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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032386
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240305BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136005
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 拓実
(72)【発明者】
【氏名】松岡 祐司
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA17
5H770DA01
5H770DA41
5H770HA02Y
5H770HA03Y
5H770HA06X
(57)【要約】
【課題】より簡単な構成で、複数のスイッチング素子のサイクル寿命を延長できる電力変換装置を提供する。
【解決手段】複数の交流出力点と、前記複数の交流出力点のそれぞれに対応して設けられた複数の相回路と、前記複数の相回路のそれぞれに設けられた複数のスイッチング素子と、を有し、前記複数のスイッチング素子のスイッチングにより、直流電力から交流電力への変換を行う変換器と、前記複数のスイッチング素子のそれぞれに対して制御信号を送信し、前記複数のスイッチング素子のスイッチングを制御することにより、前記変換器による電力の変換を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数のスイッチング素子に対する前記制御信号の入れ替えを所定のタイミングで行うことにより、前記複数の相回路の出力を前記所定のタイミングで入れ替える電力変換装置が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の交流出力点と、前記複数の交流出力点のそれぞれに対応して設けられた複数の相回路と、前記複数の相回路のそれぞれに設けられた複数のスイッチング素子と、を有し、前記複数のスイッチング素子のスイッチングにより、直流電力から交流電力への変換を行う変換器と、
前記複数のスイッチング素子のそれぞれに対して制御信号を送信し、前記複数のスイッチング素子のスイッチングを制御することにより、前記変換器による電力の変換を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記複数のスイッチング素子に対する前記制御信号の入れ替えを所定のタイミングで行うことにより、前記複数の相回路の出力を前記所定のタイミングで入れ替える電力変換装置。
【請求項2】
前記変換器は、2つの前記相回路を有し、直流電力を単相交流電力に変換し、
前記制御部は、一方の前記相回路に設けられた前記スイッチング素子に対する前記制御信号を、他方の前記相回路に設けられた前記スイッチング素子に対する前記制御信号と、前記所定のタイミングで入れ替えることにより、一方の前記相回路の出力と他方の前記相回路の出力とを前記所定のタイミングで入れ替える請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記変換器は、3つの前記相回路を有し、直流電力を三相交流電力に変換し、
前記制御部は、3つの前記相回路のそれぞれの出力を入れ替えるように、前記複数のスイッチング素子に対する前記制御信号の入れ替えを行う請求項1記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記変換器の起動毎に、前記複数のスイッチング素子に対する前記制御信号の入れ替えを行う請求項1~3のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記変換器は、前記複数のスイッチング素子のそれぞれの温度を表す温度情報を取得する複数の温度センサをさらに有し、
前記制御部は、前記複数の温度センサのそれぞれから取得した前記温度情報を基に、前記複数のスイッチング素子の温度が所定の条件を満たした際に、前記複数のスイッチング素子に対する前記制御信号の入れ替えを行う請求項1~3のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記変換器の出力電圧に対する前記変換器の出力電流の位相を表す位相情報を取得し、取得した前記位相情報を基に、前記複数のスイッチング素子に対する前記制御信号の入れ替えを行う請求項1~3のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のスイッチング素子を有し、複数のスイッチング素子のスイッチングにより、直流電力を交流電力に変換し、変換後の交流電力を負荷に供給する電力変換装置がある。こうした電力変換装置では、負荷が容量性か誘導性かによって、各相のスイッチング素子のスイッチングロスが異なる状態となる場合がある。この場合、素子損失の厳しい条件側のスイッチング素子によって、各スイッチング素子のサイクル寿命が決まる。このため、サイクル寿命の見込みが短くなってしまう可能性がある。
【0003】
各スイッチング素子のサイクル寿命に対する対策の1つとして、各スイッチング素子の冷却器の性能を向上させ、各スイッチング素子の最大のジャンクション温度や、各スイッチング素子のスイッチングにともなうジャンクション温度の温度差を減少させることにより、サイクル寿命を延ばせるようにすることが知られている。
【0004】
しかしながら、このような対策では、冷却器の性能の向上にともなう装置の大型化や装置のコスト増などが懸念される。このため、電力変換装置では、より簡単な構成で、複数のスイッチング素子のサイクル寿命を延長できるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-144354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、より簡単な構成で、複数のスイッチング素子のサイクル寿命を延長できる電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態によれば、複数の交流出力点と、前記複数の交流出力点のそれぞれに対応して設けられた複数の相回路と、前記複数の相回路のそれぞれに設けられた複数のスイッチング素子と、を有し、前記複数のスイッチング素子のスイッチングにより、直流電力から交流電力への変換を行う変換器と、前記複数のスイッチング素子のそれぞれに対して制御信号を送信し、前記複数のスイッチング素子のスイッチングを制御することにより、前記変換器による電力の変換を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数のスイッチング素子に対する前記制御信号の入れ替えを所定のタイミングで行うことにより、前記複数の相回路の出力を前記所定のタイミングで入れ替える電力変換装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
より簡単な構成で、複数のスイッチング素子のサイクル寿命を延長できる電力変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図2図2(a)及び図2(b)は、電力変換装置の動作の一例を模式的に表すグラフである。
図3図3(a)及び図3(b)は、電力変換装置の動作の一例を模式的に表すグラフである。
図4】第2の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図5】第3の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図6】第4の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
【0010】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、電力変換装置10は、変換器12と、制御部14と、を備える。変換器12は、複数の交流出力点12a、12bと、複数の交流出力点12a、12bのそれぞれに対応して設けられた複数の相回路21、22と、複数の相回路21、22のそれぞれに設けられた複数のスイッチング素子31~34と、を有する。
【0012】
変換器12は、複数のスイッチング素子31~34のスイッチングにより、直流電力から交流電力への変換を行う。変換器12は、例えば、直流電源と交流の負荷2とに接続される。変換器12は、直流電源から供給された直流電力を負荷2に対応した交流電力に変換し、変換後の交流電力を負荷2に供給する。
【0013】
直流電源は、例えば、電力系統から供給された交流電力を直流電力に変換するコンバータ回路である。但し、直流電源は、これに限ることなく、例えば、蓄電池など、変換器12に対して直流電力を供給可能な任意の電源でよい。負荷2は、例えば、交流モータである。但し、負荷2は、これに限ることなく、変換器12から交流電力の供給を受けることが可能な任意の負荷でよい。
【0014】
なお、変換器12は、例えば、負荷2側の交流電力を直流電力に変換して直流電源側に出力する機能をさらに有してもよい。但し、変換器12は、直流電力から交流電力に変換する機能を少なくとも有していればよい。
【0015】
この例において、変換器12は、2つの交流出力点12a、12bと、2つの相回路21、22と、4つのスイッチング素子31~34と、を有する。変換器12では、直列に接続された2つのスイッチング素子31、32によって一方の相回路21が構成され、直列に接続された2つのスイッチング素子33、34によって他方の相回路22が構成される。他方の相回路22は、一方の相回路21と並列に接続される。換言すれば、スイッチング素子33、34は、スイッチング素子31、32と並列に接続される。そして、変換器12では、スイッチング素子31、32の接続点が一方の交流出力点12aとなり、スイッチング素子33、34の接続点が他方の交流出力点12bとなる。
【0016】
変換器12は、いわゆる単相フルブリッジ回路である。変換器12は、直流電力を単相交流電力に変換する。負荷2は、例えば、単相交流電力の負荷である。相回路21、22は、換言すれば、フルブリッジ回路のレグである。変換器12では、相回路21、22の両端が直流接続点となり、相回路21、22の両端を介して直流電源と接続される。相回路21、22の両端は、換言すれば、直列に接続されたスイッチング素子31、32の両端、及び直列に接続されたスイッチング素子33、34の両端である。
【0017】
複数のスイッチング素子31~34は、一対の主端子と、制御端子と、を有する。また、複数のスイッチング素子31~34は、一対の主端子間に電流を流すオン状態と、一対の主端子間に流れる電流を遮断するオフ状態と、を有する。複数のスイッチング素子31~34は、制御端子に入力される信号(電圧)に応じて、オン状態とオフ状態とを切り替える。複数のスイッチング素子31~34は、例えば、MOSFETやIGBTなどの自励式のスイッチング素子である。なお、オフ状態は、一対の主端子間に全く電流が流れない状態に限ることなく、変換器12の動作に影響の無い範囲の微弱な電流が主端子間に流れる状態でもよい。
【0018】
変換器12は、例えば、複数のスイッチング素子31~34のそれぞれに逆並列に接続された整流素子41~44と、複数のスイッチング素子31~34のそれぞれに対して並列に接続された電荷蓄積素子50と、をさらに有する。但し、整流素子41~44及び電荷蓄積素子50は、必要に応じて設けられ、省略可能である。
【0019】
制御部14は、複数のスイッチング素子31~34のそれぞれに対して制御信号を送信し、複数のスイッチング素子31~34のスイッチングを制御することにより、変換器12による電力の変換を制御する。制御部14は、換言すれば、複数のスイッチング素子31~34のそれぞれの制御端子に対して制御信号を送信し、複数のスイッチング素子31~34のオン状態及びオフ状態の切り替えを制御することにより、電力の変換を制御する。複数のスイッチング素子31~34の制御端子は、例えば、ゲートである。制御信号は、例えば、ゲート信号などと呼ばれる場合もある。
【0020】
図2(a)及び図2(b)、図3(a)及び図3(b)は、電力変換装置の動作の一例を模式的に表すグラフである。
図2(a)及び図2(b)は、負荷2が容量性の負荷である場合の電力変換装置10の動作の一例を模式的に表す。図3(a)及び図3(b)は、負荷2が誘導性の負荷である場合の電力変換装置10の動作の一例を模式的に表す。また、図2(a)及び図3(a)は、変換器12の出力電圧及び負荷2に流れる負荷電流の一例を模式的に表す。図2(b)及び図3(b)は、スイッチング素子31に流れる電流及びスイッチング素子33に流れる電流の一例を模式的に表す。
【0021】
図2(a)及び図2(b)に表したように、負荷2が容量性の負荷である場合には、変換器12の出力電圧に対して負荷2に流れる負荷電流の位相が進む。一方、図3(a)及び図3(b)に表したように、負荷2が誘導性の負荷である場合には、変換器12の出力電圧に対して負荷2に流れる負荷電流の位相が遅れる。このため、負荷2によって厳しい条件となる相回路が異なる。
【0022】
例えば、図2(b)に表した例では、スイッチング素子31のオフ状態からオン状態への切り替え時(ターンオン時)の遮断電流が、スイッチング素子33のオン状態からオフ状態への切り替え時(ターンオフ時)の遮断電流よりも大きい。このため、図2(b)に表した例では、スイッチング素子31における損失が、スイッチング素子33における損失よりも大きくなり、スイッチング素子31のサイクル寿命が、スイッチング素子33のサイクル寿命よりも先に訪れると考えられる。換言すれば、図2(b)に表した例では、スイッチング素子31が、スイッチング素子33よりも先に故障してしまうと考えられる。
【0023】
一方、図3(b)に表した例では、スイッチング素子33のオン状態からオフ状態への切り替え時の遮断電流が、スイッチング素子31のオン状態からオフ状態への切り替え時の遮断電流よりも大きい。このため、図3(b)に表した例では、スイッチング素子33における損失が、スイッチング素子31における損失よりも大きくなり、スイッチング素子33のサイクル寿命が、スイッチング素子31のサイクル寿命よりも先に訪れると考えられる。
【0024】
このように、図2(a)及び図2(b)に表した例では、相回路21側の条件が、相回路22側の条件よりも厳しく、図3(a)及び図3(b)に表した例では、相回路22側の条件が、相回路21側の条件よりも厳しい。
【0025】
このように、複数の相回路21、22に設けられた複数のスイッチング素子31~34の損失(スイッチングロス)に偏りがある場合には、素子損失の厳しい条件側のスイッチング素子によって、複数のスイッチング素子31~34のサイクル寿命が決まってしまう。結果として、複数のスイッチング素子31~34の全体におけるサイクル寿命の見込みが短くなってしまう可能性がある。
【0026】
このため、制御部14は、複数のスイッチング素子31~34に対する制御信号の入れ替えを所定のタイミングで行うことにより、複数の相回路21、22の出力を所定のタイミングで入れ替える。
【0027】
この例において、制御部14は、一方の相回路21に設けられたスイッチング素子31、32に対する制御信号を、他方の相回路22に設けられたスイッチング素子33、34に対する制御信号と、所定のタイミングで入れ替えることにより、一方の相回路21の出力と他方の相回路22の出力とを所定のタイミングで入れ替える。より詳しくは、制御部14は、スイッチング素子31に対する制御信号をスイッチング素子33に対する制御信号と入れ替え、スイッチング素子32に対する制御信号をスイッチング素子34に対する制御信号と入れ替える。
【0028】
制御部14は、例えば、変換器12の起動毎に、複数のスイッチング素子31~34に対する制御信号の入れ替えを行う。所定のタイミングは、例えば、変換器12を起動するタイミングである。より具体的には、制御部14は、変換器12に電力の変換の動作を行わせている状態から変換器12の動作を停止させた後、再び変換器12に電力の変換の動作を行わせる際に、複数のスイッチング素子31~34に対する制御信号の入れ替えを行う。
【0029】
これにより、負荷2が容量性か誘導性か分からない場合でも、長期間で見た時の複数の相回路21、22の条件を同程度とすることができる。複数の相回路21、22に設けられた複数のスイッチング素子31~34の損失(スイッチングロス)に偏りがある場合にも、複数の相回路21、22に対する制御信号を入れ替えることで、複数のスイッチング素子31~34の損失を平準化することができる。従って、複数のスイッチング素子31~34の全体におけるサイクル寿命の見込みを延長することができる。
【0030】
なお、変換器12の構成において、一方の相回路21に設けられたスイッチング素子31、32に対する制御信号を、他方の相回路22に設けられたスイッチング素子33、34に対する制御信号と入れ替えると、負荷2に出力される電圧及び電流の極性が入れ替わる。換言すれば、制御信号を入れ替えると、負荷2に出力される電圧及び電流の位相が180°変化する。このため、負荷2には、制御信号の入れ替えにともなう極性の変化に対して影響の無いものとする必要がある。負荷2には、例えば、極性が入れ替わったとしても動作に影響の無い交流モータなどが用いられる。
【0031】
以上、説明したように、本実施形態に係る電力変換装置10では、制御部14が、複数のスイッチング素子31~34に対する制御信号の入れ替えを所定のタイミングで行うことにより、複数の相回路21、22の出力を所定のタイミングで入れ替える。
【0032】
これにより、例えば、各スイッチング素子31~34の冷却器の性能の向上にともなう装置の大型化や装置のコスト増などを抑制しつつ、各スイッチング素子31~34のサイクル寿命を延長することができる。従って、電力変換装置10では、より簡単な構成で、複数のスイッチング素子31~34のサイクル寿命を延長することができる。
【0033】
また、電力変換装置10では、制御部14が、変換器12の起動毎に制御信号の入れ替えを行う。この場合には、例えば、センサなどの追加の必要がなく、より簡単な構成で、複数のスイッチング素子31~34のサイクル寿命を延長することができる。例えば、複数のスイッチング素子31~34のサイクル寿命の延長を図る際にも、部品点数の増加や、それにともなう製造コストの増加などを抑制することができる。
【0034】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図4に表したように、本実施形態に係る電力変換装置10aでは、変換器12が、複数の温度センサ61~64をさらに有する。なお、上記実施形態と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0035】
複数の温度センサ61~64は、複数のスイッチング素子31~34のそれぞれの温度を表す温度情報を取得する。複数の温度センサ61~64は、例えば、複数のスイッチング素子31~34に設けられ、複数のスイッチング素子31~34の温度を直接的に検出することにより、温度情報を取得する。複数の温度センサ61~64は、例えば、複数のスイッチング素子31~34の冷却を行う複数のヒートシンク(フィン)のそれぞれに設けられ、複数のヒートシンクの温度を検出することにより、複数のスイッチング素子31~34の温度を間接的に表す温度情報を取得してもよい。
【0036】
温度情報は、複数のスイッチング素子31~34の温度を直接的に表すものでもよいし、複数のスイッチング素子31~34の温度を間接的に表すものでもよい。温度情報は、複数のスイッチング素子31~34の温度を表すことが可能な任意の情報でよい。複数の温度センサ61~64の構成は、複数のスイッチング素子31~34のそれぞれの温度を表す温度情報を取得可能な任意の構成でよい。
【0037】
制御部14は、複数の温度センサ61~64のそれぞれから温度情報を取得する。制御部14は、例えば、複数の温度センサ61~64のそれぞれと接続されることにより、複数の温度センサ61~64のそれぞれから温度情報を取得する。但し、制御部14は、必ずしも複数の温度センサ61~64と接続されていなくてもよい。制御部14は、例えば、無線通信を介して複数の温度センサ61~64から温度情報を取得してもよい。例えば、複数の温度センサ61~64の温度情報を上位のコントローラなどの外部機器に送信し、制御部14は、外部機器から温度情報を取得してもよい。このように、制御部14は、複数の温度センサ61~64の温度情報を外部機器などを介して取得してもよい。制御部14による温度情報の取得方法は、温度情報を適切に取得可能な任意の方法でよい。
【0038】
電力変換装置10aにおいて、制御部14は、複数の温度センサ61~64のそれぞれから取得した温度情報を基に、複数のスイッチング素子31~34の温度が所定の条件を満たした際に、複数のスイッチング素子31~34に対する制御信号の入れ替えを行う。
【0039】
制御部14は、例えば、複数のスイッチング素子31~34のいずれかの温度が所定の温度以上となった際に、制御信号の入れ替えを行う。換言すれば、所定の条件は、例えば、複数のスイッチング素子31~34のいずれかの温度が所定の温度以上となることである。
【0040】
複数のスイッチング素子31~34の温度は、スイッチング素子31~34の損失の増加に応じて高くなる。従って、上記のように、温度情報を基に、複数のスイッチング素子31~34の温度が所定の条件を満たしたことに応じて制御信号の入れ替えを行うことにより、複数のスイッチング素子31~34で発生した損失の具合を考慮し、複数のスイッチング素子31~34の損失をより平準化することができる。換言すれば、複数のスイッチング素子31~34の劣化具合をより平準化することができる。これにより、複数のスイッチング素子31~34の全体におけるサイクル寿命の見込みをより適切に延長することができる。
【0041】
なお、所定の条件は、複数のスイッチング素子31~34のいずれかの温度が所定の温度以上となることに限定されるものではない。所定の条件は、例えば、複数のスイッチング素子31~34のいずれかにおいて、所定の温度以上となった時間の積算時間が所定時間以上となることなどでもよい。所定の条件は、例えば、複数のスイッチング素子31~34のいずれかにおいて、ターンオンに応じて所定の温度以上となった回数が所定回数以上となることなどでもよい。所定の条件は、複数のスイッチング素子31~34の損失を平準化し易くすることができる任意の条件でよい。
【0042】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図5に表したように、本実施形態に係る電力変換装置10bは、変換器12の出力電圧を検出する電圧検出器70と、変換器12の出力電流を検出する電流検出器72と、をさらに備える。
【0043】
電圧検出器70は、変換器12の出力電圧を検出し、検出結果を制御部14に入力する。電流検出器72は、変換器12の出力電流を検出し、検出結果を制御部14に入力する。電圧検出器70の検出結果及び電流検出器72の検出結果は、制御部14に直接的に入力してもよいし、外部機器などを介して間接的に制御部14に入力してもよい。
【0044】
電力変換装置10bにおいて、制御部14は、電圧検出器70の検出結果及び電流検出器72の検出結果を基に、出力電圧に対する出力電流の位相を表す位相情報を取得する。制御部14は、例えば、各検出結果を基に、出力電圧と出力電流の位相差を演算することにより、位相情報を取得する。位相情報は、換言すれば、負荷2が容量性か誘導性かを表す情報である。
【0045】
なお、位相情報の取得の方法は、上記に限るものではない。例えば、電圧検出器70の検出結果及び電流検出器72の検出結果を外部機器に出力し、各検出結果を基に、外部機器で位相情報を演算した後、外部機器から制御部14に位相情報を入力することにより、制御部14が位相情報を取得するようにしてもよい。制御部14における位相情報の取得の方法は、位相情報を適切に取得可能な任意の方法でよい。
【0046】
電力変換装置10bにおいて、制御部14は、取得した位相情報を基に、複数のスイッチング素子31~34に対する制御信号の入れ替えを行う。制御部14は、例えば、位相情報を基に、複数のスイッチング素子31~34の損失を推定する。例えば、図2(a)及び図3(a)に表したように、出力電圧及び出力電流を基に、複数のスイッチング素子31~34の損失(遮断電流の大きさ)を推定することができる。制御部14は、複数のスイッチング素子31~34のいずれかの損失の積算値が所定値以上となった際に、制御信号の入れ替えを行う。制御部14は、例えば、複数のスイッチング素子31~34のいずれかの遮断電流の大きさの積算値が所定値以上となった際に、制御信号の入れ替えを行う。
【0047】
このように、制御部14は、位相情報を基に、複数のスイッチング素子31~34に対する制御信号の入れ替えを行ってもよい。この場合にも、複数のスイッチング素子31~34で発生した損失の具合を考慮し、複数のスイッチング素子31~34の損失をより平準化することができる。換言すれば、複数のスイッチング素子31~34の劣化具合をより平準化することができる。これにより、複数のスイッチング素子31~34の全体におけるサイクル寿命の見込みをより適切に延長することができる。
【0048】
なお、制御部14による制御信号の入れ替えのタイミングは、上記に限定されるものではない。例えば、複数のスイッチング素子31~34のそれぞれに流れる電流を検出し、各電流の検出結果を基に、制御信号の入れ替えのタイミングを決定してもよい。例えば、複数のスイッチング素子31~34のそれぞれに流れる電流の検出結果を基に、複数のスイッチング素子31~34のそれぞれの遮断電流の大きさを検出し、複数のスイッチング素子31~34のいずれかの遮断電流の大きさの積算値が所定値以上となった際に、制御信号の入れ替えを行ってもよい。制御部14による制御信号の入れ替えのタイミングは、複数のスイッチング素子31~34の損失(劣化具合)を平準化することが可能な任意のタイミングでよい。
【0049】
(第4の実施形態)
図6は、第4の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図6に表したように、本実施形態に係る電力変換装置10cでは、変換器12が、3つの交流出力点12a~12cと、3つの相回路21~23と、6つのスイッチング素子31~36と、6つのスイッチング素子31~36のそれぞれに逆並列に接続された整流素子41~46と、を有する。
【0050】
電力変換装置10cの変換器12では、直列に接続された2つのスイッチング素子31、32によって相回路21(第1相回路)が構成され、直列に接続された2つのスイッチング素子33、34によって相回路22(第2相回路)が構成され、直列に接続された2つのスイッチング素子35、36によって相回路23(第3相回路)が構成される。各相回路21~23は、それぞれ並列に接続される。換言すれば、スイッチング素子33、34は、スイッチング素子31、32と並列に接続され、スイッチング素子35、36は、スイッチング素子31、32及びスイッチング素子33、34と並列に接続される。そして、この例では、スイッチング素子31、32の接続点が交流出力点12aとなり、スイッチング素子33、34の接続点が交流出力点12bとなり、スイッチング素子35、36の接続点が交流出力点12cとなる。
【0051】
電力変換装置10cにおいて、変換器12は、いわゆる三相フルブリッジ回路である。この例において、変換器12は、直流電力を三相交流電力に変換する。負荷2は、例えば、三相交流電力の負荷である。
【0052】
制御部14は、複数のスイッチング素子31~36に対する制御信号の入れ替えを所定のタイミングで行うことにより、複数の相回路21~23の出力を所定のタイミングで入れ替える。
【0053】
この例において、制御部14は、例えば、相回路21に設けられたスイッチング素子31、32に対する制御信号を、相回路22に設けられたスイッチング素子33、34に対する制御信号とし、相回路22に設けられたスイッチング素子33、34に対する制御信号を、相回路23に設けられたスイッチング素子35、36に対する制御信号とし、相回路23に設けられたスイッチング素子35、36に対する制御信号を、相回路21に設けられたスイッチング素子31、32に対する制御信号とする。このように、制御部14は、三相の相回路21~23(3つの相回路)のそれぞれの出力を入れ替えるように、複数のスイッチング素子31~36に対する制御信号の入れ替えを行う。
【0054】
変換器12の出力が、三相交流電力である場合には、上記のように、三相の相回路21~23のそれぞれの出力を入れ替える。これにより、三相交流電力の負荷2に対して適切に三相交流電力を供給しつつ、複数のスイッチング素子31~36の損失を平準化し、複数のスイッチング素子31~36のサイクル寿命の見込みを延長することができる。
【0055】
このように、三相フルブリッジ回路の変換器12においても、単相フルブリッジ回路の場合と同様に、各スイッチング素子31~36の冷却器の性能の向上にともなう装置の大型化や装置のコスト増などを抑制しつつ、各スイッチング素子31~36のサイクル寿命を延長することができる。従って、電力変換装置10cでは、より簡単な構成で、複数のスイッチング素子31~36のサイクル寿命を延長することができる。
【0056】
変換器12は、単相フルブリッジ回路や三相フルブリッジ回路に限定されるものではない。変換器12は、例えば、3レベルインバータなどのマルチレベルインバータなどでもよい。変換器12の構成は、複数のスイッチング素子のスイッチングによって電力の変換を行うとともに、制御信号の入れ替えによって複数の相回路の出力を入れ替えることが可能な任意の構成でよい。
【0057】
なお、三相フルブリッジ回路の変換器12において、制御信号の入れ替えを行うタイミングは、単相フルブリッジ回路の変換器12の場合と同様でよい。三相フルブリッジ回路の変換器12においても、制御信号の入れ替えは、変換器12の起動毎のタイミングで行ってもよいし、複数のスイッチング素子31~36の温度が所定の条件を満たしたタイミングで行ってもよいし、位相情報に基づくタイミングで行ってもよい。制御信号の入れ替えを行うタイミングは、三相フルブリッジ回路の変換器12においても、任意のタイミングでよい。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
2…負荷、 10、10a~10c…電力変換装置、 12…変換器、 12a~12c…交流出力点、 14…制御部、 21~23…相回路、 31~36…スイッチング素子、 41~46…整流素子、 50…電荷蓄積素子、 61~64…温度センサ、 70…電圧検出器、 72…電流検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6