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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003416
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240105BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02J7/10 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102538
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】西村 宗世
(72)【発明者】
【氏名】谷 敬弥
【テーマコード(参考)】
5G503
5H770
【Fターム(参考)】
5G503AA07
5G503BA03
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA08
5G503CA11
5G503CB11
5G503EA05
5G503FA06
5G503GD06
5H770BA02
5H770CA06
5H770DA10
5H770DA41
5H770EA02
5H770EA07
5H770HA02Y
5H770HA02Z
5H770HA03Z
5H770HA06Z
5H770JA17Z
(57)【要約】
【課題】蓄電部の温度が上昇した場合であっても蓄電部の昇温性能を向上させることが可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置10は、直列接続された第1蓄電部21及び第2蓄電部22において第1蓄電部21の負極側及び第2蓄電部22の正極側と、巻線41U,41V,41Wの中性点Oとを電気的に接続する接続経路60と、第1蓄電部21及び第2蓄電部22のうち少なくとも一方の発熱量、内部抵抗、温度または電圧のいずれかである判定パラメータを取得する監視ユニット50と、制御装置70と、を備える。制御装置70は、第1蓄電部21及び第2蓄電部22の昇温要求があるか否かを判定し、昇温要求があると判定した場合、監視ユニット50によって取得された判定パラメータに基づいて、接続経路60を介して第1蓄電部21と第2蓄電部22との間に流す電流を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
星形結線された巻線(41U,41V,41W)を有する回転電機(40)と、
上アームスイッチ(QUH,QVH,QWH)及び下アームスイッチ(QUL,QVL,QWL)の直列接続体を有するインバータ(30)と、を備える電力変換装置(10)において、
直列接続された第1蓄電部(21)及び第2蓄電部(22)において前記第1蓄電部の負極側及び前記第2蓄電部の正極側と、前記巻線の中性点(O)とを電気的に接続する接続経路(60)と、
前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の昇温要求があるか否かを判定する判定部(70)と、
前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部のうち少なくとも一方の発熱量、内部抵抗、温度または電圧のいずれかである判定パラメータを取得する取得部(50)と、
前記判定部によって前記昇温要求があると判定された場合、前記取得部によって取得された前記判定パラメータに基づいて、前記接続経路を介して前記第1蓄電部と前記第2蓄電部との間に流す電流を制御するための前記上アームスイッチ及び下アームスイッチのスイッチング制御を行う制御部(70)と、を備える電力変換装置。
【請求項2】
前記判定パラメータは、前記発熱量または前記内部抵抗であり、
前記制御部は、前記昇温要求があると判定された場合、前記接続経路に流れる電流に交流電流が含まれるように、かつ、前記判定パラメータが小さいほど前記交流電流の周波数を低くするように前記スイッチング制御を行う、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記判定パラメータは、前記発熱量または前記内部抵抗であり、
前記制御部は、前記昇温要求があると判定された場合、前記接続経路に流れる電流に交流電流が含まれるように、かつ、前記判定パラメータが小さいほど前記交流電流の振幅を大きくするように前記スイッチング制御を行う、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記判定パラメータは、前記温度であり、
前記制御部は、前記昇温要求があると判定された場合、前記接続経路に流れる電流に交流電流が含まれるように、かつ、前記温度が高いほど前記交流電流の周波数を低くするように前記スイッチング制御を行う、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記判定パラメータは、前記温度であり、
前記制御部は、前記昇温要求があると判定された場合、前記接続経路に流れる電流に交流電流が含まれるように、かつ、前記温度が高いほど前記交流電流の振幅を大きくするように前記スイッチング制御を行う、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記昇温要求があると判定された場合、前記判定パラメータに基づいて、前記スイッチング制御により前記接続経路に流す電流を交流電流及び直流電流のうち一方から他方に切り替える、請求項1~5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記接続経路に前記直流電流を流すように前記スイッチング制御を行っている場合において前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の残容量の差が所定容量以上になったと判定したとき、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部のうち、残容量が大きい方の蓄電部から前記接続経路を介して残容量が小さい方の蓄電部に直流電流が流れるように、前記直流電流が流れる向きを変更する、請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記判定パラメータは、前記温度であり、
前記制御部は、
前記昇温要求があると判定された場合、前記接続経路に流れる電流に交流電流が含まれるように前記スイッチング制御を行い、
前記昇温要求があると判定された場合において、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の保護要求があると判定するとともに前記温度が所定温度以上であると判定した場合、前記温度が所定温度以上であると判定する前と比較して前記交流電流の周波数を高くする、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項9】
星形結線された巻線(41U,41V,41W)を有する回転電機(40)と、
上アームスイッチ(QUH,QVH,QWH)及び下アームスイッチ(QUL,QVL,QWL)の直列接続体を有するインバータ(30)と、を備える電力変換装置(10)において、
直列接続された第1蓄電部(21)及び第2蓄電部(22)において前記第1蓄電部の負極側及び前記第2蓄電部の正極側と、前記巻線の中性点(O)とを電気的に接続する接続経路(60)と、
前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の保護要求があるか否かを判定する判定部(70)と、
前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部のうち少なくとも一方の温度を取得する取得部(50)と、
前記判定部によって前記保護要求があると判定された場合において、前記取得部によって取得された前記温度が所定温度以上であると判定した場合、前記温度が所定温度以上であると判定する前と比較して、前記接続経路を介して前記第1蓄電部と前記第2蓄電部との間に流す交流電流の周波数を高くする制御部(70)と、を備える電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電池の温度が低い場合、電力変換装置を用いて蓄電池を昇温させる発明が知られている。特許文献1には、第1蓄電池及び第2蓄電池と巻線を有する回転電機とがインバータを介して接続される電力変換装置が開示されている。第1蓄電池の負極側及び第2蓄電池の正極側と、巻線の中性点とが電気的に接続され、接続回路が構成される。巻線及び接続経路を介して第1蓄電池と第2蓄電池との間に電流を流すことにより、第1蓄電池及び第2蓄電池の温度を上昇させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-93845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蓄電池の温度が上昇するにしたがい、蓄電池の昇温性能は低下する。蓄電池は所定温度(例えば30度)で充電効率が高いことが知られている。そこで、蓄電池を充電する際には蓄電池の温度を所定温度まで上昇させることが望まれる。しかしながら、上述したように蓄電池の温度が上昇するにしたがい蓄電池の昇温性能は低下するため、蓄電池の温度が所定温度に到達するまでに時間がかかってしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、蓄電部の温度が上昇した場合であっても蓄電部の昇温性能を向上させることが可能な電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
星形結線された巻線を有する回転電機と、
上アームスイッチ及び下アームスイッチの直列接続体を有するインバータと、を備える電力変換装置において、
直列接続された第1蓄電部及び第2蓄電部において前記第1蓄電部の負極側及び前記第2蓄電部の正極側と、前記巻線の中性点とを電気的に接続する接続経路と、
前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の昇温要求があるか否かを判定する判定部と、
前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部のうち少なくとも一方の発熱量、内部抵抗、温度または電圧のいずれかである判定パラメータを取得する取得部と、
前記判定部によって前記昇温要求があると判定された場合、前記取得部によって取得された前記判定パラメータに基づいて、前記接続経路を介して前記第1蓄電部と前記第2蓄電部との間に流す電流を制御するための前記上アームスイッチ及び下アームスイッチのスイッチング制御を行う制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
蓄電部の内部抵抗は温度が上昇するにしたがい低下する。そのため、同じ電流を流す場合、蓄電部の発熱量は温度が上昇するほど低下する。電力変換装置は蓄電部のパラメータである発熱量、内部抵抗、温度、または電圧を用いて発熱量の低下が抑制されるように接続経路に流す電流を制御する。これにより、電力変換装置に新たな物理的構成を追加することなく、蓄電部の温度が上昇した場合であっても蓄電部の昇温性能を向上させることが可能となる。
【0008】
本発明は、
星形結線された巻線を有する回転電機と、
上アームスイッチ及び下アームスイッチの直列接続体を有するインバータと、を備える電力変換装置において、
直列接続された第1蓄電部及び第2蓄電部において前記第1蓄電部の負極側及び前記第2蓄電部の正極側と、前記巻線の中性点とを電気的に接続する接続経路と、
前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の保護要求があるか否かを判定する判定部と、
前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部のうち少なくとも一方の温度を取得する取得部と、
前記判定部によって前記保護要求があると判定された場合において、前記取得部によって取得された前記温度が所定温度以上であると判定した場合、前記温度が所定温度以上であると判定する前と比較して、前記接続経路を介して前記第1蓄電部と前記第2蓄電部との間に流す交流電流の周波数を高くする制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
交流電流の周波数を高くすることにより、蓄電部を構成する電気二重層部のコンデンサ側に常に電流が流れる。これにより、電流が抵抗側に流れることが抑制され、リチウム析出反応が抑制される。これにより、蓄電部の劣化が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る電力変換装置の構成図。
図2】温度と各種パラメータとの関係を示すグラフ。
図3】周波数の推移を示すグラフ。
図4】第1実施形態に係る制御装置の一動作例を説明するフローチャート。
図5】昇温性能と温度との関係を示すグラフ。
図6】電圧とSOCとの関係を示すグラフ。
図7】第2実施形態に係る制御装置の一動作例を説明するフローチャート。
図8】第3実施形態に係る制御装置の一動作例を説明するフローチャート。
図9】第4実施形態に係る制御装置の一動作例を説明するフローチャート。
図10】電気二重層部の構成図。
図11】他の実施形態に係る電力変換装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
図1に示すように、電力変換装置10は、インバータ30と、回転電機40と、監視ユニット50と、接続経路60と、接続スイッチ61と、相電流センサ62と、中性点電流センサ63と、制御装置70とを備えている。回転電機40は、3相の同期機であり、ステータ巻線として星形結線されたU,V,W相巻線41U,41V,41Wを備えている。各相巻線41U,41V,41Wは、電気角で120°ずつずれて配置されている。回転電機40は、例えば永久磁石同期機である。電力変換装置10は、例えば電気自動車、ハイブリッド車などに搭載される。回転電機40は車載主機であり、車両の走行動力源となる。
【0013】
インバータ30は、U,V,W相上アームスイッチQUH,QVH,QWHとU,V,W相下アームスイッチQUL,QVL,QWLとの直列接続体を3相分備えている。本実施形態では、各スイッチQUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWLとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、具体的にはIGBTが用いられている。このため、各スイッチQUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWLの高電位側端子はコレクタであり、低電位側端子はエミッタである。各スイッチQUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWLには、フリーホイールダイオードとしての各ダイオードDUH,DVH,DWH,DUL,DVL,DWLが逆並列に接続されている。
【0014】
U相上アームスイッチQUHのエミッタと、U相下アームスイッチQULのコレクタとには、バスバーなどのU相導電部材32Uを介して、U相巻線41Uの第1端が接続されている。V相上アームスイッチQVHのエミッタと、V相下アームスイッチQVLのコレクタとには、バスバーなどのV相導電部材32Vを介して、V相巻線41Vの第1端が接続されている。W相上アームスイッチQWHのエミッタと、W相下アームスイッチQWLのコレクタとには、バスバーなどのW相導電部材32Wを介して、W相巻線41Wの第1端が接続されている。U,V,W相巻線41U,41V,41Wの第2端同士は、中性点Oで接続されている。なお、本実施形態において、各相巻線41U,41V,41Wは、ターン数が同じに設定されている。これにより、各相巻線41U,41V,41Wは、例えばインダクタンスが同じに設定されている。
【0015】
各上アームスイッチQUH,QVH,QWHのコレクタと、組電池20の正極端子とは、バスバーなどの正極側母線Lpにより接続されている。各下アームスイッチQUL,QVL,QWLのエミッタと、組電池20の負極端子とは、バスバーなどの負極側母線Lnにより接続されている。
【0016】
インバータ30は、正極側母線Lpと負極側母線Lnとを接続するコンデンサ31を有する。本実施形態ではコンデンサ31はインバータ30に内蔵されるものとして説明するが、これに限定されない。例えばコンデンサ31はインバータ30の外部に設けられてもよい。
【0017】
図1に示すように、組電池20は、単電池としての電池セルの直列接続体として構成されており、端子電圧が例えば数百Vとなるものである。本実施形態では、組電池20を構成する各電池セルの端子電圧(例えば定格電圧)が互いに同じに設定されている。電池セルとしては、例えば、リチウムイオン電池などの2次電池を用いることができる。本実施形態では、組電池20は電力変換装置10の外部に設けられているものとして説明するが、これに限定されない。例えば組電池20は電力変換装置10と一体化されて構成されてもよい。
【0018】
組電池20を構成する電池セルのうち、高電位側の複数の電池セルの直列接続体が第1蓄電池21を構成し、低電位側の複数の電池セルの直列接続体が第2蓄電池22を構成している。つまり、組電池20が2つのブロックに分けられている。本実施形態では、第1蓄電池21を構成する電池セル数と、第2蓄電池22を構成する電池セル数とが同じである。このため、第1蓄電池21の端子電圧(例えば定格電圧)と、第2蓄電池22の端子電圧(例えば定格電圧)とが同じである。なお、第1蓄電池21は「第1蓄電部」に相当し、第2蓄電池22は「第2蓄電部」に相当する。
【0019】
組電池20において、第1蓄電池21の負極端子と第2蓄電池22の正極端子とには中間端子Bが接続されている。
【0020】
監視ユニット50(取得部)は、組電池20を構成する各電池セルの端子電圧、温度などを監視する。監視ユニット50は、制御装置70との通信が可能となるように構成されており、制御装置70の命令にしたがって端子電圧、温度などのデータを制御装置70に出力する。
【0021】
接続経路60は、組電池20の中間端子Bと中性点Oとを電気的に接続する。接続スイッチ61は、接続経路60上に設けられている。本実施形態では、接続スイッチ61としてリレーが用いられている。接続スイッチ61がオンされることにより、中間端子Bと中性点Oとが電気的に接続される。一方、接続スイッチ61がオフされることにより、中間端子Bと中性点Oとの間が電気的に遮断される。
【0022】
相電流センサ62は、各導電部材32U~32Wに流れる各相電流Iu,Iv,Iwを検出する。中性点電流センサ63は、中性点Oに流れる電流を検出する。相電流センサ62及び中性点電流センサ63の検出値は、制御装置70に入力される。
【0023】
制御装置70は、CPU、ROM、RAM、各種信号を入出力するための入出力ポートなどを含むマイコンとして構成される。制御装置70は、回転電機40の制御量をその指令値にフィードバック制御すべく、インバータ30を構成する各スイッチのスイッチング制御を行う。制御量は、例えばトルクである。各相において、上,下アームスイッチは交互にオンされる。なお、制御装置70の一機能が「制御部」に相当する。
【0024】
また、制御装置70は、接続スイッチ61のオンオフを切り替えたり、組電池20(第1蓄電池21及び第2蓄電池22)の温度を上昇させたりする。組電池20を昇温させる理由の一つとして、充電時間の短縮が挙げられる。一般に電気自動車などに搭載されるバッテリ(組電池20)は、所定温度で充電効率が高いことが知られている。ここでいう所定温度は、組電池20のサイズ、性能などに応じて変化しうる数値であるが、本実施形態では一例として30度として扱う。この所定温度(30度)は組電池20を充電するときの目標温度となる。組電池20が充電されるときに組電池20の温度が目標温度未満であれば、組電池20を目標温度まで昇温することにより充電時間は短縮されることになる。したがって制御装置70は、組電池20が充電されるときに組電池20の温度が目標温度未満であれば、組電池20を目標温度まで昇温させる。
【0025】
ここで、組電池20の温度を上昇させる方法の一例を説明する。制御装置70は、監視ユニット50から取得した組電池20の現在の温度と、目標温度とを比較する。現在の温度が目標温度未満であるとき、制御装置70は、接続スイッチ61をオンする。これにより、中間端子Bと中性点Oとが接続経路60を介して電気的に接続される。続いて制御装置70は、組電池20の温度を上昇させるために昇温PWM制御を行う。昇温PWM制御では、各スイッチQUH~QWLのスイッチング制御が行われる。これにより、インバータ30、各相巻線41U,41V,41W及び接続経路60を介して、第1蓄電池21と第2蓄電池22との間に電流が流れ、第1蓄電池21及び第2蓄電池22の温度は上昇する。このとき接続経路60を介して第1蓄電池21と第2蓄電池22との間に流す電流は直流電流でもよく交流電流でもよい。また、直流電流から交流電流に切り替えたり、交流電流から直流電流に切り替えたりしてもよい。以下では、「接続経路60を介して第1蓄電池21と第2蓄電池22との間に流す電流」を単に「中間端子Bに流す電流」と呼ぶ場合がある。
【0026】
ところで、組電池20の温度を上昇させるとき、組電池20の温度が上昇するにしたがい組電池20の昇温性能が低下する。この点について図2を参照して説明する。図2(a)は組電池20の内部抵抗(mΩ)と、組電池20の温度との関係を示すグラフである。図2(a)の縦軸は内部抵抗であり、横軸は温度である。図2(b)は組電池20の昇温性能(kw)と、組電池20の温度との関係を示すグラフである。図2(b)の縦軸は昇温性能であり、横軸は温度である。
【0027】
図2(a)から明らかなように、組電池20の温度が上昇するにしたがい、組電池20の内部抵抗が小さくなる。ここで、組電池20の発熱量をQ、組電池20に流れる電流をI、組電池20の内部抵抗をRとすると、組電池20の発熱量Qは、式1で表される。
Q=(I×I)×R・・・(1)
【0028】
電流Iが一定である場合、発熱量Qは内部抵抗Rによって決まる。すなわち、内部抵抗Rが大きいほど発熱量Qは大きくなり、内部抵抗Rが小さいほど発熱量Qは小さくなる。したがって、図2(a)に示すように組電池20の温度が上昇して内部抵抗Rが小さくなると、図2(b)に示すように組電池20の昇温性能(発熱量Q)は低下する。この現象により目標温度(本実施形態では30度)に到達するまでに時間がかかってしまい、その結果、充電時間が増加してしまう。
【0029】
発明者らは、電力変換装置10に新たな物理的構成を追加することなく、組電池20の温度が上昇した場合であっても組電池20の昇温性能を向上させることが可能な方策を見出した。第1実施形態ではその方策の一つとして、中間端子Bに流す電流の周波数を低周波化することを説明する。制御対象が周波数であるため、中間端子Bに流す電流は交流電流であることが前提である。図3(a)は、中間端子Bに流す交流電流の周波数の推移を示すグラフである。図3(a)の縦軸は中間端子Bに流す交流電流の振幅であり、横軸は時間である。図3(a)に示すようにタイミングT1において中間端子Bに流す交流電流の周波数は低くなるように制御される。タイミングT1は組電池20の温度が目標温度未満である状況を示す。
【0030】
タイミングT1において、中間端子Bに流す交流電流の周波数が低くなるように制御されることにより、組電池20の内部抵抗が大きくなる。上述の式1から明らかなように組電池20の内部抵抗が大きいほど組電池20の発熱量は大きくなる。したがって、組電池20の温度が上昇して昇温性能が低下するシーンにおいて、中間端子Bに流す交流電流の周波数を低くすることにより、昇温性能の低下は抑制され、昇温性能を向上させることが可能となる。これにより、組電池20の温度が目標温度に到達するまでに要する時間が短縮され、ひいては充電時間の短縮に貢献する。
【0031】
低周波化の方法として、ステップ応答のように単に周波数を低くするものでもよく、組電池20の温度が高いほど連続的に周波数を低くするものでもよい。ここでいう「組電池20の温度が高いほど」とは、「組電池20の温度が目標温度に近づくほど」を意味する。組電池20の温度が目標温度に近づくほど中間端子Bに流す交流電流の周波数を低くすることにより、組電池20の温度が目標温度に到達するまでに要する時間が短縮される。なお、組電池20の温度と目標温度との差が小さくなるほど周波数を低くする、と表現されてもよい。
【0032】
なお、中間端子Bに流す交流電流の周波数を低くすることに代えて、中間端子Bに流す交流電流の振幅を大きくしてもよい。この点について図3(b)を参照して説明する。図3(b)は、中間端子Bに流す交流電流の周波数の推移を示すグラフである。図3(b)の縦軸は中間端子Bに流す交流電流の振幅であり、横軸は時間である。図3(b)に示すように、制御装置70はタイミングT2において中間端子Bに流す交流電流の振幅を大きくしてもよい。このとき制御装置70は中間端子Bに流す交流電流の周波数は変更しない。中間端子Bに流す交流電流の振幅を大きくした場合であっても、中間端子Bに流す交流電流の周波数を低くした場合と同様の効果が得られる。
【0033】
中間端子Bに流す交流電流の振幅を大きくする際の条件も周波数と同様に、組電池20の温度が目標温度未満であるときである。ただし、周波数と同様にこれに限定されない。制御装置70は、組電池20の温度が高いほど中間端子Bに流す交流電流の振幅を大きくしてもよい。これにより、組電池20の温度が目標温度に近づくほど中間端子Bに流す交流電流の振幅が大きくなるため、組電池20の温度が目標温度に到達するまでに要する時間が短縮される。
【0034】
次に図4のフローチャートを参照して第1実施形態に係る制御装置70の一動作例を説明する。図4に示す処理は、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0035】
ステップS101において、制御装置70は、組電池20(第1蓄電池21及び第2蓄電池22)の昇温要求があるか否かを判定する。制御装置70は、監視ユニット50から取得した組電池20の温度が目標温度未満であるとき、昇温要求があると判定する。ステップS101における制御装置70の機能は「判定部」に相当する。ステップS101の処理がYESである場合、すなわち、制御装置70が昇温要求があると判定した場合、処理はステップS102に進む。一方で、ステップS101の処理がNOである場合、すなわち、制御装置70が昇温要求はないと判定した場合、制御装置70は処理を終了させる。なお、昇温要求があるか否かを判定するとき、温度比較の他に組電池20が充電中であるとき、という条件が加えられてもよい。組電池20が充電中であるか否かの判断について、制御装置70は例えば外部装置からの信号の有無について判断することが可能である。
【0036】
組電池20の温度として、第1蓄電池21の温度が用いられてもよく、第2蓄電池22の温度が用いられてもよく、または第1蓄電池21の温度と第2蓄電池22の温度との平均値が用いられてもよい。
【0037】
ステップS102において、制御装置70は、所定のタイミングで中間端子Bに流す交流電流の周波数を低くする、または所定のタイミングで中間端子Bに流す交流電流の振幅を大きくする。また、制御装置70は、組電池20の温度が高いほど中間端子Bに流す交流電流の周波数を低くしてもよく、組電池20の温度が高いほど中間端子Bに流す交流電流の振幅を大きくしてもよい。図2で説明したように、組電池20の温度は組電池20の発熱量と相関する。したがって、制御装置70は、組電池20の発熱量が小さいほど中間端子Bに流す交流電流の周波数を低くしてもよく、組電池20の発熱量が小さいほど中間端子Bに流す交流電流の振幅を大きくしてもよい。組電池20の発熱量を制御用の判定パラメータとして用いた場合であっても、温度を用いた場合と同様の効果が得られる。
【0038】
同様に図2で説明したように、組電池20の温度は組電池20の内部抵抗と相関する。したがって、制御装置70は、組電池20の内部抵抗が小さいほど中間端子Bに流す交流電流の周波数を低くしてもよく、組電池20の内部抵抗が小さいほど中間端子Bに流す交流電流の振幅を大きくしてもよい。組電池20の内部抵抗を制御用の判定パラメータとして用いた場合であっても、温度を用いた場合と同様の効果が得られる。
【0039】
制御装置70は、組電池20の発熱量及び内部抵抗についても温度と同様に監視ユニット50から取得可能である。組電池20の発熱量として、第1蓄電池21の発熱量が用いられてもよく、第2蓄電池22の発熱量が用いられてもよく、または第1蓄電池21の発熱量と第2蓄電池22の発熱量との平均値が用いられてもよい。組電池20の内部抵抗として、第1蓄電池21の内部抵抗が用いられてもよく、第2蓄電池22の内部抵抗が用いられてもよく、または第1蓄電池21の内部抵抗と第2蓄電池22の内部抵抗との平均値が用いられてもよい。組電池20の温度、発熱量、及び内部抵抗についてその値がそのまま用いられるのではなく、外気温などの外部の環境条件に応じた重みが付与された上で用いられてもよい。
【0040】
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0041】
電力変換装置10は、星形結線された巻線を有する回転電機40と、上アームスイッチ及び下アームスイッチの直列接続体を有するインバータ30と、を備える。また、電力変換装置10は、直列接続された第1蓄電池21及び第2蓄電池22において第1蓄電池21の負極側及び第2蓄電池22の正極側と、巻線の中性点とを電気的に接続する接続経路60と、第1蓄電池21及び第2蓄電池22のうち少なくとも一方の発熱量、内部抵抗、温度または電圧のいずれかである判定パラメータを取得する監視ユニット50と、制御装置70と、を備える。制御装置70は、第1蓄電池21及び第2蓄電池22の昇温要求があるか否かを判定する。制御装置70は、昇温要求があると判定した場合、監視ユニット50によって取得された判定パラメータに基づいて接続経路60を介して第1蓄電池21と第2蓄電池22との間に流す電流を制御する。制御装置70は、上アームスイッチQUH,QVH,QWH及び下アームスイッチQUL,QVL,QWLのスイッチング制御を行うことにより電流を制御する。
【0042】
組電池20(第1蓄電池21及び第2蓄電池22)の内部抵抗は組電池20の温度が上昇するにしたがい低下する。そのため、同じ電流を流す場合組電池20の発熱量は組電池20の温度が上昇するほど低下する。電力変換装置10は組電池20の判定パラメータである発熱量、内部抵抗、温度、または電圧を用いて発熱量の低下が抑制されるように中間端子Bに流す電流を制御する。これにより、電力変換装置10に新たな物理的構成を追加することなく、組電池20の温度が上昇した場合であっても組電池20の昇温性能を向上させることが可能となる。
【0043】
制御装置70は、昇温要求があると判定した場合、中間端子Bに流す電流に交流電流が含まれるように、上アームスイッチQUH,QVH,QWH及び下アームスイッチQUL,QVL,QWLのスイッチング制御を行う。制御装置70は、組電池20の温度が高いほど、中間端子Bに流す交流電流の周波数を低くしたり、交流電流の振幅を大きくしたりしてもよい。これにより、組電池20の温度が上昇して昇温性能が低下するシーンにおいて、昇温性能の低下は抑制され、昇温性能を向上させることが可能となる。これにより、組電池20の温度が目標温度に到達するまでに要する時間が短縮され、ひいては充電時間の短縮に貢献する。また、制御装置70は、組電池20の発熱量が小さいほど、中間端子Bに流す交流電流の周波数を低くしたり、交流電流の振幅を大きくしたりしてもよい。組電池20の発熱量を制御用の判定パラメータとして用いた場合であっても、温度を用いた場合と同様の効果が得られる。
【0044】
また、制御装置70は、組電池20の内部抵抗が小さいほど、中間端子Bに流す交流電流の周波数を低くしたり、交流電流の振幅を大きくしたりしてもよい。組電池20の内部抵抗を制御用の判定パラメータとして用いた場合であっても、温度を用いた場合と同様の効果が得られる。
【0045】
(第2実施形態)
第1実施形態において、組電池20の温度が上昇した場合であっても組電池20の昇温性能を向上させることが可能な方策として、中間端子Bに流す交流電流の周波数を低くする方策と、中間端子Bに流す交流電流の振幅を大きくする方策について説明したがこれに限定されない。他の方策として、中間端子Bに流す電流を、交流電流から直流電流に切り替えることが挙げられる。第2実施形態ではこの点を説明する。
【0046】
図5は、組電池20の昇温性能と、組電池20の温度との関係を示すグラフである。図5の縦軸は昇温性能であり、横軸は温度である。図5に示すように組電池20の温度が16度付近に上昇するまでは中間端子Bに交流電流を流したほうが直流電流を流すよりも昇温性能が高いことがわかる。また、組電池20の温度が16度付近に上昇した後は中間端子Bに直流電流を流したほうが交流電流を流すよりも昇温性能が高いことがわかる。一般に、バッテリの充電可能電力はバッテリの温度に応じて制限されている。そこで、第2実施形態では、制御装置70は組電池20の温度及び内部抵抗を用いて発熱量を算出する。そして、中間端子Bに直流電流を流したほうが交流電流を流すよりも発熱量が大きい場合、中間端子Bに流す電流を交流電流から直流電流に切り替える。なお、図5に示すグラフでは、組電池20の温度が16度付近で交流電流と直流電流がクロスしているところ、16度という値は一例であり組電池20のサイズ、性能などに応じてこの値は変化しうる。
【0047】
図6は、組電池20の上限電圧及び下限電圧を説明する図である。図6の縦軸は組電池20の電圧を示し、横軸は組電池20のSOC(state of charge)を示す。組電池20の電圧は上下限を超過しない範囲で制御される。符号80は、OCV(Open Circuit Voltage)を示す。符号81は、組電池20の内部抵抗が低下した際の電圧変動が小さくなる領域を示す。符号82は、組電池20の内部抵抗が大きいときの電圧変動が大きくなる領域を示す。符号83は、組電池20の内部抵抗が大きいときの電圧変動が大きくなる領域を示す。また、符号82は充電側を示し、符号83は充電側を示す。
【0048】
組電池20の通電可能電流は、式2~式3で表される。式2の電流と式3の電流のうち、値が小さい方の電流が通電可能電流となる。
I=(VU-OCV)÷R・・・(2)
I=(OCV-VL)÷R・・・・(3)
ここで、VUは組電池20の上限電圧を示し、VLは組電池20の下限電圧を示す。
【0049】
次に図7のフローチャートを参照して第2実施形態に係る制御装置70の一動作例を説明する。図7に示す処理は、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0050】
ステップS201に示す処理は図4のステップS101に示す処理と同じであるため説明を省略する。
【0051】
ステップS202において、制御装置70は、組電池20の温度が第2所定温度以上か否かを判定する。ここでいう第2所定温度の一例は、図5で説明した16度である。第2と表現した理由は、上述の所定温度と区別するためである。したがって、上述の所定温度は、第1所定温度と表現されてもよい。ステップS202の処理がNOである場合、すなわち、組電池20の温度が第2所定温度より低い場合、処理はステップS204に進み、制御装置70は中間端子Bに交流電流を流す。上述したように組電池20の温度が16度付近に上昇するまでは中間端子Bに交流電流を流したほうが直流電流を流すよりも昇温性能が高いからである。その後、組電池20の温度が上昇して第2所定温度以上になった場合、すなわち、ステップS202の処理がYESである場合、処理はステップS203に進み、制御装置70は中間端子Bに流す電流を交流電流から直流電流に切り替える。上述したように組電池20の温度が16度付近に上昇した後は中間端子Bに直流電流を流したほうが交流電流を流すよりも昇温性能が高いからである。なお、「昇温性能が高い」とは、発熱量が大きいと表現されてもよい。交流電流から直流電流への切り替えは、上アームスイッチQUH,QVH,QWH及び下アームスイッチQUL,QVL,QWLのスイッチング制御により実現する。
【0052】
処理はステップS205に進み、制御装置70は第1蓄電池21の残容量(SOC)と第2蓄電池22の残容量(SOC)を取得する。制御装置70は取得したSOCの差分(以下「SOC差」と呼ぶ)を算出し、SOC差が所定容量以上か否か判定する。本実施形態において「SOC差が所定容量以上」とは、昇温に用いられる電流(中間端子Bに流す電流)が第1蓄電池21、第2蓄電池22のどちらか一方に流れ、SOCに偏りが生じていることを意味する。SOCに偏りが生じてしまうと少ない方のSOCが枯渇し、車両の航続距離が低下するおそれがある。そこで、制御装置70がSOC差は所定容量以上であると判定した場合、すなわち、ステップS205の処理がYESである場合、処理はステップS206に進み、制御装置70は接続経路60に流す直流電流の符号を反転させる。換言すれば制御装置70は接続経路60に流す直流電流の向きを変更する。例えば、SOC差が所定容量になるまでは第1蓄電池21に直流電流を流していたとする。SOC差が所定容量に到達し、これ以上第1蓄電池21に直流電流を流すと、SOCに偏りが生じる。そこで、SOC差が所定容量以上であるとき、制御装置70は直流電流の向きを変更して第1蓄電池21に流していた直流電流を第2蓄電池22に流す。なお、ステップS205における所定容量は実験、シミュレーションなどを通じて求めることができる。
【0053】
図7のフローチャートでは、中間端子Bに流す電流を交流電流から直流電流に切り替えるために用いる判定パラメータとして組電池20の温度を採用したがこれに限定されない。上述したように、組電池20の温度は、組電池20の発熱量、組電池20の内部抵抗と相関する。したがって、制御装置70は、組電池20の発熱量が所定の発熱量以下であるときに中間端子Bに流す電流を交流電流から直流電流に切り替えてもよく、組電池20の内部抵抗が所定の内部抵抗以下であるときに中間端子Bに流す電流を交流電流から直流電流に切り替えてもよい。
【0054】
以上詳述した第2実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0055】
制御装置70は、監視ユニット50から取得した判定パラメータに基づいて、スイッチング制御により接続経路60に流す電流を交流電流及び直流電流のうち一方から他方に切り替える。ここでいう判定パラメータには、組電池20の温度、発熱量、及び内部抵抗が含まれる。例えば判定パラメータが組電池20の温度である場合、制御装置70は、組電池20の温度が上昇して第2所定温度以上になったとき、中間端子Bに流す電流を交流電流から直流電流に切り替える。組電池20の温度が第2所定温度以上であるとき、中間端子Bに直流電流を流したほうが交流電流を流すよりも発熱量が大きいからである。組電池20の温度が上昇して昇温性能が低下するシーンにおいて、この切り替えにより発熱量が大きくなり昇温性能が向上する。これにより、組電池20の温度が目標温度に到達するまでに要する時間が短縮され、ひいては充電時間の短縮に貢献する。
【0056】
制御装置70は、第1蓄電池21及び第2蓄電池22の残容量(SOC)の差に基づいて接続経路60に流す直流電流の向きを変更してもよい。具体的には、制御装置70は、接続経路60に直流電流を流すようにスイッチング制御を行っている場合において、第1蓄電池21及び第2蓄電池22の残容量の差が所定容量以上になったか否かを判定する。制御装置70は、残容量の差が所定容量以上になったと判定したとき、第1蓄電池21及び第2蓄電池22のうち、残容量が大きい方の蓄電池から接続経路60を介して残容量が小さい方の蓄電池に直流電流が流れるように、直流電流が流れる向きを変更してもよい。一方の蓄電池に直流電流を流し続けると他方の蓄電池との残容量に差が生じてしまう。残容量に差が生じると車両の航続距離が低下するおそれがある。上記構成によれば、残容量の偏りを解消することができ、航続距離の低下抑制に貢献する。
【0057】
(第3実施形態)
次に図8のフローチャートを参照して、第3実施形態に係る方策を説明する。第3実施形態に係る方策は、第1実施形態に係る方策と第2実施形態に係る方策を組み合わせたものである。図8に示す処理は、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0058】
ステップS301~S303、S305~S306に示す処理は、図7のステップS201~S203、S205~S206に示す処理と同じであるため説明を省略する。
【0059】
ステップS304において、制御装置70は中間端子Bに交流電流を流す際に、交流電流の周波数を低くしたり、交流電流の振幅を大きくしたりする。これにより、組電池20の温度が16度付近(図5参照)に到達するまでに要する時間が短縮される。そして、組電池20の温度が16度付近に到達した後、制御装置70は中間端子Bに流す電流を交流電流から直流電流に切り替える。これにより、16度以降の昇温性能が向上する。このように第3実施形態によれば組電池20の温度が目標温度に到達するまでに要する時間が短縮され、ひいては充電時間の短縮に貢献する。
【0060】
(第4実施形態)
次に図9~10を参照して第4実施形態に係る電力変換装置10について説明する。第1~3実施形態では、組電池20の温度が上昇した場合であっても組電池20の昇温性能を向上させることが可能な方策について説明した。第4実施形態は、組電池20の保護に関する。
【0061】
上述では、組電池20の温度が30度付近であれば充電効率が高いと説明したが、組電池20の温度が30度を超えてくると、組電池20に悪影響を及ぼす可能性がある。悪影響の一例として組電池20の劣化が挙げられる。そこで、組電池20の劣化を抑制することが求められる。
【0062】
図9は、第4実施形態に係る制御装置70の一動作例を説明するフローチャートである。図9に示す処理は、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0063】
ステップS401において、制御装置70は、組電池20(第1蓄電池21及び第2蓄電池22)の保護要求があるか否かを判定する。ここでいう保護要求とは、組電池20の劣化を抑制するための要求を意味する。保護要求があるか否かについて、システムからの自発的な指示に基づいて判定されてもよく、ユーザからの入力指示に基づいて判定されてもよい。システムは一例として組電池20のSOH(State Of Health)が所定値以下である場合に保護要求を指示してもよい。SOHとは新品の電池の満容量に対する現在の電池の満容量の比率であり、健全状態、劣化状態などと呼ばれることもある。「ユーザからの入力指示」とは、例えば、組電池20を保護するためのスイッチをユーザが操作することによって発生する指示をいう。このようなスイッチは、一例として車内に設けられる。ステップS401の処理がYESである場合、すなわち、制御装置70が保護要求があると判定した場合、処理はステップS402に進む。一方で、ステップS401の処理がNOである場合、すなわち、制御装置70が保護要求はないと判定した場合、制御装置70は処理を終了させる。なお、制御装置70が保護要求はないと判定した場合、処理は図4に示すステップS101、図7に示すステップS201、または図8に示すステップS301に進んでもよい。
【0064】
ステップS402において、制御装置70は、組電池20の温度が第3所定温度以上か否かを判定する。ここでいう第3所定温度には上述の目標温度が用いられてもよく、目標温度より高い温度が用いられてもよい。組電池20の温度が第3所定温度以上である場合、すなわち、ステップS402の処理がYESである場合、処理はステップS403に進む。一方、組電池20の温度が第3所定温度より低い場合、すなわち、ステップS402の処理がNOである場合、制御装置70は、一連の処理を終了させる。
【0065】
ステップS403において、制御装置70は、組電池20の温度が第3所定温度以上となる前と比較して中間端子Bに流す交流電流の周波数を高くする。ここで、図10を参照して交流電流の周波数を高周波化することにより、組電池20の劣化が抑制されるメカニズムについて説明する。図10に示すように、組電池20を構成する電気二重層部90は、抵抗91とコンデンサ92の並列回路で表される。抵抗91は温度依存性を有し、組電池20の温度が高温であるほどインピーダンスが小さくなる。そこで、組電池20の温度が高い領域において、常にコンデンサ92側に電流が流れるように制御装置70は交流電流の周波数を高くする。これにより、電流が抵抗91に流れることが抑制され、リチウム析出反応が抑制される。これにより、組電池20の劣化が抑制される。なお、組電池20の温度が第3所定温度以上となる領域では、組電池20の温度が高ければ高いほど制御装置70は交流電流の周波数を高くしてもよい。なお、「組電池20の温度が高い領域」とは組電池20の温度が第3所定温度以上である領域を意味する。
【0066】
以上詳述した第4実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0067】
制御装置70は、第1蓄電池21及び第2蓄電池22の保護要求があるか否かを判定する。この判定は、昇温要求があると判定された後に行われてもよい。制御装置70は、保護要求があると判定した場合、監視ユニット50によって取得された温度が第3所定温度以上であるか否かを判定する。制御装置70は、温度が第3所定温度以上であると判定した場合、温度が第3所定温度以上となる前と比較して、接続経路60を介して第1蓄電池21と第2蓄電池22との間に流す交流電流の周波数を高くする。これにより、電流が抵抗91に流れることが抑制され、リチウム析出反応が抑制される。これにより、組電池20の劣化が抑制される。
【0068】
(その他の実施形態)
・上述の実施形態では、インバータ30及び回転電機40の相数として3相のものを説明したが、相数はこれに限定されない。例えば図11に示すように相数は5相でもよいし、7相でもよい。図11では、インバータ30において、X相上,下アームスイッチQXH,QXL及び各ダイオードDXH,DXLが追加され、Y相上,下アームスイッチQYH,QYL及び各ダイオードDYH,DYLが追加されている。また、回転電機40において、X相巻線41XとY相巻線41Yとが追加されている。また、電力変換装置10において、X相導電部材32XとY相導電部材32Yとが追加されている。
【0069】
図6の符号81に示すように、組電池20の温度が上昇し組電池20の内部抵抗が低下する場面では電圧変動が小さくなる。組電池20の内部抵抗と組電池20の電圧変動には相関がある。そこで、制御装置70は電圧変動が小さくなるときの電圧を用いて中間端子Bに流す交流電流の周波数を低くしたり、中間端子Bに流す交流電流の振幅を大きくしてもよい。組電池20の電圧を制御用の判定パラメータとして用いた場合であっても、温度、発熱量、または内部抵抗を用いた場合と同様の効果が得られる。
【0070】
・第1蓄電池21及び第2蓄電池22は、2次電池で構成されるものと説明したがこれに限定されず、キャパシタで構成されてもよい。
【0071】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10…電力変換装置、21…第1蓄電池、22…第2蓄電池、30…インバータ、U,V,W相上アームスイッチ…QUH,QVH,QWH、U,V,W相下アームスイッチ…QUL,QVL,QWL、40…回転電機、U,V,W相巻線…41U,41V,41W、50…監視ユニット、60…接続経路、70…制御装置、O…中性点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11