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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004179
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】薬液注入支援装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
E02D3/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103698
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 直宏
(72)【発明者】
【氏名】中島 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】片桐 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】金光 桂
(72)【発明者】
【氏名】氏原 将之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智弘
(72)【発明者】
【氏名】服部 吉容
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】大村 望美
(72)【発明者】
【氏名】林 瑞樹
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AB01
2D040BD03
2D040CB03
2D040DA04
2D040DA17
2D040DB01
2D040FA00
(57)【要約】
【課題】注入管が計画値に対して傾斜している場合でも、隣り合う注入管の注入口から土壌に注入された薬液の浸透領域が離間してしまうのを抑制することができる薬液注入支援装置を得る。
【解決手段】薬液注入支援装置は、挿入穴へ挿入された注入管に形成された注入口の位置情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した位置情報に基づいて、薬液の浸透領域が重なるように、前記注入口毎に薬液の注入量を導出する導出部と、を備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌に列状に並ぶ挿入穴へ夫々挿入された注入管に形成される注入口の位置情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した位置情報に基づいて、隣り合う前記注入管の前記注入口から土壌に注入される薬液の浸透領域が重なるように、前記注入口毎に薬液の注入量を導出する導出部と、
を備える薬液注入支援装置。
【請求項2】
前記取得部が取得した位置情報に基づいて、前記注入管を3次元でモデリングし、前記導出部によって導出された薬液の注入量に基づいて、薬液の浸透領域を3次元でモデリングするモデリング部と、
前記モデリング部による3次元モデルを表示画面に表示する表示部と、
を備える請求項1に記載の薬液注入支援装置。
【請求項3】
前記表示部は、一の浸透領域のモデルと他の浸透領域のモデルとの重複部分を、他の部分の表示と異なるように表示をする、
請求項2に記載の薬液注入支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬液注入支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の薬液注入工法では、可撓性のある掘削装置で所定の経路のボーリング孔を掘削し、当該ボーリング孔内に注入装置を挿入して、所定区域毎に薬液を注入する薬液注入工法において、ボーリング孔の経路を決定して地上側で画像として表示する工程と、注入装置の位置を決定して地上側で画像として表示する工程と、薬液を注入する領域における薬液注入圧及び/又は薬液注入量を決定する決定工程と、薬液が注入された領域を地上側で画像として表示する薬液注入領域表示工程を有し、この決定する工程では、薬液注入領域表示工程で表示されている先行して薬液が注入された領域の画像と、施工現場の土壌の性状に基づいて薬液注入圧及び/又は薬液注入量を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-89162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、薬液を土壌に注入するために形成される注入管の注入口は、注入管に間隔を空けて複数形成される。ここで、注入管が挿入される挿入穴(削孔により形成された孔)が計画値に対して傾斜していると、注入管も傾斜してしまう。そうすると、隣り合う注入管の注入口から土壌に注入された薬液の浸透領域が離間してしまうことがある(改良体が連続しないことある)。
【0005】
本開示の課題は、注入管が計画値に対して傾斜している場合でも、隣り合う注入管の注入口から土壌に注入された薬液の浸透領域が離間してしまうのを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る薬液注入支援装置は、 土壌に列状に並ぶ挿入穴へ夫々挿入された注入管に形成される注入口の位置情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した位置情報に基づいて、隣り合う前記注入管の前記注入口から土壌に注入される薬液の浸透領域が重なるように、前記注入口毎に薬液の注入量を導出する導出部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
第1態様に係る構成によれば、取得部が、列状に並ぶ挿入穴へ夫々挿入された注入管に形成される注入口の位置情報を取得する。さらに、導出部が、取得部によって取得された位置情報に基づいて、隣り合う注入管の注入口から土壌に注入される薬液の浸透領域が重なるように、注入口毎に薬液の注入量を導出する。これにより、注入管が計画値に対して傾斜している場合でも、隣り合う注入管の注入口から土壌に注入された薬液の浸透領域が離間してしまうのを抑制することができる。
【0008】
第2態様に係る薬液注入支援装置は、第1に記載の薬液注入支援装置において、前記取得部が取得した位置情報に基づいて、前記注入管を3次元でモデリングし、前記導出部によって導出された薬液の注入量に基づいて、薬液の浸透領域を3次元でモデリングするモデリング部と、前記モデリング部による3次元モデルを表示画面に表示する表示部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
第2態様に係る構成によれば、モデリング部が、取得部が取得した位置情報に基づいて、注入管を3次元でモデリングし、導出部によって導出された薬液の注入量に基づいて、薬液の浸透領域を3次元でモデリングする。さらに、表示部が、モデリング部による3次元モデルを表示画面に表示する。これにより、隣り合う注入管の注入口から土壌に注入された薬液の浸透領域が重なっていることを視覚で確認することができる。
【0010】
第3態様に係る薬液注入支援装置は、第2態様に記載の薬液注入支援装置において、前記表示部は、一の浸透領域のモデルと他の浸透領域のモデルとの重複部分を、他の部分の表示と異なるように表示をすることを特徴とする。
【0011】
第3態様に係る構成によれば、表示部は、一の浸透領域のモデルと他の浸透領域のモデルとの重複部分を、他の部分の表示と異なるように表示をする。これにより、薬液の浸透領域が重なっていることを視覚で容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、挿入穴が狙い値に対して傾斜している場合でも、隣り合う注入管の注入口から土壌に注入された薬液の浸透領域が離間してしまうのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(A)(B)(C)本開示の実施形態に係る薬液注入支援装置を用いて実施される薬液注入工法を示した模式図である。
図2】(A)(B)(C)本開示の実施形態に係る薬液注入支援装置を用いて実施される薬液注入工法を示した模式図である。
図3】(A)(B)本開示の実施形態に係る薬液注入支援装置を用いて実施される薬液注入工法を示した模式図である。
図4】(A)(B)本開示の実施形態に係る薬液注入支援装置を用いて実施される薬液注入工法を示した模式図である。
図5】(A)(B)(C)本開示の実施形態に係る薬液注入支援装置を用いて実施される薬液注入工法であって、薬液が土壌に注入される工程を示した模式図である。
図6】本開示の実施形態に係る薬液注入支援装置を用いて実施される薬液注入工法で削孔された挿入穴の穴頭を上方から見た平面図である。
図7】本開示の実施形態に係る薬液注入支援装置のハードウェア構成を示したブロック図である。
図8】本開示の実施形態に係る薬液注入支援装置の機能構成を示したブロック図である。
図9】本開示の実施形態に係る薬液注入支援装置によって実行される支援の流れを示したフロー図である。
図10】本開示の実施形態に係る薬液注入支援装置を用いてモデリングされた複数の注入管を示した斜視図である。
図11】本開示の実施形態に係る薬液注入支援装置を用いてモデリングされた薬液の浸透領域を示した斜視図である。
図12】本開示の実施形態に対する変形形態に係る薬液注入支援装置の順位調整部を説明するのに用いた模式図である。
図13】本開示の実施形態に対する変形形態に係る薬液注入支援装置の順位調整部を説明するのに用いた模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の実施形態に係る薬液注入支援装置の一例について図1図13に従って説明する。なお、図中に示す矢印Hは、鉛直方向であって上下方向を示し、矢印Wは、水平方向であって、幅方向を示し、矢印Dは、水平方向であって、奥行き方向を示す。また、矢印H、矢印W、及び矢印Dは、互いに直交する。
【0015】
先ず、本実施形態に係る薬液注入支援装置10が用いられる薬液注入工法について説明する。なお、以下に説明する薬液注入工法では、1個の挿入穴を形成させ、その挿入穴を用いて地盤Gに薬液を注入する工程を説明する。実際の薬液注入工法では、複数の挿入穴を列状に形成させ、その複数の挿入穴を用いて地盤Gに薬液を注入することで、例えば、薬液が土壌に浸透して形成された改良体としての遮水壁が形成される。ここで、本実施形態において、列状とは、1列であってもよく、複数列であってもよく、また、千鳥であってもよい。つまり、列状とは、一方から他方に向かって並んでいる状態を示す。
【0016】
(薬液注入工法)
以下薬液注入工法について、各工程に分けて説明する。
【0017】
〔削孔工程・グラウト注入工程〕
先ず、図1(A)に示されるように、削孔装置110を用いて、地盤Gを削孔して挿入穴20を形成し、ケーシングパイプ50を建て込む。
【0018】
また、図1(B)に示されるように、ホース12を用いて、挿入穴20の壁面とケーシングパイプ50の外周面との間にグラウト材(図示省略)を注入する。なお、このグラウト材については、後述する注入口102を通して土壌に注入される薬液が鉛直方向に逃げてしまうのを抑制するために用いられる。
【0019】
〔注入管100の建て込み工程〕
さらに、図1(C)に示されるように、ケーシングパイプ50内に注入管100を建て込む。この注入管100には、内部と外部とを貫通する注入口102(図5(A)参照)が長さ方向に離間して同様の間隔で複数形成されている。
【0020】
ここで、建て込まれた注入管100に対して挿入式の傾斜測定器を挿入させることで、注入管100の位置情報が検出される。なお、この位置情報については、詳細を後述する。
【0021】
〔ケーシングパイプ50の引抜工程〕
注入管100の位置情報が検出されると、図2(A)に示されるように、グラウト材の硬化が完了する前にケーシングパイプ50を引き抜く。そして、グラウト材が硬化すると、注入管100の周囲には、グラウト材によって形成された薄肉の壁部が形成される。
【0022】
〔注入パッカー150の挿入工程〕
さらに、図2(B)に示されるように、注入管100に注入パッカー150を挿入する。なお、注入パッカー150の挿入については、図6に示されるように、上方から見て千鳥状に全ての挿入穴20が形成され、全ての挿入穴20に注入管100が挿入された後に、注入パッカー150が順次注入管100に挿入される。
【0023】
注入パッカー150は、図5(A)に示されるように、吐出口152aが形成された注入ホース152と、吐出口152aを挟むパッカー材154とを含んで構成されおり、所謂ダブルパッカーである。
【0024】
具体的には、注入ホース152は、注入管100に挿入可能とされる可撓性を有した管体であり、先端部分の周壁には、吐出口152aが形成されている。そして、吐出口152aを注入ホース152の長手方向で挟むように、一対のパッカー材154が注入ホース152の外周面に取り付けられている。
【0025】
パッカー材154は、水圧によって膨らむゴム風船である。パッカー材154の外径は、萎んだ状態では注入管100の内径より小さくなるようになっている。これにより、パッカー材154が萎んだ状態では、図5(A)に示すように、注入パッカー150を注入管100の内部で移動させることができる。
【0026】
一方、パッカー材154の外径は、膨らんだ状態では注入管100の内径より大きくなるようになっている。これにより、パッカー材154が膨らんだ状態では、図5(B)に示すように、パッカー材154の周面が注入管100の内周面に密着することで、一対のパッカー材154と注入管100との間には、空間V01が形成される。
【0027】
〔薬液注入工程〕
注入管100に挿入された注入パッカー150における注入ホース152の吐出口152aと、注入管100の注入口102とが、図5(C)に示されるように、鉛直方向で同様の位置に配置され、パッカー材154を膨らませる。そして、図示せぬ送液装置等から注入ホース152の内部へ薬液が送出される。送出された薬液は、注入ホース152の吐出口152aから吐出する。さらに、吐出口152aから吐出された薬液は、空間V01に充填され、注入管100の注入口102から土壌に注入される。土壌に注入された薬液が土壌に浸透して球状となり、薬液の浸透領域Rが形成される。なお、詳細は後述するが、注入口102から土壌に注入される注入量については、薬液注入支援装置10の注入量導出部66によって導出された注入量が用いられる。
【0028】
ここで、前述したように、注入管100には長手方向に間隔を空けて注入口102が複数形成されている。そこで、先ず、図2(C)に示されるように、注入管100の下端部分に形成させた注入口102(以下「注入口102a」と記載することがある)から薬液が土壌に注入され、土壌に球状の浸透領域Rが形成される。
【0029】
注入管100の下端部分に形成された注入口102aからの薬液の注入が完了すると、パッカー材154を萎め、図3(A)に示されるように、注入パッカー150を引き上げる。具体的には、注入口102aの上隣に形成された注入口102(以下「注入口102b」と記載することがある)と、注入ホース152の吐出口152a(図5(B)参照)とが鉛直方向で同様の位置に配置されるように、注入パッカー150を引き上げる。
【0030】
そして、パッカー材154を膨らませ、送液装置等から注入ホース152の内部へ薬液が送出される。送出された薬液は、図5(C)に示されるように、注入ホース152の吐出口152aから吐出する。さらに、吐出口152aから吐出された薬液は、空間V01に充填され、注入管100の注入口102から土壌に注入される。土壌に注入された薬液が土壌に浸透して球状となり、図3(B)に示されるように、薬液の浸透領域Rが形成される。
【0031】
注入管100に形成された注入口102bからの薬液の注入が完了すると、パッカー材154を萎め、注入パッカー150を段階的に上方に移動させ、図4(A)(B)に示されるように、前述した工程を繰り返す。これにより、球状の浸透領域Rが、一部が重なった状態で積み上げられる。
【0032】
このように、上下方向に積み上げられた浸透領域Rが、平面視で千鳥状に並べられた注入管100に対して夫々形成されることで、浸透領域Rが壁状に広がり改良体となる。
【0033】
(薬液注入支援装置10の構成)
次に、薬液注入支援装置10について説明する。薬液注入支援装置10は、注入管100の建て込み工程で検出された注入管100の位置情報を取得し、水平方向及び鉛直方向に隣り合う浸透領域Rが重なるように、夫々の注入管100の注入口102毎に薬液の注入量を導出する。先ず、薬液注入支援装置10のハードウェア構成を説明する。
【0034】
〔薬液注入支援装置10のハードウェア構成〕
図7に示されるように、薬液注入支援装置10は、CPU(Central Processing Unit)31、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)33、ストレージ34、通信インタフェース(I/F)35を有する。各構成は、バス39を介して相互に通信可能に接続されている。
【0035】
CPU31は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU31は、ROM32またはストレージ34からプログラムを読み出し、RAM33を作業領域としてプログラムを実行する。CPU31は、ROM32またはストレージ34に記録されているプログラムにしたがって、各構成の制御および各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM32またはストレージ34には、予め入力されている土壌の状態、及び薬液が注入される注入圧等から、注入口102毎に薬液の注入量を導出する導出プログラムが格納されている。
【0036】
ROM32は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM33は、作業領域として一時的にプログラムまたはデータを記憶する。ストレージ34は、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、および各種データを格納する。通信インタフェース35は、注入管100に挿入された傾斜測定器、及び表示画面等と通信するためのインタフェースであり、たとえば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0037】
上記の導出プログラムを実行する際に、薬液注入支援装置10は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。次に、薬液注入支援装置10が実現する機能構成について説明する。
【0038】
〔薬液注入支援装置10の機能構成〕
薬液注入支援装置10は、図8に示されるように、取得部60と、傾度導出部62と、差異導出部64と、注入量導出部66と、モデリング部68と、表示部70とを備えている。各部の具体的な機能については、後述する作用で説明する。
【0039】
(薬液注入支援装置10の作用)
次に、薬液注入支援装置10の作用について、図9に示すフロー図を用いて説明する。
【0040】
先ず、ステップS100では、取得部60が、注入管100の建て込み工程で検出された注入管100の位置情報を夫々取得し、取得された注入管100の位置情報から夫々の注入管100に形成された注入口102の位置情報を取得する。
【0041】
次に、ステップS200では、傾度導出部62が、取得部60によって取得された位置情報に基づいて注入管100の傾斜角度(姿勢)を導出する。
【0042】
次に、ステップS300では、差異導出部64が、傾度導出部62によって導出された傾斜角度、及び取得部60によって取得された位置情報から、計画された注入管100及び注入口102の位置と現状の位置とを比較する。そして、計画された隣り合う注入口102の距離と、現状の隣り合う注入口102の距離との差異を導出する。つまり、差異導出部64は、隣り合う注入口102の距離において、計画値に対して近接している部分と、離間している部分とを導出する。
【0043】
次に、ステップS400では、注入量導出部66が、予め入力されている土壌の状態、薬液が注入される注入圧、及び差異導出部64によって導出された情報から注入口102毎に薬液の注入量を導出する。具体的には、隣り合う注入口102によって土壌に注入された薬液の浸透領域Rが重なるように注入口102毎に薬液の注入量を導出する。注入量導出部66は、導出部の一例である。
【0044】
次に、ステップS500では、モデリング部68が、取得部60で取得された位置情報から注入管100を3次元でモデリングし、注入量導出部66によって導出された注入量情報から注入口102毎に薬液の浸透領域Rを球状にモデリングする。
【0045】
具体的には、モデリング部68は、図10に示されるように、注入管100を3次元でモデリングし、図11に示されるように、注入口102毎に薬液の浸透領域Rを球状にモデリングする。
【0046】
例えば、図10に示されるように、モデリングされた図中手前列の左から2番目の注入管100(以下「注入管100a」)が、計画値と相違し、鉛直方向に対して傾斜している。このため、注入管100aについては、モデリングされた図中手前列の左から1番目の注入管100(以下「注入管100b」)との距離、及び図中手前列の左から3番目の注入管100(以下「注入管100c」)との距離が、計画値と相違する。換言すれば、注入管100aに形成された注入口102と、注入管100bに形成された注入口102との距離が計画値と相違する。さらに、注入管100aに形成された注入口102と、注入管100cに形成された注入口102との距離が計画値と相違する。
【0047】
本実施形態では、図10に示されるように、注入管100aの下端部分で、注入管100aと注入管100bとの距離が近接し、注入管100aと注入管100cとの距離が離間する。このため、注入量導出部66によって導出された薬液の注入量については、図11に示されるように、注入管100bの下端部分の注入口102から注入される薬液の量を少なくし、注入管100cの下端部分の注入口102から注入される薬液の量を多くする。換言すれば、注入管100bの下端部分の注入口102から注入される薬液の浸透領域Rを小さくし、注入管100cの下端部分の注入口102から注入される薬液の浸透領域Rを大きくする。
【0048】
次に、ステップS600では、表示部70が、モデリング部68によってモデリングされたデータを、液晶モニター等の表示画面に表示して一連の動作を終了する。
【0049】
(まとめ)
なお、本開示を特定の実施形態について詳細に説明したが、本開示は係る実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。特許請求の範囲、明細書および図面の記載から当業者が認識することができる技術的思想に反しない限り、変更、削除、付加、及び各実施形態の組み合わせが可能である。
【0050】
また、上記実施形態では、特に説明しなかったが、薬液注入支援装置10が薬液を注入する順番を調整する順位調整部を備えてもよい。複数の注入管100から薬液を土壌に注入するときに、どの注入管100から順番に薬液を注入するかを調整する場合には、薬液を注入する注入量が少ない注入管100から順番に薬液を注入するように調整する。具体的には、図12に示されるように、注入管100fと注入管100eとの距離、及び注入管100fと注入管100gとの距離L1が、計画値L2より広い場合がある。このような場合には、注入管100fからの注入量を計画値に対して多くする必要がある。注入管100fから計画値より多い薬液が注入されると、隣接する注入口102が詰まってしまうことがある。そこで、このようなときには、注入量が注入管100fに比して少ない注入管100e、及び注入管100gから薬液を注入し、その後で、注入管100fから薬液を注入する。
【0051】
さらに、1個の注入管100には、長手方向に離間して複数の注入口102が形成されている。そこで、どの注入口102から順番に薬液を注入するかを調整する場合には、薬液を注入する注入量が少ない注入口102から順番に薬液を注入するように調整する。
【0052】
具体的には、図13に示されるように、注入管100jと注入管100kとの距離について、下端部分で離間しており、上端部分で近接している。このような場合には、注入管100kの上端部分の注入口(図示省略)からの薬液の注入量を計画値に対して少なくし、注入管100kの下端部分の注入口(図示省略)からの薬液の注入量を計画値に対して多くする。注入管100kの下端部分の注入口から計画値より多い薬液が注入されると、隣接する注入口が詰まってしまうことがある。そこで、このような場合には、注入量が計画値に対して少ない上端部分の注入口から薬液を注入する。
【0053】
また、上記実施形態では、薬液注入支援装置10は、取得部60と、傾度導出部62と、差異導出部64と、注入量導出部66と、モデリング部68と、表示部70とを備えていたが、注入量導出部66が、予め入力されている土壌の状態、薬液が注入される注入圧、及び取得部60が取得した位置情報によって、注入口102毎に薬液の注入量を直接導出してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、特に説明しなかったが、表示部70が、一の浸透領域のモデルと他の浸透領域のモデルとの重複部分を、他の部分の表示と異なるように表示画面に表示させてもよい。これにより、重なっている部分が視覚により容易に確認することができる。さらには、表示部70が、重複部分が一番少ない部分を他の部分の表示と異なるように表示画面に表示させてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、特に説明しなかったが、浸透領域のモデルと他の浸透領域のモデルとの重複部分の体積が予め決められた閾値に対して少ない場合には、他の部分の表示と異なるように表示画面に表示させてもよい。これにより、注意箇所を容易に理解することができる。
【符号の説明】
【0056】
10 薬液注入支援装置
20 挿入穴
60 取得部
66 注入量導出部(導出部の一例)
68 モデリング部
70 表示部
100 注入管
102 注入口
R 浸透領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13