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特開2024-40758積層体の切断方法、前記切断方法によって切断された小片積層体および小片積層体を有する製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040758
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】積層体の切断方法、前記切断方法によって切断された小片積層体および小片積層体を有する製品
(51)【国際特許分類】
   B26D 1/06 20060101AFI20240318BHJP
   B32B 38/18 20060101ALI20240318BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20240318BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20240318BHJP
【FI】
B26D1/06 Z
B32B38/18 C
B26D3/00 601E
B23K26/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145316
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】牧野 修之
(72)【発明者】
【氏名】奥田 健
(72)【発明者】
【氏名】生田目 祥行
(72)【発明者】
【氏名】大谷 宗之
【テーマコード(参考)】
3C027
4E168
4F100
【Fターム(参考)】
3C027HH01
3C027HH05
3C027HH12
3C027HH14
4E168AD07
4E168DA04
4E168HA01
4E168JA11
4E168JA27
4E168KA04
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA21A
4F100BA21B
4F100EJ30
4F100EJ30A
4F100EJ30B
4F100EJ52A
4F100EJ54
4F100EJ54A
4F100JK07
4F100JK07A
4F100JK07B
(57)【要約】      (修正有)
【課題】弾性率の異なる皮膜体と弾性体とを有する積層体からばね定数が所定の範囲内に含まれる小片積層体を寸法精度良く切り出すことができる積層体の切断方法を提供する。
【解決手段】皮膜体である第1皮膜体2と、第1皮膜体2と弾性率の異なる板状の弾性体3とが厚み方向に積層された積層体1を切断する切断方法であって、前記積層体1として、厚み方向に沿って切断された第1皮膜体2の厚み方向一方側に弾性体3が位置し且つ第1皮膜体2に弾性体3が接触している積層体1を形成する積層体形成工程と、弾性体3を、第1皮膜体2の切断位置2aで、第1皮膜体2側から厚み方向に沿って切断する積層体切断工程と、を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膜体と、前記皮膜体と弾性率の異なる板状の弾性体とが厚み方向に積層された積層体を切断する切断方法であって、
前記積層体として、厚み方向に沿って切断された前記皮膜体の厚み方向一方側に前記弾性体が位置し且つ前記皮膜体に前記弾性体が接触している積層体を形成する積層体形成工程と、
前記弾性体を、前記皮膜体の切断位置で、前記皮膜体側から厚み方向に沿って切断する積層体切断工程と、
を有する切断方法。
【請求項2】
請求項1に記載の切断方法において、
前記積層体形成工程は、
前記皮膜体を前記皮膜体の厚み方向に沿って切断する積層前切断工程と、
前記積層前切断工程において切断された前記皮膜体に前記弾性体を積層する積層工程と、
を有する、
切断方法。
【請求項3】
請求項1に記載の切断方法において、
前記積層体形成工程は、
前記皮膜体に前記弾性体を積層する積層工程と、
前記積層工程において前記弾性体が積層された前記皮膜体を前記皮膜体の厚み方向に沿って切断する積層後切断工程と、
を有する、
切断方法。
【請求項4】
請求項1に記載の切断方法において、
前記積層体形成工程は、
前記皮膜体を前記皮膜体の厚み方向に沿って切断する積層前切断工程と、
前記積層前切断工程において切断された前記皮膜体に前記弾性体を積層する積層工程と、
前記積層工程において前記弾性体が積層された前記皮膜体を前記皮膜体の厚み方向に沿って切断する積層後切断工程と、
を有する、
切断方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の切断方法において、
前記皮膜体は、レーザによって切断され、
前記弾性体は、刃によって切断される、
切断方法。
【請求項6】
請求項5に記載の切断方法において、
前記レーザの波長は、UV波長域に含まれる、
切断方法。
【請求項7】
請求項1に記載の切断方法において、
前記積層体形成工程は、
前記皮膜体に前記皮膜体よりも厚い前記弾性体が接触している前記積層体を形成する、
切断方法。
【請求項8】
請求項1に記載の切断方法において、
前記積層体形成工程は、
前記皮膜体に前記皮膜体よりも弾性率の低い前記弾性体が接触している前記積層体を形成する、
切断方法。
【請求項9】
請求項1に記載の切断方法によって前記積層体から切り出された、小片積層体。
【請求項10】
請求項9に記載の小片積層体を有する、製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の切断方法、前記切断方法によって切断された小片積層体および小片積層体を有する製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、可撓性を有する軟質材料は、トムソン刃またはカッター刃を用いた単純な押切り、引き切り、または流体を用いたウォータージェット加工によって任意の形状に切断される。例えば、特許文献1には、フィルム形成剤および可塑剤を含有する液体をベースフィルム上にコーティングし乾燥させて形成された、ひび割れの生じ難い柔軟な薄膜を切断する切断方法が開示されている。特許文献1に記載の切断方法は、前記薄膜が積層されたベースフィルムに対して前記薄膜側から刃を押圧し、前記薄膜のみを所定の形状および大きさに切断する。特許文献1に記載の切断方法は、トムソン刃等を設けたプレス機、シール印刷機或いは箔押機等において、ベースフィルム上に積層された前記薄膜の切断に適用することができる。
【0003】
前記トムソン刃等による切断方法では、前記軟質材料の厚み方向における一方の面に押し当てられた前記トムソン刃が、前記軟質材料の厚み方向における他方の面に向かって移動する。これにより、前記軟質材料は、厚み方向に沿って切断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-51510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記軟質材料の厚み方向における両方の面に、例えばポリエチレンテレフタレート製のフィルムのような、前記軟質材料よりも弾性率の高い樹脂が貼りつけられた積層体を切断する場合、前記積層体は、一方の前記樹脂に押し当てられた前記トムソン刃の力によって厚み方向に圧縮される。前記トムソン刃が押し当てられている前記樹脂は、前記軟質材料の圧縮によって厚み方向に移動する。よって、前記樹脂は、前記軟質材料が圧縮限界に達するまで前記トムソン刃によって切断され難い。前記樹脂は、圧縮限界に達した前記軟質材料からの反力が加わることで前記トムソン刃によって切断される。
【0006】
前記軟質材料は、前記トムソン刃による前記樹脂の切断によって前記樹脂からの厚み方向の圧縮力が消失するため、前記樹脂に力を加えていた前記トムソン刃に向かって膨張する。よって、前記軟質材料は、前記トムソン刃に向かって膨張しつつ、前記軟質材料に向かって移動する前記トムソン刃によって切断される。この際、前記軟質材料に対する前記トムソン刃の通過位置は、前記軟質材料の膨張量、および、前記トムソン刃に対する前記軟質材料の膨張方向によって変動する。したがって、前記軟質材料の膨張量、および、前記トムソン刃の軌跡に対する前記軟質材料の膨張方向のずれが大きくなるほど、切断面の湾曲、切断面の倒れ等が増大する。
【0007】
ところで、モータ等の振動を発生させる機器を支持する防振部材として前記積層体を切断した小片積層体を使用する場合、前記小片積層体のばね定数は、前記小片積層体の材質、厚みおよび厚み方向に見た形状によって定まる。弾性率の異なる前記樹脂と前記軟質材料とを有する前記積層体から従来の切断方法によって前記小片積層体を切り出す場合、前記小片積層体の切断面の湾曲、切断面の倒れ等により、前記積層体の前記樹脂に対して垂直な切断面が得られない場合があった。つまり、前記積層体を構成している前記樹脂および前記軟質材料の弾性率の違いにより、所定の範囲内のばね定数を有する前記小片積層体を寸法精度良く切り出せない場合があった。
【0008】
本発明の目的は、弾性率の異なる皮膜体と弾性体とを有する積層体からばね定数が所定の範囲内に含まれる小片積層体を寸法精度良く切り出すことができる前記積層体の切断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の例示的な発明は、皮膜体と、前記皮膜体と弾性率の異なる弾性体とが厚み方向に積層された積層体を切断する切断方法である。前記切断方法は、前記積層体として、厚み方向に沿って切断された前記皮膜体の厚み方向一方側に前記弾性体が位置し且つ前記皮膜体に前記弾性体が接触している積層体を形成する積層体形成工程と、前記弾性体を、前記皮膜体の切断位置で、前記皮膜体側から厚み方向に沿って切断する積層体切断工程と、を有する切断方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態に係る積層体の切断方法によれば、弾性率の異なる前記皮膜体と前記弾性体とを有する積層体からばね定数が所定の範囲内に含まれる小片積層体を寸法精度良く切り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、積層体を積層方向に垂直な方向から見た側面図である。
図2図2は、切断装置の構成を示す模式図である。
図3図3は、実施形態に係る積層体の切断方法の一例を示す工程図である。
図4図4は、実施形態に係る積層前切断工程の一例を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る積層工程の一例を示す図である。
図6図6は、実施形態に係る積層体切断工程の一例を示す図である。
図7図7は、実施形態の変形例に係る積層体の切断方法の一例を示す工程図である。
図8図8は、実施形態の変形例に係る積層工程の一例を示す図である。
図9図9は、実施形態の変形例に係る積層後切断工程の一例を示す図である。
図10図10は、実施形態2に係る積層体の切断方法の一例を示す工程図である。
図11図11は、小片積層体および小片積層体を有する製品の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の例示的な実施の形態を詳しく説明する。なお、図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各構成部材の寸法比率等を忠実に表しているわけではない。
【0013】
(積層体1の構成)
図1を用いて、本発明に係る積層体の切断方法によって切断される積層体1について説明する。図1は、積層体1を積層方向に垂直な方向から見た側面図である。なお、以下の説明において「厚み方向」とは、板状部材の面のうち最も面積が大きい面に対して垂直な方向である。すなわち、「厚み方向」とは、図1を含む各図に示すXYZ直交座標系において、板状部材の面のうち最も面積が大きい面をXY平面に平行に配置した場合のZ方向を意味する。
【0014】
また、以下の説明では、「積層」とは、複数の板状部材の少なくとも一部が、前記板状部材の厚み方向に見て互いに重なって位置し且つ隣接する前記板状部材同士が互いに密着している状態を指す。
【0015】
図1に示すように、積層体1は、複数の板状部材が厚み方向に密着された複数の層を有する板状の弾性体である。積層体1は、第1皮膜体2および第2皮膜体4と、弾性体3とを有する。積層体1では、第1皮膜体2、弾性体3、第2皮膜体4の順に積層される。
【0016】
皮膜体である第1皮膜体2は、膜状の弾性体である。第1皮膜体2は、例えば、ポリエチレンテレフタレートによって構成される。第1皮膜体2は、積層体1の厚み方向における一端部に位置している。つまり、第1皮膜体2は、積層体1の厚み方向における一端部に位置する第1の層である。
【0017】
弾性体3は、板状の弾性体である。弾性体3は、第1皮膜体2よりも厚い部材である。また、弾性体3は、第1皮膜体2よりも弾性率が低い。弾性体3は、例えば、加熱によりゲル化するシリコーンゲル等のゲル材料である。弾性体3は、第1皮膜体2の厚み方向における一方側に位置している。弾性体3の厚み方向における一方の面には、第1皮膜体2の厚み方向における一方の面が接触している。つまり、弾性体3は、積層体1の第1の層に隣接する第2の層である。弾性体3と第1皮膜体2とは、互いに接触する面で密着している。これにより、弾性体3の厚み方向における一方の面は、第1皮膜体に覆われている。
【0018】
皮膜体である第2皮膜体4は、膜状の弾性体である。第2皮膜体4は、弾性体3よりも弾性率の高い弾性体である。また、第2皮膜体4は、弾性体3よりも薄い部材である。第2皮膜体4は、例えば、硬質のポリエチレンテレフタレートからなる。本実施形態において、第2皮膜体4は、第1皮膜体2と同じ弾性率および同じ厚みである。第2皮膜体4は、弾性体3の厚み方向における一方側に位置している。第2皮膜体4の厚み方向における一方の面には、弾性体3の厚み方向における他方の面が接触している。つまり、第2皮膜体4は、積層体1の第2の層に隣接する第3の層である。弾性体3と第2皮膜体4とは、互いに接触する面で密着している。これにより、弾性体3の厚み方向における他方の面は、第2皮膜体4に覆われている。
【0019】
このように構成される積層体1では、一端部から他端部に向かって、第1の層である第1皮膜体2、第2の層である弾性体3、第3の層である第2皮膜体4の順に積層される。第1皮膜体2の厚み方向における他方の面および第2皮膜体4の厚み方向における他方の面は、積層体1の厚み方向における両側の表層面を構成している。弾性体3は、第1皮膜体2と第2皮膜体4との間に位置している。つまり、弾性体3は、第1皮膜体2と第2皮膜体4とに挟まれている。
【0020】
(切断装置の構成)
次に、図2を用いて積層体1を切断する切断装置100について説明する。図2は、切断装置100の構成を示す模式図である。
【0021】
図2に示すように、切断装置100は、テーブル110と、支持体120と、レーザ装置121と、刃122と、カメラ124と、位置検出部130と、制御部140とを有する。
【0022】
テーブル110は、切断対象物である積層体1を保持し且つXY平面上の任意の位置に移動させる。テーブル110は、積層体1を水平に載置可能な載置面110aを有する。テーブル110は、積層体1を載置面110aに吸着可能に構成されている。また、テーブル110は、テーブル110を移動させるテーブル移動機構111を有する。テーブル110は、テーブル移動機構111によって載置面110aに対して平行なX方向、X方向に垂直なY方向および載置面110aの中心を通り且つ載置面110aに垂直なZ軸周りに回転可能に構成されている。
【0023】
支持体120は、積層体1を切断するレーザ装置121と、刃122をZ方向の任意の位置に移動させる刃移動機構123と、切断された積層体1の切断位置2a(図4参照)を撮影するカメラ124とを支持する。
【0024】
レーザ装置121は、図示しないレーザ発振器が発振したレーザを切断対象物に照射することによって積層体1の少なくとも一部を切断する。レーザ装置121は、載置面110aに載置された積層体1に厚み方向からレーザを照射可能な状態で支持体120に設けられている。
【0025】
レーザ装置121は、例えば、UV波長域のレーザを発振する。UV波長域のレーザは、他の波長のレーザに比べて、様々な切断対象物に対して吸収率が高い。よって、UV波長域のレーザは、他の波長のレーザに比べて小さい出力で切断対象物を加工することができるので、切断対象物に対する熱ストレスが小さい。
【0026】
また、UV波長域のレーザは、例えば、ポリエチレンテレフタレートからなる第1皮膜体2および第2皮膜体4に対する吸収率が紙である台紙10(図4参照)、台紙20(図5参照)およびシリコーンゲルである弾性体3よりも高い。したがって、UV波長域のレーザは、第1皮膜体2および第2皮膜体4を切断可能なエネルギー量で台紙10、台紙20および弾性体3を切断できない。よって、レーザ装置121は、レーザのエネルギー量を調整することで第1皮膜体2のみを選択的に切断することができる。
【0027】
刃122は、積層体1の少なくとも一部を切断するトムソン刃である。刃122は、刃先をテーブル110の載置面110aに向け且つ刃を載置面110aに対して垂直に立てた姿勢で刃移動機構123に設けられる。また、刃122は、Y方向に延びた状態で刃移動機構123に設けられている。刃122は、刃移動機構123によってテーブル110の載置面110aに載置された積層体1の厚み方向に沿って移動可能に構成されている。
【0028】
刃122は、刃移動機構123によってZ方向の任意の位置に移動可能である。刃122は、積層体1に対して刃先を押し付けることにより積層体1の少なくとも一部を切断する押切り用の刃である。刃122は、切断対象物に侵入する部分の体積が小さいほど浸入時の抵抗が少ない。本実施形態において、刃122の刃先角度は、例えば、35度以下である。
【0029】
カメラ124は、載置面110aに積載された積層体1および積層体1の切断位置2aを撮影可能である。カメラ124は、位置検出部130に電気的に接続される。カメラ124は、撮影した画像を位置検出部130に対して出力する。
【0030】
位置検出部130は、カメラ124によって撮影された画像内の任意の位置を、テーブル110上における座標として検出する。位置検出部130は、制御部140に電気的に接続される。位置検出部130は、前記画像に含まれる積層体1の切断位置2aを検出するとともに切断位置2aの座標情報を制御部140に対して出力する。
【0031】
制御部140は、テーブル移動機構111、刃移動機構123、レーザ装置121および位置検出部130を制御する。制御部140は、テーブル移動機構111および刃移動機構123と電気的に接続される。制御部140は、テーブル移動機構111に対してテーブル110を移動させるための制御信号を出力可能である。制御部140は、刃移動機構123に対して刃122を移動させるための制御信号を出力可能である。制御部140は、カメラ124、レーザ装置121、位置検出部130と電気的に接続されている。
【0032】
制御部140は、カメラ124に対して画像を撮影するための制御信号を出力可能である。制御部140は、レーザ装置121に対してレーザを照射するための制御信号を出力可能である。制御部140は、位置検出部130から切断位置2aの座標情報を取得可能である。
【0033】
このように構成される切断装置100は、テーブル110によって積層体1をレーザ装置121または刃122に対して任意の位置に移動可能である。切断装置100は、レーザ装置121または刃122のいずれか一方によって積層体1の少なくとも一部を切断可能である。切断装置100は、カメラ124が撮影した画像から積層体1の切断位置2aの座標情報に基づいてレーザ装置121から照射されるレーザの照射位置を積層体1の切断位置2aに合わせることが可能である。また、切断装置100は、切断位置2aの座標情報に基づいて刃122の刃先位置を積層体1の切断位置2aに合わせることが可能である。
【0034】
(実施形態1)
次に、図3から図6を用いて、本発明に係る積層体1の切断方法の例示的な実施形態1について説明する。図3は、実施形態1に係る積層体1の切断方法の一例を示す工程図である。図4は、実施形態1に係る積層前切断工程S1aの一例を示す図である。図5は、実施形態1に係る積層工程S1bの一例を示す図である。図6は、実施形態1に係る積層体切断工程S2の一例を示す図である。
【0035】
図3に示すように、積層体1の切断方法は、積層体形成工程S1と、積層体切断工程S2とを有する。積層体1の切断方法は、積層体形成工程S1、積層体切断工程S2の順に行われる。なお、以下の実施形態において、第1皮膜体2は、紙である台紙10に微粘着の接着剤によって接着された状態で供給される。また、第2皮膜体4は、紙である台紙20に微粘着の接着剤によって接着された状態で供給される。
【0036】
積層体形成工程S1は、第1皮膜体2が厚み方向に沿って切断された積層体1を形成する工程である。本実施形態において、積層体形成工程S1は、積層体1を形成する前に第1皮膜体2を切断するプレカット方式によって積層体1を形成する。積層体形成工程S1は、積層前切断工程S1aおよび積層工程S1bを有する。積層体形成工程S1は、積層前切断工程S1a、積層工程S1bの順に行われる。
【0037】
図4に示すように、積層前切断工程S1aは、第1皮膜体2を第1皮膜体2の厚み方向に沿って切断する工程である。積層前切断工程S1aにおいて、第1皮膜体2が接着された台紙10がテーブル110に吸着保持される。第1皮膜体2は、テーブル110によってXY平面上の任意の位置に移動される。
【0038】
第1皮膜体2は、切断装置100のレーザ装置121によって、第1皮膜体2側から第1皮膜体2の厚み方向(Z方向)に沿って切断される。第1皮膜体2は、例えば、第1皮膜体2に対してX方向に照射されるレーザ装置121のレーザによって複数の短冊状に切断される。
【0039】
短冊状に切断された第1皮膜体2は、テーブル110によって切断線がY方向に延びる位置に回転される。回転された第1皮膜体2は、第1皮膜体2の切断方向に対して垂直な方向であるX方向に照射されるレーザ装置121のレーザによって更に複数に切断される。これにより、第1皮膜体2は、格子状に分割される。
【0040】
レーザ装置121は、第1皮膜体2に対する吸収率が台紙10よりも高いUV波長域のレーザによって、台紙10を切断することなく、第1皮膜体2のみを切断する。レーザ装置121によって切断された第1皮膜体2は、微粘着の接着剤によって台紙10に接着されているため、切断後の位置が保持される。
【0041】
図5に示すように、積層工程S1bは、第1皮膜体2、弾性体3および第2皮膜体4を積層する工程である。積層工程S1bにおいて、積層体1は、底部と、底部の周囲を囲む枠部とから構成される型部材30を用いて形成される。積層工程S1bにおいて、台紙20に接着されている第2皮膜体4が、型部材30の内側底面に配置される。第2皮膜体4は、接着されている台紙20を型部材30の内側底面に接触させた状態で型部材30の枠内に位置している。
【0042】
次に、液状化した弾性体3が、型部材30の枠内に注入される。これにより、弾性体3は、第2皮膜体4の一方側に位置する。また、第2皮膜体4の厚み方向における一方の面に液状化した弾性体3が接触する。次に、型部材30の枠内に注入された弾性体3の液面が台紙10に保持された第1皮膜体2によって覆われる。これにより、弾性体3は、第1皮膜体2の一方側に位置する。また、弾性体3は、第1皮膜体2の厚み方向における一方の面に接触する。
【0043】
次に、液状化した弾性体3が、加熱によってゲル化される。弾性体3は、ゲル化によって第1皮膜体2および第2皮膜体4に密着(接着)する。弾性体3の厚み方向の両端面には、第1皮膜体2と第2皮膜体4とが位置している。これにより、台紙10と台紙20の間には、第1皮膜体2、弾性体3および第2皮膜体4が積層された積層体1が形成される。
【0044】
次に、型部材30から積層体1が取り出される。型部材30から取り出された積層体1は、第1皮膜体2から台紙10が剥離される。台紙10が剥離された積層体1は、台紙20をテーブル110に向けて載置面110aに載置される。積層体1は、テーブル110によって台紙20を吸着された状態でテーブル110に保持される。積層体1の台紙20および第2皮膜体4は、テーブル110に支持されている。弾性体3は、第2皮膜体4に支持されている。
【0045】
積層前切断工程S1aと積層工程S1bとを有する積層体形成工程S1では、弾性体3の弾性変形の影響を受けることなく第1皮膜体が切断された積層体1が形成される。また、積層体形成工程S1では、レーザ装置121によって切断された第1皮膜体2が台紙10に接着された状態で弾性体3に積層されるため、弾性体3に対して第1皮膜体2の位置がずれることがない。
【0046】
次に、積層体切断工程S2について説明する。積層体切断工程S2は、弾性体3および第2皮膜体4を切断する工程である。積層体切断工程S2は、位置検出工程S2a、位置調整工程S2b、切断工程S2cおよび積層体剥離工程S2dを有する。積層体切断工程S2は、位置検出工程S2a、位置調整工程S2b、切断工程S2c、積層体剥離工程S2dの順に行われる。積層体切断工程S2では、弾性体3および第2皮膜体4は、刃122によって切断される。
【0047】
図6に示すように、位置検出工程S2aは、切断された第1皮膜体2の切断位置2aを検出する工程である。位置検出工程S2aにおいて、テーブル110に載置されている積層体1の第1皮膜体2が切断装置100のカメラ124によって撮像される。カメラ124は、撮像した画像を位置検出部130に対して出力する。位置検出部130は、前記画像から第1皮膜体2の切断位置2aを検出する。更に、位置検出部130は、検出した切断位置2aの座標情報を算出する。
【0048】
位置調整工程S2bは、刃122の刃先位置と切断位置2aとを合わせる工程である。位置調整工程S2bにおいて、位置検出部130が算出した切断位置2aの座標情報に基づいて、テーブル110の移動によって刃122の刃先位置が切断位置2aに合わせられる。
【0049】
切断工程S2cは、弾性体3および第2皮膜体4を、第1皮膜体2の切断位置2aで、第1皮膜体2側から厚み方向に沿って切断する工程である。切断工程S2cにおいて、刃122が刃移動機構123によって第1皮膜体2の厚み方向に沿って移動される。刃122は、切断位置2aから第1皮膜体2内に入り込む。刃122は、刃移動機構123によって、台紙20に接触するまで厚み方向に沿って移動される。弾性体3および第2皮膜体4は、刃122によって切断される。弾性体3および第2皮膜体4は、刃122によって第1皮膜体2の全ての切断位置2aにおいて切断される。これにより。弾性体3は、厚み方向に見て第1皮膜体2の形状に切断される。
【0050】
弾性体3に支持されている第1皮膜体2は、弾性体3に積層される前に積層前切断工程S1aにおいて切断されているので、切断時に弾性体3の弾性変形による影響を受けない。また、弾性体3は、弾性体3よりも弾性率が高い第2皮膜体4によって支持されているので、切断時に第2皮膜体4の弾性変形による影響が抑制される。これにより、積層体1は、切断装置100によって、第1皮膜体2に対する切断面の傾きが抑制された小片積層体5が切り出される。
【0051】
積層体剥離工程S2dは、台紙20から格子状に切断された積層体1を剥離する工程である。積層体剥離工程S2dでは、台紙20から格子状に切断された積層体1が剥離される。格子状に切断された積層体1は、切断されていない台紙20と密着している。また、台紙20はテーブル110に吸着保持されている。これにより、台紙20をテーブル110に吸着保持させた状態で、台紙20から容易に格子状に切断された積層体1を剥離することができる。台紙20から剥離された積層体1は、複数のブロック形状の小片積層体5となる。
【0052】
上述のように構成される切断方法では、第1皮膜体2が厚み方向に沿って切断された積層体1において、第1皮膜体2の切断位置2aで、第1皮膜体2側から積層体1の厚み方向に隣接する弾性体3を切断する。積層体切断工程S2では、切断装置100の刃122の刃先が平面視で第1皮膜体2の切断位置2aに合わせて厚み方向に第1皮膜体2内に入り込む。つまり、刃122は、第1皮膜体2を切断することなく弾性体3の方向に移動する。よって、第1皮膜体2には、刃122から厚み方向への力がほとんど加わらない。したがって、積層体切断工程S2では、第1皮膜体2が切断されていない場合に比べて、第1皮膜体2による弾性体3の厚み方向への圧縮が抑制され、弾性体3が厚み方向に移動する刃122によって切断される。よって、弾性体3は、弾性体3の膨張と、刃122の移動とによって切断されることによる、切断面の湾曲、切断面の倒れ等が抑制される。
【0053】
また、上述の構成では、積層体形成工程S1は、積層前切断工程S1aにおいて第1皮膜体2を切断した後に、積層工程S1bにおいて弾性体3を第1皮膜体2に積層する。従って、第1皮膜体2を切断する際に厚み方向の切り込み深さの精度を考慮する必要がない。また、安定した状態で第1皮膜体2を所定の形状に切断することができる。すなわち、高精度に第1皮膜体2のみを切断することができる。積層体切断工程S2において小片積層体5を切り出す場合、第1皮膜体2の形状に沿った小片積層体5が切りだされる。
【0054】
また、上述の構成では、第1皮膜体2は、レーザ装置121から照射されるレーザによって非接触で切断される。つまり、積層体1の形成後に第1皮膜体2を切断する場合であっても、第1皮膜体2は、レーザによって弾性体3の弾性変形の影響をうけることなく切断される。また、所定の波長域のレーザを使用することで、第1皮膜体2のみが切断される。よって、積層体切断工程S2において、弾性体3が刃122によって第1皮膜体2に対する倒れを抑制しつつ、第1皮膜体2の切断位置2aに沿って切断することができる。
【0055】
また、上述の構成では、切断装置100におけるレーザ装置121のレーザは、UV波長域のレーザである。前記レーザは、様々な切断対象物に対してエネルギーの吸収率が高い。よって、前記レーザは、他の波長のレーザに比べて小さい出力で切断対象物を加工することができるので、切断対象物に対する熱ストレスが小さい。したがって、前記レーザは、積層体1の形成後に第1皮膜体2を切断する場合であっても、弾性体3にレーザによる熱ストレスを与えることなく第1皮膜体2のみを切断することができる。また、前記レーザは、切断面の溶跡またはバリの発生を抑制し、精度よく切断することができる。つまり、前記レーザは、切断時の熱ストレスによる弾性体3の物性の変化を抑制し、且つ第1皮膜体2の加工精度を向上させる。
【0056】
また、上述の構成では、第1皮膜体2は、弾性体3よりも厚みが薄い。したがって、積層体切断工程S2において、第1皮膜体2の切断位置2aで弾性体3を切断する際に、弾性体3を切断し易い。
【0057】
また、上述の構成では、積層体切断工程S2において、弾性体3よりも弾性率の高い第1皮膜体2は、第1皮膜体2の切断位置2aで弾性体3を切断する際に、弾性体3の変形の影響を受けにくいので、弾性体3を精度良く切断することができる。
【0058】
これにより、弾性率の異なる第1皮膜体2と弾性体3とを有する積層体1からばね定数が所定の範囲内に含まれる小片積層体5を寸法精度良く切り出すことができる。
【0059】
(実施形態1の変形例)
次に、図1および図6から図9を用いて、本発明に係る積層体1の切断方法の例示的な実施形態1の変形例について説明する。図7は、実施形態1の変形例に係る積層体1の切断方法の一例を示す工程図である。図8は、実施形態1の変形例に係る積層工程S1bの一例を示す図である。図9は、実施形態1の変形例に係る積層後切断工程S1cの一例を示す図である。なお、以下の説明において、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分についてのみ説明する。
【0060】
図7に示すように、実施形態1の変形例に係る積層体1の切断方法は、実施形態1の積層体形成工程S1に代わって、積層体形成工程S10を有する。積層体形成工程S10は、第1皮膜体2が厚み方向に沿って切断された積層体1を形成する工程である。積層体形成工程S10は、積層体形成工程S1の積層前切断工程S1aに代わって、積層後切断工程S1cを有する。積層体形成工程S10は、積層工程S1b、積層後切断工程S1cの順に行われる。本実施形態において、積層体形成工程S10は、積層体1を形成した後に第1皮膜体2を切断するポストカット方式によって積層体1を形成する。
【0061】
図8に示すように、積層体形成工程S10の積層工程S1bにおいて、第1皮膜体2が切断される前に、第1皮膜体2、弾性体3および第2皮膜体4が積層される。つまり、積層体形成工程S10における積層工程S1bでは、第1皮膜体2が厚み方向に沿って切断されていない積層体1が形成される。積層体形成工程S10における積層工程S1bでは、型部材30から取り出された積層体1は、図示しない計測装置によって、厚みが計測される。
【0062】
図9に示すように、積層後切断工程S1cは、積層体1の厚み方向における一端部に位置する第1皮膜体2を厚み方向に沿って切断する工程である。積層後切断工程S1cでは、第1皮膜体2は、積層工程S1bにおいて図示しない計測装置によって計測された積層体1の厚みを考慮して切断される。積層後切断工程S1cにおいて、積層体1は、台紙20をテーブル110に向けて載置面110aに載置される。積層体1は、テーブル110によって台紙20を吸着された状態でテーブル110に保持される。積層体1は、テーブル110によってXY平面上の任意の位置に移動される。
【0063】
次に、第1皮膜体2が切断装置100のレーザ装置121によって、第1皮膜体2の厚み方向に沿って切断される。第1皮膜体2は、例えば、第1皮膜体2に対してX方向に照射されるレーザ装置121のレーザによって複数の短冊状に切断される。短冊状に切断された第1皮膜体2は、テーブル110によって切断線がY方向に延びる位置に回転される。回転された第1皮膜体2は、第1皮膜体2の切断方向に対して垂直な方向であるX方向に照射されるレーザ装置121のレーザによって更に複数に切断される。これにより、第1皮膜体2は、格子状に分割される。レーザ装置121は、第1皮膜体2に対する吸収率が弾性体3よりも高いUV波長域のレーザによって、弾性体3が切断されることなく、第1皮膜体2のみが厚み方向に沿って切断された積層体1が形成される。
【0064】
積層工程S1bと積層後切断工程S1cとを有する積層体形成工程S10では、UV波長のレーザを有するレーザ装置121によって第1皮膜体2のみを切断するので、弾性体3の弾性変形の影響を受けることなく第1皮膜体が切断された積層体1が形成される。また、積層工程S1bでは、図示しない計測装置によって、積層体1の厚みが測定される。これにより、第1皮膜体2を切断する前に積層体1の厚みを把握することができる。よって、積層後切断工程S1cでは、ばね定数に影響する積層体1の厚みを考慮して積層体1の切断位置2aを調整することができる。
【0065】
積層体形成工程S10において、第1皮膜体2が厚み方向に沿って切断された積層体1を形成された後、積層体切断工程S2が行われる。第1皮膜体2が厚み方向に沿って切断された積層体1は、積層体切断工程S2において、弾性体3および第2皮膜体4が切断され、小片積層体5が切り出される。
【0066】
上述の構成では、積層工程S1bにおいて第1皮膜体2に弾性体3を積層した後に、積層後切断工程S1cにおいて第1皮膜体2のみを切断する。従って、第1皮膜体2を切断する前に積層体1の厚みを把握することができる。よって、ばね定数に影響する積層体1の厚みを考慮して積層体1の切断位置2aを調整することができる。これにより、弾性率の異なる第1皮膜体2と弾性体3とを有する積層体1からばね定数が所定の範囲内に含まれる小片積層体5を寸法精度良く切り出すことができる。
【0067】
(実施形態2)
次に、図1図4から図6図9および図10を用いて、本発明に係る積層体1の切断方法の例示的な実施形態2について説明する。図10は、実施形態2に係る積層体1の切断方法の一例を示す図である。
【0068】
図10に示すように、実施形態2に係る積層体1の切断方法は、実施形態1の積層体形成工程S1に代わって、積層体形成工程S100を有する。積層体形成工程S100は、第1皮膜体2が厚み方向に沿って切断された積層体1を形成する工程である。積層体形成工程S100は、積層体形成工程S1の積層前切断工程S1a、積層工程S1bおよび積層後切断工程S1cを有する。積層体形成工程S100は、積層前切断工程S1a、積層工程S1b、積層後切断工程S1cの順に行われる。本実施形態において、積層体形成工程S100は、積層体1を形成する前と積層体1を形成した後との2段階で第1皮膜体2を切断するハイブリット方式によって積層体1を形成する。
【0069】
積層体形成工程S100の積層前切断工程S1aにおいて、第1皮膜体2は、例えば、X方向に照射されるレーザ装置121のレーザによって複数の短冊状に切断される。
【0070】
積層体形成工程S100の積層工程S1bにおいて、複数の短冊状に切断された第1皮膜体2、弾性体3および第2皮膜体4が積層される。つまり、積層工程S1bでは、第1皮膜体2が厚み方向に見て短冊状に切断された積層体1が形成される。
【0071】
積層体形成工程S100の積層後切断工程S1cにおいて、第1皮膜体2が短冊状に切断された積層体1は、テーブル110によって第1皮膜体2の切断線がY方向に延びる位置に保持される。複数の短冊状に切断された第1皮膜体2は、X方向に照射されるレーザ装置121のレーザによって更に複数に切断される。これにより、第1皮膜体2は、格子状に分割される。
【0072】
積層体形成工程S100では、積層前切断工程S1a、積層工程S1bおよび積層後切断工程S1cにおいて、第1皮膜体2が厚み方向に沿って切断された積層体1が形成される。積層体形成工程S100において、第1皮膜体2は、積層前切断工程S1aと積層後切断工程S1cとによって、平面視で格子状に切断される。
【0073】
積層体形成工程S100では、積層前切断工程S1aにおいて、第1皮膜体2を弾性体3に積層する前に、安定した状態で第1皮膜体2を所定の形状に切断することができる。また、積層工程S1bでは、図示しない計測装置によって、積層体1の厚みが測定される。これにより、第1皮膜体2を切断する前に積層体1の厚みを把握している。よって、積層後切断工程S1cでは、ばね定数に影響する積層体1の厚みを考慮して積層体1の切断位置2aを調整することができる。
【0074】
上述の構成では、積層前切断工程S1aにおいて第1皮膜体2を所定の形状に切断(1回目)した後に、積層工程S1bにおいて弾性体3を第1皮膜体2に積層する。次に、積層後切断工程S1cにおいて第1皮膜体2のみを所定の大きさに切断(2回目)する。よって、積層前切断工程S1aにおいて安定した状態で第1皮膜体2を所定の形状に切断しつつ、積層後切断工程S1cにおいてばね定数に影響する積層体1の厚みを考慮して積層体1の切断位置2aを調整することができる。これにより、弾性率の異なる第1皮膜体2と弾性体3とを有する積層体1からばね定数が所定の範囲内に含まれる小片積層体5を寸法精度良く切り出すことができる。
【0075】
(小片積層体5)
次に、図11を用いて、本発明に係る積層体1の切断方法によって、積層体1から切り出された小片積層体5について説明する。図11は、小片積層体5および小片積層体5を有する製品6の構成を示す模式図である。小片積層体5は、第1皮膜体2、弾性体3および第2皮膜体4を有する弾性体である。小片積層体5は、第1皮膜体2、弾性体3、第2皮膜体4の順に積層されている。小片積層体5は、振動アクチュエータ等の振動を発生させる機器の振動を吸収する防振部材として用いられる。小片積層体5を前記機器に取り付けた状態で、小片積層体5のうち弾性体3の両端部に位置する弾性体3よりも弾性率が高い第1皮膜体2および第2皮膜体4は、前記機器に密着する。このため、小片積層体5は、前記機器の自重および振動が第1皮膜体2および第2皮膜体4によって弾性体3の全体に伝達される。よって、小片積層体5は、第1皮膜体2または第2皮膜体4から入力される前記機器からの振動を弾性体3全体の弾性変形によって効率よく減衰することができる。
【0076】
上述の構成では、小片積層体5は、第1皮膜体2に対して切断面の倒れ等が抑制されるので、厚み方向に見て第1皮膜体2の形状に沿った形状を有している。よって、小片積層体5は、積層体1の材質、厚みおよび厚み方向に見た形状によって定まるばね定数が範囲内に含まれている。これにより、小片積層体5は、振動を発生させる各種製品を支持することで、前記各種製品が発生させる特定の周波数の振動を減衰することができる。
【0077】
(小片積層体5を有する製品6)
次に、小片積層体5を有する製品6について説明する。製品6は、振動アクチュエータなどの電子機器を含む。製品6は、例えば、触覚デバイス等の情報伝達装置に用いられる振動アクチュエータである。図11に示すように、製品6は、例えば、筐体6aと、振動を発生させる機器6bと、小片積層体5とを有する。機器6bは、小片積層体5によって筐体6aに支持される。つまり、製品6は、機器6bが小片積層体5に支持された電子機器である。これにより、製品6は、機器6bと筐体6aとが共振することを抑制することができる。
【0078】
上述の構成では、製品6は、所定の範囲内のばね定数を有する小片積層体5に支持されることで、製品6が発生させる振動を減衰することができる。
【0079】
上述のように、実施形態1、実施形態1の変形例および実施形態2に係る積層体1の切断方法は、以下のような特徴を有することが可能である。
【0080】
(1)
皮膜体である第1皮膜体2と、前記第1皮膜体2と弾性率の異なる板状の弾性体3とが厚み方向に積層された積層体1を切断する切断方法である。前記積層体1として、厚み方向に沿って切断された前記第1皮膜体2の厚み方向一方側に前記弾性体3が位置し且つ前記第1皮膜体2に前記弾性体3が接触している積層体を形成する積層体形成工程S1と、前記弾性体3を、前記第1皮膜体2の切断位置2aで、前記第1皮膜体2側から厚み方向に沿って切断する積層体切断工程S2と、を有する。
【0081】
(2)
(1)に記載の切断方法において、前記積層体形成工程S1は、前記第1皮膜体2を前記第1皮膜体2の厚み方向に沿って切断する積層前切断工程S1aと、前記積層前切断工程S1aにおいて切断された前記第1皮膜体2に前記弾性体3を積層する積層工程S1bと、を有する。
【0082】
(3)
(1)に記載の切断方法において、前記積層体形成工程S10は、前記第1皮膜体2に前記弾性体3を積層する積層工程S1bと、前記積層工程S1bにおいて前記弾性体3が積層された前記第1皮膜体2を前記第1皮膜体2の厚み方向に沿って切断する積層後切断工程S1cと、を有する。
【0083】
(4)
(1)に記載の切断方法において、前記積層体形成工程S100は、前記第1皮膜体2を前記第1皮膜体2の厚み方向に沿って切断する積層前切断工程S1aと、前記積層前切断工程S1aにおいて切断された前記第1皮膜体2に前記弾性体3を積層する積層工程S1bと、前記積層工程S1bにおいて前記弾性体3が積層された前記第1皮膜体2を前記第1皮膜体2の厚み方向に沿って切断する積層後切断工程S1cと、を有する。
【0084】
(5)
(1)から(4)のいずれか一項に記載の切断方法において、前記第1皮膜体2は、レーザによって切断され、前記弾性体3は、刃122によって切断される。
【0085】
(6)
(5)に記載の切断方法において、前記レーザの波長は、UV波長域に含まれる。
【0086】
(7)
(1)から(6)のいずれか一項に記載の切断方法において、前記積層体形成工程S1は、前記第1皮膜体2に前記第1皮膜体2よりも厚い前記弾性体3が接触している前記積層体1を形成する。
【0087】
(8)
(1)から(7)のいずれか一項に記載の切断方法において、前記積層体形成工程S1は、前記第1皮膜体2に前記第1皮膜体2よりも弾性率の低い前記弾性体3が接触している前記積層体1を形成する。
【0088】
(9)
(1)から(8)のいずれか一項に記載の切断方法によって前記積層体1から切り出された、小片積層体5。
【0089】
(10)
(9)に記載の小片積層体5を有する、製品6。
【0090】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0091】
上述の実施形態では、積層体1は、第1皮膜体2および第2皮膜体4と、弾性体3とから構成される。しかしながら、積層体は、第1皮膜体と第2皮膜体のうちどちらか一方の皮膜体と、前記皮膜体に隣接する弾性体とから構成されてもよい。
【0092】
上述の実施形態では、第1皮膜体2および第2皮膜体4は、膜状の弾性体である。しかしながら、第1皮膜体および第2皮膜体は、膜状でなくてよい。第1皮膜体および第2皮膜体は、第1皮膜体および第2皮膜体に隣接する弾性体よりも厚みが薄ければよい。
【0093】
上述の実施形態では、第1皮膜体2は、例えば、硬質のポリエチレンテレフタレートである。しかしながら、第1皮膜体は、第1皮膜体に隣接する弾性体よりも弾性率の高い皮膜体であればよい。
【0094】
上述の実施形態では、第1皮膜体2に隣接する弾性体3は、例えば、加熱によりゲル化するシリコーンゲル等のゲル材料である。しかしながら、第1皮膜体に隣接する弾性体は、第1皮膜体よりも弾性率の低い弾性体であればよい。また、第1皮膜体に隣接する弾性体は、複数の板状の弾性体が積層されていてもよい。
【0095】
上述の実施形態では、第2皮膜体4は、例えば、第1皮膜体2と同じ弾性率および同じ厚さである。しかしながら、第2皮膜体は、第1皮膜体と弾性率および厚さが異なっていてもよい。第2皮膜体は、第2皮膜体に隣接する弾性体よりも弾性率の高い皮膜体であればよい。
【0096】
上述の実施形態では、レーザ装置121のレーザは、UV波長域の波長を有する。しかしながら、レーザ装置のレーザは、ポリエチレンテレフタレートからなる第1皮膜体および第2皮膜体に対する吸収率が紙である台紙およびシリコーンゲルである弾性体よりも高い波長域の波長を有していればよい。
【0097】
上述の実施形態では、第2皮膜体4および第2皮膜体4に隣接する弾性体3を切断する刃122は、押切りによって切断対象物を切断する刃である。しかしながら、第2皮膜体および第2皮膜体に隣接する弾性体を切断する刃は、引き切りによって切断対象物を切断する刃でもよい。刃は、例えば、カッター刃でもよい。
【0098】
上述の実施形態では、刃122は、刃先角度が35度以下である。しかしながら、刃は、刃先角度が35度より大きくてもよい。刃は、刃先角度が35度より大きくする場合、刃先角度が35度の刃よりも、刃の厚みを小さくする。
【0099】
上述の実施形態では、切断装置100は、カメラ124からの画像によって積層体1の切断位置2aを検出する。しかしながら、切断装置は、レーザセンサー等によって積層体の切断位置を検出してもよい。
【0100】
上述の各実施形態では、台紙10および台紙20は、紙である。しかしながら、台紙は、紙でなくてもよい。台紙は、例えば、ポリエチレンテレフタレートによって構成されていてもよい。台紙は、第1皮膜体および第2皮膜体を切断するレーザに対する吸収率が、第1皮膜体および第2皮膜体よりも低ければよい。または、台紙は、第1皮膜体および第2皮膜体を切断可能なレーザのエネルギー量によって切断されない十分な厚みを有していればよい。
【0101】
上述の各実施形態では、積層体形成工程S1、S10およびS100において、第1皮膜体2は、紙である台紙10に微粘着の接着剤によって接着された状態で供給される。また、第2皮膜体4は、紙である台紙20に微粘着の接着剤によって接着された状態で供給される。しかしながら、積層体形成工程において、第1皮膜体および第2皮膜体は、台紙に接着されてなくてもよい。
【0102】
上述の各実施形態では、積層体形成工程S1、S10およびS100において、第1皮膜体2は、紙である台紙10に微粘着の接着剤によって接着された状態で供給される。また、第2皮膜体4は、紙である台紙20に微粘着の接着剤によって接着された状態で供給される。しかしながら、積層体形成工程において、台紙に第1皮膜体および第2皮膜体を接着する工程を有していてもよい。
【0103】
上述の各実施形態では、積層体形成工程S1、S10およびS100において、第1皮膜体2は、第1皮膜体2に対してX方向に複数の短冊状に切断される。短冊状に切断された第1皮膜体2は、テーブル110によって切断線がY方向に延びる位置に回転される。回転された第1皮膜体2は、第1皮膜体2の切断方向に対して垂直な方向であるX方向に更に複数に切断される。しかしながら、第1皮膜体は、第1皮膜体に対してY方向に複数の短冊状に切断されてもよい。第1皮膜体は、第1皮膜体に対してY方向に複数の短冊状に切断された後、テーブルによって切断線がX方向に延びる位置に回転され、第1皮膜体の切断方向に対して垂直な方向であるY方向に更に複数に切断されてもよい。
【0104】
上述の各実施形態では、積層体形成工程S1、S10およびS100において、第1皮膜体2は、平面視で格子状に切断される。しかしながら、積層体形成工程において、第1皮膜体は、平面視で任意の形状に切断されてもよい。
【0105】
上述の各実施形態では、積層体形成工程S1、S10およびS100において、第1皮膜体2が、平面視で格子状に切断された積層体1が形成される。しかしながら、積層体形成工程において、第2皮膜体が、平面視で格子状に切断された積層体が形成されてもよい。積層体形成工程において、第2皮膜体が平面視で格子状に切断された積層体が形成される場合、積層体切断工程では、第2皮膜体の切断位置で、第2皮膜体に隣接する弾性体と、第1皮膜体とが切断される。
【0106】
上述の各実施形態では、積層前切断工程S1aにおいて、第1皮膜体2は、レーザ装置121によって、第1皮膜体2側から第1皮膜体2の厚み方向に沿って切断される。しかしながら、積層前切断工程において、第1皮膜体は、刃によって、第1皮膜体側から第1皮膜体の厚み方向に沿って切断されてもよい。また、積層前切断工程において使用する刃は、例えば、カッター刃または高精度の抜き型でもよい。
【0107】
上述の各実施形態では、積層工程S1bにおいて、積層体1は、液状化した弾性体3を、第1皮膜体2と第2皮膜体4との間に位置させ、加熱によって液状化した弾性体3がゲル化されることで形成される。しかしながら、積層工程において、積層体は、予め加熱によってゲル化させた弾性体を用いて形成されてもよい。積層工程において、予め加熱によってゲル化させた弾性体を用いて積層体を形成する場合、ゲル化させた弾性体は、第2皮膜体の厚み方向における一方の面に積層される。次に、ゲル化させた弾性体の第2皮膜体と接触する面と反対の面に、第1皮膜体が積層される。これにより、積層体が形成される。また、積層工程において、予め加熱によってゲル化させた弾性体を用いて積層体を形成する場合、型部材は使用しなくてもよい。
【0108】
上述の各実施形態では、積層後切断工程S1cにおいて、第1皮膜体2は、切断装置100のレーザ装置121によって、第1皮膜体2側から第1皮膜体2の厚み方向に沿って切断される。しかしながら、積層後切断工程において、第1皮膜体は、切断装置の刃による引き切りによって、第1皮膜体に隣接する弾性体を厚み方向に圧縮することなく切断してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、積層体の切断方法、前記切断方法によって切断された小片積層体および小片積層体を有する振動アクチュエータなどの電子機器(製品)に利用可能である。
【符号の説明】
【0110】
1 積層体
2 第1皮膜体
2a 切断位置
3 弾性体
4 第2皮膜体
5 小片積層体
6 製品
6a 筐体
6b 機器
10、20 台紙
30 型部材
100 切断装置
110 テーブル
110a 載置面
111 テーブル移動機構
120 支持体
121 レーザ装置
122 刃
123 刃移動機構
124 カメラ
130 位置検出部
140 制御部
S1、S10、S100 積層体形成工程
S1a 積層前切断工程
S1b 積層工程
S1c 積層後切断工程
S2 積層体切断工程
S2a 位置検出工程
S2b 位置調整工程
S2c 切断工程
S2d 積層体剥離工程
図1
図2
図3
図4
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