(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050640
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】一体化センサカートリッジのための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/08 20060101AFI20240403BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240403BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
C12M1/34 Z
C12M1/34 F
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024005494
(22)【出願日】2024-01-17
(62)【分割の表示】P 2021526606の分割
【原出願日】2019-11-15
(31)【優先権主張番号】62/767,998
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516122667
【氏名又は名称】深▲セン▼華大智造科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MGI Tech Co.,LTD
【住所又は居所原語表記】Main Building and Second Floor of No.11 Building,Beishan Industrial Zone,Yantian District,Shenzhen,Guangdong 518083,China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】ワン,リアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,チェン フランク
(72)【発明者】
【氏名】リィ,シーフェン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生物チップと例えばプリント回路基板(PCB)などの基板とマイクロ流体筐体を一体化する方法と装置を含み、フローセルの気密封止と信頼できる性能を備える一体化されたマイクロ流体装置を形成する。
【解決手段】マイクロ流体装置100は、PCB(プリント回路基板)110と、PCB110上にある生物チップ120と、生物チップ120とPCB110上にあるマイクロ流体筐体130を含む。マイクロ流体装置100は、また生物チップ120にマイクロ流体筐体130を取り付ける第1の接着層141と、PCB110にマイクロ流体筐体130を取り付ける第2の接着層142を有する。第2の接着層142は、第1の接着層より厚い。第1の接着層141は、第1の接着材料を含み、第2の接着層142は、第2の接着材料を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCB(プリント回路基板)と、
前記PCB上にある生物チップと、
前記生物チップと前記PCB上にあるマイクロ流体筐体であって、前記マイクロ流体筐体は、注入口と、排出口と、第1の空洞とを有し、前記マイクロ流体筐体は、前記第1の空洞に隣接する内側側壁を有し、前記内側側壁は、第1の接着層を用いて前記生物チップに取り付けられ、フローセルを形成し、前記マイクロ流体筐体は、第2の接着層を用いて前記PCBに取り付けられた外側側壁を有する、マイクロ流体筐体とを備え、
前記外側側壁の下面と前記PCBの間の距離は、前記内側側壁の下面と前記生物チップの間の距離より大きく、
前記第2の接着層は、前記第1の接着層より厚く、
前記第1の接着層は、第1の接着材料を含み、
前記第2の接着層は、第2の接着材料を含む、マイクロ流体装置。
【請求項2】
前記第1の接着材料は、硬化前に固体であり、実質的に硬化後にその厚さを維持し、前記マイクロ流体装置の高さの正確性と均一性を提供し、
前記第2の接着材料は、硬化前に液体であり、前記外側側壁の下面と前記PCBの間の距離の変動を調整する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2の接着材料は、前記第1の接着材料より硬化収縮が大きい、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の接着材料は、ダイアタッチフィルム(DAF)を含み、
前記第2の接着材料は、液体エポキシを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の接着材料は、硬化後適合する接着剤であり、操作の間、熱サイクルを通して、前記生物チップと前記マイクロ流体筐体の間の不一致の熱膨張を調整し、
前記第2の接着材料は、硬化前に液体形態である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の接着材料は、適合するウレタン接着材料を含み、
前記第2の接着材料は、液体エポキシを含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の接着材料は、感圧接着剤(PSA)を含み、
前記第2の接着材料は、液体エポキシを含む、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の接着材料と前記第2の接着材料は、例えば熱、水分または紫外線照射硬化など、異なる硬化プロセスによって硬化される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記生物チップは、生物センサチップを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記マイクロ流体筐体は、前記生物チップと前記PCBを結合する結合ワイヤを収容する前記内側側壁と前記外側側壁の間の第2の空洞の1またはそれ以上を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
さらに前記PCBに前記生物チップを取り付けるダイアタッチ接着層を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
さらに、前記PCBに取り付けられる第2の生物チップを備える、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記第2の生物チップは、バイオセンサを備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記第2の生物チップは、流体液滴生成装置を備える、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記PCBに取り付けられる集積回路チップを備える、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記集積回路チップは、プロセッサを備える、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
さらに前記PCBに取り付けられるMEMSチップを備える、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記MEMSチップは、前記生物チップに検出された信号に応答して動作を開始するアクチュエータを備える、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記第2の接着層は、前記第1の接着層の気密試験のための開口を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記マイクロ流体筐体は、前記第1の接着層の気密試験のための開口を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
PCB(プリント回路基板)と、
前記PCB上にある生物チップと、
前記生物チップと前記PCB上にあるマイクロ流体筐体と、
第1の接着層と第2の接着層であって、前記第1の接着層は、前記生物チップに前記マイクロ流体筐体を取り付け、前記第2の接着層は、前記PCBに前記マイクロ流体筐体を取り付け、前記第2の接着層は、前記第1の接着層より厚い、第1の接着層と第2の接着層と、を備え、
前記第1の接着層は、第1の接着材料を含み、前記第2の接着層は、第2の接着材料を含む、マイクロ流体装置。
【請求項22】
前記マイクロ流体筐体は、注入口と、排出口と、第1の空洞とを備え、
前記マイクロ流体筐体は、前記第1の空洞に隣接する内側側壁を有し、
前記内側側壁は、前記第1の接着層を用いて前記生物チップに取り付けられ、フローセルを形成し、
前記マイクロ流体筐体は、第2の接着層を用いて前記PCBに取り付けられる外側側壁を有する、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記第1の接着材料は、硬化前に固体であり、実質的に硬化後のその厚さを維持して前記マイクロ流体装置の高さの正確性と均一性を提供し、
前記第2の接着材料は、硬化前に液体であり、前記外側側壁の下面と前記PCBの間の距離の変動を調整する、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記第1の接着材料は、ダイアタッチフィルム(DAF)を含み、
前記第2の接着材料は、液体エポキシを含む、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記第2の接着材料は、前記第1の接着材料より硬化収縮が大きい、請求項23に記載の装置。
【請求項26】
前記第1の接着材料は、硬化後に適合する接着材であり、操作の間、熱サイクルを通して生物チップと前記マイクロ流体筐体の間の不均一な熱膨張を調整し、
前記第2の接着材料は、硬化前に液体形態である、請求項21に記載の装置。
【請求項27】
前記第1の接着材料は、適合するウレタン接着材料を含み、
前記第2の接着材料は、液体エポキシを含む、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記第1の接着材料は、感圧接着剤(PSA)を含み、
前記第2の接着剤は、液体エポキシを含む、請求項26に記載の装置。
【請求項29】
マイクロ流体装置を作る方法であって、
PCB(プリント回路基板)を提供するステップと、
前記PCBに生物チップを取り付けるステップと、
マイクロ流体筐体を提供するステップと、
第1と第2の接着材料を堆積するステップであって、前記第1の接着材料は、前記生物チップに前記マイクロ流体筐体を取り付け、前記第2の接着材料は、前記PCBに前記マイクロ流体筐体を取り付け、前記第2の接着材料は、硬化前に液体形態である、第1と第2の接着材料を堆積するステップと、
前記第1の接着材料を用いて前記生物チップに前記マイクロ流体筐体を取り付け、前記第2の接着材料を用いて前記PCBに前記マイクロ流体筐体を取り付けるステップと、
前記第1と第2の接着材料を硬化して、それぞれ第1と第2の接着層を形成するステップであって、前記第2の接着層は、前記第1の接着層より厚い、第1と第2の接着層を形成するステップと、を備える方法。
【請求項30】
前記マイクロ流体筐体は、注入口と、排出口と、第1の空洞とを備え、
前記マイクロ流体筐体は、前記第1の空洞に隣接する内側側壁を有し、
前記内側側壁は、第1の接着層を用いて前記生物チップに取り付けられ、フローセルを形成し、
前記マイクロ流体筐体は、第2の接着層を用いて前記PCBに取り付けられた外側側壁を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の接着材料は、硬化前に固体であり、実質的に硬化後にその厚さを維持し、前記マイクロ流体装置の高さの正確性と均一性を提供し、
前記第2の接着材料は、硬化前に液体であり、前記外側側壁の下面と前記PCBの間の距離の変動を調整する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の接着材料は、ダイアタッチフィルム(DAF)を含み、
前記第2の接着材料は、液体エポキシを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記第2の接着材料は、前記第1の接着材料より硬化収縮が大きい、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の接着材料は、硬化後に適合する接着剤であり、操作の間、熱サイクルを通して生物チップと前記マイクロ流体筐体の間の不一致の熱膨張を調整し、
前記第2の接着材料は、硬化前に液体形態である、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の接着材料は、適合するウレタン接着材料を含み、
前記第2の接着材料は、液体エポキシを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記第1の接着材料は、感圧接着剤(PSA)を含み、
前記第2の接着材料は、液体エポキシを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
さらに、前記マイクロ流体筐体を取り付ける前に、前記PCBに第2の生物チップを取り付けるステップを備える、請求項29に記載の方法。
【請求項38】
さらに、前記マイクロ流体筐体に取り付ける前に、前記PCBに集積回路チップを取り付けるステップを備える、請求項29に記載の方法。
【請求項39】
さらに前記マイクロ流体筐体を取り付ける前に、前記PCBにMEMSチップを取り付けるステップを備える、請求項29に記載の方法。
【請求項40】
さらに前記第1の接着層の気密試験のために前記第2の接着層に開口を形成するステップを備える、請求項29に記載の方法。
【請求項41】
さらに前記第1の接着層の気密試験のために前記マイクロ流体筐体に開口を形成するステップを備える、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年11月15日に出願された米国仮特許出願第62/767,998号の優先権を主張し、その内容の全てを援用する。
【0002】
本発明は、一般に生物または化学分析のためのバイオセンサに関し、さらに特にマイクロ流体筐体を生物チップ及び例えばプリント回路基板(PCB)などの基板と一体化し、一体化されたセンサカートリッジまたはマイクロ流体装置を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
化学及び/または生物種の高スループット分析は、診断と治療の分野で重要なツールである。添付された化学及び/または生物種のアレイは、特定の標的配列の定義、遺伝子発現パターンの分析、特定の対立遺伝子変異の特定、DNA配列のコピー数の決定、及びタンパク質(例えば転写因子及びその他の調節分子)の結合部位をゲノム全体で特定するように設計される。特定の例において、核酸配列、例えばDNA(デオキシリボ核酸)及びRNA(リボ核酸)決定のための改良された方法が必要となったヒトゲノムプロジェクトの出現が開発された。半数体ヒトゲノムの全30億の塩基配列の決定は、多くの病気の遺伝的根拠を特定するための基礎を提供した。
【0004】
超並列DNA配列決定など、高スループット分析は、しばしば分析に利用できる化学及び/または生物種のアレイを含むフローセルを利用する。フローセルは、しばしば例えばシリコンベースのセンサチップなど、生物チップと一体化したマイクロ流体筐体で作られ、例えばカートリッジなどマイクロ流体装置を形成する。多くの現在のマイクロ流体設計の製造と使用は、複雑であり、コストが高く、しばしば信頼性を欠く。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態は、生物チップと例えばプリント回路基板(PCB)などの基板とマイクロ流体筐体を一体化する方法と装置を含み、フローセルの気密封止と信頼できる性能を備える一体化されたマイクロ流体装置を形成する。
【0006】
いくつかの実施形態において、マイクロ流体装置において、第1の接着剤は、生物チップとマイクロ流体筐体を結合してフローセルの気密封止を形成するために用いられ、第2の接着剤は、PCBとマイクロ流体筐体を結合して、機械的支持を提供するために用いられる。接着剤のタイプ及び特性とマイクロ流体装置の構造は、フローセルの気密封止、信頼できる装置構造、及び広いプロセスウィンドウを提供するように設計される。マイクロ流体装置またはカートリッジを組み立てる従来の方法に勝る多くの利点を実現する。特定の実施形態に依存して装置は、多くの利点を提供する。例えば、装置は、センサの厚さの変動、ダイアタッチ接着剤の厚さの変動、PCB前面の変動を調整する。装置は、第1の接着剤上の応力を最小にし、操作の間、熱サイクルを通してセンサとマイクロ流体装置の間の不一致の熱膨張を調整し、フローセルの流体場均一性を改善する。
【0007】
上記マイクロ流体装置のいくつかの実施形態において、第1の接着材料は、硬化前に固体であり、実質的に硬化後にその厚さを維持して、マイクロ流体装置の高さの正確性と均一性を提供する。第2の接着材料は、硬化前に液体であり、外側側壁の下面とPCBの間の距離の変動を調整する。いくつかの実施形態において、第2の接着材料は、第1の接着材料より硬化収縮が大きい。いくつかの実施形態において、第1の接着材料は、ダイアタッチフィルム(DAF)を含み、第2の接着材料は、液体エポキシを含む。
【0008】
上記マイクロ流体装置のいくつかの実施形態において、第1の接着材料は、硬化後適合する接着剤であり、操作の間、熱サイクルを通して、生物チップとマイクロ流体筐体の間の不一致の熱膨張を調整する。第2の接着材料は、硬化前に液体形態である。いくつかの実施形態において、第1の接着材料は、適合するウレタン接着材料を含み、第2の接着材料は、液体エポキシを含む。代わりの実施形態において、第1の接着材料は、感圧接着剤(PSA)を含み、第2の接着材料は、液体エポキシを含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、第1の接着材料と第2の接着材料は、例えば熱、水分または紫外線照射硬化など、異なる硬化プロセスによって硬化される。
【0010】
いくつかの実施形態において、生物チップは、生物センサチップを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、マイクロ流体筐体は、生物チップとPCBを結合する結合ワイヤを収容する内側側壁と外側側壁の間の第2の空洞の1またはそれ以上を備える。いくつかの実施形態において、ダイアタッチ接着層は、PCBに生物チップを取り付けるために用いられる。
【0012】
いくつかの実施形態において、マイクロ流体装置は、またPCBに取り付けられる第2の生物チップを有する。いくつかの実施形態において、第2の生物チップは、バイオセンサを含む。いくつかの実施形態において、第2の生物チップは、流体液滴生成装置を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、マイクロ流体装置は、またPCBに取り付けられる集積回路チップを有する。いくつかの実施形態において、集積回路チップは、プロセッサを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、マイクロ流体装置は、またPCBに取り付けられるマイクロ電気機械システム(MEMS)チップを有する。いくつかの実施形態において、MEMSチップは、生物チップで検出された信号に応答して動作を開始するアクチュエータを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、第2の接着層は、第1の接着層の気密試験のための開口を含む。代わりの実施形態において、マイクロ流体筐体は、第1の接着層の気密試験のための開口を含む。
【0016】
本発明のいくつかの代わりの実施形態に従って、マイクロ流体装置は、PCB(プリント回路基板)と、PCB上にある生物チップと、生物チップとPCB上にあるマイクロ流体筐体とを含む。マイクロ流体装置は、また生物チップに前記マイクロ流体筐体を取り付ける第1の接着層と、PCBにマイクロ流体筐体を取り付ける第2の接着層を有する。第2の接着層は、第1の接着層より厚い。第1の接着層は、第1の接着材料を含み、第2の接着層は、第2の接着材料を含む。
【0017】
上記マイクロ流体装置のいくつかの実施形態において、マイクロ流体筐体は、注入口と、排出口と、第1の空洞とを含む。マイクロ流体筐体は、第1の空洞に隣接する内側側壁を有し、内側側壁は、第1の接着層を用いて生物チップに取り付けられ、フローセルを形成し、マイクロ流体筐体は、第2の接着層を用いてPCBに取り付けられる外側側壁を有する。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態に従って、マイクロ流体装置を作る方法は、PCB(プリント回路基板)を提供するステップと、PCBに生物チップを取り付けるステップと、マイクロ流体筐体を提供するステップと、第1と第2の接着材料を堆積するステップとを含む。第1の接着材料は、生物チップにマイクロ流体筐体を取り付け、第2の接着材料は、PCBにマイクロ流体筐体を取り付ける。第2の接着材料は、硬化前に液体形態であり、第2の接着材料は、第1の接着材料より硬化収縮が大きい。本発明の方法は、第1の接着材料を用いて生物チップにマイクロ流体筐体を取り付け、第2の接着材料を用いてPCBにマイクロ流体筐体を取り付けるステップを含む。本発明の方法は、さらに第1と第2の接着材料を硬化して、それぞれ第1と第2の接着層を形成するステップを含む。
【0019】
上記方法のいくつかの実施形態において、マイクロ流体筐体は、注入口と、排出口と、第1の空洞と含む。マイクロ流体筐体は、第1の空洞に隣接する内側側壁を有し、内側側壁は、第1の接着層を用いて生物チップに取り付けられ、フローセルを形成し、マイクロ流体筐体は、第2の接着層を用いてPCBに取り付けられた外側側壁を有する。
【0020】
上記方法のいくつかの実施形態において、第1の接着材料は、硬化前に固体であり、実質的に硬化後にその厚さを維持し、マイクロ流体装置の高さの正確性と均一性を提供する。第2の接着材料は、硬化前に液体であり、外側側壁の下面とPCBの間の距離の変動を調整する。いくつかの実施形態において、第2の接着材料は、第1の接着材料より硬化収縮が大きい。いくつかの実施形態において、第1の接着材料は、ダイアタッチフィルム(DAF)を含み、第2の接着材料は、液体エポキシを含む。
【0021】
上記方法のいくつかの実施形態において、第1の接着材料は、硬化後に適合する接着剤であり、操作の間、熱サイクルを通して生物チップとマイクロ流体筐体の間の不一致の熱膨張を調整する。第2の接着材料は、硬化前に液体形態である。いくつかの実施形態において、第1の接着材料は、適合するウレタン接着材料を含み、第2の接着材料は、液体エポキシを含む。いくつかの実施形態において、第1の接着材料は、感圧接着剤(PSA)を含み、第2の接着材料は、液体エポキシを含む。
【0022】
本発明の性質及び利点のさらなる理解は、明細書及び図面の残りの部分を参照することによって実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態に従うマイクロ流体装置を描く簡略化された断面図である。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態に従うマイクロ流体装置を形成する方法を描くフローチャートである。
【
図3A】
図3A-3Iは、本発明のいくつかの実施形態に従う
図2のフローチャートにまとめられた方法を描く断面図である。
図3Aは、
図2の方法で用いられるプリント回路基板(PCB)を描く断面図である。
【
図3B】
図2の方法で用いられるPCBに形成されたダイアタッチ接着剤を描く断面図である。
【
図3C】
図2の方法で用いられるPCBに取り付けられた生物チップを描く断面図である。
【
図3D】生物チップとPCBを電気的に接続するために形成されたワイヤ結合を描く断面図である。
【
図3E】本発明のいくつかの実施形態に従うマイクロ流体筐体を描く断面図である。
【
図3F】本発明のいくつかの実施形態に従うマイクロ流体筐体とPCBの相対寸法を描く断面図である。
【
図3G】本発明のいくつかの実施形態に従う生物チップとPCBに配置された接着層を描く断面図である。
【
図3H】本発明のいくつかの実施形態に従うマイクロ流体筐体に配置された接着層を描く断面図である。
【
図3I】本発明のいくつかの実施形態に従う生物チップ及びPCBに取り付けられるマイクロ流体筐体を描く断面図である。
【
図3J】本発明の代わりの実施形態に従うマイクロ流体装置を描く簡略化された断面図である。
【
図3K】本発明の別の実施形態に従うマイクロ流体装置を描く簡略化された断面図である。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態に従う分析のためのマイクロ流体装置に導入された生物サンプルを描く断面図である。
【
図5】本発明のいくつかの実施形態に従うPCBに取り付けられた複数の装置を有するマイクロ流体装置を描く簡略化された図である。
【
図6】本発明のいくつかの実施形態に従う代わりの方法によって形成されるマイクロ流体装置を描く簡略化された図である。
【
図7】本発明のいくつかの実施形態に従う別の方法によって形成されたマイクロ流体装置を描く簡略化された図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明のいくつかの実施形態に従うマイクロ流体装置を描く簡略化された断面図である。
図1に示されるように、マイクロ流体装置100は、例えばPCB(プリント回路基板)などの基板110、PCB110上にある生物チップ120、及び生物チップ120とPCB110上にあるマイクロ流体筐体130を含む。マイクロ流体筐体130は、第1の接着層141を用いて生物チップ120に取り付けられ、フローセルを形成し、マイクロ流体筐体は、第2の接着層142を用いてPCB110に取り付けられ、機械的支持を提供する。生物チップ120は、例えばPCB110に生物チップ120を取り付けるダイアタッチ接着層113を用いてPCB110に取り付けられる。本明細書に記載される基板は、PCBに限定されず、他の基板、例えば半導体(例えばシリコン)基板、ガラス基板、セラミック基板などが用いられることを理解されるであろう。
【0025】
生物チップ120は、例えばセンサ、アクチュエータなど、生体または化学サンプルを操作するまたは分析する装置を含む。いくつかの場合において、センサ及びアクチュエータは、1またはそれ以上のMEMS装置を含む。例として、生物チップは、生体サンプルから信号を検出し、プロセッサは、検出された信号を処理し、アクチュエータの動作を開始することによって信号に応答する。実施形態に依存して、PCB110は、例えば、プロセッサ、制御装置、記憶装置、I/O装置及び通信装置など他の回路部品と複数の生物チップを接続するために用いられる。
【0026】
図1において、マイクロ流体筐体130は、注入口131、排出口132、及び第1の空洞133を有する。マイクロ流体筐体130は、空洞133に隣接する内側側壁135を有し、内側側壁は、第1の接着層141を用いて生物チップ120に取り付けられ、気密封止でフローセル140を形成する。本明細書に用いられるように、気密封止は、空気、気体、及び液体の通過を排除する気密及び液密である封止を指す。フローセル140は、マイクロ流体筐体130、マイクロ流体筐体の内側側壁135、及び生物チップ120の間の空洞133によって形成されるチャネルを含む。フローセル140は、また注入口131と排出口132を有する。適用の例として、生体サンプル137は、注入口131を通って、生物チップ120のセンサが生体サンプル137の特性を決定する空洞133に導入される。その後、生体サンプル137は、空洞133から排出口132を通って取り除かれる。
【0027】
図1に示されるように、マイクロ流体筐体130は、また第2の接着層142を用いてPCB110に取り付けられる外側側壁136を有し、機械的支持を提供する。いくつかの実施形態において、生物チップ120は、ワイヤ結合を用いてPCB110に電気的に結合される。
図1において、生物チップの接触パッド122は、結合ワイヤ114でPCBに接触パッド112に接続される。接触パッド122、接触パッド112及び結合ワイヤ114は、ワイヤ結合保護構造115に封入される。この関連で、マイクロ流体筐体130は、またワイヤ結合を収容する第2の空洞138を含む。マイクロ流体筐体130とPCB110の間の間隙148は、エポキシ材料でありパッケージとPCBの間の適合する層を提供するアンダーフィル材料149で満たされる。
【0028】
第1の接着層141は、気密及び液密であるマイクロ流体筐体130と生物チップ120の間の気密封止を形成する。さらに、第1の接着層141は、フローセルで用いられる材料と相性が良い。他方で、第2の接着層142は、マイクロ流体筐体130とPCB110の間の接合に機械強度を提供するように構成される。いくつかの例において、第2の接着層142は、第1の接着層141より厚い。マイクロ流体筐体の外側側壁136の下面とPCB110の間の距離144は、マイクロ流体筐体の内側側壁135の下面と生物チップ120の間の距離145より大きい。
【0029】
いくつかの実施形態において、マイクロ流体筐体130を生物チップ120とPCB110に結合するために、はじめに第1と第2の接着層が形成され、その後マイクロ流体筐体130は、持ち上げられ、生物チップ120とPCB110に接触するために配置される。いくつかの実施形態において、マイクロ流体装置は、第1の接着層が固体形態であり、明確に定義された厚さを有する方法で設計される。他方で、第2の接着層は、十分に厚く、硬化前に液体形態であり、第2の接着層の結合線厚さは、自己調節可能である。言い換えると、それはマイクロ流体装置の第1の接着層厚さ、センサ厚さ、ダイアタッチ接着剤厚さ、PCB表面不均一、及びワイヤ結合空洞の段差などによって影響される、マイクロ流体装置の構造によって必要とされる空間を満たす。ここで、結合線厚さは、接着層より上の装置構造の下面と接着層より下の装置構造の上面の間の接着層の厚さを指す。文脈によって、用語「結合線厚さ」は、接着層の硬化前結合線厚さまたは硬化後結合線厚さを指す。
【0030】
いくつかの実施形態において、第1の接着材料は、実質的に硬化プロセスを通してその厚さを維持し、マイクロ流体装置の高さの均一性を維持し、フローセルの流体場均一性を保証する。特定の実施形態において、第1の接着材料は、ダイアタッチフィルム(DAF)である。ダイアタッチフィルムは、硬化前に固体接着剤であり、実質的に硬化後にその厚さを維持する。
【0031】
いくつかの実施形態において、第1の接着材料は、適合する接着剤であり、また硬化後に応力対応接着剤と呼ばれる。これらの場合において、マイクロ流体装置の構造均一性を維持するために第1の接着材料の厚さが一定である必要はない。適合する接着剤は、操作の間、熱サイクルを通して生物チップとマイクロ流体筐体の間の不一致の熱膨張を調整するために用いられる。したがって、第1の接着剤が元に戻せない変形またはクリープなく、弾性伸長を受けることが望ましい。いくつかの実施形態において、第1の接着材料は、クリープ前の厚さの0.5%を超える伸長を有する。例えば、適合する第1の接着材料は、Bostikで作られたウレタン接着材料である。別の例として、適合する第1の接着剤は、感圧接着剤(PSA)である。
【0032】
上記のように、
図1は、PCBに結合された単一の生物チップを有するマイクロ流体装置の例を描く。しかしながら、上記された特徴は、単一のチップを有するマイクロ流体装置に限定されず、チップは、さらに以下で説明されるように必ずしも生物チップでない。
【0033】
図2は、本発明のいくつかの実施形態に従うマイクロ流体装置を形成する方法を描くフローチャートである。
図3A-3Kは、本発明のいくつかの実施形態に従う
図2のフローチャートにまとめられる方法を描く断面図である。例えば
図1のマイクロ流体装置100など、マイクロ流体装置を形成する方法は、ここから
図2のフローチャートと3A-3Kの断面図を参照して説明される。
【0034】
図2に示されるように、マイクロ流体装置を形成する方法200は、以下にまとめられる。
210において、プリント回路基板(PCB)を提供する。
220において、PCBに生物チップを取り付ける。
230において、生物チップとPCBの間のワイヤ結合を形成する。
240において、マイクロ流体筐体を提供する。
250において、第1と第2の接着層を配置する。
260において、生物チップとPCB上にマイクロ流体筐体を取り付ける。
270において、接着層を硬化する。
これらのプロセスは、以下に詳細に記載される。
【0035】
プロセス210において、方法200は、プリント回路基板(PCB)110を提供するステップから始まる。
図3Aは、
図2の方法で用いられるプリント回路基板(PCB)を描く断面図である。PCBは、回路基板の電子部品と電気接続する結合パッドを含む。例えば、
図3Aは、生物チップと結合するための結合パッドとして用いられる接触パッド112を示す。
【0036】
プロセス220において、方法200は、PCBに生物チップを取り付けるステップを含む。
図3Bは、
図2の方法で用いられるプリント回路基板(PCB)に形成されるダイアタッチ接着剤を描く断面図である。
図3Cは、
図2の方法で用いられるプリント回路基板(PCB)に取り付けられる生物チップを描く断面図である。
図3Bにおいて、接着層113またはダイアタッチ接着剤は、PCBにチップを取り付けるためにエポキシベースの接着剤である。次に、
図3Cに示されるように、生物チップ120は、接着層113を用いてPCB110に取り付けられる。
【0037】
生物チップ120は、生物または化学サンプルを処理するまたは分析する装置を含む。本明細書で用いられるように、「生物チップ」は、生体分子が分析のために関連する、静止させられる、または捕らえられる構造を指す。通常、生物チップは、結合部位のアレイを備え、それぞれの結合部位は、独立して例えばタンパク質、核酸、抗体、多糖など生体分子によって占有される。通常、1または多くの結合部位において生成される検出可能な信号が検出される。例えば、1つの結合部位において酵素、結合または化学反応は、例えば検出されその部位において生体分子の特徴または特性を識別する蛍光または化学発光など、検出可能な信号を生成する。以下に本明細書に記載されるように、生物チップは、核酸配列決定に用いられる。いくつかの場合において、生物チップは、センサ(すなわち生物センサ)を含む。本明細書で用いられるように、用語「バイオセンサ」または「生物センサ」は、特にDNAによって例示される核酸高分子及び分岐したさもなければ誘導体化された核酸など、生体分子内または生体分子に取り付けられる発光物質を決定するための装置を指す。例において、生物チップは、生物サンプルから例えば蛍光または化学発光信号などの信号を検出し、プロセッサは、検出された信号を処理し、アクチュエータの動作を開始することによって信号に応答する。生物チップの例は、本明細書に全てを援用される2018年9月11日に出願された米国特許出願第16/128,120号に記載されるCMOS生物センサを含む。例えば、生物センサは、相補型金属酸化物半導体(CMOS)層上にあるフローセルを含む。CMOS層は、複数のフォトダイオードを有する光感知層と感知した信号を処理する光感知層に結合された電子回路層を含む。生物チップの他の例は、また本明細書で全てを援用される2007年11月1日に出願された米国特許出願第12/513,157号、2010年4月22日に公開された米国特許公開第2010/0096266号に記載された例えば一体化されたラボオンチップカートリッジなど、マイクロ液滴処理チップを含む。本明細書に記載されたマイクロ流体装置が生物反応に関連しない信号生成イベント(例えば生体分子を含まない化学変換によって生成される信号)を検出するために用いられることが理解されるであろう。
【0038】
プロセス230において、ワイヤ結合は、生物チップとPCBの間で形成され、保護カプセル封入は、ワイヤ結合を保護するために形成される。
図3Dは、生物チップとプリント回路基板(PCB)を電気的に接続するために形成されたワイヤ結合を描く断面図である。
図3Dにおいて、生物チップ上の接触パッド122は、結合ワイヤ114でPCB上の接触パッド112に接続される。接触パッド122、接触パッド112、及び結合ワイヤ114は、ワイヤ結合保護構造115にカプセル化される。
【0039】
方法200のプロセス250において、マイクロ流体筐体が提供される。
図3Eは、本発明のいくつかの実施形態に従うマイクロ流体筐体を描く断面図である。
図1に示されるように、マイクロ流体筐体130は、生物チップ120と共にフローセルを形成するために用いられ、マイクロ流体筐体130は、また、PCB110に結合され、マイクロ流体装置のための機械構造を提供する。
【0040】
マイクロ流体筐体の材料は、例えば生体サンプルを処理するために、フローセルの機能と相性が良い。材料は、生物チップ及びPCBと相性が良く、相性が良い熱膨張係数を有することが望ましい。いくつかの実施形態において、マイクロ流体筐体は、ガラスまたはプラスチック材料、または他の適切な材料で作られる。例として、マイクロ流体筐体は、モールドされたプラスチックで作られる。マイクロ流体筐体は、チップ結合及びPCBのための上記プロセスから分離して形成され、方法の記載の上記順序に従う必要はない。
【0041】
図3Eで示されるように、マイクロ流体筐体130は、注入口131、排出口132、及び第1の空洞133を有する。マイクロ流体筐体130は、また空洞133に隣接する内側側壁135を有し、内側側壁は、生物チップを取り付けるために用いられ、気密封止でフローセル140を形成する。フローセル140は、マイクロ流体筐体130、マイクロ流体筐体の内側側壁135、及び生物チップ120の間の空洞133によって形成されるチャネルを含む。
【0042】
図3Eに示されるように、マイクロ流体筐体130は、またPCBに取り付けるために外側側壁136を有し、機械的支持を提供する。
【0043】
マイクロ流体筐体130の形状と大きさは、
図3Fに描かれるように、生物チップ120及びPCB110と組み立てられるように設計される。マイクロ流体筐体の設計上の考慮事項を示すために、
図3Fは、マイクロ流体筐体130が接合部147においていかなる接着材料なく、生物チップ120の上面に接触する内側側壁135の下面が生物チップ120に配置されることを示す。この形態において、マイクロ流体装置130の外側側壁136の下面とPCB110の上面の間の間隙148がある。間隙の高さは、チップとPCBの変動及び製造誤差に相当するように選択される。以下で説明されるように、この形態及び接着材料の選択は、マイクロ流体筐体130と生物チップ120の間の気密結合の形成と装置の機械強度を提供するためにマイクロ流体筐体130とPCB110の間の結合の形成を促進する。いくつかの実施形態において、間隙148の高さは、例えば5から30μm、約10μmである。他の実施形態において、間隙の高さは、例えば30から50μmまたはそれ以上である。マイクロ流体筐体130の空洞133の側面の寸法は、生物チップ120の幅とフローセルの所望の大きさによって決定される。
【0044】
方法200のプロセス250において、接着層は、マイクロ流体筐体130を生物チップ120とPCB110に取り付けるために配置される。1つの実施形態において、接着層は、生物チップ及びPCBの上面に塗布される。代わりに、接着層は、下面においてマイクロ流体筐体130の下部に配置される。第1の実施形態において、
図3Gに示されるように、第1の接着層141は、生物チップ120の上面に配置され、第2の接着層142は、PCB110の上面に配置される。第2の実施形態において、
図3Hに示されるように、第1の接着層141と第2の接着層142は、マイクロ流体筐体130の下面に配置される。例えば、第1の接着層141は、生物チップ120の内側側壁135の下面に配置され、第2の接着層142は、生物チップ120の外側側壁136の下面に配置される。
【0045】
さらに別の実施形態において、結合は、生物チップ120またはマイクロ流体筐体130上に第1の接着層141を配置し、その後生物チップ120にマイクロ流体筐体130を取り付けることによって、マイクロ流体筐体130と生物チップ120の間に形成される。その後、第2の接着層142は、
図3Fに関連して上記されるように、マイクロ流体筐体130とPCB110の間の間隙148に配置され、マイクロ流体筐体130とPCB110の間の第2の結合を形成する。接着層は、例えば自動接着剤分配装置など、接着剤分配装置を用いて、所望の位置に配置される。
【0046】
方法200のプロセス260において、マイクロ流体筐体130は、
図3Iに描かれるように、生物チップ120とPCB110に取り付けられる。いくつかの実施形態において、両方の接着層は、マイクロ流体筐体130に配置される(
図Hに示すように)または2つの接着層は、それぞれ生物チップ120とPCB110に配置される(
図Gに示されるように)。これらの実施形態において、マイクロ流体筐体130は、持ち上げられ生物チップ120とPCB110に設置され、マイクロ流体筐体130は、生物チップ120とPCB110に押圧され結合を形成する。次に硬化プロセスは、接着層141と142を硬化するために実行される。
【0047】
さらに別の実施形態において、結合は、生物チップ120、またはマイクロ流体筐体130上に第1の接着層141を配置することに続いて生物チップ120にマイクロ流体筐体130を取り付けるための採取と押圧プロセスによって、マイクロ流体筐体130と生物チップ120の間に形成される。硬化プロセスは、第1の接着層141を凝固させるために実行される。その後、第2の接着層142は、マイクロ流体筐体130とPCB110の間の間隙148に配置され、硬化プロセス後結合を形成する。
【0048】
本発明の実施形態において、接着層の材料、厚さ及び容積は、フローセルの気密封止を形成するように及びパッケージの機械強度を提供するように選択される。第1の接着層141は、気密及び液密であるマイクロ流体筐体130と生物チップ120の間の気密封止を形成する。さらに、第1の接着層141は、フローセルで用いられる材料と相性が良い。他方で、第2の接着層142は、マイクロ流体筐体130とPCB110の間の接合に機械強度を提供するように構成される。
【0049】
いくつかの実施形態において、第1の接着層は、固体形態であり、硬化プロセスを通して実質的に維持された明確な厚さを有する。他方で、第2の接着層は、十分に厚く、硬化前に液体形態であり、第2の接着層の結合線厚さは、自己調節可能である。言い換えると、マイクロ流体装置の第1の接着層厚さ、センサ厚さ、ダイアタッチ接着剤厚さ、PCB表面不均一、及びワイヤ結合空洞の段差を含む、マイクロ流体装置の構造によって必要とされる空間を満たす。ここで、結合線厚さは、接着層より上の装置構造の下面と、接着層より下の装置構造の上面の間の接着層の厚さを指す。文脈に依存して、用語「結合線厚さ」は、硬化前結合線厚さまたは硬化後結合線厚さを指す。
【0050】
本発明の実施形態において、第1の接着層141と第2の接着層142は、異なる機能を提供する。第1の接着層141は、第1の材料または第1の接着剤で作られ、第2の接着層142は、第2の材料、または第2の接着剤で作られる。いくつかの実施形態において、第1の接着剤は、硬化前に固体接着剤であり、硬化後に実質的にその厚さを維持し、マイクロ流体装置の均一性を保証する。他の実施形態において、第1の接着剤は、硬化後に適合する接着材料であり、マイクロ流体装置の操作の熱サイクルの間、熱膨張の不均一を調整する。第2の接着剤は、順応性があり、マイクロ流体チップを取り付ける組み立てステップの押圧のときに形状を変化することができる。
【0051】
いくつかの実施形態において、第1の接着層141は、適合する材料である、または応力対応接着剤である。言い換えると、第1の接着剤は、硬化後弾性を残し、操作の間、熱サイクルを通して生物チップとマイクロ流体筐体の間の不均一な熱膨張を調整する。例えば、特定の生物学の適用において、装置は、例えば室温と例えば65℃またはそれ以上の高いプロセス温度の間の熱サイクルを受ける。マイクロ流体装置の部品は、様々な熱膨張係数を備える様々な材料を有する。したがって、いくつかの実施形態において、適合する接着剤は、マイクロ流体筐体130と生物チップ120の間の第1の接着層141を形成するために用いられる。適合する接着剤は、マイクロ流体筐体130と生物チップ120の間の熱的に導入された寸法変動を吸収する。適合する接着材料の例は、dで作られるウレタン接着材料である。ウレタン接着剤は、水蒸気浸透性が低く、弾性特性を有し、硬化すると、丈夫で、柔軟で、強粘着性の結合を提供する。例えば、Bostik1100FS接着剤は、いくつかの実施形態で用いられる。もちろん、本発明の実施形態において、第1の接着層は、ウレタン接着剤に限定されない。他の適切な適合する接着材料も用いられる。適合する接着剤の別の例は、本明細書で全て援用する、「温度ストレス低減のための回路基板実装」のタイトルで2017年4月12日に公開されたChoiの、米国特許公開第2007/0081317号に記載されたエポキシ樹脂を含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、第1の接着層141は、第1の接着層141がマイクロ流体筐体130と生物チップ120の間のフローセルチャンバを形成するために用いられるので、硬化前に画定された厚さを維持し、フローセルの流体場均一性を最大にするために用いられる。これらの修正において、例えばダイアタッチフィルム(DAF)など、ドライフィルム接着剤が用いられる。ダイアタッチフィルムは、ペーストベースの代わりにフィルムベースであり、しばしばダイシングの前のウェハの裏面に取り付けられるエポキシ接着剤を含む。裏面にDAFを備えるチップは、PCBに取り付けられる。DAFは、滴形状から薄い2次元層への接着材料の再形成がないので、接着剤ペーストより利点がある。さらに、フィルムのプロセスウィンドウは、ペースト材料よりも広く、組み立てプロセスは、フィルムの使用によって簡略化される。
【0053】
ダイアタッチフィルムの他の例は、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリルゴム、シリカフィラ、またはその組み合わせなどの材料を含み、ラミネート技術を用いて適用される。ダイアタッチ接着剤の例は、ドイツ、デュッセルドルフ、Henkel Chemicals社のABLEBOND 789-3(登録商標)である。しかしながら、その他の適切な代わりの材料及び形成技術は、代わりに用いられる。
【0054】
ダイアタッチフィルムの例は、本明細書に全て援用される、「硬化性樹脂組成物、接着用エポキシ樹脂ペースト、接着用エポキシ樹脂シート、導電接続用ペースト、導電接続用シート及び本体に接合された電子部品」とのタイトルの、2006年7月13日に公開されたWatanabeの米国特許公開第2006/0154078号、「個別化されたダイへダイアタッチフィルムを適用するプロセス」とのタイトルの2008年12月15日に公開されたFoongの米国特許公開第2008/0318364号に記載される。DAF組み立てプロセスのための例示のプロセスフローは、結合ステップとそれに続く例えば130℃で60分のオーブン硬化を含む。代わりに、UV硬化プロセスも用いられる。
【0055】
いくつかの実施形態において、第2の接着剤は、PCB110に分配された後、硬化前に液体形態である、液体エポキシである。液体エポキシの例は、本明細書に全て援用される、「樹脂組成物及び複層基板」とのタイトルで、2018年7月26日に公開されたBabaの米国特許公開第2018/0213635号、「接着層及び接着シート」とのタイトルで、2018年9月13日に公開されたTaniquichiの米国特許公開第2018/0258325号、「高スループット製造プロセスに使用のための高速硬化エポキシ樹脂」とのタイトルで、2018年10月11日に公開されたBankの米国特許公開第2018/0291164号に記載される。液体ポキシの特定の例は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルである。他の例は、湿度硬化される、米国、ウィスコンシン州、ウォーワトサのBostik社によって作られた液体エポキシ材料を含む。液体エポキシの他のプロバイダは、米国、ニュージャージ州、クランベリのNorland社、コネティカット州、トリグトン、Dymax社、及びコロラド州ブリッケンリッジのElectronic Materials社で作られる、Norland NEA 123S または123Tを含む。
【0056】
適合する第1の接着剤の別の例は、感圧接着剤(PSA)である。感圧接着剤は、圧力が加えられたとき結合を形成する接着剤である。いくつかのPSAは、例えばアクリルに基づくエラストマなど、エラストマに基づく。PSAは、粘弾性(粘性と弾性)特性を示し、両方とも適切な結合のために用いられる。
【0057】
図3Fに関連して上記で注目されるように、マイクロ流体筐体130が接合面147においていかなる接着材料もなく、生物チップ120の上面に接触する内側側壁135の下面が生物チップ120に配置されるとき、マイクロ流体装置130の外側側壁136の下面とPCB110の上面の間に間隙148がある。したがって、マイクロ流体筐体130が生物チップ120とPCB110に取り付けられ、硬化プロセスが
図3Iに描かれるように実行されるとき、第2の接着層142の厚さは、
図3Fに記載される間隙148の高さを足した第1の接着層141の厚さに実質的に等しい。いくつかの実施形態において、硬化後の第1の接着層141の厚さは、10から100μmの範囲である。厚さは、流体セル設計に依存して変わる。上記されたように、間隙148の高さは、約5から50μmの範囲である。したがって、硬化後、第2の接着層142の厚さは、15から150μmの範囲である。
【0058】
いくつかの実施形態において、マイクロ流体筐体130は、外部接着剤を用いることなく、生物チップ120に取り付けられる。例えば、いくつかの場合において、マイクロ流体筐体の本体材料またはマイクロ流体筐体に埋め込まれた材料は、接着材料として用いられる。例えば、マイクロ流体筐体は、溶融温度が低く、生物チップで封止を形成するために溶融されるプラスチック材料で作られる。いくつかの実施形態において、マイクロ流体筐体130は、埋め込まれた接着材料を有する。例えば、溝は、マイクロ流体筐体130の側壁に形成され、例えばDAFまたは他の接着材料など接着材料は、溝に挿入される。
【0059】
方法200のプロセス260において、マイクロ流体筐体は、生物チップ及びPCBに取り付けられる。
図3Iは、本発明のいくつかの実施形態に従う生物チップとPCBに取り付けられるマイクロ流体筐体を描く断面図である。ここで、標準のピック、プレース及び押圧プロセスは、マイクロ流体筐体を生物チップ及びPCBに取り付けるために用いられる。
【0060】
方法200のプロセス270において、組み立てられたマイクロ流体装置は、硬化プロセスを受けて、接着層を硬化する。ポリマベースの接着材料において、硬化は、ポリマ鎖の架橋によってポリマ材料の強化または硬化を指す。硬化は、例えば電子ビーム、熱、または紫外線(UV)放射など、外部エネルギの適用で生じる。
【0061】
いくつかの実施形態において、第1の接着層の応力を最小化するために、第1の接着層の硬化収縮は、第2の接着層の硬化収縮を超えてはならない。さらに、第2の接着層の硬化収縮は、第1の接着層の硬化収縮より大きく、第1の接着層がマイクロ流体筐体と生物チップの間の気密封止を形成することを確実にすることが望ましい。いくつかの実施形態において、第2の接着層の追加の硬化収縮は、第1の接着層の厚さの約10%である。他の実施形態において、いくつかの実施形態において、第2の接着層の追加の硬化収縮は、第1の接着層の厚さの約5-15%である。
【0062】
図3Jは、本発明の代わりの実施形態に従うマイクロ流体装置を描く、簡略化された断面図である。
図3Jに示されるように、マイクロ流体装置170は、第2の接着層142の開口119を除いて、
図1及び3Iに描かれるマイクロ流体装置100と同様である。開口119は、第1の接着層141の気密性の試験容易性を可能にするように設計される。例えば、圧縮空気は、マイクロ流体装置170の注入口131と排出口132の間に適用される。第1の接着層141のあらゆる漏出が第2の接着層142の開口119を通して検出される。
【0063】
図3Kは、本発明の別の実施形態に従うマイクロ流体装置を描く簡略化された断面図である。
図3Kに示されるように、マイクロ流体装置180は、マイクロ流体筐体130の開口139を除いて、
図1及び3Iに描かれるマイクロ流体装置100と同様である。上記
図3Jの開口119と同様に、
図3Kのマイクロ流体筐体130の開口139は、第1の接着層の気密性の試験容易性を可能にするように設計される。例えば、圧縮空気は、マイクロ流体装置180の注入口131と排出口132の間に適用される。第1の接着層141のあらゆる漏出がマイクロ流体筐体130の開口139を通って検出される。
【0064】
マイクロ流体装置は、ここから分析のための生体サンプルをすぐに受け入れられる。
図4は、本発明のいくつかの実施形態に従う分析のためのマイクロ流体装置に導入される生体サンプルを描く断面図である。
図1のマイクロ流体装置100と同様な
図4のマイクロ流体装置400は、マイクロ流体装置の空洞133の生体サンプル137を示す。
【0065】
例として、生体チップは、信号を検出でき、プロセッサは、検出信号を処理し、アクチュエータの動作を開始することを決定する。マイクロ流体装置は、2種類の接着層を含む。第1の接着層は、ICチップにマイクロ流体筐体を取り付けるために用いられ、第2の接着層は、PCBにマイクロ流体筐体を取り付けるために用いられる。
【0066】
上記されたように、
図1は、PCBと結合する単一の生物チップを有するマイクロ流体装置の例を描く。しかしながら、上記特徴は、単一のチップを有するマイクロ流体装置に限定されず、チップは、生物チップに限定されない。例は以下に説明される。
【0067】
図5は、本発明のいくつかの実施形態に従うPCBに取り付けられた複数のチップを有するマイクロ流体装置を描く簡略化された図である。
図5に示されるように、マイクロ流体装置500は、PCB(プリント回路基板)510、PCB上にある第1のチップ520及び第2のチップ525、並びにチップ及びPCB上にあるマイクロ流体筐体530を含む。第1のチップ520は、
図1に示されるマイクロ流体装置100と同様な生物チップである。第2のチップ525は、
図1に示されるマイクロ流体装置100と同様な第2の生物チップである。代わりに、第2のチップ525は、例えばプロセッサチップなどの集積回路(IC)チップ、または例えばアクチュエータなどのマイクロ電気機械システム(MEMS)チップである。
【0068】
マイクロ流体筐体530は、第1の接着層541を用いてチップ520と525に取り付けられてフローセルを形成し、マイクロ流体筐体530は、第2の接着層542を用いてPCB510に取り付けられ、機械的支持を提供する。チップ520と525は、例えばPCBにチップを取り付けるダイアタッチ接着層513を用いてPCB510に取り付けられる。さらに、充填部527は、チップ520と525の間の空間を満たして形成される。
【0069】
図5において、マイクロ流体筐体530は、注入口531、排出口532、及び第1の空洞533を有する。マイクロ流体筐体530は、空洞533に隣接する内側側壁535を有し、内側側壁は、第1の接着層541を用いてチップ520と525に取り付けられ、気密封止でフローセル540を形成する。フローセル540は、マイクロ流体筐体530、マイクロ流体筐体の内側側壁535、及びチップ520と525の間の空洞533によって形成されたチャネルを含む。生体サンプル537は、注入口531を通って、チップ520と525が生体サンプル537の特性を決定する空洞533に導入される。その後、生体サンプル537は、空洞533から排出口532を通って取り除かれる。
【0070】
図5に示されるように、マイクロ流体筐体530は、また第2の接着層542を用いてPCB510に取り付けられた外側側壁536を有し、機械的支持を提供する。いくつかの実施形態において、チップ520と525は、
図1に記載されたチップと同様に、ワイヤ結合を用いてPCB510と電気的に結合される。この関連で、マイクロ流体筐体530は、またワイヤ結合を収容する第2の空洞を含む。
【0071】
第1の接着層541は、気密及び液密である、マイクロ流体筐体530とチップ520と525の間の気密封止を形成する。さらに、第1の接着層541は、フローセルとその操作で用いられる材料と相性が良い。他方で、第2の接着層542は、マイクロ流体筐体530とPCB510の間の接合に機械強度を提供するように構成される。
【0072】
図6は、本発明のいくつかの実施形態に従う代わりの方法によって形成されるマイクロ流体装置を描く簡略化された図である。
図6に示されるように、マイクロ流体装置600は、PCB(プリント回路基板)610、PCB610上にあるCMOSイメージセンサ(CIS)620、CMOSイメージセンサ(CIS)620とPCB610上にあるマイクロ流体筐体630を含む。マイクロ流体筐体630は、接着剤641を用いてCMOSイメージセンサ(CIS)620に取り付けられ、フローセルを形成し、マイクロ流体筐体630は、ラッチ642を用いてPCB610に取り付けられ、機械的支持を提供する。CMOSイメージセンサ620は、はんだ612を用いてPCB610に取り付けられる。
【0073】
図6において、マイクロ流体筐体630は、注入口631と排出口632を有する。空洞633は、マイクロ流体筐体630とCMOSイメージセンサ620の間に形成される。フローセル640は、マイクロ流体筐体630、注入口631、排出口632の間の空洞633によって形成されたチャネルを含む。生物チップ637は、注入口631を通って、CMOSイメージセンサ620が生体サンプル637の特性を決定する空洞633に導入される。その後、生体サンプル637は、空洞633から排出口632を通って取り除かれる。
【0074】
マイクロ流体装置600において、接着剤641は、フローセルの気密封止を形成するために用いられ、生体サンプルと接触する。したがって、接着剤641の材料は、生体サンプル、生体サンプルを操作する際に用いられる流体、及び操作可能な条件と相性が良い。例えば、いくつかの実施形態において、生体サンプルと相性が良いウレタン接着剤は、フローセルを形成するための接着剤641として用いられる。
【0075】
マイクロ流体装置600において、ラッチ642は、PCB610にマイクロ流体筐体630を取り付け、機械的支持を提供するために用いられる。いくつかの実施形態において、ラッチは、PCBボード610の開口部を通る、スナップクリック機構を含む。この方法で、スナップクリック機構は、マイクロ流体装置600とPCBボードの間の圧縮力を提供するまたは維持するように動作し、接着剤641を用いて結合されるマイクロ流体筐体630とCMOSイメージセンサ(CIS)620の間の封止を提供することを助ける。
【0076】
さらに、マイクロ流体装置600の上記記載は、CMOSセンサに限定されない。例えばセンサチップまたは生体サンプル操作チップなどの他のタイプのチップは、マイクロ流体装置を実施するために用いられる。
図5のマイクロ流体装置500と同様に、マイクロ流体装置600は、またPCBに取り付けられた複数の装置を含む。
【0077】
図7は、本発明のいくつかの実施形態に従う別の方法によって形成されたマイクロ流体装置を描く簡略化された図である。
図7のマイクロ流体装置700は、
図6に示されるマイクロ流体装置600と同様である。マイクロ流体装置700とマイクロ流体装置600の1つの差は、マイクロ流体装置700において、CMOSイメージセンサにマイクロ流体筐体を取り付けるためのマイクロ流体装置600に用いられる接着剤が、Oリングで置換されていることである。
図7に示されるように、マイクロ流体装置700は、PCB(プリント回路基板)710、PCB710上にあるCMOSイメージセンサ(CIS)720、CMOSイメージセンサ(CIS)720とPCB710上にあるマイクロ流体筐体730を含む。マイクロ流体筐体730は、Oリング741を用いてCMOSイメージセンサ(CIS)720に取り付けられてフローセルを形成し、マイクロ流体筐体730は、ラッチ742を用いてPCB710に取り付けられて機械的支持を提供する。CMOSイメージセンサ720は、はんだ712を用いてPCB710に取り付けられる。
【0078】
図7において、マイクロ流体筐体730は、注入口731と排出口732を有する。空洞733は、マイクロ流体筐体730とCMOSイメージセンサ720の間に形成される。フローセル740は、マイクロ流体筐体730、注入口731、排出口732の間の空洞733によって形成されるチャネルを含む。生体サンプル737は、注入口731を通って、CMOSイメージセンサ720が生体サンプル737の特性を決定する空洞733に導入される。その後、生体サンプル737は、空洞733から排出口732を通って取り除かれる。
【0079】
Oリングは、丸い断面を備えるエラストマ材料の輪であり、しばしば溝に取り付けられるように設計され、2またはそれ以上の部品の間の組み立ての間、圧縮され、接合面に封止を作り出す。エラストマは、弾性ポリマまたは弾性特性を備えるゴム状固体を指す。マイクロ流体装置700において、Oリングは、CMOSセンサによって分析される生体サンプルと接触する。したがって、Oリングの材料は、生体サンプル、生体サンプルを操作する際に用いられる流体、及び操作可能な条件と相性が良い。さらに、マイクロ流体装置700の上記記載は、CMOSセンサ720に制限されない。例えば他のタイプのセンサまたは生体サンプル操作チップなど、他のタイプのチップは、またマイクロ流体装置700を実施するために用いられる。
図5のマイクロ流体装置500と同様に、マイクロ流体装置700は、またPCBに取り付けられる複数の装置を含む。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態は、生体または化学サンプルの分析に用いられる。生体または化学サンプルは、複数の部品のいずれかを含む。例えば、サンプルは、核酸高分子(例えば、鋳型、DNA、RNAなど)、タンパク質などを含む。サンプルは、遺伝子配列、DNA-DNAハイブリダイゼーション、一塩基多型、タンパク質相互作用、ペプチド相互作用、抗原抗体相互作用、グルコースモニタリング、コレステロールモニタリングなど、を決定するために分析される。
【0081】
いくつかの実施形態において、生体サンプルは、例えばDNAなど核酸である。本明細書で全て援用される、米国特許第8,778,849号、第8,445,194号、第9,671,344号、第7,910,354号、第9,222,132号、第6,210,891号、第6,828,100号、第6,833,246号、第6,911,345号、米国特許公開第2016/0237488号を参照。制限なく、DNA生体分子は、標識プローブに(例えばライゲーションまたはcPAL法によるDNB配列決定において)または相補的成長鎖に(例えば合成法によるDNB配列決定において)または両方にハイブリダイズしたDNAナノボール(一本鎖コンカテマ)、または単一のDNA分子(例えば単一の分子配列決定)、または例えばブリッジPCRベースの配列決定で作り出されるような、DNA分子のクローン集団に対してである。それゆえ、「生体分子」、「DNA高分子」または「核酸高分子」への言及は、複数の分子(例えば、複数の成長相補鎖と関連するDNBまたは数百または数千のDNA分子のクローン集団を備えるDNAクラスタなど)を包含する。DNB(例えばDNBライブラリ)を作るまたは領域間領域によって分離された離散的な間隔を空けた領域のアレイを作る例示的な方法は、従来技術でよく知られている。例えば、本明細書に全て援用される米国特許第8,133,719号、第8,445,196号、第8,445,197号、及び第9,650,673号を参照。いくつかの実施形態において、DNBまたは他の高分子は、誘引非共有相互作用(例えばファンデルワールス力、水素結合、及びイオン相互作用)によって離散的な間隔を空けた領域またはスポットに固定される。いくつかの実施形態において、離散的な間隔を空けた領域は、機能部分(例えばアミン)を備える。いくつかの実施形態において、離散的な間隔を空けた領域は、鋳型DNA(例えばDNB)を結合するために、そこに取り付けられた捕獲オリゴヌクレオチドを備える。一般に、離散的な間隔を空けた領域は、直線パターンで配列されるが、他の配置を備える規則的なアレイ(例えば領域の同心円、渦巻きパターン、六角形パターンなど)が用いられる。
【0082】
いくつかの実施形態において、核酸高分子は、ゲノムDNAフラグメントまたはcDNAライブラリのアンプリコンである。本明細書で用いられるように、「アンプリコン」は、通常、ゲノムDNAのフラグメントまたはcDNAライブラリなど、核酸分子の増幅の生産物である。増幅の方法は、これに限定されるものではないが、例えば米国特許第8,445,194号(本明細書に全て援用する)に記載されているようにローリングサークル増幅または例えば本明細書に全て援用する米国特許第7,972,820号に記載されるように、ブリッジポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む。増幅は、核酸がバイオセンサに接触する前に、または本明細書に全て援用される米国特許第7,910,354号に記載されているようにin situで実行される。
【0083】
例えば、蛍光または化学発光色素と関連するDNA高分子、オリゴヌクレオチドまたはヌクレオチドなどの生体サンプルは、フォトダイオード117上に設置される。蛍光の場合において、色素は、励起光源からの励起光に照射される。励起光は、例えば可視光、赤外(IR)、紫外(UV)などを含む任意の適切なタイプのまたは強度の光に対応する。励起光は、また例えば発光ダイオード(LED)、ランプ、レーザ、それらの組み合わせなど、任意の適切な源からくる。色素が特定の波長の励起光で照射されたとき、生体サンプルは、光を吸収し、その後異なる波長の光を放射する。例えば、生体サンプルは、450nmの波長を有する励起光を吸収し、550nmの波長を備える光を放射する。言い換えると、特徴的な波長の蛍光は、色素が特徴的な異なる波長の光(すなわち励起光源)によって照射されたとき、放射される。励起光は、蛍光をもたらす色素を照射するために用いられるが、フォトダイオードで蛍光の正確な測定を取るためにフィルタで除去されなければならない。
【0084】
化学発光の場合において、励起光源は、フォトダイオードが放射された光を検出するために必要とされない。代わりに、生体サンプルが生体サンプルと化学発光色素(または他の溶液)の間で発生し、光を、化学結合を壊すまたは形成する(例えばルシフェリン基質に対する発光酵素タンパク質の作用)ことによって放射させる、化学または酵素反応によって光を放射する。
【0085】
蛍光と化学発光の両方において、フォトダイオードは、放射された光の強度を検出し、それを金属配線によって外部装置に提供される光の強度に基づく電子信号に変換する。外部装置は、電子信号を電子信号に基づく特定の波長及び輝度に相関させる。
【0086】
いくつかの実施形態において、バイオセンサの表面のアクティブスポットまたはウェルと核酸高分子は、相互にそれぞれのスポットが1つの核酸高分子とのみ結合するように構成される。これは、例えば大きさがアクティブスポットに対応するアンプリコン(例えば、実質的にアクティブスポットの直径以上の大きさである直径を有するアンプリコン)と表面を接触することによって達成される。本明細書に全て援用される米国特許第8,445,194号参照。代わりに、アクティブスポットは、単一のDNAフラグメントを結合するように構成され、その後本来の結合部位においてまたはその周りの大きな領域を満たすために増幅される。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態は、光の様々な波長に対応する様々な標識を決定するために用いられる。標識は、例えば、蛍光、化学発光または生物発光標識である。例えば、遺伝子配列決定(またはDNA配列決定)において、本発明の実施形態は、核酸高分子(例えばDNAの鎖)内のヌクレオチド塩基の正確な順序を決定するために用いられる。ヌクレオチド塩基(例えばアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)またはチミン(T))は、特定の蛍光標識で標識付けされる。代わりに、例えば1色、2色、または3色の配列決定方法が用いられる。
【0088】
蛍光に対して、ヌクレオチド塩基のそれぞれは、励起光で核酸高分子を連続して励起することによって順番に決定される。核酸高分子は、励起光を吸収し、本明細書に記載されるようにバイオセンサ上に異なる波長の放射光を伝達する。バイオセンサは、放射光の波長と、フォトダイオードによって受け入れられた強度を測定する。それぞれのヌクレオチド(例えば蛍光的に標識付けされたヌクレオチド)は、特定の波長及び/または強度の励起光によって励起されたとき、特定の波長の光及び/またはフォトダイオードの強度を放射し、核酸高分子の特定の位置において、特定のヌクレオチド塩基の存在の識別ができる。特定のヌクレオチド塩基が決定されると、核酸高分子から取り除かれ、次の連続ヌクレオチド塩基が同様のプロセスに従って決定される。
【0089】
核酸高分子は、任意の目的のためにバイオセンサに取り付ける前または後に、1またはそれ以上の異なる蛍光、化学発光、または生物発光標識で標識付けされる。例えば、核酸高分子は、標識オリゴヌクレオチドプローブまたは増幅プライマとハイブリダイズされる。代わりに、核酸高分子は、その後標識プローブと結合される非標識オリゴヌクレオチドとハイブリダイズされ、標識ヌクレオチド類似体を用いて伸長される。図を手段として、標識付けは、核酸高分子を特徴付ける目的のために(例えば病気と関連する一塩基多型(SNP)の存在)、または上記されたように核酸高分子の全てまたは一部の核酸配列決定のためになされる。プローブハイブリダイゼーションによるDNA配列決定は、例えば、本明細書に全て援用される米国特許第8,105,771号に記載される。アンカプローブライゲーションによる配列決定は、本明細書に全て援用される米国特許第8,592,150号に記載される。合成による配列決定は、例えば本明細書に全て援用される、米国特許第7,883,869号に記載される。一般に、合成による配列決定は、ヌクレオチドが鋳型配列にハイブリダイズされた配列決定プライマによって提供される自由3’ヒドロキシル群に連続して加えられ、5’から3’方向に核酸鎖の合成をもたらす方法である。1つのアプローチにおいて、SBSの別の例示のタイプ、パイロシーケンス技術が用いられる(Ronaghiら、1998、サイエンス 281:363)。
【0090】
いくつかの実施形態において、バイオセンサは、フローセルに可逆的に結合される(図示せず)。核酸高分子は、フローセルの液体サンプルとバイオセンサを接触することによってバイオセンサに取り付けられる。フローセルは、反応部位と流体連通する1またはそれ以上のフローチャネルを含む。1つの例において、バイオセンサは、生物学的検定システムと流体的に及び電気的に結合する。生物学的検定システムは、所定のプロトコルに従って反応部位に試薬を供給し、撮像イベントを実行する。例えば、生物学的検定システムは、溶液を導いて反応部位に沿って流す。溶液は、同じまたは異なる蛍光標識を有する4つのタイプのヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、生物学的検定システムは、その後励起光源を用いて反応部位を照射する。励起光は、所定の1つのまたは複数の波長を有する。励起蛍光標識は、フォトダイオードによって検出される放射信号を提供する。
【0091】
ユーザは、核酸アンプリコン、または次に増幅される核酸と、記載された実施形態に従うバイオセンサを接触することによって配列決定の準備をし、核酸高分子は結合し、アクティブスポットまたはウェルによって保持され、過剰な核酸高分子は、洗い流される。核酸高分子は、標識試薬と事前にまたはin situで接触する。その後、バイオセンサは、本明細書に記載されたように動作し、アレイ上の核酸高分子上またはその周りで放射された光を測る。光は、定量化される、または表面上のどの核酸高分子が、特定の波長において放射する標識で標識付けされているかをバイナリ形式で決定するだけで十分である。異なるプローブまたは異なる核酸類似体は、同時に異なる波長で光を放射する標識を有することを用いて、例えば配列の特定の位置における様々な塩基を決定するまたは複数の位置の配列決定をする。
【0092】
裏面照射CMOSセンサに関して本明細書に記載されるが、本発明の実施形態は、同様に前面照射CMOSセンサに適用できることが期待される。さらに、本発明の実施形態は、本明細書に全てを援用される2017年11月3日に出願された米国特許出願第15/803,077号に記載されたそれらのバイオセンサなど、任意の適切なバイオセンサに適用できる。
【0093】
上記記載は、現在記載された技術の例示的な態様で、方法、システム及び/またはその構造及び使用を含む。本技術の様々な態様が、ある程度の特殊性を持って、または1またはそれ以上の個々の態様を参照して、上記されたが、当業者は、本明細書の技術の精神または範囲から逸脱することなく、開示された態様に多数の変更をすることができる。多くの態様は、現在記載された技術の精神及び範囲から逸脱することなくなされるので、適切な範囲は、以後添付された特許請求の範囲に存在する。他の態様は従って期待される。さらに、明示的に別段の主張がされている場合または特定の順番が請求項の文言によって本質的に必要とされている場合を除いて、任意の操作が任意の順番で実行されることが理解されるべきである。上記記載に含まれる及び添付された図面に示される全ての事項は、特定の態様の説明のみとして解釈され、示された実施形態に限定しないことを意図する。文脈から明らかでない限り、または明示的に記載されていない限り、本明細書で提供される濃度値は、一般に混合物の特定の成分の添加時または添加後に生じる変換に関係なく混合物の値または割合で示される。本明細書に明示的にすでに組み込まれていない範囲に、本開示で参照された全ての刊行物及び特許文献は、全ての目的において全て本明細書に援用される。詳細のまたは構造の変化は、次の特許請求の範囲に定義されるような本技術の基礎要素から逸脱することなくなされる。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCB(プリント回路基板)と、生物チップと、マイクロ流体筐体とを備えたマイクロ流体装置を作る方法であって、
第1の接着材料を用いて前記マイクロ流体筐体の内側側壁を前記生物チップに接着してフローセルを形成する工程と、
第2の接着材料を用いて前記マイクロ流体筐体の外側部分を前記PCBに取り付ける工程を含み、
前記マイクロ流体筐体の前記内側側壁の前記生物チップへの少なくとも接着後であって前記マイクロ流体筐体の前記外側部分の前記PCBへの取り付け後、前記第2の接着材料は前記第1の接着材料よりも厚い、方法。
【請求項2】
前記マイクロ流体装置を作った後、前記生物チップは前記PCBと前記マイクロ流体筐体との間にあって、前記生物チップは前記PCBに取り付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生物チップは、第3の接着材料で、前記PCBに取り付けられる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の接着材料は、前記マイクロ流体筐体の前記内側側壁が前記生物チップに取り付けられた後、弾性を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の接着材料は、前記マイクロ流体筐体の前記外側部分を前記PCBに取り付ける前に、前記マイクロ流体筐体の前記外側部分と前記PCBの少なくとも一方に液体形態で塗布される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の接着材料は、硬化前に固体であり、硬化中及び効果後に厚みを維持し、
前記第2の接着材料は、硬化前に液体であり、前記マイクロ流体筐体の底面と前記PCBとの間の距離変動を調整する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の接着材料はダイアタッチフィルム(DAF)を有し、
前記第2の接着材料は液体エポキシを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の接着材料は、前記第1の接着材料よりも大きな硬化収縮を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の接着材料はウレタン接着材料を有し、
前記第2の接着材料は液体エポキシを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の接着材料は感圧接着剤(PSA)を有し、
前記第2の接着材料は液体エポキシを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロ流体筐体は、入口、出口、前記内側側壁、外側側壁、及び第1の空洞を有し、
前記マイクロ流体筐体の前記内側側壁は前記第1の空洞に隣接し、
前記マイクロ流体筐体は前記外側側壁で前記PCBに取り付けられる、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記マイクロ流体筐体を取り付ける前に、第2の生物チップを前記PCBに取り付ける、請求項2の方法。
【請求項13】
前記マイクロ流体筐体を取り付ける前に、前記PCBに集積回路チップを取り付ける、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記マイクロ流体筐体を取り付ける前に、前記PCBにマイクロ電気機械システム(MEMS)チップを取り付ける、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の接着材料の層の気密試験のために、前記第2の接着材料の層に開口を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の接着材料の層の気密試験のために、前記マイクロ流体筐体に開口を有する、請求項2に記載の方法。
【外国語明細書】