(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051341
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】入力表示装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/04817 20220101AFI20240404BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G06F3/04817
G06F3/041 460
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157462
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】天野 崇
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA26
5E555AA64
5E555BA02
5E555BA23
5E555BA25
5E555BB02
5E555BB23
5E555BB25
5E555BC04
5E555CA12
5E555CA42
5E555CB14
5E555CB34
5E555CB65
5E555CC01
5E555DB18
5E555DC30
5E555DC43
5E555DC84
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】 触覚と視覚の乖離を低減したタッチ入力を行うことができる入力表示装置を提供する
【解決手段】 本発明の入力表示装置100は、画像を表示可能なディスプレイ110と、表面に少なくとも1つの透明な立体UI部130を含むタッチパネル120と、タッチパネル120の静電容量の変化に基づきタッチパネルへのタッチ位置を検出するタッチ検出部200と、ユーザーの視線位置または視線方向を検知する視線検知部210と、ユーザーの視線位置に応じて立体UI部130の対応する位置に3次元形状のアイコンを表示する3Dアイコン表示部260とを有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示するためのディスプレイと、
前記ディスプレイ上に取り付けられ、表面に少なくとも1つの透明な立体形状の操作部を含む静電容量型のタッチパネルと、
前記タッチパネルへの近接を含むタッチ位置を検出する検出手段と、
前記ディスプレイの前記操作部に対応する位置に3次元形状のアイコンを表示させる表示制御手段と、
を含む入力表示装置。
【請求項2】
入力表示装置はさらに、ユーザーの視線位置または視線方向を検知する視線検知手段を含み、
前記表示制御手段は、前記視線検知手段により検知されたユーザーの視線位置に応じて前記3次元形状のアイコンの角度を変化させる、請求項1に記載の入力表示装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記操作部を真横から見たときの前記操作部の正面から底面部中央を通る線と視線位置から前記底面部中央を通る線との成す第1の角度、および前記操作部を真上から見たときの前記操作部の正面から前記底面部中央を通る線と視線位置から前記底面部中央を通る線との成す第2の角度を算出する角度算出手段を含み、
前記表示制御手段は、前記角度算出手段で算出された第1の角度および第2の角度に基づき前記3次元形状のアイコンの角度を変化させる、請求項2に記載の入力表示装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、第1の角度および第2の角度と前記3次元形状のアイコンの角度との関係を規定したルックアップテーブルを含み、
前記表示制御手段は、ルックアップテーブルを参照し、第1の角度および第2の角度に対応する角度に基づき前記3次元形状のアイコンの角度を変化させる、請求項3に記載の入力表示装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は、前記検出手段により検出されたタッチ位置に応じて前記3次元形状のアイコンの位置を変化させる、請求項1に記載の入力表示装置。
【請求項6】
前記表示制御手段は、前記操作部の透明部分の高さ、および前記検出手段により検出されたタッチ位置に基づき3次元形状のアイコンの移動量を算出する位置算出手段とを含み、
前記表示制御手段は、前記位置算出手段で算出された移動量に基づき3次元形状のアイコンの位置を変化させる、請求項5に記載の入力表示装置。
【請求項7】
前記表示制御手段は、前記視線検知手段により検知された視線位置から見た3次元形状のアイコンが前記操作部から外部にはみ出す場合には、3次元形状のアイコンが前記操作部からはみ出さないように3次元形状のアイコンのサイズを変化させる、請求項2に記載の入力表示装置。
【請求項8】
前記表示制御手段は、複数種の3次元形状のアイコンを表示するための画像データを記憶する記憶手段を含み、
前記表示制御手段は、前記記憶手段から読み出した画像データを前記ディスプレイに表示させる、請求項1に記載の入力表示装置。
【請求項9】
前記ディスプレイは車両に搭載され、前記視線検知手段は、運転者および/または同乗者の視線位置を検知する、請求項2に記載の入力表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人と機械とのインターフェース機能を備えた入力表示装置に関し、特に、透明な立体形状のタッチ操作部を含む入力表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイに重畳して配置されたタッチパネル上に凸部を設け、当該凸部と重なる位置に操作アイコン等の画像を表示する入力表示装置が開示されている(例えば、特許文献1)。ユーザーは、凸部をタッチ操作することで入力を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静電容量型のタッチ操作を行うディスプレイ機器において、カバーガラスに凹凸形状を持たせることによりタッチ位置を触覚的に認知させ、注視せずともタッチ位置を理解することができるユーザーインタフェース(以降、立体UIと呼ぶ)の提案がなされている。
【0005】
図1(A)は、従来のフラットなタッチパネルの操作例であり、ユーザーUは、ディスプレイ10に表示された操作アイコン12を視認し、操作アイコン12(図の例は音符)の位置をタッチ操作することで入力を行う。
【0006】
図1(B)は、立体UIを有するタッチパネルの操作例、
図1(C)は、立体UIの概略断面図である。タッチパネル24上には、凹凸形状の透明なカバーレンズ26が取り付けられ、ディスプレイ20は、カバーレンズ26と重なる位置に操作アイコン22を表示する。ユーザーUは、カバーガラス26上に指をタッチすることで入力を行う。タッチ検出には、センサから距離が離れていても指の静電容量(距離)を検出することができる高感度静電センサが用いられ、厚みのあるカバーレンズ26の上からでもタッチの有無を判定することが可能である。これにより、運転中の車載ディスプレイへの注視が難しい状況下において、タッチミス(操作ミス)を低減することが可能である。
【0007】
上記したように、立体UIでは、クリアパーツとして厚さや高さのあるボタンやノブを用い、その下に操作アイコンを表示する。しかし、クリアパーツには厚さがあるために、タッチ面(凹凸ボタンの天面)とユーザーが触れたい操作アイコンの場所との間に物理的なギャップによって、
図2に示すような感覚的なズレが生じてしまう。すなわち、円筒状の透明なボタン30の下に操作アイコン32が表示されているが、操作アイコン32はタッチ位置よりも奥にあるため、指Uは、操作アイコン32まで届かない。
【0008】
それ故、タッチパネルでありながら、メカニカルスイッチのようなリアルなボタン感を目指す立体UIにおいて、触覚と視覚の乖離を低減させる必要がある。
【0009】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、触覚と視覚の乖離を低減したタッチ入力を行うことができる入力表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る入力表示装置は、画像を表示するためのディスプレイと、前記ディスプレイ上に取り付けられ、表面に少なくとも1つの透明な立体形状の操作部を含む静電容量型のタッチパネルと、前記タッチパネルへの近接を含むタッチ位置を検出する検出手段と、前記ディスプレイの前記操作部に対応する位置に3次元形状のアイコンを表示させる表示制御手段とを含む。
【0011】
ある態様では、入力表示装置はさらに、ユーザーの視線位置または視線方向を検知する視線検知手段を含み、前記表示制御手段は、前記視線検知手段により検知されたユーザーの視線位置に応じて前記3次元形状のアイコンの角度を変化させる。ある態様では、前記表示制御手段は、前記操作部を真横から見たときの前記操作部の正面から底面部中央を通る線と視線位置から前記底面部中央を通る線との成す第1の角度、および前記操作部を真上から見たときの前記操作部の正面から前記底面部中央を通る線と視線位置から前記底面部中央を通る線との成す第2の角度を算出する角度算出手段を含み、前記表示制御手段は、前記角度算出手段で算出された第1の角度および第2の角度に基づき前記3次元形状のアイコンの角度を変化させる。ある態様では、前記表示制御手段は、第1の角度および第2の角度と前記3次元形状のアイコンの角度との関係を規定したルックアップテーブルを含み、前記表示制御手段は、ルックアップテーブルを参照し、第1の角度および第2の角度に対応する角度に基づき前記3次元形状のアイコンの角度を変化させる。ある態様では、前記表示制御手段は、前記検出手段により検出されたタッチ位置に応じて前記3次元形状のアイコンの位置を変化させる。ある態様では、前記表示制御手段は、前記操作部の透明部分の高さ、および前記検出手段により検出されたタッチ位置に基づき3次元形状のアイコンの移動量を算出する位置算出手段とを含み、前記表示制御手段は、前記位置算出手段で算出された移動量に基づき3次元形状のアイコンの位置を変化させる。ある態様では、前記表示制御手段は、前記視線検知手段により検知された視線位置から見た3次元形状のアイコンが前記操作部から外部にはみ出す場合には、3次元形状のアイコンが前記操作部からはみ出さないように3次元形状のアイコンのサイズを変化させる。ある態様では、前記表示制御手段は、複数種の3次元形状のアイコンを表示するための画像データを記憶する記憶手段を含み、前記表示制御手段は、前記記憶手段から読み出した画像データを前記ディスプレイに表示させる。ある態様では、前記ディスプレイは車両に搭載され、前記視線検知手段は、運転者および/または同乗者の視線位置を検知する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、立体形状の操作部に対応する位置に3次元形状のアイコンを表示するようにしたので、ユーザーが操作部にタッチするときの触覚と視覚の乖離を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(A)は、フラットなタッチパネルの操作例を示し、
図1(B)は、立体UIのタッチパネルの操作例を示し、
図1(C)は、立体UIの概略断面図である。
【
図2】従来の立体UI部の課題を説明する図である。
【
図3】本発明の実施例に係る入力表示装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】本実施例の入力表示装置を車両に搭載したときのレイアウト例である。
【
図5】本発明の実施例に係る入力表示装置の概要を説明する図である。
【
図6】本発明の実施例に係る視線検知部の詳細を説明する図である。
【
図7】本発明の実施例に係る3Dアイコン記憶部に格納される3Dアイコンの例を示す図である。
【
図8】本発明の実施例に係る入力表示装置の動作を説明するためのフローである。
【
図9】本発明の実施例に係る3Dアイコン角度算出部の詳細を説明する図である。
【
図10】本発明の実施例に係る3Dアイコン位置算出部の詳細を説明する図である。
【
図11】本発明の実施例に係る3Dアイコン補正部の詳細を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について説明する。本発明の入力表示装置は、人と機械との間のインターフェースを提供する。本発明の入力表示装置は、特に限定されないが、例えば、タッチパネル付きディスプレイを搭載する電子装置などに適用される。タッチパネル付きディスプレイを搭載する電子装置は、例えば、ナビゲーション機能、オーディオ・ビジュアル機能、テレビ機能などを備えた車載装置である。
【実施例0015】
次に、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
図3は、本発明の実施例に係る入力表示装置の構成を示すブロック図である。本実施例の入力表示装置100は、画像や映像を表示するためのディスプレイ110と、ディスプレイ110上に搭載された静電容量型のタッチパネル120と、タッチパネル120の表面に取り付けられた1つまたは複数の立体形状を有する透明な立体UI部(または操作部)130と、ユーザーのアイポイント(視線位置または視線方向)を検知する視線検知カメラ140と、ディスプレイ110の画像表示やタッチパネル110のタッチ検出などを制御するコントローラ150を含んで構成される。
【0016】
図4は、本実施例の入力表示装置100を車両に搭載したときのレイアウト例である。タッチパネル120を備えたディスプレイ110は、車両の中央のコンソールに取付けられ、視線検知カメラ140は、ディスプレイ110の上方に近接して取付けられる。運転者および助手席の乗員のそれぞれの視線位置を検知する場合には、視線検知カメラ140を2つ取付けるようにしてもよい。
【0017】
ディスプレイ110は、特に限定されないが、例えば、液晶パネルまたは有機ELパネルを含み、コントローラ150から提供される画像データを表示する。タッチパネル120は、例えば、複数のX側およびY側の電極ラインが交差する位置に形成された複数の検出部を含み、当該検出部は、ユーザーの指や手などがタッチパネル110に接近または接触したときに静電容量を変化させる。タッチパネル120は、ディスプレイ110上に搭載され、ユーザーがディスプレイ110に表示されたアイコン等への入力を行うための入力インターフェースを提供する。
【0018】
タッチパネル120は、透明なパネル上にさらに、1つまたは複数の立体UI部(操作部)130を含む。立体UI部130は、凹凸形状を有する透明な部材から構成され、立体UI部130は、その形状、大きさ、高さなどは特に限定されないが、ユーザーの手や指が立体UI部130に接近または接触したとき、その位置の検出部の静電容量が変化するように立体UI部130が構成される。
【0019】
図3には、4つの立体UI部130がタッチパネル120の下部に取付けられた例が示されている。ディスプレイ110の立体UI部130と対応する位置には、ユーザーの入力操作を表すアイコンが表示され、ユーザーは、アイコンを視認し、立体UI部130にタッチすることで入力を行う。立体UI部130は、例えば、矩形状や円柱状の突出したボタンまたはノブの形状を有し、立体UI部130は、例えば、ガラスやプラスチックなどのクリアパーツから構成され、例えば、両面接着剤などを用いてタッチパネル120の決められた位置の表面に貼り付けられる。コントローラ150は、立体UI部130の取り付け位置や立体UI部130の底面部の座標や高さを予め登録する。例えば、立体UI部130が円筒状であれば、その底面の中心の座標を取り付け位置として登録したり、あるいは、直方体状であれば、その底面の矩形状の対角線が交差する位置の座標を取り付け位置として登録する。但し、これ以外の座標によって立体UI部130の取り付け位置を登録するようにしてもよい。
【0020】
視線検知カメラ140は、運転者の顔を撮像し、撮像した画像データをコントローラ150に提供する。コントローラ150は、視線検知カメラ140からの画像データを処理することで運転者の視線位置または視線方向を検知する。もし、助手席の同乗者の視線位置を検知する場合には、視線検知カメラ140は、同乗者の顔を撮像した画像データをコントローラ150に提供する。また、車両に運転者の状態を監視するためのドライバーモニタリングシステム(DMS)が搭載されている場合には、視線検知カメラ140の代わりに、DMSから提供される運転者の視線位置に関する情報を使用するようにしてもよい。
【0021】
次に、入力表示装置100の概要について
図5を参照して説明する。本実施例の入力表示装置100では、(1)立体UI部130の下に表示するアイコンの3D化(3次元化)と、(2)ユーザーの視線位置に応じた3Dアイコンの角度変更と、(3)立体UI部130への接近を含む指のタッチ位置に応じた3Dアイコンの位置変更とを行い、これにより、ユーザーのタッチ位置と3Dアイコンの表示位置との物理的なギャップによる距離感を低減することを可能にする。
【0022】
図5(A)に示すように、クリアパーツである立体UI部130の座標位置に表示するアイコンを奥行感のある立体的な3Dアイコン132にすることで、立体UI部130の中空内に3Dアイコン132が存在するような奥行表現を行い、立体UI部130の天面部のタッチ位置と底面部に表示される3Dアイコン132との距離認識を低減させる。
【0023】
視線検知カメラ140などの視線検知によって立体UI部130に対するユーザーの視点の位置角度を算出し、その位置角度に応じて3Dアイコン132を回転ないし傾斜させる。
図5(B)は、立体UI部130を左から見たときのアイポイントに合わせて3Dアイコン132を回転させた例と、立体UI部130を右から見たときのアイポイントに合わせて3Dアイコン132を回転させた例を示している。
【0024】
指Uを立体UI部130に近づけた際に、指の検出位置情報から、指の真下に3Dアイコンの中心(もしくは3Dアイコンのタッチさせたい部分)を移動させる。
図5(C)は、指Uの真下に3Dアイコン132の押下部が一致するように3Dアイコンを移動させる(図の例では、円柱状のボタン部分が押下部)。以上の処理を行うことで、実際のタッチ位置とアイコンの表示位置の認識ズレを解消させる。
【0025】
次に、コントローラ150の詳細について説明する。コントローラ150は、ディスプレイ110およびタッチパネル120に電気的に接続され、ディスプレイ110の画像制御およびタッチパネル120のタッチ制御を行う。コントローラ150は、
図3に示すように、タッチ検出部200、視線検知部210、3Dアイコン記憶部220、3Dアイコン角度算出部230、3Dアイコン位置算出部240、3Dアイコン補正部250、および3Dアイコン表示部260を含んで構成される。コントローラ150は、ハードウエアおよび/またはソフトウエアにより実行され、例えば、演算処理部、ROM/RAMを含むマイクロコントローラなどを用いて構成される。
【0026】
タッチ検出部200は、タッチパネル120のX側および/またはY側の複数の電極ラインを駆動し、駆動した電極ラインの各検出部の静電容量を測定し、測定した静電容量に基づきタッチパネル120のタッチ位置を検出する。ここで言うタッチ位置とは、ユーザーの指がタッチパネル120に接触したときの位置のみならず、指がタッチパネル120から一定の距離に接近したときの位置を含む。例えば、ユーザーの指がタッチパネル120のフラットな表面に接触または接近したとき、タッチ検出部200は、対応する検出部の静電容量の変化に基づきタッチ位置の座標を検出し、同様に、ユーザーの指が立体UI部130に接触または接近すると、立体UI部130に対応する検出部の静電容量が変化し、この静電容量の変化により立体UI部130へのタッチ位置の座標が検出される。タッチ検出部200によってタッチ位置が検出されると、コントローラ150は、ユーザー入力があったと判定し、当該入力に応じた画像制御などの処理を実行する。
【0027】
視線検知部210は、視線検知カメラ140から受け取った画像データを処理し、運転者および/または助手席の同乗者の視線位置または視線方向を検知する。視線検知は、例えば、顔を撮像した画像データから眼球の特徴点を抽出することにより行う。視線検知部210は、ディスプレイ110と運転者の顔との間の相対的な位置関係(例えば、座席の位置情報や人間の標準的な身体的特徴から相対的な位置関係は既知)に基づき、立体UI部130に対する運転者の視線位置または視線方向を算出する。
【0028】
ドライバーモニタリングシステム(DMS)において、運転者と同乗者の双方の視線を検知することが可能な場合、DMSは、ディスプレイ110へ視線を向けている方のアイポイントを検出するようにし、両者が同時に視線を向けている際は、安全性を考慮し運転者の視線検知を優先させる。
【0029】
運転者と同乗者の双方の視線を検知する方法を
図6に示す。
図6(A)、(B)は、上方から見たときのディスプレイ110と、運転者U1および同乗者U2との位置関係を示しており、
図6(A)は、ディスプレイ110の前面にレンチキュラーレンズ112を配置し、
図6(B)は、ディスプレイ110の前面に視差バリア114を配置している。レンチキュラーレンズ112や視差バリア114を用いることで、アイポイントよって表示する映像を分ける構造を持たせ、運転者と同乗者それぞれに二通りの映像出力を提供することができる。図の例では、運転者U1は、「右」で示した映像を見ることができ、同乗者U2は、「左」で示した映像を見ることができる。これにより、運転者、同乗者それぞれに適した3Dアイコンの表示が可能になる。
【0030】
3Dアイコン記憶部220は、予め用意された、奥行き感のある三次元化された3Dアイコンの画像データを記憶する。3Dアイコンの種類、デザイン等は任意であり、これらの3Dアイコンは、立体UI部130の対応する位置に表示される。
図7(A)~(D)は、3Dアイコン132の幾つかの例であり、入力ボタンの機能を象徴するようなデザインを有している。また、3Dアイコン記憶部220は、3Dアイコンの画像データの属性情報として、3Dアイコンの底面部の位置情報(例えば、各頂点やコーナーの座標、基準点または中心点の座標)や3Dアイコンの高さ情報などを記憶する。
【0031】
3Dアイコン角度算出部230は、視線検知部210により検知された視線位置または視線方向に応じて3Dアイコンを表示するときの角度を算出する。これは、
図5(B)の角度変更の処理に対応する。3Dアイコン位置算出部240は、タッチ検出部200により検出されたタッチ位置に応じて3Dアイコンを表示するときの位置の移動量を算出する。これは、
図5(C)の位置変更の処理に対応する。3Dアイコン補正部250は、3Dアイコンの角度や位置を変更したときに、3Dアイコンが立体UI部130の底面からはみ出すか否かを判定し、はみ出す場合には、3Dアイコンのサイズを縮小する処理を行う。3Dアイコン角度算出部230、3Dアイコン位置算出部240、3Dアイコン補正部250の詳細については後述する。
【0032】
3Dアイコン表示部260は、3Dアイコン角度算出部230、3Dアイコン位置算出部240、3Dアイコン補正部250によって処理された3Dアイコンを、立体UI部130の対応する位置に表示する。
【0033】
次に、本実施例の入力表示装置100の動作を
図8のフローを参照して説明する。3Dアイコン表示部260は、立体UI部130に対応する3Dアイコンの画像データを3Dアイコン記憶部220から読み出し、3Dアイコンを立体UI部130の下方に表示する(S100)。例えば、
図5(A)に示すように、立体UI部130には、奥行き感のある円筒状の入力ボタンが表示される。
【0034】
次いで、視線検知部210は、視線検知カメラ140からの撮像データに基づきユーザーの視線位置または視線方向を検知し(S110)、3Dアイコン角度検出部230は、視線検知部210によって検知された視線位置に応じて表示中の3Dアイコンを回転させるための角度を算出し、3Dアイコン表示部260は、算出された角度に応じて3Dアイコンを回転させる(S120)。
【0035】
図9は、3Dアイコン角度算出部230の詳細を説明する図である。
図9(A)は、立体UI部130に表示された3Dアイコン132を正面から見た図、
図9(B)は、ユーザーの視線位置に応じて3Dアイコン132を回転させた図、
図9(C)は、立体UI部130を真横から見た図、
図9(D)は、立体UI部130を真上から見た図を示している。
【0036】
立体UI部130の底面部中央を正面から見たときに、視線位置(アイポイント)Eが上下方向(Y方向)と左右方向(X方向)にそれぞれ何度であるかθ1、θ2を算出する。3Dアイコン表示部260は、算出されたθ1、θ2に応じて、3Dアイコン132を回転させる。つまり、3Dアイコンを左右から見た場合、Y軸を起点に角度θ2だけ3Dアイコン132をユーザーの視線位置Eと反対方向に回転させる。同様に、3Dアイコンを上下から見た場合、X軸を起点に角度θ1だけ3Dアイコン132をユーザーの視線位置Eと反対方向に回転させる。例えば、
図9(C)に示すように、アイポイントEが正面から上側に移動したとき、上側から3Dアイコン132を見ているようにX軸に関して3Dアイコン132をθ1だけ回転させる。また、
図9(D)に示すように、アイポイントEが正面から右側に移動したとき、右側から3Dアイコン132を見ているようにY軸に関して3Dアイコンをθ2だけ回転させる。
【0037】
なお、上記の例では、その都度、算出されたθ1、θ2に基づき3Dアイコンの回転角度を計算するが、これ以外にも、視線方向の角度θ1、θ2と3Dアイコンの回転角との関係を予め規定したルックアップテーブルを用いて、視線方向の角度θ1、θ2に応じて3Dアイコンを回転させるようにしてもよい(例えば、θ1、θ2がX度~Y度のとき、3DアイコンをX度回転させる)。
【0038】
次に、3Dアイコン位置算出部240は、タッチ検出部200によって検出された指が接近する位置に応じて表示中の3Dアイコンの位置を算出し、3Dアイコン表示部260に3Dアイコンの位置を移動させる(S130)。
【0039】
図10は、3Dアイコン位置算出部240の詳細を説明する図である。
図10(A)は、3Dアイコンの移動前の状態を示し、
図10(B)は、3Dアイコンの移動後の状態を示し、
図10(C)は、視線位置と立体UI部へのタッチ位置と3Dアイコンとの位置関係を示す図である。
【0040】
図10(A)に示すように、指Uが立体UI部130の天面に接近または接触したときのタッチ位置の座標を参照し、
図10(B)に示すように、指Uの真下にタッチすべき部分が見えるように3Dアイコンを移動させる。図の例では、ボタンアイコンの突起した部分が指の真下に位置するように3Dアイコンが移動される。
【0041】
3Dアイコンの移動量の計算方法は、次のようにして行われる。3Dアイコン位置算出部240は、予め登録した立体UI部130の高さhと、前述したユーザーの視線位置Eの角度θ(θ1、θ2)と、タッチ検出部200によって検出されたタッチ位置の座標T(横軸方向移動にはx、縦軸方向移動にはyを使用)を取得する。
【0042】
次に、三角関数により、3Dアイコンのタッチすべき部分の移動量d(横方向d1、縦方向d2)を計算する。つまり、タッチ位置の座標Tの視線方向θに3Dアイコンの中心点または基準点が一致するようにx方向の移動量d1、y方向の移動量d2を算出する。3Dアイコン表示部260は、xを起点に横方向に距離d1だけ3Dアイコン132を移動させ、yを起点に縦方向に距離d2だけ3Dアイコン132を移動させる。こうして、ユーザーは、指の真下に3Dアイコン132のタッチすべき部分を見ることができる。
【0043】
なお、移動量d1、d2に関して、立体UI部130の屈折率を予め登録しておき、屈折を考慮して視線位置Eとタッチ位置の座標Tの延長線上に3Dアイコンの中心点または基準点が位置するように3Dアイコン132の移動を補正するようにしてもよい。
【0044】
次に、3Dアイコン補正部250は、視線方向から見た3Dアイコンが立体UI部130からはみ出すか否かを判定し、はみ出す場合には、立体UI部130からはみ出さないように3Dアイコンのサイズを縮小する補正を行う(S140)。
【0045】
図11は、3Dアイコン補正部250の詳細を説明する図である。
図11(A)は、視線位置から見たときに立体UI部130から3Dアイコンがはみ出す状態を示し、
図11(B)は、立体UI部130から3Dアイコンがはみ出さないように3Dアイコンのサイズを縮小した状態を示している。
【0046】
図11(A)に示すように、ユーザーがタッチすべき部分に合わせて3Dアイコン132を移動させただけでは、ユーザーの視線位置Eの視野Fにおいて、3Dアイコン132の一部が立体UI部130の底面部からはみ出したり、側面を覆うように見えてしまうことがある。図中、Pは、3Dアイコンのサイズであり、Hは、立体UI部130からはみ出した部分を示している。
【0047】
3Dアイコン補正部250は、予め登録した立体UI部130の底面部130Aの範囲の座標(x1、y1)~(x2、y2)から外にはみ出ないように、3Dアイコン132のサイズを縦軸と横軸のそれぞれの方向で縮小するように補正する。これにより、縮小された3Dアイコン132Aの全体がユーザーの視野Fから視認できるようにする。また、3Dアイコンの移動量dに応じて、ルックアップテーブルでサイズの変化量(または縮小率)を予め設定しておき、これに従い3Dアイコンのサイズを補正するようにしてもよい。
【0048】
上記実施例では、立体UI部に3Dアイコンを表示することに加えて、視線位置に応じて3Dアイコンを回転させたり、タッチ位置に応じて3Dアイコンを移動させるようにしたが、これらは一つの態様であり、例えば、3Dアイコンの回転や移動をすることなく3Dアイコンを表示させるようにしてもよいし、3Dアイコンの回転のみを行ったり、3Dアイコンの移動のみを行うようにしてもよい。また、
図6(A)、(B)に示すようなディスプレイによって運転者と同乗者の映像を分離する構造では、運転者U1への3Dアイコンを予め決められた角度で表示させ、同乗者U2への3Dアイコンを予め決められた角度で表示させ、運転者U1と同乗者U2の視線位置の検出を省略してもよい。
【0049】
このように本実施例によれば、立体UI部に奥行きを表現した3Dアイコンを表示するようにしたので、ユーザーが立体UI部をタッチするときの触覚と視覚の乖離を低減させ、つまり感覚的なズレを抑制することができる。また、ユーザーの視線位置または視線方向に合わせて3DアイコンをX軸および/またはY軸を起点に視線位置と反対側に回転させることで、触覚と視覚の乖離をさらに低減させることができる。さらに、ユーザーが立体UI部の表面に指を接触または接近させたときに検出されたタッチ位置に応じて3Dアイコンを移動させることで、タッチするときの触覚と視覚の乖離をさらに低減させることができる。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。