IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イムトリクス セラピューティクス、インコーポレイテッドの特許一覧

特開2024-37965気孔率が調整された材料ならびにその作製および使用方法
<>
  • 特開-気孔率が調整された材料ならびにその作製および使用方法 図1
  • 特開-気孔率が調整された材料ならびにその作製および使用方法 図2
  • 特開-気孔率が調整された材料ならびにその作製および使用方法 図3
  • 特開-気孔率が調整された材料ならびにその作製および使用方法 図4A
  • 特開-気孔率が調整された材料ならびにその作製および使用方法 図4B
  • 特開-気孔率が調整された材料ならびにその作製および使用方法 図4C
  • 特開-気孔率が調整された材料ならびにその作製および使用方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037965
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】気孔率が調整された材料ならびにその作製および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/00 20170101AFI20240312BHJP
   B01J 20/20 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
C01B32/00
B01J20/20 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023213962
(22)【出願日】2023-12-19
(62)【分割の表示】P 2020533783の分割
【原出願日】2018-12-19
(31)【優先権主張番号】62/607,432
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/673,573
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520170715
【氏名又は名称】イムトリクス セラピューティクス、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コジンチェンコ、オレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ディアス - オーノン、ホセ エイ.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】気孔率を調整することができる、樹脂から誘導された炭素質材料、およびそれから形成された吸着剤またはフィルムを提供する。
【解決手段】複数の細孔を有する炭素質材料であって、細孔サイズ(p)が下限(a)から上限(z)の範囲であり、炭素質材料のかさ密度(σ)が下限(b)から上限(y)の範囲であり、(y-b)/(z-a)として定義される比較変動性(g)が1未満であり、ここで(a)が約10nmであり、(z)が約5000nmであり、(b)が約0.06g/mlであり、(y)が約0.15g/mlであり、かつ、相互接続された細孔組織を保持することにより該炭素質材料上の活性部位へのアクセスが妨害されない、炭素質材料である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔サイズ(p)が下限(a)から上限(z)の範囲であり、かさ密度(σ)が下限(b)から上限(y)の範囲であり、(y-b)/(z-a)として定義される比較変動性(g)が1未満である、炭素質材料。
【請求項2】
細孔サイズが約10nm~約5000nmの範囲であり、かさ密度が0.06g/ml~0.15g/mlの範囲である、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
細孔サイズが約20nm~約300nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲である、請求項1に記載の材料。
【請求項4】
細孔サイズが約50nm~約150nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲である、請求項1に記載の材料。
【請求項5】
細孔サイズが約10nm~約500nmの範囲であり、粒子内密度が約2%~約25%の範囲である高オルトフェノール樹脂を含む重縮合樹脂。
【請求項6】
細孔サイズが約25nm~約300nmであり、粒子内気孔率が約5%~約20%の範囲である、請求項5に記載の樹脂。
【請求項7】
細孔サイズが約50nm~約150nmであり、粒子内気孔率が約8%~約15%の範囲である、請求項5に記載の樹脂。
【請求項8】
請求項5に記載の前記材料を含むキレート剤。
【請求項9】
細孔サイズ(p)が下限(a)から上限(z)の範囲であり、かさ密度(σ)が下限(b)から上限(y)の範囲であり、(y-b)/(z-a)として定義される比較変動性(g)が1×10-3未満である、炭素質材料。
【請求項10】
細孔サイズが約10nm~約5000nmの範囲であり、かさ密度が0.06g/ml~0.15g/mlの範囲である、請求項9に記載の材料。
【請求項11】
細孔サイズが約20nm~約300nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲である、請求項9に記載の材料。
【請求項12】
細孔サイズが約50nm~約150nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲である、請求項9に記載の材料。
【請求項13】
請求項12に記載の前記炭素質材料を含む吸着剤。
【請求項14】
請求項9に記載の前記炭素質材料を含む吸着剤。
【請求項15】
請求項9に記載の前記炭素質材料を含むフィルム。
【請求項16】
細孔サイズ(p)が下限(a)から上限(z)の範囲であり、かさ密度(σ)が下限(b)から上限(y)の範囲であり、(y-b)/(z-a)として定義される比較変動性(g)が1×10-5未満である、炭素質材料。
【請求項17】
細孔サイズが約10nm~約5000nmの範囲であり、かさ密度が0.06g/ml~0.15g/mlの範囲である、請求項16に記載の材料。
【請求項18】
細孔サイズが約20nm~約300nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲である、請求項16に記載の材料。
【請求項19】
細孔サイズが約50nm~約150nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲である、請求項16に記載の材料。
【請求項20】
請求項16に記載の前記炭素質材料を含む吸着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2017年12月19日に出願され、「気孔率が調整された重縮合樹脂ならびにその作製および使用方法」というタイトルの米国仮出願整理番号62/607,432、および2018年5月18日に出願され、「硬化フェノール樹脂および誘導された炭素材料の輸送気孔率を調整するための新規の方法」というタイトルの米国仮出願整理番号62/673,573の優先権を主張し、その全体を引用することによって本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本開示は、新規な樹脂材料ならびにその作製および使用方法に関する。より具体的には、本開示は、重縮合樹脂材料、重縮合樹脂材料の調製、重縮合樹脂材料から誘導された炭素質材料、およびそれらの使用および作製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多孔性フェノール樹脂は、現在、AMBERLITE XAD761(DOW CHEMICAL、ROHM&HAAS)などの商標名で吸着剤として製造および使用されている。同様の材料は、現在廃止されており、ROHM&HAASによってDUOLITE XAD761、DUOLITE S37、およびDUOLITE S58として製造されている。
【0004】
強酸性陽イオン交換樹脂は、フェノール樹脂のスルホン化によって調製できる。その後、スルホン化多孔性フェノール樹脂から誘導された陽イオン交換樹脂は、DOW CHEMICALのAMBERLITE IR100、AMBERLITE IR105、ARC9353、ARC9359、ARC9360のDUOLITEのファミリー、ROHM&HAASのC10、C3ZEROLIT 215、ソ連のKU1、LANXESSのLEWATIT DNおよびLEWATIT KSN、BAYERのWOFATITファミリー-F、F2S、F4S、FF2Sなどのさまざまな名前で多くの国で製造されている。現在、これらの製品は廃止されており、市場では主にポリスチレン-ジビニルベンゼンコポリマーから誘導された陽イオン交換体で置換されていた。
【0005】
弱塩基性陰イオン交換重縮合樹脂は、一級、二級、または三級アミノ基を重縮合樹脂マトリックスに導入することによって調製できる。そのような樹脂の例としては、現在製造されているDOW CHEMICALのAMBERLYST A23が挙げられ、一方、他のそのような樹脂としては、DOW CHEMICALのAMBERLITE IR4B、ROHM&HAASのDOULITEファミリー-A4F、A5、A561、A562、A568K、A569、A57、GPA327、LANXESSのIONAC A330が挙げられるが、すでに放棄されている。
【0006】
重縮合マトリックスの化学変性により、キレート基(例えば、イミノ二酢酸、ポリアミンなど)の導入が可能になり、選択性に優れた金属イオン捕捉剤が得られる。このような樹脂の例としては、UNITIKAのUNICELLEXファミリー-UR10、UR120H、UR20、UR30、UR3300、UR3700、UR3900、UR40、UR50が挙げられる。
【0007】
前述の材料の特定の不利な点は、それらの限られた内部気孔率およびそれらの顆粒の不規則な形状に起因し、開発中に関連する摩耗の問題を伴う。これらの不利な点は、典型的にバルク硬化とそれに続く粉砕によって製造されたフェノール系マトリックスに根本的に起因する可能性がある。
【0008】
細孔形成剤として高温沸騰溶媒が使用されている重縮合樹脂のバルク硬化および懸濁重縮合製造の両方で、ゾル-ゲルプロセスも適用されて、得られた樹脂ブロックまたはビーズの気孔率を調整する。たとえば、ノボラック-ヘキサミン-エチレングリコール反応系を使用すると、硬化前の溶液中の溶媒含有量が増加し、硬化した樹脂の細孔サイズと細孔容積も増加した。
【0009】
重縮合樹脂、および一人あるいは複数のユーザーおよび/または1つまたは複数のプロセスの目標を満たすように気孔率を調整することができるこれらの樹脂から誘導される炭素をもたらす継続的な必要性が存在する。
【発明の概要】
【0010】
いくつかの態様では、炭素質材料は、細孔サイズ(p)が下限(a)から上限(z)の範囲であり、かさ密度(σ)が下限(b)から上限(y)の範囲であり、(y-b)/(z-a)として定義される比較変動性(g)が1未満である。例えば、炭素質材料は、細孔サイズが約10nm~約5000nmの範囲であり、かさ密度が0.06g/ml~0.15g/mlの範囲であり、または細孔サイズが約20nm~約300nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲であり、または細孔サイズが約50nm~約150nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲であってもよい。
【0011】
いくつかの態様では、重縮合樹脂は、細孔サイズが約10nm~約500nmの範囲であり、粒子内密度が約2%~約25%の範囲である高オルトフェノール樹脂を含む。例えば、重縮合樹脂は、細孔サイズが約25nm~約300nmであり、粒子内気孔率が約5%~約20%の範囲であり、または細孔サイズが約50nm~約150nmであり、粒子内気孔率が約8%~約15%の範囲であり得る。いくつかの態様では、重縮合樹脂はキレート剤を含み得る。
【0012】
いくつかの態様では、炭素質材料は、細孔サイズ(p)が下限(a)から上限(z)の範囲であり、かさ密度(σ)が下限(b)から上限(y)の範囲であり、(y-b)/(z-a)として定義される比較変動性(g)が1×10-3未満である。例えば、炭素質材料は、細孔サイズが約10nm~約5000nmの範囲であり、かさ密度が0.06g/ml~0.15g/mlの範囲であり、または細孔サイズが約20nm~約300nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲であり、または細孔サイズが約50nm~約150nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲であり得る。炭素質材料は、吸着剤またはフィルムを含み得る。
【0013】
いくつかの態様では、炭素質材料は、細孔サイズ(p)が下限(a)から上限(z)の範囲であり、かさ密度(σ)が下限(b)から上限(y)の範囲であり、(y-b)/(z-a)として定義される比較変動性(g)が1×10-5未満である。例えば、炭素質材料は、細孔サイズが約10nm~約5000nmの範囲であり、かさ密度が0.06g/ml~0.15g/mlの範囲であり、または細孔サイズが約20nm~約300nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲であり、または細孔サイズが約50nm~約150nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲であり得る。炭素質材料は吸着剤を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】硬化樹脂の気孔率に対する細孔形成剤の組成変化の影響を説明する。
【0015】
図2】硬化した樹脂の細孔形成剤の組成変化の、誘導される炭素の気孔率に及ぼす影響を説明する。
【0016】
図3】炭素材料と樹脂の両方の樹脂組成物におけるエチレングリコールの割合の関数としての細孔サイズと体積の重ね合わせたプロットである。
【0017】
図4A】対応する炭素-AFM画像の組織に対する図2からの変化の影響を説明するAFM画像である。
図4B】対応する炭素-AFM画像の組織に対する図2からの変化の影響を説明するAFM画像である。
図4C】対応する炭素-AFM画像の組織に対する図2からの変化の影響を説明するAFM画像である。
【0018】
図5】高マクロ多孔性炭素ビーズの内部組織とその外部表面のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書に開示されるのは、重縮合樹脂、およびそれから誘導され、気孔率が調整された炭素質材料である。本明細書では、気孔率は主に細孔サイズを指す。一態様では、本明細書に開示されるタイプの材料は、細孔サイズが約10nm~約5000nm、あるいは約100nm~約2500nm、あるいは約200nm~約1000nmの範囲であるように調整され得る。いくつかの態様では、本明細書で開示される気孔率が調整された樹脂(TPR)は、ランダムに配向された前駆体材料から誘導され、R-TPR(ランダム)と示される。別の態様では、本明細書に開示される気孔率が調整された樹脂(TPR)は、高オルト前駆体材料から誘導され、HO-TPRと示される。
【0020】
一態様では、本明細書に開示されるタイプの樹脂(すなわち、TPR)およびそれらの誘導される炭素材料は、独立して変化し得る細孔サイズおよび細孔容積を示す。一態様では、細孔サイズは、水銀圧入細孔測定法を利用して求められ、約10nmから約5000nmを超える範囲の細孔サイズを求める。このような態様では、対応する細孔容積の値は、圧入した水銀の比容積として推定されている。代替または補足的な態様では、表面積の値がBETモデルで一貫しているが約1.5nm~約80nmの細孔サイズ範囲にのみ適用できると仮定すると、適切な温度(例えば、-195.8℃)で窒素吸着/脱着細孔測定法を使用して細孔サイズを求め得る。
【0021】
一態様では、TPRおよびそれから誘導される炭素は、気孔率が約10nm~約5000nm、あるいは約100nm~約1000nm、あるいは約200nm~約800nmの範囲であるように調整され得、かさ密度の付随する変化が約50%未満、あるいは約45%未満、あるいは約40%未満、あるいは約35%未満、あるいは約30%未満、あるいは約25%未満、あるいは20%未満、あるいは約15%未満、あるいは約10%未満であることをさらに特徴とし得る。一態様では、TPRおよびそれから誘導される炭素は、気孔率が約10nm~約5000nm、あるいは約100nm~約1000nm、あるいは約200nm~約800nmの範囲に調整され得、細孔容積の付随する変化が約50%未満、あるいは約45%未満、あるいは約40%未満、あるいは約35%未満、あるいは約30%未満、あるいは約25%未満、あるいは約20%未満、あるいは約15%未満、あるいは約10%未満であることをさらに特徴とし得る。
【0022】
理論に制限されることを望まないが、本明細書に開示されるタイプのTPRおよびそれから誘導される炭素は、独特で、正確にカスタム調整された構造を特徴とする。さらに、本開示のTPRは、炭化後にそれらの相互接続された細孔組織を保持し、したがって材料上の活性部位(例えば、吸着、触媒、イオン交換またはキレート部位)へのアクセスが妨害されない炭素質材料をもたらす構造化材料を表す。
【0023】
本明細書では、重縮合樹脂は、そのマトリックス中にプロトン発生(サリチル酸などの変性剤からのフェノール性ヒドロキシル基またはカルボン酸基)またはプロトン受容(芳香族またはヘテロ芳香族アミンなどの変性剤からのアミノ基)基を有するが、さらなるイオン交換および/またはキレート部位は、任意の適切な方法によって導入されることが可能であることが予期される。これらには、スルホン化、クロロメチル化、それに続くアミノ化等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本開示の多孔性重縮合樹脂は、任意の適切な方法(例えば、炭化)によって、樹脂前駆体からそれらのメソ/マクロ多孔性を受け継ぐ多孔性炭素に容易に変換されることが可能である。一態様では、本明細書に開示されるタイプのTPRから誘導される炭素質材料は、表面積が約200m/g~約2000m/g、あるいは約500m/g~約1500m/g、あるいは約500m/g~約1000m/gの範囲であることを特徴とする。理論に制限されることを望まないが、本開示の炭化材料は、少なくとも部分的に、炭化の過程で現れるナノ細孔(直径が2nm未満の細孔)により、より大きな表面積を示し得る。一態様では、本明細書に開示されるタイプのTPRから誘導される炭素質材料は、さらなる処理によって表面積が変更され得、例えば、表面積は、活性化によって増加され得る。
【0025】
一態様では、本明細書に開示されるタイプのTPRを調製する方法は、重縮合プロセスを含む。代替の態様では、本明細書に開示されるタイプのTPRを調製する方法は、重縮合プロセスからなるか、または本質的にそれからなる。本開示の重縮合プロセスは、以下の主要な成分(i)求核成分(その非限定的な例としては、変性求核アミン(例えば、アニリン、フェニレンジアミン、アミノフェノール、メラミン)が添加された、または添加されていない-ノボラックフェノール-ホルムアルデヒド直鎖プレポリマーが挙げられる)、二価フェノール、フェノールカルボン酸(限定されないが、サリチル酸や5-レゾルシロールカルボン酸など)、および複数の求核部位を有する他の化合物;(ii)架橋求電子成分、その非限定的な例としてはヘキサメチレンテトラミン(ヘキサミン)、またはホルムアルデヒドが挙げられる;(iii)溶媒/細孔形成剤、その非限定的な例としては、エチレングリコールが挙げられるが、変性添加剤(限定されないが、水やポリオールなど)を含んでいても含んでいなくてもよい;および(iv)溶解度変性剤、その非限定的な例としては、限定されないが、水酸化ナトリウムまたは溶媒/細孔形成剤に可溶な他のアルカリ剤が挙げられる、を伴う。
【0026】
一態様では、直鎖フェノール-ホルムアルデヒドプレポリマーノボラックは、重縮合反応組成物の主要な求核成分を含む。代替の態様では、重縮合反応組成物の主要な求核成分は、直鎖フェノール-ホルムアルデヒドプレポリマーノボラックから本質的になる。別の態様では、重縮合反応組成物の主要な求核成分は、直鎖フェノール-ホルムアルデヒドプレポリマーノボラックからなる。
【0027】
当業者によって理解されるように、2つのタイプの工業的に製造されたフェノール-ホルムアルデヒドノボラックがある。これらの材料の最も一般的なものは、標準的な有機命名法を使用したo,o-、o,p-、およびp,p-置換変異体を含む異なる平均分子量を有するランダム置換ノボラックであり、oはオルト位置を指し、pはパラ位置を指す。m-位置への置換を伴う構造は実質的に存在しない。しかし、ランダム置換ノボラックは、平均分子量が約330g/molであることを特徴とし、NMR13C-調査によって測定するように、p,p’-が約24%、o,p-が約49%、o,o’-置換が約28%である。対照的に、高いo,o’-置換ノボラックは、平均分子量が約470g/molであることを特徴とし、p,p’-が約1%、o,p-が約37%、o,o’-置換が約59%である。理論に制限されることを望まないが、o,o’-置換の比率が高いと、テトラマーと高次オリゴマーを自己組織化して、均一に配向したフェノール性ヒドロキシ基間の水素結合によって安定化された準環状構造にすることが可能である。これらの規則配列構造は、硬化ゾル-ゲルプロセスに耐え、メソ/マクロ多孔性重縮合樹脂にキレート部位をもたらすと考えられる。これらの部位は、アルカリおよびアルカリ土類金属イオンと非常に安定した錯体を形成するクラウン-エーテルを想起させる。それらの一部は、また、イオンサイズ選択性が高い。再び、理論に制限されることを望まないが、そのような規則配列構造を形成することによって、硬化樹脂マトリックスが安定化し得、そのガラス転移温度Tは、大量の細孔形成剤のエチレングリコールの存在下でも、分解温度範囲(例えば、350℃~400℃)よりも高いままである。全く対照的に、硬化ランダム置換ノボラックの場合、加熱によるガラス転移のために、多孔性組織の崩壊を防ぐために、炭化の前に大量のエチレングリコールの除去が行われる。本開示の一態様では、TPRは、一価または二価の陽イオンを選択的に結合することができるキレート剤である。例えば、TPRは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を選択的に結合し得る。そのような例では、TPRは、形成定数Kがキレート化された陽イオンに応じて約1×10~約1×1015、あるいは約1×10~約1×1012、あるいは約1×10~約1×1010の範囲であるキレート剤として機能し得る。
【0028】
本開示のいくつかの態様では、ホルムアルデヒドまたはその類似体との重縮合が可能な他の求核変性剤は、(i)多孔性マトリックス(例えば、芳香族およびヘテロ芳香族アミン、ヒドロキシ置換芳香族カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ボロン酸)にさらなるイオン交換基を導入して気孔率を変更する(例えば、尿素、メラミン)ために、または(ii)ヘテロ原子(例えば、窒素、リン、ホウ素)をTPRまたはそれから導入される炭素のマトリックスに導入するために、本開示の材料の製造においてノボラックと一緒に使用される。
【0029】
いくつかの態様では、窒素含有官能基は、ヘキサメチレンテトラミン(ヘキサミン)または尿素およびメラミンの可溶性ポリメチロール誘導体などの架橋剤を介して本開示の材料に導入される。当業者によって理解されるように、架橋フェノール-ホルムアルデヒドネットワークを形成するためにフェノール分子の3つすべての反応性位置の置換に必要なホルムアルデヒドの化学量論的量は、フェノール1モル当たり1.5モルである。理論に制限されることを望まないが、機構的に、フェノール1モルあたり約0.7モルのホルムアルデヒドを直鎖ノボラックプレポリマーの調製に使用し得、一方、さらなる0.5~0.8モルのホルムアルデヒドまたはそのシントンまたは合成同等物を材料の化学量論的架橋に使用可能である。一般的な慣習では、過剰量の架橋剤が使用される。本開示は、過剰の架橋剤の使用を予期する。ヘキサミンは、例えば、約10から約30重量部~約100重量部のノボラックの範囲の量で添加して、固体の架橋多孔性樹脂を生成し得るが、理論量は、ノボラックの種類にもよるが、約14~約16重量部の範囲である。このような組成が変化すると、得られる樹脂の多孔性構造および樹脂が膨潤する能力などの他のパラメーターを変化することが可能である。架橋剤を過剰に使用すると、対応する樹脂(すなわち、TPR)から導入される多孔性炭素の炭素マトリックスの反応性が影響を受ける可能性もある。
【0030】
本開示の重縮合樹脂の気孔率は、高温、例えば、約40℃~約200℃、あるいは約50℃~約175℃、あるいは、約70℃~約150℃で生じる架橋樹脂領域の着実な成長の過程で発達する。理論にとらわれることなく、高温時に、ある段階で、樹脂リッチ相(まだいくらかの溶媒を含む)と、いくらかの直鎖または部分的架橋ポリマーおよび硬化剤をまだ含む溶媒リッチ相とのナノスケールの相分離が起こり、細孔の相互浸透ネットワークが形成されることが予期される。典型的に、この時点で、液状重縮合樹脂溶液は固体になる(ゾル-ゲル転移)。さらに、最初に形成されたベンゾオキサジンおよびベンジルアミン架橋構造の異なる転移(ヘキサミンが硬化剤である場合)が、溶液リッチ相から部分硬化ポリマーを犠牲にして、樹脂領域のさらなる成長とともに起こると予期される。さらに加熱すると、気体のアンモニアとアミンが発生し、樹脂が半透明から不透明に変わる。
【0031】
驚くべきことに、最近発見され、本明細書に開示されているように、比較的わずかの溶媒/細孔形成剤(例えば、エチレングリコール)を水で置換することによって、細孔容積が著しく変化することなく、細孔サイズが著しく増加する。
【0032】
重縮合樹脂の気孔率を調整する他の新規な方法は、反応組成物に微量のアルカリ剤(例えば、水酸化ナトリウム)を添加することによる重縮合樹脂の溶解度の変化に依存する。驚くべき有利な態様では、アルカリ材料を利用した場合、触媒活性は観察されなかったが、そのような材料はフェノールの重縮合反応における触媒として以前に利用されていた。
【0033】
本開示の一態様では、TPRおよび誘導された炭素質材料は、任意のユーザー所望の、またはプロセス所望の形状に形成され得る。非限定的な例では、TPRおよび誘導された炭素質材料は、ブロックまたはモノリスに形成される。他の非限定的な例では、TPRおよび誘導された炭素質材料をビーズに形成する。そのような例では、平均ビーズは、約5μm~約2000μm、あるいは約50μm~約1000μm、あるいは約250μm~約750μmの範囲であり得る。
【0034】
一態様では、本明細書に開示されているタイプのTPRから導入される炭素質材料は、狭い粒子サイズ分布、例えば、約10を超える、あるいは約8を超える、あるいは約5を超えるD90/D10で生成される。
【0035】
一態様では、本明細書に開示されるタイプのTPRは、細孔サイズ(p)が下限(a)から上限(z)の範囲であり、かさ密度(σ)が下限(b)から上限(y)の範囲であり、(y-b)/(z-a)として定義される比較変動性(g)が1未満、あるいは1×10-2未満、あるいは1×10-3未満、あるいは1×10-5未満である炭素質材料を形成するために使用される。そのような態様では、aは、約10nm~約1000nm、あるいは約10nm~約750nm、あるいは約50nm~約500nmの値であり得る。zは、約500nm~約5000nm、あるいは約1000nm~約4000nm、あるいは約1500nm~約3000nmの値であり得る。bは、約0.05~約0.2、あるいは約0.08~約0.2、あるいは約0.1~約0.2の範囲の値であり得、yは、約0.1~約0.4、あるいは約0.15~約0.4、あるいは約0.2~約0.4の範囲の値であり得る。
【0036】
ある態様では、TPRは、細孔サイズが約10nm~約500nmの範囲であり、粒子内気孔率が約2%~約25%の範囲である。本明細書において、粒子内気孔率は、空隙容積と材料密度との比を指し、水銀細孔測定法データから誘導することができる。代替の態様では、TPRは、細孔サイズが約25nm~約300nmの範囲であり、粒子内気孔率が約5%~約20%の範囲であり、あるいは細孔サイズが約50nm~約150nmの範囲であり、粒子内気孔率が約8%~約15%の範囲である。一態様では、本明細書に開示されているタイプのTPRから誘導される炭素質材料は、細孔サイズが約10nm~約5000nmの範囲であり、かさ密度が約0.06g/ml~約0.15g/mlの範囲であり、あるいは細孔サイズが約20nm~約300nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲であり、あるいは細孔サイズが約50nm~約150nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲である。
【0037】
本明細書に開示されるタイプのTPRおよびそれから誘導される炭素質材料は、多種多様な用途で利用され得る。一態様では、TPRおよびそれから誘導される炭素質材料をさらに処理して、限定されないが、例えば、全血、血漿、尿および脳脊髄液などの体液からの1つ以上の標的分子の除去をもたらす医療グレードの吸着剤が得られる。そのような態様では、標的分子は、炎症性メディエーター(例えば、サイトカイン)、細胞内シグナル伝達分子またはタンパク質であり得る。代替の態様では、TPRおよびそれから誘導される炭素質材料は、触媒担体などの担体材料として利用される。さらに他の態様では、TPRおよびそれから誘導される炭素質材料は、さらに処理(例えば、酸化)され、酸化剤(例えば、過酸化水素)の生成のための触媒として機能を果たし得、または1つ以上の分子の酸化を触媒し得る。他の態様では、TPRおよびそれから誘導される炭素質材料は、装置の構造的、熱的、または機械的特性を向上させるように作られた1つまたは複数の物品の部品としての有用性を見出し得る。
【0038】
以下に、本明細書に開示される主題のさらなるおよび/または代替の態様を説明する。
【0039】
例えば、第1の態様は、細孔サイズ(p)が下限(a)から上限(z)の範囲であり、かさ密度(σ)が下限(b)から上限(y)の範囲であり、(y-b)/(z-a)として定義される比較変動性(g)が1未満である炭素質材料である。
【0040】
第2の態様は、細孔サイズが約10nm~約5000nmの範囲であり、かさ密度が0.06g/ml~0.15g/mlの範囲である第1の態様の材料である。
【0041】
第3の態様は、細孔サイズが約20nm~約300nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲である第1および第2の態様のうちの1つの材料である。
【0042】
第4の態様は、細孔サイズが約50nm~約150nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲である第1~第3の態様のうちの1つの材料である。
【0043】
第5の態様は、細孔サイズが約10nm~約500nmの範囲であり、粒子内密度が約2%~約25%の範囲である高オルトフェノール樹脂を含む重縮合樹脂である。
【0044】
第6の態様は、細孔サイズが約25nm~約300nmであり、粒子内気孔率が約5%~約20%の範囲である第5の態様の樹脂である。
【0045】
第7の態様は、細孔サイズが約50nm~約150nmであり、粒子内気孔率が約8%~約15%の範囲である第5および第6の態様のうちの1つの樹脂である。
【0046】
第8の態様は、第5~第7の態様のうちの1つの材料を含むキレート剤である。
【0047】
第9の態様は、細孔サイズ(p)が下限(a)から上限(z)の範囲であり、かさ密度(σ)が下限(b)から上限(y)の範囲であり、(y-b)/(z-a)として定義される比較変動性(g)が1×10-3未満である炭素質材料である。
【0048】
第10の態様は、細孔サイズが約10nm~約5000nmの範囲であり、かさ密度が0.06g/ml~0.15g/mlの範囲である第9の態様の材料である。
【0049】
第11の態様は、細孔サイズが約20nm~約300nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲である第9および第10の態様のうちの1つの材料である。
【0050】
第12の態様は、細孔サイズが約50nm~約150nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲である第9~第11の態様のうちの1つの材料である。
【0051】
第13の態様は、第9~第12の態様のうちの1つの炭素質材料を含む吸着剤である。
【0052】
第14の態様は、第9~第13の態様のうちの1つの炭素質材料を含む吸着剤である。
【0053】
第15の態様は、第9~第14の態様のうちの1つの炭素質材料を含むフィルムである。
【0054】
第16の態様は、細孔サイズ(p)が下限(a)から上限(z)の範囲であり、かさ密度(σ)が下限(b)から上限(y)の範囲であり、(y-b)/(z-a)として定義される比較変動性(g)が1×10-5未満である炭素質材料である。
【0055】
第17の態様は、細孔サイズが約10nm~約5000nmの範囲であり、かさ密度が0.06g/ml~0.15g/mlの範囲である第16の実施形態の材料である。
【0056】
第18の態様は、細孔サイズが約20nm~約300nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲である第16および第17の態様のうちの1つの材料である。
【0057】
第19の態様は、細孔サイズが約50nm~約150nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲である第16~第18の態様のうちの1つの材料である。
【0058】
第20の態様は、第16~第19の態様のうちの1つの炭素質材料を含む吸着剤である。
【0059】
本明細書に開示されている材料を利用するためのさらなるモードは、この開示の恩恵があれば当業者には明らかであろう。
【0060】

本開示の主題を概して説明してきたが、以下の例は、本開示の特定の態様として与えられ、その実施および利点を示す。これらの例は、例として与えられ、明細書または特許請求の範囲をいかようにも制限することを意図していないことが理解されよう。
【0061】
以下の例は、異なる配合の硬化樹脂ビーズの調製の詳細をもたらし、比較方法(例1、4、5、6、7)および本開示の方法の両方を説明する。例1~10の樹脂(すなわち、炭素質材料)から誘導された炭化ビーズは、例1-1、2-1などの系を利用して指定される。
【0062】
例1
本明細書に開示されているタイプのTPRおよび炭素質材料を調製し、それらの特性を調査した。エチレングリコール135重量部にHO-ノボラック100重量部を含む熱溶液(85℃~90℃)を、エチレングリコール135重量部にヘキサミン20重量部を含む熱溶液(85℃~90℃)と混合した。得られた熱樹脂溶液を、乾性油4重量部を含む撹拌された熱(145℃)鉱油2000重量部に注ぎ、エマルジョンを形成し、それをビーズに形成し、さらに加熱した。次に、スラリービーズを油から分離し、炭化した。
【0063】
例1-1
例1の樹脂ビーズを、二酸化炭素気流下で管状炉の浅いベッドトレイ内で炭化した。温度を200分間に20℃から800℃に上昇させ、その温度で30分間保持した。炭素ビーズを冷却した後、試験ふるいで分類し、250/500μmフラクションをさらに分析した。
【0064】
例2
本明細書に開示されているタイプのTPRおよび炭素質材料を調製し、それらの特性を調査した。エチレングリコール120重量部にHOノボラック100重量部を含む熱溶液(85℃~90℃)を、エチレングリコール123重量部および水27重量部にヘキサミン20重量部を含む熱溶液(85℃~90℃)と混合した。得られた熱樹脂溶液を、乾性油4重量部を含む撹拌された熱(135℃)鉱油2000重量部に注ぎ、エマルジョンを形成し、それをビーズに形成し、さらに加熱した。次に、スラリービーズを、さらに処理することなく、例1-1と同様に油から分離し、炭化した。例1と同様に分析サンプルを調製した。
【0065】
例2-1
例2の樹脂ビーズを、二酸化炭素気流下で管状炉の浅いベッドトレイ内で炭化した。温度を200分間に20℃から800℃に上昇させ、その温度で30分間保持した。炭素ビーズを冷却した後、試験ふるいで分類し、250/500μmフラクションをさらに分析した。
【0066】
例3
本明細書に開示されているタイプのTPRおよび炭素質材料を調製し、それらの特性を調査した。水酸化ナトリウム1.2重量部を含むエチレングリコール135重量部にHOノボラック100重量部を含む熱溶液(85℃~90℃)を、エチレングリコール135重量部にヘキサミン20重量部を含む熱溶液(85℃~90℃)と混合した。得られた熱樹脂溶液を、乾性油4重量部を含む撹拌された熱(135℃)鉱油2000重量部に注ぎ、エマルジョンを形成し、それをビーズに形成し、さらに加熱した。
【0067】
これらのビーズを熱(80℃~90℃)水で2回洗浄し(各回2000重量部)、空気中で自由流動状態になるまで乾燥した。分析サンプルを、プロパノール-2-オールによる抽出と真空乾燥によって調製した。
【0068】
例3-1
水洗した樹脂ビーズを例1-1および2-1と同様に炭化し、さらに処理したが、窒素気流下で熱処理を行った。
【0069】
例4
本明細書に開示されるタイプの炭素質材料を調製し、それらの特性を調査した。エチレングリコール90重量部にRノボラック100重量部を含む熱溶液(85℃~90℃)を、エチレングリコール90重量部にヘキサミン20重量部を含む熱溶液(85℃~90℃)と混合した。得られた熱樹脂溶液を、乾性油4重量部を含む撹拌された熱(140℃)鉱油2000重量部に注ぎ、エマルジョンを形成し、それをビーズに形成し、さらに加熱した。これらのビーズを熱(80℃~90℃)水で2回洗浄し(各回2000重量部)、空気中で自由流動状態になるまで乾燥した。分析サンプルを、プロパノール-2-オールによる抽出と真空乾燥によって調製した。
【0070】
例4-1
水洗した樹脂ビーズを、例1-1および2-1と同様に炭化し、さらに処理した。
【0071】
例5
本明細書に開示されているタイプのTPRおよび炭素質材料を調製し、それらの特性を調査した。エチレングリコール250重量部にRノボラック100重量部を含む熱溶液(85℃~90℃)を、エチレングリコール290重量部にヘキサミン20重量部を含む熱溶液(85℃~90℃)と混合した。得られた熱樹脂溶液を、乾性油4重量部を含む撹拌された熱(143℃)鉱油2000重量部に注ぎ、エマルジョンを形成し、それをビーズに形成し、さらに加熱した。冷却後、濾過または遠心分離のいずれかにより、スラリービーズを油から分離した。これらのビーズを熱(80℃~90℃)水で2回洗浄し(各回2000重量部)、空気中で自由流動状態になるまで乾燥した。分析サンプルを、プロパノール-2-オールによる抽出と真空乾燥によって調製した。
【0072】
例5-1
水洗した樹脂ビーズを例1-1、2-1および4-1と同様に炭化し、さらに処理した。
【0073】
例6
本明細書に開示されているタイプのTPRおよび炭素質材料を調製し、それらの特性を調査した。エチレングリコール90重量部にHOノボラック100重量部を含む熱溶液(85℃~90℃)を、エチレングリコール90重量部にヘキサミン20重量部を含む熱溶液(85℃~90℃)と混合した。得られた熱樹脂溶液を、乾性油4重量部を含む撹拌された熱(133℃)鉱油2000重量部に注ぎ、エマルジョンを形成し、それをビーズに形成し、さらに加熱した。冷却後、濾過または遠心分離のいずれかにより、スラリービーズを油から分離した。これらの樹脂ビーズをさらに処理することなく炭化した。分析サンプルを、熱水洗浄、その後にプロパノール-2-オールによる抽出および真空乾燥によって調製した。
【0074】
例6-1
例6の樹脂ビーズを例1-1、2-1、4-1および5-1と同様に炭化し、さらに処理した。
【0075】
例7
本明細書に開示されているタイプのTPRおよび炭素質材料を調製し、それらの特性を調査した。エチレングリコール225重量部にHOノボラック100重量部を含む熱溶液(85℃~90℃)を、エチレングリコール225重量部にヘキサミン20重量部を含む熱溶液(85℃~90℃)と混合した。得られた熱樹脂溶液を、乾性油4重量部を含む撹拌された熱(141℃)鉱油2000重量部に注ぎ、エマルジョンを形成し、それをビーズに形成し、さらに加熱した。冷却後、濾過または遠心分離のいずれかにより、スラリービーズを油から分離した。これらの樹脂ビーズをさらに処理することなく炭化した。分析サンプルを、熱水洗浄、その後にプロパノール-2-オールによる抽出および真空乾燥によって調製した。
【0076】
例7-1
例7の樹脂ビーズを例1-1、2-1、4-1、5-1および6-1と同様に炭化し、さらに処理した。
【0077】
例8
本明細書に開示されているタイプのTPRおよび炭素質材料を調製し、それらの特性を調査した。エチレングリコール80重量部にHOノボラック100重量部を含む熱溶液(85℃~90℃)を、エチレングリコール72重量部および水27重量部にヘキサミン20重量部を含む熱溶液(85℃~90℃)と混合した。得られた熱樹脂溶液を、乾性油4重量部を含む撹拌された熱(125℃)鉱油2000重量部に注ぎ、エマルジョンを形成し、それをビーズに形成し、さらに加熱した。冷却後、濾過または遠心分離のいずれかにより、スラリービーズを油から分離した。これらの樹脂ビーズをさらに処理することなく炭化した。分析サンプルを、熱水洗浄、その後にプロパノール-2-オールによる抽出および真空乾燥によって調製した。
【0078】
例8-1
例8の樹脂ビーズを例1-1、2-1、4-1、5-1、6-1および7-1と同様に炭化し、さらに処理した。
【0079】
例9
本明細書に開示されているタイプのTPRおよび炭素質材料を調製し、それらの特性を調査した。水酸化ナトリウム0.6重量部を含むエチレングリコール80重量部にHOノボラック100重量部を含む熱溶液(85℃~90℃)を、エチレングリコール100重量部にヘキサミン20重量部を含む熱溶液(85℃~90℃)と混合した。得られた熱樹脂溶液を、乾性油4重量部を含む撹拌された熱(125℃)鉱油2000重量部に注ぎ、エマルジョンを形成し、それをビーズに形成し、さらに加熱した。冷却後、濾過または遠心分離のいずれかにより、スラリービーズを油から分離した。これらのビーズを熱(80℃~90℃)水で2回洗浄し(各回2000重量部)、空気中で自由流動状態になるまで乾燥した。分析サンプルを、プロパノール-2-オールによる抽出と真空乾燥によって調製した。
【0080】
例9-1
水洗した樹脂ビーズを例3-1と同様に炭化し、さらに処理した。
【0081】
例10
本明細書に開示されているタイプのTPRおよび炭素質材料を調製し、それらの特性を調査した。エチレングリコール170重量部にHOノボラック100重量部を含む熱溶液(85℃~90℃)を、エチレングリコール154重量部および水36重量部にヘキサミン20重量部を含む熱溶液(85℃~90℃)と混合した。得られた熱樹脂溶液を、乾性油4重量部を含む撹拌された熱(130℃)鉱油2000重量部に注ぎ、エマルジョンを形成し、それをビーズに形成し、さらに加熱した。冷却後、濾過または遠心分離のいずれかにより、スラリービーズを油から分離した。これらの樹脂ビーズをさらに処理することなく炭化した。分析サンプルを、熱水洗浄、その後にプロパノール-2-オールによる抽出および真空乾燥によって調製した。
【0082】
例10-1
例8の樹脂ビーズを例1-1、2-1、4-1、5-1、6-1、7-1および8-1と同様に炭化し、さらに処理した。
【0083】
例11
先の例で説明したように調製したサンプルをさらに分析した。図1は、水または水酸化ナトリウムの関数としてTPRの細孔サイズを示すグラフであり、一方、図2は、TPRから誘導される炭化材料の細孔サイズを、水および水酸化ナトリウムの量の関数としても示したグラフである。表1は、両方の図にプロットされた値をまとめたものである。図1は、組成物中の総高オルト(HO)ノボラックおよびヘキサミン含有量(ノボラックとヘキサミンの重量比5/1)に関する細孔形成剤225重量%を含む樹脂組成物についての気孔率の変化を示す。細孔形成剤のレベルは、技術的に実行可能なように変化させることが可能であった(特定の溶解度と粘度の制限のため)。実証したように、本明細書に開示される材料の細孔サイズは、本開示の方法によって変化可能であり、一方、細孔容積は、大部分が細孔形成剤の重量のレベルによって予め定められることが観察される。これにより、所望の細孔容積と細孔サイズを有する樹脂構造を作成するために有利な条件の有用なマトリックスが作成される。例1および1-1は、比較樹脂および炭化ビーズを表す。
【表1】
【0084】
図1および2ならびに表1からのデータは、本開示の材料について観察された樹脂と炭素気孔率との関係を説明する。特に、(i)硬化樹脂の細孔は、純粋なエチレングリコール、および水酸化ナトリウムを含むエチレングリコールで調製され、誘導された炭素の細孔よりも大きいことが観察され、水性エチレングリコールを造孔剤として調製した硬化樹脂の細孔は、誘導された炭素の細孔よりも小さい;(ii)樹脂組成物に水酸化ナトリウムを添加すると、硬化樹脂に広い細孔サイズ分布が得られるが、一方、誘導された炭化材料は、鋭い細孔サイズの最大値を示す;(iii)樹脂組成物に水酸化ナトリウムを添加すると、樹脂および誘導された炭素の両方で細孔サイズが適度に減少し、細孔容積に関連するパラメーターが適度に変化する;(iv)樹脂組成物に水を添加すると、硬化樹脂および誘導された炭素の細孔サイズが著しく増加し、細孔容積関連パラメーターに対する影響は適度ではない、ことが観察された。本開示の材料について、細孔サイズの増加は、かさ密度の減少(細孔容積の増加)と相関し、潜在的には、より大きなマクロ細孔を有する炭素の容積性能の進行する劣化と相関することが観察された。一方、メソポーラス炭素(D<50nm)は、かさ密度が高く、細孔容積が比較的低い。本発明の目的は、以下を有する炭素を提供することである:i)直径が0.5μを超える細孔および比較的高いかさ密度;およびii)比較的高い容積のメソ細孔(かさ密度が低い)。図3は、炭素材料と樹脂の両方の樹脂組成物におけるエチレングリコールの割合の関数としての細孔サイズと体積の重ね合わせたプロットである。
【表2】
【0085】
図4および5を参照して、例1-1、2-1および3-1の炭素サンプルについてAFM画像処理を実行した。囲まれているのは、トポグラフィー画像、高さデータのヒストグラム、および囲まれた画像についての粗さの値である。
【0086】
炭素ビーズ内のナノ構造の原子間力顕微鏡(AFM)および走査型電子顕微鏡(SEM)の両方の画像は、輸送孔の、球状炭素領域のクラスターで形成された壁との相互接続ネットワークを示した。領域サイズは、例1-1の炭素では100~110nm、例3-1の「アルカリ」炭素では60~75nm、例2-1の「水性」炭素では1~2μと測定された。このナノ領域のサイズの変化は、同じ細孔形成剤/(ノボラック+ヘキサミン)重量比の樹脂から誘導された炭素の細孔サイズの劇的な変化を説明する(図1を参照)。その上、同じことが前駆体樹脂にも有効であると考えられる。
【0087】
得られた画像処理は、細孔構造の大部分が、球形の顆粒(ビーズ)サンプル内の球状の凝集の相互接続されたネットワークからなるように見えることを示す。粗さ測定は、次のようにRMS粗さの増加を示す:3-1<1-1<2-1。これは、AFMで見られる領域サイズの順に従い(図4)、水銀圧入細孔測定法で測定される細孔サイズとよく一致する。
【表3】

図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-01-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の細孔を有する炭素質材料であって、該複数の細孔中の各細孔の細孔サイズが下限(a)から上限(z)の範囲であり、該炭素質材料のかさ密度(σ)が下限(b)から上限(y)の範囲であり、(y-b)/(z-a)として定義される比較変動性(g)が1未満であり、ここで(a)が約10nmであり、(z)が約5000nmであり、(b)が約0.06g/mlであり、(y)が約0.15g/mlであり、かつ、相互接続された細孔組織を保持することにより該炭素質材料上の活性部位へのアクセスが妨害されない上記炭素質材料。
【請求項2】
請求項1に記載の炭素質材料を含む吸着剤。
【請求項3】
請求項1に記載の炭素質材料を含むフィルム。
【請求項4】
複数の細孔を有する炭素質材料であって、該複数の細孔中の各細孔の細孔サイズが下限(a)から上限(z)の範囲であり、該炭素質材料のかさ密度(σ)が下限(b)から上限(y)の範囲であり、(y-b)/(z-a)として定義される比較変動性(g)が1未満であり、ここで(a)が約20nmであり、(z)が約300nmであり、(b)が約0.3g/mlであり、(y)が約0.5g/mlであり、かつ、相互接続された細孔組織を保持することにより該炭素質材料上の活性部位へのアクセスが妨害されない、上記炭素質材料。
【請求項5】
請求項4に記載の炭素質材料を含む吸着剤。
【請求項6】
請求項4に記載の炭素質材料を含むフィルム。
【請求項7】
複数の細孔を有する炭素質材料であって、該複数の細孔中の各細孔の細孔サイズが下限(a)から上限(z)の範囲であり、該炭素質材料のかさ密度(σ)が下限(b)から上限(y)の範囲であり、(y-b)/(z-a)として定義される比較変動性(g)が1未満であり、ここで(a)が約50nmであり、(z)が約150nmであり、(b)が約0.3g/mlであり、(y)が約0.5g/mlであり、かつ、相互接続された細孔組織を保持することにより該炭素質材料上の活性部位へのアクセスが妨害されない、上記炭素質材料。
【請求項8】
請求項7に記載の炭素質材料を含む吸着剤。
【請求項9】
請求項7に記載の炭素質材料を含むフィルム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
いくつかの態様では、炭素質材料は、細孔サイズ(p)が下限(a)から上限(z)の範囲であり、かさ密度(σ)が下限(b)から上限(y)の範囲であり、(y-b)/(z-a)として定義される比較変動性(g)が1×10-5未満である。例えば、炭素質材料は、細孔サイズが約10nm~約5000nmの範囲であり、かさ密度が0.06g/ml~0.15g/mlの範囲であり、または細孔サイズが約20nm~約300nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲であり、または細孔サイズが約50nm~約150nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲であり得る。炭素質材料は吸着剤を含み得る。
なお、下記[1]から[15]は、いずれも本発明の一形態又は一態様である。
[1]
細孔サイズ(p)が下限(a)から上限(z)の範囲であり、かさ密度(σ)が下限(b)から上限(y)の範囲であり、(y-b)/(z-a)として定義される比較変動性(g)が1未満である、炭素質材料。
[2]
細孔サイズが約10nm~約5000nmの範囲であり、かさ密度が0.06g/ml~0.15g/mlの範囲である、[1]に記載の材料。
[3]
細孔サイズが約20nm~約300nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲である、[1]に記載の材料。
[4]
細孔サイズが約50nm~約150nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲である、[1]に記載の材料。
[5]
細孔サイズが約10nm~約500nmの範囲であり、粒子内密度が約2%~約25%の範囲である高オルトフェノール樹脂を含む重縮合樹脂。
[6]
細孔サイズが約25nm~約300nmであり、粒子内気孔率が約5%~約20%の範囲である、[5]に記載の樹脂。
[7]
細孔サイズが約50nm~約150nmであり、粒子内気孔率が約8%~約15%の範囲である、[5]に記載の樹脂。
[8]
[5]に記載の前記材料を含むキレート剤。
[9]
細孔サイズ(p)が下限(a)から上限(z)の範囲であり、かさ密度(σ)が下限(b)から上限(y)の範囲であり、(y-b)/(z-a)として定義される比較変動性(g)が1×10 -3 未満である、炭素質材料。
[10]
細孔サイズが約10nm~約5000nmの範囲であり、かさ密度が0.06g/ml~0.15g/mlの範囲である、[9]に記載の材料。
[11]
細孔サイズが約20nm~約300nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲である、[9]に記載の材料。
[12]
細孔サイズが約50nm~約150nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲である、[9]に記載の材料。
[13]
[12に記載の前記炭素質材料を含む吸着剤。
[14]
[9に記載の前記炭素質材料を含む吸着剤。
[15]
[9に記載の前記炭素質材料を含むフィルム。
[16]
細孔サイズ(p)が下限(a)から上限(z)の範囲であり、かさ密度(σ)が下限(b)から上限(y)の範囲であり、(y-b)/(z-a)として定義される比較変動性(g)が1×10 -5 未満である、炭素質材料。
[17]
細孔サイズが約10nm~約5000nmの範囲であり、かさ密度が0.06g/ml~0.15g/mlの範囲である、[16]に記載の材料。
[18]
細孔サイズが約20nm~約300nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲である、[16]に記載の材料。
[19]
細孔サイズが約50nm~約150nmの範囲であり、かさ密度が約0.3g/ml~約0.5g/mlの範囲である、[16]に記載の材料。
[20]
[16]に記載の前記炭素質材料を含む吸着剤。
【外国語明細書】