(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028006
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20240222BHJP
H01M 8/18 20060101ALI20240222BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20240222BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240222BHJP
H01M 16/00 20060101ALI20240222BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240222BHJP
H01M 4/1397 20100101ALI20240222BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240222BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240222BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
H02J3/38 170
H01M8/18
H01M8/00 A
H01M8/04 Z
H01M16/00
H01M4/58
H01M4/1397
H01M10/052
H02J3/32
H02J7/00 302A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131299
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】517206993
【氏名又は名称】株式会社大原興商
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】宋 尚浩
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
5H029
5H032
5H050
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5G066HB06
5G066HB07
5G066HB09
5G066JA07
5G066JB03
5G503AA05
5G503AA06
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB02
5G503GB06
5H029AJ02
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H032AA10
5H050AA02
5H050AA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H126BB10
5H126FF10
5H126RR01
5H127AA10
5H127AB27
5H127AB29
5H127AC15
5H127BA01
5H127BA57
5H127BB03
5H127BB13
5H127BB37
(57)【要約】
【課題】大電流の供給が要求された場合であっても、電源供給が安定して行うことができ、また、充電効率が良好な電力供給システムを提供すること。
【解決手段】本発明の電力供給システムは、正極電極10を内蔵する正極セル12と、負極電極13を内蔵する負極セル15とが隔膜16によって分離された電池セル1aと、正極電解液タンク21と、負極電解液タンク22と、正極セル12内に正極電解液11を導入して正極セル12から排出する正極液ポンプ17と、負極セル15内に負極電解液14を導入して負極セル15から排出する負極液ポンプ18とからなるレドックスフロー電池1と、レドックスフロー電池1に並列接続されるレドックスフロー電池以外の二次電池とを備え、レドックスフロー電池1の正極電極10及び負極電極13と、二次電池の正極60a及び負極60bとが接続され、レドックスフロー電池1と二次電池60とが並列接続となるように構成された制御回路70を介して接続されることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極電極を内蔵すると共に活物質を含む正極電解液を循環可能な正極セルと、負極電極を内蔵すると共に活物質を含む負極電解液を循環可能な負極セルとが所定のイオンを透過する隔膜によって分離された構成を有する電池セルと、
前記正極電解液が入っている正極電解液タンクと、前記負極電解液が入っている負極電解液タンクと、
前記正極セル内に前記正極電解液を導入して該正極セルから排出する正極液ポンプと、前記負極セル内に前記負極電解液を導入して該負極セルから排出する負極液ポンプと、
からなるレドックスフロー電池と、
前記レドックスフロー電池に並列接続される前記レドックスフロー電池以外の二次電池と、
を備え、
前記レドックスフロー電池の前記正極電極及び前記負極電極と、前記二次電池の正極及び負極とが接続され、前記レドックスフロー電池と前記二次電池とが並列接続となるように構成された制御回路を介して接続されることを特徴とする電力供給システム。
【請求項2】
前記二次電池は、複数のリチウムイオン単電池が直列に接続されたリチウムイオン電池であることを特徴とする請求項1記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記リチウムイオン電池が、リン酸鉄リチウムイオン電池であることを特徴とする請求項2記載の電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電流の供給が要求された場合であっても、電源供給が好適に行え、また、充電効率が良好な電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本件出願人は、非常用電源供給に好適に用いられる電力供給システムを提案している(特許文献1)。この電力供給システムでは、レドックスフロー電池を採用している。
この電力供給システムは、電池本体(電池セルを複数枚積層したセルスタック)と、電解液タンクとを備えて構成される。電解液タンク内の電解液は、ポンプにより、電池本体内を循環し、電解液タンクに戻る。
電解液を循環させることにより、電池本体を介して電解液タンク内の電解液で充放電が行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電力供給システムで採用されるレドックスフロー電池は、内部抵抗が高いと、起動時の大電流放電や突発的に生じる大電流放電が必要になった場合、出力電圧が低下する。
特に、放電時のレドックスフロー電池のみの二次電池で、突発的な大電流の放電が必要になり、大電流を流そうとすると、レドックスフロー電池の電圧が下降し、レドックスフロー電池の電圧稼働域を下回ってしまい稼働しなくなるという課題があった。
この問題を解決するために、レドックスフロー電池のセル数を増やし、セルの接続位置をスイッチングすることにより、レドックスフロー電池の出力を変動させることも考えられる。
しかしながら、セル数を増やすことは、再度レドックスフロー電池の設計が必要となり、どの程度の突発的な大電流放電が必要であるかを加味して設計すれば、大型化に向かわざるを得なくなる。更に、セル数を変動させるスイッチ機構を組み合わせると、構造も複雑となり、制御も容易ではなくなる。そしてこれらは、製造コストが大幅に増大し、商品としての競争力を失わせるおそれがあった。
本発明者は、より安価に商品を供給でき、大電流放電時にも電力供給を行えるようにできる本発明に至った。
【0005】
また、レドックスフロー電池は、内部抵抗が高いことから、充電時についても、以下のような課題がある。
レドックスフロー電池は、充電時は電圧が上がりやすく、特に大電流で充電すると、満充電に達する前に電池の上限電圧に達しやすい。電池の上限電圧を超えてしまうと、電気分解による電極表面からのガス発生や、電池セルの個体差や電池セル内の電解液フローの不均一によって、局所的に過充電状態になり、バナジウム化合物が析出する可能性が高まる。
これを防ぐためには、充電電流を所定の充電電圧以下になるように抑制しなければならず、充電に長時間を要すことになり、効率が悪化する。
また、充電の電源が風力発電や太陽光発電である場合には、電流変動が大きいので、レドックスフロー電池を適正に充電するためには、発電量が多い時間帯では、発電設備の発電能力を抑制し、電気を捨てなければならないという課題がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、大電流放電が要求された場合であっても、電源供給が安定して行うことができ、また、充電効率が良好な電力供給システムを提供することにある。
【0007】
さらに本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
【0009】
(請求項1)
正極電極を内蔵すると共に活物質を含む正極電解液を循環可能な正極セルと、負極電極を内蔵すると共に活物質を含む負極電解液を循環可能な負極セルとが所定のイオンを透過する隔膜によって分離された構成を有する電池セルと、
前記正極電解液が入っている正極電解液タンクと、前記負極電解液が入っている負極電解液タンクと、
前記正極セル内に前記正極電解液を導入して該正極セルから排出する正極液ポンプと、前記負極セル内に前記負極電解液を導入して該負極セルから排出する負極液ポンプと、
からなるレドックスフロー電池と、
前記レドックスフロー電池に並列接続される前記レドックスフロー電池以外の二次電池と、を備え、
前記レドックスフロー電池の前記正極電極及び前記負極電極と、前記二次電池の正極及び負極とが接続され、前記レドックスフロー電池と前記二次電池とが並列接続となるように構成された制御回路を介して接続されることを特徴とする電力供給システム。
(請求項2)
前記二次電池は、複数のリチウムイオン単電池が直列に接続されたリチウムイオン電池であることを特徴とする請求項1記載の電力供給システム。
(請求項3)
前記リチウムイオン電池が、リン酸鉄リチウムイオン電池であることを特徴とする請求項2記載の電力供給システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大電流放電が要求された場合であっても、電源供給が安定して行うことができ、また、充電効率が良好な電力供給システムを提供することができる。
【0011】
また、本発明によれば、電池寿命サイクルに関してレドックスフロー電池とレドックスフロー電池以外の二次電池を併用して使用することにより、レドックスフロー電池は、二次電池の中でも電池寿命サイクルが長い電池であるため、前記二次電池のみの場合よりも、電池交換による交換の手間を省くことができる。
【0012】
さらに、本発明によれば、前記二次電池を併用することにより、レドックスフロー電池の大電流放電に対する緩衝としての役目を果たすと共に、前記二次電池の電力量も活用できるため、電力供給システム全体としての電力量の向上が図れる。
【0013】
また、本発明によれば、同じ電解液量のレドックスフロー電池で比較した場合、レドックスフロー電池単独で使用する電力供給システムよりも、レドックスフロー電池から取り出せる電力量を多くすることができる。つまり、併用する前記二次電池の容量分よりも、さらに総電力量が多くなる。
さらに、前記二次電池を併用することによって、電解液を循環させるポンプの稼働時間を短縮し、消費電力を削減することができる。例えば、レドックスフロー電池を単独で充電する場合には、充電電源である太陽光発電(photovoltaics)の出力が弱いと、充電に時間がかかり、長時間ポンプを稼働させる必要がある。この場合に、充電電流を一旦前記二次電池で受けて充電し、前記二次電池によってレドックスフロー電池を一気に充電すれば、ポンプの稼働時間を短縮でき、消費電力を削減することができる。そして、前記二次電池のみを充電している間には、発電量がポンプの消費電力によって相殺されないので、前記二次電池への蓄電容量を速やかに確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に示す本発明の電力供給システムの例では、太陽光発電装置が、図示しないMPPT(入出力制御機構)を介して接続され、系統電源が整流器50を介して接続され電力へ供給される。
【0016】
これらの電源から、インバータ40を介して、外部の交流負荷へと接続されている。本実施形態においては、外部が直流負荷の場合には、インバータ40に代えて、DC-DCコンバータが接続されていることが好ましい。
【0017】
本実施形態の電力供給システムは、直流負荷と交流負荷の何れか一方又は両方に対応できることが好ましく、交流負荷の場合は、インバータ40を介して外部へ接続され、直流負荷の場合は、図示しないDC-DCコンバータを介して外部へ接続される。インバータ40とDC-DCコンバータは、外部の負荷に対応して構成されることが好ましく、外部の負荷がどちらでも対応できるように構成されていてもよい。
以下、外部が交流負荷の場合に、電池から外部への負荷に出力する電力を変換するインバータ40を用いた場合で説明する。
【0018】
本発明に係る電力供給システムは、入力側の電力を発生する電源である発電装置200や系統電力201と、出力側電力変換器であるインバータ40との間に、レドックスフロー電池1と、前記レドックスフロー電池1に並列接続された二次電池60との充放電を、制御回路70を介して制御するように構成されている。
【0019】
本実施形態のレドックスフロー電池1と共に用いられる二次電池は、レドックスフロー電池以外であれば、特に限定されないが、例えば、レドックスフロー電池1と共に用いられる二次電池としては、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、リチウムイオン電池等が挙げられるが、レドックスフロー電池に対する負荷軽減の観点から、レドックスフロー電池の内部抵抗よりも、内部抵抗が小さい二次電池を用いることが好ましい。
【0020】
また、レドックスフロー電池と共に用いられる二次電池としては、重量、容積当たりの出力が大きい、つまり出力密度が大きいリチウムイオン電池を用いることが好ましい。
【0021】
更に、リチウムイオン電池としては、コバルト系リチウムイオン電池、リン酸鉄リチウムイオン電池等が挙げられるが、安全性の観点から、リン酸鉄リチウムイオン電池を用いるのが好ましい。以下の説明では、リン酸鉄リチウムイオン電池60を用いた実施形態を説明する。
【0022】
本発明の電力供給システムは、図示の例では、系統電力201からの電池への充電のために、整流器50が設けられている。これ以外に、発電装置200からの電力が交流である場合には、電池への充電のため整流器が設けられていてもよい。
【0023】
本発明の電力供給システムは、レドックスフロー電池1により、照明、原動機及び電子回路等の電力消費施設に電力を給電する機能を発揮する。レドックスフロー電池1は、電池セル1aと、正極電解液タンク21及び負極電解液タンク22とから構成される。電池セル1aと、電解液タンク21、22とは、配管によって連結されて、レドックスフロー電池1として機能する。各電解液タンク21、22には、対応する電解液が入れられている。
【0024】
電池セル1aは、正極電極10を内蔵すると共に活物質としてバナジウムを含む正極電解液11を循環可能な正極セル12と、負極電極13を内蔵すると共に活物質としてバナジウムを含む負極電解液14を循環可能な負極セル15とを有する。正極セル12と負極セル15は、所定のイオンを透過する隔膜16によって分離されている。
【0025】
また、電池セル1aは、正極セル12への正極電解液の入出と、負極セル15への負極電解液の入出とが可能に構成されている。電池セル1aは、複数のセルをスタック(図示せず)して構成される。
ここで、レドックスフロー電池1の出力は、電極面積が同じであれば、単電池(セル)の数によって決定され、電力量は、電解液タンクに蓄えられる電解液の活物質濃度と液量によって決定される。
例えば、本実施形態においては、レドックスフロー電池1のセル40個を1スタックのセルスタックを用いた場合には、起電力が約40~62Vである。これに限定されず、電池の出力が安定して供給できる出力にするために必要なセル数、スタック数を設ければよい。
【0026】
正極電解液タンク21の正極電解液及び負極電解液タンク22の負極電解液に含まれる活物質としては、バナジウムが好ましく用いられる。
【0027】
正極電解液タンク21及び負極電解液タンク22は、電解液の活物質濃度によって異なるが、一般に、電力量の供給量が多くなればタンク容量が大きくなる。
例えば、電解液の活物質濃度によって異なるが、タンクの電解液量が500L(正負極液合計)の場合は約10.0kWh程度であり、700Lの場合約13.5kWh程度になる。本実施形態においては、必要電力量に応じて、必要なタンク容量のタンクを用いることが好ましい。
【0028】
正極電解液タンク21は、正極電解液の入出が可能なように構成され、負極電解液タンク22は、負極電解液の入出が可能なように構成されている。
【0029】
充電深度の測定方法としてはOCV(開回路電圧)を計測することによって、充電度合いを確認することができ、レドックスフロー電池の充放電を停止して計測するか、任意の位置に計測用のセル(図示せず)を設けてもよい。
【0030】
本実施形態においては、使用までしばらく時間を経過している場合もあるため、所定の日数毎に、OCVの計測を行って、充電深度を測定することもできる。
【0031】
本態様におけるレドックスフロー電池1は、正極セル12内に正極電解液11を導入して正極セル12から排出する正極液ポンプ17と、負極セル15内に負極電解液14を導入して負極セル15から排出する負極液ポンプ18を搭載している。
【0032】
電池セル1aと、電解液タンク21、22との間の配管23、25は、正極電解液タンク21から正極セル12への正極電解液の供給と、負極電解液タンク22から負極セル15への負極電解液の供給とが可能なように接続されている。また、配管24、26は、正極セル12から正極電解液タンク21への正極電解液の返送と、負極セル15から負極電解液タンク22への負極電解液の返送とが可能なように接続されている。
【0033】
本実施形態におけるレドックスフロー電池1としては、例えば、単電池(セル)40個の出力4~6kW、起電圧40V~62V、電解液量正負各300L程度のものを用いることができる。レドックスフロー電池は、電流受け入れ性がよいという特徴を有している。
【0034】
レドックスフロー電池は、電池セルを最小単位として、これを単独、又は複数枚積層したセルスタックと称される形態で使用され、電池セルにバナジウムを活物質として含む電解液を供給して充放電を行う。
正負極セルにおける充放電反応は、次の通りである。
正極セル12
充電:V4+→V5++e-
放電:V5++e-→V4+
負極セル15
充電:V3++e-→V2+
放電:V2+→V3++e-
【0035】
正極電極10及び負極電極13としては、公知の電極を用いることができ、特に限定されないが、電解液中のバナジウムが電池セル内を通過する際に酸化還元反応を生じる場を提供するのみで自ら反応せず、電解液の通過性に優れた構造、形態を有しており、極力表面積が広く、電気抵抗が低いことが好ましい。
さらに、酸化還元反応活性化の観点からは、電解液(水溶液)との親和性に優れていることが好ましく、さらに副反応となる水の分解を生じさせない観点から、水素過電圧、酸素過電圧が大きい方が好ましい。例えば、カーボンフェルトのようなカーボン材又はそれを黒鉛化したものや、メッシュ状のチタニウム又はジルコニウムの基板に貴金属めっきを施したもの又はカーボンコートしたものが挙げられる。
【0036】
隔膜16としては、公知の隔膜を用いることができ、特に限定されないが、例えば有機高分子からなるイオン交換膜が好ましく、カチオン交換膜及びアニオン交換膜のいずれも用いることができる。
【0037】
正極電解液は、4価及び5価の一方又はその両方のバナジウム化合物を含む。正極電解液には、析出物の析出を防止するために、従来公知の硝酸等のオキソ酸や保護コロイド剤、錯化剤等の添加物を含んでもよい。
【0038】
負極電解液は、2価及び3価の一方又はその両方のバナジウム化合物を含む。負極電解液には、析出物の析出を防止するために、従来公知の硝酸等のオキソ酸や保護コロイド剤、錯化剤等の添加物を含んでもよい。
【0039】
一般に、バナジウム電解液は、硫酸水溶液に酸化硫酸バナジウム塩を溶解して4価のバナジウムイオン溶液を調整し、そのバナジウムイオン溶液を電解して価数の異なるバナジウムイオン溶液を得ている。例えば、正極電解液では、4価のバナジウムイオン(VO2+)の酸化反応により、正極活物質である5価のバナジウムイオン(VO2
+)を含む溶液を調整する。負極電解液では、3価のバナジウムイオン(V3+)の還元反応により負極活物質である2価のバナジウムイオン(V2+)を含む溶液を調整する。
【0040】
リン酸鉄リチウムイオン電池60は、大電流の供給が要求されるときにレドックスフロー電池1と共に電力を供給することができる。また、レドックスフロー電池1が充電されていないときに、レドックスフロー電池1に代えて使用することもできる。
リン酸鉄リチウムイオン電池60は、例えば、後述する単電池(セル)が直列に16個接続された電池の場合に、起電圧48V~56V、容量50Ahの電池を用いることができる。これに限定されず、リン酸鉄リチウムイオン電池60の起電力、電力容量に関しては、レドックスフロー電池の仕様に応じて、変更可能であり、これにより制御も容易になる。
【0041】
リン酸鉄リチウムイオン電池60は、複数の単電池(セル)62が直列に接続されて構成され、各単電池62の容量バランスを調整するセルバランサ63を備えて構成されている。
【0042】
リン酸鉄リチウムイオン電池は、正極材からの酸素離脱がないため、内部短絡の発生個所から燃焼することがなく、安全性に優れる。また、リン酸鉄リチウムイオン電池は、短絡部分が化学反応を起こして絶縁体になるので、周囲へ延焼することがなく、安全性に優れる。
【0043】
レドックスフロー電池1は、2台のポンプ17,18を駆動して、電池セル1aと電解液タンク21,22との間を、電解液を循環させて、充電された電解液を電池セル1a内で放電させて、外部へ電力供給する。
外部へ電力を供給するには、制御回路70を経て、インバータ40を介して、外部41へ供給する(電力消費)。制御回路70は、レドックスフロー電池1の接続及び切断、リン酸鉄リチウムイオン電池60の接続及び切断、インバータ40の起動及び停止を行うように構成されている。
【0044】
充電された電解液を電池セル1a内で放電させた際に、その放電の終了は電解液の充電深度、又は電池の電圧を測定することで検出(判断)できる。放電中の充電深度の測定方法としては、OCV(開回路電圧)によって測定することができる。
【0045】
本発明において、電解液には、硫酸が含まれ酸性であり、金属腐食のおそれが強いので、電解液が通る配管23、24、25、26は、各々耐蝕性のある樹脂製であることが好ましい。
また配管23、24、25、26には、破損等を防止するために、樹脂の内部に補強網状体が装填されていることが好ましい。
【0046】
リン酸鉄リチウムイオン電池60から外部41への電力供給は、正極60aと負極60bから、制御回路70を経て、インバータ40を介して、外部41へ供給する(電力消費)。
【0047】
制御回路70は、前述したように、リン酸鉄リチウムイオン電池60の正極60a及び負極60bとの接続及び切断、インバータ40の起動及び停止を行うように構成されている。
【0048】
次に、レドックスフロー電池1の電解液タンク21、22及びリン酸鉄リチウムイオン電池60に充電する手法について説明する。
電解液タンク21,22の充電は、正極電極10及び負極電極13間に電圧印加し、ポンプ17、18により、電池セル1aと電解液タンク21、22との間で、正負極電解液を循環させることによって行う。
【0049】
また、リン酸鉄リチウムイオン電池60は、正極60a及び負極60b間に電圧を印加することによって充電する。
【0050】
充電は、太陽光発電(例えば、MPPT方式)、風力発電など種々の発電装置200及び/又は系統電力(商用電源)201からの電力を給電することによって行う。発電装置200は、制御回路70に接続されている。系統電力201は、整流器50を介して、制御回路70に接続されている。発電装置200及び系統電力201からの電力は、制御回路70を介して、電池セル1aの正極電極10及び負極電極13、及び、リン酸鉄リチウムイオン電池60の正極60a及び負極60bに供給される。
図示の例では、発電装置200が直流の場合、系統電力201の入力側が交流の場合を示している。したがって、発電装置200が風力発電等の交流であった場合は、整流器50を設けることが好ましい。
【0051】
制御回路70は、充放電時のレドックスフロー電池1とリン酸鉄リチウムイオン電池60の切断・接続を制御し、これら電池が同時に接続される場合には、レドックスフロー電池1とリン酸鉄リチウムイオン電池60とが並列接続となるように構成されている。
制御回路70は、レドックスフロー電池1から外部41への大電流の供給によってインバータ40への入力電圧が許容電圧範囲より低下してしまうときには、リン酸鉄リチウムイオン電池60からも電力供給を行って、インバータ40への入力電圧の低下幅を小さくする制御を行う。
大電流の供給が要求される場合としては、例えば、大型のセルモータを起動させるときなどである。
【0052】
レドックスフロー電池1は、内部抵抗が高いと、大電流放電を行う場合、インバータ40への入力電圧がインバータの許容電圧範囲より低下してしまうおそれがある。インバータ40への入力電圧が許容電圧範囲より低下してしまうと、外部41への電力供給ができなくなる。
【0053】
本発明においては、リン酸鉄リチウムイオン電池60を、レドックスフロー電池1と並列接続することにより、インバータ40への入力電圧の低下幅を小さくすることができる。リン酸鉄リチウムイオン電池60は、レドックスフロー電池に比べて内部抵抗が低く抑えることができるため、大電流放電の際に、リン酸鉄リチウムイオン電池60から電流を多く流し、レドックスフロー電池1から電流の量が少なくすることができる。これにより、レドックスフロー電池1の電圧低下幅が小さくなり、インバータ40への入力電圧を許容電圧範囲内に収めることができる。更に、レドックスフロー電池1よりも内部抵抗が小さい二次電池を併用することでより、レドックスフロー電池の負担を軽減する効果をより大きくすることができる。
【0054】
なお、電池の内部抵抗は、例えば、HIOKI(日置電機株式会社)製の「バッテリハイテスタ」によって計測することができる。
【0055】
本実施形態において、制御回路70は、リン酸鉄リチウムイオン電池60が過充電、過放電にならないように、切断・接続、系統電力200から外部41への直送ライン71に電力を供給する運転への切替をすることができる。レドックスフロー電池1に対しては、直送運転時の電解液循環ポンプ17、18の消費電力を抑えるために、切断・接続することが好ましい。
【符号の説明】
【0056】
1 レドックスフロー電池
1a 電池セル
10 正極電極
11 正極電解液
12 正極セル
13 負極電極
14 負極電解液
15 負極セル
16 隔膜
17 正極液ポンプ
18 負極液ポンプ
21 正極電解液タンク
22 負極電解液タンク
23、24、25、26 配管
40 インバータ
41 外部
50 整流器
60 リン酸鉄リチウムイオン電池
60a 正極
60b 負極
62 リン酸鉄リチウムイオン単電池
63 セルバランサ
70 制御回路
71 直送ライン
200 発電装置
201 系統電力