関係を例示する図である。(式4)の遅延量Δi
ULの第1項は、関数max()を含む。関数max()は、端末局4から基地局2に到達する直接波の伝搬遅延時間であるτ
BS->UE+σ
BS->UEと、中継波が端末局4から中継局3-iに到達し、FIRフィルタで処理されるまでの遅延時間τ
UE->R,i+σ
UE->R,i+τ
R,iを比較して大きい値を選択する。第1実施形態の式(2)で述べた通り、τ
BS->UEは、直接波の伝搬遅延時間であり、σ
BS->UEはその遅延広がりである。また、τ
UE->R,iは、端末局4から中継局3-iまでの伝搬に要する時間であり、σ
UE->R,iはその遅延広がりである。また、τ
R,iは、中継波が中継局3-iにおいてFIRフィルタで自己干渉を抑圧するために処理されるときの処理遅延である。
【0071】
第2項のδは第1実施形態ですでに述べた通り、計測偏差である。また、第3項は、選択済みの0番目からi-1番目までの伝搬遅延量τBS->R,j-1(j=1~i)を積算した値である。
【0072】
そして、
図13は、(式4)で計算される各中継局3-iに設定される遅延量Δi
ULがサイクリックプレフィックス長Tcp未満となることを規定している。つまり、(式5)のように、中継局3-iとなる最大の数NRに対応する中継局3-iにおいても、拘束条件が充足されることになる。ここで、サイクリックプレフィックスは、変調信号において、同一のビット情報の区間に対応するシンボルとシンボルとの間に設定されるガードインターバルの一例である。また、直接波は、第1の信号の一例であり、中継波は第2の信号の一例である。制御装置1は、(式4)にしたがって第1の信号の伝搬遅延時間と、第2の信号の伝搬遅延時間とが異なる値となるように設定する。また、制御装置1は、
図13および(式5)のように、第2の信号がガードインターバルの時間以上に遅延しない範囲で、第2の通信局(実施形態3では基地局2)との通信に介在する中継局3-iにおける伝搬遅延時間を設定するといえる。また、制御装置1は、伝搬遅延時間により第2の信号がガードインターバルの時間以上に遅延しない範囲の中継局数で、1以上の中継局3から選択された順に第2の通信局(基地局2)との通信に介在する中継局3-iを選択するといえる。なお、すでに述べたように、上り回線においては、端末局4が第1の通信局(送信局)であり、基地局2が第2の通信局(受信局)である。また、第1実施形態で説明
した下り回線においては、基地局2が第1の通信局(送信局)であり、端末局4が第2の通信局(受信局)である。
【0073】
通信システム100Aの処理手順は、すでに第1実施形態の
図7から
図10で述べたものと同様である。ただし、第1実施形態の
図8のS86の処理と、
図9のS91の処理は以下のように変更される。
【0074】
制御装置1は、電波伝搬特性HBS->UE、HBS->R,i、HUE->R,iから、通信路容量((式1A)参照)が最大となる端末局4から中継局3を介して基地局2に至る伝搬経路HUE->R->BSを求める。ただし、制御装置1は、処理遅延τR,iおよび中継局3-iから基地局2までの伝搬遅延量τBS->R,iを用いて、遅延量ΔiULを決定する。遅延量ΔiULは、異なる中継局3-iの候補から基地局2に到達するそれぞれの非再生中継波が重複しないよう設定される、第1の通信局(端末局4)から中継局3-iを経由して第2の通信局(基地局2)に至る伝搬遅延時間である。すなわち、制御装置1は、(式1A)および(式4)にしたがって中継局3-iの候補ごとに可否aiと遅延量ΔiULを選定する(S86の変形)。
【0075】
例えば、第1実施形態と同様、制御装置1は、(式1A)にしたがって、中継局3-iの選択の可否aiの値を決定するときに、すべての中継局3-i(i=1~N)に対応するaiに対して、0または1のいずれかを設定し、通信路容量を計算する。ここで、Nは中継局3の候補の数である。すなわち、制御装置1は、中継局3-iの候補のすべての組み合わせに対して、(式5)を充足する中継局3-iの候補の組み合わせを列挙し、列挙された組み合わせから(式1A)による通信路容量が最大となる中継局3-iの候補の組み合わせを決定する。したがって、(式5)は、所定の拘束条件の一例である。すなわち、本実施形態においては、S86が変形された処理において、制御装置1は、第1の通信局(端末局4)と第2の通信局(基地局2)との間の通信路容量が所定の拘束条件において最大となるように第1の通信局と第2の通信局との通信に介在する中継局3-iを決定するといえる。また、この処理では、制御装置1は、1以上の中継局3-iのうちの第1の通信局と第2の通信局との間の通信に介在する中継局3-iの組み合わせを変更して通信路容量を計算するといえる。また、制御装置1は、(式5)の拘束条件により、中継波がガードインターバルの時間以上に遅延しない範囲で、第2の通信局との通信に介在する中継局3-iにおける伝搬遅延時間である遅延量ΔiULを設定するといえる。さらにまた、制御装置1は、(式5)の拘束条件により、第2の信号としての中継波がガードインターバルの時間以上に遅延しない範囲の中継局数で、1以上の中継局から第2の通信局との通信に介在する中継局を決定するといえる。
【0076】
図14は、
図9を上り回線での通信に変更した図である。ただし、
図14の処理のうち、S91A、S97Aの処理以外の処理は、
図9と同様である。また、第3実施形態においては、
図9のS91Aの処理は、上り回線に対して計算される。そこで、
図14にS91Aとして示す。すなわち、制御装置1は、上記S86が変形された処理で得られた伝搬経路H
UE->R->BSに対して、変調方式・符号化率の組み合わせであるMCSを決定し(S91A)、制御チャネルで端末局4に通知する(S92、S93)。以降の処理は、第1実施形態で説明した下り回線に対する処理と同様である。すなわち、端末局4は、MCSを受けて、制御パラメータに設定する(S98)。また、制御装置1は、中継局3-iの候補に対して、中継パラメータとして、中継の可否ai、可の場合は送信時の遅延量Δi
ULを通知する(S94、S95)。遅延量Δi
ULは、中継波である第2の信号の伝搬遅延時間ということができる。
【0077】
中継局3-iの制御回路32は、可否ai=1か否かを判定する(S96)。可否ai=1である場合(S96でYES)、制御回路32は、中継局3-iで中継される信号の
端末局4から基地局2までの伝搬遅延時間が(式4)にしたがって遅延量ΔiULとなるようにFIRフィルタの遅延器Dを対応する数だけ増加させて設定する(S97A)。
【0078】
図15は、
図10を上り回線での通信に変更した図である。
図14と
図15は、記号A13乃至C14およびD12で接続される。
図14でのMCSの設定に続いて、端末局4は、例えば、上り回線のデータを送信する(S201)。また、
図14のS97Aの処理に続いて、中継局3-iは、端末局4に対する非再生中継を実施する(S202)。すなわち、中継局3-iは、端末局4が処理S201において基地局2に送信した送信信号(第2の信号に相当)を受け、同一無線フレーム内で送信信号(第2の信号)を非再生中継する。S202の処理は、設定された第2の信号の伝搬遅延時間(遅延量Δi
UL)にしたがって第2の信号に非再生中継を実行することの一例である。また、可否ai=0の場合(
図14のS96でNO)、中継局3-iは、非再生中継を行わない。そして、中継局3-iは、非再生中継を継続するか否かを判定する(S203)。中継局3-iは、非再生中継を継続する場合には、非再生中継を継続する。中継局3-iは、非再生中継を継続しない場合には、処理を終了する。
【0079】
基地局2は、端末局4から送信された直接波および中継局3-iで中継された中継波を受信する(S204)。このとき、受信信号のシンボルはサイクリックプレフィックス以上に遅延しないので、端末局4は、直接波および中継局3-iで中継された中継波からダイバーシティ利得を得て、高品質での受信が可能となる。
【0080】
以上述べたように、通信システム100A、100Bは、本実施形態の上り回線の通信においても、第1実施形態での下り回線の通信と同様の効果を発揮する。例えば、制御装置1は第1の通信局としての端末局4と1以上の中継局3-iのそれぞれとの間、1以上の中継局3-iのそれぞれと第2の通信局としての基地局2との間および端末局4と基地局2との間で電波伝搬特性Hを取得する。そして、制御装置1はこれらの電波伝搬特性Hを基に端末局4と基地局2との間の通信路容量を計算する。そして、制御装置1は通信路容量が最大となるように基地局2との通信に介在する中継局3-iを1以上の中継局3-i(i=1~N)から決定する。このため、制御装置1は、上り回線においても、基地局2と端末局4との間での高速通信が可能な中継局3-iの組み合わせを決定できる。
【0081】
制御装置1は、非再生中継を行う中継局3-iの組み合わせによって、送信信号中のシンボル間での干渉が生じないという拘束条件の下で、通信路容量を最大にすることができる。また、
図1、2のように、基地局2または端末局4が複数アンテナによりMIMOで通信する場合には、基地局2はダイバーシティ利得を確保できる。
【0082】
<第4実施形態>
制御装置1は、上り回線においても、第2実施形態において述べた手順で、中継局3-iを選択すればよい。すなわち、制御装置1は、中継局3-iの候補を経由する電波伝搬特性H
UE->R,i*H
BS->R,iに対する通信路容量Ciを求める(
図11のS111と同様)。*は行列の乗算である。また、H
UE->R,i*H
BS->R,iは、電波伝搬特性H
UE->R,iとH
BS->R,iを乗算することで得られる、端末局4から中継局3-iを経由して基地局2に至る経路の電波伝搬特性である。
【0083】
次に、制御装置1は、中継局3-iの候補を経由する中継に要する時間τ
BS->R,i+σ
BS->R,iあたりの通信路容量の比率zi=Ci/(τ
BS->R,i+σ
BS->R,i)を求める(
図11のS112と同様)。中継に要する時間τ
BS->R,i+σ
BS->R,iは、中継局3-iから基地局2までの信号の伝搬時間である伝搬遅延量τ
BS->R,iと遅延広がりσ
BS->R,iの和である。そして、制御装置1は、比率ziが大きい局から順に中継局3-i(i=1,2,・・・)として選択すればよ
い。
【0084】
より具体的には、制御装置1は、比率ziが大きい中継局3-iの候補から順に中継局3-iを追加し、当該局で中継される中継波のスロット先頭からの遅延量Δi
UL((式4)参照)を計算する(
図11のS113と同様)。第1実施形態で述べたように、スロット先頭からの遅延量Δi
ULは、信号が基地局2と端末局4との間を伝搬するときの伝搬遅延時間である。
【0085】
次に、制御装置1は、中継局3-iを経由する信号の伝搬遅延時間が(式5)の拘束条件を充足するか否かを判定する(
図11のS114と同様)。そして、中継局3-iを経由する信号の伝搬遅延時間が(式5)の拘束条件を充足する場合、当該中継局3-iの可否ai=1を設定し、中継局3-iを選択する(
図11のS115と同様)。このようにして、制御装置1は、比率ziが大きい中継局3-iの候補から順に選択してゆき、中継局3-iを経由する信号の伝搬遅延時間が(式5)の拘束条件を充足しなくなった時点で処理を終了する。このようにして、制御装置1は、選択した中継局3-iの候補に対してai=1を設定し、他の候補に対してai=0を設定する。
【0086】
したがって、制御装置1は1以上の中継局3と第2の通信局である基地局2との間の前第2の信号の伝搬遅延量τBS->R,i+σBS->R,iに対する通信路容量Ciの比率ziを計算する。ここで、通信路容量Ciは、1以上の中継局3-iのそれぞれが介在する第1の通信局(端末局4)と前記第2の通信局(基地局2)との間の通信路容量である。そして、1以上の中継局3-iのうち比率ziが大きい中継局3-iを優先して前記第2の通信局との通信に介在する前記中継局3-iを選択する。すなわち、実施形態4においても実施形態2と同様、制御装置1は、中継局3-iから端末局4までの伝搬遅延量を考慮して通信路容量を大きくできる中継局3-iを選択することができる。また、制御装置1は、通信路容量が同等であれば中継局3-iから端末局4までの伝搬遅延量が短い経路を優先する結果、(式5)にしたがって、より多くの中継局3-iを選択することができる。また、制御装置1は、比率ziを基準に、第3実施形態よりも少ない計算量で、適切に、かつ、拘束条件を充足する範囲で、基地局2と端末局4との間の通信路容量を最大にする中継局3-iの組み合わせを選択できる。
<第1実施形態乃至第4実施形態の組み合わせ>
【0087】
上記第1実施形態および第2実施形態では、下り回線の通信を中継局3で中継する場合に、高速通信が可能な中継局3-iの組み合わせを決定する処理が例示された。また、第3実施形態および第4実施形態では、上り回線の通信を中継局3で中継する場合に、高速通信が可能な中継局3-iの組み合わせを決定する処理が例示された。通信システム100A、100Bは、これらの処理を同一の通信システムにおいて実行してもよい。すなわち、通信システム100A、100Bは、下り回線においては第1実施形態の処理を実施し、上り回線においては第3実施形態の処理を実行すればよい。また、通信システム100A、100Bは、下り回線においては第2実施形態の処理を実施し、上り回線においては第4実施形態の処理を実行すればよい。
【0088】
<中継局の他の例>
上記第1実施形態および第2実施形態では、中継局3-iのアンテナの数は1つ(#0)のものが例示された。しかし、通信システム100A、100Bにおいて、中継局3-iのアンテナの数は複数でもよい。その場合には、(式1A)の通信路容量では、電波伝搬特性HBS->R,i、HUE->R,iは、中継局3-iのアンテナの数分だけ要素数が増える。また、その場合には、制御装置1は、中継局3-iごとに、かつ、中継局3-iのアンテナごとに異なる、スロット先頭からの遅延量Δi(ΔiDL、ΔiUL)をそれぞれの中継局3-iに指定すればよい。中継局3が複数のアンテナを有する場合、制
御装置1は、HBS->R,i及びHUE->R,iを中継局数ではなく、中継局3が持つアンテナ総数で管理する。これによって、制御装置1は、中継局3の候補がアンテナ1
本しか有しない場合と同様に、いずれかまたは総ての中継局3の候補が複数のアンテナを有する場合を含めて、中継局3を選定できる。
【0089】
なお、中継局3-iは、制御回路32に接続される制御チャネルを受信できる制御チャネル受信用の専用アンテナを有してもよい。中継局3-iは、このような専用アンテナを有することで、非再生中継用のチャネルと中継局用制御チャネルを個別に受信できる。そのため、制御装置1は、中継局3-iが非再生中継通信中においても、中継局3-iの制御(オンとオフの制御など)を実行できる。
【0090】
上記第1実施形態乃至第3実施形態では、制御装置1は、基地局2が接続されるコアネットワーク上の装置である。または、制御装置1がコアネットワーク自体であるか、またはコアネットワークに含まれるシステムである。しかしながら、制御装置1が、このようなコアネットワーク上の装置に限定される訳ではない。例えば、制御装置1が基地局2に含まれる装置であってもよい。例えば、制御装置1は基地局2内で、無線機21を通じて、中継局3または端末局4と通信する装置であってもよい。その場合には、
図7から
図10の処理においては、制御装置1と基地局2とは、一体の装置として処理を実行すればよい。したがって、A1、B1、A2、B2、A3、B3の2系列のシーケンスで記載されている処理は、1つのシーケンスとなればよい。
【0091】
<その他の実施形態>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。また、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0092】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは、柔軟に変更可能である。
【0093】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク、ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、または光学式カードのような、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0094】
1 制御装置
2 基地局
2A 中央基地局
2B 分散基地局
3 中継局
4 端末局
11 CPU
12 主記憶装置
13 外部記憶装置
16 通信装置
21、21B、31、41 無線機
22、22A、32、42 制御回路
311 送信機
312 受信機
313 ベースバンド回路
314 サーキュレータ