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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050399
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】メンテナンス管理支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/00 20230101AFI20240403BHJP
   B63B 81/00 20200101ALI20240403BHJP
   B63B 79/10 20200101ALI20240403BHJP
   B63B 49/00 20060101ALI20240403BHJP
   B63B 13/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G06Q10/00
B63B81/00
B63B79/10
B63B49/00 Z
B63B13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077929
(22)【出願日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2022156914
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 和洋
(72)【発明者】
【氏名】山内 一生
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA00
5L049AA00
(57)【要約】
【課題】メンテナンスを効率的かつ確実に実施できるメンテナンス管理支援システムを提供する。
【解決手段】メンテナンス管理支援システム1は、船舶3に設けられた管理対象機器3a,3bのメンテナンスに関する管理情報を生成する管理装置10と、管理情報を表示する表示装置20とを備える。管理装置10は、受信された船舶3の稼働情報に基づいて、船舶3の稼働状態を判定する稼働判定部と、受信された管理対象機器3a,3bの状態情報に基づいて、管理対象機器3a,3bのメンテナンスに関する管理内容を決定し、判定された稼働状態に基づいて、管理対象機器3a,3bのメンテナンスに関する管理日を決定し、管理内容および前記管理日を含む管理情報を生成する管理部とを備える。表示装置20は、受信された管理対象機器3a,3bの管理情報に含まれた管理内容を、管理日に基づくカレンダー形式で表示する表示部を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶または工場に設けられた管理対象機器のメンテナンス管理を遠隔で行うメンテナンス管理支援システムであって、
前記船舶または工場に対して遠隔の地に設けられており、前記管理対象機器のメンテナンスに関する管理情報を生成する管理装置と、
前記管理情報を表示する表示装置と、
を備え、
前記管理装置は、
前記管理対象機器の状態情報および前記船舶または工場の稼働情報を受信し、前記管理対象機器の前記管理情報を送信する通信部と、
受信された前記稼働情報に基づいて、前記船舶または工場の稼働状態を判定する稼働判定部と、
受信された前記状態情報に基づいて、前記管理対象機器のメンテナンスに関する管理内容を決定し、判定された前記稼働状態に基づいて、前記管理対象機器のメンテナンスに関する管理日を決定し、前記管理内容および前記管理日を含む前記管理情報を生成する管理部と、
を備え、
前記表示装置は、
前記管理対象機器の前記管理情報を受信する通信部と、
受信された前記管理情報に含まれた前記管理内容を、前記管理日に基づくカレンダー形式で表示する表示部と、
を備える、
メンテナンス管理支援システム。
【請求項2】
前記管理装置の前記管理部によって生成される前記管理情報は、WEBブラウザに対応する表示データであって、前記管理内容を前記管理日に基づくカレンダー形式で表示する表示データであり、
前記表示装置は、WEBブラウザを用いて、前記表示データを表示する、
請求項1に記載のメンテナンス管理支援システム。
【請求項3】
前記管理装置における前記管理部は、
前記表示装置からの、前記管理対象機器のメンテナンスの完了情報に基づいて、前記管理情報における対応の管理情報の表示属性を変更し、
前記管理日が経過しても、前記表示装置からの前記完了情報がない場合、前記管理情報における対応の管理情報の管理日を翌日に延長する、
請求項1または2に記載のメンテナンス管理支援システム。
【請求項4】
前記管理装置における前記管理部は、前記管理日から所定日数経過しても、前記表示装置からの前記完了情報がない場合、催促を通知する、
請求項3に記載のメンテナンス管理支援システム。
【請求項5】
前記管理装置における前記管理部は、前記管理対象機器の稼働状態が所定期間以上の休止または停止を示す場合、前記管理対象機器のメンテナンスに関する前記管理情報を生成する、
請求項1または2に記載のメンテナンス管理支援システム。
【請求項6】
前記表示装置は、
前記表示部に表示された前記管理内容に対する作業者の操作に応じて、前記管理内容のメンテナンスの実施を確認する実施確認ボタンを第1実施確認アイテムとして前記表示部に表示し、
前記実施確認ボタンに対する前記作業者の操作に応じて、前記管理内容のメンテナンスまたは前記作業者に関する情報の入力を前記作業者に要求する情報入力要求欄を第2実施確認アイテムとして前記表示部に表示し、
前記情報入力要求欄に対する前記作業者の入力に応じて、前記管理内容のメンテナンスの完了情報を送信する、
請求項1または2に記載のメンテナンス管理支援システム。
【請求項7】
前記表示装置は、
前記表示部に表示された前記管理内容に対する作業者の操作に応じて、前記管理内容のメンテナンスの実施を確認する実施確認ボタン、および、前記管理内容のメンテナンスの測定結果に関する情報の入力を前記作業者に要求する情報入力要求欄を前記表示部に表示し、
前記実施確認ボタンに対する前記作業者の操作、および、前記情報入力要求欄に対する前記作業者の入力に応じて、前記管理内容のメンテナンスの完了情報を送信し、
前記完了情報は、前記情報入力要求欄に入力された前記管理内容のメンテナンスの測定結果を含む、
請求項1または2に記載のメンテナンス管理支援システム。
【請求項8】
船舶に設けられた管理対象機器のメンテナンス管理を遠隔で行うメンテナンス管理支援システムであって、
前記船舶に対して遠隔の地に設けられており、前記管理対象機器の水質情報に基づいて前記管理対象機器のメンテナンスに関する管理情報を生成する管理装置と、
前記管理情報を表示する表示装置と、
前記管理対象機器の水質情報を自動的に検出する水質情報検出部と、を備え、
前記管理装置は、
前記水質情報検出部の水質情報を受信し、前記管理情報を前記表示装置に送信する通信部と、
前記水質情報検出部で検出された水質情報に基づいて、前記管理対象機器の水質管理に関する管理内容と前記管理内容の実施日とを決定し、前記管理内容および前記実施日を含む前記管理情報を生成する管理部と、を備え、
前記表示装置は、
前記管理対象機器の前記管理情報を受信する通信部と、
受信された前記管理情報に含まれた前記管理内容を、前記実施日に基づくカレンダー形式で表示する表示部と、を備える、
メンテナンス管理支援システム。
【請求項9】
前記管理装置は、
前記管理内容の実施を猶予可能な期間を記憶する猶予期間記憶部を備え、
前記管理部は、
前記管理内容が表示される日から猶予期間の後に前記実施日を設定する、
請求項8に記載のメンテナンス管理支援システム。
【請求項10】
前記管理装置は、
定期的なメンテナンス日を記憶する定期管理記憶部と、
前記管理内容の実施日の許容される設定範囲を記憶する設定範囲記憶部と、を備え、
前記管理部は、前記管理内容の実施日の許容される設定範囲に前記定期的なメンテンナス日が設定されている場合、前記実施日を前記定期的なメンテナンス日に変更し、
前記表示部は、変更された実施日に基づくカレンダー形式で表示する、
請求項8に記載のメンテナンス管理支援システム。
【請求項11】
前記水質情報検出部は、缶水の電気伝導度を検出する電気伝導度検出部であって、
前記管理部は、前記電気伝導度検出部の検出結果に基づいて、前記管理対象機器のブローに関する管理内容と前記管理内容の実施日を決定する、
請求項8または9に記載のメンテナンス管理支援システム。
【請求項12】
前記管理部は、
前記電気伝導度検出部が検出した電気伝導度が、所定の変化限度値以上に急峻な変化を示す場合、または、
前記電気伝導度検出部が検出した電気伝導度の変化傾向が、所定の期間以内に、電気伝導度が所定の上限基準値に達することが予測される場合に、
前記管理対象機器のブローに関する管理内容と前記管理内容の実施日を決定する、
請求項11に記載のメンテナンス管理支援システム。
【請求項13】
前記管理対象機器は軟水装置を備え、
前記水質情報検出部は、ボイラに供給される水の硬度を検出する硬度検出部であって、
前記管理部は、前記硬度検出部の検出結果に基づいて、前記軟水装置の再生と前記再生の実施日を決定する、
請求項8または9に記載のメンテナンス管理支援システム。
【請求項14】
前記管理部は、前記硬度検出部が検出した硬度を所定の基準値と比較し
硬度が所定の基準値を超えた場合に、前記軟水装置の再生と前記再生の実施日を決定する、
請求項13に記載のメンテナンス管理支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンテナンス管理支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、船舶に搭載されるバラスト水処理装置およびボイラ装置等の種々の機器のメンテナンス等の管理を、船舶側だけでなく、管理センタ等の陸上側でも行う技術がある(例えば、特許文献1および2)。このような技術において、陸上の管理センタは、船舶に搭載されたバラスト水処理装置およびボイラ装置の状態情報を船舶から取得し、取得した状態情報に基づいて、バラスト水処理装置およびボイラ装置の管理情報を生成し、管理情報を船舶に送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-103637号公報
【特許文献2】特開2022-17036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような管理対象機器のメンテナンス管理を遠隔で行う船舶保守システムにおいて、船舶に搭載された管理対象機器のメンテナンス作業は、運航の状態・計画(稼動状況)を踏まえて運航や船内作業への影響を最小限に、そしてメンテナンスが効率的(重複、手戻り等が無い)に実施できるように計画されることが望ましい。メンテナンス作業を行う船員には、適切かつ効率的なメンテナンス計画を設定し、メンテナンス計画を的確かつ速やかに把握したうえで、メンテナンスを効率的かつ確実に実施することが求められている。
【0005】
本発明は、適切かつ効率的なメンテナンス計画を設定でき、メンテナンス計画を的確かつ速やかに把握したうえで、メンテナンスを効率的かつ確実に実施できるメンテナンス管理支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係るメンテナンス管理支援システムは、船舶または工場に設けられた管理対象機器のメンテナンス管理を遠隔で行うメンテナンス管理支援システムであって、前記船舶または工場に対して遠隔の地に設けられており、前記管理対象機器のメンテナンスに関する管理情報を生成する管理装置と、前記管理情報を表示する表示装置と、を備える。前記管理装置は、前記管理対象機器の状態情報および前記船舶または工場の稼働情報を受信し、前記管理対象機器の前記管理情報を送信する通信部と、受信された前記稼働情報に基づいて、前記船舶または工場の稼働状態を判定する稼働判定部と、受信された前記状態情報に基づいて、前記管理対象機器のメンテナンスに関する管理内容を決定し、判定された前記稼働状態に基づいて、前記管理対象機器のメンテナンスに関する管理日を決定し、前記管理内容および前記管理日を含む前記管理情報を生成する管理部と、を備える。前記表示装置は、前記管理対象機器の前記管理情報を受信する通信部と、受信された前記管理情報に含まれた前記管理内容を、前記管理日に基づくカレンダー形式で表示する表示部と、を備える。
【0007】
(2) (1)に記載のメンテナンス管理支援システムにおいて、前記管理装置の前記管理部によって生成される前記管理情報は、WEBブラウザに対応する表示データであって、前記管理内容を前記管理日に基づくカレンダー形式で表示する表示データであってもよく、前記表示装置は、WEBブラウザを用いて、前記表示データを表示してもよい。
【0008】
(3) (1)または(2)に記載のメンテナンス管理支援システムにおいて、前記管理装置における前記管理部は、前記表示装置からの、前記管理対象機器のメンテナンスの完了情報に基づいて、前記管理情報における対応の表示属性を変更してもよいし、前記管理日が経過しても、前記表示装置からの前記完了情報がない場合、前記管理情報における対応の管理情報の管理日を翌日に延長してもよい。
【0009】
(4) (3)に記載のメンテナンス管理支援システムにおいて、前記管理装置における前記管理部は、前記管理日から所定日数経過しても、前記表示装置からの前記完了情報がない場合、催促を通知してもよい。
【0010】
(5) (1)または(2)に記載のメンテナンス管理支援システムにおいて、前記管理装置における前記管理部は、前記管理対象機器の稼働状態が所定期間以上の休止または停止を示す場合、前記管理対象機器のメンテナンスに関する前記管理情報を生成してもよい。
【0011】
(6) (1)または(2)に記載のメンテナンス管理支援システムにおいて、前記表示装置は、前記表示部に表示された前記管理内容に対する作業者の操作に応じて、前記管理内容のメンテナンスの実施を確認する実施確認ボタンを第1実施確認アイテムとして前記表示部に表示し、前記実施確認ボタンに対する前記作業者の操作に応じて、前記管理内容のメンテナンスまたは前記作業者に関する情報の入力を前記作業者に要求する情報入力要求欄を第2実施確認アイテムとして前記表示部に表示し、前記情報入力要求欄に対する前記作業者の入力に応じて、前記管理内容のメンテナンスの完了情報を送信してもよい。
【0012】
(7) (1)または(2)に記載のメンテナンス管理支援システムにおいて、前記表示装置は、前記表示部に表示された前記管理内容に対する作業者の操作に応じて、前記管理内容のメンテナンスの実施を確認する実施確認ボタン、および、前記管理内容のメンテナンスの測定結果に関する情報の入力を前記作業者に要求する情報入力要求欄を前記表示部に表示し、前記実施確認ボタンに対する前記作業者の操作、および、前記情報入力要求欄に対する前記作業者の入力に応じて、前記管理内容のメンテナンスの完了情報を送信してもよい。前記完了情報は、前記情報入力要求欄に入力された前記管理内容のメンテナンスの測定結果を含んでもよい。
【0013】
(8) 本発明に係るメンテナンス管理支援システムは、船舶に設けられた管理対象機器のメンテナンス管理を遠隔で行うメンテナンス管理支援システムであって、前記船舶に対して遠隔の地に設けられており、前記管理対象機器の水質情報に基づいて前記管理対象機器のメンテナンスに関する管理情報を生成する管理装置と、前記管理情報を表示する表示装置と、前記管理対象機器の水質情報を自動的に検出する水質情報検出部と、を備え、前記管理装置は、前記水質情報検出部の水質情報を受信し、前記管理情報を前記表示装置に送信する通信部と、前記水質情報検出部で検出された水質情報に基づいて、前記管理対象機器の水質管理に関する管理内容と前記管理内容の実施日とを決定し、前記管理内容および前記実施日を含む前記管理情報を生成する管理部と、を備え、前記表示装置は、前記管理対象機器の前記管理情報を受信する通信部と、受信された前記管理情報に含まれた前記管理内容を、前記実施日に基づくカレンダー形式で表示する表示部と、を備える。
【0014】
(9) (8)のメンテナンス管理支援システムにおいて、前記管理装置は、前記管理内容の実施を猶予可能な期間を記憶する猶予期間記憶部を備え、前記管理部は、前記管理内容が表示される日から猶予期間の後に前記実施日を設定する。
【0015】
(10) (8)のメンテナンス管理支援システムにおいて、前記管理装置は、定期的なメンテナンス日を記憶する定期管理記憶部と、前記管理内容の実施日の許容される設定範囲を記憶する設定範囲記憶部と、を備え、前記管理部は、前記管理内容の実施日の許容される設定範囲に前記定期的なメンテンナス日が設定されている場合、前記実施日を前記定期的なメンテナンス日に変更し、前記表示部は、変更された実施日に基づくカレンダー形式で表示する。
【0016】
(11) (8)から(9)の何れかのメンテナンス管理支援システムにおいて、前記水質情報検出部は、缶水の電気伝導度を検出する電気伝導度検出部であって、前記管理部は、前記電気伝導度検出部の検出結果に基づいて、前記管理対象機器のブローに関する管理内容と前記管理内容の実施日を決定する。
【0017】
(12) (11)のメンテナンス管理支援システムにおいて、前記管理部は、前記電気伝導度検出部が検出した電気伝導度が、所定の変化限度値以上に急峻な変化を示す場合、または、前記電気伝導度検出部が検出した電気伝導度の変化傾向が、所定の期間以内に、電気伝導度が所定の上限基準値に達することが予測される場合に、前記管理対象機器のブローに関する管理内容と前記管理内容の実施日を決定する。
【0018】
(13) (8)から(12)の何れかのメンテナンス管理支援システムにおいて、前記管理対象機器は軟水装置を備え、前記水質情報検出部は、ボイラに供給される水の硬度を検出する硬度検出部であって、前記管理部は、前記硬度検出部の検出結果に基づいて、前記軟水装置の再生と前記再生の実施日を決定する。
【0019】
(14) (13)のメンテナンス管理支援システムにおいて、前記管理部は、前記硬度検出部が検出した硬度を所定の基準値と比較し硬度が所定の基準値を超えた場合に、前記軟水装置の再生と前記再生の実施日を決定する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、適切かつ効率的なメンテナンス計画を設定でき、メンテナンス計画を的確かつ速やかに把握したうえで、メンテナンスを効率的かつ確実に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係るメンテナンス管理支援システムの構成および船舶管理システムの構成を示す概略図である。
図2図1に示すメンテナンス管理支援システムにおける管理装置の構成を示す図である。
図3図1に示すメンテナンス管理支援システムにおける表示装置の構成を示す図である。
図4】表示装置による表示の一例、すなわち管理装置による表示データの一例、を示す図である。
図5A】表示装置によるリンク表示の一例であって図4に示す表示にリンクするリンク表示の一例、すなわち管理装置によるリンク表示データの一例であって図4に示す表示データにリンクするリンク表示データの一例、を示す図である。
図5B】表示装置によるリンク表示の一例であって図4に示す表示にリンクするリンク表示の一例、すなわち管理装置によるリンク表示データの一例であって図4に示す表示データにリンクするリンク表示データの一例、を示す図である。
図6】表示装置によるリンク表示の一例であって図4に示す表示にリンクするリンク表示の一例、すなわち管理装置によるリンク表示データの一例であって図4に示す表示データにリンクするリンク表示データの一例、を示す図である。
図7】第2の実施形態のメンテナンス管理支援システムにおける管理装置の構成を示す図である。
図8】ボイラ缶水の電気伝導度の経時変化の例を示す図である。
図9】ボイラ缶水のpHの経時変化の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0023】
図1は、本実施形態に係るメンテナンス管理支援システムを示す概略図である。図1には、本実施形態のメンテナンス管理支援システム1とともに、船舶管理システム100が示されている。船舶管理システム100は、例えば船舶管理事業者が船舶の全体管理を行うためのシステムである。一方、メンテナンス管理支援システム1は、船舶に設けられた機器のメーカが船舶管理事業者または船舶乗員による機器のメンテナンス管理を支援するためのシステムである。
【0024】
船舶管理システム100は、船舶3と、船上サーバ4と、陸上サーバ5とを備える。船舶3には、種々の機器、例えばボイラ装置3aおよびバラスト水処理装置3b、が設けられている。船舶乗員によって管理され船舶3に設けられる船上サーバ4は、船舶の運航情報等の種々の情報、および機器の状態情報等の種々の情報を船内LANを介して収集する。船上サーバ4は、船内LANを経由して衛星通信の船舶局に接続し、種々の情報を陸上サーバ5に送信する。陸上サーバ5は、舶用通信プラットフォームベンダーによって管理され、船上サーバ4から送信されたデータ(船舶の運航情報等の種々の情報、および機器の状態情報等の種々の情報を含む)を受信し保存する。陸上サーバ5は、インターネット回線を経由して衛星通信の地上局、または携帯基地局(図示せず)に接続し、船上サーバ4から種々の情報を取得する。
【0025】
メンテナンス管理支援システム1は、船舶3に設けられた管理対象の機器3a,3bのメンテナンス管理を遠隔で行うシステムである。メンテナンス管理支援システム1は、インターネットを経由して、陸上サーバ5から機器の状態情報等の種々の情報を取得する。なお、メンテナンス管理支援システム1は、インターネット回線を経由して衛星通信の地上局、または携帯基地局(図示せず)に接続し、船上サーバ4から機器の状態情報等の種々の情報を取得してもよい。メンテナンス管理支援システム1は、管理装置10と表示装置20(船舶表示装置20a)とを備える。また、メンテナンス管理支援システム1は、複数台の陸上表示装置20b,20cを備えても良い。例えば、陸上表示装置20bは船舶を管理する管理会社に備えられ、船舶に搭載された機器の管理に利用される。陸上表示装置20cは船舶に搭載された機器のメーカに備えられ、機器の保守管理に利用される。
【0026】
図2は、図1に示すメンテナンス管理支援システムにおける管理装置の構成を示す図である。図2に示す管理装置10は、船舶3に対して遠隔の地に設けられており、船上の管理対象機器3a,3bのメンテナンスに関する管理情報を生成する。管理装置10は、通信部11と、制御部14と、記憶部15と、稼働判定部16と、管理部17とを備える。
【0027】
通信部11は、船舶管理システム100における陸上サーバ5または船上サーバ4と通信を行い、船上の管理対象機器3a,3bの状態情報(機器内の部品の状態も含む)および船舶3の稼働情報(航海、停泊、ドックなど)を受信する。また、通信部11は、表示装置20(船舶表示装置20a)と通信を行い、後述のように生成される管理対象機器3a,3bの管理情報を表示装置20(船舶表示装置20a)に送信する。また、通信部11は、表示装置20(船舶表示装置20a)から、後述する水質管理の入力データ情報、サインの入力情報、メンテナンス実施情報(図4図6のボタン)等の各種情報を受信する。また、通信部11は、表示装置20(船舶表示装置20a)から、船員によって入力された船舶3の稼働情報(航海、停泊、ドックなど)を受信してもよい。
【0028】
制御部14は、管理装置10の全体制御を行う。制御部14(および、後述する稼働判定部16および管理部17)は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の演算プロセッサで構成される。制御部14(および、後述する稼働判定部16および管理部17)の各種機能は、例えば記憶部15に格納された所定のソフトウェア(プログラム)を実行することで実現される。制御部14(および、後述する稼働判定部16および管理部17)の各種機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働で実現されてもよいし、ハードウェア(電子回路)のみで実現されてもよい。
【0029】
記憶部15は、制御部14(および、後述する稼働判定部16および管理部17)により実行される所定のソフトウェア(プログラム)を記憶する。また、記憶部15は、後述するように管理部17によって生成される管理情報を記憶する。後述するように管理情報がWEBブラウザに対応する表示データである場合、記憶部15はWEBサーバとして機能する。この場合、管理装置10は、クラウドサーバ等の仮想サーバに構築されてもよい。また、記憶部15は、稼働判定部16によって生成された情報を記憶してもよいし、通信部11から入力される情報を記憶してもよい。また、記憶部15は、船舶3の稼働状態とメンテナンスに関する管理内容の関連付け情報、および/または管理対象機器3a,3bの状態情報と管理対象機器3a,3bのメンテナンスに関する管理内容の関連付け情報を記憶してもよい。記憶部15は、例えば、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、またはSSD(Solid State Drive)等の書き換え可能なメモリで構成される。
【0030】
稼働判定部16は、船舶3の稼働情報に基づいて、船舶3の稼働状態(航海、停泊、ドックなど、工場では稼動中、長期停止中、停止中など)を判定する。船舶3の稼働情報は、船上サーバ4に記憶された情報に基づいて作成されたものであってもよいし、船上表示装置20aを操作して船員が入力した情報に基づいて作成されたものであってもよい。また、インターネットのWEBサイトに公開されている情報(例えば、船舶の航跡情報等)を取得してもよい。稼働情報は現状および予定(予測)を含んでもよいし、稼動状態の判定は現状および将来予測を含んでもよい。
【0031】
管理部17は、船上の管理対象機器3a,3bの状態情報に基づいて、管理対象機器3a,3bのメンテナンスに関する管理内容(例えば、後述する臨時メンテナンス)を決定する。例えば、管理部17は、記憶部15に記憶された管理対象機器3a,3bの状態情報と管理対象機器3a,3bのメンテナンスに関する管理内容の関連付け情報を参照して、船上の管理対象機器3a,3bの状態情報に対応する管理対象機器3a,3bのメンテナンスに関する管理内容を決定する。また、管理部17は、稼働判定部16によって判定された稼働状態に基づいて、管理対象機器3a,3bのメンテナンスに関する管理日を決定する。例えば、管理部17は、記憶部15に記憶された船舶3の稼働状態とメンテナンスに関する管理内容の関連付け情報を参照して、稼働判定部16によって判定された稼働状態に対応する管理対象機器3a,3bのメンテナンスに関する管理日を決定する。管理部17は、管理内容および管理日を含む管理情報を生成する。例えば、管理情報は、WEBブラウザに対応する表示データであって、管理内容を管理日に基づくカレンダー形式で表示する表示データである。
【0032】
これにより、管理部17は、管理対象機器3a、3bの状態情報と稼働判定部16によって判定された稼働状態とに基づいて、管理内容と管理日とを其々決定するため、適切なメンテナンス内容かつ稼働状況を考慮したメンテナンス日としたメンテナンス計画ができる。
【0033】
図3は、図1に示すメンテナンス管理支援システムにおける表示装置の構成を示す図である。図3に示す表示装置20(船舶表示装置20a)は、例えば船上の管理対象機器3a,3bのメンテナンス管理を行うメンテナンス作業者(例えば、船舶乗員)のための表示装置であり、管理装置10によって生成された管理情報を表示する。管理情報がWEBブラウザに対応する表示データである場合、表示装置20(船舶表示装置20a)としては、PC、タブレット、スマートフォン等のWEBブラウザを実装した情報端末が挙げられる。表示装置20(船舶表示装置20a)は、通信部21と、操作部22と、制御部24と、記憶部25と、表示部28とを備える。
【0034】
通信部21は、管理装置10と通信を行い、管理対象機器3a,3bの管理情報を受信する。また、通信部21は、管理装置10と通信を行い、メンテナンス作業者によって入力される各種情報を、管理装置10に送信する。通信部21は、例えば、船内LAN等の無線通信規格に準拠した通信インタフェースデバイスで構成される。
【0035】
操作部22は、船上の管理対象機器3a,3bのメンテナンス作業者によって操作されることにより、後述する水質管理の入力データ情報、サインの入力情報、メンテナンス実施情報(図4図6のボタン)等の情報、船舶3の稼働情報(航海、停泊、ドックなど)を入力する操作部である。操作部22は、例えば、物理的な操作ボタンを有するキーボードまたはマウス等、或いは仮想的な操作ボタンを有するタッチパネル等、で構成される。
【0036】
制御部24は、表示装置20(船舶表示装置20a)の全体制御を行う。制御部24は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の演算プロセッサで構成される。制御部24の各種機能は、例えば記憶部25に格納された所定のソフトウェア(プログラム)を実行することで実現される。制御部24の各種機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働で実現されてもよいし、ハードウェア(電子回路)のみで実現されてもよい。
【0037】
記憶部25は、制御部24により実行される所定のソフトウェア(プログラム)を記憶する。また、記憶部25は、受信された管理情報を記憶してもよい。また、記憶部25は、通信部21または操作部22から入力される情報を記憶してもよい。記憶部25は、例えば、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、またはSSD(Solid State Drive)等の書き換え可能なメモリで構成される。
【0038】
表示部28は、各種情報を表示する表示部である。表示部28は、例えば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイで構成される。表示部28は、受信された管理情報に含まれた管理内容を、管理日に基づくカレンダー形式で表示する。例えば、表示装置20(船舶表示装置20a)は、WEBブラウザを用いて、表示データを表示する。
【0039】
また、表示装置20(陸上表示装置20b)は、例えば船上の管理対象機器3a,3bのメンテナンス管理を行う管理者(例えば、船舶管理会社の監督者)のための表示装置であり、管理装置10によって生成された管理情報、例えば上述した管理内容を管理日に基づくカレンダー形式で表示する表示データ、を表示してもよい。管理情報がWEBブラウザに対応する表示データである場合、表示装置20(陸上表示装置20b)としては、上述した表示装置20(船舶表示装置20a)と同様の構成であればよく、PC、タブレット、スマートフォン等のWEBブラウザを実装した情報端末が挙げられる。
【0040】
これによれば、陸上表示装置20bにより、陸上の管理者(例えば、船舶管理会社の監督者)は、船舶表示装置20aのメンテナンスの予定および進捗・完了の状況と同じ画面(内容)を見ることができ、メンテナンスの管理情報を共有できる。
これにより、陸上の管理者(例えば、船舶管理会社の監督者)は、メンテナンスの予定および進捗・完了の状況を船舶での作業者と同様に把握でき、作業者からの問い合わせ対応および部品交換などのメンテナンス作業や部品在庫管理の支援を効果的に行うことができ、また、メンテナンス管理のリモート監視に利用することもできる。
【0041】
また、表示装置20(陸上表示装置20c)は、例えば船上の管理対象機器3a,3bのメンテナンス管理を行う管理者(例えば、機器メーカのメンテナンス管理者)のための表示装置であり、管理装置10によって生成された管理情報、例えば上述した管理内容を管理日に基づくカレンダー形式で表示する表示データ、を表示してもよい。管理情報がWEBブラウザに対応する表示データである場合、表示装置20(陸上表示装置20c)としては、上述した表示装置20(船舶表示装置20a)と同様の構成であればよく、PC、タブレット、スマートフォン等のWEBブラウザを実装した情報端末が挙げられる。
【0042】
これによれば、陸上表示装置20cにより、陸上の管理者(例えば、機器メーカのメンテナンス管理者)は、船舶表示装置20aのメンテナンスの予定および進捗・完了の状況と同じ画面(内容)を見ることができ、メンテナンスの管理情報を共有できる。
これにより、陸上の管理者(例えば、機器メーカのメンテナンス管理者)は、メンテナンスの予定および進捗・完了の状況を船舶での作業者と同様に把握でき、作業者からの問い合わせ対応および部品交換などのメンテナンス作業や部品在庫管理の支援を効果的に行うことができ、また、メンテナンス管理のリモート監視に利用することもできる。
【0043】
以下では、図4図6を参照して、管理装置10および表示装置20(船舶表示装置20a、陸上表示装置20b,20c)について詳細に説明する。図4は、表示装置による表示の一例、すなわち管理装置による表示データの一例、を示す図である。図5A図5Bおよび図6は、表示装置によるリンク表示の一例であって図4に示す表示にリンクするリンク表示の一例、すなわち管理装置によるリンク表示データの一例であって図4に示す表示データにリンクするリンク表示データの一例、を示す図である。
【0044】
図4に示すように、管理装置10における管理部17は、WEBブラウザに対応する表示データであって、管理内容を管理日に基づくカレンダー形式で表示する表示データ(管理情報)を生成する。また、表示装置20(船舶表示装置20a、陸上表示装置20b,20c)は、WEBブラウザを用いて、表示データ(管理情報)を表示する。すなわち、表示装置20における表示部28は、受信された管理情報に含まれた管理内容を、管理日に基づくカレンダー形式で表示する。
【0045】
管理内容としては、定期メンテナンス(シンボル網掛けなし)および臨時メンテナンス(シンボル網掛けあり)が挙げられる。定期メンテナンスは、定期的(例えば1週間ごと、1か月間隔ごと)に行われるメンテナンスである。定期メンテナンスとしては、
・ボイラ装置(機器)のウォーターサンプリング(A2a、A2b、A2c、A2d)
ボイラ給水を採水し水質測定。測定結果に基づき軟水器再生回数や薬注量を調整。
・ボイラ装置(機器)のフレームアイチェック(A3)
フレームアイの保護ガラスの掃除。保護ガラス汚れが原因となる失火や不着火の防止。
・ボイラ装置(機器)の送風機チェック(A6)
停泊中は主機が停止し補助ボイラが燃焼時に送風機が動いている。送風機運転中に振動、異音、異常温度を点検。
・各モーターの絶縁抵抗チェック(A7)
対地間絶縁抵抗等の測定。
・バラスト水処理装置(機器)のフィルタレギュレータチェック
停止中にフィルタレギュレータ内部のドレンを排出し、エア駆動弁の動作不良を防止。
・バラスト水処理装置(機器)の電磁流量計チェック
電磁流量計の電極、ライニング面、アースリングに付着物や腐食がないことを確認。
等が挙げられる。定期メンテナンスの間隔は、メンテナンス項目ごとに予め設定されており、この設定ファイルに基づいて管理されればよい。
【0046】
一方、臨時メンテナンスは、メンテナンスの必要性が生じたときに不定期に行われるメンテナンスである。臨時メンテナンスとしては、
・ボイラ装置(機器)のスートブロワー(A4a,A4b)
管体内の煤をエアブローで除去。燃料油の種類及び燃焼時間によりスートブロワー間隔は変動。
・ボイラ装置(機器)のノズルチップチェック(A5)
ノズルチップの詰まり、汚れを確認し掃除。
・ボイラ装置(機器)のストレーナチェック(A8)
オイルストレーナに溜まっている不純物を廃棄し、ストレーナを掃除。
等の燃料油の種類及び燃焼時間により臨時メンテナンスの時期が変動するものがある。
・バラスト水処理装置(機器)のUVランプチェク(A9)
航海中はバラスト水処理装置が停止するため、航海中にUVランプ保護管等の汚れを確認。UVランプの保護管の掃除、UVセンサの保護ガラスの掃除。
或いはUVランプ発光強度が低下した場合に臨時点検が実施される。
等が挙げられる。臨時メンテナンスは、上述したように管理対象機器の状態情報、例えば管理対象機器の状態変化(例えば各種測定データの変化)等、に基づいて管理されればよい。
【0047】
例えば、機械学習等を用いて、前回点検データと今回点検データとに基づいて、点検データが閾値を超える時期を予測し、予測した時期に臨時メンテナンスを設定してもよい。より具体的な一例としては、ボイラ装置(機器)のバーナノズルチップ点検では、燃焼時間(低燃焼/高燃焼)、着火回数、炉圧上昇時間、燃料油圧、不着火アラーム発報回数等のデータを所定期間ごとに測定し、前回点検データと今回点検データとに基づいて予め定めた閾値を超える時期を予測し、予測した時期に臨時メンテナンスを設定してもよい。
【0048】
例えば、図4に示すように、定期メンテナンス(シンボル網掛けなし)と臨時メンテナンス(シンボル網掛けあり)とは、表示属性を異ならせることによって、区別可能に表示されてもよい。更に、特定の管理内容、例えばボイラの水質管理関係のウォーターサンプリングが、他の管理内容に対して、表示属性を異ならせることによって、区別可能に表示されてもよい。表示属性としては、例えば色が挙げられ、定期メンテナンスは緑、臨時メンテナンスは赤、ウォーターサンプリングは青でタイトル表示枠内を塗潰して表示される。
【0049】
また、管理装置10における管理部17は、稼働判定部16によって判定された船舶3の稼働状態(航海、停泊、ドックなど)に基づいて、管理対象機器3a,3bのメンテナンスに関する管理日を決定する。船舶3に設けられた機器3a,3bのメンテナンスの中には、停泊中(主機停止時)に行うメンテナンスと運航中(主機稼働時)に行うメンテナンスとがある。停泊中(主機停止時)に行うメンテナンスとしては、例えば、送風機チェックA6などが挙げられる。停泊中は主機の停止により排ガスボイラでの蒸気発生が無く、補助ボイラが燃焼する。この送風機運転中に、送風機の振動、異音、異常温度を点検する。一方、運航中(主機稼働時)では、補助ボイラおよびバラスト水処理装置共に稼働していないことが多いため、運航中(主機稼働時)に行うメンテナンスとしては、ボイラ装置停止中のバーナ部分の清掃・確認(フレームアイチェックA3、ノズルチップチェックA5)、および、バラスト水処理装置停止中のメンテナンス(UVランプチェックA9)などが挙げられる。
【0050】
船舶3の稼働状態(航海、停泊、ドックなど)は、表示属性を異ならせることによって、区別可能に表示されてもよい。表示属性としては、例えば色が挙げられる。図4の例では、斜線パターンなしは青色、斜線パターンは黄色を示すものとする。図4では、黄色を示す斜線パターンである6月15日~6月16日、6月24日~6月25日、7月2日~7月5日は停泊中(主機停止時)、青色を示す斜線パターンなしの期間は運航中(主機稼働時)である。
【0051】
表示データはリンク表示データを含み、表示装置はリンク表示データを表示してもよい。メンテナンス実施の際、例えば図4のメンテナンス表示(管理内容表示)におけるノズルチップチェックA5がメンテナンス作業者(または陸上の管理者)によってクリックされると、表示装置20(船舶表示装置20a、陸上表示装置20b,20c)は、図5Aに示すリンク表示データを表示する。この表示データは、日付、メンテナンス件名、前回メンテナンス実施日付、メンテナンス方法のガイダンス(PDF)、実施確認ボタンDone/Not yet等を含む。
【0052】
メンテナンス実施の後、例えば図5Aのリンク表示における実施確認ボタンDoneがメンテナンス作業者(または陸上の管理者)によってクリックされると、表示装置20(船舶表示装置20a、陸上表示装置20b,20c)は、図5Bに示すリンク表示データを表示する。この表示データは、日付、メンテナンス件名、サイン要求、サイン確認ボタンSign/Not yet等を含む。図5Bの表示において、サイン入力およびサイン確認ボタンSignのクリックがメンテナンス作業者(または陸上の管理者)によって行われると、表示装置20(船舶表示装置20a、陸上表示装置20b,20c)から管理装置10へ、メンテナンス完了情報が送信される。
【0053】
このようにして、表示装置20(船舶表示装置20a、陸上表示装置20b,20c)は、表示部28に表示された管理内容に対するメンテナンス作業者(または陸上の管理者)の操作に応じて、管理内容のメンテナンスの実施を確認する実施確認ボタンを第1実施確認アイテムとして表示部28に表示する(図5A)。また、表示装置20は、実施確認ボタンに対するメンテナンス作業者(または陸上の管理者)の操作に応じて、管理内容のメンテナンスまたはメンテナンス作業者(または陸上の管理者)に関する情報の入力をメンテナンス作業者(または陸上の管理者)に要求する情報入力要求欄を第2実施確認アイテムとして表示部28に表示する(5B)。そして、表示装置20は、情報入力要求欄に対する前記作業者(または陸上の管理者)の入力に応じて、管理内容のメンテナンスの完了情報を管理装置10に送信する、すなわち、表示装置20は、第1実施確認アイテム(図5A)と第2実施確認アイテム(図5B)との2段階での確認により、管理内容のメンテナンスの完了を判断する。
【0054】
管理装置10における管理部17は、メンテナンス完了情報に基づいて、管理情報(表示データ)における対応の管理情報の表示属性を変更してもよい。例えば、管理装置10における管理部17は、対応の管理情報の色をグレーに変更する。これにより、メンテナンスの履歴を色で確認すると共にメンテナンス予定を確認でき、メンテナンスの全体像を把握しながら次回メンテナンスを計画及び準備でき、メンテナンスの効率と確実性を向上できる。
【0055】
一方、ウォーターサンプリングの場合、表示装置20(船舶表示装置20a、陸上表示装置20b,20c)は、図6に示すリンク表示データを表示する。この表示データは、日付、メンテナンス件名、前回メンテナンス実施日付、メンテナンス方法のガイダンス(pdf)、実施確認ボタンDone/Not yet等に加え、ウォーターサンプリングの各種測定値の要求を含んでもよい。また、図6の表示において入力されたウォーターサンプリングの各種測定値は、表示装置20(船舶表示装置20a、陸上表示装置20b,20c)から管理装置10へ送信されるメンテナンス完了情報に含まれてもよい。
【0056】
このようにして、表示装置20(船舶表示装置20a、陸上表示装置20b,20c)は、表示部28に表示された管理内容に対するメンテナンス作業者(または陸上の管理者)の操作に応じて、管理内容のメンテナンスの実施を確認する実施確認ボタン、および、管理内容のメンテナンスの測定結果に関する情報の入力をメンテナンス作業者(または陸上の管理者)に要求する情報入力要求欄を表示部28に表示する(図6)。そして、表示装置20は、実施確認ボタンに対するメンテナンス作業者(または陸上の管理者)の操作、および、情報入力要求欄に対するメンテナンス作業者(または陸上の管理者)の入力に応じて、管理内容のメンテナンスの完了情報を管理装置10に送信する。また、完了情報は、情報入力要求欄に入力された管理内容のメンテナンスの測定結果を含む。
【0057】
これにより、管理装置10における管理部17は、ウォーターサンプリングで取得した各種測定値に基づいて薬品投入等のメンテナンス管理を行うことができる。このように、管理装置10における管理部17は、上述したように管理対象機器の状態情報、例えば管理対象機器の状態変化(例えば各種測定データの変化)等、に基づいて、各種臨時メンテナンスの管理を行う。
【0058】
管理装置10における管理部17は、管理日が経過しても、表示装置20(船舶表示装置20a、陸上表示装置20b,20c)からのメンテナンス完了情報がない場合、管理情報における対応の管理情報の管理日を翌日に延長する。管理装置10における管理部17は、表示データにおいて、表示内容を管理日から翌日に延ばして表示してもよい。図4は、管理情報であるウォーターサンプリングA2aとスートブローA4a、A4b(A4aから延長)の管理日が延長した例である。
【0059】
また、管理装置10における管理部17は、定期メンテナンスの場合、管理日の延長に応じて、次回以降の管理日についてそのままとしてもよいし、管理日の延長に応じて次回以降の管理日も延長するように再スケジューリングしてもよい。例えば、管理装置10における管理部17は、図4の1週間間隔のウォーターサンプリングA2b,A2c,A2dの当初管理日6月13日を延長する場合、次回以降の管理日を6月20日、6月27日のままとしてもよいし、管理日の延長に応じて次回以降の管理日を6月22日、6月29日等に延長するように再スケジューリングしてもよい。これによれば、ウォーターサンプリングのように次回以降のサンプリングの間隔を一定にすることが適切な場合と、一定間隔でメンテナンスを行うことが必要な場合との、其々のメンテナンスに応じた再スケジューリングを行うことができる。
【0060】
更に、管理装置10における管理部17は、管理日から所定日数(例えば1週間)経過しても、表示装置20(船舶表示装置20a、陸上表示装置20b,20c)からのメンテナンス完了情報がない場合、例えば電子メール等の別手段によって、催促を通知してもよい。通知の宛先としては、メンテナンス作業者であってもよいし、メンテナンス作業者の管理者であってもよい。なお、緊急性を有する臨時メンテナンスの場合、所定日数は1日または数日であってもよい。これによれば、メンテナンス作業者がメンテナンス作業を失念することを低減でき、その結果、メンテナンス作業の確実性をより向上することができる。
【0061】
また、管理装置10における管理部17は、管理対象機器の稼働状態が所定期間以上の休止または停止を示す場合、管理対象機器のメンテナンスに関する管理情報を生成する。例えば、船舶に設けられたバラスト水処理装置(機器)は、貨物荷下ろし後に稼働し、航海中は停止し続ける。航海が長期間に及ぶ場合に、バラスト水処理装置(機器)の停止期間が長くなり、例えばバルブの固着などの異常発生リスクが上がる。この点に関し、管理対象機器の稼働状態が所定期間以上の休止または停止を示す場合、管理対象機器のメンテナンスに関する管理情報を生成する。これにより、バラスト水処理装置(機器)などの長期間休止または停止する装置に異常がないことを確認でき、貨物荷下ろし後の装置稼働時に例えばバルブの固着などの異常発生リスクを低減することができる。
【0062】
また、表示データは、作業者の作業日報フォームのリンク表示データを含み、表示装置は、メンテナンス作業者の作業日報フォームのリンク表示データを表示してもよい。例えば、管理装置10における管理部17または表示装置20(船舶表示装置20a、陸上表示装置20b,20c)は、図4の日報(Daily report)A10がメンテナンス作業者によってクリックされたことに応じて、例えば図5A図5Bおよび図6のリンク表示に対するメンテナンス作業者の操作に基づいて、ボイラ装置におけるノズルチップチェックやウォーターサンプリングに関するメンテナンス作業者の作業日報を自動で生成してもよい。
【0063】
以上説明したように、本実施形態のメンテナンス管理支援システム1によれば、船舶または工場の稼働状態に基づいて管理対象機器のメンテナンスに関する管理日を決定し、管理内容および管理日を含む管理情報をカレンダー形式で表示する。これにより、メンテナンス作業者(または陸上の管理者)は、メンテナンスに適した稼働状態のメンテナンス日を確保できると共に、カレンダー表示により的確且つ速やかにメンテナンス日を視認でき、その結果、メンテナンス作業を効率的かつ確実に行うことができる。また、メンテナンス作業の計画をカレンダー表示することにより、メンテナンス作業者(または陸上の管理者)は前後のメンテナンス作業と併せた作業把握ができ、その結果、メンテナンス日の失念を低減できるだけでなく、メンテナンス作業の効率とその効果を高めることができる。また、航海予定が変更された場合であっても、稼動判定部で稼働状態を判定しメンテナンス予定を(自動)調整することができる。
【0064】
本実施形態のメンテナンス管理支援システム1おいては、管理部によって生成される管理情報はWEBブラウザに対応する表示データであるので、汎用的な表示装置に使用することで表示情報の共有を行いやすい。このため、船員、管理対象機器のメーカ及び船舶運航管理事務員(監督)などとの間でメンテナンス情報の共有を容易に行うことができる。
【0065】
本実施形態のメンテナンス管理支援システム1おいては、メンテナンスの管理日が経過しても表示端末装置からの完了情報がない場合にメンテナンス予定日を翌日に延長するか、および/またはメンテナンスの管理日から所定日数経過しても表示端末装置からの完了情報がない場合にメールなどで催促を通知するといった、メンテナンス未実施のフォローを行う。これによって、メンテナンスの実施をより確実にすることができる。
【0066】
また、本実施形態のメンテナンス管理支援システム1おいては、管理対象機器の稼働状態が所定期間以上の休止または停止を示す場合にメンテナンス日を設定する。このため、管理することが難しい長期間の休止または停止を行う管理対象機器の運転を行う際の故障および不具合の発生を効果的に低減できる。
【0067】
特に船舶では、例えば、船主あるいは船舶管理会社など陸上の拠点において、船の運航に関わる荷物の運び方や航海のスピード等についての意見交換、また、船舶の機械・機関に関わるメンテナンスやトラブル対応・修理、整備計画の立案などの船舶管理業務が行われることがある。本システムによれば、船舶管理会社の監督者が船舶に搭載された管理対象機器を管理する場合に、船上の作業者と情報を共有し、メンテナンス計画の設定・変更および完了を的確かつ速やかに把握し、船舶の運航や荷役作業を円滑にする効率的かつ確実なメンテナンス等を実施することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、管理装置10における管理部17は、管理情報として、WEBブラウザに対応する表示データを生成する形態を例示した。しかし、本発明はこれに限定されず、管理装置10における管理部17は種々の管理情報を生成し、表示装置が管理情報に基づいて種々の表示を行う種々の形態にも適用可能である。
【0069】
また、上述した実施形態では、船舶に設けられた管理対象機器のメンテナンス管理を行うメンテナンス管理支援システムについて説明した。しかし、本発明はこれに限定されず、例えば工場に設けられた管理対象機器のメンテナンス管理を行うメンテナンス管理支援システムにも適用可能である。工場の場合の稼働情報は工場の稼働日と休日或いは繁忙期と閑散期等が考えられる。また、複数の製品を製造する工場では、ある製品を製造する設備の稼働日と休業日に基づいて稼働情報を作成しても良い。
【0070】
(第2の実施形態)
メンテナンス管理支援システム1は、管理対処機器の状態情報としての水質情報に基づいて管理情報を生成することで、水質管理支援システムとして機能することもできる。メンテナンス管理支援システム1は、管理対象機器の水質情報に基づいて管理対象機器の水質管理に関する管理内容とその実施日とを決定し、それらを含む管理情報を生成してもよい。
【0071】
水質情報は、ボイラ装置3aのボイラ缶水のpHおよび電気伝導度、ならびにボイラ装置3aへの新規補給水の硬度のうちの少なくとも1つを含む。また、水質情報は、ボイラ装置3aにおけるスケールのモニタ結果を含んでいてもよい。以下、第2の実施形態のメンテナンス管理支援システム1について、上述の実施形態と異なる事項を中心に説明する。
【0072】
図7に基づいて、第2の実施形態のメンテナンス管理支援システム1の管理装置10bなどについて説明する。図7は、管理装置10bの構成および水質情報検出部18の構成を示す図である。上述の実施形態の管理装置10と区別するために、第2の実施形態の管理装置を管理装置10bとする。
【0073】
メンテナンス管理支援システム1における水質管理支援の概要は、以下である。船舶3には、機器1としてボイラ装置3aが配置されている。ボイラ装置3aには、水質情報検出部18が接続されている。水質情報検出部18は、ボイラ装置3aの缶水および/または補給水の水質情報を検出する。水質情報の少なくとも一部は、水質情報検出部18によって自動的に検出されてもよい。水質情報検出部18が検出した水質情報は、管理装置10bに送信される。管理装置10bの通信部11は、水質情報を船舶3から受信する。管理装置10bは、ボイラ装置3aの水質情報に基づいてボイラ装置3aのメンテナンスに関する管理情報を生成する。管理情報は、通信部11を介して、表示装置20に送信される。表示装置20は、図3に図示されている。表示装置20において、管理情報は、表示部28に表示される。
【0074】
管理情報について説明する。管理情報は、管理内容および実施日を含む。管理内容は、ボイラ装置3aの水質管理に関する管理の内容である。実施日は、管理内容を実施すべき日付である。管理内容および実施日は、管理部17によって決定される。管理部17は、水質情報に基づいて、管理内容および実施日を決定する。
【0075】
表示装置20による管理情報の表示について説明する。表示装置20は、図3に示されている。表示装置20の通信部21は、管理装置10から管理情報を受信するする。管理情報は、表示装置20の表示部28に、カレンダー形式で表示される。カレンダー形式で表示されるとは、日付、曜日などを年、月、または週など所定期間毎に表形式で表示し、管理内容の実施日に管理内容を示す表示(作業名称、作業識別記号・番号など)を行うことをいう。
【0076】
記憶部15は、猶予期間記憶部15aを備えていてもよい。猶予期間記憶部15aは、管理内容の実施において、猶予可能な期間を記憶する部分である。記憶部15が猶予期間記憶部15aを備えている場合、管理部17は、猶予期間記憶部15aを参照し、管理内容が表示される日から猶予可能な期間が経過した後の日に実施日を設定してもよい。猶予期間を備えることで、猶予期間の中で作業準備および他の作業との関連など作業効率がよい作業スケジュールとすることができる。
【0077】
記憶部15は、定期管理記憶部15bおよび設定範囲記憶部15cを備えていてもよい。定期管理記憶部15bは、定期的なメンテナンス日を記憶する部分である。設定範囲記憶部15cは、管理内容の実施日について、その実施が許容される設定範囲を記憶する部分である。
【0078】
記憶部15が定期管理記憶部15bおよび設定範囲記憶部15cを備えている場合、管理部17は、管理内容の実施日の許容される設定範囲に定期的なメンテンナス日が設定されているときには、実施日を定期的なメンテナンス日に変更してもよい。実施日が定期的なメンテナンス日に変更された場合、表示部28には、変更された実施日がカレンダー形式で表示される。設定範囲を備えることで、設定範囲の中で作業準備および他の作業との関連など作業効率がよい作業スケジュールとすることができる。
【0079】
水質情報検出部18は、電気伝導度検出部18aを備えてもよい。電気伝導度検出部18aは、ボイラ装置3aの缶水の電気伝導度を検出する装置である。水質情報検出部18が電気伝導度検出部18aを備えている場合、管理部17は、電気伝導度検出部18aの検出結果に基づいて、ボイラ装置3aのブローに関する管理内容、および管理内容の実施日を決定してもよい。
【0080】
ボイラ装置3aは、図示しない軟水装置を備えてもよい。軟水装置は、ボイラ装置3aに新規に水を補給する際に、あらかじめ、その水を硬水から軟水にする装置である。ボイラ3aに新規に補給される水を新規補給水とする。軟水装置は、ボイラ装置3aに新規補給水が供給される経路に配置される。新規補給水は、軟水装置を介して軟水化されてから、ボイラ装置3aに供給される。
【0081】
水質情報検出部18は、硬度検出部18bを備えていてもよい。硬度検出部18bは、ボイラ装置3aに供給される軟水の硬度を検出する装置である。ボイラ装置3aが軟水装置を備え、かつ、水質情報検出部18が硬度検出部18bを備えている場合、管理部17は、硬度検出部18bの検出結果に基づいて、軟水装置の再生の要否、および再生が必要な場合の再生の実施日を決定してもよい。
【0082】
水質情報に基づく管理情報の生成の例を説明する。図8は、水質情報として缶水の電気伝導度の経時変化の例を示す図である。図8の線L1は、電気伝導度の上限基準値を示す線である。
【0083】
図8の線S1は、電気伝導度の変化の第1の例を示す線である。図8の線A1は、所定期間での電気伝導度の平均的な変化(例えば、16時から24時における電気伝導度の上昇から算出された上昇速度(A1の傾き))を示す線である。線S1では、16時を過ぎてから、矢印A1に示すように、電気伝導度の上昇速度が大きくなっている。電気伝導度の上昇速度が大きくなると、電気伝導度の上限基準値L1に到達するまでの期間が短縮されることが予測される。予測された上限基準値L1に到達するまでの期間(または、到達日時)に基づいて、管理部17は、管理内容および管理内容の実施日を決定する。
【0084】
具体的には、管理部17は、傾きが大きくなり始めた日時、その日時での電気伝導度の値、および電気伝導度の上昇速度に基づいて、電気伝導度が上限基準値L1を超える日付を算出する。算出された、電気伝導度が上限基準値L1を超える日付を、管理内容の実施日とする。電気伝導度が上限基準値L1を超える場合の管理内容は、ブローの実施などである。
【0085】
管理部17は、管理情報を生成する。管理情報は、上述の管理内容、および算出された管理内容の実施日を含む情報である。管理情報に含まれる管理内容を示す表示は、表示部28におけるカレンダーの実施日に表示される。
【0086】
ここで、実施日は、電気伝導度が上限基準値L1を超える日付から、猶予期間が経過した後の日とすることができる。猶予期間は、上限基準値をL1を超えてから機器に何らかの影響が出るまでの期間に安全率を考慮して設定される。管理部17は、猶予期間記憶部15aが記憶する、実施を猶予することが可能な期間を参照して、実施を定めることができる。
【0087】
例えば、猶予期間が2日である場合には、電気伝導度が上限基準値L1を超える日付から2日が経過した日を、実施日とすることができる。この場合には、表示部28は、カレンダーに、電気伝導度が上限基準値L1を超える日付、およびその後2日にわたって、管理内容を表示する。管理内容が最初に表示される日から猶予期間の経過後の日が実施日となる。猶予期間を備えることで、猶予期間の中で作業準備および他の作業との関連など作業効率がよい作業スケジュールとすることができる。
【0088】
さらに、管理部17は、管理内容の実施が許容される日数(設定範囲)を考慮して、実施日を変更することができる。管理内容の実施日の許容される設定範囲は、設定範囲記憶部15cに記憶されている。例えば、管理部17は、管理内容の実施日を設定範囲内にある定期的なメンテナンス日に合わせて変更することができる。設定範囲を備えることで、設定範囲の中で作業準備および他の作業との関連など作業効率がよい作業スケジュールとすることができる。
【0089】
定期的なメンテナンスがボイラ装置3aの缶水の水分析である場合、管理部17は、定期管理記憶部15bが記憶する定期的なボイラ装置3aの缶水の水分析日(以下、メンテナンス日とする)を参照する。また、管理部17は、設定範囲記憶部15cが記憶する、管理内容の実施日の許容される設定範囲を参照する。管理部17は、管理内容の実施日の許容される設定範囲に定期的なメンテナンス日が設定されている場合には、実施日を定期的なメンテナンス日に変更することができる。この場合には、表示部28は、カレンダーの定期的なメンテナンス日に、管理内容を表示する。これにより、定期的なメンテナンス日が、管理内容の実施日であることが示される。実施日を定期的なメンテナンス日に変更することによって、管理内容を効率的に実施することができる。
【0090】
なお、管理内容の一例であるブローの実施は、段階的に行うことができる。例えば、まず、缶水の10%をブローする。このブローによって、電気伝導度が上限基準値L1以内になった場合には、管理内容の実施を終了する。もし、このブローによっても電気伝導度が上限基準値L1以内にならなかった場合には、さらに10%のブローを実施する。
【0091】
電気伝導度の変化の第2の例について説明する。図8の線S2は、電気伝導度の変化の第2の例を示す線である。図8の線A2は、第2の例における、所定期間での電気伝導度の平均的な変化(例えば、12時から2時間における電気伝導度の上昇から算出された上昇速度(A2の傾き))を示す線である。線S2に示す例では、矢印A2に示すように、12時を過ぎてから、電気伝導度が急激に上昇している。その後、16時以降は、電気伝導度の値は一定になる。電気伝導度は、急激に上昇した後も、上限基準値L1を超えない。
【0092】
電気伝導度の値が上限基準値L1を超えない場合であっても、電気伝導度が、所定の変化限度値(例えば、単位時間当たりの電気伝導度の上昇または低下、言い換えれば電気伝導度の上昇速度または低下速度)を超える場合には、ボイラ装置3aに何らかの異常が発生している可能性がある。例えば、矢印A2に示すように電気伝導度の上昇速度が所定の変化限度値を越える場合、管理部17は、電気伝導度の検出結果に基づいて管理内容および管理内容の実施日を決定する。所定の変化限度値とは、例えば、200mS/4時間を超える場合をいう。
【0093】
電気伝導度の上昇速度が所定の変化限度値を越える場合の管理内容は、ブローの実施、またはボイラ装置3aの点検などとすることができる。管理内容の実施日は、例えば、電気伝導度の値が急峻な変化を示した当日とすることができる。
【0094】
管理内容の実施日は、電気伝導度の変化の第1の例において説明したように、猶予期間が経過した後に設定することができる。例えば、実施日は、電気伝導度の値が急峻な変化を示した当日の2日後とすることができる。
【0095】
また、管理内容の実施日は、電気伝導度の変化の第1の例において説明したように、定期的なメンテナンス日とすることができる。実施日の許容される設定範囲の内に定期的なメンテナンス日が設定されている場合には、その定期的なメンテナンス日を実施日とすることができる。
【0096】
水質情報に基づく管理情報の生成の他の例を説明する。図9は、pHの経時変化の例を示す図である。図9の線L2は、pHの下限基準値を示す線である。図9の線L3は、pHの上限基準値を示す線である。pHは、下限基準値L2と上限基準値L3との間にあることが好ましい。
【0097】
図9の線S3は、pHの変化の第1の例を示す線である。線S3に示す例では、全時間帯においてpHが上昇傾向にある。pHの上昇傾向が継続するとしてpHが上限基準値L3に到達する日時を予想することができる。そこで、管理部17は、予想されたpHが上限基準値L3に到達する日時に基づいて、管理内容および管理内容の実施日を決定する。
【0098】
管理部17は、例えば、2日目の8時から16時におけるpHの上昇速度を算出し、pHが上限基準値L3を超える日時を算出する。管理部17は、算出された、pHが上限基準値L3を超える日時を、管理内容の実施日とする。pHが上限基準値L3を超える場合の管理内容は、ブローの実施である。ブローの実施は、先に電気伝導度に関して説明したブローの実施の仕方と同様に、段階的に行うことができる。
【0099】
管理部17は、上述の管理内容、および管理内容の実施日を含む管理情報を生成する。表示部28は、管理情報に含まれる管理内容を、カレンダーの実施日に表示する。
【0100】
また、管理内容の実施日は、電気伝導度において説明したように、猶予期間が経過した後に設定することができる。例えば、実施日は、pHが上限基準値L3を超える日の2日後とすることができる。
【0101】
また、管理内容の実施日は、電気伝導度において説明したように、定期的なメンテナンス日とすることができる。具体的には、実施日の許容される設定範囲の内に定期的なメンテナンス日が設定されている場合には、その定期的なメンテナンス日を実施日とすることができる。
【0102】
pHの変化の第2の例について説明する。図9の線S4は、pHの変化の第2の例を示す線である。図9の線A4は、特定の時刻から短時間の間にpHの急激な変化が起こったことを示す。線S4に示す例では、矢印A4に示すように、2日目の8時を過ぎてから、pHが急激に上昇している。その後、12時以降は、pHの値は安定する。pHは、急激に上昇した後も、上限基準値L3を超えない。
【0103】
pHの値が上限基準値L3を超えない場合であっても、pHが、所定の変化限度値(例えば、単位時間当たりのpHの上昇または低下、言い換えればpHの上昇速度または低下速度)を超える場合には、ボイラ装置3aに何らかの異常が発生している可能性がある。例えば、矢印A4に示すようにpHの上昇速度が所定の変化限度値を越える場合、管理部17は、pHの検出結果に基づいて管理内容および管理内容の実施日を決定する。管理内容は、ブローの実施、またはボイラ装置3aの点検などとすることができる。
【0104】
管理内容の実施日は、例えば、pHの上昇速度が所定の変化限度値を越えた当日とすることができる。また、管理内容の実施日は、電気伝導度の例において説明したように、猶予期間が経過した後に設定することができる。例えば、実施日は、pHの上昇速度が所定の変化限度値を越えた当日の2日後とすることができる。
【0105】
また、管理内容の実施日は、電気伝導度の例において説明したように、定期的なメンテナンス日とすることができる。実施日の許容される設定範囲の内に定期的なメンテナンス日が設定されている場合には、その定期的なメンテナンス日を実施日とすることができる。
【0106】
pHに関して、図9には示されていないものの、pHの値が下限基準値L2未満である状態が継続する場合には、管理部17は、管理内容および管理内容の実施日を決定してもよい。ボイラ装置3aに何らかの異常が発生している可能性があるからである。pHが下限基準値L2未満である場合の管理内容は、薬液の注入である。なお、pHの値が下限基準値L2未満である状態が継続する場合とは、例えばpHの値が下限基準値L2未満である状態が数時間から数日継続する場合とすることができる。
【0107】
水質情報に基づく管理情報の生成の他の例を説明する。ボイラ装置3aが軟水装置を備えており、水質情報検出部18が硬度検出部18bを備えている場合を説明する。
【0108】
管理部17は、硬度検出部18bの検出結果に基づいて、軟水装置の再生の要否、および再生が必要な場合の再生の実施日を決定することができる。軟水装置は、原水中の硬度分を除去する装置である。軟水装置には、その硬度の除去能力が一定以上低下する前に、再生塩による再生を行う必要がある。
【0109】
新規補給水の硬度について、あらかじめ基準値を設定しておく。管理部17は、硬度検出部18bが検出した硬度を所定の基準値と比較し、硬度の値が基準値を超えるか否かを判定する。硬度検出部18bが検出した硬度の値が基準値を超える場合には、管理部17は、再生の実施日を決定する。この場合、軟水装置の再生が、実施される管理内容となる。
【0110】
管理内容の実施日は、硬度の値が基準値を超えた当日とすることができる。また、管理内容の実施日は、電気伝導度の例において説明したように、猶予期間が経過した後に設定することができる。例えば、実施日は、硬度の値が基準値を超えた当日の2日後とすることができる。
【0111】
また、管理内容の実施日は、電気伝導度の例において説明したように、定期的なメンテナンス日とすることができる。実施日の許容される設定範囲の内に定期的なメンテナンス日が設定されている場合には、その定期的なメンテナンス日を実施日とすることができる。
【0112】
スケールモニタによって検出されたスケールの状態(例えば、水管表面温度上昇を指標とした)を、水処理情報とすることもできる。管理部17は、検出されたスケールの状態が所定の基準を外れる場合(例えば、水管表面温度が所定の基準値を超える場合)、管理内容および管理内容の実施日を決定することができる。この場合の管理内容は、ボイラ装置3aへの、スケール除去剤または酸洗浄剤などの薬品の注入とすることができる。また、実施日については、前述のように、猶予期間を加えることができる。また、実施日は、前述のように、定期的なメンテナンス日とすることができる。
【0113】
メンテナンス管理支援システム1を水質管理支援システムとして機能させる場合には、ボイラ装置3aの缶水の電気伝導度、および新規補給水の硬度は常時測定されるようにすることができる。ボイラ装置3aの缶水のpHは、常時測定されるようにしてもよいが、手動測定とすることもできる。手動測定である場合には、例えば、週に一回など、定期的に測定し、入力された測定値がメンテナンスカレンダーに表示されるようにしてもよい。水質情報検出部18にpH検出部18cが備えられている場合には、このpH検出部18cによってpHが測定されるようにしてもよい。
【0114】
水質情報に基づく水管理の対処方法、すなわち管理内容は、前述のようにブローまたは薬注投入とすることができる。薬注投入においては、給水ポンプと連動した薬注装置を用いて、投入量を調整してもよい。また、船舶におけるボイラ装置3aでは、カスケードタンクに薬注投入をすることができる。
【0115】
また、水質管理支援システムにおいて管理するパラメータの例としては、前述のように、ボイラ缶水の電気伝導度、pH、新規補給水の硬度、スケールモニタ値などとすることができるが、適宜他のパラメータを追加することもできる。
【0116】
新規補給水の硬度に関連しての軟水装置の再生においては、再生実施時の新規補給水量、および再生を実施した日時を記憶しておき、次回の再生日時が予測されるようにすることもできる。また、予測された次回の再生日時が、メンテナンスカレンダーに表示されるようにしてもよい。
【0117】
水質管理支援システムにおいては、水質情報に含まれる値が所定値を越える場合に、水質分析を実行するようにすることができる。水質分析を実施することによって、水質が異常であるときのデータを収集することができる。この収集されたデータを用いて、ブロー間隔、薬注量などの運転条件を変更することができる。
【0118】
水質情報に含まれる水分析データの履歴をカレンダー表示することで、履歴の確認を容易にし、運転条件を変更する際の参考にすることができる。
【0119】
水質管理支援システムにおいては、水質情報に含まれる値が所定値を越える場合に実施された水質分析の結果、および水質分析の結果以外のデータを収集し、機械学習することができる。水質分析の結果以外のデータとしては、季節、海域、および蒸気発生量などを挙げることができる。機械学習した結果を用いて、水質の悪化を事前に予測することができる。
【0120】
また、硬度などは初期の測定値が、想定していた値が基準値の範囲内に入っていない場合がある。そのような場合には、誤った判断が行われないように、初期の測定値を、基準値としてもよい。
【0121】
以上のような水質管理支援システムでは、以下のような効果を得ることができる。船舶に搭載されるボイラ装置の管理においては、ボイラ缶水、および新規補給水の水質管理が重要である。そこで、ボイラ缶水または新規補給水の水質分析の結果に基づいてブロー率や薬品投入量の調整などが行われている。
【0122】
一方、船舶に搭載されるボイラ装置の稼働状態は運航の状態や船内作業により変動する。そのため、ボイラ缶水、および新規補給水の水質分析を適切に行うことは容易ではない。例えば、水質分析を漏れなく行うために定期的に水質分析を行った場合には、ボイラ装置が停止中、または稼働が少ない状態、すなわち、新規補給水の量が少ない状態での水質分析が含まれ、望ましい結果が得られない場合がある。
【0123】
また、蒸気の使用量や燃焼量から船員が経験的に水質分析タイミングを設定した場合には、熟練した船員の存在が前提となるだけでなく、水質分析の予定を共有することが難しい。そこで、ボイラの缶水および補給水の水分析水質分析の予定が関係者に共有され、水質分析を効率的かつ確実に実施することが求められている。さらに、ボイラ缶水、および新規補給水の管理を適切に行うことができるシステムが求められている。
【0124】
本実施形態による水質管理支援システムでは、ボイラの缶水および補給水の水質分析の予定がカレンダー表示されるため、関係者に共有される。そのため、水質分析を効率的かつ確実に実施することができる。また、本実施形態による水質管理支援システムでは、水質分析が効率的かつ確実に実施されるため、ボイラ缶水、および新規補給水の管理を適切に行うことができる。
【符号の説明】
【0125】
1 メンテナンス管理支援システム
3 船舶
3a,3b 機器(管理対象機器)
4 船上サーバ
5 陸上サーバ
10、10b 管理装置
11 通信部
14 制御部
15 記憶部
15a 猶予期間記憶部
15b 定期管理記憶部
15c 設定範囲記憶部
16 稼働判定部
17 管理部
18 水質情報検出部
18a 電気伝導度検出部
18b 硬度検出部
18c pH測定部
20,20a 表示装置(船舶表示装置)
20,20b,20c 表示装置(陸上表示装置)
21 通信部
22 操作部
24 制御部
25 記憶部
28 表示部
100 船舶管理システム
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9