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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053752
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】作業機械の自動運転制御システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20240409BHJP
   G06F 9/48 20060101ALI20240409BHJP
   E02F 3/43 20060101ALI20240409BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20240409BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
E02F9/20 Q
G06F9/48 300A
E02F3/43 E
E02F9/22 P
E02F9/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160147
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩飽 晃司
(72)【発明者】
【氏名】伊東 勝道
(72)【発明者】
【氏名】辺見 森象
(72)【発明者】
【氏名】山本 慎二郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】小川 雄一
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003BA03
2D003CA02
2D003DA04
2D003FA02
2D015HA03
(57)【要約】
【課題】連続的にタスクアプリを使用する際でも、全体として不具合なく動作できるような計画生成を可能にする作業機械の自動運転制御システムを提供する。
【解決手段】アクチュエータを動作させるための複数のタスクアプリを実行する場合に、該複数のタスクアプリを実行する順序を設定する順序選択部と、タスクアプリに入力するパラメータを設定するパラメータ設定部と、タスクアプリを実行する順序及びパラメータに基づいて複数のタスクアプリ毎の実行計画を生成する全体計画部と、複数のタスクアプリ毎に実行計画が生成される毎に、該実行計画の内容の少なくとも一部を出力する、共有情報出力部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械を駆動するアクチュエータを自動で制御する作業機械の自動運転制御システムであって、
前記アクチュエータを動作させるための複数のタスクアプリを実行する場合に、該複数のタスクアプリを実行する順序を設定する順序選択部と、
前記タスクアプリに入力するパラメータを設定するパラメータ設定部と、
前記タスクアプリを実行する順序及び前記パラメータに基づいて前記複数のタスクアプリ毎の実行計画を生成する全体計画部と、
前記複数のタスクアプリ毎に実行計画が生成される毎に、該実行計画の内容の少なくとも一部を出力する、共有情報出力部と、を備える、
ことを特徴とする作業機械の自動運転制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械の自動運転制御システムであって、
前記共有情報出力部は、該共有情報出力部が出力する情報を、ネットワークを介して接続された共有情報表示装置に出力する、
ことを特徴とする作業機械の自動運転制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械の自動運転制御システムであって、
前記複数のタスクアプリに対して前記実行計画が生成される毎に、前記共有情報出力部の出力結果を、実行する順序が次に設定された前記タスクアプリである次タスクアプリに入力するパラメータとして設定する情報伝達部をさらに備える、
ことを特徴とする作業機械の自動運転制御システム。
【請求項4】
請求項3に記載の作業機械の自動運転制御システムであって、
前記情報伝達部が前記共有情報出力部の出力結果を前記次タスクアプリに入力するパラメータとして設定する場合に、該出力結果のパラメータ種を、該次タスクアプリに設定されたパラメータ種に変換する入力情報変換部をさらに備える、
ことを特徴とする作業機械の自動運転制御システム。
【請求項5】
請求項4に記載の作業機械の自動運転制御システムであって、
前記共有情報出力部が出力する情報は、前記作業機械の位置情報、動作情報、車体構造情報、及び周辺環境情報のうち少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする作業機械の自動運転制御システム。
【請求項6】
請求項1に記載の作業機械の自動運転制御システムであって、
前記全体計画部が計画した前記複数のタスクアプリ毎の実行計画を、前記順序選択部が設定した実行順序に従って実行する全体実行部をさらに備える、
ことを特徴とする作業機械の自動運転制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械を自動運転する作業機械の自動運転制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械の自動運転システムにおいて、作業目的(以下タスク)毎に車体の動作を事前計画し、そののちに計画に沿って車体のアクチュエータ動作を行う、自動運転建機(以下タスク指令型建機)が提案されている。たとえば特許文献1はショベルの積み込み動作の自動運転制御に関するものである。また、特許文献2及び特許文献3においても、特定のタスクを実行する作業機械においてタスクを自動運転制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-33826号公報
【特許文献2】特開2021-73401号公報
【特許文献3】特開2019-60109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によれば、ダンプへの積み込み作業において、オペレータが放土位置を入力することで、自動で、旋回から放土動作を計画し、車体が計画に沿った動作をおこなうことができる。
【0005】
しかしながら、このようなタスクの事前計画を行い、計画に沿った動作を実行する作業機械の自動運転制御システムにおいて、連続的にタスクが計画・実行される場合、N+1回目のタスク内容はN回目のタスクの実行結果に依存する場合がある。以下では、簡便化のために、上記の計画および実行を行うシステム上の演算部をまとめてタスクアプリと呼称する。
【0006】
たとえば、特許文献1にある積み込み動作タスクアプリを演算する直前には、バケット内に土を格納する動作(以下掘削タスクと呼称)が必ず存在する。このような掘削タスクを自動化した場合、掘削タスクアプリ終了時の車体姿勢(例えばブーム角度、アーム角度、バケット角度)が積み込み動作タスクアプリ開始計画時の車体姿勢と一致している必要がある。仮に、姿勢が異なる場合、一連の計画を行うことができない、あるいは計画をしても、計画動作が不連続となり、実現する術がない。特許文献2及び特許文献3についても同様である。
【0007】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、タスク毎に車体の動作計画と計画に沿った動作を実行する制御システム「タスクアプリ」を自動で実行するように設計された作業機械の一形態「タスク指令型建機」において、連続的にタスクアプリを使用する際でも、全体として不具合なく動作できるような計画生成を可能にする作業機械の制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る作業機械の自動運転制御システムは、アクチュエータを動作させるための複数のタスクアプリを実行する場合に、該複数のタスクアプリを実行する順序を設定する順序選択部と、タスクアプリに入力するパラメータを設定するパラメータ設定部と、タスクアプリを実行する順序及びパラメータに基づいて複数のタスクアプリ毎の実行計画を生成する全体計画部と、複数のタスクアプリ毎に実行計画が生成される毎に、該実行計画の内容の少なくとも一部を出力する、共有情報出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、連続的にタスクアプリを使用する際でも、全体として不具合なく動作できるような計画生成が可能になる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1に係る制御システムを搭載した作業機械1の一例である油圧ショベルの側面図。
図2】タスクアプリの機能の一例を示す機能ブロック図。
図3】作業機械の動作を制御する制御システムの構成を示す機能ブロック図。
図4】実施例1に係る制御システムを用いて実行する処理を示すフローチャート。
図5】制御システムが取り扱う共有情報の種類及びパラメータ値の一例を示す図表。
図6】実施例2に係る制御システムの構成を示す機能ブロック図。
図7】実施例2に係る制御システムを用いて実行する処理を示すフローチャート。
図8】実施例3に係る制御システムの構成を示す機能ブロック図。
図9】実施例3に係る制御システムを用いて実行する処理を示すフローチャート。
図10】実施例4に係る制御システムの構成を示す機能ブロック図。
図11】実施例4に係る制御システムが利用するタスクアプリの機能を示す機能ブロック図。
図12】実施例4に係る制御システムを用いて実行する処理を示すフローチャート。
図13】実施例5に係る制御システムが使用する掘削アプリの機能構成を示すブロック図。
図14】掘削アプリを用いて実行する処理を示すフローチャート。
図15】掘削処理及び掘削アプリに入力するデータ種の具体例を示す図。
図16】実施例6に係る制御システムを搭載した作業機械1の一例である油圧ショベルの側面図。
図17】実施例6に係る制御システムが使用するピック&プレースアプリの機能構成を示すブロック図。
図18】ピック&プレースアプリを用いて実行する処理を示すフローチャート。
図19】実施例7に係る制御システムが使用する面成型アプリの機能構成を示すブロック図。
図20】面成型アプリを用いて実行する処理を示すフローチャート。
図21】実施例7に係る制御システムが使用する土羽打ちアプリの機能構成を示すブロック図。
図22】土羽打ちアプリを用いて実行する処理を示すフローチャート。
図23】実施例8に係る制御システムを搭載した作業機械1の一例である油圧ショベルの側面図。
図24】実施例8に係る制御システムが使用するバケット変更アプリの機能構成を示すブロック図。
図25】バケット変更アプリを用いて実行する処理を示すフローチャート。
図26】制御システムが使用可能なタスクアプリ例、それぞれのタスクアプリに入力されるパラメータ値及びアプリにより実現される動作の一覧。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に従って実施例を説明する。
【0012】
[実施例1]
図1は本発明の実施例1に係る制御システムを搭載した作業機械1の一例である油圧ショベルの斜視図である。油圧ショベル1は、下部走行体1Cと、旋回装置3を介し下部走行体1Cに回動可能なように備え付けられた上部旋回体1Bと、上部旋回体1Bに取り付けられた作業機械1Aとを備えている。作業機械1Aは、上部旋回体1Bに回動可能に取り付けられたブーム7と、ブーム7に回動可能に取り付けられたアーム8と、アーム8に回動可能に取り付けられたバケット9と、バケット9及びアーム8に回動可能に取り付けられたバケットリンク11と、ブーム7及び上部旋回体1Bに接続され、ブーム7と上部旋回体1Bとの間の回動角度を任意に変更可能にするブームシリンダ4と、ブーム7及びアーム8に接続され、ブーム7とアーム8との間の回動角度を任意に変更可能なアームシリンダ5と、アーム8及びバケットリンク11に接続され、バケット9の回動角度を任意に変更可能なバケットシリンダ6を有する。下部走行体1Cは、走行モータ2により駆動され、車体を任意位置へ移動させる。旋回装置3は下部走行体1Cと上部旋回体1Bとの間の回動角度を任意に変更する旋回モータによって構成される。上部旋回体1B上には油圧ショベル1の各種制御を行うコントローラ10が設置されている。
【0013】
コントローラ10は、例えばCPU及びプロセッサを有するコンピュータとして構成される。そして、メモリに格納された各種タスクアプリ及びプログラムをCPUが実行することによって以下に説明する各種の機能を発揮する。なお、コントローラ10は本実施例では上部旋回体1B上に配置されているが、アクチュエータへの動作指示が可能であれば、油圧ショベル1上に設置せずに、コントローラ10に通信機能をさらに備えさせ、遠隔地から無線を介して制御を行ってもよい。
【0014】
図2はコントローラ10に搭載されたタスクアプリ200の機能の一例を示す機能ブロック図である。タスクアプリ200は、タスクアプリ200を実行するためのパラメータ(図5に示す)が入力される入力部と、入力されたパラメータに応じてアプリ固有の動作計画を生成する計画部202と、生成された動作計画のうち、アクチュエータの動作結果である位置データ等を保存する保存部203と、を有する。なお、アクチュエータの位置データとは、ブームシリンダ4、アームシリンダ5、及びバケットシリンダ6の変位情報である。
【0015】
図3はコントローラ10に実装される、作業機械の動作を制御する制御システム300の構成の一例を示す機能ブロック図である。制御システム300は、パラメータ設定部301、順序選択部302、全体計画部303、共有情報出力部304、及びタスクアプリ記憶部305を有する。また、共有情報出力部304は、ネットワークを介して外部に設置された共有情報表示装置306に接続されている。
【0016】
パラメータ設定部301は、各タスクアプリに入力されるべきパラメータ値を設定する。このパラメータ値は、タスクアプリの入力部201に入力された入力変数(パラメータ)に対応する変数として格納される。順序選択部302は、作業機械が実行するべき作業を実行可能なタスクアプリをタスクアプリ記憶部305から検索し、実行する順序を設定する。全体計画部303は、順序選択部302で選択されたタスク順序とパラメータ設定部301で設定された変数を用いて、各タスクアプリの計画部202を実行する。共有情報出力部304は、計画部202によって演算された結果が保存された保存部203から、アクチュエータの動作結果である位置データの最終値を抽出し、外部の共有情報表示装置306に情報を表示する。共有情報表示装置306は、例えば作業機械のオペレータが情報を視認・把握できるように、オペレータ室等に設置されるモニタである。
【0017】
図4は、実施例1に係る制御システムを用いて実行する処理を示すフローチャートである。まず、順序選択部302にてタスク順序が選択される(ステップS401)。順序選択部302で選択されたタスクが一つ目の場合、パラメータ設定部301でパラメータが設定されるのを待つ(ステップS402、ステップS403)。選択されたタスクが二番目以降の場合、共有情報出力部304にて前タスクの保存部203を参照し、その時系列データのうちアクチュエータ位置の最終データを抽出し、共有情報表示装置306に姿勢データを表示する(ステップS407)。パラメータ設定部301にパラメータ値が入力された場合、全体計画部303が該当するタスクアプリの入力部201にパラメータ設定部301で設定されたパラメータ値を入力する(ステップS404)。全体計画部303は各タスクアプリの計画部202を実行し、動作計画を生成する(ステップS405)。計画部202で演算された計画は保存部203に保存される(ステップS406)。
【0018】
なお、パラメータ設定部301や順序選択部302にパラメータ値及び順序を選択・設定するのは、システムでも、HMI(Human Machine Interface)を介した人でもよい。
【0019】
また、各タスクアプリに入力されるパラメータ種は、そのタスクアプリによって実現される作業機械の動作の種類や、その動作に必要な情報によって適宜選択されるが、例えば図5に示すようなものが挙げられる。
【0020】
以上説明した本実施例によれば、連続的にタスクを設定する場合において、2つ目以降のタスクを入力する際に、前回タスク終了時の情報が利用できるため、タスクアプリ実施間の車体動作を滑らかに維持し続けることができる。
【0021】
[実施例2]
続いて、実施例2に係る制御システムについて、図6及び図7を用いて説明する。実施例2に係る制御システム300が実施例1と異なる点は、共有情報出力部304が、全体計画部303が演算した動作計画を、共有情報出力部304ではなく、次情報伝達部601に出力する点である。なお、以下では、すでに説明した構成・処理については同一の符号を付し、説明を省略する。実施例3以降も同様とする。
【0022】
次情報伝達部601は、他の機能部と同様に制御システム300に搭載された不図示のCPUにより実現される機能部であり、共有情報出力部304より出力された情報をパラメータ設定部301に設定する機能を有する。具体的には、例えば実行するタスクの順序を順序選択部302で図6のようにタスクA、タスクA’、タスクB、のように設定したとする。そして、パラメータ設定部301においてまずタスクAを実行するタスクアプリの入力部201に所定のパラメータ値を設定する。すると、全体計画部303において、タスクアプリの計画部202が実行されることによりタスクAを実行した場合の結果(例えばアクチュエータの位置情報)が演算され、保存部203に保存される。共有情報出力部304は、保存部203に保存された結果を、次情報伝達部601に送信する。そして、次情報伝達部601は、この出力結果(例えばアクチュエータの位置情報)を、タスクAの次に実行されるタスクA’を実行するタスクアプリの入力部201に入力する。同様に、タスクA’の実行結果(例えばアクチュエータの位置情報)は、タスクBを実行するタスクアプリの入力部201に入力される。
【0023】
図7は、実施例2に係る制御システムが実行する処理を示すフローチャートである。図7に示す、実施例2に係る制御システムが実行する処理は、実施例1と比較して、ステップS402において選択されたタスクの順序が1番目でないときの処理が異なる。選択されたタスクの順序が2番目以降の場合、次情報伝達部601は、共有情報出力部304から出力された、一つ前に演算されたタスクアプリの保存部203に保存されている出力結果を受け取り、次のタスクアプリの入力部201に入力されるパラメータ値としてパラメータ設定部301に設定する(ステップS701)。その後は実施例1と同様である。
【0024】
以上説明した本実施例によれば、次情報伝達部601によって次に実行されるタスクアプリの入力部201にパラメータ値が自動的に設定されるため、実行順序が移行する毎にパラメータ設定部301でパラメータ値を手動で入力する手間を省略することが可能になり、処理にかかる時間や労力を節約できる。
【0025】
[実施例3]
次に、実施例3に係る制御システムについて図8及び図9を用いて説明する。実施例3に係る制御システム300は、図6に示す実施例2に係る制御システム300に、入力情報変換部801をさらに加えた構成を有している。
【0026】
入力情報変換部801は、他の機能部と同様に制御システム300に搭載された不図示のCPUにより実現される機能部であり、次情報伝達部601より出力されたパラメータ値を、次に実行されるタスクアプリに設定された適切な変数に変換する機能を有する。これはすなわち、タスクアプリの計画実行の結果出力される情報としては、次のタスクアプリに入力されるパラメータ値の場合には例えばアーム先端の三次元座標のほうが簡便であるが、共有情報として保存されるべきなのは汎用性のあるブーム、アーム、バケットの関節角のほうがよい、といった場合があるからである。
【0027】
図9は、実施例3に係る制御システム300が実行する処理を示すフローチャートである。図9に示すフローチャートは、図7に示される実施例3におけるフローチャートにおいて、ステップS701に代わり、次情報伝達部より出力された情報を入力情報変換部801で適切な情報に変換し、パラメータ設定部に格納する処理を実行する(ステップS901)。
【0028】
上記で説明した実施例によれば、タスクアプリの入力部201で必要な情報の種類と、共有すべき姿勢情報とが分離でき、タスクアプリへの入力変数を任意に設定できるようになる。
【0029】
[実施例4]
続いて、実施例4に係る制御システム300について、図10-12を用いて説明する。図10に示す実施例4に係る制御システム300は、図3に示す実施例1の制御システム300において、さらに全体実行部1001を加えた構成を有する。また、本実施例において使用されるタスクアプリ200は、図11に示すように、図2に示す実施例1のタスクアプリ200に、さらに実行部1101を加えた機能構成を備える。
【0030】
全体実行部1001は、他の機能部と同様に制御システム300に搭載された不図示のCPUにより実現される機能部であり、すでに説明した、全体計画部303によって作成された計画に従って、タスクアプリの実行部1101を実行することによって実際にタスクを実行する機能を有する。また、タスクアプリ200の実行部1101は、保存部203に保存された、計画部202によって設定された計画を実際に実行させ、アクチュエータを作動させる。
【0031】
図12は、本実施例における全体実行部1001が実行する処理を示すフローチャートである。全体計画部303によって動作計画の導出が完了すると、全体実行部1001が呼び出される(ステップS1201)。全体実行部1001は、順序選択部302で設定したタスクアプリの順序に従い、各タスクアプリの実行部1101を実行する(ステップS1202)。そして全体実行部1001は最後に、ステップS1202において実行したタスクが最後か否かを判定し、最後に達した場合、フローを終了する(ステップS1203)。この際、タスクアプリの実行部1101は、保存部203に保存された時系列のアクチュエータ動作計画に従い、アクチュエータを制御する。
【0032】
以上説明した本実施例によれば、実施例1-3で立案した計画を実際に実行することができる。
【0033】
[実施例5]
次に、本発明の実施例5に係る制御システム300について図13-15を用いて説明する。
実施例5に係る制御システム300のシステム構成については図10に示す実施例4と同様である。実施例5に係る制御システムは、タスクアプリとして、油圧ショベルのバケットを用いて地面を掘削する動作を制御する掘削アプリを使用するものである。
【0034】
図13は掘削アプリの有する機能構成ブロック図の一例であり、図14は、本実施例において制御システム300が実行する処理を示すフローチャートである。まず開始位置が次情報伝達部601より取得したアクチュエータ位置をもとに計算した位置(現在位置と呼称)と異なる場合、現在位置と開始位置の間で初期位置に移動する動作を最初に生成する(ステップS1401)。この工程は以後の実施例においても同様に実行される。
【0035】
次に、次情報伝達部601から自動的に入力された情報以外に、掘削動作を実施するために必須の情報があれば、入力部201から入力する(ステップS1402)。連続的に呼び出された掘削アプリは、計画部202を実行し、入力された情報に基づいて掘削軌跡を導出する(ステップS1403)。そして、導出した掘削軌跡を実現するアクチュエータの動作計画を導出し、保存部203に保存する(ステップS1404、S1405)。最後に、次情報伝達部601より得られた掘削範囲の地形と掘削軌跡をもとに、アプリ実行完了後の掘削範囲の地形を予測し、共有情報出力部304に出力するとともに、保存部203に保存する(ステップS1406)。
【0036】
なお、例えば、アクチュエータの最終位置を演算する方法は、掘削軌跡の最終位置とアクチュエータの接続位置、関節配置、リンクの幾何情報をもとに、演算する。一方の掘削範囲の地形は、簡素には次情報伝達部より受け取った地形データから、掘削軌跡のバケットが通過した場所を減ずるなどして求めればよい。あるいは、高度には土質より、土の力学的特性を考慮し、シミュレーション的に変化形状を求めてもよい。
【0037】
図15に、掘削処理及び掘削アプリに入力するデータ種の例を示す。入力するデータが掘削する深さと掘削の開始位置/終了位置である場合には、図15(a)に示すように、入力部201に入力されるパラメータは三次元座標が設定される。入力するデータが掘削の開始位置と掘削範囲の場合には、同様に、図15(b)に示すようにそれぞれ三次元座標が設定される。入力するデータが掘削の開始位置と掘削する土量の場合には、図15(c)に示すようにそれぞれ三次元座標と土の重量(t)が設定される。入力するデータが掘削の開始位置と、掘削対象の土量及び土質の場合には、図15(d)に示すようにそれぞれ三次元座標、土の重量、及び土質が柔らかいか硬いか、あるいは土の種類といった定性的パラメータや、土粒子の平均径等の定量的パラメータが設定される。
【0038】
以上説明した本実施例によれば、掘削アプリを連続的に使用する場合において、掘削アプリの二回目以降に関して掘削範囲の地形等が自動で入力される。
【0039】
[実施例6]
次に、本発明の実施例6に係る制御システムについて図16-18を用いて説明する。
実施例6に係る制御システム300の構成は実施例4及び5と同様である。実施例6においては、その制御する対象である作業機械が、図16に示すように、図1に示すショベルカーから、バケット9とバケットシリンダ6に代えて、把持装置(フォーク)12及び把持装置シリンダ13を配した構成を有するショベルカーである点が異なる。また、使用するタスクアプリはピック&プレースアプリである。ピック&プレースアプリは、フォークによって物体を挟み込み、所望の位置まで移動させる動作を制御するアプリである。
【0040】
図17は、ピック&プレースアプリの機能構成を示すブロック図の一例であり、図18は、該アプリによって実行される処理を示すフローチャートである。ピック&プレースアプリは入力部201にて、開始位置、移動完了位置姿勢、把持位置のうち、移動完了位置姿勢を含めたすくなくとも一つ以上のデータが入力される(図18中ステップS1801)。
【0041】
次に、入力されたデータと、次情報伝達部601から取得したアクチュエータ位置と対象物・位置姿勢をもとに、計画部202にて、ブーム7及びアーム8の先端軌跡と把持装置の開閉度合いの動作計画を導出する(ステップS1802)。一方、計画部202にて演算されたアーム先端の軌跡と把持装置の開閉度合いの動作計画をもとにブームシリンダ4、アームシリンダ5、把持装置シリンダ13の動作計画が導出され、保存部203に保存される(ステップS1803及びS1804)。また計画部202では、アーム先端軌跡より、ブームシリンダ4およびアームシリンダ5の最終位置を演算し、また入力部201より得た移動完了位置姿勢を、共有情報出力部304へ出力するとともに保存部203に保存する(ステップS1805)。
【0042】
なお、例えば、アクチュエータの最終位置を演算する方法は、掘削軌跡の最終位置とアクチュエータの接続位置、関節配置、リンクの幾何情報をもとに、演算する。また、把持装置12を駆動させるアクチュエータは油圧モータや電動モータ、電動シリンダなど、開閉度合いを制御できる把持装置12とアクチュエータの組み合わせであればその形態は問わない。
【0043】
一方の、完了位置姿勢は本実施例では入力値を用いているが、把持位置や最初の対象物の位置姿勢と把持装置12の関係をもとにシミュレーションし、最終位置を求めてもよい。
【0044】
以上説明した本実施例によれば、ピック&プレースアプリを連続的に使用する場合において、二回目以降の使用に関して対象物の位置姿勢の初期位置が自動で入力される。
【0045】
[実施例7]
次に、本発明の実施例7に係る制御システム300について、図19-22を用いて説明する。
実施例7に係る制御システム300についても、そのシステム構成は実施例4-6と同様である。また、制御対象の作業機械は、図1に示す構成を有するものである。実施例7に係る制御システム300は、タスクアプリとして面成型アプリ及び土羽打ちアプリを使用する。ここで、面成型アプリとは、対象領域を指定された面形状に(指定された面圧で)成形する面成型動作を実行させるアプリであり、土羽打ちアプリとは、指定された面形領域上を指定回数バケットでたたきつける土羽打ち動作を実行させるアプリである。
【0046】
図19は面成型アプリの機能構成を示すブロック図の一例であり、図20は、面成型アプリによって実行される処理を示すフローチャートである。面成型アプリを使用する場合は、入力部201にて、開始位置、対象面のうち、対象面を含めた少なくとも一つ以上のデータが入力される(ステップS2001)。計画部202は、入力されたデータと、次情報伝達部601から取得したアクチュエータ位置をもとに、バケット9の任意面が目標面と一致するようにブーム7、アーム8、バケット9の動作計画を演算する(ステップS2002)。また、計画部202にてブーム7、アーム8、バケット9の動作計画をもとにブームシリンダ4、アームシリンダ5、バケットシリンダ6の動作計画が演算され、保存部203に保存される(ステップS2003及びS2004)。
【0047】
また計画部202は、ブームシリンダ4、アームシリンダ5、バケットシリンダ6の動作計画から導出した最終位置と、面へ与えることのできる圧力(以下面圧)を演算し、共有情報出力部304へ出力するとともに保存部203に保存する(S2005)。
【0048】
なお、例えば、アクチュエータの最終位置を演算する方法は、掘削軌跡の最終位置とアクチュエータの接続位置、関節配置、リンクの幾何情報をもとに、演算する。また、面圧の演算方法は、簡素には、各リンクの姿勢とアクチュエータの最大直動力をもとに時系列毎に静的に求めてもよいし、各シリンダやリンクの動作計画をもとに位置、速度を導出し、動力学的に求めてもよい。
【0049】
本実施例においては、上記のようにして面成型アプリが実行された後に、土羽打ちアプリが実行される。図21は、土羽打ちアプリの有する機能構成図の一例であり、図22は、土羽打ちアプリによって実行される処理を示すフローチャートである。土羽打ちアプリを使用する場合には、入力部201にて、開始位置、対象面、面の転圧力のうち、対象面と面の転圧力のデータが入力される(ステップS2201)。入力された転圧力とデータと次情報伝達部601から取得した面圧をもとに現在面圧と土羽打ち回数と土羽打ち後面圧の関係を表した予め定められたマップなどから、土羽打ち回数を導出する(ステップS2202)。このマップは、例えば面圧を10Pa→20Paに上昇させるにはバケットを3回叩き付ける必要がある、等の情報を記憶するものである。この情報は、シミュレーションによって得ても、経験則的に得てもよい。得られた土羽打ち回数と位置をもとに、ブーム7、アーム8、バケット9の動作計画を演算する(ステップS2203及びS2204)。また、計画部202にてブーム7、アーム8、バケット9の動作計画をもとにブームシリンダ4、アームシリンダ5、バケットシリンダ6の動作計画が演算され、保存部203に保存される(ステップS2205)。
【0050】
また、計画部202では、ブームシリンダ4、アームシリンダ5、バケットシリンダ6の動作計画から導出した最終位置と、入力部にて入力された転圧力を、共有情報出力部304へ出力するとともに保存部203に保存する(ステップS2206)。
【0051】
なお、例えば、アクチュエータの最終位置を演算する方法は、掘削軌跡の最終位置とアクチュエータの接続位置、関節配置、リンクの幾何情報をもとに、演算する。また、共有情報出力部304に出力する面圧は、上記の予め定められたマップをもとに導出してもよい。
【0052】
上記説明した本実施例によれば、面成型アプリと土羽打ちアプリを連続的に使用する際に、面成型アプリ実行完了後の面圧が自動で入力される。
【0053】
[実施例8]
最後に、本発明の実施例8に係る制御システム300について図23-25を用いて説明する。
実施例8に係る制御システム300は、そのシステム構成については実施例4-7と同様である。本実施例に係る制御システム300においては、実行するタスクアプリとしてバケット変更アプリを使用する。また、制御対象の作業機械としては、図23に示すように、図1に示すショベルカーにおいて、バケット9とアーム8との間に、バケット9を交換可能なバケット交換装置14と付け外し用アクチュエータ15を備えた構成を有する油圧ショベルが採用される。
【0054】
図24は、バケット交換アプリの機能構成を示すブロック図の一例であり、図25は、バケット交換アプリによって実行される処理を示すフローチャートである。
バケット交換アプリを使用する際には、入力部201に、開始位置、変更バケット情報が入力される(ステップS2501)。ブーム7およびアーム8は入力された変更バケット情報と紐づいて予め定められた取り付け用動作軌跡と、次情報伝達部601から取得したバケット種類と紐づいて予め定められた取り外し用動作軌跡をもとに、計画部202にて、ブーム7、アーム8、バケット9、付け外し用アクチュエータ15の動作計画を演算する(ステップS2502)。また、計画部202にてブーム7、アーム8、バケット9の動作計画をもとにブームシリンダ4、アームシリンダ5、バケットシリンダ6の動作計画が演算され、付け外し用アクチュエータ15の動作計画とともに保存部203に保存される(ステップS2503及びS2504)。
【0055】
また計画部202では、入力部201で入力された変更バケット情報を、共有情報出力部304へ出力し、保存部203に保存する(ステップS2505)。
【0056】
なお、例えば、アクチュエータの最終位置を演算する方法は、掘削軌跡の最終位置とアクチュエータの接続位置、関節配置、リンクの幾何情報をもとに、演算する。また、変更バケット情報は取付動作軌跡と取り外し動作軌跡が定まる情報があればなんでもよく、ハード固有番号や種類などであってもよい。
【0057】
以上説明した本実施例においては、バケット交換動作を頻繁に使用する際に、交換前のバケット情報が自動で入力される。
【0058】
以上、具体的なタスクアプリを使用するいくつかの実施例について説明した。しかし、本発明においては、上記で説明したタスクアプリの他、図26に示すようなタスクアプリについても採用可能である。
【0059】
以上説明した本発明の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)作業機械を駆動するアクチュエータを自動で制御する作業機械の制御システムであって、アクチュエータを動作させるための複数のタスクアプリを実行する場合に、該複数のタスクアプリを実行する順序を設定する順序選択部と、タスクアプリに入力するパラメータを設定するパラメータ設定部と、タスクアプリを実行する順序及びパラメータに基づいて複数のタスクアプリ毎の実行計画を生成する全体計画部と、複数のタスクアプリ毎に実行計画が生成される毎に、該実行計画の内容の少なくとも一部を出力する、共有情報出力部と、を備える。
【0060】
上記構成によれば、順序選択とパラメータ設定が完了されたタスクアプリの最終出力を次のタスクアプリのパラメータ入力に利用できるため、タスクアプリ実行間の車体動作を滑らかに維持することができる。
【0061】
(2)共有情報出力部は、該共有情報出力部が出力する情報を、ネットワークを介して接続された共有情報表示装置に出力する。これにより、作業者がタスクアプリの出力結果を視覚的に把握することが可能になり、システムの実施をより簡便かつ迅速に行うことが可能になる。
【0062】
(3)複数のタスクアプリに対して実行計画が生成される毎に、共有情報出力部の出力結果を、実行する順序が次に設定されたタスクアプリである次タスクアプリに入力するパラメータとして設定する情報伝達部をさらに備える。これにより、タスクアプリの実行移行時にパラメータが自動的に入力されることになり、作業者が手動で入力する手間を削減できる。
【0063】
(4)情報伝達部が共有情報出力部の出力結果を次タスクアプリに入力するパラメータとして設定する場合に、該出力結果のパラメータ種を、該次タスクアプリに設定されたパラメータ種に変換する入力情報変換部をさらに備える。これにより、タスク入力部の入力情報と共有情報の入力情報を異なる種類にできるため、人の手による入力とシステムからの入力双方を任意に設定することが可能になる。
【0064】
(5)共有情報出力部が出力する情報は、作業機械の位置情報、動作情報、車体構造情報、及び周辺環境情報のうち少なくとも1つを含む。これにより、出力結果として作業機械のタスクに適した複数の情報を含むため、よりタスクアプリに適した入力情報を提供できる。
【0065】
(6)全体計画部が計画した複数のタスクアプリ毎の実行計画を、順序選択部が設定した実行順序に従って実行する全体実行部をさらに備える。これにより、計画に即した動作を実現できる作業機械の制御システムを提供できる。
【0066】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、上記の実施例は本発明に対する理解を助けるために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 作業機械、200 タスクアプリ、300 制御システム、301 パラメータ設定部、302 順序選択部、303 全体計画部、304 共有情報出力部、306 共有情報表示装置、601 次情報伝達部、801 入力情報変換部、1001 全体実行部
図1
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