(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039154
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】軸受装置およびスピンドル装置
(51)【国際特許分類】
F16C 41/00 20060101AFI20240314BHJP
F16C 35/12 20060101ALI20240314BHJP
F16C 19/54 20060101ALI20240314BHJP
F16C 19/16 20060101ALI20240314BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
F16C41/00
F16C35/12
F16C19/54
F16C19/16
G01L5/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143489
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】福島 靖之
(72)【発明者】
【氏名】小池 孝誌
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 勇介
【テーマコード(参考)】
2F051
3J217
3J701
【Fターム(参考)】
2F051AA11
2F051AB09
2F051BA07
3J217JA02
3J217JA14
3J217JA36
3J217JB23
3J217JB26
3J217JB68
3J217JB84
3J217JB87
3J701AA03
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA80
3J701FA46
3J701GA31
(57)【要約】
【課題】加工荷重および軸受予圧を正確に測定できる、ひずみセンサの配線のためにハウジングや外筒を加工する必要のない組立性に優れたスピンドル装置を提供すること。
【解決手段】スピンドル装置1は、予圧が与えられた状態で、主軸4を支持する第1軸受5aおよび第2軸受5bを備える。予圧の伝達経路上にあたる第1軸受5aと第2軸受5bの間には、第1間座6が配置されている。予圧の伝達経路外である前蓋12と第1軸受5aとの間には、第2間座7が配置され、この第2間座7には、ひずみセンサ8が固定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予圧が与えられた状態で、回転軸を支持する、外輪、内輪および転動体を含む第1軸受と、
前記回転軸の軸方向に前記第1軸受と並列するように配置され、予圧が与えられた状態で、前記回転軸を支持する、外輪、内輪および転動体を含む第2軸受と、
前記第1軸受と前記第2軸受の間に配置され、前記予圧の伝達経路上に位置する第1間座と、
前記回転軸の前端寄りに設けられた前蓋と第1軸受との間に配置され、前記予圧の伝達経路外に位置する第2間座と、を備え、
前記第2間座には、ひずみセンサが搭載されている、軸受装置。
【請求項2】
前記第2間座は、その外周面または内周面に平坦部を有し、
前記ひずみセンサは、前記平坦部に固定されている、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記前蓋は、溝または貫通孔を有し、
前記ひずみセンサには、配線が付属し、前記配線は前記前蓋の溝または貫通孔を通じて外部に引き出されている請求項1または2に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記第1間座にも、ひずみセンサが搭載されている請求項1または2に記載の軸受装置。
【請求項5】
前記ひずみセンサは、ひずみゲージからなる検出部と、処理部が設けられ、
前記処理部は前記ひずみゲージの信号を電気的に増幅する増幅部と、前記増幅部で得られた信号からひずみ検出値を算出する出力部を搭載する、請求項1または2に記載の軸受装置。
【請求項6】
前記検出部と前記処理部は同一の基板上に固定され、前記基板が前記第2間座に固定される、請求項5に記載の軸受装置。
【請求項7】
前記検出部と前記処理部は1つのICの中に内蔵される、請求項5に記載の軸受装置。
【請求項8】
前記第2間座に固定した前記ひずみセンサの出力から軸受の予圧を算出する軸受予圧演算部と、
前記ひずみセンサの出力と軸受予圧の関係式を保存した記憶部Aと、を備える、請求項1または2に記載の軸受装置。
【請求項9】
前記第1間座にも、ひずみセンサが固定されており、
前記第1間座に固定した前記ひずみセンサの出力と、前記第2間座に固定した前記ひずみセンサの出力と、
前記各ひずみセンサの出力と軸受予圧の関係式をそれぞれ保存した記憶部Aとから少なくとも1つの軸受の予圧を算出する軸受予圧演算部と、を備える、請求項8に記載の軸受装置。
【請求項10】
前記軸受予圧演算部で算出した軸受予圧と、あらかじめ設定した閾値を記憶した記憶部Bとを比較して、前記軸受予圧が前記閾値を超える場合に異常信号を出力する診断部を備える、請求項8に記載の軸受装置。
【請求項11】
請求項1または2に記載の軸受装置と、前記回転軸を回転するモータとを備える、スピンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置およびスピンドル装置に関する。
より詳しくは、本発明は、各軸受の運転中の予圧(荷重)を検出可能な軸受装置およびスピンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械等のスピンドル装置では、加工精度や加工効率を向上させるため、加工荷重や軸受の予圧管理が求められている。
また、軸受に異常が起こる前にその予兆を検出して、軸受の異常を未然に防ぐ要求もある。
【0003】
このため、特許文献1のように、間座を介して背面合わせにした1対のアンギュラ玉軸受の、その間座にひずみセンサを取り付け、間座のひずみ量をセンサで検出し、これにより軸受の予圧量を計測する試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成によれば、ひずみセンサが軸受の予圧の伝達経路上にあることもあって、スピンドルの運転中には、間座に取り付けたひずみセンサにより、回転速度や内外輪の温度差による軸受の予圧変化や、刃工具から入力される加工荷重に伴う軸受の予圧変化のいずれをも検出してしまう。
【0006】
このため、予圧変化が、スピンドルの回転速度の軸受の内外輪の温度差によるのか、加工荷重によるのか、要因を特定することが困難であり、加工荷重を正確に検出することが困難であった。
【0007】
また、特許文献1の構成によれば、ひずみセンサの配線をハウジングや外筒に追加工で水や貫通孔を形成して引き出す必要がある。
ところが、外筒とハウジングの間には外筒冷却が搭載されており、冷却流路を避けて外筒やハウジングの側面に貫通孔などを設けることが難しく、外筒側面から配線を取り出すことは難しかった。
あるいは、前蓋側から配線を取り出す場合においても、ハウジングの内径部を軸方向に加工して配線するスペースを確保する必要があり、加工によりコストが嵩むとともに、配線とハウジングの加工部の位相を合わせて軸受ユニットをハウジングに挿入する必要が生じるため、組立性が悪化する問題もあった。
【0008】
そこで本発明の解決すべき課題は、加工荷重および軸受予圧を正確に測定できる、ひずみセンサの配線のためにハウジングや外筒を加工する必要のない組立性に優れた軸受装置およびスピンドル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するため、発明にかかる軸受装置を、予圧が与えられた状態で、回転軸を支持する、外輪、内輪および転動体を含む第1軸受と、前記回転軸の軸方向に前記第1軸受と並列するように配置され、予圧が与えられた状態で、前記回転軸を支持する、外輪、内輪および転動体を含む第2軸受と、前記第1軸受と前記第2軸受の間に配置され、前記予圧の伝達経路上に位置する第1間座と、前記回転軸の前端寄りに設けられた前蓋と第1軸受との間に配置され、前記予圧の伝達経路外に位置する第2間座と、を備え、前記第2間座には、ひずみセンサが搭載されている構成としたのである。
【0010】
発明にかかる軸受装置において、前記第2間座は、その外周面または内周面に平坦部を有し、前記ひずみセンサは、前記平坦部に固定されている構成とすることができる。
また、前記前蓋は、溝または貫通孔を有し、前記ひずみセンサには、配線が付属し、前記配線は前記前蓋の溝または貫通孔を通じて外部に引き出されている構成とすることができる。
前記第1間座にも、ひずみセンサが搭載されている構成とすることができる。
【0011】
発明にかかる軸受装置において、前記ひずみセンサは、ひずみゲージからなる検出部と、処理部が設けられ、前記処理部は前記ひずみゲージの信号を電気的に増幅する増幅部と、前記増幅部で得られた信号からひずみ検出値を算出する出力部を搭載する構成とすることができる。
また、前記検出部と前記処理部は同一の基板上に固定され、前記基板が前記第2間座に固定される構成とすることができる。
あるいは、前記検出部と前記処理部は1つのICの中に内蔵される構成とすることができる。
【0012】
発明にかかる軸受装置において、前記第2間座に固定した前記ひずみセンサの出力から軸受の予圧を算出する軸受予圧演算部と、前記ひずみセンサの出力と軸受予圧の関係式を保存した記憶部Aと、を備える構成とすることができる。
また、前記第1間座にも、ひずみセンサが固定されている場合において、前記第1間座に固定した前記ひずみセンサの出力と、前記第2間座に固定した前記ひずみセンサの出力と、前記各ひずみセンサの出力と軸受予圧の関係式をそれぞれ保存した記憶部Aとから少なくとも1つの軸受の予圧を算出する軸受予圧演算部と、を備える構成とすることができる。
前記軸受予圧演算部で算出した軸受予圧と、あらかじめ設定した閾値を記憶した記憶部Bとを比較して、前記軸受予圧が前記閾値を超える場合に異常信号を出力する診断部を備える構成とすることができる。
【0013】
また、上記した課題を解決するため、発明にかかるスピンドル装置を、以上のような軸受装置と、前記回転軸を回転するモータとを備える構成としたのである。
【発明の効果】
【0014】
発明にかかる軸受装置及びスピンドル装置を以上のように構成したので、加工荷重および軸受予圧を正確に測定できる、(第1間座にひずみセンサを搭載しない場合には)ひずみセンサの配線のためにハウジングや外筒を加工する必要のない組立性に優れたものとすることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図11】印加される荷重とひずみセンサの出力信号との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
図1に示すスピンドル装置1は、たとえば、工作機械のビルトインモータ方式のスピンドル装置として使用される。
この場合、工作機械主軸用のスピンドル装置1で支持されている主軸4は、その一端の側に主軸を回転させるためのモータ40が、その他端にワークを切削加工するためのエンドミル等の切削工具が接続されることになる。
【0017】
図1および
図2のように、スピンドル装置1は、その軸受装置50として、主軸4の軸方向に並列する第1軸受5aおよび第2軸受5bと、第1軸受5aと第2軸受5bの間に配置される第1間座6と、第1軸受5aと前蓋12の間に配置される第2外輪間座7と、モータ40の後方に配置される第3軸受16とを備える。
【0018】
主軸4は、ハウジング3内に設置された第1軸受5aおよび第2軸受5bによって回転自在に支持されている。ハウジング3は、外筒2の内径側に配置されている。
第1軸受5aは、内径側の内輪5iaと、外径側の外輪5gaと、内輪5iaと外輪5gaとの間の転動体Taと、周方向に並列する複数の転動体Taを等間隔に保持する保持器Rtaとを備える。
同様に、第2軸受5bは、内輪5ibと、外輪5gbと、転動体Tbと、保持器Rtbとを備える。
第1軸受5aと第2軸受5bの間に配置された第1間座6は、内径側の第1内輪間座6iと、外径側の第1外輪間座6gとを備える。
【0019】
主軸4には、第1軸受5aの内輪5iaおよび第2軸受5bの内輪5ibが締まり嵌め状態(圧入状態)で嵌合されている。
内輪5iaと内輪5ibの間には第1間座6の第1内輪間座6iが配置され、外輪5gaと外輪5gbの間には第1間座6の第1外輪間座6gが配置される。
【0020】
第1軸受5aおよび第2軸受5bは、軸方向に予圧を付与することが可能な軸受となっており、たとえば、アンギュラ玉軸受、深溝玉軸受、またはテーパころ軸受等を用いることができる。
図示では、軸受装置50にはアンギュラ玉軸受が用いられ、第1軸受5aおよび第2軸受5bが背面組み合わせ(DB組み合わせ)で設置されている。
一方、第3軸受16は、円筒ころ軸受である。
なお、ここでは、第1軸受5aおよび第2軸受5bと、第3軸受16との計3つの軸受で主軸4を支持する構造を例示しているが、3つ以上の軸受で主軸4を支持する構造であってもよい。
【0021】
アンギュラ玉軸受である第1軸受5a、第2軸受5bにより、スピンドル装置1に作用するラジアル方向の荷重およびアキシアル方向の荷重が支持され、円筒ころ軸受である単列の第3軸受16により、スピンドル装置1に作用するラジアル方向の荷重が支持されることになる。
【0022】
図示のように、ハウジング3には冷却媒体流路Gが形成されている。
ハウジング3と外筒2との間に冷却媒体を流すことにより、第1軸受5aおよび第2軸受5bを冷却することができる。
なお、第1軸受5a、第2軸受5bとしてグリース潤滑の軸受を用いた場合には潤滑油供給路は不要であるが、エアオイル等の潤滑が必要な場合には、第1間座6の第1外輪間座6gには、図示省略の潤滑油供給路が設けられる。
【0023】
スピンドル装置1の組立時には、初めに主軸4に対して第1軸受5a、第1間座6、第2軸受5b、第3間座9が順に挿入され、ナット10を締めることによって
図2の力線1に示す経路で初期予圧が与えられることになる。
第1軸受5aおよび第2軸受5bに付与される予圧は、たとえば第1間座6の第1外輪間座6gと第1内輪間座6iとの幅の寸法差によって定まる。
【0024】
その後、
図1における第2軸受5bの外輪5gbの右側がハウジング3に設けた段差部3aに当たるまで第1軸受5a、第2軸受5bが取り付けられた主軸4がハウジング3へと挿入される。
さらに、第1軸受5aの端面と当接するように第2外輪間座7を挿入し、前蓋12によって、第2外輪間座7を介して第1軸受5aの外輪5gaや第1間座6の第1外輪間座6gを押すことで、主軸4がハウジング3に固定される。
【0025】
前蓋12をハウジング3に固定するための、図示省略のボルトを締め込むトルクに応じて、
図2の力線2に示す経路で荷重が印加される。
つまり、ボルトの軸力に応じて外輪5ga、外輪5gbおよび第1外輪間座6gが主軸4と平行な方向に変位し、それらの変位量に応じて第1軸受5a、第2軸受5bの予圧が減少することになる。
【0026】
ここで第1間座6および第2間座7には、それぞれひずみセンサ11、ひずみセンサ8が搭載されている。
【0027】
このとき、第1外輪間座6gのひずみセンサ11で、第1軸受5a、第2軸受5bの予圧を検出し、前蓋12の固定する際のボルト締結による予圧の減少は、ひずみセンサ8で検出することで、組立時の第1軸受5a、第2軸受5bの予圧を正確に算出することができる。
組立時の軸受の予圧を正確に管理することで、工作機械の加工性能のバラツキを軽減し、品質が向上する。
ひずみセンサ11の出力は、第1外輪間座6gおよび第2外輪間座7に図示省略の無線通信機器を設置して、ひずみセンサ11の出力を第2外輪間座7に無線通信させ、ひずみセンサ8の出力と合わせて出力させてもよい。
【0028】
また、単列の円筒ころ軸受である第3軸受16の内輪16aは、主軸4の外周に嵌合した筒状部材15と、内輪押さえ19とにより軸方向に位置決めされている。
内輪押さえ19は、主軸4の端部にねじ合わされたナット20により抜け止めされている。
第3軸受16の外輪16bは、後蓋17に固定された前位置決め部材21と、後位置決め部材18とに挟み込まれている。
内輪16aは主軸4の伸縮に応じて後蓋17に対して摺動可能になっている。
【0029】
主軸4と外筒2との間には、空間部22が形成されている。
この空間部22の、第1軸受5aおよび第2軸受5bと単列の第3軸受16との軸方向中間位置には、主軸4を回転駆動させるモータ40が配置されている。
モータ40のロータ14は、主軸4の外周に嵌合した筒状部材15に固定され、モータ40のステータ13は外筒2の内周部に固定されている。
なお、モータ40を冷却するための冷却媒体流路は、図示されていない。
【0030】
スピンドル装置1の運転時において、第1軸受5aおよび第2軸受5bが、主軸4の回転速度上昇に伴う転動体Ta、転動体Tbの遠心力の増加や、遠心力による内輪5ia、内輪5ibの膨張、転動体Ta、転動体Tbの熱膨張、内輪5iaと外輪5gaおよび内輪5ibと外輪5gbの温度差が大きくなることなどで、その予圧が上昇することがある。
【0031】
この場合、第1外輪間座6gは軸方向に圧縮され変形する。その変形に伴って、第2外輪間座7は第1外輪間座6gの変形量に応じて伸張するため、第2外輪間座7に固定されたひずみセンサ8で、予圧の変化に応じた第2外輪間座7のひずみを検出する。
【0032】
またワークの加工時に、図示省略の切削工具から軸方向と平行(
図1で右方向)に荷重が入力された場合、主軸4の軸方向微小変位に伴い第1軸受5a、第2軸受5bの内輪5ia、内輪5ibも変位することがある。
このとき、第1軸受5aの予圧は増加する一方で、第2軸受5bの予圧は減少し、第1軸受5aと第2軸受5bとの予圧の差は、ハウジング3の段差部3aで受ける荷重と等しくなる。また、ハウジング3の段差部3aで受ける荷重は、切削工具から入力される加工荷重と等しくなる。
【0033】
つまり、第1外輪間座6gは、第1軸受5aの予圧と同じ荷重で軸方向に圧縮され、第2外輪間座7は第1外輪間座6gの変形量に応じて伸張する。
このため、ひずみセンサ8で第2外輪間座7の軸方向のひずみを検出することで、第1軸受5aの予圧を検出することができ、軸受の過大予圧による焼き付きを未然に防止することができる。
【0034】
図3から
図5に、第2間座7に対するひずみセンサ8の配置例を示す。
図3の例では、第2外輪間座7の180度対向した2カ所に面取り加工などによって平坦部7aを設け、各平坦部7aにひずみセンサ8a、8bが固定されている。
図4の例では、第2外輪間座7の90度等配した4カ所に同様に平坦部7aを設け、各平坦部7aにひずみセンサ8a、8b、8c、8dが固定されている。
図5の例では、第2外輪間座7の90度等配した4カ所の内径面に溝加工などによって平坦部7bを設け、各平坦部7bにひずみセンサ8a、8b、8c、8dが固定されている。
【0035】
このようにすれば、第2間座7への追加工は、平坦部7aを設けるだけであるため、構造を大きく変更することなく、剛性を大きく低下させず、構成を簡単にすることができる。
なお、ここで、第2間座7に対するひずみセンサ8の搭載態様はこれらに限定されず、ひずみセンサ8および各平坦部7a、7bの個数もこれらの例に限定されない。
また、第1間座6に対するひずみセンサ11の搭載態様も、第2間座7に対するひずみセンサ8の場合と同様であるため、ここでは省略する。
【0036】
ひずみセンサ8とひずみセンサ11は同一仕様で足り、以下はひずみセンサ8を例として構成を説明する。
ひずみセンサ8は、検出部となるひずみゲージのみで構成されてもよく、ひずみゲージの信号を増幅して外部に出力する処理部を備えてもよい。
【0037】
図6にひずみセンサ8の検出部と処理部を備えた場合の内部構成を示す。また、
図7にひずみセンサ8の構造図を示す。
【0038】
図6のように、ひずみセンサ8は、ひずみゲージからなる検出部24と、処理部25を備える。
ここで処理部25は、ひずみゲージの信号を電気的に増幅する増幅部25aと、この信号を元にひずみを算出して外部に出力する出力部25bからなる。
【0039】
図7のように、検出部24と処理部25とは、同一の基板23に固定されており、検出部24と処理部25とは配線等により電気的に接続されている。
基板23の種類は特に限定されないが、第2外輪間座7と線膨張係数が同程度の金属板が例示できる。
【0040】
なお、
図8に示すように、ひずみセンサ8は、検出部24と処理部25を一体にしたワンチップのIC26とし、基板23上に固定してもよい。
こうすることで、より小型化が図られ、第2外輪間座7への組込みが容易になる。
また、このように検出部24と処理部25を近接配置することで、リード線が短くなって配線抵抗の影響を低減することができる。また、ひずみをデジタル値に変換すれば、電気的なノイズの影響を防止できる。
なお、基板23を介することで組み立て性が向上するが、基板23を省略して、検出部24やIC26を、直接、平坦部7a(7b)に固定することもできる。
【0041】
ひずみの算出には、出力部25bの内部にCPUを搭載し、デジタル的に処理してもよい。
検出部24の材料として、抵抗温度係数(温度の変化とともに抵抗値が変化する割合)が小さいものを使用すれば、ひずみの計算に当たり、第2外輪間座7の温度によって検出部24の抵抗が変化してセンサ出力がドリフトすることを低減することも可能である。また、温度補償機能を備える処理部を用いてもよい。
たとえば、基板23の内部、あるいはひずみセンサ8を実装した第2外輪間座7に温度センサを実装し、ひずみを補正することもできる。
【0042】
図9は、第2間座7に搭載されたひずみセンサ8の出力のみから、軸受予圧を算出する方法を示している。
ここでは、ひずみセンサ8は、4つ搭載されているとして、ひずみセンサ8(8a、8b、8c、8d)の出力(ひずみSa、Sb、Sc、Sd)を演算処理する軸受予圧演算部27と、予め測定したセンサ出力と荷重の関係を保存する記憶部A28を備える。
軸受予圧演算部27では、ひずみセンサ8の出力と記憶部A28のデータから軸受予圧を算出するものとしている。
【0043】
また
図10は、ひずみセンサ8とひずみセンサ11の双方の出力から、軸受予圧を算出する方法を示している。
ここでは、ひずみセンサ8およびひずみセンサ11は、それぞれ4つ搭載されているとして、ひずみセンサ8(8a、8b、8c、8d)の出力(ひずみSa、Sb、Sc、Sd)と、ひずみセンサ11(11a、11b、11c、11d)の出力(ひずみSe、Sf、Sg、Sh)を演算処理する軸受予圧演算部27と、予め測定した各センサ出力と荷重の関係を保存する記憶部A28を備える。
軸受予圧演算部27では、ひずみセンサ8とひずみセンサ11の出力と記憶部A28のデータから軸受予圧を算出するものとしている。
【0044】
また、
図9および
図10の軸受予圧算出方法において、それぞれ図示のように、軸受予圧演算部27で算出した軸受予圧から第1軸受5a、第2軸受5bの異常状態を判定する診断部29と、あらかじめ第1軸受5a、第2軸受5bの軸受予圧の基準値を保存した記憶部B30を設けることができる。
そして、記憶部B30で設けた各基準値を超えたときに軸受5の異常信号を出力するものとすると、異常信号より軸受の過大予圧による発熱や焼き付き、軸受の過少予圧による振動を未然に防止することができる。
ここで、軸受予圧演算部27、記憶部A28、診断部29、記憶部B30は、軸受装置50の外部に設けてもよいし、内部に設けてもよい。
【0045】
工作機械はスピンドル装置1の回転速度を上昇させ、加工負荷を上げることで、生産効率を上げることができるため、記憶部B30に保存する第1軸受5a、第2軸受5bの軸受予圧の基準値を複数段階設けることで、詳細に軸受の状態を監視することができ、スピンドル装置1の回転速度や、加工負荷を効率良くコントロールすることができる。
【0046】
図11に、ひずみセンサ8を固定した第2外輪間座7単体に荷重を印加したときの、荷重と各ひずみセンサの出力との関係例を示す。
各ひずみセンサ8(8a、8b、8c、8d)は、第2外輪間座7に加わる軸方向荷重(軸受予圧)によるひずみSa、Sb、Sc、Sdを検出するが、ひずみは第2外輪間座7の周方向に均一ではなく、
図11に示すように、検出バラツキが発生する。これは、第2外輪間座7、ハウジング3、前蓋12、軸受5等の寸法精度や組立バラツキや、荷重印加点の中心ずれ等の影響による。
また、主軸4が回転すると、主軸4に負荷されるモーメント荷重の影響や、軸受5の転動体移動に伴って、ひずみが変動する可能性もある。
【0047】
そのため、各ひずみセンサ8のひずみ出力Sa、Sb、Sc、Sdを
図9または
図10の軸受予圧演算部27で処理したセンサ出力代表値と、予め記憶部A28に保存したひずみと荷重の関係を示すテーブル、あるいは近次式から予圧(荷重)を算出する。
センサ出力代表値としては、各センサ出力を加算したひずみSsum、各センサ出力の平均値Savg、あるいは、センサ出力の最大値や最小値、最大値と最小値の差、が例示できる。
ひずみセンサ11の出力も同様に処理されるため説明は省略する。
【0048】
これらセンサ出力代表値(ひずみSsum、平均値Savgなど)をローパスフィルタ処理後、予圧(荷重)を算出してもよいし、得られた予圧(荷重)をローパスフィルタ処理して、予圧(荷重)測定値の変動を抑制してもよい。
【0049】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、軸受装置50は、スピンドル装置1以外にも適応可能である。
【0050】
また、たとえば、ひずみセンサについて、
図12のように、第1間座6のひずみセンサ11を省略して、第2間座7のひずみセンサ8のみとすることもできる。その他の構成については、上述したとおりであるので説明を省略する。
また、この場合の軸受予圧の算出方法も、
図9を参照して上記においてすでに説明したところによる。
【0051】
この場合、ひずみセンサ8の配線C(センサケーブル)は、図示のように、第2間座7に隣接する前蓋12に、溝12aまたは貫通穴を設けることのみで、外部へと容易に取り出すことができる。
このため、第1間座6にひずみセンサ11を設けた場合のように、ハウジング3や外筒2に配線Cを通すための追加工、特にハウジング3と外筒2の間の冷却流路を避けておこなう複雑な追加工の必要がなくなる。
したがって、配線Cとハウジング3の加工部(溝等)の位相を合わせて軸受ユニットをハウジング3に挿入する必要がなくなり、組み立て作業性が向上するとともに、ハウジング3や外筒2の加工コストを抑えることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 スピンドル装置
2 外筒
3 ハウジング
3a 段差部
4 主軸
5 軸受
5a 第1軸受
5ia 内輪
5ga 外輪
5b 第2軸受
5ib 内輪
5gb 外輪
6 第1間座
6g 第1外輪間座
6i 第1内輪間座
7 第2間座(第2外輪間座)
7a 平坦部
7b 平坦部
8 ひずみセンサ
9 第3間座
10 ナット
11 ひずみセンサ
12 前蓋
12a 溝
13 ステータ
14 ロータ
15 筒状部材
16 第3軸受
16a 内輪
16b 外輪
17 後蓋
18 後位置決め部材
19 内輪押さえ
20 ナット
21 前位置決め部材
22 空間部
23 基板
24 検出部
25 処理部
25a 増幅部
25b 出力部
26 IC
27 軸受予圧演算部
28 記憶部A
29 診断部
30 記憶部B
40 モータ
50 軸受装置
G 冷却媒体流路
C 配線