(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039371
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】モータ検査装置、モータ検査方法及びモータ検査プログラム
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20240314BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20240314BHJP
【FI】
G01H17/00 A
G01M99/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143878
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】佐野 徳美
(72)【発明者】
【氏名】若杉 良貴
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌弘
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD03
2G024BA22
2G024BA27
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB13
2G064AB22
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC41
2G064CC42
2G064CC43
2G064DD02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】計算量の増大を抑制できると共に、波形を変化させることなくモータの回転数を変化させながらモータの異常の有無を検査できるモータ検査装置を提供する。
【解決手段】モータの音又は振動のデータを取得する第1データ取得部と、モータの回転速度のデータを取得する第2データ取得部と、第1データ取得部により取得した音又は振動のデータを所定区間毎に分割して複数の第1区間データを抽出すると共に複数の第1区間データに基づいて音又は振動の強度と周波数と時間との関係を示すスペクトログラムを作成する作成部と、第2データ取得部により取得した回転速度のデータを所定区間毎に分割して複数の第2区間データを抽出し、作成部により作成したスペクトログラム及び複数の第2区間データに基づいて周波数を回転次数に変換すると共に、回転次数毎にモータの検査に用いるための音又は振動の強度を表す値を算出する算出部と、を有するモータ検査装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転数を変化させながら前記モータを検査するモータ検査装置であって、
前記モータの音又は振動のデータを取得する第1データ取得部と、
前記モータの回転速度のデータを取得する第2データ取得部と、
前記第1データ取得部により取得した前記音又は振動のデータを所定区間毎に分割して複数の第1区間データを抽出すると共に前記複数の第1区間データに基づいて前記音又は振動の強度と周波数と時間との関係を示すスペクトログラムを作成する作成部と、
前記第2データ取得部により取得した前記回転速度のデータを前記所定区間毎に分割して複数の第2区間データを抽出し、前記作成部により作成した前記スペクトログラム及び前記複数の第2区間データに基づいて前記周波数を回転次数に変換すると共に、前記回転次数毎に前記モータの検査に用いるための前記音又は振動の強度を表す値を算出する算出部と、
を有するモータ検査装置。
【請求項2】
前記作成部は、
前記複数の第1区間データをエンベロープ処理及びフーリエ変換することにより前記スペクトログラムを作成する、
請求項1記載のモータ検査装置。
【請求項3】
前記作成部は、
前記所定区間を所定の割合で重ならせて前記複数の第1区間データを抽出し、
前記算出部は、
前記所定区間を所定の割合で重ならせて前記複数の第2区間データを抽出する、
請求項1又は請求項2記載のモータ検査装置。
【請求項4】
前記算出部は、
前記回転次数毎に前記強度の最大値又はパーセンタイル値を、前記音又は振動の強度を表す値として算出する、
請求項1又は請求項2記載のモータ検査装置。
【請求項5】
前記音又は振動の強度を表す値を検査結果として表示する表示部を有する、
請求項1又は請求項2記載のモータ検査装置。
【請求項6】
前記表示部は、
前記検査結果を表示させるためのグラフィカルユーザーインターフェースを表示する、
請求項5記載のモータ検査装置。
【請求項7】
前記表示部は、
前記第1データ取得部により取得した前記音又は振動のデータの波形を表示する波形表示領域と、前記検査結果を表示する結果表示領域と、を表示する、
請求項5記載のモータ検査装置。
【請求項8】
前記モータの種別毎の設定を記憶する記憶部と、
前記種別を選択可能な操作部と、
を有し、
前記算出部は、
前記操作部により選択された前記種別の前記記憶部に記憶されている前記設定に応じて、前記音又は振動の強度を表す値を算出する、
請求項1又は請求項2記載のモータ検査装置。
【請求項9】
モータの回転数を変化させながら前記モータを検査するモータ検査方法であって、
前記モータの音又は振動のデータを取得する第1データ取得ステップと、
前記モータの回転速度のデータを取得する第2データ取得ステップと、
前記第1データ取得ステップにより取得した前記音又は振動のデータを所定区間毎に分割して複数の第1区間データを抽出すると共に前記複数の第1区間データに基づいて音の強度と周波数と時間との関係を示すスペクトログラムを作成する作成ステップと、
前記第2データ取得ステップにより取得した前記回転速度のデータを前記所定区間毎に分割して複数の第2区間データを抽出し、前記作成ステップにより作成した前記スペクトログラム及び前記複数の第2区間データに基づいて前記周波数を回転次数に変換すると共に、前記回転次数毎に前記モータの検査に用いるための前記音又は振動の強度を表す値を算出する算出ステップと、
を有するモータ検査方法。
【請求項10】
コンピュータに、
モータの回転数を変化させながら前記モータを検査する際に、前記モータの音又は振動のデータを取得する第1データ取得ステップと、
前記モータの回転速度のデータを取得する第2データ取得ステップと、
前記第1データ取得ステップにより取得した前記音又は振動のデータを所定区間毎に分割して複数の第1区間データを抽出すると共に前記複数の第1区間データに基づいて音の強度と周波数と時間との関係を示すスペクトログラムを作成する作成ステップと、
前記第2データ取得ステップにより取得した前記回転速度のデータを前記所定区間毎に分割して複数の第2区間データを抽出し、前記作成ステップにより作成した前記スペクトログラム及び前記複数の第2区間データに基づいて前記周波数を回転次数に変換すると共に、前記回転次数毎に前記モータの検査に用いるための前記音又は振動の強度を表す値を算出する算出ステップと、
を実行させるモータ検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転数を変化させながらモータを検査するモータ検査装置、モータ検査方法及びモータ検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータのノイズ検査では、周期的な接触によって生じる異音を検査するために音圧波形の包絡線を周波数分析するエンベロープ分析を利用することにより、異音の発生周期と大きさとを取得する。そして、取得した異音の発生周期及び大きさと閾値とを比較することにより、周期的異音の有無を検査することができる。また、トラクションモータのノイズ検査では、モータの回転速度に同期した周波数を表す回転次数に対する異音を検査するために、回転速度を加速又は減速させるスイープ検査を行っている。
【0003】
特許文献1は、回転数が一定でないモータの振動を測定する際に、回転速度データを時間間隔の伸長によって正規化し、正規化した信号を補間してエンベロープ分析する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、補間により波形が変化してしまう。また、特許文献1においては、区間を区切って時間間隔を伸長する場合に、区間の区切りで波形の不連続性を生じてしまうと共に、区間毎に計算が必要となって計算量が大きくなってしまうという課題を有する。
【0006】
本発明の目的は、計算量の増大を抑制することができると共に、波形を変化させることなくモータの回転数を変化させながらモータの異常の有無を検査することができるモータ検査装置、モータ検査方法及びモータ検査プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るモータ検査装置は、モータの回転数を変化させながら前記モータを検査するモータ検査装置であって、前記モータの音又は振動のデータを取得する第1データ取得部と、前記モータの回転速度のデータを取得する第2データ取得部と、前記第1データ取得部により取得した前記音又は振動のデータを所定区間毎に分割して複数の第1区間データを抽出すると共に前記複数の第1区間データに基づいて前記音又は振動の強度と周波数と時間との関係を示すスペクトログラムを作成する作成部と、前記第2データ取得部により取得した前記回転速度のデータを前記所定区間毎に分割して複数の第2区間データを抽出し、前記作成部により作成した前記スペクトログラム及び前記複数の第2区間データに基づいて前記周波数を回転次数に変換すると共に、前記回転次数毎に前記モータの検査に用いるための前記音又は振動の強度を表す値を算出する算出部と、を有する。
【0008】
本発明に係るモータ検査方法は、モータの回転数を変化させながら前記モータを検査するモータ検査方法であって、前記モータの音又は振動のデータを取得する第1データ取得ステップと、前記モータの回転速度のデータを取得する第2データ取得ステップと、前記第1データ取得ステップにより取得した前記音又は振動のデータを所定区間毎に分割して複数の第1区間データを抽出すると共に前記複数の第1区間データに基づいて音の強度と周波数と時間との関係を示すスペクトログラムを作成する作成ステップと、前記第2データ取得ステップにより取得した前記回転速度のデータを前記所定区間毎に分割して複数の第2区間データを抽出し、前記作成ステップにより作成した前記スペクトログラム及び前記複数の第2区間データに基づいて前記周波数を回転次数に変換すると共に、前記回転次数毎に前記モータの検査に用いるための前記音又は振動の強度を表す値を算出する算出ステップと、を有する。
【0009】
本発明に係るモータ検査プログラムは、コンピュータに、モータの回転数を変化させながら前記モータを検査する際に、前記モータの音又は振動のデータを取得する第1データ取得ステップと、前記モータの回転速度のデータを取得する第2データ取得ステップと、前記第1データ取得ステップにより取得した前記音又は振動のデータを所定区間毎に分割して複数の第1区間データを抽出すると共に前記複数の第1区間データに基づいて音の強度と周波数と時間との関係を示すスペクトログラムを作成する作成ステップと、前記第2データ取得ステップにより取得した前記回転速度のデータを前記所定区間毎に分割して複数の第2区間データを抽出し、前記作成ステップにより作成した前記スペクトログラム及び前記複数の第2区間データに基づいて前記周波数を回転次数に変換すると共に、前記回転次数毎に前記モータの検査に用いるための前記音又は振動の強度を表す値を算出する算出ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、計算量の増大を抑制することができると共に、波形を変化させることなくモータの回転数を変化させながらモータの異常の有無を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るモータ検査装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るモータ検査方法を示すフロー図である。
【
図3A】本発明の実施形態に係るモータ検査方法のデータ取得処理によって取得されたモータの音又は振動のデータの一例を示す図である。
【
図3B】本発明の実施形態に係るモータ検査方法のデータ取得処理によって取得されたモータの回転速度のデータの一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るモータ検査方法の区間抽出処理を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るモータ検査方法のスペクトログラム算出処理を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るモータ検査方法の回転速度算出処理を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るモータ検査方法の次数情報変換処理を示す図である。
【
図8A】本発明の実施形態に係るモータ検査方法の代表値算出処理を示す図である。
【
図8B】本発明の実施形態に係るモータ検査方法の代表値算出処理によって取得されたエンベロープ分析結果のスペクトルを示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るモータ検査装置の表示部の表示画面を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態に係るモータ検査装置の記憶部に記憶されている結果表示テーブルを示す図である。
【
図11A】本発明の実施形態に係るモータ検査装置の記憶部に記憶されているModeテーブルを示す図である。
【
図11B】本発明の実施形態に係るモータ検査装置の記憶部に記憶されているSetupテーブルを示す図である。
【
図12】本発明の実施形態に係るモータ検査装置の機能モジュールの構成を示す図である。
【
図13】本発明の実施形態に係るモータ検査装置の記憶部に記憶されているアプリケーションの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の例示的な実施形態に係るモータ検査装置、モータ検査方法及びモータ検査プログラムついて説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、各構造における縮尺および数等を、実際の構造における縮尺および数等と異ならせる場合がある。
【0013】
<モータ検査装置の構成>
本発明の実施形態に係るモータ検査装置1の構成について、
図1を参照しながら、詳細に説明する。
【0014】
モータ検査装置1は、図示しないモータの回転数を変化させながらモータを検査する。モータ検査装置1は、第1データ取得部2と、第2データ取得部3と、記憶部4と、操作部5と、プロセッサ6と、表示部7と、を有している。
【0015】
第1データ取得部2は、マイク及び加速度計等のセンサであり、モータの音又は振動のデータを取得し、取得した音又は振動のデータをプロセッサ6の作成部61に出力する。
【0016】
第2データ取得部3は、モータの回転速度のデータを取得し、取得した回転速度のデータをプロセッサ6の算出部62に出力する。
【0017】
記憶部4は、制御プログラムと、アプリケーションと、モータの種別毎の設定と、各種のテーブルと、を予め記憶している。また、記憶部4は、作成部61が作成したデータ・情報および算出部62が算出したデータ・情報等を記憶することができる。
【0018】
操作部5は、モータ検査装置1の使用者により操作されるキーボード、マウス、スイッチ又はボタン等により構成されている。モータ検査装置1の使用者は、操作部5を操作することにより、モータの種別を選択することができる。操作部5は、モータの種別を選択する操作に応じた電気信号をプロセッサ6に出力する。
【0019】
プロセッサ6は、記憶部4に記憶されている制御プログラムを読み出して実行することによりモータ検査装置1の動作を制御する。プロセッサ6は、作成部61と、算出部62と、を備えている。プロセッサ6は、例えば、1つまたは複数のCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro-Processing Unit)により構成されている。
【0020】
作成部61は、第1データ取得部2より入力された音又は振動のデータを所定区間毎に分割して複数の第1区間データを抽出する。作成部61は、抽出した複数の第1区間データに基づいて、音又は振動の強度と周波数と時間との関係を示すスペクトログラムを作成する。作成部61は、作成したスペクトログラム(スペクトログラム情報)を算出部62に出力する。
【0021】
算出部62は、第2データ取得部3より入力された回転速度のデータを所定区間毎に分割して複数の第2区間データを抽出する。算出部62は、作成部61より入力されるスペクトログラム情報のスペクトログラム及び抽出した複数の第2区間データに基づいて、スペクトログラムの周波数を回転次数に変換する。算出部62は、変換した回転次数毎にモータの検査に用いるための音又は振動の強度を表す値を算出する。この際に、算出部62は、記憶部4において操作部5より入力される電気信号の示すモータの種別に対応付けられている設定に応じて、音又は振動の強度を表す値を算出する。算出部62は、算出した音又は振動の強度を示す値を表示部7に表示させる制御を行う。
【0022】
表示部7は、液晶ディスプレイ等により構成されている。表示部7は、算出部62の制御により、モータの検査結果等を表示させるためのグラフィカルユーザーインターフェースを表示すると共に、モータの音又は振動の強度を表す値をモータの検査結果として表示する。表示部7は、算出部62の制御により所定の構成の画面を表示する。なお、表示部7に表示される画面構成については後述する。なお、表示部7と操作部5は、
図1において別々の要素として示されているが、一体化されてもよい。
【0023】
<モータ検査方法>
本発明の実施形態に係るモータ検査方法について、
図2から
図8Bを参照しながら、詳細に説明する。
【0024】
まず、プロセッサ6は、モータを駆動させながらモータの音又は振動のデータを取得すると共にモータの回転速度のデータを取得するデータ取得処理を実行する(S1)。
【0025】
具体的には、作成部61は第1データ取得部2より
図3Aに示すようなモータの音又は振動のデータを取得し、算出部62は第2データ取得部3よりモータの回転速度を加速又は減速させながらモータの回転速度のデータを取得する。
図3Bは、算出部62が第2データ取得部3よりモータの回転速度を減速させながらモータの回転速度のデータを取得する場合を一例として示している。
【0026】
次に、プロセッサ6は、データ取得処理により取得した音又は振動のデータに基づいて抽出データt1、t2、・・・、tnを得る区間抽出処理を実行する(S2)。
【0027】
具体的には、作成部61は、
図4に示すように、データ取得処理において第1データ取得部2より取得した時系列データであるモータの音又は振動のデータを、周波数分析を行うために窓幅W1の任意の区間に分割して抽出データt
1、t
2、・・・、t
nを得る。ここで、窓幅W1は、分析したい周波数の最大値に合わせて決定される。この際に、作成部61は、各抽出データt
1、t
2、・・・、t
nの間でデータの欠損を生じないように、各抽出データt
1、t
2、・・・、t
nをオーバーラップ幅O
1だけオーバーラップさせることにより所定の割合で重ならせる。
【0028】
次に、プロセッサ6は、区間抽出処理により得られた抽出データt1、t2、・・・、tnに対してエンベロープ分析を行うことにより、時間と音の変動周期(変動周波数)に対する音の強度を表すスペクトログラムを作成するスペクトログラム算出処理を実行する(S3)。
【0029】
具体的には、作成部61は、得られた抽出データt
1、t
2、・・・、t
nの各々に対して振幅の外形を取得するエンベロープ処理を施す。作成部61は、各抽出データt
1、t
2、・・・、t
nのエンベロープ処理の処理結果に窓関数を乗算してフーリエ変換を行うことにより、
図5に示すような時間と音の変動周期(変動周波数)に対する音の強度を表すスペクトログラムを作成する。なお、
図5では、音の強度を濃淡で示している。
【0030】
次に、プロセッサ6は、データ取得処理により取得したモータの回転速度のデータに基づいて、抽出データp1、p2、・・・、pnを得る回転速度算出処理を実行する(S4)。
【0031】
具体的には、算出部62は、
図6に示すように、データ取得処理において第2データ取得部3より取得したモータの回転速度のデータを、窓幅W1の任意の区間に分割して抽出データp
1、p
2、・・・、p
nを得る。この際に、算出部62は、各抽出データp
1、p
2、・・・、p
nの間でデータの欠損を生じないように、各抽出データp
1、p
2、・・・、p
nをオーバーラップ幅O
1だけオーバーラップさせることにより所定の割合で重ならせる。ここで、モータの回転速度のデータを分割する窓幅W1は、モータの音又は振動のデータを分割する窓幅W1と同一である。また、各抽出データp
1、p
2、・・・、p
nをオーバーラップさせるオーバーラップ幅O
1は、各抽出データt
1、t
2、・・・、t
nをオーバーラップさせるオーバーラップ幅O
1と同一である。また、算出部62は、各抽出データp
1、p
2、・・・、p
nにおける回転速度の代表値q
1、q
2、・・・、q
nを算出する。代表値q
1、q
2、・・・、q
nは、例えば平均値又はパーセンタイル値である。
【0032】
次に、プロセッサ6は、スペクトログラム算出処理により得られたスペクトログラムに基づいて、時間と回転次数に対する音の強度を表すスペクトログラムを取得する次数情報変換処理を実行する(S5)。
【0033】
具体的には、算出部62は、スペクトログラム算出処理において得られたスペクトログラムに対して、回転速度算出処理において得られた回転速度の代表値q
1、q
2、・・・、q
nを利用して、変動周波数を回転次数に変換する。算出部62は、例えば変動周波数[Hz]を回転速度の代表値q
1、q
2、・・・、q
n[rpm/60]で除算することにより、変動周波数を回転次数に変換する。これにより、算出部62は、
図7に示すような時間と回転次数に対する音の強度を表すスペクトログラムを取得する。
図7では、音の強度を濃淡で示している。
【0034】
次に、プロセッサ6は、次数情報変換処理により得られたスペクトログラムに基づいて、エンベロープ分析結果のスペクトルを取得する代表値算出処理を実行する(S6)。
【0035】
具体的には、算出部62は、次数情報変換処理において得られたスペクトログラムにおける各回転次数の音の強度の代表値である次数データr
1、r
2、・・・、r
nを求める。例えば、算出部62は、音の強度の最大値又はパーセンタイル値を代表値とする。そして、算出部62は、求めた次数データr
1、r
2、・・・、r
nに基づいて、
図8Bに示すようなエンベロープ分析結果のスペクトルを取得する。
【0036】
そして、算出部62は、代表値算出処理により取得したエンベロープ分析結果のスペクトルにおいて、求めた次数データr1、r2、・・・、rnの代表値と閾値とを比較して、閾値を超える代表値が有る場合にモータに異音が有ると判定する。算出部62は、モータに異音が有るか否かの判定結果を検査結果として表示部7に表示する。
【0037】
<表示部に表示される画面構成>
本発明の実施形態に係るモータ検査装置1の表示部7に表示される画面構成について、
図9から
図12を参照しながら、詳細に説明する。
【0038】
モータ検査装置1は、メイン画面70と、操作画面73又は操作画面74と、の2つの画面を表示部7に表示させる。
【0039】
メイン画面70には、後述の各Modeにおいて共通の表示を行う波形表示領域としての波形表示部71と、Mode毎に任意に表示を変更する結果表示領域としての結果表示部72と、が表示される。
【0040】
結果表示部72には、記憶部4に記憶されている
図10に示す結果表示テーブルにおいて、結果表示選択部73c又は結果表示選択部74cによって選択された名前に対応付けられている表示画面が表示される。例えば、結果表示部72には、結果表示選択部73cによってスペクトルが選択された場合に、
図10に示す結果表示テーブルにおいてスペクトルに対応付けられている表示画面が表示される。
【0041】
このように、モータ検査装置1は、Mode毎の独自の表示画面及び各Modeにおいて共通の表示画面を、Modeに合わせてメイン画面70に表示させることができる。
【0042】
操作画面73は、音響分析のModeの画面を表示部7に表示させるために表示部7に表示されるグラフィカルユーザーインターフェースであり、操作画面74は、ノイズ検査のModeの画面を表示部7に表示させるために表示部7に表示されるグラフィカルユーザーインターフェースである。
【0043】
操作画面73には、Mode選択部73aと、Setup選択部73bと、結果表示選択部73cと、が表示される。
【0044】
操作画面73において、Mode選択部73aが選択された場合には音響分析の画面を表示部7に表示させ、Setup選択部73bによってSetupを選択することによりパラメータを選択することができ、結果表示選択部73cによって結果表示部72に表示される表示画面を選択することができる。
図9において結果表示選択部73cには、結果表示テーブルの名前としてスペクトル(Spectrum)が表示されている。従って、結果表示選択部73cが選択された場合には、
図10に示す結果表示テーブルにおいてスペクトルに対応付けられている表示画面(番号1)が結果表示部72に表示される。
【0045】
操作画面74には、Mode選択部74aと、Setup選択部74bと、結果表示選択部74cと、が表示される。
【0046】
操作画面74において、Mode選択部74aが選択された場合にはノイズ検査の画面を表示部7に表示させ、Setup選択部74bによってSetupを選択することによりパラメータを選択することができ、結果表示選択部73cによって結果表示部72に表示される表示画面を選択することができる。
図9において結果表示選択部74cには、結果表示テーブルの名前として検査結果が表示されている。従って、結果表示選択部74cが選択された場合には、
図10に示す結果表示テーブルにおいて検査結果に対応付けられている表示画面(番号3)が結果表示部72に表示される。
【0047】
このように、Mode選択部73a及びMode選択部74aは、表示部7に表示させる画面の切換えを可能とする。これにより、Modeの独立性を確保し、Modeの利用目的に合った最適な操作性を実現することができる。
【0048】
操作画面73及び操作画面74を用いて実行される様々な機能は、機能モジュール80と呼ばれる単位で実現される。機能モジュール80には、
図12に示すように、機能を実行するためのAPI81と、機能を実行するための内部関数82と、機能を実行するために必要なパラメータの設定画面83と、設定ファイル84と、が含まれる。
【0049】
設定画面83は、操作部5により選択されたモータの種別に応じてパラメータを設定するために表示部7に表示される。設定画面83で設定されたパラメータは、設定ファイル84によって管理される。
【0050】
設定ファイル84は、Mode毎に個別のファイルとし、また、同一のModeであっても複数のパラメータを設定できるようにするために、記憶部4に記憶されているModeテーブル及びSetupテーブルを利用する。Modeテーブルは、
図11Aに示すように、Modeの名前を表すMode名と、Modeを識別するMode番号と、を対応付けたテーブルである。また、Setupテーブルは、
図11Bに示すように、Mode番号と、Setup名と、Setup番号と、を対応付けたテーブルである。
【0051】
Setup名は、任意の名前を付けることができ、パラメータの識別に利用される。設定ファイル84は、ファイル名を「Setup名_Mode番号_Setup番号」とすることにより、Mode毎に複数のパラメータセットを保持することができる。これにより、例えば、ノイズ検査において検査対象の製品が変更された場合に、検査におけるパラメータを簡単に変更することができる。
【0052】
<アプリケーションの構成>
本発明の実施形態に係るモータ検査装置1の記憶部4に記憶されているアプリケーションの構成について、
図13を参照しながら、詳細に説明する。
【0053】
アプリケーションは、
図9に示す画面構成の画面を表示部7に表示させるために用いられるものであり、メイン制御部90と、操作画面と、機能モジュール80と、を有している。
【0054】
メイン制御部90は、メイン画面制御部91と、Mode管理部92と、Setup管理部93と、を備えている。
【0055】
メイン画面制御部91は、結果表示部72の表示の切換え及び表示処理と、波形表示部71の表示処理と、を行う。
【0056】
Mode管理部92は、操作部5により選択されたModeの操作画面73又は操作画面74を表示部7に表示させる。
【0057】
Setup管理部93は、Setup選択部73b又はSetup選択部74bにより選択されたSetupの情報を機能モジュール80に提供する。Setup管理部は、Setupの追加又は削除の機能を有している。
【0058】
操作画面は、音響分析を実行するための操作画面73と、ノイズ検査を実行するための操作画面74と、を備えている。操作画面は、操作に応じて機能モジュール80の各機能を実行する。
【0059】
機能モジュール80は、操作画面73又は操作画面74を選択する操作に応じて各機能処理を行うと共に、設定画面83を表示部7に表示させる。機能モジュール80は、Mode及びSetupの選択に従って、設定ファイル84の読み込みを行う。
【0060】
上記の構成を有するアプリケーションにおいて、操作画面73又は操作画面74を選択する操作に応じた機能を呼び出して、呼び出した機能を機能モジュール80において実現することにより、機能及び設定画面の共通化を実現することができる。例えば、本アプリケーションは、操作画面73を選択する操作に応じて測定、周波数分析、音声再生及び次数分析の各機能を呼び出して、呼び出した各機能を機能モジュール80において実現する。
【0061】
また、複数のModeを1つのアプリケーションにより実現することにより、利用目的に合わせた操作性を確保しつつ、表示及び機能を共通化することができる。この結果、ユーザに様々な利用シーンで利用可能な使いやすいアプリケーションを提供することができる。
【0062】
因みに、従来は、モータの製造において、開発における製品の動作音を分析する音響分析アプリケーション、及び生産工程における異音を検査するノイズ検査アプリケーション等の様々な音響のアプリケーションをそれぞれの利用目的に応じて個別に利用していた。
【0063】
しかしながら、利用目的に応じて複数のアプリケーションを使い分ける場合には、それぞれのアプリケーションの利用方法を理解するために多くの時間が必要となる。また、アプリケーション間で表示、操作性及び機能に様々な差異があり利用し難いという課題を有していた。
【0064】
これに対して、本実施形態では、利用目的の違う複数の様々なアプリケーションを1つのアプリケーションで実現することができる。このようなアプリケーションでは、同種の機能については表示及び操作性を共通化すると共に、それぞれの利用目的に応じた操作性を実現することができる。
【0065】
本実施形態のモータ検査装置1の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませて実行することにより上記の処理を行なってもよい。
【0066】
このように、本実施形態によれば、モータの音又は振動のデータを所定区間毎に分割して複数の第1区間データを抽出すると共に複数の第1区間データに基づいて音又は振動の強度と周波数と時間との関係を示すスペクトログラムを作成すると共に、モータの回転速度のデータを所定区間毎に分割して複数の第2区間データを抽出し、作成したスペクトログラム及び複数の第2区間データに基づいて周波数を回転次数に変換すると共に、回転次数毎にモータの検査に用いるための音又は振動の強度を表す値を算出することにより、計算量の増大を抑制することができると共に、波形を変化させることなくモータの回転数を変化させながらモータの異常の有無を検査することができる。
【0067】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
【0068】
(1)モータの回転数を変化させながら前記モータを検査するモータ検査装置であって、前記モータの音又は振動のデータを取得する第1データ取得部と、前記モータの回転速度のデータを取得する第2データ取得部と、前記第1データ取得部により取得した前記音又は振動のデータを所定区間毎に分割して複数の第1区間データを抽出すると共に前記複数の第1区間データに基づいて前記音又は振動の強度と周波数と時間との関係を示すスペクトログラムを作成する作成部と、前記第2データ取得部により取得した前記回転速度のデータを前記所定区間毎に分割して複数の第2区間データを抽出し、前記作成部により作成した前記スペクトログラム及び前記複数の第2区間データに基づいて前記周波数を回転次数に変換すると共に、前記回転次数毎に前記モータの検査に用いるための前記音又は振動の強度を表す値を算出する算出部と、を有するモータ検査装置。
【0069】
(2)前記作成部は、前記複数の第1区間データをエンベロープ処理及びフーリエ変換することにより前記スペクトログラムを作成する、(1)記載のモータ検査装置。
【0070】
(3)前記作成部は、前記所定区間を所定の割合で重ならせて前記複数の第1区間データを抽出し、前記算出部は、前記所定区間を所定の割合で重ならせて前記複数の第2区間データを抽出する、(1)又は(2)記載のモータ検査装置。
【0071】
(4)前記算出部は、前記回転次数毎に前記強度の最大値又はパーセンタイル値を、前記音又は振動の強度を表す値として算出する、(1)から(3)のいずれかに記載のモータ検査装置。
【0072】
(5)前記音又は振動の強度を表す値を検査結果として表示する表示部を有する、(1)から(4)のいずれかに記載のモータ検査装置。
【0073】
(6)前記表示部は、前記検査結果を表示させるためのグラフィカルユーザーインターフェースを表示する、(5)記載のモータ検査装置。
【0074】
(7)前記表示部は、前記第1データ取得部により取得した前記音又は振動のデータの波形を表示する波形表示領域と、前記検査結果を表示する結果表示領域と、を表示する、(5)又は(6)記載のモータ検査装置。
【0075】
(8)前記モータの種別毎の設定を記憶する記憶部と、前記種別を選択可能な操作部と、を有し、前記算出部は、前記操作部により選択された前記種別の前記記憶部に記憶されている前記設定に応じて、前記音又は振動の強度を表す値を算出する、(1)から(7)のいずれかに記載のモータ検査装置。
【0076】
(9)モータの回転数を変化させながら前記モータを検査するモータ検査方法であって、前記モータの音又は振動のデータを取得する第1データ取得ステップと、前記モータの回転速度のデータを取得する第2データ取得ステップと、前記第1データ取得ステップにより取得した前記音又は振動のデータを所定区間毎に分割して複数の第1区間データを抽出すると共に前記複数の第1区間データに基づいて音の強度と周波数と時間との関係を示すスペクトログラムを作成する作成ステップと、前記第2データ取得ステップにより取得した前記回転速度のデータを前記所定区間毎に分割して複数の第2区間データを抽出し、前記作成ステップにより作成した前記スペクトログラム及び前記複数の第2区間データに基づいて前記周波数を回転次数に変換すると共に、前記回転次数毎に前記モータの検査に用いるための前記音又は振動の強度を表す値を算出する算出ステップと、を有するモータ検査方法。
【0077】
(10)コンピュータに、モータの回転数を変化させながら前記モータを検査する際に、前記モータの音又は振動のデータを取得する第1データ取得ステップと、前記モータの回転速度のデータを取得する第2データ取得ステップと、前記第1データ取得ステップにより取得した前記音又は振動のデータを所定区間毎に分割して複数の第1区間データを抽出すると共に前記複数の第1区間データに基づいて音の強度と周波数と時間との関係を示すスペクトログラムを作成する作成ステップと、前記第2データ取得ステップにより取得した前記回転速度のデータを前記所定区間毎に分割して複数の第2区間データを抽出し、前記作成ステップにより作成した前記スペクトログラム及び前記複数の第2区間データに基づいて前記周波数を回転次数に変換すると共に、前記回転次数毎に前記モータの検査に用いるための前記音又は振動の強度を表す値を算出する算出ステップと、を実行させるモータ検査プログラム。
【0078】
上述した実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0079】
1 モータ検査装置
2 第1データ取得部
3 第2データ取得部
4 記憶部
5 操作部
6 プロセッサ
7 表示部
61 作成部
62 算出部
70 メイン画面
71 波形表示部
72 結果表示部
73 操作画面
73a Mode選択部
73b Setup選択部
73c 結果表示選択部
74 操作画面
74a Mode選択部
74b Setup選択部
74c 結果表示選択部
80 機能モジュール
81 API
82 内部関数
83 設定画面
84 設定ファイル
90 メイン制御部
91 メイン画面制御部
92 Mode管理部
93 Setup管理部