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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055514
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】半導体素子の積層構造体
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20240411BHJP
   H01L 23/34 20060101ALI20240411BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L25/08 Y
H01L23/34 C
H01L23/36 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162513
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 晃司
(72)【発明者】
【氏名】有松 公治
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BB11
5F136DA14
5F136DA16
5F136DA22
5F136DA27
(57)【要約】
【課題】より簡単な構成で、圧接型の半導体素子の破損時に生じる飛散物から周辺機器を保護できる半導体素子の積層構造体を提供する。
【解決手段】第1ヒートシンクと、第2ヒートシンクと、第1ヒートシンクと第2ヒートシンクとの間に設けられた圧接型の半導体素子と、第1ヒートシンクと半導体素子との間に設けられた第1シール部材と、第2ヒートシンクと半導体素子との間に設けられた第2シール部材と、を備え、半導体素子は、パッケージ部を有し、パッケージ部は、第1電極板と、第2電極板と、第1電極板の外周を囲む第1外周部と、第2電極板の外周を囲む第2外周部と、第1外周部と第2外周部との間に設けられた外囲器と、を有し、第1シール部材は、第1ヒートシンクと第1外周部との間に設けられ、第2シール部材は、第2ヒートシンクと第2外周部との間に設けられる半導体素子の積層構造体が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ヒートシンクと、
前記第1ヒートシンクと離れて配置された第2ヒートシンクと、
前記第1ヒートシンクと前記第2ヒートシンクとの間に設けられた圧接型の半導体素子と、
前記第1ヒートシンクと前記半導体素子との間に設けられた第1シール部材と、
前記第2ヒートシンクと前記半導体素子との間に設けられた第2シール部材と、
を備え、
前記半導体素子は、パッケージ部と、前記パッケージ部の内部に設けられた半導体チップと、を有し、
前記パッケージ部は、
前記第1ヒートシンクと接触する第1電極板と、
前記第2ヒートシンクと接触する第2電極板と、
前記第1ヒートシンクと前記第2ヒートシンクと前記半導体素子とが並ぶ積層方向と直交する方向において前記第1電極板の外周を囲むとともに、前記第1電極板が前記第1ヒートシンクに接触した状態において前記第1ヒートシンクから前記積層方向に離れるように設けられた第1外周部と、
前記積層方向と直交する方向において前記第2電極板の外周を囲むとともに、前記第2電極板が前記第2ヒートシンクに接触した状態において前記第2ヒートシンクから前記積層方向に離れるように設けられた第2外周部と、
前記第1外周部と前記第2外周部との間に設けられ、前記第1電極板、前記第2電極板、前記第1外周部、及び前記第2外周部とともに密閉した空間を形成する絶縁性の外囲器と、
を有し、
前記第1シール部材は、前記第1電極板の外周を囲み、前記第1ヒートシンクと前記第1外周部とに挟まれるように、前記第1ヒートシンクと前記第1外周部との間に設けられ、
前記第2シール部材は、前記第2電極板の外周を囲み、前記第2ヒートシンクと前記第2外周部とに挟まれるように、前記第2ヒートシンクと前記第2外周部との間に設けられる半導体素子の積層構造体。
【請求項2】
前記第1シール部材は、前記第1外周部の外縁に沿うように設けられ、
前記第2シール部材は、前記第2外周部の外縁に沿うように設けられる請求項1記載の半導体素子の積層構造体。
【請求項3】
前記第1シール部材は、前記積層方向と直交する方向において、前記第1電極板との間に隙間を空けて配置され、
前記第2シール部材は、前記積層方向と直交する方向において、前記第2電極板との間に隙間を空けて配置される請求項2記載の半導体素子の積層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体素子の積層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
一対のヒートシンクと、一対のヒートシンクの間に設けられた圧接型の半導体素子と、を備えた半導体素子の積層構造体がある。一対のヒートシンクは、半導体素子を挟むように半導体素子の両側に設けられることにより、半導体素子の放熱を行う。こうした積層構造体は、例えば、比較的大きな電力を扱う電力変換装置などに用いられている。
【0003】
圧接型の半導体素子は、パッケージ部と、パッケージ部の内部に設けられた半導体チップと、を有する。パッケージ部は、一対の電極板と、一対の電極板の間の空間を囲む絶縁性の外囲器と、を有する。半導体素子は、一対の電極板を一対のヒートシンクで挟んだ状態で積層される。
【0004】
このような圧接型の半導体素子では、半導体チップに短絡故障などが発生した場合に、パッケージ部の内圧が上昇してパッケージ部が膨らみ、パッケージ部が破損してしまう可能性がある。そして、このように内圧の上昇にともなってパッケージ部が破損してしまうと、パッケージ部の破損個所から素子の一部が飛散物となって飛散し、周辺機器へ二次被害を与えてしまう可能性がある。
【0005】
このため、半導体素子の周囲をカバーで覆うことにより、パッケージ部の破損時に生じる飛散物から周辺機器を保護することが提案されている。パッケージ部の破損時に生じる飛散物は、一対のヒートシンクで押さえられた方向には飛散し難く、一対のヒートシンクによって押さえられていない方向に飛散する可能性が高い。すなわち、パッケージ部の破損時に生じる飛散物は、一対のヒートシンクと半導体素子との積層方向と直交する方向に飛散する可能性が高い。一方で、パッケージ部の破損時に生じる飛散物は、積層方向と直交するどの方向に飛散するかは分からない。従って、カバーは、パッケージ部の積層方向と直交する方向の全周を囲むように配置する必要がある。
【0006】
しかしながら、上記のように半導体素子の周囲をカバーで覆う構成では、カバーの追加による費用の増加や外径寸法の増加などが懸念される。このため、圧接型の半導体素子を用いた半導体素子の積層構造体では、より簡単な構成で、圧接型の半導体素子の破損時に生じる飛散物から周辺機器を保護できるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-47591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態は、より簡単な構成で、圧接型の半導体素子の破損時に生じる飛散物から周辺機器を保護できる半導体素子の積層構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態によれば、第1ヒートシンクと、前記第1ヒートシンクと離れて配置された第2ヒートシンクと、前記第1ヒートシンクと前記第2ヒートシンクとの間に設けられた圧接型の半導体素子と、前記第1ヒートシンクと前記半導体素子との間に設けられた第1シール部材と、前記第2ヒートシンクと前記半導体素子との間に設けられた第2シール部材と、を備え、前記半導体素子は、パッケージ部と、前記パッケージ部の内部に設けられた半導体チップと、を有し、前記パッケージ部は、前記第1ヒートシンクと接触する第1電極板と、前記第2ヒートシンクと接触する第2電極板と、前記第1ヒートシンクと前記第2ヒートシンクと前記半導体素子とが並ぶ積層方向と直交する方向において前記第1電極板の外周を囲むとともに、前記第1電極板が前記第1ヒートシンクに接触した状態において前記第1ヒートシンクから前記積層方向に離れるように設けられた第1外周部と、前記積層方向と直交する方向において前記第2電極板の外周を囲むとともに、前記第2電極板が前記第2ヒートシンクに接触した状態において前記第2ヒートシンクから前記積層方向に離れるように設けられた第2外周部と、前記第1外周部と前記第2外周部との間に設けられ、前記第1電極板、前記第2電極板、前記第1外周部、及び前記第2外周部とともに密閉した空間を形成する絶縁性の外囲器と、を有し、前記第1シール部材は、前記第1電極板の外周を囲み、前記第1ヒートシンクと前記第1外周部とに挟まれるように、前記第1ヒートシンクと前記第1外周部との間に設けられ、前記第2シール部材は、前記第2電極板の外周を囲み、前記第2ヒートシンクと前記第2外周部とに挟まれるように、前記第2ヒートシンクと前記第2外周部との間に設けられる半導体素子の積層構造体が提供される。
【発明の効果】
【0010】
より簡単な構成で、圧接型の半導体素子の破損時に生じる飛散物から周辺機器を保護できる半導体素子の積層構造体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(a)及び図1(b)は、実施形態に係る半導体素子の積層構造体を模式的に表す正面図及び断面図である。
図2図2(a)及び図2(b)は、半導体素子を模式的に表す平面図および一部断面を有する側面図である。
【0012】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0013】
図1(a)及び図1(b)は、実施形態に係る半導体素子の積層構造体を模式的に表す正面図及び断面図である。
図1(b)は、図1(a)のA1-A2線断面を模式的に表す。
図1(a)及び図1(b)に表したように、半導体素子の積層構造体10は、第1ヒートシンク11と、第2ヒートシンク12と、半導体素子14と、第1シール部材21と、第2シール部材22と、を備える。なお、図1(a)では、便宜的に、第1シール部材21及び第2シール部材22を断面で表している。
【0014】
第2ヒートシンク12は、第1ヒートシンク11と離れて配置される。半導体素子14は、第1ヒートシンク11と第2ヒートシンク12との間に設けられる。半導体素子14は、圧接型の半導体素子である。
【0015】
第1ヒートシンク11及び第2ヒートシンク12は、間に設けられた半導体素子14と接触し、半導体素子14と熱的に結合することにより、半導体素子14の放熱を行う。また、第1ヒートシンク11及び第2ヒートシンク12は、例えば、半導体素子14と接触することにより、半導体素子14と電気的に接続される。これにより、第1ヒートシンク11及び第2ヒートシンク12は、半導体素子14の放熱に用いられるとともに、半導体素子14の電気的な接続にも用いられる。第1ヒートシンク11及び第2ヒートシンク12には、例えば、高い熱伝導率と高い導電性とを有する金属材料などが用いられる。
【0016】
第1シール部材21は、第1ヒートシンク11と半導体素子14との間に設けられる。第2シール部材22は、第2ヒートシンク12と半導体素子14との間に設けられる。
【0017】
積層構造体10は、例えば、比較的大きな電力を扱う電力変換装置などに用いられる。但し、積層構造体10の用途は、これに限定されるものではない。積層構造体10の用途は、第1ヒートシンク11と第2ヒートシンク12と圧接型の半導体素子14とを積層して使用する必要のある任意の用途でよい。
【0018】
積層構造体10は、例えば、複数のヒートシンクと、複数の半導体素子14と、を備えてもよい。複数の半導体素子14は、複数のヒートシンクのそれぞれの間に設けられる。換言すれば、複数のヒートシンク及び複数の半導体素子14は、交互に積層して設けられる。この場合、複数のヒートシンクの数は、複数の半導体素子14の数よりも1つ多くなる。このように、積層構造体10に設けられる半導体素子14の数は、1つに限ることなく、複数でもよい。積層構造体10の構成は、2つのヒートシンク(第1ヒートシンク11及び第2ヒートシンク12)と、1つの半導体素子14と、を少なくとも有する任意の構成でよい。
【0019】
図2(a)及び図2(b)は、半導体素子を模式的に表す平面図および一部断面を有する側面図である。
図2(a)及び図2(b)に表したように、圧接型の半導体素子14は、パッケージ部30と、パッケージ部30の内部に設けられた半導体チップ32と、を有する。パッケージ部30は、例えば、第1電極板41と、第2電極板42と、第1外周部51と、第2外周部52と、外囲器55と、を有する。
【0020】
第1電極板41は、第1ヒートシンク11と接触する。第1電極板41は、例えば、円形の板状体である。第2電極板42は、第2ヒートシンク12と接触する。第2電極板42は、例えば、第1電極板41とほぼ平行に設けられ、第1電極板41とほぼ同一形状の円形の板状体である。
【0021】
半導体素子14は、例えば、円板状である。半導体素子14を上方から見た形状は、例えば、円形である。但し、半導体素子14の形状は、これに限ることなく、任意の形状でよい。半導体素子14を上方から見た形状は、例えば、多角形状などでもよい。第1電極板41及び第2電極板42などの半導体素子14の各部の形状は、任意の形状でよい。
【0022】
半導体チップ32は、例えば、ダイオードなどの2端子の素子である。半導体チップ32は、例えば、サイリスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチング素子などでもよい。半導体チップ32は、例えば、一対の主端子と制御端子とを有する3端子の素子などでもよい。
【0023】
半導体チップ32は、第1電極板41と第2電極板42との間に設けられている。半導体チップ32の一方の主端子は、第1電極板41と対向する面に設けられる。半導体チップ32の他方の主端子は、第2電極板42と対向する面に設けられる。
【0024】
第1電極板41は、半導体チップ32が設けられている側に、凸部を有する。第1電極板41は、この凸部を介して半導体チップ32と電気的に接続される。半導体チップ32の一方の主端子は、第1電極板41の凸部を介して第1電極板41と電気的に接続される。半導体チップ32の他方の主端子は、第2電極板42と電気的に接続される。これにより、第1電極板41は、半導体素子14の一方の主端子となり、第2電極板42は、半導体素子14の他方の主端子となる。第1電極板41及び第2電極板42は、例えば、高導電率かつ高熱伝導率を有する金属材料によって形成される。金属材料は、例えば、銅(Cu)やCuを含む合金などである。
【0025】
第1電極板41は、第1ヒートシンク11と電気的に接続される。第2電極板42は、第2ヒートシンク12と電気的に接続される。
【0026】
第1ヒートシンク11及び第2ヒートシンク12は、例えば、略矩形の平板状である。第1ヒートシンク11及び第2ヒートシンク12は、第1電極板41及び第2電極板42の外形形状よりも大きい。第1ヒートシンク11は、第1電極板41の全面と接し、第2ヒートシンク12は、第2電極板42の全面と接する。これにより、半導体素子14の放熱性を向上させることができる。但し、第1ヒートシンク11及び第2ヒートシンク12の外形形状は、必ずしも第1電極板41及び第2電極板42の外形形状よりも大きくなくてもよい。第1ヒートシンク11及び第2ヒートシンク12の大きさ及び形状は、半導体素子14の放熱を適切に行うことができる任意の大きさ及び形状でよい。
【0027】
半導体素子14は、例えば、複数の半導体チップ32を有する。複数の半導体チップ32は、第1電極板41と第2電極板42との間において、積層方向と直交する面内に、格子状(行列状)に並べて設けられる。複数の半導体チップ32は、例えば、第2電極板42の第1電極板41と対向する面に並べて設けられる。複数の半導体チップ32は、それぞれ第1電極板41及び第2電極板42に接続されることにより、並列に接続される。
【0028】
なお、半導体素子14は、単一種類の半導体チップ32を搭載する場合に限らず、複数種類の半導体チップ32を搭載してもよい。複数種類の半導体チップ32は、たとえばIGBTおよびファーストリカバリダイオード等である。また、半導体素子14は、複数の半導体チップ32を有するものに限定されるものではない。半導体素子14は、例えば、ウエハを内蔵する圧接型の半導体素子などでもよい。半導体素子14に設けられる半導体チップ32の数は、1つでもよい。
【0029】
第1外周部51は、第1ヒートシンク11と第2ヒートシンク12と半導体素子14とが並ぶ積層方向と直交する方向において第1電極板41の外周を囲むとともに、第1電極板41が第1ヒートシンク11に接触した状態において第1ヒートシンク11から積層方向に離れるように設けられる。
【0030】
第2外周部52は、積層方向と直交する方向において第2電極板42の外周を囲むとともに、第2電極板42が第2ヒートシンク12に接触した状態において第2ヒートシンク12から積層方向に離れるように設けられる。
【0031】
第1外周部51及び第2外周部52は、例えば、中空円板状の部材である。第1外周部51及び第2外周部52は、ほぼ平行に配置されている。第1外周部51及び第2外周部52は、中空の開口部分で、第1電極板41及び第2電極板42の円周の外縁にそれぞれ接続されている。第1外周部51及び第2外周部52は、例えば、第1電極板41及び第2電極板42の径方向(積層方向と直交する方向)に向かって延伸し、積層方向に屈曲した後、再度径方向に屈曲して延伸する。
【0032】
なお、第1外周部51は、例えば、第1電極板41と一体的に設けられていてもよい。第1外周部51は、必ずしも第1電極板41と別の部材として設けられるものでなくてもよい。第1外周部51は、例えば、第1ヒートシンク11と接触する面の外周を囲むように、第1電極板41と一体的に設けられた部分としてもよい。同様に、第2外周部52は、例えば、第2電極板42と一体的に設けられていてもよい。
【0033】
外囲器55は、第1外周部51と第2外周部52との間に設けられ、第1電極板41、第2電極板42、第1外周部51、及び第2外周部52とともに密閉した空間を形成する。外囲器55は、絶縁性を有する。
【0034】
外囲器55は、第1電極板41と第2電極板42との間に空く空間の側方を塞ぐ。半導体チップ32は、換言すれば、第1電極板41、第2電極板42、第1外周部51、第2外周部52、及び外囲器55で囲まれた空間内に設けられる。外囲器55は、半導体チップ32を気密封止し、外部環境から半導体チップ32を遮断する。外囲器55は、セラミック等の絶縁材料によって形成され、第1電極板41と第2電極板42との間を電気的に絶縁する。
【0035】
第1外周部51及び第2外周部52は、外囲器55を保持する。外囲器55は、第1外周部51及び第2外周部52に挟み込まれるようにして固定されている。外囲器55は、第1外周部51及び第2外周部52に挟まれることにより、第1電極板41と第2電極板42との間に空く空間の側方を塞ぐ。例えば、第1外周部51及び第2外周部52が、第1電極板41及び第2電極板42に密着するとともに、外囲器55に密着する。これにより、パッケージ部30の内部の空間が、気密封止される。
【0036】
第1外周部51及び第2外周部52は、圧接型の半導体素子14の通常の動作において、第1電極板41及び第2電極板42が温度変化によって膨張又は収縮した場合に、第1電極板41及び第2電極板42の形状の変化を吸収する。これにより、第1電極板41、第2電極板42、及び外囲器55の膨張係数の相違による半導体素子14の耐湿性の劣化等を抑制することができる。第1外周部51及び第2外周部52は、換言すれば、膨張係数の相違による第1電極板41及び第2電極板42の形状の変化を吸収する緩衝部材である。
【0037】
図1(a)に表したように、第1シール部材21は、第1電極板41の外周を囲み、第1ヒートシンク11と第1外周部51とに挟まれるように、第1ヒートシンク11と第1外周部51との間に設けられる。第2シール部材22は、第2電極板42の外周を囲み、第2ヒートシンク12と第2外周部52とに挟まれるように、第2ヒートシンク12と第2外周部52との間に設けられる。
【0038】
第1シール部材21は、第1外周部51の外縁に沿うように設けられる。第2シール部材22は、第2外周部52の外縁に沿うように設けられる。第1シール部材21は、例えば、積層方向から見た時に、第1外周部51の最も外側の部分と接するように設けられる。第2シール部材22は、例えば、積層方向から見た時に、第2外周部52の最も外側の部分と接するように設けられる。
【0039】
また、第1シール部材21は、積層方向と直交する方向において、第1電極板41との間に隙間を空けて配置される。第2シール部材22は、積層方向と直交する方向において、第2電極板42との間に隙間を空けて配置される。
【0040】
但し、第1シール部材21及び第2シール部材22の配置は、必ずしも上記に限定されるものではない。第1シール部材21を設ける位置は、第1外周部51の最も外側の部分に限ることなく、第1ヒートシンク11と第1外周部51との間の任意の位置でよい。第2シール部材22を設ける位置は、第2外周部52の最も外側の部分に限ることなく、第2ヒートシンク12と第2外周部52との間の任意の位置でよい。第1シール部材21は、例えば、第1電極板41と接してもよい。第1シール部材21は、例えば、第1ヒートシンク11と第1外周部51との間の隙間全体を埋めるように、第1ヒートシンク11と第1外周部51との間に設けてもよい。第2シール部材22は、例えば、第2電極板42と接してもよい。第2シール部材22は、例えば、第2ヒートシンク12と第2外周部52との間の隙間全体を埋めるように、第2ヒートシンク12と第2外周部52との間に設けてもよい。
【0041】
圧接型の半導体素子14では、半導体チップ32に短絡故障などが発生した場合に、パッケージ部30の内圧が上昇してパッケージ部30が膨らみ、パッケージ部30が破損してしまう可能性がある。そして、このように内圧の上昇にともなってパッケージ部30が破損してしまうと、パッケージ部30の破損個所から半導体素子14の一部が飛散物となって噴出してしまう可能性が生じる。
【0042】
このため、半導体素子14の周囲をカバーで覆うことにより、パッケージ部30の破損時に生じる飛散物から周辺機器を保護することが提案されている。しかしながら、半導体素子14の周囲をカバーで覆う構成では、カバーの追加による費用の増加や外径寸法の増加などが懸念される。
【0043】
本願発明者は、鋭意の検討の結果、パッケージ部30の破損は、第1電極板41と第1外周部51との境界部分、及び第2電極板42と第2外周部52との境界部分において、発生する可能性が高いことを見出した。
【0044】
このため、本実施形態に係る積層構造体10では、第1電極板41の外周を囲み、第1ヒートシンク11と第1外周部51とに挟まれるように、第1ヒートシンク11と第1外周部51との間に第1シール部材21を設けるとともに、第2電極板42の外周を囲み、第2ヒートシンク12と第2外周部52とに挟まれるように、第2ヒートシンク12と第2外周部52との間に第2シール部材22を設ける。
【0045】
すなわち、本実施形態に係る積層構造体10では、パッケージ部30の弱い部分の周囲にのみ、カバーとして第1シール部材21と第2シール部材22とを設ける。第1シール部材21は、第1ヒートシンク11と第1外周部51とに挟まれることにより、第1ヒートシンク11と第1外周部51との間の隙間を埋め、第1電極板41と第1外周部51との境界部分などから噴出する噴出物の飛散を抑制する。第2シール部材22は、第2ヒートシンク12と第2外周部52とに挟まれることにより、第2ヒートシンク12と第2外周部52との間の隙間を埋め、第2電極板42と第2外周部52との境界部分などから噴出する噴出物の飛散を抑制する。
【0046】
これにより、本実施形態に係る積層構造体10では、半導体素子14の側面部の全周を囲むようにカバーで覆う構成と比べて、第1シール部材21及び第2シール部材22の部品サイズを小さくし、第1シール部材21及び第2シール部材22の追加にともなう費用の増加や外径寸法の増加などを抑制することができる。
【0047】
さらには、半導体素子14の側面部の全周を囲むようにカバーで覆う構成と比べて、半導体素子14が有している長い沿面距離を活用することができ、絶縁の観点からも品質低下を抑制することができる。例えば、外囲器55の側面は、図1(a)及び図2(b)に表したように、波状に湾曲する。これにより、外囲器55の側面の沿面距離を長くすることができる。外囲器55の側面の沿面距離は、例えば、第1外周部51の端部と第2外周部52の端部との間の積層方向における直線距離よりも長い。これにより、積層構造体10において第1電極板41と第2電極板42との間の高い絶縁性を得ることができる。
【0048】
第1シール部材21及び第2シール部材22には、例えば、パッキンや絶縁物などが用いられる。第1シール部材21及び第2シール部材22には、例えば、絶縁性のゴムが用いられる。但し、第1シール部材21及び第2シール部材22は、必ずしも絶縁性でなくてもよい。第1シール部材21及び第2シール部材22には、例えば、金属材料などを用いてもよい。第1シール部材21及び第2シール部材22の材料は、噴出物の飛散を適切に抑制可能な強度を有する任意の材料でよい。
【0049】
また、本実施形態に係る積層構造体10では、第1シール部材21が、第1外周部51の外縁に沿うように設けられ、第2シール部材22が、第2外周部52の外縁に沿うように設けられる。これにより、例えば、第1外周部51及び第2外周部52のどの位置で破損などが生じた際にも、第1シール部材21及び第2シール部材22によって噴出物の飛散を抑制することができる。従って、噴出物の飛散をより適切に抑制することができる。
【0050】
さらに、本実施形態に係る積層構造体10では、第1シール部材21が、積層方向と直交する方向において、第1電極板41との間に隙間を空けて配置され、第2シール部材22が、積層方向と直交する方向において、第2電極板42との間に隙間を空けて配置される。これにより、例えば、パッケージ部30の膨らみや噴出物などの逃げの空間を確保することができる。例えば、パッケージ部30の膨らみや噴出物などが、第1シール部材21と第1電極板41との間の隙間、又は第2シール部材22と第2電極板42との間の隙間に入り込む余地を残すことにより、意図しない部分に破損などが生じてしまうことを抑制することができる。従って、噴出物の飛散をより適切に抑制することができる。
【0051】
本願発明者は、第1シール部材21及び第2シール部材22を設けた上記実施形態の積層構造体10の構成、及び第1シール部材21及び第2シール部材22を設けていない参考の積層構造体の構成により、半導体素子14の故障を模擬する実験を行った。
【0052】
実験において、半導体素子14には、事前に短絡させておいた圧接型サイリスタ素子を用いた。また、第1シール部材21及び第2シール部材22には、シリコンゴム製パッキンを用いた。実験では、事前に短絡させておいた圧接型サイリスタ素子に対して、サイリスタ素子が故障した際に流れる電流と等価的な電流を通電することにより、半導体素子14の故障の模擬を行った。
【0053】
第1シール部材21及び第2シール部材22を設けていない参考の積層構造体の構成においては、上記の電流を通電した際に、半導体素子14の一部が飛散物となって噴出した。
【0054】
これに対し、本実施形態に係る積層構造体10の構成では、上記の電流を通電した際にも、飛散物は発生しなかった。より具体的には、数kA程度の電流を通電した際にも、パッケージ部30の第1外周部51と第1電極板41との接続部付近(第2外周部52と第2電極板42との接続部付近)、又は第1外周部51と外囲器55との接続部付近(第2外周部52と外囲器55との接続部付近)から僅かに煙が漏れ出た程度で、飛散物は発生しなかった。
【0055】
上記の実験では、半導体素子14に圧接型サイリスタ素子を用いているが、同様の構造を有する別の圧接型の半導体素子14においても、積層構造体10の構成とすることで、飛散物の発生を抑制することが可能である。なお、飛散物の発生を抑制することには、飛散物を全く発生させないようにすることに限ることなく、周辺機器に影響を与えない範囲に飛散物の飛散する範囲を抑えることも含むものとする。
【0056】
以上、説明したように、本実施形態に係る積層構造体10では、より簡単な構成で、圧接型の半導体素子14の破損時に生じる飛散物から周辺機器を保護することができる。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
10…積層構造体、 11…第1ヒートシンク、 12…第2ヒートシンク、 14…半導体素子、 21…第1シール部材、 22…第2シール部材、 30…パッケージ部、 32…半導体チップ、 41…第1電極板、 42…第2電極板、 51…第1外周部、 52…第2外周部、 55…外囲器
図1
図2