(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046839
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】ボイラの制御装置
(51)【国際特許分類】
F23N 5/00 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
F23N5/00 N
F23N5/00 C
F23N5/00 F
F23N5/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152163
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】菅原 勇久
【テーマコード(参考)】
3K003
【Fターム(参考)】
3K003EA07
3K003FA00
3K003FB01
3K003FB10
3K003FC10
(57)【要約】
【課題】パージ後に安定して着火できるボイラの制御装置を提供することである。
【解決手段】缶水を加熱するボイラを制御するためのボイラの制御装置であって、ボイラからの排ガスを導出する排気通路における圧力を検知する圧力検知部を備え、圧力検知部により検知された圧力が所定値以下であることを条件として、燃焼を開始させるための着火制御を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶水を加熱するボイラを制御するためのボイラの制御装置であって、
前記ボイラからの排ガスを導出する排気通路における圧力を検知する圧力検知部を備え、
前記圧力検知部により検知された圧力が所定値以下であることを条件として、燃焼を開始させるための着火制御を行う、ボイラの制御装置。
【請求項2】
前記所定値は、負圧の予め定められた値である、請求項1に記載のボイラの制御装置。
【請求項3】
前記ボイラの制御装置は、複数のボイラを制御可能であり、
前記排気通路は、前記複数のボイラ各々からの排ガスを合流させて導出する集合排気通路を含み、
前記圧力検知部は、前記集合排気通路における圧力を検出する、請求項1または請求項2に記載のボイラの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶水を加熱するボイラの着火を制御するボイラの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各ボイラからの燃焼排ガスを集合排気筒に合流後排気する多缶設置ボイラの通風ラインにおいて、集合排気筒の個別通風ライン接続部より下流に合流した燃焼排ガスの流量を調整する装置を設けることにより集合排気筒内を一定圧力に保って燃焼排ガスの逆流を防止するボイラ制御装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のボイラ制御装置では、ボイラに着火する際、ダンパを開いて缶内の排気(パージ)を行い、一定時間経過後に十分パージが行われたとして着火制御が行われている。しかしながら、着火できずに失火してしまうときが生じ得るという問題があった。特に台数制御装置により複数台のボイラを制御しているときにはこの問題が顕著であった。
【0005】
本発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、パージ後に安定して着火できるボイラの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うボイラの制御装置は、缶水を加熱するボイラを制御するためのボイラの制御装置であって、前記ボイラからの排ガスを導出する排気通路における圧力を検知する圧力検知部を備え、前記圧力検知部により検知された圧力が所定値以下であることを条件として、燃焼を開始させるための着火制御を行う。
【0007】
上記の構成によれば、ボイラからの排ガスを導出する排気通路における圧力が所定値以下であることを条件として燃焼を開始させるための着火制御を行うので、パージ後に安定して着火を行うことができる。
【0008】
好ましくは、前記所定値は、負圧の予め定められた値である。
【0009】
上記の構成によれば、より安定して着火を行うことができる。
【0010】
好ましくは、前記ボイラの制御装置は、複数のボイラを制御可能であり、前記排気通路は、前記複数のボイラ各々からの排ガスを合流させて導出する集合排気通路を含み、前記圧力検知部は、前記集合排気通路における圧力を検出する。
【0011】
上記の構成によれば、複数台のボイラを制御する際にも安定して着火を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ボイラの制御装置の概略構成を模式的に示す図である。
【
図2】メイントライ移行処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<概略構成について>
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。まず、
図1を参照して、本実施の形態に係るボイラシステムの概略構成について説明する。ボイラシステムは、
図1に示すように、複数(例えば2台)のボイラ1と、複数のボイラ1各々からの排ガスを導出する排気通路2と、複数のボイラ1各々からの排ガスを合流させて導出する集合排気通路3と、集合排気通路3における圧力(背圧)を測定する圧力検知部5と、集合排気通路3に設けられたダンパ6と、複数のボイラ1各々の燃焼状態を制御する台数制御装置7とを備えている。
【0014】
ボイラ1は、燃料を燃焼させて缶水を加熱して蒸気や温水等を生成するボイラ本体1aと、空気供給路1cを介してボイラ本体1a内に空気を送り込む送風機1bと、ボイラ本体1aからの排ガスを導出する排気通路2と、ボイラ本体1aに燃料を供給する燃料供給ライン(図示せず)とを備えている。なお、燃料は、ガスである例について説明するが、ガスなどの気体に限らず、油などの液体であってもよい。
【0015】
燃料供給ラインは、空気供給路1cに接続されている。燃料供給ラインから供給される燃料は、空気供給路1cにおいて、送風機1bから送風される空気と混合されて、ボイラ本体1a内のバーナ1d(パイロットバーナおよびメインバーナを備える)に供給される。送風機1bから供給される空気は、燃焼用空気として空気供給路1cを介してボイラ本体1a内のバーナ1dに供給される。パイロットバーナは、メインバーナを着火させてボイラ1の燃焼を開始させる着火時等に用いられる。メインバーナは、送風機1bから供給される燃焼用空気と燃料供給ラインから供給される燃料ガスとの混合ガスの燃焼を開始させる。なお、複数のボイラ本体1a各々が同じ性能のものに限らず、異なる性能を有するボイラを含むものであってもよい。
【0016】
ダンパ6は、集合排気通路3に設けられ、集合排気通路3の流量を調節する。ダンパ6が全閉状態のときは、集合排気通路3の流れが実質的に遮断される。ダンパ6を開くと排ガスの排気(パージ)が開始可能となる。ダンパ6が全閉状態のときは、集合排気通路3の流れが遮断されているため集合排気通路3の圧力(背圧)は高くなる。ダンパ6の開度が上がるにつれ流量が増し、当該背圧は徐々に低下する。ダンパ6が全開状態となると、排ガスは、完全に流れるようになる。
【0017】
ダンパ6が全閉状態から全開状態への移行を完了するまでの時間は、ほぼ一定となる。これに基づいて、従来は、パージ開始から所定時間が経過すれば十分パージが行われたであろうという仮定のもとに着火制御が行われていた。しかしながら、複数台のボイラを制御しているときには、いずれかのボイラの稼働状態の影響などにより、失火の問題が顕著となるというユニークな課題に着眼し、安定した着火を行うためには背圧が安定した状態で着火制御を行うことが重要であることを見出した。パージが完了するまでの時間は、パージ開始時の集合排気通路3における圧力の初期値(初期圧力値)に主に依存し得る。パージ開始時の初期圧力値は、パージ開始の環境などに応じて毎回異なっており、例えば、当該初期圧力値が高ければパージ完了までの時間は長くなる。特に、複数台のボイラ各々からの排ガスを合流させて導出する集合排気通路を含むシステムにおいて、ボイラの着火を行う場合に、当該ボイラ以外のボイラが既に稼働中であるときはパージ開始時の背圧がより高くなっており、パージ完了までの時間もより多く必要となり得る。そこで、本発明では、背圧の値で着火制御するようにしたものである。
【0018】
ダンパ6の開閉状態は、信号線9を介して台数制御装置7により制御される。圧力検知部5は、集合排気通路3における圧力(背圧)を検知し、検知した圧力値を特定するための圧力値信号を、信号線8を介して台数制御装置7に送信する。圧力検知部9から出力されるアナログ信号はデジタル信号に変換されて、台数制御装置7に入力される。
【0019】
台数制御装置7は、信号線10を介して複数のボイラ1各々を制御するための制御信号を送信可能である。台数制御装置7は、複数のボイラ1のいずれかにおいて燃焼を開始させる際に、ダンパ6が閉状態である場合には開状態に制御するとともに、燃焼を開始させる対象となるボイラ1(以下、制御対象ボイラともいう)の送風機1bを駆動させるための制御信号を当該制御対象ボイラに送信して缶体(ボイラ本体1a)の内部を換気する排気(パージ)を開始させる。パージ完了後、台数制御装置7は、制御対象ボイラに対して着火移行信号を送信して、バーナ1d(パイロットバーナ)に火炎を形成する火種を発生させるプレイグニッション、パイロットバーナを着火させる着火トライ、火種を消してパイロットバーナのみを燃焼させるパイロットオンリを順に経て、バーナ1d(メインバーナ)を着火させるメイントライに移行させる。以下、プレイグニッション、着火トライ、パイロットオンリおよびメイントライをまとめて「着火」と呼ぶ場合がある。着火のうち少なくともメイントライの着火は、圧力検知部5からの圧力値信号に基づき検知された圧力が所定値以下であることを条件として、制御対象ボイラの燃焼を開始させるための制御信号を送信して行われる。当該圧力は負圧であることが好ましい。プレイグニッションおよびメイントライの着火制御は、燃料供給ラインからバーナ1d(パイロットバーナおよびメインバーナ)へ燃料を供給した状態で着火装置によりバーナ1d(パイロットバーナおよびメインバーナ)へ着火されることにより行われる。
【0020】
台数制御装置7は、記憶部7a、入力部7b、および制御部7cなどを備えている。記憶部7aには、複数のボイラ1各々を制御するためのプログラム(
図2に示すメイントライ移行処理を行うためのプログラムも含む)や、特定用情報などが記憶されている。特定用情報は、圧力検知部5により検知された圧力値を特定するための情報、ダンパ6の開閉状態を制御するための情報などである。また、入力部7bからは、操作者からの操作に応じて特定用情報が入力される。制御部7cは、複数のボイラ1各々の着火制御を行うための制御信号を送信する。
【0021】
<メイントライ移行処理について>
図2は、台数制御装置で行われるメイントライ移行処理の一例を説明するためのフローチャートである。台数制御装置7の制御部7cは、複数のボイラ1のいずれかにおいて燃焼を開始する際にメイントライ移行処理を実行する。
【0022】
ステップS01では、ダンパ6が閉状態であるときには開状態に制御するとともに、制御対象ボイラの送風機を駆動させて排ガスの排気(パージ)を開始する。具体的には、制御対象ボイラの送風機を駆動させるための制御信号を制御対象ボイラに送信する。
【0023】
ステップS02では、パージが完了したか否かが判定される。例えば、送風機を駆動させてパージを開始してから所定時間経過することにより、ステップS02においてパージが完了したと判定するものであってもよい。パージが完了したと判定された場合はステップS03に進み、パージが完了していないと判断された場合にはステップS02を繰り返す。
【0024】
ステップS03では、制御対象ボイラのボイラ本体1aのバーナ1d(パイロットバーナ)に火炎を形成する火種を発生させるプレイグニッションに移行する。具体的には、制御対象ボイラにおいて着火制御(プレイグニッション)を行うための制御信号を制御対象ボイラに送信する。その後、ステップS03において着火トライおよびパイロットオンリを順に経て、ステップS04に進む。ステップS04では、集合排気通路3における圧力(背圧)が所定値以下であるか否かを判定する。背圧が所定値以下であると判定された場合はステップS05に進み、背圧が所定値以下であると判定されなかった場合はステップS04を繰り返す。ステップS05では、制御対象ボイラのボイラ本体1aの燃焼を開始させるためバーナ1d(メインバーナ)を着火させる着火制御(メイントライ)に移行する。具体的には、制御対象ボイラにおいて着火制御(メイントライ)を行うための制御信号を制御対象ボイラに送信する。
【0025】
以上のように、本実施の形態では、集合排気通路3における圧力(背圧)を圧力検知部9により検知し、検知した圧力値が所定値以下であることを条件として着火制御を行うため、安定して着火を行うことが可能となる。
【0026】
また、本実施の形態では、所定値が負圧の定められた値であるため、より安定して着火を行うことが可能となる。
【0027】
また、本実施の形態では、複数のボイラ本体1各々からの排ガスを合流させて導出する集合排気通路3における圧力(背圧)を検知するので、より安定して着火を行うことが可能となる。
【0028】
本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な上記の実施の形態の変形例などについて説明する。
【0029】
上記実施形態では、複数のボイラを台数制御装置により制御し、
図2に示すメイントライ移行処理を台数制御装置において実行する例について説明したが、ボイラ1台を制御するときは、台数制御装置7ではなく、当該ボイラの制御部において
図2に示すメイントライ移行処理を実行するようにしてもよい。
【0030】
上記実施形態では、圧力検知部5は集合排気通路3に設けられる例について説明したが、圧力検知部5は、集合排気通路3に設けられるものに限られず、各ボイラ本体の排気通路2に設けられてもよい。この場合、
図2のステップS03では、制御対象ボイラの排気通路2に設けられた圧力検知部5により検知された圧力に基づいて判定を行ってもよい。
【0031】
上記実施形態では、
図2のステップS02においてパージが完了してステップS03が行われた後に、ステップS04に進む例について説明したが、この順序に限られず、ステップS04は、少なくともステップS05に移行するまでに行うものであればどのタイミングでもよい。例えば、ステップS01に続いてステップS04を行った後にステップS02に移行するようにして、ステップS04において集合排気通路3における圧力(背圧)が所定値以下であると判定された場合に、ステップS02に進んで、パージが完了したか否かを判定してもよい。
【0032】
また、ステップS05におけるメイントライでの着火制御を、集合排気通路3における圧力(背圧)が所定値以下であると判定されたことを条件として実行可能とする例を示したが、これに限らず、ステップS03における着火トライでの着火制御を、集合排気通路3における圧力(背圧)が所定値以下であると判定されたことを条件として実行可能とするものであってもよく、また、パイロットオンリとする制御を、集合排気通路3における圧力(背圧)が所定値以下であると判定されたことを条件として実行可能とするものであってもよい。例えば、ステップS02におけるパージ完了後において、まず、ステップS03におけるプレイグニッションまで移行させた後に、ステップS04に移行させて集合排気通路3における圧力(背圧)が所定値以下であるか否かを判定し、所定値以下であると判定されたときにステップS03における着火トライに移行可能とするものであってもよく、また、ステップS02におけるパージ完了後においてステップS03におけるプレイグニッションおよび着火トライまで移行させた後に、ステップS04において集合排気通路3における圧力(背圧)が所定値以下であるか否かを判定し、所定値以下であると判定されたときにステップS03におけるパイロットオンリに移行可能とするものであってもよい。また、プレイグニッションを、集合排気通路3における圧力(背圧)が所定値以下であると判定されたことを条件として実行可能とするものであってもよく、この場合には、ステップS02におけるパージ完了後においてステップS04に移行させて集合排気通路3における圧力(背圧)が所定値以下であるか否かを判定し、所定値以下であると判定されたときにステップS03に移行可能とするものであってもよい。
【0033】
上記実施形態では、プレイグニッション、着火トライ、パイロットオンリを順に経てメイントライを行う例について説明したが、油焚ボイラ等、パイロットバーナを備えずメインバーナのみを備える構造のボイラの場合は、プレイグニッションを行い、その後にメインバーナを着火させるメイントライを行うこととなる。この場合においても、メイントライでの着火制御を、集合排気通路3における圧力(背圧)が所定値以下であると判定されたことを条件として実行可能とするようにしてもよく、プレイグニッションを、集合排気通路3における圧力(背圧)が所定値以下であると判定されたことを条件として実行可能とするものであってもよい。
【0034】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0035】
1 ボイラ
1a ボイラ本体
1b 送風機
1c 空気供給路
1d バーナ(パイロットバーナおよびメインバーナ)
2 排気通路
3 集合排気通路
5 圧力検知部
6 ダンパ
7 台数制御装置
7a 記憶部
7b 入力部
7c 制御部
8 信号線
9 信号線
10 信号線