(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029540
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 175/14 20060101AFI20240228BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20240228BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C09J175/14
C09J4/02
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131858
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】築地 純一
(72)【発明者】
【氏名】大房 一樹
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EF181
4J040FA131
4J040HB14
4J040HB18
4J040HB21
4J040HD30
4J040HD36
4J040JB07
4J040KA13
4J040KA19
4J040KA28
4J040KA31
4J040LA01
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】得られる硬化物が高屈折を有し、基材に対する接着性に優れ、さらに高温・高湿条件下における環境試験後も接着力を維持する活性エネルギー線硬化型組成物の提供。
【解決手段】硬化性成分として下記(A)及び(B)を含み、
硬化性成分を、組成物全量中に70重量%以上の割合で含み、
硬化性成分中に、下記(A)及び(B)を特定割合で含み、
下記(C)を硬化性成分に対して特定割合で含有する、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
(A):2個官能以上ウレタン(メタ)アクリレート
(B):(A)以外の不飽和化合物であって、下記(B-1)、(B-2)、及び(B-3)を硬化性成分中に特定割合で含む化合物
・(B-1):芳香族環を2個以上有するモノ(メタ)アクリレート
・(B-2):芳香族環を有しない水酸基含有モノ(メタ)アクリレート
・(B-3):芳香族環を1個有する単官能不飽和化合物
(C):光ラジカル重合開始剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性成分として下記(A)成分及び(B)成分を含む組成物であって、
硬化性成分を、組成物全量中に70重量%以上の割合で含み、
硬化性成分の合計100重量%中に、下記(A)成分を5~30重量%及び(B)成分を70~95重量%の割合で含み、
下記(C)成分を硬化性成分100重量部に対して0.1~5重量部の割合で含有する、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
(A)成分:(メタ)アクリロイル基を2個以上有するウレタン(メタ)アクリレート
(B)成分:(A)成分以外のエチレン性不飽和基を有する化合物であって、下記(B-1)成分、(B-2)成分、及び(B-3)成分を含み、
硬化性成分100重量%中に、下記(B-1)成分を30~75重量%、(B-2)成分を10~40重量%、(B-3)成分を0~40重量%の割合で含む化合物
・(B-1)成分:芳香族環を2個以上有し、(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物
・(B-2)成分:芳香族環を有さず、水酸基及び1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
・(B-3)成分:芳香族環を1個含有し、エチレン性不飽和基を1個有する化合物
(C)成分:光ラジカル重合開始剤
【請求項2】
前記(A)成分が、重量平均分子量500~10万を有するウレタンジ(メタ)アクリレートである、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項3】
前記(A)成分が、ポリエステル骨格又はポリカーボネート骨格を有するウレタンジ(メタ)アクリレートである、請求項1又は請求項2に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項4】
前記(A)成分が、芳香族骨格を有しないウレタンジ(メタ)アクリレートである、請求項1~3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項5】
前記(B)成分において、
前記(B-1)成分が、ビフェニル基又はフェノキシベンジル基を有するモノ(メタ)アクリレートを含み、
前記(B-2)成分が、ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項6】
前記(B-1)成分におけるビフェニル基を有するモノ(メタ)アクリレートが、アルキレンオキシサイド変性フェニルフェノールアクリレートである、請求項5に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項7】
硬化物の屈折率が1.54より大きい、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項8】
被着体がプラスチック製フィルム又はシートである、請求項1~請求項7のいずれか1項2に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項9】
被着体として2枚のポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、メタルハライドランプを光源とする、積算光量が1000mJ/cm2の紫外線を照射した硬化物が、JIS-6854-3に規定されるT字剥離強度(剥離速度:200mm/min)が15 N/25mm以上を示す、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を被着体に塗工して貼合し、被着体のいずれかの側から活性エネルギー線の照射する積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線又は紫外線等の活性エネルギー線の照射により、種々の基材、好ましくはプラスチック製フィルム又はシートを接着することが可能な活性エネルギー線硬化型接着剤組成物に関するものである。
以下において、特に明示する必要がない場合は、プラスチック製フィルム又はシートをまとめて「プラスチックフィルム」と表し、フィルム又はシートをまとめて「フィルム」と表す。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックフィルム等の被着体同士、又はプラスチックフィルム等の被着体とこれと他の素材からなる被着体とを貼合する方法として、エチレン-酢酸ビニル共重合体やポリウレタン系重合体を含む溶剤型接着剤組成物を第1の薄層被着体に塗布して乾燥させた後、これに第2の薄層被着体を圧着するドライラミネート法が主に行われている。
この方法で使用される接着剤組成物は、一般に組成物の塗布量を均一にするため溶剤を多く含むものであるが、このため乾燥時に多量の溶剤蒸気が揮散してしまい、毒性、作業安全性及び環境汚染性が問題となっている。
これらの問題を解決する接着剤組成物として、無溶剤系の接着剤組成物が検討されている。
【0003】
無溶剤系接着剤組成物としては、2液型接着剤組成物及び紫外線又は電子線等の活性エネルギー線により硬化する接着剤組成物が広く用いられている。
2液型接着剤組成物としては、主に末端に水酸基を有するポリマーを主剤とし、末端にイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を硬化剤とする、いわゆるポリウレタン系接着剤組成物が用いられている。しかしながら該組成物は、硬化に時間がかかりすぎるという欠点を有する。
これに対して、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、硬化速度が速いことから生産性に優れ、注目されている。
【0004】
一方、ディスプレイ等に使用される光学フィルムの接合においても、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物が検討されている。
例えば、特許文献1には、(A)数平均分子量が10000~40000であるウレタン(メタ)アクリレートを30~70重量%、及び(B)ホモポリマーのガラス転移温度が60℃以上であるエチレン性不飽和モノマーを30~60重量%で含有する液状硬化性樹脂組成物が開示されている。
特許文献2には、(A)ポリエーテルウレタン(メタ)アクリレートと、(B)芳香族環を少なくとも一つ以上含み、屈折率(25℃)が1.55以上である単官能(メタ)アクリレート、(C)芳香族環を少なくとも一つ以上含み屈折率が1.55以上である高屈折率可塑剤と、を含む活性エネルギー線硬化型接着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-115757号公報
【特許文献2】特開2014-162853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ディスプレイ等に使用される光学フィルム同士を紫外線硬化型接着剤組成物で接合させる場合、光学フィルムと接着剤の屈折率差が原因で光の反射が生じてしまう。
例えば、光学フィルム同士の接着に特許文献1の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を使用すると、得られた積層体は、光の反射が生じてしまう。
一方、特許文献2の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、屈折率が1.55を超える高屈折率可塑剤を配合することで、得られる硬化物が、高屈折率で、初期の剥離強度も優れ、得られた積層体が光の反射の問題がないものであった。しかしながら、当該組成物は、実施例においては、高屈折率とするため重合反応に関与しない高屈折率可塑剤が30~40重量部と多量に含んでおり、硬化後に当該可塑剤がブリーディングしてしまい、そのため高温高湿での環境試験耐性が低下してしまう問題があった。
【0007】
本発明者らは、得られる硬化物が高屈折を有し、基材に対する接着性に優れ、さらに高温・高湿条件下における環境試験後も接着力を維持する活性エネルギー線硬化型組成物を見出すため鋭意検討を行ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族環を2個以上有する1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、及び水酸基を有する(メタ)アクリレートを特定割合で含む活性エネルギー線硬化型接着剤組成物が、得られる硬化物が高屈折を有し、基材に対する接着性に優れ、さらに高温・高湿条件下における環境試験後も接着力を維持することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明は、硬化性成分として下記(A)成分及び(B)成分を含む組成物であって、
硬化性成分を、組成物全量中に70重量%以上の割合で含み、
硬化性成分として下記(A)成分及び(B)成分を含み、
硬化性成分の合計100重量%中に、下記(A)成分を5~30重量%及び(B)成分を70~95重量%の割合で含み、
下記(C)成分を硬化性成分100重量部に対して0.1~5重量部の割合で含有する、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物に関する。
(A)成分:(メタ)アクリロイル基を2個以上有するウレタン(メタ)アクリレート
(B)成分:(A)成分以外のエチレン性不飽和基を有する化合物であって、下記(B-1)成分、(B-2)成分、及び(B-3)成分を含み、
硬化性成分100重量%中に、下記(B-1)成分を30~75重量%、(B-2)成分を10~40重量%、(B-3)成分を0~40重量%の割合で含む化合物
・(B-1)成分:芳香族環を2個以上有し、(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物
・(B-2)成分:芳香族環を有さず、水酸基及び1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
・(B-3)成分:芳香族環を1個含有し、エチレン性不飽和基を1個有する化合物
(C)成分:光ラジカル重合開始剤
【0010】
前記(A)成分としては、重量平均分子量500~10万を有するウレタンジ(メタ)アクリレートが好ましい。
又、前記(A)成分としては、ポリエステル骨格又はポリカーボネート骨格を有するウレタンジ(メタ)アクリレートが好ましい。
又、前記(A)成分としては、芳香族骨格を有しないウレタンジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0011】
前記(B)成分としては、
前記(B-1)成分が、ビフェニル基又はフェノキシベンジル基を有するモノ(メタ)アクリレートを含み、
前記(B-2)成分が、ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートを含むものが好ましい。
前記(B-1)成分におけるビフェニル基を有するモノ(メタ)アクリレートとしては、アルキレンオキシサイド変性フェニルフェノールアクリレートが好ましい。
【0012】
組成物の硬化物としては、屈折率が1.54より大きいものが好ましい。
被着体としては、プラスチック製フィルム又はシートが好ましい。
組成物の硬化物としては、被着体として2枚のポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、メタルハライドランプを光源とする、積算光量が1000mJ/cm2の紫外線を照射した硬化物が、JIS-6854-3に規定されるT字剥離強度(剥離速度:200mm/min)が15 N/25mm以上を示すものが好ましい。
【0013】
本発明は、前記した活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を被着体に塗工して貼合し、被着体のいずれかの側から活性エネルギー線の照射する積層体の製造方法にも関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物によれば、得られる硬化物が高屈折を有し、基材に対する接着性に優れ、特にプラスチック基材に対する接着性に優れ、さらに高温・高湿条件下における環境試験後も接着力を維持する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
尚、本明細書においては、アクリレート及び/又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す。
又、硬化性成分とは、活性エネルギー線により硬化するエチレン性不飽和基を1個以上有する成分であり、(A)成分、及び(B)成分を意味し、後記(D)成分を含む場合は、(A)成分、(B)成分、及び(D)成分を意味する。
【0016】
本発明は、硬化性成分として後記(A)成分及び(B)成分を含む組成物であって、
硬化性成分を、組成物全量中に70重量%以上の割合で含み、
硬化性成分の合計100重量%中に、前記(A)成分を5~30重量%及び(B)成分を70~95重量%の割合で含み、
前記(C)成分を硬化性成分100重量部に対して0.1~5重量部の割合で含有する、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物に関する。
以下、(A)成分、(B)成分、(C)成分、その他の成分、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物、及び使用方法について説明する。
【0017】
1.(A)成分
(A)成分は、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートである。
(A)成分としては、種々のウレタン(メタ)アクリレートを使用することができ、具体的には、ポリエステル骨格、ポリエーテル骨格又はポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートを挙げることができる。
これらの中でも得られる硬化物の高温及び高湿条件下における接着力に優れるものとなる点で、ポリエステル骨格又はポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
又、(A)成分としては、芳香族骨格を有しない非芳香族系のウレタン(メタ)アクリレート、いわゆる無黄変型のウレタン(メタ)アクリレートが、硬化物の着色を抑制できるという理由で好ましい。
(A)成分としては、オリゴマー及びポリマーのいずれも使用可能であり、重量平均分子量500~10万のものが好ましく、より好ましくは3,000~7万のものであり、特に好ましくは5,000~5万のものである。
尚、本発明において、重量平均分子量とは、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィーにより測定した分子量をポリスチレン換算した値である。
【0018】
(A)成分としては、より具体的には、ポリオール、有機ポリイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの反応物、並びに、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物(いわゆるウレタンアダクト)が挙げられる。
(A)成分としては、ポリオール、有機ポリイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの反応物が好ましく、さらに、ポリオールと有機ポリイソシアネート反応物に、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させた化合物が好ましい。
又、(A)成分としては、2個の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート〔以下、2官能ウレタン(メタ)アクリレートともいう。〕であることが好ましく、ポリエステル、ポリエーテル又はポリカーボネート骨格を有するジオールと有機ジイソシアネートとの反応物に、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させた2官能ウレタン(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
【0019】
ポリオールとしては、ポリエステル骨格を有するジオール、ポリエーテル骨格を有するジオール及びポリカーボネート骨格を有するジオールが好ましい。
ポリエステル骨格を有するポリオールとしては、低分子量ジオール又はポリカプロラクトンジオール等のジオール成分と、二塩基酸又はその無水物等の酸成分とのエステル化反応物等が挙げられる。
低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール及び3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。
二塩基酸又はその無水物としては、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、テトラヒドルフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等、並びにこれらの無水物等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエトラメチレングリコール等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、前記低分子量ジオール又は/及びビスフェノールA等のビスフェノールと、エチレンカーボネート及び炭酸ジブチルエステル等の炭酸ジアルキルエステルの反応物等が挙げられる。
【0020】
有機ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、1,6-ヘキサンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、1,6-ヘキサンジイソシアネート3量体、水素化トリレンジイソシアネート、水素化4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシイレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート2量体、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート相互付加物、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリス(トリレンジイソシアネート)付加物及びイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
又、有機ポリイソシアネートは、有機ジイソシアネートであることが好ましい。
【0021】
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート及びヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ、ジ又はモノ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールプロパンジ又はモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有ポリオールポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0022】
(A)成分の製造方法としては、常法に従えば良く、
1)ウレタン化触媒の存在下、ポリオールと有機ポリイソシアネートとを加熱攪拌し付加反応させてイソシアネートを有するプレポリマーを製造し、これにヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを添加し、加熱攪拌し付加反応させる製造方法、及び
2)ウレタン化触媒の存在下、ポリオール、有機ポリイソシアネート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを加熱撹拌する製造方法等を挙げることができる。
(A)成分としては、上記1)の製造方法で得られたものが好ましい。
ウレタン化触媒としては、ジブチルスズジラウレート等のスズ系触媒、トリス(アセチルアセトナート)鉄等の鉄系触媒、ビス(アセチルアセトナート)亜鉛等の亜鉛系触媒を挙げることができる。
【0023】
(A)成分としては、高湿度下の接着強度が特に優れ、硬化後の接着剤の経時的な着色が少ないという点で、芳香族骨格を有しない非芳香族系のウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、非芳香族ウレタンジ(メタ)アクリレートがより好ましい。
非芳香族系のウレタン(メタ)アクリレートは、具体的には、非芳香族系のポリオール及び非芳香族系のポリイソシアネートから製造されたウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
非芳香族系のポリオールとしては、湿熱後の着色の少ない点で、非芳香族系のポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールが好ましい。
【0024】
(A)成分及び(B)成分の含有割合は、硬化性成分の合計100重量%中に、(A)成分が5~30重量%で、(B)成分が70~95重量%あり、好ましくは、(A)成分が5~20重量%で、(B)成分が90~80重量%である。(A)成分の含有割合が5重量%に満たないか、(B)成分が95重量%を超過すると、剥離強度が低下してしまい、(A)成分の含有割合が30重量%を超過するか、(B)成分が70重量%に満たないと、屈折率が低下してしまう。
【0025】
2.(B)成分
(B)成分は、(A)成分以外のエチレン性不飽和基を有する化合物であって、下記(B-1)成分、(B-2)成分、及び(B-3)成分を含み、
硬化性成分100重量%中に、下記(B-1)成分を30~75重量%、(B-2)成分を10~40重量%、(B-3)成分を0~40重量%の割合で含む化合物である。
・(B-1)成分:芳香族環を2個以上有し、(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物
・(B-2)成分:芳香族環を有さず、水酸基及び1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
・(B-3)成分:芳香族環を1個含有し、エチレン性不飽和基を1個有する化合物
以下、(B-1)~(B-3)成分について説明する。
【0026】
2-1.(B-1)成分
(B-1)成分は、芳香族環を2個以上有し、(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物である。
(B-1)成分は、組成物を低粘度化し、又組成物の結晶化を防ぐことができるうえ、硬化物に高屈折率を付与する成分である。
【0027】
(B-1)成分は、芳香族環を2個以上有し、(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物でれば種々の化合物を使用することができる。
(B-1)成分における、芳香族環を2個以上有する官能基の例としては、p-クミルフェニル基、ビフェニル基、フェノキシベンジル基、ナフチル基、及びフルオレニル基等が挙げられる。
【0028】
p-クミルフェニル基を有するモノ(メタ)アクリレートの具体例としては、下記式(1)で表されるモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
【0030】
〔式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、lは0~4の数を表す。〕
式(1)におけるlは、アルキレンオキサイドの付加数を表し、1分子当たりの平均付加数を意味する。
【0031】
式(1)化合物の具体例としては、例えば、p-クミルフェニル(メタ)アクリレート及びp-クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
式(1)の化合物としては、良好な硬化性が得られるということから、R1は水素原子であることが好ましい。又、得られる硬化物の屈折率がより高いものとなるうえ、組成物の粘度を低く抑えることができることから、lは0~2であることが好ましい。
【0033】
これら化合物の中でも、室温で液状であり扱いやすく、屈折率が高く、入手しやすい点で、p-クミルフェニルアクリレート及びp-クミルフェノキシエチルアクリレートが好ましい。
【0034】
ビフェニル基を有するモノ(メタ)アクリレートの具体例としては、下記式(2)で表されるモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
【0036】
〔式(2)において、R3及びR4は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、mは0~4の数を表す。〕
式(2)におけるmは、アルキレンオキサイドの付加数を表し、1分子当たりの平均付加数を意味する。
【0037】
式(2)の化合物の具体例としては、例えば、o-フェニルフェニル(メタ)アクリレート、m-フェニルフェニル(メタ)アクリレート、及びp-フェニルフェニル(メタ)アクリレート等のフェニルフェニル(メタ)アクリレート、並びに、o-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、m-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、m-フェニルフェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、p-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、及びp-フェニルフェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等のフェニルフェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキレンオキサイド変性フェニルフェノール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
これら化合物の中でも、室温で液状であり扱いやすく、入手しやすい点で、m=0であるo-フェニルフェニル(メタ)アクリレート及びm=1であるo-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0039】
フェノキシベンジル基を有するモノ(メタ)アクリレートの具体例としては、3-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート等のフェノキシベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
ナフチル基を有する(メタ)モノアクリレートの例としては、ナフチル(メタ)アクリレート、1-ナフチルメチル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシナフチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
フルオレニル基を有する(メタ)モノアクリレートの例としては、フルオレニル(メタ)アクリレート、9-フルオレニルメチルアクリレート(9-アクリロイルオキシメチルフルオレン)、及びヒドロキシフルオレニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
(B-1)成分としては、前記した化合物の中でも、入手しやすさと低粘度の観点から、ビフェニル基又はフェノキシベンジル基を有するモノ(メタ)アクリレートが好ましい。ビフェニル基を有するモノ(メタ)アクリレートとしては、アルキレンオキサイド変性フェニルフェノールアクリレートが好ましく、アルキレンオキサイド変性o―フェニルフェノールアクリレートがより好ましい。フェノキシベンジル基を有するモノ(メタ)アクリレーとしては、フェノキシベンジルアクリレートが好ましく、3-フェノキシベンジルアクリレートがより好ましい。
【0043】
(B-1)成分の含有割合は、硬化性成分100重量%中に、30~75重量%であり、好ましくは30~60重量%である。(B-1)成分の含有割合が30重量%に満たないと、硬化物の屈折率が低下してしまい、75重量%を超過すると硬化物の剥離強度が低下してしまう。
【0044】
2-2.(B-2)成分
(B-2)成分は、芳香族環を有さず、水酸基及び1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
(B-2)成分としては、芳香族環を有さず、水酸基及び1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば種々の化合物を使用することができる。
(B-2)成分の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレート、並びに、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びポリプロピレングリコール-ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0045】
(B-2)成分の含有割合は、硬化性成分100重量%中に、10~40重量%であり、好ましくは15~30重量%である。(B-2)成分の含有割合が10重量%に満たないと、硬化物の剥離強度が低下してしまい、40重量%を超過すると硬化物の屈折率が低下してしまう。
【0046】
2-3.(B-3)成分
(B-3)成分は、芳香族環を1個含有し、エチレン性不飽和基を1個有する化合物であるる。
(B-3)成分としては、芳香族環を1個含有し、エチレン性不飽和基を1個有する化合物であれば種々の化合物を使用することができる。
エチレン性不飽和基の例としては、(メタ)アクリロイル基及びビニル基等が挙げられる。
【0047】
(メタ)アクリロイル基を有する化合物の具体例としては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノールのアルキレンオキサイド変性物の(メタ)アクリレート、クレゾールのアルキレンオキサイド変性物の(メタ)アクリレート、ノニルフェノールのアルキレンオキサイド変性物の(メタ)アクリレート、及びトリブロモフェノールのアルキレンオキサイド変性物の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記アルキレンオキサイド付加物において、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0048】
ビニル基を有する化合物の具体例としては、スチレン及びビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物等が挙げられる。
【0049】
(B-3)成分の含有割合は、硬化性成分100重量%中に、0~40重量%であり、好ましくは0~30重量%である。(B-3)成分の含有割合が40重量%を超過すると、硬化物の剥離強度が低下してしまう。
【0050】
3.(C)成分
(C)成分は、光ラジカル重合開始剤である。(C)成分は、活性エネルギー線の照射によってラジカルを発生し、エチレン性不飽和基を有する化合物である(A)成分、(B)成分及び後記する(D)成分の重合を開始する化合物である。
【0051】
(C)成分の具体例としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-1-(メチルビニル)フェニル]プロパノン、2-ヒドロキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)]フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、アデカオプトマーN-1414〔(株)ADEKA製〕、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、エチルアントラキノン及びフェナントレンキノン等の芳香族ケトン化合物;
ベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4-(メチルフェニルチオ)フェニルフェニルメタン、メチル-2-ベンゾフェノン、1-[4-(4-ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルフォニル)プロパン-1-オン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン及び4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート及びビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物;
チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1-クロロ-4-プロピルチオキサントン、3-[3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサントン-2-イル]オキシ]-2-ヒドロキシプロピル-N,N,N―トリメチルアンモニウムクロライド及びフロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;
アクリドン及び10-ブチル-2-クロロアクリドン等のアクリドン系化合物;
1,2-オクタンジオン1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-フェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2,4-ジ(p-メトキシフェニル)-5-フェニルイミダゾール二量体及び2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;並びに
9-フェニルアクリジン及び1,7-ビス(9,9’-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体等が挙げられる。
【0052】
前記した化合物の中でも、組成物の硬化性と接着性に優れるものとすることができるため、芳香族ケトン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、及びチオキサントン系化合物が好ましい。
【0053】
(C)成分としては、前記した化合物を単独で使用しても、又は二種以上を使用してもよい。
【0054】
(C)成分の含有割合は、硬化性成分全量100重量部に対して0.1~5重量部であり、好ましくは0.5~5重量部である。
(C)成分の割合が0.1重量部に満たないと、組成物の活性エネルギー線硬化性を不十分となり接着性が低下してしまい、一方、5重量部を超過すると、接着層の内部硬化性が不良となり、接着性が低下してしまう。
【0055】
4.その他成分
本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、前記(A)~(C)成分を必須成分とするものであるが、目的に応じて、種々のその他成分を配合することができる。
【0056】
その他成分としては、エチレン性不飽和基を有する(A)及び(B)成分以外の化合物〔以下、「(D)成分」という。〕、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、可塑剤、並びに、表面改質剤等が挙げられる。
【0057】
4-1.(D)成分
(D)成分は、エチレン性不飽和基をする(A)及び(B)成分以外の化合物である。
(D)成分としては、エチレン性不飽和基を1個有する(B)成分以外の化合物、及びエチレン性不飽和基を有する(A)及び(B)成分以外の化合物等が挙げられる。
【0058】
エチレン性不飽和基を1個有する(B)成分以外の化合物としては、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、ビニル化合物、及びアリル化合物等が挙げられる。
エチレン性不飽和基を1個有する(B)成分以外の化合物は、組成物の粘度及び硬化性、並びに、硬化物の接着性及び柔軟性等の物性調整の目的で配合する。
【0059】
分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及びω-カルボキシポリカプロラクトン(メタ)アクリレート等のカルボキシ基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、炭素数12~13のアルキル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、及びイソミリスチル(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート;
メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びメトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;
ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、4-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、及び(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート環状エーテル基含有(メタ)アクリレート;
グリセリンカーボネート(メタ)アクリレート等のカーボネート基含有(メタ)アクリレート;
N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、2-(1,2-シクロヘキサ-1-エンジカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート、及びファンクリルFA-502A〔昭和電工マテリアルズ(株)製〕等のイミド(メタ)アクリレート;並びに
2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート等のリン酸(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0060】
ビニル化合物の具体例としては、ビニルイミダゾール、及びビニルピリジン等の複素環含有ビニル化合物;並びに
n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、及び2-エチルヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル等が挙げられる。
アリル化合物の具体例としては、アリルアルコール等の1個のアリル基を有する単官能アリル化合物が挙げられる。
【0061】
エチレン性不飽和基を2個以上有する(A)及び(B)成分以外の化合物としては、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「多官能(メタ)アクリレート」という〕、分子内に2個以上のビニル基を有する化合物〔以下、「多官能ビニル化合物」という〕などが挙げられる。又、それらの分子量としては、種々のものが選択でき、モノマー、オリゴマー、及びポリマーのいずれであってもよい。
エチレン性不飽和基を2個以上有する(A)及び(B)成分以外の化合物は、硬化物の接着性及び柔軟性等の物性調整の目的で配合する。
【0062】
多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート及び1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ジオールのジ(メタ)アクリレート;
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;
シクロヘキサンジメチロールジ(メタ)アクリレート及びトリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等の脂環族ジオールのジ(メタ)アクリレート;
ネオペンチルグリコールとヒドロキシピバリン酸と(メタ)アクリル酸のエステル化反応生成物(以下、「ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート」という。)、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;
ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール系化合物のアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート;
水素添加ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート等の水素添加ビスフェノール系化合物のジ(メタ)アクリレート;
イソシアヌル酸アルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性イソシアヌル酸アルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性イソシアヌル酸アルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート等のイソシアヌル酸アルキレンオキサイド付加物のポリ(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物のトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物のペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールアルキレンオキサイド付加物のポリ(メタ)アクリレート:
ウレタン(メタ)アクリレート;
エポキシ(メタ)アクリレート;並びに
ポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ポリエステル(メタ)アクリレートは、デンドリマー型の(メタ)アクリレートであっても良い。
前記アルキレンオキサイド付加物において、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0063】
水酸基含有多官能(メタ)アクリレートの具体例としてはトリメチロールプロパンのモノ又はジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのモノ、ジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのモノ、ジ又はトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリ、テトラ又はペンタ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0064】
エポキシ(メタ)アクリレートとしては、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加反応させた化合物であり、文献「UV・EB硬化材料」〔(株)シーエムシー、1992年発行〕の74~75頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
【0065】
エポキシ樹脂としては、芳香族エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
芳香族エポキシ樹脂としては、具体的には、レゾルシノールジグリシジルエーテル;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン又はそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル;フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;グリシジルフタルイミド;o-フタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。
これら以外にも、文献「エポキシ樹脂-最近の進歩-」(昭晃堂、1990年発行)2章や、文献「高分子加工」別冊9・第22巻増刊号 エポキシ樹脂[高分子刊行会、昭和48年発行]の4~6頁、9~16頁に記載されている様な化合物を挙げることができる。
【0066】
脂肪族エポキシ樹脂としては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオール等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;ネオペンチルグリコール、ジブロモネオペンチルグリコール及びそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン及びそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル、並びにペンタエリスリトール及びそのアルキレンオキサイド付加体のジ、トリ又はテトラグリジジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;水素添加ビスフェノールA及びそのアルキレンオキシド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル;テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエーテル;ハイドロキノンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
これら以外にも、前記文献「高分子加工」別冊エポキシ樹脂の3~6頁に記載されている化合物を挙げることができる。
【0067】
これら芳香族エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂以外にも、トリアジン核を骨格に持つエポキシ化合物、例えばTEPIC[日産化学(株)]、デナコールEX-310[ナガセ化成(株)]等が挙げられ、又前記文献「高分子加工」別冊エポキシ樹脂の289~296頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
上記において、アルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が好ましい。
【0068】
アリル化合物としては、アリルアルコール等の単官能アリル化合物、ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート等の多官能アリル化合物が挙げられる。
【0069】
これら以外にも、文献「最新UV硬化技術」[(株)印刷情報協会、1991年発行]の53~56頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
【0070】
(D)成分としては、耐熱性や接着力を高くできるという理由で、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレートが好ましく、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸ジ(メタ)アクリレート(カプロラクトン変性量としては、好ましくは1~10モル)、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0071】
硬化性成分中の(D)成分の含有割合は、硬化性成分全量100重量%中に、1~30重量%が好ましく、より好ましくは2~20重量%である。(D)成分の割合を1重量%以上にすることで、塗工しやすい粘度に調整し、優れた接着力や耐熱性が得られ、30重量%以下にすることで、硬化物を高屈折率とすることができる。
【0072】
4-2.紫外線吸収剤
本発明の組成物は、紫外線吸収剤を含有することにより、接着力を向上させることができる。理由は不明ではあるが、低波長域の紫外線をカットすることにより、硬化速度が抑制され、接着界面の残存応力が低下するためと推定される。
【0073】
紫外線吸収剤としては、BASF社製TINUVIN400、TINUVIN405、TINUVIN460、TINUVIN479等のトリアジン系紫外線吸収剤、TINUVIN900、TINUVIN928、TINUVIN1130等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0074】
紫外線吸収剤の含有割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、硬化性成分全量100重量部に対して、0.1~5重量部が好ましく、より好ましくは0.5~2重量部である。含有割合を0.1重量部以上とすると、接着力を高めることができ、5重量部以下とすることで、硬化性の低下を抑制することができる。
【0075】
4-3.重合禁止剤
重合禁止剤としては、有機系重合禁止剤、無機系重合禁止剤、有機塩系重合禁止剤が挙げられる。
有機系重合禁止剤の具体例として、ハイドロキノン、tert-ブチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルカテコール等のフェノール化合物、ベンゾキノン等のキノン化合物、ガルビノキシル、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル等の安定ラジカル、フェノチアジン、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム等が挙げられる。
無機系重合禁止剤の具体例として、塩化銅、硫酸銅及び硫酸鉄が挙げられる。
有機塩系重合禁止剤の具体例として、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミン・アルミニウム塩、アンモニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン等のニトロソ化合物、ジブチルジチオカルバミン酸銅が挙げられる。
【0076】
これらの中でも、接着剤の着色が小さく、組成物の増粘やゲル化を防止して保存安定性を高くできる点で、安定ラジカル、ニトロソ化合物が好ましい。
重合禁止剤の含有割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、硬化性成分全量100重量部に対して、0.0001~1重量部が好ましく、より好ましくは0.0005~0.5重量部である。含有割合を0.0001重量部以上とすると、組成物の熱安定性や光安定性を高めることができ、1重量部以下とすることで、組成物の光硬化性が優れたものとすることができる。
【0077】
4-4.シランカップリング剤
シランカップリング剤の具体例としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは1種を用いても2種類以上を用いてもよい。
【0078】
4-5.酸化防止剤
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、たとえば、ジt-ブチルヒドロキシトルエン等のヒンダードフェノール類を挙げることができる。市販されているものとしては、(株)ADEKA製のAO-20、AO-30、AO-40、AO-50、AO-60、AO-70、AO-80等が挙げられる。
リン系酸化防止剤の具体例としては、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン等のホスフィン類や、亜リン酸トリアルキルや亜リン酸トリアリール等が挙げられる。これらの誘導体で市販品としては、たとえば(株)ADEKA製、アデカスタブPEP-4C、PEP-8、PEP-24G、PEP-36、HP-10、260、522A、329K、1178、1500、135A、3010等が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤の具体例としては、チオエーテル系化合物が挙げられ、市販品としては(株)ADEKA製AO-23、AO-412S、AO-503A等が挙げられる。
これらは1種を用いても2種類以上を用いてもよい。これら酸化防止剤の好ましい組合せとしては、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤との併用、及びフェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤の併用が挙げられる。
【0079】
4-6.可塑剤
本発明の組成物は、接着強度の向上や硬化時の割れ抑制のための柔軟性付与の目的で必要に応じて可塑剤を配合しても良い。
可塑剤としては、フェニルフェノール、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート及びジオクチルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバケート、ジエチルセバケート、ジブチルセバケート及びジエチルサクシネート等の脂肪族二塩基酸エステル類、及びアセチルクエン酸トリブチル等の脂肪族多塩基酸エステル類;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート及びトリクレジルホスフェート等の正リン酸エステル類;グリセリルトリアセテート及び2-エチルヘキシルアセテート等の酢酸エステル類;トリフェニルホスファイト及びジブチルハイドロジエンホスファイト等の亜リン酸エステル類;ロジン系樹脂やテルペン系樹脂等の天然樹脂及びその誘導体;並びにポリエステル類、アクリルポリマー類(例えば、東亞合成製アルフォンUP-1000)、ポリエーテル類及び石油樹脂等の不活性化合物等が挙げられる。
【0080】
可塑剤の含有割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良いが、好ましくは組成物中に1~30重量%未満が好ましく、より好ましくは5~20重量%である。
【0081】
4-7.表面改質剤
表面改質剤としては、表面調整剤、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、スベリ性付与剤及び防汚性付与剤等が挙げられ、これら公知の表面改質剤を使用することができる。
これらのうち、シリコーン系表面改質剤及びフッ素系表面改質剤が好適に挙げられる。
具体例としては、シリコーン鎖とポリアルキレンオキサイド鎖とを有するシリコーン系ポリマー及びオリゴマー、シリコーン鎖とポリエステル鎖とを有するシリコーン系ポリマー及びオリゴマー、パーフルオロアルキル基とポリアルキレンオキサイド鎖とを有するフッ素系ポリマー及びオリゴマー、並びに、パーフルオロアルキルエーテル鎖とポリアルキレンオキサイド鎖とを有するフッ素系ポリマー及びオリゴマー等が挙げられる。
又、耐久性を向上させるため、分子中にエチレン性不飽和基、好ましくは(メタ)アクリロイル基を有する表面改質剤を使用してもよい。これらは1種を用いても2種類以上を用いてもよい。
【0082】
5.活性エネルギー線硬化型接着剤組成物
本発明は、前記(A)~(C)成分を特定の割合で含有する活性エネルギー線硬化型接着剤組成物である。
組成物の製造方法としては、前記(A)~(C)成分を、必要に応じてさらにその他成分を、常法に従い攪拌・混合することにより製造することができる。
この場合、必要に応じて加熱することもできる。加熱温度としては、使用する組成物、基材及び目的等に応じて適宜設定すれば良いが、30~80℃が好ましい。
【0083】
組成物中の硬化性成分の割合としては、組成物中に70重量%以上とする必要があり、組成物中に70~99.9重量%が好ましく、より好ましくは90~99重量%である。
組成物中の硬化性成分の割合が組成物中に70重量%に満たないと、非硬化成分によるブリーディングや過剰な可塑化による接着強度の低下してしまう。
【0084】
組成物の粘度としては、基材に対する塗工性に優れる点で、10~1,000mPa・sが好ましい。
【0085】
本発明の組成物としては、硬化物の屈折率が1.54より大きいものが好ましく、好ましくは1.55以上である。硬化物の屈折率が1.54を超過することにより、組成物硬化物と光学フィルム基材間の屈折率差に起因する反射を防止することができる。
尚、本発明において、硬化物の屈折率とは、アッベ屈折率計により、589.3nmのD線における25℃の屈折率を測定した値を意味する。
【0086】
本発明の組成物としては、被着体として2枚のポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、メタルハライドランプを光源とする、積算光量が1000mJ/cm2の紫外線を照射した硬化物が、JIS-6854-3に規定されるT字剥離強度(剥離速度:200mm/min)が15 N/25mm以上を有するものが好ましい。
【0087】
6.使用方法
本発明の組成物は、種々の基材(被着体)の接着に使用することができ、プラスチック製フィルム又はシート(以下、単に「プラスチックフィルム」という)同士の接着、プラスチックフィルムとこれ以外の種々の基材(以下、その他基材という)の接着に好ましく使用することができ、
具体例としては、基材(被着体)に塗布した後、もう一方の基材(被着体)と貼り合せ、基材(被着体)のいずれかの側から活性エネルギー線を照射する方法等が挙げられる。
尚、本発明において、単に「基材」と表記した場合は、プラスチックフィルム及びその他基材の総称を意味する。
その他基材としては、紙及び金属等が挙げられる。
【0088】
プラスチックフィルムとしては、親水性プラスチックフィルム及び疎水性プラスチックが挙げられる。
親水性プラスチックフィルムの具体例としては、ポリビニルアルコール系フィルム、及びトリアセチルセルロール系フィルム及びジアセチルセルロース系フィルム等のセルロースエステル系フィルムが挙げられる。
疎水性プラスチックフィルムの具体例としては、ポリカーボネート系フィルム、ポリエチレンテレフタレート系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、アクリル系フィルム、アクリル/スチレン系フィルム、脂肪族ポリアミド(ナイロン)系フィルム、芳香族ポリアミド系フィルム、ポリウレタン系フィルム、ポリイミド系フィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体系フィルム、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリ塩化ビニリデン系フィルム、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ポリシクロオレフィン系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ABS系フィルム、及び塩素化ポリプロピレン系フィルム等が挙げられる。
紙としては、模造紙、上質紙、クラフト紙、アートコート紙、キャスターコート紙、純白ロール紙、パーチメント紙、耐水紙、グラシン紙及び段ボール紙等が挙げられる。
金属箔としては、例えばアルミニウム箔等が挙げられる。
【0089】
基材に対する塗工は、従来知られている方法に従えばよく、ナチュラルコーター、ナイフベルトコーター、フローティングナイフ、ナイフオーバーロール、ナイフオンブランケット、スプレー、ディップ、キスロール、スクイーズロール、リバースロール、エアブレード、カーテンフローコーター、コンマコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ダイコーター及びカーテンコーター等の方法が挙げられる。
又、本発明の組成物の塗布厚さは、使用する基材及び用途に応じて選択すればよいが、好ましくは0.1~100μmであり、より好ましくは1~25μmである。
【0090】
活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線、X線及び電子線等が挙げられるが、安価な装置を使用することができるため、紫外線が好ましい。
紫外線により硬化させる場合の光源としては、様々のものを使用することができ、例えば加圧或いは高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプ、カーボンアーク灯及びLED等が挙げられる。これらの中でも、高圧水銀灯、メタルハライドランプが好ましく、メタルハライドランプは特に好ましい。紫外線の照射量は、UV-A領域(365nm近傍)において、200~2,000mJ/cm2であることが好ましく、300~1,500mJ/cm2がより好ましい。
【0091】
電子線により硬化させる場合には、使用できるEB照射装置としては種々の装置が使用でき、例えばコックロフトワルトシン型、バンデグラーフ型及び共振変圧器型の装置等が挙げられる。電子線の吸収線量としては、1~200kGyが好ましく、10~100kGyがより好ましい。電子線の加速電圧としては、基材の膜厚に応じて80~300kVの範囲で適宜設定すれば良く、例えば、基材の膜厚が100μmであれば200kVが好ましい。電子線照射雰囲気の酸素濃度としては、500ppm以下が好ましく、300ppm以下がより好ましい。
【0092】
本発明の組成物は、光学材料用接着剤組成物として好ましく使用でき、又、光学フィルム用接着剤組成物として好ましく使用できる。
この場合においては、前記の基材として、光学部材として用いられる薄層被着体を使用し、前記と同様の方法に従い積層体を製造することができる。
本発明の組成物から得られた光学部材は、光の反射が生じることなく、高温高湿環境下での接着力に優れているため、種々の光学部材の製造に使用できる。具体例としては、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル及び有機ELディスプレイ等の表示装置で使用される各種光学部材、並びに、レンズシート等が挙げられる。より具体的には、表示装置の例としては、液晶ディスプレイで使用されるバックライト、並びに、レンズシートの例としては、プリズムシート、ディフューザ、フレネルレンズ、及びレンチキュラーレンズ等が挙げられる。
【実施例0093】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。尚、以下の各例における「部」は重量部を意味する。
【0094】
1.実施例1~同8、比較例1~同4(活性エネルギー線硬化型組成物の製造)
下記表1に示す(A)、(B)、(C)、(D)及びその他成分を表1に示す割合で、ステンレス製容器で撹拌・混合して、溶解させ、活性エネルギー線硬化型組成物を製造した。
得られた組成物を使用し、下記の方法に従い評価した。それらの結果を、表2に示す。
【0095】
2.評価方法
2-1.屈折率
組成物及び硬化物ともにアッベ屈折率計により、589.3nmのD線における25℃の屈折率を測定した。
硬化物は、以下の方法に従い作成した。
10cm四方のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔東レ(株)製セラピールBX8A〕上に、7cm四方、厚さ1mmで、中央に5cm四方の穴があるゴムシートを設置し、組成物を流し込み、液面を前述と同じPETフィルムでラミネートした後、その上面と底面を10cm四方のガラス板で挟んで固定した状態で、60W/cm高圧水銀ランプ〔アイグラフィックス(株)製H06-L41〕により紫外線を照射した。
ランプ高さは30cmとし、裏表ともに30秒ずつ照射し、さらにガラス板とPETフィルムを除いた状態にして裏表各2分ずつ照射することで硬化物を得た。
【0096】
2-2.剥離強度
前記で得られた組成物を、100μm厚のPETフィルム〔東洋紡(株)製「コスモシャインA-4360」〕上にバーコーターにより10μmの厚みに塗布した。
これに、前述と同じPETフィルムをラミネートした後、〔アイグラフィックス(株)製のコンベア式紫外線照射装置(160W/cmメタルハライドランプ、UV-A領域の照射強度500mW/cm2、積算光量1,000mJ/cm2、いずれもヘレウス(株)製UV POWER PUCKの測定値)を用いて、前記ラミネートフィルムへ2パス紫外線照射し硬化させ、試験体であるラミネートフィルムを製造した。
【0097】
得られた試験体を、23±2℃、50±5%RHで24時間放置した後、下記の条件で剥離強度を引張試験機(インストロンジャパンカンパニーリミテッド製インストロン5564)により測定した(初期剥離強度)。
試験条件は下記の通り。
・温度、湿度:23±2℃、50±5%RH
・試験片:25mm×100mm
・試験方法:T字剥離
・剥離速度:200mm/min
【0098】
2-3.環境試験
前記で作成した試験体を85℃、85%RHの条件にて168時間湿熱処理を行った後、前記同様の条件にて剥離強度を測定した。前記の結果である硬化直後の剥離強度からの低下率から以下の2水準で評価を行った。
〇:低下率0%以上20%未満
×:低下率20%以上
【0099】
【0100】
尚、表1における数字は部数を意味し、略号は下記を意味する。
◆(A)成分+(D)成分
・OT-1001:無黄変型ポリエステル骨格ウレタンアクリレート(Mw:40,000。以下、「A-1」という。)のイソボルニルアクリレート〔大阪有機化学工業(株)製。以下、「IBXA」という〕50重量%希釈品、東亞合成(株)製「アロニックスOT-1001」。
尚、表1においては、(A)成分に該当するA-1と(D)成分に該当するIBXAを分けて記載している。
◆(A)成分+(B)成分+(D)成分
・OT-1026:無黄変型ポリエステル骨格ウレタンアクリレート(Mw:40,000。以下、「A-2」という。)の52.2重量%希釈品。東亞合成(株)製「アロニックスOT-1026」。希釈溶剤として、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート〔東亞合成(株)製「アロニックスM-111。以下、「M-111」という。〕を22.4重量%、ラウリルアクリレート、〔大阪有機化学工業(株)製。以下、「LA」という。〕を含む。
尚、表1においては、(A)成分に該当するA-2、(B)成分〔(B-3)成分〕に該当するM-111及び(D)成分に該当するLAを、それぞれ分けて記載している。
◆(A)成分
・UN-6202:無黄変型ポリエーテル骨格ウレタンアクリレート(Mw:11,000)、根上工業(株)製「アートレジンUN-6202」
◆(B-1)成分
・M1142:o-フェニルフェノキシエチルアクリレート、Miwon製「Miramer M1142」
・POB-A:3-フェノキシベンジルアクリレート、共栄社化学(株)製「ライトアクリレートPOB-A」
◆(B-2)成分
・4-HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート、大阪有機化学工業(株)製「4-HBA」
◆(B-3)成分
・BzA:ベンジルアクリレート、大阪有機化学工業(株)製「ビスコート#160」
◆(C)成分
・TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド、IGM Resins製「Omnirad TPO」
◆(D)成分
・M-240:ポリエチレングリコールジアクリレート、東亞合成(株)製「アロニックスM-240」
◆その他の成分
・OPP:o-フェニルフェノール、東京化成工業(株)製
【0101】
【0102】
実施例1~同7の結果から明らかなように、本発明の組成物は硬化後の屈折率が1.54を超える高値で、なおかつPETフィルム同士のT剥離強度が15N/25mmを超え、高い剥離強度を示した。
これに対して、高屈折率成分である(B-1)成分が本願発明の下限30重量%に満たない比較例1及び2の組成物は、硬化物の屈折率は低かった。
高凝集力を示す(A)成分の割合が本願発明の下限5重量%に満たない比較例3の組成物は、剥離強度が低かった。
実施例1~同7と比較例4を比較すると、特許文献2にあるような高屈折率可塑剤が配合され、硬化性成分の割合が組成物全量中に70重量%に満たない比較例4の組成物は、環境試験により剥離強度の低下がみられた。剥離強度の低下は実施例では見られなかったため、可塑剤のブリーディングによるものであると考えられる。
本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、特にプラスチックフィルムに対する接着性に優れるものであり、各種光学部材として用いられるプラスチックフィルム等の被着体同士の接着に有効であり、光学フィルムの製造に好適に使用できる。