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特開2024-3370三次元積層造形装置、三次元積層造形方法、および三次元積層造形における規制部材の移動速度の設定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003370
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】三次元積層造形装置、三次元積層造形方法、および三次元積層造形における規制部材の移動速度の設定方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20240105BHJP
   B29C 64/205 20170101ALI20240105BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240105BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240105BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240105BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20240105BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/205
B33Y50/02
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/153
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102464
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 達雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】宮北 歩
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213AR08
4F213AR12
4F213AR14
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL32
4F213WL34
4F213WL74
4F213WL85
4F213WL92
(57)【要約】
【課題】造形精度の向上を図ることが可能な三次元積層造形装置を提供する。
【解決手段】ベースプレートと、ベースプレートの表面に対して所定間隔を保った高さ位置において前記ベースプレート上を移動することで前記ベースプレート上に供給された粉末を均して粉末層を形成するための規制部材と、前記規制部材の移動を制御する制御部とを備えた三次元積層造形装置であって、造形データを入力するための入力部を備え、前記制御部は、前記入力部から入力された造形データに基づく移動速度で前記規制部材を移動させる三次元積層造形装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、ベースプレートの表面に対して所定間隔を保った高さ位置において前記ベースプレート上を移動することで前記ベースプレート上に供給された粉末を均して粉末層を形成するための規制部材と、前記規制部材の移動を制御する制御部とを備えた三次元積層造形装置であって、
造形データを入力するための入力部を備え、
前記制御部は、前記入力部から入力された造形データに基づく移動速度で前記規制部材を移動させる
三次元積層造形装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記造形データとして前記入力部から入力された移動速度で、前記規制部材を移動させる
請求項1に記載の三次元積層造形装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記粉末の種類に対応付けて前記規制部材の移動速度が設定されたデータベースを保持する速度記憶部と、
前記造形データとして前記入力部から入力された前記粉末の種類に基づいて、前記速度記憶部から前記規制部材の移動速度を抽出する入出力制御部と、
前記入出力制御部によって抽出された移動速度で前記規制部材を移動させる駆動制御部とを備えた
請求項1に記載の三次元積層造形装置。
【請求項4】
前記速度記憶部は、前記粉末の種類および他の前記造形データに対応した前記規制部材の移動速度を保持する
請求項3に記載の三次元積層造形装置。
【請求項5】
前記他の造形データは、作製する三次元積層造形物の金属組織制御である
請求項4に記載の三次元積層造形装置。
【請求項6】
前記入力部は、前記粉末の種類を選択するための選択画面を表示するための表示部を備える
請求項3~5のうちの何れか1項に記載の三次元積層造形装置。
【請求項7】
ベースプレートの表面に対して所定間隔を保った高さ位置で規制部材を移動させることで、前記ベースプレート上に供給された粉末を均して粉末層を形成する工程を有する三次元積層造形方法において、
前記規制部材の駆動を制御する制御部は、入力部から入力された造形データに基づく移動速度で前記規制部材を移動させる
三次元積層造形方法。
【請求項8】
前記規制部材の移動によって前記ベースプレートを囲んで配置されたテーブル上から落下した粉末の量に基づいて、前記規制部材の移動速度を設定する
請求項7に記載の三次元積層造形方法。
【請求項9】
前記テーブル上に前記粉末を供給した後、
前記ベースプレートおよび前記テーブル上において前記規制部材を往復移動させ、
前記規制部材の往復移動の往路において前記規制部材の通過後に形成された前記粉末の凸部を、前記規制部材の往復移動の復路において手前記規制部材が削り取って前記規制部材の往復移動を開始する側に落下させた粉末の量が最低となる範囲に、前記規制部材の移動速度を設定する
請求項8に記載の三次元積層造形方法。
【請求項10】
前記規制部材の移動速度は、前記規制部材の往復移動を開始する側に落下した余剰の粉末の量が最低となる範囲の最低速度に設定する
請求項9に記載の三次元積層造形方法。
【請求項11】
前記造形データとしての前記粉末の種類毎に前記規制部材の移動速度を設定する
請求項9に記載の三次元積層造形方法。
【請求項12】
前記粉末の種類および他の前記造形データに対応させて前記規制部材の移動速度を設定する
請求項11に記載の三次元積層造形方法。
【請求項13】
前記他の造形データは、作製する三次元積層造形物の金属組織制御である
請求項12に記載の三次元積層造形方法。
【請求項14】
前記粉末の種類に対応付けて前記規制部材の移動速度が設定されたデータベースの中から、前記粉末の種類に基づいて前記規制部材の移動速度を選択し、
前記選択した移動速度を、前記造形データとして前記入力部から入力する
請求項7~13のうちの何れか1項に記載の三次元積層造形方法。
【請求項15】
ベースプレートの表面に対して所定間隔を保った高さ位置で規制部材を移動させることで、前記ベースプレート上に供給された粉末を均して粉末層を形成する工程を有する三次元積層造形における規制部材の移動速度の設定方法であって、
前記ベースプレートを囲んで配置されたテーブル上に前記粉末を供給した後、
前記ベースプレートおよび前記テーブル上において前記規制部材を往復移動させ、
前記規制部材の往復移動の往路において前記規制部材の通過後に形成された前記粉末の凸部を、前記規制部材の往復移動の復路において手前記規制部材が削り取って前記規制部材の往復移動を開始する側に落下させた粉末の量が最低となる範囲に、前記規制部材の移動速度を設定する
三次元積層造形における規制部材の移動速度の設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元積層造形装置、三次元積層造形方法、および三次元積層造形における規制部材の移動速度の設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元積層造形技術の一つとして、パウダーベッド方式の造形方法が知られている。この造形方法は、先に形成された硬化層および未硬化の粉末材料の上に、新たな粉末材料を供給し、造形枠を横断する幅板状の規制部材を造形枠よりも少し高い位置で水平方向に移動させて、粉末材料の高さ位置を規制し、全体が一定の厚みを有する粉末材料の層を形成する。次に、形成した粉末材料の層の表面に電子ビームまたはレーザを照射する。これにより、粉末材料の全体あるいは一部を溶融させて粉末材料同士を一体的に接合させて硬化層を形成し、また新たに形成された硬化層を下方に積層された硬化層と一体化させる。そして、このような硬化層の形成工程を繰り返すことにより、所定のパターン形状を有する硬化層が複数層積層された三次元積層造形体を得ることができるとしている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-152204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述した三次元積層造形方法では、幅板状の規制部材の水平移動によって粉末材料の層を形成する際、熱的影響によって、規制部材によって運搬される粉末同士が付着した造粒紛が生成され易い。また、生成された造粒紛は熱的影響で肥大化し易く、粉末と比較して重いため粉末材料の層に沈み込む。このため、規制部材の移動に際して造粒紛が規制部材に押されて移動すると、規制部材が移動した後の粉末材料の層には、造粒紛が通過したスジ状の形跡が残され、造形精度を妨げる要因となっていた。
【0005】
そこで本発明は、造形精度の向上を図ることが可能な三次元積層造形装置、三次元積層造形方法、および三次元積層造形における規制部材の移動速度の設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するための本発明は、ベースプレートと、ベースプレートの表面に対して所定間隔を保った高さ位置において前記ベースプレート上を移動することで前記ベースプレート上に供給された粉末を均して粉末層を形成するための規制部材と、前記規制部材の移動を制御する制御部とを備えた三次元積層造形装置であって、造形データを入力するための入力部を備え、前記制御部は、前記入力部から入力された造形データに基づく移動速度で前記規制部材を移動させる三次元積層造形装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、造形精度の向上を図ることが可能な三次元積層造形装置、三次元積層造形方法、および三次元積層造形における規制部材の移動速度の設定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る三次元積層造形装置の概略構成図である。
図2】第1実施形態に係る三次元積層造形装置の要部上面図である。
図3】三次元積層造形方法における粉末層の形成処理(その1)を説明するための上面図である。
図4】粉末層の形成処理において生成された造粒紛の移動痕跡の詳細を説明する図(その1)である。
図5】三次元積層造形方法における粉末層の形成処理(その2)を説明するための上面図である。
図6】規制部材の移動速度と、移動開始位置側のダストボックスに落下した落下粉末比率との関係を示す図である。
図7】第2実施形態に係る三次元積層造形装置の概略構成図である。
図8】第2実施形態に係る三次元積層造形装置における規制部材の移動速度データベースを示す図である。
図9】第2実施形態に係る三次元積層造形装置の入力画面を示す図である。
図10】第2実施形態に係る三次元積層造形装置における規制部材の移動速度データベースの他の例を示す図である。
図11】第2実施形態に係る三次元積層造形装置の入力画面の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した各実施の形態を、三次元積層造形装置、三次元積層造形方法の順に図面に基づいて詳細に説明する。なお、各実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。
【0010】
≪第1実施形態≫
<三次元積層造形装置>
図1は、第1実施形態に係る三次元積層造形装置1の概略構成図である。また図2は、第1実施形態に係る三次元積層造形装置の要部上面図である。これらの図に示す三次元積層造形装置1は、パウダーベッド方式の三次元積層造形装置1であり、減圧チャンバー10内に、形成槽11、ベースプレート12、粉末供給装置13、規制部材14、ダストボックス15、およびエネルギー線照射部16を備えている。また三次元積層造形装置1は、制御部20および入力部21を備えている。なお、粉末供給装置13、エネルギー線照射部16、制御部20、および入力部21は、図1のみに図示している。以下、三次元積層造形装置1を構成する各構成要素を説明する。
【0011】
[形成槽11]
形成槽11は、減圧チャンバー10内に立設された筒状の構造体であり、筒状の内部において三次元積層造形物が形成される。形成槽11を構成する筒状は、一例として円筒状である。このような形成槽11は、上部開口の周縁から外周側に向かって延設されたフランジ状のテーブル11aを備えている。
【0012】
[ベースプレート12]
ベースプレート12は、形成槽11の内周壁に接して設けられたもので、形成槽11の底面を構成する。形成槽11の内周壁とベースプレート12の端縁部との隙間は、フレキシブルシール12aが配置され、形成槽11内においてのベースプレート12の摺動性と密閉性とが確保されている。このようなベースプレート12によって底面が構成される形成槽11の内部には、粉末100が貯蔵されるとともに、粉末100を所定の厚さで積層させた粉末層101が順次に積層される。
【0013】
またベースプレート12は、ベースプレート駆動部12bを備える。ベースプレート駆動部12bは、形成槽11内においてのベースプレート12の昇降を制御し、形成槽11の深さを可変としている。このようなベースプレート駆動部12bは、制御部20に接続され、制御部20からの指示に基づいてベースプレート12を昇降させる。
【0014】
[粉末供給装置13]
粉末供給装置13は、テーブル11aの上部に粉末100を供給するものである。この粉末供給装置13は、粉末タンク13aと粉末タンク13aの底部に接続された定量供給器13bとを備え、定量供給器13bに設けられた粉末排出口13cから、テーブル11a上に所定量の粉末100を供給する。粉末供給装置13は、テーブル11aの一方側の端縁付近に設定された移動開始位置[ps]の近辺であって、移動開始位置[ps]よりも形成槽11の上部開口側に、形成槽11の上部開口にわたるライン状に所定量の粉末100を供給する。このような粉末供給装置13による粉末100の供給は、制御部20からの指示によって実施される。なお、移動開始位置[ps]は、次に説明する規制部材14が移動を開始する位置である。
【0015】
[規制部材14]
規制部材14は、形成槽11の上部開口にわたる長尺状の板状材である。このような規制部材14は、板状材の一辺がテーブル11aに対して所定の間隔を保った高さ位置において、テーブル11aおよび形成槽11の上部開口に沿って移動自在である。また規制部材14は、制御部20からの指示により、粉末供給装置13からテーブル11a上に粉末100が供給された後に、テーブル11aの一方側の端縁付近に設定された移動開始位置[ps]から、テーブル11aに沿って上部開口に向かって移動する。
【0016】
さらに、規制部材14は、形成槽11の上部開口にわたって上部開口上を通過するように折り返し位置[pr]まで移動する。折り返し位置[pr]は、テーブル11aの他方側の端縁付近に設定された位置である。規制部材14は、折り返し位置[pr]に到達した後、折り返し位置[pr]から移動開始位置[ps]に向かって移動する。これにより、規制部材14は、テーブル11a上に供給された粉末100を均し、形成槽11内に収容された粉末100の厚みを揃えて粉末層101とする。
【0017】
また規制部材14は、形成槽11内に収容しきれずに形成槽11の上部開口からはみ出した余剰分の粉末100を、テーブル11aの外周に吐き落とす。
【0018】
[ダストボックス15]
ダストボックス15は、規制部材14の移動方向の両側において、テーブル11aの下方に配置されたものである。これらのダストボックス15は、移動開始位置[ps]側のダストボックス15sと、折り返し位置[pr]側のダストボックス15rである。これらのダストボックス15は、規制部材14によってテーブル11aの外周に吐き落とされた余剰分の粉末100を、落下粉末100’として収容する。なお、上述した折り返し位置[pr]は、余剰分の粉末100の大部分が、折り返し位置[pr]側のダストボックス15rに落下させる位置に設定されている。
【0019】
[エネルギー線照射部16]
エネルギー線照射部16は、粉末100を溶融可能なエネルギー線の照射部であって、ベースプレート12に対向して配置され、ベースプレート12上に積層された粉末100からなる粉末層101に対してエネルギー線を照射する。エネルギー線は、例えば電子線であって、図示したエネルギー線照射部16は、電子線照射装置である。このようなエネルギー線照射部16は、次に説明する制御部20による駆動制御により、形成槽11内のベースプレート12上に貯蔵された粉末100からなる粉末層101に対して、設定された照射範囲においてエネルギー線を走査させながら照射する。
【0020】
[制御部20]
制御部20は、上述した構成要素の駆動を制御するものであって、計算機によって構成されている。計算機は、いわゆるコンピューターとして用いられるハードウェアである。計算機は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)やHDD(hard disk drive)のような不揮発性の記憶部を備え、さらにはネットワークインターフェースを備えていてもよい。このような計算機によって構成された制御部20は、CPUが、ROMやRAMに記録された造形プログラムを実行することにより、以降に説明する三次元積層造形方法を実施する。
【0021】
[入力部21]
入力部21は、三次元積層造形物の形成開始を指示するための入力、および三次元積層造形物を形成するために必要な造形データを入力するためのものである。入力部21から入力される造形データは、例えば規制部材14の移動速度[S]、さらには設定されている移動速度[S]の変更データなどである。先に説明した制御部20は、入力部21から入力された造形データに基づいて規制部材14の移動速度を制御する。また入力部21から入力されるその他の造形データは、三次元積層造形装置1によって製造する三次元積層造形物の金属組織制御、形状データ、および制御部20のROMやRAMに記録される三次元積層造形物の製造手順に関する造形プログラムであってもよい。このような入力部21は、例えばタッチパネル付きの表示部、キーボード、および外部のパーソナルコンピュータとの接続インターフェースなどである。
【0022】
<三次元積層造形方法>
次に、以上のような三次元積層造形装置1を用いた三次元積層造形方法を説明する。先ず、三次元積層造形装置1のオペレーターは、入力部21から、三次元積層造形物の作製に必要な造形データを入力する。またオペレーターは、以降において実施される粉末層101の形成処理においての規制部材14の移動速度[S]を造形データとして入力する。
【0023】
この際、オペレーターは、データベースを参照し、粉末層101の形成処理においての規制部材14の移動速度[S]を選択する。このデータベースは、以降に詳細に説明する設定方法により、粉末100の種類毎に、規制部材14の移動速度[S]を対応付けたデータの集合体である。このようなデータベースは、電子データ形式であっても紙媒体に印刷したデータ形式であってもよい。オペレーターは、このデータベースを参照し、この三次元積層造形において用いる粉末100に対応付けされた規制部材14の移動速度[S]を選択する。
【0024】
なお、上記データベースにおいて、規制部材14の移動速度[S]は、粉末100の種類毎、および三次元積層造形において作製する造形物の金属組織制御、さらにはその他の製造条件を含む造形データに対して個別に対応付けされていてもよい。この場合、オペレーターは、粉末100の種類、および製造条件に対応付けされた温度を、規制部材14の移動速度[S]として選択する。
【0025】
オペレーターは、上記のようにして選択した移動速度[S]を入力部21から入力する。また、規制部材14の移動速度[S]が、造形データの一部として既に入力されている場合、オペレーターは、選択した移動速度[S]に基づいて、規制部材14の移動速度[S]を変更するための変更データを入力する。
【0026】
制御部20は、以上のように入力部21から入力された造形データおよび規制部材14の移動速度[S]を取得し、さらに入力部21から造形開始のトリガー信号を取得したことにより、以下の手順で予め保持している造形プログラムを実行する。
【0027】
[減圧チャンバー10内の排気]
先ず、制御部20は、減圧チャンバー10内の排気を行う。この際、規制部材14は、テーブル11a上における粉末100の供給位置よりも外側の移動開始位置[ps]に配置されていることとする。また、ベースプレート12は、テーブル11aの上部開口から所定の高さ位置に配置されていることとする。
【0028】
[ベースプレート12の加熱処理]
次に制御部20は、エネルギー線照射部16からのエネルギー線の照射により、ベースプレート12の加熱処理を実施する。制御部20は、エネルギー線照射部16の駆動により、ベースプレート12の表面が加熱される程度の電流値でベースプレート12の表面にエネルギー線を照射する。これにより、以降にベースプレート12上に供給される粉末100が、以降に実施する仮焼結処理において完全に仮焼結する程度の温度にまで、ベースプレート12を予め昇温させておく。
【0029】
[粉末100の供給]
次に、制御部20は、粉末供給装置13の駆動により、テーブル11aの端縁上に、ライン状に粉末100を供給する。
【0030】
[粉末層101の形成処理]
その後、制御部20は、規制部材14をテーブル11aの上面に沿って移動させ、粉末層101の形成処理を実施する。この際、制御部20は、テーブル11aの一方側の端縁に設定された移動開始位置[ps]から、テーブル11aに沿って形成槽11の上部開口に向かって規制部材14を移動させ、さらに形成槽11の上部開口を通過してテーブル11aの他方側の端縁に設定された折り返し位置[pr]にまで規制部材14を移動させる。そして、余剰分の粉末100を、折り返し位置[pr]側のダストボックス15rに落下させる。
【0031】
さらに制御部20は、折り返し位置[pr]から逆方向に規制部材14を移動させ、規制部材14をテーブル11aおよび形成槽11の上部開口上において往復で移動させる。
【0032】
これにより、制御部20は、テーブル11a上に供給された粉末100を形成槽11内に供給し、形成槽11内に収容された粉末100を形成槽11の上部開口と同程度の高さに揃える。そして、形成槽11の底部のベースプレート12上部に、所定高さに粉末100を敷き詰めた1層分の粉末層101を形成し、粉末層101の表面であるパウダーベッド面101aを平坦化させる。
【0033】
また以上のような規制部材14の移動において、制御部20は、入力部21から入力された移動速度[S]にしたがって、規制部材14を移動させる。
【0034】
[仮焼結処理および溶融処理]
次に、制御部20は、エネルギー線照射部16からのエネルギー線の照射により、粉末層101の仮焼結処理を実施する。その後、制御部20は、エネルギー線照射部16からのエネルギー線の照射による粉末層101の溶融処理を実施する。この際、制御部20は、あらかじめ保持している三次元積層構造物の設計データに基づき、設計上の三次元積層造形物を粉末層101の高さ間隔でスライスした部分の二次元形状に従った構造体領域にエネルギー線を照射する。これにより、粉末層101におけるエネルギー線の照射部は、粉末層101の粉末100が溶融した後に凝固して板状の構造体となる。
【0035】
以上の後、制御部20は、粉末100の供給以降の処理を繰り返し実施することにより、粉末100が凝固した板状の構造体を積層させた三次元積層構造物を形成する。
【0036】
<規制部材14の移動速度の設定方法>
次に、上述した三次元積層造形方法の手順において粉末層101の形成処理で実施する規制部材14の移動に際しての、規制部材14の移動速度[S]の設定方法を説明する。ここでは、先ず規制部材14の移動速度[S]と造粒紛[M]の生成、造粒紛[M]の移動痕跡の詳細を説明し、その後、移動痕跡を利用した規制部材14の移動速度[S]の設定方法を説明する。
【0037】
[規制部材14の移動速度[S]と造粒紛[M]の生成]
図3は、三次元積層造形方法における粉末層101の形成処理(その1)を説明するための上面図である。この図は、規制部材14の往復移動において、規制部材14を移動開始位置[ps]から折り返し位置[pr]に向かって移動させた往路の状態を示している。この図に示すように、粉末層101の形成処理においては、主として下地からの熱的影響により、規制部材14によって運搬される粉末100同士が付着した造粒紛[M]が生成される場合がある。造粒紛[M]は、特に下地温度が高いベースプレート12上で生成され易い。また、粉末100は、その種類によって、融点、熱伝導性、各種摩擦係数等が大きく異なる。このため、造粒紛[M]の生成され易さは、粉末100の種類毎に異なり、また熱的な製造条件によっても異なる。
【0038】
また生成された造粒紛[M]は、移動によって肥大化し、粉末100と比較して重いため粉末材料の層に沈み込み、規制部材14が移動した後の粉末層101には、以降に説明するように、造粒紛[M]が通過した後に、スジ状の移動痕跡[t]が残される。
【0039】
ここで、造粒紛[M]は、規制部材14によって運搬される状態にある粉末100同士の付着によって生成される。このため、規制部材14の移動速度[S]を、できるだけ速い速度に設定することで、規制部材14によって粉末100が運搬されている状態を短く抑え、粉末への熱エネルギーの流入を抑制でき、これにより造粒紛[M]の生成を抑えることが重要になる。
【0040】
[造粒紛[M]の移動痕跡]
図4は、粉末層101の形成処理において形成された造粒紛[M]の移動痕跡[t]の詳細を説明する図(その1)であり、図3におけるA-A断面、A’-A’断面、およびB-B断面に相当する図である。図3および図4に示すように、規制部材14によって造粒紛[M]が押されて移動することにより、造粒紛[M]によって粉末100が押し退けられた部分には、移動痕跡[t]として凹部[d]が形成される。また、造粒紛[M]によって粉末100が押し退けられた粉末100は、規制部材14の下部を回り込む(A’-A’断面参照)。これにより、規制部材14の通過後の造粒紛[M]の通過部脇であって、凹部[d]の両脇には、移動痕跡[t]として凸部[b]が形成される。なお、規制部材14の移動方向における凹部[d]の両脇には、造粒紛[M]に押し退けられて盛り上がった凸部が形成されるが、この部分は規制部材14の移動によって削り取られる。
【0041】
図5は、三次元積層造形方法における粉末層101の形成処理(その2)を説明するための上面図である。この図は、規制部材14の往復移動において、規制部材14を折り返し位置[pr]から移動開始位置[ps]に向かって移動させた復路の状態を示している。この図に示すように、粉末層101の形成処理において規制部材14を折り返し位置[pr]から移動開始位置[ps]に向かって移動させる場合、逆向きの移動において粉末層101に形成された造粒紛[M]の移動痕跡[t]のうち、凸部[b]は規制部材14によって削りとられる。一方、凹部[d]は規制部材14の通過後にも粉末層101に残される。また、ここでの図示は省略したが、折り返し位置[pr]から移動開始位置[ps]に向かう過程においても、図4を用いて説明したようにして、新たな移動痕跡[t]が形成される。
【0042】
以上のような折り返し位置[pr]から移動開始位置[ps]に向かう規制部材14の移動において、造粒紛[M]の移動痕跡[t]のうちの凸部[b]を削り取った粉末100は、規制部材14によって移動開始位置[ps]にまで運搬される。そして、削り取った粉末100aの一部は、2つのダストボックス15のうち、移動開始位置[ps]側のダストボックス15sに落下する。
【0043】
ここで、造粒紛[M]が形成されない条件であれば、余剰分の粉末100の大部分は、折り返し位置[pr]側のダストボックス15rに落下する構成となっている。つまり、造粒紛[M]が形成されない条件であれば、移動開始位置[ps]側のダストボックス15r内の落下粉末100’は、極少ない量に抑えられる構成である。
【0044】
[規制部材14の移動速度[S]の設定方法]
そこで、図1に示すように、2つのダストボックス15に落下した落下粉末100’のうち、移動開始位置[ps]側のダストボックス15s内の落下粉末100’の割合がより少なくなる範囲であって、好ましくは最小となる範囲に規制部材14の移動速度を設定する。
【0045】
この場合、三次元積層造形に用いられる各粉末100について、規制部材14の移動速度[S]を変更した三次元積層造形物の作製の予備実験を行い、2つのダストボックス15の落下粉末100’の質量をそれぞれ測定する。そして、各種の粉末100について、規制部材14の移動速度と、移動開始位置[ps]側のダストボックス15sの落下粉末100’の割合との関係を求める。
【0046】
図6は、規制部材14の移動速度[S]と、移動開始位置[ps]側のダストボックス15sに落下した落下粉末比率[R]と関係を示す図である。ここで、移動開始位置側の落下粉末比率[R]は、移動開始位置[ps]側のダストボックス15sの落下粉末100’の質量[fs]と、折り返し位置[pr]側のダストボックス15rの落下粉末100’の質量[fr]とから、落下粉末比率[R]=[fs]/([fs]+[fr])として求める。
【0047】
このようにして得た関係から、各粉末100について、移動開始位置側の落下粉末比率[R]が最低となる速度の範囲を求め、この範囲の中から最も遅い速度[S1]を規制部材14の移動速度[S]として設定する。これは、規制部材の移動速度[S]が速まることにより、規制部材14の駆動部の振動が大きくなり、この振動の影響によって規制部材14に揺れが生じて粉末層101のパウダーベッド面101aの平坦性が損なわれるからである。このため、規制部材14の駆動部の振動の影響を考慮する必要がない場合、生産性を考慮すると、規制部材14の移動速度[S]は、移動開始位置側の落下粉末比率[R]が最低となる速度の範囲でなるべく速い速度に設定されることが好ましい。
【0048】
以上のようにして、各種の粉末100について設定した移動速度[S]を、粉末100毎に対応付けしたデータベースを作成する。
【0049】
なお、上述した規制部材14の移動速度[S]の設定においては、各粉末100について、さらに他の造形データ(例えば製造条件)ごとに予備実験を実施し、各粉末100について製造条件毎に移動速度[S]を設定してもよい。
【0050】
また、予備実験においての三次元積層造形物の作製は、三次元積層構造物を完成させる必要はなく、粉末層101の積層数を限定して実施してもよい。ただし、予備実験においての粉末層101の積層数が多い程、正確な落下粉末比率[R]を得ることができるため、より多層の粉末層101の形成を実施することが好ましい。
【0051】
また、以上においては、移動開始位置[ps]側の落下粉末比率[R]に基づいて、規制部材14の移動速度[S]を設定したが、移動開始位置[ps]側のダストボックス15s内の落下粉末100’の量に基づいて、規制部材14の移動速度[S]を設定してもよい。この場合であっても、移動開始位置[ps]側のダストボックス15s内の落下粉末100’の量が最低となる速度の範囲を求め、この範囲の中から最も遅い速度[S1]を規制部材14の移動速度[S]として設定すればよい。
【0052】
さらに、以上のような規制部材14の移動速度[S]の設定方法は、データベース作成のための実施に限定されることはない。例えば、この三次元積層造形に用いられる特定の粉末100について、上記の予備実験を実施して規制部材14の移動速度[S]を設定し、設定した移動速度[S]を、入力部21から入力して三次元積層造形を開始させてもよい。
【0053】
<第1実施形態の効果>
以上説明した第1実施形態によれば、三次元積層造形の実施の手順における粉末層101の形成に際し、規制部材14の移動速度を制御する制御部20が、入力部21からの設定に基づいて規制部材14の移動速度[S]を変更できる構成である。このため、粉末100の種類毎に、造粒紛[M]の生成と、この移動痕跡[t]の形成を防止可能な移動速度[S]で規制部材14を移動させた粉末層101の形成を実施できる。これにより三次元積層造形における造形精度の向上を図ることが可能となる。
【0054】
≪第2実施形態≫
<三次元積層造形装置>
図7は、第2実施形態に係る三次元積層造形装置2の概略構成図である。この図に示す第2実施形態の三次元積層造形装置2が、第1実施形態の三次元積層造形装置1と異なるところは、制御部20’の構成にあり、他の構成は同様である。このため、ここでは制御部20’の構成とともに、入力部21に表示される表示画像を説明し、他の構成の詳細な説明は省略する。
【0055】
[制御部20’]
制御部20’は、上述した構成要素の駆動を制御するものであって、第1実施形態のものと同様に計算機によって構成されている。この制御部20’は、機能構成部として、入出力制御部20a、速度記憶部20b、および駆動制御部20cを備える。これらは次のようである。
【0056】
-入出力制御部20a-
入出力制御部20aは、入力部21からの入力情報に基づいて、速度記憶部20bに保存されたデータベースのなかから、次に実施する三次元積層造形における規制部材14の移動速度[S]を抽出する。入出力制御部20aは、抽出した移動速度[S]を、駆動制御部20cに送信する。
【0057】
また、入出力制御部20aは、入力部21が有する表示部に、所定のタイミングで所定の画面を表示させる。
【0058】
-速度記憶部20b-
速度記憶部20bは、粉末100の種類と規制部材14の最適移動速度[S1]とを関連付けした移動速度データベースを保存している。図8は、第2実施形態に係る三次元積層造形装置における規制部材の移動速度データベースを示す図である。図8に示すように、移動速度データベースは、粉末100の種類毎に規制部材の移動速度[S]が対応付けて記憶されたデータベースである。このデータベースを構成する情報は、第1実施形態で説明した規制部材14の移動速度[S]の設定方法の手順によって設定された情報である。
【0059】
-駆動制御部20c-
図7に戻り、駆動制御部20cは、入力部21から入力された情報、および入出力制御部20aからの情報に基づいて、三次元積層造形装置2を構成する各構成要素の駆動を制御する。特にこの駆動制御部20cは、入力部21から入力された情報、および入出力制御部20aから取得した規制部材14の移動速度[S]に基づいて、規制部材14の移動を制御する。
【0060】
[入力部21]
入力部21は、第1実施形態で説明したものと同様のものであってよいが、表示部を備えたものであることが好ましい。この表示部は、三次元積層造形を実施するための設定の入力画面を表示する。
【0061】
図9は、第2実施形態に係る三次元積層造形装置2の入力画面21aを示す図である。図7図9を参照し、入力部21は、表示部に入力画面21aとして、粉末種を選択する選択画面を表示させる。入力部21における入力画面21a(選択画面)の表示のタイミングは、三次元積層造形を実施する前のタイミングであって、入出力制御部20aからの指示によって表示を実施する。
【0062】
入力部21は、入力画面21aに表示させたカーソル21bにより、粉末種を指定できる構成となっている。この入力部21において指定した粉末種に関する情報は、制御部20’に送信される。
【0063】
<三次元積層造形方法>
以上のような第2実施形態の三次元積層造形装置2を用いた三次元積層造形方法は、次のように実施される。先ず、三次元積層造形装置2のオペレーターは、入力部21から、三次元積層造形物の作製に必要な造形データを入力する。
【0064】
これにより、制御部20’の入出力制御部20aは、入力部21の表示部に、入力画面21aとして、粉末種を選択する選択画面を表示させる。オペレーターは、入力画面21a(選択画面)の中から、この三次元積層造形において用いる粉末100の粉末種を選択して入力する。
【0065】
これにより、入出力制御部20aは、速度記憶部20bが保持する移動速度データベースを参照し、入力部21から入力された粉末種に対応して保持されている規制部材14の移動速度[S]を移動速度データベース内から抽出する。入出力制御部20aは、抽出した規制部材14の移動速度[S]を、駆動制御部20cに送信する。
【0066】
これにより、駆動制御部20cは、入力部21から入力された造形データおよび入出力制御部20aから取得した規制部材14の移動速度[S]に基づき、さらに入力部21から造形開始のトリガー信号を取得したことにより、予め保持している形プログラムを実行する。駆動制御部20cによる造形プログラムの実行手順は、第1実施形態において説明した制御部20による造形プログラムの実行の手順と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0067】
<第2実施形態の効果>
以上のような第2実施形態によれば、三次元積層造形の実施の手順において、粉末層101の形成に際して規制部材14の移動を制御する駆動制御部20cが、入力部21で指定した粉末種に対応して設定された移動速度[S]で規制部材14の移動を制御する。こため、粉末100の種類毎に、造粒紛[M]の生成と、この移動痕跡[t]の形成とを防止可能な移動速度[S]で規制部材14を移動させた粉末層101の形成を実施できる。この結果、三次元積層造形における造形精度の向上を図ることが可能となる。
【0068】
さらに、オペレーターが自らデータベースを参照することなく、粉末種を入力するだけで造粒紛[M]の生成を抑えた最適な移動速度[S]で規制部材14を移動させて粉末層101を形成することが可能である。
【0069】
≪第2実施形態の変形例≫
図10は、第2実施形態に係る三次元積層造形装置2(図7参照)における規制部材の移動速度データベースの他の例を示す図である。図10に示すように、第2実施形態の三次元積層造形装置2の速度記憶部20bが保持する移動速度データベースは、粉末100の種類毎、および他の造形データに規制部材の移動速度[S]が対応付けて記憶されていていてもよい。ここでは、他の造形データの一例として、製造条件の一つである三次元積層造形の金属組織制御を示している。すなわち、単結晶の三次元積層造形物を作製するか、または多結晶の三次元積層造形物を作製するかによって、仮焼結処理および溶融処理を含む各処理での粉末100に対する温度条件が異なるためである。
【0070】
図11は、第2実施形態に係る三次元積層造形装置2(図7参照)の入力画面21aの他の例を示す図であり、速度記憶部20bが保持する移動速度データベースが、図10に示したデータベースの場合を示している。図7図10図11を参照し、入力部21は、表示部に入力画面21aとして、粉末種および金属組織制御を選択する選択画面を表示させる。入力部21における入力画面21a(選択画面)の表示のタイミングは、三次元積層造形を実施する前のタイミングであって、入出力制御部20aからの指示によって表示を実施する。
【0071】
入力部21は、入力画面21aに表示させたカーソル21bにより、粉末種および金属組織制御を指定できる構成となっている。この入力部21において指定した粉末種および金属組織制御に関する情報は、制御部20’に送信される。
【0072】
<三次元積層造形方法>
以上のような第2実施形態の三次元積層造形装置2を用いた三次元積層造形方法は、次のように実施される。先ず、三次元積層造形装置2のオペレーターは、入力部21から、三次元積層造形物の作製に必要な造形データを入力する。
【0073】
これにより、制御部20’の入出力制御部20aは、入力部21の表示部に、入力画面21aとして、粉末種および金属組織制御を選択する画面を表示させる。オペレーターは、入力画面21aの中から、この三次元積層造形において用いる粉末100の粉末種と、作製する三次元積層造形物の金属組織制御とを選択して入力する。
【0074】
これにより、入出力制御部20aは、速度記憶部20bの移動速度データベースを参照し、入力部21から入力された粉末種および金属組織制御に対応して保持されている規制部材14の移動速度[S]を移動速度データベース内から抽出する。入出力制御部20aは、抽出した規制部材14の移動速度[S]を、駆動制御部20cに送信する。
【0075】
以降は第2実施形態の造形方法と同様に実施される。
【0076】
<第2実施形態の変形例の効果>
以上のような第2実施形態の変形例であれば、第2実施形態の効果に加えて、さらに他の造形データとしての金属組織制御を考慮した移動速度[S]で規制部材14を移動させて粉末層101を形成することが可能である。このため、より効果的に造粒紛[M]の生成を抑えることが可能となる。
【符号の説明】
【0077】
1,2…三次元積層造形装置
11…形成槽
11a…テーブル
12…ベースプレート
13…粉末供給装置
14…規制部材
15…ダストボックス
15r…ダストボックス
15s…ダストボックス
20,20’…制御部
20a…入出力制御部
20b…速度記憶部
20c…駆動制御部
21…入力部
21a…入力画面
100…粉末
100’…落下粉末
101…粉末層
[ps]移動開始位置
[pr]折り返し位置
[S]移動速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11