(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004455
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】ポリマーフィルムおよびその使用
(51)【国際特許分類】
B29C 59/02 20060101AFI20240109BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20240109BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20240109BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240109BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B29C59/02
C03C27/12 D
B60J1/00 H
C08J5/18 CEX
B32B17/10
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074389
(22)【出願日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】111124092
(32)【優先日】2022-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】202210738983.3
(32)【優先日】2022-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519435854
【氏名又は名称】チャン チュン ペトロケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ズ-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、イェン-チェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チェン-ファン
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4F209
4G061
【Fターム(参考)】
4F071AA30
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4G061AA03
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4G061CD03
4G061CD18
4G061DA23
4G061DA29
4G061DA30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】互いにほとんど付着しないポリマーフィルム、および該ポリマーフィルムを用いて製造された気泡欠陥がない合わせガラスを提供する。
【解決手段】ポリマーフィルムは、第1表面および第2表面を有し、第1表面は、実体比率10%で0.15μm3/μm2から1.20μm3/μm2の範囲のピーク実体体積(Vmp)および0.73から10.02の範囲の尖度(Sku)を有し、実体比率、ピーク実体体積、尖度は、ISO25178-2:2012に従って定義される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面および第2表面を有し、前記第1表面は、実体比率10%で0.15μm3/μm2から1.20μm3/μm2の範囲のピーク実体体積(Vmp)、および0.73から10.02の範囲の尖度(Sku)を有し、前記実体比率、前記ピーク実体体積、前記尖度は、ISO25178-2:2012に従って定義される、ポリマーフィルム。
【請求項2】
前記第2表面は、実体比率10%で0.15μm3/μm2から1.20μm3/μm2の範囲のピーク実体体積(Vmp)、および0.73から10.02の範囲の尖度(Sku)を有し、前記実体比率、前記ピーク実体体積、前記尖度は、ISO25178-2:2012に従って定義される、請求項1に記載のポリマーフィルム。
【請求項3】
前記第1表面および前記第2表面は、独立して10μmから660μmの範囲のプロファイル要素の平均幅(Rsm)を有し、前記プロファイル要素の前記平均幅は、ISO4287:1997に従って定義される、請求項1または2に記載のポリマーフィルム。
【請求項4】
5℃から23℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する、請求項1または2に記載のポリマーフィルム。
【請求項5】
ポリビニルアセタールを含む、請求項1または2に記載のポリマーフィルム。
【請求項6】
前記ポリビニルアセタールは、ポリ(ビニルブチラール)である、請求項5に記載のポリマーフィルム。
【請求項7】
前記ポリビニルアセタールは、90,000から120,000の範囲の数平均分子量(Mn)を有する、請求項5に記載のポリマーフィルム。
【請求項8】
さらに可塑剤を含む、請求項5に記載のポリマーフィルム。
【請求項9】
前記ポリビニルアセタール100重量部に対して、前記可塑剤の量は、35重量部から50重量部の範囲である、請求項8に記載のポリマーフィルム。
【請求項10】
第1ガラスシート、第2ガラスシート、および前記第1ガラスシートと前記第2ガラスシートとの間に配置された中間フィルムを含み、前記中間フィルムは、請求項1または2に記載のポリマーフィルムによって提供された、合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーフィルムに関し、具体的には、特定のピーク実体体積(Vmp)および尖度(Sku)を有するポリマーフィルムに関する。本発明は、また、前記ポリマーフィルムを用いて製造された合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、2枚のガラスシートの間にポリマーフィルムを入れ、ホットプレスを行なうことでガラスシートとポリマーフィルムとを貼り合わせて形成された複合構造を備えるガラス資材である。合わせガラスは、優れた耐衝撃性および遮音性を有するので、自動車産業および建築産業において広く使用されている。
【0003】
合わせガラスの製造プロセスには、ガラスシートとポリマーフィルムとをホットプレスすることが含まれるので、合わせガラス内およびガラスシートとポリマーフィルムとの間に空気が残ることを防ぐために、通常、ポリマーフィルムの表面にエンボス加工をすることで、テクスチャ(つまり、設計された凹凸構造)を形成し、プレプレス時の脱気を促進し、それによって合わせガラス内に気泡が発生することを防ぐ。加えて、合わせガラスの製造において、ポリマーフィルムを所望の大きさに切断し、そしてプレス加工を行う前に切断したポリマーフィルムをお互いに重ね合わせる。しかしながら、重ね合わせられたポリマーフィルムは、重力およびポリマーフィルムの粘着性により互いに付着することがあり、その積み重ねられたポリマーフィルムを、ポリマーフィルムを損傷することなく分離することを困難にする。その上、合わせガラスの製造の際の、合わせガラスのガラスシートとポリマーフィルムとの間に残留する空気を十分に除去することにおける困難さは、劣る外観または劣る耐候性を備えた合わせガラスをもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
驚くべきことに、本発明者らは、上記の問題を、ポリマーフィルムの表面のピーク実体体積(Vmp)および尖度(Sku)を制御することによって解決できることを見出した。したがって、本発明は、特定のピーク実体体積および尖度を有するポリマーフィルムに関する。本発明のポリマーフィルムは互いにほとんど付着せず、その結果として「自己付着試験」に合格することができる。さらに、本発明のポリマーフィルムから製造される合わせガラスは気泡欠陥がない。本発明の好ましい態様において、ポリマーフィルムは、特に優れた耐候性を有する。耐候性は、明細書に記載された「高温気泡試験」の結果により証明される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
具体的には、本発明の目的は、第1表面および第2表面を有し、前記第1表面は、実体比率10%で0.15μm3/μm2から1.20μm3/μm2の範囲のピーク実体体積(Vmp)および0.73から10.02の範囲の尖度(Sku)を有し、前記の実体比率、ピーク実体体積、および尖度はISO25178-2:2012に従って定義される、ポリマーフィルムを提供することである。
【0006】
本発明のいくつかの実施形態では、前記第2表面は、実体比率10%で0.15μm3/μm2から1.20μm3/μm2の範囲のVmp、および0.73から10.02の範囲のSkuを有し、前記の実体比率、Vmp、およびSkuは、ISO25178-2:2012に従って定義される。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態では、前記第1表面および前記第2表面は、独立して10μmから660μmの範囲のプロファイル要素の平均幅(Rsm)を有し、前記プロファイル要素の前記平均幅は、ISO4287:1997に従って定義される。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態では、前記ポリマーフィルムは、5℃から23℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態では、前記ポリマーフィルムはポリビニルアセタールを含む。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態では、前記ポリビニルアセタールは、ポリ(ビニルホルマール)、ポリ(ビニルアセタール)、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(ビニルペンタナール)、ポリ(ビニルヘキサナール)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されうる。本発明の好ましい実施形態では、前記ポリビニルアセタールは、ポリ(ビニルブチラール)である。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態では、前記ポリビニルアセタールは、90,000から120,000の範囲の数平均分子量(Mn)を有する。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態では、前記ポリマーフィルムは、さらに可塑剤を含む。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では、前記ポリビニルアセタール100重量部に対して、前記可塑剤の量は、35重量部から50重量部の範囲である。
【0014】
本発明の別の目的は、第1ガラスシート、第2ガラスシート、および前記第1ガラスシートと前記第2ガラスシートとの間に配置された中間フィルムを含み、前記中間フィルムは前述のポリマーフィルムによって提供された、合わせガラスを提供することである。
【0015】
本発明の上記の目的、技術的特徴、および利点をより明確にするために、本発明を以下のいくつかの実施形態を参照して詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。しかしながら、本発明は様々な実施形態で具現化することができ、本明細書に記載された実施形態に限定されるべきではない。
【0017】
別段の定めがない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載の「a」、「the」などの表現は、単数形および複数形の両方を含むべきである。
【0018】
特に断りのない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載の「第1(first)」、「第2(second)」などの表現は、説明された要素または構成要素を区別するためにのみ使用され、特別な意味はない。これらの表現は、いかなる優先順位を示すために使用されない。
【0019】
本明細書および特許請求の範囲に記載の用語「実体比率(material ratio)」は、ISO25178-2:2012に従って定義される。実体比率曲線は、表面高さを、それによって囲まれた領域の面積に対して表す関数曲線グラフを意味し、実体比率は、指定された高さより上の囲まれた領域の面積を意味する。
【0020】
本明細書および特許請求の範囲に記載の用語「ピーク実体体積(peak material volume)(Vmp)」は、ISO25178-2:2012に従って定義される。ピーク実体体積は、特定の実体比率で減少した実体のピークの体積である。
【0021】
本明細書および特許請求の範囲に記載の用語「尖度(kurtosis)(Sku)」は、ISO25178-2:2012に従って定義される。尖度は、粗さプロファイルの表面高さ分布の鋭さの尺度である。Skuが3の場合、高さ分布は正規分布となり、尖った部分と窪んだ部分が混在する。Skuが3未満の場合、高さ分布は平坦である。Skuが3を超える場合、高さ分布は急上昇される。
【0022】
本明細書および特許請求の範囲に記載の用語「プロファイル要素の平均幅(Rsm)」は、ISO4287:1997に従って定義される。Rsmは、エンボステクスチャ間の距離を表している、サンプリング長に沿ったプロファイル要素の平均長さである。
【0023】
本発明は、積み重ねられたポリマーフィルムの付着問題を解決する特定のピーク実体体積(Vmp)および尖度(Sku)を有するポリマーフィルムを提供する。本発明のポリマーフィルムは、気泡欠陥のない合わせガラス、特に気泡欠陥がなく、かつ耐候性に優れた合わせガラスを提供するために使用することができる。本発明のポリマーフィルムは、合わせガラスの製造プロセスを容易にし、かつポリマーフィルムの無駄を避けることができる。本発明のポリマーフィルムおよびその用途について、以下で詳細に説明する。
【0024】
1.ポリマーフィルム
1.1.ポリマーフィルムの表面特性
1.1.1.ピーク実体体積(Vmp)および尖度(Sku)
合わせガラスの製造を容易にするために、ポリマーフィルムを、通常、ガラスシートに対応するサイズに切断し、切断したポリマーフィルムを、プレスプロセスを行なう前に互いに積み重ねる。しかしながら、ポリマーの粘着性と重力の影響により、その積み重ねられたポリマーフィルムは通常互いに付着する。加えて、空気の除去を促進し、ガラスシートとポリマーフィルムとの間に空気が残ること(すなわち、気泡欠陥)を避けるために、ポリマーフィルムの表面は、通常、テクスチャ(すなわち、特定の凹凸構造)で形成され、その構造は、ポリマーフィルムとガラスシートのプレプレス時の脱気を促進することができる。しかしながら、実際には、合わせガラスの製造プロセス中に合わせガラスのガラスシートとポリマーフィルムとの間の空気を十分に除去することは困難であるので、製造された合わせガラスは、通常、製造された時点で劣る耐候性またはさらに気泡欠陥を伴う劣る外観がもたらされる。本発明者らは、ポリマーフィルムの表面のピーク実体体積(Vmp)および尖度(Sku)を特定の範囲内に制御することで、付着問題および気泡欠陥の問題を解決し、合わせガラスの耐候性を改善できることを見出した。VmpおよびSkuは、表面粗さに関連するパラメータである。VmpパラメータおよびSkuパラメータの関連説明は、表面形態を評価するための測定規格であるISO25178-2:2012を参照することができ、その内容は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0025】
具体的には、本発明のポリマーフィルムは、第1面と第2面とを有し、実体比率10%で前記第1面のVmp値が0.15μm3/μm2から1.20μm3/μm2の範囲である。例えば、前記第1面の前記Vmp値は、0.15μm3/μm2、0.16μm3/μm2、0.17μm3/μm2、0.18μm3/μm2、0.19μm3/μm2、0.20μm3/μm2、0.21μm3/μm2、0.22μm3/μm2、0.23μm3/μm2、0.24μm3/μm2、0.25μm3/μm2、0.26μm3/μm2、0.27μm3/μm2、0.28μm3/μm2、0.29μm3/μm2、0.30μm3/μm2、0.31μm3/μm2、0.32μm3/μm2、0.33μm3/μm2、0.34μm3/μm2、0.35μm3/μm2、0.36μm3/μm2、0.37μm3/μm2、0.38μm3/μm2、0.39μm3/μm2、0.40μm3/μm2、0.41μm3/μm2、0.42μm3/μm2、0.43μm3/μm2、0.44μm3/μm2、0.45μm3/μm2、0.46μm3/μm2、0.47μm3/μm2、0.48μm3/μm2、0.49μm3/μm2、0.50μm3/μm2、0.51μm3/μm2、0.52μm3/μm2、0.53μm3/μm2、0.54μm3/μm2、0.55μm3/μm2、0.56μm3/μm2、0.57μm3/μm2、0.58μm3/μm2、0.59μm3/μm2、0.60μm3/μm2、0.61μm3/μm2、0.62μm3/μm2、0.63μm3/μm2、0.64μm3/μm2、0.65μm3/μm2、0.66μm3/μm2、0.67μm3/μm2、0.68μm3/μm2、0.69μm3/μm2、0.70μm3/μm2、0.71μm3/μm2、0.72μm3/μm2、0.73μm3/μm2、0.74μm3/μm2、0.75μm3/μm2、0.76μm3/μm2、0.77μm3/μm2、0.78μm3/μm2、0.79μm3/μm2、0.80μm3/μm2、0.81μm3/μm2、0.82μm3/μm2、0.83μm3/μm2、0.84μm3/μm2、0.85μm3/μm2、0.86μm3/μm2、0.87μm3/μm2、0.88μm3/μm2、0.89μm3/μm2、0.90μm3/μm2、0.91μm3/μm2、0.92μm3/μm2、0.93μm3/μm2、0.94μm3/μm2、0.95μm3/μm2、0.96μm3/μm2、0.97μm3/μm2、0.98μm3/μm2、0.99μm3/μm2、1.00μm3/μm2、1.01μm3/μm2、1.02μm3/μm2、1.03μm3/μm2、1.04μm3/μm2、1.05μm3/μm2、1.06μm3/μm2、1.07μm3/μm2、1.08μm3/μm2、1.09μm3/μm2、1.10μm3/μm2、1.11μm3/μm2、1.12μm3/μm2、1.13μm3/μm2、1.14μm3/μm2、1.15μm3/μm2、1.16μm3/μm2、1.17μm3/μm2、1.18μm3/μm2、1.19μm3/μm2、または1.20μm3/μm2、またはここに記載された値の任意の2つの間の範囲内でありうる。Vmpは、特定の実体比率で減少した実体のピークの体積である。ポリマーフィルムの前記第1面の前記Vmp値を実体比率10%で所定の範囲内に制御することにより、積み重ねられたポリマーフィルムの付着問題を解決することができ、プレプレス時の脱気効果を向上させることができる。
【0026】
さらに、本発明のポリマーフィルムの第1表面は、0.73から10.02の範囲のSku値を有する。例えば、第1表面のSku値は、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.80、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1.00、1.05、1.10、1.15、1.20、1.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50、1.55、1.60、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、2.00、2.05、2.10、2.15、2.20、2.25、2.30、2.35、2.40、2.45、2.50、2.55、2.60、2.65、2.70、2.75、2.80、2.85、2.90、2.95、3.00、3.05、3.10、3.15、3.20、3.25、3.30、3.35、3.40、3.45、3.50、3.55、3.60、3.65、3.70、3.75、3.80、3.85、3.90、3.95、4.00、4.05、4.10、4.15、4.20、4.25、4.30、4.35、4.40、4.45、4.50、4.55、4.60、4.65、4.70、4.75、4.80、4.85、4.90、4.95、5.00、5.05、5.10、5.15、5.20、5.25、5.30、5.35、5.40、5.45、5.50、5.55、5.60、5.65、5.70、5.75、5.80、5.85、5.90、5.95、6.00、6.05、6.10、6.15、6.20、6.25、6.30、6.35、6.40、6.45、6.50、6.55、6.60、6.65、6.70、6.75、6.80、6.85、6.90、6.95、7.00、7.05、7.10、7.15、7.20、7.25、7.30、7.35、7.40、7.45、7.50、7.55、7.60、7.65、7.70、7.75、7.80、7.85、7.90、7.95、8.00、8.05、8.10、8.15、8.20、8.25、8.30、8.35、8.40、8.45、8.50、8.55、8.60、8.65、8.70、8.75、8.80、8.85、8.90、8.95、9.00、9.05、9.10、9.15、9.20、9.25、9.30、9.35、9.40、9.45、9.50、9.55、9.60、9.65、9.70、9.75、9.80、9.85、9.90、9.95、10.00、または10.02、またはここに記載された値の任意の2つの間の範囲内にすることがきる。Skuは、粗さプロファイルの表面高さ分布の鋭さを示す。第1面のVmp値およびSku値を実体比率10%で所定の範囲内に制御することにより、積み重ねられたポリマーフィルムの付着問題を解決し、プレプレス時の脱気効果を向上させることができ、それにより、気泡欠陥がなく、より耐候性に優れた合わせガラスが得られる。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、ポリマーフィルムの第2表面は、実体比率10%で0.15μm3/μm2から1.20μm3/μm2の範囲のVmp値を有し、ポリマーフィルムの第2表面は0.73から10.02の範囲のSku値を有する。第2表面のVmp値およびSku値の具体的な値の例は、第1表面についての関連する記述を参照することができる。
【0028】
加えて、同一のVmpの値においては、Sku値が低いほど積み重ねられたポリマーフィルム同士の付着が深刻になる。同一のSkuの値においては、Vmp値が高いほど脱気性能が劣り、合わせガラスは、気泡欠陥が生じ、耐候性が劣る。
【0029】
1.1.2.プロファイル要素の平均幅(Rsm)
上述のパラメータに加えて、合わせガラスのプレプレスプロセス中の脱気は、ポリマーフィルムの表面のプロファイル要素の平均幅(Rsm)を制御することによってさらに向上させることができる。本発明の好ましい実施形態において、ポリマーフィルムの第1表面およびポリマーフィルムの第2表面は、独立して10μmから660μmの範囲のプロファイル要素の平均幅(Rsm)を有する。例えば、第1表面および第2表面のRsm値は、独立して10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、110μm、120μm、130μm、140μm、150μm、160μm、170μm、180μm、190μm、200μm、210μm、220μm、230μm、240μm、250μm、260μm、270μm、280μm、290μm、300μm、310μm、320μm、330μm、340μm、350μm、360μm、370μm、380μm、390μm、400μm、410μm、420μm、430μm、440μm、450μm、460μm、470μm、480μm、490μm、500μm、510μm、520μm、530μm、540μm、550μm、560μm、570μm、580μm、590μm、600μm、610μm、620μm、630μm、640μm、650μm、もしくは660μm、またはここに記載された値の任意の2つの間の範囲内でありうる。Rsm値が高すぎても低すぎても脱気性能に不利に影響し、気泡欠陥が発生する結果となる。たとえ、合わせガラスをオートクレーブプレスした後に、残った空気がポリマーフィルムに溶け込むことができ(すなわち空気溶解現象)、製造が完了した時点では合わせガラスに気泡欠陥がなくなっても、合わせガラスを長期間使用した後、または厳しい条件下では、溶解した空気が放出されて気泡が発生する。したがって、このような合わせガラスは、耐候性が劣る(すなわち「高温気泡試験」の結果が劣る)。
【0030】
加えて、ポリマーフィルムの表面のVmp値およびSku値がともに上述した指定の範囲内にある場合、Rsm値が上記指定の範囲内にあることにより、そのポリマーフィルムから作製される合わせガラスの耐候性を向上させることができる(すなわち、高温気泡試験」の結果の方が良い)。したがって、本発明の好ましい実施形態では、ポリマーフィルムの第1表面および第2表面のVmp値、Sku値、およびRsm値は、独立して上述した指定の範囲内に入る。
【0031】
1.2.ポリマーフィルムの構成
本発明のポリマーフィルムは、必須成分としてポリビニルアセタールを含み、必要に応じて、可塑剤または他の従来の添加剤などの他の任意成分をさらに含むことができる。本発明のいくつかの実施形態では、ポリマーフィルムはポリビニルアセタールおよび可塑剤を含むか、またはポリマーフィルムは本質的にポリビニルアセタールおよび可塑剤からなるか、またはポリマーフィルムはポリビニルアセタールおよび可塑剤からなる。
【0032】
本発明のポリマーフィルムは、ポリマーフィルム全体としてそのVmp値およびSku値を有していれば、1層からなる単層フィルムであっても複数層からなる多層フィルムであってもよく、好ましくは指定されたRsm値を有する。ポリマーフィルムが多層フィルムである場合、ポリマーフィルムの層は、同一または異なる材料で作られることができ、したがって同一または異なる機能層でありうる。機能層は、例えば、防音機能、断熱機能、反射機能、反射防止機能、屈折機能、屈折防止機能、光分割(light-splitting)機能、および調光機能といった機能の1つ以上を有する層でありうる。
【0033】
1.2.1.ポリビニルアセタール
ポリビニルアセタールの例としては、ポリ(ビニルホルマール)、ポリ(ビニルアセタール)、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(ビニルペンタナール)、およびポリ(ビニルヘキサナール)が挙げられるが、これらに限定されない。上記のポリビニルアセタールを、単独で、又は2種以上の混合物として使用することができる。本発明の好ましい実施形態では、ポリビニルアセタールはポリ(ビニルブチラール)である。添付の実施例では、ポリマーフィルムはポリ(ビニルブチラール)および可塑剤からなる。結果として、本発明のポリマーフィルムは、「ポリ(ビニルブチラール)フィルム(PVBフィルム)」、または具体的には「可塑剤含有PVBフィルム」である。
【0034】
ポリビニルアセタールの分子量は特に限定されない。本発明のいくつかの実施形態では、ポリビニルアセタールの数平均分子量(Mn)は、90,000から120,000の範囲でありうる。例えば、ポリビニルアセタールのMnは、90,000、90,500、91,000、91,500、92,000、92,500、93,000、93,500、94,000、94,500、95,000、95,500、96,000、96,500、97,000、97,500、98,000、98,500、99,000、99,500、100,000、100,500、101,000、101,500、102,000、102,500、103,000、103,500、104,000、104,500、105,000、105,500、106,000、106,500、107,000、107,500、108,000、108,500、109,000、109,500、110,000、110,500、111,000、111,500、112,000、112,500、113,000、113,500、114,000、114,500、115,000、115,500、116,000、116,500、117,000、117,500、118,000、118,500、119,000、119,500、もしくは120,000、またはここに記載された値の任意の2つの間の範囲内でありうるが、本発明はそれらに限定されない。本発明の好ましい実施形態において、ポリビニルアセタールのMnは、93,750から118,750の範囲である。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態では、ポリビニルアセタールのヒドロキシ基、アセタール基、およびアセチル基の総重量に基づいて、ポリビニルアセタールは、75重量%から85重量%の範囲のアセタール基含有量(すなわち、アセタール化度)を有することができる。例えば、ポリビニルアセタールのヒドロキシ基、アセタール基、およびアセチル基の総重量に基づくポリビニルアセタールのアセタール化度は、75重量%、75.1重量%、75.2重量%、75.3重量%、75.4重量%、75.5重量%、75.6重量%、75.7重量%、75.8重量%、75.9重量%、76重量%、76.1重量%、76.2重量%、76.3重量%、76.4重量%、76.5重量%、76.6重量%、76.7重量%、76.8重量%、76.9重量%、77重量%、77.1重量%、77.2重量%、77.3重量%、77.4重量%、77.5重量%、77.6重量%、77.7重量%、77.8重量%、77.9重量%、78重量%、78.1重量%、78.2重量%、78.3重量%、78.4重量%、78.5重量%、78.6重量%、78.7重量%、78.8重量%、78.9重量%、79重量%、79.1重量%、79.2重量%、79.3重量%、79.4重量%、79.5重量%、79.6重量%、79.7重量%、79.8重量%、79.9重量%、80重量%、80.1重量%、80.2重量%、80.3重量%、80.4重量%、80.5重量%、80.6重量%、80.7重量%、80.8重量%、80.9重量%、81重量%、81.1重量%、81.2重量%、81.3重量%、81.4重量%、81.5重量%、81.6重量%、81.7重量%、81.8重量%、81.9重量%、82重量%、82.1重量%、82.2重量%、82.3重量%、82.4重量%、82.5重量%、82.6重量%、82.7重量%、82.8重量%、82.9重量%、83重量%、83.1重量%、83.2重量%、83.3重量%、83.4重量%、83.5重量%、83.6重量%、83.7重量%、83.8重量%、83.9重量%、84重量%、84.1重量%、84.2重量%、84.3重量%、84.4重量%、84.5重量%、84.6重量%、84.7重量%、84.8重量%、84.9重量%、もしくは85重量%、またはここに記載された値の任意の2つの間の範囲内でありうる。本発明の好ましい実施形態において、ポリビニルアセタールのヒドロキシ基、アセタール基、およびアセチル基の総重量に基づいて、ポリビニルアセタールは、78.4重量%から81.5重量%の範囲のアセチル基の含有量(すなわち、アセタール化度)を有することができる。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、ポリビニルアセタールのヒドロキシ基、アセタール基、およびアセチル基の総重量に基づいて、ポリビニルアセタールは、0重量%から1.5重量%の範囲のアセチル基の含有量(すなわち、アセチル化度)を有することができる。例えば、ポリビニルアセタールのヒドロキシ基、アセタール基、およびアセチル基の総重量に基づいて、ポリビニルアセタールのアセチル化度は、0重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.15重量%、0.2重量%、0.25重量%、0.3重量%、0.35重量%、0.4重量%、0.45重量%、0.5重量%、0.55重量%、0.6重量%、0.65重量%、0.7重量%、0.75重量%、0.8重量%、0.85重量%、0.9重量%、0.95重量%、1.0重量%、1.05重量%、1.1重量%、1.15重量%、1.2重量%、1.25重量%、1.3重量%、1.35重量%、1.4重量%、1.45重量%、もしくは1.5重量%、またはここに記載された値の任意の2つの間の範囲内でありうる。本発明の好ましい実施形態において、ポリビニルアセタールのヒドロキシ基、アセタール基、およびアセチル基の総重量に基づいて、ポリビニルアセタールは、0.8重量%から1.2重量%の範囲のアセチル基の含有量(すなわち、アセチル化度)を有することができる。ポリビニルアセタールのアセチル化度が指定範囲より高いと、ポリマーフィルムは相対的に柔らかくなり、エンボステクスチャが深くなりすぎる場合がある。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態では、ポリビニルアセタールのヒドロキシ基、アセタール基、およびアセチル基の総重量に基づいて、ポリビニルアセタールは、15重量%から25重量%の範囲のヒドロキシ基含有量を有することができる。例えば、ポリビニルアセタールのヒドロキシ基、アセタール基、およびアセチル基の総重量に基づいて、ポリビニルアセタールのヒドロキシ基含有量は、15重量%、15.1重量%、15.2重量%、15.3重量%、15.4重量%、15.5重量%、15.6重量%、15.7重量%、15.8重量%、15.9重量%、16重量%、16.1重量%、16.2重量%、16.3重量%、16.4重量%、16.5重量%、16.6重量%、16.7重量%、16.8重量%、16.9重量%、17重量%、17.1重量%、17.2重量%、17.3重量%、17.4重量%、17.5重量%、17.6重量%、17.7重量%、17.8重量%、17.9重量%、18重量%、18.1重量%、18.2重量%、18.3重量%、18.4重量%、18.5重量%、18.6重量%、18.7重量%、18.8重量%、18.9重量%、19重量%、19.1重量%、19.2重量%、19.3重量%、19.4重量%、19.5重量%、19.6重量%、19.7重量%、19.8重量%、19.9重量%、20重量%、20.1重量%、20.2重量%、20.3重量%、20.4重量%、20.5重量%、20.6重量%、20.7重量%、20.8重量%、20.9重量%、21重量%、21.1重量%、21.2重量%、21.3重量%、21.4重量%、21.5重量%、21.6重量%、21.7重量%、21.8重量%、21.9重量%、22重量%、22.1重量%、22.2重量%、22.3重量%、22.4重量%、22.5重量%、22.6重量%、22.7重量%、22.8重量%、22.9重量%、23重量%、23.1重量%、23.2重量%、23.3重量%、23.4重量%、23.5重量%、23.6重量%、23.7重量%、23.8重量%、23.9重量%、24重量%、24.1重量%、24.2重量%、24.3重量%、24.4重量%、24.5重量%、24.6重量%、24.7重量%、24.8重量%、24.9重量%、もしくは25重量%、またはここに記載された値の任意の2つの間の範囲内でありうる。本発明の好ましい実施形態において、ポリビニルアセタールのヒドロキシ基、アセタール基、およびアセチル基の総重量に基づいて、ポリビニルアセタールは、17.5重量%から20.6重量%の範囲のヒドロキシ基含有量を有することができる。ポリビニルアセタールのヒドロキシ基含有量が所定の範囲よりも高い場合、ポリマーフィルムは相対的に硬くなり、エンボステクスチャを形成することが相対的に困難になる。ポリビニルアセタールのヒドロキシ基含有量が指定範囲よりも低いと、ポリマーフィルムは相対的に柔らかく、エンボステクスチャが深すぎる場合がある。
【0038】
1.2.2.可塑剤
本明細書において使用されているように、可塑化剤とも呼ばれる可塑剤は、熱可塑性樹脂の可塑性を改変することができる化学物質である。可塑剤の例には、トリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコールビス(2-エチルブチレート)、テトラエチレングリコールビス(2-エチルブチレート)、トリエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、シクロヘキシルアジピン酸ヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、アジピン酸ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]、アジピン酸ポリマー、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、ポリプロピレングリコールジベンゾエート、イソデシルベンゾエート、2-エチルヘキシルベンゾエート、プロピレングリコールジベンゾエート、フタル酸ジイソノニル、テレフタル酸ジブトキシエチル、ヒマシ油、リシノール酸メチル、大豆油、エポキシ化大豆油、およびそれらの組み合わせなどの多塩基酸または多価アルコールのエステルが含まれるが、これらに限定されない。添付の実施例では、トリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート)が使用される。
【0039】
可塑剤の量は、可塑剤が所望の可塑化効果を与えることができる限り、特に限定されない。一般に、ポリビニルアセタール100重量部に対して、可塑剤の量は、35重量部から50重量部の範囲でありうる。例えば、ポリビニルアセタール100重量部に対して、可塑剤の量は、35重量部、36重量部、37重量部、38重量部、39重量部、40重量部、41重量部、42重量部、43重量部、44重量部、45重量部、46重量部、47重量部、48重量部、49重量部、もしくは50重量部、またはここに記載された値の任意の2つの間の範囲内でありうる。本発明のいくつかの実施形態において、100重量部のポリビニルアセタールに基づいて、可塑剤の量は、37重量部から48重量部の範囲である。可塑剤の量が指定された範囲より多い場合、ポリマーフィルムは相対的に柔らかく、エンボステクスチャが深すぎる可能性がある。可塑剤の配合量が上記範囲より少ないと、ポリマーフィルムは相対的に硬く、エンボステクスチャを形成することを相対的に困難にする。
【0040】
1.2.3.その他の従来の添加剤
ポリマーフィルムは、他の従来の添加剤をさらに含んでもよい。従来の添加剤は、製造中のポリマーフィルムの作業性を適応的に改善するか、またはポリマーフィルムに特定の機能を付与することができる任意の物質でありうる。従来の添加剤の例は、染料、顔料、安定剤、酸化防止剤、難燃剤、赤外線吸収剤、赤外線遮断剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、潤滑剤、分散剤、界面活性剤、キレート剤、カップリング剤、バインダー、および接着制御剤を含むがこれらに限定されない。上記添加剤は、単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。例えば、ポリマーフィルムは、着色されたポリマーフィルムとするために、染料または顔料を含むことができる。ポリマーフィルムは、紫外線防止機能または赤外線防止機能を有するポリマーフィルムとするために、紫外線吸収剤または赤外線吸収剤を含むこともできる。
【0041】
1.3.ポリマーフィルムのその他の特性
1.3.1.ガラス転移温度(Tg)
本発明のいくつかの実施形態では、ポリマーフィルムのガラス転移温度(Tg)は、5℃から23℃の範囲でありうる。例えば、ポリマーフィルムのTgは、5℃、5.5℃、6℃、6.5℃、7℃、7.5℃、8℃、8.5℃、9℃、9.5℃、10℃、10.5℃、11℃、11.5℃、12℃、12.5℃、13℃、13.5℃、14℃、14.5℃、15℃、15.5℃、16℃、16.5℃、17℃、17.5℃、18℃、18.5℃、19℃、19.5℃、20℃、20.5℃、21℃、21.5℃、22℃、22.5℃、もしくは23℃、またはここに記載された値の任意の2つの間の範囲内でありうる。ポリマーフィルムのTgが指定範囲よりも高い場合、ポリマーフィルムは相対的に硬く、機械エンボスによって所望のテクスチャを形成することが相対的に困難になる。ポリマーフィルムのTgが指定範囲よりも低い場合、ポリマーフィルムは相対的に柔らかく、機械エンボスによって形成されるエンボステクスチャは深すぎる可能性がある。本発明において、ポリマーフィルムのTgは、好ましくは6℃から22.5℃の範囲であり、より好ましくは10℃から22.5℃の範囲である。
【0042】
1.3.2.厚さ
本発明のポリマーフィルムは、ポリマーフィルムが所定のVmp値およびSku値を有する限り、均一な厚さを有することができ、必要に応じて厚さを調整することができる。一般に、ポリマーフィルムの厚さは、0.1mmから2.5mmの範囲でありうる。例えば、ポリマーフィルムの厚さは、0.1mm、0.15mm、0.2mm、0.25mm、0.3mm、0.35mm、0.4mm、0.45mm、0.5mm、0.55mm、0.6mm、0.65mm、0.7mm、0.75mm、0.8mm、0.85mm、0.9mm、0.95mm、1.0mm、1.05mm、1.1mm、1.15mm、1.2mm、1.25mm、1.3mm、1.35mm、1.4mm、1.45mm、1.5mm、1.55mm、1.6mm、1.65mm、1.7mm、1.75mm、1.8mm、1.85mm、1.9mm、1.95mm、2.0mm、2.05mm、2.1mm、2.15mm、2.2mm、2.25mm、2.3mm、2.35mm、2.4mm、2.45mm、もしくは2.5mm、またはここに記載された値の任意の2つの間の範囲内でありうる。添付の実施例において、ポリマーフィルムの厚さは、0.38mm、0.76mm、または1.52mmである。
【0043】
本発明のポリマーフィルムは、両端で異なる厚さを有するくさび状フィルムでありうる。くさび状フィルムは通常、自動車のヘッドアップディスプレイ(HUD)の製造に使用され、したがって、本明細書使用されるときは、「HUDフィルム」とも呼ばれる。本発明のいくつかの実施形態では、HUDフィルムの薄い端の厚さは、0.5mmから1mmの範囲でありうる。例えば、HUDフィルムの薄い端の厚さは、0.5mm、0.55mm、0.6mm、0.65mm、0.7mm、0.75mm、0.8mm、0.85mm、0.9mm、0.95mm、もしくは1mm、またはここに記載された値の任意の2つの間の範囲内でありうる。本発明のいくつかの実施形態では、HUDフィルムの厚い端の厚さは、1.2mmから1.7mmの範囲でありうる。例えば、HUDフィルムの厚い端の厚さは、1.2mm、1.25mm、1.3mm、1.35mm、1.4mm、1.45mm、1.5mm、1.55mm、1.6mm、1.65mm、もしくは1.7mmまたはここに記載された値の任意の2つの間の範囲内でありうる。添付の実施例では、HUDフィルムは、薄い端の厚さが0.76mmであり、厚い端の厚さが1.45mmであり、HUDフィルムの幅は1200mmである。
【0044】
1.4.ポリマーフィルムの製造
本発明のポリマーフィルムの製造方法は特に限定されない。例えば、ポリビニルアセタールと任意成分(可塑剤等)とを混合、混練してポリマー組成物を得、前記ポリマー組成物を使用して、従来のフィルム形成方法によってポリマーフィルムを準備し、機械エンボスステップを実施して、ポリマーフィルムの表面に所望のVmp値およびSku値および任意の所望のRsm値を与えることで、本発明のポリマーフィルムを製造することができる。ポリマーフィルムを準備するための従来の方法の例は、カレンダー法、キャスティング法、押出延伸法、直接押出法、および押出ブロー法を含むが、これらに限定されない。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態において、均一な厚さを有するポリマーフィルムは次のように製造されるが、本発明はこれに限定されない。ポリビニルアセタール樹脂(例えばPVB)と可塑剤とを混合機を用いて、100℃から150℃の範囲の温度および10rpmから50rpmの範囲の回転数で、5分から30分間混合、混練してポリマー組成物を得る。そのポリマー組成物を室温まで冷却し、その後、押出機に入れてポリマーフィルム(PVBフィルム)を形成する。上記のフィルム形成ステップは、必要に応じて繰り返し行うことができ、ポリマー組成物の構成を任意に調整することにより、異なる機能を有するフィルムを提供することができる。これらのフィルムを積層して多層構造のポリマーフィルムを形成することができる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態において、HUDフィルムは次のように製造されるが、本発明はこれに限定されない。ポリビニルアセタール樹脂(例えばPVB)と可塑剤とを混合機を用いて、100℃から150℃の範囲の温度、10rpmから50rpmの範囲の回転数で、5分から30分間混合、混練してポリマー組成物を得る。そのポリマー組成物を室温まで冷却し、その後、押出機に入れてフィルムを形成する。但し、その押出機の出力端はくさび形状を与えるように設定され、押し出されたポリマーフィルムは2つの端(すなわち、厚い端と薄い端)で異なる厚さを有する。
【0047】
その後、ポリマーフィルムは、予熱および機械エンボス加工を施され、所望のVmp値およびSku値および任意のRsm値を与える。機械エンボス加工は、準備されたポリマーフィルムの表面にローラーを用いてテクスチャを形成するプロセスである。機械エンボス法の例には、エンボスローラー法またはカレンダーローラー法が含まれるが、これらに限定されない。エンボスローラー法が好ましい。機械エンボス加工のテクスチャタイプは、特に限定されず、菱形テクスチャ、線テクスチャ、鋸歯テクスチャ、四角テクスチャ、テーパテクスチャ、円テクスチャ、半円テクスチャ、および不規則テクスチャを含む。上記テクスチャタイプは、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0048】
ポリマーフィルムのVmp、Sku、およびRsm特性は、エンボスローラーの直径およびエンボスローラーの回転速度を制御することによって調整することができる。一般に、ポリマーフィルムの表面と接触するエンボスローラーの面積は、通常、エンボスローラーの外周の1/3である。エンボスローラーの直径が大きいほど、エンボスローラーの外周が大きくなり、したがってポリマーフィルムの表面と接触するエンボスローラーの面積が大きくなり、ポリマーフィルムは、その結果、より長い継続時間のホットプレスにかけられるので、表面により深い(先の尖った)エンボステクスチャを有することになる。対照的に、エンボスローラーの直径が小さいほど、ポリマーフィルムの表面のエンボステクスチャがより浅く(粗く、鈍く)なる。さらに、エンボスローラーの回転速度が速いほど、ポリマーフィルムの移動速度が速くなり、ポリマーフィルムは、より短い継続時間のホットプレスにかけられるので、ポリマーフィルムの表面に、より浅い、不均一なエンボステクスチャを有し、フィルムとテクスチャ間の距離が短くなるため、より低いRsm値になる。対照的に、エンボスローラーの回転速度が遅いほど、ポリマーフィルムの移動速度がより遅くなり、ポリマーフィルムは、より長い継続時間のホットプレスにかけられるため、表面により深く均一なテクスチャを有し、テクスチャ間の距離が長くなるため、より高いRsm値になる。したがって、ポリマーフィルムの製造の間にエンボスローラーの直径およびエンボスローラーの回転速度を協働的に調整することによって、Vmp値およびSku値を増加または減少させて、必須なVmpおよびSku特性を有するポリマーフィルムを提供することができる。
【0049】
2.合わせガラス
本発明のポリマーフィルムは、合わせガラスの製造に使用されうる。したがって、本発明はまた、第1ガラスシート、第2のガラスシート、および第1ガラスシートと第2ガラスシートとの間に配置された中間フィルムを含み、上述したポリマーフィルムが中間フィルムを提供する、合わせガラスを提供する。
【0050】
第1ガラスシートおよび第2ガラスシートは、互いに同一であっても異なっていてもよく、合わせガラスの製造に適した任意の従来のガラスシートでありうる。合わせガラスの製造に適した従来のガラスシートの例は、フロートガラスシート、強化ガラスシート、ワイヤー入りガラスシート、または無地板ガラスシートが含まれるが、本発明はこれらに限定されない。添付の実施例では、フロートガラスシートが第1および第2ガラスシートとして使用される。
【0051】
本発明の合わせガラスは、当技術分野で知られている任意の合わせガラス製造方法により製造されうる。例えば、本発明の合わせガラスは、次のようにして製造されうる。2枚のガラスシートの間にポリマーフィルムを挟み込んで積層体を得、この積層体を気密袋に入れ、そして20℃から30℃の温度で少なくとも10分間、気密袋内の空気を気密袋から抜く(真空度:700mmHgなどの、>500mmHg)。次に、積層物を入れた密閉袋を加熱炉に入れ、加熱炉の温度を60℃から140℃までゆっくり上昇させた。少なくとも40分経過した後、気密袋を加熱炉から取り出し、プレプレスを完了する。次に、プレプレスされた積層体をオートクレーブに入れ、高圧高温条件下で100分から150分間ホットプレスして合わせガラスを得る。一般に、高圧および高温条件には、10バールから15バールの範囲の圧力および100℃から150℃の範囲の温度が含まれる。
【0052】
3.実施例
3.1.試験方法
本発明は、以下の実施形態によってさらに説明され、試験機器および方法は以下の通りである。
【0053】
[ポリビニルアセタールの分子量分布の測定]
ポリビニルアセタールの分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定され、ここで、ポリビニルアセタールをテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、以下の条件でGPC分析を行う。ポリビニルアセタールの分子量は、標準ポリスチレン(ウォーターPS STD)の面積に対応する比率に基づいて計算される。
装置:ウォーターズ1515PUMPシステム
検出器:ウォーターズ2414RI
溶出条件:1.0mL/分、THF
カラム:ウォーターズ スティラゲルHR5 THF、ウォーターズ スティラゲルHR4 THF、ウォーターズ スティラゲルHR3 THF、ウォーターズ スティラゲルHR1 THF
【0054】
[ポリビニルアセタールのアセタール化度、アセチル化度およびヒドロキシ基含有量の測定]
ポリビニルアセタールのアセタール化度、アセチル化度およびヒドロキシ基含有量は、JIS K6728に従って測定される。
【0055】
[ガラス転移温度(Tg)の測定]
ポリマーフィルムのTgは、示差走査熱量計(型番:TA DSC 25、ティー・エイ・インスツルメント製)を用いて窒素雰囲気下で測定される。まず、試料としてのポリマーフィルム7mgを示差走査熱量計の試料台に載せ、昇温速度10℃/分で150℃まで加熱し、その温度で5分間保持する。次いで、試料を-50℃で平衡させ、その温度で5分間保持する。その後、試料を昇温速度10℃/分で100℃まで加熱し、温度対熱流の曲線グラフ(X軸は温度であり、Y軸は熱流である)を得る。ガラス転移中間点に対応する温度はTgとして記録される。
【0056】
[VmpとSkuの測定]
まず、30cm×30cmのポリマーフィルム片を用意し、以下のようにして5つの試験試料を得る:4枚の3cm×3cmの試験試料を、端から1cm離して、ポリマーフィルムの四隅から切り出し、1枚の3cm×3cmの試験試料を、ポリマーフィルムの中央から切り出す。次に、ポリマーフィルムの表面テクスチャを、試験試料およびレーザー共焦点顕微鏡(型番:LEXT OLS5000-SAF、オリンパス製)を用いて、温度24±3℃、相対湿度63±3%℃で、ISO25178-2:2012に従って分析し、実体比率10%でVmp値およびSku値を求める。測定条件は、以下のとおりである:光源は405nmの波長を有し、対物レンズは100倍(MPLAPON-100xLEXT)、光学ズームは50倍、画像面積は1500μm×1500μm、解像度は1024ピクセル×1024ピクセル、動作条件は自動傾き除去に設定され、フィルターは使用されない。
【0057】
得られた実体比率曲線において、実体比率10%でVmp値を求めることができ、Vmp値の単位はμm3/μm2である。加えて、Sku値をプログラム計算により求めることができる。添付の実施例において、ポリマーフィルムのVmp値は、5つの試験試料のVmp値の平均であり、ポリマーフィルムのSku値は、5つの試験試料のSku値の平均である。
【0058】
[Rsmの測定]
まず、30cm×30cmのポリマーフィルム片を用意し、以下のようにして5つの試験試料を得る:4枚の3cm×3cmの試験試料を、端から1cm離し、ポリマーフィルムの四隅から切り出し、1枚の3cm×3cmの試験試料をポリマーフィルムの中央から切り出す。次に、ポリマーフィルムの表面のRsm値を、試験試料およびレーザー共焦点顕微鏡を用いて、温度24±3℃および相対湿度63±3%で、ISO4287:1997に従って、分析する。測定条件は、以下のとおりである:光源は、405nmの波長を有し、対物レンズは100倍、光学ズームは50倍、画像面積は1500μm×1500μm、解像度は1024ピクセル×1024ピクセル、動作条件は自動傾き除去に設定され、フィルターは使用されない。添付の実施例において、ポリマーフィルムのRsm値は、5つの試験試料のRsm値の平均である。
【0059】
[気泡残留評価]
合わせガラスを製造した後、直ちに気泡の有無を肉眼で見る気泡残留評価が行われる。観察は、ガラスシートの端から15mm以内(最短距離)の領域(すなわち、気泡が最も見つけられやすい領域)で行われる。気泡残留評価の基準は以下の通りである。
◎:気泡が見られない。
○:気泡が1個見られる。
×:気泡が2個以上見られる。
【0060】
[高温気泡残留試験]
合わせガラスから30cm×30cmの大きさの試験試料を切り出す。試験試料を120℃のオーブンに2時間垂直に置く。次に、試験試料を取り出し、肉眼で気泡の有無を見て観察する。観察は、ガラスシートの端から15mm以内(最短距離)の領域(すなわち、気泡が最も見つけられやすい領域)で行われる。気泡残留評価の基準は以下の通りである。
◎:気泡が見られない。
○:気泡が1個見られる。
×:気泡が2個以上見られる。
【0061】
[自己付着試験]
まず、2つの試験試料(それぞれ10cm×2cmの大きさ)をポリマーフィルムから切り出す。次に、その2つの試験試料を互いに重ね合わせて、2つの試験試料が接触していない、挟持領域として使用される、2cm×2cmの領域のある、重ね合わせ試料を得る。25℃の温度で、その重ね合わせ試料に、挟持領域に加圧しない条件で、10kgの物体で30分間、圧力をかける。その後、万能試験機(型式:AI-7000M、GOTECH製)を用いて重ね合わせ試料の挟持領域を挟持し、2つの試験試料を2cm/分または1cm/分の引張速度で引き離す。2つの試験試料が互いに固く付着する場合、引張速度を任意に低下させて、応力時間(force-bearing time)を増加させる。ポリマーフィルムの自己付着特性は、以下の基準に基づいて評価される。
A:2枚の試験試料を引張速度2cm/分で引き離すことができ、接着は見られない。
B:2枚の試験試料を引張速度1cm/分で引き離すことができ、接着は見られない。
C:2つの試験試料を引き離すことができない。
【0062】
3.2.ポリマーフィルムの製造と特性測定
まず、ポリ(ビニルブチラール)(PVB、チャン チュン ペトロケミカル カンパニー リミテッド製)100重量部および可塑剤(トリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート))を表1-1および1-2の量で混合して混合物を得た。この混合物を、ミキサーを用い、120℃、回転速度35rpmで15分間混練した。その後、混合物を室温まで冷却してポリマーフィルム組成物を得た。ポリマーフィルム組成物を押出機に投入してポリマーフィルムを得た。ポリマーフィルムの厚さを表1-1および1-2に示す。PVBの、Mn、アセタール化度、アセチル化度およびヒドロキシ基含有量、ならびにそれから製造されたポリマーフィルムのTgを含む、PVBおよびポリマーフィルムの特性を、前述の試験方法に従って測定した。結果を表1-1および1-2に示す。
【0063】
ポリマーフィルムの2つの面に、表2-1および表2-2に記載の変数条件に従って、予熱および機械エンボス加工を施し、実施例1から11および比較例1から7のポリマーフィルムを得た。表2-1および表2-2に記載の変数条件に加えて、一対のエンボスローラーを通過するポリマーフィルムの線速度は18m/分である。実施例1から11および比較例1から7のポリマーフィルムのVmp値、Sku値、Rsm値を前述の試験方法に従って測定した。結果を表2-1および2-2に示す。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
3.3.合わせガラスの製造と特性評価
実施例1から11および比較例1から7のポリマーフィルムをそれぞれ用いて合わせガラスを作製した。まず、ポリマーフィルムを300mm×300mmに裁断した。次に、汚れがなく透明な2つのフロートガラスシート(長さ:300mm、幅:300mm、厚さ:2mm)を各ポリマーフィルムに用意した。実施例1から11および比較例1から7の300mm×300mmのポリマーフィルムを2枚の透明なフロートガラスシートの間にそれぞれ入れ、積層体を得た。積層体を、気密バッグによる真空排気を用いてプレプレスした。プレプレスは以下のように行なった。積層体を密閉袋に入れ、積層体が入った密閉袋を温度30℃、真空度700mmHgで10分間保持した。次に、積層体が入った密閉袋を加熱炉に入れ、温度140℃で40分間保持した。その後、積層体が入った密閉袋を加熱炉から取り出し、室温まで冷却した。次に、プレプレスされた積層体を気密袋から取り出し、オートクレーブに入れ、圧力13バール、温度135℃で120分間ホットプレスし、その後、室温まで冷却し、合わせガラスを得た。
【0069】
実施例1から11および比較例1から7のポリマーフィルムおよび合わせガラスについて、上述した試験方法に従って、自己付着試験、気泡残留評価および高温気泡試験を行った。結果を表3-1および3-2に示す。
【0070】
【0071】
【0072】
表3-1に示すように、ポリマーフィルムのVmp値とSku値が指定範囲内にある場合、本発明のポリマーフィルムは自己付着試験で優れた結果を示し、これは、ポリマーフィルムの製造プロセスが、積み重ねられたポリマーフィルムの自己付着によって悪影響を受けないことを意味する。一方、本発明のポリマーフィルムから製造された合わせガラスは、製造時に気泡欠陥がなく、高温気泡試験で優れた結果を示し、良好な耐候性を示した。実施例10および11は、ポリマーフィルムのVmp値およびSku値が指定範囲内にあるが、Rsm値が好ましい範囲外にある場合、たとえポリマーフィルムが自己付着試験で優れた結果を示し、かつそれから製造された合わせガラスが製造時に気泡欠陥を有さないとしても、合わせガラスは耐候性に優れていない(高温気泡試験の結果が劣る)ことを示している。
【0073】
対照的に、表3-2に示されるように、いずれの比較ポリマーフィルムも自己付着試験で優れた結果を示さず、これは、合わせガラスの製造プロセスは、重ねられたポリマーフィルムの自己付着によって悪影響を受けることを意味する。比較例1から4は、ポリマーフィルムのVmp値、Sku値、Rsm値のいずれも指定範囲内にない場合、ポリマーフィルムは互いに容易に付着し、合わせガラスの製造プロセスにとって好ましくないことを示している。比較例1から4の合わせガラスは、製造時の気泡欠陥はないが、合わせガラスは、高温気泡試験で満足できる結果を示さず、耐候性に劣ることを示唆している。比較例5及び6は、ポリマーフィルムのVmp値が指定範囲内にない場合、ポリマーフィルムのSku値およびRsm値が指定範囲内であっても、ポリマーフィルムは自己付着試験で良好な結果を示さないことを示している。比較例7は、ポリマーフィルムのSku値が指定範囲内にない場合、ポリマーフィルムのVmp値およびRsm値が指定範囲内であっても、ポリマーフィルムは自己付着試験で良好な結果を示さないことを示している。
【0074】
上記の例は、本発明の原理および有効性を説明し、その独創的特徴を示すために使用されるが、本発明の範囲を限定するために使用されるものではない。当業者は、様々な修正および置換を、記載された本発明の開示および提案に基づいて、進めることができる。したがって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に定義されている通りである。
【0075】
(付記)
(付記1)
第1表面および第2表面を有し、前記第1表面は、実体比率10%で0.15μm3/μm2から1.20μm3/μm2の範囲のピーク実体体積(Vmp)、および0.73から10.02の範囲の尖度(Sku)を有し、前記実体比率、前記ピーク実体体積、前記尖度は、ISO25178-2:2012に従って定義される、ポリマーフィルム。
【0076】
(付記2)
前記第2表面は、実体比率10%で0.15μm3/μm2から1.20μm3/μm2の範囲のピーク実体体積(Vmp)、および0.73から10.02の範囲の尖度(Sku)を有し、前記実体比率、前記ピーク実体体積、前記尖度は、ISO25178-2:2012に従って定義される、付記1に記載のポリマーフィルム。
【0077】
(付記3)
前記第1表面および前記第2表面は、独立して10μmから660μmの範囲のプロファイル要素の平均幅(Rsm)を有し、前記プロファイル要素の前記平均幅は、ISO4287:1997に従って定義される、付記1または2に記載のポリマーフィルム。
【0078】
(付記4)
5℃から23℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する、付記1または2に記載のポリマーフィルム。
【0079】
(付記5)
ポリビニルアセタールを含む、付記1または2に記載のポリマーフィルム。
【0080】
(付記6)
前記ポリビニルアセタールは、ポリ(ビニルブチラール)である、付記5に記載のポリマーフィルム。
【0081】
(付記7)
前記ポリビニルアセタールは、90,000から120,000の範囲の数平均分子量(Mn)を有する、付記5に記載のポリマーフィルム。
【0082】
(付記8)
さらに可塑剤を含む、付記5に記載のポリマーフィルム。
【0083】
(付記9)
前記ポリビニルアセタール100重量部に対して、前記可塑剤の量は、35重量部から50重量部の範囲である、付記8に記載のポリマーフィルム。
【0084】
(付記10)
第1ガラスシート、第2ガラスシート、および前記第1ガラスシートと前記第2ガラスシートとの間に配置された中間フィルムを含み、前記中間フィルムは、付記1または2に記載のポリマーフィルムによって提供された、合わせガラス。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアセタールと可塑剤を含むポリマーフィルムであって、
前記ポリマーフィルムは、第1表面および第2表面を有し、前記第1表面は、実体比率10%で0.15μm3/μm2から1.20μm3/μm2の範囲のピーク実体体積(Vmp)、および0.73から10.02の範囲の尖度(Sku)を有し、前記実体比率、前記ピーク実体体積、前記尖度は、ISO25178-2:2012に従って定義される、ポリマーフィルム。
【請求項2】
前記第2表面は、実体比率10%で0.15μm3/μm2から1.20μm3/μm2の範囲のピーク実体体積(Vmp)、および0.73から10.02の範囲の尖度(Sku)を有し、前記実体比率、前記ピーク実体体積、前記尖度は、ISO25178-2:2012に従って定義される、請求項1に記載のポリマーフィルム。
【請求項3】
前記第1表面および前記第2表面は、独立して10μmから660μmの範囲のプロファイル要素の平均幅(Rsm)を有し、前記プロファイル要素の前記平均幅は、ISO4287:1997に従って定義される、請求項1または2に記載のポリマーフィルム。
【請求項4】
5℃から23℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する、請求項1または2に記載のポリマーフィルム。
【請求項5】
前記ポリビニルアセタールは、ポリ(ビニルブチラール)である、請求項1または2に記載のポリマーフィルム。
【請求項6】
前記ポリビニルアセタールは、90,000から120,000の範囲の数平均分子量(Mn)を有する、請求項1または2に記載のポリマーフィルム。
【請求項7】
前記ポリビニルアセタール100重量部に対して、前記可塑剤の量は、35重量部から50重量部の範囲である、請求項1または2に記載のポリマーフィルム。
【請求項8】
第1ガラスシート、第2ガラスシート、および前記第1ガラスシートと前記第2ガラスシートとの間に配置された中間フィルムを含み、前記中間フィルムは、請求項1または2に記載のポリマーフィルムによって提供された、合わせガラス。