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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041527
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】入出力信号測定システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/05 20060101AFI20240319BHJP
   H04L 25/02 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
G05B19/05 L
H04L25/02 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146393
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】村上 和彦
【テーマコード(参考)】
5H220
5K029
【Fターム(参考)】
5H220BB15
5H220CC02
5H220CX05
5H220JJ07
5H220JJ17
5H220JJ34
5H220KK03
5K029KK01
5K029KK22
5K029KK24
5K029KK25
(57)【要約】
【課題】設備稼働中に各種入出力信号の波形をリアルタイムで測定できる入出力信号測定システムを提供する。
【解決手段】実施形態は、複数の外線と盤内に設けられたIOユニットの複数の端子とをそれぞれ中継して接続するIOアダプタと、前記複数の外線を介して前記複数の端子にそれぞれ入出力する複数の信号のうち少なくとも1つの信号を取得し、前記少なくとも1つの信号の信号波形の異常の有無を判定する信号波形診断装置と、を備える。前記IOアダプタは、前記複数の外線から分岐された複数の配線と、前記複数の配線に接続された複数の接続端子と、前記信号波形診断装置から出力される選択信号を入力する選択端子と、前記選択信号にもとづいて、前記複数の配線のいずれかを選択する選択回路と、を有するコネクタを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の外線と盤内に設けられたIOユニットの複数の端子とをそれぞれ中継して接続するIOアダプタと、
前記複数の外線を介して前記複数の端子にそれぞれ入出力する複数の信号のうち少なくとも1つの信号を取得し、前記少なくとも1つの信号の信号波形の異常の有無を判定する信号波形診断装置と、
を備え、
前記IOアダプタは、
前記複数の外線と前記複数の端子との間の電気的接続をそれぞれ分岐する複数の配線と、
前記複数の配線を前記信号波形診断装置に接続する複数の接続端子と、
前記信号波形診断装置から出力される選択信号を入力する選択端子と、
前記選択信号にもとづいて、前記複数の配線のいずれかを選択する選択回路と、
を有するコネクタを含み、
前記信号波形診断装置から出力された選択信号にもとづいて、前記複数の信号のいずれかを選択して、前記信号波形診断装置に出力する入出力信号測定システム。
【請求項2】
前記選択回路は、前記複数の配線と前記複数の接続端子との間にそれぞれ接続された複数のオペアンプ回路を含み、
前記複数のオペアンプ回路は、前記選択信号によりイネーブルされることによって、前記複数の配線のいずれかを選択する請求項1記載の入出力信号測定システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの信号は、繰り返しパルス信号であり、
前記信号波形診断装置は、前記繰り返しパルス信号の1サイクル分のデータにもとづいて、前記少なくとも1つの信号の信号波形の異常の有無を判定する請求項1記載の入出力信号測定システム。
【請求項4】
前記信号波形診断装置は、前記少なくとも1つの信号の信号波形が異常と判定された場合に、前記少なくとも1つの信号の信号波形に関するデータを保存する波形データ格納装置を含む請求項3記載の入出力信号測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、外線から制御盤に入出力する信号を測定する入出力信号測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼製造ライン等の設備において、パルスジェネレータ信号等の異常発生時や設備状態の調査時等に、制御盤に入出力する信号の調査が必要な場合がある。このような調査は設備稼働中に行いたい場合も多い。
【0003】
しかしながら、制御盤では、外線がIOアダプタに直接接続されているため、IOアダプタと外線の間に信号測定用の端子台を設けて、外線の信号を分岐させる必要がある。そのため、設備の休止中に端子台の接続作業を行い、その後、設備を稼働させてから信号の波形測定を行う。
【0004】
設備の再稼働により、異常とされた現象が解消されたり、異常が再現されなかったりする場合があるとの問題がある。
【0005】
また、このような調査は、現地の作業者がオシロスコープ等を用いて、波形測定を行い、入出力信号問題の有無を判断する。そのため、異常の有無の判断のための知識、経験等の多寡によって、原因調査の期間は質等に差が出る場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5778615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、設備稼働中に各種入出力信号の波形をリアルタイムで測定できる入出力信号測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、複数の外線と盤内に設けられたIOユニットの複数の端子とをそれぞれ中継して接続するIOアダプタと、前記複数の外線を介して前記複数の端子にそれぞれ入出力する複数の信号のうち少なくとも1つの信号を取得し、前記少なくとも1つの信号の信号波形の異常の有無を判定する信号波形診断装置と、を備える。前記IOアダプタは、前記複数の外線と前記複数の端子との間の電気的接続をそれぞれ分岐する複数の配線と、前記複数の配線を前記信号波形診断装置に接続する複数の接続端子と、前記信号波形診断装置から出力される選択信号を入力する選択端子と、前記選択信号にもとづいて、前記複数の配線のいずれかを選択する選択回路と、を有するコネクタを含み、前記信号波形診断装置から出力された選択信号にもとづいて、前記複数の信号のいずれかを選択して、前記信号波形診断装置に出力する。
【発明の効果】
【0009】
実施形態によれば、設備稼働中に各種入出力信号の波形をリアルタイムで測定できる入出力信号測定システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る入出力信号測定システムを例示する模式図である。
図2】実施形態に係る入出力信号測定システムのIOアダプタを例示する模式的な回路図である。
図3】実施形態に係る入出力信号測定システムの各部の動作を説明するための模式図である。
図4】実施形態に係る入出力信号測定システムの信号波形診断装置を例示する模式図である。
図5図5(a)は、実施形態に係る入出力信号測定システムの入力処理部の動作を説明するための模式である。図5(b)および図5(c)は、入力処理部の動作を説明するための模式的な動作波形図の例である。
図6図6(a)および図6(b)は、実施形態に係る入出力信号測定システムの波形整形処理部の動作を説明するための模式的な動作波形図の例である。
図7図7(a)および図7(b)は、実施形態に係る入出力信号測定システムの波形データ診断部の動作を説明するための模式的な動作波形図の例である。
図8】実施形態に係る入出力信号測定システムの波形形状診断部の動作を説明するための模式図である。
図9】実施形態に係る入出力信号測定システムの波形形状診断部の動作を説明するための模式的な動作波形図の例である。
図10】実施形態に係る入出力信号測定システムの波形形状診断部の動作を説明するための模式的な動作波形図の例である。
図11図11(a)および図11(b)は、比較例の制御盤における入出力信号の測定方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0012】
図1は、実施形態に係る入出力信号測定システムを例示する模式図である。
図1に示すように、入出力信号測定システム100は、IOアダプタ13と、信号波形診断装置30と、を備える。IOアダプタ13は、制御盤10内に設けられている。IOアダプタ13は、制御盤10内に設置されたIOユニット14に外線ケーブル16を中継接続するとともに、外線ケーブル16を信号波形診断装置30に分岐させて接続する。IOアダプタ13は、パルス波形測定用ケーブル32aを介して信号波形診断装置30に接続されている。信号波形診断装置30は、パルス波形測定用ケーブル32aを介して、複数の外線ケーブル16から選択された所望の外線ケーブルに接続される。信号波形診断装置30は、パルス波形測定用ケーブル32aおよび選択された外線ケーブルを介して、IOユニット14に入出力する信号の波形をリアルタイムで取得する。
【0013】
制御盤10には、IOユニット14が収納されている。IOユニット14は、IO中継ケーブル15を介して、IOアダプタ13に接続されている。IOアダプタ13は、IOアダプタユニット12に複数個設けることができ、IOアダプタユニット12には、IOアダプタ13の個数に応じたIOユニット14を設けることができる。図1の具体例では、8台のIOユニット14がIOアダプタユニット12に設けられている。この例では、1段分のIOアダプタユニット12が描かれているが、たとえば、制御盤10には、複数段のIOアダプタユニット12を設置して収納することができる。信号波形診断装置30は、これら複数のIOユニット14に入出力する信号を波形測定用コネクタ31で分岐させ、選択信号で所望の信号を取得することが可能である。
【0014】
信号波形診断装置30は、切替装置32、処理装置34および表示装置35等を含んでいる。切替装置32は、IOアダプタ13の波形測定用コネクタ31と処理装置34との間に接続されている。切替装置32は、処理装置34から出力された選択信号を中継して、波形測定用コネクタ31を介してIOアダプタ13に出力する。切替装置32は、選択信号に応じた外線を入出力する信号の波形をIOアダプタ13から取得し、処理装置34に出力する。
【0015】
処理装置34は、入出力信号測定システム100の操作者やあらかじめ設定されプログラム等にしたがって、取得すべき入出力信号の選択信号を生成して切替装置32に出力する。処理装置34は、切替装置32から出力された信号を入力して所定の処理を実行して、取得した信号波形の異常の有無を判定する。この例では、信号波形の異常判定には、機械学習を用いる。新たなモードの異常が生じた場合には、学習済みデータをその異常が生じたときの波形である異常波形で更新する。
【0016】
表示装置35は、処理装置34によって処理されたデータを、操作者等の操作にしたがって表示する。処理装置34は、たとえばコンピュータ装置であり、表示装置35は、たとえば、コンピュータ装置に接続された表示モニタである。処理装置34を構成する各部について後に詳述するが、これら各部は、処理装置34を構成するコンピュータ装置のプログラムの一部として実現されてもよい。
【0017】
上述の構成により、実施形態に係る入出力信号測定システム100では、設備稼働中にリアルタイムで所望の信号波形を取得することができる。取得した信号波形は、学習済みデータを用いて、異常の有無を判定するので、操作者の経験や知識によらず、客観的かつ迅速に信号波形の異常の有無を判定することができる。
【0018】
信号波形診断装置30は、たとえば、制御盤10内に収納されてもよいし、制御盤10の外部に設置するようにしてもよい。信号波形診断装置30を小型化し、可搬型として、必要時に操作者が現場でIOアダプタ13に接続するようにしてもよい。信号波形診断装置30を制御盤10内やその付近に常置し、信号波形診断装置30を通信ネットワークに接続して、リモート操作によりリアルタイムの波形データを取得するようにしてもよい。
【0019】
IOアダプタ13の構成について詳細に説明する。
図2は、実施形態に係る入出力信号測定システムのIOアダプタを例示する模式的な回路図である。
図2に示すように、IOアダプタ13は、外線側コネクタ13a、IO中継ケーブル側コネクタ13bおよび波形測定用コネクタ31を有する。外線側コネクタ13aおよび中継ケーブル側コネクタ13bの各端子は、IOアダプタ13の内部で、配線13cによって、1対1に電気的に接続されている。配線13cは、IOアダプタ13の内部で分岐しており、波形測定用コネクタ31の外線接続用端子31a1に接続されている。
【0020】
この例のように、外線接続用端子31a1と配線13cとの間にオペアンプ31bを設けることが好ましい。オペアンプ31bを設けることによって、外線ケーブル16に入出力する信号を高いインピーダンスで受けて、信号波形診断装置30に供給することができ、より正確な信号波形を取得することができる。オペアンプ31bは、ゲイン1のボルテージフォロワとされていてもよいし、選択信号によって、ゲインを設定できるようにしてもよい。オペアンプを用いない場合には、選択信号によって外線を選択できる切替回路が用いられる。
【0021】
波形測定用コネクタ31は、選択信号用端子31a2を有する。選択信号用端子31a2は、この例では、複数のオペアンプ31bのいずれかを選択するようにIOアダプタ13の内部で接続されている。選択信号によって選択されたオペアンプ31bは、たとえばゲイン1のボルテージフォロワとして機能し、選択されないオペアンプ31bは、ディスエーブルされる。
【0022】
図2に示されたこの例では、5本の外線ケーブル16のうち、4本の外線ケーブル16から4個の外線接続用端子31a1に外線ケーブル16を入出力する信号を分岐させて波形を測定することができる。選択信号は、4本の外線を入出力する信号を識別するようにあらかじめ設定されている。選択信号用端子31a2に入力する選択信号によって、取得する外線の信号が決定される。
【0023】
波形測定用コネクタ31は、IOアダプタ13にあらかじめ設けられ、上述の配線13cおよびオペアンプ31bを含む構成を有している。そのため、信号波形診断装置30の測定用コネクタやプローブを波形測定用コネクタ31に接続することによって、波形観測用の端子台を別途設ける必要なく、設備稼働中にIOアダプタユニット12に入出力する信号の波形をリアルタイムで取得することができる。
【0024】
実施形態に係る入出力信号測定システム100の動作についてより詳細に説明する。
図3は、実施形態に係る入出力信号測定システムの各部の動作を説明するための模式図である。
図3に示すように、切替装置32は、この例では、複数台設けられている。切替装置32は、複数のIOアダプタユニット12のそれぞれについて設けられている。切替装置32は、切替装置32ごとに処理装置34に接続されてもよいし、この例のように、デイジーチェーンで接続されてもよい。
【0025】
切替装置32は、パルス波形測定用ケーブル32aを介してIOアダプタ13の波形測定用コネクタ31に接続される。パルス波形測定用ケーブル32aは、波形測定用コネクタ31の外線接続用端子31a1に接続されるケーブルおよび選択信号用端子31a2に接続されるケーブルを含んでいる。
【0026】
選択信号は、複数の外線ケーブル16のそれぞれに対応するようにあらかじめ設定されており、たとえば、テーブルとして処理装置34が有している。処理装置34は、信号波形診断装置30の操作者の設定やあらかじめ設定されたプログラムにしたがって、測定する信号に対応する外線を選択するように選択信号を切替装置32に出力する。
【0027】
選択信号は、IOアダプタ13を識別する識別データにも紐づけられている。つまり、外線ケーブル16の信号は、IOアダプタ13の識別データに紐づけられ、さらに選択信号に紐づけられている。切替装置32は、選択信号を選択すべきIOアダプタ13の波形測定用コネクタ31に出力する。たとえば、この例では、2台のIOアダプタ13のうちの一方のIOアダプタ13では、選択信号で指定された外線ケーブル16に対応するオペアンプ31bが動作して、選択された信号の波形を取得する。信号波形は、パルス波形測定用ケーブル32aを介して切替装置32に出力される。切替装置32は、取得した信号波形を処理装置34に出力する。
【0028】
処理装置34は、取得した信号波形を所定の処理を実行して、表示装置35に出力する。
【0029】
信号波形診断装置30の動作について、詳細に説明する。
まず、信号波形診断装置30の構成例について説明する。
図4は、実施形態に係る入出力信号測定システムの信号波形診断装置を例示する模式図である。
【0030】
図4に示すように、処理装置34は、入力処理部44、波形整形処理部45、波形データ診断部46、波形形状診断部47、波形保存処理部48、波形通信処理部49および波形データ格納装置40を有している。
【0031】
入力処理部44は、切替装置32のIOアダプタ出力コネクタ41に接続されている。IOアダプタ出力コネクタ41は、IOアダプタ13の波形測定用コネクタ31に接続されている。入力処理部44は、取得した信号のアナログデータをディジタルデータに変換して波形整形処理部45に出力する。波形整形処理部45は、入力処理部44からデータを取得して、信号のパルス波形に関する所定のデータを測定する。波形データ診断部46は、入力処理部44によって生成されたディジタルデータを用いて、所定のデータを測定する。波形形状診断部47は、波形整形処理部45によって測定された1サイクルのパルス信号のデータを用いて、パルス波形の異常の有無を判定する。
【0032】
各部で取得され、測定されたデータは、選択信号に紐づけされて、波形保存処理部48を介して、たとえば実測のアナログの測定波形データとともに、波形データ格納装置40に記憶される。波形データ格納装置40に記憶されたデータは、信号波形診断装置30の操作者の操作等にしたがって、波形通信処理部49によって所望のデータ出力形式に変換され、表示装置35に出力される。波形通信処理部49は、リアルタイムで取得され、後述する処理や診断等された信号の波形に関するデータを所望のデータ出力形式に変換して表示装置35に出力する。
【0033】
処理装置34の各部の構成例および動作について説明する。
図5(a)は、実施形態に係る入出力信号測定システムの入力処理部の動作を説明するための模式図である。図5(b)および図5(c)は、入力処理部の動作を説明するための模式的な動作波形図の例である。
【0034】
図5(a)に示すように、入力処理部44は、入力切替処理部51およびAD変換器52を有する。入力切替処理部51は、切替装置32に接続されている。入力切替処理部51は、取得すべき信号を入出力する外線に対応する選択信号42を切替装置32に出力する。入力切替処理部51は、切替装置32によって取得された選択信号42に対応する外線の信号をIOアダプタ出力信号43として入力する。
【0035】
入力切替処理部51の出力には、AD変換器52が接続されている。AD変換器52は、アナログ信号であるIOアダプタ出力信号43をディジタル信号であるディジタル出力信号53に変換して出力する。
【0036】
AD変換器52が入力するIOアダプタ出力信号43は、たとえば、図5(b)に示すようなパルス信号波形である。AD変換器52は、アナログ信号であるIOアダプタ出力信号43を、図5(c)に示すようなディジタル出力信号53に変換して出力する。
【0037】
なお、図5(c)におけるプロットは、アナログ値のようにプロットして表示しているが、各データX1~X18の値および形式は、たとえば10ビットのディジタルデータである。ディジタルデータを表すデータ構造は、配列(T,Xn)で表される。たとえば、配列(T,Xn)の各データは、サンプリングした順に波形データ格納装置40に記憶される。サンプリング周期Tは一定であり、T=tn-(tn-1)である。Xnは、時刻tnにおける測定値である。この例では、nは、1~18の整数である。後述するディジタルデータの場合も同様である。配列(T,Xn)は、選択信号42に紐づけされて、つまり外線ケーブル16を入出力する信号に紐づけされて、後の処理のために用いられる。
【0038】
図6(a)および図6(b)は、実施形態に係る入出力信号測定システムの波形整形処理部の動作を説明するための模式的な動作波形図の例である。
図4に示した波形整形処理部45は、図6(a)および図6(b)に示すように、パルス信号の立上り検出および立下り検出の各測定を実行する。ここで、図6(a)および図6(b)のそれぞれの上段に示すように、パルス信号は、図5(b)に示したIOアダプタ出力信号43である。実際に測定されるデータは、図6(a)および図6(b)それぞれの下段に示すように、図5(c)に示したAD変換後のディジタル出力信号53である。
図6(a)に示すように、パルス信号においては、立上り時のしきい値および立下り時のしきい値があらかじめ設定されている。波形整形処理部45は、立上り時のしきい値に達する直前の時刻t4を記憶し、立下り時のしきい値に達した直後の時刻t11を記憶する。
【0039】
図6(b)に示すように、波形整形処理部45は、時刻t11以降も立上り時の値を監視し、次に立上り時のしきい値に達する直前の時刻t12を記憶する。波形整形処理部45は、1つ目の立上り時の時刻t4および2つ目の立上り時の時刻t12を用いて、取得したパルス信号の周期T(=t12-t4)を計算し、記憶する。
【0040】
信号波形診断装置30は、このときの立上り時刻t4、立下り時刻t11、周期Tをアナログ信号の波形とともに、波形保存処理部48を介して、波形データ格納装置40に記憶する。波形データ格納装置40には、外線ケーブル16を入出力するいずれかの信号(以下、外線信号ともいう)に紐づけられた、立上り時刻t4、立下り時刻t11、周期Tおよびディジタル出力信号53の配列(T,Xn)が記憶され、データベースが更新される。アナログ信号であるIOアダプタ出力信号43を、外線信号に紐づけて、データベースに格納するようにしてもよい。
【0041】
波形データ診断部46は、この例では、取得したパルス信号について、あらかじめ設定されたON検出電圧およびOFF検出電圧にもとづいて、クロストークの影響の有無を判定する。
図7(a)および図7(b)は、実施形態に係る入出力信号測定システムの波形データ診断部の動作を説明するための模式的な動作波形図の例である。
図7(a)および図7(b)に示すように、波形データ診断部46は、あらかじめ設定されたON検出値およびOFF検出値を有している。図7(a)に示した波形は、クロストークを生じていないことを表している。図7(b)に示した波形は、A部でクロストークを生じていることを表している。なお、図では、説明のために、各波形をアナログ信号で示しているが、波形データ診断部46は、ディジタル信号の各時刻tnにおけるデータ値Xnを用いて、検出値超過の有無の判定を実行する。
【0042】
波形データ診断部46は、信号波形について、1周期T内や、ON期間内、OFF期間内で、ON検出値またはOFF検出値のいずれかを再度通過したか否かを判定する。波形データ診断部46は、1周期T内や、ON期間内、OFF期間内でいずれかの検出値を再度通過した場合には、クロストークが発生したと判断する。波形データ診断部46は、クロストークが発生したと判断した信号の配列(T,Xn)を外線信号に紐づけて、波形保存処理部48を介して、波形データ格納装置40に記憶し、データベースを更新する。IOアダプタ出力信号43の実波形データを同時に記憶するようにしてもよい。
【0043】
波形形状診断部47は、1周期T内の信号波形(以下、1サイクル波形ともいう)を用いて、その信号が異常を生じ得る信号波形であるか否かを判定する。
図8は、実施形態に係る入出力信号測定システムの波形データ診断部の動作を説明するための模式図である。
図9は、実施形態に係る入出力信号測定システムの波形形状診断部の動作を説明するための模式的な動作波形図の例である。
図10は、実施形態に係る入出力信号測定システムの波形形状診断部の動作を説明するための模式的な動作波形図の例である。
【0044】
波形形状診断部47では、ディジタル信号データを解析して、すでに登録されている波形異常のデータと比較することによって、その信号の良否を判定するものである。
図8に示すように、波形形状診断部47は、波形形状抽出処理部81、波形形状認識処理部82および波形異常検出出力部83を有している。
【0045】
波形形状抽出処理部81は、波形整形処理部45で生成された1サイクル波形を波形整形処理部45または波形データ格納装置40から取得する。図9には、波形異常の有無を判定する信号波形の例が示されている。上段の図は、IOアダプタ出力信号43aを示しており、下段の図は、入力処理部44によりディジタル化され、波形整形処理部45により1周期T分の信号波形とされたディジタル出力信号53aを示している。
【0046】
波形形状認識処理部82は、1サイクル波形であるディジタル出力信号53aと、波形異常データとを比較して、ディジタル出力信号53aが波形異常データと一致した場合には、取得したディジタル出力信号53aは波形異常であると判定する。
【0047】
波形異常検出出力部83は、ディジタル出力信号53aが波形異常であると判定された場合に、その信号波形が異常であるとデータベースを更新する。
【0048】
波形データ格納装置40には、波形異常を有するデータが学習済みデータとしてあらかじめ登録されており、波形形状認識処理部82は、取得したディジタル出力信号53の各時刻のデータと、異常波形の各時刻のデータとを比較する。たとえば、波形形状認識処理部82は、ディジタル出力信号53および異常波形のそれぞれの特徴量を計算し、特徴量の一致する割り合いが所定のしきい値に達した場合に、取得したディジタル出力信号53の波形は、異常状態を示していると判定する。
【0049】
図10に示すように、波形形状認識処理部82は、波形異常データとの比較に限らず、複数の波形異常データとディジタル出力信号53aとをそれぞれ比較し、一致するか否かを判定する。
【0050】
波形形状診断部47は、取得したディジタル出力信号53aがいずれの波形異常データとも一致しないと判断した場合であっても、そのディジタル出力信号53aがシステムの異常に影響していることがある。そのような場合には、そのデータを新たな波形異常データとして波形データ格納装置40に記憶する。このようにして、波形異常を有する信号についての学習済みデータのデータベースは、逐次更新される。
【0051】
実施形態に係る入出力信号測定システム100の効果について、比較例の入出力信号の測定方法と比較しつつ説明する。
図11(a)および図11(b)は、比較例の制御盤における入出力信号の測定方法を説明するための模式図である。
図11(a)に示すように、比較例の制御盤110では、外線ケーブル16は、IOアダプタ113およびIO中継ケーブル15を介してIOユニット14に接続される。
【0052】
このような制御盤110に、オシロスコープのような波形測定装置120を接続する場合には、波形測定用端子台121が設けられる。
【0053】
図11(b)に示すように、波形測定用端子台121は、信号を測定する外線ケーブル16と外線コネクタ16aとの間に設けられる。IOアダプタ113は、外線ケーブル16をIO中継ケーブル15に中継するように接続する。したがって、この例では、IOアダプタ113の外線コネクタ16aから外線ケーブル16を一旦取り外す必要がある。外線ケーブル16をコネクタから取り外すには、設備の休止期間中に行う必要があり、タイムリーな波形測定をすることが困難である。さらに、取り外した外線ケーブル16に波形測定用端子台121を接続する作業が必要になる。
【0054】
実施形態に係る入出力信号測定システム100は、波形測定用コネクタ31が設けられたIOアダプタを備えている。波形測定用コネクタ31は、外線ケーブル16とIO中継ケーブル15との間に設けられ、外線ケーブル16を分岐した端子が設けられている。そのため、設備稼働中であっても、波形測定用コネクタ31に測定機器を接続することによって、リアルタイムで信号波形を観測することができる。
【0055】
測定機器を接続する波形測定用コネクタ31の端子と外線側コネクタ13aとの間には、オペアンプ31bが接続されている。そのため、波形測定用コネクタ31に設けられた端子のインピーダンスを高くすることができ、波形測定用コネクタ31に測定機器を接続した場合であっても、稼働中の設備に影響を与えることなく信号波形を測定することができる。
【0056】
実施形態に係る入出力信号測定システム100は、波形測定用コネクタ31を介して接続された信号波形診断装置30を備えている。信号波形診断装置30は、複数の外線ケーブル16から所望の外線を選択できるように選択信号を生成する。IOアダプタ13は、選択信号に応じて、外線ケーブル16を選択して切り替える選択回路やオペアンプ31bを有しているので、選択信号に応じて複数種類の信号波形を測定することが可能である。
【0057】
実施形態に係る入出力信号測定システム100の信号波形診断装置30は、アナログ信号として取得した信号波形をディジタル出力信号に変換して信号処理するので、高い自由度で各種判定を行うことができる。信号波形診断装置30は、このようにディジタル信号の処理を行うので、すでに異常判定された学習済みの波形データとの比較により、自動的に異常の有無を判定することができる。そのため、異常波形に対するノウハウ等を要することなく、誰でも信号波形診断装置30により、不具合発生時の信号波形を識別することができる。
【0058】
上述では、リアルタイムで測定する信号を外線を入出力する信号のうち、パルスジェネレータ等のパルス信号であるとして説明したが、信号波形診断装置の波形整形機能や診断機能等を変更することによって、パルス信号以外の信号にも適用することが可能である。
【0059】
このようにして、設備稼働中に各種入出力信号の波形をリアルタイムで測定できる入出力信号測定システムを実現することができる。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
10…制御盤、12…IOアダプタユニット、13…IOアダプタ、13c…配線、14…IOユニット、15…IO中継ケーブル、16…外線ケーブル、30…信号波形診断装置、31…波形測定用コネクタ、31a1…外線接続用端子、31a2…選択信号用端子、31b…オペアンプ、32…切替装置、34…処理装置、35…表示装置、40…波形データ格納装置、44…入力処理部、45…波形整形処理部、46…波形データ診断部、47…波形形状診断部、100…入出力信号測定システム
図1
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図11